○
説明員(竹内洋君) お答えいたします。
まず、
先生から御
指摘の点のまず第一、みなし
外国税額控除についてのそもそもの問題でございますが、その点につきましてまずお答えいたしますと、みなし
外国税額控除は、
租税条約の規定に基づき
開発途上国が減免した税額を納付したものとみなして
外国税額控除の適用を認める制度でございます。これにつきましては、一般に
開発途上国は自国の
経済開発を促進するため、海外からの一定の投資に対して
租税上の優遇
措置を講じてきているわけでございまして、投資
企業の本国、この場合は
日本でございます、が海外で得た
所得を一たん
課税対象に取り込み、しかる後に海外で支払った税金を控除する仕組み、いわゆる全世界
所得課税、まあ
外国税額控除方式を採用しておりますと、
開発途上国がせっかく減免した
所得が投資
企業の本国で全額
課税対象に取り込まれ
課税されることになると、
開発途上国が講じた減免の効果がなくなってしまうという問題があるわけでございます。
したがいまして、こういう制度上の問題を解決するため、みなし
外国税額控除はそうした
開発途上国に対してのインセンティブを減殺しないために
開発途上国側の強い要請により
租税条約で認められているものでございまして、そういう体系のものでございます。
御
指摘の
シンガポールとのみなし
外国税額控除制度でございますが、
先生御
指摘のようにタックスヘーブンとも言われている
シンガポールになぜ認めるのかということでございますが、
シンガポールとのみなし
外国税額控除制度で申し上げますと、相手国が自国
経済の
開発の促進のために導入している
措置を対象としているものでございまして、実体のないいわゆるぺーパーカンパニーにも認められるような
措置は対象としておりません。
それからまた、タックスヘーブンについても御言及がございましたけれ
ども、タックスヘーブン税制は、いわゆる
租税軽課国に子会社等を設立してこれを利用した税負担の不当な軽減を図ろうとする
租税回避行為を対象とすることを
目的としておりまして、その子会社等が実体を有している場合等には適用されない、
シンガポールで実業を行っている場合には適用されないということでございまして、したがいまして、タックスヘーブン税制による規制の対象とすべき子会社等にみなし
外国税額控除が適用されるというようなことは問題ないということでございます。
次に、
シンガポールとの間のみなし
外国税額控除につきまして、
シンガポールはもはや
開発途上国ではないではないか、したがってみなし
外国税額控除制度を認める必要がないのではないかという問題でございますが、先ほど
外務省の方からもお答えいたしましたように、
シンガポール経済の実情、すなわち一人当たりGNPが私
どもがみなし
外国税額控除を認めております世銀卒業基準を大幅に上回るような
経済の発展が進んだ状況でございますので、今回の
シンガポールとの新しい
租税協定ではみなし
外国税額控除を西暦二〇〇〇年をもって廃止することといたしまして、
我が国が従来供与していたみなし
外国税額控除を初めて廃止するものでございます。
最後に
先生からお尋ねがございました今後のみなし
外国税額控除制度についての考え方でございますが、まず、基本的には世銀卒業基準に該当するかどうかという客観的基準をメルクマールといたしまして、新規の
租税条約を結ぶ際にはみなし
外国税額控除制度を導入するかどうかについて考えていきたいと思っております。
もちろんこの世銀卒業基準というのは単なる客観的メルクマールでございまして、例えば今回の
シンガポールとの
交渉などのように、
シンガポールが都市国家であるために単なる世銀卒業基準では非常にGNPパーキャピタが大きく出てしまうというような国もございました。また一方では、物物
経済が発達しておりまして、その世銀卒業基準という単純メルクマールでは
所得が小さ過ぎに出るというような国もございます。いずれにいたしましても、この客観的基準を一つのメルクマールとして新規の
条約を結んでいきたいと思っております。
なお、既にこの世銀卒業基準をもってすればみなし
外国税額控除を認めるには適当ではないという国も出てきておりますので、将来の
条約改正構想の機会があった際には、この
シンガポールの廃止を第一号といたしまして、我々の
交渉の過程の中でみなし
外国税額控除制度の廃止について取り上げていきたいと思っております。