○高崎裕子君 私は、
日本共産党を代表して、九四年度
政府予算三案に対し、
反対の
討論を行います。
今
国会の論戦を通して、
羽田内閣の憲法に対する態度、その
政策が
国民にとって大変危険な性格であることがいよいよ明らかとなり、不信任に値する
内閣であることが浮き彫りになりました。
まず、侵略戦争に対する無反省と憲法無視の
姿勢です。
羽田総理は、組閣の当初から、侵略戦争を美化する
発言をした人物を閣僚に任命するという違憲行為を行い、それを指摘されても、反省をしないばかりか不当な弁護に終始しました。
我が党が
国連憲章、ポツダム宣言、東京裁判の基本理念を示しつつ、十五年間にわたる中国に対する戦争の認識をただしたのに対し、
総理は、侵略戦争であったと言明することをあくまで拒否した上、国際的にも共通認識となっているあのヒトラーの戦争までも侵略戦争であることをかたくなに認めなかったのです。
総理のこのような認識は、戦後の
国際社会が侵略戦争と軍国主義を地球上から一掃する決意を共通の土台としたその原点を否定するものであり、
日本国憲法が掲げる平和理念をも否定するものです。
次に、
北朝鮮の
核開発疑惑を口実とした
制裁の問題も重大です。
総理は所信表明で、
北朝鮮をめぐる緊急
事態の
もとでは、
国連の決議がなくても、日米及び日韓の
各国間で緊密に連携し、協調してこれに
対応するとの方針を打ち出しました。これは、アメリカとの共同の軍事行動やそのための有事体制化を進める危険な道に踏み込む宣言です。しかし、
政府が
制裁論の口実としている核そのものについても、我が党の質問に、
北朝鮮の核の正確なことはわからないなどと、まともな
根拠を示せなかったではありませんか。
にもかかわらず、
政府は、
制裁の具体的な
対応についての
答弁を一切拒否しながら、日米韓三国協議で早々と送金停止などの具体的約束をするなど、国際的にも際立ったアメリカ言いなりの
姿勢を示し、
国会と
国民を欺いていることは絶対認められません。
一瞬にして生命も財産も奪ってしまう原爆。その苦しみ、恐ろしさを体験した唯一の被爆国
日本だからこそ、世界に向かって核兵器廃絶の先頭に立つべきではないでしょうか。ところが、いまだに核兵器の使用は実定国際法に反しないとする
政府の態度は到底許されません。
このような
政府の
政治姿勢の
もとでの本
予算案は、具体的に以下の
理由によって容認できません。
第一に、戦後最悪と言われる不況、また新たな
円高の影響が
懸念される中で、
国民本位の抜本的な不況対策が求められているにもかかわらず、
国民生活犠牲、大企業奉仕の反
国民的方向が貫かれていることです。
本
予算の
景気回復の最大の目玉は六兆円規模の所得
減税ですが、これも所得のいかんにかかわらず一律二〇%の
減税というもので、購買力を引き上げるための庶民に手厚い
減税とはほど遠く、しかも、ことし一年限りの
措置となっています。
政府は、来年度以降も
減税を続けるためにはその財源として
消費税の
増税を認めよと
国民に迫っています。これにこたえて、
政府税調は事実上七%以上の税率引き上げの
答申を出し、
連立与党も
社会党も間接税の引き上げを
政権構想で打ち出すなど、いよいよ重大な問題となっています。
国民への
公約を無視した
消費税増税は絶対に許されません。
我が党は、この最悪の大
増税計画を撤回させるため、
国民とともに闘うことを改めて表明するものです。
また、不況の悪循環を打開するためには中小企業や雇用問題について抜本的対策が求められています。しかし、中小企業
予算は十二年連続の削減であり、その一方、大銀行に対しては抱え込んでいる不良債権処理のために巨額の
減税措置さえ設けているのです。
人減らし、リストラ、海外移転、下請いじめの規制など、大企業の横暴に対する民主的規制が今こそ必要であるとともに、官公需の中小企業向け発注率の引き上げ、低利の緊急融資制度の創設など、
国民の立場に立った対策がどうしても必要です。
第二に、
政府は
高齢化社会に備えると言いながら、年金の支給開始を六十五歳に繰り延べ、そして入院時の食事代として当面、一日六百円の患者
負担を強行しようとしています。今でさえお年寄りは入院を拒否されたり三カ月で退院させられ大変だと悲痛な声を上げています。世界に例を見ない老人差別医療に加え、このような
国民医療の改悪、
社会保障の後退は絶対認められません。
さらに、
私立高校などへの経常費助成の二五%もの削減は
自民党時代にもなかったことであり、直ちに
私学助成の復活を強く求めます。
第三に、米輸入自由化についてです。
米輸入自由化が
実施されるなら、
日本農業が存亡の危機を迎えることは火を見るより明らかです。にもかかわらず、本
予算案は、米輸入自由化を前提にして中小零細農家を切り捨てる新農業
政策を推し進めようとしています。今重要なことは、米を初め農産物の自由化
措置を直ちに中止し、減反
政策をやめ、適切な備蓄、食糧の自給率向上へ一歩踏み出すことです。
第四に、本
予算案では、現在でも既に世界第二位の軍事費がさらに増額され、アメリカの要求にこたえてAWACS二機の購入など、正面装備費を増強しています。米軍への思いやり
予算もこの十六年間で四十倍に達しました。
政府は、
北朝鮮制裁を口実とする憲法違反の有事立法の
策定を直ちにやめるとともに、この莫大な軍事費の思い切った削減で
国民生活を守るべきです。
最後に、五年ぶりの
赤字国債の
発行を含め十三兆六千億円もの
国債発行を行い、
国債残高削減のための定率繰り入れを停止するなど、極めて不健全かつ
国民負担増大の
予算となっていることです。これにより歳出に占める
国債費の比率は一八・七%になり、
国債残高は実に二百兆円の大台を超えることになるのです。
我が党は、今私が指摘した諸問題を、平和と
国民生活を守る方向で
予算の組み替えを
衆議院で要求しましたが、ゼネコン中心の
公共事業の腐敗と浪費の構造にメスを入れ、大企業、大金持ち優遇の
不公平税制を根本的に洗い直し、軍事費の半減などをするなら、大
増税も
赤字国債の
発行もなしで十兆円の財源が確保できるのです。今こそ
国民の立場に立った
政治の革新的転換を強く要求いたします。
しかしこれは、
羽田内閣にもはや期待すべくもありません。
羽田内閣は、
国民の三割の支持しか得ていない少数
与党内閣です。憲政の常道に従い、
民意を反映する中選挙区制の
もとでの解散・総選挙を速やかに行うことこそ
国民の要求であり、そのことを強く求めて
反対討論を終わります。(
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