○松岡(利)
委員 大臣の御認識を承りまして、私どもの思っておりますことと
方向は一致をいたしておると思って、そういうような
意味で心強く思うわけでもございます。
そこで、もう少しちょっと突っ込んでお
伺いをしたいと思うのでありますが、ことしは大変な水不足で、いまだに続いておる、こういうような
状況でございます。そこで私が
思いますのは、
日本の農業、林業、こういったものの条件が相当よそに比べ、特にアメリカあたりに比べれば悪い。向こうはこれはもう飛行機やヘリコプターで種をまくようなそんな生産性のところに、こっちは幾ら機械化されたとはいいましても、まだまだ三十アール区画とかそういったところを基準にやっておるわけでございますから、それは生産性で比べるならばとても太刀打ちできない。しかし、その農業、林業が衰退しだめになってくれば、
日本の水はだれが守ってくれるのか、
日本の緑はだれがどうやって確保してくれるのか、そういうことで、これは大変な危機感を持つわけであります。
もうちょっと具体的に申し上げますと、私は熊本県の阿蘇なんですが、これは何度も農林水産
委員会でも
環境庁にも
お尋ねしたのですが、
世界の阿蘇と言われるのですよ。
世界の阿蘇と言われるくらい、カルデラ地形で大変な外輪山として景観がすばらしい、こう言われております。この景観は何によって守られてきたか。これは阿蘇の畜産なんですよ。阿蘇は赤牛でありまして、赤牛を放牧いたします。これは黒牛ならだめなんです。赤牛はもう値段が下がってだめだから黒牛にかえたらいいじゃないか、そういうことを言う人もおります、畜産経営の観点からは。しかしこれは、黒牛だと放牧しないのです、もう虫にやられてだめですから、死んじゃいますから。だから、赤牛だから放牧をする。
やはり神様はちゃんとそこの場所にふさわしいものを与えてくれておりまして、そして、赤牛ですから放牧をする、そのために農家は野焼きをするのです。私も野焼きに二回ほど親の手伝いで出たことがございます。今はイベントでやっているという人もおりますが、イベントじゃない。もう今はノルマですから、牛がいなくてもみんなその集落は出なきゃいけないんですね。そんなわけで、毎年毎年その放牧前に野焼きをする。したがって、
人間の頭でいうなら月に一回床屋に行くのと同じですよ。毎年そうやってきちんと野焼きで手入れをいたしますから、女性が行ってもハイヒールでワラビとりに入れる、こういう形に本当に整備されているんですね。
今、だんだん野焼きができなくなってきました、人手が足りなくて。そうしますと、草ぼうぼう、やぶぼうぼうなんですね。そういったことが十年、二十年、三十年続いていったら、恐らく阿蘇の景観はなくなってくると私は
思います。これは、いかに畜産がそういう形で景観を守り、自然を守っておるという、これはもう行って見ていただければ一目瞭然、その因果関係というものがよくわかっていただけるわけであります。
また、熊本市というのは地下水で有名なところです。本当にこれは水の豊かな、恵まれたところです。ところが最近、地下水が減ってきた。それは何だ。やはり阿蘇の伏流水で熊本市の地下水はあるわけですが、これは私はよく言うのですが、登っていただくとよくわかる。よく見てくれ。最近水田が田植えをしていない。減反というのですが、そこが三分の一ぐらいずっとこの二十五、六年やってない。だから、そこには水がたまってないのです、田植えをしていませんから。そういたしますと、これはずっと水を上流で三分の一ぐらいためないわけですから、当然下で三分の一減って、地下水が減ってくるのは当たり前の理屈なんですね。そんなわけで、水田にしても畜産にしましても、まあ例えて言うと私のところの身近な例ですが、これはまたいろいろな研究的にも明らかにされているのです、その地下水と上流との関係は。
したがいまして、もう多くをほかにもいろいろ申しませんが、農林業と
環境というものはこういう関係にある。そういうことを考えますときに、私は、
日本の農林業が滅んだならば、これは
日本の特に都会の人にとっての水、また災害を防ぐという水田の働き、そういうことを含めた全体の
環境、これはどういうことになるのか。こういうことを考えますときに、まあちょっと雑な言い方で失礼ですが、まだまだその辺に対して考えましたときに、それに対する認識は非常に薄いといいますか、弱いといいますか、ないんではないか。
特に、
日本の代表的な日経連の永野さんなんていう会長さんですね、目立ちたがりのようでありますが、この人なんかの認識を聞いていますと、もう農業はだめになっても構わないみたいな、自分の目先の経済の利益だけは一生懸命追求しながら、長い目で見た、まさに民族の生活のもとである、基盤であるこの農業、水田とか森林とかそういうものはなくなってもいいみたいな、こういう人が
日本の代表的な経営
団体の一人ですから、本当にそら恐ろしく、薄ら寒くなるわけでありますが、そういうような人に代表されるようなそういう
意見がまかり通っておる。
マスコミも木を見て森を見ずでありまして、本当に何というか、農業の対策といいますと、これはまた過
保護だとか族議員の復活だとか、こういうおよそ角度の違った、全然ピント外れの
視点でそういう批判をする。こういうことでは、これは本当に一億二千万、いずれは一億三千万、四千万までいくんでしょう。特にその人たちはその六割、七割というのが都会で生活をするわけでありますから、その都会の水問題の将来、また災害問題の将来、こういうことを考えますときに、私は、今言いましたように農業なり林業が果たしているその生活に対する
役割、働き、これは何としても守り抜いていかなければいけない問題だ、こう思っております。
そういう観点から、特に今回のウルグアイ・ラウンド、これは大変な自由化という形にされまして、言ってみれば、向こうが小錦みたいな、曙みたいな大きな人に、こっちは中学を卒業したようなのが一緒に今度は対等で相撲をとらなければいけないみたいなそんな理屈でありますから、もう多くは申しませんが、一言で言うとそのような形で競争しなきゃいけない。言ってみれば吹雪の中に赤子が裸でほうり出されたようなものであります。したがって、今言ったような国内の大事な農林業を守るために、これが存続していくために必要なものとして国内農業対策、先般、それは私どもも精いっぱい頑張りましてああいう結果をいただいたわけでございますが、そのような
意味で、私は
環境庁の
立場からも、この国内の農林業、言ってみれば
環境のもとであるこういうものの振興、発展、これは大変な御認識を持っていただきたい、こう思うわけであります。
そのような観点から、
大臣は、今回のウルグアイ・ラウンド農業合意
関連対策の大綱を決定されたわけでありますが、これにつきまして、ひとつ御認識はどのようなものであるか、ぜひこれはお
伺いさせていただきたい。よろしくお願いいたします。