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説明員(福田進君) まず、転嫁の
お話から御
説明いたします。消費税の転嫁の
状況につきましては、通産省がなさいました
調査によりますとおおむね次のとおりでございます。
すなわち、消費税の導入前には
事業者の転嫁に対する懸念が指摘されたわけでございますが、結果といたしまして全体としては円滑かつ適正な転嫁が行われた、こういう
調査結果になっております。ただ、小売
業者やサービス
業者などのいわゆる対消費者取引を主体といたします
事業者の一部では転嫁を行っていないものの比率が高くなっていまして、これは
事業者向け特例措置の適用を受ける中小零細
事業者の割合が高いためと考えられます。特に、今御指摘ございました免税点
制度の対象となる課税売上高三千万円以下の
事業者の転嫁割合は低く、小売
業者で約三分の一の
事業者、またサービス
業者で約三分の二の
事業者がほとんど転嫁できていないという結果となっております。
それから、今益税という
お話がございましたが、益税という言葉につきましていろいろな方がいろいろなところでおっしゃっておられます。その定義として明確なものがあるわけではございませんが、一般的には中小
事業者に対する特例措置によりまして消費者が支払った消費税相当額のうち
事業者の手元に残っているもの、こういう
意味で使われていると考えられます。これらの中小特例措置によりましてどの
程度の益税が生じているかは、各
事業者の転嫁
状況を把握しなければ推計できない性質のものでございます。各
事業者の転嫁の
程度を正確に把握することは現実問題として不可能でございますので、益税額を計算することは困難でございます。この点は御理解いただきたいと思います。
ただ、税制
調査会の中期答申に示されておりましたように、中小企
業者の転嫁の割合が相対的に低いこと、また平成三年の消費税法の改正によりまして、簡易課税
制度のみなし仕入れ率がおおむね実態に即したものとされていること等から推測いたしまして、
事業者の手元に残る額が広範かつ多額に生じているとは考えにくい、こういうふうに思っております。
なお、これらの特例措置によって他方で減収額というのが生じてくることとなりますが、この減収額とは、特例措置がなければ本来納付されたはずの税額を言いまして、各
事業者の転嫁
状況いかんにかかわらずこれは発生するものでございます。適正転嫁によって益税が発生しない場合、益税が発生している場合、益税が発生していない場合、さらには転嫁ができず、いわゆる益税の逆でございますが損税が発生している場合にも減収額は生じるわけでございまして、益税の額と減収額とは全く異なる概念であることも、これも御理解いただきたいと思います。
なお最後に、中小
事業者の納税事務に配慮して設けられましたこの特例措置でございますが、まさに先生おっしゃいますように、これは消費税のような間接税の仕組みの中に
事業者の事務負担を軽減する措置を設けること
自体、それ
自体には十分私
どもは合理性があると考えております。諸外国においても採用されておりますので、その認識は同じでございます。
ただ、この具体的な
制度のあり方につきましては、税制における公平性と簡素性の間でどのように均衡を図るべきという政策
判断の問題でございまして、消費税が導入されて六年目でございますが、国民の間に定着いたしまして、
事業者も納税事務に習熟してきたと認められる今日におきましては、さきの益税問題にかかわりなく、公平性と簡素性という二つの
要請をどのようにバランスさせるか、こういう観点から
検討が行われるべきものだ、こういうふうに考えております。