○鮫島
委員 改革の同僚議員のお許しを得て、主として
ウルグアイ・ラウンド農業合意関連
対策を中心にして
質問をさせていただきたいと思います。
先日、同僚の松田議員が
指摘したように、この七年間の百二十五カ国が参加して新たな自由貿易の枠組みをつくる、そのための新たな国際貿易機関が設置されるということのその歴史的意義というのは、私もまことに大きいものだというふうに認識しております。
我が国にとりましても、
貿易立国を基本とする立場から、今
日本がどのような時期にあって、どういう考え方でこの新たな経済の枠組みというのを受け入れるのか、あるいは新たな環境にどういうふうに
日本が対応していくべきか、その骨格をつくる大事な時期に来ているのではないかという気がします。
我が国は資本力、技術力、
経営力、まあ今がピークの時期にあると言ってもいいと思いますけれ
ども、ある
意味ではこれまでの成長の枠組み、これまでの成長を支えてきた経済、金融の枠組みからなかなか脱却できないで、成長に陰りが出ているということも一方で確かな事実であります。この基本的に今まで我々が体験したことのない地球市場とでもいうべき広大なマーケットが形成されて、各国が公正、同じルールのもとで競争を行うという時代に突入するわけで、人によっては、明治維新それから終戦に次ぐ第三の開国というふうに今の時期をとらえている人がいることもよく御
案内のとおりだと思います。特にこの新たな経済環境への移行についてはすべての産業分野に影響が出るわけでございますけれ
ども、特に
農業の分野にその影響が大きいということから特別な関連
対策が打たれているものというふうに認識しております。
先ほどの
吉田議員の立場と私も一部共通するわけですけれ
ども、私の
選挙区は東京五区でして、豊島区と練馬区を含んでおりますけれ
ども、豊島区には既に
農業はございません。二十三区の中で緑地面積が最も小さくて、一人当たり○・六平米の緑しか持っていないというのが豊島区の特徴です。一方練馬区は、東京の中では世田谷区と並んで
農業が盛んと言われておりますけれ
ども、それでも生産緑地の総面積は二百四十ヘクタール。
農家人口は○・七%。つまり東京五区全体としては九九・五%がやはり非
農家でありますから、こういう関連
対策を打つに当たっても納税者である非
農家の
人たちに対する十分な了解というのを得る必要があるのではないかと思います。
特に、
農業以外でも、例えば豊島区、練馬区には個人
経営の商店あるいは下請の中小のメーカーたくさんございますけれ
ども、OA機器の部品生産あるいは自動車の部品生産を受けている下請の中小メーカーというのは、この産業空洞化の動きの中で、この一年だけ見ても大変厳しい
状況に置かれています。また、個人
経営の商店は、大店法の規制緩和なんかもあって高齢化、
後継者の不足、それから第二種兼業化、つまりその商店だけでは食べられない第二種兼業化という流れが商店街を襲っていまして、ある
意味では
農業と同じような難しい
状況に置かれている。
こういう
方々に、やはり
農業が、今まで特にまあ一
部分ですけれ
ども統制経済的な
状況に置かれていて、今度環境が激変するのでこういう関連
対策を打つのだという趣旨だと思いますけれ
ども、やはりほかの分野の
方々も大変大きな環境の変化にさらされて、みんな知恵を出し合いながら生き延びていかなければならないという
状況の中では、納得のいく説明をほかの産業分野で働く
人たちに対してもする必要があるのではないかと思います。
これまでの
農業政策の論議、これは国会あるいは
委員会の論議も含めてですけれ
ども、どちらかといえば
生産者サイドに立った論議が中心で、
消費者あるいは
都市生活者の立場から見た農政についての検討はどちらかといえば不十分だったのではないかという気がしております。
いろいろ都市の側にも誤解があって、そういうことが無用の対立を招いているということがあると思いますけれ
ども、私は幾つかの事実関係について確認したいと思うのです。
一般的に
農業といいますと、特に評論家の
方々とかあるいはマスコミの報道な
ども含めてですけれ
ども、大変規制の強い産業とか統制色の強い産業分野というふうに思われています。これはある
意味では誤解がありまして、もちろん米、麦、甘味資源、あるいは
価格安定策がとられている
農業分野についてはそのような評価も当たるかもしれ・ませんけれ
ども、一方で最も市場原理の働いているのもこれまた
農業分野であることは事実でありまして、特に花、蔬菜、果実といった分野についてはむき出しとも言える市場原理が働いている。時々キャベツや白菜がとれ過ぎて、
流通の経費を考えるとそのまま畑にすき込んだ方がいいということがニュースになりますけれ
ども、激しく
価格が乱高下するというむき出しの市場原理が働いているというのも一方の
農業の特徴であるというふうに思います。
ですから、必ずしも
農業全体が保護されて規制の中にあるわけではなくて、むしろ食管の枠の中にあった主要穀類を生産する土地利用型の
農業というのが手厚く保護されてきた統制経済的な
状況に置かれていたのではないか。したがって、新たなWTO体制への移行についてもこの分野が一番環境の変化を迫られるわけでして、やはり関連
対策としてはどうしても米生産
対策が中心にならざるを得ないのではないかというふうに認識しております。
ただ、議員の、与野党含めてですけれ
ども、
農業問題についてはいろいろなお考え、いろいろなお立場があることは周知の事実ですし、出身地域、都市地域出身の議員の方あるいは
農業地域出身の議員の方でそれぞれお考え、御意見も違うというのも無理からぬことだと思います。
ただ、今、この大きな時代の変換期に当たって、少なくとも三つの原則だけは踏まえて私も
質問を続けたいと思います。
その第一番目は、
我が国はマラケシュ
条約の批准を進め、WTO体制への円滑な移行に主体的な役割を果たすというのが第一点目です。それから第二点目は、
ガット・
ウルグアイ・ラウンド合意により環境の変化にさらされる
農業、農村については、国土・環境保全、地域文化の伝承と発展、健全な
食糧、一次産品の供給確保の観点から、より一層の活性化を図る。それから三番目については、これまで軽視されがちだった都市と農村の相互理解、
生産者と
消費者との相互信頼を深め、命をはぐくむ産業としての
我が国農林水産業の体質強化を目指す。この三点については、恐らくその立場の違いを超えて皆共通の土俵で建設的な論議が行われるのではないかというふうに考えております。
ただ、なかなか
農家の実態というのは都市の
生活者の方から見えにくい面がありまして、まず、私
どもも一番
選挙区で聞かれるのは、
農家は弱者なのかという
質問をよくされます。
例えば、
農家と勤労者世帯との所得比較、これは平成四年の
数字ですけれ
ども、世帯の可処分所得で比べると、
農家全体の平均が七百三十四万、それに対して都市勤労者の世帯の可処分所得五百七十二万、約百五十万の差がある。世帯一人当たりの可処分所得で見ても、
農家の全国平均が百七十万、勤労者の平均が百五十五万。純貯蓄、貯蓄から借金を引いた、返済分を引いた純貯蓄ですけれ
ども、
農家の平均が二千三百六十三万、都市の勤労者の平均が八百七十六万。この純貯蓄、就業者一人当たりで見ても、
農家が九百四十一万、勤労者が五百二十八万と、あらゆる家計の経済指標で
農家の方が上回っている。
ただ、
農家と一般的に言っても、
専業農家、第
一種兼業農家、第二種
兼業農家で大分その経済状態が違っていて、先ほど
農家の可処分所得平均が七百二十四万と言いましたけれ
ども、
専業農家は三百五十万、第
一種兼業農家が七百八十九万、第二種兼業が七百九十万、二倍以上の開きがある。したがって、同じ
農家といっても、
専業農家は大変苦しい立場に置かれていて、ある
意味では弱者と言えるのかもしれませんけれ
ども、第
一種兼業農家、特に第二種
兼業農家については、
都市生活者から見て果たして弱者と言えるのかどうかというのは常識的に考えて素直に納得できないということがあるのではないかと思います。
それから、申告納税者の所得
種類別申告納税額の構成割合で見ましても、いわゆる
農業セクターといいますか
農業所得の納税額は、平成四年、平成五年とも約四百億で、これは所得税全体の一%。そういう
状況がありますし、また特に第二種
兼業農家の
農業所得というのは総所得の大体五%から八%、つまりほとんどの収入源は農外所得に負っている。
こういうのが
農家経済の実態ですから、
農業サイドに対する補助あるいは
農業の支援策を考えるときに、やはりこういう現状を踏まえて、これが都市の勤労者からどう見えているのかということを踏まえて、十分納得のいく説明をしていただきたいというふうに思います。第二種
兼業農家というのは、
農業の側から見れば
経営面積が狭くて
農業だけでは
生活できない
農業者ということになるのでしょうけれ
ども、都市側から見ると、いわば資産持ちのサラリーマンというふうに見えるということもこれは事実であります。
このような経済的な情勢の中で、今回巨額の関連
対策を打つわけですけれ
ども、この大義名分と申しますか、もちろん閣議了解もあるし、
政府がお約束したことだから当然十分な関連
対策を打つということは
一つの理由でしょうけれ
ども、動機といいますかねらいというか、大義名分についてどのようにお考えなのか、
総理の御
所見を伺いたいというふうに思います。何のためにこの関連
対策を打つのか。何のために。