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参考人(
木田橋勉君) 新
エネルギー・
産業技術総合開発機構の
木田橋でございます。
日ごろは、私どもの業務に対しまして御
理解、御支援を賜り、まことにありがとうございます。また、私ども新
エネルギー・
産業技術総合開発機構、略してNEDOと称しておりますけれども、本日は、そのNEDOが進めております新
エネルギー等
技術開発の現状と実用化の見通しにつきまして
意見を述べる
機会を与えていただき、まことにありがとうございます。
NEDOは、二度にわたります石油危機の後、我が国の
エネルギー供給構造の脆弱性を克服すべく制定されました石油代替
エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律に基づき、昭和五十五年十月に新
エネルギー開発の中核的推進母体として設立された機関でございます。
最近の情勢を見ますと、一昨年の地球サミットに見られますように、地球
規模での環境問題の重要性はますます高まっております。各国ともにその解決を目指した取り組みを強化しているところでございます。我が国としても、経済成長、
エネルギー需給、環境のバランスのとれた
発展を図るべく、環境保全効果の高い新
エネルギー・省
エネルギー技術の開発、導入の推進が、
エネルギーセキュリティーの確保の観点とともに従来以上に強く求められているところであります。
また、新
エネルギーの導入レベルは、現在のところ残念ながら総
エネルギー供給の一・三%
程度という低いレベルにとどまっているところでありますが、後ほど申し上げますように、これまでの
技術開発の成果により、基本
技術としてはほぼ実用レベルに達した
技術が出現をしてきているところであります。今後は、
技術開発の一層の推進とともにこうした
技術導入の推進が求められているところであります。さらに、環境問題はもとより
エネルギーの供給確保についても地球レベルで考えていくべきことは言うまでもありません。特に、経済成長の著しいアジア
地域に位置する我が国としては、国際的観点に立って新
エネルギー・省
エネルギー技術の開発、導入に取り組むことが重要となっています。
こうした背景のもと、昨年三月には
エネルギー需給構造高度化のための
関係法律の整備に関する法律が成立し、NEDOの新たな業務として、国内における新
エネルギー技術の導入促進業務、省
エネルギー技術の開発、導入促進業務、海外における新
エネルギー技術及び省
エネルギー技術の導入促進に資する実証業務が追加されました。すなわち、NEDOは、新
エネルギー技術及び省
エネルギー技術について開発から導入に至るまで総合的な推進役を果たしていくことが求められております。
また、
技術開発面では、平成五年度に通産省工業
技術院において、従来のサンシャイン計画、ムーンライト計画及び地球環境
技術研究開発を一本化したニューサンシャイン計画が発足され、新
エネルギー・省
エネルギー技術、環境
技術についての総合的な推進体制が整備されたところであります。さらに、昨年十二月には、通商
産業大臣の諮問機関であります総合
エネルギー調査会の石油代替
エネルギー部会において、各所
エネルギー個別の導入促進シナリオの確立、制度的環境整備等を内容とする新
エネルギーに係る施策の基本的方向についての中間報告がまとめられております。
こうした
状況の中で、NEDOとしても、NEDOの果たすべき
役割の重要性を深く認識し、民間
企業の創意と工夫を活用しながら、これまで以上に重点的、効率的に新
エネルギー等の
技術開発及び導入の促進を図っていく所存であります。
新
エネルギー技術として
技術的にも相当の成果を上げ、できるだけ早期の導入が期待されております太陽光発電
技術、燃料電池発電
技術、石炭液化・ガス化発電等の石炭利用
技術、地熱発電
技術等を中心に新
エネルギー技術開発の現状及び課題等について述べさせていただきます。
まず太陽光発電
技術でございますが、太陽光発電は、クリーンな自然手不ルギーであるとともに無尽蔵な
エネルギー源であるため、地球
規模での環境・
エネルギー問題の解決に資するばかりでなく、
システムが単純で安全性が高く、小
規模システムでも構築可能なため、住宅、学校等の電気の
需要地に設置できるという長所を有しております。その反面、日照に左右されるため出力が不安定であり、また希薄な太陽
エネルギーを利用するため広い設置面積を必要とする短所もあります。
このような太陽光発電の特徴を踏まえ、NEDOでは、太陽光発電
システムの性能向上とコスト低減を目的として
技術開発を実施するとともに、こうした
技術の利用を図るための導入普及に取り組んでまいりました。具体的には、
技術開発の面では、十センチ角の多結晶シリコン太陽電池において
世界最高水準である変換効率一七二一%を実現するとともに、電力供給系統への連系などの
システム実証研究を行ってきております。また、導入普及の面では、実際の利用現場での実証研究を行うフィールドテスト事業として、地方自治体等と協力して学校、公民館などの公共施設に対して、平成四年度には十一カ所、二百三十五キロワットの、平成五年度には十九カ所、四百八十一キロワットの試験的導入を行っております。
このような
技術開発の成果により、従来の電卓などの民生部門、山小屋などの独立分散電源といった限定的利用分野から、電力系統と接続し、夜間は系続から電気を受け、昼間の発電量が余るときは逆に送り返すといった系統連系逆潮流ありの太陽光発電
システムが構築可能となっております。また、電気事業法政省令改正、系統連系ガイドライン等の新
エネルギー導入のための制度的環境整備も進んでまいりました。こうしたことにより、戸建て住宅などに民間レベルでの試験的導入が開始され、特に住宅メーカーからの太陽光発電住宅の試行的販売も開始されております。
しかしながら、そのコストの高さが最大の問題となっております。このため、今後は太陽電池セルのコストダウンを初め、太陽電池と屋根等を一体化する二とによりコスト低下をねらった建材一体型太陽電池モジュール製造
技術などのコスト引き下げのための
技術開発を一層推進するとともに、積極的に
需要を創出し、これが生産
規模の
拡大とコストダウンを促し、次の
需要を誘発するといった良循環への誘導を図る必要があります。
このため、通産省において住宅用太陽光発電
システム普及促進プロジェクトの来年度からの導入を検討中と伺っておりますが、私どもとしても太陽光発電の自律的
発展を目指した着実な導入普及の
活動を開始する起爆剤としてぜひとも必要なものと考えております。
また、現在の
技術水準は戸建て住宅、公共施設などに導入可能なレベルに達してはいるものの、今後住宅などへの本格的な普及を初め、公共用、
産業用へと多様な分野への利用
拡大、さらには発電用としての利用を可能としていくための超高効率太陽電池など次
世代に向けた
技術開発を推進する必要があると考えております。
また、アジア諸国を初めとする
発展途上国における無電化
地域の電化の方策として太陽光発電は
一つの有効な
技術と考えられますが、私どもとしてもタイ、ネパール等との共同で、村落電化、水ポンプ等の太陽光発電
システムの利用実証研究を実施しているところであります。
太陽
エネルギーを熱として利用するソーラー
システムには、民生用と
産業用があります。民生用は、サンシャイン計画による研究開発を通じて実用化され、
かなり普及しておりますが、
産業用は、高度な熱管理を必要とする
産業工程へソーラー
システムを直接応用する
技術が未確立てあるため、これらの研究の必要性があり、
技術開発を進めております。
次に、燃料電池発電
技術は、電気と熱の併給が可能で、
エネルギー利用の効率向上に役立ち、クリーンで環境面でのメリットも多く、
技術的にも早期の実用化が見込まれる有望な
技術であります。燃料電池の研究開発は、電解質の種類によって区分される燐酸型、溶融炭酸塩型、固体電解質型、固体高分子型の四タイプについて行っております。
燐酸型燃料電池は、第一
世代として早くから実用化が期待されてきたもので、発電効率が四〇%
程度、熱の利用とあわせた総合効率が八〇%
程度を見込めるものであります。NEDOでは、主として都市近郊の
需要地に隣接して設置する分散型発電設備として千キロワットの設備を、またホテル、病院等を
対象とした
需要地設置型電源及び熱源として二百キロワットの設備を既に開発し、現在はこれらの成果を受けて分散型発電設備として五千キロワットの設備を、また
需要地設置型設備として一千キロワット設備の実証試験に向けて鋭意開発中でございます。燐酸型燃料電池については、平成五年十二月末現在、研究開発等の目的で設置され、既に運転している設備の合計容量は約一万八千キロワットにも及んでおります。また、これらの設備の運転研究に参加している機関は、NEDOを中心に電力・ガス各社などのユーザーが
主体となっております。
今後は、耐久性とコスト低下を図ることにより、既存の発電設備に十分競合し得る電気と熱を同時に供給し得る分散型電源あるいは
需要地設置型電源として普及が期待できるものと考えております。
次に、第二
世代の燃料電池と言われております溶融炭酸塩型燃料電池は、火力発電所の代替電源として位置づけられております。これまでの要素
技術の研究を踏まえ、現在一千キロワットのパイロットプラントの建設に向けた研究開発に着手した段階であります。
固体電解質型燃料電池は火力発電所の代替電源や
需要地設置型として、また固体高分子型燃料電池は自動車用の電源や民生用として期待されていますが、いまだ要素
技術の研究開発という
状況であります。
以上、申し上げました燐酸型を除く燃料電池については、その導入普及になお一層の
技術開発と時間を要するものと考えております。
次に、石油依存度を低減させ、
エネルギーセキュリティーの確保を図る上で欠かせない石炭利用に関する
技術開発について述べることといたします。
石炭は、石油、天然ガスなどの他の
エネルギー資源に比して埋蔵量が豊富で、また主要な産炭地が
アメリカ、カナダ、オーストラリア、中国などに広く分散しているという特徴があります。その反面、固体であるがゆえのハンドリングの悪さ、硫黄などの環境汚染物質が多く含まれているなどの短所もあわせて持っております。しかし、新たな
技術開発を行い、それを用いることにより石炭の利便性を高めたり、環境対策の一層の向上を進めることにより、クリーンで有益な
エネルギー源とすることができると考えております。
このためNEDOでは、環境に調和した石炭利用
技術としましてクリーンコールテクノロジーの
技術開発を精力的に進めております。現在この
技術開発の重点として、歴青炭液化
技術開発、石炭ガス化複合発電
技術、石炭利用水素製造
技術の三つのプロジェクトに取り組んでおります。
まず歴青炭液化
技術でございますが、歴青炭液化
技術の開発では、
世界的に広範かつ大量に賦存している亜歴青炭から歴青炭までの幅広い種類の石炭を経済的に液化することを目標にしております。NEDOでは、独自に開発したNEDOL法という新しい歴青炭液化プロセスを研究しております。このプロセスは、反応条件が温和で信頼性の高いプロセスであり、液化油収率が高く、軽中質油留分の多い液化油が得られるなどの特徴を持っております。
石炭液化油は、現在石油製品が使用されているほとんどすべての分野で利用が可能であり、また、石油の軽質油留分と混合する形で既存の石油と同一のルートで市場に導入することが可能と考えております。コスト的には現在の石油価格との比較ではいま一歩という段階でありますが、将来石油需給が逼迫することは避けられないと予想されることを勘案しますと、早期に石炭液化
技術の確立を図っておくことが重要であります。
また、石炭ガス化複合発電
技術の開発では、平成三年度より石炭処理量で一日当たり二百トン、発電
規模で二万五千キロワット級のパイロットプラントによる運転研究を実施しております。
次に、石炭利用水素製造
技術の開発では、石炭からクリーンで利用範囲の広い水素を製造することを目的に、石炭処理量で一日当たり二十トンのパイロットプラントを用いて平成三年度から運転研究を実施してきました。本年一月二十五日には一千時間の連続運転に成功し、その長期信頼性が確認され、実用化のめどをつけることができました。
なお、今後
世界的な石炭
需要の増大が予想される中で、
発展途上国においても環境対策に十分配慮して石炭利用を
拡大していく必要があります。NEDOとしても、中国、インドネシア、フィリピン等に対して脱硫設備等我が国の有するクリーンコールテクノロジーの普及基盤を整備していくためのモデル事業を本年度より開始したところであります。
次に、クリーンな国産
エネルギーとしてその開発が期待されている地熱発電に関する
技術開発の現状について説明させていただきます。
我が国では、現在までに二十七万キロワット
程度の地熱発電設備が稼働しておりますが、さらに平成九年度までに二十八万キロワット
程度が新たに運転を開始する予定になっております。しかしながら、一般的には地熱
資源の開発は容易ではなく、リスクが高いものであります。すなわち、地熱探査
技術が十分に確立しているとは言いがたく、
資源量の把握が正確にできないという探査リスク、期待どおりの蒸気が得られないといった掘削リスク、さらには運転開始後の生産井及び還元井の減衰等のリスクがあります。
このためNEDOでは、地熱
資源を発見し、賦存
状況を把握する上での不確実性を低くし、その開発リスクを軽減するために地熱開発促進
調査を進めるとともに、地下の複雑な割れ目から成る地熱貯留層を精度よく探し出すための
技術開発、また、既に開発されている浅部地熱
資源の下部に賦存が期待される深部地熱
資源の探査、掘削、生産
技術の開発に取り組んでおります。
一方、現在は利用されていない二百度C以下の中高温の熱水や、蒸気も熱水も伴わない高温岩体と呼ばれる地熱
資源を有効に利用するための新しい地熱発電
技術の開発を行っております。その
一つが熱水利用バイナリーサイクル発電
技術の実証であります。これは井戸を掘削してもそのままでは噴出しない熱水を、ダウンホールポンプと呼ばれる井戸内に据えつけたポンプでくみ上げ、熱水の持つ
エネルギーにより発電しようというものでございます。現在一万キロワット級の実験プラントによる実証に向けた研究を行っているところであります。また、高温岩体
資源を利用した発電
システムを開発するための要素研究も進めております。
最後に、今まで述べました以外の新
エネルギー技術及び省
エネルギー技術開発について御説明させていただきます。
まず風力発電
技術でございますが、我が国においては、これまでの
調査結果から風況の良好な地点も幾つか確認されておりますが、全体的には山岳地帯が多いため風況が安定せず、必ずしも恵まれた条件下にあるとは言えません。また、多数の風車をまとめて設置できる広い土地がないなどの制約もあることから、その導入はさほど容易ではないというのが実感です。しかしながら、貴重な自然
エネルギーでありますので、我が国の風土に合った風力発電の
技術開発を着実に進めていく必要があると考えております。
現在NEDOでは、平成三年度から国土の狭い我が国に適合した大型機、これは五百キロワット級のものでございますが、の
技術開発に取り組んでおります。また、風力発電に適した立地点を探し出すため全国的
規模で風況
調査を実施してきており、昨年八月にはこれまでの
調査に基づき全国風況マップを作成し公表しました。風力発電の導入を考える方々に有効に活用していただきたいと考えております。
次に、広域
エネルギー利用ネットワーク
システム技術、エコ・
エネルギー都市
システムと略称しておりますが、
日本の全一次
エネルギー供給量のうち約六割は有効に利用されずに
エネルギー損失となり、主に熱
エネルギーの形態で放出されております。また、熱余剰の発生と熱
需要が地理的、時間的に一致しないという問題もあります。この研究開発では、このように
エネルギー形態の中で大きなウエートを占める熱
エネルギーに焦点を絞りまして、その徹底有効利用とともに余剰と
需要のマッチングを図ることにより
エネルギー・環境制約の緩和を図ろうとするものであります。
具体的には、工業地帯等における
産業分野から排出される廃熱で、その
産業分野では利用価値の薄い中低温の廃熱を高効率で回収して
需要地である都市部へ低損失で輸送し、民生分野等の
需要形態に応じて熱の供給を行うネットワーク
システムを構築するのに必要な
技術を確立することが本研究開発の目的であります。
また、本年度より開始したプロジェクトとして水素利用国際クリーン
エネルギーシステム技術開発、通称WENETがあります。これは先ほど
太田先生が言及されましたものでございますが、水素は燃焼させた場合に発生するものが水のみであり、地球環境に
影響を及ぼす二酸化炭素、硫黄酸化物等を発生させない物質であり、今後注目すべきものであります。本研究は二〇二〇年までの約三十年間にわたる長期プロジェクトであり、水力発電、太陽光発電等の再生可能
エネルギーをこれらの入手が容易な国において自然環境を破壊しない
程度の開発を行って余剰分で水素を製造し、これを輸送が容易な形態に変換して
エネルギー消費国に運び
エネルギーとして使用するものであります。
さらに、廃棄物発電が未利用
エネルギーの有効利用及びこみ処理問題から近年注目されております。廃棄物発電は、一般廃棄物において既に三十六万キロワット
程度の発電設備容量がありますが、発電効率は最高でも一五%
程度にとどまっております。これは、焼却炉内において高温では伝熱管が腐食しやすいために、蒸気温度が三百度C以下に抑えられているためです。このためNEDOでは、平成三年度より耐腐食性にすぐれた伝熱管を開発する等により蒸気温度を高め発電効率の大幅な向上を図る
技術開発を進め、今後、導入発電量の増加を図ってまいりたいと考えております。
今までは新
エネルギー及び省
エネルギー技術開発の現状と課題について述べさせていただきましたが、これら新
エネルギーの導入促進のための主要な施策について簡単に述べさせていただきます。
NEDOでは、現在実施中の新
エネルギー開発の中で太陽光発電、燐酸型燃料電池が実用化段階に近いものと見込まれることから、平成四年度からこれらを
対象とした新
エネルギー発電フィールドテスト事業を行っております。本事業は、太陽光発電、燃料電池発電を実際にエンドユーザーである各種施設に試験的に導入し、実際の負荷のもとでの運転データ等を収集、分析して本格的導入普及に有用な資料としてとりまとめるものであり、太陽電池及び燃料電池合わせて四年度には二十六カ所、二千三十五キロワット、五年度には二十二カ所、千百八十一キロワットの試験的導入を行っております。
また、新たに平成五年度から大
規模コージェネレーション、廃熱のカスケード利用等を活用した
地域内の
エネルギー有効利用
システムの構築を促進するため、環境調和型
エネルギーコミュニティー事業を開始しております。本事業は、
地域の特性に応じて熱の利用を低温域から高温域にわたる各段階において、発電用途も含めむだなく組み合わせることにより、
地域エネルギーの有効利用
システムを整備、促進するための助成制度であります。
以上、新
エネルギー等の
技術開発の現状と実用化の見通しについて述べてまいりましたが、改めて、このような発言の
機会をいただきましたことに御礼申し上げるとともに、本日御
出席の先生方におかれましても、今後ともNEDOの業務に対し格段の御
理解と御支援を賜りますようお願い申し上げまして、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。