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小島慶三君 本日は、農水
大臣、朝からずっと御苦労いただいておりまして、本当に平素の御苦労とあわせてお礼を申し上げます。
きょうは、私、三つほど実は質問申し上げようと思っておったんです。
一つは、
水田農業確立特別交付金の交付
効果について、それからもう
一つは、中山間地域向けの公庫融資の
状況、それから三つ目は、農山漁村振興
基金の設立経緯それから運用
状況等についてということで御質問申し上げたかったわけであります。
その前に、せっかく農水
大臣がお見えでございますので、これからの
日本の
農業、殊に
水田の問題とそれから中山間部の問題につきまして私は従来いろいろ考えておりまして、今度の細川総理の断腸の思いのウルグアイ・ラウンド決断まで、そしてまたその後までどうしてもわからない、脳裏を離れない問題が幾つかありますので、それを最初に申し上げて、農水
大臣のお考えも伺いたい、こういうふうに思っております。
まず第一に、私は
農業というのは
日本の森林と殊に
水田というこのシステムは世界に冠たる社会システムであるというふうに思っております。すばらしいシステムである。しかも、歴史的にこれによって
日本はテークオフのチャンスもつかみ、ここまで来る経済大国の基礎もつくったというぐらいにまで思っております。
その第一は、まず、これはある地理学者の話によりますと、
日本は海底からはかると大体八千メートルから一万メートルの高さにあるというわけであります。これはヒマラヤと同じです。それから長さもヒマラヤと同じです。幅もヒマラヤと同じだ。そこへ世界の二倍半の雨が降るのであります。世界の平均の雨量が七百三十四ミリ前後であります。
日本が千八百十五ミリ前後であります。したがって、その高い峻険な山脈にそれだけの雨が降るのであります。しかも、
日本の岩石というのは花崗岩質、内部風化しやすいそういう花崗岩質のものでありますから、ほっておけばこれは瓦れきの山になるのは
当たり前、ヒマラヤと同じように峨々たる裸の山になるのは当然なわけであります。
しかし、
日本はそうならない。なぜかといえば、これは先人の苦労もありまして、国土の六八%が森林で雨を食いとめるダムの役割をしているということがまず第一であります。そのダムから流れ出るものは渓流、川、用水等を通じて田んぼに注がれていきます。だから私は、プロ野球じゃありませんけれども、森林と
水田のダブルストッパーを
日本は持っていると言っているわけであります。そういうふうなことで国土の保全がなされている。
例えば、これがいかに大切なことかは、昔のギリシャもローマも森林の過伐、そして林間放牧で森林をだめにして、それで文明は滅びたということからもよくわかると思うのであります。そして、そういうふうな国土の保全と水サイクルの保持、生態系の維持、こういった役割を
日本の国土に対する対応システムはちゃんと持っているわけであります。
それから第二には、
水田がこれがまたすばらしいシステムである。これによって、例えば地下からアルカリ分をサイホン現象で吸い上げたといたしましても、そのほかのいろんな廃物を吸い上げたといたしましても、これはやがて流すことができるということです。これはどれほどすばらしいかといえば、昔のメソポタミア、今のフセインが暴れているイラク、あそこは昔非常にすぐれた
農地であったわけでありますが、それがこのアルカリ現象によって塩の砂漠になってしまった。
日本は
水田であるからそういうものを全部流すことができるということで、これは同時に非常に高い連作性ということにもつながっていくわけであります。
それもさらに、
水田でありますための要素が大きいと思うんですけれども、単位
当たりの有機物の
生産性というのは、世界で一番高い
生産性を持った稲というのを生み出しているわけであります。稲が
土地当たりの
生産性が非常に高いものですから、これは狭い
土地で多くの食糧を賄うことができる。同時に、これは人口密度からしましても非常に稠密な人口密度を支えることができる。人口密度が高いということは、同時に情報密度が高いということでありますから、ニュービジネスは幾らでも
日本では成長する、育つというわけであります。だから、工業化が速かったのもこれを考えないとわからないというふうに私は思っております。
だから、さっき申しましたように、廃棄物を流して環境に優しいシステムである、それから人口密度の高いシステムを育てることができるということで、初めの国土の問題とあわせて、私はこの三つが
日本のすばらしいシステムであるというふうに思っておるわけであります。これは森林と
水田のベストミックスであります。だからそういうことで、これを破壊するというのは私は
日本人のあるいは
日本文明の崩壊につながっていくと。最近、
日本衰運とかいろいろ言われておりますけれども、
一つはやはりこういうことも、自分の宝である、祖先からの宝であるこういうシステムを自分の手で破壊してきているというところに問題があるのではないかと思っておるわけであります。
したがって、農水
大臣にお願いしたいのは、この森林と
水田のシステムというのをぜひ
農政の最重要課題としてこれからもキープしていっていただきたい、本当に心からお願いをいたします。
それでもう
一つは、こういうことを申しますのは、よく
水田の問題というと米の問題だと言うんですけれども、確かに米の問題には違いないんですけれども、同時に国土の問題であり水サイクルの問題であり、それから環境保持の問題であり、食の安全の問題であるというふうに考えていかなければいけないのだろうというふうに思っております。そういう複合的なすばらしいシステムというのを
日本は持っているということが、現状を考える場合に非常に大きな意味を持つというふうに思っております。
だんだんに食糧が余るというふうなことで減反減反とやってきたわけでありますけれども、この減反というものを私はもう十年ぐらい前からストップするべきであるというふうに言ってきたわけであります。もちろん、減反をストップすれば過剰な米がどうなるかということは起きてまいりますけれども、あみいは他用途米の利用とか、あるいは食糧の粉化とか、最近は玄米を粉化する技術というものが非常に進んでまいりました。あるいは、さっき皆さんの御議論にも出てまいりましたけれども、ODAでの輸出とか、いろいろ過剰に対する手はあったと思うんです。それを減反一本に絞ってくるということになりますと、それじゃ今度のような不測の
事態が起きたときにもう一遍田んぼに返せといったって、これはなかなかできるものではありません。
現に、イギリスが一八四六年に
日本と同じような
考え方を持ちまして、国際分業論ということを持ち出しまして、米や小麦は買えばよろしい、その代金は世界の工場であるイギリスは幾らでも稼ぎ出すことができると思ったわけです。ところが、それで実施しましたら、今度は田んぼが九割方崩壊をしてしまいました。
イギリスの工業はどうしたかというと、そういう時期によそから買えたかというと、イギリスの工業は繁栄が続いたのは二十五年間だけです。たった二十五年です。それで、しかも、しまったということで今度はまた田んぼをもとに戻して増産をしようといっても、これはおいそれとはいかない。イギリスが七〇%の自給率に返ったのは、実に自由化後百年、一九四六年ですよ。そこまでいってやっと七〇%に回復した。イギリスは普通の田んぼだからあるいはその
土地は簡単に回復するかもしれません。
日本の
水田は一遍つぶしたら百年やそこらじゃもとへ戻らぬでしょう。
そういう点がありますので、
日本民族の将来を考えると、やはりどうしても
水田というのはキープする必要がある。だから、我々は今度の
事態に対しましても、さっきから御議論が出ておりますので繰り返しませんが、備蓄二百万トン、もみで二百万トンという提案をしているわけであります。だから、仮にミニマムアクセスで若干米が入ってきても、これはできればその備蓄に入れて、そして現場の生産には影響を与えない、こういうことが大変重要だと思いますけれども、こういうこともひとつぜひ
大臣のお心にとめておいていただきたいというふうに思っております。
今度は
調査費が何千万円かついておりますから、我々はできれば最初からそういったもみ備蓄の予算というのを組んでいただきたかったわけでありますが、せめて
調査費がついておりますから、これは我慢しなきゃならぬかもしれません。
それからもう
一つ、先ほどからも議論が出ておりますけれども、ウルグアイ・ラウンド交渉はここまで来たわけでありますが、私は初めからこのウルグアイ・ラウンドの問題については、
考え方の統一というものが関係各国の間に若干できてなかったんじゃないかと思います。
米はまさしく商品であります。しかし、単なる商品ではありません。
水田は装置であります。しかし、単なるこれは装置ではありません。これはさっき言ったような大きな社会システムの一環であります。だから、それをなぜ
日本が維持しているか、なぜ
日本が大事にしてくれと要求しているかといえば、やっぱりこれが
日本の、
日本人の
あり方として、国土あるいは自然に対する最適なシステムであるからです。
こういう最適なシステムをつくるというのはどこの国も
努力しているはずである。例えば、ヨーロッパはヨーロッパで、とにかく氷河が削った
土地でありますから本当に地味が低い。だから広い
土地が必要になる、冬場の食糧として畜産が必要になる。それぞれのシステムを持っているわけです。アメリカだってそうであります。だから、それぞれの一番いいシステムをお互いに採用しているのでありますから、それをお互いの間で認め合うということがなぜできないかということであります。
ですから、私は、今後のウルグアイ・ラウンドの後の
措置といたしまして、次の世界の農産物貿易というのが、また必ずやその
あり方とか仕組みとか、これは問題になってくると思うんですけれども、その場合にまず第一に、各国のそういうふうな国土、自然に対する適応の
あり方、これはお互いに認め合う、理解し合うということから始めないと強い国のエゴがまかり通るということになってしまう。
日本のように米は食糧という観念だけで対抗していますと、これは対抗できない、理論武装できないと思うんです。ですから、やっぱりその辺をきっちりして、そしてできれば従来のガット条約の修正、これにぜひ生存権という一条を入れてもらいたいというふうに私は思っております。
日本のシステムをよく理解してもらう、外国のシステムも自分も理解する。そして、お互いに生存権というものを認め合う。この生存権というのは最適な社会システムであるということで、ぜひこういった
努力をお願いしたいと思っておりますので、まずその辺を
大臣はどういうふうにお考えになるか。
先ほどからよく聞いていますと、
水田の集約化という線は出てきておりますが、どうも
水田全体の
規模は原則として減らさないんだ、しかし
状況によって減らすんだと。ちょっと私はわかりかねたんですけれども、その辺も含めてぜひ一言御感想をいただきたいと思います。