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1994-09-01 第130回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年九月一日(木曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  八月二十五日     辞任         補欠選任      瀬谷 英行君     庄司  中君      吉田 之久君     長谷川 清君      青島 幸男君     島袋 宗康君  八月二十六日     辞任         補欠選任      西野 康雄君     翫  正敏君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         三上 隆雄君     理 事                 北  修二君                 守住 有信君                 今井  澄君                 清水 澄子君                 風間  昶君                 高崎 裕子君     委 員                 笠原 潤一君                 鎌田 要人君                 佐藤 静雄君                 清水 達雄君                 陣内 孝雄君                 永田 良雄君                 矢野 哲朗君                 会田 長栄君                 稲村 稔夫君                 庄司  中君                 中尾 則幸君                 堀  利和君                 泉  信也君                 小林  正君                 長谷川 清君                 山崎 順子君                 浜四津敏子君                 横尾 和伸君                 島袋 宗康君                 翫  正敏君    国務大臣        大 蔵 大 臣  武村 正義君        文 部 大 臣  与謝野 馨君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 五十嵐広三君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 重夫君    説明員        内閣官房内閣内        政審議室長    藤井  威君        内閣総理大臣官        房審議官     平野 治生君        内閣総理大臣官        房管理室長    石和田 洋君        国際平和協力本        部事務局長    鈴木 勝也君        総務庁行政監察        局監察官     伊藤 孝雄君        沖縄開発庁振興        局振興第四課長  平井  全君        法務省民事局長  濱崎 恭生君        大蔵大臣官房審        議官       薄井 信明君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        大蔵省造幣局東        京支局長     小林 敏章君        国税庁次長    松川 隆志君        国税庁徴収部長  皆合 達夫君        文部省初等中等        教育局長     野崎  弘君        文部省教育助成        局長       井上 孝美君        文部省高等教育        局長       吉田  茂君        文部省学術国際        局長       岡村  豊君        文部省体育局長  小林 敬治君        文化庁次長    林田 英樹君        気象庁観測部管        理課長      椎野 純一君        建設省都市局公        園緑地課都市緑        地対策室長    大貫 誠二君        会計検査院事務        総局第一局長   阿部 杉人君        会計検査院事務        総局第四局長   平岡 哲也君        会計検査院事務        総局第五局長   中島 孝夫君    参考人        国民金融公庫総        裁        尾崎  護君        日本開発銀行総        裁        吉野 良彦君        日本輸出入銀行        総裁       保田  博君     ─────────────   本日の会議に付した案件平成三年度一般会計歳入歳出決算平成三年度  特別会計歳入歳出決算平成三年度国税収納金  整理資金受払計算書平成三年度政府関係機関  決算書(第百二十六回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成三年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百二十六回国会内閣提出)(継続案件) ○平成三年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百二十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月二十五日、瀬谷英行君、吉田之久君及び青島幸男君が委員辞任され、その補欠として庄司中君、長谷川清君及び島袋宗康君が選任されました。  また、同二十六日、西野康雄君が委員辞任され、その補欠として翫正敏君が選任されました。     ─────────────
  3. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 平成三年度決算外二件を議題といたします。  本日は、内閣総理府本府、大蔵省文部省国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  速記をとめてください。    〔速記中止
  6. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  7. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 鎌田要人

    鎌田要人君 私からは、まず最初に、出席閣僚に対しましてお尋ねをいたしたいのでございます。  それはどういうことかと申しますと、おくれて先進諸国の仲間入りをいたしました我が国にとりまして、先進諸国に追いつけ追い越せという国是の中で、日々の厳しい各般の営みの中で、中央集権的国家体制をとったことは、ある意味においては歴史的必然であったかなという感じもしないではないわけでございます。また、国家運営から社会の全般にわたる活動の中で、中央集権的国家体制は広く我が国民の中に根をおろしてきているとも言えます。  しかしながら、いつまでもこのような中央集権的な国家体制が続くということは考えられないことでございまして、現実我が国あり方といたしまして、地方分権時代が来ておるということが言えるのではないかと思うのでございますが、この点につきまして、出席されている各閣僚の方々のお考えを伺いたいのでございます。  まず最初内閣官房長官、それから大蔵大臣文部大臣の順番に、率直な御意見をこの点についてお伺いいたしたいと存じます。
  9. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 今、委員のお言葉にございましたように、我が国の戦後、殊に経済中心に、集中的にいわゆる追いつき追い越せという方針での国の体制というのは、何といいましても中央集権的な仕組みというものが軸になりながら進められてまいったと思うわけで、御指摘のとおりであったと思います。  しかし一方、我が国憲法は、改めて言うまでもなく、特に地方自治の章を立てて四カ条にわたって地方自治本旨に言及をしているわけであります。殊に、憲法制定当時の担当大臣である金森徳次郎先生が当時お述べになっているのには、ちょうど人間にはそれぞれ一人一人基本的人権があるように、地方自治体には本来基本的自治権とでも言うべきものがあるのだという、そういう精神というものが憲法の上にもしっかり据えられておって、我々はそのことを非常に一つの誇りにすべきものだろうと思うのであります。  しかし、ここ十数年、最近に至ってそういう中央集権に対する強い国民的な反省というようなものも出て、今申し上げましたようないわゆる地方自治本旨に基づいてもっとこの分権を進めていくべきだという大きなうねりが出てきているのは御承知のとおりでありまして、昨年の五月ごろ、当時私もちょうど社会党の方の責任者であったものですから、各党皆さんにお願い申し上げながら、衆議院でも参議院でも全会一致地方分権に関する国会決議を決めることができたということは大変画期的なことであったと思います。  一方で、地方制度調査会等でも真剣に分権についての御論議をいただいていて、今政府は御承知のとおり行政改革の大きな柱としてこの分権を進めるための作業を進めているところでありまして、恐らく年内には地方分権大綱を定める、そして分権のためのプログラムをしっかり据えながら、明けて明年、なるべく早い時期に地方分権推進に関する基本法のようなものを制定する作業をできれば早目に仕上げたい。  こういうことになっているわけでありますので、この機会にその分権をしっかりつくり上げていく、それが重要な我が国社会の今日の課題であるというふうに認識して、我々も力を合わせてその実現のために努力したい、このように思っている次第であります。
  10. 武村正義

    国務大臣武村正義君) 地方自治大変造詣の深い鎌田委員おっしゃったとおり、この五十年近い歩みを振り返ってみますと、あの敗戦のどん底から再出発をした我々日本でありますが、まずは生きること、生活、経済基本にして黙々と頑張ってきたということになります。そういう意味では、国全体としても経済復興基本でありましたし、その後も経済拡大成長が国のかじ取りの基本でもあったと思っております。  どうしても経済中心考え方効率主義を招きます。そのことが中央集権有形無形の形で半ば肯定するような、そんな意識で今日に至ったのではないか。そして、でき上がった今の日本、確かにGNPその他、経済資本に象徴されますように大変巨大な国になりました。しかし、ふっと振り返ってみますと、何か少し味気ない日本になったという感じを抱きます。効率主義経済主義の結果、地方特色はどんどんはぎ取られていったといいますか、本来、江戸時代中心にして形成されてきた大変多様な日本列島という姿を想像いたしますと、大変画一的な、単調な、しかし効率はいい、そういう日本列島を我々はつくり上げてしまったのではないか。そういうところにも、改めて地方時代という言葉が叫ばれたり、昨今地方分権が大きな関心を持たれるようになってきた背景があるのではないかというふうに思っております。  五十年たって、そういう意味で今まさに日本の国の姿、日本列島そのものをどういうふうにもう一度考え直していくかというところに立ちながら、国の政治や行政あり方全体をもう一度真剣に議論をして、願わくば集権からもう一度分権方向に、そして多様な、バラエティーのある、魅力のある日本の国をつくっていく方向にかじをとり直していくべきではないかというふうに思っております。
  11. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 国の行政地方行政境目をどこに置くか、これは地方分権の問題であろうと思います。  先生中央において地方行政を見られ、また県の行政責任者として地方からの地方分権あり方も見てこられたわけでございます。  行政を受ける国民の側にすれば、国の行政地方行政という区別は実はないと私は思っておりますが、本来国が持っていることが行政効率の上では余り意味のないということはやはり積極的に権限地方に移譲していく必要があると私は思いますし、またそのことによって地方特色が生かされ、地方の文化が振興され、あるいは国民の福祉が向上するものであると私は思っております。三割自治と言われるような状況というのは余り好ましくない、やはり地方と国との行政境目地方寄りに少し移していく必要があるのではないかと思っております。  ただし、地方分権推進という言葉だけで物事を進めていくのではなくて、地方分権推進することによって国民が受けられる行政サービスの質が向上され、また行政の判断が迅速化されるということが私は大事であると思っております。  また、地方分権を進めてまいりますけれども、その際に、国全体としては税財源地方地方によっては不均等になっていることもあるわけでございまして、そういう意味では、国民が全国どこにいても相当均質なサービスを受けられるということもやはり制度の中で考えていかなければならないことであると思っております。  しかしながら、現状では、県知事あるいは市町村長皆様方からお話を伺う限りでは、やはり国が余りにも細部にわたる権限を持ち過ぎているというお話も伺いますので、この際にそういうことを万般検討するということは大変大事なことであり、今がそのいい時期ではないかと思っております。  文部省所管のことに関しましては、もう既に相当程度地方権限が移譲されておりますし、それぞれの県、市町村物事を自主的に決められる、そういうことが相当程度まで進んでおりますけれども、今後検討すべき課題があるとすれば私どもとしては真剣にこれを検討いたしたいと考えております。
  12. 鎌田要人

    鎌田要人君 三大臣並べましてメンタルテストをしたような結果になったのでございますが、率直に申しまして、この地方分権という言葉だけがひとり歩きをしまして、現実地方分権がどういうものであり、どういう形のものにこれを持っていくんだというところまで、時間の関係もあっただろうと思いますが成熟しておらない。これは私どももまた反省をすべき点であり、お互いに考え方を出し合って練り合わせて今後やっていくべき問題だと思いますので、一応本日はこの点に対する質問はこの程度にとどめまして、次に武村大蔵大臣に対しまして、関連しまして若干お尋ねをいたしたいと思います。  一つは、先ほどお述べになりました衆参両院地方分権推進に関する決議、これは事柄といたしまして、私ども国会に籍を置く者にとりましては初めてのことでございます。そういう意味で、我々国会議員に負荷された責務というものが大きい。それと同時に、また国務大臣先生方国会に籍を置いておられるわけでございますので、その面においては同じであろうと思うのでございます。  ただいま武村大蔵大臣からお述べになりました決議の趣旨、これはいずれも東京一極集中の排除、国土の均衡ある発展を図るとともに、国民がひとしくゆとりと豊かさを実感できる社会を実現していくために、地方公共団体の果たすべき役割国民の強い期待が寄せられており、中央集権的行政あり方を問い直し、地方分権のより一層の推進を望む声が大きな流れになってきたといたしまして、ア、国と地方役割を見直し、イ、国から地方への権限を移譲し、ウ、地方税財源充実強化等地方公共団体自主性自律性強化を図り、二十一世紀にふさわしい地方自治の確立が現下の急務であるといたしておるのでございます。しこうして、このような見地から、地方分権を積極的に推進するための法制定を初め、抜本的な施策を総力を挙げて断行すべきであるとしております。  この決議は、衆参両院においていずれも満場一致をもってなされているのでございますが、今改めてこの決議につきまして、大蔵大臣、代表されましてひとつ御意見をお伺いいたしたいと思います。
  13. 武村正義

    国務大臣武村正義君) 今、御紹介をいただいたような内容の衆参両院決議がなされたところでございます。国民世論としても、中央集権的な行政あり方を問い直して地方分権のより一層の推進を望む声が大きくなってきていると、まずこういう認識がうたわれておりまして、御指摘のように、国と地方役割をもう一度この時期に見直しをすべきである、そして方向としては国の権限地方に移譲していく、そして地方税財源を強めていく、そして自主性自律性を高めると、こういうことが明確にうたわれているわけであります。  この方向に沿って、政府としましても、総理以下、真剣に地方分権推進に取り組んでいかなければなりませんし、既に御承知のように、今官房長官からも御答弁ございましたが、行政改革推進本部の中に地方分権部会が設けられまして会合が重ねられております。これには関係大臣一般国民を代表される専門家も何人か入っていただいておりまして、一緒に議論が始まっているところでございますし、大きな方針としては、来年の通常国会には地方分権推進法律政府が提案できるところまで運んでいかなければいけないというふうに思っているところでございます。  ただ、一言分権推進といいましても、心配になりますのは、各論に入っていきますと容易なことではありません。いろんなところからこれに対する抵抗も覚悟をしなければなりません。政府足元から、各省庁から出てくる抵抗もありましょうし、その背後には国民といいますか、各種団体、その利害に絡まる国民皆さん抵抗も、反対の声も出てくるかもしれません。そのことはもう当然予測されるわけでありますし、過去もたくさんの答申等がある中でなかなか実らなかったことも振り返りますと、言葉だけでなしに、政府全体として本当に腹を据えてこの問題に取り組んでいかなければいけないのではないかというふうに思っております。
  14. 鎌田要人

    鎌田要人君 おっしゃるとおりでございまして、政府省庁事務方になりますと、地方分権反対なんです。これは一つには、私も役人をしましたので役人気持ちとしてわかるのは、自分の縄張りをとられることは非常に嫌ですよね。これは本能的な反対があります。それから、地方自治と言っても地方分権と言っても、言っていることは美しいけれども実態は何だと。実態は、特に建設省とかあるいは厚生省とか、そういうそれぞれの縦割り行政になりますと、いわば国の官庁と地方府県市町村とが一列になっています。そういうことで、役人の仲間では、国の役人が一番偉くて、府県役人がその次に偉くて、市町村役人が一番下だと、率直に言ってこういう気持ちがあるんです。  そういうことがある中で、こういうことをやっていくというのはなかなか、大変難しいことだと思います。それだけに我々はやらなきゃならない。その第一段階といたしまして、今お述べになられました地方分権に関する法律をまずつくる、これが大事だと思うんですが、これだってなかなか大変だと思います。  各論になりますと、今どなたからかお話がありましたが、極端なことを言いますと、各党地方行政部会地方自治ということを考えておりますが、隣の部会に行きますと、各論になりますと全く反対。そういう現実の中で地方分権を貫徹していくということは大変なことだと思います。  しかし、それはやらなきゃならないことだ。その意味において、難しい中でこの問題に取り組んでいくための、大蔵大臣は特に、そういう意味ではあなたの足元大蔵省役人反対なんですから、その点も含めてもう一遍あなたの決意のほどをお伺いいたしたいんです。
  15. 武村正義

    国務大臣武村正義君) 大蔵省のつくりました答弁には、大蔵省としても地方分権推進協力をしてまいりたい、こう書いておりますので、基本的には政府方針役所全体としてもぜひ真剣に対応をしていきたいと思っております。  ただ、おっしゃるとおり、余り予想で難しさを今強調する必要はないのかもしれませんが、既に地方分権に先行して規制緩和仕事が昨年来進んでいるところでございます。地方分権は国から地方権限を移譲するということですが、規制緩和は官から民へ権限を移譲するといいますか、官の権限そのものを緩める、なくするという仕事でありますが、この仕事政府の中で経験しておりましても事は容易ではありません。各論に入りますと一つ一つなかなか大変であります。  一言役所抵抗といいますが、一つ法律や政令にはみんな法益があるといいますか、大義名分がございます。大義名分のないものはないわけでございます。そしてまた、その大義名分利害のかかわる団体国民も大小必ず存在することを考えますと、国民利害に手を入れるというか、言ってみれば波風を立てることになるわけでありまして、穏やかな考え人間ではなかなかできない話であるんだなと私も感じておるところでございます。  同時にまた、国会の中も、今御指摘のように部会が違えば主張が違うとおっしゃいましたが、衆参満場一致決議をしておりましても、我々国会議員も実は中央集権利害の上に今立っているということも率直に認識しなきゃなりません、選挙その他も含めて。ですから、大胆に分権を進めれば進めるほど今の国会議員もそれぞれ利害の面で何らかの影響を覚悟しなきゃならない。そんな難しさがあることを認識しながら、政府の一員として精いっぱい努力をしなければいけないというふうに思っております。
  16. 鎌田要人

    鎌田要人君 どうも話を伺っておりますと大蔵大臣自身も、総論は賛成だけれども各論は甚だ難しい、こういうお気持ちです。これに類したことを私はあらゆる機会に言いかつ論じてきたんですが、私はそういう難しい仕事であればあるほど大蔵大臣が蛮勇を振るわれる好機だと思うんですね。そういう意味で、大蔵大臣だけじゃない、これはここにおいでの大臣あるいは閣僚諸公すべてに共通する問題であります。  そこで、やや各論に入りまして、問題を一歩現実具体のレベルに引き上げてみましてこの問題を考えてみたいと思います。  まず、国、地方を通じて公務員の数を減らすということが一つの大きな問題になるんですね。公務員の数は私は率直に言って多過ぎると思うんです。この問題が一つかかわってきます。  それから、そういう前提の中で地方分権強化を図っていく、こういう場合に国、地方を通じて公務範囲というものを見直したらどうだと。公務といっても、あるいは今日の事態のもとにおいては公務の域から脱却して、もう民間に移していい仕事がかなりあるはずです。これは後ほど関連してお答え願いますが、そういうことで、国、地方を通じて公務範囲の縮小を図るということ、これがどうしても並行して必要です。  特に我が国事務国家事務といたしましては、これはよく言われておることですが、幣制、外交、国防、司法あるいは行刑、それから国の機関の設置、維持及び運営に要する経費、国の教育及び研究施設に要する経費を初めとしまして専ら国の利害関係のある事務を行うためのものに限定をする、これが基本的な要件ですね。それで、その他の事務につきましては地方公共団体に思い切ってこれをやってしまう、あるいはもちろんその過程において廃止するものもありますよ、さっき言いましたように。それで、残った事務については思い切って地方公共団体の創意と工夫に任せる。  でありますから、地方自治体自身もあっけらかんとしておっちゃいかぬ。ただほいほいで、地方分権だということでうれしがっていちゃいけないということを私はあらゆる機会に申しておるのでありますが、地方公共団体は、したがってその英知を結集しなければなりません。また、そのために必要にして十分な財源措置もみずからも講じ、あるいはまた国としても講じなければならない。  こういったことが期待されるのでありますが、この点につきまして武村大蔵大臣の御意見を再度お伺いいたしたいのであります。
  17. 武村正義

    国務大臣武村正義君) 御指摘のとおりだと思います。  まず、公務員の数が多過ぎるという御指摘がございました。  御承知のように、国は八十六万何千人でございまして、ここ十何年間か総定員法もございまして、総務庁を中心にかなり御苦労をいただいて、ふやさない、少しでも減らすという努力を毎年少しずつではありますが続けてきているところでございます。地方は、鎌田委員も御経験のように、やはり福祉、教育、いわゆる身近な住民サービスを担当しておりますだけに、サービス強化しようとすればどうしてもいろんな施設がふえてまいります。そうすれば、そのための人員が必要だと。人員イコールサービスという形もございまして、今三百二十何万というふうにやや増加ぎみでございまして、国、地方を足すと四百万を超えるというこんな実態であります。  アメリカは、ことしでしたか、ゴア副大統領が中心になって一つのかなり大胆な数を減らす行革の法案が通ったようでございます。五年間ぐらいかけて、たしかあれは二割ぐらいでしたか、公務員の数を減らすような方針ができたようでございます。日本もこういう例もひとつ参考にしなければいけないと私は感じているところでございます。
  18. 鎌田要人

    鎌田要人君 この問題、大きな問題でありますので、慎重かつ効果的におやりになることを期待いたしまして、次の問題に移ります。  次の問題は、直接的には総務庁の問題でありますが、大蔵大臣国務大臣としての役目にかかわる問題でもありますのでお答え願いたいのでありますが、それは規制緩和行政改革との関連の問題であります。  総務庁では、一九八五年以降毎年許認可などの数を公表しております。それによりますと、一九八五年に一万五十四件だった許認可などの件数は、毎年増加いたしまして、九三年三月末時点では一万一千四百二件と、実に千三百四十八件も増加しております。規制緩和が叫ばれているのに、許認可などの件数は減るどころか毎年ふえておるということでありますが、この点についての総務庁の言い分、すなわちこれは統計のとり方の問題です、必ずしも実際を反映している問題ではありません、この主張も実はわからないこともないんです。  それから、特にヨーロッパ諸国では国営企業がたくさんございます。国営企業が多いと国家独占でありますから規制の形はとらないということになっておりまして、これもわからないではないのでありますが、やはり数がふえておるということは厳然たる事実でありまして、それが一万件を超える膨大な規制ということになっておることでありますれば、まずその数を減らさないと規制大国という悪名はそそげない。その意味で、大蔵大臣初め各大臣の御健闘に期待することまことに切なるものがありますが、ひとつ大蔵大臣のこの点に関する明快な御答弁を御期待申し上げたいのであります。
  19. 武村正義

    国務大臣武村正義君) 御指摘をいただきましたように、平成五年三月のデータを見てみますと、規制の数は一万一千四百二という数でございますが、この年度に一年間四百六十ぐらい規制がふえております。毎年少しずつふえてきていることも御指摘のとおりでありまして、規制全体を減らしていくということはこの数字をにらみましても容易なことではない、大変な努力をしなければいけないことを示しているところでございます。  大蔵省のところを見ましても、千三百八十七件の規制がございまして、平成五年で百五十一もふえております。何でこんなにふえたんだと聞きましたら、金融自由化で、逆に自由化になったことで細々いろんな法整備をいたしまして、結果としてはふえてしまったということもありまして、数だけが問題ではないことも御指摘のとおりでございます。いずれにしましても、この問題も規制緩和のための要綱を政府は決めておりますし、これは今年度中でございますが、規制緩和の五カ年計画をつくろうという考えでございます。  過般、二百七十九項目の決定を政府としていたしましたが、一万一千幾らに対してたった二百七十九、アメリカからもそういう批判も受けたわけでありますが、これはしかしもう少し中身を見ていただきたいと。土地、住宅、あるいは流通、通信、そして市場アクセス等々にかかわるようなそういう規制をかなり思い切って緩和する決断をしたところでございまして、御指摘のような数と質と両面から厳しく見詰めながらこの問題にも取り組んでいかなければいけないというふうに思っております。
  20. 鎌田要人

    鎌田要人君 これはお答えは要りませんが、私自身の国家公務員としましての三十年の過去を顧みましても、これは結局職員の数に関係するんですね。その許可事務に従事する職員をどうするかという問題、それが一つの大きな関心事なんです。  でありますから、ここのところは私は英断が必要だというのは、その事務が本当に必要なのかどうなのか。これは、その役所の中の人間としてはどの仕事も大事ですよ。でありますから、そのために国務大臣という存在があって、国務大臣役所の目を離れて国務の目からこの事務は要らぬよ、この事務は外すよということが言えるか言えないかという、大臣の何といいますか冷酷非情な性格というものもまた必要になる面もあると思いますね。単に人情家でありますと、役所は永久にふえ続けます。ということを私の意見として申し上げます。  次に、最後の問題ですが、これは国税庁の方にお願いいたします。  「平成三年度決算大蔵省についての検査の概要に関する主管局長の説明」というのがあります。この中で、税務署職員の不正行為並びに造幣局職員の不正行為による損害が掲げられてあります。これはまことに残念なことでございますが、特にその中でも私が注目したいのは、検査報告番号三号の「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」についてお伺いいたしたいのであります。  主管局長の説明では、   これらの徴収過不足の事態は、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、これを見過ごしたりして、誤ったままにしていたことなどにより、徴収額に過不足を生じていたものであります。 とされております。  戦後五十年を経過しようとしておる折から、このような内容の件数が後を絶たないのはまことに遺憾のきわみと言わざるを得ないのでございますが、この該当件数、該当金額の累計額がどの程度に達しておるのか、お示しをお願いいたしたいと思います。  それと関連いたしまして、徴収額に過不足を生じた場合の徴税職員の責任のあり方についてもお伺いいたしたいのであります。
  21. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 五十嵐官房長官公務のために退席いたします。
  22. 松川隆志

    説明員(松川隆志君) お答えいたします。  平成三年度決算報告で租税の徴収に当たりまして徴収額に過不足があったものとして指摘を受けた事項数は四百二十五事項でございまして、前年より三件しか減っておりません。  その発生原因別の件数でございますが、課税資料の収集、活用が的確でなかったもの、これが七十三件でございます。金額は二億四千九百万円でございます。それから法令等の適用の検討が十分でなかったもの、これが百五十五件でございまして、五億四千百万円でございます。それから申告書等における所得金額や税額等の記入誤りを見過ごしていたもの、これが百九十七件でございまして、七億一千五百万円でございます。  こういう指摘を受けましたことは大変遺憾であるというふうに考えております。税務を取り巻く環境は、課税対象の増大あるいは経済取引の複雑、広域化等によって厳しさを増しているわけでございますが、指摘事項を踏まえまして、今後とも職員研修や内部監査の充実を図って、かかる指摘を受けることのないように努力していきたいと思います。  そして、今御質問のございました、そうした徴税職員についてどうしているのかという問題でございますが、会計検査院からこうした指摘を受けた場合には、関係者、これは監督者とその当該担当者でございますが、その双方に対して口頭で注意を行いまして、今後同様の誤りを繰り返さないよう努めてもらいたいというふうにしているところでございます。
  23. 鎌田要人

    鎌田要人君 ただいま国税庁の次長さんの方から概要を伺いました。まだ時間の余裕がありますともう少し突っ込みたいのでございますが、あと残された時間が二十三分しかありませんので、今度は文部省の担当の局長さんの方にお伺いいたします。  「平成三年度の決算文部省についての検査の概要に関する主管局長の説明」によりますと、検査報告番号七号から十八号までの十二件は、義務教育費国庫負担金等の経理が不当であると認められるものであります。その内容を見ておりますと、教職員の標準定数を過大に算定いたしましたり、あるいは退職手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりしたなどのため、国庫負担金が過大に交付されているものであると報告をされております。  これは、実は私は自治省の時代文部省関係のこれに類する事項を伺ったことがあります。そのころは制度改正になりましてまだ時間も余りだっておらない昭和二十五年、三十年のころのことでありますからね。ところが、ことしのこの報告を見まして、私はこの間の時間の経過というのは全くむだだったんじゃないかという感じがするくらい、これは本当にこれだけの件数があるんだろうかなという気持ちがしてこの問題を取り上げたわけでございます。結局、ここに記載されております事例は、いずれも当該地方公共団体の財政運営に対しましても償うべからざる損害を及ぼしたものと言うべきものでございまして、絶対に容認できないものであることは言うまでもないところでございます。  この件数が多いのか少ないのか判断するすべがない、これまた私どもまことに残念でございますが、これが件数及び動向、増加しておるのか減少しておるのか、あるいは横ばいなのか、この辺のところも含めましてどうごらんになっておられるのか、担当の局長の御説明をお伺いいたします。
  24. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘がございましたように、平成三年度決算検査報告におきまして、義務教育費国庫負担金等の経理が不当事項とされましたのは十二都府県でございまして、前年度に比べまして四県の増となっております。  また、指摘金額について見ますと、平成元年度の約三億一千二百万円をピークに減少をしてきているわけでございまして、平成三年度は約一億六千四百万円となっておりますので、前年度に比べまして約九千万円の減となっているところでございます。  先生御案内のとおり、義務教育費国庫負担制度の対象となります義務教育諸学校の教職員総数は約七十七万人でございまして、これらにつきまして、各都道府県ごとに学校種別、職種別及び任用形態別に、毎月の実数といわゆる標準法に基づきまして算定した定数を比較しますとともに、給料及び諸手当につきましては、国の規定と県の規定を比較するなどいたしまして、総額約二兆九千億円の国庫負担金を算定しているところでございまして、このため必要となります資料は膨大となり、またその事務も複雑なものとなっているところでございます。  したがいまして、義務教育費国庫負担金等の経理につきましては、かねてからその適正な執行について指導をしてまいっているところでございますが、なお、会計検査院から指摘を受けました事態を生じたことはまことに遺憾なことであると存じているところでございます。今後はこのようなことがないよう、事業主体でございます都道府県に対しまして、会議等を通じ指導をより一層徹底いたしますとともに、義務教育費国庫負担金等の適正な執行に遺憾なきを期してまいりたいと考えております。
  25. 鎌田要人

    鎌田要人君 この問題につきまして私が非常に疑惑を持ちますのは、こういうことをしてうちの県で得をしたよと、こういうことを誇らかに財政当局に自慢をするんですね。そういうことが私が実務をやっているときにありました。これはとんでもない勘違いでありまして、そういうことを含めて、こういうことで自分の県が得したよということを手柄顔しておっしゃるようなことにならないように、その点は特に皆さん方、各県の担当者をお集めになっての会議の席でもあるいはこういう非違を犯した県につきましても特に厳重な指導監督をしていただきたい。この非違件数として出ております内容は、単にミステークじゃなくて悪意ある錯誤だと私は思います。その点もひとつ御参考までに申し上げておきます。  なお、関連しまして、次の検査報告事項、十九号から二十三号までの五件につきましても、同様に補助対象外のものを補助対象事業費に含めましたり、補助種目の適用を誤ったりしたために、負担金等が過大に交付されていたものと報告されておりますが、これに関しましても同様にいまだにそのような事例が後を絶たないことに強い不満を覚えておるところでございますが、恐らくお答えも同じことであろうと思いますので、この点につきましても私は特に当局側の自覚を促しておきたいと思います。  第三番目の問題といたしまして、これは実は私あるいは委員長もそうだろうと思いますが、過疎県を舞台としております国会議員にとりましては大変つらい問題がございます。これはどういうことかといいますと、学級数の減少が見込まれる場合におきまする補助対象面積の算定に関してであります。  この問題は、特に私ども過疎市町村を多く抱えます地方国会議員にとりましては重大な関心を有するところでありますが、この補助金に係ります補助対象面積は、事業実施年度の翌年度以降学級数が減少することが見込まれる場合も含めまして、事業実施年度の五月一日の学級数に応ずる必要面積により算定することになっております。そのために、新しい校舎等の供用開始時には既に、あるいは開始して間もないうちに、学級数が減少して、結果として補助対象面積が過大であったと認められる場合が相当数見受けられるようであります。  そこで、児童生徒の数が減少する状況に対応できるように現行の補助制度の見直しを行うとともに、予定学級数の推計を的確に行うなどして補助金の効率的な使用を図るよう意見を表示したものであるとされております。  一面、まことにもっともな事理を踏まえているように思われますが、問題は予定学級数の推計の問題になると考えられますので、この推計をいかにして現実に近づけるか、その精度を高めるための努力が必要でありますと同時に、地方の活性化の問題とも絡みまして、いたずらに地方、特に過疎集落の多い地方が減少の一途をたどるものと見込んでしまうことにも問題がございます。  そこで、この間の調整には若干の時間の余裕が必要であり、また精査のための努力が必要であると思いますが、この点についての御感想、御意見、何でもございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  26. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  まず最初に、先生から先ほど義務教育費国庫負担金及び公立文教施設国庫負担金につきまして御注意をちょうだいいたしましたが、先生の御趣旨を体しまして、今後会議等を通じましてなお一層その趣旨が徹底するように私どもとしては指導してまいりたいと存じております。  次に、ただいまお尋ねのございました平成三年度決算報告におきまして、会計検査院から、学級数が減少する場合で再び増加する見込みのない場合の補助対象面積につきましては、減少後の学級数に基づく必要面積に従って負担を行うべきであるという旨の意見表示が文部大臣あてになされたところでございます。  文部省といたしましては、この意見表示の趣旨を踏まえまして、事業実施年度の翌年度に明らかに学級数が減少すると見込まれる場合には、原則として減少後の学級数に基づき適切な事業認定を行うことといたしまして、その旨平成五年四月に各都道府県教育委員会に対しまして通知をいたし、指導を行ったところであります。  今後はこの意見表示の趣旨にのっとりまして、適切な補助事業の執行について引き続き各都道府県及び市町村を指導してまいりたいと考えております。
  27. 鎌田要人

    鎌田要人君 実用に即した指導をどうぞよろしくお願いいたします。機械的な指導じゃだめですよ。  それから、平成三年度決算文部省についての検査の概要に関する主管局長の説明中、末尾の問題であります。  末尾に、「なお、以上のほか、平成元年度決算検査報告に掲記いたしましたように、」といたしまして、「高等学校定時制課程に在学する生徒への教科書の給与事業及び夜食費の補助事業について、及び医学部附属病院特殊救急部が行った救命救急医療に係る診療報酬の請求について、それぞれ意見を表示し又は処置を要求いたしましたが、これらに対する文部省及び大阪大学の処置状況についても掲記いたしました。」とございますが、これは配付になりました資料中、どこに載っておりますのか判然としておりませんが、どうでございましょうか。また、その実態はどうなっているのか御説明をお願いしたいのであります。
  28. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) お答えを申し上げます。  今、御指摘のうち私の方からは、定時制課程に在学する生徒への教科書の給与事業とそれから夜食費の補助事業について、その措置状況につきましてお話をさせていただきたいと思います。  定時制課程に在学する生徒に対しましては、昭和三十六年度から夜食費の補助を行っています。また、昭和四十八年度からは教科書給与の各事業を実施する都道府県に補助を行う、こういうことで実施をしてまいったわけでございますけれども、これらの補助事業につきましては、平成二年度に会計検査院の方から、補助事業の対象となっている生徒の多数が勤労青少年に該当しない事態、こういうことは補助金の交付の目的から見て適切ではない、こういう改善意見が出されたわけでございます。  この改善意見を受けまして、文部省では平成三年度に高等学校定時制・通信制教育検討会議、こういうものを設けまして、会計検査院の改善意見も念頭に置きながら、時代の進展に対応した定時制教育あり方などにつきまして検討を進めてきているところでございます。実は今の段階におきましてはまだ検討を進めているところでございますが、この会議の報告を待って具体の方策の検討を進めてまいりたい、こういうことで会計検査院の方にまだ具体の方策というものを出していないということで、引き続き検査院の報告の中に指摘をされている、こういうことでございます。
  29. 鎌田要人

    鎌田要人君 今、会計検査の関係で若干お伺いいたしましたが、いずれもこれは見方によりますと九牛の一毛かもしれませんね。まだ大きなやつが陰に隠れておるかもしれないということを絶えず頭に置かれて、戦々恐々たる気持ちで会計検査の問題は取り組まれることを希望いたします。  最後に、ただいま私とあなたの部下との間のやりとりをお聞きになられ、その御感想も踏まえまして、文部大臣の率直な御感想と御決意のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  30. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 一般的に申しまして、国会で御承認をいただいた国の予算を執行することに関しましては、その予算が効率的に使用されるということも私ども努力をしなければなりませんし、また国会で御承認をいただいた際の予算の趣旨というものを十分体してこれを執行しなければなりませんし、また国、地方が定めるあらゆる会計原則に照らしまして厳正にこれを執行する、これは行政機関に与えられた当然の責務であると思っております。にもかかわりませず、会計検査院から何件かの御指摘があったということはまことに残念でございますし、大変遺憾なことでございます。  今後は、これら御指摘を受けたことに関しましては適正な措置も講じなければならないと思いますし、また今後このようなことが頻発しないように未然に周知徹底、あるいは未然の防止策というものを講じていくということが必要であると思いますので、先生の御指摘を十分体しながら今後予算の執行に当たりたいと考えております。
  31. 鎌田要人

    鎌田要人君 終わります。
  32. 永田良雄

    ○永田良雄君 自民党の永田良雄でございます。  本日は、内閣総理府、大蔵省文部省所管平成三年度の決算審査ということでございます。私は、大蔵省文部省中心にして若干の質問をさせていただきたいと思うわけであります。  振り返ってみますと、平成三年度というのはちょうど今から三年前でありますが、当時は夏から秋にかけて証券・金融問題をめぐる不詳事件が相次いで明るみに出たわけでございます。そして、国会でも事件の解明と再発防止策について真剣な議論がなされていたことを思い出すわけであります。  それからまた一方、二年前を振り返ってみますと、日本全国がバブル崩壊後の深刻な不況に襲われ、その中でいわゆる金融機関の抱える膨大な不良債権は一体どんなものなんだろうか、どうなっておるんだろうか、こういう議論があり、かつそれが国民にいろいろな不安を醸成した時期でもありました。そして当時、金融システムの不安という言葉さえ使われたわけであります。  自民党は、当時政権にあったわけでありますが、政府と一体となってこの経験したことのない未曾有の不況に対し、緊急経済対策やらあるいは総合経済対策をやってまいりました。その後の我が国経済状況を見ますと、最近では一応不況の難局は脱したというふうに言われております。底が見えてこれからは明るくなるというふうにも言われております。しかし、バブル崩壊後のつめ跡が消えたわけではなく、いろいろまだそう楽観はできないよ、そう簡単に明るい展望が開けるわけではないよ、こういう分析もあるやに聞いておるわけであります。  現在の日本経済状況について、これは本当は経済企画庁長官の御答弁が適当なのかもしれませんが、財政を握っておられる大蔵大臣としてこの経済の現状をどのように見ておられるのか、それからこれまで政府がとってまいりました金融政策あるいは財政政策についてこの不況と絡めての評価をどのように考えておられるかということを、忌憚のない御意見大蔵大臣からお伺いしたいわけであります。
  33. 武村正義

    国務大臣武村正義君) 今、永田委員おっしゃったとおりの経緯で今日に至っているわけでありますが、昨今の政府の概括的な認識は、難局を脱したというところまではまだ申し上げておりませんが、景気に対する明るい要素がだんだんふえてきている、広がってきているという認識でおります。  御承知のように、政府投資は公共事業を中心にして、今御質問にもございましたが、これこそ累次にわたる補正予算あるいは経済対策を積み重ねてまいりまして一定のレベルで推移をいたしておりますし、住宅投資が御承知のようにかなり堅調に推移をいたしております。特に、本年に入りましても百五十何万というふうな大変な戸数に達しておりまして、この辺はかなり景気の厳しい状況の中で牽引車的な役割を果たしてくれているというふうに私は思っております。  一番肝心なのは設備投資と消費でありましたが、設備投資そのものはまだかなり重たい状況が続いておりまして、昨今、一部機械受注なんかで明るさが見え始めているということではないかと思っておりますが、消費の方は、この暑い夏という季節の状況政府の減税措置の効果等もございまして、夏物を中心にして、あるいは家庭の中でもしばらく買い控えをしていたあるいは数年前に買った家電製品がようやく買いかえの時期を迎えたというふうなこともありましてか、やや消費の動向が進んできておりまして、八月の数字はわかりませんが、六月から七月はやや明るさが消費一般についても見え始めているという状況であります。そんなことから、全体としては先ほど申し上げたような認識を持っているところでございます。  一つ懸念されておりますのは為替の相場でありまして、これが百円を前後いたしておりまして、プラスの影響ももちろんあるわけでございますが、どちらかといえばこのことが輸出企業も含めて何となく不安を引きずっているという状況でございます。  総括的には、政府のとりました財政対策、日本銀行がとりました史上最低とも言われます一・七五という公定歩合の政策、こういう政策がやはり基本になってそれなりの景気対策としての影響を与えてきているというふうに思っていますし、そこへプラスことしは減税というかなり大胆な政策も加えているわけでございまして、それがすべてではありませんけれども、それなりの景気回復に対するプラスの影響を与えているというふうに認識をいたしているところでございます。
  34. 永田良雄

    ○永田良雄君 今の大蔵大臣の御答弁、私も大体そういう認識を持っておるわけであります。  そこで次に、金融システムの不安ということをもたらした金融機関が抱えております不良債権の問題について御質問をしたいと思うわけであります。  まず最初に、平成六年、ことしの三月期の決算で、都市銀行、長期信用銀行、信託銀行、地方銀行の不良債権の合計額がどの程度あるか、それぞれ銀行の種類別にお知らせいただきたいと思うわけであります。これは事務当局の方で結構でございます。
  35. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) お答え申し上げます。  本年三月末におきます都銀の不良債権の額は約八兆九千七百億でございまして、五年の三月末に比べて約三%減っております。長期信用銀行につきましては一兆八千八百億ばかりございまして、やはり五年九月に比べますと一%程度減っております。それから、信託銀行につきましては約二兆七千百億でございまして、これは五%弱ふえております。いわゆる三業態を合わせまして、先生指摘の二十一行ベースで申し上げますと合計十三兆五千七百億程度ございまして、五年九月末に比べて約一%減っておるところでございます。  また、本年三月末における地方銀行、これは六十四行ございますが、この地方銀行につきましては破綻先の債権の額のみを公表しておりますけれども、これは約六千七百五十億円と、昨年九月末の約六千二百億円に比べまして九%ばかり増加しておる、こういう状況でございます。
  36. 永田良雄

    ○永田良雄君 地銀については延滞債権というやつは公表しておらないんですが、これはどういう理由によるものなんでしょうか。
  37. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 地方銀行及び第二地方銀行協会加盟行につきましては、地域の信用秩序に与える影響、要するに対象とする社会が都銀等に比べまして小さい、お互いの状況、取引先等の状況がよくわかっておるというような地域の信用秩序の現状にも配慮いたしまして、延滞債権は開示せず破綻先債権のみを公表しておる、こういう状況になっております。
  38. 永田良雄

    ○永田良雄君 個々の銀行の延滞債権を公表するのであれば、その地域の経済界に与える影響というのは大きいのでございますが、トータルとして把握することにはそれほど影響ないのではなかろうかというふうに思うのが一つ。  それからもう一点は、延滞債権というのを厳密に定義をしていただきたいと思うわけであります。一般の債権とここへ取り上げてある延滞債権というものの違いはどうなのかということを教えていただきたいわけであります。
  39. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 先生指摘のように、なるべく銀行の経営状況というものは一方においてオープンにする、開示すべきである、こういう考え方がございます。他方におきまして、やはりこれは銀行のみならず取引の相手方の信用にもかかわりますものでございますので慎重に取り扱うべきである、こういう議論もございます。  世界の各国を見渡しましても、どちらかというとアメリカにおいては非常にその公開性というものを重視するし、ヨーロッパ大陸諸国においては比較的慎重だというような対比も示しておるところでございます。  私どもは、この問題を学識経験者の間でいろいろと議論をしていただきました結果、いわゆるマネーセンターパンク的な都銀、長信銀、信託についてはできるだけ開示をしよう、地方銀行等につきましては少し状況を見ていこう、こういう現状になっておるわけでございますが、しかしできるだけ今後銀行の経営状況等はなるべく明らかにしていく方向考えるべき問題と考えております。  なお、俗に不良債権と言われておることの定義でございますが、これもまた日本の国内においてもいろいろな定義のもとに議論がされておるところがございますし、外国でもまたこれはまちまちでございます。先ほど申し上げました都銀、長信銀、信託に関しますいわゆる不良債権と申しますのは、破綻先の債権、銀行が貸し出しているその先が破綻したようなそういうところに対する債権、そして六カ月以上延滞をしております先の債権、これを合わせましたところのものをいわゆる不良債権と定義をいたしまして、数字を公表しておるところでございます。
  40. 永田良雄

    ○永田良雄君 私が今したような質問をいたしますのは、この三業種全体で不良債権が十三兆七千億余、それから地銀が六十四行で六千七百億、第二地銀が六十五行で五千百億ぐらいという数字、合わせても約十五兆弱ぐらいになるわけでございますが、巷間言われておるところでは、そういう数字ではなくて、恐らく五、六十兆にもなるんじゃないかということを言われておるのをよく聞くわけでございます。  そこで、そういうことがいわゆる地銀、第二地銀の方に多いのか、あるいは延滞債権額というところにこれが今後含まれてくるのかということで申し上げたわけでありまして、そういう大きなことはないというふうに理解してよろしいかどうか、御返答願います。
  41. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 世の中で先生が御指摘のようなもう少し大きめの数字のことについて議論される場合には、通常、金利を減免している、延滞まではしていなくても金利を減免しているような取引先の債権、こういうものをも含めて見るともっと大きな数字になるではないか、こういう御指摘が世の中にございます。確かにそれはそうでございましょう。  しかしながら、これは必ずしも破綻をすると決まった債権ではない。要するに、相手先の再建を願い、それを支援しつつ当面金利を減免する、そういうケースもございますし、いろいろな事情、金利の状況、先ほど大臣の御答弁にもございましたように最近非常に低下している状況等を見まして、それに対応するというケースもございましょう。したがって、金利減免債権というものになりますと非常に定義もあいまいになりますし、またその性格もまちまちでございます。  したがって、これを含めると何十兆になるというような議論というのは余り建設的でないのではなかろうか、また世の中の人に過剰な不安を与えることにならないであろうか、こんなことで私たちは、先ほど申し上げましたように金融機関の経営上大きな制約になる、そういうものを取り上げて不良債権という考え方をしておるわけでございます。  しからば、そのような金利減免債権等を含めばどれぐらいになるか。これはただいま申し上げましたように、定義の仕方がいろいろございますものですからなかなか難しい問題だと思いますが、私たちは、そういう問題が決して簡単なものではない、容易なことではないというふうには考えておりますが、真剣な努力を続けていけば十分解決できる程度のものだと考えております。
  42. 永田良雄

    ○永田良雄君 今、金利減免債権のお話を言われました。私もそういうものを含めるとかなりな金額の数になるというふうには思うわけでありますが、それについては今公表するのは適当でないし、建設的な意見でない、しかしそのことの存在自体は大変重要に受けとめているという答弁であります。私もそうだろうと思うわけであります。したがって、今単に破綻先債権とかあるいは延滞債権だけでなく、そういうものも含めて十分慎重にやっていかなきゃいかぬと思うわけでございまして、よろしくお願い申し上げたいと思います。  そこで、実は先ほどの報告でも、都銀、長信銀では不良債権がことしの三月期は去年の九月から見ると減っている、ところが信託銀行それから地銀関係はふえているわけであります。それは、先ほどお話しになりましたいわゆる金利減免債権が延滞債権の方へ転化してきている、こういうふうに見てよろしいのかどうか、そしてそれは今後もかなり続くものと見ていいのかどうか、お聞きいたしたいわけであります。
  43. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 先生指摘のように、都銀、長信銀につきましては五年九月に比べまして本年の三月は不良債権の額は若干ながら減っておるわけですが、信託銀行そして地方銀行については、少し定義が違いますけれども、増加傾向が続いておるということは全く御指摘のとおりでございます。  ただ、今年の三月の一年前、五年三月に比べますとそれほど特に信託銀行、地方銀行の状況が顕著に他の業態と異なっておるということではございませんで、いずれの業態も一年前に比べると少しふえているかということでございます。都銀、長信銀は、半年前に比べると他よりも早く改善の兆しが見えてきているということでございまして、基本的に業態間に大きな状況の差があるというふうには私ども考えてはおりません。  しかしながら、現実に信託業界のケースがふえておることは事実でございますし、これは五年度の下半期において不動産業等に対する融資を中心に新規の不良債権が発生したため相応の償却等には極力努めたのでございますが、しかしながら全体で見ると若干不良債権が増加した、こういう状況になっておるわけでございます。
  44. 永田良雄

    ○永田良雄君 都銀、長信銀が減ったというふうに言いましたが、これは実際上はいわゆる不良債権の償却あるいは共同買取機構への売り渡し、こういうことによってかなりの部分が減っているわけですよね。ただ、これは実際上は償却にしてもそれから共同買取機構への売却にしても、いわゆる不良債権を一部損して移したというだけであって、その移した担保となっている不動産が実行をされて現実の金にならないことには不良債権であり続けるわけですね。そういうふうに理解してよろしいのかどうかということが一つ。  それからもう一つ、それでは共同買取機構へ売り渡された金額はそれぞれ幾らぐらいになっておるのか。その債権額は幾らで、売り渡した金額は幾らかということを教えていただきたいわけであります。
  45. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 先生指摘のとおり、不良債権の額が減少してきておるということの原因の一つに共国債権買取機構への売却というようなこともございます。この共国債権買取機構は、低迷する不動産市況のもとにおきまして、金融機関が担保不動産を直接処分して不良資産を処理することが困難な状況を踏まえまして、そうできれば一番いいわけでございますが、それが困難な状況を踏まえまして、買取機構に不動産担保つき債権を売却することによりまして不良債権に係る損失を早期に処理する、そういう趣旨で設立されたものでございます。  平成五年度の決算において、都市銀行は約二兆九千億円の不良債権の処分損を計上しておりますけれども、そのうちこの買取機構に売却することによって約一兆五千億円の売却損を計上し、収益等の償却原資をこれに充てて不良債権の処理を行っておるところでございます。  御指摘のように、買取機構に売却されました不良債権の最終的な処理が完了するのは担保不動産が処分された段階である、これは先生指摘のとおりでございます。ただ、金融機関においては、買取機構への売却の段階で損失処理が行われているということから、不良債権の買取機構への売却という、こういう手法は、それなりに償却の相当部分が終了しておるというか、完全な終了ではございませんが、償却への、問題の解決へのかなり大きな歩幅の歩みである、このように受けとめて  おるわけでございます。
  46. 永田良雄

    ○永田良雄君 これは昨年の十月も大蔵省にお伺いしたんですが、今の御答弁では金融機関から不良債権を安く、いわゆる大体五割とか六割減の価格で買取機構へ売却するということになるわけでありますが、買取機構の目的そのものの中に、買い取った債権を確保するために担保のついている不動産を処分して回収するという目的はあるのかないのかということでございます。  というのは、去年の十月時点でお伺いしたときも、たしか不動産の処分をして回収した金額はせいぜい九十億か百億ぐらいしがなかったと思うわけでありますが、今度共同買取機構へ一兆五千億で売ったけれども現実に回収した金額は幾らかと  いう数字を教えていただきたいわけであります。
  47. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 先ほど都銀の数字で申し上げましたが、共国債権買取機構全体、日本全体と言っていいかと思いますが、そういう計数で申し上げますと、先生指摘のように、この機構が発足いたしました当初はまだまだ十分な実績を上げておらなかったわけでございますが、発足しました平成五年三月から現在までの累計で申し上げますと、債権の買い取り実績といたしまして債権の額面で約五兆一千百億、それは今御指摘のように買い取り価格というベースで申し上げますと必ずしも満額ではございませんので、買い取り価格という意味で申し上げますと、二兆四千五百億でございますから半分以下ということになるわけでございます。    〔委員長退席、理事今井澄君着席〕  しからば、今御指摘のように、そういうことで買い取ったものを最終的には売却して資金を回収しなければいけないわけでありますが、それはどれくらい回収できておるのか。この点につきましては、これも確かに発足当初、不動産市況等のいろいろな事情もございまして遅々としてなかなか進まない点があったのでございますが、その後少しずつ努力の成果もあらわれまして、現在までの累計では七百六億円でございまして、まだまだ少のうございますが少しずつ実績を上げてきておる。私ども、一層の努力をしていただきたいと期待しておるところでございます。
  48. 永田良雄

    ○永田良雄君 五兆一千億の債権を二兆四千億円で買取機構は買い取ったと。そして二兆四千億で買い取った債権のうち、担保物件を処理して現金化したのは約七百六億円、こういう実態でございます。  これはどうしてこんなにはかばかしくいかないのか、その理由等について大蔵省考えておられることを教えていただきたいし、かつ、それを本当は、これをうまく処理しなければ不良債権の処理ということにはならないわけでありますから、その処理のためにどういう手だてあるいは方法が考えられるか、努力が必要かということについてお答えをいただきたい。
  49. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 担保不動産の処分は、何といいましても不動産市況というものの影響を非常に強く受けるものでございます。残念ながら現在の不動産市況というのは必ずしも活発とは言いがたい状況にございます。また、処分をいたします場合には債務者側の同意を得た上で行っているものでございますから、いろいろな事情を勘案いたしますと、ある程度の時間を要するというのが現状でございます。  しかしながら、前回の御質問での先生の御指摘、御示唆等も踏まえながら、買取機構におきましてはいろいろな努力を発足後行っておりまして、例えば債務者の同意が得られた担保不動産に係る情報を詳細に開示する、こういう努力、それから住都公団だとかあるいは地方公共団体等に情報提供を行ってその処理の促進に努めるとか、こういういろいろな担保不動産処分を促進するための措置を発足後にも各方面の御示唆をいただきながら鋭意講じてきているところでございます。  今後ともそういう努力を続けていただきたいと思いますし、そういうことを重ねていくならば債権の回収は徐々に進展していくものと信じているところでございます。
  50. 永田良雄

    ○永田良雄君 よくわかります。結局は、不動産がまだ低迷している、しかもほとんど不動産についての需要というものは出てこない、こういう事態のときに、とてもじゃないが売ろう、処分しようと思っても処分し切れるものでない。それが基本でありましょう。いろいろ地方自治体あるいは住宅公団に紹介する、情報を公開するとおっしゃるけれども基本はそこに落ちつくと思うわけであります。  ただ、もう一つちょっとお伺いしたいんですが、金融機関の間で自己競落会社というものをつくってその不動産の処理をやろうという動きがあり、この八月に一つの会社ができたというふうに聞いておるわけであります。私の聞いておる範囲では、不動産担保づきの不良債権を実行するために裁判所へ申し出て競売をやってくれ、こういう言い方をし、そして競売をやってもらって落札者がないときにそのいわゆる金融機関が設立した子会社がそれを買い取る、こういう目的で今後つくっていかれるという話ですが、これの本当の目的は一体どういうことなのか、どういうメリットがあるのかということを教えていただきたいわけであります。
  51. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 先ほどからも先生から御指摘がございますように、金融機関の不良債権を処理するに当たりまして、最終的には金融機関が抱える担保不動産の処理の促進を図っていくということが必要であるわけでございます。  ところが、現在の不動産市況のもとでは、なかなか買い手があらわれず処分が進みにくいというのが実情でございます。また、不良債権の担保不動産がそういう状況のもとでそのままの形で放置されたという状況になりますと、例えば後順位の抵当権等が設定されてますます権利関係が複雑になってしまうとか、あるいは未完成建物、建物を建てている途中でそういう状況が起こったというような場合に、未完成建物が老朽化いたしまして、せっかくとりました担保不動産としての価値が劣ってしまう、劣化してしまうというようなことがございまして、これは将来にわたって不動産の流動化が促進されないおそれも生ずる、こういうことが懸念されておったわけでございます。  そこで、こういう状況を打開いたしますために、金融機関の一〇〇%子会社といたしまして、先ほど御指摘がありました自己競落会社、自分自身で競売で落札するということができる会社を設立することを可能とするようにいたしまして、この会社におきまして親銀行の不良債権に係る担保不動産を競落いたしまして、いわば銀行が完全な所有権を獲得して一定期間保有管理した後に売却する、そういうことによって未完成の建物の老朽化等による担保不動産の劣化の防止を図る、また担保不動産の流動化を促進する、こういうことをねらいにしたものでございます。  現在のこの制度の活用状況でございますが、これも先ほど御指摘がございましたように、現在のところ都市銀行で既に設立届け出書を私どもで受理した事例が一件ございます。そのほか、他の銀行でも同趣旨の組織の設立を鋭意検討しているというものが幾つかございまして、この制度が活用されることを期待しておるわけでございます。
  52. 永田良雄

    ○永田良雄君 結局、競落会社も担保不動産、債権と同時に担保物件を取得する、競落会社が金融機関の持っておった債権を取得し、かつその担保物件を競落する、こういうことになるわけですね。したがって、不動産は持ったままでありますから、それもその不動産が処分されない以上は完全にいわゆる不良債権の処理、消滅にはならない、こういうふうに理解してよろしいんでしょうね。  それからもう一点お伺いしたいのは、いわゆる共同機構に譲渡された債権についても対象になるのかどうかというのを聞きたいわけであります。
  53. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) 御指摘のように、自己競落会社が競落をいたしましても、それですべて問題が解決するわけではございません。競落いたしました後、持つことになりましたものを、最終的にはその土地、建物等を利用する人に売却しなければシステムは完了しないということになるわけでございます。しかしながら、そういう時間の経過の間に価値が低落してしまわない、劣化してしまわないというためには価値を保全するための手段が必要だということで、こういうことが考えられておるわけでございまして、なおその先の問題についても努力を重ねなければいけないことは御指摘のとおりでございます。  なお、共国債権買取機構に売却いたしました債権についても自己競落というようなことを認めるべきではないかという御指摘でございますが、この機構に今まで売却されました債権については、現状では自己競落をする必要のある物件は余り多くないのではないか、そういう必要のあるような性格の物件は余り売却された債権の中にはないのではないかというふうに言われてもおります。しかしながら、その物件の中には買取機構への売却後債務者との関係が悪化する等、事情の変更が生じたことにより競売にかけることが必要になるというようなものもあらわれてくると考えられます。  そこで、共国債権買取機構におきましては、今後買取機構が取得した債権に係る担保不動産に自己競落の必要が生じた場合に備えるため、その際どのような方策をとることとするのがいいのかということを現在検討しているところでございます。御意見も含めまして、そういうことを十分検討してまいりたいと思います。
  54. 永田良雄

    ○永田良雄君 それからもう一点、大蔵省で検討されておる話で、いわゆる不良債権を広く小口化して証券化して大勢の人に持ってもらう、それによって処理しようという方策が検討されておるというのでありますが、その方法はどういうものか、今検討の段階はどうで、いつごろから実現するのかという点についてお伺いしたいと思います。
  55. 西村吉正

    説明員(西村吉正君) この問題に限らず金融の世界では一般的に証券化というような流れがあるわけでございます。こういう財産権というものを証券の形にいたしましてできるだけ世の中で流動化するような努力というものの一環として、この証券化ということも私どもかねてから勉強を続けておりまして、また、その幾つかのものは具体化されてきておるわけでございます。  しかしながら、これはなかなか難しい問題がございまして、結局債権者と債務者の間というのはこれまた人間人間関係でございますので、そういうお互いの信頼関係というものを断ち切って、紙の形になって転々流通していくというようなことについてはやはり慎重に扱ってほしいというような声もございまして、この証券化というのはなかなか難しい問題だなというふうに思いながらも、しかし将来の方向としては証券化というものに一層取り組んでいくというのが世界の流れであるというふうに認識しておるところでございます。    〔理事今井澄君退席、委員長着席〕
  56. 永田良雄

    ○永田良雄君 いろいろるる言ってきましたのは、結局はその不良債権の問題も、いわゆる担保となっている不動産が実際上動かなければ最終目的を達しないんだということであります。  それじゃ、なぜその不動産がうまく処理できないかということになると、不動産市況が低迷している、ほとんど動かない、土地の取引が非常に停滞しておるというところが原因だと思うわけであります。  実は、私は十月のときにも申し上げたわけでありますが、今土地を譲渡しますと極めて高い譲渡所得税がかかるわけであります。地方税と国税合わせて三九%であります。もうけの三九%は税金を納めることになるわけであります。現実に譲渡所得の税金の収入も恐らく激減しているだろうと思うわけであります。恐らく三分の一か四分の一になっておると思います。それが国庫の収入の大きな減になってきておると思うわけであります。  そこで、私は提言をしたいわけでありますが、譲渡所得税を本当は制度として軽減すると言いたいのでありますが、この三年間だけ前の二六%に戻す、こういう政策をとれば恐らくこの三年間にかなりの土地が動くことになるだろうと思うわけであります。三年たってしまえばまた同じ税率になるわけでありますから、そういう方策をとるべきではないかと思うわけであります。  一つ心配になるのは、またぞろ土地暴騰ということになるのではないかという心配をする向きもあります。しかし、これは三年間に限るわけでありますから、その土地を買う人は恐らく自分で使う目的以外にまた土地でもうけてやろうという人が買うわけはないわけであります。そういう意味では土地の再暴騰を招来することもない。そして、この三年間に土地の流動化がかなり出てくるとすれば、今の不景気はいわゆる資産デフレ、土地の問題が原因だと言われておりますから不況克服の一助にもなる、かつ国庫の収入もふえる、そういう極めて多くのメリットがあると思うわけであります。  大蔵大臣、そういう方策をとられる考えはないか、お考えをお聞きしたいわけであります。
  57. 武村正義

    国務大臣武村正義君) 一つの大変わかりやすい御提案のように拝聴をさせていただきましたが、目下大蔵省としては、総合判断をさせていただくと大変難しいという認識でおります。  御承知のように、土地税制につきましては永田委員もかかわっていただいて大変御苦労をいただいてまいりまして、一つは土地基本法の体系ができ上がってきておりますのと、税制につきましては所得、資産、消費のバランスの観点からの土地税制のあり方ということを考えてきたところでございます。  この譲渡益課税を軽減することによって、今は軽減というよりも三年間凍結の御提案でございますが、いずれにしましても、こういう措置によって供給をふやしましても、地価低下によって投資目的物件を買い控えている需要層は拡大するんだろうかと。要するに、土地そのものがこの先どこへ落ちつくのか、まだ下がるかもしれないという状況がある限りは、譲渡益税を下げることで果たしてどれだけ需要が拡大するんだろうかという問題点がございます。  御承知のように、一般国民にとりましては、住宅建設は順調に今拡大をしておりますし、マンション取引そのものはブームと言っていいような状況でもあるわけでございます。今日のこういう状況のもとではございますが、長期譲渡にかかわる全体の数字は、土地譲渡益そのものの数字は十六兆五千億ぐらいになっておりまして、そのうちさまざまな税制上の恩典といいますか軽減税率等のいわば対象になっているものが大変大きゅうございまして、アバウトに言いますと、十六・五兆円のざっと八割ぐらいはそういう恩典に浴していると。ですから、全部が全部丸々おっしゃるような率で税を取られているわけではない、むしろ八割方はゼロでないにしても軽減税率の何らかの対象になっている、公共用地であったりいろいろございまして。  そういう実態も含めて考えますと、先ほども申し上げたような答弁にならざるを得ないわけでございますが、でも大変真剣な御提案として拝聴はさせていただきました。
  58. 永田良雄

    ○永田良雄君 公共用地のあれもあるしと、こういう話でありますが、そういうのが問題じゃなくて、一般の何にも恩典のない売買をどのようにして動かすかということが私は土地の流動化の一番基本だと思うわけでありますので、真剣にひとつ考えていただきたいわけであります。要は、臨時の措置でありますから、恒久的な措置ではないということをよくよく考えていただきたいわけであります。もう恒久的に土地の譲渡所得税三九を二六に下げてしまうという話でなくて、この三年間だけについてそういう臨時の措置をとるということでありますので、よく検討をしていただきたいということをお願い申しておきます。  それでは次の問題へ移りたいと思いますが、文部省の方へ移りたいと思います。  今、教育の中でいろいろ問題は指摘されておりますが、特に小中学校の生徒にとっては健康な体をつくることが一番大事だと私は思うわけであります。知育偏重といいますか、今の世の中、塾へ行っても何しても勉強ばかりするという風潮になっておりますが、そういうことをなくして、小学校、中学校のときはできるだけ健康な体をつくるということが一番基本であります。そのために文部省としても大いに努力してもらいたいと思うわけでありますが、公共のスポーツ施設は一体全国でどうなっているかという状況をひとつお知らせいただきたいと思います。
  59. 小林敬治

    説明員小林敬治君) お答えいたします。  文部省平成二年十月に行った体育・スポーツ施設現況調査によりますと、我が国の公共スポーツ施設の総数は約六万二千八百カ所ということになっておりまして、これは昭和四十四年度の約六倍、それから昭和五十五年度の約二倍にふえているということになりますので、かなり整備が進んだということができるわけでございますけれども、住民が手軽にスポーツを楽しむという観点から見ると、まだまだ甚だ不十分であろうかというふうに考えている次第でございます。
  60. 永田良雄

    ○永田良雄君 六万二千八百というお話でありますが、体育館、陸上競技場、大きいものについての数がどうなっているかということを、プール、野球場、球技場、運動広場等どうなっているか、ちょっと教えていただきたいわけであります。
  61. 小林敬治

    説明員小林敬治君) 大きなものを幾つか申し上げますと、体育館が箇所数で七千百、柔道場六百二十七、剣道場四百八十七、それからトレーニング場千四百八十七、野球・ソフトボール場五千八十五、それから多目的運動広場七千四百六十七、それから庭球場、これは屋外でございますが、五千三百二十七というふうな状況でございます。
  62. 永田良雄

    ○永田良雄君 それは公共の運動施設だけじゃなくて、民間とかあるいはその他の持っているものも含んでおりますね。
  63. 小林敬治

    説明員小林敬治君) この調査は公共だけを調査の対象にいたしておるものでございます。したがいまして、このほかに民間のものがございます。
  64. 永田良雄

    ○永田良雄君 それでは、建設省にちょっと質問するんですが、公共スポーツ施設は多く都市公園の中に入っておるというふうに聞いておるわけですが、都市公園におけるスポーツ施設の整備状況はどうか、それから今後どのように整備していく考えかということをお答えいただきたい。
  65. 大貫誠二

    説明員(大貫誠二君) 建設省におきましては、都市公園の事業によりまして都市公園内のスポーツ施設の整備を積極的に推進しております。  今お答えがございました公共スポーツ施設のうち、例えば陸上競技場や運動広場の約七割、それからまたサッカー場を含む球技場の約六割、野球場それから屋外スポーツプール、そういったものの約五割は都市公園内にあるという現状になっております。また、オリンピックあるいはユニバーシアード、アジア大会、それからまた国民体育大会等の会場になります拠点的なスポーツ施設の大部分は都市公園事業により整備を推進しているところでございます。  以上のような状況でございます。
  66. 永田良雄

    ○永田良雄君 文部省、そういうことでよろしゅうございますか。
  67. 小林敬治

    説明員小林敬治君) はい。
  68. 永田良雄

    ○永田良雄君 先ほど数が非常に、何万とかという話と今の数の話とちょっと、余りぴんとこなかったものですから尋ねたんです。  要は、スポーツ施設を文部省も一生懸命つくっておられるけれども、その中で建設省がつくっておるのが非常に大きなウエートを占めるということを言いたかったわけであります。文部省さんもいろいろ予算ほかでお使いになりたいのはいっぱいあるわけでありましょうから、私は文部省さんと建設省とよく相談をしてそのスポーツ施設の整備等をやっていかなきゃいかぬのじゃないかというふうに考えておるものであります。  さらに申し上げるならば、どちらかというならば文部省さんの方は、スポーツ振興のためのソフトを、選手の養成あるいは子供たちのための指導者の養成とかそういったものを一生懸命おやりになる方がよかろう。そして、もちろんそれだけじゃない、施設も十分つくっていただかなきゃいかぬわけでありますが、施設については建設省の公園の方で今やっていきたいと、こう言っておるわけですから、よくそこと相談して文部省も十分その意向が入ったものを使うというようなやり方をやっていただきたいということでこの質問をしたわけであります。  そこで、最後に申しわけありませんが、文部大臣にお伺いしますが、実は今各党でサッカーくじの議論がいろいろされております。大方の政党の方で賛成だということを聞いておりますが、一部やはり反対があってなかなか進まないというふうなことも聞いておるわけでありますが、私は賛成であります。余り何でもきれいごとで聖人君子みたいなことを言ったってだめなんで、やはり今スポーツ施設を整備し、あるいはスポーツを振興するためには、そういうことをやっていくのも大いに結構だと思うわけであります。それについて今中身を大変詰めておる段階だそうでありますが、それについて政府として文部大臣はどのようにお考えになっておるかということをお伺いします。
  69. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) まず、この問題は文部省が直接ということではなくて、国会議員皆様方が英知を集められて実現の方向に向けて多くの党の方が御努力をされている最中でございます。  私どもとしては、このスポーツ振興くじにつきましては、スポーツ議員連盟において非常に真剣に検討が行われていると、またその目的とするところは新しいスポーツ振興政策の実現のために財源を確保すると、こういうところに力点が置かれているものと私ども考えております。  地域におきますスポーツの振興等を目指したスポーツ振興政策とその財源確保策としてのスポーツ振興くじの大綱は、既にスポーツ議員連盟においておおむね合意に達しておられると、そのように伺っております。またその大綱におきましては、当せん確率等の点でもいたずらに射幸心をあおらないとか、あるいは十八歳以下の青少年にはこれの販売を行わないとか、さらに制度全体が透明性を維持していくとかという種々の配慮がなされていると伺っておりますので、さらにスポーツ議員連盟におきまして検討が進められ、実現が図られるということにつきましては文部省は期待をしております。
  70. 永田良雄

    ○永田良雄君 文部大臣は期待しておられると、こういう話であります。一日も早くこの構想が実現することを私は希望するものであります。  なお、成立した暁には、スポーツ振興のための財源というのはもちろん施設の問題もありましょうがいわゆるソフトの方にできるだけ重点を置いてやっていただきたい、そして施設の方は建設省とよく相談してやっていただきたいということを希望して、私の質問を終わります。
  71. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ─────・─────    午後一時十五分開会
  72. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成三年度決算外二件を議題とし、内閣総理府本府、大蔵省文部省国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  73. 堀利和

    ○堀利和君 私は文部省に、身体障害者のための筑波技術短期大学につきましてお伺いしたいと思います。  この短期大学は、身体障害者、具体的には聴覚障害者と視覚障害者でありますけれども、障害者のために高等教育機関を設立したものであります。聴覚障害者に対してもう既に四年、視覚障害者に対して三年を過ぎて学生を受け入れてきているわけですけれども、この辺の現状について文部省がどのようにお考えかということについて基本的に伺っておきたいと思います。  私は、議員になる前に、この筑波技術短期大学に対しましていろいろ問題があるのではないだろうか、まだまだ十分検討しなければならないし、多くの問題を抱えながらのスタートということについていろいろ意見を差し挟んできたわけですけれども、この三年、四年を経て、一体現状がどうなっているかということを改めてお伺いしたいと思っております。  そこで、聴覚障害者の方の学科については定数が五十名ということで、毎年定数ぎりぎりいっぱいということの中で順調にいっているように見受けられますけれども、三学科あるうち視覚障害者の関係では定数四十名なんですけれども、どうも定数に達していないという実情があります。志願者も若干減りつつあるし、入学者数も減ってきているという傾向にございます。この辺がどういうような事情によるかということもあります。例えば、四十名のところが三十七名、三十六名、三十五名、そしてことしが三十一名ということで入学者が減っております。  特に問題としたいところは、鐵灸学科につきましても二十名定員のところが十七名、十九名、十三名、そしてことしが十四名ということで、甚だ定数割れというふうな傾向にありますけれども、これについてどのように現状を認識しているのかお伺いしたいと思います。
  74. 吉田茂

    説明員吉田茂君) 御指摘のように、筑波技術短期大学、理学療法学科については定員を満たしておりますが、今年度、鐵灸学科、情報処理学科については欠員が生じておるという御指摘でございます。  これにつきましては、私ども鋭意分析をしているところでございますが、その主なものとして考えられるのは、一つはやはり地元の盲学校の高等部専攻科へ進学を希望する傾向がふえてきていること、あるいは入学選抜が厳しいというようなことが言われ、それが一つ敬遠される原因となっているのではないか。それから、大きな流れの中では、視覚障害児が全体として減少しているというようなさまざまな状況の中でこういうような状況に至ったのではないかとしておるわけでございますが、全体としての志願者は若干の増加傾向にある、こういう状況であります。
  75. 堀利和

    ○堀利和君 そこで、やはり視覚障害者にとっては、はり、きゅう、マッサージというのが今なお厳しい環境の中でもほとんど唯一の職業ということでございますので、特にこの鍼灸学科についてお伺いしたいと思います。  この鐵灸学科は、一期生がこの三月に卒業したわけですけれども、入学者が十七名、卒業生が十三名ということになっているわけです。そして、学内研究生というのを私初めて知りましたけれども、いわば三年課程を終えた方が学内研究生ということで七名残っていらっしゃるということで、この学内研究生というのはどういうものなのか。この辺の、入学時の十七名から卒業者が十三名というのはどういう事情なのか、まずお伺いしたいと思います。
  76. 吉田茂

    説明員吉田茂君) 御指摘のように、入学者十七名のうち十三名が卒業しております。残り四名につきましては、三名は第三年次、一名は第二年次に在籍のままということでございますが、この卒業者十三名のうちの六名が筑波技術短期大学の研究生として大学に残りましてさらに研究を積み重ねたいと、もう一名が附属の診療所で実技中心教育を受ける、これは研修生として残りまして、それぞれ本人の希望によって勉学を継続している、こういう状況であります。
  77. 堀利和

    ○堀利和君 試験が厳しいということもあるのか、あるいは学年を上がるにも厳しいというふうにいろいろあるのかと思いますけれども、見る限りでは非常にいろいろ問題があるんではないかというふうに思われます。  そして、特にここ二年、はり、きゅう、あんまについては国家試験ということになったわけで、それまでは都道府県知事による試験が実施されたわけなんですけれども国家試験になって二回行われました。筑波技術短大は短期大学ですからもう高等教育ですね。盲学校の場合には専攻科というのが中等教育ということになるわけですけれども、そういうレベルからいってやはり問題を感じないわけにはいかないのは、この国家試験、あんま師の資格を取る試験では一名の方が不合格になっておりますし、はり、きゅうでは二名の方が不合格になっている。同じ筑波関係で、附属盲学校がございます。ここの卒業生は一回目も二回目も全員合格しているというような事情があるわけですね。  こういうことを考えますと、どうも同じ筑波の中に、片や短期大学、片や盲学校の理療科という事情の中で不合格が出ているということをどんなふうに御認識なのか、伺いたいと思います。
  78. 吉田茂

    説明員吉田茂君) このあたりも御指摘のとおり、鐵灸学科の卒業生でそれぞれ合わせまして五名、あんま一人、はり二名、きゅう二名、これの不合格者を出しているという状況があるわけでございます。  これにつきましては、高等教育機関としての設置でございまして、資格取得を目的とした専門技術の習得だけではなく、幅広い教養をあわせ持つ人材の育成ということを掲げておりまして、必ずしも資格取得を目的としているわけではございません。しかし、やはり御指摘のとおり、そういった国家資格取得を目指す学生のうち五名の不合格者が出たことを踏まえて、我々としてはいろいろな対策を講じておりますし、さらに考えていかなければならないというふうに考えております。
  79. 堀利和

    ○堀利和君 さらに、鐵灸学科と情報処理学科の進路を見ますと、鐵灸学科の方では就職された方が五名、そのうちせっかく鐵灸を勉学されながら事務職に一名が就職し、また出身盲学校の紹介でどうやら就職をするという方が二名、その他。こういうふうな形でわずか五名の方が就職というような事態であるわけですね。また、情報処理学科でも十名の方が卒業をしましたけれども、四名の方が就職と。ことしは特に一般的にも大変就職が厳しいわけですから、そのあおりを食ったというようなこともあると思いますけれども、しかし十名のうち就職した方が四名、その他の方は鍼灸関係の方に進むと。  同じ大学の鐵灸学科に行ったり、あるいは盲学校のはり、きゅうの理療科に行ったり、厚生省所管の厚生施設の鐵灸、マッサージの関係へ行くというような事情もあるわけですけれども、この就職進路を見てもなかなか芳しいとは言えない、この辺の事情も加えてお伺いしたいと思うんです。
  80. 吉田茂

    説明員吉田茂君) 筑波技術短期大学では、視覚障害関係学科について見ますと平成五年度に第一回の卒業生が出たということでございまして、比較的新しい学校であり、卒業生が出たのもごく最近であるというような状況一つございまして、そのあたりに一つの影響があるのではないかというふうに思っておるわけでございます。昨今の経済事情の影響ということもこれは非常に大きく影響をしてまいっておると思います。  ただ、先生いろいろの御分析をいただいたわけで、我々としても大変参考にしてまいりたいと思うわけでございますが、全体としては就職を希望していた学生は全員が就職しているという状況であります。ただ、御指摘のように、それぞれの勉強したこと、実力を生かす方向への就職あるいは進学、こういうことを考えた場合には我々としても大学側とよく連絡をとりまして、このあたりの指導なり対応をさらに積極的にやっていかなければならないというふうに感じておるところでございます。
  81. 堀利和

    ○堀利和君 さらに、創設のときに文部省がお考えになっていた大学設置法の法案審議の中でも答弁がございましたけれども、この短期大学については重度の障害を持つ方を対象としてスタートするんだということであったわけですけれども、やはり私なりに得たこのデータを見ますと、視覚障害者にしても視力が結構いいんですね。  たしか当時答弁の中では、視力が〇・一ぐらいまでを対象としたいというようなことがあったと思いますけれども、〇・二とか〇・三あるいはそれ以上の方も実際には入学されているということで、大学の制度としてはもちろんこれは特殊教育諸学校ではありませんし制度も違いますから、厳密に言えば目の見える方、健常者も大学としては対象にすることはできないわけじゃないですけれども、先ほども申し上げましたように、身体障害者、視覚障害者、聴覚障害者のための短期大学としてスタートしたということを考えますと、どうも障害の軽い方がふえてきたんではないかなということを私なりに手元にあるデータを見ながら感じるわけなんですね。  そこで、大臣にお伺いしたいんですけれども、今の私とのやりとりもお聞きしながら、現状ではやはりかなり問題があるんではないかというふうに御認識されたと思います。そこで、大臣に重要なことを、また基本的なお考えをお聞きしたいんです。  実は、この質問取りの際にいろいろ申し上げた中で、筑波技術短期大学の視覚障害者に責任ある方がどうも答弁の下書きをされたようなんですね。それを持って今答弁を聞いていたわけですけれども、今の答弁の下書きをされた方が「医道の日本」という月刊誌で、はり、きゅう、マッサージなどを専門にしている雑誌なんですけれども、最近いろいろな編集者のインタビューに答えて、現状が芳しくないという中から、将来は目の見える健常者も入学させたい、したがって筑波技術短期大学というのは鐵灸学科について特に国民医療のために責任を果たしていくことも必要ではないかというようなことを述べているんですね。  私は、これは非常に問題であると思うんです。現状の問題をそういう形で解決していこうということは私にとっては非常に耐えがたいと思うんですけれども大臣としてのお考えをお聞きしたいわけです。そういった現状を見たときに、この現状を打開するために、目の見える人、我々は晴眼者と言っておりますけれども、こういう方を将来入学させるようなことがあるのかどうか、やはり基本的に身体障害者のための短期大学として障害者を対象にしていくのかどうか、その辺の御決意を、お考えをお伺いしたいと思います。
  82. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) ただいまお話しの大学の関係者が個人的にそのような発言をされたということは伺っておりますが、文部省といたしましては、この短期大学の設立の際に考えました学校設立の目的というものを大事にしながら大学の運営に努めてまいりたいと考えております。
  83. 堀利和

    ○堀利和君 そこで、この短大の設置について法案の審議がなされて、そのときに衆参の両院で附帯決議がつけられたわけです。  参議院の附帯決議関係ある箇所について読ませていただきますと、「盲・聾学校高等部専攻科について、同短期大学の実績をみっつ、短期大学、専修学校等への転換も含めその充実策を検討すること。」という附帯決議が、同じような内容で衆議院にもっけられたわけですけれども、この短期大学の実績、まだ三年、四年という短い時間ではありますけれども、この実績を踏まえて、今の附帯決議にあるように、全国の盲学校なりの関係についてどのように御認識なのか、大臣に伺いたいと思うんです。
  84. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 参議院の文教委員会で行われました附帯決議に関連しての御質問だと存じますが、身体障害者のための高等教育機関の整備については、何人といえども能力、適性に応じて大学進学の道が開かれていなければならないとの基本的な立場から、これまでいろいろ考え、配慮をしてまいったわけでございます。  一般の大学における身体障害者の受け入れの促進については、従来から各大学に対し、受験機会を確保するよう配慮を求めるとともに、国立大学につきましては、入学試験経費、学生教育経費及び身体障害学生用設備費等の予算措置を講じるとともに、施設面でも予算執行上配慮をさせていただいております。公私立大学につきましても、所要の助成を行うなど、身体障害者の大学への受け入れについて配慮をさせていただいております。  筑波技術短期大学につきましては、平成五年度に学年進行が完了したわけでございまして、今後はその充実発展に向けて一層の配慮をしていく所存でございます。盲学校等の高等部専攻科につきましては、平成元年の学習指導要領の改正によりまして保健理療科が設けられる等、その充実改善を図っております。
  85. 堀利和

    ○堀利和君 そこで大臣、質問通告では申し上げていなかったんですけれども、次の質問の大きなものに移るのにちょっと時間がありませんので、もう少しこの短期大学について大臣のお考えを伺いたいわけです。  それは、先ほどデータも含めて現状を示したように、非常に困難な状況に私は置かれているというふうに認識しております。同時に、全国の盲学校の理療科、専攻科の問題と、筑波技術短期大学の鐵灸学科と筑波大附属盲学校の専攻科と、言うなればかなり競合する関係にもあるわけです。こうした現状を踏まえたときに、現場の方々の努力はもちろん評価しますけれども、単に現場にだけこの問題を任せて果たしていかがなものか。やはり将来に対して不安のないようにするためにも、現場の短大の関係者の方はもちろんですけれども、筑波大附属盲学校の関係者あるいはその他全国盲学校の関係者も含めて、この短大が今後どうあるべきかということを私は緊急に検討すべきではないかというふうに思うわけです。  もちろん、まだたかだか三年、四年のことだからそこまではというふうに思われるかもしれませんけれども、何となく将来目の見える者も入れていこうと、仮にそういうような考え方が浮上してくるというような心配も考えたときに気がついたら筑波技術短期大学は栄えているけれども障害者が隅に追いやられてしまっているというのではこれは何にもならないわけですから、まだできたばかりだといってそこのメンツにとらわれるのではなくて、ぜひここで今申し上げた関係者が集まって、この短期大学の現状を率直に分析し、その解決に向けた、将来に向けてどうするか、そして筑波大附属盲学校、全国の盲学校の理療科、専攻科、これをどうするのかというような総合的な検討をここでやはりすべきではないんだろうかと思うわけなんです。  急に私ここで申し上げるわけですから、大臣としてもいろいろお考えもあろうかと思いますけれども、その辺、異例とは思いますけれども、やはり緊急な検討というものに入るべきだと思うわけですが、その辺についてはどうお考えでしょうか。
  86. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) この短期大学は、身体に障害を持っておられる方々が一般的な教養水準を高めるとともに、社会において職業につくという場合を考えていろんな勉強をしていただく、そういう二重の目的を持っているわけでございます。  そういう中で、先生の御指摘になられた諸問題につきましては、文部省でも当該の大学の関係者と十分話し合いをいたしまして、現場として苦労されていることがございましたら大学当局にもその改善について努力をしていただかなければなりませんし、また私ども文部省としても対応できることは迅速に対応していく必要があると、そのように考えております。
  87. 堀利和

    ○堀利和君 広く関係者の意見を聞くようなぜひ深い検討をお願いしたいと思います。  以上でございます。
  88. 会田長栄

    ○会田長栄君 日本社会党の会田でございます。  まず、文部大臣就任、まことにおめでとうございます。御健闘をお祈りいたします。  私は、文部省に限って四点質問していきたいと思います。貴重な時間でありますから、端的に率直にお答えをいただきたいと思います。  まず第一番目は、私学振興助成の問題であります。  その一つは、私学振興助成法が制定されたときの趣旨、目的、そして附帯決議が上げられたときの最大のポイントは何であったかということをまずお聞かせください。
  89. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生に申し上げるまでもなく、我が国の私立学校は大学生の八割、高校生の約三割、幼稚園児の八割を収容しておりまして、大変大きな比重を占めております。それぞれの建学の精神に基づく特色のある教育研究を展開し、我が国の学校教育の普及進展に大変大きな役割を果たしてまいりました。  このような私立学校の果たす役割の重要性にかんがみまして、昭和五十年七月に、私立学校の教育条件の維持向上、修学上の経済的負担の軽減、私学の経営の健全性を高めることを目的といたしまして、ただいま先生が言及されました私立学校振興助成法が制定されたわけでございます。  御指摘のこの助成法が成立いたしましたときに附帯決議がございまして、私立大学に対する国の補助をできるだけ速やかに二分の一とするよう努めることとされておりますが、私立学校等の経常的経費に占める国庫補助金の割合は、国の厳しい財政状況から、平成四年度におきましては一二・七%となっております。  私学助成については、今後とも私学の果たす役割の重要性、厳しい財政状況等を総合的に勘案し、私立学校振興助成法の趣旨に沿いまして私どもも努力をさせていただきたいと考えております。
  90. 会田長栄

    ○会田長栄君 今、答弁ありましたとおり、日本教育というのは大学等で八〇%、高校で三〇%依拠しているということだけはもう見逃すことのできない事実なんです。したがって、日本教育というのは私学によるところの貢献がまことに大きいからこの法の制定があり、その後、経常経費の二分の一に努力をしていくということで今日まで来ていることは間違いありません。  しかし、現実にそれでは二分の一に近づきつつあるかということになりますと、なかなか難しい。とりわけ、私立高等学校等に対する助成というのが平成六年度はちょっとやり方が変わりました。これは御承知だと思います。やむを得ない措置として、実は国庫補助金というものを対前年度に比べて二百十二億円の減額、しかしこれを地方交付税措置として実は賄ってきたというのが平成六年度であります。  もちろん、地方交付税措置あるいは国庫補助をプラスすれば、それは皆さんの御努力というのも承知できる。しかし、現実平成七年度に向かって文部省はこの私学助成というものに対してどのような一体考え方、決意を持っておられるのか、その点率直に大臣にお聞きしたい、こう思います。
  91. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 平成六年度の予算におきましては、先生御質問のとおり、二百十二億が減額され交付税に振りかえられたわけでございます。ただ、東京都のような富裕団体におきましては交付税措置がなされなかったという事実もございます。  そこで、文部省といたしましては、概算要求の段階で私立学校等の助成に関しましては七十億円の上積みをいたしまして要求をし、これは一一%増という文部省全体の中でも大きなパーセンテージの増加率でございます。かてて加えまして、私立学校等の助成を受けておられる方々の中には将来の助成に関しまして不安が存在するということも事実でございまして、この助成が一般財源化していくというような御不安に対しましては、文部省としてはそのようにならないよう最大限の努力をしていくということを申し上げたいと存じます。
  92. 会田長栄

    ○会田長栄君 端的にお聞きいたしますが、平成六年度のような地方交付税措置、国庫補助、この二本立て、これを平成七年度も引き継いでいきたいという考え方文部省は持っているのか、それとも平成五年度に戻したいと思っているのか、端的に聞かせてください。
  93. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 平成七年度の予算は、避けがたき現実としては平成六年度の予算の延長線上にありまして、それをベースにして作成せざるを得ないという現実がございますので、国のお金、また地方交付税措置、こういうことで参りたいと思っております。
  94. 会田長栄

    ○会田長栄君 ぜひお願いしておきますが、地方交付税、この措置というのは従来からやられてきておりますが、平成五年度、六年度ということでありますから、その点についての私学助成、とりわけ私立高等学校等については各都道府県とも努力されて対前年度比上積みされている、これはプラスになっていると。しかし、交付税の性格からいって全国各都道府県がいつまでもその趣旨を体してくれるかということになると、気を緩めるとこれは他に使用されるということも従来から言われてきたところでありますから一その点については念を押してぜひ確保してほしいという意見を申し上げておきたいと思います。その点、どうぞよろしくお願いします。  二番目の問題は、公立高等学校入学選抜制度、調査書のあり方、男女共学等について端的にお聞きいたします。  もちろん公立高等学校の入学者選抜については文部省は、初中局長通達で昭和四十一年七月、昭和五十九年七月、そして昨年、平成五年二月二十二日に文部次官通達をやって今日まで改善の努力をされている、これは承知しております。  ただ、私はお聞きしたいのは、昭和五十九年通達で第六項、「調査書の各教科の学習成績以外の記録については、これを積極的に利用することとするが、」の次なんです、「特別活動などについて安易に点数化して利用することのないよう十分配慮することが望ましい。」と。従来文部省が望ましいと言ったときには、必ずそのようにやってもらうという文部省の姿勢だったし、望ましくないというときにはそれはだめだということだったんですね。この点はっきりしているんです。これは私も賛成なんです。  それが平成五年二月二十二日文部次官通達でどうなったか。「調査書の在り方について」の第四項で、「調査書の学習成績の記録以外の記録を充実し、活用するよう十分配慮すること。その際、」、ここが大事なところなんですね、「点数化が困難なスポーツ活動、文化活動、社会活動、ボランティア活動などについても適切に評価されるようにしていくことが望ましい」、こうなっているんです。  そこで質問です。実際に特別教育活動、行動の記録について点数化をして調査書として採用している都道府県というのは幾つありますか。
  95. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) お答え申し上げます。  特別活動の記録を点数化している都道府県数は八県でございます。
  96. 会田長栄

    ○会田長栄君 八県ね。これは先ほど文部省の次官通達、局長通達を見ても適切な処理あるいは望ましいと結論づけていますが、この八県については特別教育活動その他行動の記録を含めて実は点数化しているんです。これは文部省が言うように望ましくない形態をとっているんですね。それはそうでしょう。  時間が貴重でありますからその中身は省略いたしますけれども、その点について文部省はこの八県に対して今後望ましい方向で指導する考えがありますか、このまま各都道府県にお任せしますか、結論だけ聞かせてください。
  97. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) 今、先生指摘ございましたが、行動の記録について点数化している県はございません。これはゼロでございます。特別活動の記録を点数化している県が八県、こういうことでございます。  今、先生指摘ございましたけれども、特別活動あるいはスポーツ活動、文化活動、社会活動、ボランティア活動などの記録が学習成績の記録以外の記録として充実され、また活用されることは大変結構なことでございますので、それをどういう形で活用するかということについてはそれぞれの入学者選抜の実施主体でございます各都道府県、学校において検討いただくわけでございますが、やはり客観性を確保するという意味からこれを点数化して活用するというようなことも一つの方法だと我々は考えておるわけでございます。  先ほど安易にというお話でございましたけれども、私どもも安易に点数化するというようなことを勧めているわけじゃございません。ただ、生徒の成績に実際そういうものを加味するというときにどういう形があるか。いろんなやり方があると思いますけれども、やはり相互に並べてより客観性を確保するというときに、それを点数であらわして活用していくということも一つの方法としてあると思いますので、八県におきましては、安易にわたってやるというようなことでありますればそれは問題でございますけれども、そういうような形でないようにやっている、このように私ども考えておる次第でございます。
  98. 会田長栄

    ○会田長栄君 方法の一つだと言っているんでしょう。しかし、みずから通達の中で方法の一つですと言って点数化することもあり得るというようなことを言っていうんなら別ですよ。特別教育活動を点数化して入学選抜制度の二分の一の重要参考資料にするというのは、これだけの中学校がある中にあっての客観基準というのはまことに難しいから点数化は問題だと、こう言いたいんですよ、私は。  それは、記録することはいいですよ。その記録を高校側が参酌することは結構なんですよ。この子供は特別教育活動五点、児童会会長をやったから五点、あとの子供は会員だから零点、こんなことではないというんですよ、児童会というのは。会長があって初めて会が成り立つんだけれども、会員がいなければ成り立たないんだから、これ。  そういう意味からいえば、文部省が通達で安易に点数化することについてはやっぱり考えなきゃいかぬということを言っているんだから。だから、どこの県だって採用しないんだから、難しいから、不公平が生ずるから。ましてや、行動の記録、これは人格の記録と言ってもいいんですよ。これだって平成五年度まであったんですよ、全国に。それが御意見が出たからなくしたんです、平成六年度は。  だから、その意味で、文部省が安易に点数化することは余り望ましくないと言っているんだから、望ましくないというときには、今まで文部省というのは、それはだめですという言葉に切りかえられてきたんだから、それは私も長年経験しているんだから、その線に沿って検討してほしいということをお願いしておきます。これは、これからも問題になるところでございますから。  それから、その次にお聞きしたいのは、公立高等学校の分校の事務職員の配置の問題について端的に聞きたい。  これは、前回も局長あるいは文部大臣からお答えいただいておりましたが、要するに事務職員の配置校については、百五十四分の八十五、既に配置されているというんですね、配置されていると。こういうことにかかわって、配置されていない学校というのはどういう学校なのか、端的に聞かせてください。
  99. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  いわゆる高校標準法におきます事務職員の配置基準は、全日制の課程、定時制の課程別に分校を含めた当該課程の学級規模に応じて算定されることとなっておりますことから、分校への事務職員の配置につきましては、各学校の設置者が分校の規模等を考慮して適切に行っているものと考えているところでございます。  文部省の調べによりますと、平成六年度におきましては、公立高校の分校につきましては百四十八校のうち八十二校に事務職員が配置されているところでございます。事務職員が配置されていない分校の実際の事務処理につきましては、給与や旅費の支給時など、その都度必要に応じて本校の事務職員が分校に出向いて処理するという形態が多いように聞いているところでございます。  したがいまして、全体として、先ほど申し上げましたような配置基準に応じて分校について配置されていない分校が存在することは、先生指摘のとおりでございます。
  100. 会田長栄

    ○会田長栄君 積極的にただし書き条項というのは克服しつつあるということがわかって、その努力については敬意を表します。  では、端的にお聞きします。  本校から二十八キロ、一学年二学級、生徒数二百四十、こういう分校にあって事務職員が配置されないということについて、どういう見解をお持ちになりますか。私が申し上げた数字は事実ですよ。この未配置校の中にこれぐらいの規模の大きい学校も入ることは、それは各都道府県教育委員会が考えることですからやむを得ないと文部省考えるのか、これはやっぱり置かせるようにしなきゃいかぬなと考えるのか、聞かせてください。
  101. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  私どもといたしましては、本校と実態が非常に近いものでありましてその分校自体で自主的な運営をする必要があるという場合には、その実態に応じた適切な配置をすべきものというように考えているところでございます。
  102. 会田長栄

    ○会田長栄君 百四十八校の分校がある。そのうち八十二校に配置されている。それを具体的に、本校から分校まで二十八キロもある、その上に学級数六、生徒数二百四十ぐらいの規模の学校でも、自主的運営されているからそれはそれで仕方ないんだと、そういう意味では私は聞いていないんですよ。これぐらいの規模の学校、距離の学校だったらこの百四十八分の八十二校の分に入るのがまあ妥当ではないかぐらいのことを聞きたかった。これは頼んでおきますから。残り三分でありますから、これは文部大臣にひとつ。  例年でありますと、義務教育費国庫負担法の問題について、事務職員と栄養職員をこの制度から外したらどうかというのが長い間続いたんですね。去年まで文部大臣初め文部省のかたい決意のもとにそういう動きをやめてきた、阻止してきたというのか。そういう意味では、平成七年度に向かって文部大臣文部省としてこういう動きはもうやめようという気持ちになっているのかどうか。この国庫負担制度についての堅持の決意などをお聞かせいただきたい。
  103. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 義務教育費国庫負担制度は義務教育の妥当な規模と内容とを保障するための重要な制度でございまして、その対象となっている事務職員、学校栄養職員は学校の基幹的職員であると認識しており、今後とも適切に対処してまいる所存でございます。
  104. 会田長栄

    ○会田長栄君 ありがとうございました。終わります。
  105. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 社会党・護憲民主連合の稲村でございます。  まず大臣、大変重要な時期に重責を担われ、大蔵大臣に就任されましたことを心からお喜び申し上げたいと存じます。そしてまた同時に、内外ともに経済の流動性といいましょうか不透明といいましょうか、厳しい条件がいろいろとある中で大蔵大臣という大事な職責を担われるその御苦労、心から敬意を表したいと存じます。  きょう私は平成三年度の決算について伺うということにいたしますので、大臣平成三年度はまだ担当しておられませんでしたので、今議論をした中で今後の課題としてどう受けとめられるかを最後に大臣から伺うというような形にさせていただきたいというふうに思いまして、とりあえずは大蔵省事務当局の方にいろいろと伺っていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。  最初に、本委員会で今審査されているのは平成三年度の決算でありますけれども、私がきょう特にお聞きをしたいと思っておりますのは税収見込みと実績とのかかわりということになりますので、まず平成五年度決算では税収見積もりと実績との関係、概要はどのようになりましょうか、お答えをいただきたい。
  106. 薄井信明

    説明員(薄井信明君) 御答弁申し上げます。  平成五年度の一般会計税収の決算額は去る七月末に決まったわけでございますが、金額にして五十四兆一千二百六十二億円でございまして、平成五年度の第二次補正後予算額に対しまして一兆五千五百三十八億円の減収となりました。この額は、前年の平成四年度の一般会計税収の決算額よりも三千百九十一億円の減収ということになっております。
  107. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そういたしますと、税収と実績の関係の中でその差額はどのようになりますか。
  108. 薄井信明

    説明員(薄井信明君) 御答弁申し上げます。  一般的な例を申し上げますと、十二月に来年度の予算を編成いたしますが、その際に、歳入につきましては、税外収入等々ありますけれども、税収につきましては、翌年度の種々の経済指標等を推測いたしまして、その中心政府経済見通しということになりますが、それ以外にも各業界ごとのヒアリング等々を加えまして、私ども翌年度にどれだけの税収があるかを推計させていただきます。それを見積もりとして予算には計上してございます。  ただし、税法というのは既に法律で決まっておりますから、経済情勢いかんでその税法が適用になっていくと、結果的に出てくる税収は予算の税収見積もりとは違ってくるということになります。これは、歳出予算のように決めた歳出の枠内で歳出権限を得るということとは違いまして、見込んだ税収がそのとおり入ってくるかどうかということでございまして、結果的には先ほど申し上げたような分だけ入ってこなかったということでございまして、そのことと歳出面の状況、歳出面では別途答弁があるかとは思いますが、全部使い切ったのかどうかとかいろいろございまして、その歳出歳入両面で差額が生じてくる、その差額を決算としてどう処理するかという問題が残るということでございます。
  109. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それでは、歳入不足というものはもう算出されておりますか。
  110. 薄井信明

    説明員(薄井信明君) 税収が中心でございますので、先ほど申し上げましたが、何と比較するかということで御答弁になろうかと思いますが、例えば先ほどおっしゃいました平成五年度について、当初予算では幾らを見込んでいたかというと六十一兆三千三十億円。それに対して決算では五十四兆一千二百六十二億円が入ってきたということでございますから、対当初七兆一千七百六十八億円の税収の穴があいたということでございます。ただし、その途中で平成五年度の場合は補正を組みまして、これは税収が入ってきそうもないなということで五兆六千二百三十億円減額しておきましたので、結果はさっき申し上げたように一兆五千五百三十八億円補正後に対しては減った、少なかったという関係にございます。
  111. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 もう時間が大変足りませんので、一年間の決算の審査をするのにとっても時間が足りないということを思うんですけれども、これはもう国会のいろいろの政治的な動きの関係の中でやむを得ないことだと思います。  私は今、五年度の決算の概要について伺いましたが、これはもちろん平成三年度決算の結果が実はその後の予算編成等でどういうふうに生かされていくかということと非常に大事なかかわりがあるというふうに思いますので、とりあえずのことを伺いました。  そこで、平成三年度の決算の中ではちょっと気になることが会計検査院から指摘をされております。それは全体の税務署の徴税の関係指摘についてもあるわけでありますが、これは三年度の大蔵省が出された説明の中で、「徴収額に過不足があったこと等の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に堪えないところであります。」と、こういうふうに触れられております。触れられ方がいいか悪いかは別にいたしまして、触れられているということであります。  もう一つ気になる点は、税務職員の不正事件二件、それから造幣関係の職員の事件一件が指摘をされております。これはもう司法当局の手でいろいろと措置をされていることですし、全額返済をされているというふうに書かれておることですから内容については聞く必要はありませんが、問題は起こってはならないことが起こっているということなのでありまして、その後どういう措置を講じられておるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  112. 皆合達夫

    説明員(皆合達夫君) 最初に国税庁の方から御答弁申し上げます。  議員御指摘のとおり、このたびの事件につきましてはまことに遺憾なことと考えておりまして、このような不祥事を起こしたことにつきまして深く反省いたしまして、このような事件が再び起こることのないように厳正な服務規律の確立に努めております。あわせまして、この事件の関係者につきましては既に厳正な処分を行っております。  御指摘の、このような事件が起こらないような対応ということでございますが、この事件を機に、再びこのようなことが起こらないようにということで、特にチェックシステムのポイントの一つは監査ということでございますので、監査体制の見直しによりまして事務改善を図るとともに、また不正防止に効果のある、不正ができないような新型のレジスターを開発いたしまして、今順次各税務署に配置を進めているところでございます。  今後は国税職員一体となりまして信頼の回復に努めていく所存でございますので、御理解をいただきますようによろしくお願いいたします。
  113. 小林敏章

    説明員小林敏章君) 造幣局でございます。  かような不正事が起きたことは本当に申しわけないことでございまして、二度と起こしてはならないということでやっています。  具体的にどういうことをやったかということを申し上げますと、一つは、まず関係職員、もちろんこれは厳正な処分を行いました。  それから、今後の対応といたしましては、このような事件が発生することがないようにしなければいかぬということで、それぞれ円形をつくったり圧印する各工程がございます。その工程工程ごとに何枚処理したかということをちゃんとカウントするようにして、計数管理と言っておりますが、これを改善した。それから、ちょっとおかしいことがあったら現場で処理せずに必ず監督者に書面をもって報告するというふうな、ある意味では事務職と作業現場、これが一体的に業務処理をするようにした。それから、職員の出入りするところには金属探知機を設置するなど防犯機材を整備する、こういったソフト面とそれからハード面、両面にわたって速やかに所要の措置を講じまして実施しているところでございます。  造幣局といたしましては、二度とこのような事件が発生することがないように、職員と一体となって信頼の回復に努めておるところでございますので、この点御理解のほどをよろしくお願い申し上げたいと思います。
  114. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それぞれ二度と起きないようにということで、いろんな御努力をなさっているという御答弁をいただきました。  そうすると、もうその後は起きていないですね、職員のそういう不正事件は。このことは一応確認をきちっとしておきたいと思います。  そこで、最近三カ年間を振り返ってみますと、政府が立てておりました税収見込みとそれから実績との乖離というのはかなり大きいということが言えると思います。なぜこのような乖離が起こってくるのか。三年度から五年度まで見てまいりますと、十七兆円を超える自然減収ということもあるわけであります。この乖離がなぜ大きくなったのかというのは自然減収の問題だけではないのではないかというふうにも思うわけでありますが、税収見積もりの狂いが生じてきた原因はどこにあるのかということをお伺いしたい。
  115. 薄井信明

    説明員(薄井信明君) 御答弁申し上げます。  おっしゃるように、平成三年度、四年度、五年度と当初予算に比べ大幅に税収が落ち込みました。この点について私どもも分析をさせていただいておりますが、一般論として申し上げまして、毎年度の税収見積もりといいますのは、可能な限りの資料を活用しまして見積もりをした時点での最大限の努力を傾けてつくるものなんですが、一例を申し上げますと、例えばことしの十二月に平成七年度予算を編成する作業に入ります。その平成七年度の税収をどう見積もるかというときに、私どもは十一月ごろまでに入手できた資料をもとにしか見積もることができないわけです。十月末なり十一月に私どもが入手し得る資料というのは、経済の動きからするとまだ夏のころの資料しか入らない。  一番端的に、私ども自身の資料としては、十月末のころにその年の、例えば平成六年度の税収がどこまでわかっていて十二月に見込むかといいますと、実は四割以下しか税収が入っていない段階で、ことしの残りの六割がどうなるかわからない段階で来年の四月以降のことを見積もらなければなりません。特に変動要因が大きい法人税でございますが、法人税は十月末までに年間の税収の大体二割ぐらいしが入ってきません。ほとんどが三月決算法人でして、来年の五月にならないと入ってこない。  そういう厳しい条件のもとで可能な限りの努力をするわけですが、これも一例として法人税を申し上げますと、企業の聞き取り調査をして三月決算はどうなりそうかというようなことを聞き、積み上げていくような作業をいたします。したがいまして、私どもが聞いた先自体がどのように自分たちの決算考えているかということにも依存するというような非常に難しい関係にございまして、言いわけのように聞こえるかもしれませんが、その見積もりがなかなか難しいという一般的背景がございます。  それにしても三、四、五は大きいではないかというのは御指摘のとおりでございまして、これは私ども反省してみますと、やはりあの当時の、その直前のバブルによる土地あるいは株による経済活動の拡大、これが平成元年、二年と非常に伸びていた。この勢いを当時どう見るかということにつきまして、今日のようにバブルがこう急速に落ち込むということを見込み得なかった。これは、私どもだけでなくて経済界を初め、あのままでないにせよ、かなりあの勢いを維持するのではないかと思っていた方も多かったと思います。    〔委員長退席、理事今井澄君着席〕そういう一般的な判断と私どももそう相違はなかったわけですが、ところが実際は三年度から急激にそこが落ち込んでいったということで、大きく伸びていたバブルによる税収がはげてきたというところが見込み得なかったことかと思います。  長くなりましたが、一点ずつ申し上げますと、平成三年度はこれに加えて土地税制が平成四年から変わるので駆け込みの土地譲渡所得課税の問題もありました。今の譲渡の話、企業収益の話と加えて、御指摘のような大きな見積もり違いが出てきたということでございます。
  116. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 難しい問題を短い時間で伺おうとするともう時間がたちまち過ぎてしまうということで、御答弁も私どもから見れば言いわけになっている部分もかなりあるように思えてなりません。そこで、時間ももうありませんから、私は自分の意見をかなり言いながら、簡単な御答弁をいただきたいというふうに思います。  それは、要するに税収見積もりに大きな狂いが生じたというのは、経済界もどこもというふうに言われればそれまでのような気がいたしますけれども、しかし、科学的に後を振り返ってみればいろいろとその当時気がつかなきゃならない問題点がいっぱいあったはずなんです。そういう問題点をちゃんと踏まえて、次の予算編成のときの税収見積もりについてきちんとしておかなきゃならぬということになるんですよ。ですから、三年続いて大きい差が出てくるというのは、これはやっぱり大蔵省の見積もり方に問題があると僕は思うんです。そこの点はきちっと反省してもらわなきゃいけない。  特に、政府経済見通し、経済企画庁がやられる経済見通しをにらみながら税収の計算もされるということです。ところが、その経済見通しそのものには大蔵省も参加するわけでしょう、それを最終的に確認するには。そういたしますと、私は、税収見積もりと同時に、そういう日本経済全体の流れを見ていく上でも大蔵省一つ大きな責任を持っている、責任があったというふうに思うんです。  ですから、一年だけだったら、見込み違いでした、こういう理由がいろいろとありましたから間違いでしたということが、それは言いわけではない、事実として仕方がなかったのかなというふうにもなりますけれども、三年も続いてくれば、これは見込み違いでした、やむを得なかったことですというふうに簡単には私どもは言えないと思うんですよ。  特に、今は空洞化などと言われて海外にどんどんと企業が出ていっている時代でしょう。そうした企業が出ていくこと自身も、随分いろいろと税収とのかかわりというのは出てくるわけです。空洞化というのはそういうものを伴ってくるわけでしょう。日本経済全体が沈んでいくということにもなるんです。それはもう三年も四年も前から既にそういう海外への企業の逃避というか進出という形で、言葉をよく言えば進出、悪く言えば逃避ですね、そういうような形のものがどんどんと起こっているわけでしょう。  そういうものも含めて、今後の対策、例えば法人税なら法人税のあり方についての検討くらいはもう本来であればやっていなきゃならない問題じゃないかというふうに思うんです。それらのことが十分に検討をされてこなかったんではないだろうか、だからこういう結果になっているんじゃないか。  今後、各省庁からの要求も国民の要求も大きいから予算は膨らませなきゃならないなどということで、それで政治的判断が中にかなり加味された形で税収計算をやるということをやっていったら、なかなか収拾がつかなくなってくるんじゃないかなということも心配をいたします。  もう時間が三分しかなくなりましたから、ここのところは今後の問題になってまいりますから、私の意見をいろいろ今申し上げました、基本的な考え方を。今のようなことが起こることは決していいことじゃないですね、見積もりと実績との乖離が大きいというのは。これからこれをどういうふうに克服をしていかれるつもりか、大蔵省としての今後の行き方について大臣のお考えがあればお聞かせいただきたい。
  117. 武村正義

    国務大臣武村正義君) おっしゃるお話は、まことに真剣に受けとめなければいけないと思いながらお聞きをいたしました。過去の実態もおっしゃるとおりであったわけであります。  もちろん、審議官がお答えいたしましたとおり、予算の編成の中で税収見積もりは最大限、大蔵省は主税局がその担当でございますから、主税局が過去の経験も踏まえながら英知を絞って一定の数字を出してくれているわけであります。最新の課税の実績状況がどうであるか、そして経済企画庁等が打ち出していく経済見通し等がどうであるか。もちろん経済企画庁の数字が絶対ではありませんから、あらゆる専門機関の情報も加味しながら経済見通しの判断をして、その上で個々の税目ごとに積み重ねをして、このぐらいだろうという数字を出してくれているようであります。  しかし、どう説明しましても、結果として今おっしゃったように三年間前年を下回るという厳しい経済情勢があったことも事実でありますが、その中で当初予算と決算額だけを見ますと、三年間かなり大きな乖離を来してしまったことは紛れもない事実だし、そのことは今後の、特に来年度以降の予算編成、税収見積もりにおいては十分教訓にしなければいけないと思っております。  ただ、もう一つ言えることは、この仕事を預かりながらすぐにシーリングの作業が始まりました。八月早々に方針を閣議了解という形で決定いただいて、そして八月いっぱい御苦労をいただいて、きのう、八月末に各省は一生懸命シーリングの中で精いっぱい精査をしながら要求してくれたわけであります。締めて七十六兆数千億という数字が報道されておりますが、本当はこのときからある意味では予算編成が始まっている。ここでは税収見積もりの議論はしておりませんが、実はこれは歳出の方の枠組みを決めた作業でありますけれども、厳しい、ことしも経常経費がマイナス一〇%、去年もそうでした。そして公共投資は、景気対策もこれあり、プラス五%ということでお願いをして、そういう……
  118. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ありがたいんですけれども、仲間の時間を食ってしまいますので、申しわけありません。
  119. 武村正義

    国務大臣武村正義君) わかりました。済みません。  そういうことでありまして、シーリングから既にその辺の問題が始まっているという認識も持っております。  ありがとうございました。
  120. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 終わります。
  121. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 中尾でございます。五十嵐官房長官、このたびの官房長官御就任おめでとうございます。  私は、まずきょうはアイヌ新法問題、ウタリ対策について御質問したいと思います。  この問題については、五十嵐長官がこれまで国会審議あるいはさまざまの場面で長年にわたって誠心誠意取り組んでこられました。そしてまた、このたびアイヌ民族としては初めての国会議員萱野茂さんが誕生ということを大変私も心からうれしく思っている次第でございます。  この問題の解決の重要性は、私が申すまでもなくだれよりも五十嵐長官が重々御存じのことだろうと思います。大変心強く、また期待するところが大であります。村山総理も就任後の施政方針演説の中で「人にやさしい政治」を掲げられました。つまり、基本理念は、社会的に弱い立場にある人、マイノリティーといいますか、少数者に対して心と血の通う政治が理念だろうと私は理解しております。そしてまた、先月八日でございますか、萱野参議院議員との懇談の中で村山総理は、アイヌ新法制定について検討してみたいと、これは新聞報道でございますけれども、答えたと聞いております。  まず、具体的な質問に入る前に、五十嵐長官のアイヌ新法に取り組む決意をぜひとも伺わせていただきたいと思います。
  122. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) このアイヌ新法問題はもう随分古くからの問題でありまして、殊に長い間のアイヌ民族の願望というものを受けて、昭和五十九年であったと思いますが、当時北海道知事のもとにアイヌ問題の諮問機関である懇話会というのを設けてここでさまざまな議論をし、そうしてその結論を得て、北海道知事からも国に対してその推進方の要請があったところであります。また、道議会におきましても、同様の趣旨の道議会決議をして今日まで要請が続けられているわけであります。  これらの一連の動きというものを受けて、国といたしましても検討委員会を設けて、事務レベルではありますが、各関係課長などが四年有余にわたって今日まで専門的な検討をずっと続けてきているわけであります。これはもう中尾委員よく御承知のとおり、なかなかそれは多くの難しい問題点を含めたことなのでありますが、我々としてもぜひ積極的にこの問題は取り組み、検討を進めてまいりたい。  また、お話のように、今回、これは我が国では初めてでありますし、あるいは世界的にも大変な私は特筆すべき快挙であるというふうに思うのでありますが、萱野茂さんが本院の議席をお持ちになられたということも非常に大きな意味のあることであって、これを契機といたしまして一層我々としてもこの問題に取り組んでまいりたい、このように思っている次第であります。
  123. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 今、五十嵐長官から経緯について御説明がありましたので、私は端的に質問を続けたいと思います。  私も、昨年六月の当決算委員会でこの問題について質問させていただきました。そのときは五十嵐長官の部屋に私は質問の前に勉強に伺ったことを思い出しております。ありがとうございました。そして、昨年九月の参議院内閣委員会でございますけれども、同僚の山口哲夫議員がアイヌ新法制定に向け審議会の設置を提案いたしました。当時の武村官房長官がその答えとして、これは答弁の要旨でございますけれども政府内部の検討委員会は終了段階にあると思う、審議会を設置するということは有力な提案であるので早く検討委員会を終えて前向きに進めたいと。  先ほど長官から御説明がありましたけれども、検討委員会は既にもう四年半余りたつておるわけです。いろいろヒアリングをやって、月一回のペースでやってきているということも承知であります。この審議会設置に向けて前向きな取り組みが今行われているやに聞いておりますけれども、見通しなどをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  124. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 審議会に関しましては、先ほど申しました道の要望書というのは昭和六十三年に出ているわけでありますが、この要望の中でも「審議機関の新設」という項目がございまして、「アイヌの民族政策並びに経済的自立を図るための産業政策を継続的に審議するため、アイヌ民族の代表を含む審議機関を新設すること。」と、こういう要望が出ている次第でございます。  四年余の検討委員会の議論というものも進んできているわけでありますから、さきに武村官房長官がお答えをいたしましたように、それについての検討もされていくべきであろうというふうにも思っているところでありますが、なおこの問題の非常に基本的な部分で難しい何点かの問題がある。これはもう委員承知のとおりであります。国際的にも、また我が国としてもそういう問題がございまして、しかし難しい問題であればこそまた取り組んでいかなければならぬところであろうというふうに思いますが、そういう点等の検討も踏まえながら審議会につきましても検討をいたしていきたいと、こういうぐあいに思う次第であります。
  125. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 昨年は国際先住民年、そしてそれについて国連の総会では国際先住民の十年が決定いたしました。  長官、もう既に御存じのように、世界各国、それはいろいろ国によって違いますでしょうけれども、カナダ、ニュージーランド、アメリカ等々ではいろいろな法律等で少数民族に対する保護政策といいますか、権利の問題等々を認めているというか、そういうふうに聞いております。  我が国はどうかといいますと、現在各省庁にまたがってウタリ対策というものを実施しております。約十六億円の年間予算というふうに聞いております。これは私は福祉中心の福祉対策だろう、これも大変大事なことだろうとは思っております。しかし、福祉政策の視点があっても、残念ながら民族政策といいますかそういう視点がちょっとないのではないか、そこにアイヌ新法の制定を求める一つのポイントがあるのではないかと私は思っております。  特に、明治三十二年に制定されました北海道旧土人保護法、これは五回にわたって改定されて、昭和四十三年でしょうか五回目の改定を行っておる。これはもう実質上法的な効力を失っているに等しいと思うんですが、厳然としてあるわけです。前回の委員会で、去年の委員会でも当時の丹羽厚生大臣は、これはもう早く廃止すべきだというようなお答えをいただいたんですが、やはりこれにかわるアイヌ新法をつくるべきだと私は思っています。  時間もございませんので、それではアイヌ新法制定に向けて、今も長官のお話がございましたけれども、一体何がネックになっているのか、何が壁になっているのか、これを端的にちょっとお答え願いたいのです。
  126. 藤井威

    説明員(藤井威君) 内政審議室で、今先生御言及になりました検討委員会の世話をさせていただいております。今まで、官房長官からもお答えしましたように、ちょっと時間がかかり過ぎという御批判はございますけれども、アイヌ新法問題についての基本的な論点の整理を行ってまいりました。  端的にどういうところが問題かという御質問でありますので、そこでの論点の整理を、結果を端的に申し上げますと、アイヌ新法の考え方の前提といいますか背景になっております先住民族という概念について、これをどうとらえるか。それから、仮に先住民族としてとらえた、あるいは認められるといたしましても、どのような法的な根拠でアイヌの人々にだけ先住民族としての権利というものを認めることができるのか。こうした権利の基本的な性格は一体どういうものなんだろうか。こういう特別な権利ということを仮に認めるといたしますと、憲法が認める法のもとの平等との関係をどういうふうに考えるべきか。他の人々との間で均衡を欠くことにならないか。  こういった点、端的に申し上げますと、先住民族のとらえ方あるいは先住民族としての権利のとらえ方、そういったところで基本的な問題点があるというふうに考えております。
  127. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 大体今のお答えが壁というか、そういうふうに私も承知しております。大体メモして、私もそうだろう、そういうお答えになるだろうということが、それ以上のことは出てまいりませんでしたが、多分そうだろうと。  ただ、時間もございませんから、私ちょっとここで一点申し上げたいのは、実はつい先日、五十嵐長官も先ほど触れました、ウタリ問題懇話会の委員でありまして少数民族の研究者である北星学園大学の土橋学長にお話を伺ってまいりました。アイヌ民族の問題についてもう二十年にわたってやっていらっしゃる先生でございますけれども、なぜ新法問題が行き詰まっているのか、どうも入り口論で終始しているのはなぜかということで、私も忌憚なくお話を伺いましたら、つまり日本において先住民族あるいは少数民族、ちょっと意味合いが違いますけれども、その概念が法解釈の中に存在してないんですよ。先住民族というのはないはずです。旧土人保護法は違います。ですから、新しく制定するに際して法解釈で物事を進めていやしないかということが先生との話し合いで指摘されました。  これは、もちろん法解釈の論議は必要ですけれども、私は先ほど申し上げましたけれども、アイヌ民族のとらえ方、いわゆる民族の概念をどうするかということを今早急にやらなければ、例えば文化保存、アイヌ語の問題もありましょう、それから例えば記録していく、これは古老、お年寄りの方がもう年々亡くなっているわけです。これは現実なんです。予算なんかを見ますと、去年とことしで全然変わっていないんです。例えば文化財保護予算、文化保護予算はたしか一千九百万余なんです。そこに私は問題があると思うんです。  ですから、今後この問題に取り組むためには、法律解釈上これは法のもとの平等に反するとかそういうことで消極的にならずに、そういった面からのアプローチを私はぜひやっていただきたいと思うんです。いわゆる民族学的定義をどうするか、あるいは民族文化論的定義をどうするかというアプローチからも攻めていかなかったら、これは入り口論で終わってしまうんじゃないかと私は思うのです。これについて長官のお答えをいただきたいと思います。
  128. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 先ほどちょっと委員が言及なされました北海道旧土人保護法並びに旭川市旧土人保護地処分法という二法が現存しているわけであります。これはもう古くは三十年近く前、私が当時旭川の市長をしておりましたときに、北海道市長会の決議をしたり、あるいは旭川の人権擁護委員会が提起して全国の人権擁護連合会で決議をいたしたりして、この廃止運動というのはずっと延々続けられてきているのでありますが、しかし実はアイヌ民族の皆さんの中から、これは極めて屈辱的な法律ではあるが、しかしこの問題をむしろ足場にしてアイヌ新法をつくるべきだ、アイヌ新法の見通しがない中で旧土人保護法等についての廃止をすべきでないという、これはやはりそれなりの厳しい一つ意見というものがあって、本当に恥ずかしい名前の法律なのでありますが、今日まで現存しているという経過をたどっているわけであります。  こういう恥ずかしい法律ではあるが、しかしこの法律があるということはやはりアイヌ民族に対する当時の特定した政策であり法律であるということが言えるわけでありまして、そういうことも我々は実は論議の上では念頭から離してはならないような気がするわけであります。  他方、先ほど内政室長からもお話がありましたように、なかなか国際的にもいわゆる先住民族ということの概念というのは定まってこない。お話しの昨年の国際先住民年の場合も、これも先住民族年ではなくて先住民年であった。やっぱり議論するが個々の先住民族としての統一した概念がなかなか定まってこないというような問題等も一方ではありまして、なかなかこの議論というのは困難な状況になっているということなのであります。  しかしながら、先ほども申しましたように、そういう中ではありますが、我々としては鋭意今までの検討委員会の検討を踏まえて、さらにこれからどういうふうにこの問題を詰めていくか。ただ空論だけまたやっていてもいかぬわけでありますから、実際にこれを我が国でしっかりした政策にしていくということのためにはどういうことが可能なのかということについて、しっかりした現実的な議論というものを交わしながら前進をしてまいりたい、こういうぐあいに思っているところでございます。
  129. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 ちょっと次の問題もありますので、ぜひとも懸命に頑張っていただきたいと思っています。  次に、総理府に伺いたいと思います。  来年、戦後五十年という節目の年であります。昨日、村山総理が談話として戦後処理の問題について発表されました。時間もございませんので詳しくは言いませんが、その中で、特に在サハリン韓国人永住帰国問題について私めくっておりますと、私もかつて報道記者としてサハリンの韓国人、朝鮮人の帰国問題に若干かかわったこともありまして、五十嵐先生のこれまで長年の努力の結晶があらわれているなと思いまして心からうれしく思いました。  きょう私が伺いたいのは総理府の平和祈念事業特別基金制度についてでありまして、その趣旨の一つに、今必要なことは、引揚者など関係者の労苦を悲惨な戦争の真実の姿としてとらえ、忘れることなく後世に伝えることであるというふうに書いてあります。特別基金の平成六年度予算、概要ですけれども、基金の運用益で約十億円余り、補助金で約十三億五千万円余りということで、計二十四億円になっております。しかし、ほとんど恩給欠格者の慰藉事業に回ってしまうという実情を私はお伺いいたしました。  しかし、この中の事業の一つでありますけれども、戦争を後世に語り継ぐ事業、例えばここにいただきましたけれども平和祈念展というのをやっておるわけです。大変大事なことだろうと思っておりまして、端的にこの二十四億円の中からこうした出版あるいは祈念展の予算、一体どのぐらい使えるんですか。
  130. 平野治生

    説明員(平野治生君) ただいま先生からお話がございましたいわゆる戦後強制抑留者、あるいは恩給欠格者、それから海外からの引揚者、こういった方々の御労苦について国民の理解を深める慰箱事業といたしましての費用は約二億円弱でございます。
  131. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 ということは、ほとんどこういう事業には回されないというふうに伺っております。  質問をはしょりまして、つい先日私は、樺太引き揚げ三船遭難遺族会、北海道留萌沖で終戦直後にソビエトの潜水艦に次々に三隻がやられて千七百人余りが亡くなった事件でございますけれども、その遺族会の会長に会いました。そして、来年終戦五十周年に向けましてこういう企画書を手渡されました。つまり、平和を語り継ぎたい、この事件をもとに子供たちにも平和をつないでいきたいというアニメとそれからドキュメント、証言を得た企画書でございますけれども、私、切々と訴えられました。  その方は三年か四年前にアニメーションを一億円かけてつくりました。そういった中で、私は民間人のそういった努力、各地でいろいろやっております、その支援がやっぱりいま一つ足りないのではないか。子供たちに訴えるのに、私も経験がありますけれども、大人の感覚ではだめなんです。アニメーションで私たちも今北海道でやっております。五年目になります。そういった平和を語り継ぐ、戦争を後世に語り継いでいく、悲惨さをつないでいく、そういう姿勢が私は必要だろうと思うんです。  最後になりました。時間もありませんので、この民間人の努力に対してどのように取り組んでいただけるのか、長官にひとつお願いしたいと思います。
  132. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 殊に、きのう発表したばかりでありますが、戦後五十年に向けて一体我々としてはどういうことをしていったらいいかということで、殊にアジアの各国とのかかわり等を中心にして対外的な方針を示したわけであります。  その中の大きな柱として平和友好交流事業というものがございまして、内容的には青少年を初めとする各層の友好交流という点が一つと、もう一つはやはり歴史を直視して、そしてそれをあるがままにしっかりと伝えていく、二度と過ちのないようにしていくということが非常に大事であろうということで、これらの事業にこの計画としては十年間で約一千億ぐらいかけていこうという考え方でおりまして、お話しのようなさまざまな点につきましてもしっかりこの事業の中でもやっていきたい。民間等に対する支援も、特にそこがむしろ中心であろうと思いますので、積極的に努力してまいりたい、こういうぐあいに思います。
  133. 中尾則幸

    ○中尾則幸君 ありがとうございました。終わります。
  134. 山崎順子

    ○山崎順子君 新緑風会の山崎順子でございます。  本日は、与謝野文部大臣と女性問題担当大臣でいらっしゃいます五十嵐官房長官に質問させていただきたいと思っております。  まず、文部省関連から始めたいと思います。  この八月の初めに横浜で国際エイズ会議があったことは皆様も御存じだと思いますけれども、世界の約百三十カ国から一万二千名が集まりましてさまざまな角度からエイズについて議論がされました。エイズが単なる病気の枠を超えて文明や社会の問題であると改めて感じた人は多かったと思います。  この国際エイズ会議の開会式に私も出席させていただきましたけれども、ちょうど開会式の壇上から感染者である方があいさつをされておりまして、突然会場にこのように呼びかけられました。それは、エイズの感染者または患者の方は私たちの身近にいます、この会場にもいます、どうぞ患者の皆さん、感染者の皆さん、立ち上がってくださいと呼びかけられたんですね。そうしますと、その会場には四千人ぐらいの方がいらしたと思いますけれども、その中から数十名の方が立ち上がられました。もちろんその勇気に感動した会場の人々からは温かく大きな拍手が沸き起こったわけですけれども、正直言いまして私は大変複雑な思いがいたしました。  自分がエイズの感染者である、患者であるということを人々に公表することをカミングアウトと言っておりますけれども、このカミングアウトができるかどうかということはその社会が成熟しているかどうかの尺度になると思うんですが、我が国は残念ながら私はカミングアウトのまだできない国ではないかと思っております。現実に自分で発表していらっしゃる患者さんも少ないですし、また多くの方々に会いましたけれども、もしそうすると家族にも迷惑をかけるし、自分自身の今までの日常生活ができなくなるんじゃないか、そういう懸念と不安にとらわれる、とてもそういうことは怖くてできないとおっしゃる方が多うございました。とてもそれは残念なことだと思いますけれども、なぜそういうことになるかといいますと、それはいたずらな不安感や恐怖感を人々の間に呼び起こして、患者や感染者の方々への差別という人権問題を生む現実というものがあるからだと思います。  大臣は、このカミングアウトできない我が国の現状、感染者や患者の方々が孤立しているという現状に対してどのようにお考えになっているか、また、それについて今後差別のない社会をつくるにはどういう対策が必要か、御意見をお聞かせ願えればと思います。
  135. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生御高承のとおり、日本社会はエイズの脅威には十年ぐらい前は割にさらされていなかったわけでございますが、統計的に見まして、エイズの患者数というのは指数関数的に増加するのではないかというふうに実は恐れているわけでございます。  当初の同性愛間での感染、あるいは麻薬等の乱用・回し打ち等による感染、あるいは血液製剤による感染から、異性間の通常の性交渉による感染というものが非常な社会問題になってきております。  これは、まず第一にはやはりエイズという病気に対する正しい認識を持たなければなりませんし、それと同時に、医学的にエイズという病気を克服していく研究にやはり日本だけではなく国際協力を含めまして全世界で取り組んでいかなければならないと思っております。  それと同時に、他の病気の引き金となるビールスもたくさんございますけれども、そういうビールスのキャリアの発症率とエイズのビールスのキャリアの発症率と比べますと、確率が非常にエイズの場合は高いということで、キャリアであるというだけで今先生が御指摘になったような社会生活上いろいろな困難に直面をする、こういう問題がありまして、やはりエイズに対する科学的な知識をなるべく多くの方に持っていただくということが大事でございますし、社会的な意識の問題として、やはり正しい知識に基づいた優しい心構えでキャリアに対しても接していくということも必要でございますし、またそういう科学的な態度、あるいは正しい性に対する知識、あるいは身辺にキャリアがいた場合の正しい認識と行動、こういうものもやはり学校教育を通じて少しずつ子供たちに教えていく必要があると思っております。
  136. 山崎順子

    ○山崎順子君 ありがとうございます。今、文部大臣がおっしゃったことは、文部省や厚生省が出していらっしゃるいろいろな指導書、パンフレットにも書かれておりまして、大変政府や国がそういうことに心を痛め、指導なさっていることは重々承知しておりますが、残念ながら現場ではなかなかそういうふうにはいかず、差別というものが歴然としてあるようでございまして、ここに、六月二十八日の新聞発表によりますエイズウイルスの感染児童と教育とのかかわりについて御紹介したいと思います。  血液製剤からHIVに感染した患者らが国や製薬会社と争っている東京HIV訴訟の非公開の証人尋問が六月二十七日に行われました。その法廷内で証言され、明らかになった教育現場での差別の実態です。仮にA君といたしますと、このA君は裁判中の平成四年に十二歳でもう既に残念ながら死亡なさっておりますが、その父親が証言台に立たれました。  その証言によりますと、一人息子だったA君は、六歳のときに血友病の治療を受けていた長野県の私立病院で感染がわかりました。その五カ月後のことですが、通っていた保育園がちょうど卒園間際だったんですけれども、そこの園長先生がA君宅を訪れて、鼻血がしょっちゅう出るので保育園を休ませてほしいと通告したらしいんですね。もちろん、両親はきちんと保育園に行かせてほしいと拒否をしたんですけれども、結局感染の危険ということを理由に退園処分になったそうです。また、小学校の入学時にも血友病で足が不自由なことを理由に他の地域の特殊学級の方へ通うように指導を受けまして、一家はやむを得ず引っ越しまでしてその学校にA君を通わせなければならなかったという事実がございます。  なぜ、医療関係者は秘密を守る義務がございますが、それが行政の方に漏れたのか、またそうした感染の危険や足が不自由という理由で退園処分や特殊学級への通学指導が行われたのでしょうか。A君を受け入れる方法はなかったのか。大臣の所見を伺いたいと思います。
  137. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) エイズという病気が発見されます初期の段階において、血友病という病気に血液製剤を使うことがエイズウイルスの感染の源になるということはまだはっきりしていなかった段階がございます。その後、血液製剤を加熱処理して投与すればそういうものは完全に防止できるということもわかってまいりました。多分その亡くなられた少年は、不幸にしてそういう医学的な知識というものがまだ十分医療関係者に行き渡る前のことであったと思います。一人の少年の歴史としては本当にかわいそうな話であったと私は思います。  今後は、そういう医療関係者が、医師法に基づく守秘義務もございますし、そういう秘密を漏らすということはプライバシーの侵害であり、またその人の生活環境を著しく破壊することでございますので、そういうものは今後関係者が十分留意しながら物事を進めていく必要があると思っております。    〔理事今井澄君退席、委員長着席〕
  138. 山崎順子

    ○山崎順子君 このA君は小学校三年生のときにエイズを発症しまして、地元や東京の病院で治療を受けましたけれども、片方の目を失明し、全身の内臓を侵され、苦しい闘病生活の末、二年十カ月後に死亡したそうです。  A君は、両親が告げなかったため最後まで自分はエイズ感染も、エイズの患者となったことも知らなかったそうですが、この御両親が告げなかった理由というのはもちろん幾つもあると思います。しかし、一つには、退園処分などを平気でするこの国では子供にエイズだと知らせることは大変酷なことだとやはり御両親が考えられたのではないかと私は推察しております。  去年の夏に日本に来ました当時十歳だったアメリカの少年のジョナサン君という子がいるんですけれども、彼がやはり同じ病気にかかっています日本の友達に出したメッセージがございます。ちょっと読ませていただきます。   親愛なるM君。君と会えてよかった。   気持ちをしっかりと持って、元気でいてくれたらいいなあ。ぼくと会ったときは、ぐあいがあまりよくなかったから、気になっているんだよ。君は、ぼくとちがって、ずーっと自分のことを秘密にしておかなければならないので、かわいそう。人にうちあけられないなんて、ほんとうにつらいことだろうなあ。   ぼくは、みんながエイズについて学ぶことが、ぼくを助けてくれることになるので、エイズについてもっともっとみんなに話したいんだ。   もし君が、自分のことをみんなの前で話せるようになれば、もっと楽な気持ちで、自分の中のエイズウィルスに、立ち向かっていけると思うよ。君がみんなに感染していることを言ったら、みんながさけるだろうと、心配しているけど、大丈夫だ。ほとんどの人は、君を支えてくれるよ。ぼくは、そう思うんだ。  このジョナサン君というのはやはり未熟児のときに輸血をして、その血液でエイズウイルスに感染したのですけれども、両親ももちろんそのことを彼に告げ、そして周りの人たちもそのことを知っていて、その理解を得て、感染者であっても当たり前の日常生活と学校生活を送っております。ぜひ日本でもこういうような状況になるようにと、先ほど大臣もおっしゃってくださいましたので願っております。  大変失礼でございますけれども我が国ではエイズウイルスに感染している子供たちで学校に通っている子は何人ぐらいいるか、大臣御存じでいらっしゃいますか。
  139. 小林敬治

    説明員小林敬治君) お答えいたしますが、私どものところに報告をされている例は全くございません。
  140. 山崎順子

    ○山崎順子君 多分そういうことは文部省の方には報告はないと思いますけれども現実には訴訟をやっていらっしゃる方や血友病患者の組織や、そういったところで調べれば、推定で三百三十五人という数字が出ていることぐらいは文部省の方や大臣にも知っておいていただきたいなと私は考えております。  失礼を省みず、大臣に今そういった数字の質問をさせていただきましたのは、大臣文部省に限らず、私も含めて多くの人たちが私たちの周りでエイズウイルスに感染している子供が身近にいて学校に通っているという事実をやはり知らないんだと思うんですね。このことをしっかり認識することが私は大変重要ではないかと思っているんです。  この子供たちの中には、自分が感染者でありながら周りの人たち、また周りのお友だちや先生に告げることができずに悩んでいる子がいるわけですね。そしてエイズという、現時点では治療薬のない、死が必ず近いうちに訪れる病気であるというこういう不安、恐怖に加えて、周りに話すこともできず、話せば差別や偏見を受けてしまうというそういう不安や恐怖、怒り、挫折感というのはいかばかりかと察せられますので、今後、学校全体がエイズについての理解をし、こうした子供たちを支える立場になるという、それが教育基本だと思うのですけれども、学校現場ではそういう子供たちや、またその兄弟がいることを踏まえて差別のない教育を行っていらっしゃるのかどうか。  今報告がないということですから、もしかしたら何もしていらっしゃらないかもしれませんが、もししていない場合は、これから今後どんな対策をお立てになろうとなさっているか聞かせていただければと思います。
  141. 小林敬治

    説明員小林敬治君) 学校におけるエイズ教育につきましては、発達段階においてエイズに関する正しい知識を身につけさせるということが大変大事だと思っております。そのことを通じまして、エイズ患者、感染者に対する偏見とか差別を除いていく。人間尊重の精神を育てることは極めて重要なんではないかなというふうに思っておるわけでございます。  具体的には、小・中・高等学校を通じまして、病気の予防などを扱う保健体育、あるいは他人とのかかわりや偏見、差別などについて取り上げる道徳、それから健康な生活態度の形成などについて扱う特別活動などを中心に、教育活動全体で推進するように指導をいたしているわけでございます。  今申し上げましたように、学校の先生方、それから児童生徒たちがだんだんとエイズに関する正しい知識を身につけていきますと、ただいま先生が御指摘になられましたようないろんな事例というのも減っていき、やがて解消していくのではないかなというふうに期待をしているところでございます。
  142. 山崎順子

    ○山崎順子君 今、数字の方は大臣にお答えいただけなかったんですけれども、今の数字などを聞かれて、=言で結構ですので印象をお願いいたします。
  143. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) お子様がエイズビールスのキャリアとなるというケースは、異性間の交渉ということはもう非常に例外的なことでございまして、むしろ血液製剤あるいは母親から感染するというようなケースでございます。  日本社会では、エイズビールスのキャリアの数が非常にふえている他の国に比べますと、まだキャリアの数はそれらの国々よりは少ないと私は思いますけれども、先ほど申し上げましたように、統計であらわれている数字のほかに隠されているキャリアというのはたくさんいるはずでございます。これは、検査を受けないために発見できない数、あるいは検査を受けて陽性だったけれども数に出てこないというようなケースもたまにはあると思います。  そういう意味では、冒頭に申し上げましたように、エイズビールスのキャリアの数が指数関数的にふえていくということに関しては、やはり日本社会全体の健全性を守るためには医学的な研究努力もしなければなりませんし、社会全体の自覚というものも必要であると思います。  それと同時に、先生がさっきから御指摘になっておられますように、不幸にしてキャリアになった方々に対して愛情ある社会でなければならないと思っております。三百五十幾つという数字は世界的なレベルから見ますと恐らく多い方ではないと思いますけれども一つの危険信号を発している数字だ、そのように思っております。
  144. 山崎順子

    ○山崎順子君 ここにちょっとポスターを持ってきましたので、先ほど理事会の方でもお許しを得まして、大臣に見ていただきたいと思っているんですが、これは日本写真新聞社というところが「学校保健ニュース」として全国の学校に無料で送りつけているものの一つでございますが、ちょっと皆様にもせっかくですから見ていただきたいと思います。(資料を示す)  これは大きなタイトルで、「エイズは確実に死ぬ病気 純潔こそがエイズを防ぐ唯一の手段」というふうに書かれてございます。大変時代錯誤も甚だしいという気もいたしますけれども、これが絶対に保健室や廊下に張られなきゃいけないものではもちろんございませんので、学校では先生たちがこれは張るのをよそうとおっしゃるケースもありましょうが、ただ私は十五年間ずっと家族の問題でボランティアの電話相談なども自分の研究所でしてまいりましたので、エイズ一一〇番の相談員をしている友人やまた性教育の方の専門家どもたくさん知人にいるんですけれども、その人たちがいろいろな学校でこのポスターが張りつけられているのを見まして、これはちょっと大変だなということで私のところに送ってきてくださったんですが、このポスターをごらんになって、大臣どのように思われますでしょうか。
  145. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) そのポスターは一面の真理も語っておりますし、一面の間違った考え方を引き起こす可能性も実はあると思います。それは、確実に死ぬ病気であるという表現は必ずしも正しいとは思いませんけれども、死に至る危険性が極めて高いという意味ではそれは真実の一面を語っているんだろうと思います。  ただし、そういう直接的な表現を使うということはやはり感染者に対する差別の感情を生みますし、エイズという病気に対する正しい考え方を必ずしも伝えているものとは私は思っておりません。
  146. 山崎順子

    ○山崎順子君 今、大臣もおっしゃいましたけれども、もしこれが正しいことであったとしても、これを見た先ほども申しました感染している子供たち、それから自分は感染者だと全く思ってなくても、また感染してなくても血友病の子供たちはたくさんいるわけですが、おまえはエイズだろうといじめられているようなケースもたくさんあるわけです。  そういう子供たちやまたその兄弟が見たときに、「エイズは確実に死ぬ病気」なんというこういうポスターを見てどんなつらい気持ちになるかといいましたら、やはりこういうポスターは張るべきではないと思うんです。  また、エイズの感染を防ぐにも感染者への偏見をなくすにも、エイズの実際をよく知ること、その正確な知識を持つことが最も大切だと先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、そういうことでありますとこのポスターは、細かいところをちょっと申しますと、年ごろの異性と二人きりで喫茶店に出入りしたり、部屋や車内で二人きりになるのはいけないというようなことが書いてあるわけですね。正しい知識から隔離するものだと思います、このポスターは。  そういうことでは大臣がおっしゃったようなことが伝わらないわけで、こういうものが現場にたくさん多量にばあんと無料で送りつけられて、中にはしっかりした先生たち、性教育についてもりプロダクティブヘルスというような立場から性教育ができるような先生たちが大勢いらっしゃればこういうポスターは笑って捨てられると思うんですけれども、こういったことについて野放しになさるつもりか、少しきちんとした対策を講じられるおつもりかどうか、お聞きしたいと思います。
  147. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) そのポスターが問題になりましたのは今から二月ぐらい前でございまして、既に多くの学校当局者はそのポスターは適切な表現を使っていないというふうに感じておられまして、既にそのようなポスターが一般的に学校で出回っているという事実はないものと信じております。
  148. 山崎順子

    ○山崎順子君 そうであってほしいと私も思っておりますが、第二弾、第三弾と似たようなポスターが送られているということも聞いておりますし、このポスターをつくる根拠になっているような性教育をするパンフレットですとか、そういったものも随分配布されていると聞いておりますので、どうぞ厳重に処置をしていただけたらと思います。  エイズ学習について質問してまいりましたけれども、これはエイズの問題だけではなくてやはり性教育の中の一つとして、エイズ教育というよりもエイズ学習と位置づけなきゃならないものだと思っておりまして、それは日本ではなかなかちゃんとした性教育というものが難しくてできていないという現状もあると思うんですが、性をタブーとするような教育ではなくて、性を人権としてとらえる視点を明確に提起した性教育を行うことが必要だと思うんです。  次に、先日、厚生省がリプロダクティブヘルスに関する研究、思春期の性行動に関する研究というものを発表されました。これによりますと、全国十一局校の一、二年生約千人を対象者としているんですけれども、性体験があるのは男子が一二%、女子が一七%と女子の方が高いんです。ところが、自分の体について、また性について、自分の性器についての知識というものは男子よりもずっと女子の方が貧困だという結果も出ておりまして、研究調査をした先生たちは大変憂えていらして、早急にいろいろな措置をとらなきゃいけないと言っていらっしゃるんです。  私も一人の女性ですけれども、妊娠できる体ですのに性知識が乏しいということは、女性が性と体を含む自分の人生について主体性を持つ権利、これを今、来週から始まりますカイロでの人口会議でもリプロダクティブヘルスという形で呼び、またその決定する権利をリプロダクティブライツと呼んでおりますけれども、こういったものの視点からの性教育日本ではまだまだ足りないんじゃないか、欠如しているんじゃないかというふうに私は考えております。  ただ、教育現場では、人権の問題として性教育に取り組もうという熱心な先生方ももちろんおられることは承知しておりますが、性についてどこまで話すべきかということのコンセンサスがまだ日本ではできていないように思うんです。このあたりについて民間の方々も含めて、きちんとした性教育について子供にどこまで話し、何を話すべきかという、そういった議論を一度やっていただけないかと思うんですけれども、審議会なり何なりで。そういったことの必要性を感じます。  また、思春期の妊娠ですとか、エイズに限らず性感染症のトラブルとか、そういったものがあったときにすぐに駆け込めて気軽に相談できる、そして正しい知識が得られるというようなカウンセリング機能のあるシェルターなども必要かと思うんですが、そういったものをおつくりになるようなあれはないのかどうか。その二点についてお聞きしたいと思います。
  149. 小林敬治

    説明員小林敬治君) 学校における性教育について若干御説明をさせていただきますと、この問題につきましても発達段階に応じまして科学的な知識を子供たちに身につけさせるということは非常に大事だと考えております。そのことを通して人間尊重とか男女平等の精神を培っていく、こういうことを心がけているわけでございます。具体的には保健体育、家庭、理科、道徳、特別活動というふうな教科が中心になりますけれども教育活動全体で性教育推進するというふうなことになっております。  不十分ではないかという御指摘がありましたので、やや具体的に過ぎるかもしれませんが、私の手元にあります保健の一部をちょっと御紹介させていただきますと、小学校の五、六年の教科書の一つに、男子と女子とで体にどんな違いが出てくるでしょう、あるいはどうしてこの時期に男女の体に違いが出てくるのでしょう、それから体の中でどんな変化が起こるのでしょうか……
  150. 山崎順子

    ○山崎順子君 申しわけありません、全部読んでおります。
  151. 小林敬治

    説明員小林敬治君) ああそうですが、どうも失礼しました。  というようなことで、高校になりますとかなり科学的に男女のメカニズムというものも取り上げて教えているようなことでございます。  ただ、先生も御指摘がございましたように、この分野やや担当の先生方が腰の引けた御指導をしていらっしゃるかなということは言えるかと思いますので、その点今後私どもとしても注意をしていきたいと思っております。
  152. 山崎順子

    ○山崎順子君 ありがとうございました。  今、御親切に詳しくお話しいただきましたけれども、私も一応資料は全部読ませていただいておりまして、そういうところからいきますと、例えば女子の性器については外性器についての記述が全くないとか、いろいろきっと問題があると思うんですが、それがいけないというのではなくて、先ほど申しましたように性についてどこまで話すかというコンセンサスを得られるようなそういった議論をぜひ進めていただきたいというふうに申し上げたつもりでございます。  では、時間がございませんので、この問題はまだたくさんお話を聞きたいこともございますが、文部省関係はこのぐらいにいたしまして、次に女性問題担当大臣として五十嵐官房長官にお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。  まず、官房長官というお仕事は大変お忙しく多岐にわたってもう本当に大変だと思いますけれども、女性問題担当大臣としてこの二カ月ほどどんな形で活動なさっていらしたのか。そして、これから大臣でいらっしゃる間どういうことを活動して何をやりたいと思っていらっしゃるか、抱負と決意をお聞きできればと思います。
  153. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 就任してちょうど二月ぐらいになりまして、まだ十分な活動もできてないというふうに思いますが、ちょっと振り返ってみて、この二月で私どもの、女性問題担当大臣としてやりました若干のことについて簡単にまず御報告申し上げたいと思います。  御承知のように、閣僚を本部員とする男女共同参画推進本部に組織を改めました。それまでは御承知のように事務次官の組織であったわけでありますが、これを閣僚にいたしました。これは七月十二日にそのようにいたしたのであります。  その主宰による全国会議を七月十三日に開きまして、御承知のようにこれは虎ノ門に約千五百人ぐらい集まりまして、総理出席いたしまして大変内容のある充実した会議でございました。  引き続いて、七月二十五日に男女共同参画審議会が発足いたしました。さまざまな男女共同参画社会の形成を目指して諮問をさせていただき、御審議を願っているような次第でございます。  また、七月二十六日には、緊急の課題として女子学生の就職問題がございましたものですから関係閣僚会議を開きまして、各省で協力をいただくように要請をさせていただいたような次第でありますが、そのようなことを今日まで進めさせていただいたところであります。  社会がいわゆる成熟社会に入ってまいりますとともに、やっぱり女性の社会とのかかわりというようなものも非常に大きく変化してきていると思います。そうして、その変化した新しい女性の存在というものがまた経済社会システムのさらなる成熟と変革というものを生んできているというふうにも思うわけであります。その意味で、女性はまさに今日の新しい社会の変革の担い手と言うこともできるのではないかと思います。  そういう点への大きな期待を込めてぜひ男女共同参画社会を形成していって、さまざまなネックというものもあるわけでありますから、こういう問題を着実にあらゆる面で総合的に配慮し、新たな発展の可能性を求めていくということのために鋭意努力をしてまいりたい、このように思う次第であります。
  154. 山崎順子

    ○山崎順子君 男女共同参画型社会ということでありますけれども、今まだ我が国では男女の差別というものがいろいろあると思うんです。  人々へのアンケート調査、意識調査などによりますと、どういう点で男性の方が女性よりも恵まれて優遇されているか、そういうところで一番男性が優遇されているのではないかと多くの人が答えているのが政治の世界ということは長官もよく御存じだと思うんです。その政治の世界では、国会議員だけではなく、私たちの一番身近な暮らしに携わる地方の議会でもさらに議員の中に占める女性の割合が少ない、それもよく御存じだと思います。  そうした中で、政策決定の場にもう少し女性が入っていかないと本当の意味の男女共同参画型社会はできないのじゃないかと私は思っておりますけれども、立法だけじゃなく行政の方面でも司法でもまだまだ女性が少ないのが現実です。こうした中に女性をふやしていくために、例えばクオータ制度というものもありますし、ほかにもさまざまなものがありますが、女性担当大臣としてはどのようにすれば女性が政界に、また政策決定の場  にふえるかお考えでしょうか。
  155. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 今、山崎委員指摘のように、我が国の政策決定の場への女性の参加というのはまだまだ不十分な状況にあるわけで、これは今までもその改善をめぐっていろいろな議論をし努力もしてきたところでありますが、しかし現状なお大変不十分なものが御指摘のとおりあるのではないかというふうに思います。  若干の数字を簡単に申し上げてみたいというふうに思いますが、国会議員総数に占める女性の割合は、平成六年三月三十一日現在でありますが、国会議員全体で女性比率は六・八%、本参議院の方は非常に率が高うございまして一五・一%でありますが、しかし衆議院の方は二・八%にとどまっているということでございます。  また、地方の方を見てみますと、地方会議員総数に占める女性議員の割合は三・四%、これは平成五年十二月の数字でございますが、このうち都道府県議会が二・六%、市議会が五・九%、町村議会が二・二%、こういうことになっております。  なお、この機会ですからついでに関連する数字をちょっと言っておきたいと思いますが、国の審議会委員に占める女性の割合は一一・三%でございまして、これも今我々が目標に掲げて、近々、来年はそれを達成しようと思うのが一五%でありますから、まだかなり低いということが言えると思います。また、国家公務員行政職、これは課長相当以上でありますが、における女性の割合が〇・七%ということで、実際には課長さんや局長さんでも女性の方で実にいい仕事をしている方々がおられるわけでありますから、もっともっとこういう点も考えなくちゃいけないと思います。他方、例えば労働組合における執行委員の女性の割合で言いますと、これは平均一二・八%ぐらいであります。  全体で見てやはりまだまだ建前のように現実がいっていないということでございますので、我々としてはそのために必要なさまざまな環境整備を政策の上でしっかりやっていかなくちゃいけないということと、やっぱりきちっと目標をつくって積極的にそれを果たしていくような努力をしていかなくちゃいけない。殊に、御指摘国会議員あるいは地方会議員の場合は、各政党のこれについての意欲のある御協力を心から期待したい、こういうぐあいに思う次第であります。
  156. 山崎順子

    ○山崎順子君 今の数字は、こちら側が挙げていかにも少ないと申し上げて、ぜひその次はこんなにふえましたよと言っていただきたいと思っております。  次に、夫婦別姓の選択性については大臣はどう思われるか、ちょっと御所見をお聞かせください。
  157. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 夫婦別姓の問題に関しては、御承知のように現在法務大臣の諮問機関であります法制審議会が検討を続けておりまして、本年七月には選択的夫婦別氏制度を導入する方向での民法改正要綱試案を公表いたしております。関係各界に対して意見を現在照会しているところでございます。  今後、この試案に対する意見国民世論の動向を踏まえて適切な方向が示されることを期待いたしている次第でありますが、私としてもそのような気持ちでいる次第であります。
  158. 山崎順子

    ○山崎順子君 アメリカでは一九六七年に就職の際に年齢によって差別をしてはならないという法律ができているのでございますけれども日本では残念ながら、これは男女を問わず就職時の採用上限年齢というものが国や地方自治体にございまして、男性の場合はそれほど多くの方がこの不利益をこうむっていらっしゃるわけではありませんが、女性は出産、育児だけじゃなくて夫の転勤とかで仕事を途中でやめざるを得なくなり、そして再就職したいと思うときにこの年齢制限にひっかかる方が多いわけですね。  例えば、富山県と静岡県では、これは文部大臣にも関係ありますけれども、教員の採用で年齢制限を撤廃しておりますが、他の県は、ほとんどの場合が三十五歳未満というところがまだ三十一県もあるというような状況です。  また、文部省に限らず、厚生省や自治省の管轄になるのかもしれませんが、保母さんでも、把握していらっしゃらなかったので私の事務所で全国の都市をアトランダムに選びまして電話調査をしましたところ、ほとんどが二十三歳未満、二十五歳未満というようなところが多くて、長い人生ですが、もう一度育児やそういったものの経験を生かして仕事をしようと思ってもなかなか壁が厚いという状況がございます。  こういった年齢制限については、女性問題担当大臣としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  159. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) お聞きしておりまして、そうだなという感じがいたします。  もちろん、それぞれに制度がありましてそう簡単にはいかないと思いますが、しかし御趣旨はよく体しまして検討いたしてまいりたいと思います。
  160. 山崎順子

    ○山崎順子君 どうもありがとうございます。  別姓についてですとかまた年齢制限についてお聞きいたしましたのは、実は政府委員の方たちにこういった質問をしたいと申しましたら、別姓については法務省じゃないかしら、答弁をこちらで用意できるかしらなんとおっしゃいました。これは別に政府委員の方たちの責任とかそういうことではなくて、女性の問題というのがいかにさまざまな省庁にわたっているかということをぜひ女性問題担当大臣でいらっしゃる五十嵐さんに気づいていただきたかったという、もちろん気づいていらっしゃると思いますけれども、潜越でございますが、そう思ったわけでございます。  そして、今までの国会のシステムや、それからそういう省庁のシステムというものがやはり総合的に女性問題をできるシステムになっていないということがございます。そのために今回男女共同参画室ができ、また推進本部ができたと承知しているんですけれども、この政令によりますと、「他の行政機関の所掌に属しない事務のうち男女共同参画社会の形成の促進に関するものを調査し、企画し、及び立案すること。」となっております。私どもから考えますと、全省庁にわたる女性の問題を総合的にプロデュースしてほしいと思っていたわけで、少しこれは残念なんですが、それを象徴するかのように、先日、労働省の方が「女性の歴史と未来館」のことを計画なさいまして、平成八年の婦人参政権行使五十周年を記念した「女性の歴史と未来館」、仮称でございますが、この建設関連費五十億円を要求するというのが出ました。  この趣旨は、婦人参政権獲得の歴史資料の展示とか、それから女性の社会参加の情報相談とか、自己開発センターとかというものを機能とするのであれば、私はむしろ労働省よりも、もちろん労働省がしちやいけないということではございませんが、男女共同参画室の仕事ではないか。それを労働省や他の省庁とも協力して行うべきことではないかなと考えているのでございますが、その辺のことと、これに直接のお答えはなくて結構ですが、どうも縦割り行政の弊害みたいなものが女性問題に一番出てくるような気がしておりまして、その辺をお話しいただければと思います。
  161. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) お話しのように、非常に広範な各省に関係したそれぞれの仕事ということになりますものですから、私どもの方でよく掌握をして調整をとって効果的に進むように努力してまいりたいと思います。
  162. 山崎順子

    ○山崎順子君 どうぞよろしくお願いいたします。  では、これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  163. 風間昶

    ○風間昶君 公明党の風間でございます。  若干、公益法人のことについてお伺いしたいわけですけれども、総務庁の方にもおいでいただいたんですが、官房長官にもぜひ御意見と御所見を承りたいということでお願いして、話の流れからいくと先に総務庁にしていただいて官房長官にということだったわけですけれども、ちょっと官房長官公務でということでございますので、最初官房長官にお伺いいたします。  変化に対応できる総合的で効率的な行政をやっていく上でも、行政改革という観点から考えると、公益法人は今二万五千数百もあるということでございますが、実際にお休みになっているというか、めり張りのきいた事業活動がなされないままでいるいわゆる休眠法人等も指摘されているわけですけれども、そういう意味でリストラがやっぱり必要ではないかということが一点。  それからもう一点は、主務官庁がそれぞれあって、なおかつ行政監察を総務庁さんがやられておるわけですけれども、一括して総務庁が監督するぐらいの対策はもうここに至っては必要ではないかというふうに思っておるわけですけれども、これが二点。  三点目に、助成経済というか、経済活動を支えるためにもちろん私は公益法人が必要だと思いますが、やみくもにどんどこどんどこふえていることに対してはやっぱりブレーキをかける必要があるということで、非営利事業を目的とする中間法人制度の創設についてはどうか。  この三点について、官房長官にぜひ御所見を承っておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  164. 石和田洋

    説明員石和田洋君) 民法の規定にのっとって設立されております公益法人は、財団法人、社団法人という形で実際には存在しておるわけでございますが、これらの法人は民間のイニシアチブで設立されたということもございますので、これらの団体がどのような形でリストラを進めていくかという問題は、基本的には団体の理事者といいますか、責任者考えるべき話ではないかというふうに考えているわけです。  ただ、公益法人は広く公益活動をやっているという観点から、それぞれ所管省庁を決めて指導監督しているということがございますので、こうした公益活動が効率的にかつ合理的に行われるようにという観点から、それぞれの所管官庁が指導監督するということが必要になるということは申し上げるまでもないかと思います。  政府の方といたしましては、こうした団体の指導監督につきまして、公益法人の指導監督をどのように進めていったらいいかということを考えるための会議を持っております。こうした場を通じまして、各省庁が行う共通した指導監督の基準というのを議論していただき、それにのっとって効率的な公益活動をやっていただこうというふうに考えているわけです。  その一つの成果といたしまして、先生指摘の休眠法人というものがございますが、実は先生指摘のとおり、昨年十月現在の数字で二万六千弱の公益法人というものがございますが、この中に四百ほどの休眠法人があるというような調査結果がございます。この休眠法人というのは、いろいろな形で目的外に利用されるというような心配があったりいたしますので、この会議の場で各省庁の統一的な意思のもとに整理合理化していこうということで、この十年ほどの間に三分の一ほど減ったという実績がございます。  また、中間法人についてのお話がございました。これは直接私どもの方の担当するところではないわけですが、確かに今までのいろいろな公益法人を論ずる過程で中間法人的なもの、非営利活動をやりながらかつ公益法人として認められないような団体をどういうふうに位置づけていくかということはこれまでにも議論になり、私どもも関心を持って研究しているわけですが、恐らくこれはほかの所掌ということでございますので、その程度のことにさせていただきたいと思います。  それから、統一的なもっと強力な指導監督ができるような仕組みを考えたらどうかという御指摘でございますが、これは今申し上げましたような会議の場を通じて、それぞれ所管省庁というのがございますので、その所管事項に則したきめ細かい指導監督をやっていくのが適当ではないかというふうに考えております。ただし、共通するような基準づくりについては積極的にこれからも取り組んでまいりたいと考えております。
  165. 濱崎恭生

    説明員(濱崎恭生君) 中間法人制度の創設について御指摘がございましたので、私、民法を所管しておる事務当局でございます法務省の民事局長でございますが、御答弁をさせていただきます。  法人につきましては、御案内のとおり、公益を目的とするものについては民法で公益法人制度があり、営利を目的とするものについては商法で会社制度があるわけでございますが、そのいずれでもない、公益を目的とするものでもない、また営利を目的とするものでもない団体につきましては、必要に応じて、各種の団体ごとに必要性が高いものについては特別法で法人格取得の道を設けているというのが現状でございまして、中間法人制度一般の規定はないわけでございます。  そういう中間的な性格の団体についても一般的に法人格を取得することができる制度を導入すべきであるという議論がかねてからありますことは、ただいま総理府の方から御答弁のとおりでございますし、そういう形で適正な制度ができれば大変便利であるということもそのとおりでございますが、ただ、対象になります団体は、さまざまな性質のもの、あるいは規模につきましてもさまざまなもの、活動形態もさまざまなものがあるわけでございますので、そういった形態によってどういう規制をしたらいいか、規制の必要性の程度はどの程度であるべきか、あるいは確保してもらうべき財産基盤はどうあるべきかといったようなことについていろいろ違ってくるわけでございますので、果たして統一的な法人制度を設けることができるのかどうかというのは大変難しい問題があるわけでございます。これまでも私ども法務省といたしましても検討してまいったわけですが、そういった観点から大変難しい問題があるということでございます。  一方、この問題につきましては、今も触れましたように特別法で対応するという道があるわけでございまして、最近の例といたしましては、平成三年に地方自治法の改正によって、法律の用語では地縁による団体というふうに呼んでおりますが、いわゆる町内会でございます。町内会について地方自治法の中で法人格を取得する道を認めるという改正が実現されまして、これについては私ども法務省としても積極的に協力させていただいた経緯がございます。そういう形でそれぞれの必要性の高い団体について対応するということでございますと、その団体の性質や規模というものにつきましても一定のものがイメージできるので、規制のあり方についても適切な対応がしやすいということがございます。  そういったことでございますので、この問題につきましては一般法がいいのかそういう個別対応がいいのかというようなことも含めまして、今後とも引き続き検討していきたいというふうに考えているところでございます。  とりあえず事務当局からお答えさせていただきました。
  166. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 今それぞれお答えをいたしましたようなことでございまして、なお今後とも公益法人指導監督連絡会議を十分に活用しつつ公益法人行政の適切な推進に努めてまいりたい。また、個々の状況につきましても、適切な検討をしながら実効を深めるように努力してまいりたい、このように思う次第であります。
  167. 風間昶

    ○風間昶君 官房長官、ありがとうございました。この問題は具体的、個別にまた次回やらせていただきたいと思いますのでそのときに、この次にまたお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  それで、実際に公益法人の中身についてのことでございますが、一昨年ですか、四年の六月二十九日の総務庁の行政監察結果で、いわば公益性に疑問符を持つものが指摘されたわけでありますけれども、収益事業にシフトしておったり、あるいは多額の借財をなしておったり、あるいは理事の方が縁故者で占められているといったような、運営事業が不適切であったような法人が一体どのぐらいあったのか、まずその数を伺いたいと思います。
  168. 伊藤孝雄

    説明員(伊藤孝雄君) ただいまの御質問についてお答えをさせていただきます。  私どもの調査は、平成三年の一月から六月に全国の出先を使いまして調査を行いました。御指摘のとおり、勧告は平成四年の六月に関係省庁に対して行ったものでございます。中身は、公益法人の業務運営の適正化等を図るようにというものでございます。  当時の調査におきましては、平成二年の十月一日現在で、休眠法人を除きまして全国に約二万四千余あると言われている公益法人の中から九百二十三の公益法人を無作為に抽出いたしました。その調査結果によりますと、営利企業と同様の形態で事業を実施している、あるいは公益法人の事業として行う妥当性が乏しくなった事業を実施しているというようなものが十八、あるいは定款または寄附行為で定めた目的事業を実施せず、目的外事業のみを実施しているそういうものが四ある。このような事業運営が不適切なものが合わせまして七十三法人見られたと。先ほどの調査対象にしました九百二十三を母数にすると約八%ということになります。  それからもう一つお尋ねのありました、理事の半数以上を同一の親族または特定の利害関係者が占めているもの、これが五十二法人ございました。同様に九百二十三を母数にすると約五・六%というような形になっております。
  169. 風間昶

    ○風間昶君 実際に二万四千のうちわずか九百二十三しか調査できていないという、一つはそのことも私は大きな問題点ではあると思いますが、事実上は大変難しいのじゃないかと思いますけれども、いずれにしても、行政監察をやっていく中でいろんな情報を入手された上での監察を行っていくんだと思います。  よく新聞で取り上げられました、省庁行政権限を盾に寄附を強制しているのではないかというマスコミの報道がありましたけれども、いわゆる官喝というんでしょうか、そして実際に行政監察の中でそのような実態が明らかになった例が一昨年の行政監察であったのかどうかひとつお聞きしたい。  また、いわゆる官喝があるというふうに言われているわけで、そう言われている指摘に対して監察担当庁としてどういうふうに受けとめられているのか。この二点、お願いしたいと思います。
  170. 伊藤孝雄

    説明員(伊藤孝雄君) 御答弁をさせていただきます。  ただいまお話しの第一点でございますが、当庁の調査で、先生指摘の表現でございますといわゆる官喝というのがあったのか、こういう御指摘でございますが、私どもの調査対象にした法人は既に設立をされて活動しておる法人ということで、残念ながら設立の形態、当初どういうふうな形で設立されたのかとか、その点については特段の調査をいたしておりませんので、調査の結果からどうかと言われてもちょっとお答えをできる状態にないので、その点は御理解を願いたいと思います。  それから、新聞等でよく言われているような事態についてどのように考えるかというお話でございますが、公益法人の設立の必要性とか業務目的とか業務内容等について、設立の企画をしている段階で民間関係者の十分な理解を得られないまま、あるいは御協力を得られないままに資金出掲の強制が行われているとか、あるいはそのような疑いがあるというような誤解を与えているとすれば、これは厳しく戒められるべきことではないかと考えております。このような問題については、主務官庁において誤解を招くことのないよう適切に対応すべき問題ではないかと考えております。  私どもとしては公益法人制度全体を所管しているというものでございませんので、御指摘の点については今後における行政監察の運営上参考にさせていただきたいと考えておるところでございます。  以上でございます。
  171. 風間昶

    ○風間昶君 今まさに監察官がおっしゃったように、公益法人全体を所管しているわけではないというふうに逃げるような御発言があったわけですけれども、実際に公益法人が主管官庁に事業報告することが義務づけられているわけです。それも御承知だと思いますけれども、しかし、それが主管官庁に報告されたことが公表されたことは私はないというふうに思っているんです。そうすると、国民全体の目から見れば、公益法人の実態を知る手がかりとしてはまさに総務庁のやられる行政監察の報告以外にないわけであります。  それで、ちょっと調べさせていただいたら、一九七一年から七二年に一回やられ、そして八三年に二回目がなされて、三回目が九一年から九二年というふうに十年に一度というのは余りにも、年間六百件前後がどんどん──先ほども話をさせていただいたように、私は公益法人そのものを認めないというのではなくて、文化とか学術だとか技芸だとかさまざまなことに関してのいわば助成経済的な役割を大きく果たすことは認めておるわけですけれども、しかし一方では、どんどんふえていってリストラが必要な部分、あるいは休眠法人の存在があるということも監察の上でわかった。しかし、その監察も十年に一遍ということであるならば、これはちょっとおかしいのではないかというふうに思うわけです。  殊に、先ほどのお話だと休眠法人が四百件も発見されているということからすれば、先ほど質問させていただきましたけれども、最低三年に一遍ぐらいは監察をやっていくということと、それからもう一つは、主務官庁に対しては毎年休眠法人に関して整理勧告をしていくぐらいの活動が必要であるというふうに私は思うのですけれども、その点いかがですか。
  172. 伊藤孝雄

    説明員(伊藤孝雄君) お尋ねの点についてお答えをさせていただきます。  まず一点目の、三年ぐらいのローテーションで監察をしたらどうかという御指摘でございます。  公益法人の問題に関する監察は、御指摘のとおり昭和四十六年から四十八年に一次の監察、それから昭和五十八年に二度目、この間約十年ちょっと。それから最新ですと、先ほど申し上げましたように平成三年に調査をやっておるわけであります。監察局の行います監察テーマにつきましては、先生既に御存じのとおりだと思いますが、局全体としまして中期行政監察予定テーマということで、行政全体のバランスを考えながら、ときどきの重要な問題は何であるかということも踏まえて立てておるところでございます。これは毎年ローリングをしながらやっておるところでございますので、先生の御指摘の点につきましては内部においても十分に検討する方向で上司にも伝えてまいりたいと思っております。  それから、各省庁について毎年にも勧告をしたらどうかということなんですが、勧告の趣旨は、公益法人の管理に係ります各省庁行政につきまして、個別の所管に係る公益法人の管理について適切にやっていくようにということで、全体として既に勧告をときどきに重要な時期にやっておりますので、私どもとしては外形上の行為というよりも、日々の業務の中でその動向を見守ってまいりたいと考えているところでございます。
  173. 風間昶

    ○風間昶君 ぜひ勇気を持ってやっていっていただきたいと思います。  それで、先ほど何か伝えていくと。伝えていって、じゃ返事を今度こっちへもらえるんでしょうか。──わかりました。いずれにしても勇気を持ってやっていただきたいというふうに思います。  それでは次に、文部省文部大臣に海外留学生の受け入れの問題についてお伺いしたいんです。もちろん、国内的には先ほどの私学助成のことが大変重要なわけですけれども、数は少ないわけですけれども留学生についてもやはり日本が、特にアジアの中で教育あるいは文化、学術のいわば先端として指導をしていかなければならないという思いも私はあるものですから質問させていただくわけです。  文部省が二十一世紀初頭までに十万人の留学生受け入れ計画を立てられて、まさにその目標ペースを上回る勢いで、特に私費留学生の方々が伸びておりますけれども、その要因としてはどういうことが考えられるのかということと、そしてその目標ペースを上回っていることに対しての、メリットはいいわけですが、デメリットが出てきたときにどういう対応を展開されていくのかお伺いしたいと思います。
  174. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) お答えいたします。  平成五年五月一日現在の留学生数は五万二千四百五人でございまして、御指摘のとおり現在のところ留学生十万人計画による当初の想定を一、二年程度上回るペースで推移しております。  この原因については種々考えられるわけでございますが、一つは、近年我が国と諸外国、特にアジア諸国との文化的、経済関係の緊密化等に伴いまして日本への留学希望者が増加していることがあろうかと思います。また、国費留学生に対する奨学金の充実あるいは私費留学生に対する援助の充実など我が国における受け入れ体制の整備が進んでいること、あるいは大学や地域社会が積極的に留学生を受け入れることについて意欲を示し協力をしていただいているといったことも大きく貢献していると考えております。  このペースを上回っていることによって生じるデメリットというお尋ねでございますが、私どもは受け入れ体制の整備充実ということについて、第三者から見ると必ずしも十分でないという御指摘があろうかと思いますが、全力を挙げているところでございまして、予想を上回るペースでの受け入れが進んできておりますけれども、それによってデメリットが起こることのないように、また何か特に大きな問題等がございましたらその対応方について全力を尽くしたいと考えているところでございます。
  175. 風間昶

    ○風間昶君 まさに今お話しいただいたように、アジアとの関係の緊密化で、殊に私費留学生がふえてきて、その受け入れ体制の問題でありますけれども、北海道もロシアから日本語を学びたいという方がいらっしゃって、その受け入れに対して、留学生の入国に当たっての保証人の提出する書類がとにかく七つか八つぐらいあってその手続が面倒で、一回やると次はもう受け入れたくないという声も実際にありましたものですから、もうちょっと、アメリカだと例えば公立小学校に入るのに予防接種を受けてきたかどうかというぐらいしかないところも実はあるわけで、日本人が向こうに行ったときの向こうの受け入れ体制はいかにも簡素で合理的なわけであります。  もちろん、法治国家日本としてやらなきゃならない、守らなきゃならないことはありますが、余りにもハードルが多いということを考えますと、法務省と協議した上でもう少しこの受け入れの障害になっていることを簡素化することはできないのか。そういう意味文部省のスタンスをちょっとお伺いしたい。
  176. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) お答え申し上げます。  日本日本語の勉強をしにやってくる就学生が来日するに当たりましては、経済面で安定的に学業を遂行することを保証する身元保証人が必要となっております。この身元保証人に関しましてどんな書類が必要かということは、具体的には法務省の地方入国管理局で定めているところでございます。  文部省といたしましては、就学生の適正な受け入れについて法務省と御協力しながら、日本教育振興協会を通じて各日本語学校を指導しているわけでございますが、御指摘の身元保証人に関する必要書類の簡素化につきましては、真に日本語を学ぼうということでやってくる就学生については積極的に受け入れるという観点から、法務省に対しましてその提出書類の簡素化についての検討方を求めていきたいというふうに考えております。
  177. 風間昶

    ○風間昶君 また来たいという就学生及びまた受け入れたいという保証人の気持ちをぜひ察してあげて、強力なプッシュを法務省にお願いしていっていただきたいと思います。そういう意味でやつばり日本教育の、文化のバロメーターがはかられているわけでありますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  大学などの高等教育機関の入学資格について次に伺いたいんですけれども、もちろん十八歳以上で入学者の資格が日本国内でもあるわけですけれども国民との平等を図るという観点でも不可欠だと思いますが、六三三制の十二年間の普通教育を修了しているということを要件にすると、ヨーロッパの一部だとかロシアなど、十一年制あるいは十年制の国からの留学生を事実上規制することになって好ましくないのではないかというふうに思います。  学力の認定については、財団法人国際学友会の日本語学校に通っていれば十二年間の教育課程を終えたとみなす制度があるようですけれども、それはそれで大変大事なわけですが、その学校が東京と大阪しかないというのはいかにも貧しいなと。留学生の集中を招く傾向もあるし、均衡ある国土軸という観点からいくと、この際私は日本語学校の分校を札幌、名古屋、福岡ぐらいまでには設置するぐらいの、あるいは新設が難しいとするならば既存の日本語学校をきちっと審査された上で受託機関として指定していくような、海外留学生あるいは就学生に対して門戸を開いていくべきじゃないかというふうに思いますが、文部省の方の御意見と、門戸拡大の必要性について文部大臣にもお伺いしたいと思います。
  178. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり外国は教育制度がさまざまでございますが、大学に入るまでの年限としては我が国と同様十二年というところにだんだん収束されてきつつございます。ただ、それがまだ十一年とかいう国もマレーシア等あることは事実でございますが、例えばマレーシアについて申し上げますと、あそこは高校卒業まで十一年でございますが、その後に二年間でしたか、大学に入る予科というものがございます。この大学予科まで行ってそれから日本の学部に留学するといったような格好で、そういたしますと、もう十二年以上の教育を受けておりますので日本の大学に入る資格があるわけでございます。  というような格好で、現在のところ余り大きな摩擦は起きていないわけですが、しかし十二年未満で来日をされる方も少数ございます。このような方につきましては、特に私費留学生の関係で申し上げますと、東京にございます国際学友会の日本語学校及び関西にございます関西国際学友会日本語学校で一年あるいは一年半の日本語のコースをとりますと、その年数がカウントされて、本国では十一年しかやってなくても十二年やったというふうにカウントされるわけでございます。  このような状況でございますが、現在、十二年に満たない学校教育の課程がとられている国から両日本語学校への留学生が参っているその数は約三十名程度でございまして、両校の受け入れの入学定員を合わせますと四百名を超えるという状況でございますので、当面この二校で需要に対応できるというふうに私ども考えております。  なお、しかしながらそうは申しましても、これらの留学生はこのどちらかの日本語学校に行くしかないわけでございますので、この国際学友会に対しましては、こういった留学生については厚い配慮を払うようこれまでもお願いしてきましたが、今後ともお願いしてまいりたいというふうに思っております。
  179. 風間昶

    ○風間昶君 文部大臣いかがでしょうか。
  180. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 大学に入学する資格につきましては、やはり日本制度は十二年間の教育を経てからということが制度の根幹でございまして、それを崩すわけにはまいらないわけでございます。  ただし、十一年間の就学期間の方も、日本に参りまして一年間日本語の勉強をすればそれで当然大学の入学資格を取れるわけでございますので、そういう道を選ぶこともできますし、また国際的にはインターナショナルバカロレアという大学入学資格制度もございますので、その方々は就学年限が十年だろうと十一年であろうとインターナショナルバカロレアの資格を持っておられる限り十八歳になりますと大学に入学できるわけでございますから、いろいろな道がございます。それぞれの最も適切な道を選んで、日本の大学に御入学をいただければと思っております。
  181. 風間昶

    ○風間昶君 ありがとうございます。  これからまた、僕は、日本語を習得してそして自国に帰って役に立ちたいという人が出てくるんじゃないかと思いますので、ぜひこれまでの制度を生かし、なおかつ門戸拡大に努力していただきたいと思います。  以上で質問を終わらせていただきます。
  182. 島袋宗康

    島袋宗康君 二院クラブの島袋宗康でございます。  本日は九月一日の防災の日でございます。緊急に防災体制についてお尋ねしたいと思います。  先日、台風十三号、十六号が相次いで沖縄の先島地方に襲来したわけでありますけれども、その被害は甚大なものがあります。その被災見舞いと視察のために先日沖縄の最西端の与那国島に行ってまいりました。  今回の十三号台風は与那国島でも直撃を受けまして、実はその正確な最大風速はわかってないと。といいますのも、風速計が七十二メートルで故障していたからでございます。一番大事なときに役に立たない観測機器には問題があるのではないか。同様な事態は、昨年の久米島を襲った台風十三号でも同じようなことが起こったわけでございます。これは偶然かどうかわかりませんが、石垣島の於茂登山頂というところがありますけれども、運用を開始したばかりのそこの最新型の気象観測レーダーも全く同じ日にいわゆるトラブルが発生しているというふうな状況が地元の新聞報道でなされております。  もしそういったものが実態であるとするならば、これは防災対策上大きな問題があるんではないかというふうなことで、私はその原因とそして復旧状況それからその対策についてどういうことになっているか、ひとつその辺からお聞きしてまいりたいと思います。よろしくお願いします。
  183. 椎野純一

    説明員(椎野純一君) お答え申し上げます。  与那国島測候所の風向風速計は、平成六年八月七日二十二時五十分ごろ故障いたしましたけれども、八月九日十三時五十分に復旧いたしました。故障いたしました機器には外観上の破損というものはございませんでしたけれども、電気系統に何らかの異常が発生したものと推定いたしております。  また、先生指摘ございました石垣島気象レーダーにつきましては、平成六年八月七日七時十三分に故障が発生いたしまして、八月十一日十八時に復旧いたしました。この故障は気象台内にありますデータ処理装置のディスクの故障によるものでございまして、台風十三号の影響によるものではございません。  それから、対策について御指摘をいただいたわけでございますけれども、気象庁におきましては、昭和五十五年、一九八〇年から整備を開始いたしました八〇型地上気象観測装置を全国の気象官署で使用してきておりますけれども、一昨年までこのような故障は起こっておりませんでした。昨年発生をいたしました久米島測候所の風向風速計の故障につきましては、その原因を特定することはできませんでしたけれども、風速計の感部に水が入ることによりまして電気系統に何らかの異常が発生したものと推定されましたので、全国の気象官署に対しまして十分な防水措置をするよう指示をしていたところでございます。  これらの故障につきましては、最終的に現在のところ原因が特定されておりませんで、引き続き十分な調査、原因究明を行うことといたしております。
  184. 島袋宗康

    島袋宗康君 風速計が七十・二メートルで記録されて、それ以上は風速計が機能していないというふうなことを聞いておるんです。何かあなたの答弁によると、前々日ですか、復旧はしたというふうなことですけれども、復旧したというのは、実際は風が吹いて七十・二メートルで故障しているというふうなことなんですけれども、その辺はどうなんですか。
  185. 椎野純一

    説明員(椎野純一君) お答え申し上げます。  昨年の久米島測候所のトラブルにつきましては、その後感部を交換いたしまして復旧をさせました。
  186. 島袋宗康

    島袋宗康君 いや、久米島はいいんです。与那国島はどうなのか。
  187. 椎野純一

    説明員(椎野純一君) 与那国島でございますね。その件につきましては、沖縄気象台が持っております予備機を使いまして感部を交換することによって復旧をさせたところでございます。  なお、原因については、先ほど申し上げましたとおり、現在原因を究明中というところでございます。
  188. 島袋宗康

    島袋宗康君 その観測機器は瞬間最大風速が九十メートルまで観測できるというふうなことでございましたけれども、七十・二メートルで故障したというふうなことが風によるものではない、風速によるものではないということが言えるわけですか。どうなんですか。
  189. 椎野純一

    説明員(椎野純一君) お答え申し上げます。  先生指摘がありましたように、気象庁で使用いたしております風向風速計につきましてはきちんと検定を経たものを使っているわけでございますけれども、九十メートルという風は、気象庁が持っております風洞を使いまして、その風に十分耐えられることを確認しているわけでございますが、実際の現象に当たりましては風のほかに雨とかあるいは強風に伴いますダストとでも申しましょうか、そういったものが入っているわけでございます。そういうような状況のもとで十分テストができるという状況にはなってございませんので、そういうことが、つまり雨でありますとかそのほかのちりとかそういうものが影響を与えたのではないかという感じがいたしまして、その辺のところにつきまして現在鋭意原因を究明しているところでございます。
  190. 島袋宗康

    島袋宗康君 時間がありませんので前に進みますけれども、どうぞその九十メートルに耐えられるような気象観測ができるように、風速計が機能するようにぜひひとつ努力していただきたいというふうに要望しておきます。  文化庁長官にお伺いします。  沖縄県では御承知のとおり、琉球の国劇と言われる組踊り保存のために国立劇場の誘致構想が持ち上がっております。沖縄はさきの大戦で余りにも多くの遺産を失ってまいったわけでありますけれども、幸いにして芸能文化という無形の遺産までは失うことなく、むしろ戦後の荒廃した国土の復興はこれらの芸能文化を糧に行われてきたという自負の事実がございます。  組踊りは復帰の時点で国の重要文化財に指定されたわけでございますが、実際にはその保存振興策は進んでいないのが現状でございます。最近の地元紙の報道によりますと、ようやく文化庁も、予算的な難問を抱えながら、この組踊りへの理解を全国的に広めるために来年度の概算要求に組踊りの特別鑑賞会開催予算を計上する意向とのことでございます。  そこで、文化庁長官にお伺いします。  今回の概算要求が、文化庁の組踊り劇場設置に向けての決意をあらわすものとして理解していいのかどうか。現在、この県民悲願の事業がいよいよ設置へ向けて進行し始めたというふうに理解していいのかどうかを承っておきたいと思います。
  191. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 先生指摘の組踊りについてでございますけれども、御指摘のように、昭和四十七年に早くも重要無形文化財として指定をいたしまして、その保護に必要な活動を援助してきておるところでございます。  平成二年までは伝承者の養成事業といたしまして三百五十万円の補助を出しておったわけでございますけれども平成三年にこれを充実いたしまして五百二十五万円というような形で増額を図っておりますし、今御指摘のございましたように、来年度の概算要求におきまして、これまでやられておりませんでした組踊りを沖縄県以外の地域で鑑賞していただいて、多くの人に組踊りの重要性というものを知っていただく機会をつくろうということで、新たな予算要求を考えておるところでございます。  これらの活動を通じまして、組踊りの伝承活動が一層充実をされるように努力をしていきたいと考えておるところでございますけれども、御指摘の国立の組踊り劇場につきましては、まだ私どもいろんな制約がございまして具体的な検討までには至っていないという状況ではございます。このような伝承活動を応援することによりまして、組踊りが重要な伝統芸能として残され、引き継がれていくように努力をしていきたいと考えておるところでございます。
  192. 島袋宗康

    島袋宗康君 国立劇場という県の要請に対して、文化庁としてはまだそこまでは考えておられないというふうなことでございますけれども、やはり無形文化財として国が指定しております。そういう意味もありまして、専用劇場というものがどうしても必要じゃないかということでございます。  伝承者の育成などの面において、能や歌舞伎、あるいは文楽などに比べて沖縄のこの組踊りは著しく立ちおくれているというのが指摘されているわけでございます。沖縄県はこの問題について非常に熱心にかかわっておりまして、関係省庁に対してその陳情、要請を行っていると思います。そこで、誘致のための基本構想まで発表をしているわけでございます。その構想をごらんになって、所管官庁としての御感想、現時点での課題などについてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  193. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 先生指摘のように、かねてから沖縄県などから、沖縄に国立の組踊り劇場を設置してほしいという要望が出されておりますわけでございます。地元沖縄県内におきまして伝統芸能に関する関心の高まりのあらわれと私どもとしても受けとめておるわけでございますし、その意味での御趣旨は理解させていただいているつもりではございますけれども、国立の文化施設の設置につきましては、実は大変全国から多様な要望が出されておるというふうな状況もございます。また、現下の厳しい財政状況というようなことにかんがみまして、現段階で具体的な検討ということはまだまだ難しいというのが偽らざる正直なところでございます。
  194. 島袋宗康

    島袋宗康君 文部大臣、今の文化庁のお答えについて文部大臣としてどうお考えですか。
  195. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生の御熱意は十分私は理解をさせていただきました。  組踊りは重要無形文化財として位置づけられておりますが、その本拠が沖縄県であるという地理的な遠隔性から県外での公開の機会が少ないのが現状でございます。そこで、組踊りを特別鑑賞会として日本各地で実施、広く一般への公開を図るとともに、文化財の保存と活用に資するよう今年度概算要求をしたところでございます。  国立組踊り劇場の設置につきましては、現在、沖縄の伝統芸能の保護に関し、沖縄開発庁、沖縄県教育委員会との連絡協議の場を設けているところでございまして、その中で国立組踊り劇場の設置に関しても検討課題一つとして取り上げ、引き続き研究調査を行っていく所存でございます。
  196. 島袋宗康

    島袋宗康君 この問題について、沖縄開発庁、とりわけ第三次振計との関連でどういうふうに位置づけられるのか、現在、文化庁及び沖縄県側をどのようにパックアップしていかれるおつもりなのか、今後どのようにお取り組みされるのかというふうなことについて、沖縄開発庁、よろしくお願いします。
  197. 平井全

    説明員(平井全君) 沖縄開発庁におきましては、沖縄の貴重な伝統芸能を保存継承していくというのは極めて重要な課題だというふうに認識しておるところでございますが、先生の御指摘の組踊りにつきましても、第三次沖縄振興開発計画の中におきましても組踊り等伝統芸能の上演施設の整備を進めることというふうに規定をされていることもありまして、この問題につきましては私どもといたしましてもかねてより大きな関心を持ってきたところでございます。  そういうこともありまして、これまで沖縄開発庁では、昭和六十三年から文化庁それから沖縄県と三者で連絡協議の場を設けまして、組踊りを初めとする沖縄の伝統芸能全般について、その保護のあり方について検討をいたしてきております。また、平成元年からは沖縄開発庁に調査費を計上いたしまして、そこで沖縄の伝統芸能について調査を、これは具体的には文化庁の方に委託をいたしまして実施をしてきておるわけでございます。  それで、国立劇場をどうするかという問題でございますけれども、この問題につきましては、当庁といたしましてはこれは直接の所管官庁ではございませんので、この点についてその設置の可否等についてとやかく申し上げる立場にはないわけでございますが、いずれにいたしましても、今後とも所管庁であります文化庁あるいは沖縄県の方と十分に連絡をとり、また相談をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  198. 島袋宗康

    島袋宗康君 時間ですので終わります。
  199. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 まず文部大臣お尋ねいたしますが、聴覚障害者にとって意思伝達手段としてファクスというのは不可欠なものです。聴覚障害者の家庭には必ずファクスがあります。ところが、札幌では驚くべきことに小中学校に一校もファクスが設置されておりません。ことしの冬、札幌でこんな事件がありました。  猛吹雪のために学校が休校になりました。連絡網で休校の連絡が入ったのですが、共働きの家庭で両親は既に出勤をしていた。残っていたのは聴覚障害の子供なんですね。その子が直接電話の連絡を受けた。理解できないまま学校に登校してしまったんです。余りの吹雪でお母さんが心配の余り連絡をとって、そして子供を捜すなどしたために辛うじて子供は人命にかかわる事故には至らなかったんですけれども、札幌では猛吹雪のために休校になるということは本当によくあることなんですね。学校にファクスさえあればこんなことにはならなかった。札幌では小中学校の三分の一が子供か親かいずれかが聴覚障害を持つ家庭なんです。校長先生も、障害者、障害児の家庭では本当にコミュニケーションが全くとれず大変だと、もう現場の先生は必死なんですね。  何より障害児が教育を平等に受けるという立場から、障害児や親が障害者という家庭には優先的にファクスをつける、学校にファクスをつけるという指導をぜひやっていただきたいと思います。
  200. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) いろいろな通信手段のうち、最近目覚ましい普及をしておりますファクスというのは大変便利なものでございますし、ある意味では、先生が御指摘されたような場合に大変有効な通信手段であるということは、私は先生の御指摘のとおりであると思っております。  具体的にファクスを設置するかどうかということは、それぞれ学校を所管する地方自治体あるいは教育委員会等の、あるいは学校自体の御判断によるところでございますが、文部省としては、学校において使って非常に便利な事務機器というもののリストをつくりまして、そういうもののリストを各都道府県等にお渡ししてございます。  具体的な判断はそれぞれの責任者にやっていただくわけでございますが、そういうものに対する財源、地方交付税等も準備をいたしまして、学校の事務等が近代的なものに進んでいくということは大変望ましいことだというふうに考えております。
  201. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 大臣、私、一般的にこの事務機が便利なものであるという立場でお話ししたのではなくて、こういう聴覚障害の子供や親がいる家庭では、もうこれが唯一と言っていい手段なんです。ですから、こういう人命が失われなければ措置がされないというような事態になってはならないということで、ぜひ文部大臣、政治家の立場で、文部省として本当に検討する、指導するという立場でやっていただきたいと思うんですが、一言お願いします。
  202. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 大変御熱意のある御意見でございますので、早速その事例をよく調査して、そういうことが可能かどうかということも含めましてきちんと検討して、後ほど先生の方にお知らせを申し上げたいと思います。
  203. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 ぜひ設置の方向でお願いいたします。  次に、免許外教科担任の問題ですが、免許を持っていない先生が授業を教えると。現場の先生とも懇談いたしましたが、本当に大変な問題で、自分は社会の専門ではないが一生懸命やりたい、わからないときは聞いてほしいと最初に生徒におわびをして授業を始める。一年終わって今度は免許を持っている授業を持てるかと思ったら、また免許外の数学を教えなきゃならなかったと。教える先生も大変なんですけれども、私は教えられる子供たちはもっと大変だというふうに思うんですね。  今、授業がわからない、ついていけない、落ちこぼれという問題が父母の胸を痛めています。中学時代というのは、特に学問への興味とか専門的に学ぶ喜びを育てる人生の大切な時期だと思います。免許を持たない先生に不十分なまま教えられては、時には授業がわからず、興味を失っていくということになると、もう一生の問題になると思うんですね。  だから、これは社会的な問題だと私は思うんですが、免許外教科担任というのは本来あってはならないもので、これは例外的措置ですね。
  204. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答えいたします。  学校におきましては、それぞれの教科についての免許状を有する教員による充実した教育を行うこととなっていることは先生指摘のとおりでございます。しかし、僻地等におきます小規模な中学校、高等学校等におきましては、ある教科についての免許状を有する教員を採用、配置することが困難な場合もございます。このため当分の間の措置として、都道府県教育委員会が当該教科についての免許状を有しない教諭が当該教科を担任することを許可することができることとなっているわけでございます。  免許外教科担任が生ずる理由といたしましては、ただいま申し上げましたように、僻地等における小規模校が少なくないこと、ベビーブーム時の急激な教員増の影響等によりまして教科別に必要な教員と現員とに乖離があることや、平成四年九月に行われました総務庁の行政監察においても指摘されておりますように、各学校で教員の持ち時間の調整が行われているところがあることなどが考えられるところでございます。  このため文部省では、いわゆる標準法に基づきまして数次にわたる年次計画によって教職員定数の計画的改善を図っておりまして、その中で免許外教科担任の解消にも配慮してきているところでございます。また、各都道府県・指定都市教育委員会に対しましては、各学校のカリキュラムに沿って必要な教員の採用及び配置を行うこと、各学校におきましては、単に持ち時間調整のために免許外教科を担任させることがないようにすることなどを指導してきているところでございます。  さらに、平成六年度からは新たに中学校非常勤講師配置調査研究補助事業を創設いたしまして、各都道府県が免許外教科担任を解消するための非常勤講師を小規模の中学校に配置いたしまして教科指導上の改善効果や学校運営に対する影響等について実証的な調査研究を行うために要する経費の一部を補助することとしているところでございます。これらの施策や指導の結果、平成六年度におきます公立中学校の免許外教科担任の許可件数は、前年度に比べますと約二割ほど減少いたしまして、約三万六百件となっているところでございます。  文部省といたしましては、平成七年度の概算要求におきましても、中学校の非常勤講師配置調査研究補助事業を拡充するための経費を要求するとともに、持ち時間調整のために免許外教科担任を行わないようにすることなど、各都道府県に対する指導を一層徹底して免許外教科担任の解消に向けた取り組みをしていきたいと考えております。
  205. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 いろいろ言われましたが、この免許外教員というのは、小規模校など真にやむを得ない場合を除いては、これは本来あるべき姿ではないという認識が前提でのこれまでの指導であるというふうに伺ってよろしいわけですね。
  206. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答えいたします。  この免許法の附則の規定は当分の間の措置でございまして、経過的な規定というように認識しておりますので、先ほど申し上げましたいろいろな施策によって免許外教科担任教員の解消を進めているところでございます。
  207. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 そこで、今免許外教科担任が平成六年度で三万六百五十一人と減ったということですが、ずっと四万人ということで横ばいが続いて、平成六年度でやっと九千入減ったということです。しかし、五十九年から平成五年の間に公立中学で生徒は約百万人も減少しているので、いわば免許外の先生が減っていくというのは当然のことなんですね。  これから平成十年まで見ると、合計で生徒が四十八万人やっぱり減っていくんですね。本来あるべき姿ではないし、これは根本的に解消していかなければならないわけで、平成七年度以降もこの平成六年度のテンポと同じように一万入減という形で解消していくべきだと思いますが、いかがですか。結論だけお願いいたします。
  208. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のように、私どもとしても各般の施策を講じましてそういう努力をしておるところでございまして、各都道府県教育委員会、指定都市教育委員会におきましても、そのように免許外教科担任を解消することによって児童生徒がわかる授業が展開されるように私どもも積極的な推進を図っていきたいと思っております。
  209. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 ペースです、どうですか。
  210. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) その減少のペースは各都道府県・指定都市教育委員会の御努力にまつところでございますので、私どもとしては各都道府県教育委員会の御努力をまちながら、なお国として適切な指導をしてまいりたいと考えております。
  211. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 生徒は減っていっているわけですから、これは一万人のペースということでぜひやっていただきたいと思います。  次に司書教諭の問題ですけれども、子供たちの読書離れが進んでいると。学校に図書室があるのにかぎがかかって入れない、あるいは図書室はあいているけれどもだれもいないので困るんだという学校図書館をめぐる問題は深刻なんです。  私も北海道の図書館協議会の吉田副会長、薮田理事長、それぞれ学校の校長先生をされていますが、いろいろお話を伺いました。いい本に接するため、あるいは特に小学生にとってはいろいろ調べ物をするときの方法論を身につけるためにも司書教諭というのはどうしても必要だということで、しかしその発令状況というのは平成四年度で全国で百六十二名、〇・二%というこんな程度なんです。  なぜこれが続くかという最大の原因は、学図法で司書教諭を置かなければならないとされながら、附則で「当分の間」置かないことができるということで、これが四十年も続いているわけです。この当分の間というのは一体どのぐらいだったんでしょうか。理由は結構ですから、結論だけお願いいたします。
  212. 野崎弘

    説明員(野崎弘君) お答えを申し上げます。  学校図書館法の附則で「当分の間」があるから設置が進まないというふうには私ども考えていないわけでございまして、私どもも司書教諭の有資格者の養成とその発令の促進ということで努力をしているわけでございますけれども、いろいろな事情の中でこの司書教諭の配置が進まない、そういうことでございます。  当分の間がいつまでかということはなかなかお答えできないわけでございますけれども、私どもとしては、司書教諭の有資格者の養成、そして発令の促進ということでさらに努力を続けていきたい、このように思っております。
  213. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 今の答弁は私は全く無責任だというふうに言わざるを得ないと思うんですね。  私は、昭和二十八年の法案が提出された審議のときから今日までの司書教諭に関する会議録、資料を全部調べてみましたけれども、それを見て驚いたんです。文部省は、法制定当時の昭和二十八年八月二十三日の文部広報で、私ここに持っておりますけれども事務的にはほぼ十年間で計画、それから昭和二十八年の十一月にも学校図書館時報で計画としては十年を予定とはっきり答えているんです。昭和二十八年の国会答弁でも、司書教諭の職務を完全になし遂げますには、増加数を見込んで四万五千人に上る司書教諭を養成しなければならない、十年間にわたり一年間に四千五百人に対し講習する腹案と、こう述べて、当分の間というのは十年であるということはもう明白なんです。  ところが、十年と言いながらもう四十年以上も放置されている。しかも、この間、文部省国会で繰り返し努力したい努力したいと答弁をされている。しかし、いまだに進展がないということです。昭和三十八年にやはりこれ国会議論された際のその当時の司書教諭の数は百八十六名なんです。今は百六十二名ですよ。三十年前より後退しているというのが現実の姿で、私は大変驚いています。  早急にこの司書教諭の配置について対策を講ずるべきだというふうに考えますけれども大臣いかがでしょうか。
  214. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 人員を確保するというのは、そうなかなか容易なことではございません。これは国、地方を通じまして定員の問題もございますし、また予算措置の問題もございます。先生のお気持ちは十分わかりますが、なかなか現実にはそううまく対応できないというのが実情でございます。
  215. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 これは、充足のために文部省としては引き続き努力するということはぜひやっていただきたいと思いますが、その点はいかがですか、大臣
  216. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 努力はいたしますが、なかなか難しい問題を含んでいると思います。
  217. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 これは時間がありませんので、またやりとりしたいと思いますが、子供たちにとっては本当に重大な問題で、私は社会的な問題だと思いますので、この点はぜひよろしくお願いしたいと思います。  それから、次に養護教諭の問題ですけれども、この重要性は言うまでもありません。平成五年度から三十学級以上の大規模校に複数配置で一歩前進したんですけれども、この六カ年計画で、平成十年度には三十学級以上の大規模校は六百四十校と見込んでいるわけですが、一方で大規模校に複数配置をしながら、他方、過大規模校というのは解消するというのが文部省方針なんです。三十学級以上の大規模校は、昭和六十年度で小中千九百九十一校が平成五年度で小中六百十校と、千三百八十一校も激減をしています。毎年平均百七十校ずつ減少しているわけで、これで推移すると約三年で大規模校はなくなるわけです。児童数はどんどん減っていって、平成十年までに百五十九万人も減少するということで、平成十年度を待たずにこの三十学級以上の大規模校というのはなくなってしまうわけです。  ですから、平成十年度を待たず、三十学級以上の大規模校がなくなった場合には、その対象を二十八、二十七と拡大していただきたいというふうに思いますが、この点いかがですか。簡単にお答えいただきたい。
  218. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  御指摘の三十学級以上の学校におきましては、平成四年度までの各校一名配置では応急手当てや保健指導にも十分な対応ができにくいという実情にかんがみまして、平成五年度を初年度とする第六次の公立義務教育諸学校の教職員配置改善計画で、新たに三十学級以上の学校に養護教諭の複数配置を行うこととしたところでございまして、先生指摘のとおりでございます。  そこで、私どもとしては、三十学級以上の学校については、先ほど先生からお話があったとおり、現在六百十校ということになっているわけでございますが、全国的に児童生徒数が毎年三十万人ないし三十七万人程度減少していくということもございますが、学校の学級数につきましては児童生徒数を算定の基礎にしてそれぞれ定められているわけでございますので、一概に十年までにすべてなくなるというようには考えておりませんで、その学級数に応じて私どもとして標準法に基づいて養護教諭の配置については十分適切に対応していきたいと考えているところでございます。
  219. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 官房長官一言アイヌ新法について伺いますが、私は当事者であるウタリ協会ともっと突っ込んだ協議をするのが不可欠だと思うんですね。アイヌ新法制定を積極的に進めるために大臣みずからが労をとって、正規の協議という形でテーブルをつくって、大臣もそこに参加して、直接入って、定期的に協議を進めていくということが私は事態を打開する上でも大事だと思いますので、その点、ぜひ大臣の決意も含めて一言お願いいたします。
  220. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) ウタリ協会等の御意見は、今までもいろいろ機会あるごとにいただいてきているところでありますが、これからまた特に大事な時期になってまいりますので、そういう機会を持たせていただきながらしっかり御意見をいただいていきたい、こういうぐあいに思います。
  221. 翫正敏

    ○翫正敏君 翫正敏です。  PKO本部の副本部長である五十嵐官房長官にルワンダへのPKOの派遣の問題について質問いたします。  報告書がことしの八月十一日付のと八月三十一日付、きのうと二つ出されております。この内容を私も読みましたが、官房長官としてお読みになって、どの辺のところがポイントというふうにお受け取りになったか、簡単に御説明ください。
  222. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) お答え申し上げます。  実務調査団の報告のポイントは何かという点でございますので、技術的な点でもございますので、まず私の方から御説明させていただきます。  実務調査団は、八月二十二日に東京を立ちまして、三十日に戻ってまいりまして、昨日報告を行ったわけでございます。  まず、現地における惨状というものは引き続きある、それからニーズも引き続きあるということでございまして、これに対応し得るのは、現地の情勢が非常に厳しいので、第一次調査団の報告と同様、やはり自己完結性の点ですぐれている自衛隊の組織でなければならぬということでございます。  それから、業務の分野につきましては、UNHCR等からも要請が来ておりますように、医療、給水、それから防疫、疫病の防止でございますが、それと空輸等の分野が適切である。それからまた、派遣規模につきましては、やはり自己完結性を有する中隊以上の規模の部隊が必要であろう。中隊というのは最低二百名ぐらいなんだそうでございますけれども、そういう提言もございます。  それから、派遣期間につきましては、UNHCRの緒方高等弁務官は、御承知のとおり、六カ月ぐらいはということを言っておられるわけでございますけれども、それを踏まえて考える必要があるし、同時に現地のニーズ、それから現地の情勢が今後どういうふうに動いていくかというようなこともあわせて考えながら決定すべきであろうということでございますが、あわせまして、派遣後の現地の治安状況等を見きわめながら柔軟に対応する必要があるであろうということも言い添えてございます。  それから、派遣地域につきましては、ザイールの東の端のゴマ、これを中心にすべきであろうけれども、同時に、後方から支援をするためにはケニアのナイロビにも拠点を設ける必要があるんではないだろうかということでございます。  それから、国際平和協力法との関係につきましては……
  223. 翫正敏

    ○翫正敏君 それは聞いてない。それはいいです。
  224. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) そうですが。  あと、要員の安全のために護身用の武器はやはり携行すべきであるということも書いてございますのでつけ加えさせていただきます。
  225. 翫正敏

    ○翫正敏君 きのう出ましたもののまとめのところには、「自衛隊部隊を中核とする国際平和協力隊を派遣し」と、官房長官、こういうふうに書いてあるんですが、カンボジアの場合ですと、自衛隊の部隊が六百人施設隊として出まして、そのほかに平和協力隊ということで警察官が七十五人と自衛官が八人でつくって行ったわけなんですけれども、今度のこの報告書に書かれている自衛隊部隊を中核とする国際平和協力隊という意味は、カンボジアの場合はいわゆる国際平和協力業務でありますし、今度の場合は人道的な援助ということで法律の項目が違いますが、ここに書いてある意味はどんなふうに受けとめておけばよろしいんでしょうか。
  226. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) お答え申し上げます。  昨日発表されました報告書の中にもございますけれども、自衛隊の部隊が派遣されるということにもしなった場合の話でございますが、今回の派遣というものは、国連PKOではございませんで、国際平和協力法の中に第二番目の柱として書いてございます人道的国際救援活動ということ。その場合には、UNHCRが全体を見てはおりますけれども、各国から出てまいります部隊とかあるいはNGOとか、それからその現地に展開しております他の国際機関との間で日常的に細かいすり合わせをしないとなかなか業務がうまく運ばないだろうということで、この報告の中にもございますように、連絡調整のためにいわゆるシビリアンと申しますか、文民の要員を出す必要があるだろう、そういうことを踏まえてその中核とするというふうになっているというふうに承知しております。
  227. 翫正敏

    ○翫正敏君 じゃ、要するに、法で言うところの「防衛庁長官は、」何々ということで「自衛隊の部隊等に国際平和協力業務を行わせることができる。」というこの項目によっていると。一方のところでは、防衛庁長官は期間を定めて自衛隊員を平和協力隊に派遣することができるという二つの項目がありますが、この両方とも行われる、こういうことですか。前者で、つまり自衛隊の部隊が派遣されて部隊として行う、こういう理解でいいんですか。
  228. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) お答え申し上げます。  自衛隊の部隊につきましては、今御指摘ございましたこの第九条の第四項に「防衛庁長官は、」「自衛隊の部隊等に国際平和協力業務を行わせることができる。」と、これであることは間違いございません。  それから、先ほど申しましたシビリアン、これはいわゆる個人派遣ということになりますので本部長たる総理に任命されて個人として行くということになろうかと思いますが、いずれにいたしましても、その辺はまだ一切決まっておりませんので仮定の話でございます。
  229. 翫正敏

    ○翫正敏君 紛争が停戦合意されているということがこの派遣の条件にもちろんなるわけなんですけれども、このルワンダにおける紛争の当事者というものを特定していただいて、この武力紛争の停止の合意というものがどんな内容でなされているのかということを説明してください。
  230. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) 御質問の点でございますけれども、確かにことしの四月以来七月にかけてルワンダ国内でいわゆる内戦がございました。ウガンダの方から入ってまいりましたいわゆる愛国戦線と、それからそれまで政府軍であった、いわゆるフツ族中心の政権でございますね、それの軍隊との間で内戦がございましたけれども、ただいま国際平和協力業務を行う地域として考えられておりますのは、今回の報告書でも明らかなようにザイール国内でございまして、ルワンダは対象になっておりません。
  231. 翫正敏

    ○翫正敏君 きのう出ました報告書の中には、ルワンダ国内の状況を見詰めつつ、輸送業務等の一環としてキガリ空港、キガリ空港というのはルワンダにあるんじゃないですか、その使用及びルワンダ国内通過について可能性を検討するというふうに書いてありますから、行くという前提でこれは書かれているんじゃないんですか。書いてあることを読んでいるんですよ。思いつきで言っているんじゃないんですよ。
  232. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) お答え申し上げます。  御指摘のとおり、今般の報告書の中にはそういう記述がございますが、そのことの意味は、まずその国際的な支援活動の中心が徐々にルワンダの首都であるキガリに移行しつつあるということと、それから各種の国際機関等からはキガリにおいても、キガリというかルワンダの国内においても各国と肩を並べて支援活動に参加してもらえないかという要望もあることはあるわけでございます。  ですから、将来の問題といたしまして、先ほど申しましたようについこの間までは内戦があったわけですけれども、現在はもう内戦そのものは片づいておりますが、しかし紛争は終息したという認識に至るならば、その場合には確かに需要もあることでございますから、ルワンダ国内というものも視野に入れなければならないこともあり得るからそのことも検討の課題とはすべきであると、こういう意味で記述されているものと承知しております。
  233. 翫正敏

    ○翫正敏君 ルワンダ国内の方は、一ページ目のところに、旧政府軍兵士が軍事訓練を行っている情報があるとか銃撃戦が行われているのを見たとかというような報告がなされていて、この停戦の合意が完全に守られているという状況では必ずしもないという報告書の内容だと思いますから、現時点ではこの国内でのPKO活動は、国連としてはともかくとして、我が国としてはそこへは派遣できないと、こんなふうに受けとめておいてよろしいですか。それをちょっと官房長官の方で。
  234. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) 今おっしゃいました一ページ目の記述でございますけれども、ここで暴力行為が行われている、あるいは軍事訓練が行われているという記述はいずれもザイールの国内の話でございまして、ゴマとかブカブとかそういうところの話でございまして、私どもが聞いております限りでは、現時点でルワンダ国内においては既に武力の対立という、武力衝突ということ自体はもう終わっているというふうに承知しております。
  235. 翫正敏

    ○翫正敏君 じゃ、ルワンダも行けるわけですね、派遣できるわけですね。
  236. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) そこは今後さらに見きわめないといかぬという感じを有しておるわけでございまして、なぜかと申しますと、ついこの間までは明らかに内戦が行われていた地域でございますので、今衝突が現実に起こっていないといっても、もう少し見きわめる必要があるのではないかという感じを有しております。
  237. 翫正敏

    ○翫正敏君 官房長官、現時点ではいかがですか。
  238. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 現時点ではルワンダは対象にしない。今のは将来のさまざまな予想される可能性についてのことであろうというように思います。
  239. 翫正敏

    ○翫正敏君 そうすると、新聞などの報道では、派遣される人たちが機関銃を持っていくというようなことが、これは新聞の報道ですが、書いてある。そういう可能性があるというようなことが書いてありました。機関銃なんかでありますと、これを見ますと、自衛隊の持っている機関銃は六二式七・六二ミリというので、全長一千二百ミリあって、重量が十・七キロあって、そして発射速度が六百五十発一分間に飛ばすことができると、こういう能力のある機関銃を自衛隊は持っているわけです。それから六四式小銃というものは、これもまた自衛官それぞれ一人ずつ持っているわけです。  この機関銃とか、それから自衛官が普通に持っております小銃ですけれども、こういうものを持ってそして出かけていくというような事態は現時点では想定していないと。新聞の報道にはそういうふうにありますが、それはないと、こういう理解でよろしいでしょうか。
  240. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) お答え申し上げます。  いずれにいたしましても、九月四日から連立与党議員調査団が現地を調査に行かれて、十一日に帰ってこられる予定でございますけれども、その議員調査団の結論もあわせた上で政府としての最終決定をしようということでございますので、現時点においては、武器の問題ももちろんそうですが、その他の点につきましても最終的なことは何も決まっておりません。
  241. 翫正敏

    ○翫正敏君 官房長官機関銃を所持していくというような新聞報道がありましたが、現時点でそういうことは考えていないという理解でよろしいでしょうか。
  242. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) 今、事務局長が話しましたとおり、そういうことについては全く決まっておりません。  四日から与党の調査団も参りまして、十一日に帰る予定になっておりますが、そういうことの報告なども十分に聞きまして現地の状況に即して考えたいと思いますが、やっぱりこの点に関しては言うまでもなく慎重を期してまいりたい、こういうぐあいに思います。
  243. 翫正敏

    ○翫正敏君 しつこいようですが、議員団の調査の結果というようなことを踏まえて、場合によっては機関銃を所持していくような場合もあり得るということをおっしゃったんでしょうか、それともそういうことは考えていないということをおっしゃったんでしょうか。ちょっとそれは大臣にお願いします。
  244. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) これは現地に行ってこなければ、現に四日に行くわけでありますので、その状況をよく聞いて、そしてしっかり議論して決めたい、こういうことであります。
  245. 翫正敏

    ○翫正敏君 もう一点だけですが、私はPKO協力法には反対しましたし、現在でも反対気持ちでありますけれども、それはともかくとして、この法律の上では、自衛隊の部隊が平和協力業務を行い、また人道活動を部隊として行うこともできる、もちろんそういう法律構成になっておりますが、一方、防衛庁長官が自衛隊員に対して期間を定めて平和協力隊に派遣するということができて、その場合は自衛隊の身分と平和協力隊の身分をあわせ持つことができると、そういう法律の構成になっておりますね。  その観点からいいましたときに、自衛隊員を派遣する三百人なら三百人の人すべて平和協力隊という隊に参画をさせてそして派遣するという、私はこの法律反対なので、だからそれだったら賛成なのかと言われると困るんですが、そういうふうなことは考慮しておられますか、おられませんか。
  246. 鈴木勝也

    説明員鈴木勝也君) お答えいたします。  国際平和協力法のもとでは、今御指摘がございましたように自衛隊の方々の参加の様式について二つございます。部隊参加の場合もございますし、あるいは停戦監視員のように個人としての自衛官が参加するということもございますけれども、第一次、第二次調査団がともに指摘しております点は、やはりああいう状況の現地でございますので、自己完結性の高い集団でなければ、人を助けるどころか周りの迷惑にすらなりかねないという報告が来ておりますので、それに対応するのには当然部隊単位でまとまって行動できるということが不可欠であるというふうに私ども考えております。
  247. 翫正敏

    ○翫正敏君 大臣考えは同じですか、ちょっと大臣考えもおっしゃってください。  自己完結型と言いますけれども、反論をしますが、自衛官はそれぞれすべてそういう訓練を受けているわけですから、ずっと日常訓練しているわけですから、自衛官を平和協力隊に派遣して平和協力隊というものをつくって、一方のところではそういう法律の構成になっているんですから、それで派遣するということも考慮できるんではないでしょうか。  そういうことは、大臣としては現在及び今後考えられますか。そういうことじゃなくて、やっぱり自衛隊という場合は部隊としての派遣しかあり得ないということですか。ちょっと大臣にお答えいただいて、終わります。
  248. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) このたびの問題に関しては、今までのところ二次にわたる調査団を派遣して、その報告で明らかなように極めて困難な深刻な状況の中で活動する上では自己完結型の体制が不可欠であろう、こういうふうに考えておりまして、そういう意味ではやはり今答弁したようなことで今回は対応する、こういうことであるわけです。
  249. 翫正敏

    ○翫正敏君 わかりました。終わります。
  250. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 他に御発言もないようですから、内閣総理府本府、大蔵省文部省国民金融公庫日本開発銀行及び日本輸出入銀行決算の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明二日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十六分散会      ─────・─────