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山本富雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、さきの
政府演説に対し、当面の
緊急課題につきまして
細川総理に若干の質問を行います。
本題に入ります前に、今起こっている大変な問題、お米がない、お米が買えないという事態について指摘をしておきたいと思います。
総理、ここ数日のテレビ、新聞は、
奥さん方がお米を買いに行っても米がない、米が買えないと連日報道されております。一方、政府・
与党首脳会議では、米の絶対量はある、もっとしっかりPRしようとか、
農林水産省幹部は消費者が買いだめをし過ぎるなどと言ったと、これまた報道されております。
何を言っているのか。これは批評や理屈の段階ではないのであります。明らかに一億二千万人国民の主食、米がない、買えない、
食糧パニック以外の何物でもないじゃありませんか。それこそ
為政者最大の責任であり、失政これに過ぎるものはありません。
総理、きょうも
日本列島北から南、四十七
都道府県のあちこちで、春は名のみの寒空の中、
奥さん方、消費者が米を求めて行列をしている姿を想像してごらんなさい。お互いじっとしてはいられないでしょう。どうか総理、あなたが
陣頭指揮で、
つかさつかさ要所要所に直接働きかけ、一刻も早くこのような状態をなくしていただくよう切望しておきたいと思います。
去る二日夜半、
総理官邸からの
テレビ中継を全国民はかたずをのんだり、またかと思ったり、熱い目や冷めた目で、しかし細川さんが例によって何を言うかを皆見詰めておりました。私もいろいろな思いを持ちつつ拝見をした一人でありますが、まず驚いたことは、会場にあらわれたのは総理一人、女房役の武村さんも鳩山さんも姿をあらわさず、お供の席には役人副長官の石原さんが一人ぽつんと座っている光景でありました。国民だれしもがこれは不自然だなと思ったのではないでしょうか。
武村さんがいないことを記者に問われたあなたの答えは、本人がいづらいだろうから今夜は欠席を命じたとのことです。これにも唖然としました。俗な言い方で恐縮ですが、せっかく
夫婦仲直りをして
一家立て直しと国事に立ち向かう、その再スタートの夜のことであります。
その後、あなたのいろんな発表と発言がありましたが、こういうやりとりもありました。記者、結局改造はできなかったんですね。総理、いや、改造は総理の
専権事項で、結局やらなかったんだと。
細川さん、私は、かねがね政治家は信なくんば立たず、特に一国の総理は決してうそを国民についてはいけないと事あるごとにあなたに言い続けたつもりです。武村さんとあなたは昨今急速にことごとく意見を異にし、不仲になっていったことを国民はみんな知っています。また、本家筋のどなたとどなたかが早く別れろ別れろと。家の中での皆さんは、こんな大事な時期に別れるどころか我慢をし力を合わせることこそ大事と
武村コールが起こり、それでも頑固なあなたは最後まで、別れる、やめさせるつもりだった。それも周知のことであります。しかし、夜半に至って力尽き、やれなかった。すなわち、結果はやらなかった。これが本当でしょう。
いつもあなたの言動は人を驚かせる。いわゆる思いつきであり、突然であり、中途半端であり、無責任であります。それを、何とないムードとパフォーマンスでごまかしてきたと言う人が最近国の内外に大変ふえています。一国の総理がこれでは困ります。
さきに、首相の
特別補佐を辞任した
田中秀征新党さきがけ代表代行は、
細川首相が
歴代首相と違うことは、自分を最近の首相と比較するのでなく、
近衛文麿首相と比較していると発言しています。私も、まさに
細川首相の母方の祖父に当たる近衛公の生い立ち、思考、言動、振る舞い、
政治的対応等が全く
細川首相のそれにことごとく類似しており、血統、環境のなせるものと改めて思い知らされました。
ここに、昭和十一年に
粛軍演説で軍部を批判し、さらに十五年に
反軍演説で議員を除名された故
斎藤隆夫代議士の記された「
近衛文麿公を論ず」よりその
関係部分を要約引用し、御紹介を申し上げたいと思います。
一 是まで国事に関しなんらの苦労も嘗めずして国家の政権を握った。世人は之を歓迎した。公は我が国における最高の
名門出身、然るに年齢は五十歳、
革新気分が横溢して居るやうに見えた。
二
内閣存続中一年有半の間に屡々閣僚を更迭、凡そ
我が国歴代の内閣において
近衛内閣ほど自由勝手に閣僚を更迭したる内閣はない。碁石の如く置き代へるに至りては、
総理大臣として又
国務大臣として自己の不明、奏上に対する責任はどうなるものであるか。
三 全国民が近衛公に対して最も失望したことは、公に政治上の実力が欠けていたことである。馬鹿を見たのは国民である。
近衛内閣で最も承服できないことは、
支那事変の勃発と拡大、得体の知れない
大政翼賛会の設立てあった。皇室に次ぐべき門閥に生れ、世の中の苦労を嘗めた経験を有せない貴公子が自己の能力を顧みず、一部の
野心家等に取巻かれて国政の大任に当たり、国を
誤り害毒を胎す。其の罪は極めて大なるものがある。
云々、以上であります。
議員各位はこの言をいかが受けとめられましょうか。時代や背景の違いはありましても、そのことごとくが余りにも酷似しているこの歴史の事実に慄然たる思いを持ったのは私だけでしょうか。
大変失礼ですが、こうした論評について総理はいかなる感想をお持ちでしょうか、率直にお伺いをいたします。
次に、
政界再編の問題であります。
かねてより仲たがいでありました
小沢新生党代表幹事と武村氏との確執が
国民福祉税構想、
内閣改造をめぐって一挙に表面化し、今
細川内閣を支える
連立与党は、新生党・公明党の
グループと社会党・民社党・
新党さきがけの
グループとに分極化の方向にあるようであります。これは、
社会党側は小沢氏の言う二大政党制ではなく、穏健な多党制は多様な国民の意見を反映する
政治システムであることを唱えていますほか、「小さくともキラリと光る国」の主張と「普通の国」を掲げることによる日本の
国際貢献の
あり方等にかかわる国家観の違いのあることによるものと思われます。
しかし、
政治改革法案が成立した今、やがて来るであろう総選挙において、およそ
政治理念の相異なる
グループが単に非自民だけのスローガンで、
政策抜きの
数合わせだけでいいのでしょうか。政党の本旨はあくまでもその理念と政策にあります。
政策論争を通じた
政界再編であるべきと考えますが、総理は政局の展望をどう見ておられるか、所見を承りたいのであります。
さきに、参議院においては日本新党、民主改革連合、
参議院新生党などが
新緑風会を結成いたしました。なぜ今、
新緑風会なのか。真意のほどは存じませんが、数の力で院の役員をとればよいとか、まして総理が陰でこれを操り、衆議院に先行して他の会派をも吸収し、大会派をつくって来年の
参議院選挙に備えるなどと世評言われること自体、大問題ではありませんか。院の各会派間の問題まで行政府の長が一々しゃしゃり出るなどは全く言語道断、総理の真意をしかと承りたいのであります。
最近の
米国中央情報局、CIAの
スパイ事件、
イスラエル占領地ヘブロンでの大
虐殺事件、
セルビア人武装勢力の
戦闘機撃墜事件、そして今月一日には北朝鮮における
国際原子力機関、
IAEAの核査察の再開などを見るまでもなく、
冷戦終結から既に三年を経過いたしましたが、局地的にはいまだ紛争が鳴りやまず、核兵器は拡散し、
国際情勢の流動化はむしろ増大しており、
PKO等国連の役割は以前にも増して求められております。また、世界は依然として
経済摩擦、南北問題、環境、エイズ、麻薬、難民などの問題が深刻化しております。
このような状況のもとで、日本だけよければよいといった一
国平和主義や一
国繁栄主義に陥ることなく、世界の期待と要請にこたえ、
相互依存の
国際社会においてその持てる経済力、技術力を活用して世界に貢献すべきであります。
まず、我が国の担うべき役割と外交の
基本方針を総理より伺っておきたいと存じます。
二月中旬の
包括経済協議の物別れにより、その後日米間にはぎすぎすした空気が随所に漂っております。本来、通商は民間の
市場原理に基づき行われるべきものでありまして、米国の固執する
数値目標の設定は
管理貿易となるだけにこれを我が国が拒絶したことは当然としても、しかし言いたいことを言い合ったままで物別れになり、それが大人の成熟した関係のあかしと自賛しているだけでは、しょせん外交は成り立つはずもないのであります。文字どおり、
日米関係は
我が国外交の基軸であり、そのパートナーシップが世界の平和と繁栄を構築するかぎであります。それだけに相手の要求が無理だからとして拒絶し、壊れて済むものではないのであります。
これまで我が党内閣が日本と米国の緊密な
同盟関係を築き、政治・安全保障、
経済関係、文化交流など幅広い分野で長年にわたり
友好親善外交に努力してきただけに、今回の物別れはまことにもって遺憾であります。
そうしたこれまでの粒々と積み上げた
外交努力をも顧みず、総理が、過去日米間ではその場を糊塗するような玉虫色の決着を図ってきたなどと発言するに至っては、先人に対し無礼きわまる言辞であり、まさに責任を転嫁するもので容認するわけにはまいりません。むしろ、
細川総理自身が対米交渉を官僚任せにし、政治の
リーダーシップを怠った責任こそがこの際問われるべきものであります。
総理、あなたが記された
雑誌文芸春秋、「「
自由社会連合」結党宣言」によると、「
官僚主導の政治を排する。
立法府主導体制による政治の刷新と
リーダーシップの確立を図る。」と言っています。失礼ですが、あなたは官僚を使える総理なのか、それとも官僚に仕える総理なのか。官僚を使っていく総理なのか 官僚にお仕えする総理なのか、どちらですか。この際、よくよく伺っておきたいのであります。
そこで総理、あなたは
交渉決裂をどう反省され、今後の
包括経済協議の打開に向け日本として対処していくおつもりか。あなたは既に、
規制緩和の推進、
輸入投資促進策の推進、
競争政策の
積極的展開、
政府調達の改善の四項目について具体策の策定を急ぐよう指示していますが、その後の
具体的取りまとめの
進捗状況はいかがになっておりますか、説明を願いたいのであります。
ともあれ、昨年千三百億ドルにも膨れ上がった
経常黒字を現実に減らす
数値目標を具体的に示すことが貿易の不均衡是正を促すことになるのではないかと思います。
このことに関し、去る二月二十五日の
関係閣僚懇談会で、総理は、一九九四年度の国内総生産、GDPに対する
経常黒字比率を
経済見通しで示した二・八%に抑制することを達成すべき目標として自主的に表明すべきであると発言をされました。しかし一方、
外務省サイドは、時を同じうして、達成されなかったとき
日米関係はより悪化するとして懸念視する発言等がございましたが、政府としてどう調整されるのかお伺いをしたいと思います。
今回の物別れを受けて、米国からは早くも
円高容認、
制裁措置などの報復的な動きが出始めました。円について見れば、二月十日の百八円から二月十五日には一時百一円九十銭まで急騰しました。日銀等による介入でその後一応おさまってはおりますが、米高官の口先介入などによりいつまた揺さぶられるかわからない状況ではありませんか。
円高傾向が進めば不況にあえぐ
日本経済に及ぼす影響ははかり知れず、深刻であります。さきの十五兆円の
総合経済対策等はあっという間に吹き飛んでしまいます。
さて、去る四日未明、
クリントン大統領は
包括通商法スーパー三〇一条に署名しました。いよいよ
市場開放圧力は具体化してまいったのであります。我が国としても、
日米関係は世界の
経済秩序を支える根幹として、
大局的見地から
交渉期間内の妥結を目指してこれに積極的に対応すべきと存じます。政府として、こうした円高問題や
制裁措置の報復的な動きについてどう受けとめ対策を講ずるのか、その対策を承りたいのであります。
いずれにせよ、
日米関係の先行きは不透明であり、決して明るいものではありません。あす九日、
クリストファー米国務長官が来日し、協議が行われると聞いておりますが、このままの状況が長引けば
国民経済や
国民生活に及ぼす影響はさらに大きいものとなります。決裂、物別れのままでなく、揺るぎない
日米関係の再構築に向かって、総理、アメリカの納得のいく自主的な
市場開放策を速やかに
政治決断により決定し、
日米関係の円満修復を図るべきであります。
対ロシアとの関係については、さきの総選挙後、
エリツィン大統領は孤立、
ロシア大国主義の復活の懸念が高まっている中で、
国内情勢も混沌としております。我が国としては、領土問題を解決して
平和条約を締結すること、ロシアの改革を支持し、
国際協調のもと応分の支援を行うこととしておりますが、
ロシア状況の変化の中で今後の方針を伺っておきたいのであります。
さらに、ロシアは昨年十月、日本海で九百トンの
液体放射性廃棄物の投棄を行い、二度目は関係国の強い抗議により中止いたしましたが、近く
核投棄再開の懸念はないのか。事が生じてからでは遅過ぎます。事前に強く中止を要請すべきと思います。
中国との関係は、昨日、
日中平和友好条約締結十五周年を迎え、総じて良好であります。今後、中国の進める改革・
開放政策への支援が重要であると考えていますが、対
中国政策にどう臨む決意であるかお伺いをいたします。
韓国関係につきましては、昨年二月発足しました
金泳三政権は対日関係の発展を重視しております。今後とも個別案件の解決を図りつつ、
日韓関係の強化を図っていく必要があります。総理も昨年十一月訪韓され、
首脳外交を展開されましたが、対韓政策をどう進められるのか。
特に、朝鮮民主主義人民共和国の
核兵器疑惑については、唯一の被爆国として核兵器の拡散に強い懸念を持つものであります。政府として米国、韓国、中国及び国連と連携し、北朝鮮の
核兵器開発阻止に一層の努力を求めるものであります。幸い米国と北朝鮮との合意で、北朝鮮が今月一日、
国際原子力機関IAEAの査察を七つの施設に限って受け入れましたことは
核問題解決の第一歩として評価いたしますが、いまだ多くの不透明な問題を残していると思います。政府としてこの実態をどう把握しているのか、また我が国としての対処の方針を総理にお伺いしたいのであります。
資源のない我が国が
経済大国として存立てきるのは
相互依存の
自由貿易体制によるおかげであります。そのためにも、持てる経済力、技術力を
開発途上国の
国づくり、
人づくりに貢献すべきは当然のことであります。そしてその際、現地の情報、ニーズを的確に入手して、環境への配慮を初めとして徹底的な
事前調査を行い、国民の血税によるその援助が現地の人々に役立ち、効果が上がるよう十分に配慮すべきであります。それとともに、それが自後どのように評価されているか、フォローアップが肝要と思います。援助の
実施体制や
評価状況に政府としてどう取り組んでおられるかお伺いをいたします。
今や我が国のODAの
予算規模は約二兆円、世界一の規模であります。一昨年、
政府開発援助大綱を定め、ODAの
基本理念が明らかにされましたが、今後とも我が国は
平和国家としてこの制度を拡充していくためにも、この際、例えば
ODA基本法という形で法制化を図る必要があるのではないかと考えます。総理のお考えをお尋ねいたします。
総理、
政治改革にばかりかまけて、今
日本経済はどうなっているのでありましょうか。
この三年、
経済活動は大きく後退、かつて経験したことのない不況のどん底にあります。
バブル経済の崩壊による影響で巨額の
資産デフレが金融、消費面を圧迫して景気が落ち込んでいるときに、昨年来の急激な円高に加えて、冷夏、凶作が追い打ちをかけ、今
日本経済は戦後最長かつ
最大規模の深刻な
デフレ不況の様相を呈しております。企業は倒産、勤労者は首切りにおびえ、あすどうなるかという不安が全国に充満をしております。
政府としても
総合経済対策などを講じておりますが、総理はどうも役人や
中央財界の声だけに耳を傾け、地方や中小企業などの悲痛な叫びを御存じないのではないかと思わざるを得ません。
これほど経済の
落ち込みが著しいにもかかわらず、政府は本年度の
経済成長率を〇・二%と見通しているのでありますが、一方民間の
調査機関ではいずれもマイナス〇・五%程度と、第一次
石油危機不況時すら下回る戦後最悪の
落ち込みを見込んでいますが、政府の景気の現状認識は大変甘いのではありませんか。
今回の
不況克服に対処するため、我が党は昨年十月に河野総裁を本部長とする不況・
冷害対策本部を設置、三たびにわたる大規模な
緊急不況対策を決定し、この実施を政府に要請するとともに、新
年度予算の
年内編成等を強く要望してきました。政府はこれをことごとく無視、第百二十八回国会において四十五日間の
大幅越年延長を強行、新
年度予算の編成が二月中旬にずれ込んだことは御案内のとおりであります。
そして、ようやく去る四日、新
年度予算が国会へ提出されました。政府は第三次
補正予算と本予算をあわせて十五カ月予算で対応などと言っていますが、こうした
細切れ予算では第三次
補正予算に盛り込まれた
公共事業の執行にかなりの困難を伴うほか、新年度に入っても
政策的経費が盛り込まれない長期の
暫定予算を余儀なくされるだけに、
景気対策の効果を一段と弱めるおそれがあるのではありませんか。まさに
経済無策のツケがこうしたところにあらわれてくるのであります。
後手に回り、遅きに失した新
年度予算について、総理はどう責任をお感じになっておられるか、御所見を承りたいのであります。
新年度の
景気見通しにつきましては、来年度も
民間設備投資の回復がはかばかしくなく、
民間調査機関は
所得税減税などを前提としても大半が弱気で、平均〇・六%の低成長と見ています。もともと
経済成長見通しは税収に直ちに響くほか、国民の
経営マインドにも影響しますので、不況期はどうしても高目に見がちであります。今回も、結果的には国内総生産で二・四%に決定されましたが、過大であるとの論調が高まっています。この成長率を打ち出した根拠をこの際お示し願いたいのであります。
政府は、二月八日の
総合経済対策において、現在の景気の低迷を打開するため、平成六年度限りの措置として五兆四千八百億円の所得税、住民税の
特別減税を実施する、また
公共投資等の拡大七兆二千億円を決定しています。果たして、こうした一年間だけのぼら
まき所得減税や
土地関係費のウエートが大きくいわゆる
真水部分の少ない
公共投資等を中心とした対策で、成長率をどの程度押し上げることができるのか。減税の後には
大幅増税の心配があり、またローンの負担にあえぎ、雇用不安が拡大する中、
消費者心理から見て過大な期待はできないのではないでしょうか。具体的に減税分の
消費性向、
成長率押し上げ効果を総理はどう見ておられますか。
特に、私がこの際指摘をしておきたいのは、本年、
公共料金や
年金掛金のアップが
メジロ押しであるということであります。
厚生年金の
保険料率が十月から二%引き上げられると、
家計負担は年間一兆三千億円を超えると報ぜられております。これ以外に、既に値上げの行われた
郵便料金を初め、
国立大学入学金、
首都高速道路料金、
NTT料金、
簡易保険料等の改定も予定されているだけに、国民の
負担加重は一層大変になります。
こうした
公共料金の総
値上げ的傾向は単に
国レベルだけではなく、昨今の
都道府県議会は
知事サイドに立ってオール与党化の傾向が強いだけに、地方における
公共料金の値上げにも歯どめがかからない状況にあります。
政府として、このような国、地方を通ずる
料金改定の総額と結果をどう見通しているのか。多分、膨大な額に上る
国民負担増はせっかくの
所得減税効果の相当分を減殺することは必至であり、
史上最大の減税、
レーガン減税を上回るなどと盛んに宣伝していますが、その内実は見せかけの減税ではありませんか。
値上げラッシュは国民の懐を直撃します。これでは
生活者優先、
消費者重視の表看板が泣くというものであります。総理はこれにどうお答えになられますか。物価は
経済政策の帰結であります。確たる御所見を承りたいのであります。
規制緩和につきましては、
政治改革に次ぐ
経済改革の柱として推進されるそうでありますが、この中には当然に時代の進展や
国民ニーズの変遷により存続する必要のないものもあり、また一方、
国民生活の安全の上から、例えば環境、薬品、食品など健康等にかかわるものは当然残さねばならず、ただ一律に自由化すればよいというものではありません。役所の指導、規制には、それとの兼ね合いで保護と助成があり、それらと均衡のとれた形で経済の活性化、内需の拡大、輸入の促進を図っていくべきであります。
規制緩和は、これまでも
臨時行政改革推進審議会などが何回となく提言しながらも、目に見える成果を上げることができませんでした。その最大の理由は、権限の縮小を恐れる官僚と既得権益を守ろうとする業界の抵抗、反対でありました。
規制緩和はいよいよ総理のかけ声により実行段階に入りますが、どうか絵にかいたもち、結果として腰砕けに終わらないよう毅然たる決意で臨まれることを強く希望しておきます。
大天災、不況の真つただ中、農産物の総自由化により農業は大きな衝撃を受け、国を挙げて早急に農業、農村の再建に取り組む必要があります。この問題は同僚の
竹山議員の質問に譲りたいと存じますが、農業合意に伴う批准や
食管法等の改正はこれからであり、農政の信頼を回復できるかどうかが大きな問題であることを一言この際強く申し上げておきます。
細川内閣は、内閣の看板に、責任ある変革と
質実国家の形成を掲げ、これを六
年度予算に反映させることを公約としてこられました。しかし、
連立政権のもとで初めて編成された六
年度予算の一体どこを見れば変革がわかるのでありましょうか。一例として、最も注目された
公共事業費の
配分比率を見ましても、その変更は前年度対比の構成比が五年度当初の〇・五%から六年度は一・六%になった程度で、これではだれが見ても
生活者重視の変革の名に値しません。証拠をぜひお示しいただきたいのであります。
また、
防衛関係費を三十四年ぶりに一%以下に抑制したとして得々としておられますが、世界の動向を見れば当然の方向で、
連立政権ゆえに可能になったものでないことは明らかであります。加えて、
防衛関係費が抑制されたのは六年度支出予定の
国庫債務負担行為が五十七億円も後年度に繰り延べられた結果ではありませんか。総理の明確な答弁を求めたいと思います。
我が国の財政は、
バブル経済の崩壊に伴い大幅な税収の減少に見舞われ急速に悪化しております。特に、五年度は累次の
景気対策の策定で
建設国債の増発が続き、さらに六年度も
建設国債発行が
史上最高の十兆五千億円余に上るほか、
所得税減税の財源として三兆円を超える
赤字国債の発行とあわせて総額十三兆六千四百三十億円の国債の発行が予定されております。その結果、
公債依存度は五年度当初の二・二%から一八・七%へと昭和六十二年度の水準まで一気にはね上がり、六年度末の
国債残高は二百一兆円になるのであります。またその一方では、歳出の後送り等の措置で二兆円近くも隠れ借金をふやしています。さらに、平成二年度から再開していた
定率繰り入れを再び停止しており、
細川連立政権になって以降、
我が国財政は急激に悪化していることは紛れもない事実であります。
政府は、六
年度予算で減税見合い分を除く
赤字国債の発行を回避できたと自画自賛しておりますが、それこそ小手先の小細工を弄したにすぎません。すなわち、
建設国債を発行してNTT資金の償還資金を確保し国債整理基金に繰り戻す方式は
赤字国債発行による
定率繰り入れの修正版で、見せかけの
赤字国債発行回避であります。
連立政権のこのようなその場しのぎの財政運営の手法は、我が国の財政運営の基本を誤るものと断ぜざるを得ません。
加えて、平成七年度に
公債依存度を五%以下に抑制するという財政再建目標が今や完全に破綻したことはだれの目にも明らかであります。
これらの問題点について、政府として今後財政の体質改善をどのようにして図り目標の達成に結びつけるのか、財政運営の
基本方針とあわせてお示しをいただきたいと思います。
細川内閣は、六
年度予算で五兆四千八百億円の所得税・住民税減税の実施を決断されました。しかし、それが決定されるまでの手順と経緯はまさに拙劣かつ不透明、非民主的なものであったと言わざるを得ません。真夜中に突如として国民福祉税創設が発表されたかと思うと、たちまち白紙撤回されるという騒ぎはおよそ近代議会制民主主義のもとでは考えられない軽挙妄動で、
連立政権による政策立案過程の不透明さと限界を露呈したものと言わざるを得ません。
長引く不況対策として
所得税減税の先行実施は今や国民的合意であるにもかかわらず、減税をだしに実質増税をのませようとしたかと思うと、突然一年限りの減税に値切ってみたり、かてて加えて、さきにも触れましたように、他方では景気刺激効果を大きく薄めるような年金保険料の大幅引き上げを行うなど政策の一貫性はみじんもなく、およそ政策の名に値するものとは申せません。
また、今般のG7蔵相会議において、包括協議が決裂した米国等から一年限りの減税がやり玉に上げられて報復措置をちらつかされると、藤井蔵相は慌てて七年度以降も減税を行うことをほのめかすなど、その対応は支離滅裂で、あいた口がふさがらないのであります。
所得税減税は国民が要求してもやらないが、米国から要求されれば唯々としてやるというものなのか。総理は、藤井蔵相にそのことを指示されたのかどうか。指示されていないとすれば、これはまさに内閣不統一ではありませんか。答弁を求めます。
連立与党では、今年中に税制の抜本改革をまとめ、法案を成立させることで合意し、先月中旬には与党内に協議機関が設置されたと言われていますが、今後はどのような手順と方式で協議を進められますか、まずお示しいただきたいと思います。
どうか国民に開かれた形で協議が行われ、将来のあるべき国民負担率や所得・消費・資産の間のバランスのある税体系の姿を政府は国民の目の前に示す責任があります。それと同時に、これから行おうとしている
政治改革の理念と基本的方向を明確にしていただきたいのであります。
去る一日衆議院で、また四日本院で、我が参議院が一月二十一日否決した
政治改革四法案が総理・総裁会談の合意を受けて修正議決されました。
事ここに至ったもろもろの原因は、我が自民党も大いに反省しなければなりませんが、主として、解散風をちらつかせ、両院協議会で事がうまく運ばなければ憲法第五十九条二項に戻り三分の二の再議決を求めるという
連立与党指導部、いわゆるGHQの両面作戦によるものであります。戦後議会史にこれまで実例がなく、学説的にも意見が分かれている一方の説をとろうとするときは、少なくとも両院の正副議長、議運の委員会で円満な話し合い、合意に基づいて行うべきは当然であります。
また、総・総会談という政略的なこそくな手段で何が何でもという強権的姿勢が結果として我が党などの反発を招き、必要以上の妥協を余儀なくされたのではありませんか。合意事項を取りまとめた一方の当事者として総理は今回の経緯をどう受けとめておられるのか、所見を求めるものであります。
参議院が二院制のもと、良識の府として衆議院に対する抑制、均衡、補完の役割を果たし、独自性を発揮するには、衆議院と異なる選挙制度の仕組みにより議員を選出することが肝要であります。それとあわせて議会の運営についても、参議院らしい充実した審議を通じて民意を正しく反映することが求められていると思います。
我が党が国民のこうした期待と関心にこたえて、参議院の真価を発揮するため党内に参議院改革研究会を設置し鋭意真剣に検討していることは、昨年一月私がこの壇上で申し上げたとおりであります。
参議院の選挙制度の改革問題については、我が党はかねてより検討を続けてまいりましたが、昨年八月、改めて
参議院選挙制度検討委員会を設置し、一、
参議院選挙制度の仕組み、二、総定数、三、比例区選挙、四、選挙区選挙について改革案を取りまとめております。
現実の政党政治を肯定しつつも、衆議院選挙制度との対比においてどうあるべきか、また、過ぐる大阪高等裁判所における選挙区定数の違憲判決等に照らし、その是正は急務と存じます。
もとより、選挙制度の改革案は各党の土俵づくりであるだけに、各党の合意を踏まえたものであることが望ましいのでありますが、政府として、
参議院選挙制度の改善についていかなるお考えをお持ちであるか、また、いつを目途に法案の提出をされるおつもりか、総理の御所見をしかとお伺いいたします。
選挙制度の改革と並んで、否、それ以上に大事なことは、二院制の妙味が発揮されるよう参議院の組織や運営を改善することであります。
私は、これまで参議院自民党の国会対策委員長として、また幹事長として議会運営に少なからずタッチしてまいりましたが、絶えず念頭にありましたことは、いかにして国民の目から見える開かれたガラス張りの運営を行うか、そしてまた、六年という長い任期に基づいて総合的、長期的、専門的な立場から重要国策について長期的なビジョンを示せないかということでありました。今こそ、多様化した国民のニーズを踏まえて新しい参議院へ脱皮するために、与野党が胸襟を開き、垣根を乗り越えて思い切った改革に取り組むべきと思います。
また、ここで特に私が強調したいことは、立法府の使命に照らし、議員立法の積極的推進を図るということが急務であると考えます。幸いこの一年間において、小さな芽ではありますが、我が党の発議による議員立法が四件の成立を見ましたことは、関係委員会並びに同僚
議員各位の御協力のたまものであり、深甚なる敬意を表したいと存じます。もとより、議員立法は一党一派の提案やメンツにこだわることなく、広く本院を構成する与野党が協調し、その合意に基づいて積極的な推進を図ることが本院の使命の達成に通ずるものと信じます。
参議院議員たる我々は絶えず国民の厳粛な負託に心し、あるべき参議院を求めて改革の灯を常に掲げるべきであります。衆議院のカーボンコピーと言われる中で、いかにしてその独自性、自主性を発揮していくか、さまざまな角度から原点に立ち返って与野党が真剣に議論し合い、国民のために新しい参議院の構築を目指すのはまさに今であります。
以上で質問を終わりますが、最後に一言申し上げます。
総理、
総理大臣は議院内閣制のもと、国会と行政の接点に位置して両者を調整統合する大きな役割を担い、日本国政府を代表する顔であり、国のすべてを担う総責任者であるはずであります。それだけに
総理大臣に最も要請されることは、国政を統治する強い強い指導力がなくてはなりません。
細川総理、あなたは政権を担当して七カ月、これまで国内外の事に当たり、国民だれしもが納得する冷静な判断力と強い
リーダーシップを発揮したとの自信がおありでしょうか。
顧みてはっきり言えることは、一つ、細川政権の意思決定が権力の二重構造と言われる特定の偏った人の指示どおりに動き、総理自身の信念に基づいた行動がいつも見えないということであります。
二つ、内閣にとって最も重大な年内の予算編成を
政治改革にかまけて放棄し、中小企業や勤労者の嘆きを犠牲にする
経済無策でありたということであります。
三つ、突如としてあらわれ消えた
国民福祉税構想や日米包括協議の物別れに見られるように、重要政策の多くが官僚に牛耳られ、政治の主体性、責任が全く欠如していたことは紛れもない事実であります。
かかる事態を見るにつけ、冒頭、例として申し上げた近衛公とまさにうり二つと思えてなりません。すなわち、参議院の議会政治のよき伝統を否定し、二枚舌で米の市場開放を強行し、新
年度予算を越年編成し、日米包括協議を決裂にし、さらに内閣の統治能力を喪失するに至っては、もはや刀折れ矢尽きたのではありませんか。世に言うガラス細工の連立野合政権の基盤は根底から音を立てて崩れ始めたのであります。
現下、国内外の難局を乗り切るため、先見性と責任感、真に決断力に富んだ新しいリーダーの登場こそ必要であります。入党会派から成る
連立政権は自民党の政策を承継することでスタートしましたが、
基本理念の相違はいかんせん重要政策であればあるほど混迷し、対応はすべて先送りされたではありませんか。
そうしたあなたの政治姿勢から、今や期待性、可能性の魅力は消え、内閣は機能不全に陥り、国民の熱い期待は冷笑に変わりつつあります。
にもかかわらず、あなたは
政治改革の次は
経済改革などと真顔で言われていますが、
政治改革を唯一共通の政策課題として誕生した八頭立ての馬車、
細川連立政権の使命はもはや終わったものと思います。
一内閣一仕事というよい言葉があります。春風とともに咲く桜の花も我が世の春を謳歌するのはほんのいっときにすぎません。ここに
細川総理の潔い退陣を求めまして、私の代表質問を終わりたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔
国務大臣細川護熙君登壇、拍手〕