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上田耕一郎君 こういう方向を進める上でも非常に大事なのは、やはり基幹
産業としての農業、水
産業をどう
発展させていくかということだと私は思うわけです。
この
報告を見ますと、しかし農業
人口は四年間で父島で八十一人、横ばい。母島では四分の一減って全体で一割以上減少。漁業も一時二百七十九人ぐらいいたのが
平成四年の末には二百三十五人に減っているという
状況です。それから、五年前にこの
特別措置法の
延長に際して東京都がつくった「
小笠原諸島振興の
課題と展望」を見ますと、こう書いてあるんです。「基幹
産業ともいうべき農業・漁業の第一次
産業の占める割合は小さく、全就業者数の約一二%にすぎない。これは、全国
離島の平均三五%、
奄美群島の平均二二%に比べて低いウエイト」と。
奄美の半分という
状況なんです。
なぜ小笠原でこういう
状況かというと、特別の問題がありまして、これは
一つは不在地主、東京都の
昭和五十九年の
調査によりますと約千人、七百五十ヘクタールです。今農地約七十ヘクタールですから、その十倍を不在地主が持っている。それから、小作者の耕作権を保護するために返還になったときに暫定
措置法ができて、特別賃借権というのができたんです。その特別賃借権者、これは十年前の私の質問に対して
国土庁の答えは百五十四人。現に帰島されている方、農業をやっている方は七人。だから、不在の小作の方、不在特別賃借権者というのがいるわけです。それで、特別賃借権で保護されている
面積が七百ヘクタールというから、つまり不在地主のうちのほとんどがまた不在特別賃借権者が持っているという
状況になっていまして、私はこれが一番のネックになっていると思うんです。
この東京都懇談会の
報告でも、「不在地主や特別賃借権者の存在が用地
確保など今後展開される
施策推進のネックとなることも懸念される。」ということで、これが実際には大変なネックになっている。
例えば父島の扇浦、これは二十五ヘクタール開発の
予定なんだけれども、村で買収したのはわずか三ヘクタール、六十世帯が不在地主だというんです。今農地造成が七十ヘクタール進んでいるんだけれども、東京都によれば三割はもう遊休化しているという
状況です。不在地主の持っている土地は原野になってジャングルみたいになっている。
私は、十年前に船で三十時間乗って父島に行ったんですけれども、船の中で知り合った農民がいまして、これは伊豆七島から母島に行ってとにかく農業をやりたいという若い方で、今度この
法案の
延長があるので電話をかけて聞いてみました。
彼は島に行って十四年たった。三年前にようやく土地を借りられた。今ウコンなんかをつくってなかなかうまくいっているというんです。彼が言うには、こういう一番の問題は土地問題だと。新
島民で農業をやりたいと意欲を持っている人は数人いるが、みんな土地問題で悩んでいる。ところが、都や村に相談に行っても旧
島民のためにやっているということで、なかなか新
島民にはつれないと言うんです。そういうジャングル化してもう原野化している不在地主の土地を一体どうするかということがやっぱり一番の問題だと私は思うんです。ところが、残念ながら、
国土庁が
主体になってつくられた
振興開発計画を全部読んでみましても、私も見損なったかもしれぬけれども、この問題に一字も触れていない、
振興開発でどうするかということが。だから、これはなかなか難しい問題ではあるんだが、思い切ってやらなければならない。
ジャングル化した民有地の固定資産税評価額は一律平米一円だ、十ヘクタール以上持っていないと非課税だ、相続も非課税、だから税務署も何も言ってこない。だから、持っている不在地主なんかも税務署も何も言ってこない。ジャングル化しているけれども、ほとんどそのまま放置されている。この不在地主問題をやっているのは東京都の職員が二人いるんですよ。しかし、交渉しようとしても、全国に散らばっているし複雑ですし、なかなか進まないというのが実情なんです。
この懇談会が言っている学術研究とかエコ・ツーリズム・アンド・コンベンションというような新しい
発展状況、それから
先ほどの
提案理由説明にもその
特性と
発展可能性を活用すると書いてある。活用するためにも、基幹
産業が全国
離島平均の三分の一、
奄美の二分の一という実情、不在地主と不在特別賃借権者の問題とか、思い切って解決しないと絵にかいたもちになっちゃうのじゃないかと私は危惧するんです。もちろん、これは戦争中強制疎開されて米軍の占領になっていたところでしょう。歴史がありますし、戦争被害者ですよ、不在地主もそれから特別賃借権者も。だから、なかなか手をつけられないこともあるだろうけれども、例えば希望者に補償するとか、何らかのこの問題の解決策を検討していただいて打ち出してほしいと、ぜひ
考えていただきたいと思うんですが、
局長にお願いしたいと思います。