○沓掛
哲男君 では、これから血液製剤についてお尋ねしたいというふうに思います。
両大臣にもぜひ聞いていただきたいと存じます。
輸血用血液も加工された動産として本法の
対象物とされておりますが、次の理由によりぜひ除外していただきたいと思います。
その理由を申し上げていきたいと思いますが、まず第一に、輸血用の全血製剤、血液成分製剤は、人体から採取した生血で、必要とされる人へ輸血するまでの間凝固しないようにするためクエン酸などを含む少量の抗凝固剤を混和したものであり、血液の成分、性状を生血のまま維持しようとするものであります。また、これらの輸血は、生体機能の一部を補充、移植するという性格を有するもので、臓器移植と同じ次元でとらえるべき医療行為であります。
なお、輸血用の血液には次のような特徴があります。
一つ、緊急不可避のときにのみ使用されるもので、代替品がございません。二つ、
他人の血液である以上、完全に一致した血液というものはありません。ある人には安全でも、血液型や血漿たんぱくのわずかな違いにより重い免疫学的な副作用が起こる危険性が常にあるものであります。三番目、輸血用血液の混入ウイルスのスクリーニング検査は、日進月歩ではありますが、感染初期や一部の変異株の検出は不可能で、病原ウイルスが混入している血液を完全に排除することは現在できません。恐らく将来にわたってもできないと思います、次々に変わっていくんですから。
私の血液は、親からもらったものに私が何十年か生きているうちに抗生物質を入れたりいろんなことをしていますから変化している。また、輸血する相手も変化している。その間で全く一致しておれば絶対支障はないけれども、必ず違ったものを入れるんですから、いわゆる確率論的にかなりの確率で
事故が起きるというのは当然で、そのことは未来永劫続くものだというふうに私は思っております。
それから次に、輸血用血液は善意の献血により非営利
団体である
日本赤十字社のみが国の方針により供給しているものであります。皆さんも輸血されるとこういうカードをくれますね、このカード一枚。牛乳選ぶかジュース選ぶかだけでみんな二百cc出しているわけですよ。世界でも特殊たそういう献血で、献血できるのは日赤だけ。したがって、日赤だけが
製造していて、それも全部無料でやっているという特殊な国であると思います。
さて、こういうふうな特殊性を有する輸血用の血液製剤を
PL法の
対象とした場合の問題について二つ申し上げます。
一つは、完全に安全な血液を追求するため、ウイルス感染症の危険性を減らすべく個人のプライバシーにまで踏み込んださらに詳細な問診が必要となります。献血という微妙な行為にのみ依存している輸血用血液の供給に支障を来すおそれが強いと思います。日赤側も強くそのことを訴えております。非常に微妙なバランスのもとにこの献血というのがなされているんだというふうに思います。
したがって、私に、おまえエイズになったことがないかとか、いろんなことを言ったら私もやりません。やるのは
団体でやるんですね。ことしはどこどこの市町村で献血が少ないから、ひとつこの会社でお願いしますとか、このグループでお願いしますというのに引きずられてみんな行ってやるという、私ら自身も断る理由があったら断りたいというふうに思う、そういう献血の状態だと思っていただければと思います。
それから二番目、完全に安全な血液というものはなく、ある程度の確率で危険のある輸血用血液は、医師の判断とその
責任において適用を最小限に絞り、適正に使用されるべきでありますが、
PL法の施行により必然的に多発する輸血に関するトラブルが医師の即断的判断に
影響を与えることが危惧されるのであります。
皆さん方、大病を思って非常に重い患者を入れる病室に入ったことがある方はわかると思います。私も二十六歳のときに敗血症で八カ月、金沢大学の伝染病棟に入れられました。毎日死者が出るんで、私も夜よく眠れませんでした。そういうときの医者の対応というものを私はじっと八カ月見てきたんですけれども、医者というものはわがままな人たちです。本当にわがままだたという不満もありました。しかしまた、重患に対して彼らは寝食を忘れて助けてくれる、そういう立派なところもありました。
しかし、医者にもピンからキリがありました。私が最初にかかった主治医というのはもうキリの方でございましたから、そのときは敗血症であるということがわからないで、異常だというので伝染病棟に入れられていたんです。そこで、次に谷野さんという名医が来られて、この患者にアクロマイシンを使ってみろということで、私はアクロマイシンを二日いただきました。熱は四十度がずうっと一カ月ほど続いていたのが七度台にぱっと下がりました。ところが、キリのその医者は、七度台になったら、ああ風邪程度かということでそのアクロマイシンをやめました。二日やめたらもどのように戻りましたが、今度は前のような投与をしても絶対下がりませんでした。
そして、大学の医学部の教授というのは一週間に一遍しか来ないんですね。あとは、こう言っては悪いけれども、インターンみたいなのに任してあるんですよ。その谷野医長が来て、なぜこんなことをしたかと言われて、その主治医は困っておりましたけれども、そのとき谷野さんの決断は三倍のアクロマイシンを使いなさいということでした。そしてそのとき私に、いいですねという念を押されました。もう私も四十度がずうっと続いて意識がもうろうとしておりますから、結構ですということで、そして三倍のアクロマイシンをずうっと二カ月ほど投与して、その後また五カ月の療養を経て元気な体に戻りました。
私は、あのときの谷野さんの決断、普通の量の三倍を投与するという、そういう決断というものが多くの非常に重体にある人を救ってくれるんだなというふうに今も深く感謝いたしております。
そういうことから見ると、医者というものはわがままなものがその前提にあります。そして、これで日赤で何かトラブルが起きたとすれば、いろいろ
訴訟があれば当然医者もまた呼び出される。医者が呼び出されるトラブルというものを彼らは嫌うでしょうから、輸血するのでまたトラブルが起こっては困るということで、医者の判断がいろいろ
影響されるんじゃないか。現に参議院にも宮崎さんというお医者さんがいますが、彼にも聞いてみると、ああ、それならほっておくよ、人は死ぬだけだよと、こういうふうに彼はよく言います。そういうふうに医者というものもまた非常に微妙な
立場におられる、そういう人たちに対して非常にマイナスにたるようなことをすべきではないのじゃないかと思います。
これから具体的に
質問に入らせていただきます。
輸血用血液に関する専門家集団である中央薬事
審議会が平成五年十月、また平成五年十二月の
国民生活審議会の
消費者政策部会の報告では、輸血用血液を
PL法の
対象とすることは適当でないと答申いたしております。まず最初に、いわゆる
審議会の答申というものをどのように受けとめられているのか、この場合でなくて一般的で結構ですが、
審議会の答申をどのように受けとめられているのかを厚生省と企画庁にお尋ねいたします。