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前田委員 たしか先週に自衛隊法の一部を
改正する
法律案が通りまして、それで政府専用機あるいは緊急どうしても必要な場合にはたしか自衛隊の輸送機を海外における邦人の救出に役立てるという
内容の
法案が通ったかと思いますが、実は、これもたしか宮澤総理が去年の通常
国会で総理として
趣旨説明をされたときに、自分が外務大臣として、ベトナムの旧サイゴン、今のホーチミン市、あそこが陥落するときに邦人の救出について手だてがなかった、非常に残念な、担当の外務大臣として非常に
国民に対して申しわけないという気持ちになったというような
趣旨の説明をされたのを覚えているのですね。
私はそれを聞きながら、その当時私は、実はサイゴンの大使館に一等書記官として勤務をしておったのです。そのときに、在留邦人が二千人ぐらいおりまして、それをどうやって緊急脱出させるかというのが一番の課題になったわけなんですが、本当に脱出する手段がないのですね。宮澤喜一外務大臣から、邦人の安全を
確保されたし、こういう訓令が来るわけでございますが、当時ほかの国々、シンガポールとかタイだとかマレーシアだとか、そういったいわば日本に比べてまだまだ小さな国々が自
国民を救出するのにちゃんと軍の輸送機なりを用意してどんどん脱出していく。ところが我々は、当時のナショナルフラッグである日本航空ですら危険だということで飛んできてくれない。在留邦人のところを回って、外国の飛行機が飛んでいる間に何としても早くそれで逃げていただきたいということを言う以外になかったわけです。最終的には私は陥落直前に香港まで脱出いたしましたが、そのときに非常に痛切な思いを抱きまして、どうも日本というのはこれは国家でない、要するに自国の
国民の生命
財産を保護するというそういう手段を持っていない、そういう意思がないんじゃないかということをそのときつくづく感じた次第です。
その後、この政界に私も志を持って出させていただきました。そして、その中での議論、実はこういったことについて真剣な議論が
国会でやられないわけですね。それは、そのときのいろいろな、もちろん五五年体制もあったでしょうし、世界の状況もあったかもわかりません。しかし、何といってもまず国家というものは
国民の生命
財産、この安全を
確保するというのが一番の基本、出発点ですからね。そのための
法律であり、統治であり、
税金を取るわけでございますから、そういったことがやっと先週実ったというところにも、私はこの政治
改革の一つの成果を見る思いをしておるわけであります。
申し上げたいのは、やはり基本的には私の考え方は今までの五五年体制の政治の中ではどうしても、そういうものほかえって紛糾さすとかいろいろなことがあって、真剣な議論をしなかったものですから、政治の場においてそういう根本的なことに対する感覚というのはいささか薄れておったんじゃないのか。それがやはり、人権問題であるとか世界との本当の連帯感であるとか、そういったものにも私は影響を及ぼしているような気持ちすらするのですね。
この最後の
委員会で余り対象とするような課題といいますか、そういうものでもありませんのでこの辺にとどめますが、しかし私の持っている問題意識、そういうものを踏まえて、これからの政治
改革の課題というのも多々あるわけでございまして、例えば海外における邦人の
選挙権の
確保の問題。これなんかも、これだけ日本が貿易立国で、世界各地で在留邦人が本当に非常に苦労をされてここまで日本の経済社会を発展させてきた。また、ボランティア
活動であったり青年海外協力隊であったり、日本を代表しですばらしい活躍をされている方々が多々いるわけでございますが、そういう方々の一番基本である参政権、それを今まで
確保するような筋道を余りやってこなかったというところにも私の考えるような問題意識があるのじゃなかろうかな、こういうふうに思うのですね。そういったところも含めて、私はこれからの課題は多いと思います。
そして、そういったことに対する総理のこれからの取り組みの考え方もお聞きしたいし、最後に、先ほど総理が内外の課題が多いゆえに
解散の云々の話がございました。私は、
解散の云々の話ではなしに、政局自体はどんな事態であるか、そしてまた今のような、日本が世界における大きな存在となった以上、重要課題は内外メジロ押してございます。もう重要課題がとぎれるようなときなんというのはないのだろうと思うのですね。そういう中で、何といっても、総理はそうやって大きな御決断をされたとは思うのですが、やはり去年の
選挙のときの社会党の掲げた公約なりそういったものと全く違う決断をされたわけでございます。これは言ってみれば
政党政治の、いわば有権者が
政党に信任を与えるその一番の前提がやはりそういう党の一番基本的な理念であり
綱領であり政策でありますから、それを大きく変えた以上は、これは
政党に対する信頼そのものにもつながるわけでございますから、そういった面の、私は単に今の政権がどうこうというよりも、日本の
政党政治そのものに対して非常に大きな信頼を失墜させることになっているのだろうと思うのですね。
もちろん連立政権をつくったときにはまだ政策
変更されておられませんでしたから、その時点においては。自民党においても、自民党の持っている一番基本的な
綱領、理念、そういったものと全く逆の政策を持った政権をみずからの手でつくったわけでございますから、これまた自民党においてもそういう意味では深刻な反省があってしかるべきだと私は思うのですね。そういったことも含めまして、総理の今後の政局に対する心構えと、そしてこれからの政治
改革の課題、これをお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。