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1994-08-24 第130回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年八月二十四日(水曜日)    午後一時五分開会     ─────────────    委員異動  八月八日     辞任         補欠選任      下村  泰君     喜屋武眞榮君  八月二十三日     辞任         補欠選任      庄司  中君     上山 和人君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         三上 隆雄君     理 事                 守住 有信君                 今井  澄君                 清水 澄子君                 風間  昶君                 高崎 裕子君     委 員                 笠原 潤一君                 佐藤 静雄君                 清水 達雄君                 陣内 孝雄君                 南野知恵子君                 矢野 哲朗君                 会田 長栄君                 稲村 稔夫君                 上山 和人君                 中尾 則幸君                 堀  利和君                 泉  信也君                 小林  正君                 長谷川 清君                 山崎 順子君                 浜四津敏子君                 横尾 和伸君                 喜屋武眞榮君                 翫  正敏君    国務大臣        外 務 大 臣  河野 洋平君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 重夫君    説明員        外務大臣官房審        議官       上田 秀明君        外務省総合外交        政策局長     柳井 俊二君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     高野幸二郎君        外務省北米局長  時野谷 敦君        会計検査院事務        総局第一局長   阿部 杉人君     ─────────────   本日の会議に付した案件平成三年度一般会計歳入歳出決算平成三年度特別会計歳入歳出決算平成三年度国税収納金整理資金受払計算書平成三年度政府関係機関決算書(第百二十六回国会内閣提出)(継続案件) ○平成三年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百二十六回国会内閣提出)(継続案件) ○平成三年度国有財産無償貸付状況計算書(第百二十六回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八日、下村泰君が委員辞任され、その補欠として喜屋武眞榮君が選任されました。  また、昨日、庄司中君が委員辞任され、その補欠として上山和人君が選任されました。     ─────────────
  3. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 平成三年度決算外二件を議題といたします。  本日は、外務省決算について審査を行います。     ─────────────
  4. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  6. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 与党になりまして初めての決算の場で質問をさせていただく。大変この一年間勉強させていただいたものでありますから、野党の立場での質問というふうなことに部分なるかもしれませんけれども、その点は、日本外交かくあるべしと、前向きな考え方だということで御理解をいただきながら御答弁をいただきたいと思います。  外務大臣になられまして、この猛暑の中、ナポリ・サミット、そして韓国へ、そしてASEAN拡大外相会議、本当にその御苦労たるや大変多いものがあろうと思います。その表舞台の活躍の中で、ぜひとも、私も外務委員も兼ねているという中で、その一員としまして日本国際舞台の中での影響たるやいかに大きなものにするかということで努力したい、そんなことで考えているところであります。  外務大臣は、七月二十三日、村山首相に同行されまして訪韓された、そしてその足でASEAN拡大外相会議出席のため、ソウルから二十四日香港経由バンコクに立たれた、こういうことのようであります。途中、本来ですと香港経由だということなんでありますけれども台風七号の影響香港着陸ができないということで、急遽台北中正国際空港でありますかに緊急避難をされたということが翌日の朝刊各紙に載っておりました。  まさに国交のない台湾国際空港日本外務大臣緊急避難をされた、その辺での一連の経過、状況をちょっとお話しいただきたいと思います。
  8. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) このたび外務大臣を拝命いたしました河野洋平でございます。参議院の委員各位にはこれから先いろいろまた御指導をいただくことも多かろうと思います。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  ただいま委員からお尋ねがございました件は、お尋ねのとおり、村山総理とともに韓国を訪問いたしまして、その後引き続きタイバンコクで開かれますASEAN拡大外相会議出席のため、韓国からタイ航空に乗りましてタイバンコクへ向かう途中の出来事でございました。  ASEAN拡大外相会議出席のためバンコクにおります時間はほんの数日間でございまして、その数日の間に十数カ国の外相と二国間の会議も行おうと少し欲張った計画を立てておりました。それと申しますのも、村山政権発足直後でございますから、改めて村山政権の何たるかを御説明申し上げたいという気持ちもございまして、十数カ国の外相会談をするという計画を持っておりました。  したがって、極めて厳しいスケジュールをつくっておりまして、韓国を飛び立った飛行機予定どおりタイバンコク到着をしてくれればその晩のうちにも一、二の国の外相会談をする、こういう予定になっておったわけですが、御指摘のとおり大変な台風に直面をいたしました。香港空港では一時着陸の態勢をとりまして、もう我々は窓の外を見ていても着陸をするなと、すぐ海が目の前に見えておりましたから着陸するなと思っておりましたときに機首を上げて、着陸をせずにゴーアラウンドというんですか、もう一回着陸やり直しと、そんな状況でございまして、その後上空でしばらく天候の回復を待っていたようですが、それがうまくいかないということで急遽台北に向かうという機内放送がございました。ああそうかということでございましたが、これはもう飛行機に乗っているわけでございますから、飛行機天候都合上ここには着陸できないので緊急避難的措置として台湾空港に行くということであれば、これはもう当然のことだと思いました。  台湾飛行場着陸をいたしましたが、これは全く予定外のことでございますから、ターミナルにも飛行機は参りませんで滑走路の端にございます給油のための施設に横づけになりまして、ドアはあきませんから、したがって乗客は一人も外へ出るということはございません。約四十分あるいは四十五分かかったでしょうか、一時間かからずに給油を終えて直ちに飛行場を飛び立つという状況でございました。飛行機の窓から外を見ましてもターミナルが見えない、そういう状況に四十分前後の時間我々はとどまっておったわけですが、その後直ちに給油を終えて飛行場を飛び立ちまして、もう一度香港飛行場に参りました。  香港では、香港から乗り合わせる予定になっていたお客を乗せてタイバンコクへ行った、こういう状況でございます。
  9. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 お話をお伺いしますと、私も新聞記事で推測の域を脱しなかったものだから、三、四時間程度いらっしゃったのかなというような解釈をしたものですから、三、四十分程度だということになりますれば、この対応がいかんともしがたいということだったのかもしれません。  しかしながら、当然外相には時の与党第一党としての自由民主党の総裁という肩書もあられる。加えて外務大臣という肩書もあられる。タイ航空緊急着陸をした、緊急避難したということに際して、何らかの航空当局者もしくは台湾政府のいずれかの方々大変お世話になったというふうな一つ意思表示というものがあられたのかどうなのか、その辺をちょっとお伺いします。
  10. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今申し上げましたように、かなりの乗客の乗ったタイ航空でございます。そのタイ航空判断で、香港着陸をできなかったために最寄りの飛行場緊急避難的に給油のために着陸をさせていただいたということでございます。そういう意味では大変お世話になったということはもうおっしゃるとおりでございますが、私が乗客の一人として個人的に大変お世話になりましたとあいさつをしたかと言われれば、そうしたことはいたしませんでした。
  11. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 加えまして、もう一つ確認をさせていただきます。当日、中国銭外相ですか、会談予定があられたのが、当然到着がおくれるということで延期されたということでありますけれども、延期された結果、会談内容、この件に対しての話をどんなふうにされたか、ちょっとお話しいただきたいと思います。
  12. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 実は、韓国からタイバンコクへ参りまして、その晩のうちに中国銭其深外相会談をする予定になっておりました。あらかじめアポイントをとって時間をあけておいていただいたわけでありますが、今申し上げたような事情で私の到着が深夜になったために、途中から連絡をしていたと思いますが、つまり現地の我が方の係の者から先方に当日夜の会談はできないという連絡をさせていただいたはずでございます。  私は、実は飛行機の中で、お互いに大変厳しい時間のやりくりをしているわけですから、アポイントの時間を失って、これは今回のASEAN拡大外相会議では中国とは二国間の会談はできないかもしれないと。それはもう先ほど申しましたように、非常に三十分間とか、一番短い二国間の会談は十分間というふうな会談すらやりくりをしてつぎ込んでおりました。それは我々もそうですし、中国側も恐らくそういうやりくりをしておりましたでしょうから、お互いの時間のやりくりが恐らくつかないだろう、これは今回はだめかもしれないと。場合によれば、昼食のときにでも少し早く食事を済ませて立ち話でもできればというぐらいの気持ちでございましたが、到着してみると、翌朝都合をつけましょうということであったということで、私どもやりくりをしていてくれましたので、予定の時間より多少時間は短いけれども二国間の会談ができるということでございました。  翌朝、銭其シン外相とお目にかかった際に、昨晩はどうも大変失礼をいたしましたと。これはもう先方は待っていてくれたわけですが、こちらが着けなかったためにできなかったわけですから、昨夜は大変御無礼をいたしました、飛行機台風影響によって予定の時間に着けなくなりましたのでこういうことになりました、しかも私としてはまことに予定外のことでございますが、香港に着く飛行機が実は台北空港に着いたということで大変な経験をいたしましたというようなことをたしか申したと思います。銭其シン外相からは、いや大変なことでしたね、お互い天気には勝てませんからねというようなやりとりがあって、どうもまことに申しわけないと言って、そこはアポイントを一方的にキャンセルをしたということについては特段何の指摘もなく、まあまあ無事で何よりでしたという話でその会談は始まったわけでございます。
  13. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 私が申し上げたいことは、まさに銭其シン外相が今おっしゃられたように天気には勝てないということで、まさに神風が吹いたんではないのかなというふうに考えるわけであります。物理的に三、四十分というふうな限られた時間ということになりますと、多面的な外交展開するということも無理だったかもしれません。しかしながら、せっかくそういうふうな機会を天が与えてくれたということになりますと、時の外相中正国際空港におりたということへの何らかの対応があってよかったのかなと、私なりにそんな考えを持ちます。しかしながら、お話を聞きますと物理的に不可能だったと、こういうこともあろうと思いますので、その辺は今後の一つのあり方として頭の隅に入れておいていただきたいなと。  加えまして、七二年に日中共同声明が出されてもう二十年余たつわけでありまして、その間日本外交姿勢というのは全く変わりなく北京が唯一の中国政府だという中で外交展開してきた。しかし、その二十年間でかなり私は国際関係が一変したと言っても過言ではないと思います。  そういう中で、二十年間の積み上げは一体日華間で何だったんだろうか、その辺をそろそろ本当に考えなければいけない。二者択一という話ではなくて、双方を生かすためにはどうしたらいいんだろうというふうなことを模索していくときがもう既に来ているというふうに私は考えております。  そうなりますと、じゃ一体どうするんだと。きょうは外務当局関係者がたくさんいらっしゃっています。そんなクリーンヒット、ホームランを打つようなことがあるのか。確かに、なかなか言うはやすし行うはかたしたと思うのでありますけれども一つ一つのことを、タイムリーなヒットじゃないけれども小さなことを積み上げていきながら一つの既成事実をつくっていくという努力展開がやっぱり必要なのかな、こう考えるところであります。  たまたま、先週の金曜日でありますか、産経新聞に、李総統アジアオリンピック評議会招待状を出したということに端を発しまして、一体どうするんだというようないろんな議論が展開をされております。先ほどの、河野外相中正国際空港におりられたのが第一の神風、そして今度は第二の神風かなというぐらいのとらえ方でひとつ対処方を考えてみたい。  ところで、一連外務当局の話を新聞で読みますと、最終的に入国申請があったときには政治的判断にゆだねるというふうな話が載っておりました。過去何回か政治的な状況、背景のもとにオリンピック不参加とかいろんなことがオリンピックに介在してあったわけでありますけれども、そのときそのときの国際世論は、そういった対応は適切ではないというふうな大方の評価があったと思います。  ですから、今回、李総統がいらっしゃるんだったら中国不参加だなんという話も一部新聞に載っておりましたけれども、そんなことは実際ナンセンスな話であります。しかも、川島局長の談話ということで載っておったのが、今申し上げたように政治的な解決にゆだねるというふうな話。果たして妥当性があるものかと。私の考え方として、あくまでもこれはスポーツの世界の話だと。アジアオリンピック評議会の中で、じゃ実際どういうふうな結論が出るんだろうと。それに準じて外務当局は速やかに手続を、対応をするというふうな姿勢で私は全く間違いないと思うのでありますけれども、その辺の基本的な考え方を聞かせていただきたいと思います。
  14. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 十月二日から広島で行われるアジア大会は、私も若いころはスポーツマンの一隅におったわけでございますから、大変関心を持って見ております。  このアジア大会が、今お話しのように後で残念な大会だったと言われるようになってはならぬというふうに私も思っております。あくまでもアジア大会アジア大会として、大会参加者みんなの拍手の中に立派な大会が行われてほしいということがまず私の基本的な気持ちでございます。  今お尋ね台湾李登輝総統招待状を出したという件につきましては、私もおっしゃった新聞でも拝見をしましたし、事務的にも報告を聞いております。この問題については現在関係者間で協議をしているというふうに聞いておりまして、私は関係者間の協議というものを今は注目して見ているということがいいというふうに思っております。  これは御指摘のとおり、政治が口を挟むということについては十分慎重過ぎるほど慎重でなきゃならぬというふうに思いまして、アジア大会にかかわるそれぞれの関係者方々協議の結果を待つという姿勢を今はとっていることがいいというふうに考えているところでございます。
  15. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 もう一度確認をさせていただきます。  協議の結果を待っていますというふうな話であります。しからば、招待状にこたえて来日しますよというふうな結果になったとすれば、その結果に準じて速やかなる手続並びに外交上の対応をするというふうなことでよろしいですか。
  16. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今申し上げましたのは、まず第一に関係者協議というものが重要だというふうに申し上げたわけでございまして、関係者協議の結果、どういう結果になるかということを今見守っているわけでございまして、その結果が出たときに我々が判断をするということになるだろうと思います。
  17. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 その後判断するということではなくて、その結果を十分尊重しながら対応するという姿勢で私は間違いないと思うのでありますが、いかがですか。
  18. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 先ほど申し上げましたように、アジア大会がみんなの祝福の中で開かれるということが重要だということを前提として私どもはこの問題を考えているわけでございます。  日本中国関係というものは、先ほど委員指摘のとおり、二十数年間の歴史を積み重ねてきております。その前提といいますか、大きな出発点にございます日中共同声明精神というものもまた我々はしっかりと見詰めていかなければならないというふうに思っております。  先ほど申しましたように、関係者協議が整って何らかの結論といいますか、こういうことになりましたという御報告があれば、その御報告を今度は我々は我々として慎重に検討をするということになるだろうと思います。(「日台関係はどうするんだ、日中関係ばかり見ていて」と呼ぶ者あり)
  19. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 今、後ろの方から声援がありましたけれども、まさに日台間の一つ関係を考えますと本当に無視できない現実があろうかなと。これは貿易にしてもしかり、人的な交流もしかり。こんなことを考えたときに、先ほど申し上げたように二者択一というふうな考え方はもう捨てよう、双方が生きるためにどうするんだ、こういうふうなことをぜひ考えていただきたい。  しかも、今おっしゃるように、外相もまさにスポーツマンでいらっしゃる。この大会を成功裏に終わらせたいと。しからば、全く政治は一歩下がりますよ、ひとつ盛大な祭典をやってくださいと。ですから、そこで決められたことについては順次我々としても外交上必要なことについてはしかるべき手続をとります、こういう姿勢をぜひとっていただきたい、このことは私もぜひお願いしたい。  あと一度ひとつ覚悟のほどをお願いしたいのであります。
  20. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 台湾の昨今の経済的な発展ぶりは目覚ましいものがあると私も思って見ております。  委員指摘のように、人的な交流民間方々交流も非常に盛んになってきているのは事実でございます。そうした経済的な交流、あるいは民間方々交流、こういったものがあるという事実、それはもう私どももしっかりと見て知っているわけでございますが、先ほども申しましたように、日中共同声明精神からいけば、これはあくまで日本との関係民間交流民間関係ということが大事なのであって、政府間のつき合いということになれば我々は北京との関係一つ中国相手先とするのは当然のことだというふうに考えているわけでございます。
  21. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 最後に一言。  台湾選手も相当いらっしゃると思います。少なくとも台湾選手は速やかに受け入れの対応をするわけでありますから、そんな意味で、神風が吹いたということでありますから、ひとつ前向きな対応をしていただきたいと思います。  それでは、ODA関係について質問をさせていただきます。  平成三年度ODAについて検査院決算検査報告書を出されたわけでありますけれども、その中で五カ国六十七事業について現地調査を行った。そして、当初十事業について問題があるという一部新聞報道がされました。しかしながら、決算検査報告書では五事業について問題があるという最終的な発表でありました。この十事業と五事業発表に至るまでの内容変化、どうしてこんな変化があったのか、その辺ちょっと説明を願います。
  22. 阿部杉人

    説明員阿部杉人君) 平成三年度決算検査報告ODAに関する記述におきまして、本院が六十七事業調査いたしまして、その結果、援助の効果が十分発現していない事業として五事業を掲記していることは御指摘のとおりであります。新聞報道の中には十事業と報じているものがあることは承知しておりますが、本院が検査報告に掲記したのは五事業でございます。  一般論として申し上げますならば、本院では、調査の結果検討に値すると思料された事業一つ一つにつきまして、事業の現状に加えてそれに対する相手国我が国援助実施機関対応ぶり、それを取り巻く社会経済情勢などから見て、今後の改善の見通しはどうかなどをも総合的に検討した上で検査報告に掲記すべきかどうかを判断しているところでございますので、この点御理解を賜りたいと存じます。  いずれにしましても、本院では、調査の結果検討に値すると判断した事業につきましては、当該国に対する次回の実地調査の際などの機会をとらえまして、可能な限り事態の推移等の把握に努めているところでありますので、今後もこれらの努力を続けてまいる所存でございます。
  23. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 繰り返しますけれども、六十七事業現地調査した結果、十事業について当初問題がある、ただし発表になったのは五事業だ、こういうことであります。しからば、六十七事業中十事業も問題があったという現実、これは無視できないいろんな問題をODAは内包しているのかなというような感じがせざるを得ない。これはひとえに全く国柄が違う、そして内情も違う、だから実際踏み込んだところが現実は違ったんだといういろんな様相の変化があろうと思います。  しかしながら、反面、適正的確にODA展開しなければいけないということも事実でありまして、今回現地調査した結果、会計検査院として適正な現地調査をするために非常にいろんな問題があった。反面、今後もっともっと徹底して検査をしていただきたい。その辺にいかなる問題があるのか、所見をお伺いしたいのであります。
  24. 阿部杉人

    説明員阿部杉人君) 私どもODA検査をする上で当面します障害はいろいろなものがございます。そのうちで最も特徴的なものは、外国で行われる事業におきましては、外国外国の中の事業法人に対しまして私ども検査権限が及ばないということでございます。これが最も特徴的なことではないかと存じております。
  25. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 しからばどうしたらいいか。
  26. 阿部杉人

    説明員阿部杉人君) したがいまして、言ってみますればこれは検査の限界とでも言うべきものでございますが、私どもは、我が国援助実施機関人たちにいろんな説明を求めたり、もしくはその援助実施機関方々と一緒に現地に赴きまして相手国協力の得られた範囲内で現地調査する、そのような努力を行ってまいっております。
  27. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 歯車はかみ合いませんけれどもね。  ですから、やっぱりもっと適正な検査をしなきゃいけないという前提があろうと思うんです。先般、参議院の山本幹事長から我々の党の代表質問の中でODA基本法の制定というふうな話もございました。だから、もう少しこのODAとリンケージさせながら、国会の中でもっと積極的な論議の展開がされるということも必要じゃないのかなと、私はこう考えているところなのであります。  ですから、当然外務省の中でODAの自己評価をしていらっしゃいます。これも当然大切なことでありますけれども、また、会計検査院という一つの組織の中で実際どうやられているんだという適正な評価をいただく、これが速やかに展開されるというふうな体制づくりも必要だと思うのであります。  そんな中で、このODA基本法に対する考え方外相ひとつ聞かせていただきたいと思います。
  28. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 基本法について申し上げる前に、今お尋ねがございました点について一言申し上げたいと思います。  国民の皆様方の貴重な税金を使ってのODA政府開発援助でございますから、これが適正に効果的に使われるということは何より重要なことでございます。したがいまして、外務省の中でも内部の評価をするためのチームをつくってODAの評価のためにあちこち見ていただいているというようなことがございます。そうした評価と会計検査院の評価との間に余り違いがあるということになれば、これは内部的な評価に問題があるのではないかという問題も出てくるかと思います。  ただ、ODAの評価の仕方はなかなか難しい部分がございまして、それが一体どのくらいのレンジにわたって効果があるか、あるいは民生のためにどういう効果があるか、さまざまな視点で行われるという問題がございまして、これはそれぞれチェックをする視点によって多少違いがあるということも考えなければならない。これはよく委員も御理解いただけると思います。  さらに私どもは、ODAの透明度を上げるということが何より大事だと思いまして、ODA白書なるものをつくりました。この白書は、ごらんいただきますと、中には一体どういう会社がかかわってどういう仕事をしたかということまで細かく全部そこに挙げてございます。このODA白書はすべての国会議員の方々にお届けをしてチェックを受けるというつもりでつくっているわけでございまして、これらはひとつぜひ点検をしていただきたいというふうに思っております。  さて、そこでODA基本法でございますが、ODA、これだけの額になりますと本来法律をつくってきちんとすべきものではないかという御意見があることは私どももよく承知をいたしております。ただ、ODA外交政策の一つというところもあるというふうに私は思っているわけでございまして、これらについては外務省として十分考えながらこの政府開発援助はやっていく必要がある。  したがって、ODA大綱という原理原則を決めて、これは閣議で決めていただいているわけでございますして、皆様方にも既に熟知していただいているところでございますが、この大綱に従ってODAは行っていくというみずから枠をつくって、その原理原則に基づいて行動をする、援助を行う、こういう形をとっているわけでございまして、私が見る限り、現状ではこのODA大綱に従って政府開発援助を行っていくということでいいのではないか、そして結果として白書を皆様方にお届けして、その白書に基づいて委員の皆様方のチェックを受けるということでいいのではないかというふうに私は考えているところでございます。
  29. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 一つ考え方をお伺いしたわけでありますけれども、ところでそのODA大綱、日本の顔の見えない援助だということが、大綱を閣議決定された結果、大変な評価をいただいているという現実も承知しております。  しかし、そんな中で、例えば一つの諸原則、四原則を高々と掲げたわけでありますけれども、「国際平和と安定を維持・強化する」、そのために「開発途上国の軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意を払う」という三項目の一項、それから四項目の「民主化の促進、市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況に十分注意を払う。」と、その辺でもってやるかやらないか決定します、こういう話であります。  しからば、今中国が対前年比二けたの軍備増強をしています。そういうふうな流れの中で、じゃ実際この三項目に照らし合わせた結果一体どうなんだろうか、こう思うと大変な問題があると私は考えています。しかしながら、今行政の段階だけで執行するということになりますと、なかなかだめよと、こういうふうな判断はつけがたいと思うのであります。ですから、そこでやっぱり国会もリンクした方がいいのかなと、こういうふうな私なりの今発想なのであります。  加えて、四項目についてもいろいろ問題、やっぱり人権に対する考え方、それから市場性の考え方、いろいろ欧州とアジアの背景の違った考え方、ですから当然例えば日本で国鉄どうしたんだ、あれだって政府の話じゃないかと、こういうような話がある。しかしながら、それなりに日本政府の干渉の中で経済発展を遂げた。それを一つの事例として、アジア諸国がそういう事例に基づいて同じようなケースでやっている。じゃそれは自由市場なのか、いや問題だな、こういうふうな話もあります。ですからその辺で、じゃ今の外務省の中でこのODA大綱の枠組みの中でひとつ対応していくんだと、しからばだめよ、こういう話が果たして言い切れるのかどうなのか。  ですから、先ほど申し上げたように、もう少し国会とリンケージをする必要性があるんじゃないのかな、こういうふうな考えなんですが、いかがですか。
  30. 上田秀明

    説明員(上田秀明君) 御説明させていただきます。  まず最初に、先ほど大臣がODA白書と一般に申し上げましたのは「我が国政府開発援助の実施状況に関する年次報告」という形で配付させていただいているものでございます。それとは別にまた、もう少し詳しいODA白書というものも発行しております。  今のお尋ねでございますけれどもODAの大綱の中の四原則のなかんずく第三項に軍事支出に関する点の原則がございます。
  31. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 時間がないから考え方だけひとつ。
  32. 上田秀明

    説明員(上田秀明君) 例えば中国の軍事支出の動向等につきましても、もちろん内外に懸念すると申しますか関心が高いということを踏まえまして、政府の首脳レベルからさまざまな機会中国側にこの懸念等を表明していただいておりまして、その際中国側からは中国の軍事支出の実情について御説明がございます。私どもといたしましては、動向に注目している、あるいは歴史的な背景の中での動向に注目していくというふうに考えております。
  33. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 繰り返すようでありますけれども、やっぱり二けたの予算の伸びというのはかなりの伸びですよ。それでもって十分注意を払いながらウォッチだけしていきます、これじゃ四原則の意味がないわけであります。だからその辺、どうしたらそういうふうな四原則に基づいた実行が速やかに可能になるかということをもっと考えていただきたい、このことはお願いをしておきます。  それから、最後になりますけれども、今まではやっぱりアジアにある日本だと、加えて歴史を振り返ってみるとアジア偏重型、六割のODAの予算を傾注していますと、このことは当然だと思います。しかしながら、この間、私はチェコに行ってまいりまして、チェコの社会党党首に会ってまいりました。日本の前向きな対応を非常に期待していますというふうな話であります。まさに今まで東欧諸国は対象じゃなかった。その東欧諸国がやっぱりODAの対象になります。加えて、南ア連邦を初めとしてアフリカも今後民主化がどんどん進むと思うのであります。  そうすると、世界の中から日本に対するODAの要請というのは非常に強くなる、大きくなると思うのです。しからば、どうやってそれを交通整理していくのか、そこにおける戦略たるやどういうふうな戦略があるのかというふうなことで、私は甚だ難解な問題に直面していらっしゃるのじゃないかなと、その辺での考え方をお聞きしたいと思います。
  34. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 御指摘のとおりだと思います。世界の多くの国々から日本政府開発援助に対する期待が寄せられておりまして、その中で一体、優先順位をつけるというと甚だおごった言い方にあるいはなるかもしれませんが、当事者としては当然、すべてに対応できないわけでございますから、どういうプロジェクトにどう対応するかということは考えていかなければなりません。  これまで、結果としてアジア重視といいますかアジアに多くの開発援助がなされてきた、これは近隣諸国に対する我々の思いが反映されているというふうにも思いますし、また今御指摘のようにアフリカにもこれからは相当積極的に開発援助は行っていかなければならない。  アフリカは御承知のとおり、国情が不安定な国が多うございまして、なかなかそうした政情の不安定なところに援助はしにくいということがございましたけれども、昨今は民主化への非常な努力がございますし、国情も安定しつつあるわけでございますから、アフリカに対する開発援助はこれからふえていくだろうというふうに見ております。  また、東欧諸国は御承知のとおり、これまた民主化への努力ということあるいは市場経済導入への努力というものが非常に誠実になされている国が目立ってきております。こうした国には我々としてやはり目を向けていかなければならない。もちろんODAには上限が、それぞれの国の経済のめどがございますけれども、そうした状況のもとにアフリカは我々にとってやはり多く目配りをしていかなければならない地域であろうというふうに思っているわけです。  いろいろ申しましたけれども、民主化への努力あるいは市場経済への努力、こういうものに対しては我々は積極的にこれを支援する、そういう姿勢をとる必要があるというふうに思っております。
  35. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 終わります。
  36. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 私は自由民主党の陣内でございます。  外務大臣におかれましては、このたびのナポリ・サミットでの御活躍、まことに御苦労さまでございました。村山政権が発足したすぐ後に開かれたサミットだったということ、あるいはまた村山政権に対しての特に欧米のマスコミの取り上げ方が大変冷たいといいますか理解不足の報道があって、それででき上がっていた村山政権に対する厳しい先入観があったと思うわけでございますが、そういう中でサミットが開かれたわけでございます。また、それに先立つ日米の首脳会談もあったわけでございますが、私は大変な成果を上げられたものと、こういうふうに評価し敬意を表したいと思うわけでございます。  会議ではいろいろなことがうたわれております。雇用と成長の拡大に必要な政策協調を再確認したというようなことを初めとしまして、政治面では朝鮮民主主義人民共和国に対して核疑惑の払拭を求めるというような多くの成果があったと思うわけでございますが、一方では為替安定策をめぐって各国の思惑のずれがあったというようなことも言われているわけでございます。  そこで、外務大臣はこのナポリ・サミットの成果についてどういうふうにお考えになっているのか、またこれをこれからの外交にどう生かそうとお考えなのか、まずその辺のことを実はお伺いしたいと思います。特に私は、以前外務大臣が、これは日本でサミットを開いた去年に先立つ前でございましたか、日本で開くに当たっては、アジアの代表である我が国としては、例えば中国かどこかそういうところをひとつ招いてでも開いたらどうかとか、大変アジアに対する思いを寄せておられたころのことを今思い浮かべるわけでございますが、そういうことも考えますと、今度のサミットの中で、アジア唯一の主要国としていろいろ御発言なり対応があったんじゃないかと思うわけでございますが、その点も含めてひとつお話を聞かせていただきたいと思うわけでございます。
  37. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ナポリのサミットは村山政権がスタートをした直後でございますから、準備はなかなか大変なことであったわけでございます。政権発足十日足らずに先進国の首脳会議出席をされるということで、村山総理も大変にお気も使われたでありましょうし、新たな問題について勉強もなさったというふうに思っておりまして、大変なことだなとは思いましたけれども、その反面、十日足らずに世界の先進国の首脳に皆会える、会ってみずからの主張、立場、考え方説明することができるということは、これまた考えてみれば非常に幸運なことでもあったわけでございます。  私、お供をしてまいりましたけれども、総理は日米首脳会談を初めとして何カ国かの二国間会談も非常に精力的にこなされました。途中、一時体調を崩されましたけれども、二日目からは元気にまた会議にも出席をされまして、各国の首脳とは意思の疎通が十分にあったというふうに私は思っておりまして、これはサミット前の問題でありますけれども、それはそれなりに大変な成果であったというふうに思うわけでございます。  さて、サミットの問題でございますが、今委員お尋ねのように、「雇用と成長」というものを副題といいますか一つのテーマとしてこの会議が開かれたわけでございますが、各国の首脳が一堂に集まってそれぞれの国が持っている問題などを披瀝しながら、協調できるものはないかというようなことを率直に意見を交換しながら探っておられました。  私も参加をしておりましたが、参加された各国首脳の方々はそれぞれに、例えば先ほどお話がございました為替の問題につきましてもいろいろ御苦心談を披瀝なさったりもしておられました。この間、その問題はすぐれて大蔵大臣の会合のテーマであるからそちらに譲った方がいいということで、その問題は蔵相会談の方に譲られたわけでございますが、その他雇用の問題をどうやって解決するか。かつては経済が成長すれば雇用問題というのは自然にそこに吸収されていくものだけれども、今は経済が非常に発展しても雇用問題はそのまま残ってしまう。この雇用問題をどういうふうに解決していくかというようなことについては、それぞれの国の経験などを踏まえて話をしておられたのは非常に印象的でございました。  さらに、例えば各国はそれぞれ援助疲れとでも言いましょうか、相当一生懸命にやったけれども、ここでそれぞれの国内の経済状況もあって少し援助にたるみが出ている、しかしこれではいかぬ、もう少しやらなきゃいかぬ。先ほどもちょっとお話がございましたが、東欧を初めとして援助を非常に求めている国もある。旧ソ連邦の中もそういうことだ、あるいはアフリカ。我々はアジアの国にもそういう国はあるということを申したわけでございますが、そうした援助疲れをもう一度決意を新たにさらに頑張ろうというような協調があったこともございました。あるいはチェルノブイリの事故などを踏まえて、こうした原発の危険を解決する方途についていろいろ議論なさったということもあったわけでございます。  アジアの意見をどうやって反映するかということでございます。  私どもは、サミットに参加をいたしましても、アジアの代表というのは少しおこがましい。そんな気分はございませんけれどもアジア地域から参加している唯一の国であるわけでございますから、それはやはりアジアの抱える問題について意見を述べることが重要だというふうに思っております。したがいまして、いつごろからでしたか、日本アジアの幾つかの国にサミットに出席をする前に意見を求めたり、あるいはサミットが終わりますと報告に回るというようなことはしているわけでございまして、そういう意味ではアジア方々とサミットの参加国との間の意思の疎通を図るための努力は我々もさせていただいているということは事実でございます。  参加をしてみますと、やはり何といっても欧米型で、御出席メンバーが欧米の方々でございますから、話題、興味というものは、欧米の問題がより多く話題になるということはこれは当然のことと言えば当然のことでございますから、我々としてはやはりアジアの問題をその中で提起していく。今回はたまたまサミットがいざ始まるというときに金日成主席の死去というニュースが飛び込んだわけでございまして、それ以前から北朝鮮の核開発疑惑という問題は一つのテーマでございましたから、さらに我々はこの核開発疑惑については十分我々なりに説明をし、意見を述べたつもりでございます。  それ以外にアジアの国々にもまだまだ開発援助を求めている国が多くあること、ともすれば旧ソ連邦に先進国の目が向くという中で、まだアジアにも援助を求める国が多くあるということを申し上げたりしてまいりました。これから先も私どもとしては、アジア・太平洋地域が抱える問題については十分そしゃくをして、そうした場面では意見を述べなければならないというふうに思っているところでございます。
  38. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 今おっしゃったような努力アジアからの日本に対する信頼を高めていくというためにも大変重要なことだろうと私は思いますので、よろしくお願いしておきたいと思います。  次に、七月三十日でしたか、日米包括経済協議政府調達分野の交渉が焦点となっていた客観基準について妥協点が見出せずに物別れに終わっているという状況にあるわけでございます。私は、日米間にはよく言われるように安全保障とか環境問題とか、それからまた経済問題、こういうものがあって、そのいずれもが重要な課題であるわけですが、とかく経済問題だけが日米関係のすべてのような形に話がなってしまっているということは大変残念なことだと思って憂えているわけでございます。  また一方、先般ヨーロッパを回って在外公館の皆さんに聞きますと、ヨーロッパにおいても、客観基準というのが数値目標同然のような形で受け入れられては困るという各国の考え方があるんだというようなことも聞かされました。そういうことを考えますと、これからの日米包括経済協議のあり方というのは大変大事であろうと思いますが、その再開のめどとか協議に臨む我が国の態度というものをお聞かせいただきたいと思うわけでございます。
  39. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 日米包括経済協議は、現在中断をしているわけではございません。ずっと継続しているわけでございます、たまたま夏休みということで、先方も休暇をとっておられるということでここ少し間があきましたけれども。よく言われますが、アメリカはレーバーデーが過ぎると、つまり九月の初めの休みが終わるとみんな職場に復帰されるというようなことも言われておりまして、私ども、はっきりいたしませんけれども、九月の初旬にはこうした協議は始まって、協議が深まっていくというふうに見ております。    〔委員長退席、理事今井澄君着席〕  今、先生お尋ねのように、ヨーロッパでもこの協議は非常に注目をしているわけでございます。なぜなら、自由貿易というものが大事だとアメリカは言い、我々もそう言っているわけでございまして、もちろんヨーロッパもそう言っているわけでございますが、自由貿易を標榜する、最もよい形で自由貿易を発展させるためにどうすればいいかという協議の中で、もし日本が、あるいはアメリカがと言ってもいいんですが、日米二国間だけで何かを決めてしまう、そして日米二国間で一定の結論を出す、つまりそれはヨーロッパが排除されるというようなことになってはならぬということをヨーロッパの方々は心配しておられるわけで、我々も全くそれはそのとおりでございまして、自由貿易をさらに進めようという協議でございますから、これは結果をアメリカにだけ約束するというような協議になってはならないというふうに思っておるわけでございます。そうした点を頭に置きながらこの協議を進めていかなければなりません。  昨年の七月スタートをしたこの協議でございまして、もう一年を過ぎているわけでございます。いつまでにできりゃいいというものではないよとは言いながら、やはりこれらは早く合意に達するにこしたことはないわけでございますから、私どももできる限り合意に達するための努力をいたしますし、また先方にもしてほしいというふうに思っているところでございます。引き続き努力をいたしたいと思っております。
  40. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 そのことについて、これは私からの要望になりますが、いろいろ大臣にもまたお骨折りいただきたいなというのは、公共投資基本計画の質的量的な拡大、改善という点についてでございます。透明、公正な自由貿易体制を確立する上で規制緩和はもちろん必要なことでございますし、また減税による消費の拡大、これも大変大事なことだと思います。それと同時に、内需拡大のための社会資本の充実を図ってもらいたいというのが今お願いしている趣旨でございます。  これは私、いつも欧米先進国を訪れるたびに感ずるわけでございますけれども、特に今回はナポリのサミットの行われた会場、あれは卵城というんですか、あそこへ行きまして、まあ大変立派なものだな、こういうところでサミットを開かなきゃいかぬとなると日本では開く場所がないじゃないかとしり込みしたような気を率直に持っております。外見はそうでもないんですが、中に入ってからのその驚きというのは大変なものでございました。  どこの国でも社会資本の整備というのは、その国が経済的に繁栄をしたその峠の時代にやって後世に残しているという歴史があるわけでございまして、日本も考えてみれば今がその最後のチャンスじゃないかなと、そうあってはならないんですけれども、そういう心配もあります。整備水準を見ましても外国の半分とか三分の二ぐらいしかいっておりませんので、ここで少なくとも外国並みには、先進国並みにはしておく必要があろうかと思うわけでございます。  特に情報通信基盤について、これもこれからの産業、これからの国の繁栄の基礎を築く大変大事な事業でございますから、こういうものも公共投資基本計画の中で取り組んでいかなきゃいかぬと思うわけでございます。そういう意味でひとつ、日米の包括経済協議をうまくやるというだけじゃなくて、本来今の日本の我々が何をし、何を残していくかという民族的な、国家的な観点でも大きくこれをとらえていただきたいという要望をさせていただきたいと思います。  あと、外交は防衛とともに車の両輪として安全保障のために大変大事でございますけれども外交を進めていく上では人材の確保というのはこれは欠かせないわけでございます。湾岸戦争危機の後、外交強化懇談会でしょうか、それをおつくりになって、定員削減の時代ではあるけれども、事外交に関しては速やかに千人ぐらいの増員が必要だと、こういう提言があって、着実にそれを実行しておられるように伺ってはおります。  ただ、北朝鮮の問題を考えても、あるいは国連機関への職員の派遣の問題を考えても、これから速やかにそういう国際情勢の中で我々はもっと努力をしていかなきゃいかぬ時代に、人員の確保というのは欠かせない問題ではなかろうかと思っております。    〔理事今井澄君退席、委員長着席〕  それと、これは人だけでも解決できない、やっぱり予算的にも充実していかなきゃいかぬ面も残っているわけでございます。この予算の確保というのも、目に見えるというか説明のしやすいものは予算化が比較的進むと思いますけれども、例えばODAなんかは、GNPの一%が目標だと言えば、中身はいろいろ今まで論議されたようにあるかもしれませんけれども、とにかくわかりやすい、数値目標みたいなものですから国民のコンセンサスをとりやすいんですが、外交で何をするために幾ら要るとこう言っても、なかなか国民からはそうだ、必要だと、こういうふうな反応というのが出にくいんじゃないか。  そういう意味では大変御苦労なさっていると思いますけれども、人と予算の問題、これはやっぱり外交体制を強化していく上で大事だと思いますので、その辺についての御努力はあると思いますが、また大臣にひとつさらなる努力の意思をお聞かせいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  41. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 公共投資の基本計画につきましては、昨日、閣議でもいろいろ議論がございまして、総理から経済企画庁に対して指示をされたところでございます。  これは一つは、内需の拡大という視点から見ても非常に重要だと思います。日米関係、経済問題が非常に厳しいのは、一つはやはり日米間の貿易のインバランス、これはまあ見方あるいはどういう議論をするか、つまりバイで議論をしないでもうちょっとマルチで議論をすべきではないかとかいろいろ議論はございますけれども、やはり何といっても日米間における貿易のインバランスということを指摘されますと、これは数字はまことにその差が広がったままなかなか縮まらずにきておるということなどを考えますと、内需拡大、つまりマクロ政策をどうするかという点は、我々十分考えなければならないというふうに思っておりますから、その点から見ても重要だと思いますし、今先生お話しのように、社会資本の整備は今この時期こそやるべきだという御指摘も私は全く同感でございます。これから高齢化社会がますます進んでまいります。労働人口その他考えてみましても、やはり経済がややピークではないかという意見の多い中で、それなら今一番やらなければならないのは社会資本の整備であろうという意見が多く出てくるのは当然だと思います。いろいろな視点、観点から考えましても、これは今大いに議論をし、実行をしなければならない、そういう場面であろうというふうに思っているところでございます。  また、外交政策をきちんと展開していくためには人が必要、金が必要ではないかという御指摘は私ども全くありがたい御指摘でございます。御指摘のように、千人くらいはふやさなければという御提言がある中で、もちろん各省庁とのバランスもございますから、私どもだけというわけになかなかまいらないところもございますが、それでも議員の先生方の御理解もいただいて、百五十人前後の人数をここ数年間で外務省はふやさせていただいているわけでございまして、着実に人もふやすという努力をしているところでございます。  予算ももちろん私どもとしては十分目配りをしていかなければならぬと思っておりますし、来年はまた来年で幾つか特別の行事も想定されるということであるとすれば、それなりの予算もまたお願いをしなければならぬというふうに思っているわけでございまして、また先生方からいろいろ御指導をいただきたいとお願いを申し上げる次第でございます。
  42. 陣内孝雄

    ○陣内孝雄君 終わります。
  43. 会田長栄

    ○会田長栄君 平成三年度決算外務省については、会計検査院からの報告によると違法も指摘事項もなしというまことに御立派な結果になっているわけでございます。  私、社会党の会田長栄でございますが、限られた時間でありますから、どうぞよろしくお願いしたいとこう思っております。  大きく分けて私は三点、大臣初め関係局長に見解を聞いておきたいと思うんです。とりわけ本日は、我が国の当面する外交上の問題、特に金日成後の北朝鮮をめぐる問題、あるいは国連安保理の常任理事国入りの問題等についてもお尋ねしたいわけですが、平成三年度の外務省所管の決算審査の日でありますので、別の機会にさせていただきたいと思います。  しかし、今私が申し上げたとおり、外務省決算報告というのはまことに御立派でありまして、他の省庁に比べて模範とすべき報告になっているわけでありますが、とりわけ外交日程の中で、河野外務大臣にお忙しい中を出席いただいたこういう機会でありますから、ルワンダ難民救済のためのPKO派遣問題に関連して一つ伺っておきたいと思います。  ルワンダ内戦の悲惨な状況からして人の貢献を含む人道的援助の必要ありということで、医療・衛生活動を中心とした自衛隊派遣を前提にした第二次政府調査団をザイールに派遣することに我が党も合意をし、一昨日出発となったわけであります。  PKO協力法以前に我が国は国際緊急援助隊法を持っているわけですが、派遣の対象を海外における大規模な災害、自然災害に限定していることから、難民救済の事例には適用できないということで恐らくPKO協力法による派遣を実行に移したものと私は思っております。しかし、医療・衛生活動を中心とした人道的援助ということでは、むしろ国際緊急援助隊の派遣の方がふさわしいのではないかと私も思っているところなんです。この際、国際緊急援助隊法の改正を検討して、今回のような事態にも対応できるようにするとともに、PKOとの関係、これを大臣自身も我々も大きく議論をして対応していきたいものだと、こう思っているところでございますから、この点についての大臣の御所見をまず承っておきたい。
  44. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) ルワンダの難民が国境を越えてザイールに大変な人数の人たちが避難をしている、その地域はまことに悲惨な状況だというニュースが流れました。  私はそのニュースを見ると同時に、UNHCR、難民高等弁務官の緒方貞子さんから電話をいただきまして、大変悲惨な状況で緊急を要するという電話をいただいたわけでございます。緒方さんは現地へ赴かれる、フランスでしたかどこでしたかちょっと正確には忘れましたが、飛行場の電話を使って外務省に電話をしてこられました。私その電話をとったわけですが、そのときには緒方さんはとにかくお金を送ってくださいと、何よりお金が今必要ですというふうにおっしゃいました。  しかし、それはやがてお金よりも物が今欲しい、例えばテントが欲しい、食糧が欲しい、これはもう緊急に送ってくださいという連絡に変わりました。少したちまして今度は、ぜひ今は人が欲しい、医療チームが欲しい、あるいはそれ以外にも水を供給できるということが大事だ、次々にこの悲惨な状況が変わっていっているように私には思えました。いずれにしても非常に緊急を要するという状況のようでございました。テレビその他のニュースを見ましても、一日に何百人、何千人という方が亡くなられるという状況でございます。  つい数日前も緒方さんとたまたま直接お目にかかることができてお話を伺いましたが、この悲惨な状況は多くの人たち協力によって、最初は絶望的だった、自分も現地へ行って絶望的であった、どうすればいいかもうわからぬという状況であったけれども、やや何とかなりそうだという感じがしてきたというようなことをおっしゃっておられました。  例えば、アメリカはサンフランシスコの消防署の消防自動車をそのままザイールに派遣をして、今ザイールの避難民がたくさんいる場所に水を供給しているのは、近くの湖からサンフランシスコの消防自動車がくみ上げている水を浄水器にかけて飲める水にして渡している、アメリカは消防自動車までそこへ持ってきて水の供給をしているというようなお話をしておられましたが、いずれにしても世界がこの悲惨な状況を見て何とかしたいという思いに駆られているというのが実情のようでございます。  さて、そこで我が国はどうするかということでございますが、先ほど申し上げましたように資金的な援助については、これも毎日毎日各国が資金の援助をふやしたりしておりますから正確ではないと思いますが、一カ月ほど前でしょうか、あるいはそんなにならないかもしれませんが、日本の資金援助はアメリカに次ぐ第二位でございました。つまり、資金の援助については日本は相当額の資金の援助をいたしました。それから物の援助も、先方からこういう物がぜひ必要だと言われる物をできるだけ御希望に沿える、全部が全部というわけにはまいりませんけれども、できるだけ努力をしてお届けするということにいたしました。  問題は人でございます。今、先生御指摘のように、緊急援助隊法による人の派遣ができないかという御意見もございました。しかし、これはもう十分に、当時法律をつくるときにあるいは法律改正の場面で、紛争に起因する災害については国際平和協力法、いわゆるPKO法で対応をすると。それから、さっき先生おっしゃいましたように、自然災害、これに対応するのは緊急援助隊法でやる。そういう仕分けをしてあの法律ができているわけでございます。  このたびのルワンダの問題、ルワンダと申しますか、ルワンダから難民がザイールなりタンザニアに出ているわけですが、この問題はもう明らかに紛争に起因する難民援助、人道援助でございますから、これはPKO法の人道援助のくだりはこの援助にぴたっと合うわけでございます。先生、緊急援助隊法を直したらどうだというお話でございましたが、実は私どもからいたしますと、直さなくてもできる法律はあるわけでございますから、その法律を使って援助を行うということでいいというふうに私は実は思っているわけでございます。  問題は、我々が経験を積んできたということがございます。カンボジアの例、モザンビークの例、いずれも我々は慎重に注意深く、私は実は、自分のことを言うとどうかと思いますけれども、PKO派遣については相当慎重な意見を持っておった者でございますが、カンボジアの経験、モザンビークの経験、モザンビークはまだ終わっておりませんけれども、これらの経験を自分自身でいたしまして、ルワンダと申しますか、ザイールにつきましては自己完結型の能力を持つ自衛隊の衛生チームが行けないものだろうかというふうに考えているわけでございます。ただ、これも十分慎重に注意深く決定をしなければならないと思います。  私どもは第一次調査団を出しました。そして、それが帰ってまいりまして、事態は極めて悲惨で逼迫していること、そして現地は、例えば岩盤で穴一つ掘るのもそう簡単ではないこと、現地状況を考えれば自己完結型の支援体制が必要なことなどを調査団の報告として報告をしてまいりました。私どもはそれを受けましてさらに議論、検討を加えて、現在先生御指摘のように第二次調査団を出したところでございます。この調査団の調査結果、調査報告を聞きまして十分慎重に検討をして対応したい。しかし、一方で緊急性も非常に要求されているわけでございまして、慎重な判断と緊急性を求められている、この二つをよく考えながら決定をしなければならないと思っております。  与党の先生方も調査にお出かけをいただくというふうに伺っておりまして、またいろいろと御注意もあろうかと思います。また、議員の先生方、それぞれ世界各地に視察等にお出かけになっていろいろと御意見、お知恵を持って帰ってくださって御注意をいただくこともございます。そうしたことをよく考えながら結論を出したいと思います。  話が長くなりましたけれども、法律を改正するよりは、経験を積んでいけば現行法で対応ができるようになるというふうに私は今考えておりますということをお答えいたします。
  45. 会田長栄

    ○会田長栄君 私は、今の答弁はなるほどそうかと思いますが、一方で人道的援助というのは、既に大臣が答弁したとおり日本ではお金にして約四千五百万ドル、物資として約二億円近い金というのを投じてこの難民対策事業というのを発展させている。  私がここで言いたいのは、人道的援助活動というのは、一番大事なのは金でもなければ物でもなければそれは人の派遣でもない。これは大事なことは間違いないですよ。私の言いたいのは、やっぱり時なんです、時間なんです。時間におくれるようではこの効果というのはどうしても薄れるんですね。だからそういう意味で、これに対応するのにはそれはPKO法もある、結構。しかし援助法もある、これも結構。その点をもっと前向きに、時に間に合うように議論していく必要があるんではないかという点をまず申し上げておきますから、その点はひとつ検討してくださるようにお願いを申し上げます。  何といっても時です。すべて金も必要、物も必要、人も必要。しかし、それはおくれてはどうにもならない、効果が半減しますから。何としてもこの時、時間というものに緊急、柔軟に対応できるように両方の法律を整備する議論を始めてもらいたい、こう思います。この点については終わります。  二点目の問題については、これは外務省自身の決算報告は先ほど満点報告ということですから。ところが、その周りの報告となりますとこれはやっぱりちょっと問題があるんです。せめて、自分のところは満点に近い決算を、事業展開しているわけでありますから、これは大臣に周りにも目を使ってほしいということの視点に立って二点申し上げます。  その一点は、率直に申し上げて社団法人海外広報協会をめぐる問題が国会の中でも議論されております。御承知でしょう。しかし、この問題というのはあらかた今日国民の政治不信にかかわった疑惑問題と関連をしているわけでありますから、少なくとも公益法人と言われる非課税対象の団体が疑いを持たれるようなことをやってはいけないと私は思って、以下一点、時間の関係もありますから質問をいたします。  細かに言わなくても大臣御承知だと思いますが、この海外広報協会の理事長、事務局長は今容疑が固まって裁判中でありまして、責任を感じて辞職をするという事態になっています。理事長、事務局長ですよ。こういうことというのは国民から見たら決していいことではない。したがって、この点についてわかりやすく、今後二度とこういうことのないように対応していく責任が監督官庁としての外務大臣にあるということでございますから、その点について大臣の見解を二つ目は伺っておきたい。
  46. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 海外広報について仕事自身は大変いい仕事をしておられるというふうに聞いておりましたけれども委員指摘のように、その首脳の中に社会的に極めて批判を受けた人間がおりましたことはまことに残念なことでございます。御指摘のとおり公益法人ということでございますから、もう少し我々も襟を正してきちっと注意深く見なければならぬというふうに反省をいたしております。  問題は、せっかくいい仕事をしているにもかかわらずそうした疑いを持たれるようなことになって、そのやってきた仕事自体の信用を失うということは極めて残念でございますので、自今こういうことのないように十分監督をいたしたいというふうに思っているわけでございます。  役所というものはどうしても法律に従って、法令に従ってチェックはするのでございます。したがって、決算書が出てくればその決算書自体に間違いがあるかないかというチェックはいたしますけれども、社会的に批判されるという大きな目というものをもう少し持たなければならなかったのではないかということを私自身反省をいたしているところでございます。
  47. 会田長栄

    ○会田長栄君 大臣、実は旧東京佐川急便の社長が海外広報協会の理事長に就任をする、そして平成二年度以降寄附をいただく。その寄附の相対的なシェアから見ればここに依拠することが大きい、それが理事長に就任した背景なんでしょう。しかし、これだけのことを犯しているわけでありますし、これはとりわけ大蔵省主税局指定の特定公益法人なんですよ。それはもう法人にすれば寄附をする、あるいは個人でも寄附をする。しかし、その寄附をする額というのは、これはもう非課税なんです。そういう中で活動されている団体なのでありますから、せっかく平成三年度決算外務省はまことに指摘事項は全くないという成果を上げているときに、周りに行ったらちょっと違うんですということでは困りますから、お互いにそこはひとつ今後気を引き締めて監督していただきたい、こう思うわけであります。  三番目に、日本ODAの一環としてフィリピンに拠出している食糧増産援助費の問題について、これは大変な新聞報道がなされているわけであります。しかし、これはなかなか外務省説明しているとおり全くゼロ、そういう事実はないなんて新聞の隅っこに小さく書かれたって国民の大半はそれで承知するわけがない、それは大々的に大きく報道されているわけでありますから。この点についての内容説明はいたしませんよ、もう百も承知だと思いますから。  こういうことがあってはならないと思うんで、少なくとも外務省がその後調査をするということを国民の前に明らかにしているわけでありますから、これは事実だったのか事実でなかったのか、どこにこういう報道がされるような実態があったのか、これは分析して対応しているだろうと思いますから、その点率直に聞かせてください。
  48. 上田秀明

    説明員(上田秀明君) お答えいたします。  報道が大きくなされまして、その際にも御説明いたしましたけれども、どういう事実関係にあったのかをきちんと把握をして厳正に対処する必要があるという考え方に立ちまして、私どもの在フィリピン大使館を通じましてフィリピン側の関係機関に調査報告を求めました。その結果、フィリピンの国家計画開発庁並びに農業省から私どものフィリピン大使館あてに、関係者はいずれも見返り資金の不正流用を明確に否定しており、報道されたような事実はないとの結論に達したという結果の報告がございました。  見返り資金の方の積み立ての実態でございますけれども、フィリピン・ナショナルバンクに積み立てられておりまして、我が国政府の承認を得て農業開発プロジェクトに使用されておりまして、その点、政府といたしましても農業開発プロジェクト以外の活動に利用されていくということは仕組みの上からあり得ないというふうに考えております。  しかしながら、こういうような報道がございましたことは、そのこと自体はまことに残念なことでございまして、フィリピン側に対しましてもゆめゆめそういうようなことがないようにということは申し入れたわけでございますけれども、フィリピン側の方といたしましても、今の調査結果を踏まえて、さらに食糧増産援助の実施の過程におきまして、フィリピン政府側から委託を受けて肥料の配付などに当たります肥料会社から農民への肥料の流れに関して詳細にモニタリングを行いますとか、あるいはまた協同組合を利用して肥料配付を行う際の手続を厳格にするとかいったような措置をさらにとるということを表明してきているところでございます。
  49. 会田長栄

    ○会田長栄君 大体わかりましたけれども、そういう形ではあの報道には国民は納得しませんよ。  要するに、フィリピンの十三の農業団体でつくっている血盟という集団、これは法人格でも何でもない、ここに回したということでありますから、本当に回したなら回した、回さないなら回さない、こうはっきり言っていかなきゃいかぬ。フィリピン政府は、改善策などというのは検討すると言うが具体的には言わない。  これは我が国が積極的に、その点は主体的に今後こういう誤解のないようにしていかなきゃならぬだろう、私はこう思っているところであります。その点はやっぱり念を入れて、誤解なら誤解、あるいは事実であったら事実に基づいて今後のODA執行に当たって十二分に気をつけていかなきゃいけないのじゃないか、私はこう思っているところであります。  最後になりますが、外務省は先ほど言ったように全く決算満点、しかしその周りに行きますとちょっと問題が多いということで、会計検査院としてその点感想をどういうふうにお持ちですか。これを最後にお伺いします。
  50. 阿部杉人

    説明員阿部杉人君) 本院では、従来から食糧増産援助等の見返り資金の積み立て状況、使用状況等につきまして可能な限り実情の把握に努めてきているところであります。  本件につきましては、先ほど来の御議論を踏まえ、なお一層の実情の把握に努めてまいりたい、かように考えております。
  51. 会田長栄

    ○会田長栄君 改めて別の機会にもう少し具体的に質問させていただきたい、こう思っております。  きょうは終わります。ありがとうございました。
  52. 今井澄

    ○今井澄君 どうも御苦労さまでございます。  私は、先月の二十五日から八月五日までの十二日間、参議院海外特定調査の第三班のメンバーとして、マレーシア、インド、ネパール、シンガポールの四カ国を訪問して、我が国ODA、経済協力の実情について調査をする機会を与えられました。その際、在外公館、JICA、OECFの在外事務所の皆さんには大変お世話になり、調査に御協力いただき、この場をおかりして感謝を申し上げておきます。  報告書はいずれ正式に院の方に提出をすることになっておりますが、この調査の際ネパールで、私はアライアンス・フォー・エナジーといういわゆるNGO、正式には登録していないそうですが、NGOの技術者を含む四人の人々にお会いしました。懇談した内容は、実は今回の調査の対象にはなっておりませんでしたが、水力発電の問題であります。  日本政府はこれまでもネパールの水力発電については随分援助をしておりまして、例えばクリカニ第一発電所、第二発電所、合計約百五十億円の借款を供与しておりまして、この二つの発電所で合計の設備容量が九十二メガワット、現在のネパール全体の設備容量の約四割の発電をしているということなわけですが、現在、今度は世界銀行の主導のもとにネパールの東の方、ネパールは東西に長い国でありますけれども、その東の方のエベレストのふもとに近いところにアルンⅢという水力発電所の建設を計画しております。  これは設備容量は二百一メガワットということで、古い言い方をしますと二十万キロワットでしょうか。日本の常識からしますと二十万キロワットというのは大して大きなものではありませんが、そう言ってはなんですが、ネパールという大変貧しい国においては極めて巨大なプロジェクトということになるわけであります。総事業費は七億六千七百万ドル、うち一億六千五百万ドル、百六、七十億円相当でしょうか、それが日本の分担ということで予定されているわけですが、NGOの人たちと話し合ってみますと、これは大変今のネパールにとっては巨大過ぎるプロジェクトではないか。反対するわけではないがむしろ我々は代替案を持っている、中小の発電所を全国各地に必要に応じてつくっていくことが必要ではないかと。非常に説得力のあるお話でした。このときおもしろいことにこういう例を出されたんです。貧乏人に象を贈られても困る。象はうちの周りのものをみんな食い荒らしてしまって貧乏人はますます貧乏になる。それよりはむしろウサギをいただいた方がありがたいんだというお話でした。  そこで御質問したいわけですが、まず第一点は、先ほどもちょっと言いましたけれども、ネパールはまだ電化が進んでおりませんで、日本援助した二つの水力発電所で四〇%を満たしている程度で、それが九十二メガワットですね。その倍のものをつくろうというわけなんですが、これは二〇〇二年に完成なんです。これから二〇〇二年までの間はどうするのか。二〇〇二年に一挙にわっと今の倍のものをつくってその受け皿があるのかどうか。一体、産業に使うにしろ、家庭電気に使うにしろ、やっぱり徐々にふやしていくことが大事なんで、こういう巨大プロジェクトをぽんと持っていくことは一体どうなのかということを第一点お尋ねしたい。  二番目には、これは有償ですね、借款なわけですから返済しなければならないわけで、既に聞くところによりますとネパールの予算の三分の一近くが債務ということでありまして、そうしますとこれは当然ネパールの国民負担になってくるわけです。ネパールは一人当たりの国民所得が百八十ドルという恐るべきアジアでも最貧国、世界的にもそういうところに属するわけですね。  こういう問題について、これはちょっとうわさですからこういう場で言うのはなにかもしれませんが、世銀の主導で進められて何とか日本を引っ張り込んでという話があると。その裏には、日本はこういう、もしネパールが返せない、苦しいというときには延ばしてくれるんじゃないか。最後は何か返さなくてもいいようになるんじゃないかということで期待されているような話もちょっと聞くんですが、これは一体どういうことなのかということです。  三点目は、実はクリカニの第一、第二水力発電所も、これまで二回の災害でいろいろダメージを受けて、それは日本援助でまた復旧しているわけですが、つい昨年もまた洪水で埋まっちゃったんだそうですね。それの復旧がまだ今完全にできていないと思います。非常に災害の多発するところで、雨季があって大変なところです。  たまたま向こうへ行ってコイララ首相にお会いしたんですが、御承知のとおり、コイララ内閣は総辞職を七月にいたしました。選挙が十一月というんですね。何か向こうでは総辞職の後の総選挙は六カ月以内にやればいいというんです。何でそんな、六カ月間というのは非常に不安定なんです。それはどうしてかといったら理由は大きく二つある。一つは有権者を確定するのに大変だと。選挙人名簿なんてないわけですから、それに時間がかかるということと、もう一つは六カ月というのは雨季を避けなければならない、選挙期間を。雨季になりますと全国寸断されて投票所に人が集まってこれないというんですね。そういう国なわけです。  そうしますと、この巨大なと申しますか、確かに大きな発電所をつくることはインフラ整備という意味で非常にいいとは思うんですけれども、もしそれをつくってそれがだめになっちゃったら困るんですね。中小のものをつくっておけば、一つだめになっても国全体としてはダメージが少ないと。そこで、そういう意味で非常にリスクが大きいんじゃないだろうか。特にこのアルンⅢの上流の方には氷河湖というのがたくさんあるんです、チベットの方まであります。この氷河湖は二、三年に一度は必ず決壊をして大事故を起こすということが言われております。そうしますと、こういう大きなプロジェクトというのはリスクが大き過ぎないかなということを感じますのと、もう一つは、やっぱり大きな発電所をつくって全国に、全国かどうかは知りませんが、東の外れですから送電線をずっと張らなきゃならないんですね。そうすると、これもそういうふうに雨季には全国が寸断されるような状況のもとで道路も整備されていない、そういう中で送電がうまくいくんだろうかというのを私はやっぱり非常に心配をしているわけであります。  もう一つまたNGOの人たちが言いますのには、向こうにもだんだん地元の技術が育ってきた、中小のものだったら結構自力でできるところもあるんだけれども、巨大プロジェクトになると結局は外国の会社に、ゼネコンなんかにお任せということになると、これはネパールの企業の育成ということにつながらないんじゃないかというふうな話を一つ聞きましたし、技術移転も巨大プロジェクトというのはスムーズにいくんだろうかということについての疑問があるようです。  ただ、この技術移転の問題は、プロジェクトが大きい小さいにかかわらず、インドにしろネパールにしろまだカースト制が残っておりますね。そうすると、この技術移転をする相手のチームの編成というのは非常に難しい、私これする人、あなたこれする人ですからね。日本流に技術移転というのはできないということを考えますと、これは大きな援助をすることも大事なんですけれども、これは内政干渉になるかもしれませんが、ネパールでカースト制度がだんだんなくなっていくという、そういう民主化されて非常に近代的な産業国家にふさわしい宗教、文化、そういう社会的インフラが整ってくるのに合わせて援助するということも大事だと思うんですね。  それから、最後にはもちろんこういう大プロジェクトに伴う自然破壊の問題も言っておりましたが、幸いこれはダム式ではなくて流れ込み式ということですので立ち退きの人も少ないしあれですが、こういった問題もあるようです。こういうふうないろいろな問題点があると。  それで、何か向こうの人に聞きますと、世銀は要するにこれでなきゃ金をくれない、中小のものを寄せ集めてそのぐらいの規模の七億何千万ドルというのには乗ってこないというんですね。そこにどうも先進国の一方的な何というのか思い込みといいますか、よかれと思ってやることがさつきの象の話じゃありませんけれどもそういうことがないんだろうかということで、せっかくの援助ですからむだにならないようにと思っているんですが、その点、五点ほどお尋ねいたしましたけれども、いかがでしょうか。
  53. 上田秀明

    説明員(上田秀明君) ネパールにおきますアルンⅢの発電所の計画についてのお尋ねでございました。  まさに日本側といたしましては、世銀やあるいはその他のアジ銀でありますとかドイツその他の関係諸国の動向は承知はしておりますが、日本日本としてきちっと環境の観点でありますとか、今御指摘ございました財政状況に及ぼす影響でございますとか、さまざまな要素を総合的に判断する必要があるという考えから、海外経済協力基金の調査団も何度か行っておりますけれども、今般改めまして外務省、大蔵省、通産省、経企庁、円借款に携わっている担当の課長を中心とする代表団を現地に派遣いたしまして、今さまざまな諸点について調査をして、その上で本件に対する協力妥当性検討するということにいたしておるところでございます。  したがいまして、お尋ねの諸点につきましてはそういう調査団の報告を待ちたいと思いますけれども、私どもが今の状況におきまして把握しているところを手短に御報告いたします。  ネパールの電力事情につきましては、現時点におきましても不足ぎみでございまして、計画停電を行っているような状況でございまして、またネパールも経済発展の計画を持っておりまして、需要は増大していくということが予想されておりまして、この発電所が一応完成する予定になっております二〇〇二年の時点におきまして電力事情はそれでも不足ぎみということというふうに承知しております。  それから債務の問題でございますが、ネパールは確かに極貧国と言われる国でございますけれども、そうして日本から見て債務について無償で救済をするという措置をとっておるところでございますが、ネパール側はその債務救済無償の対象となった債務以外の、それ以降の債務につきましては順調に返済をしてきておりまして、債務返済比率、いわゆるデット・サービス・レシオをとりましても一一・七%でございますので、私どもといたしましては、それであれば途上国の中ではかなり低い方ではないかというふうに認識はしております。  それから、氷河湖の問題あるいは地震等天然災害の関連の点も御指摘がございました。地震の点等につきましては、これもあらかじめ計画段階から考慮されているというふうには承知しておりますけれども、氷河湖決壊の問題もございますので、今ネパール側が調査をしておるというところでございますので、それをまた今回の私ども政府調査団におきましても十分そこの点をただしてくると申しますか、調べてくるということにいたしております。  それから技術移転の点でございますが、技術移転の点につきましても、ネパール電力庁が中心的になりまして計画、設計を進めておりますので、ネパール人のいわば中核が今後とも恐らく施工に携わっていくということであろうかと思いますので、技術移転、ノウハウの移転という点は行われていくものというふうに了解をしております。  それから、御指摘のとおりのアクセス道路その他環境の問題につきましては、この計画の中に環境への直接的な影響に対する緩和策が盛り込まれておるようでございまして、関連業者にはそのことを含めた形でそれを守るべき事項が規定されているというふうに承知をしておりますけれども、この点につきましても、間接的な影響ども含めまして全体として私ども調査団としてもよく調べてくるようにということでございます。  繰り返しになりますけれども政府調査団の調査結果等を待ちまして総合的に判断してまいりたいというふうに考えております。
  54. 今井澄

    ○今井澄君 大変いろいろ配慮しておられるようなんであれですが、ここで一言申し上げておきますと、日本のお役所の仕事は、一たん始めたことは途中でいろいろあってもやめない、最後まで何かやってしまうという欠点があるようですので、時代も今変わりつつあります、もし何かありましたらぜひそこで御配慮いただきたいと思います。  それで、大臣に最後に一つお尋ねしたいと思いますが、先ほど陣内委員からも在外公館の活動について御質問がありました。全く私も同感でありまして、外交というのは非常に大事である。それで、外交活動の中では情報を集めること、これは情報を集めるというのは向こう側の人の立場に立っての物の考え方や見方はどうかを知ることだと思います。  そういう意味で、私は今回も感じましたし、この一年間ほかに三回ほど海外に私的な調査で行きまして感じたんですが、端的に申しまして、在外公館等において調査団や訪問者に対してのいわゆる便宜供与というんですか、これは過剰サービスではないかという感じを持ったんです。  今度も、確かに院の派遣ですから国の代表かもしれませんが、ほとんどの国で空港まで大使みずからが迎えに出るんです。果たしてこんなことが必要なんだろうか。必ず大使公邸での歓迎夕食会、そこでのいろいろなブリーフィングや話があるんですよ。飛行機の着く時間というのは決まっている、あるいはおくれるということがあるわけです。そこへわざわざ大使が出向くようなことをやるんだったら、その間に大使にはもっと大事なお仕事があるんではないだろうか。  それから、見て歩くのに黒塗りの乗用車を連ねていくんですね。一台一台にまた案内役が乗ったりする。運転手もつく。運転手は現地で雇い上げるのでできるだけ大勢の方がいいという日本の使命もあるかもしれませんが、そこでも非常なむだがあるように思うんです。もうそういう黒塗りの乗用車に乗るなんという常識はやめて、今バンだって非常に乗り心地がいい、安全であるということもあるわけですから、そういうことを考えたら、調査団やなんかに対してもっと合理的な、一台ではっと移動をするということとか、そういうことを考えてもいいんではないだろうかなと思うんです。  個人的な調査の場合のサービスは大変ありがたい。安全かつ安心して行ってこれるので調査に全力を注げるんですが、やっぱり多少個人的なことについてもサービスを御提供いただくことがある。このことについては、国会議員の例えば私的なことでの車の借り上げなんか、車代ぐらい出せるわけですから、こういうことに在外公館が個人的な行動にまで、どこまで個人的かわかりませんが、それを在外公館で車を借り上げ、運転手をつけてサービスを提供するということなんか果たして必要なんだろうか。ある意味では人数をふやすことも大事ですけれども、リストラが必要なんではないかということは今言われております。  そういう点についてちょっと御所見をお願いしたいと思います。
  55. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) いろいろ御指摘をいただいてありがとうございます。  私、現場を承知しておりませんので的確にお答えできるかどうかわかりませんが、推察をいたしますのに、現地の大使の方々は、日本から例えば議員の皆さんあるいは日本からおいでいただく方にお目にかかってお話を伺うということもまた重要でございます。現地現地先方お話をするときに、今日本では一体どういう状況に置かれているか、日本で興味、関心を持っているものは何かというようなことを知っていなければ現地対応できないわけですから、恐らく委員に行っていただいたところはそう多く日本から議員の方々がおいでいただかない場所もあったかと思いますが、そういう場所になりますと、余計に大使あるいは館員の人たち日本から来られた方々に接してよく話を聞くということもまた重要な仕事、任務であるというふうに思うわけでございます。  もし仮に大使公邸に来ていただいて大使がお話を聞かせていただく機会があるとすれば、それは大使にとっても大変貴重な時間でございまして、そのときにさりげなく話されるいろいろな話題というものは大使の財産にもなるわけでございまして、それは大使個人のではなくて外交活動をする上で貴重なニュースにも時としてなることがあるわけでございまして、決して遊びでやっているわけではございません。それは重要な任務の一端である場合もあるわけでございます。  ただ、委員お話しのように、合理的に事を運ぶという点について御注意がございましたが、その点は我々心しなければならないというふうに思います。かつては車を連ねて歩くことが何かステータスのような気分になっていた時期もございますけれども、今はむしろ気恥ずかしい思いをされることも時にあるかと思います。事柄を合理的に効果的に進めるという点に意を用いなければならない点もあろうかと思います。貴重な御意見として伺わせていただきました。
  56. 今井澄

    ○今井澄君 終わります。
  57. 泉信也

    ○泉信也君 新緑風会の泉信也でございます。  村山内閣が発足をいたしましたとき、その組み合わせが自民党、社会党であったこと、あるいはまた日本の政情が安定しておると思われていました中で一年ほどの間に四人の総理が誕生するといった意味、そうしたいろいろな意味から国の内外に一つの衝撃を与えたと私は思っております。  発足の直後にモンデール大使がレジティマシーという言葉を使って発言をなさったこともその一つのあらわれではないかと思っておりますし、また国内にありましては、平成元年の第五十回自由民主党大会のゲストスピーカーとしておいでになった曽野綾子さんが、「日本を国際政治のランクから改めて大きく引きずり下ろしたのは自然体と平常心を売りものにする総理や思想のない社会党の責任ではない。こういう国辱的な無茶なシナリオを書いて政権を取った自民他の現与党である。」、こうした文章をしたためておられます。恐らく曽野さんも、国際政治のランクから日本の地位が下がったのではないか、こうした思いを強く持たれたからではないでしょうか。  そこで、在外公館を初め多くの情報をお持ちの大臣として、村山内閣の国際的評価についてどのように受けとめておられるのか、お伺いをいたします。
  58. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 委員指摘のとおり、一年間に四回も内閣がかわるということはやはり正常な状況ではないと見るのは当然だろうと思います。  したがいまして、村山政権発足直後、先ほども御答弁申し上げましたが、ナポリの先進国首脳会議に参りましたときにも、外国の首脳の中にはやはりこうした続けて起こる政変に対して戸惑いを隠さない、そういう場面があったことは事実でございます。しかし、そうした戸惑いを持って接せられた各国首脳が村山総理とお会いになってその話を聞き、人となりに接した後、十分に信頼感が持てるということを感じたと私は思います。  また一方で、外国のマスメディアが村山政権に対してさまざまな論評をいたしております。新政権発足直後の論評と一カ月後の論評には随分と違いがございます。当初は、社会党政権ということで戸惑ったふうな論評もございました。しかし、その後は、その論評の中にはこれで政権は安定するかもしれないという感じの論評も散見できるようになっております。この政権が国際的に安心できる政権という評価を受けるために私ども努力をいたしたいと思います。  先ほども申し上げましたが、ある意味で幸運なことに、一月を経ずして先進国首脳会議があり、ASEAN拡大外相会議があり、それらに私ども出席をして状況説明し、考え方理解していただくことができたことは幸運だというふうに思っておりまして、現状では評価をいただけるというふうに思っている次第でございます。
  59. 泉信也

    ○泉信也君 大臣のお答えのとおりに、日本の国際的な評価が決して損なわれることのないように私ども自身も努めていかなければならないと思いますが、そうしたことの一つのあかしとして政策の継続性ということは大変重要なことだと私は思っております。そうした意味におきまして、常任理事国の問題について具体的にお尋ねを申し上げたいと思うわけであります。  村山総理の所信表明演説におきましては、この問題について、「それによって生ずる権利と責任について十分論議を尽くし、アジア近隣諸国を初め国際社会の支持と国民的理解を踏まえて取り組んでまいりたい」、このような表明がございました。  このことは、かつての宮澤総理時代になるわけですが、五年七月の宮澤内閣がガリ事務総長に提出されました意見書、安保理においてなし得る限りの責任を果たす用意があるという事実上の立候補宣言、あるいは昨年九月の国連総会の細川総理の演説、改革された国連でなし得る限りの責任を果たす用意があると、あるいはまた安保理の改組作業部会演説におきます六年三月の波多野国連大使、あるいは六月の小和田国連大使の御発言と、所信表明で述べられましたこの考え方は同一なのでしょうか、それとも変わっておるのでしょうか。
  60. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 考え方は変わっておりません。変わっておりませんが、その手順、手続について慎重に行おうということで、私は与党三党の方々と話し合いをいたしております。与党からも慎重に手続をしろという御指摘がございます。私自身もそういうふうに考えております。  それは、もう少し申し上げますと、国民の皆様方の中に、今委員も御指摘になりました安保理常任理事国にもしなるということになったときに、日本の国が果たすべき役割というのは一体何なのかということについて十分理解があるかどうか、あるいは、アジア近隣諸国を初めとして諸外国日本に対して一体何を期待しているのかというようなことをよく確認してといいますか、よく承知の上で作業を進めるべきではないかということでございます。  ただ、もう少し申し上げますと、実は国連自体の改組というものがあくまでもその前提にあると考えなければならないと思います。創設五十年をもうじき迎える国連でございます。創設当時に比べれば今国連加盟国の数は格段にふえてきておりまして、また、国連が果たさなければならない役割も、創設当時には恐らくそう重く思わなかったエイズの問題であるとか環境の問題であるとか、そうした問題などが期待されるという昨今でございますだけに、国連それ自体の改組の問題が大きな問題としてあるわけです。その改組の問題の中に、安保理が果たす役割は一体何かという議論がございます。  そして、安保理の機能あるいは安保理の運用、そういったことについて十分作業部会を中心に議論が行われているわけでございまして、この作業部会のこうした議論が実は非常に重要なんだと思うのですが、ややもするとそうした議論を飛び越えて、入るか入らないかという非常に飛び越えた議論になっております。また、入るか入らないかと言ったって、日本が入りますと言ったって入れるということが決まるわけでもございますまい。支持をしてくれる国があるかということも考えなければならないわけで、慎重に事を運ぶというのは当然のことだというふうに考えておりまして、もう一度繰り返しになりますが、私どもは慎重に事を運ぶということが必要だと思っているわけでございます。
  61. 泉信也

    ○泉信也君 考え方の基本は変わってない、ただ慎重にと、こういうお言葉だと受けとめさせていただきました。  しかし、この問題はきのうきょう始まった話題ではございませんし、課題ではありません。現に参議院の予算委員会あるいは外務委員会においてもしばしば取り上げられてまいったわけでありまして、今さら慎重にという言葉は世界の多くの国々に誤解を招く発言ではないか。既にドイツ、日本の常任理事国入りについては多くの国々がこのことを支持しようというお気持ちだと承っておるわけであります。  そこで、外務省の事務当局にお尋ねをいたしますが、それによって生じる権利と責任というのは、再三御議論いただいておるので恐縮ですが、具体的には何か常任理事国入りすることによって生じるのかどうか、この点をまずお答えいただきたいと思います。
  62. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  御承知のとおり、安全保障理事会は、国連憲章におきまして、国際社会の平和と安全の維持に関する主要な責任を有する機関であるというふうに規定されているわけでございます。  基本的には、安保理の常任理事国になるということにつきましては、このような安保理におきまして常に発言権を行使し得る立場に立つという点がまず第一にあると存じます。  それから、安保理におきましては、世界の平和と安全の維持の問題に関しましてしばしば議論がなされ、また決定がなされるわけでございますがこのような安保理の意思決定に参画する権利が生ずる、またこれに参画する責任も有することになるということが言えると存じます。  なお、国連憲章上、常任理事国とその他の一般のと申しますか、非常任理事国あるいは非常任理事国でもない加盟国との間で、例えば軍事的な義務について何か差があるのではないかということがよく言われている次第でございますけれども、国連憲章上はそのような差異はないということでございます。  基本的なところは以上のところであると思います。
  63. 泉信也

    ○泉信也君 今お答えをいただきましたように、基本的な差異はないというふうにこれまでも御議論をいただきましたし、今の御答弁もそうだと私は思っております。にもかかわらず、こうした表現をされるということについては甚だ疑問を持たざるを得ないところでございます。  また、国際社会の支持と国民的理解ということにつきましては、恐らくASEAN外相会議等におきましても大臣は積極的な御発言をしていただいたと思います。  もう一つ、国民的理解については、外務省がことしの一月に調査をなさった結果は、大臣も御承知のとおり、少なくとも安保理に入ることにつきまして賛成を表明された国民の数が約五三%、反対が一五%という数値が出ておるわけであります。これだけをもってすべての国民が納得をいただいておるというのは早計かもしれませんが、なおこれから国民的理解を得るためにどのようなプログラムのもとでお進めになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  64. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) きょうの委員の御質問は、国民的理解を深めるために極めて有効だと思います。国会での議論あるいはその他マスメディアを通しての議論、いろいろ起こってくるに違いないというふうに思っているわけでございます。  先ほどお話がございました権利と責任につきましても、今局長から御答弁を申し上げましたような認識というものは、それでは果たしてどのくらいの人が持っているかということもまた考える必要があると思います。十分議論をして理解していただく、その上で行動をするということが重要なんだというふうに思っているわけです。  ただ、もう一点申し上げたいと思いますことは、これはもう我々の準備が整うまで待てるかどうかという問題も恐らく委員のお気持ちの中にあるのではないかと思います。  確かに、国連の改組というものはそうしょっちゅうあるわけではないわけで、外国の方にそういうお考えがあるかどうかわかりませんが、我々日本人的感覚からいうと五十年というのはやっぱり一つの節目で、したがって五十年だから改組、こういう気持ちがそこに高まっていくとすると、この五十年目の節目で変わらないと、次は百年とは言わないでしょうけれども、次の節目までどういうことになるのかなという意見もきっとあるだろうと思うんです。そこらを踏まえて我々は作業はしていかなければならない。  したがって、作業は慎重にという言葉はゆっくりということかと言われれば必ずしもそうではない。しかし、綿密なあるいは緻密な理解を求める作業というものはやっていかなければならないというふうに思っているわけでございます。
  65. 泉信也

    ○泉信也君 今、大臣のお答えにございましたように、五十周年という一つの節目でこの国連の改組の問題の大きな動きがなされるというわけでありますので……
  66. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) あるかもしれない。
  67. 泉信也

    ○泉信也君 承知いたしました。  ガリ事務総長も、一九九五年までに完了すべきだというそうした期待は存在しているし私もその実現を願っている、こういうことをレポートの中で訴えておられるわけでありまして、そのことも踏まえますと、この秋の国連総会で大臣はどのような日本の立場を表明されるのか。私といたしましては、日本の立場を世界に明確にする、そういう時期に来ておるのではないか。推されればなる、日本式に言えば謙譲の美徳で大変評価をされるところでありますが、そうした中にあっても日本の意思をきちんと世界に向けて明らかにするということは大変重要だと思えてなりません。  そこで、作業部会の報告も既にでき上がっておるやにも聞きますが、この九月末にでも行われます総会において、日本外務大臣としてどのような発言をなさるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  68. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 国会のお許しがあれば、私、国連総会に出向いて演説をしたいという気持ちでございます。  この国連総会は、先生おっしゃるように大事な場面だというふうに私は思っております。それは常任理事国問題だけを指して言うのではなくて、先ほどから申し上げておりますように、国連全体についてみんなが考えなければならないというふうにみんなが思っている時期でございますだけに、国連が果たすべき役割をどういうふうにその期待にこたえるか。運用の問題もございましょう、機構の問題もございましょう、いろいろな角度でみんなが議論をしようという場面でございますだけに、私も行ってそうした多くの人たちの演説も聞きたいと思いますし、日本考え方を申し上げることは重要だというふうに思っております。  さて、それでおまえは行って何を言うのか、こういうことでございますが、先ほども申し上げましたように、お許しがいただければ行きますという気持ちでございますが、そういう気持ちを持って今演説の草稿を練っているところでございます。まだどういう演説をするかという原稿まで至っておりません。先ほども申し上げましたように、綿密な手順、手続をやりたいと思っておりますから、いろいろな方の御意見も伺わなければならないと思います。国民の意思もよく調べたいというふうにも思いますし、国際的な動向についてもよく耳を傾けなければならないと思います。十分慎重に草稿を練りたいと思っておりまして、今まだ中身については固まっておりません。
  69. 泉信也

    ○泉信也君 草稿を練っていらっしゃるということでございますので、先ほど申し上げました日本姿勢をはっきりと示していただきますように私はぜひともお願いをしたい。特に、総理の所信表明の文言は大変誤解を招くおそれがある。従来の日本政府の方針といささかも違いがないということを明確におっしゃっていただきたい、このように思うところでございます。  この問題は時間もございませんので一応終わらせていただきます。  もう一つだけ、先ほどの国際的な評価という視点からも村山内閣の政治的な正統性というものについて、外務大臣というよりも副総理というお立場で一言だけ伺いたいと思います。  公党の政策はまさに国民に対する重要な約束事でありますが、今回の政権協議成立後の連立を組まれました社会党のと申しましょうか、村山総理の御発言は、大変本来の政治の王道からしますと逸脱をしておるのではないか、国民の政治不信を高めることにもなっておるのではないかと私は危惧をするものであります。  そこで、連立という政権をつくられます際には、事前に政策を国民に訴えて、評価を、支持を仰ぐか、あるいはつくられた直後にできるだけ早く選挙民の判断を仰ぐということが私は政治の王道であろうと思っております。そうした観点から、この政権誕生後二カ月ほどになるわけでありますが、できるだけ早く解散を図り、そして国民の判断を仰ぎ、その上に政権をつくられ、国際社会においても正しい評価が得られるようになさる御意向があるやなしや、お伺いをさせていただきたいと思います。
  70. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) いろいろな視点があると思います。  先生の御指摘のような御意見があることも承知をしております。また一方で、現在の日本の社会経済全体を見ますと、むしろここは政治が安定して推移してほしいという気持ちが一方にあるということもまた無視できないと思います。  もし、これ以上政治が混乱を続けていくというようなことがあれば、恐らく経済を立て直すということは極めて難しい状況になるだろうと思います。政治の安定が経済を立て直すためにやはり必要だという視点に立てば、ここは景気の回復を考えて、政治はむしろ安定的に推移していくということが望ましいという民意が聞こえてくるとするならば、それは委員指摘のように、やっぱり選挙をやるべきじゃないかということにはきっとならないだろうと思います。  民意はやがて参議院の選挙でも表明されるというふうにも思いますし、私は、村山総理の横におりまして、むしろ政治は安定を重視していくべきだという助言をしたい、こう考えております。
  71. 泉信也

    ○泉信也君 ありがとうございました。
  72. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 さきの大戦についての戦争史観でございますが、これは諸外国、殊にアジア諸国の重大な関心事でございますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。  外務大臣は、昨年の九月に自民党の臨時党大会でのクロストークセッションで次のように発言されたというふうに伺っております。  さきの戦争において侵略的行為があったことは否定できない、軍国主義の指導者が行った間違った行為だった、こういうふうに発言されたと伺っております。現在も同じお考えでしょうか。
  73. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) さきの大戦に関する認識につきましては、村山総理が過日所信表明演説でお述べになりましたとおり、我が国の侵略行為や植民地支配などが多くの人々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらしたことへの認識を新たにして、深い反省の上に立って、というのが私の基本認識でございます。  私が党大会で何人かの人たちと一緒のクロストークの中で申しました発言は、帝国主義的指導者が行った間違った行為だったというふうに私は申しました。あのときの私の発言は今でもそう思っております。
  74. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 ところで、来年は終戦五十周年を迎えるわけでございますが、それを機会日本として不戦決議をするというお考えはおありでしょうか。
  75. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 委員の御指摘は国会決議という意味だと思いますが、国会決議ということであればこれは国会、院の問題でございまして、閣僚として院の決議について余り申し上げる立場でないと言うべきだと思います。
  76. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 それでは、同様に、来年の五十周年を機会に、日本が率先して核兵器の使用禁止条約、その締結を世界に向かって提唱してはどうかと考えますが、外務大臣としてはそういう取り組みのお考えはございますでしょうか。
  77. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 私は、国連が主催をいたしました軍縮会議がことし広島でございましたけれども、その広島で行われました会議出席をいたしまして、来年決意を新たにするべきだということを申し上げたことがございます。  現在、国連におきましては、来年長崎でやはり軍縮のための会議を行うということを予定しているように聞いております。私は願わくば広島あるいは長崎という被爆地で核保有国のハイレベルの方にお集まりをいただいて核廃絶に向けての決意が語られることが望ましいというふうに思っております。
  78. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 それでは、関連いたしまして戦後処理問題についてお伺いいたします。  従軍慰安婦の問題につきまして、過日、村山総理韓国マスコミのインタビューに答える形で、個人補償は考えていない、こういうふうに表明されました。また、五十嵐官房長官も、個人補償しないのは政府の一貫した方針である、こういうふうに述べられたというふうに報じられております。  国として個人補償をする考えはないというふうに理解してよろしいんでしょうか。
  79. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) さきの大戦にかかわる賠償、財産請求権の問題につきましては、サンフランシスコ平和条約あるいは二国間の平和条約及びその他の関連する条約などによって誠実に日本対応してきているところでございまして、政府として御指摘がございました元慰安婦の方々に対する個人補償を行うということは考えておりません。  これも、私は昨年官房長官といたしましてこの問題についてその調査等の責任者でございました。その調査の結果を発表する際に、私は調査内容を見まして元慰安婦の方々におわびと反省の気持ちを申し上げたわけでございますが、このおわびと反省の気持ちは国としても、どういう形かは別として、何かあらわさなければならないのではないかというふうに考えておりまして、目下検討中でございます。
  80. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 これも報道によりますと、政府は現在、民間募金での基金構想を考えているというふうに伝えられております。  民間からの拠出金によって被害者への支払いに充てるというのが政府としての基本方針なんでしょうか。
  81. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 民間の募金でこの問題を云々ということを政府が考えるというのは正確ではないと思います。民間の募金なり、民間が自発的にこういうことをやろうといってそういう機運が高まって、国民的活動というんでしょうか、そういうものが高まってきて何かをなさるということがあれば、それについて政府がお手伝いをするということはあるいはあるかもしれません。しかし、政府の考え、政府の意図でそういうことが行われるということは、私自身そういうことを考えているわけではございません。  いずれにしてもこの問題は、先ほど申しましたように、鋭意検討中であるという状況でございます。
  82. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 それでは、同じく戦後処理問題に関連して、被爆者援護法についてお伺いいたします。  大臣は、昨年の十二月、広島市の記者会見で、原爆二法を充実させるだけでは十分でないとの不満があることは承知しているというふうに述べられたと報道されております。  この被爆者援護法につきましては、我が党そして社会党も強力にその制定を主張してまいりました。昭和四十九年の第七十二回国会以来、繰り返し提出されております。そして、平成元年の第百十六回国会、また平成四年の第百二十三回国会の二回、この参議院では可決されておりますが、いずれも衆議院で審議されないまま廃案になっております。  現在、国家補償の精神に基づく援護立法というものは、日本人の軍人軍属等を対象といたしました戦傷病者戦没者遺族等援護法及び戦傷病者特別援護法、この二法だけであります。つまり、日本では、民間人を除きまして軍人軍属の救済、そしてまた日本国籍を持つ者を対象とする救済、こういう救済のあり方をとっているわけでございますが、外務大臣はこうした救済のあり方を妥当と考えておられるかどうか、あるいは妥当でないとお考えであるとすればこれをどのように解決すべきとお考えかお知らせください。
  83. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 私のかつて行った記者会見の内容については、ちょっと資料を持っておりませんので、正確に記憶をしておりませんので、それについてはお許しをいただきたいと思います。  被爆者援護法の制定問題につきましては、これまで自由民主党といたしましては、少なくともこの援護法が国の戦争責任を前提としている、それから他の一般戦災者との均衡上問題がある、こういった点でこの問題については賛成しかねるという態度をとってきたわけでございます。  しかし今回、連立与党として、社会党、新党さきがけと連立内閣を組むに当たって三党は政策的整合性というものを重視していかなければならないということもございます。この問題について、三党の一致点を見出す努力をしていかなければならないというふうに考えておりまして、今せっかく与党内部で検討が進められております。私どもはその検討を注視しているところでございます。
  84. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 これにつきましては、被爆者援護法を成立させるのか、あるいは現行の原爆二法の改善充実にとどまるのかを分ける最も重要なポイントは、今大臣がおっしゃったように、国家補償という考えを認めるか否か、また、その前提として国の戦争責任を肯定するかどうか、大変根本問題がかかわってまいります。  今、鋭意御検討中ということでございますが、被爆者の方々は高齢になっておられますので、何とか早期に十分な救済がなされる被爆者援護法の制定に向けて努力をしていただきたいというふうに要望させていただきます。  次に、他の多くの国々が批准しながら日本がまだ批准していない条約というのがたくさんございますけれども、きょうはその中で四つの条約について伺いたいと思います。  まず、ILOの百五十六号条約、これがまだ批准されておりませんで、私どもはこの早期批准をずっと主張してまいりましたが、外務大臣、この批准を前向きにお考えなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  85. 高野幸二郎

    説明員高野幸二郎君) お答えさせていただきます。  百五十六号条約につきましては、委員既に御承知のとおり、政府といたしましてもその早期批准に向けてはこれまで鋭意努力してきたところでございます。  特に、例の育児休業法、これの成立によりまして批准に向けての環境が大幅に整備されたというふうに私ども考えておりまして、あといま一息の努力、早期批准にこぎつけたいというふうに考えているところでございます。
  86. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 それでは、あと一息ということでございますので、私どもも期待して待たせていただきたいと思います。  それから、人権関係の条約でございますが、人種差別撤廃条約、それから国際人権規約第一選択議定書、そして拷問禁止条約、これについても日本はまだ批准しておりません。これも批准をされる方向で準備されているのか、批准できない理由はどこにあるのかをお答えいただきたいと思います。
  87. 高野幸二郎

    説明員高野幸二郎君) まず、今お尋ねの三本の条約全体につきまして申し上げますと、もちろんこの三本の条約ともその目的、趣旨等におきまして政府としても賛同できるものでございます。したがいまして、そういう観点から従来より検討を続けてきたところでございます。  ただ、申すまでもないことではございますが、批准となりますと、その条約の忠実な遵守、実効性の担保という観点から種々検討を要するところでございまして、一言で申し上げれば、現在、引き続き鋭意検討中というのが現状でございます。  お尋ねの、なぜかという点でございますが、時間の関係上簡単に申し上げますと、まず人種差別撤廃条約につきましては、これは委員御承知のとおり、例の四条の処罰義務というのがございます。それと、日本国憲法で保障されております表現の自由との整合性の問題というところがいまだなお政府部内において調整がついていない。  それから、二本目の人権B規約の選択議定書、個人通報制度につきましては、これもまた委員既に御承知のとおり、この個人通報制度というものと日本国内の司法権の独立、これの関係の調整がいまだ政府部内において見ていないというところでございます。  それから、拷問禁止条約につきましては、例のこの条約に違反した外国犯罪人といいますか、通常、外国政府の公務員がこの拷問禁止条約に違反した行為を行って日本国内にいる場合、仮に日本がこの条約の当事国であった場合はその者を捕らえて処罰する義務が生ずるわけでございますが、それを日本の国内法上どう担保し、特に当該の人間が外国政府の元ないしは現職の公務員であるものでございますから、そこのところを外国政府との関係において、処罰に必要な情報をどうやって当該外国政府から入手し、条約で要求されております処罰まで持っていけるか、そこの担保のところがいろいろ事務的にはなかなか難しいというふうなことで、いまだ検討中というところでございます。
  88. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 時間が来ておりますから。
  89. 浜四津敏子

    浜四津敏子君 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  90. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 七月二十五日付の朝日新聞で、米側の資料に基づき、米軍の低空訓練のために東北、中部、近畿、四国の山間部に四つの日本航法訓練ルート、これが設定されているということが明らかになりました。この事実関係はどうだったでしょうか。
  91. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) お答えを申し上げます。  ただいま先生御指摘になりました報道でございますが、この報道が主題としておりますところの飛行訓練でございますが、米軍が我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与するという安全保障条約の目的達成のために日本に駐留をしておる、そのために我が国におきまして必要な訓練、この飛行訓練を含むそういう訓練を行っているということは私ども承知をいたしております。  この飛行訓練を行います際に、米軍がルートを設けているかどうか、こういうことでございますが、私ども詳細具体的には承知をいたしておりませんが、一般的にこういうルートを設けるということがあるということは私ども承知をいたしております。
  92. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 米軍側で十津川村での事故に関する報告書を手に入れたということで、四つの色分けをしたルートが報道されており、それについては外務省としても承知しているはずなんですけれども、その点について答えてください。
  93. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 先生御指摘の米軍機の事故報告書にかかわる資料を私どもも入手をいたしましたが、そこにルート、飛行経路というものが言及されているということは私ども承知しております。その報告書の中におきましても、この飛行経路の具体的位置、こういうものが明確に言及されているというふうには私ども承知をいたしておりません。  先生御指摘の四つというお話がございましたけれども、四つなのか、あるいはこれ以上あるのかというような詳細につきましては米軍の運用にかかわる問題でもございまして、私どもその詳細を承知はいたしておりません。  いずれにいたしましても、いわゆるルートといいますのは私ども理解では必ずしも固定的なものではございませんで、必要に応じて修正されたり変更されたり、そういうことがある、こういう性格のものだというふうに理解をいたしております。
  94. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 ちょっと質問にきちっと答えていただきたいんですが、ここではグリーン、ピンク、ブルー、そしてオレンジと四つの色分けされたルートが示されており、それについては承知しているわけですね。その点だけ端的にお答えください。
  95. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 私ども、色分けされた形で地図の上で示されているというような資料は承知いたしておりません。
  96. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 地図の上ではなくて、この事故報告書の中にこういうルートがあるということはきちっと承知しているというふうに言っているわけですから、その点はっきりお答えください。
  97. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) そういう名前のルートが言及されているということは私ども承知しております。
  98. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 やっとお認めになりました。  我が党は、この問題を再三再四これまで取り上げておりましたが、日本政府が初めて公式にこういう米軍の低空飛行等について訓練ルートがあるということを確認されたということで、これは非常に重大な問題なんですけれども、このルートについて、これは一九九一年当時の事故報告書によるものですが、それが現在このルートがそのままなのか、そのほかにもルートがあるのかということについてはどうなんでしょうか。
  99. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 私ども、ただいま先生の御質問の点は米軍の運用にかかわる問題でございまして、詳細承知をいたしておりません。
  100. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 これは米軍に問い合わせもしていないし、承知していないということなんですが、現在、どういうふうにルートが設定され、訓練が行われているのかということは極めて日本国民にとって重大な問題であり、これについては報道されない限り米軍に聞かないという態度ではなくて、直ちにやっぱり照会をして、報告をしていただきたいと思うんですけれども、これは大臣いかがですか。
  101. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 大臣からお答えがございます前にもう一言申し上げさせていただきたいのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、米軍が安保条約の目的達成のために我が国に駐留しておる、そのために必要な訓練を行う、このことは地位協定上も認められるところでございまして、私どもそのように認識をしている次第でございます。  ルートというお話でございますが、ルートがあるない、ルートを設定するかどうかということは、私どもは本質的な問題と申しますか、そういう問題ではないんじゃないかというふうに思うんです。それは、飛行訓練の目的の達成とか、飛行の安全性の確保とか、あるいは住民の方へなるべく迷惑がかからないようにしなきゃいけない、そういう必要性から米軍がそういうルートということを考えるということがあっても、そのこと自体が問題だというふうには私ども考えないわけでございます。  私どもがやっぱり配慮するといいますか、考えなければいけないことは、米軍の必要性ということはございますけれども、他方において公共の安全性とか住民の方に迷惑がかかるとか、そういうことがないようにしなきゃいけない、そういう点は米軍に対しても私ども日ごろ申しておりますし、アメリカ側もそういうことは十分認識をして、そういうことに注意して訓練をする、こういう状況になっている次第でございます。
  102. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 今、ルートの設定については本質的ではないという答弁は、私は本当に日本の国民の安全にとって極めて重大な答弁だというふうに思うんですね。  米軍の低空訓練が五年前に始まりました。もう全国各地で被害が相次いでおり、八七年以来、実に二百二十七件に及んでおります。これは今言われた四つのルート以外にも行われて被害が発生し、私の北海道でも特にひどい被害が発生しております。  平成五年の九月二十九日に、天塩町では町営牧場で二百頭の牛が放牧されていたんですけれども、ここでは物すごい轟音のためにこの二百頭の牛が暴れて、牧さくは壊すわ、ライトバンの上にの上がって、そしてこのライトバンも壊すというような大変な被害も生じているわけですね。  地位協定の取り決めもないのに、それから提供した施設でも訓練空域でもないのに、米軍がもう勝手に訓練ルートを設定して自由自在に訓練を行えるという根拠は一体何なんでしょうか。
  103. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 根拠は何かというお尋ねでございますが、地位協定の立て方と申しますのは、こういう種類の訓練はいいというふうに書いているという、そういう立て方には実はなっていないわけでございます。米軍によりますところの例えば実弾射撃を伴うといったような、そういうものであれば別でございますが、そうでない通常の飛行訓練、こういうものは地位協定上、施設、区域の上空に限定して行うことが予想されている活動である、こういうわけではございませんで、施設、区域の上空外においてもこれを行うことは地位協定上認められているところだ、こういうことでございます。  しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、それじゃどういうことをやってもいいのかといえば、そうではないわけでございまして、やはり米軍としても公共の安全、そういうことに十分な考慮を計らうべきことは当然でございまして、先生御指摘のような、そういういろいろな迷惑でありますとか、そういうことが生じないように極力努力をしなきゃいけない、こういうことは当然だというふうに私どもも考えておりまして、そのことを米側には日ごろ申しておる、米側もそういうことは十分認識しておる、こういう次第でございます。
  104. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 これはもう最後になりますので大臣にお答えいただきたいんですが、言ってみれば地位協定上は米軍はもう意のままに自由自在に訓練をしてもいいという、そういうことであって、これは本当に私は驚きを覚えるんです、屈辱的だというふうに思うんですけれども。  地位協定上の問題を出されました。しかし、ここでは二条、三条、五条で、提供した区域、それからその区域の出入りのための周辺、それから基地間の移動、これについて訓練ができるんだというふうに言っているわけなんですね。これ以外の規定がないわけなんですよ。  ですから、地位協定土はそれ以外はいいということには絶対ならないわけで、米軍マニュアルでも、日本で言えば日本の国と対立する法律については日本の国内法を適用するんだというふうにもうはっきり言っている。西ドイツでも、NATO軍について事前に計画を出させてチェックして同意をしてそして飛行訓練をさせるというふうに、みんな自分の国の空の権利ですね、主権をしっかり守っているわけですよ。日本も、私たち認めているわけではありませんが、自衛隊についても訓練空域以外は訓練してはならないというふうにこれはなっているわけで、どうしてアメリカ軍だけが日本の空を自由に飛んでいいのかということについてはだれも納得できない問題であって、もう主権を放棄しているというふうに言わざるを得ない。  被害も大変大きいわけですから、私はここは大臣に、訓練ルートを撤回させると同時に、この低空訓練を中止せよと米側に申し入れるということをぜひやっていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
  105. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 日米安保条約の目的を達成するためにパイロットの技能の維持というものが重要であるという問題が一方にあると思います。もう一方で、先ほど来御答弁申し上げておりますように、公共の安全というものをきちんと守るということがこれまた極めて重要だというふうに思います。  今、委員からるる御指摘がございました。新聞等でも指摘をしているところでございます。外務省としては、これまでも必要に応じて米軍に対して、地域住民の安全確保、地域住民に与える影響を最小限度にしてほしい、するべきであるということを申してきているわけでございまして、さらに、委員の御指摘もございますこれらの問題について十分調査をし、申し入れするべき状況であるということであれば申し入れをいたしたいと思います。
  106. 高崎裕子

    ○高崎裕子君 終わります。
  107. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 村山総理が昨二十三日から東南アジア四カ国歴訪の旅に出発されました。村山総理はそこでアジア重視の基本姿勢の継承を表明されるとのことであると聞いております。しかしながら、アジア新時代を念頭に置いた日本外交の新たな指針を打ち出すには至らないようだとの観測がなされておるのでございます。  思うに、日本が現在の対米追随外交から抜け出して真に主体的な自主独立外交展開するためには、近隣のアジア諸国から本当に信頼される国、警戒感を持たれない国となることが必要不可欠であると考えます。日本がそのような国家になればアジア諸国はアメリカの軍事的プレゼンスを求めなくなるでしょう。そのためには日本はどうあるべきなのか、何をしなければならないのか、課題は多いと思います。  そこで河野副総理、対アジア外交の基本的課題が何であるのかという点について御認識と我が国の対アジア外交に関する基本方針をまずお伺いいたしたい。
  108. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 一番大事なことは、アジアの国々とともに考え、ともに行動するということだと思います。我々がアジアがどうあってほしいとか、どうあるべきだということを日本だけで考えるのではなくて、アジアの国々とともに考えるという態度、そして、ともに汗を流すという姿勢が何より必要だというふうにまず考えております。  村山総理アジア重視ということを大変大事にしておられまして、アジア外交を大事にしておられまして、今回総理大臣になられてから、これまでのスケジュールどおりナポリのサミットには出席をされました、それから現在朝鮮半島におきます北朝鮮の核開発疑惑という問題に対応するために訪韓をされましたが、御自身のお考えで外国へ行かれたのは今度のアジア訪問が初めてでございます。総理は今回のアジア訪問に当たりましても、我々はアジアにしっかりと軸足を置いて物を考え行動していく必要があるという意味のことをおっしゃっておられたわけでございます。  一方、アジア・太平洋地域の経済的な発展は目覚ましいものがございまして、国際社会はこれを注目いたしております。しかし、アジアの国々がただ単に経済的に発展をしていくから注目をされるというのではなくて、やはりその地域におきます多様性、多様な価値観、あるいは開放性、そういったものを大事にしながらアジアの地域がよりよい国づくりができるような、そういう環境が整っていってほしいと心から念願をしているわけでございまして、冒頭申し上げましたように、これらの国々とともに考えともに汗を流す、そういう態度で臨んでまいりたいと思っております。
  109. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一問お尋ねします。それは、戦後五十年五十年と言うわけでありますが、その戦後処理の一つについてお尋ねしたい。  我が国は北東アジアの朝鮮半島、中国、東南アジアASEAN諸国等に対して過去の戦争で多大な迷惑をかけた。現在までにそのことで何人もの総理が謝罪の言葉を述べられた。しかし、国家間での賠償問題は既に大方片づいているとしても、国民個人のレベルではいまだに真の償いがなされたとは言えない状態にあると思います。残っておると思います。既に半世紀が過ぎようとしているが、今がこの問題を解決する好機であり、さらに後の世にまで問題を先送りすべきではないと思います。単に口先だけの謝罪ではなく、相手の身になって国家としての具体的な補償措置をとるべきである。  この際、受け身の対策、小出しの対策ではなく思い切った根本的な対策をとって全面的な解決を図ることがアジアの国々、アジアの人々の真の信頼をかち得る我が国百年の礎を築くことになると考えるものであるが、外務大臣の御見解を承りたい。
  110. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 喜屋武委員がかねてから御指摘のとおり、アジアの国々と日本との関係について何代もの政権がいろいろと発言をし、主張をし、また実行もしてまいりました。しかし、依然としてこの問題についてはまだ残されている問題もございます。その問題についても、今先生御指摘のとおり、国と国との関係ではこれは終わっているということでございますから、政府としてこれにどうするかということはこれは正直言って難しい、できない相談だというのが率直なところでございます。  しかし、新聞の報道によっても、あるいはその他我々が見聞するところでも、五十年間本当につらい思いをじっと抱えて今日までこられた方々がおられるということも事実でございますから、こうした方々に何かできないかという気持ちを私は持ってきたわけでございます。我々がこうした気持ちをあらわす方法が何かないかということを思い続けておりますが、依然としてこれという決め手になるような知恵もないまま五十年の歳月がもうじき来ようとしているわけでございます。  村山総理もその点について、恐らく今回のアジア訪問でまたいろいろと御自身の目で見てこられるものもあるかもしれません。国の立場、条約その他というものも現実にございます。そういう条件の中で一体何がなし得るかということについてよく考えなければならぬという状況でございます。これまで何度も先生のそうした御意見を拝聴いたしまして、我々繰り返し繰り返し自問自答しているところでございます。  来年が戦後五十年という一つの節目でもございます。この節目に我々がどう対応するか、真剣に考えたいと思います。
  111. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 持ち時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  112. 翫正敏

    ○翫正敏君 大臣に質問いたしますが、私が外務省の方に七月二十九日付で資料要求ということで文書で、米海軍省法務総監事務所が公開したところの事故調査報告書、内容については、一九九一年、平成三年の十月に奈良県の十津川村において林業用のワイヤを米軍機が切断した事故のこの調査報告書について、きょうの質問にどうしても必要だから提出してほしいというふうに資料要求しましたが、結局一カ月近くたってから回答がありましたのは、見せられないと、こういうことだったんです。こういう事実について報告を受けておられますか。いや、受けておられないならおられないで結構です。
  113. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 受けておりません。
  114. 翫正敏

    ○翫正敏君 事務当局の方に尋ねますが、どうして見せてもらえないのか、提出してもらえないのか、簡潔にお答えください。
  115. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 私どもが得ました資料は、これは報道されております資料と同じかどうかわからないのでございますが、いずれにいたしましても得ました資料は米側から部外秘にしてほしいと、こういうことで入手したものですからお出しできなかったと、こういうことでございます。
  116. 翫正敏

    ○翫正敏君 アメリカが秘密にしてくれというふうに言ったんですか、だから出せないと、こういうことですか。
  117. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) そのとおりでございます。
  118. 翫正敏

    ○翫正敏君 大臣にもちょっと尋ねておきたいんですが、この報告書に書いてある内容が七月二十五日付の新聞に報道されておるわけなんですけれども、訓練ルートというものを四つ設定していると、こういうことでございますが、これが一応事実であるということは先ほど答弁がありましたですね。四つのルートを設定しているということは事実であると、こういうことでありましたが、そういうふうに文書に書いてあるということは事実だと、こういう表現だったかと思いますが、ただこれは固定的なものではないと、色分けしてあるわけでもないと、こういうお答えでした。  いずれにしても、こういう訓練ルート、訓練場所というものを日本がアメリカに提供する場合には地位協定に基づいて日米合同委員会で協定を結ばなければならないと、こういうことになっていると私は理解しているんですが、例えば小松の飛行場なんかについてもそういう協定が結ばれているわけなんですけれども、それは大臣いかがでしょうか。
  119. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 先ほども申し上げたかと思いますけれども、ここで先生が御指摘になっておりますような通常の形での飛行訓練、例えば実弾射撃を伴うものでありますとか模擬爆弾を落としますとかそういった種類の訓練ではございませんで、通常の飛行訓練を行うということは、これは地位協定におきましてもいわゆる施設、区域の中のみでしか行えないものというふうには認識をされてないものだというふうに私どもは考えている次第でございます。したがいまして、こういう形の訓練が施設、区域以外において行われるということ、このこと自体は問題ではないというふうに考えております。
  120. 翫正敏

    ○翫正敏君 問題なのか問題でないのかということをよく調べるためにもやっぱりこの事故報告書を国会に提出していただくということが大切だと思いますが、日本語に訳していただいた方がなおありがたいんですが、英文のままでも結構ですけれども、大臣の責任でやはり委員会の方に提出していただくと、こういうお答えをいただけませんでしょうか。
  121. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 書類の性質によると思いますので、いかなる性質のものか私が一遍調べてみます。
  122. 翫正敏

    ○翫正敏君 じゃ、そういうことで大臣の方で検討していただくようによろしくお願いを申し上げます。  米軍が日本の空の上を飛ぶときには、日本の航空法の適用を受けないという形になっておりまして、日本の自衛隊であろうが民間機であろうが百五十メートル以下の高さでは飛んではいけないというふうに決まっておりまして、障害物のあるところや人家のあるところでは三百メートル以下の高度で飛んではならないというふうになっていますが、アメリカ軍に対してはこれが適用除外というふうに、昭和二十七年の七月十五日付の法律でそういうふうになっているわけですね。これは私は異常なことだというふうに思うんですが、この点についても一度検討して、そして、こういうことはやっぱりよくないと思いますので法律を直すということで、米軍に対してもちゃんと日本の国内法が適用されるようにと、こういうふうにすべきと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  123. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 大臣からお答えがあります前にちょっと申し上げさせていただきたいと思いますのですが、先生御指摘のとおり、米軍機の飛行につきましては航空法その他の規定の適用はない、こういうことになっております。若干の、二、三の規定は適用がございますが、原則として適用はないわけでございます。しかし、米軍は全く自由に飛行訓練を行ってよい、こういうわけではございませんで、関係国内法令等にある安全基準を尊重する、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきということは言うまでもないことだと思います。このことは地位協定の第十六条で、米軍が日本の国内法令の尊重義務を負っているということがうたわれているということからも明らかであると思います。  したがいまして、先生がただいま御指摘の最低の高度、百五十メートルでありますとか三百メートル、こういうことは米軍も承知をしておりまして、したがいまして飛行訓練をするに当たりましてはこれを守るということで行っているというふうに私どもは承知をいたしております。
  124. 翫正敏

    ○翫正敏君 守らないから事故が起こったり、ロープを切ったり、それから窓ガラスを割ったりとかいうそういう被害が多発しているわけです。そういう事実があるわけですから、そういうことについてやっぱりこの法律を見直すということが必要だと思いますので、大臣、ちょっと一言お願いします。
  125. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 先ほども御答弁申し上げましたように、日米安保条約の目的が達成されるためのパイロットの技能の維持というものはやはり必要なんだと思います。そういう技能が維持されなくていいということではないわけでございますから。  しかし他方、公共の安全、あるいは地域住民の被害が最小限度に食いとめられる、あるいは地域住民の被害がないことが一番望ましいわけでございますが、そういうことが一方にあるわけでございまして、その両方が両立されることが一番望ましいわけでございます。  そのために努力を米軍もしておられるものと確信をいたしておりますが、事実として今御指摘のような被害が出るということがあれば、それらについては、先ほども申し上げましたとおり、米軍にはそうしたことのないように申し入れをしなければならないというふうに思っております。
  126. 翫正敏

    ○翫正敏君 先ほどの答弁のときにも申し入れをするというお答えがありましたので、それを今尋ねようと思ったんですけれども。  その申し入れの具体的な内容ですが、被害が頻発しているということがあるので困る、何とか被害が出ないようによろしくお願いしますというそういう内容の申し入れ、つまり陳情的なそういうものになるのか。それとも、このルートの問題につきましても、そういうものを設定するときには日米で協議をしてちゃんときちっとやると、やりなさいと、勝手に自由気ままに飛んでもらっては困るというような非常に厳しい日本側の立場を申し入れするのか。  その辺のところがあると思いますので、もちろんこれから検討していただいて結構なんですけれども、一応その申し入れの内容ということについて今考えておられることをお答えいただきたいと思います。
  127. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) ただいまおっしゃいましたそのルート云々ということは、やはり米軍の内部の運用にかかわる問題ということもございますものですから、私どもは日ごろから密接に米軍とは対話を維持しておりまして、問題があるときにはいつでも米側に話をする、こういうことでやってきております。  したがいまして、何も起こらないことがもちろん望ましいわけですし、そういうことで努力をしなきゃいけないわけですが、そのときにどういう事態であるか、どういう問題があるのか、そういう事態を踏まえて、その状況に応じて米側との相談の内容というものも考えさせていただきたいというふうに思います。
  128. 翫正敏

    ○翫正敏君 もう一点。  被害の問題については、新聞報道によっても、平成三年十月二十九日の奈良県においてのワイヤ切断事故以後だけでも、住宅二軒の窓ガラス破損、住宅五軒の窓ガラス破損、住宅七軒の窓ガラス破損、鶏の被害、牛の被害、さくの破損、住宅の窓ガラスの破損、さくと車両が破損というような、こういう物的な被害まで実際に低空飛行によって出ているわけですね。  こういう米軍機が日本の上空を我が物顔にと言っておきますが、我が物顔に低空で日本の国内法も無視して飛んでいるという状況については非常に厳しく申し入れをする、こういうことが大切だと思いますので、事務方の答弁がありましたけれども、大臣の方からひとつ最後にお答えいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  129. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 先ほど北米局長が申し上げましたとおり、米軍、米側とは必要あるときには随時話し合いを持っているところでございます。この話し合いはお互いに誠心誠意話し合うものでございます。
  130. 翫正敏

    ○翫正敏君 終わります。
  131. 三上隆雄

    委員長三上隆雄君) 他に御発言もないようですから、外務省決算の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明二十五日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十七分散会      ─────・─────