○和田
委員 まさに開催地の大阪というところは中小
企業のメッカでございまして、大阪府下の事業所数の九九・四%が
中小企業者である。全国平均よりも〇・三%高い。まさに中小
企業の町である。この議題になろうとしておる
製造業につきましても、従業員が二十九人以下の小
企業が九四・二%、三十人から二百九十九人までの中
企業が五・五%、三百人以上の大
企業が〇・三%、極めて少ないわけでございます。せっかくの
機会でございますので、各国の皆さん方に大阪の中小
企業の実態というものもぜひとも見聞を広める
機会をつくってもらいたいな、こういうように思っておるところでございます。
そこで、
アメリカのクレアモント大学の教授であり
経済学者として有名なピーター・ドラッカー氏が、十月十日の日経新聞でこのように言っておられるわけであります。
世界
経済のトレンドの
一つを次のように言っております。「ハイテクの
分野では米国が世界のリーダーになったこと。
日本は高度製造
技術」、いわゆる「ハイエンジニアリングの段階であり、ハイテク段階には至っていない。米国は、特に情報
分野で支配力を持つ。コンピューターにばかり注目している
日本は、この
分野で十年遅れだ。」こういうように
指摘しておる。
日本のハイテクの将来について、以下のように話をしておるわけです。「
日本はこれまで、ハイエンジニアリングで圧倒的な優位にあった。だが、いまは、どこの国でも
努力すれば同様にやれる。」「
日本の
産業組織はハイテクにはむかない。ハイテクは、総じて小規模の
企業から生まれ、大
企業からは生まれにくいからだ。」というように言っておる。
そして、二十年先の
日本の
産業・
経済の構造について、「将来は、中堅
企業の時代になる。
日本は、先進国のなかで例外的に、大
企業支配の
経済になっている。米国では大
企業が
生産の二〇%、ドイツでも三〇%を支配するだけだが、
日本は六〇%」と極めて高い。「だが、
日本でも有能な若い世代が中堅
企業に入るようになる。」「これは、米国では三十年前に起こった
現象だ。その結果、今日、米国で中堅
企業が
経済の中心になっている。
日本もその方向にむかいたした」というように言っているわけです。極めてハイテクの中心が中堅
企業、中小
企業に向けていくということを予測されているわけです。
そうなってまいりますと、今までの戦後、確かに五十年間の間、中小
企業が大
企業の下積みになって
日本の
経済を支える大きな役割を果たしてきた。今日の
経済の発展に大きく寄与した。それは事実であります。したがって、そのようにしむけてきた中小
企業政策、通産省といわず中小
企業庁といわず、中小
企業政策というのは当を得ておった。
しかし、振り返ってみますと、今までの中小
企業政策というのは、中小
企業に力づけをさすためにできるだけ金を貸す、
資金支援をする、あるいは税金の面で恩恵をこうむらす。いわば金貸しと減税を中心とした中小
企業政策であった。それでは、これからの中小
企業政策としては古ぼけた中小
企業政策になるのじゃないか。
私は、
日本の中小
企業政策で
一つ欠けておったのは、お金を貸す、税金を安くするというような、中小
企業の経営者のことに頭があった。しかし、忘れておったのは、その中小
企業で汗水を垂らして働いておった、中小
企業で働く労働者のこと、このことが中小
企業政策の中に極めて薄い
状況に置かれておったのじゃないかと思うのであります。
先ほど
指摘いたしましたように、ドラッカーさんが言っておりますように、これからの中小
企業にかける期待を考えましたならば、高学歴化した若い労働者あるいはハイテクを中心とした新しい
技術の若い
技術者、これを中小
企業の方になだれ込んでいかさなくてはならないわけでありますが、それにはやはり、若い労働者が中小
企業に対して魅力を
感じるようなそういう中小
企業に育成していくという、このことを基本に置いた中小
企業政策に大転換させる必要がこの
機会にあるのじゃないか、こういうように思うわけであります。
そうすると、若い労働者が大
企業に行かないで中小
企業の方に望んで行く、大
企業に行かないで中小
企業にはせ参じるためには、大
企業と中小
企業との間の労働者の待遇の条件格差というのがあるわけです。これは賃金もしかりでありますし、労働時間もしかりであります。しかし、労働時間や賃金については労働組合の力あるいは労働
基準法によって是正されていっております。
是正されないのは、二十人、三十人の
企業として解決ができない問題がある。それは大きな
企業と中小
企業との間の、例えば安い家賃の住宅の提供、社宅の提供等が小さな
企業では独自の力ではできない。それを含めた福祉の格差をどういうようにしてやるかということが
一つであります。
あるいは大きな
企業では
企業年金というのがある、いわゆる三階建ての年金制度の恩恵をこうむっておる。公務員もしかりである。ところが、三十人、四十人、五十人というような中小
企業の労働者はそういう恩恵がない。いわゆる大きな
企業と小さな
企業との間の年金の格差。
この福祉の格差と年金の格差というのは、行政的に、政治的に解決をしてやらないとその格差の穴埋めというのはできないわけです。それをやり込めるための中小
企業政策というものがこの際ぜひとも必要であるのじゃなかろうかというように思うのです。
そういうような
政策の転換をやって、APECの中小
企業の担当
大臣会合に参加するような人たちに、
日本はこういうように転換をした、こういうように転換しようとしておるというような新しい中小
企業の
政策というものをお披露目をするという、このことが必要じゃなかろうかというように私は思うわけでございますが、それらの考え方について
大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。