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1994-10-21 第131回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十月二十一日(金曜日)     午前九時五十分開議 出席委員   委員長 白川 勝彦君    理事 甘利  明君 理事 尾身 幸次君    理事 伊藤 達也君 理事 古賀 正浩君    理事 東  順治君 理事 大畠 章宏君       小川  元君    小此木八郎君       奥田 幹生君    金田 英行君       熊代 昭彦君    谷川 和穗君       丹羽 雄哉君    野田 聖子君       上田  勇君    河合 正智君       佐藤 茂樹君    高木 義明君       豊田潤多郎君    西川太一郎君       吉田  治君    渡辺浩一郎君       後藤  茂君    佐藤 泰介君       前島 秀行君    松本  龍君       和田 貞夫君    枝野 幸男君       田中  甲君    吉井 英勝君  出席国務大臣         通商産業大臣  橋本龍太郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      高村 正彦君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     小粥 正巳君         公正取引委員会         事務局取引部長 大熊まさよ君         経済企画庁調整         局長      吉川  淳君         経済企画庁国民         生活局長    坂本 導聰君         経済企画庁物価         局長      谷  弘一君         経済企画庁総合         計画局長    土志田征一君         経済企画庁調査         局長      大来 洋一君         通商産業大臣官         房総務審議官  林  康夫君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       清川 佑二君         通商産業省通商         政策局次長   伊佐山建志君         通商産業省貿易         局長      中川 勝弘君         通商産業省産業         政策局長    堤  富男君         通商産業省機械         情報産業局長  渡辺  修君         工業技術院長  平石 次郎君         資源エネルギー         庁長      川田 洋輝君         中小企業庁長官 中田 哲雄君         中小企業庁次長 鈴木 孝男君 委員外出席者         外務省北米局北         米第二課長   西宮 伸一君         大蔵省証券局証         券市場課長   藤原  隆君         大蔵省国際金融         局為替資金課長 藤本  進君         厚生省薬務局企         画課長     石本 宏昭君         運輸省自動車交         通局技術安全部         整備課長    下平  隆君         労働省職業安定         局雇用政策課長 青木  功君         商工委員会調査         室長      石黒 正大君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十一日  辞任         補欠選任   川端 達夫君     高木 義明君   武山百合子君     渡辺浩一郎君 同日  辞任         補欠選任   高木 義明君     川端 達夫君   渡辺浩一郎君     武山百合子君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 白川勝彦

    白川委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。甘利明君。
  3. 甘利明

    甘利委員 最初に、通産大臣質問をさせていただきます。  橋本通産大臣日米協議、本当に御苦労さまでございました。交渉相手としては大変にやりづらいカンター通商代表相手に、河野外相とのタッグマッチは本当に息が合って大変に見事であった、歴史に残る交渉であったというふうに伺っております。  私もこの春、公式の場ではもちろんありませんけれどもカンター代表と一時間ばかり話をしたことがありますけれども、そのしたたかさといいますか、それには恐れ入っちゃった部分がありまして、難攻不落のカンター氏をあそこまで寄り切ったというのは、さすがに我が国を代表する閣僚だというふうに敬意を表する次第であります。  大体うまく処理されたと思います。一部、自動者補修部品関係の課題が残って、それが三〇一の対象というぐあいになったわけでありますけれども、今後、残った問題を含めてどういうふうにこの交渉を持っていかれるのか、まずそこらあたりから伺いたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 この包括協議の進行の途中、与野党それぞれの立場から大変御支援をいただきましたことに冒頭お礼を申し上げたいと存じます。  そして、その結果として、今回、政府調達、板ガラス、保険及び米国の輸出振興競争力強化部分につきましては基本的に協議をまとめることができました。また、自動車及び同部品につきましては、残念ながら補修部品部分において三〇一条の適用という事態を迎えたことを大変残念に思っております。  しかし、この協議全体を通じまして、少なくとも数値目標を排することができましたこと、同時に、包括経済協議対象政府の手の届く範囲内ということについてその原則を貫くことができましたことは、私は、現内閣としての大きな成果ということと同時に、現内閣アメリカとの間に信頼関係を築いてきた一つの証左であると考えております。  しかし、この三〇一条の調査開始というものをアメリカ決定をいたしましたことに対し、一方的な措置がとられました場合には、日本はあらゆる措置を講じて対抗するその権利は留保しているという姿勢でこれから臨みたいと考えております。  さらに、その後になりまして、既に御承知のように、スーパー三〇一条におけるウォッチングリストの中に木材、紙というものが取り上げられました。しかし、これはいずれも非常に事務的に円滑な話し合いが行われているさなかの措置でありまして、私どもとしてはアメリカ側真意をはかりかねているというのが実情であります。  ワシントン時間の二十日、すなわち昨夜から紙についての五回目の協議が行われることにたっておるわけでありまして、その冒頭アメリカ側真意をただすところから我々はこの話し合いを行いたいという訓令を持って関係者に現地に赴いてもらっておりますが、その報告がまだ入っておりませんけれども、これにいたしましても、やはり我々としてはその対応をこれから考えていくべき分野であると思っております。  いずれにいたしましても、日米関係というものは将来ともに我が国にとって極めて外交的に大切な関係でありますし、これを壊すことは我々は避けなければなりませんが、日本としての主張をきちんと貫いていくためにも多少の冷却期間を必要とするというのが今、私個人の率直な感想であります。
  5. 甘利明

    甘利委員 こういう他国との協議というのは、非は非、是は是として筋道を立てて主張し、相手主張が正当なものであるならばそれについての問題解決には全力を傾注をするという真摯な姿勢が大切だと思います。今回の交渉では、非常に筋道立てて、理論立てて、じゅんじゅんとアメリカ側説得をしていく、そういう大変な努力が図られたと思っておりますし、その正当な論理の前にカンターさんも今まで納得しない部分も納得をしてくれたというふうに思います。  スーパー三〇一補修部品関係でも、スーパー三〇一適用ではなくて実は通商法三〇一の適用とするという意思表示であったということも、アメリカ側日本に対する微妙な配慮といいますか、そういう点が感じ取られる。だから、一方的にただ向こうをやっつけたというのじゃなくて、我々も努力をするけれどもアメリカ側無理難題も、これはこうですね、理屈は通りませんねと、そういう説得をしたといいますか、相手にも理解をしてもらって我が方も努力をする、そういう交渉だったというふうに思います。  せっかくの機会ですから、スーパー三〇一ではなくて三〇一であった、その辺の微妙たニュアンスの違いは、大臣がお感じになっていらっしゃるところはどんなところか、ちょっとお聞かせをいただければと思います。
  6. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに私は、アメリカ側としては、巷間伝えられておりましたスーパー三〇一条ではなく通商法三〇一条をここに取り上げたということは、日本側に対する、委員指摘のような微妙な配慮という意識も働いたものと思います。  多少補足をさせていただきますと、この重要保安部品という制度自体につきましては、私は、運輸省事務当局の諸君も非常に積極的に努力をしてくれまして、事務的には相当程度歩み寄りはあったと考えておりました。しかし、基本的に重要保安部品制度廃止というものが車検制度廃止に連動してしまう。これは日本としては譲れない。  なぜならば、日本交通事故原因別調査いたしましたときに、整備不良を原因とする事故発生率は有意に低いということが国際的に認められております。それが車検制度一つのメリットであるという考え方。その上で譲歩すべきものは譲歩していこうという積極的な姿勢と、重要保安部品制度を一たん全部廃止をして、その上で安全性については別途考えればいいというその基本的た部分が埋まらなかったことが、事務的には相当程度歩み寄りが見られたがら、重要保安部品について決着を見ることができなかった最大の理由でありました。それだけに、アメリカ側としても今後の論議をつないでいきたいという意思の表明をこうしたところにも込めているのではなかろうかという気持ちは私もいたします。  ただやはり、いずれにしてもその三〇一条というものをいわば突きつけられた形での交渉というものを私は好みません。それだけにむしろ、他の分野におきましても我々がこれから進めていかなければならない規制の見直し、緩和、廃止といったテーマの中から、これがもう一度論議テーブルにのるのであれば素直にテーブルに着けるけれども、三〇一条というものを前提に議論をされることには私としては承服しがたい思いがあるというのが率直な感じであります。
  7. 甘利明

    甘利委員 私はこの日米交渉交渉の当事者というのは、割とクールに受け入れるものは受け入れるし、主張するものは主張するということでやっているのですが、一番過熱してしまっているのは日本マスコミだといつも思っておりますし、日本マスコミの異常過熟がアメリカ側対応にまたはね返って、国内ではこうじゃないかというようなことを随分言われる。ですから、マスコミもこういう交渉事はできるだけ冷静に事実関係報告するという姿勢が必要だなということをいつも感じておる次第であります。  高村長官にお話を伺いたいと思いますが、長官は御就任以来、景気節目節目をとらえて例え話で表現をされる、それが非常にいつも的を射ているというか、いつも感心をさせられるわけであります。  たしか御就任早々、当面景気をよくするために夏を暑くすることにしましたという御発言がございました。事実そのとおりになりました。エアコンはもう在庫一掃になりましたし、生産は追いつかないし、夏物は昨年の五割増しぐらいにばんばん売れるし、私の選挙区の湘南海岸の海の家は連日満員でございまして、これは確かに景気底離れに一役買ったなと思って感心をしている次第でございます。そうしますと、さしずめこの次は冬を目いっぱい寒くされるのだと思いますけれども冬物一掃セールができましたら、私は続いては長官を今度は気象庁長官に推薦をしようというふうに考えております。  九月七日だったと思います。関西の経済三団体と長官との懇談の記事を私は目にしまして、なるほどこの人は頭のいい人だなと思ったのですけれども記者長官に対して九月の表現、つまり景気に対する表現は、これは景気回復宣言、つまり節目になる判断を下すということでいいのですかという質問がたしかありましたね。そのときの長官発言がこうでしたね。雲が多い中で大分明るくなっている感じである、しかし日の出がどうかは言いにくい、日が完全に出ましたという表現をするつもりはありません。マスコミの方々がそれぞれの判断でそうおっしゃることはあり得ると思っておりますよと、非常に私はうまい言い回したと思って、実は新聞を見てあのときに感心をいたしました。  というのは、今回の不況というのは、過去の不況パターンと随分変わっております。底離れをしたというふうに言われていますけれども、この底離れの歯切れが非常に悪いのですね。過去のオイルショック不況とか過去の円高不況底離れのところを比べますと、立ち上がり感が物すごく悪いのです。本当に立ち上がったのかどうかよくわからないけれども、何となくよくなっているのかなという感じでありますね。今回の不況自体が過去と違って、いわゆる複合不況というふうに言われていますけれども立ち上がり方も従来と異なって、底ばい型立ち上がりといいましょうか、そういう従来とは違って力強さにうんと欠ける立ち上がり方だのですね。  ですから、景気対策の手をある程度のところで緩める、言ってみれば、自転車に最初に乗る人の後ろについて押さえてやって、勢いがついてきたらばっと手を離しますけれども勢いのつき方が非常に悪いものですから、手の離し方も従来の不況脱出時よりはかなり遅くしてあげる、フォローは丁重にしてやるという方が今回の不況というのはいいのじゃないか。そういう意味で、九月にこういう表現をされた、ここで明確な底離れ宣言をされなかった、場合によってはそうかもしれないけれども、場合によっては違うなというようなうまいニュアンスをされたというのは私は賢明だったと思います。  さて、それから一月半がたちました。今の景気状況長官はどういうふうに御判断をされますか。
  8. 高村正彦

    高村国務大臣 ことし夏が暑かったのは太平洋高気圧が強かったためでありまして、私がそうしたわけではないわけであります。  九月七日の記者会見で、雲が多い中で云々と言ったのは、二日後に月例経済報告がある、根掘り葉掘り聞かれても正確に申し上げるわけにいかないし、うそもつくわけにいかないということで、禅問答のような答えになって大変申しわけなかった、こう思っているわけでありますが、その二日後に、我が国経済企業設備等調整過程にあるものの、このところ明るさが広がってきており、緩やかながら回復の方向に向かっている、ただし、為替相場の動向など懸念すべき要因も見られる、こういう表現をしたわけであります。  そして、一カ月半たった今でもその景気認識は変わっておりません。強いて言えば、若干鉱工業生産には一進一退ながら持ち直しの動きが見られる。九月の月例では、持ち直しの前の底がたい、こういうふうに表現したのが、若干明るさがふえ工きたかなということがありますが、全体的に景気認識は変わっておりません。
  9. 甘利明

    甘利委員 この景気対策といいますか、後押しをする、手を緩めるというのはぜひ慎重に今回の不況に限ってはしていただきたいというふうに思います。ちょっと時間がないので、先を急ぎます。  日本という資源小国を今日まで支えてきたのは製造業の力、製造業不断努力というのが大きかったと思います。高付加価値政策で、富を生むことに一生懸命努力をして今日の発展を築いた。最近は富をいかに分配するか、分配論は皆熱心なのですけれども、どうやって富を創造するかというところの議論が随分欠けてしまっている。これは、いずれ富を創造する人がいなくて分配する人ばかりでしのぎを削るということになりはしないかと非常に心配をいたしております。  その支えてきた製造業が、有史以来の今危機に立っているわけですね。一番の原因円高でありまして、しかもこの円高実体経済を反映していないから始末が悪いわけでありまして、振り返ってみると、我が国製造業円高生産性向上とのイタチごっこを繰り返してきた。  つまり、輸出がふえると円高になるわけですね。輸出ダメージを受ける。そうすると、それを克服するために国内製造業生産性向上に血道を上げる。不断努力をするわけですね。そうすると、その成果があって競争力回復をしてくる、競争力回復すれば輸出がふえる、輸出がふえると円高になる、円高になるとまたそれによってダメージを受ける、そして生産性向上に向かう、このエンドレス戦いが続いてきたわけですね。今やこの果てしない戦いに限界が来て、製造業新天地を求めて海外に出ようとしている、これが空洞化であります。  ここで気をつけなくちゃならないことは、日本製造業、つまりこれから新天地を求めよう、もう戦いに疲れちゃったと言っている製造業は、国際比較の上では日本では一番競争力があるといいますか、生産性が高いところなんですね。そうすると、生産性の高いところがいなくなっちゃって、いなくなることもできない生産性の低いものだけが日本に取り残されるという現象が起きてしまうわけです。これは大変な事態だと思います。  エンドレス円高原因といいますか、その分析をしていきますと、要するにいつまでたっても円の売り買いがバランシングしないということですね。株でいいますと、買い注文がどんどん入るけれども売りがない。そうすると株価は上がっていくわけですね。その逆なら株価は下がる。円についてこういうことが言えるわけだと思うのです。  その円の売り買いインバランスは、二つの場所でインバランスしている。一つ貿易自体で円の売り買いバランスしない。もう一つは、こっちの方が大きな問題だと思いますけれども投機筋による為替市場での円の売り買いバランスしない、このバランスしないことがどんどん円高を加速させているということになるのだと思います。  貿易の場でいいますと、企業輸出海外で稼いだドル国内の支払いに充てるのに円を買うわけですね。だから、輸出が伸びれば伸びるほど円買い圧力は強くなるわけですね。ところが、逆に輸入が伸びると、輸入相手側に支払うドル調達するために国内で稼いだ円を売るわけですね。輸出に比べて輸入が伸びないということは、円を買う量に比べて円を売る量が少ない、貿易でバランシングをしないということですね。  普通ですと、円高になると国内消費者の相対的な購買力は大きくなるはずですね。少なくとも貿易財、つまり輸入物質に対しては購買力は大きくなる。だから、消費者が同じ支出をしている限りは輸入はふえるはずなんですね。ところが、同じ支出をしていながら輸入がふえないということは、輸入物資が港に着くまでの値段円ベースでは下がっているのに、家庭に着くときにはその値段は変わらないという現象がこれは推測をされると思います。  そこで、輸入物資内外価格差の最近の調査と格差の原因究明、これについてはどういうふうに進んでいるか伺います。
  10. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 細部にわたりましては政府委員補足をお許しいただきたいと存じておりますが、今委員が御指摘になりましたように、この円高状況を私どもは非常に懸念をいたしております。  しかも本日の東京市場、寄りつきで最高値を更新いたしております。それだけに、今御指摘になりましたような内外価格差を放置した場合の国内産業競争力の低下というものは御指摘のとおりでありまして、私どもとしては今回、先般の税制改革大綱決定の際の経済構造改革に対する総理の指示もありまして、消費財だけではなく、従来必ずしも十分に把握のできておりませんでした中間財あるいはサービスにつきましても価格差調査を現在実施いたしております。  これがまとまり次第これを公表することによりまして、消費者あるいは産業界意識改革も進めていただく、そして価格差原因と考えられる政府規制あるいは競争制限的な取引慣行などを明らかにしながら、一層の我が国経済効率化のための施策を講じていく、ここで内外価格差を解消していくように努力したいと考えております。
  11. 甘利明

    甘利委員 済みません、時間が大分押してきました。  二番目の、いわゆる投機筋による円の売り買いバランスがバランシングしない。これはよく言われるように、世界じゅうで一日に取引される為替資金量というのは一兆ドル、百兆円と言われておりますが、このほとんどかなりの部分投機筋が動かす。その動かす視点というのは、判断基準というのは、経常黒基準にどっちへ張るかというのを決めるというふうに言われているわけですね。経常収支黒字をどうやって縮小するか、これが円買い圧力を弱めるということになるのですが、この縮小のアプローチというのは二点あると思います。  一つは、先ほど申し上げた輸出入のバランスからのアプローチですね。もう一点は貯蓄投資バランスでのアプローチ。こっちの方がかなり効果が高いと思いますけれども貯蓄から投資を差し引いた残りが経常収支黒字の数字ということですから、貯蓄に比べて投資が少な過ぎる。つまり日本貯蓄をうまく生かし切っていない、そういう経済構造経常黒を生むという話になると思います。  そこで、私はかねてから通産省に、どうやって新しい業を、産業を起こす、つまり技術の弁とかアイデアの芽を企業化していくか、それが受け皿になる部分が随分ありますよ、失業の受け皿にもなるし、経常黒を削減する受け皿にもなりますよということで、いろいろとくみ上げてもらいました。  中小企業者は個別の政策はある程度知っているけれども、どうやって系統づけて企業が大きくなるために資するのかということがよくわかってないですよ。これを系統づけて手当てをして、めり張りのきいたものにした方がいいという話は前からさせていただきまして、来年度新政策でそれが出てくるようであります。これは税制の面でも予算の面でもしっかりめり張りをつけてもらいたいと思いますし、その点、今相当苦戦をしているようでありますから、これはぜひ商工委員会先生方も応援をしていただきたいと思います。  そこで、その国策としてのいろいろな施策を関連づけて、技術とかアイデアの芽を大きくして業として起こしていく。やはり最後は、貯蓄投資バランスインバランスを是正するために貯蓄をいかに投資に生かすかというところでつながってくるのが店頭公開市場の問題だと思います。建前のハードルアメリカあたりと横並びだけれども、実際はそうでもないという話は随分聞こえます。時間がないので、きょうは証券局に来ていただいていると思いますので、その辺のことをちょっと伺いたいと思います。
  12. 藤原隆

    藤原説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、日本株式市場には全国の証券取引所のほかに店頭市場というのが存在しておりまして、新規産業を含めた企業にとりましての長期・安定的な資金調達の場、あるいは投資家の有効な投資機会の場として活用しておられるところでございます。  今先生指摘店頭公開基準、これが実質基準があって、表面的な水準よりも高いところにあるのではないかというふうな御指摘でございますが、私ども、そういうことは決してございませんで、あるいは大蔵省、あるいは証券業協会がそのような指導をしていることはございません。
  13. 甘利明

    甘利委員 よく言われる話ですが、アメリカ店頭公開市場、一番有名なのがNASDAQでありますけれども、ここでは日本店頭公開市場とざま変わりですね。日本店頭公開市場というのはほとんど消費者金融の方々の上場の場所程度で、次代を担う産業がなかなか育っていない。NASDAQではインテルとかマイクロソフトとか、もう世界の市場を席巻しているぐらい、しかもこれからを担う産業が陸続と生まれてきているのですね。  日本のベンチャーの人に言わせると、何にも日本で手伝ってもらうことはありません、アメリカ並みの店頭公開、つまり一般の資金を集める場所をハードルを低く設定してもらえれば後は何の手伝いも要らない、何でだって勝負できますよという声を物すごく聞くのですね。日本は金が余ってある。政府にあるわけじゃありませんが、ある。しかも技術の芽やアイデアの芽がある。これが結びつかないというところに一番の問題があるのですね。  それで、証券局の方は、我々はハードルを高く設定しておりませんと。確かに書面で見る限りはほとんど変わらないですよ。しかし、実態はそうじゃないのですから。我々は高くしていませんから、我々の所管ではありません、関係ありません。しかし、実態はそうじゃないのですから。  じゃどこに問題があるか、これを探るという努力は必要だと思いますよ。何もしないでいいのであるならば私も何にもしません。しかし、技術アイデアやそういうエネルギーを持っている人が日本じゃ勝負したくない、アメリカに行って私は勝負しますと私にたくさんいろいろな人が言ってきています。これを放置しますと完全に日本は、既存の企業空洞化と新しい産業空洞化、全部空洞化になりますから。それは、もう時間が来ましたから答弁は要りませんけれども――何かしゃべりたいですか。ではどうぞ。
  14. 藤原隆

    藤原説明員 店頭市場の公開基準につきましてはNASDAQと同じ基準である、それは先生指摘のとおりでございます。ただ、その上に実質基準があるのじゃないかという話も、先ほど答弁申し上げましたように、それはございません。ただ、現実のところがもうちょっと上のところで公開される、それは事実でございます。  ただ、それはなぜそうなりますかと申しますと、私どもあるいは協会が定めております基準と申しますのは、それ以下のところでやってはいかぬ、それ以上のところでそれぞれの証券会社の引き受け政策あるいはリスクを勘案し、あるいは経営判断で御審査いただいて、それで公開をしていただくということでございますので、それ以下ではいかぬけれども、その上では個々の証券会社の御判断ということでございまして、基準をクリアしておるから必ずそれを公開しなきゃいかぬというふうに私どもが指導することはできないということでございます。
  15. 甘利明

    甘利委員 技術のシーズやアイデアの芽を育てていく施策はこっちからずっと橋を延ばしていくのですね。向こうの陸に橋をかけて、そして民間資金を集めるという作業になるのですけれども、そちら側からも多少橋を延ばさないと、フランスからイギリスにかけるのにフランス側の努力だけで、おれたちはこうやって見ているというのはどうかなと思いますから、少し考えていただきたいと思います。  時間ですのでやめます。
  16. 白川勝彦

    白川委員長 この際、尾身幸次君から関連質疑の申し出があります。これを許します。尾身幸次君。
  17. 尾身幸次

    ○尾身委員 通産大臣に中小企業問題について一、二質問をさせていただきます。  現在、景気は多少明るさが広がっているというふうに言われておりますけれども、しかし中小企業を取り巻く景気の環境は極めて厳しいものがあるというふうに考えております。為替相場もまた最高値を更新したというようなことでございまして、大臣の御努力もありまして日米包括協議は大枠において好結果を得たために、一時は為替は安定をいたしたと見ておりましたけれども、大変に深刻な状況だというふうに考えております。  特に中小企業は、在庫率指数で見ましてもまだまだ非常に高い水準でございますし、設備投資につきましても、大企業は対前年比でマイナス三・八%というふうにやや改善の兆しか見られておりますが、中小企業は依然として対前年比でマイナス一四・八%というふうなことで非常に厳しい状況にあるというふうに考えております。  そういう中で、中小企業の予算でございますが、通産省分と他省分を合わせました中小企業対策費、昭和五十七年のピーク時には二千五百億円ございました。それがシーリング制度のもとで徐々に下ってまいりまして、実は自民党政権時代の平成五年までは私ども数年間にわたって約千九百五十億程度の水準で横ばいを維持していたわけでございます。ところが、昨年の細川政権のときに、商工会、商工会議所の経営指導員の地方財源の一般財源化という問題がございまして、それとも関連をいたしますが、実はこの数字が昨年一挙に七十五億円減少いたしまして、平成六年度の通産省、他省合わせました中小企業対策費が千八百七十六億円というふうな非常に低い水準にまで下がってしまいました。  この十年間で二千五百億円から千八百七十六億円にまで中小企業対策費が下がってきたということは政治的に見て大変に問題がある、特に昨年の大幅減額は問題があるというふうに私は思っておりまして、これから中小企業対策予算については一層充実する必要がどうしてもあるというふうに考えているわけであります。  そして、来年の予算につきましては、大蔵省、労働省等の予算を除いて、通産省だけでとってみますと、いわゆる中小企業対策費のほかに石油特会とか産投会計等の特別会計も含めまして千四百三十一億円の要求をしているわけでございます。これは昨年の千四百二十億円から比べまして十一億円の増額要求をトータルとしてはしているわけでございますが、来年については全体の予算はシーリングが厳しい中でもふえると思いますので、通産省関係の中小企業関係の予算がいろいろなものを取りまぜまして減少することのないように、ぜひ大臣の政治力でひとつ獲得について御努力を願いたいと思う次第でございます。この点について大臣の御見解をまずお伺いいたします。
  18. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員がよく御承知のように、今も御指摘がありましたが、過去の生産回復局面と比較いたしまして中小企業生産回復が非常におくれている、あるいは設備投資景気回復期には通常、中小企業の方が先行するものが、その気配が全く見られない等、事態は非常に深刻なものと私どもとらえております。  そうした中で、今委員から御指摘をいただきましたように、このマイナスシーリングの厳しい中でどうしてもやはり減額要求という結果を招いたわけでありますが、それでも前政権時代に比べればその幅は圧縮することは一応できました。そして、他省庁所管分を合わせますと総額二千四百七十億円、九・九%の伸びで要求をいたしております。ただ、この状況の中で、非常に厳しい予算編成となることが予想できますだけに、全力を尽くしますが、どうぞ党派を超えて、当委員会所属各位の御協力を心からお願いを申し上げます。
  19. 尾身幸次

    ○尾身委員 ぜひ予算につきましては大臣の御努力、私ども全力で頑張りますが、お願いをする次第でございます。  次に、設備投資減税についてでありますが、中小企業を取り巻く景気環境は極めて厳しい中でありますが、設備投資促進のための税制が幾つかございます。従来の景気対策、二回の景気対策におきまして、いろいろな税制の上に追加をいたしまして設備投資促進をいたしました。  一つは、いわゆるメカトロ税制と言っております中小企業技術体化投資促進税制でございますし、二つ目は、いわゆるエネ革税制と言われておりますエネルギー需給構造改革投資促進税制であります。それから三つ目が、いわゆるハイテク税制と言われております基盤技術研究開発促進税制でございまして、これらにつきましては、従来から、投資をした場合、ある種の設備について七%の税額控除あるいは三〇%の特別償却という制度があったわけでありますが、景気対策上の観点から中小企業を含めまして設備の追加を、これは告示でありますが、告示でいたしまして、景気対策上、特に設備投資を促進するという施策をとってきたわけでございます。この制度が実は十二月の末で切れるということになっております。これが大枠に分けて、設備追加の分であります。  それから、さらに二種類、法律に基づいて景気対策上の投資促進をする税制がございまして、一つは高度省力化投資促進税制ということでございまして、事業の省力化、合理化に資する設備について、七%、三〇%の、税額控除あるいは特別償却を認めるというものでございます。これについては、特に中小企業は二割アップの八・四及び三六%という対応がされているわけでございます。それから、もう一つは中小企業機械投資促進税制でございまして、これは中小企業者が取得する一定規模以上のすべての機械装置あるいは器具備品等につきまして、七%の税額控除あるいは三〇%の特別償却を認めるものであります。これらが、実は全部十二月末に期限が切れるということになっております。  そこで、後の二つについては法律的な手当てが必要なのでありますが、今通産省も、それから私ども党におきましても、四月からの新年度の租税特別措置の中ではいろいろな税制対応を考えているわけでありますけれども、しかし、今法律的あるいは告示の上で何らかの手当てをいたしませんと、一月から三月までは設備投資促進のための税制がなくなってしまうということになるわけでございまして、景気がやや上向いている、そういう中で、この景気対策の手を緩めることはここで景気の足を引っ張ることになる、そういう、この三カ月の間に設備投資をしたいと思う中小企業はこのインセンティブが受けられないということになりますと、私は政治的には大変な問題だと思っております。  与党三党協議の中でもこの問題を今検討中でございますが、とにかく、この一月一二月までにつきましては法律的な手当てをしていかないと、特に後ろの二つにつきましては法的な手当てをしていかないといけないという状況にございます。  そういうわけで、ぜひ大蔵当局の、事務当局の方は非常に、もう景気対策はこれでいいんだ、十二月までで終わっていいんだというふうなことも言っているというふうに仄聞をしておりますけれども、これは大所高所的な判断で、高度の政治判断で、ぜひこの制度は1一月一二月だけは続けていただいて、そして十二月までの間に、四月からの税制問題の中でその後の対策をどうするかということをじっくりと検討して結論を出すということにしていただきたいと思います。この点につきまして大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  20. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、今の委員の御指摘を極めて大切なものとして受けとめながら、諸般の情勢を検討し、これからの対応についての判断をしていきたいと冒頭申し上げたいと思います。  先ほど来申し上げてまいりましたように、現在の状況というものが、従来の私どもが体験いたしてまいりました景気回復局面とは異なる様相を呈している部分がございます。そうして、この背景としては円高などに起因する構造的な要因というものが指摘されておりますだけに、中小企業の構造変化への対応というものをどう支援していくかという視点を今後欠くことができません。  こうした観点から、これからどういう措置をとっていくべきか。これは今後の経済状況も注視しながら、また現在の投資減税というものの効果を十分見きわめるといったことをまずきちんとしておかなければならない。そうした考え方で事務方に対しても十分な検討を進めるように指示をいたしているところであります。  そうした時期でありますだけに、今の委員の御指摘は、私は大変大切な視点として受けとめさせていただきたいと思います。
  21. 尾身幸次

    ○尾身委員 大臣、この点についての大臣のぜひ高度の政治判断に基づく御努力をお願いを申し上げまして、質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  22. 白川勝彦

    白川委員長 次に、和田貞夫君。     〔委員長退席、大畠委員長代理着席〕
  23. 和田貞夫

    ○和田委員 昨年の十二月十七日に細川内閣の手によりましてウルグアイ・ラウンドの農業合意がなされたわけでございまして、これに伴いまして今、政府・与党としては、国内農業対策について政府・与党の最終調整の段階に入っておるわけでございますが、このことは国際公約のことでもございますので、この際与党、野党を問わず、できるだけ早い時期にこの国会で合意、批准を行うようにお互いに努力をすべきではなかろうか、このように思うわけでございます。  と申し上げますのは、来月インドネシアのジャカルタでAPECの非公式首脳会議及び閣僚会議が開催される予定でございます。もちろん通産大臣もこれに参加されるわけでございますが、大臣は、去る十九日の当商工常任委員会で発言された中で、これらの会議を通じて貿易投資の一層の拡大に向け積極的に対応してまいる所存であると述べられております。開催国のスハルト大統領も貿易投資の自由化を提案して、インドネシアが貿易投資の自由化にイニシアチブをとろうと積極的であるわけでございます。  ところが、インドネシアは、日本が必ずしもこのことに前向きでないとの認識に立っておるというように聞いておるわけであります。また、APECの各国も、アジアのリーダーである先進国の日本が本件に後ろ向きなことに非常に驚いておるというようにも聞いておるわけでございます。そのようなことになると全く日本が国際的に孤立化してしまうというおそれがあるわけでございますので、早急に政府内部におきましても、あるいは国会で与野党が合意をして、積極的にスハルト大統領の提案を支持して、アジアのリーダー国としての恥じないような態度をぜひともとってきていただきたいというようにこの機会にお願いしておきたい、このように思っておるところでございます。  そこで、あすから大阪におきましてAPECの中小企業担当大臣の会合が、大臣が議長になられて開催されるわけでございます。APECの各国の方々は、日本の中小企業日本の今日的な経済発展に果たしてまいった役割というものを高く評価をいたしております。そして、日本政府の中小企業に対するところの政策、あるいは日本の中小企業の経営のやり方について積極的に学びたい、こういうようにしておるわけであります。  そこで、通産省や中小企業庁が今日までとってこられた中小企業に対するところの対策、政策、このままでいいのかどうか。このAPECの会議に出席された大臣がAPECの参加国の方々に対して、どういうような政策がよかった、どういうような対策のやり方がいいというようなお話をされるのか、この機会にひとつお聞かせ願いたいと思います。
  24. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず第一点に御指摘のございましたAPECの非公式首脳会合におけるインドネシアのイニシアチブに対して政府として積極的な対応を早く決すべきであるという御指摘は、私からも、総理初め関係閣僚にきちんと伝達をいたしたいと考えております。  私は実は、四極通商代表会議の席でも先般のAEM―MITIの席上でも、こうした提案が、アメリカでありますとかEUから出てきたのではない、むしろこのアジアの中で、しかもそれぞれ自分の国に問題を抱えている国の中から出てきたということを注目し、高く評価したいということを申してまいりました。それぞれ自分の国に問題を抱えておりますだけに、この文章の表現その他につきましては、各国いろいろな論議はあろうかと思います。しかし、今申し上げましたような姿勢で私自身終始してまいりましたし、明日からの中小企業大臣会合におきましても同じような考え方で臨みたい、そのように考えております。  そこで、今回の中小企業大臣会合の目的と申しますのは、やはり経済成長の重要な担い手である中小企業というものが、それぞれの国において直面する問題の質、量ともに違いはございますけれども、いかにこれに取り組んでいくかというその共通認識を深めることができれば、まず一つの目的を達すると考えております。  それだけに、日本の中小企業施策というものにつきまして、従来からの経験を織りまぜながら、今回は基本的な考え方を申し述べてまいることになろうと存じます。また、その間におきまして、参加される各国からは、それぞれの国の中小企業政策の中に含まれる問題点、あるいはその中から日本に対してどのような支援を求めたいかといった御意見も出てくると思います。こうしたものは率直に私どもは受けとめてまいりたいと思います。  ただ、先刻来、既に本委員会で御論議をいただいておりますような現在の例えは円高影響による空洞化に対する懸念、これに対する今後の対応といったものまで踏み込んだ論議には恐らくならないであろう。むしろ、各国は自国の問題の中で、例えば日本あるいはその他の国々にどういう助言が受けられるか、過去の経験に対するノウハウを提供してもらえるか、そうした視点により関心が高いと現時点では思われまして、こうした状況を私としては想定し、対応してまいりたいと考えております。
  25. 和田貞夫

    ○和田委員 まさに開催地の大阪というところは中小企業のメッカでございまして、大阪府下の事業所数の九九・四%が中小企業者である。全国平均よりも〇・三%高い。まさに中小企業の町である。この議題になろうとしておる製造業につきましても、従業員が二十九人以下の小企業が九四・二%、三十人から二百九十九人までの中企業が五・五%、三百人以上の大企業が〇・三%、極めて少ないわけでございます。せっかくの機会でございますので、各国の皆さん方に大阪の中小企業の実態というものもぜひとも見聞を広める機会をつくってもらいたいな、こういうように思っておるところでございます。  そこで、アメリカのクレアモント大学の教授であり経済学者として有名なピーター・ドラッカー氏が、十月十日の日経新聞でこのように言っておられるわけであります。  世界経済のトレンドの一つを次のように言っております。「ハイテクの分野では米国が世界のリーダーになったこと。日本は高度製造技術」、いわゆる「ハイエンジニアリングの段階であり、ハイテク段階には至っていない。米国は、特に情報分野で支配力を持つ。コンピューターにばかり注目している日本は、この分野で十年遅れだ。」こういうように指摘しておる。  日本のハイテクの将来について、以下のように話をしておるわけです。「日本はこれまで、ハイエンジニアリングで圧倒的な優位にあった。だが、いまは、どこの国でも努力すれば同様にやれる。」「日本産業組織はハイテクにはむかない。ハイテクは、総じて小規模の企業から生まれ、大企業からは生まれにくいからだ。」というように言っておる。  そして、二十年先の日本産業経済の構造について、「将来は、中堅企業の時代になる。日本は、先進国のなかで例外的に、大企業支配の経済になっている。米国では大企業生産の二〇%、ドイツでも三〇%を支配するだけだが、日本は六〇%」と極めて高い。「だが、日本でも有能な若い世代が中堅企業に入るようになる。」「これは、米国では三十年前に起こった現象だ。その結果、今日、米国で中堅企業経済の中心になっている。日本もその方向にむかいたした」というように言っているわけです。極めてハイテクの中心が中堅企業、中小企業に向けていくということを予測されているわけです。  そうなってまいりますと、今までの戦後、確かに五十年間の間、中小企業が大企業の下積みになって日本経済を支える大きな役割を果たしてきた。今日の経済の発展に大きく寄与した。それは事実であります。したがって、そのようにしむけてきた中小企業政策、通産省といわず中小企業庁といわず、中小企業政策というのは当を得ておった。  しかし、振り返ってみますと、今までの中小企業政策というのは、中小企業に力づけをさすためにできるだけ金を貸す、資金支援をする、あるいは税金の面で恩恵をこうむらす。いわば金貸しと減税を中心とした中小企業政策であった。それでは、これからの中小企業政策としては古ぼけた中小企業政策になるのじゃないか。  私は、日本の中小企業政策一つ欠けておったのは、お金を貸す、税金を安くするというような、中小企業の経営者のことに頭があった。しかし、忘れておったのは、その中小企業で汗水を垂らして働いておった、中小企業で働く労働者のこと、このことが中小企業政策の中に極めて薄い状況に置かれておったのじゃないかと思うのであります。  先ほど指摘いたしましたように、ドラッカーさんが言っておりますように、これからの中小企業にかける期待を考えましたならば、高学歴化した若い労働者あるいはハイテクを中心とした新しい技術の若い技術者、これを中小企業の方になだれ込んでいかさなくてはならないわけでありますが、それにはやはり、若い労働者が中小企業に対して魅力を感じるようなそういう中小企業に育成していくという、このことを基本に置いた中小企業政策に大転換させる必要がこの機会にあるのじゃないか、こういうように思うわけであります。  そうすると、若い労働者が大企業に行かないで中小企業の方に望んで行く、大企業に行かないで中小企業にはせ参じるためには、大企業と中小企業との間の労働者の待遇の条件格差というのがあるわけです。これは賃金もしかりでありますし、労働時間もしかりであります。しかし、労働時間や賃金については労働組合の力あるいは労働基準法によって是正されていっております。  是正されないのは、二十人、三十人の企業として解決ができない問題がある。それは大きな企業と中小企業との間の、例えば安い家賃の住宅の提供、社宅の提供等が小さな企業では独自の力ではできない。それを含めた福祉の格差をどういうようにしてやるかということが一つであります。  あるいは大きな企業では企業年金というのがある、いわゆる三階建ての年金制度の恩恵をこうむっておる。公務員もしかりである。ところが、三十人、四十人、五十人というような中小企業の労働者はそういう恩恵がない。いわゆる大きな企業と小さな企業との間の年金の格差。  この福祉の格差と年金の格差というのは、行政的に、政治的に解決をしてやらないとその格差の穴埋めというのはできないわけです。それをやり込めるための中小企業政策というものがこの際ぜひとも必要であるのじゃなかろうかというように思うのです。  そういうような政策の転換をやって、APECの中小企業の担当大臣会合に参加するような人たちに、日本はこういうように転換をした、こういうように転換しようとしておるというような新しい中小企業政策というものをお披露目をするという、このことが必要じゃなかろうかというように私は思うわけでございますが、それらの考え方について大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  26. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員が労働者という言葉を使われた部分を私はちょっと職人という言葉に置きかえて私の考え方を申し上げてみたいと思います。  私は、徳川時代から続いてまいりました日本の手工業の技術の高さというものは、明治以降の日本産業というものを非常に大きく下支えしてまいったと思っております。そして、その状況は第二次世界大戦後の日本においても私は変化しなかったと思っております。言いかえるならば、本当に、すそ野における中小零細な業者の方々のところにある優秀な職人の技術というものは、例えば金型をつくり、あるいは何をしという部分で大企業の設備そのものを支えてきた部分があった、そしてそれが私は今日の日本を築いてきたと考えております。  今我が国として非常に深刻なのは、一方では、高学歴化の中で委員が御指摘になりましたような非常に安定した大きな企業を選ぶ風潮が若い方々の中にある、しかし一方では、その高学歴化社会というものに反発をし、いわゆるフリーターでありますとかいろいろな形で社会に出ていこうとする若い人々がある、その部分の間を埋める施策がございません。  先日、私はたまたま経済同友会の皆さんに対してお話をするときに、私は、将来ともにそれぞれの分野において雇用構造としての終身雇用制というものは基本部分においてはこれからも続くであろうと思う、しかしむしろ今後は人材派遣業というものが占めるウエートというものが非常に高くなるのではないだろうかということを申し上げてまいりました。それぞれの専門職としての研修を受けたいわば職人の集団、これが例えば人材派遣業の部分にあり、必要に応じてそれぞれの分野に動いていく、こうした雇用形態も私は将来において想定しておくべき一つの方向であろうと考えております。  そうした中におきまして、そこで出てくる問題が、委員の御指摘になりました大企業と中小あるいは零細企業との福利厚生面における開き、これをどう埋めていくかという施策部分でありましょう。  同時に、中小零細企業が新分野に展開しようとしたときの資金調達をいかにして円滑に行わせしめるか。私は、それは政策金融が一面の役割は担うべきであると思いますけれども政策金融万能ではないと考えております。その点では、先ほど甘利委員から御指摘のありました店頭市場等の改正を含めて、民間における資金調達が、立ち上がり時点において、頭脳以外の資産を持っていない中小零細企業の立ち上がりに対していかに民間が資金調達の便を図るか、こうした制度も組み合わせていくことが必要であろうと考えております。  ただ、現時点におきまして、残念ながら、大きく動いております社会の中で、私自身漠然とした方向づけは描きながらもこれを誰として御説明を申し上げるだけの体制を整えておりません。しかし、御指摘の方向を十分に踏まえながら、明年はAPECの議長国が日本であります、その議長国としての役割が果たせるように、非力でありますが努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  27. 和田貞夫

    ○和田委員 これから、この機会に申し上げました中小企業政策の大転換を国内的にぜひとも図るために、大臣が先頭になって、中小企業庁を励ましていただいて、ひとつそのために頑張っていただきたいと思います。あすからの中小企業担当大臣会合の成功のために頑張ってきていただきたいと思いますし、また来月の首脳会議や閣僚会議の成功のためにも頑張ってきていただきたい、このことを申し添えまして私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  28. 大畠章宏

    ○大畠委員長代理 次に、田中甲君。
  29. 田中甲

    ○田中(甲)委員 実は十一時から税制特別委員会の理事会が再開という状況でありまして、私もオブザーバーという立場ではありますが税制改革特別委員会の理事会の方に出席をさせていただいておりましたが、今委員長にお断りをしてこちらに駆けつけた、そんな状況であります。かなり特別委員会の方は紛糾しておりまして、野党側から昨日約束したこともやはり了承できないというような事態に至っております。  さて、登壇させていただきました野党さきがけの田中甲でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  先日、下田会議に出席をさせていただきました。もちろんその中心的な課題というものはアジア・太平洋の経済協力というもの、APECというものがこれから積極的に進められていかなければならないんだということでありましたが、二泊三日の会議の内容の大筋はこんなものでありました。  では、経済協力が必要ならば、今その障害になっているのは何なのか。各国から代表としてオピニオンリーダーが集まって話をされている中、その話がかなり煮詰まったところで、では世界の脅威と言われるものは、特にアジアの中においてどのようなことが考えられるのか。北朝鮮の話も出ました。中国の核実験の話も出てまいりました。そして、その延長線上に、だから日米安全保障条約というものは今後も継続していかなければならないという日本の実態ということが話し合われたわけであります。  そしてその結果、私は大変そこに議論の矛盾を感じたのでありますが、日本はこれからより一層市場開放に努めていかなければならない、なぜならば、それは、日米安全保障条約を継続していく、そのアメリカに対する経済的な見返りということを日本は積極的に行っていくべきではないかという話になっていったわけであります。大変に私は危険を感じまして、そういう話がされていることに対する驚きと、そして私なりの反論というものを申し上げましたが、今感じることは、橋本大臣におかれましては数々の外圧というものを受けながら大変に御苦労されているということを、自分自身肌に感じて帰ってきた次第であります。  一昨日の大臣の所信表明の中で、この我が国景気低迷における構造的要因の解消のために、従来の後手後手に回った政策をその場しのぎの手当てというものを行っていくのではなく、中長期的視野に立った経済構造改革の推進が大切であるということをお話しなさいました。全くそのとおりであると私も多きくうなずきながら確認をさしていただきましたが、その中でも規制緩和の推進は内外からの強い要請を受けている大きな政策課題でありました。大臣は、現閣僚の中でもさまざまな場面で規制緩和の必要性を説かれ、その実行力におかれましても並み並みならぬものを発揮されており、非常に評価すべきものであると認識をさせていただいております。  二十一名という小さな我が政党におきましても、行政改革を初めとした規制緩和の推進については政策の中でも特に力を入れていかなければならない、そう考えておるところであります。  そういう状況の中において、今、平成五年の三月三十一日に発表されているところの我が国政府の許認可件数というものが一万一千四百二件。数字だけで判断することはいささか軽率かと思いますが、その中で通商産業省が所管としている項目というものは千九百八十六件持っているということでございまして、これは他の省庁と対比した場合に最も多いという現状であります。  先ほど申し上げましたとおり、ただ数の面だけで判断することは、エネルギー対策や中小企業対策やあるいは消費者対策という観点を踏まえるならば、もちろん規制されていかなければならない点もございますから、簡単には判断できないこととは思いますが、非常に積極的に規制緩和を推進されようとされている橋本大臣のそのおひざ元においてこのような実態であることに対する批判の声が上がってきた場合に、正直申し上げまして、その点を指摘された場合、苦慮する場合がございます。  そこで、今後、橋本通商産業大臣は、通産省がどのようなスタンスをもって計画的に規制緩和を実施していくお考えをお持ちであるか、大臣の御所見を承りたいと思います。
  30. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員が御指摘されましたように、通産省の現在所管しております許認可件数は千九百八十六件。そして、政府としては一割を減らすという目標を立ててまいりました。そういう計算からいきますならば、通産省の場合は百九十八件減らさなければならないということになります。  ただ、現在私どもが作業しております状況を見込みで申し上げて恐縮でありますけれども、平成六年三月末で、恐らく二百二十件前後まで見直しは進められているものと思っておりまして、私どもは別にその一割という数にこだわるつもりはありません。むしろ積極的にできる限り、新しい市場を創出するためにも、あるいは消費者の選択の幅を広げていくことによって経済社会を活性化していくためにも、さらには内外価格差を是正していくためにも、国際社会との調和、透明性を図っていくためにも大切なことだと考えておりまして、こうした方針をとっております。  ただ問題は、例えば製造物責任法が施行されます段階で、政府の抱えております規制というものは当然のことながら自己認証に移り変わってまいります。通産省の抱える分野というのは非常に幅の広いものがあり、目下準備を進めておるわけでありますが、こうしたものは実は許認可の件数としてはごくわずかなものでありまして、実質的に政府認証から自己認証に変わるメリットというものは非常に大きいわけでありますが、許認可件数としてはごくわずかなものにしかなりません。  どうぞ、それぞれの規制の持つ中身に着目して、今後も御協力を賜りたい、我々としてはできるだけ積極的に取り組んでいきたい、そのように考えております。
  31. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ぜひとも積極的に、もちろん中身も私たち十二分に認識する中で判断をさせていただく、この姿勢を持たなければならないと改めて私たちもそのように受けとめる中、どうぞ積極的に推進をしていただきたいと思います。  少し前の話になります、七月でありますが、大臣は、規制緩和の推進に当たり公正取引委員会の強化ということを発言をなされました。規制緩和を円滑に進めるために公正取引委員会の強化は不可欠なものだと考えられますが、独禁法の拡大強化について、ある面では煙たく思われる役所の所管の皆さん方もいらっしゃるかもしれませんし、あるいは内閣でもさまざまな議論があるのではなかろうかと推察をいたすところであります。  どうか、大臣におかれましては、リーダーシップをさらに発揮され、引き続き強力にその推進に当たっていただきたいと考えますが、大臣のこの点に関しましてのお考え、御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  32. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、単独政権の時代、野党の時代、そして現在の連立政権の時代を通じまして、公正取引委員会の機能強化ということを言い続けてまいりました。通産省という役所の性格からいけば、今委員が御指摘になりましたように、公正取引委員会とぶつかる部分も当然あろうかと思います。しかし、その中におきまして今非常に円滑な関係を維持しておりますことを、私は当省の職員を代表する立場として誇りといたしております。  そこで、私は、公正取引委員会をせめて機構図の点でも少なくとも人事院と並ぶくらいの機構図は持ってもらいたい、そして地方における要員数ももう少しやはり人数を持ってもらいたいと考えてまいりました。私は、規制緩和をせっかく進めまして、市場メカニズムが有効に働いてくれることをぜひ願っておりますけれども、そのためには独占禁止法の厳格な、厳正な運用というものは欠くことはできません。それだけに機能強化をこれからも主張し、できる限りの、私の立場からは手の出せない部分がありますけれども、できる限りの強化に協力をしていきたいと考えております。  どうぞ当委員会におかれましても、そうした視点からの御声援を公取にお与えいただきますように私からもお願いを申し上げたいと思います。
  33. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ただいま大臣から、いわゆる公正取引委員会に対する援護射撃と申しますか、私たち委員も一人一人そのような意向に沿うように努力をしてまいりたいと思いますが、公正取引委員会委員長から、今後どのようにこの点に取り組んでいかれるか、お話を例えれば幸いであります。
  34. 小粥正巳

    ○小粥政府委員 ただいま橋本通産大臣から、私どもにとりましても大変心強い御答弁をいただきました。  委員お尋ねのように、規制緩和が進展をしてまいりますと、その規制緩和後の経済、市場におきましては、当然のことながら独占禁止法が事業者の公正かつ自由な競争を促進するためのいわば普遍的、基本的なルールになるわけでございます。また言葉をかえて申しますと、規制緩和が進むほど独占禁止法の土俵が広がる、そういう関係にあるわけでございます。したがいまして、ただいまのお話にもございましたように、これまで以上に独占禁止法の厳正な運用が必要になるわけでありまして、私ども公正取引委員会が果たさなければいけない役割、これも大きくなってまいると考えております。  こういう中で、公正取引委員会の定員、機構あるいは予算につきまして、御案内のように、政府におきまして特に連年行財政改革が推進されております。このような面では極めて厳しい状況にございますけれども、幸い、このような私どもの役割の拡充につきまして関係各方面の御理解をいただきまして、毎年、違反行為に対処いたします審査部門を中心に着実にその整備拡充が図られてきている、これは私どもありがたいことだと考えております。  しかし、私自身の考えを申し上げますと、増強が着実に図られているわけでございますけれども、しかし、規制緩和が今後政府の基本的な課題として強力に推進されていかなければいけないと思います。そういたしますと、私どもの役割の一層の増大、ある意味でそのテンポも速まってまいろうと思います。  それからまた、最近の違反行為に対する私どもの取り組みの実感から考えましても、実は違反行為の摘発あるいはそれに対する私どもの、少なくとも行政処分としての処理につきましても年々その困難さ、業務の困難さが増大をしております。その意味でも私どもの、ただいま通産大臣の御答弁にもございましたけれども、いろいろな意味でこの公正取引委員会の体制強化が一層必要になってくると思います。  したがいまして、定員、機構、予算につきましては、私どもももちろん政府の一部門でございますから、いろいろな意味で厳しい制約が課されていることは事実でございます。しかし、その中で御理解をいただきながら、さらに着実な増強を当面、来年度予算を含めまして図っていく。従来どおり着実な増強を図っていくとともに、一方ではさまざまな面で当委員会の機能、これはあるいは権限も含めまして抜本的に拡充強化をすることが必要になる、そういうことも展望いたしまして、いろいろ内部でも勉強してきておりますし、また中長期的な検討課題として、これはまた、このような問題は私ども公正取引委員会限りで処理できる問題では当然ございません。政府全体として、今後の検討課題として、とりわけ各方面の御理解をいただかなければいけないと考えております。  当委員会各位におかれましても、どうぞこのような状況をさらに御理解いただきまして、御支援をいただければ幸いでございます。
  35. 田中甲

    ○田中(甲)委員 もう時間もないようですから簡潔にまとめさせていただきます。本当に、自民党を離党して立候補したこと、この時間の少なさを感ずるときに、これ以上悔やむときはありません。ありがとうございました。  商工委員会でもぜひとも応援をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞ公正取引委員会、さまざまな面で御努力をいただきたいと思っております。  経済企画庁長官には、公共投資の基本計画、これが新たに六百三十兆円が出されました。この財源の面で実は御質問させていただきたかったのですが、時間の都合で次回に回したいと思います。  以上で終わります。
  36. 大畠章宏

    ○大畠委員長代理 次に、吉田治君。
  37. 吉田治

    ○吉田(治)委員 私、改革を代表いたしまして、まず日米包括経済協議について、これを中心に質問をさせていただきたいと思います。  今回のこの協議の結果は、まず、政府はどういうふうに評価を下していらっしゃるのかをお答えください。
  38. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 政府自身が評価と申しますのは多少おこがましいかもしれませんが、私どもといたしましては、政府調達、板ガラス、保険及び米国の輸出振興競争力強化につきましては協議が基本的に妥結したことを歓迎をいたしております。同時に、自動車・同部品を初めとしまして、すべての分野において数値目標を求めたアメリカ側の要求を排除すると同時に、包括経済協議対象というものが政府の手の届く範囲内の事項に限るという原則を貫き通すことができましたことも、ほっといたしております。  これは、やはり現内閣として努力をしてまいりましたものが大きな成果として実ったと考えておりますが、他方、自動車及び自動車部品分野につきまして、補修部品についてアメリカ側が三〇一条に基づいた調査開始決定したことを非常に残念に思っております。そしてこれが、もし一方的措置がとられるというような事態になりました場合には、我が国はあらゆる措置をとる権利を留保している、そうした姿勢で今後も臨んでまいりたいと思います。  また、先般、紙及び林産物につきまして、アメリカが将来スーパー三〇一条による優先外国慣行として特定する可能性の高い慣行としてこれを取り上げましたことに対しましては、それぞれの分野において円満に事務的な会合が進んでおります中でありましただけに、大変私は意外でありましたし、遺憾でありました。本日、ちょうど紙についての交渉がワシントンで行われることになっておりまして、その冒頭、どういう意図でこうした措置をとったのかを確認するところから話し合いを始めたい、そのような指示をいたしております。
  39. 吉田治

    ○吉田(治)委員 この問題においてはやはり為替というのが非常に大きな影響があったと思います。今の現状の円高というものが、底を打ったと言われております景気回復を本当におくらせておりますし、また、この交渉の過程におきましても、もしこれが決裂しましたら一斉に為替市場円高に走るんじゃないか、非常に為替相場に影響を与えると言われておりましたけれども、もしもそうなったときにはどの程度の影響があったかということをお願いします。
  40. 藤本進

    ○藤本説明員 お答えさせていただきます。  為替相場につきましては、経済のファンダメンタルズや市場の思惑等、いろいろな要素を反映いたしました市場の需給によって決定されるものでございますので、特定の要因、特定の事実があった場合、なかった場合、またそれぞれの場合におきましてどの程度の影響が為替にあるのか、その度合い、こういうものをはかるのは非常に困難でございまして、これにつきましてのコメントは控えさせていただきたいと存じます。  ただ、日米包括協議におきましては、保険、政府調達が最終的な決着を見たこと、そして板ガラスも原則合意に至りましたこと、アメリカ通商法三〇一条に基づく特定につきましても限定的なものにとどまったというよい結果が得られましたところでございまして、市場への影響についてはコメントを控えたいと存じますけれども、日米経済関係全般には好影響をもたらしているというぐあいに考えられます。  なお、市場関係者によりますと、包括協議の結果を受けた十月初めの為替市場におきましてはこれを好感いたしましてドル買いが進みまして、十月七日のニューヨーク市場終わり値では百円六十銭までドルが強含んだところでございます。
  41. 吉田治

    ○吉田(治)委員 市場のことだということなんですけれども、やはりアメリカ側からしましたらへとりあえずという意味での決裂回避というのは、アメリカ側にも為替がちょっとおかしくなったら困るなという不安があって、日本の粘り強い交渉というよりも、アメリカ側が、とにかく景気がここまで回復したのだから、それがまた為替によって、交渉決裂で為替が不安になって影響を及ぼされるのはいかがかというふうな非常な懸念があったと聞いておりますが、政府はこれについてどういうふうにお考えでしょうか。
  42. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は実は、ナポリ・サミットの際のベンツェン財務長官との論議の際に、一体今の為替水準というものを、例えば円高ととらえるのかドル安ととらえるのかという点での随分長い議論をいたしました。マルクに対しても振れているドル、これは必ずしも円高とだけとらえるのが正確だとは言えないのではなかろうか、それが私の一つの論点でありました。  同時に、仮に円高を進めることによって日本圧力をかける意図がアメリカ側にあるとするならば、それは必ずしもアメリカにとっても望ましい結果を生まないのではなかろうかという指摘もいたしました。なぜなら、ドル安が進めば進むほど米国債の魅力が減少をいたします。当然のことながら投資家も離れていくでありましょう。そうした事態になれば、米国債の価値を維持するためには高金利に振らざるを得ないという状態が現出することも目に見えております。  こうした懸念は、アメリカ側に対して、そのナポリ・サミットにおけるベンツェンさんとの会談だけではなく、九月初旬にワシントンを訪れましたときにもそれぞれの方々に同様のことを申し上げてまいりました。アメリカ側がどこまでそうしたことをお考えになったのか、これは我々として知るべきこともありませんが、包括協議というものが関係者努力成果として、市場に一つの安心感を与えたということは申し上げてよろしいかと思います。
  43. 吉田治

    ○吉田(治)委員 今大臣が言われましたように、結果として部分制裁というふうなものにとどまったということは、これがもしも決裂して、今大臣が言われたように経済制裁ですとか円高の進行ですとか、またアメリカ経済等々のことを考えて、国内経済の崩壊という最悪のコースを回避できたという意味では、非常にというか、一応の評価ということは下せると思うのですけれども、どうでしょう、現実として、先ほど通貨の方は十月七日に百円を回復したと言いましたが、今また現状九十円台、二けた台の円高圧力になっている。それによってたくさんの日本国内輸出依存型産業でありますとか中小のメーカーが苦しんでいるというのは、これはやはり一部での、ちゃんとした一面での現状ではないでしょうか。  政府は、これでも日米協議が成功したとあえて言えるのか。また、この異常な円高というものを緩和するには、やはりこの日本の巨額な貿易黒字というものを減らす自主努力というものが必要だと思うのですけれども、これから先の具体策というものは何かあるのか、お願いします。
  44. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 そうした点も考慮の中にありまして、公共投資基本計画の見直しか今回総理のイニシアチブによって決定をされたと私は考えております。  現在の四百三十兆円の公共投資基本計画は、私自身が大蔵大臣として策定をした責任者でありますけれども、当時想定をいたしました以上にその後の不況の中でこれが前倒しをされてまいってきたこと、さらに情報通信等、あるいは研究基盤の整備等、新たな公共投資の必要なものを考え、将来を見た時点において、今回の六百三十兆円の新たな公共投資基本計画への方向づけというものは非常に正しいものであったと私は思っております。  そして、これはISバランス論に立ちましても、今後これに誘発されるであろう民間設備投資等に対する期待とともに、今後の経常収支黒字幅の縮小に意味のある貢献をしてくれるものと考えております。
  45. 吉田治

    ○吉田(治)委員 公共投資の件はわかるのですけれども、具体策というのは今のところはそれしかないということですか。
  46. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 為替の水準につきまして私どもが言及することはいかがかと思います。しかし、これが日本経済のファンダメンタルズを逸脱したものであるという御指摘は、私も決して異論を唱えるものではありません。通貨当局の市場に対する御努力を私としては期待をいたしております。
  47. 吉田治

    ○吉田(治)委員 もう一度質問をし直したいと思うのですけれども貿易黒字を減らすための具体策、何か目玉という場合に、では今大臣が言われているように、公共投資、前回四百三十兆円、今度は六百三十兆円、それをまく、マクロ的にそれをすればいいんだ、また為替の方もいろいろしていきたい、この二点ということで受けとめてよろしいでしょうか。
  48. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほど経常収支黒字についてお話しになりましたので、私はそういう御答弁を申し上げました。貿易収支のと言いかえられますならば、改めて貿易局長から御答弁を申し上げます。
  49. 中川勝弘

    ○中川(勝)政府委員 お尋ねの貿易黒字の縮小でございますが、基本的にはただいま大臣からお話ございましたように、内需を拡大するために公共投資を初めとした社会資本の拡充強化を図っていく、あるいは内需の回復景気回復が大事なわけでございますが、貿易収支の黒字を減らしていくためには輸入の拡大も大変大事でございまして、私ども、製品輸入促進税制、あるいは開銀、輸銀等の輸入関係の融資、また輸入のインフラ整備を行いますために、FAZと言っておりますが、フォーリン・アクセス・ゾーン、輸入促進のための基地を全国的に展開をしていくということで、私ども通産省としても支援をいたしております。  また、ジェトロの研修あるいはセミナー、また専門家の派遣等による諸外国から日本への輸出商品の発掘等々、いろいろな輸入拡大のための事業を行ってきているところでございます。
  50. 吉田治

    ○吉田(治)委員 どうも勘違いがあったようで、私多分、貿易黒字の削減ということを大臣にお聞きしたと思うのですけれども、それが経常黒字にちょっと勘違いされたと思います。  それでしたら、今貿易局長の方からジェトロのお話が出ましたけれども、現在のジェトロの人員、規模並びに予算等をお聞かせいただきたいと思います。
  51. 中川勝弘

    ○中川(勝)政府委員 ちょっと手元に正確な数字がございませんので、正確にはまた後でお話し申し上げますが、ジェトロは当初輸出振興のために設立をされました。一九七〇年ぐらいまで御承知のように貿易が赤字でございましたから、その間は輸出振興のための機関でございました。八〇年以降からは輸入振興機関ということになっておりまして、ここ十四、五年ばかり輸入の振興のための機関として働いてきております。  たしか定員は、ちょっと確かな数字がございませんが、海外要員も入れまして六百人か七百人ぐらいだったと思います。  予算は、一般会計予算から出資をいただいておりまして、これも、二百五十億程度だったと記憶しておりますが、正確な数字、もし間違えておりましたら後で御報告をしたいと思います。
  52. 吉田治

    ○吉田(治)委員 定員が六百から七百、予算が二百五十億の中で、これは場合分けは難しいと思うのですけれどもアメリカからの輸入に関して携わっているのは大体どれぐらい、パーセンテージでも結構です、わかる範囲で教えてください。
  53. 中川勝弘

    ○中川(勝)政府委員 数字ございました。失礼いたしました。人員は七百三十七名でございまして、予算は、今年度の予算額二百五十三億円でございます。  それから、輸入振興に携わっているウエートでございますけれども、実は輸出振興はやっておりませんので、ほとんどの事業は輸入振興関係でございます。また、その他に途上国との産業協力等も行っておりますから、恐らく九割以上輸入関係の仕事でございまして、対米、対ヨーロッパ、対米について恐らく海外人員はかなりのウエートを占めていると思いますが、ヨーロッパについても私ども事業を行っておりますし、途上国にも行っておりますので、アメリカだけを中心にしてやっているわけではございません。
  54. 吉田治

    ○吉田(治)委員 それでは、日本はこれだけお金も人もかけて、いわば政府機関ですね。勤めている人は、多分民間の発想というか会社員の発想はないと思います。まあ役所的な発想もあると思うのです。一方、アメリカ側の方の日本に対するこういうふうな輸出促進機構というのですか、そういうふうなものは今どういう現状になっておるのでしょうか。
  55. 中川勝弘

    ○中川(勝)政府委員 諸外国の貿易振興機関は輸出の振興をやっておりまして、したがいまして、日本向けの輸出というのがその業務の一部になっております。  アメリカは、商務省の下に輸出振興の機関がございます。ただ、その規模は日本の私どものジェトロに比べますと大変小そうございます。また、ヨーロッパの方にもそれぞれの国が輸出振興機関を持っておりまして、ジェトロのようなものでございますけれども、実はそういった輸出振興機関とジェトロが協力をしながら日本への輸入の振興にもお手伝いをしているところでございます。
  56. 吉田治

    ○吉田(治)委員 昔、私アメリカの田舎の方の州に住んでおりましたが、そんなところにまでジェトロの方が、専門員の方ですか、何か買う物ないか。こんなところに来ても売る物ないだろうなと思いながらも、お一人来られて二年、三年と住まわれていたことを記憶しております。それだけ日本努力をしている。  今のお話からしますと、アメリカ側努力がやはり足りないのじゃないか。民間企業も、日本企業も今言われていましたように、七〇年代までこぞって輸出だ、頑張った。アメリカ側にはその努力が見えないのじゃないか。それをマクロ、ミクロを含めて政府交渉で何とか答えを出そうというのは、ちょっと私自身承服しかねる部分もありますし、また、アメリカ企業で御承知のとおり成功しているところはたくさんございますよね、コカ・コーラさんを初めとして。  自動車関係自動車自身としましても、ビッグスリーのフォードですとかクライスラーというのは、非常に値段を下げて、日本に合うような仕様にして、そうしますとどんどん売り上げが伸びていく、たくさん売れるようになってきた。私自身も、もしも車を買うのであれば、日本車とアメリカ車、値段を比べて、内容を比べて、車というもののおもしろさを考えた場合にはアメリカ車がいいのかな、買ってみたいなと思うのですけれども、それを地元の後援会に言いますと、そんなことをすると次の選挙に落ちるからやめておけと言われるのが落ちなのですけれども、そういうふうに努力をされているのですが、国自身努力をされていない。  そんな中での日米包括経済協議で、ミクロの話、特に自動車補修用部品での交渉決裂についてちょっとお話をお聞きしたいのですけれども、この分野に関しましてはアメリカ通商法三〇一条の適用決定しまして、ある意味では異例ずくめのぎりぎりまでの大臣折衝の結果のものが決裂だということなのですけれども、その理由はどこにあるのでしょうか。     〔大畠委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御答弁する前に、先ほど勘違いをしておりましたとすれば、これはおわびをいたします。大変申しわけありませんでした。  そこで、その補修部品についてのお話でありますけれども、私は、運輸省技術安全部長以下事務方の諸君は非常に真剣にこの話し合いをまとめるために努力をしてくれた、そう考えております。そして、安全性の確保というものを前提にしながら積極的に規制緩和を検討するという姿で協議に臨んでくれました。ですから、事務レベルにおける話し合いとしては、私は相当程度の進展があったと考えております。  しかし、その専門家レベルにおける検討とは別に、この重要保安部品という制度そのものを全廃というところからアメリカ側議論が組み立てられましたために、日本車検制度廃止につながるような保安部品制度の廃止ということには応じられないという日本側との間で、最終的にその溝が埋められませんでした。  これは多少長くなることをお許しいただいて、一点数字を申し上げたいと思いますが、実は、我が国交通事故の中における整備不良を原因とする交通事故発生率は〇・〇三五%であります。これは警察庁の調査であります。ところが、アメリカの場合、州ごとに制度に違いがありますために平均は出せませんけれどもアメリカの会計検査院のデータによりますと〇・五%から三・五%までの開きでありますが、いずれにいたしましても、日本交通事故の中に占める整備不良を原因とする率に比べて一けた違いの数字であります。それだけに、制度廃止ということから組み立てられた議論には、日本側としてはどうしても応じられない部分がございました。  結果としてアメリカ側は、一九七四年通商法の三〇一条に基づいて日本の補修用自動車部品分野につき不公正貿易慣行という特定を行ったわけでありまして、これは私どもとして承服のできる状況ではありません。現在のところは、調査の開始が決定されただけでありますから具体的な影響は生じておりませんけれども、一方的な措置が講じられました場合には、我が国としてはあらゆる措置をとる権利を留保しているという姿勢で私どもとして今後対応していきたいと考えております。  いずれにいたしましても、アメリカ側からはいろいろな発言マスコミを通じて伝えられておりますけれども、再開を求める正式な要請が私のところにも届いておりませんし、目下は冷却期間を必要とする時期、私としてはそのように判断をいたしております。
  58. 吉田治

    ○吉田(治)委員 次の質問を先に答えられてしまいまして困っておるのですけれども、推移というのはわかったのですが、もしもこの制裁措置が、適用を決めましたけれども、影響という部分、どういうふうなものが考えられるのかということが一点。  それから、今大臣、当分の間の冷却期間と言われておりましたけれども、大体どれくらいをめどにされているのか。新聞紙上によりますと、カンター通商代表は、まあ一週間くらいでいいんじゃないかとか、そういうふうな発言をなさったりしておりますけれども、どうなのでしょうか。そして、これはどのような条件が整った場合に交渉を再開なさるのか。
  59. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 この点につきましては機情局長からの補足説明をお許しいただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、APECの閣僚会議におきましては必ずアメリカ側の通商代表とはお目にかかることになります。そうしたときにどんな反応をアメリカ側が示されるかにもよることでありますが、仮にこれが不公正貿易慣行というとらえ方ではなく、我が国における規制緩和という点から議論が組み立てられるとすれば、我々としては、当然ながらこれは政府のかかわりの範囲内ということで、話し合いはいたさなければなりますまい。しかし、その場合でもやはり安全性という基準については譲れないものがあるということは、私はここでも申し上げておきたいと思います。  影響等につきましては、機情局長から説明をさせます。
  60. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今御質問補修部品、これの三〇一条の発動があって、現在、不公正であるのかどうかという調査が始まったわけでございます。通商法上は一年以内でこの調査を終える、こういうことになっております。したがいまして、この作業自体はアメリカが今向こうの通商法に基づいてやっておることでございますから、そこでどういう認定をするのか、どこの部分を不公正ととらえるのか、それに対して我々はどう反応する、こういうととになっていくのだろうと思いますので、主体がアメリカにあるものでございますから、その規模等について私どもで類推するというのは非常に難しゅうございます。これからのアメリカ側の作業を見守るしかないと思うのでございます。  物事の流れとして、過去の三〇一条を適用したときの例を引きながら、若干流れを申し上げますと、不公正と認定いたしました場合には、その不公正な日本の制度によってアメリカの対日輸出がどれだけ悪影響を受けておるか、そういう計算をアメリカ側でいたします。それをトレードロス、貿易損失と言っておるのですけれども、その額をアメリカ側で算定をいたしまして、それに見合う額の日本からの輸入、その輸入の品物というのは直接補修部品関係するものであってもそうでなくてもいいということに向こうの通商法上なっておりますけれども、それに基づいて当該額と同じ額の影響を与えるような輸入の制限措置をとろう、こういうのがアメリカの基本的な考え方でございまして、そういう計算をして、それで品物を見つけてそれに高関税を課していくというのが従来の三〇一条のアメリカの運用でございました。  いずれも過去の例でございます。これからの問題というのは果たしてどういう認定をするのか。今大臣がお答えしましたように、我々は、それを三〇一条のもとということではなくて、規制緩和ということでどういう形でやっていけるか、これは運輸省が主体になることでございますけれども、そういう広がりの中で考えていきたいと思っております。
  61. 吉田治

    ○吉田(治)委員 この三〇一条をもしも適用された場合に、どういうふうに対応されるのかというのが一点。  それから、日本も今ずっと町を歩きましたら、デパートなどにかかっていますね、「輸入で我が家も国際化」ですとか、そういうふうな標語が。どんどん輸入になってくるということになりますと、今アメリカですとかヨーロッパが抱えて、日本に要求しているようなさまざまな問題がひょっとして起こる可能性もある。  また、ある業界においては事実、発展途上国からの集中豪雨的な輸出と、昔私たちが言われていたようなことをこちらが言うようになってしまったということで、今後日本側から、そういう輸入国になっていった場合の報復措置というのですか、やはり今まで日本海外輸出するときに、やれダンピングをしたとか集中豪雨だ、おまえらは失業を輸出するのかと言われておりましたが、今度は反対に、ひょっとしたら、おまえのところのやり方がダンピングじゃないか、失業を輸出するのかというふうな形で、私たちも、通商という問題においては、やはり報復というふうなものを考えていかなければならない時代が来るのではないかと思うのですけれども、その準備ですとかアイデアですとか、現状等についてお答えいただきたいと思います。
  62. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 従来から例えば繊維産業等におきましては委員が御指摘のような事態が起こっており、二国間の交渉によって処置した場合、あるいは国際ルールにのっとって対応しようとした場合、さまざまなケースがございました。そして、今後におきましても委員が御指摘になるような問題が発生しないという保証がない、その意味では御指摘のとおりであります。  しかし、そういう時期ですからこそ、実は我々は、昨年、農業分野における合意の仕方に問題があったために非常に強い反発はいたしましたけれども、ガット・ウルグアイラフウンド協定というものの本体については、これをまとめていかなければならないという気持ちで当時から臨んでおりました。  今日、WTO協定というものが本日の閣議において決定をされ、今後国会の御審議を待つわけでありますし、これに伴いまして、私どもの所管の中でも、例えば特許法を初めとする七本の法律を一つの法案として御提出を申し上げ、御審議をいただこうとしておるわけでありまして、私たちは、例えばこの包括協議に例示をされますような二国間のミクロの議論というものは、できればやはり国際的な一つの大きな枠組みのルールの中で決していく方向に全体が動いていくことを期待したい、また、そういう方向に日本としても努力をしてまいりたい、率直な感想でございます。
  63. 吉田治

    ○吉田(治)委員 大臣今触れられました繊維の問題、昨年、ことしとMFAの発動を非常に業界並びに労働組合その他から強硬に主張されました。質問の予定はございませんでしたけれども、そのときの発言、皆さんの要望を私どもの調べた結果に言わせると、ヨーロッパあたりだったら、君のところは、日本という国はおかしい国だね、そういうふうなものを持ているのに何で発動しないのか。日本交渉のやり方というのは、何か日本は国際ルールだ、やれ建前だ、自由貿易だという建前は大事にされておりますが、その辺、交渉術という部分においては、ちょっと他国からなめられるという言い方はいかがかと思いますが、変なのというふうな映りがあるのではないかと思っております。  また、新聞報道によりますと、この自動車部品交渉に関しまして、USTRのカンター代表から日本自動車工業会のワシントン事務所に対して、部品の購入実施計画の上積みを厳しく迫る内容の電話が二回もかかっている、こういうふうなことは事実であるのでしょうか。
  64. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私自身が、実はかつて紡績会社に籍を置いた人間として、今までなぜ日本政府はMFAを積極的に発動しないのかという思いはしばしばいたしておりました。これは、委員の御指摘のお気持ちは、私も同様のものを持ったことがございます。  しかし、今繊維のセーフガードにつきましては、五月の十七日に繊維産業審議会の通商問題小委員会で「繊維セーフガード措置の取扱いについての提言」をおまとめいただきましたものを参考としてルールの策定の作業をいたしております。何とかしてできるだけ早く策定を終わりたい、そうしたことを考えて努力をいたしているところでございます。  また、だれが電話をしたとかしなかったとかいう話は、実は交渉のプロセスの中ではありがちの話でありまして、事実であるかないかということはその電話を受けたとされる方の立場のことがありますので、私としてはお答えは控えたいと思っております。
  65. 吉田治

    ○吉田(治)委員 その事実関係のみならず、交渉術全体といたしまして、その事実があったとしたら、アメリカ政府の高官がそんな日本の業界団体に譲歩を迫るというのは異常なことですし、また、日本側の代表というのを無視したことにもなるでしょうし、そもそも、自動車業界自身が自主的に立てた部品の購入計画を今回の交渉の一テーマとしたのはアメリカ側でもありますし、政府はこうしたフライングというふうなものが、まあそれが事実かどうかお答えになられないそうですけれども、あった場合に、交渉中に例えばアメリカ側に何らかのクレームをつけられるといったようなことがあるのか。  また、先ほどの報復措置に関しましても、しつこいようですが、やはり交渉一つの手段として国内的にも整備をしていく必要があるのではないかなと思うのですが、この二点についてお答えください。
  66. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 後段のルール策定を急ぐべきであるという御指摘は、私もそのように思います。できるだけ早く努力をしてまいりたいと思います。  また、日米包括協議のプロセスの中におきまして、さまざまな分野アメリカが明確な数値の目標を設定し、それに対する日本側の妥協を迫るといった場面はございました。そして、民間のそれぞれの産業分野におけるそれぞれの産業界の独自の目標、あるいは自主的な計画というものについて、日本政府がこれを改定させるべきであるとかあるいは改定させるように努力してほしいとかという話というものは、交渉のプロセスでなかったとは申しません。しかし、そういう問題について、政府のかかわりの範囲を超えるものについて拒否をし続けてまいりましたし、その姿勢というものはこれからも変えるつもりはございません。
  67. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ちょっと話がずっと入っていきまして、私もう一つ、ちょっと戻るようですけれども質問したいことがございます。  それは、先ほどの自動車補修用部品の件に関して、アメリカ側から車検制度そのものについて撤廃ですとかあり方というものが来た、それについて三〇一条等々で、大臣はたしか、規制緩和という問題であるならば国内問題だねというふうなお話をされたと思いますが、きょう運輸省の方おいでだと思いますが、この一連の流れについて運輸省としてどういうふうにお考えなのか。  また、これは八万と言われている自動車整備工場、車検工場並びに認証工場がそれぞれあると思うのですけれども、それへのもしも万が一の影響ですとか、その辺がわかりましたらお教えください。
  68. 下平隆

    ○下平説明員 お答え申し上げます。  今回の自動車自動車部品協議におきまして、補修部品につきましては、米国側からは、日本の車検に関連をいたしました分解整備制度、いわゆる重要保安部品にかかわる制度でございますけれども、こういった制度が補修用部品輸入の阻害になっているといたしまして、その見直しを求めてきたわけでございます。これに対しまして、運輸省といたしましては、自動車の安全の確保あるいは公害の防止を前提としつつも誠意を持って対応してきたわけでございますけれども、米国側から制度を廃止すべきというふうな厳しい要求が出されまして、最終的に日米間で溝が埋まらずに合意に至ることができなかったということは大変残念であるというふうに思っております。  今後運輸省といたしましては、自動車の安全の確保あるいは公害の防止といったことに支障がない範囲で必要な規制の見直しということはしていくつもりでございますけれども、根幹となる制度の廃止はできないという姿勢で臨んでいくつもりでございます。
  69. 吉田治

    ○吉田(治)委員 本当に、安全という部分、また大臣も特に整備不良による事故発生率に言及されましたように、これは単に規制緩和の問題だ、市場を広げるというアメリカ側の要求に対して唯々諾々とすべき問題ではないと思います。後ほど触れますが、やはりその結果として現在の商店街の問題が起こっておるようなこともございますので、ぜひここは頑張っていただきたいなと思う次第でございます。  特に課長さん、八万件車検工場があるといいますが、アメリカ側の要求をもしも万が一受け入れた場合に、これは車検工場が大体二割ぐらい、認証工場が八割と言われていますが、影響はどちらの方が大きくて、どれくらいの影響になるような感じを受けましたでしょうか。
  70. 下平隆

    ○下平説明員 これから交渉がどのように進展していくのかまだ予想が立たないわけでございますけれども、先ほど橋本大臣の方からお話がございましたように、車検制度といいますのは自動車の安全と公害の防止を図るために機能しているものでございますので、これの後退にならないような対応をしてまいりたいというふうに思っております。  なお、現在車検制度にかかわります道路運送車両法の改正、この七月に公布をされておりますけれども、その施行に向けて現在規制緩和に取り組んでおりますけれども、この点につきましてはこれから着実に進めていきたいというふうに考えております。
  71. 吉田治

    ○吉田(治)委員 自動車整備工場というのは所轄が運輸省さんで、ここの通産とは関係がありませんけれども、やはり八万軒といったくさんの中小零細企業という立場からしますと、ぜひともこれはそこに迷惑がかからないような結果を、共同してしていただかなければならないなと思っております。  それでは次に、この日米協議において一番というか、ずっとこの一年数カ月マスコミをにぎわせ、この名前だけは知っているよというのに、やはり客観基準というふうな問題があると思います。昨年七月の当時の自民党の宮澤総理とクリントン大統領の両首脳会議で、私たちからするとなぜあんな安易に取り決めたのかなという客観基準の解釈というものが一番問題になっていたのではないかと思います。  この取り決めというものが、管理貿易にかかわる解釈論という中で俗に言う神学論争となりまして、一年三カ月にも及ぶ日米の協議の長期化の元凶になったと考えるわけですが、政府は客観基準の解釈について、最終的に日米間で合意が得られたと考えられているのか、また、その合意がもしも得られているとするならば、それはどのような解釈なのか。この場では日本語で結構でございます。後ほど英語の文書もちょうだいできればと思います。
  72. 伊佐山建志

    ○伊佐山政府委員 お答え申し上げます。  それぞれの分野で、いうところの、今先生指摘の客観的基準というものについて議論が行われておりまして、それぞれ違った表現にはなっておりますが、一番典型的な事例といたしまして政府調達分野の客観基準がございます。それが一つの典型的なものだと思いますので、それに沿って簡単に要点だけお答えをさせていただきますと、定量的基準といいますものと定性的基準、二つの客観的基準を設けております。  例えば、電気通信分野での政府調達の定量的基準にございましては、競争力がある外国の電気通信機器及びサービスのアクセス及び販売の相当程度の増大を中期的に達成するための措置及び指針が対象とする外国の電気通信機器及びサービスの調達額及びシェアにおける進展について五つの、言ってみればメルクマールを設けておりまして、それに基づいて毎年評価するというのが客観的基準のすべてでございます。  五つと申しますのは、長くなりますので、典型的な、どういうふうなものが事例になっているかということを申し上げますと、措置及び指針が対象とする外国の電気通信機器及びサービスの毎年の調達額及びシェア、これは外国の電気通信機器及びサービスの調達の増加額及びシェア並びに措置及び指針が対象とする調達の総額の最近の傾向を参考にして評価される、あるいは調達対象となっております機関の数が年間どのくらいであるかというようなものを客観的基準のメルクマールにいたしております。  それから、定性的基準でございますが、これも五つございます。一、二御紹介申し上げますと、措置及び指針が定めているような、調達手続のすべての段階における外国の供給者の調達情報に対する完全かつ無差別なアクセス、あるいは外国の供給者の下請機会の改善といったようなものがメルクマールとされて定性的に判断されるというものが、いうところの客観的基準の内容でございます。
  73. 吉田治

    ○吉田(治)委員 まあ聞いただけでは多分だれも覚えていないと思いますし、次長にもう一度紙を読まずに言えと言っても多分無理でしょうから。  そういうふうな客観基準というものをめぐりまして、河野外務大臣は、数値目標にしない、原則は守った、また、アメリカカンター代表は、販売額とシェアについて継続的な進展を約束したというふうに言われているのですけれども、これはニュアンスが違う発言と思うのですが、いかがでしょうか。  また、今政府調達分野で合意を得たと言われでいろいろ御説明いただいたのですけれども、日米間でこういう客観基準というものがあいまいなまま合意されていたとしましたら、後々また解釈をめぐって堂々めぐりの議論がなされるのではないかなと思いますし、それでは問題の解決をしたということにもなりません。  国際経済にこれだけ緊迫を与えておきながら、結果としてこんなものというふうなものは、外務省、外務大臣に対しても非常に責任は重いと思うのですけれども、きょうは外務大臣いらっしゃいませんから、外務省のお立場として、その辺どういうふうに自覚されているのか。また、あいまいなままの客観基準の解釈というものについて今後どのようになさっていくのか、お答えください。
  74. 西宮伸一

    ○西宮説明員 日米包括経済協議におきまして、双方のとる措置というのを政府対応が可能で責任の及ぶ範囲に限定すること、これは先ほど来橋本通産大臣から繰り返し御答弁ございましたが、政府調達もまさに同じでございまして、日本側政府調達においてとる措置といいますのは、政府調達をより透明で公正で無差別な調達の手続に改善していく、こういうことに限定いたしておりまして、調達額をふやせ、なかんずく外国からの調達をふやせという仕組みにはなっておらないわけでございます。また、そういう脈絡におきまして、我々一番交渉上告心をいたしましたのは、将来の結果を数値目標その他の形であらかじめ約束することをしないということでございました。  それで、客観基準のところを先ほど通産省の方から御紹介いたしましたけれども、お読みいただくとおわかりいただけると思いますが、客観基準数値目標を構成しないものであるということは明確に書いてあるわけでございまして、日米間で意見の一致を見ておる次第でございます。また、これは書いてあるのみならず、今回まさにワシントンで交渉いたしました際に、協議妥結に至るまでの話し合いにおきましても、こうした点、すなわち将来の結果の約束にならないという点については米側との間でも何遍も確認した点でございます。  先ほど客観基準の中身の御紹介もございましたけれども、客観基準につきましては、中立的な、つまり方向性がない基準ということで合意をいたしたわけでございまして、何ら将来の結果を約束するというものにはなっておりませんで、その点につきまして米側との間で認識の相違はないと思います。  また、継続的進展というカンター通商代表発言につきましては私も報道で読みましたが、これはやや正確さを欠いておりまして、継続的進展という言葉あるいは毎年の進展という言葉は日米間の合意にはございません。
  75. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ないと言われましても、言ったということはまた重みがあることでしょうし、俗に言う、先ほどの交渉術ではありませんが、どんどんそういうふうな形で追い込まれていくというのが非常に多い事例ではないかなと思っております。外務省さんには非常に英語の達人がいらっしゃるそうでございますので、日本語の和訳の達人もいらっしゃると聞いておりますので、その辺はお任せしていいのか、私たちが注意しなければならないのか、どうも両方あるのではないかなと思っております。  あと、ことし四月十五日のマラケシュの閣僚会議で、当時の羽田外務大臣が、ガットにかわる正式な国際機関であります世界貿易機構、WTOの設立協定を含むウルグアイ・ラウンドの最終文書に署名されました。自由で公正な貿易の発展を願う我が国にとっては非常に喜ばしいことだと思います。  このWTOの発足が我が国の通商政策に与える影響というのは非常に大きいものと考えますが、こうした多角的自由貿易体制が強化されることにより、ガットの体制下でも問題でありました日米経済交渉のような二国間交渉はますます公正さを欠くということになっていくでしょうが、WTO発足以降の日米貿易問題はどのような形で対処をされるのでしょうか、お答えください。
  76. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは相手側のあることでありますので、一方的に私どもが想定することもいかがかと思います。しかし、委員指摘のように、まさにWTOというものが一方的措置あるいは二国間主義、地域主義への傾斜の見られる中で多角的な貿易体制を維持強化するという目的を持ってまとめられたものでありますだけに、私どもとしては、先ほども申し上げたことでありますけれども、こうした今行われておりますような日米包括協議のような形態から、このルールの中での交渉にだんだん移っていくことを心から願っております。  同時に、今までややもするとありがちでありました数量目標を強要するような考え方というもの、あるいは一方的な報復措置といったものが円満裏に論議できる環境が整備されることを私どもとしては願っております。
  77. 吉田治

    ○吉田(治)委員 一応、大体日米関係のことはこれくらいにさせていただきまして、あと、先ほど申しました円高による国内経済への影響というものと産業構造改革、後で質問があると思いますが、ざっとお聞きしたいと思います。  なるほど中小企業の倒産件数は減りましたけれども、負債総額はふえる一方でありますし、失業率は、完全失業率がついに三%に達しましたし、このまま円が高値でおりますと、部品メーカー、その他メーカーがたくさん海外へ出ていく。俗にいう産業空洞化ということになっていった場合に、国内の労働需要というふうなものがますます悪化すると思うのですけれども、心配されるのですけれども、雇用の見通しはどうなるのかということがまず一点。  そして、アメリカではこの包括協議の結果、合意された分野だけで二百七十万人の雇用と数十億ドルの対日輸出をもたらすとカンターさんが誇らしげに発表されていますが、日本の雇用にこの経済協議の影響というのはどのような影響を与えるのか、お答えください。
  78. 青木功

    ○青木説明員 現在の雇用の状況でございますけれども、ただいま先生お話しのとおり、八月の有効求人倍率が〇・六三、完全失業率が三%というところで、この景気の中で低レベルで一進一退の状況でございます。  今後の見通しにつきましては、景気の動向によるところが大きいわけでございますけれども、一般に雇用の回復景気回復よりも少し遅くなります。そういったことで、ここしばらくはただいま申し上げましたような状況が続くというふうに見込んでおります。また、御指摘の最近の急激な円高等による我が国経済への影響も懸念をされておるところでございます。  こういった中で私ども日本国内の雇用に与える影響、この現在の厳しい中で、総合的な雇用対策といたしまして、雇用の維持及び再就職の促進等を目的といたしました雇用支援トータルプログラムというものを実施をいたしておりまして、現在有効求職者百九十万人、公共職業安定所の窓口に来ておりますけれども、そういった方々の再就職促進に全力を挙げてまいりたいというふうに考えております。
  79. 吉田治

    ○吉田(治)委員 雇用の方ではそういうふうな影響があった。過去の日米構造協議の影響でやはり中小の小売商店街、小売業というのは非常に痛手をこうむってきている。今雇用の方も余りいい話は聞けない。現実的に、中小小売業においては大店法の規制緩和というもので相当痛めつけられて、転廃業等も含めてさせられている。一つ産業構造の改革というものが中小小売業の中に見られるのです。  その中小小売業対策の予算の拡充強化ですとか、またその事業が、先ほどから各委員が言われております新規開業数の低下ですとか、起業家の支援等の中において、いやもう新しいものをつくる人がいないだけじゃなくて、現実に中小小売業等をやっている事業の承継が非常に難しい、後継者がいない。そんな話をするとどこかの農業の話になってしまうかもしれませんが、それと同じように、中小小売業等を含めて事業承継税制、これは税制の問題だけじゃないと思うのですけれども、その他、中小企業関係税制とかについて、この点、いま一点触れておきたいと思いますので、お答えをお願いします。
  80. 鈴木孝男

    ○鈴木(孝)政府委員 お答えいたします。  小売業につきましては、先生指摘のように、規制緩和の問題あるいはいろいろ流通構造も変化しておりますので、大変苦労しておりますので、私ども、中小企業予算の中でも小売商対策につきまして大変重点を置いております。  これまでにも、ハード事業につきましては、商店街を魅力ある商店街にするということで、基盤施設整備につきまして、本年度も百五億円という予算を計上しております。特に来年度につきましては、本年五月に規制緩和措置もございましたので、そういったものも踏まえまして、二十一世紀というものに向けまして、高度情報機能あるいは高齢化社会、地域文化をどうするか、地球環境問題、そういったようなものに取り組む商店街に対しまして今までの整備事業をさらに拡充するという、私どもは二十一世紀型商業基盤整備事業と称しておりますが、そういったハード面での予算も工夫をしております。  また、ソフト面におきましても、商店街の行いますイベント事業とか、あるいは先生指摘のように若い人たちをどうやって次の焦点に向けるかという、そういういろいろな事業もございますが、そういったソフト面につきましても予算を計上しておるところでございます。  そういう形で、今内外いろいろな環境変化の苦しい小売商業に対しまして、私ども関係する小売関係の中小企業団体とも十分密接に連絡をとりまして、いろいろな対策を今後とも拡充強化してまいりたいと思っております。  また、後継者が非常に問題であるという点は、私どももそのように認識しております。これは小売業のみならず中小企業全体につきまして後継者難もございますので、その面につきましては事業承継制度を拡充せよ、あるいは強化せよということがもう十何年来議論があるわけでございます。毎年私どもも中小企業税制の中での重点としていろいろな改善を要求しております。今年度からも土地の評価の問題あるいは株式の評価の問題、そういったもので一定の前進がございますけれども、なお事業承継制度の充実につきましては、さらに改善方につきまして税務当局とも相談をしてまいりたいと思っております。  また、そのほかにつきましても、租税特別措置につきましても中小企業関係投資がございます。また、現在の景気対策の中でも中小企業につきましての投資減税というものが充実されておるわけでございますが、これは先ほど来御議論ありますように、現在の景気回復の中で中小企業の景況の低迷あるいは設備投資の低迷もございますので、そういった意味では設備投資に対する減税措置をどうするか、私ども経済の実態、中小企業の動向を踏まえまして真剣に取り組んでまいりたいと思っております。
  81. 吉田治

    ○吉田(治)委員 時間がありませんので、もうあと四点まとめて御質問したいと思いますので、大臣なり担当官からまとめてお答えいただきたいと思います。  そういう状況ですけれども、最近の民間の調査機関の報告によりますと、円レートがこのまま高値安定し、経済成長率が毎年二%でとどまった場合には、西暦二〇〇〇年には完全失業者は九百五十万人に達するというような試算も出ておりますし、また村山内閣は行財政改革に積極的に取り組むという発言を繰り返しされております。行革ということは、それによって余剰人員というものが生じますし、景気低迷で発生する失業者に対して今より明確な新規雇用創造のビジョンを政策的に打ち出すときに来ていると思いますが、その辺政府はどうお考えなのかということが一点。  そして、規制緩和等による産業構造改革ですとか新産業創造は、効果を上げ雇用を喚起するまでに非常に時間がかかると思います。産業構造改革は産業空洞化を防止するためにも長期、中期的に取り組む必要がありますが、今急を要するのは既存産業のもちろん再活性化、今中小小売業のことを中小企業庁さんが言われましたけれども、再活性化であると思います。そのための補正予算を組むなどの早急な手当てが必要だと思いますが、政府はこれをどういうふうに認識されているのかということ。  そして、全事業者数の九九%を占める中小企業、先ほどから和田先生も言われましたように、国内経済で重要な役割が期待されています。しかし、なかなか回復期を迎えない長期景気低迷の結果、企業の新規開業というのが大幅に減少しているのは数字でも明らかですし、廃業率も非常に高くなっております。  特にバブル期におきましては、私ども大阪の町の真ん中の出身ですけれども、どんどん工場をつぶして、もうこんな商売やっているよりもガレージにした方が現金が入っていいんだ、子供も継がないし、マンションにした方がもっと利益率高いんだというふうな状況で、既存もなくなってきておりますし、新しくつくろうという意欲も、先ほど大臣言われたように減少しているような感じがします。  直近の企業の倒産件数と新規開業数はどのくらいなのか、具体的数字をお答えいただきたい。  そして最後に、新規開業支援は極めて重要でありますが、現行制度だけでは開業数の改善は、もう社会の状況、家の状況さまざまで、期待をしづらいのではないかと思います。政府は、各種資金確保等で苦しむ起業家、業を起こす方の人たちですが、支援策の充実をどのようにお考えいただいているのか。  この四点、まとめてお答えいただければと思います。
  82. 白川勝彦

    白川委員長 それでは順次どうぞ。堤産業政策局長
  83. 堤富男

    ○堤政府委員 おっしゃるように、現在の円高あるいは世界的な価格革命の中で雇用問題というのが非常に大きな問題であることは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、通産省は、まず全体といたしましては、規制緩和を進めることで日本効率化を進めることによってさらに新しい産業が起き得るということも一つ考えておりますが、ただ、規制緩和だけでは確かに雇用問題の完全な回答にはならないというふうに思っております。  そういう意味では、一つは公共投資、社会資本充実というような意味で、先ほど大臣の方からも御指摘ございました十年間にわたる六百三十兆というのも雇用を生み出す大きな役割を果たすものと私は思っております。  それに加えまして、確かに最近の開業率というのは落ちていることは事実でございます。昔、開業率といいますと六%とか七%、廃業率の倍ぐらいが開業率ということで、企業がふえていくという時代がありましたけれども、六十年代に入って以来、あるいは平成になって以来、どうも開業率は低下をし、特に製造業部分では現在二・八ということが言われております。一方、廃業率は三・八とか三・二とかということで、企業の数が減るような状況になっている中で、新しい企業あるいは新しい事業分野の雇用をふやしていくということが非常に重要だと思っております。  そういう意味では、一つは、新しく企業を起こすという意味の創業型の、ベンチャービジネスという言葉を使われる方もいらっしゃいますが、新しく企業を起こし、新しい分野での事業を起こし、そして雇用をふやしていくという、まあイメージとしては戦後のソニーですとかあるいは本田というようなものがそれに当たるかもしれませんけれども、そういう形で雇用をふやすというパターンが一つあると思います。  それからもう一つは、現在ある企業の中で、その企業の中にあります人材あるいは技術、土地、設備というものを活用しながら新しい分野を展開していくという分野もあろうと思いますが、そういう二つのパターンの中でこれから雇用をふやしていくということがぜひ必要だと思っております。  通産省は、事実上こういうことが可能かどうかというフィージピリティーをやりましたけれども、十二分野につきまして、もし政策がうまくいき、企業努力とが合致すれば、二〇一〇年には二百二十兆円、あるいは雇用者数にしますと五百五十万人ぐらいをふやす可能性があるということも試算をしてございます。したがいまして、可能性がある中で政策努力企業努力とが重なれば、そういう問題は時間的な落差も考えながら解決していくのではないかと思っている次第でございます。
  84. 鈴木孝男

    ○鈴木(孝)政府委員 中小企業関係をちょっと触れさせていただきますが、経済の大宗を占めます中小企業が現在の景気回復あるいは構造調整変化に対応するというために、新規開業率の低下、廃業率の上昇の中で中小企業の活力を生かす、これが大変大事だろうと思っております。  現在、中小企業近代化審議会におきまして、大臣から、創造的中小企業の振興策いかんという諮問を受けておりまして、その中で中小企業の活力を、新規事業を含めましてどうすればいいか、近く答申を受けたいと思っております。
  85. 白川勝彦

    白川委員長 あとないですか。吉田治君。
  86. 吉田治

    ○吉田(治)委員 産業構造の転換というのは本当に大変で、それをなし遂げる以前にこの円高というものが非常に深刻な影響を及ぼすと思います。円高対策にはぜひ従来以上の積極的な対応をお願いしたいと申し上げて、質疑を終わらせていただきます。
  87. 白川勝彦

    白川委員長 午後零時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十一分開議
  88. 白川勝彦

    白川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河合正智君。
  89. 河合正智

    ○河合委員 初めに、通産大臣また経済企画庁長官、御就任まことにおめでとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  特に通産大臣におかれましては、日米包括協議という大変なお仕事を一カ月に三回、一週間に二回といった大変なスケジュールをこなして合意にこぎつけられましたことを、商工委員の一人として心より敬意を表するものでございます。  私は、本日、大きく四点にわたりましていろいろ御質問申し上げたいと思います。  まず最初に、PL法につきましてお伺いさせていただきます。  一昨日の通産大臣発言、経企庁長官の御発言の中におきまして、通産大臣が第五の課題の中で述べられております、また、経企庁長官は第三の課題の中で述べられておりますPL法につきまして、その成立につきましての所感並びにその法実施につきます御決意を、まず経企庁長官にお伺いさせていただきます。
  90. 高村正彦

    高村国務大臣 PL法につきましては、本年六月、衆参両院とも全会一致で成立し、七月一日に公布されたところであります。河合先生初め商工委員会の皆様方に大変お世話になりましたことをここで改めて御礼申し上げます。  本法は、製品関連事故分野において、過失責任の原則を欠陥責任の原則に修正するものでありまして、製品の安全性に関する消費者利益の増進を図る観点から画期的なものであると考えております。  経済企画庁といたしましては、国会における附帯決議の趣旨を踏まえ、法律の内容についての周知徹底に努めるとともに、関係省庁との連携を保ちつつ、原因究明体制の充実強化、裁判外の紛争処理体制の整備、消費者安全教育の充実など関連する諸施策にあわせて、総合的な消費者被害の防止・救済策の確立に努めてまいる所存であります。
  91. 河合正智

    ○河合委員 ただいまは取りまとめ官庁の長官としての御決意をお伺いさせていただきました。  同じくPr法成立についての所感並びにこの法実施についての御決意を通産大臣にお伺いさせていただきます。
  92. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 通産大臣就任いたしました直後の記者会見の折、今後の規制緩和についてどう思うかという質問を受けましたとき、この製造物責任法の制定というものを受け、今後、政府の認証に係らしめているもの、これが自己認証に変わるという意味で非常に大きい役割を果たすということを申した記憶がございます。  製造物責任法にはそれだけの意義のある大きな変化と私はとらえておりまして、今後、製造物責任法の内容に従った行政を進めていくことにより、少しでも国民生活に利あらしめるものにしてまいりたい、そのように考えております。
  93. 河合正智

    ○河合委員 この製造物責任法、これは大変な審議をした法律でございますけれども、改めましてこの製造物責任法の目的につきまして、経済企画庁長官にお伺いさせていただきます。
  94. 高村正彦

    高村国務大臣 この法律の目的は、欠陥製品による被害者の救済という観点から、製品関連事故に係る損害賠償に関する責任要件を過失から欠陥に転換することにより、被害者の立証負担を軽減することであります。製品に起因する事故から消費者を保護するためには、事業者、消費者双方の自己責任原則をも踏まえつつ、事故の防止及び被害の救済のための総合的な施策を講ずる必要があります。本法は、この消費者被害防止・救済策の一環として製造物責任制度を導入するものであります。
  95. 河合正智

    ○河合委員 ただいま長官から本法の目的についてお伺いしたところでございますが、御案内のとおり、昭和四十七年から我妻教授らを中心とする研究会が本格的な検討を始められました背景は、スモン事件、カネミ油症事件などの深刻な事件の発生が背景となっております。その間、一九八五年のいわゆるEC指令、ヨーロッパ諸国の考え方が製造物責任の立法として進展されました。また、国内でも各政党、各界から立法提案が相次ぎ、この法案の成立に至ったところでございますけれども、先ほど長官がお述べになりましたように、本法の直接の目的は、被害者の保護というところが挙げられているところでございます。  それでは、本法におきます製造物とはという定義の部分につきまして、経企庁長官にお伺いさせていただきます。
  96. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 御案内のように、この法律の第二条におきまして、「「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。」とされております。  それで、この本法におきますところの製造物責任の対象となる製造物は今申し上げましたようなもので、未加工の農林水産物あるいは不動産については、本法の対象から除外されているところでございます。  そこで、加工か未加工かという判断につきましては、法概念上一般に、動産を材料といたしましてこれに工作を加えて、その本質は保持させながら新しい属性を付加し価値を加えることと解されておりますが、具体的には個々の事案に応じて、当該製造物に加えられた行為を社会通念に照らしまして評価して判断されることになろうかと考えております。
  97. 河合正智

    ○河合委員 ありがとうございます。  具体的な製造物に入るかどうかの問題につきまして、血液製剤及び生ワクチンにつきまして大変論点になりました。私どもこの衆議院の商工委員会で審議しました後に参議院に移ったわけでございますけれども、特に私は本日、衆議院委員会可決後のことにつきまして若干お伺いをさせていただきます。  私の手元に当時のことを報道した各紙の報道があるわけでございますけれども、例えば六月二十一日付の朝日新聞、これは「PL法案「時間がない」」こういうタイトルで書かれております。  「参院の論戦 血液製剤でなお対立」「生活者重視をうたうPL法案の行方はどうなるのか。会期末が迫り、政府内には「時間切れ」を懸念する声が上がり始めている。」「政府側は「現在の科学技術水準の下で技術的に排除できないウイルス混入や免疫反応による副作用は、欠陥に該当しない」との統一見解を繰り返し、理解を求めた」けれども、参議院では納得できないと保留されている。  そして、この問題を取り上げた宮崎秀樹氏は、この参議院の審議につきまして、「衆議院のように付帯決議で決着するつもりはない」そして「厚生行政に強い影響力を持つ橋本龍太郎政調会長とも十分連絡をとっている」このように報道いたしております。  また、同じく朝日新聞の六月二十二日付でございます。  「ところが、参議院では自民党が適用対象からはずすように、強硬に主張している。」これは血液製剤でございます。「ぎりぎりの段階を迎えた。」これは新聞報道をそのまま読ませていただきます。「自民党の実力者や族議員が立法や政策の実権を握り、国会審議がともすれば形がい化していたかつての様相が、連立政権になってからは一変し、実質的な審議がみられるようになったこともたしかだ。参議院でも審議をつくすのは当然である。しかし」この問題については、「血液製剤に関しては、道理は政府側にあるのではないか。」「PL法の原点を」これは被害者救済という点だと思いますけれども、「PL法の原点を判断の基礎とすべきである。」このように論じております。  そして、六月二十一日付の読売新聞でございます。  「衆議院での採決に向けて自民党内外の調整に奔走した自民党の議員によれば、この問題は法案作成までに与野党や日赤など関係者が合意して政府統一見解がまとめられ、決着していた」「その背景について、自民党の衆議院議員は「日赤が最後の段階になって不安がり、ごたごた言ったため」」だと言っている。そして、「衆議院での採決の際には「献血者や輸血従事者には責任が及ばない」との政府見解が示されている。」現在、しかし、「PL法案の検討は、スモン病など悲惨な製品被害を背景にすでに二十年以上に及んでいる。その結晶である法案の審議が、いったん統一見解がまとめられた血液製剤問題を論点に」「今国会での成立が見送られてもよいものか。関係者は、不成立になった場合の責任の重さを思うべきである。」このように報道しております。  これは二カ月、三カ月前のことでございますが、記憶を呼び起こす意味でこのまま読ませていただきました。  さて、この辺のいきさつは、これはあくまで新聞報道でございます。政調会長として現橋本大臣がかかわっておいでになったという報道でございますけれども、どういうことがこのとき政調会長としてのお立場で問題になっていたのか、これは大臣の名誉のためにもつまびらかにしていただきたいと思うところでございます。
  98. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 まず冒頭に私は、私自身が献血手帳を持ち、現在十八本の献血を公式にも行っており、その他にも手術用血液の提供をしてきた人間であるということをお知りをいただきたい、こう思います。  そして、今の新聞記事の引用につきましては、その当時私もそれを読みました。内心憤慨した部分もありますし、いろいろな思いをいたしましたけれども、たまたまきょう経済企画庁の坂本局長、当時私が論争した相手でありますから、もし私の記憶の違っておる点がありましたなら直していただこうと思います。  同時に、私は、スモンの和解で厚生大臣を終わった人間であります。製造物責任というものの大切さを存じなかった人間ではございません。そして、私どもは、製造物責任法というものはつくるべきだという考え方を持っておりましたが、たった一つ食い違っておりましたのは血液の扱いでありました。果たして血液というものは製造物と規定していいものなのかどうか。同時に、我が国の血液制度というものは売血を認めておりません。すべてが善意の献血によって賄われているものであります。  その血液の扱いの中で、いわゆる生血と呼ばれる部分が果たして血液製剤なのかどうか。これは実は私どもが政権党でおりました当時、厚生省の諸君と話しましたときにも、いわゆる保存血の段階までは製造物責任法の対象にはならないということが想定をされておりました。なぜなら、これはまさに善意の献血というものを背景にした制度でありまして、これが業として製品化されたものではなかったからであります。そして、血漿分画製剤等につきましては、これは当然製造物責任のかかるべきものであろう、そのような判断をいたしておりました。  ところがその後、どの時点であるのか私は存じません、この法律案が国会に提出されるまでの間に、完全にその場で採血をされ輸血をされました血液以外、俗に生血と呼ばれ、保存血と呼ばれます、献血をいたしました場合にバッグに採取されましてそのまま保存される、この部分までがこの法律の対象に含まれているということを私どもは知りました。  これは我々が議論をしておりました当時と真っ向から反しておりますし、同時に、その時点におきましては、これはもし、例えば全く検査によって判定できないような何かが混入し、その血液の中にあり、例えば肝炎ビールスなんかも一つの例かもしれません、その輸血によって、保存血の輸血によって患者が発生した場合、献血者までが責任を問われるのかどうかということについて、幾ら政府側にただしましても実はきちんとしたお答えをいただけなかったわけであります。  そして、この点は確かに私は大変こだわり、政府側と論争を重ねました。確かに、保存血と申しますものの中には、血液が保存されるために必要な一定の薬品が添加されておることは事実であり、その限りにおいては確かに全く人体から取り出したそのままの血液でないことは事実であります。  しかし一方、これは業として提供をされたものではございません。善意の献血者の献血がそれを必要とする人のために保存され、そして使われるというものでありますから、私どもの考えからいくならば、これを製造物責任法の対象にするということについては納得のいかない思いが最後までございました。  しかし、もし私個人の判断で誤りがあってはと思い、私は献血を受け付ける日赤の関係者の声も聞きました。また、私と同様に献血を継続してこられた方々の意見を聞きました。そして、保存血そのものが責任を問われるということであるならば献血を続ける自信がなくなるという声は現実のものとして存在をいたしておりました。ですから、私はそうした声は政府側に届けました。政府としてこれにどう答えを出してくれるのか。  同時にこれは、我々は献血をする立場でありますから、自分が不安になれば献血に行かなくなるという選択肢がございます。しかし、献血を必要とし、その必要とする方々のために血液を集める第一線の職員の諸君が、そこに携わることによって製造物責任の一半を問われる危険性に対しての懸念を持っておりました間、この点については私は、政府側が十分に納得させるだけの説明をする責任があると考えておりましたし、政府当局にはそのような努力を求めてまいりました。  最終的にその不安が私は完全に解消したとは現在も思っておりません。しかし、少なくとも善意の献血者が責任を問われるようなことが一応なくなったというその準備を、なくなったと言える準備をしてくれておる点について、私は関係者努力を評価いたしております。  同時に、血液製剤というものがより安全なものでなければならないことは、既に不幸にして血液製剤による予期せざる疾病を、しかも非常に苦しい病気を受けてしまった方が現存されるわけでありまして、製剤という部分になりましてからの責任は、これは私はきちんと問われなければならぬと思います。  要は、献血という行為によって成立をしたものが、無償の行為である部分とこれが製造物として製品化され、医薬品の範疇として正式に扱われる部分の接点部分で、政府側の見解が、当初私どもの承知しておりました事実と法律案が審議をされますプロセスにおいて出てまいりました内容に差異が生じておった、この点が私の疑問の問題点でありました。
  99. 河合正智

    ○河合委員 当時のいきさつについては大臣の今の御答弁で大変深く理解させていただきました。恐らく、政調会長としてのそういった御努力があって、この衆議院段階での統一見解並びに政府見解に結びついていったものと思います。審議が非常に深まったと私は思います。しかし、今お伺いしておりました件につきましては、衆議院段階での政府統一見解と政府答弁で私は十分クリアできたのではないかと思います。  そして、もう一つ疑問が今起きますのは、そういった問題につきましては、十分厚生省と日赤とお詰めになった上でのお話、ある意味では日赤も納得された上でのお話だったのではないかと思いますが、その辺の経緯につきまして厚生省、おいでになっておりますでしょうか。
  100. 石本宏昭

    ○石本説明員 申し上げます。  ただいまの御質問につきまして、私ども昨日十分に趣旨について把握しておりませんでしたので、細かくは承知しておりませんが、日赤との間でいろいろと情報交換というものはした上での対応ということは行っておるものと思っております。
  101. 河合正智

    ○河合委員 今のお答えでございますと、十分その辺の献血者並びにそれを扱う、一番たくさん扱う日赤との話し合いは十分していたということでございますが、なぜそうであればこの現大臣、当時の政調会長を煩わせるというようなところまでいったのですか。
  102. 石本宏昭

    ○石本説明員 誤解の点がありますので、もう少し詳しく述べさせていただきますと、私どもといたしましては、この血液製剤も含めまして、PL法の法案の作成過程でかなりその他の医薬品につきましての議論を深めておりましたところでございますが、日赤との関係についてどのように連絡をし合ったかということにつきましては調査をさせていただきたい。  先ほど十分連絡し合ったという点につきましては、訂正させていただきます。
  103. 河合正智

    ○河合委員 それでは、次に移らしていただきますが、参議院段階のこの議論、一般国民から聞いておりますと、そもそもPL法というのは何のために制定された法律であるのか。もっと極端に申し上げますと、被害者というのはどうなるのか、こういった大きな疑問だったと思います。その意味におきまして、当時の主管官庁でございました経企庁、どのように対応されたわけでございますか、お伺いします。
  104. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 御案内のように、製造物責任法は、過失を欠陥という概念に変えることによって被害者の立証負担を軽減する、いわばそういった見地からの基本的な法律でございますので、すべての事象を被害者救済という立場から考えつつ、なお、あわせてそういった個々の点が他にどういう影響を与えるかも勘案しながら対処してきたところでございます。
  105. 河合正智

    ○河合委員 この問題につきましては、これ以上深く立ち入りませんけれども、先ほど両大臣が述べられましたこのPL法の意義また目的に照らしまして、輸血用血液製剤による悲惨な薬害が教訓として生かされた。これは参議院の商工委員会の附帯決議でも明らかでございますけれども、輸血用血液製剤による被害者を救済するために特別の救済機関の設置に努めるという附帯決議がついております。  これは辛うじてこの法案が成立したことによりまして、EC指令に並ぶ日本の立法の良識が示されたものとして私は大変喜ばしく思っております。しかし、その中で今の御答弁、厚生省また橋本大臣のお考えをよく伺いましたけれども、あの最終段階での被害者救済というこの立法目的に照らす御発言としては私はいかがなものかという疑問を若干持っている次第でございます。しかし、この件につきましては  じゃ、大臣どうぞ。
  106. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は被害者の問題を忘れているわけではありません。私自身が薬害被害救済基金制度をつくった責任者であります。そして、血液製剤の怖さというものも十分存じておるつもりであります。ですから、血漿分画製剤等、製造物として本来扱われて当然の部分について製造物責任があることに先ほども私は異論を申しませんでした。  私が問題だと思いましたのは、その保存血の部分、俗に生血と言われる部分、そして現実に我が国は献血制度をとっておる国であり、他の国々に多く見られるような売血を原料として血液製剤をつくっておらない国であります。その場合に私は、被害者を出さない、これはもちろん大事なことだと思います。  しかし、例えば本当に今までにもあったことですが、肝炎にかかったことを御自分が知らないままに血液を提供され、その結果として血清肝炎による被害を出したといったようなケースのときに、私は、献血者がその善意のゆえに責任を負わなければならないという事態は、率直に申してなかなか納得がまいりませんでした。この点をきちんと仕分けてもらいたいということは私は繰り返して申してきたことでありますし、この部分について、厚生省の方できちんとした検討がなされることを私も期待をいたしております。  どうぞ、被害者に対する配慮が不足と言われるようなことはお許しをいただきたい。私自身が薬害被害救済基金制度をつくってきた責任者であります。
  107. 河合正智

    ○河合委員 これは、私どもの理解によりますと、今の大臣の政調会長としての御尽力があって、衆議院段階で既に献血者には責任は及ばないという政府見解を発表しているわけでございますので、私が申し上げておりますのは、それ以後のことについてのことでございます。
  108. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは、私はお言葉を返すつもりはありませんけれども、先ほど私どもの党の同僚議員の参議院における質疑が問題になりました。彼は医師であります。そして、私自身先ほど申しましたように、関係者の中にはなお不安が完全に払拭されたとは言い得ないと思いますということを申し上げましたが、当然のことながら、採血に当たる現場職員等の声も、当時私が知る限りにおきましても、まだ必ずしも納得した状況ではございませんでしただけに、そうしたものが反映したのではなかろうかと思います。  ただ、それは被害者を忘れてということでないことだけは、私は、どうぞ御理解をいただきたい。同僚議員の名誉のためにもお願いを申し上げます。
  109. 河合正智

    ○河合委員 それでは、この問題につきましては、審議の繰り返しになるのを避けまして、ここで終わらせていただきます。  次に、日米包括協議についてお伺いさせていただきます。  これは、午前中、私どもの統一会派の吉田委員がお伺いされていた点でございますので、私は的を絞りまして、客観基準の問題につきましてお伺いさせていただきます。  大臣、大変な御苦労をされたわけでございます。また、これは私が実際に見たことではございませんので、新聞報道によらざるを得ないところでございますが、十月十八日付の朝日新聞に「九月七日、ワシントンに乗り込んだ橋本大臣政府調達の客観基準をめぐり、カンター代表に「そっちはそっち、こっちはこっちで解釈する。同床異夢でいいじゃないか」と「玉虫色決着」の誘いをかけている。」こういう報道がされておりましたが、これは事実でございますか。
  110. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 多少私は用語は不正確だと思います。と申しますのは、確かにそういう議論カンターさんの方から始められました。政府調達及び電気通信の分野、私の守備範囲ではございませんでしたし、その言葉が適切であるかどうかにつきまして、私は英語の専門家ではございません。そして、彼がいろいろな単語を並べましたので、むしろ、私は日本語にすれば皆同じだ、どうしても言い回しか気になるのならウェブスターの辞書を持ってこいというやりとりをいたしました。それは間違いなしに、英語の言い回しとして、日本語として同じ言葉でありましても、いろいろな言葉があるならば、それはそちらで考えればいいという趣旨のことを申したことは間違いありません。
  111. 河合正智

    ○河合委員 たまたま約一カ月後の最終決着も、ある意味では、私の印象としてはこの報道のように決着したのではないかな、皮肉なことなのではないかなと思っておりますが、この客観基準につきまして、「相当程度の増大を中期的に達成するため」途中省略しますが、「調達額及びシェアにおける進展についての毎年の評価」、こういう形で外務省は発表しております。  この解釈につきまして、日本側数値目標とはならないという解釈をとっておりますし、またアメリカ側は、結果主義で効果的な解決の仕方だったということを言っております。これは年間の評価という点で、やはり再び同じ論争になる可能性を残しているのではないかと思いますが、これは午前中の審議で答弁がございましたので、先に進ませていただきます。  さて、自動車部品でございますが、この自動車部品をめぐりまして、やはり十月三日付の日経新聞ではこのように報道いたしております。アメリカ政府の制裁対象政府調達から自動車部品自動車補修部品に急に変わった。そのいきさつについてアメリカ政府の当局者は、もともと最優先項目は政府調達の客観基準であった、補修部品なら影響が少ないし、日本も過剰反応しないだろう、こういうUSTRの読みだ、敵対的なイメージが小さく、交渉を中断させないで済む、このように報道しておりますけれども大臣、いかがでございましょうか。
  112. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、アメリカ側が何を考えておりましたのかというようなことについては存じません。そして、先刻来申し上げておりますように、補修部品、すなわち重要保安部品につきまして、運輸省の担当の責任者の諸君は随分真剣な論議アメリカ側と専門家レベルにおいて行い、その中では相当程度、私は煮詰まっていたものがあったと考えております。  しかし、要するに、重要保安部品制度そのものを全部廃止しろということは、車検制度そのものが否定されることになるという日本側の考え方と、制度そのものを廃止した上で安全にかかわるものは後から追加すればいいというアメリカ側の考え方との間に確かに埋められない部分がございました。  しかし、それにしても私は、通商法三〇一条による特定というものは非常に残念でありますし、最終的な論議の際にも、こうした行動は今後我々として交渉に入りづらくする、なかなか簡単に再開はできませんよということをアメリカ側に、通告という言葉はちょっときつ過ぎますので、その席上議論をいたしましたけれども、結果としてアメリカ側通商法三〇一条という道を選びました。  私は、この問題については大変残念でありますし、今後のアメリカ側対応いかんによって我々はこれに対抗するあらゆる措置をとる権利を留保しているということを宣言しておる状況であります。
  113. 河合正智

    ○河合委員 カンターUSTR代表が十七日、ワシントンでこのような講演を行っております。「日本自動車メーカーが一九九四年度までに合計百九十億ドルの外国製自動車部品を自主購入する計画を立てていることに関連して、「さらに増額すべきかと問われれば、そうだと答える」」、こういうことを言っております。このカンター代表発言というのは、日本側の考え方を真っ向から否定する発言なんではないかと思います。  日米間に大きな紛争の可能性が出ておりますが、アメリカ政府が日米包括協議の中で九八年度までに合計四百億ドル部品購入の増額を求めておりましたが、この要求を相変わらずおろしてない結果なのではないでしょうか。大臣、いかがですか。
  114. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 要は、いかなる数字でありましても、民間の業界が自主的に自分たちの経営努力の中でぎりぎりと考えられる部品購入計画を作成いたしましたものに対し、我々は、それを積み増せとかあるいは期間を延長しろとかそういうことを言う権限は一切持っておりません。また、それは政府が必要以上に民間に介入することでもあります。今規制緩和を進めようとする国策と真っ向から反することであります。別に自動車だけではございません。それ以外の部分でありましても、同じような議論は我々としては受け取ることができないという姿勢に私の方も変わりはございません。
  115. 河合正智

    ○河合委員 大臣の御苦労をお伺いしておりまして、しみじみと思いますのは、昨年の宮澤・クリントン会談で始まりました包括協議の真のねらいというのは日米間の新たな経済パートナーシップの確立てあったはずでございます。しかし、分野交渉成果をはかる客観基準の性格づけにつきまして、そもそも玉虫色の解釈をした。すなわち、アメリカ側日本に対して数値目標に近い管理貿易的な手法であったのに対して、日本側はあえて輸入品の過去の販売実績の維持などが基準になるというような受けとめ方をしまして合意したわけでございます。  この性格づけの玉虫色の解釈というのがその最初のボタンのかけ間違いであったのではないかと思います。最後までこの客観基準の攻防に終始した。このような日米包括協議というのが、経済的パートナーシップの確立てあったという点からしますと、非常に矮小化されてきた。このことについて、ある意味では、両大臣、なかんずく自他ともに政策通、特に通商政策に関する政策通をもって任じていらっしゃる大臣が、この手続とか、こんな細かい詰めにワシントンまでわざわざあのような大変な時期に出向く問題ではそもそもないのではないかと私は逆に思う次第であります。  むしろ、日米がパートナーシップを発揮して取り組むべき通商政策大臣がその力量を発揮していただく分野というのは、WTOとか、アジア・太平洋地域の経済発展だとか、環境、エイズ、それから難民といった、そういう地球的な規模の問題解決に全精力を傾注していただくべきではなかったかと思います。  さて、その日米包括協議そのものが目指しております構造化している日米貿易不均衡の是正、これは、例えば客観基準政府調達それから自動車部品分野を仮に全部合意できたとしましても、依然として構造化している日米貿易不均衡というのは残っているわけでございますが、これをどのように是正しようとなさっているのか、この問題につきまして最後に大臣にお伺いさせていただきます。
  116. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、就任いたしまして日米交渉というものに実際携わるようになりましてからそんなに期間はたちませんし、通商関係は初めての体験でありました。それだけに、自分自身でも悩むことは確かにございました。ただ、就任をして非常に感じましたことは、今年の二月十一日の決裂状態、いわゆる大人の関係というものがいかに両国を不幸なものに陥れたかということであります。  そして、まさに包括協議のそれぞれのテーマがすべて解決をいたしましても、アメリカ日本との貿易収支が完全に平衡になる、あるいはアメリカ輸出が多くなるといった状態ではないことは委員が御指摘のとおりであります。それだけに、ナポリで議論をいたしました段階では非常にとげとげしいものがこの分野にはございました。ただ、その後におきまして、所得減税の三年先行あるいは公共投資基本計画の見直しによるISバランスの改善の努力といったものが前提にありましたために、それでも私は九月末の交渉は随分雰囲気は変わっていたように思います。  要は、大変不幸な議論を始めてしまったと言えばそのとおりでありますけれども、それぞれの分野協議は、行い始めました以上きちんと行わなければなりますまい。しかし、それと同時に、基本的に日本の市場をより開いていき、また商慣習をも透明化し、さらに日本努力そのものの中で、貿易収支だけではございません、経常収支黒字そのものの縮小に努めていく。その中で、各分野における外国企業の参入の機会、公平なチャンスを与えるという視点から我々が努力をしていくことが一番大切なことではなかろうか、そのように考えております。
  117. 河合正智

    ○河合委員 大変ありがとうございます。  先に移らせていただきます。産業空洞化の問題につきましてお伺いさせていただきたいと思います。  日刊工業新聞社で行ったアンケートによりますと、製造業の八割が、空洞化が進む、このように答えております。さらに、人員削減計画を持っているところは三五%に上るという回答結果でございます。この産業空洞化の意味につきまして、私は、本日は、ダニエル・ベルさんたちが使いました、いわゆる脱工業化といった、当初使われた意味ではなく、今日本で使われている、いわゆる経済白書で用いている産業空洞化といった意味に定義を限定してお伺いさせていただきたいと思います。  まず、平成六年度年次経済報告書で、産業空洞化につきましては、三百八ページでございますけれども日本企業海外展開をアジアを範囲とする国際分業体制の再編過程としてとらえた上で、こういう言葉を使っております。「「長期的に」「動態的に」「プラス・サム的に」「国際分業的に」考えれば、議論されている空洞化現象が、むしろ新たな発展の原動力となりうるように、アジア諸国との相互依存関係の深化、貿易産業構造の高度化を図っていくことが重要である」こういうとらえ方をしておりますけれども経済企画庁長官、この日本産業空洞化に関する認識はこれでよろしいでしょうか。
  118. 大来洋一

    ○大来政府委員 今年度の白書におきまして、今先生が御指摘されましたような記述がございます。その部分の前段を多少申し上げさせていただきたいのでございますが、ことしの白書におきましては、九三年以降の急激な円高がいわゆるファンダメンタルズを反映した動きではないというふうに分析をしておりまして、こうした中では、アジア地域からの輸入の増加、それからアジア地域などへの直接投資の増加に伴って日本経済空洞化するのではないかという懸念が高まっているということも指摘をしております。  それから、私どもの考え方といたしましては、今先生がお読みになりました部分で申しておりますように、「長期的に」という考え方をここで示したわけでございますが、それでは短期的にはどうかということになりますと、これは国内生産を減少させる、国内投資機会、雇用機会の喪失をもたらす場合もある、こういうふうに考えております。  しかし、やはり最近におきましても日本から東南アジアヘの輸出というのはかなりのテンポで増加をしております。他地域への輸出よりも高い伸び率が見られております。そうしたことから考えまして、日本からの資本財、中間財がこれらの地域にふえていっているのではないかという推測が立つわけでございます。  あるいは、日本産業空洞化と言われるような事態の裏側で、アジア地域などでダイナミックな発展が起こる。そうしますと、そうした地域の所得が増加をする、日本の市場がそれによって拡大をするというような効果もあるわけでございまして、白書で書いた以外にもパイの拡大ということが考えられるわけでございます。  そういうわけで、長期と短期というふうに分けたわけでございますが、短期的にはやはり問題が生じ得る、そういう認識を持っておるところでございます。
  119. 河合正智

    ○河合委員 実際、私は岐阜県でございますけれども、岐阜県の置かれている産業構造を若干申し上げさせていただきますと、繊維、それから刃物、それから窯業・土石、木工、こういったいわゆる地場産業と言われてきた産業が私どもの県を下支えしてきたわけでございます。  国際分業的に推移するからやむを得ないというような非常に楽観的なとらえ方をされますと、それでは私の地元の抱えているそういった、特に中小地場産業につきましてはどうしたらいいかという問題でございますが、そもそもこの長期的、まあ中期的な認識も今お述べになりましたけれども、私は、より現実的にもっと中小企業政策産業構造政策というのは進めていかないと日本の国は足元から崩れていく、そういうのを目の当たりにしております。  実際に、例えば私が岐阜に帰りまして地元の岐阜市を歩きますと、先週あったお店が今週ない、しかし、そういう状況がもう自分のところに降りかかっているのに、今まで一緒にやってきた人たちのために倒産することもできない、こういう状況が今続いております。円も九十六円台に今突入しております。円高がざらにこの追い打ちをかけておりますけれども、こういった現実の地域産業の振興ということにつきまして、この産業空洞化対策としてどのようにお考えになっているか。経済企画庁からお伺いさせていただきます。
  120. 土志田征一

    ○土志田政府委員 今先生指摘のように、最近の円高については、先ほど調査局長から申し上げましたように、ファンダメンタルズから見ますとやや円高方向に乖離しているというような認識を経済白書でも示しているわけでございます。  したがいまして、御指摘のような産業面では足元が厳しい情勢が生じているということでございますので、大きく考えますと、私どもとしては、やはり新しいビジネスを育てていくようなそういったようなところで、一つ規制緩和を促進していくということ、もう一つは、そういった創造的なことができるように研究開発の推進とか人材の育成といったようなことを進める、さらには、高度情報化に向けた環境整備、こういったことが重要ではないかというふうに考えております。
  121. 河合正智

    ○河合委員 積極的にぜひ取り組んでいただきたいと思います。  それから、ただいま申し上げられました研究開発の点につきまして、私ども八月二十五日に、私ども公明党の商工部会、科学技術部会、文教部会合同三部会で工業技術院を訪れまして、勉強させていただきました。その中で行われている研究開発につきましては、私ども非常に感銘を受けた場面がたびたびでございましたが、この中で研究費でございますが、総経費に占める人件費が研究費を現在圧迫している、研究費を予算のシーリング枠から外すことができないかといったことが大変な要望でもあり、議論にもなりました。  このシーリング枠から外すという点、それからもう一点、例えば、他の科学技術関係の部門におきましては財源確保のためにいろいろな工夫をいたしております、例えば基金を設けているとか。そういったことに工業技術院におきましても積極的に取り組んで、この日本における研究開発に積極的に取り組むことができないか。  以上の二点についてお伺いさせていただきます。
  122. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御視察をいただきまして本当にありがとうございました。  そこで、今委員から御指摘のありましたような問題点、一つは、私は、今回の公共投資基本計画、改めまして六百三十兆に拡大をいたしていきます中で研究基盤の整備といったものにも充てられる投資がこの中に含まれてくるということから、本来の予算そのものをできるだけ増額をしていく努力をしてまいりたい、そして研究開発に向けられる費用をできるだけ確保したいと思います。  それで、工業技術関係につきまして、平成六年度予算が千二百六十九億円を計上してきたわけでありますが、今後ともに、私はこうした分野に対する投資はできる限り努力をしていかなければならないと思います。今御指摘のありましたようなヒントも我々として参考にさせていただきながら、なお努力をいたしてまいりたい、そのように思います。  ありがとうございました。
  123. 河合正智

    ○河合委員 大変貴重な御答弁をいただきまして、感謝申し上げます。  最後に、いわゆる情報化の問題についてお伺いさせていただきたいと思います。  これは、ゴア副大統領がブエノスアイレスにおきまして、国際電気通信連合で行った講演内容でございますが、若干読ませていただきますと、「私は、グローバル・インフォメーション・インフラストラクチャー構築の協力を要請するため、八千キロの道のりをかけてこのブエノスアイレスにやってきた。」「私が三十年前にハイスクールで最初に読んだものを紹介することから始めたい。」そこで、「電気の力で、地球上のあらゆるものが一気に数千マイルも響き渡る巨大な神経網となった。丸い地球は知識に満ちあふれた巨大な頭脳にほかならない。」という言葉から引用を始めまして、このGIIにつきましては、情報を国民に即座に全世界のネットワークをもって提供することによって、アテネの時代のような民主国家を形成する確固たる国民をつくり上げていくんだというようなことまで述べております。  私は、この日本の情報化の問題、例えば郵政省は全家庭に光ファイバー網を敷き詰める、通産省はそれをアプリケーション的にフォローするといった次元でとらえられていることと比較しますと、まさにこのGII構想というのは、非常に深い理念と哲学に基づいて、むしろ、日本で行われている硬直的、固定的な考え方ではなくて、非常にソフトパワーをその国から生み出していくものを感じるわけでございます。  一点だけ通産大臣にお伺いをさせていただきますが、アメリカにおいてはタスクフォースを設けておりますが、日本でも、大臣の御発言にございましたように、内閣に設置されました高度情報通信社会推進本部というのがございます。これは、アメリカのタスクフォースに匹敵するものにぜひとも仕上げてもらいたいと思うのでございますが、現在におきます職務、構成メンバー、組織、それから現在までの成果等についてお述べいただきまして、また、将来に対する取り組みをお述べいただけましたらありがたいと思います。
  124. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 本年八月の二日に、我が国の高度情報通信社会の構築に向けた施策の総合推進のために、また、情報通信の高度化に関する国際的な取り組みに積極的に協力するために、今委員が御指摘になりましたように、内閣に高度情報通信社会推進本部を設置をいたしました。  本部は、総理を本部長といたしまして、郵政大臣、官房長官、そして私が副本部長を拝命し、閣僚全員が本部員になっておりますが、さらに高度情報通信社会推進につきまして意見をちょうだいするための有識者会議を設置いたしております。  九月二十日に第一回の本部及び有識者の合同会議を開催をいたしましたが、その後三回の有識者会議を開催してまいりました。現在、その有識者の方々から高度情報通信社会の構築に向けた取り組みのあり方でありますとか、あるいは医療、福祉、さらには教育、行政等、各分野における制度の見直し、その中における官民の役割など、主要な論点につきまして活発に御意見をいただいておりますのできれば年内にこの有識者の方々の御意見をお取りまとめを願いまして、その御意見を踏まえて、内閣として一体的な推進に向けて努力をしてまいりたい、そのように考えております。
  125. 河合正智

    ○河合委員 以上をもって終わります。大変にありがとうございました。
  126. 白川勝彦

    白川委員長 次に、西川太一郎君。
  127. 西川太一郎

    ○西川委員 橋本通産大臣高村国務大臣に、中小企業問題と景気対策等につきまして御見解を承りたいと存じます。  先ほど来から同僚議員や、また与党側先輩議員の御質疑を拝聴してまいりまして、共通いたしますことは、我が国経済を、難しい、冷戦後のある種の価値の紊乱期にしっかりとしたものにしていきたいというお気持ちにおいては共通するものがあり、また、両大臣、なかんずく橋本通産大臣におかれましては、日米間の大変難しい問題に誠実に、精力的に取り組まれております姿勢につきましては、野党の一員ではございますが、深甚なる敬意を冒頭表したいというふうに存じます。  そこで私は、ただいま申し上げましたとおり、中小企業問題について御見解を承るわけでありますが、もう既に多くの方が言及をされました空洞化の問題にまず触れざるを得ません。  私は、国会に出てまいりましてまだ一年数カ月の全く新米でございますが、長い間地方議会にございまして、特に東京の中小企業問題を私なりの問題意識で研究をしてまいりました。  そこでまず、通産大臣に承りたいと存じます。かなり個別の問題、細かい問題に入りますので、政府委員の御答弁をどうぞひとつ活用していただいて結構でございます。  そこで、まず私が伺いたいのは、言うまでもなく、急激な円高、そして貿易摩擦の激化、こういうものが経済の高コスト化というものを生み、さらにそれが国際競争力の低下という問題も懸念されるような状態になった。そしてそういう中で、これを回避するべく主要産業海外展開が助長された。そこで、国内的には製造業の衰退が見られ、また、それに伴う中小企業各社の倒産や転廃業を余儀なくされた。それが産業空洞化の一連の流れであることは、今さら私が申し上げるまでもありません。  それに加えて、例えば東京都のようなところでは、土地の高騰や各種規制の強化がこれに追い打ち的な要素として加わり、都内の中小企業者海外転出や、また都外に転出するなどがございまして、東京の産業空洞化というのも同時に深刻に進行しているというふうに私は認識をいたしております。  そこでまず、この問題につきまして先ほど和田委員からも御質疑がございましたが、極めて直近に大切な会議が大阪で持たれる。我が国は、私の友人の学者の言葉をかりて言えば、フルセット型の産業構造から脱フルセット型の産業構造に転換をするべきである、何でもかんでも我が国で事をなし遂げようとする考え方はどうもこれからは通用しないだろうという考え方を持っている友人もおります。  しかしながら、一方で、たとえどんなふうに世の中が変わろうと我が国貿易立国をもってしなければ成り行かない国である。米と野菜と石灰石以外、一億四千万国民を満たしていくものはないのだ。国連加盟の百八十四の国、あらゆるところから資源を仰ぎ、また、市場を求めて展開をせざるを得ない宿命的な経済構造になっているのだ。  そういう二つの非常に大きな命題、一方で経済の成長や国際化の中で競争力を求めながらも、一キャッチアップされる対象になってきた、こういうことを考えますと、大変難しい問題であることは私もよく承知をいたしておりますが、まず、基本的にこの空洞化にどう対処されるのか、大臣の御見解を賜りたいと存じます。
  128. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員にるる御説明をいただきましたような認識、私どもも共有いたしておる問題意識であります。また、委員のお地元あるいは大田区羽田を中心とした一円、非常に技術集積度の高い中小、あるいは零細企業と申した方がいいのかもしれません、集団が存在し、それがまた日本経済を支えてくる大きな要因であったことも十分承知をしておるつもりであります。  そうした中で、通産省が昨年実施した調査というものを見ましたところ、海外展開を実施あるいは検討しております親企業におきましては、海外展開によって下請企業との取引を縮小すると回答したものが約半数に上っておりました。また、親企業海外展開により受注量が減少したと回答された下請企業も三〇%に及んでおりました。そして、野党の政調会長として本年度予算に対して私どもが注文をつけました一点は、まさにこの中小企業対策の部分であったわけであります。  しかし、通産大臣を拝命しまして、改めて各種のデータを見ましたとき、私は、一つ非常にほっとする思いをするデータに遭遇をいたしました。殊に、急激に進展しておりますこの円高の中で、その影響はほとんどの企業が受けている、あるいは間もなく受けると想定している状況でありますのでは一体それに対してあなた方はどういう対策をとるのかということを尋ねましたときに、より付加価値の高い製品開発により国内市場で勝負をする、あるいは現在の事業が継続できているうちに新分野への展開を積極的に図る、こうした意欲に満ちた答えが相当たくさんございました。  私どもとしては、この点に着目をし、次年度の政策決定の中に、いわば創造的にこの事態に立ち向かおうとしている中小あるいは零細の業者の方々に対し積極的な支援を考えてまいりたい、今そのように思っております。  そのためにもより一層の実態調査、実態の把握をしたいということから、現在約六千社にわたる中小企業の方々に対してお問い合わせをさせていただいておりまして、親企業海外展開による受注量の増減あるいは雇用動向、今後の対策、経営方針等について積極的なお答えをちょうだいしたいと願っておりますのできれば来月の早々ぐらいにはこれを取りまとめてまいりたい、そのようなことを考えておりまして、こうした中からあすに向けての方策を決めてまいりたい、そのように考えております。
  129. 西川太一郎

    ○西川委員 実は私は、本年の五月と九月に中国の天津市を訪問してまいりました。かの地では大変積極的に日米欧の地域からの企業誘致をされているわけでありますが、そこで実際に私が見せていただきました日本の大手の楽器製造メーカーの工場長のお話によりますと、この工場で働く数百人の従業員のうち日本人は管理者二人である。そして、我が国にこの工場の機能が存在していたときには、関連下請企業も含めて数千人の単位で年間数十万台のキーボードなる楽器を生産していた。ところが、円高等の問題でこちらに生産拠点を移した。  そして、私はお尋ねをしたのでございますが、本社のその当時の工場の方々はどうされました、これは私ども大手企業でございますので、配置転換によってすべて無事吸収できました。それではお出入りの下請の方々はどうされましたか、そこについては全く存じません、恐らく切らざるを得なかったのではないか。こういう話を聞きまして、まことにつらい思いをして帰ってまいったわけでございます。  そういうような経験も踏まえて、具体的に一、二お尋ねをと申しますか、要望も兼ねて申し上げたいと思うのでございますが、一つは、こうした空洞化を回避するために、中小企業者のためにもっと積極的な支援をしていただけないだろうかということなのであります。  具体的に申しますと、創業の場の確保をしていただきたい、こういうお願いであります。  これは、先ほど中小企業庁次長から同僚議員への答弁の中にもございましたが、また通産省堤局長からの御答弁もございました、いわゆる開業率、廃業率等を勘案いたしますと、全国平均を大きく上回って東京では廃業が多いし、開業は少ない、こういう事実がございます。これは、冒頭私、長々しく申し上げました空洞化の仕組みの中で、土地の高騰が云々ということを申し上げましたが、これにも関連をしてまいります。つまり具体的に言えば、経済環境の悪化や地価の高騰から中小企業の創業の場の確保は極めて近時困難な状態に直面をしておるということであります。  そこで、大都市における製造業の振興を図り、産業空洞化対策の一環としてこれに資するためには、長い間国の方で御努力をいただきました分譲型の工場アパートという仕組みをさらに一歩進めていただいて、賃貸型の工場アパートを建設するについて国の制度的、予算的バックアップを強力にしていただく時期に来ているのではないかというふうに思うのでございます。  これにつきまして御答弁をいただき、その御答弁にさらに一つ場合によっては追加の御質問をいたしますことをお許しいただきまして、まずこの辺で、一問目はこの問題についてお尋ねをしたいと思います。
  130. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 委員指摘の賃貸型の工場アパートにつきましては、特に新しい事業を始めます中小事業者にとりまして、当初の資金手当てが少なくて済むという大きなメリットがあるわけでございます。そういう意味で、この立ち上がり、創業の企業を育成する措置としては大変有効な措置ではないだろうかというふうに感じております。  このようなことから、平成五年度に小規模事業支援促進法が制定されたわけでございますけれども、これに基づきまして、この法律の認定を受けた商工会等が、みずからあるいはみずからが出資いたします第三セクターが設置をいたします貸し工場につきましては、高度化資金融資制度によりまして支援を始めているところでございます。  さらに、明年度の予算におきまして、創造的中小企業振興施策の一環といたしまして、商工会等によるものに限らず、地方公共団体が地域振興計画に基づいて設置をいたします貸し工場制度につきましても、新たに高度化事業の対象とするように現在鋭意要求をし、努力をしているところでございます。
  131. 西川太一郎

    ○西川委員 基本としてはただいまの長官の御答弁を足といたすものでございますが、もう少しく具体的にお尋ねをさせていただいてよろしゅうございましょうか。  実は、東京のことばかり申して恐縮でございます、お許しをいただきたいと思いますが、東京都は平成七年度の要求の中で、賃貸型工場アパートを国に先駆けてひとつ公的な力として支援をしていこうではないか、こういう動きがございます。  具体的に申しますと、小規模事業者の立地環培の改善と事業の共同化を促進するため、主として区市町村が出資する第三セクター等が一定期間借貸する工場、事業場を設置する事業に対して積極的な応援を都としてしていこう、こういう計画でございます。そして、これに要する資金は、東京都の融資額に対して区市町村が上乗せをして融資をする。都が六〇%を出し、区市町村が三〇%を出す、そして事業主の第三セクターが残りの一〇%をテークオンすればよろしい。こういうことでございまして、原則として製造業を行う者、しかも開業後一年以上の者ということでございます。  細かくはあとは省略をするとしても、いわゆる分譲型というものにつきましては、ただいま御答弁にもございましたとおり、ある一定の制約がございます。立ち上がりのときに資金の十分な用意がない。しかしそれが、先ほど来お話がございますとおり中小企業というのは、少し長くなって恐縮でございますが、中小企業というのは、私の考えでは、これは相対的な存在だと思うのであります。大に対して中であり、零細に対して中である。しかし、我が国では長くショックアブソーバー的な役割が中小企業に負わされてきた。つまり、系列という今問題になっている中で中小企業の位置づけを取り上げてきました。これは伝統的中小企業論であります。  しかし今日、また通産省がいち早く着目をされておりますのは、先ほどお話に出たベンチャービジネスも含めて、規模は小さいけれども極めて質の高い、機動性の高い、しかも新機軸を打ち出す、系列とはかかわりのない、こういうものを育てていこうというような、後ほどお尋ねをいたしますが、新技術のシーズを育てようというような法律の御用意もあるようでございますから、大変私としては心強いわけでありますけれども、今言ったような、制度的には分譲でなければだめだよ、お金も一定の制限をしてしか貸せないよということになりますと、せっかくやる気の若い企業家、いわゆるアントルプルヌールといいますか、そういう方々に対して十分な支援にはならないのではないか。  私はこの際、地方自治体ももう一歩踏み出そうとしているのでありますから、国もそれに合わせていただくようなスピードで創業の場を確保できる賃貸工場を、分譲型から賃貸型の工場アパートを積極的につくる施策を展開していただけないか、これをぜひひとつ、もう一度長官にお尋ねしたいと思います。
  132. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 先ほど申し上げましたのは若干舌足らずでございましたが、賃貸型につきましても、既に一部やっておる、そしてまた来年度、これを本格的に自治体と組んでやるということで予算要求をしているということでございます。  今委員指摘のこの賃貸型の工場アパートにつきまして、市町村と都道府県が受け皿をつくっておやりになる、そしてそれがまた小規模企業者の共同化あるいは環境対策の面でも有効だということでございます。大変すぐれたアイデアではないかというふうに私も感ずるわけでございまして、これまで高度化事業につきましては国と都道府県が組んでやってまいったわけでございますけれども、市町村の力もかりながらやれるものかどうか、さらに研究をいたしたいというふうに考えております。
  133. 西川太一郎

    ○西川委員 長官に重ねてお尋ねしますが、今長官が、決して舌足らずではなくて、私は予定どおり質問しているわけであります。舌足らずだとは受け取っておりませんという意味でございまして、十分御答弁いただいていると思っておりますが、ただいまのお話にございました、国もやっております、こういうお話でございますが、それはいわゆる地域小規模企業創業等基盤整備センター、これの事業のことをおっしゃっているのでございますか。もしそうであるとするならばそれはそれでよろしいのでございますが、ちょっとこの辺、食い違っているといけないので、恐縮です、ちょっとお尋ねします。
  134. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 予算要求上の正確な名前を、今は手元にないのでございますけれども、私ども、俗に創造団地と、グリエーティブな事業をやっていただくための創造団地と称することで予算要求をしているところでございます。
  135. 西川太一郎

    ○西川委員 今私が申し上げたことだろうというふうに思います。これは大変すばらしいことでございます。承るところによれば、利息は無利子でよろしい、そして貸し付けの割合は、八割貸してくださる、そして償還期限は二十年、据え置きを三年置く、大変すばらしい計画であるというふうに承知をいたしておりますが、さらに、おんぶにだっこでお願いをするわけではございませんけれども、るる申し上げましたような諸般の事情の中で、ひとつ活力ある東京をつくりたいという私どもの念願をぜひ聞き届けていただきたい。  こういう意味で、これは東京だけの問題ではありません、いろいろな地域に波及をしてまいります。したがいまして、ぜひひとつ賃貸型工場アパート、これを創業の場として、空洞化を防ぐ一つの特効薬になると私は思いますので、大臣ひとつ、恐縮でございますが、これに対する御決意なり御感想なり賜れればありがたいと思います。
  136. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今長官からもお答えをいたしましたが、私どもとしても全力を挙げて努力をしてまいります。
  137. 西川太一郎

    ○西川委員 ありがとうございます。  続いて、私は、円滑な事業承継、税制の問題を少し、相続税等についてお尋ねをしたいというふうに思うわけでございます。  今、中小企業の皆様方が、創業者が高齢化をしているというのが最近の調査で明らかになってまいりました。それによりますと、今、東京における中小企業者、なかなか税金の問題などがあって、税金の問題を助けるために調査をするのでありますけれども、どうも嫌がってなかなか本当のことを言ってくれる人がいないというので、今までしっかりしたデータが把握できなかったのでありますが、今回、税理士さんやいろいろな方々の御協力もいただきながら東京都の労働経済局が調査をいたしましたところ、東京の中小企業経営者の約四〇%が六十歳以上で、今後相続問題が多発するであろう、こういうふうに言われております。  ところで、八〇年代以降、東京の工場や商店は減少の一途をたどっておりまして、年平均一・四から一・八%の趨勢で減少しております用地域経済の活性化に大きな影を投げかけておりまして、今後もこの問題がこうした傾向に拍車をかけることは必至であります。  平成六年度の税制改正で、相続税率の適用区分の拡大や課税最低限の引き上げや配偶者控除の引き上げ、小規模宅地に対する課税の特例等が認められたわけでございますけれども、中小企業の事業承継という観点から見た場合、現行の相続制度には、宅地以外の工場等の事業用資産の取り扱いでありますとか、自社株の評価方式でありますとか、法人の事業用地の取り扱いなどが抜けていたり、いろいろ問題があるわけでございます。  そこで、今回調査をいたしました結果を見ますと、百社の平均相続税額、これは平成五年度の路線価を基準にいたしておりますが、一社当たりが約七億六千万円。これは初めて表に出てくる数字でございまして、東京の中小企業の一社当たりの相続の税額が七億六千万円である。それで、このうち六割がこの調査に対して、現行の相続制度では事業の承継はもう相続税を払ってしまったらできません、もしくは払えません、物納以外にできませんというようなことを言っておりまして、大変この問題が困難になっております。承継の困難な主な理由としては、そういうことに対応して、事業用地が広いとか、都心や商業地に立地するために評価額が大きいとか、事業に資産を投入して納税のための流動資産が不足しているなどということもございます。  そこで、こういうようなことを踏まえて、私は以下数点お願いをしたいのでございますが、まず一点は、相続税率を緩和していただけないだろうか。これは大蔵大臣御経験の橋本先生にお尋ねをいたすわけでございます。  なかなか簡単にここでできるよということをおっしゃりにくいだろうということは私もわからないではないのでございますけれども、中小企業に限って何とか特例をしていただけないだろうかということを申し上げていることをひとつ念頭に置いていただきたいのでございますが、言うまでもなく、最高税率は日本は七割、アメリカは半分、五割、そしてイギリスでは一律で四〇%、フランス、ドイツでも四〇%というふうに、相続税は我が国は非常に高いわけでございますね。これが一点。  それから二点目は、法人の事業用宅地に関する小規模宅地評価減の特例を新設していただきたい。つまり、個人に対しては小規模宅地について減額を認めるのですが、法人についてはこれは認めないというのでありますけれども、これもひとつ小規模な法人につきましては認めてやっていただけないだろうか。  三点目は、土地保有の特定会社制度、これは廃止していただけないだろうか。  これが早急に見直していただきたい三点なのでありますが、いかがでございましょうか、これにつきまして御答弁いただきたいと思います。
  138. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは私からお答えをするわけにいきませんので、今の御要望は正確に武村大蔵大臣に伝達をいたしたいと存じます。  ただ、私自身、今伺いながら、ちょうど私の大蔵大臣在任中には、医療機関における承継税制の問題が非常にかまびすしいときでありました。これにつきましてもなかなか工夫の要ることでありましたことを今思い出しております。  御要望をそれぞれに、それなりに理があると思いながら、なかなか現実には難しい問題点を含んでいる可能性がある、そのように思いますけれども、正確に武村大蔵大臣にお伝えをいたします。
  139. 西川太一郎

    ○西川委員 大臣のお気持ちが読み取れましたので、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと存じます。  続きまして、私は通産省が、中小企業庁が今鋭意御検討中と承っております創造的中小企業技術振興法、仮称につきましてお尋ねをしたいというふうに思います。  すぐれた技術の種子、シーズをお持ちの方々に対して助成の制度を創設しようという意図は、私どもの願っているところと全く軌を一にいたしまして心強い限りであります。これの早期実現のために、私個人的ではございますけれども御協力をいたしたい、これはまた、十二月十日に新党ができて方針がどうなるかあれでございますけれども、だれも異存のないところだろうというふうに想像をいたします。  そこで、こういう問題につきまして、お国がお決めになったいろいろな融資制度もしかり、また設備貸与制度もしかり、先ほど来議論しております創業の場の確保政策もしかり、国が一つの方針を打ち出していただきますと、それに各地方自治体が、四十七都道府県協力をして、もしくは協調をして政策の実を上げていく、こういうパターンはこれも十分考えられるわけであります。そこで、この国庫補助を要求をしている自治体もあるわけでございます。  そこで、この問題につきましてぜひひとつ新法の制定を早めていただくと同時に、それに伴うところの助成策も深めていただきたい、こういうふうに思うのでございますが、いかがお取り組みになるのか、ひとつお聞かせをいただきたいと存じます。
  140. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私どもといたしましては、やはり独自性、優位性のある技術開発などとともに、その成果の事業化によって新たな事業分野を育てていく、その中の中小企業国内生産拠点を維持し、確保することは本当に大切なことだと考えております。  そうした中で、今まで調べてまいりますと、中小企業者が非常にいろいろな努力をしておられましても、一つはその技術情報の収集力に問題があったり、あるいは資金調達の面において問題があったり、さらに、まさにまだシーズの段階で非常に困難を感じられるというケースがございます。  そうしたことから、私どもとしては平成七年度の中小企業対策として、資金調達あるいは技術情報提供の円滑化、さらには販路開拓の支援などの法的措置を含めました支援策を総合的に組み立てていきたいと考えておりまして、これはぜひまた御協力を賜りたいと考えておるところでございます。  私どもとして、来年度具体的に考えてまいりたいというポイントとしては、小規模なシーズ研究に対する助成を含む技術改善費補助金を拡充していくこと、あるいは財団法人でありますベンチャーエンタープライズセンターの債務保証基金の積み増しをしておきたいといったこと、さらには、これは税制に絡むことでありますけれども投資損失準備金制度の創設あるいは欠損金の繰り越しの延長といったことを今要求しておるところでありまして、こうしたものを含め、有機的な連携を図ることによって委員指摘のような役割を果たしてまいりたいと考えております。  どうぞ、それこそ党派を超えての御協力をこの場をかりてお願いを申し上げます。
  141. 西川太一郎

    ○西川委員 ぜひひとつ早期実現と、また、制度の弾力的な活用をぜひお願いを申し上げたいと思います。  中小企業庁長官大臣から御指示があったようでございますので、ひとつ答弁をお願いできますか。
  142. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 今、大臣から本気でしっかりやれという御指示もございましたので、全力を挙げて実現に努力したいと思っております。
  143. 西川太一郎

    ○西川委員 大いに御期待を申し上げております。  先ほど私、税制上早急に見直しの必要なこととして三点お願いをしたのでございますが、大蔵大臣に正確に伝えてやるよ、こういうことでございますので、恐縮でございますが、重ねてあと三点、中長期的な問題もこの機会通産大臣としてひとつお聞きをいただきたいというふうに思うのでございます。  この問題は、言わずもがなでございますが、通産省としては中小企業者の味方として長い間お力を発揮していただいている範疇でございますから、通産大臣に御要望を申し上げても一つも私は筋違いてない、答弁をいただくことはどうかと思いますが、ひとつこれは要望をし、まずは大臣の意気込みを伺いたいな、こう思うのであります。  それは、事業用資産に対する相続税が決定をいたしますと、先ほど来の平均七億六千万円、そして六割が転廃業を余儀なくされてしまうというような見通しの中で、何とか納税の猶予措置をひとつ考えていただけないかという点が一点でございます。  それから、そもそもこういう高い土地というのは中小企業者が好んでそういう土地の高騰を招いたわけでないということはもう常々言われているところであります。したがいまして、この土地評価の方法の見直しとか土地の減額評価というのを、これは実はちょっと物知りに聞きましたところ、アメリカでは減額評価というのはやっているんだよ、こういう話もございまして、詳しく研究をしておりませんが、こんなものもひとつ採用していただけないでしょうか。  それから、さっき要因の中で一つ申し上げましたところの自社株の評価方法でございますが、これもひとつ見直していただけないだろうか。これもアメリカは実は弾力的に評価を可能とする制度を持っているというふうに聞いております。こういう問題が日米間の問題に発展しないうちに、発展する心配はないかもしれませんが、ひとつ力を発揮していただきたい、こういうふうに思います。これは御要望を申し上げておきたいと思います。  そこで次に、今までは主として、中小企業者もそうでございますが、製造業分野についてお尋ねをしてきたわけでありますが、商店街のことについてお尋ねをしたいと思います。  大型店の規制緩和がアメリカからの要求によって促進をされている。そういう中で、いわゆる地域商業の活性化というものを目指して施設整備事業の補助を国は行っておられますけれども、大型店の規制緩和等に伴い地域の商業がさまざまな影響を受けております。そこで、商業基盤等施設整備対策というものを充実していただいて、商店街の活性化をお願いをしたいというふうに思うのであります。  加えて、先ほど来内外価格差の問題の中で、価格破壊の問題が少し論じられましたけれども、例えば最近大手のスーパーが自社ブランドでいろいろなものをおつくりになる。お酒までおやりになる。大手のスーパーにとってはそれはある種の目玉でございまして、総売り上げや商品構成の中に占める割合はほんの少しであると言っても過言でないというふうに思うのであります。  ところが一方、それを業とします専門店においてはそれが一〇〇%でございますから、こういう問題は単なる価格破壊という問題で片づけられない、非常に深刻な問題を地域商店街に惹起しているのではないかというふうに思うわけでございます。  ここらのことにつきまして通産省としてはいかがお取り組みになるのか、御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
  144. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 委員指摘のとおり、中小小売商業者をめぐります環境は大変大きく変化をしているところでございまして、このような中で、経営に苦しんでおります中小小売商業を支援いたしますために、私ども総合的な対策を進めていきたいというふうに考えているところでございます。  中身は、大きく分けましてハード関係の事業と、もう一つは情報化等のソフト事業でございます。  ハード関係の事業につきましては、御指摘もございましたが、商業基盤等施設整備事業、これによりまして魅力ある商店街づくりに必要な各種施設を整備していく、これの補助を行っているわけでございますけれども、これの規模そしてまたその質の面でもさらに来年度要求、レベルアップを図ってまいりたいというふうに考えております。  それからソフト事業につきましては、各都道府県に設置されております中小商業活性化基金、これは全国で千三百六十億円ほどの規模になっておりますけれども、これによります商店街のイベント事業の支援でございますとか、あるいはただいま御指摘の価格破壊等に対応するための中小小売商業によります情報ネットワーク事業、こういうものの導入への支援、こういったものを積極的にやってまいりたいというふうに思っております。  特にこの情報機能につきましては、明年度、二十一世紀型の商業基盤整備事業といったようなものも考えておりまして、情報関係あるいは高齢化社会、地域文化その他十分配慮いたしました商店街整備を進めるということで予算の折衝に当たっているところでございます。
  145. 西川太一郎

    ○西川委員 今、産業空洞化から始まって商店街の対策等について通産大臣の御見解を中心に質疑をさせていただいてきたわけでありますが、ちょっと旧聞に属する話で恐縮でありますが、アエラという雑誌の九三年秋に「東京大田区町工場物語」というルポが載っております。これは冒頭大臣が、おまえの出身地区と共通しているものがあるよとおっしゃっていただきました大田区の下請企業で、みずから旋盤工として働きながら直木賞にたびたびノミネートされた小関さんという作家のルポでございます。  この中に、私は本当にびっくりするような表現があるので驚きました。先ほど同僚の河合議員からも質問がございましたが、仕事が全くない、これを零細企業者の間では暇地獄と呼んでいる。暇地獄。忙しくて休む暇もないほど働いて油まみれになったときは、母ちゃん連れてちょっと温泉にでも行ってこようよ、そんなゆとりが持てたらいいねなんということをみんなでしゃべり合っていた中小企業のおやじさんたちが、零細企業と言った方がいいのでしょう、おやじさんたちが、今おれはもう暇地獄に陥っている。前の晩、焼き鳥屋で一杯飲んでいた人が、翌日三千万円の負債が返せないで自殺をしていたというような話もこの中にあります。  私はあえて情緒的に物を言おうなどというふうには思っておりませんが、こういう、この実際の現場をルポされた、しかもみずからがその油の中で仕事をしている方のルポというのは非常にリアリティーに富んでおりまして、私が実際、下町の地元を歩きますと、静かでいいですねと、お昼に行って、その町工場のおかみさんにどなられたことがございます。静かだということは機械が動いてないということなんだ、あんた何言っているの、それであんた国会議員なのかと言ってしかられたことがございまして、汗顔の至りであったことをみずからここで暴露するのもどうかと思いますけれども、少なからずそういう思いをされている同僚、先輩各位いらっしゃると思うのでございます。  仕事がない、無能のゆえに仕事がとれない、怠け者であるがゆえに仕事がないというのではなくて、精いっぱい頑張っている、精いっぱい生きているのに、これが世界の大きな経済の流れ、構造的な変化と言われる中で埋没している零細企業者の悲鳴でございます。  私は、国会議員になれて何が一番幸せであったかといえば、こういう場に立って、中小企業行政の衝に当たられる通産大臣に直接現場の声をお届けできることが何より幸せであると思ってきょうは質問に立たしていただいておりますので、一連の質疑、失礼なことや足りないところがあったかも存じませんが、意のあるところをぜひひとつお酌み取りいただきまして、ぜひひとつ中小企業、特に零細企業のために抜本的な、しかもスピードの速い対策をお願いをしたいというふうに思うのでございます。  これは重ねて通産大臣のお覚悟を承り、それを、本日、私地元で大勢集めて国会報告会をやりますので、そこで報告をしたいと思いますので、よろしくひとつお願いしたいと思います。
  146. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御期待に沿えるかどうかわかりませんけれども、私なりに全力を尽くして努力をしていきたいと思います。  たまたま明日、明後日、大阪でAPECの中小企業大臣会合を、私は司会をすることになります。また、明後日には、そのAPECの日本に対する輸出、我々から見れば輸入フェアを大阪で開催することにもなります。  こうしたことは、アジアの各地域ばかりではなく他の地域も含めて、日本技術がそれぞれの地域を潤すという点では望ましいことでありますけれども、結果として日本産業が滅びてしまう、そのような事態を惹起するわけにはまいりません。  産業構造審議会の答申で十二の分野を挙げて、二十一世紀に向けての方向づけはされておりますけれども、そうした問題とはまた別に、我々としてできる限りの努力をこれからもしてまいります。よろしく御支援をいただきたい、心からお願いを申し上げます。
  147. 西川太一郎

    ○西川委員 もうあと十数分しか時間がございません。お若いときから存じ上げておりまして、御先代にも御指導いただいた経験のございます私としては、高村長官大臣就任を心からお祝いを申し上げたいと思います。御祝儀の意味で質問をさせていただきたいと思いますので、ひとつお許しいただきたいと思います。  先ほど甘利先輩からお尋ねがございまして、長官が御就任早々、経企庁長官としてのお立場を十分御承知の上でこの景気の誘発、回復、このために御努力をされているということ、私も敬意を表したいと思います。  そこで、まず基本的なことを、長官に私の見解を先に申し上げてお尋ねをしたいと思うのであります。  若干ペダンチックなことになるかもしれませんが、不肖私もかつては経済学をいささか勉強した経験がございますので、お許しいただきたいと思うのでありますが、今次、この平成不況というのは、ある論者に言わしむれば、原因なき不況と言われ、また人口に膾炙した複合不況という分析もこれあり、どういう処方を書いて、どういう薬を製薬したらよいかということはなかなか難しいということは私もわかります。  しかし実質、リアリティーの世界でいえば、非常に長かった、異常と言えるぐらい長かった、これはどこかおかしいんじゃないか。従前のように階段の踊り場でちょっと一息つくようなそういうリセッションじゃない。もうこれは大変深刻な問題なんじゃないか。そこからいわゆる構造的な問題というようなこと重言われるわけでありますが、私は長官にお尋ねしたいのは、数次にわたるカンフル注射を何十兆と打ったのに、何でそれがこんなに回復が遅くなってしまったのか、そして、そういうカンフル剤を打った分野、セクターが必ずしも回復していないというふうに思うのでありますけれども、一体それはどういうことなのか。  例えば、公共事業というのは、かつて乗数効果という議論がございました。一兆円のものを公共投資で使えば、それが国民総生産において回り回って二兆五千億円の結果、三兆円の結果を出せば、乗数効果は二・五であり三であるというふうに言われてまいりました。高度成長時代はそれが玉もしくはそれ以上であったのに、今は一・五以下であるという研究も承知をいたしております。  そして、もう一つ大事なことは、この公共事業というもの、公共投資というものの直接の利益をこうむる方々、恩恵をこうむる方々というのは、いわゆる建設業であり、また素材産業といいますか、鉄鋼であり、セメントであり、非鉄金属でありというような、そういう分野が第一次的に影響を受けるんだ。  ところが問題は、そういうセクターが日本経済の中枢で活躍をしていた産業構造とは打って変わって、今日それはハイテク化、自動車であり、コンピューターであり、そういう分野に移っていった。そして、さらにそれは、経済のソフト化を促進させる中で、コンサルタント業務であるとかサービスであるとかコンピューターソフトの開発であるとかというものに移っていくんだ。  つまり、カンフル注射を打つ場所が違うんじゃないか。かつての主流であった素材産業や建設産業に何本太い注射を打っても、それの乗数効果はあらわれないという意見があります。  それからもう一つは、限界消費性向、所得の増分に対する消費に回る部分が決してふえていない、むしろ大幅にダウンしている。逆に限界貯蓄性向、所得のふえた分を貯蓄に回す、その数字は大幅に率は上がっている。だから、これは長期化。した不況に対する不安感、高齢化社会に対する対応の不十分さに対する不安感、こういうものが、自己防衛というもので、給与所得者に今言った限界貯蓄性向をふやさせているのではないかという意見もあります。  加えて、制度的に公共投資の配分が固定化し過ぎているんではないか。公共投資に決まった額の七割は無条件で建設省が使う、そして残りをそのほかのお役所が使う。特に農水省が二〇%、運輸省が五%、残りを他の省庁で分けるんだ。〇・一%の配分すら動かすことは、これはえらいことなんだということが過日新聞に報道されておりまして、私は、うかつにそんなことを知らないでびっくりしたのでありますけれども、こういうことを考えますと、長官にお尋ねしたいのは、どうも乗数効果を期待して、経企庁としてはケインズ流の有効需要の理論に基づいて、そのカンフル剤を打とうとして、また打ってまいられましたけれども、それを打つ場所が違っているのではないか、こういう意見に対しまして長官、どういう御印象をお持ちかがまず第一で、そして、もしそこからじゃ、承ります。
  148. 高村正彦

    高村国務大臣 御祝儀の質問にしては質問通告のないことを聞かれてちょっと戸惑っているわけでありますけれども、数次の経済対策、それなりの効果はあった。今住宅投資とともに堅調なのは政府投資だ、こういうことを言われているわけで、それなりの効果はあった、こういうふうに考えております。  確かに公共投資の配分、固定化しているというような問題点ありますし、さらに、もろもろの民間活力をどうやって導き出すか、いろいろな問題はありますけれども先生の御見解、勉強させていただきながらさらに検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
  149. 西川太一郎

    ○西川委員 大臣への通告は和してあるんでございますが、大ざっぱな通告であったために、今のようなちょっとずれがございましたことをおわびします。  大臣は御政務御多端でございましょうが、局長さんや課長さんは今のことについてもう少し、つまり、経企庁の官庁エコノミストの代表としての、例えば大来局長などは、私は、余計なことでありますが、御先代の選挙のお手伝いをしたこともあるんでございます。ですから伺いたいんでございますが、今言ったような理屈は間違っているんでしょうか。
  150. 大来洋一

    ○大来政府委員 幾つかおっしゃいました点、それぞれ非常に適切なものだというふうに感じます。  ただ、若干つけ加えさせていただけば、乗数の変化というのは確かにございますけれども、しかし依然として乗数効果がないわけではない。今、先ほど先生がおっしゃいましたように、公共投資で申しますと、乗数効果は一・三九というふうに経済企画庁でも計算をしております。ということは、公共投資そのものの需要効果だけではなくて、それプラスアルファがあるというふうに考えておるところであります。  それが、しかし、公共投資のどういう部分にカンフル剤的に予算を傾注するかということでございますが、これは時代の変化に伴いましてある程度、社会資本の中身について変化を景気対策においてはつけてきた部分もございます。  それから、公共投資が効果がないという点については、今大臣が申し上げたようなことでございますが、不況がある程度深化しましたところで累次の対策がとられたわけでございます。その対策がとられた後ないしは対策がとられている最中に昨年のような急激な円高が参りまして、他方で公共投資の効果は出ておるわけでございますが、別の、それを相殺するようなマイナス要因というのが新たに発生してしまった、こういうことも公共投資の効果を見えにくくしていたのではないかというふうに思います。  それから、貯蓄性向の高まりということでございますが、これは傾向としましては、統計にもよりますけれども、昭和四十年代の半ばを境といたしまして、貯蓄性向が徐々に下がってきております。しかし、バブル期におきまして家計も大変耐久消費財をたくさん購入いたしまして、その購入疲れというものがございます。いわば、家計でもストック調整というのが必要になったのではないか。そういたしますと、そのストック調整が重荷となりまして、耐久消費財を含めた消費の比重、消費性向というのは下がってしまう、貯蓄性向は上がってしまうということが起こったのではないかと思っております。  いずれにしましても、今回の景気については、いろいろ過去と違った要因が生じているということのために、非常にその読み方が難しくなっているということについては強く認識しているところでございまして、今後さらに、景気の現状、先行きにつきまして間違いのないように調査をしてまいりたいと思います。
  151. 西川太一郎

    ○西川委員 どうぞ大臣景気の、経済のかじ取り役としてひとつ大いに頑張っていただきたいと御期待を申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  152. 白川勝彦

    白川委員長 次に、伊藤達也君。
  153. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 東京の第十一区、いわゆる多摩地域から選出をしていただいて、今回初めて質問させていただきます伊藤達也でございます。私は当選してまだ一年三カ月の新米の議員でありますので、一生懸命質問させていただきますから、どうかよろしくお願いを申し上げます。  いただいた貴重な時間の中で、私は、これからの日本経済空洞化というものを防いでどうやって活力というものを維持していくのか、そのためにこれからどういう産業政策日本は持っていかなければいけないのか、あるいは産業の体質、経済の体質、これをどういうふうに改善していったらいいのか、そういう問題を中心にお伺いをさせていただきたいと思います。そして、できればさらに、これから急激に高齢化社会に突入するわけでありますから、その前にどういう形で社会資本の整備を進めていったらいいか、この問題についてもぜひ質問をさせていただきたいというふうに考えております。  では、まず初めに、深刻な産業空洞化、この原因になっております円高の問題について、通産大臣にお伺いをさせていただきたいと思います、  私は、実は六年前、アメリカの連邦議会の方で勉強させていただく機会がございました。この当時、大臣が大変今御苦労されていますスーパー三〇一条でありますとか、アンチダンピング法案でありますとか、アメリカの新しい通商法案、これを審議しておりました。この審議の過程を通じて、アメリカの対日戦略、日本に対する考え方というものをかいま見る機会がございました。  その当時からアメリカは、日本経済力に対抗していくために、円高に持っていくことによって日本経済力を弱めていくことができるのじゃないか、こういうことを実は議論していたわけであります。実際に今の経済の実態と、そして円とドルのレートというものほかなりかけ離れているものがある。その背景には政治的なものがかなりあるのではないかというふうに思います。  この円高の特殊性というものをどういうふうにお考えになっているのか、あるいは、行き過ぎた円高というものをどういう形で是正していったらいいのか、通産大臣のお考えを直接お伺いできればというふうに思います。     〔委員長退席、尾身委員長代理着席〕
  154. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、後場の一番新しい数字を受け取ったところでありますが、九十六円七十八銭から八十八銭、この数字が我が国のファンダメンタルズをはるかに超えたものであることは、委員の御指摘のとおりであります。ただ、今委員が御自身の体験の中から、対日戦略としての円高という点に触れられましたことに対して、多少私は異論がございます。  と申しますのは、昨年の一月にフランクフルトでG7カウンシルが行われましたとき、ちょうどアメリカの新旧両政権の財務省関係者のうち相当部分がそこに出席しておりました。そして、そのときに非常に私が興味深く聞きましたのは、共和党政権というものと民主党政権というものの物の考え方について、一つの例でありますけれども、出たものが為替についてだったわけであります。そしてそのとき、これは比較対照の問題でありますけれども、共和党政権は実力以上に自国の通貨の価値の保持に神経を使う、民主党政権は、ドル安を求めるとは言わないが、必ずしも自国の通貨の価値に拘泥しないという話が出ておりました。その時点で、私はそんなばかなことがあるかと正直思ったのです。  ところが、昨年のたしか二月であったと思いますが、既に日本国内でも非常に有名になっておりますバーグステンが日本に来ましたときに、為替の水準というのはその国の最も輸出競争力のある産業の実力に応じて設定されるべきという議論を彼が展開し、私との間で論争になりました。その直後に彼はいわゆる一ドル百円論を公式の場で発言をいたしまして、大変な議論を呼んだわけです。そうした流れの中を見ていきまして、確かに私は、ナポリ・サミット、またその後の機会での議論をいたしまして、かつて大蔵大臣として私が議論をいたしました人々の間に差異があるような感じはいたします。  ただ、先般ワシントンで、ルーピンさん、タイソンさん、グリーンスパンさん、また、ナポリにおいてベンツェン財務長官にも申し上げましたのは、円高というものをもしアメリカが意図的に武器として使われた場合、これはもろ刃の剣の作用をするのではないだろうか。  当然のことながら、我々も自国の通貨の価値には敏感に行動せざるを得ないが、それ以上に極端な円高、それは言いかえればドル安ということになり、現にマルクに対しても弱含んでいるドルというものを考えるとき、必ずしもそれはアメリカにとってプラスを招かない。なぜならば、それは投資家の米国債に対する関心を縮小し、場合によっては米国債応札を減らすだろう。事実そういう傾向は多少出ていますね、御承知のように。そういう状況の中で米国債の価値を維持しようとすればいや応なしに金利は上がらざるを得なくなる。しかし、高金利を採用することはアメリカ経済回復の足をとめることになるのではないか、そんな議論も実はいたしておりました。  私は、実は九月三十日から十月一日にかけましての交渉の中で、これが市場に変に受け取られないかということを本当に気にしておりましたが、市場が平静に推移してくれたことをほっとしておりました。それだけに、現在の状況というものは非常に、私自身が多少神経過敏かもしれませんが、心配をいたしております。  通貨当局の皆さんにファンダメンタルズを反映した為替の相場形成がなされるよう確固たる対応をG7の各国の協調の中で実現をしていただき、そして、そういう中で落ちつきを取り戻すことを強く期待すると同時に、やはり引き続き内外の経済動向というものに注視をしながら経済運営を進めていかなければならない、今私はそのように感じております。
  155. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 円高への誘導というのは、今大臣が御指摘があったようにもろ刃の剣であります。その御指摘というのが実はアメリカ経済社会の中において、あるいは産業社会の中においてどうも十分に認識されていないのではないかなという感じがしてなりません。  私も、この夏に商工委員会の派遣でアメリカに行かさせていただきました。そして、アメリカのいろいろな政府高官と意見を交換させていただいて、大臣と全く同じ視点で質問をさせていただいたわけでありますが、どうもその辺についての反応が非常に鈍いところがありましたので、引き続きこの点については大臣から強く主張していただきたいというふうに考えております。  次に質問を移らさせていただきたいと思います。  規制緩和についてお尋ねをしたいというふうに思うのですが、内外価格差の是正やあるいは産業の活性化の視点からも、担当官庁である通産省が率先をして規制緩和の問題に取り組んでいかなければいけないというふうに考えております。したがって、特に経済的な規制については、これは期限を決めて、原則廃止あるいは見直しということをやらなければいけないというふうに考えております。  また、運用が不透明とされる省令や規則、さらには行政指導等に対し、行政手続法の厳格な適用と徹底した情報公開により未来に向けた透明な行政をいち早く実現をして、国民の信頼というものを取り戻していかなければいけないというふうに考えますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  156. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、今の委員の御指摘はそのまま素直にちょうだいをいたしたい、そのように思います。そして、先ほど申し上げましたように、千九百八十何件でしたかちょっと忘れましたが、八十六件ですか、現在抱えております通産省の規制政府の目標として一割という目標を掲げてまいりましたが、本年度末正式に御報告を申し上げる時点におきまして、恐らく二百二十件に近い数を整理できるのではないか、今そのようなつもりで作業をいたしております。その点では委員の御指摘のとおりであると私は思っておりますし、引き続きこれからも努力をしてまいらなければなりません。  ただ、実は、私が着任をいたしましてからまだよくわからないのが通達の世界でありまして、私大変苦い思い出を持っておりますのは、ちょうど証券・金融不祥事が発生したときの担当閣僚として私は、実は、証券行政のさまざまな規制を法律に移すものあるいは民間の自主的な機能に移すべきものという仕分けをしたいと思いまして、関係の通達集を持ってこさせました。そうしたら、実はこんなにあったのです。  そして、結局それを整理しまして、相当程度にきれいにしたつもりでありました。結果的に世間から受けた御批判は、規制がふえたという御批判でありました。それはそのとおりでありまして、通達で処理しておりましたものを、透明性を確保するために一部のものは法律事項として移しかえたわけでありますから、全体は非常に整とんされましたが、数ということにこだわるならば、その結果、規制の数はふえたという御批判もあったわけであります。  私は、これからどうぞ通産行政をごらんをいただきます中で、その通達でありますとか指導でありますとかといったものの透明性をできるだけとらえてきちんと処理していくように事務方にも指示をしたいと思いますが、その中で、結果的に逆に法律に取り入れるものが発生する可能性というものは否定できません。どうぞ数だけの批判でなく内容をごらんいただきたい。これは苦い体験を持つ者としてお願いを申し上げます。
  157. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 これは政府委員の方でも構いませんが、今通産省の中で規制緩和についてのいろいろな作業を進められていると思います。特に重点的にこの規制は緩和をしていこうということでまとまったものがございましたら、お教えをいただきたいと思います。
  158. 林康夫

    ○林(康)政府委員 規制緩和の全内容については現在検討中でございます。規制緩和については、先生指摘のように、新しい市場の創出とか消費者の選択の幅の拡大とかさまざまなプラスの効果があるわけでございますので、また、通産省といたしましても率先してこれまで取り組んできたつもりでございます。政府全体の規制緩和の牽引力となるというつもりでやってまいりたいと思います。  今の御質問の具体的な内容でございますが、現在検討中ではありますが、具体的には、これまで大店法の出店・営業規制の大幅な緩和措置、あるいは大口需要家に対するガス供給に関する事業規制の緩和等を盛り込んだ法改正を実現したわけでございます。さらに、本年七月には、電気用品等の基準認証制度の合理化あるいは国際整合化、そしてガソリンスタンドの設置規制の緩和、そして特石法の廃止、そして電気事業について、即発電事業許可の原則撤廃、需要家への直接供給に関する新規の参入条件の整備、あるいはPL法の制定に伴います保安規制の合理化等の緩和措置を既に決断しております。  今後、政省令の改正、そして次期通常国会に向けての法律の準備等を鋭意進めておるところでございます。
  159. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 審議官、どうもありがとうございました。  規制緩和の目的の一つであります新しい産業をどう育成していくか、この問題について質問を移さしていただきたいと思います。  国際化の大きなうねりの中で日本産業構造も大きく転換をしていかなければなりません。急激な円高の中で生産拠点がどんどんどんどん海外に出ていっているわけでありますが、これを完全に食いとめるということはこれはもう不可能ではないかというふうに思います。そうだとするならば、その分の雇用を新しく日本国内の中で起こしていかなければいけないというふうに考えるわけでありますが、通産省としましては、これからどういう有望な新しい分野というものを考えておられるのか、また、その分野をどういう形で育てていこうとされているのか。それについて検討されているようでございましたら、通産大臣からお答えをいただければというふうに思います。
  160. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは、私がと申しますよりも、私が着任いたします前の時点でありますが、本年の六月に産業構造審議会の基本問題小委員会の報告書というものが提出をされました。その中で、今後、国内における社会的なニーズの強い分野、すなわち、住宅関連あるいは医療・福祉関連など十二の分野で、新規・成長分野の展開が期待されるという報告が出てまいりました。  その中を拝見してみますと、生活文化関連あるいは都市環境整備関連、環境関連、エネルギー関連、本当にそれぞれの分野に、なるほどと思わせるものを持っております。そして私は、この報告が非常に現状を踏まえた的確なものだと、そのような判断をいたしました。  そして、今日まで政府として、新しい事業を育成するためにということではさまざまな措置をとってきたわけでありますが、特に通産省の立場として、中小企業技術開発を支援する技術改善費補助金あるいは産業基盤整備基金、あるいはベンチャーエンタープライズセンターによる債務保証制度、中小企業金融公庫等の政府系金融機関による融資制度などの施策を講じてきたわけでありますが、今後、特に具体的に来年度、小規模なシーズ研究に対する助成を含む技術改善費補助金の拡充を図りたい、また、ベンチャーエンタープライズセンターの債務保証基金の積み増しを行いたい、同時に、これは税制に絡むことでありますけれども投資損失準備金制度を創設したい、欠損金の繰越期間の延長を行いたい、こうした要求を行っております。  いずれも、問題としては大変困難な問題でありますけれども、こうしたものを有機的に組み合わせることによりまして新規事業の展開を支えてまいりたい、そのように考えております。
  161. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今大臣から御答弁をいただいたわけでありますが、この審議会を見守ってまいりました政府委員の方から何か補足的な説明がございましたら、いただきたいというふうに思います。
  162. 堤富男

    ○堤政府委員 大臣からの御説明の若干補足をさせていただきます。  この十二分野を選ぶ過程で一つ議論がございました。従来は、どういう分野が伸びるかというと、先進諸国を見ると必ずお手本があったわけでございますが、今回の場合には実はお手本がなくなったというところが、新しい時代に入ったというふうに我々は感じております。  そういう意味では、ここに書いてあるようなものを、本当に自分たちの欲しいものは何だろうか、社会的ニーズとは何だろうかというようなものを一生懸命考えた結果、我々が物的な要求からどうも質的なものにかなり変わってきているのではないだろうかとか、あるいは個人的な要求から社会的要求に変わってきているんじゃないだろうか、あるいはもう一つは、今申し上げたのは必要性からの判断でございますが、技術としてどういう分野のものが出てくるだろうかというようなことを考えましてこの十二の分野を選んだわけでございますが、決してこれがすべてだというふうにも思っておりません。もっと多くの部分があると思いますけれども、大きなものはこの十二分野ではないかと一応考えております。
  163. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 どうもありがとうございました。  今の御答弁の中で、これからの新しい産業政策をどう考えていくのか、その大きな枠というものが見えてきたような気がいたします。今述べられたように、新規有望分野への企業進出の促進や新技術の開発のほかに、ベンチャービジネスの育成。ベンチャービジネスの育成が極めてやはり重要な課題ではないかなというふうに私は考えております。  実は私は、選挙に立候補する前に、日米両国のベンチャービジネスにかかわる仕事をした経験があります。米国の店頭市場、NASDAQの関係者ともいろいろ交流をしてまいりました。ベンチャービジネスの育成に当たってはやはり資本市場、とりわけ店頭市場のような場で、これは大臣がいろいろなところで言われていると思うのですが、簡単に、容易に資金というものを調達できるような仕組み、そういうものを整備をしていくことが非常に重要ではないかなというふうに考えております。  その点で米国の店頭市場、いわゆるNASDAQは、我が国のこれからの産業政策を考える上で非常に示唆に富んだものがあるのではないかなというふうに思います。その理由は、NASDAQそのものが、もう既にニューヨーク証券取引市場に続き世界第二位の証券取引高を誇っている市場になっているんだ。年間二兆円近い資金企業に供給し、米国経済回復の立て役者と言われるようになっている。この点について、日本は実は十分の一以下でしかないというのが現状であります。  特に、NASDAQの成長率というものは非常に著しくて、ニューヨーク証券取引所が八三年から九三年のマーケット成長率が一九八%なのに対し、NASDAQは何と六一七%の高率で成長をいたしております。また、欧州諸国では、NASDAQの成功と、これに伴う米国経済の復活に加え、欧州の優秀な企業がNASDAQでの資金調達を目指して米国に流れ始めている、こういう現実を見て、EC型のNASDAQをつくろう、こういう試みを検討しているというふうにも聞いております。  今後の我が国産業政策、雇用対策を考える上で、米国のNASDAQの成功は非常に示唆に富んでいると思われます。我が国において、民間資金が国際的に見ても非常に豊富にあると言われており、これを資本市場で有効に利用することが我が国経済を復活させるに十分な雇用を確保する上で決め手になる政策だというふうに思うのですが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。     〔尾身委員長代理退席、大畠委員長代理     着席〕
  164. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 たまたま先日、飛行機の往復の中で「バブル・ゲーム」という大変おもしろい小説を読みました。そして、八〇年代から九〇年代初にかけましてのジャンクボンドその他のいわば裏話のような形での小説を非常に興味深く読んだわけであります。しかし、その中から出てまいりますものも、市場の活性化というものがアメリカ経済回復にいかに大きな役割を果たしてきているかということでありました。そして、その限りにおきまして、私は、今委員が御指摘になりましたように、非常にNASDAQには興味を引かれてまいったことも事実でございます。  日本で、政府系金融機関、すなわち政策金融というものが果たしている役割は非常に大きなものがございます。しかし、政策金融がすべてに対応できるわけではありません。そして、むしろ立ち上がりの時期における民間の資本市場における資金調達がより容易になることは、私どもこれから先を考えますときに絶対に必要なことだと考えております。  最近、あちらこちらで私自身が店頭市場の活性化と申しておりますのも同様な気持ちでありまして、むしろ委員御自身の体験の中で学んでこられましたものを我々もこれからさまざまな場面で使わせていただきたい、そのためのノウハウの御提供もいただきたい、率直にそう思っておりますし、我が国経済の活性化の観点から、資本市場の利用者であります企業のニーズというものを踏まえながら、資本市場の改善に向けての関係当局への働きかけを続けてまいりたい、そのように考えております。
  165. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 大変貴重な御答弁、本当にどうもありがとうございました。  日本では、何か店頭市場というのは、東証の一部、二部の予備軍というか三軍というか、そういうイメージが非常に強くあるわけでありますが、先ほど私の方から説明をさせていただいたように、NASDAQという店頭市場そのものが非常に大きくなっている、それがアメリカ経済回復に非常に大きな役割を果たしてきたというふうに考えております。この点について、通産省の方としてはどういうふうに認識をされているのか、ぜひ政府委員からも直接お話をお伺いしたいと思います。
  166. 堤富男

    ○堤政府委員 私たちも、新しい事業を起こすという点におきまして、NASDAQのようなものの役割というのは大変大きいと思っております。新しい事業を起こすためには、もちろん、いい技術のシーズがあること、そのシーズが開発で伸びていくこと、そういう段階では、私は、政府の研究開発補助のようなものあるいは政府の債務保証のようなものというのは大事だと思います。  それがさらに事業化をしていく段階、さらに発展していく段階というあたりになりますと、非常に民間資金的な、ある意味でリスクマネーではありますけれども、その中に大変きらりと光るようなものがたくさんあるわけでございまして、そういう意味では、NASDAQのような資金供給、これは先ほど委員指摘のように、一九九三年で、増資とか実際に株式を発行して得た、移転したお金というのは三兆円を超えるわけでございまして、これだけのお金が民間から民間に渡っている。NASDAQを通じて渡っている。日本の場合には、その十分の一以上の二千二百億ぐらいでございます。そういう意味で、量的にも、NASDAQの登録社数は五千社、日本の場合には五百社、これも十分の一ぐらいでございます。  そういう量的な問題もございますし、一方で、質的なものを見ますと、上場されているベストテンを見ますと、アメリカのNASDAQの場合には、本当に今世界で時めいているハイテクカンパニーがここに上場されておる。日本の場合には、必ずしもハイテクではない企業がここで資金供給を受けているというような状況を考えますと、質量ともに若干見劣りがするということを感じております。  そういう意味では、NASDAQのようなものが日本で起きてくるということは、確かに、空洞化がいろいろ議論されている中で非常に重要な位置づけを占めているのではないかと思っている次第であります。     〔大畠委員長代理退席、甘利委員長代理     着席〕
  167. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 日本の場合には、店頭市場に公開するのに、調べてみますと、大体十七年ぐらいの時間が平均的にかかると言われています。アメリカの場合には、店頭市場、NASDAQに登録をするのに大体五年から七年、非常に早い。若い企業でも店頭市場に登録をして、今局長の方から御説明があったように、世界をリードしていくような企業が育っていく、こういう具体的なケースがたくさんあるわけでございます。  そういう意味からして、今、産業界経済界の方からも、これは大臣に突然の質問でありますが、この当店市場の活性化をどんどんやってほしい、そういう声が非常に強くある、そういう声が大臣のところにも届いているのではないかというふうに思うのですが、この辺についてはいかがでございましょうか。
  168. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 現在までに私が承知をいたしておりますだけでも、経団連から、あるいは関経連から、あるいは日商から、店頭公開基準の緩和など店頭市場の改善に向けての要望というものは寄せられております。私どもとしては、今委員からも御指摘になりましたような視点を含め、やはり資本市場の改善というものを関係当局に働きかけておる最中でありまして、私どもは、より健全に市場が育ってくれる中で、民間資金企業に向け必要なだけ供給される体制がこの中から生まれることを期待しております。
  169. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 御答弁どうもありがとうございました。  そこで、大蔵大臣を経験された通産大臣に、もう一度、突然で申しわけございませんが、質問させていただきたいと思います。  これは今御答弁の中でも少し触れられておったのですが、これから店頭市場を通じて上場して企業として大きくしていきたい、そういう企業からすると、公開するに当たって今の店頭市場というものが非常に使いづらいのだ、あるいは投資家の目から見ていても、どういう形で公開をされていくのか、その基準というものがどうも不透明なような気がする、こういう批判があるような気がいたします。  そういう意味では幾つかの課題があるのではないかなというふうに思うのですが、大臣としての御感想をお伺いさせていただければというふうに思います。
  170. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは、実は事務方の諸君が用意してくれた答弁は別にあるのですけれども、大蔵大臣という経験の中で感じましたことをここで御披露して、答弁にかえたいと存じます。  ちょうど私が大蔵大臣就任しました直後から東欧の劇的な改革が始まりました。そして、それと同時に、世界的に新たな資金需要が次々に生まれてまいりました。しかし、国際金融の世界におきましてその資金需要にこたえるだけの資金創出というものは並み大抵の話ではございませんでした。  そうした中で、いろいろな議論をいたします。つの問題点として、これからの資本市場、金融市場の自由化というものをにらんだとき、大蔵省自身の行政機構のあり方は、また行政の手法はという点にぶつかりまして、内部で真剣な議論をし始めていた時期がございます。その意味では、この店頭市場の問題も含め、問題意識は強烈に持っておりました。  非常に不幸でありましたのは、証券・金融不祥事というものが発生し、私自身もその責任をとって、第一段階の方策を講じた後、職を責任をとって辞任をしたわけでありますが、このときにアメリカ式の証券監視機構、SECのような機構をつくるべきという御議論が事件の結果起こりましたことから、作業が完全に中断をいたしました。  そして、その時点で議論をされておりました内部の考え方と申しますものは、要するに証券あるいは保険、銀行、国際金融も含めましての総合的な検査体制というものが一つの問題点にあったわけでありますが、そうした点も含めて作業がとまってしまった。そして、世間が求められたものが発生した証券不祥事というものに対する対策のみでありましたことから、逆にその改革の論議が中断してしまったという私は大変苦い思い出を持っております。  そうした中におきまして、私は大蔵省関係の諸君も問題意識は十分持っておると思います。同時に、それがまた途中でとまってしまう、あるいは大蔵省自身の努力が誤解をされることを恐れている、そうしたものも多分にあるような感じが当時の責任者としてはいたしております。こうした点についても御工夫がいただけるならば、関係者は非常に幸せでありましょう。
  171. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 そこで、大蔵省が非常にこの問題についても問題意識を持っておられるという今橋本大臣からのお話でありましたので、大蔵省の方に直接お尋ねをさせていただければなというふうに思います。  実は、今回の代表質問の中で、改革の松岡議員がNASDAQの例を引いて、そして資本市場の活性化の問題についてお伺いを大蔵大臣の方にさせていただいたというふうに思います。その中の大蔵大臣の答弁は、非常に残念ながら、日本の今の店頭市場の現状はアメリカのNASDAQと同じような現状である、十分店頭市場は中小企業の育成にその機能を果たしているのだ、こういう型どおりの答弁でありまして、私は非常に失望した思いがございます。  そして、本日も、与党の自民党の甘利先生からも、恐らく私と全く同じ問題意識大蔵省の担当者の方に御質問をさせていただいたのではないかなというふうに思うのですが、もう一度、この店頭市場の置かれている現状についてどのような認識を大蔵省が持たれているのか、御答弁をお願いしたいと思います。
  172. 藤原隆

    藤原説明員 お答えさせていただきます。  午前中も甘利先生に御答弁申し上げましたが、日本株式市場には、全国の証券取引所のほかに店頭市場が存在しておりまして、それは新規産業等にとっては長期・安定資金調達の有効な場として、また投資家にとって新たな投資機会の場となっておるわけでございます。企業のその資金調達ニーズにできる限りこたえていくことが資本市場の重要な機能の一つであることは私ども十分認識しております。  したがいまして、本年六月から、従来週二、三社でありました新規公開のペースを週一五社にペースアップするよう関係者間の調整を図るなどしまして、新規公開の促進に努めておるところでございます。これによりまして平成六年の公開会社数は約百六十社と、これは平年度ベースで換算いたしますと約百八十社ということで大幅に拡大いたしておりまして、これはちなみに、過去最大でございました平成二年、バブル最盛期のころの平成二年の百四十一社を大幅に上回る新規公開会社数となっております。  また、店頭市場につきましても着実に拡大を続けておりまして、例えば登録会社数で申し上げますと、平成元年末の二百六十三社から本年九月末で五百三十九社と約二倍強となっております。また、売買代金の面で見ましても、本年一月から九月までの一日平均で二百十七億円と、昨年の百十六億円の約二倍弱、バブル期の平成二年期の二百四十五億円に近い水準となっておるわけでございます。  このように大蔵省といたしましても店頭市場の育成には鋭意意を尽くしておるところでございまして、決して大蔵省産業資金の供給に後ろ向きであるとか、あるいは店頭市場に後ろ向きであるということではございません。  ただ、先ほど来問題になっております店頭基準、これにつきましては、いわば最低限の基準といたしまして、これ以下のところでは投資家保護上問題があるというところで設定いたしておりますが、これはアメリカのNASDAQと同じでございます。そういうことで私どもが随分低いところで基準を設けておりまして、その範囲内でやっていただこうということでやっておるわけでございます。  以上でございます。
  173. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 これはまた甘利先生質問と重複をするわけでありますが、日本の店頭公開の基準がNASDAQと余り変わりがないんだが、こういうお話でございます。先ほど、実態については少しその基準よりも上の企業が多く公開をしているんだ、こういうお話がありました。その少しという範囲はどういう範囲を指しておられるのか、もう少し詳しく御説明いただけませんか。
  174. 甘利明

    甘利委員長代理 藤原課長、明確な答弁を。
  175. 藤原隆

    藤原説明員 お答えさせていただきます。  私どもは、いわば政府あるいは協会が定めておりますのは、これ以下のところでは投資家保護上問題あるのでやっていただいては困りますという線を定めておるわけでございまして、その範囲内、それ以上のところで、そこで個々の証券会社がおのおのの会社の引き受け方針あるいは営業方針あるいはリスクの許容能力、そういうこと等も勘案いたしまして引き受け審査を行いまして、個別に判断した企業を公開させておるということだと思っております。  したがいまして、確かに実態を見ますとそういうところで決まっておるわけでございまして、基準よりは若干高いところでございますけれども、それを全部私どもが指導しているような話で全くございませんので、そこの辺だけは御理解いただきたいと思っております。
  176. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今、少しとか若干という言葉があったんですが、そこはどういう中身なのかというのを実はお伺いしたかったわけであります。  今、その基準の中で、これは後ほどまた御説明をいただければと思うのですが、純資産が大体二億円程度というのが一つのラインではないかというふうに思います。大体この純資産が二億円あるいは三億円、前年度は大体五十五社ぐらいが店頭公開をしましたが、その五十五社の中に大体どれくらいの比率で占められておりますか。
  177. 藤原隆

    藤原説明員 お答え申し上げます。  一九九三年中に店頭登録いたしました五十五社の平均値、これは純資産で申し上げますと百六億八千七百万円、総資産額で申しますと四百八十三億六千万円、税引き後利益で申しますと二十四億八千七百万円、いわゆる一株当たりの税引き前利益で申しますと百七十九・一円ということになっております。  これは、五十五社の内訳を見ますと、大手消費者金融会社でありますとか、あるいは大企業の系列会社でございますとか、極めて大規模な企業が公開をしたということで、これらが大幅に平均値を引き上げているものと思われます。
  178. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今の御答弁を聞いてもわかるように、その基準というものは二億円でラインを引いているわけであります。しかし、実際に五十五社の平均をとってみると純資産の平均は百六億、これは大企業のレベルに来ているということであります。その中で本当の中小企業、これから店頭市場資金調達して大きく伸びていきたい、そういう企業に対して店頭市場が十分な役割を果たしているんだ、そういう証左になるようなデータはございますか。
  179. 藤原隆

    藤原説明員 そういう資料というのは、私ども手元にないわけでございます。  ただ先ほど申し上げましたように、これは、極めて大規模な企業が昨年の場合は公開が多かったということから大幅に平均値が上がっておるわけでございまして、中には非常に小さな企業もございます。例えば、税引き前利益が三億円ぐらいの企業もございますし、近年公開した中には二億円強というような会社もございまして、必ずしも大きくなければいかぬという話は全くないわけでございます。  繰り返しになりますが、私ども政府あるいは協会といたしましては、投資家保護上、最低限ここ以下はまずいという話だけを決めさせていただいて、それ以上のところでは個々の証券会社がその企業の実情あるいはその証券会社の実情を勘案しまして、そこで引き受け責任を発揮させながら公開をしていくという世界でございますので、そこについて私どもがあれこれ申し上げますのは、いわば政府の過剰介入のような話でございまして、その辺は御理解いただきたいと思っております。
  180. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 この議論を、堂々めぐりを続けていてもしょうがないわけでありますが、しかし、これはいろいろ証券会社や関係者から聞いてみても、形式的な基準と実は実質的な基準があるんだ、純資産についても大体十億円ぐらいと、なかなか実際には店頭の公開ができないんだ、こういう声が実はたくさんあるわけでありますね。  そういう声にもぜひ耳を傾けていただいて、本当にこれからの新しい産業店頭市場資金調達ができるんだ。それはどういう形で公開をすることができるのか、その審査の透明性についてもまだまだ工夫できる点が多々あると思いますので、その辺については鋭意努力をしていただきたいというふうに思います。  そして、続いてもう少し質問させていただきたいのですが、先ほど店頭市場規制緩和の中で、大体今の審査を週三社から五社に引き上げたんだ、これで百六十社ぐらいが大丈夫なんだ、これで十分規制緩和をやっているというようなお話がございました。  しかし、これから日本の新しい産業を育成をしていく、その中における店頭市場の役割を考えた場合には、百六十社では少な過ぎるわけであります。店頭市場で五百社、六百社、七百社、それぐらいの規模で店頭に公開できる、それだけの企業を十分審査する能力がある、投資家もそういういろいろな企業に対して、リスクは高いかもしれないけれども高いリターンを期待できる、そういう市場に育てていくことが、これからの産業政策の観点からもあるいは雇用政策からも必要ではないかなというふうに私は思うのですが、大蔵省担当者の御意見をお伺いしたいと思います。
  181. 藤原隆

    藤原説明員 お答えさせていただきます。  先ほど私が御説明申し上げましたペースアップの件についてのお尋ねだと思いますが、先生御案内のように、もともとそれにつきましては何ら制限はなかったわけでございます。したがいまして、自由勝手にやっていただいておったわけでございますが、御案内のように、平成二年から三年にかけましての株式市場の大暴落、こういうことがございまして、平成三年の十二月から四年の五月まで市場が事実上閉鎖いたしました。引き受けができない、買う方もいらっしゃらないということで、自然消滅的に停止してしまいました。  そういうことがございまして、そのままではいかぬということで、関係者努力によりまして平成四年の五月から試運転的に週一、二社ということで再開いたしまして、しばらく様子を見ていこう。それが順調にいったものですから、翌年の平成五年の七月から、では週二、三社まで拡大してみよう、それでまたしばらく様子を見てみようということでやってまいりまして、この平成六年の六月、先ほど申し上げましたように、週三社から五社ということでやらせていただいておるところでございます。  私どもから見ますと、およそこのぐらいの水準でありますと、通常の流通、流通といいますか流れとしては最大限の流れではなかろうか。ただし、先ほど申し上げましたように、平成三年から四年、五年にかけまして、完全に停止したあるいは細々と流しておったということで、ダムに相当水がたまっておるような状態になっておりまして、仮にこれが一度に流れますとまた市場が壊れてしまう。そういうことになりますと、現在資本市場を御活用いただいております。そのほかの企業にも御迷惑がかかるというようなことも勘案いたしまして、いましばらくこういう感じでやっていただいた方がよろしいのじゃないかなというふうな市場関係者の御意見も踏まえて、今やっておるところでございます。  もちろん、この制度が未来永劫続くわけではございません。ただ、今規制緩和というのは後戻りをしないというのが私どもの考え方でございますので、一たん緩めてまた締めるというようなことは絶対やってはいかぬという観点から、いましばらくこういうふうなところを勘案させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  182. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 店頭市場の問題については、再三繰り返しになりますが、東証の一部、二部、その予備軍としての位置づけではなくて、これから店頭市場そのものが日本経済の活性化に大きな役割を果たしていくのだ、その中で店頭市場をどうしていったらいいのかという視点をぜひもっと御理解をいただきたいというふうに私から切にお願いをするわけであります。  そこで、もう一度通産大臣の方に重ねて質問させていただきたいわけでありますが、今、私の知っている仲間の中でも、日本店頭市場の中で公開するのはやはりなかなか難しい、そうであるならばアメリカのNASDAQに行って市場公開をしょう、こういう考え方を持っている人間もたくさんいるわけであります。  これから日本は、産業構造の大きな転換をしていかなければいけません。先ほどから同僚の議員がいろいろ質問する中で、日本の中にだって本当にこれからの産業をリードしていけるようなシーズというのはたくさんあるわけであります。そういう種を育てていけるような施策というものをどんどん打っていかなければなりません。その中でこの店頭市場の問題、非常にしつこいようでありますけれども、私は大変重要な問題ではないかなというふうに考えております。もう一度大臣のお考えを重ねてお伺いをさせていただければというふうに思います。
  183. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、大蔵省の担当課長の答弁を聞きながら、こういう状況の中で果たして日本の市場がどこまで世界の他の国の市場に伍していけるのだろう、これは証券に関する部分だけだろうか、そのような思いにとらわれておりました。  今、シンガポールにあるいは香港に市場を移す気配というものはさまざまな分野に出ております。しかし、日本が将来を考えますとき、やはり日本のそれぞれの市場が、それなりの役割を果たしつつ国内で成長してもらわなければなりません。今、委員はたまたま店頭市場を例に挙げられて、NASDAQとの関係での御議論をいただきましたが、他の分野における市場につきましても同様の思いがいたしております。
  184. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 本当に貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。時間がありませんので、次の質問に移らせていただきたいと思います。  情報化の観点から一、二、通産大臣の方にお伺いをさせていただきたいのですが、近年の米国における競争力の復活の中に、産業の情報化がやはり著しく進展した結果であったのではないかという気がいたしております。その中で、日本はどうもこの産業の情報化という問題についておくれをとってしまったのではないかなという感じがいたしておるわけでありますが、この理由について大臣自身はどのように考えておられるのか、また、このおくれをどのような形で取り戻していくべきだとお考えになっておられるのか、お伺いをさせていただければというふうに思います。
  185. 渡辺修

    渡辺(修)政府委員 お答え申し上げます。  今先生指摘のように、我が国の情報化、これも相当進んでおる分野がございます。例えば工場の製造工程におけるコンピュータライゼーションだとかあるいは銀行の勘定業務、あるいは各企業の給与計算部門、そういった定型的な業務部門というのは、大変我が国の情報化は進んでおるわけでございます。我々はこれを、点と線では過去情報化が大変進んできた、こう言っておるわけでございますが、特に八〇年代の後半から九〇年代に入りまして、アメリカではネットワーク社会が大変、ダウンサイジング化しかつオープン化いたした関係上、社会全体が、点と線ではなくて、特に知的創造活動の面で、一般社内の管理部門について大幅な情報化が進んでおるわけでございます。  そういう意味で、今理由を挙げろ、こういうことでございますが、大きく言えば、私は、アメリカ日本の現状を比較して三つ挙げられるのじゃないかと思います。  一つは、我が国におきましては、特に国が事業主体になっております公的部門、教育でありますとか医療情報とか、あるいは研究分野とか行政とか、そういった国の公的部門における情報化というのがアメリカに比べて相対的に劣っておることは間違いないんじゃないか、ここを思い切って加速しなきゃいかぬ、これが第一点でございます。  それから第二点は、今申し上げましたが、定型的な業務以外の、ホワイトカラーを中心とする一般管理部門、そこのコンピュータライゼーションを図らなければいけない。特に日本の場合には、まだ情報化、パソコンの普及率も一〇%に満ちておりませんけれどもアメリカはほぼ半分がそれにいっておるというような状況でございます。これが第二点でございます。  それからもう一つは、官公庁への書類の申請とか、これはペーパーレス化とか今いろいろ課題が出てきておりますけれども、民間の情報化を妨げるような国の制度なり慣行というのが、まだ日本の場合にはアメリカに比べて多いんじゃないか。  以上三点が、大きく申し上げて日米を比較した場合の情報化のおくれの点ではないかと思います。
  186. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 どうもありがとうございました。  もう一問、情報化についてお尋ねをしたいと思います。これはGII構想のことについてであります。  来年、ブリュッセルで開催されるGII構想に関するG7関係閣僚会議は極めて重要な会議になるのではないかなと私は考えております。この閣僚会議で何が議論されることになるのか、また政府としてこれにどう対応しようとしているのか、通産大臣から御答弁をいただければというふうに思います。
  187. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員から御指摘をいただきました、来年の二月下旬に開催される予定のG7関係閣僚会議、これは情報通信の規制と競争政策、また相互運用性、知的財産権問題、コンピューターセキュリティーの問題、アプリーケーションなどを議論する方向で、今各国の事務レベルでの検討が行われております。これは私どもとして非常に重要な会議になることは間違いないと思っておりますし、今政府におきまして組織いたしました高度情報通信社会推進本部におきまして、有識者の御検討をいただきながら、我々としてもこれに対する備えをしてまいりたいと考えているところであります。  特に今まで、技術開発あるいは標準化、さらに公的分野の情報化のための先導的施策といった各種の分野施策を実施あるいは計画してまいっているところでありますだけに、世界情報インフラの推進というものにも積極的に貢献をしていきたい。このためには、G7関係閣僚会議の成功に向けて全力を傾けてまいりたい、そのように考えております。
  188. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 どうもありがとうございました。  時間がありませんので、次の質問に移らせていただきたいと思います。  これは、今回政府が発表されました公共投資十カ年計画でございます。私の記憶するところ、前回のこの計画については、橋本通産大臣が大蔵大臣としてかかわっておられたのではないかなというふうに思います。  この計画を見直すに当たって、今までの公共事業、各省庁の枠、その枠を積み倍してやっていくのではなくて、これからの時代のテーマというものをどうやって公共事業の中で取り組んでいくのか、それが非常に大きなかぎになるというような発言をされていたように記憶をしておるのですが、今回の計画について橋本大臣はどのように評価をされているのか、まずお伺いをさせていただければというふうに思います。
  189. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに、御指摘のように、現在の四百二十兆円に上る公共投資基本計画は私が定めてまいりました内容であります。しかし、その際に二つの問題がございました。  一つは、これが日米構造協議に関連し、アメリカ側の提案に対する対案の形で取りまとめる結果になりましたために、アメリカ側の要求というものをいわばはねのける役割というものをここに持たせたということでありました。  当時、アメリカ側からは、実は日本の公共投資のあり方につきましてさまざまな角度からの注文がついておりました。そして、これは建設協議とも関連しておりまして、アメリカ企業の参入の機会の多い分野に公共投資を振り向けてほしいということが非常ににじみ出ておったと思います。  それだけに既存の、それぞれの分野における五カ年計画等はそのまま継続することを前提にし、その上で弾力化枠も含めてこの計画決定をいたしたために、基本的な公共事業の配分についてのメスが入らないままにこれがスタートをいたしました。  そうした点も反省し、実は公共投資の重点化枠というようなものを私自身大蔵大臣として考えてみたこともございます。これによって配分を変えられないかという工夫もしてみましたが、結果的にはごく軽微な変更にしか達することができませんでした。  私は、今回大変御努力をいただきました高村長官がここにおられるわけでありますけれども、例えば、この情報化につきまして、政府としては、行政、教育、医療、福祉、図書館などの公的分野の情報化を進めること、これはまさに今機情局長から日本アメリカにおくれをとった一つ原因として指摘をいたした部分であります。  また、高度情報化に対応する投資に対しては、公共投資額の重点的、効率的な配分を行う、また、光ファイバー網の整備を初めとする通信関連社会資本というものは民間主体により高度化していく、こうした考え方が盛り込まれておりますことも私は評価すべきことと考えております。  また、研究基盤の整備といった面にも配慮が払われておりますことは私自身の取りまとめましたものに比べて大きく前進を、量的だけではなく、質的にもさせていただいた、そのように受けとめております。
  190. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 続きまして、高村長官の方にぜひともお尋ねをさせていただきたいと思います。  本当はもう少し幾つか質問させていただきたかったのですが、特に財源の問題、これがやはり非常に心配でございまして、この六百三十兆円、どうやって財源を調達するんだろうか。計画の中では、この財源については、これからの世代にはそのツケは回さないんだ、こういうことを明確にうたっておるわけでありますが、一体どういうような形でこの財源を調達しようとされているのか、その点についてのお考えをお伺いをしたいと思います。
  191. 高村正彦

    高村国務大臣 本計画は、二十一世紀初頭までを展望した長期的な計画であるということが第一であるわけでありますが、その具体的実施に当たっては、各時点の経済財政事情を踏まえつつ、国・地方、公団、事業団等、各種公的企業等が、公共事業関係長期計画、各年度の予算、地方財政計画等のもと、それぞれの社会資本の性格に応じ適切な対応を図るものでありまして、大変申しわけありませんが、具体的な財源等について見通すことは困難であります。
  192. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 ぜひともここで指摘をさせていただきたいのですが、やっぱりこの財源の問題については、もっと突っ込んだ議論をしていかなければいけないのではないかなというふうに思います。  これは、一般的に考えてみると、六百三十兆円、四分の一は国がやらなければいけない。建設国債でやるとすれば、今の建設国債の累積残高がやはり倍になってしまう、こういうことになってしまいます。これはやっぱり後世にツケを残すことになってしまうのではないか。二分の一は恐らく地方がやらなければいけないでしょう。残り四分の一は財投を使わなければいけないと思うわけでありますが、総合経済対策というものを次々打ってきて、この財投というのも非常に窮屈になってきている。それにさらに財投というものを使えば、また公共料金をどんどんどんどん上げていくことになるのではないか、こういう心配がやはり国民の中にあるのではないかというふうに思います。  そういう意味では、この財源をどうするかということについては、本当にいろんな知恵を出して議論をして、この問題を深めていかなければいけないというふうに思いますので、ぜひともその点について長官のリーダーシップを発揮していただければというふうに思います。いかがでございましょうか。
  193. 高村正彦

    高村国務大臣 御指摘の点は一々ごもっともだと思います。  ただ、繰り返すようでありますが、それぞれ社会資本の性格が違う、それから事業主体が違う、今の段階で具体的な財源等についてすべてを見通すことは困難であるということを申し上げたわけでありますが、次の世代に負担を残さないようにという心構えをきっちり持って、これからそれぞれの予算等においてそういった具体的措置を講じていかなければいけない、私もそのために御指摘の趣旨が生きるように頑張ってまいりたい、こういうふうに思っております。
  194. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 さらに続けて質問させていただきたいわけでありますが、例えば財源の問題を考えるに当たっても、今の公共事業のかかっているコストが本当に適切なものであるのかどうか、この点についても十分に議論しなければいけないというふうに思うわけであります。  これは新聞の指摘をまつまでもなくて、アメリカのコストと比べてみて日本の公共事業のコストは三〇%以上は高いというふうに言われております。このコストを、どういう形でやっていったらもっともっと効率の高い本当の公共事業を、いっぱいやりたいことがあるわけでありますから、その財源に見合った事業をやることができるのか、この点についてやはり十分な議論が必要ではないかなというふうに思います。  それと、入札談合の問題について、国民はやはり厳しい目を私たち政治家に対してあるいは政府に対して向けているのではないかというふうに思います。そういう観点からすれば、この公共事業の執行について、その透明性の確保あるいは先ほど言った効率性について、もっと明確にわかるような形というものを提示していかなければいけないというふうに考えるわけでありますが、長官の御所見をお伺いしたいと思います。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕
  195. 高村正彦

    高村国務大臣 今公共事業の内外価格差等について建設省の方でかなり大がかりな調査をしていただいていると承知をしております。私たちもそれに対して大変な関心を持っているわけでありまして、まさに先生指摘のように、これから透明性を確保して情報をできるだけ公開して、御指摘の方向に行くように私たちも努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
  196. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 どうもありがとうございました。  今回の質問で、私は、新しい産業政策をどうやってつくっていったらいいのか、あるいは限られた財源の中でどうやって社会資本を整備をしていったらいいのかという質問をさせていただきました。これは二十一世紀に向かってやはり重要な課題であろうかというふうに考えております。  引き続きこの質問をさせていただきたいわけでありますが、この委員会におきましても、やはり政治が今の問題を正面からとらえていかなければいけないわけでありますから、委員各位がいろいろなお知恵、意見をお持ちだと思います、そういう意見をぶつけ合えるような場を委員長におかれましてもぜひつくっていただきますように切にお願い申し上げたいと思います。  時代が大きく変わっております。通産大臣そして経済企画庁長官、大きな役割を担っておられると思います。健康に留意をされて、そして大きな成果を残されるよう心から祈念を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  197. 白川勝彦

    白川委員長 次に、佐藤茂樹君。
  198. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 改革の同僚議員のトリをとりまして、自称、他称政策通また経済通の橋本大臣、また高村経済企画庁長官に質問をさせていただきたいと思います。  残り物には福があると一般的に言われておりますけれども質問の段階になると、残り物にはもう落ち穂拾い程度の問題しか残っていないわけでございますけれども、今まで同僚議員が触れられなかった問題につきまして御質問させていただきたいと思います。  十月度の月例経済報告で、「我が国経済企業設備等調整過程にあるものの、このところ明るさが広がってきており、緩やかながら回復の方向に向かっている。」とあるように、一般的には、日本経済は長期不況から脱出し、回復基調にある、そういうように言われておりますけれども、私の住んでおります大阪の中小企業の経営者、また従業員なんかに聞きましても、よく交わされている言葉に、もうかりまっか、ぼちぼちでんな、こういう言葉も余り交わされておりませんし、また、主婦の皆さんの生活実感としてもまだまだ厳しいものがあるのではないかな、そのように感じている次第でございます。本当に生活者に視点を置いたきめの細かい経済政策というものが今こそ必要ではないか、そのように思っている次第でございます。  そういう観点から、まず公共料金についてお伺いをしたいと思います。  羽田前内閣のときに、五月でございましたけれども、国民生活や経済状況を考慮して公共料金の年内凍結を決定した際、国民世論は、経済界も含めて圧倒的な支持を与えたのは記憶に新しいところでございます。不況の中、民間企業が血のにじむようなリストラを行っている中で、公共料金だけが合理化努力の不十分なまま安易に値上げをするというのは許せないという国民の率直な声だったと思うわけでございます。  しかしながら、村山政権にかわって最初に行ったのがこの公共料金値上げの凍結解除でございました。五月から七月という二カ月たったら凍結から解除、この余りの突然の変貌に国民の強い怒りが当時渦巻いておりました。今はまだこの怒りを通り越してあきれている、そういう現状ではないかと思うわけです。  一体この二カ月間で何がどう変わったのか。公共事業体内部に徹底した合理化や生産性向上など、国民に納得のできる改善があったのかどうか、凍結解除の理由について高村経済企画庁長官にお伺いしたいと思います。
  199. 高村正彦

    高村国務大臣 現内閣は、前内閣における五月二十日の公共料金年内引き上げ実施見送りに関する閣議了解を継承することを確認しているわけであります。今継承しているのでありまして、凍結解除は行っておりません。  ただ、先生もそうだと思いますが、一般に凍結解除と言われるのは、七月に総点検を実施したことを称して凍結解除、こういうことが言われているのだろうと思いますのでは何でその七月の時点で総点検を実施したか、こういうことでありますが、これは、羽田内閣の方針をそのまま継承して実施したわけであります。羽田内閣は、一括凍結を決めたときに、同時に総点検をすると決めました。  そして、経過を述べますと、五月三十一日の閣僚懇談会において、閣僚から六月中にこの総点検、の結果を出すように要請があって、官房長官が、そのように努力する、こう答えたわけであります。この努力目標が羽田内閣ではできなかった、そのできなかったことを七月になって私たちがやった、それだけのことでありまして、まさに前の内閣の方針をそのまま継続してやった、こういうことであります。事実はそういうことでありますので御理解を賜りたい、こういうふうに思っております。
  200. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、今経済企画庁長官の御答弁がございましたけれども、この経済企画庁長官の先日の十九日の発言、また総理の所信表明の中にも言われていることでございますが、「事業の総点検の結果を踏まえて、案件ごとに厳正な検討を加え適切に対処するとともに情報の一層の公開に努めてまいります。」そういう方針を持たれているわけでございます。  その七月二十六日に行われた総点検の結果報告、これはコピーなのですけれども、これを取り寄せて読ませていただいたわけでございます。経済企画庁長官も多分これは当然読まれていると思うのですが、この中身を見ていったときに、一言で言うと非常に総論的なことがずっと書いてございまして、金額ベースでどういう積算根拠によってこの節減、また合理化をしていくのかということが一切ほとんど触れられていない。  例えば先日の日本道路公団での問題がございましたけれども、新規事業の建設費を四百八十億円、また管理費を二十九億円毎年節減する、また、業務の執行の効率化で十二億円を毎年節減するということが書かれているわけでございますけれども、それは一体どこから出てきたのかということ自体何ら書かれていないような、ある程度非常に大ざっぱな総点検を踏まえて判断をされていたわけでございます。  やはりこの程度の総点検で公共事業の料金を見直すそのもとにしたということであれば国民はなかなか納得しないのではないかな、そういう感じがするのですけれども経済企画庁長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  201. 高村正彦

    高村国務大臣 一方で、昨年の十一月時点で日本全国の道路施行命令が現実に出ているわけであります。そして、その道路をするためには、財源措置がなければ実際に着工できない、第二の国鉄をつくってはいけない、そういうことになっているわけで、私は、ある意味では、こちらの施行命令、建設命令だけはそのままにしておいて、その財源措置はだめよ、こういうことは果たして責任ある政治かなということも、そういう側面もあるか、こういうふうに思っております。  そうだからこそ、羽田内閣でも早くこの総点検の結論を出さなければいけないということで、六月中に出す、そしてそれができなかった。そういう中で、かなり時間が迫っていたこともあって事業の総点検を行った。事業の総点検と、そしてその料金の改定そのものの審査とはまた別でありますから、事業の総点検とすればあの程度で私はかなり努力していただいた、そういうふうに理解しておりますが、政府委員からさらに詳しく答えていただきたいと思います。
  202. 谷弘一

    ○谷(弘)政府委員 お答えいたします。  ただいまの大臣の御説明いただきましたことは、政府として、関係省庁を通じまして、七つの年内実施を見送った事業につきまして、各事業主体に経営の合理化、今民間一般が非常に大きな経営合理化、リストラ等をしているという背景を踏まえまして、公共料金関連の事業においてもやってくれ、こういうことをお願いしまして、一カ月と数日の間にこれを取りまとめさせていただいたということでございますので、結果として今先生が御指摘になりましたような数字が出てきたということで、それは各事業主体の自主的な努力がこれだけ出てきたというような理解で、我々細かくその中身まで突っ込んで、総点検がいかがかというようなところまでは突っ込んで審査しておりません。
  203. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私が心配するのは、村山政権が掲げておられるのは人に優しい政治というものを言われておりまして、これはやはり日本国民に対しての優しい政治だと思うのですが、それがもじって公団に優しい政治と言われないように、これからこの料金改定については厳正な審査が行われるという長官の御答弁もございましたけれども、やはり国民に公開された明快な公共料金の決定のメカニズム、またその透明性の確保というものと、また公共料金からこれは外すことはできないのかという検討もこれからぜひ検討を加えていただきたいと思うのですが、高村長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  204. 高村正彦

    高村国務大臣 これから物価全体に悪い影響を与えないように個別具体的に厳しい審査を加えてまいりますし、それと同時に、透明性を確保するために情報公開、情報といっても経済企画庁がみんな持っているわけではありませんで、事業主体、所管官庁、そういったところにできるだけ情報公開をするように私の方からも要請してまいりたい、こういうふうに考えております。
  205. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、通産大臣にお伺いしたいのですけれども、その一つとして今話題になっているのが電気料金の問題でございまして、これはもう通産大臣の諮問機関である電気事業審議会で十四日から電気料金制度のあり方について議論が始まっているというようにお聞きしているわけでございます。  今現行の総括原価方式では、設備投資費用などのコスト増加分がそのまま電気料金に上乗せされてしまうという、そういうことから、悪い面としては電力会社なんかがなかなか経営努力が怠りがちになるのではないか。それに対して、大臣が言われたかもわかりませんけれども、プライスキャップ制なら、電力会社が合理化で経費節減をすればそれだけ利益が上がるために、企業の合理化努力が明確になり、またそれを促すそういういい面が出てくるのではないか、そういうことも論じられております。また業界の方は、そういうプライスキャップ制であれば、逆に長期的な設備投資費用というものを料金で回収することが非常に難しくなるので、安定した供給という面で非常に不安が出る、そういう声も出ております。  なぜこの議論に着目するのかといえば、この電気料金以外でも、ほかの公共料金でも、例えば鉄道運賃でJRが、また電話料金でNTTがそれぞれプライスキャップ制の導入というものに前向きな姿勢を見せているわけでございまして、今電気事業審議会で行われているこの議論というのが公共料金全体の料全体系見直しの議論につながっていく要素があるのではないかと思うわけでございます。  そもそもこの見直し論議を指示された橋本大臣の、内外価格差問題も含めた公共料全体系への基本的な見直しの方向性というものについて、御所見をお伺いしたいと思います。
  206. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 本年は異常な渇水でありましたために、御承知のように、水力による部分が減少いたしまして、その分、石油に頼らざるを得なかった電力業界であります。しかし私自身には、実は湾岸危機から湾岸戦争の際の非常な肌身に感じた経験として、もし湾岸の危機が長引いた場合の我が国のエネルギー供給はという不安が常につきまとっておりました。それだけに、実は電力料金の中に占める石油というもの、その価格というものは、いろいろな機会に脳裏にこびりついておるものでございます。  そうした中で、このところの円高の継続している状況から、電力料金の暫定引き下げは継続をさせていただくようにお願いをし、その認可をいたしたわけでありますけれども、これとはまた別途の観点から、公共料金の見直しの対象として価格設定のあり方、さらに料金の多様化、弾力化の推進、こうした問題についての検討が閣議決定をされておりました。  同時に、やはりこの電気料金につきましても内外価格差というものが顕在化をする中で、経営の一層の効率化が求められてきたわけであります。さらに、我が国の電力需要の高い伸びというものに対応しまして、安定供給を確保するという視点からは設備投資を必要といたし、これが資本費の増大を招くという問題もございます。  こうした問題意識の中で、電気事業審議会の料金制度部会に料金制度の検討をお願いをいたしました。来年の一月末には基本的な枠組みについて中間取りまとめの形で結論をいただきたいというふうに考えております。  第一に、やはり今後とも見込まれる需要の伸びに対応して安定供給を確保するための設備資金を確保する。もう一つは、電気事業者の経営合理化を促す、効率化を促す仕組みを料金制度に導入する。さらに、料金の多様化、弾力化を通じた需要対策によって設備のむだな増加を抑制すること。また、公共料金のこれは基本原則でありますけれども、公平、公正を確保すること。そして料金制度の透明性を確保する。この五つの視点をもって御検討を願っております。
  207. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ぜひ実りのある議論をしていただいて、世界的にも電気料金などは、例えば正本を一〇〇とした場合にアメリカは七七・七、イギリスは六一・八、またフランスは七五・四、そういう公共料金の格差というものがこの前の経企庁の発表でもされておりますので、その格差が是正されるように御努力をいただければ、そのように思うわけでございます。  続いて、内外価格差の問題についてお伺いしたいと思います。  九月に発表されました経済企画庁の内外価格差調査によりますと、九三年十一月時点の東京の物価水準はニューヨークの一・四一倍で、一九八八年に調査を開始して以来最も格差が開いている、そういうことが発表されておりまして、それはニューヨークだけではなくて、ロンドン、パリ、ベルリンとの比較も同じような傾向である、そういうように言われております。円高が最も大きな原因というように言われているわけでございますけれども、この内外価格差が拡大していることについて経済企画庁としてどのように判断し、どのような具体的な対策を考えておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
  208. 谷弘一

    ○谷(弘)政府委員 先生の御質問内外価格差がどうなっているのか、それからそれに対してどういう対応をしようとしているのかということについて、企画庁としての立場を御説明申し上げます。  今御指摘いただきましたように、昨年十一月の実地調査に基づきまして、先月物価レポートを発表いたしました。その中でも、内外価格差につきまして、御指摘のように去年の十一月時点で、特にニューヨーク・東京の間で四割強という内外価格差があるということでございますが、ちょっと詳しく申しますと、実は購買力をはかっておりまして、生計費の購買力の方でいきますと、一ドルが百六十七円から百五十七円と、前年比でございますけれども向上しております。一方で、為替のレートの方が百二十七円から百十一円という、年間平均でございますけれども、そういったレートの上がり方に比べると購買力の上がり方の方が小さかったというために、内外価格差が一昨年、九二年の一・三一倍から一・四一倍に、ニューヨークに対しまして東京が高くなっておる、こういう現状でございます。  いずれにいたしましても、こういった内外価格差の実態をまず調査しなければいかぬということ、そしてそのためにこれまでもかなりの、政府といたしましても、輸入の拡大でございますとかあるいは規制の緩和、商慣行の是正、円高差益の還元、電力・ガス等でございますけれども、そういった対策を講じまして、個別にいろいろな対策を積み上げて、その縮小に努めてきているわけでございます。  しかし、御指摘のとおり一層の価格差がまだ拡大しているという現状でございますので、この問題というのは、我々としては、一つ消費者の問題であると同時に、生産構造、日本全体の経済のコスト構造の問題になってきている、こういうような理解に今立ちまして、総理の、先月二十二日だと思いますが、税制等の改革がまとまりました時点で、内外価格差についても調査しその問題点を出せ、こういう御指示もございまして、こういうことを受けまして、今、物価安定政策会議という諮問機関の場所で、広く、消費財だけではなくて、中間財、サービス関係も含めまして具体的な対応策を具体的に検討しておるということでございます。  これは価格の後ろにございますコストというようなものにも着目いたしまして、その内外価格差原因をまず取り出し、そして対策をまとめ上げていくという方向で今御審議をいただいているわけでございます。
  209. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これはもう数年前から言われていることでございますけれども、豊かさをなかなか国民が実感できないという一つ原因として、やはりこの内外価格差の是正というのが生活者または消費者にとって最も改善を望んでいる問題でもあり、政府として真剣に取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  今御答弁の中にもございましたけれども、先般、経済企画庁はこの内外価格差調査対象を拡充するという発表を行われたというようにお伺いしているのですが、その対象範囲、規模、公表時期、さらにこの調査を拡充する目的についてお伺いしたいと思います。
  210. 谷弘一

    ○谷(弘)政府委員 お答えいたします。  今、ちょっと言葉足らずで、実態調査しているということを申しましたが、一つは企画庁が、今先生の御質問ございましたが、生計費全体の、日本の物価水準全体をはかるような内外価格差調査購買力という形で今しております。それが生計費調査というものでございますが、このほかに、各所管省庁、農林省、通産省、大蔵省といったところで、これまでも主要な所管商品につきまして、個別商品ごとの内外価格差調査というものを進めております。  そういうことを、幾つかをまとめまして物価レポートにも掲載させていただいておりますけれども、さらにこの問題、非常に大きな全体の問題になってきているという我々の理解もございます。また、あるいは総理からの御指示がございます。そういうことを受けまして、これまでの調査というものを一層充実しなければいけないというふうに考えておりまして、この調査をした後、要因を分析して、さらに障害を除去せよ、こういう御指示でございますので、これを受けられるような調査を大々的にやらなければいかぬということで、政府関係省庁の中でいろいろ詰めを今、早急にやっている、こういう段階でございます。
  211. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 さらに、橋本大臣の十九日の発言の中で、通産省としてこの「内外価格差問題については、早急に調査を行い、価格差の是正に積極的に取り組み、豊かな国民生活を目指してまいりたいと考えております。」そういうふうに述べられているのでございますが、通産省として具体的にまた調査を行われるのか、その調査はどういう調査なのか、お聞きしたいと思います。
  212. 堤富男

    ○堤政府委員 お答えを申し上げます。内外価格差という場合に、従来は消費財の方に非常に注目をされておりまして、通産省としても、日本の商品がアメリカ、ヨーロッパでどういうふうに売られているか、それから外国の商品が日本でどう売られているか、両側の内外価格差を平成一年以来毎年調べておるわけでございます。  ただ、最近の問題は、さらにそれが国民生活だけの問題ではなくて、産業にとって使用する中間財についても内外価格差というのがあるのではないか、その結果、貿易財産業がなかなか日本に住みにくくなっているということはないでしょうかというようなことの問題意識がございまして、平成五年、昨年以来調査をやっております。  昨年の調査の結果でも、アメリカとは一・一倍くらいのことでございまして、そのとき百十円くらいでございましたから、今だと一・二倍くらいになっている可能性もありますし、香港と比べますと一・四倍くらいになっておったということがございます。  ことしはその品目をさらに拡充するとともに、企画庁とも御協力をしながら、その原因は何であろうかというようなことの要因分析をしっかりやっていきたいと思いますし、要因分析をやるに従いまして、それをどうしたらよろしいかというような政策にも反映できるのではないかと思っている次第でございます。
  213. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 先ほど同僚議員の方からも二人ほど御質問がありましたけれども、やはり今巷間言われている言葉の中に価格破壊、現象として、消費財だけではなくて生産財も含めかなり広範囲にこの現象が広がっているのではないかということが言われております。  ところが、ことしの経済企画庁の物価レポートには、流通業界で価格競争が激化したことが物価安定につながっていることを指摘しているものの、価格破壊が経済界に広がりつつある状況についてはほとんど触れられていないのですけれども経済企画庁として、この価格破壊現象がどの程度広がり、景気、物価にどのような影響を及ぼしているということを認識しておられるのか。またその実態調査、また物価政策についてどういうことを考えておられるのか、何かお考えがありましたらお伺いしたいと思います。
  214. 谷弘一

    ○谷(弘)政府委員 今、新聞紙上等で価格破壊という現象で伝えられておるところのものでございますけれども、一番大きく伝えられておりますのは流通、消費財関係で非常に大きく伝えられておりまして、御指摘のように生産財という分野について、これを価格破壊という言葉で報じられているか、ちょっと、我々はむしろ消費財の関連で非常に大きく取り上げられているというふうな感じがしております。  その背景に、いわゆる在庫品でございますとか売れ残ったもりを現金で買い取って安く売るというようなのがこれまでの大きな流れだったと思うのですが、今回、やはり円高ということが非常に大きいということと、景気後退下の消費者の価格志向と申しますか、安いものが欲しいというような中で、生産、流通段階いずれにいたしましても、輸入というのが開発輸入も含めまして進んできているということで、そういう意味では、破壊というよりはかなり中長期的、構造的な動きになっているのではないかというような理解をしております。  その辺につきまして、幾つか店舗形態別に、メーカーの希望小売価格と各ディスカウントあるいは小売、百貨店等の同じものにつきましてどういう価格が行われているかということを我々調べたものが、ことしの一月の実績がございます。  それによりますと、やはり物によりますけれども、日用品雑貨というようなものを典型的に取り上げますと、こういうところはディスカウントでは四割近いメーカー希望小売価格より低いもので売られている。それから、もちろんほかの形態ではもう少し高い値段がついている。また、希望小売価格に近いところまでいっているというような、競争が常態化しているというふうに我々考えておりまして、この辺につきましては、実は消費者が、家計が実際に買っておりますのが幾らになっているかというような平均の購入単価という動きを見ておりますけれども、これは消費者物価をかなり下回っております。  そういうことで、実際に消費者はかなり安いものを欲しいし、また実際に買っているという状況でございまして、そういうことが実際に消費者にとりましては円高メリットが還元されている、あるいは所得がそこで稼がれまして、実質所得が上がっているというような理解をしております。そういうことが、もちろん一方では企業収益が非常に圧迫されるという側面のあることも我々は承知しておりますが、一方、消費者サイドから見ますと実質所得の増加につながる、あるいは日本経済全体にとりまして、生産、流通部門を含めた高コスト構造をなくしていくというようなプラスの面があるのじゃないか、こういう考え方であります。
  215. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今局長がお答えになりましたように、この価格破壊の動きがどんどん進行すると消費者が価格に対して非常に厳しい目を向けるようになりまして、メーカーも流通業者も価格引き下げにこたえざるを得ない。円高の中でリストラをして経営努力しなければいけないにもかかわらず、なおかつそういうことが迫られてくるということで、大変苦しいところに追い込まれていくわけでございまして、そういう一つの大きな日本経済現象もありますし、また年々広がっている内外価格差の問題もございます。  先日の発言の中でも述べられておりましたけれども、もう一度、再度高村長官にお聞きしたいのでございます。大変厳しい日本経済のかじ取り、規制緩和の推進や、また内外価格差の是正に向けての決意をもう一度お伺いしたいと思います。
  216. 高村正彦

    高村国務大臣 生活者、消費者優先の経済社会をつくっていくために、規制緩和、内外価格差の是正ということは絶対に大切なことだと思いますので、そのように努力していく所存でございます。  価格破壊という言葉がいいかどうかわかりませんが、これだけ内外価格差がある中で、値段がリーズナブルになっていくということは基本的にはいいことだと思っております。個々的には確かにいろいろな状況で中小企業等に打撃を与えるということはありますけれども、大きな流れの中でこの内外価格差を是正する、そのために価格が今まで内外価格差という形で諸外国に比べて為替を基準にすれば高過ぎる、この状況が是正されていくことは基本的にいいことだ、私はそのように考えております。
  217. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 続いて、規制緩和についてお伺いしたいのですが、結論から言いますと、規制緩和の意義についてお二人の大臣がどういうものを描いておられるのかをお聞きしたいわけでございます。  このお二人の先日の発言の中では、規制緩和というものを経済構造改革の推進あるいは経済改革の推進の手段として、規制緩和への取り組みを挙げられておりました。村山総理は所信表明の中で、どちらかというと行政改革の推進の一環として規制緩和というものを取り上げておられまして、それぞれ入り口が違ったわけでございます。かつて土光臨調のときなどは、「増税なき財政再建」路線をとっておりましたので、いかにして簡素で効率的な政府をつくるか、そういう観点から規制緩和がとらえられていたと思うわけでございます。  大変基本的なことで恐縮でございますが、規制緩和の意義、例えばこれから日本はどういう社会にしなければいけないから規制緩和をする必要があるんだという、そういう規制緩和の意義について、お二人の大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  218. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは今さら申し上げるまでもなく、政府規制を緩和する、その方向と申しますものは、通産省の立場から申しますなら、新しい市場の創出、そして消費者の選択の幅の拡大による経済社会の活性化、また今議論をされております内外価格差、これを是正することであり、国際社会との調和と透明性を確保するために重要なかぎを握るもの、我々とすればそのような位置づけをしております。  そして、先ほど来御議論がありました、例えば製造物責任法の成立というものを受けて、従来政府の認証に係らしめていたものを自己認証に切りかえていく、自己責任原則のもとに社会が変わっていく、これはやはり活性化のある社会をつくり上げていくために大きな役割を果たすでありましょう。我々の立場からはそのようなことを感じております。
  219. 高村正彦

    高村国務大臣 通産大臣がおっしゃったとおりであると思います。  ニュービジネスの展開、あるいは消費者の選択の自由の拡大、あるいは内外価格差の是正、そういったことであるかと思います。当初は摩擦が生ずる面もあるかと思いますが、活力ある経済社会をつくるために規制緩和ということは絶対に必要なことだと思います。  私個人はかなり極端な方の自由主義者のつもりでありますから、経済規制はなくすぐらいのつもりで、一方では、人に優しい村山内閣の閣僚の一員でありますから、社会的規制はやはり守るべきものは守っていかなければいけないのかな、こういうふうに思っております。
  220. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、村山内閣として大々的に言われていますのに、五年間の規制緩和推進計画を本年度内に策定する、そういうことが言われているわけでございますけれども規制緩和によって、国民から見て何を目指しているのかという社会のビジョンとか、また日本のこれからの国家ビジョンというものが明確になるような、そういう計画というものをぜひ策定していただきたいなというように思っております。  そこで、その規制緩和をどこまでやるのかという大臣の取り組み姿勢としてお伺いしたいわけでございますけれども規制緩和の規制をどうとらえるかということでは、要するに法律に基づく規制とそうでない規制という、先ほども同僚議員からありましたけれども、いわゆる行政指導とか口頭通達、そういう形でなされている規制の、大きく二つ、二通りがあると思うのです。  橋本通産大臣はこの一年間に二冊ほど本を出されているのですけれども、その「政権奪回論」の中でこういうように言われているのですね。法律に基づかない、表面に出てこない規制というものに対して、ちょっとそのくだりを恐縮ですが読ませていただきます。「これと同様の問題は各省庁にもある。」というのは、行政指導とか口頭通達のことを言われているのですけれども、  この種の問題がいちばん多いのは通産省だろう。産業界への指導について口頭指導がよく行われるという意味で、成文化されていない“隠れた規制”が通産省にはいちばん多いはずだ。これらの規制を見直すために、私は通産省の口頭指示の実態からまず把握していこうと苦労しているのだが、なかなかつかみきれないのが現状である。 そういうくだりが述べられているわけでございますけれども大臣は、通産大臣に今なられた立場から、ここに書かれているように、まずやはりこのみずからの通産省のそういう行政指導や口頭通達などの実態を把握された上で、抜本的に規制緩和というものを見直していく、規制というものを見直していこう、そういう御決意なのかどうなのか、御所見をお伺いしたいと思います。
  221. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほども同様の御質問にお答えしたとおりでありますが、残念ながらまだ私は通産省の細かい中までを知る時間の余裕がございません。  しかし、私の体験的に感じますこと、これは私自身が紡績会社の社員でありましたころにも通産省の玄関というのは大変怖い玄関でありました。申請書類を届けに参りましても、三回ぐらい深呼吸をして部屋の中に入る。係長さんのところから課長補佐の席まで二、三カ月の距離があるというのは当然のごどのような覚えを持っております。後ろにおります諸君に聞きますと、そんなことは今はなくなったと言っておりますし、そうであることを期待をいたしますが、私はやはり文書による通達あるいは口頭の指示といったものはできるだけない方が望ましいという考え方は変わりません。  ただ同時に、先ほど証券・金融不祥事のときの自分の体験で申し上げましたように、私は数にこだわって余り議論をしていただきたくはありません。あの証券・金融不祥事の後、全部の通達を見直し、例えば証券業協会にあるいは取引所にその機能を移しました残り、必要であるものを法律に取り込みました結果、実は数の上の規制ということであるならば、証取法上の規制は見かけの上ではふえたという記憶を私自身は持っております。  それだけに、こうした答弁を申し上げている趣旨も事務方の諸君には十分理解をしてもらい、努力をしてもらいたいものだと、そのように願っております。
  222. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今大臣からも、数にこだわる議論をするのは少し危険であるという趣旨のお話がございましたけれども、私も、この規制緩和がすべて国民生活にプラスに働くというような、そういうイメージだけを、またそういう決めつけをしてしまうというのはいけないのではないかというふうに思っている次第でございます。規制によって厳に守られていたこの弱者の救済、また雇用の確保というものが常に図られながらのこの規制緩和でなければならない、そのように思っている次第でございます。  規制緩和によって競争原理が生じ、野放し状態を容認してしまうと、いわゆる動物で言えば弱肉強食という事態になる。例えば大店法なんかでもそうでございますけれども、大企業がぐっと押し寄せてくるというような形になります。そうなると、逆に国民生活が非常に混乱する可能性があるわけでございまして、そういう状態を避けるためにも規制緩和と相まって、今のこの日本一つの歯どめ策としては、私は、公正取引委員会のこの機能というものを規制緩和と相まって、リンクさせるような形で強化をしていく必要があるのではないかなというふうに思っております。  特に、日本公正取引委員会というのは、現在、陣容が五百六人、そういう陣容でございますけれども、これは先進各国の同様の機構の定員と比較しても非常に少ないわけでございまして、日本は人口百万人に対して四人なのに対して、アメリカは六人、またフランスは十一人、イギリスは九人以上というように、如実に数字にあらわれているわけでございます。  私どもも、従来この公正取引委員会の強化ということを主張してまいりましたけれども、聞くところによりますと、通産大臣も今まで公取の強化ということを常々言われていたというようにお伺いしているんですが、これから規制緩和の五カ年計画を立てられるに当たって、ぜひこの公正取引委員会の機構、また定員、権限面という面での強化を図っていただきたいと思うのですが、通産大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  223. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 せっかく本を読んでくださったのなら、それも書いたつもりでありますから、そこも読み上げていただければ大変ありがたかったと思うのであります。  私は、真剣に公正取引委員会については機能が強化されてほしいと願っております。私自身の頭の中にありますイメージは、せめて人事院の機構図ぐらいの機構を持ってもらいたい、その上で地方の出先における人員ももう少しふやしてもらいたい。  私は、実は薬事法を厚生大臣として改正をいたしますときにも公取とは随分ぶつかりました。また、再販制度の見直しの際にも随分公取とはぶつかってきた人間であります。しかし、やはり規制を緩和すればするほど独禁法の厳正な運用というものは社会の維持のためには必要でありまして、そうした観点からこれからも政府部内での議論をしていきたい、そのように考えております。
  224. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 済みません。ざっと大分前に読みましたので、そこを読み飛ばしておりまして大変申しわけない限りでございますけれども、私も、今本当に、例えば談合一つとりましても、非常に地方での談合の発覚というものがふえてきておる。また、下請代金法に基づいての取り締まりというものを公正取引委員会なんかがされているわけでございますけれども、この円高の中で、いわゆる親企業が下請企業を非常に数を絞ってくることによって、非常に下請企業が被害をこうむっているということが大体年々言われてきているわけでございます。  そういうことも今の公正取引委員会の陣容ではなかなかきちっとすべてを網羅して取り締まっていくのは非常に厳しいのではないかなという実感をいたしているわけでございます。ぜひ大臣として、内閣の中で主導権を握っていただいて、この公正取引委員会の強化に努めていただきたいな、そのように思うわけでございます。  最後の残りの時間を使わせていただきまして、PL法、この六月に前国会で画期的な成立を見たわけでございますけれども、この一年間どうするのかということについてお伺いしたいと思います。  まず、その前に、さきの通常国会で、これは羽田政権でございました、その最後の仕事の一つとしてこの製造物責任法、PL法が成立したわけでございますけれども、政権交代の後、引き継がれた所管大臣として、このPL法に対してまずどういう御所見を持たれているのか。高村経済企画庁長官に、PL法に対してどういう見解を抱いておられるのか、お聞きしたいと思います。
  225. 高村正彦

    高村国務大臣 PL法は、製品関連事故分野において過失責任の原則を欠陥責任の原則に修正するものであり、製品の安全性に関する消費者利益の増進を図る観点から画期的なものであると考えております。  とりあえず、それだけです。
  226. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、法律では一年の周知期間をあえて定めたわけでございますけれども、施行は来年の七月になるわけでございますけれども、今まで日本では本当になじみのない法律だけに、この一年間を使ってどれだけこのPL法への対応と浸透を図っていくかが大事になってくると思うわけでございます。  しかしながら、もう既にこの一年のうちの四カ月が経過しようとしているわけでございまして、あと六カ月をいかに使っていくのかが非常に大事なんですが、私は、この周知期間でやはり大きく三つのことをしなければいけないだろう。  それは、一つは、消費者また企業に対してきちっとした広報活動をしなければいけない。  二番目としては、裁判で争われるものだけであればいいのでしょうけれども、裁判外で争われる非常に小さなそういうものに対してきちっと処理ができる紛争処理機構というものを明確につくらなければいけない。  三点目としては、欠陥を証明すれば、欠陥の有無を証明すればよくなったのですけれども、それも非常に普通の消費者にとっては容易ではないわけでございまして、事故原因を究明する原因究明機関というものをやはりこの一年間の周知期間の中で明確につくらなければいけないだろうと思うわけでございます。  まず一つ目の政府の広報活動について、今までこの四カ月間でどういう広報活動をされてきたのか、まずお伺いしたいと思います。
  227. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 御指摘のように、製造物責任制度は、製品事故の当事者間の利害調整に係る基本的な規範の変更でございます。したがいまして、それが着実に定着していくためには、御指摘のような広報というものは重要でございまして、この一年間がまさしく重要な時期に当たると考えております。  そのため、現在既に経済企画庁におきましては、関係省庁とも相談いたしまして、七省庁共同の解説書をつくりまして、これを配布いたしております。そのほか、全国各地で説明会を開催し、あるいはテレビ、ラジオ、新聞等の媒体を使わせていただいて広報しているところでございます。  さらに今後、残された期間におきましても、こういった広報面の充実を図りまして、着実な定着に向けて努力をしたいと考えております。
  228. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今局長から答弁がありましたように、この「製造物責任法の解説」というものが縦割りの行政の中で七省庁が集まってつくられたというのは非常に画期的だと思うのですけれども、ただしかし、この内容を見ますと、これは非常に一般国民が理解をするのには難しい内容になっておりまして、ぜひ普通の主婦が見てもわかるような広報、出版物というものを作成されるように御努力いただきたいと思うのですが、まず、それについての御所見をお伺いしたいと思います。
  229. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 七省庁共同でつくりました解説書は、国会での御審議を踏まえまして、国会での政府答弁を確実に広報するというもので作成いたしました。したがって、法律的な意味でかなり厳格なものとなっております。したがいまして、かなり難しい点がございます。ただ今後、そのほか一般消費者等に向けてのパンフレットはより易しいものをつくってまいりたいというふうに考えております。
  230. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 先日も大阪で消費生活センターのある御婦人と話をしたときに、そのときにはマスコミ、メディアを通して非常に話題になったけれども、その後やはり熱が冷めてきているような気がするという危機感を抱かれておりましたので、ぜひ、そういう消費者または被害者となり得る人たちに、物すごくいい法律ができたんだということをきちっと明確になるように御努力いただきたいな、そのように思う次第でございます。  二番目の紛争処理機関でございますけれども、今、聞くところによりますと、経済企画庁と通産省でそれぞれ違う方針でこの紛争処理機関について進めておられるという報道がなされております。  すなわち、経済企画庁が進めておられるのは、都道府県と政令指定都市に従来からあって、余り機能していなかったと言われているのですが、苦情処理委員会というのがそれぞれ都道府県と政令指定都市にあるのですけれども、これを活用しよう、そういう動きをされているというようにお聞きしておりますし、通産省の方は、製品別の紛争処理機関をつくる、業界型機関を進めておられるというようにお聞きしているのですけれども、これは二省庁内でそのままその方針で走られるのか、それとも二省庁内で調整されるのか、その辺についての御見解をお伺いしたいと思います。
  231. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 御指摘のように、裁判外の少額被害の紛争処理というものにつきまして体制整備を図ることが重要でございます。  ただ、委員指摘のように各省庁ばらばらにやっているというわけではございませんので、各省庁綿密な連絡をとってやっております。委員指摘のような都道府県におきますところの苦情処理委員会につきましても、おのおの案件ごとに所管の省庁も違いますので、そういった案件ごとに各省庁と企画庁が相談しながらやっていくということでございますから、各省庁がばらばらではなくてむしろ一体的にやっているというふうに御理解いただきたいと思います。
  232. 清川佑二

    ○清川政府委員 通産省の方からも一言お答えを申し上げたいと思うわけでございます。  この紛争処理機関、今お話がありましたような、県における苦情処理委員会また業界における紛争処理機関でございますけれども、この関係の背景をちょっと一言申し上げたいと思うわけでございます。  通常、製品事故が起きた場合に、大体被害者は企業に行って相対でまずお話しになることが多いわけでございます。そして、相対でその話が済まない場合に、場合によっては自治体にございます苦情処理委員会あるいは各地にございます窓口、消費生活センターなどに行かれるわけでございますが、それでも解決しない場合が多うございます。また、どうしても解決しない場合には裁判にいくわけでございますけれども、やはり消費者保護、被害者保護の観点からいたしますと、被害者保護の、救済の紛争解決のための多様化ということが望まれるわけでございます。  現在、私ども通産省におきましては、第一に、今申し上げましたような消費生活センター、苦情処理委員会などに協力を申し上げる。そして第二に、問題がなかなか難しい場合に、個別製品の分野ごとに、知見のある、専門的な知見を持った民間の機関、この民間機関の中立性、公平性の確保を図りながら活用することがよろしいのではないかというふうに思っております。したがいまして、この両方の関係というものは対立関係というものではなくてむしろ補完関係にあるわけでございまして、両々相まって裁判外の紛争処理体制がうまくいくというふうに考えているわけでございます。  このような観点で、経済企画庁も通産省もそしてまた関係各省も、意見の一致を見て、相互に相談しながら進めているということを申し上げたいと思います。
  233. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、最後に三点目の問題でございますが、この原因究明機関ですね、消費者にとっては、やはり欠陥の有無を証明すればいいとはいえども非常に情報不足ということもございまして、実際にはなかなか容易ではないわけでございまして、事故原因究明機関の設置について、政府としてどのような対応をとられているのか、お聞きしたいと思います。
  234. 坂本導聰

    ○坂本(導)政府委員 御指摘のように、製造物責任法によりまして過失を欠陥という概念に変えることによって立証負担を軽減したということでございますが、それでもなお、消費者の観点から立ちますと、御指摘のように原因究明はなかなか難しいという場合が多かろうと存じます。したがいまして、その場合に国の各種機関、おのおの専門を持っておりますが、そういった各種機関が専門性を発揮しながら原因究明をやっていく、あるいは民間の研究機関と検査機関等の機能も使わせていただく、それらを相互にネットワーク化してやっていくということが必要であろうということで、関係各省庁間で調整を図っているところでございます。
  235. 清川佑二

    ○清川政府委員 原因究明機関につきまして設置をするのか否かという点がございますが、原因究明の体制を整備するのに相当なコストと経費といろいろな労力が多いわけでございまして、国民経済上のコストについても考えておくことが大変重要であるということから、既存機関あるいは人材を極力活用するということが極めて大切だというふうに考えております。  このような観点から、三段階で考えているわけでございますけれども、例えば通産省におきましては通商産業検査所という検査機関がございます。ここの知見、ノウハウあるいはまた関係の公設機関の原因究明体制を拡充強化する、これが第一。  第二に、民間の検査機関がたくさんございます。例えば、家電製品につきましては日本品質保証機構、あるいは日本電気用品試験所、あるいは燃焼器具につきましては日本ガス機器検査協会、雑貨につきましては製品安全協会といったように、多くの既存の機関がございますので、これらの機関におきましてもいろいろな相談の受け入れ体制をするように整備をお願いしているわけでございます。  第三に、結局このように国の機関、公設機関、民間機関あるいは大学の研究所など多くの機関がございますから、被害者の方から使い勝手がいいようにあっせん、紹介することが必要でございますので、このためのネットワークを地域ごとにあるいは製品分野ごとに整理をいたしまして、国民全般から使用していただけるように体制を組んでいく、このようなことで、通産省も政府の一員として実行しているわけでございます。
  236. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これを最後の質問にしたいのですけれども、あと民間企業のレベルでいいますと、このPL法に対する関心というのは大企業では非常に高くて、既に品質管理を徹底させたり、法務部門等の訴訟に備えてPL法専門の検討チームをつくったりとか、また消費者からの問い合わせに対応する窓口を設置するというように、非常に体制を整えつつあるというように大阪でも各企業に行きますと聞いているわけでございます。  しかし、これは大企業だからできるわけでございまして、中小企業というのは製品の安全性向上や品質管理、また検査をよくしようと思っても、なかなかそれをやるだけの設備投資をする体力が非常に乏しい、また、体制がなかなか整備ができない、そういう状況がありまして、特に夏のときというのは円高を乗り越えるのに一生懸命で、そもそもPL法のことを学ぶ余裕すらないという経営者が非常に多いわけでございます。  そこで、通産省として、既にとられているPL法対応施策に追加して、さらに徹底して中小企業にスポットを当てた説明会とか支援策を講じる必要があると思うわけでございますけれども、通産省としての御所見をお伺いしたいと思います。
  237. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 製造物責任制度の実施を前にいたしまして、中小企業に対しましては二つの面で支援措置を現在講じているところでございます。  一つは、情報提供あるいは啓発のための事業でございます。例えば、商工会、商工会議所によります中小業者を対象とした講習会の開催でございますとか、あるいは組合が実施いたします製品事故等に対する調査研究、あるいは製品の安全性を高めるためのビジョンの作成等の事業並びにこれらに基づき実施する広報、指導、啓発等の事業、これらを補助しているところでございます。  また中小企業事業団によります中小業者、商工会、商工会議所等の指導担当者、自治体等の施策担当者を対象といたしました講習会等の開催等につきましても現在実施中でございます。  また、もう一面といたしまして、製品の安全性向上を図りますための設備投資を行おうとしております中小業者に対しましては、一般的な金融措置のほかに、中小企業金融公庫及び国民金融公庫によります低利の融資制度を特別に設けでございます。製品安全性向上資金というものを新たにつくりまして、取り扱いを既に開始しているところでございます。  また、明年度におきましては、以上申し上げましたような措置をさらに拡充してまいりますとともに、相談指導体制の整備強化をいたしますために、例えば下請関係の相談に乗ります弁護士の増員を図っていくといったような所要の措置を講じたい、かように考えているところでございます。
  238. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 一時間にわたりまして質問させていただきました。私どもも野党になりましたけれども、責任野党として、とにかく日本経済をどうするのかということを本当に建設的に前向きに議論をこれからもさせていただきたいと思います。  お二人の大臣におかれましては、大変難関の日本経済のかじ取りでございますけれども、立派にかじをとられますことをお祈りいたしまして質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  239. 白川勝彦

    白川委員長 次に、吉井英勝君。
  240. 吉井英勝

    ○吉井委員 最後の質問者となりましたので、大臣もお疲れのところと思いますが、ひとつよろしくお願いいたします。  私、昨日、米包括経済協議の問題について、合意内容の質問通告をしておりましたけれども、時間の都合でこちらの方は省略をさせていただきたいというふうに思います。  ただ一点、アメリカ国内法にすぎないスーパー三〇一条による制裁の実施をおどしに使いながら日米包括協議交渉を進めようとする、こういう手法というものは許しちゃならないと思うわけです。自動車と同部品にとどまらず、そういうやり方は今後同協議対象となるあらゆる分野に及ぶ危険性がありますし、こういう点では、今回のアメリカ決定に対して欧州委員会は、通商法三〇一条の適用には同意できない、悪例を残すという発表もいたしておりますが、こうした制裁を前提にした交渉というのは国際的に容認されるべきではない、こういう立場で臨んでいただきたいと思っております。  この日米経済摩擦については双方に原因があると思うのですよね。アメリカの方には多国籍企業海外進出、そしてそれによる貿易赤字、財政赤字の拡大とか産業空洞化の問題がありますが、もう一つ日本の側の問題もあると思うのです。きょうはそちらの方を考えたいと思うのですが、大臣とそれからほかの皆さんに資料をごらんいただきながら少し話をさせていただきたいと思います。  今お手元に配っていただきますが、委員長よろしくお願いします。
  241. 白川勝彦

    白川委員長 結構です。
  242. 吉井英勝

    ○吉井委員 この資料は「大企業輸出額上位三十社の推移」についてというのですが、実はこれは、昨年の十月の商工委員会では九二年度の分についてお出しをしまして、この数字については通産省より確認をしてもらった数字ですが、改めて九三年度の分についてはじいたものです。  第一番目のトヨタ自動車輸出額三兆三千六百七十二億円。これは日本輸出総額全体から見れば八・五%に当たりますが、ずっと下の方のトータルのところで我が国輸出総額とか出しておりますので、これは比率が出るわけです。そのちょっと下の我が国貿易黒字ですね、千二百二十億ドル。これに対して、日本自動車関係貿易黒字というのは七百八十七億ドルで、これは六六%に当たるというふうに、自動車の割合というのは非常に高いものになっています。自動車、電機を初めとするこの上位三十社の輸出額というのは、ここにありますように二十兆八千九百六十一億円、日本輸出総額の五二・八%となっております。  日本貿易黒字を異常に大きくしているのは自動車、電機など限られた分野の一部企業輸出ラッシュにあるということをデータからうかがうことができると思うのですが、まず、この点についての大臣の御認識というものを伺っておきたいと思います。
  243. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員輸出ラッシュという言葉をお使いになりました。たまたま昨日、貿易功労者の表彰が行われたばかりでありますが、その席上私は非常に感無量でありましたのは、私どもが実社会に出ました当時、貿易貢献ということで表彰される場合は、これはすべて輸出貢献だったわけであります。昨日表彰しました方々すべてが輸入の貢献でありました。それだけ我が国の社会経済構造にも変化を生じてきている。しかし、なおかつ相当程度輸入に依存せざるを得ない資源の乏しい日本という基本的な構図は変わっておりません。  そうした中で、それぞれの時代におけるリーディングカンパニーというものが存在したわけでありますが、今それらの企業がこの円高の中で極めて厳しい状況にあり、その下に連なる系列の中小企業もまた海外への移転を余儀なくされている中で、空洞化が心配されるという事態委員も御認識のとおりであります。
  244. 吉井英勝

    ○吉井委員 資料でおわかりのように上位三十社の比重が高まってきております。これは、上位三十社合計の比率のところを見ればわかるわけですが、実は特定の大企業の、輸出したらいかぬと言っているんじゃないんですよ、特定の大企業輸出ラッシュで大きな貿易黒字を生み出していく、これが円高を招く。そうすると、大企業の方は円高対策ということで今度は入減らしを進めてコストダウンを図る、輸出競争力をまた増して貿易額をふやしていく、それがまた貿易インバランスをひどくしていくという新たな円高プレッシャーを生み出してきた、野村総研の研究員はこのことを悪魔のサイクルというふうに表現しております。  実際、この表を見ても八五年度のところ、これが十一兆円。これはプラザ合意の年ですが、その後円高が進み、黒字が縮小する方向に動きました。しかし、入減らし合理化とか下請単価の切り下げとか、これまた輸出競争力を強めて輸出が進んでいく、そういう中で貿易黒字がまたふえてきたというのは九二年、九三年のデータを見て明らかだと思うのです。  こうした異常円高を理由にして今度、労働者とか下請の犠牲によってコストダウンを図るという従来型の悪循環を断ち切って、国際的に劣悪な労働条件とか下請取引条件を大幅に改善する。そういう点では、一昨年ですか二月にソニーの盛田さんが論文を書いておられるように、悪魔のサイクルを断ち切って、そしてこの不況を打開するということが我が国産業政策の中で今私は求められていると思うのですが、大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  245. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今輸出につきましては、既に数量ベースでは減少に転じております。しかし、その急速な円高に伴いました結果として、ドルベースで表示をいたした金額は依然として高い伸びになっております。また輸入につきましては、数量が着実に増加しつつあるもののドルベースの価格が低下をしたため、輸入金額全体としては比較的低い伸びにとどまっているという問題があります。  我が国貿易収支を考えました場合、短期的には為替レートあるいは原油価格、さらに世界経済の動向などに影響されますものの、中長期的にはやはり海外直接投資あるいは国際分業を通じた相互依存の高まり、あるいはマクロの貯蓄投資バランスなどにより規定されていくものと考えられるわけでありまして、今委員の御指摘になりましたような問題点は、違った角度から物を申しますならば、我々は二十一世紀に向けてのリーディングカンパニーを今求めております。  そうした中で、産業構造審議会の答申を先ほどにも申し上げましたように、十二の分野が今後我々が成長させていくべき分野として、生活関連の、あるいは医療、福祉分野の、さらに住宅の、こうした分野についての今後の努力が志向されているところであると考えております。
  246. 吉井英勝

    ○吉井委員 ハイテクその他新しい企業をということでよく議論されておりますが、実のところは雇用の吸収力が非常に弱いということで、経済に及ぼす影響がそれほど大きなものが期待されないというのが現時点での実態だと思うのです。  私は、また大臣とは違って、角度をもう少し変えて今のところを見ていきたいと思うのですが、八五年のプラザ合意によって円高政策が進められたわけですが、このときの貿易摩擦解消のためということで、牛肉・オレンジを初めとする農産物輸入の自由化というのが行われました。  その結果、八五年から九二年にかけて農業の分野でどうなったかということを少し見ておきますと、大臣もどちらかというと、コンビナートもありますが、農業県でもあるところの御出身だからよく御存じと思いますが、農家戸数では一九八五年の四百三十七万戸が九二年で三百七十四万戸へ六十三万戸減少とか、農業従事者の九十二万人の減少とか、カロリー自給率で六%落ち込んで四六%になったとか。その間、一万農産物輸入額の方は百六十八億ドルから三百十八億ドルヘ百五十億ドルの増、一・八九倍農産物の輸入ではふえております。  ただ、この同じ時期に今の表の輸出上位三十社の輸出額、それから総輸出額に占める輸出割合、貿易収支というものを見ていきますと、これは、日本はこの間世界最大の農産物輸入国になっておりますが、その輸入額は大体約四兆円になっております。実はその四兆円という数字はトヨタ一社分の輸出額に大体匹敵するくらいのものですが、貿易摩擦の解消を言って日米構造協議をやって、前川レポートを何枚書いても、農業を犠牲にするやり方では貿易インバランスの解消にはつながっていかないということを見ることができると思うのです。  それどころか、農業を犠牲にして農産物輸入を急増させた七年間にこの上位三十社で見ますと、その輸出額というのは一兆三千億円増加し、輸出割合は〇・二ポイント増加。貿易黒字は九〇年度で減少しておりますが、その後九一年度からふえていって貿易摩擦は一層深刻になり、円高はますますひどくなってきたというのが現実の姿であったと思うのです。  入減らしをやれば国内の消費購買力を冷え込ませ、内需を縮小する方向に働きますし、悪魔のサイクルと野村総研の人が言っている、これを前提にしたやり方でここからの脱却を安易な海外移転によるコスト削減に求めていくと、国内産業空洞化ということになりますし、それは一層破局的な方向へ進んでしまうということで、私は、リーディングカンパニーを求めていくというあなたのお考えはお考えとして、産業空洞化を食いとめるために大企業海外移転とか進出をやはり規制していくべきだと思うのですが、この海外移転の規制について大臣の所見というものを伺っておきたいと思います。
  247. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先刻来、委員もずっと委員席でお聞きでありましたように、先ほど来、各委員からいただいております御質問規制の緩和でありまして、委員は今規制を新たにつくることをお求めになりました。しかし、私は、それは今の世界の全体の流れの方向と逆行するのではないかと思います。  WTO協定等につきましても、我々は今、細川内閣の時点で、昨年の十二月、突如として農業に関する合意を行われました結果、ウルグアイ・ラウンド全体は将来を考えるとき否定すべきではないという考え方のもとに、いかに国内農業を守っていくかについて苦しんでいるさなかであります。前政権から引き継ぎながら、我々として努力をいたしている最中であります。  しかし、同時に、第二次世界大戦後の日本の歴史を振り返りますとき、それぞれの時代におきましてリーディングカンパニーがあったということは委員もお認めになると思います。そして、それぞれの産業が一定のサイクルをもってその場を交代してまいりました。ここしばらくの間、自動車あるいは電機といった分野日本の牽引力でありましたことは委員も御指摘のとおりであります。  そして、産構審の答申で挙げられております分野は大きな雇用をもたらさないと委員はお述べになりましたが、私は、将来を考えますとき、例えば情報通信といった分野は非常に大きな雇用を創出していくであろう分野でありますし、これはまた、世界全体の中で我が国の情報化を進めていくという視点でも積極的に育てていかなければならない分野であると考えております。  むしろ私は、国内にそれはどの企業でもとどまってもらいたい、それは当然のことでありますけれども、それぞれの企業海外企業戦略として出ていくことを法的に規制する、そのような手法はとるべきことではない、むしろそれならばそこを埋め切れるだけの新たな産業を我々は育て上げる、そうした決意を持って臨みたいと考えております。
  248. 吉井英勝

    ○吉井委員 規制の問題につきましては二つの面がありまして、規制をなくすべきものもあります。新たに、例えば労働基準法その他を初めとして賃金の体系とか、こうした点では逆に欧米並みのルールに持っていかなきゃいけないものもあるわけです。ですから、その規制緩和という言葉一言でもって何か全部が規制緩和、いい方向であるというふうに議論するというのは、これは正確でないということを申し上げたいと思うのです。  それから、リーディングカンパニーというものあるいはそういう産業分野においても、問題は、私が今指摘しておりますのは、その中における悪魔のサイクルのことを言っているのです。幾らリーディングカンパニーだ、産業だということを言っておっても、その中で輸出ラッシュをかけて、そして円高が生まれてくる、それを入減らし合理化とか、下請を犠牲にしてそれで輸出競争力をつけてまた拡大していくというやり方ではうまくないんだ。  実はソニーの盛田さんにしても、十分な休暇をとり労働時間を短縮するようなこととか、また給与の引き上げとか、資材、部品、納入価格、そして納期の面で取引先に不満をかけるようなやり方は改めるべきである。これは盛田さんの主張ではありますが、そういうやり方で悪魔のサイクルを断ち切っていくということを今既にある産業分野については考えていかなきゃならないときだと思うわけです。  私は、空洞化の問題について本当はきょうはもっと深めてやりたいのですが、もう少し時間のとれるときに深めた議論をやりたいと思いますが、ただ、現実にどういう事態が起こっているかということ、これはやはり大臣に見てもらいたいと思うのです。  先日、トヨタヘ調査に行きましたが、トヨタのコスト削減と海外移転が地域経済その他にどんなに今影響が出ているかということ、それはもう手放しで見ておけるような事態じゃありません。トヨタの海外生産比率というのは、一九九〇年、六十七万八千台海外生産して二二・九%であったのが、その当時国内生産は四百二十一万二千台でしたが、昨年で海外が八十八万九千台、二〇・〇%。国内は三百五十六万二千台と、国内生産が減って海外生産が伸びる、そして海外生産比率が高まっていっているわけです。ことしの見通しとしては二二・七%になるであろうというのは、トヨタの方のお話を聞いておって伺うことができました。  そういう中で、愛知県の方の税収はどうなっているかということを見ますと、県税である輸送機械の法人事業税は、愛知県や豊田市の場合はほとんどがトヨタ自動車になりますが、九割以上ですが、この輸送機械の法人事業税というのは、一九九〇年度の千三百二十六億円、これが昨年度で四百八十八億円、三分の一に落ち込んでいるわけですね。豊田市について見ても、法人市民税が九〇年度の三百二十九億円から昨年度百十一億円と、やはり三分の一に落ち込んでいる。ですから、これは自治体財政にとっても地域経済、地域社会にとっても、本当に深刻な事態が今進行しているというのが実態です。  従業員の方も、これはきょうのこの表に載せておきましたが、この二年間で三千六百九十三人、従業員は減っておりますし、期間工はこれまで大体多いときで三千人ぐらいいたのが、現在ほとんどゼロに近くなってきております。構内の下請もゼロになってしまった。  ですからこれは、企業城下町で来たようなところというのは本当に深刻な事態になっております。もちろん、このほかに雇用の減少とか所得の減少、それによる消費の後退、商店の売り上げの減少とか商店街が沈滞していく問題とか、影響は多大であります。  私は、こういう産業空洞化は食いとめられないんだ、そういう立場ではなしに、大企業は、やはりこの間何百万もの下請の人々の、一個つくれば工銭何銭、何十銭、そういう形で支えられてきたわけだし、また、国や愛知県とか地元市のさまざまな支援を受けて今日があるわけです。  そのトヨタがどうなっているかというのは、この表にも載せてありますように、不況の中でも、この二年間でも千四百三十九億円内部留保を積み増しし、そして今四兆一千四百九十八億円、これは内部留保ですが、その他大きな資産を持って、そしてこういう時代にも対応できる大きな体力というものを身につけてきているわけですよ。それは地域社会に支えられてきたわけですね。  それが、今はどうも調子が悪いから海外に行きますよ、それはないと思うのですね。やはり大企業には大企業としての社会的責任というものがあるわけですし、社会的責任を自覚して、そして空洞化を食いとめるということ、そのことをやはり私は大臣として求めていっていただきたいと思うのですが、もう一度伺っておきたいと思います。
  249. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、大変申しわけありませんが、トヨタの経理の状況を存じておりません。恐らく委員が引用されました数字はそれぞれ正確なものであろうと思います。  ただ、私は特定の企業について申し上げるつもりはありませんけれども、たしか昭和五十二年から三年ごろにかけまして、別種の、やはり当時我が国の基幹産業と言われた分野で、企業城下町と言われるような存在の、多数現実にありました業種の相当部分のところで、業種転換、縮小、廃棄といったさまざまな手法が講じられる時期があったことを今思い起こしております。当時私どもは、特定不況業種離職者臨時措置法、あるいは一年おくれて特定不況地域離職者臨時措置法といった法体系をもってこれらの事態に臨んでまいりました。  今委員から御指摘のありましたような企業城下町に近い存在、それぞれの企業が地域社会に立脚し、その地域とともに栄え、委員のお言葉を拝借するならば、大変地元に世話になってきた。そうした面は、当然のことながら私も否定をするものではございません。同時に、その企業が存立したことによってその地域が得たものもまたあったでありましょう。そうした中でそれぞれの企業の戦略というものもまた存在するわけでありまして、私どもは、特定の企業名で議論をするのではなく、現在の状況の中における空洞化にいかに対抗していくかに苦慮いたしております。
  250. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、日本自動車産業というのが、きょうはトヨタの例を調査に基づいて言っておりますが、トヨタだけじゃなくて日産も本田もずっと回ってきておりますから、全体としての日本自動車産業が、これは製造業の中で占める割合が非常に大きいということとともに、これは単に下請だけじゃなくて、例えば日本のブリヂストンとか横浜ゴムとかゴム製品ですね、これは自動車産業に依存する割合が七五%であるとか、板ガラスの四五・二%とか、ベアリングの四〇・九%とか、非常に大きな産業分野に影響を持っているわけですよ。ですから、それが簡単に、今はちょっと調子が悪いから出ていくよ、そういうことを許しておくということは、それを見逃すということは、私はできないと思うのです。  この点については、EU、欧州連合の方は、撤退、解雇など経営方針の転換を勝手にやってはならない、労使協議を多国籍企業に対して義務化するということを、これはEU指令で出していますね。私は、今は世界的にもそういうことが考えられる時代になっていると思うのですよ。企業に対して社会的な責任というものをやはり求めていく、社会的責任を果たすように求めていく、そうして初めて産業も地域社会も成り立っていくということです。  日本産業に対して指導する立場にある大臣が、新しい産業分野を起こすと言う、それも当然時代の発展の中で必要でしょう。しかし同時に、地域社会に支えられて発展してきた日本の各地の自動車産業が、また他の産業分野とも非常にかかわりの大きいものが、それがちょっと調子が悪いから、その調子の悪いというのも、円高その他も、まさに私が最初に御紹介しましたように、野村総研の研究員の方が言っておられる悪魔のサイクル。これはトヨタの渡辺さんでしたか、取締役は、イタチごっこを断ち切らなければいけないということを言っておりますが、どう断ち切るかというところが今問題になっていると私は思うのです。それをこの悪魔のサイクルの延長線上で海外への移転を進めるだけでは、これは破局的な方向へやはり行ってしまうと思うのです。  その点について、やはり私は大臣として今この空洞化を食いとめるという、大臣として、政治家としてもはやりそのことに本当に取り組んでもらいたいと思うわけです。  あわせて伺っておきますが、こういう空洞化が進む中で、実は雇用も深刻になってきております。中高年の人たちの雇用問題は労働委員会の方に譲るとしても、今、青年の新規採用の問題が深刻になってきております。日本産業政策の、これは将来にかかわる問題だと思うのです。  そして、大臣産業界を指導する立場に立っていらっしゃるから、これもあわせて伺っておきたいのですが、松下電器の門真の工場ではことし四月、例年五百人採っておった高校生を三百人、四割削りました。せんだって、これも聞いてきたからトヨタのことを紹介するのですが、九一年度の新規採用四千五百人であったものが、ことしは千八百八十人で、来年の予定は千百二十人だとトヨタの方は言っておりました。九一年に比べると三千三百八十人の減、八割減なんですね。  これはトヨタ一社にとどまらないで、これが日本の広い範囲に及んでいて、ことしの高校生の採用状況、アンケート調査でわかった部分を見ますと、秋田、大阪、長野など七府県のデータによりますと、男子高校生で六八・九%が決まっていて女子で六三・九%と、これは高校生でいいますと、昨年の八三・一%から比べて大分落ち込んでいるんです。  そこで、通産大臣としても、私はこれは簡単な話でないことはわかりますけれども、しかしやはり文部大臣とよく協議をして、この高校生の就職問題の解決についても全力を挙げていただきたい。とりわけそれは空洞化問題に対する、ストップをかけていく取り組みとあなたのお考えではリンクしないにしても、やはりこれは大事な問題として、ぜひ文部大臣とも連携をとってやってもらいたい。  それから大学生、女子学生の就職問題、新採問題についても、こちらの方は労働大臣などとも連携して、これは本当に真剣な取り組みをやっていただきたいと思うのです。この点については、ひとつ大臣の決意を伺ってみたいと思います。
  251. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 一点誤解のないように申し添えたいと思いますが、先ほど来委員が非常に特定一社の名前を挙げて御議論になりましたので、私はああいう答えを申し上げました。  ただ、正確に申し上げるならば、今日まで輸出依存型でありました日本経済体制というもの、これを内需中心、内需主導型の経済に変えていかなければならないという認識は十分に持っております。そうした中におきまして、我々の努力の方向もまたあるでありましょう。  同時に、今委員から御指摘のありましたように、雇用情勢が依然として非常に厳しい状況であること、そして来年三月の新卒者の就職環境というものも非常に厳しい状況が続いておりますことは、私自身、学生たちの世話をいたしておりましても非常に痛感をいたすところでございます。  先日、ちょうど九月の末に緊急雇用問題等対策本部の第三回の会合というものを開きまして、新卒者の就職促進につきましても議論をいたしました。また、七月下旬に第三回女子学生の就職問題に関する閣僚の会合というものも開いてまいりました。そうした中から、通産省といたしましても、関係団体に対するあっせんの協力要請をいたしてきたところでございます。  しかし、新卒者、これは高卒の皆さんも学卒の諸君も同じことでありますけれども、やはり採用を促進しますためには、雇用確保ができる情勢、すなわち経済改革というものを推進していくことを欠くことはできません。そのためには、やはり景気の本格回復に向けての努力というものを私どもはしていく責任があると考えております。  今後ともにこうした問題についての認識は十分に持ってまいるつもりでおります。
  252. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので、まとめさせていただきたいと思いますが、私、この表のトップのトヨタだけ全部しゃべっておったら時間がかかるから調査も含めて御紹介しましたが、私の頭の中にあるのは、この上位輸出三十社すべてがありますし、その多くのところは実際に調査にも行きました。  このあり方というものについて、特に悪魔のサイクルを断ち切るという今日的な課題について、私は、きょうは最初議論でありますが、ぜひ本格的な検討をしていただきたい、そういう取り組みを強めていただきたいということを重ねてお願いをいたしまして、中小企業庁の関係の方、予告はしておりましたが、時間が参りましたので終わりたいと思います。  以上です。
  253. 白川勝彦

    白川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十四分散会