○武田節子君 公明党の武田でございます。
本格的高齢社会への
対応について
意見を述べさせていただきます。
平成四年九月に早稲田大学教授の岡田さんが、
我が国の
高齢社会の
対策について次のような
意見を申し述べられたことがございます。
我が国が超高速の
高齢社会を経験しながら、しかも経済大国から
生活大国を実現するためには何が必要かということですが、
女性の
社会参加を促進することが第一の前提になっていくのだろう、
女性の
環境をどう
整備していくかがこれから最も重要な政策の
課題の
一つとなっていくだろうと言われておりました。私も全くそのとおりだと思っている一人でございます。
と申しますのは、私は一昨年七月までは働く婦人の会の
委員長として、小規模企業で働く中高年
女性の地位向上や職場の
環境条件の
改善に取り組んでまいりました。
働く
女性と
高齢化社会という
観点から
意見を述べさせていただきますけれども、
平成三年七月に中高年働く
女性の職場の実態
調査を行いました。五百人を対象に訪問面談によるアンケート
調査でございました。そのうちの二、三抜粋して申し上げますと、働いている理由について、複数回答ですけれども、
生活のため三百五十八人、六九・六%、家計補助百三十四人、二六・一%、老後の
生活の安定のため百十三人で二二%ございました。
転職の経験、これも複数ですけれども、経験ありが四百三十五人で八四・六%でした。その内訳は、結婚・出産・
育児のためが百二十五人、
家事仕事の両立ができなかった、
介護・看護のため、合わせまして百五十八人が
仕事を中断しております。
仕事の上の疲労について調べますと、少し疲れるが三百三十八人、六五・八%、非常に疲れるが百十三人で二二%、合わせて四百五十一人、八八%が疲れております。
仕事、
家事の
負担が働く
女性にかかり過ぎていることが非常によくわかるアンケート
調査でございました。
老後の不安については、経済が一番目、二番目が健康で、三番目が
住まいでした。経済は、
年金で暮らせない、健康が、病気のときに世話してくれる人がいない、
子供が当てにならない、
住まいは、
ひとり暮らしで立ち退きの不安や家賃が高いというような理由が挙げられておりました。
一部だけ取り上げてみましたけれども、
女性が
仕事を続けていくことがいかに大変な状態であるかが浮き彫りにされておりました。
そこで、私たちは運動の中で
育児休業法や
介護休業法の法制化促進運動を続けてまいったわけでございますけれども、今
我が国の歴史始まって以来の一・五三ショックと言われている
出生率の低下と、相まって
平均寿命八十年というこれまた
世界最高長寿国を迎えたわけで、いまだお手本のない超
高齢化社会を全
国民が生きなければならないわけです。
例えば一九九〇年には六十五歳以上の人口が千四百三十万人、それが二〇二五年になりますと三千二百四十万人、二・二六倍でしょうか。そして、一九九〇年のときには
寝たきりが八十一万人で痴呆老人が百万人で百八十一万人、この数が二〇二五年になりますと
寝たきりが二百二十九万人で痴呆性老人が三百二十二万人で五百五十一万人、一九九〇年のちょうど三倍強になるわけです。
これは、現在四十歳の主婦が十五人で一人見ている
高齢者が、二〇二五年には二人で一人を背負うような状況になるわけであります。また、二〇一八年には、昭和二十二年生まれの団塊世代の人がちょうど六十歳になったころが、
介護される人が
介護する人の数を上回るというふうに言われております。したがいまして、二十一
世紀の超
高齢化社会は
高齢者だけの問題ではなく、全
国民的レベルで考え、
対応していかなければならない問題だと
認識いたしております。
こうした事態に対して
我が国の
対応は非常におくれていると思うのですけれども、最大の原因は、
我が国は人間という
視点を忘れて、戦後ずっと約五十年間 生産第一 利益第一 効率主義第一で突き進んできたツケが、時の流れもありますけれども、一遍に
少子社会と
高齢社会がセットで押し寄せてきたように思います。
したがいまして、私は、今後の
対策としては、二十一
世紀福祉ビジョンで示されました
年金、
医療、
福祉の
施策を実現していくとしうことは大変重要でありますけれども、私は、根本的なところで、まず
女性の人権を尊重すること、働く
女性の権利を尊重される思想こそが最も大事だ、こう思っているわけでございます。そして、
雇用の場における
男女平等の実現と
男女の共同参画型
社会の実現のために新
ゴールドプランの
施策の実現もあるものと、こういうふうに
認識しております。
さて、今や
我が国の女子
雇用労働者数は千九百七十四万人で、全
雇用労働者数の三八・六%を占めておりまして、前年比五十六万人増でしょうか、五十数万人増加しております。今後、二十一
世紀に向かって四〇%から七〇%を超える状況で増加していくものと思われております。したがいまして、今後は著しい
労働力が不足して、
女性の
労働力を大幅に取り入れなければならない状況になることは明らかだと思います。
そこで、やはり若い人が
子供を出産して育てていかれる
環境の
整備、または働きながら親を
介護している中高年
女性が、男性も含まれますけれども、職場を去らずに
介護しながら安心して働き続けられるための
環境整備を考えていくことが、この深刻な
少子社会と超
高齢化社会を明るく活力ある二十一
世紀を迎える最大の要件だろうと思っております。
フランスの
世界的人口問題の権威者であるクロード・シエネー氏は、
女性の職場進出と
出生率は両立する、ただしそのための不可欠な要件は
女性の権利が尊重されることである、
日本は
世界でも有数な
女性の高学歴の国で、
女性に家庭に帰れと言うことは無理、むだでありまして、
日本政府や経営者がこのことを理解し努力しなければ、
日本の
出生率はもっと下がるだろうと一大警告を発しておられます。
その意味で、
育児休業法、制定はされましたけれども、これも
生活保障給付の
育児休業法でそして両親の
子育て支援という意味を持った
法律でなければ余り両性にとって役に立つ休業法にはならないのではないか、こんなふうに思っている次第です。また、
介護休業法も、
生活保障給付の、そして
男女両性で取得できる
法律を一日も早く制定していくことが大事だ、こんなふうに思っております。
また、
労働時間の短縮、これは男性も
女性もともに
家事、
育児への参加、
地域交流への参加、そしてボランティアヘの参加が容易になるためにも、そして健康でゆとりある
生活を営むためにも大変大事なことだと思っております。ですから、中小企業の中にも一日も早くこの四十時間制が実現される運びになることが大事ではないか、こんなふうに思っております。
そこで、二十一
世紀福祉ビジョンの中で特に
在宅介護の問題について申し上げたいと思いますけれども、ここには働く
女性の
介護についての支援が見落とされているように思うわけでございます。
杉並に住む荒井さんという方は、御主人が特殊な病気で、脳萎縮とかなんとかで身体
障害者で、奥さんはいるけれども昼働きに行きますから、日中
ひとり暮らしなわけでございます。
その
ひとり暮らしに
在宅介護の支援というのがどんなふりこ、本当こ留守のところにも来て手が差し伸べられていくのかなというふうに思いまして実情を聞いてみますと、マンションの四階に住んでおりまして、
施設の車はマンションの玄関の下まで来て、それで四階から車いすに乗せて、その
施設の車に乗せるまでは管理人さんにお願いをしている。そして、終わって帰ったら、また玄関から車いすに乗せて部屋まで運んでベッドに移すのは管理人さんにお願いしている。
こういう状況でございまして、たまたまこの方は管理人さんと人間関係が非常にうまくいっているから頼めますけれども、そうでないときには本当に ですから彼女は、
介護休業と
介護時間を、午前中だけとか午後だけ二時間とかそのために休める
介護時間が欲しいと。また、
在宅介護支援センターがたくさんできますようですけれども、窓口を一本化して手続など一切やってもらえるような、そういう支援センターが欲しいと。昼休みの時間に慌てて行ったときに、あっちだこっちだ、こっちだあっちだと移されているうちに時間がなくなってしまうので、そういう支援センターになるのでしょうかというような質問をされました。
彼女たち昼間働いている
女性たちからは、
在宅介護支援センターでは私たちには支援になりません、できますことなら
生活介護支援センターに名称を変えてほしい、そういう声がございました。
ですから、ぜひとも
現場に足を運んで、
現場から見た、先ほどの方もおっしゃいましたけれども、
介護する側ではなくて、
介護される人の側に立った
介護の
あり方というのがこれから非常に重要に、きめ細かなそういう手だてが大事かと、こんなふうに思っております。
それからもう
一つは、
労働省の案によりますと
介護クーポン券が考えられておりますけれども、使用者が紹介所団体から購入することが前提になっておりますけれども、企業特に中小企業が購入するかどうかちょっと疑問に思います。また、企業が
労働者にクーポン券を交付する場合に、割引はあっても有償であればやはり
労働者にとっては
負担になるのではないかということが心配されます、特に低賃金の女子には。クーポン券は
在宅介護支援センター改め
生活介護支援センターや
福祉事務所や市町村等から無料で交付して、支援センター等には
雇用保険等からその費用を支給するようにした方がよいのではないかなどとも思っております。
なお、
労働者でない
介護者にも手当てが必要と思いますので、それらを考慮した支援制度にする必要がある、これから今後この考え方をどうするかも一考を要することではないか、こんなふうに思っている次第です。
もう時間もありませんので、あとは別のときにまたお話しさせていただきますけれども、結論的には、二十一
世紀の
高齢社会においては
女性の
あり方が焦点になっています。少子・
高齢社会では出産・
育児、
介護問題に適切に対処することが重要であり、家庭及び職場での
女性を支援するための
施策の
充実を図っていく必要があると思います。
まず、出産・
育児、
介護問題について支援を進める必要がありますが、出産・
育児については、今国会に提出されている
年金制度改正案において、
育児休業期間中の本人保険料免除が提案されています。また、
雇用保険法改正案では、
育児休業
給付の創設によって、
育児休業期間中賃金の二五%が支給されることとしています。これらの取り組みは積極的に評価できるものです。しかし、厚生
年金保険料の免除は本人
負担分に限られているために、
女性を
雇用する比率の高い企業ほど
負担が大きくなる可能性があると思います。
女性の新規学卒者の就職が極めて厳しくなっている状況を考えますと、
女性を多数
雇用することが企業にとって不利とならないような工夫をしていくことも必要ではないかというように思います。
次に、
介護については、
介護休業法の
早期制定が必要です。
労働省が
平成四年七月に
介護休業制度に関するガイドラインを策定して、約二年が経過しました。従業員五百人以上の事業所では
介護休業制度の導入
割合が五〇%を超えるなど、
介護休業制度に対する理解が進んでいますけれども、導入のおくれている中小企業に対する配慮、そして
介護休業制度の法制化に向けて具体的な手順、時期を示す必要があるのではないかと思います。
公的年金制度を
中心に
女性の老後の
所得保障の
充実を図っていく必要があります。
今回の
年金制度改正案では、厚生
年金の
支給開始年齢を六十五歳に
引き上げることが提案されています。同時に、六十歳代前半の
生活は
雇用と
年金で賄うとの考え方のもとに 厚生
年金の報酬比例
部分は十万円を
部分年金として支給することとしています。しかし、十万円の
部分年金は
女性にとっては必ずしも
保障されてはおりません。一般に
女性の賃金は男性の六割程度でございますから、実際の
年金は六万円にしかならないと指摘されております。
部分年金の
あり方には、
女性の賃金の
現状を配慮した工夫が期待されております。
あとは長くなりますから次の時間のときに続きを申し述べさせていただいて、私はこれで終わりにいたします。