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立木洋君 きょうのテーマは二十一
世紀に向けた
エネルギー供給の
課題と
対策というテーマですが、もちろんこのテーマは
資源エネルギーの消費構造を改めるということ、つまりエネルギーの消費の
あり方の従来型の構造を抜本的に見直すという問題や、さらに
環境に優しいエネルギー政策へ転換するという問題とかたく結びついている問題であるということは明らかですが、これらの問題についてはこれまで述べる
機会がありましたので、きょうは供給の問題ということに限定して若干の補強的な発言をさせていただきたいというふうに思います。
一つの問題は、国内資源の活用を重視するという
観点から、国内炭の問題についてもう一度よく見直してみる必要があるんではないかという問題です。
通産省の資料によりますと、現在のようなエネルギー需要の伸びが続くと二〇一〇年には供給が難しくなるという
見通しが指摘されております。そこで、まだまだ
日本にとって供給可能な国内炭に対して目を向けて、その
利用についてもう一度検討する必要があるんではないかという問題です。
国内炭の埋蔵量は二百億トンというわけですから膨大な量が埋蔵されており、そのうちの可採量だけでも二十億から三十億トンと言われているように将来性を持っているということが考えられます。また、需要の面を見ても、現在、
日本の
エネルギー供給の構造では第一次エネルギーの一八%を石炭が占めているわけですから、
日本のエネルギー構造の中で石炭が不要になったというわけではなくて、やっぱり一定の重要な地位も占めている。もちろん、石炭を採用する場合には
環境への
影響が当然問題になるわけですが、つまり二酸化炭素や硫黄酸化物や窒素酸化物等の排出が
環境に与える
影響の問題があります。
ここでは、
先ほど同僚委員も指摘されましたように、これまで進めてきたクリーンコールテクノロジーの開発と普及を一層進めることがこの問題の解決に当たるのではないか。それは石炭の生産、流通、消費のあらゆる
段階で石炭をクリーンエネルギーにする。ここではCO2やSOx、NOx排出を除去して地球温暖化や酸性雨への
影響を減少せしめるという
技術的な
努力、また石炭のガス化や液体化
技術の開発によって石炭を固体として取り扱う上での問題を解消するということもあわせて進めるならば、その一定の
利用の可能性を開くことは可能だろうと思います。もちろん、国内の石炭採掘などにおける経済効率性の問題についてはいろいろ議論があるところですけれども、しかしこの点でも、深部の採炭やあるいは保安
技術などを積極的に進めることによってこれらの問題を解決する
努力を進めるならば、この問題も決して不可能な問題ではないだろうというふうに考えるわけです。
私が特に強調したいのは、二十一
世紀に向けて石炭の需要は世界的に増大する
傾向が見られるという問題です。国際的にも埋蔵量が大量にあり、可採年数だけでも三百二十八年というわけですから、石油に比べても豊富な量を石炭は占めております。中でもアジア・太平洋
地域での石炭の需要というのは今後大幅な需要増が見込まれる。こういう
状況の中で、いわゆるクリーンユースの
実現を国際的な共同の
努力によって進めていくということによって
環境への
影響を減少し、そして効率性も高め、必要な国内における資源を活用するという問題については、当然もう一度光を当てて取り組む必要があるんではないかということが第一の点であります、
二つ目の点は、新たなクリーンエネルギーの開発に関連しての問題です。
太陽や風力などの新しいエネルギーの開発を進めて、一次
エネルギー供給の一〇%以上をこうした再生エネルギーでの
確保に努めることは可能であるということがさまざまなところで指摘をされています。これらの新しいエネルギーは、高温熱や一度に大量のエネルギーを必要とするような用途にはもちろん不向きですけれども、家庭用の熱需要だとか電力の需要などは低温や低圧がほとんどですから、自然エネルギーの導入の可能性は大きく、また現にこれを進められていることはさまざまの視察で見ることができたところであるわけです。
ですから、仮にソーラーシステムを全住宅に導入すれば、家庭で使う温水の約六〇%が太陽熱で賄えるということになるわけですし、これは最終エネルギー消費の三%にも匹敵するものです。また、大規模なオフィスビルやホテルなどでの業務用の冷暖房、照明、給湯などの面でもコージェネレーションの導入とあわせて自然エネルギーの役割は決して小さくなく、この
分野でも導入の可能性はあるということが既に示されつつあります。
こうした点では総合的に見るべきで、経済効率だけではなく有効
利用の
技術開発を国が積極的に
推進をして、低温あるいは低圧等の面でより多くこうした自然エネルギー、再生エネルギーの
確保に努めていくような設備投資についての
税制、金融、財政上の
優遇措置を国としてもより進めていくことが必要ではないだろうかというふうに考えられる点です。
それからもう
一つの点としては、原子力発電、とりわけプルトニウムの
利用の問題についてです。
これはもう既に何回か述べてきましたけれども、一九八八年にいわゆるシビアアクシデント、過酷
事故の
対策の必要性が国際的な
会議で勧告をされて問題になりました。
日本としてはなかなかそれを受け入れなかったわけですけれども、九二年になってやっと
対策として検討が始められ、二〇〇〇年をめどにこの問題を受け入れた形で設備改造工事を進めるということが問題になってきております。
この
対策の対象としては、運転中の四十五基あるいは試運転中や建設中の六基を合わせて五十一基が対象になっております。これらはより安全性を強め、高めようというものであるわけですから、
国民の要求に目を向けたものとして当然好ましいことであるというふうに考えます。
しかし、問題はこれで安全
対策が既に終わりということではなくて、安全性が
確保されていない現在、さらに新増設という問題については見直すべきであって、安全性の強化についてもより一層強められなければならないというふうに考えます。特に放射性廃棄物の問題は、今さまざまな廃棄物の
環境に与える
影響が大きな問題になっておりますが、この特殊な放射性廃棄物の問題は依然として未解決であって、これらの問題は国際的にも国内的にもさまざまな問題になってきているわけですから、
環境に対して必ずしも原発の
利用が絶対的にクリーンだと言えないこともあるわけです。このこともあわせて指摘しておきたいというふうに思います。
特に、この問題で今回述べたいことはプルトニウムの
利用の問題です。
高速増殖炉の路線で、このプルトニウムの
利用によって再生を目指していくといういわゆる核燃料リサイクルの政策を進めておいて、つい先日「もんじゅ」の臨界が行われました。しかし、これらの問題は、当初この核燃料リサイクルの政策を
推進しようとしていた
政府の考え方、
見通しの点から見て幾つかの違いが出てきている。
一つは、この問題について言うならば、
日本は燃料が極めて少ないんだから、これによっていわゆる再処理の
段階で新しいプルトニウムがつくられる、そのことによって
日本の燃料の問題についての二足の新たな
見通しが生まれるというふうな
見通しを立てました。しかし、現実には今国際的には余剰のプルトニウムが予想に反して大量に存在するという
状況がありますし、またコスト高からアメリカ、ヨーロッパでは高速増殖炉から手を引くという
状況があって、結局この「もんじゅ」の問題についても当初の建設見積もりの六倍の六千億円も費やしたという
状態があります。
高速増殖炉の使用済み燃料の再処理の問題についても、第二工場については御承知のように延期されて、新たな
段階で検討するということで
見通しが立っていません。第一工場の六ケ所村で行われた
内容につきましても、いわゆるトムスク7で起きた化学爆発の危険性からの安全性の問題が見逃しにされていたという点についてアメリカの
調査報告書の指摘もあり、
日本政府も化学爆発の潜在的な危険の存在を事実上認めて、畑通産大臣も他の
事故をかけがえのない教訓材料として生かすように
努力しなければならないという指摘がなされているわけです。これらの問題については検討しなければならない点が改めて指摘されたと言えると思います。
このようなプルトニウムの存在は、ただ単に
技術上、経済上、安全性だけの問題でなくて、今日核兵器へ容易に転用されるとして国際的にも厳しい問題になっているわけで、こうした問題からもやっぱり軽視すべきではないというふうに考えます。
先般行われた原子力委員会では、有権者の
意見を聞いたとき複数の人々がプルトニウムの
利用計画の一時凍結を提案していますし、プルトニウムの
利用については過大な期待をかけるべきではなく、安全に大きな問題が懸念されるということは
政府関係者の中でも指摘されている点です。さらには膨大な予算投入を見直すことも改めて指摘をされている点だと言われております。
ですから、この点では通産省が五月九日に見直しの方針を明らかにしましたけれども、それはプルトニウムの
利用を多少繰り延べただけで、プルトニウムの需給のバランスにしても量を少し減らしただけで事実上見直しの問題にはなっていないということもあわせて考えるならば、
政府部内における
意見やあるいは専門家等におけるプルトニウムの
利用の問題についての指摘をやっぱり真正面から受けとめて、核燃料リサイクルについては抜本的に見直しを行うべきであるということを述べたいわけであります。
最後の問題としては、エネルギー財政の
あり方についても一般会計、特別会計合わせたエネルギー
対策関係費一兆二千八百十五億円、これは九三年度ですが、これが再生可能な新エネルギーの開発や
利用促進の費用を合わせても二百九十一億円にしかすぎないと、新しいエネルギーの開発についての予算をもっと計上すべきではないかという問題があることもあわせて述べておきたいわけです。
もう
一つは、エネルギー問題はあらゆる
分野に関係があるわけですから、エネルギー
産業という見地からこの問題を優先的に考える機関、あるいは政策調整を主としている実質的な権限を持たない機関などの組織や機構では総合的に
対応することができないわけですから、この点でも地球
環境を守るエネルギー政策を総合的に進めるために必要な民主的な
行政機関を置く、つまり
指導に対して権限のある機関が設置されるべきではないだろうかということも最後の問題として指摘しておきたい点です。
以上です。