○市川
説明員
委員の御
指摘のありましたプライスキャップ制の議論でございます。これにつきましては、イギリスにおきまして、電気通信事業を嚆矢といたしまして公共事業に順次取り入れられていった料金制度でございます。アメリカにおきましては、電気通信事業だけであるというふうに考えております。したがいまして、電気事業につきましてプライスキャップ制を導入した実例というのはイギリスがございます。
それで、上限価格制につきましては、御案内のように公共料金の設定においても上限を設定する仕組みでございまして、
事業者は基本的に物価上昇率から生産性の上昇率を差し引いた
範囲内であれば料金を柔軟に設定できる。もっと言いますと、自由に設定できるという仕組みでございます。この制度のねらいといたしているところは、料金設定に柔軟性を与えるということとともに、企業に対しまして、電気
事業者あるいは公共
事業者に対しまして、追加利潤の追求を通じまして経営の効率化を
推進しようというものであるというふうに理解しております。
しかしながら、このプライスキャップ制につきましては、またさまざまな問題点も
指摘されていることも事実でございます。特に電気との関連で申し上げますと、需要増に対応した
設備投資に必要な資金を適正に
確保できるだろうかどうだろうかというようなおそれ。それから、先ほど申し上げましたように、地域独占のもとで料金の設定をいわば公共
事業者の自由に任せるというふうになった場合に、需要者の間の負担の公平とか公正ということが本当に
確保できるだろうかどうだろうか。さらに、
事業者に過大な利潤をもたらす可能性があるのではないだろうかというようなことも
指摘されております。
それから、先ほど申し上げました料金設定の方式でございますが、物価上昇率から生産性
向上率を差し引くということによって料金全体の上昇率、平均的な上昇率を決めるわけでございますが、この生産性
向上率を適切に設定するということができるであろうかどうだろうかというような問題点。さらに、料金水準そのものにつきまして、原価主義の場合はその原価の裏づけがあるわけでございますが、それにつきまして、プライスキャップ制になった場合におきましてはその裏づけがないということになります。そういう
観点から見ますと、
透明性に欠けるのではないだろうかというような心配が
指摘されております。さらに、
事業者が追加利潤の獲得に向けて努力をするわけでございますが、その過程を通じまして、
利用者へのサービスの水準が低下する可能性があるのではないかというような問題点も
指摘されております。
このような問題点につきましては、さまざまなイギリスにおける公共料金への導入の過程におきまして、現実の問題となってきているということもございます。このように、プライスキャップ制につきましては、そのさまざまなメリットもあり、またデメリットもあるということも事実でございます。
先ほど申し上げました、十月四日から始まりました料金制度部会におきましても、これを
我が国の電気事業に適用することにつきまして、
消費者を含みますところの需要家の
意見とかあるいは
学識経験者の
意見を聞きましたが、やはり同様の懸念が表明されているわけでございます。
いずれにせよ、料金制度部会におきましては、以上のようなプライスキャップ制度とかあるいは総括現価主義のメリット・デメリットを十分評価した上で、
我が国の電気事業に最もふさわしい制度のあり方を幅広い
観点から
検討していただきたいということを期待しているわけでございます。
それから、もう
一つの
観点でございます電気事業への新規
参入条件の整備という問題でございますけれ
ども、これは、先ほど申し上げましたが、本年六月に電気事業審議会におきまして中間的な取りまとめがなされております。具体的には、卸電気事業につきましては、鉄鋼とか素材メーカー等を初めとする分散型電源の導入可能性が拡大しているという中で、この卸電気事業に係る
許可制による
規制を原則撤廃するということによりまして、即発電部門に入札制度を導入することによりまして
新規事業者の
参入を促進するという方向が出されております。
それから、需要家に対する直接の供給につきましては、既存電気
事業者の送配電ネットワークを補完するいわばサブシステムといたしまして、効率的な供給を行える
事業者が
参入できるような新しい制度を創設するという方向も出されております。具体的に申し上げますと、再開発地域などの複数のオフィスビルの群などを対象にいたしまして、コージェネレーションによりまして熱と電気を供給するような形態につきましては、一定の供給責任を負った上で、現行の
一般電気
事業者に対する
規制より、より簡易な
規制のもとで事業
許可をするということが
検討されております。
このいわば新しい電気の供給制度の構築ということにつきましては、この出されました審議会の報告に従いまして、制度の詳細について
検討を現在進めているところでありまして、本年中をめどに取りまとめを行うことになっております。
同様にガスについて申し上げますと、これにつきましては、さきの
国会におきまして既にガス事業法の改正がなされてございます。これにつきましては、
産業用の需要の拡大とかあるいは競合エネルギーの存在ということがございますので、競争原理を一部導入するという
観点から、大口需要に向けましてのガス供給につきましては、料金
規制と
参入規制を一定の条件のもとで
緩和するという
意味でのガス事業法の改正を、既にさきの通常
国会において成立させていただいているところでございます。
なお、その公共料金をめぐる諸議論につきましては、これはガス料金も同様の
立場にございます。したがいまして、電気料金と同様、ガスの安定供給、それから需要家間の公平性の
確保というような前提のもとに、経営の効率化を促す
観点からどのような料金制度が望ましいかということにつきまして、同じく先月から、総合エネルギー
調査会都市熱エネルギー部会都市ガス事業料金制度分科会におきまして、幅広い
検討を行っているところでございます。