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政府委員(滝実君) 大臣から
基本的なことをお述べいただきましたので、その残りの点につきまして補足をさせていただきたいと思います。
まず
先生の御指摘の第一点、租税理論上この
地方消費税は認められるかどうか、こういうことでございます。
今回これが
政府の
税制調査会で学者グループを中心にした
地方税源問題ワーキンググループが設置されました出発点でございまして、意見としては、
地方消費税というのははしにも棒にもかからないとんでもない税だ、理論上全く否定される以外の何物でもない、こういう意見があったものですから、それじゃそういうことを中心にして一遍整理してみましようと、こういうことがあったわけでございます。
結論は、先般ワーキンググループから税調の総会に報告されました中身は、要するに
地方消費税も税の理論としてはいろいろな問題がある、これは事実でございますけれども、問題があるからといって税として成り立つ成り立たない、こういうものではありません、したがって結論的には租税理論の問題よりも政策判断の問題ですと、こういうような結論に導かれたわけでございます。要するに、理論上の問題からいえば、すべての税はそれなりにみんな問題は持っているわけですけれども、
地方消費税もそういう性格のものだ、こういうことでございます。
それから二番目に、
税制改革の問題の中で今回の場面は
地方税にとって大きな転換期に遭遇する問題ではないか、こういう仰せでございますけれども、これは
先生のおっしゃるように、
基本的には私どもはそういう
認識を持っております。
それから、四番目に仰せになりました納税者の
負担が増すのではないか、こういうような疑問でございます。
これにつきましては、この
地方消費税あるいは
消費税そのものも税の最終
負担者は消費者そのものでございますけれども、この税を納税するのは途中の売り上げに関与する
事業者がこの税の本来的な納税者となるわけでございますけれども、その納税者の事務
負担ができるだけかからないような仕組みをこの私どもの
地方消費税は提案をさせていただいているわけでございますけれども、しかし納税者の立場から見ると
地方税が別に加わってくるとややこしい、こういうような心理的な問題は否定できない事実だろうと思いますので、この辺の
理解を深めていただく、こういうことが
基本ではないだろうかと思います。
それから五点目にありました偏在の問題でございますけれども、偏在の問題は私どもも新しい
地方税を仕組む場合の最も
基本的な問題だろうと思っております。
その中で考えてまいりますと、一般的には、消費というとどうも東京のような大都会に、デパトトもありますし大型店舗が並んでいる東京にみんな消費が集まっちゃうんじゃないか、こういうような御疑念が当然ございます。
そういう中で私どもが手がかりとして推定をいたします場合に用いております端的な指標は、国の統計で民間最終消費支出という
経済企画庁の統計があるのでございますけれども、この統計で見てまいりますと、例えば東京都の場合には全国の中で民間最終消費支出が一二%強でございます。それに対しまして、現在の既に税でございます例えば
住民税の所得割、これが東京都は全国の中で一六%強、それから法人
事業税が二二%。
こういうように、既存の税の数字が
住民税でございますと一六%、法人
事業税でございますと二二%というようなシェアを持っている中で、ただいま申しました民間最終消費支出は一二%強、こういうことでございます。もちろん、
消費税の動向が民間消費支出にそのままぴたりと一致しているわけじゃございませんから、もう少しこれよりウエートが高くなると思いますけれども、それにしても
基本的に問題視しなきゃならぬほどの偏在は考えられないんじゃないか。その偏在の幅は恐らく一二%から二八%、あるいは二二%までいかない、その辺のところでもっておさまるだろうというのが私どもの
認識でございます。
それから、六番目に御指摘のございました
地方消費税が出てくると
消費税の税率アップそのものの妨げになる、こういうような御意見もございますけれども、私どもの立場からこういうことを申し上げるのはいかがかと思いますけれども、それはむしろ
消費税あるいは
地方消費税の性格について十分な御
理解をいただけていないことではないだろうか、こういう感じがいたします。
それから七番目に、それでは
地方消費税以外に現実にほかに選択肢があるのか、こういうことでございます。
これは学者のワーキンググループでもこういう議論をいたしました。一番端的に出ておりますのは、アメリカの各州でやっているような小売売上税というものが
地方税になじむんじゃないか、こういう議論がございました。しかし、これは現行の国の
消費税というのが既に厳然として存在しているという現実を考えてみました場合に、小売税そのものを
地方にこの際導入するというのはなかなか現実的にはうまくいかない。それから、もともと小売売上税は、
政府の
税制調査会で何遍も何遍もこれは税としては問題である、非常に技術的には欠陥がある、こういうような指摘を受けてきた税目でございますので、
地方に消費課税を導入する際には
地方消費税以外になかなか別の選択肢というのは無理じゃなかろうかというふうに私どもは考えて
地方消費税を提案させていただいているわけでございます。
それから、都道府県と
市町村の配分の問題でございます。
基本的には、この税の性格上、やはり納税者の心理的な抵抗をできるだけ小さくするという観点から都道府県税として仕組んでいるわけでございますけれども、その反面で、やはり何といっても私どもの
基本は
地方税の歴史というのは
市町村の税源をいかに
充実するか、こういうことの歴史が綿々として続いているわけでございますから、今回も当然のことながらこの点について十分な配慮をしなきゃいけない。
その一つの考え方としては、現在の都道府県の
住民税を
市町村に移譲していくというのが一つの有力な考え方だろう。
市町村は現在
固定資産税という安定した
財源を持っておりますから、この超安定税源としての
固定資産税と
住民税を組み合わせれば
市町村としては今後の
高齢化社会を見通した場合でも安定した税という体系はそれなりに全うできるだろう、こういう考え方をとっております。一方で都道府県は所得課税と法人
事業税というようなものが中心の税でございますから極めて
経済的に安定感を欠く、こういうことでございますので、ここに
地方消費税を入れれば都道府県としては
市町村と並んで相当安定した格好の税体系ができ上がるというのが私どもの
認識でございます。