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参考人(恒松制治君) ただいま御紹介いただきました恒松でございます。
参考人ということで本日まかり越しましたけれ
ども、果たして私が適当であるかどうかというのは大変私自身が心もとなく思っております。
その
理由は、一つは、知事をやめましてからもう七年たっておりまして、
記憶もどうもだんだん定かでなくなってきているということがございます。それからもう一つは、十二年間知事を務めましたけれ
ども、今回のゼネコン的ないろんな問題は一度も経験をしたことがございません。したがって、どうも果たして適当であるかどうかというのは大変おぼっかないわけでございますが、このことをお含みおきの上で、何か御参考になればと思ってまかり越したわけでございます。
まず第一番目に、
公共工事の
発注というのは
実態が一体どうなっているのかということについてでございます。
私が知事になりましたのは、大学の教壇から直接知事になったわけでございまして、何も知りませんでございました。そのときに、
最初に
公共工事の
発注について入札という場面に立ち至りましたときに、土本部長が参りまして、
予定価格を記載するということと
指名業者を御承認いただくということは私と知事との二人だけの間の問題でございますので御
承知おき願いたい、こういうことでございました。そのときに初めて、入札というか、
公共工事の
発注ということがいかに重い責任を持つかということを痛感させられたわけでございまして、以後十二年間常にそういう面では非常に緊張したやり方でこの
工事の入札に当たったわけでございます。
もちろん積算の仕方、いわば
予定価格を算出しますための積算のやり方であるとか、あるいは
指名業者を選定する場合の基準といったようなものについて、私自身は素人でございますのでよくわかりません。しかし、よくわからないといって部長に任せておいたんでは務めが果たせないということで、大変その点については神経を使ったことを今でも覚えております。
島根県の
公共工事というのはそんなに大きいものはありませんのですが、たしか
記憶に間違いなければ五億円以上は知事が直接
予定価格を記入し、そして
指名業者の選定について判こを押すということであったと
記憶いたしております。そういう点では大変緊張したことを覚えておりますので、それが地方
団体における
公共工事発注の私が経験をいたしました
実態でございます。したがって、先ほ
ども申しましたけれ
ども、いろいろな
業者からのお誘いであるとかあるいはいろんな願い事であるとか、そういうことは全く私の場合にはございませんでした。そういう事実だけ申し上げたいと存じます。
それから第二番目に、指名競争入札が今問題になっておりますけれ
ども、一般競争入札、言いかえれば
業者のだれもが自由に参加できるようなそういう一般競争入札と一体どっちがいいかということについては、専門家の皆さん方の間でも今いろいろと議論をなされております。
ただ私は、大変率直に私個人の
意見を申しますと、
公共工事というのはやっぱり
国民の税金を使うということでございまして、したがってそこで行われた
工事が極めて信頼できる姿でなくてはならない、そのためには
業者の選定に当たっては信頼できる
業者であるかどうか、言いかえれば
国民の税金を使ってやる
工事が十分に
国民に満足していただけるような
工事が実現できるかどうか、そういう点を一番重要な課題として私は受けとめたわけでございます。したがって、私自身は公正な手続によるところの指名競争入札の方がむしろ望ましいのではないかというふうに、私自身の経験から申しましてそういうふうに判断をいたします。
ただ、一般競争入札というような仕方をやったわけではございませんので、どちらがすぐれているかということについては私はよくわかりませんけれ
ども、少なくとも私は指名の仕方としてはその方が県民全体の納得を得るやり方ではないだろうか、こういうふうに思っております。
しかし、今盛んに言われておりますように、指名制度でありますととかく公明性が欠ける、言いかえれば不透明であるというような問題がありますために、汚職が起きやすいということは事実だと思います。しかし、私は入札制度が指名であるか一般であるかということと汚職の問題は必ずしも同じたとは思っておりません。どんなにきめ細かな制度を実施いたしましても、
発注者の方が非常にあいまいなと申しますか、そうした汚職の生ずるような土壌である限りは私はそういう余地があるというふうに思っておりますので、そのように考えているわけでございます。
そういう
意味で、このゼネコン汚職というのは実は私には信じられない出来事でございました。あってはならないことだと思っております。競争の激しい企業社会で指名に入りたいためにいろんな誘惑がある。言いかえれば、金品を贈るという
受注者側の気持ちは理解できないわけではございません。あるいはそういうことはあるかなというふうに思いますけれ
ども、しかし問題はその
発注者側の問題であります。
発注者側にそうした余地があったとすれば、これは大変遺憾なことでございます。特に地方
団体の場合には一連の
事件がございました。たとえ一部であったといたしましても、地方
団体全体に対する不信につながることでございます。したがって、私は今後のことについては厳に戒むべきことであると思っております。
ただ、一つ感想として私が思いますのは、地方自治体にもっともっと行政全般に対する主体性があればむしろこういう問題は避け得るのではないかな、そういう期待感は大変持っているわけでございます。
そこで、それでは
再発防止のためにはどうしたらいいかということは、もうただ一つ、
発注者側、例えば首長であるとかあるいは議会の方々がその責任の重要性というものをしっかり受けとめて、そして
再発防止に努める以外には私はないとさえ思っております。もちろん
公共工事に関する運営手続などの改善は必要ではございますけれ
ども、もっと必要なことは、地方自治体の
責任者がみずからを引き締めて公正な仕方をする以外にはない、こういうふうに考えております。
以上で終わりたいと思います。(拍手)