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立木洋君 もう少しこの問題も
議論したいんですけれ
ども、先ほど言われた
趣旨と同じように、差別が生じるだとかあるいは後退が生じるだとかという
事態がないように十分今後見守っていっていただきたいし、そういう
趣旨を踏まえて厚生省も努力していただきたいということをあわせて要望しておきます。
さて最後の問題では、二十八条と二十九条にかかわる
教育の問題についてのお尋ねですが、二十九条の一の(a)、「
児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。」というのが同に書かれてあります。
さてそこで、私はいろいろ
現実に
教育を行っている
先生方の
お話を聞いてみたんですが、今、新学習指導要領というのは非常に評判が悪いですね。これは何かというと、一つは内容が難しいというんです。それから、量が多過ぎる。進度が速過ぎる。これは大変な状態になっている。それでもう半分以上の子
どもがついていけない。
教育課程の中では文部省の方は、
教育のあり方としては子
どもが関心を持つように、興味を持っておもしろく勉強できるようにと。第一わからなかったらおもしろくならないんですよ。
そこで私は、ちょっと具体的な事情を聞いてきたので
お話しをしたいと思うんです。
新学習指導要領に沿って進められる
教育が一昨年からやられてきているわけですけれ
ども、小学校一年生の国語、平仮名五十音を濁音を含めて全部五月中に教え終わるようになっています。四月に入学して五月中に全部終わるというのです。平仮名の濁音も含めてですよ、五十音全部。それから、入学してから九時間目の国語の授業で、「つ」「く」「し」、この三つの平仮名を教えるというのです、一時間で。その後一時間で、「あ」「い」「う」「え」「お」の五文字を一時間で教えるというのです。実際にできるのかと聞いたんです。まず第一に、子
どもは一年生に入ったばかりですから、まず字の書き方から教えなきゃいかぬというのです。ここから先にやって、こうやってこう書くんですよと教えなきゃいかぬ。それを五文字全部教えるんです。
それで、その文字はどういうときに使いますか。「あ」ということは何のために使いますか。「赤ちゃん」の「あ」ですよと言って教えるというのですよね。そういうふうなイメージを持ってその字を覚えていくようにする。それからまた、どういう場合にそういう
言葉を使うのかというふうな、いろいろなことを総合的にやって教えていく。一時間で、学校に入学して一カ月そこそこで五文字も一遍に教えられるか。みんなそうですよ。だから、文部省の立派な方に来ていただいて、一時間で教えてもらってほしい、お手本を示してもらいたい、そういう話まで出るくらい深刻だというんです。
それから六月には、促音から長音から拗音、これを教えないといけない。これは皆さん御承知のように、「切手」の「っ」です。それから、「らっぱ」の「っ」です。ところが今度「松ぼっくり」と言ったらどっちの「っ」が促音になるのか子
どもたちはわからぬというのです。そういうふうなことになっておる。長音というのは長く伸ばすんだと。片仮名の場合だったら長音というのは棒を引っ張ればいいというのです。「ラーメン」と言ったら、「ラー」と棒を引っ張れば「メン」となる。ところが、平仮名でやる場合には棒を引っ張るわけにいかぬです、あれは。「らーめん」というんじゃなくて「らあめん」と書くんです。それから、「スキー」だって「すきい」と書くんです。こうして教えるということになっているんです。
ところが、そういう「あ」だとか「い」だとかというふうに伸ばす
言葉はいいけれ
ども、え段になると伸ばし方が変わってくるというんですね。例えば「時計」、「とけえ」と言って伸ばすんでいいんだけれ
ども、「とけい」となる。これは「い」になる、このえ段は。ところが、「お姉さん」の場合にはえ段だけれ
ども、「い」にはならないで、「おねえさん」になる。こういうことを、
言葉の使い方で同じえ段にありながらなぜ「い」とし、「え」とするのかというふうなことまで今度教えていかないといけない。例えば今度、お段になると、「お父さん」の場合には「う」、ところが例外としては「狼」なんというのは、「おおかみ」になる。こんなのを六月に入ってからこれを教える。今度二学期になると漢字を教えるというのです。大変な内容なんです。
こういう話を聞いてみて、本当にこれで興味を持っておもしろくなって、いやあ、きょうはこれだけわかったから勉強できる気になったなんて子供たちがなるんだろうかと。やっぱり子供たちもなかなかついていけないという状態になるということがたくさん出されております。
この子
どもの
権利条約の問題では、
教育の
権利というのは子供が知らなくても上からどんどん詰め込んでいって、子供がわかろうがわかるまいが時間さえ過ごせばいいというのが
教育では私はないと思うんですよ。だからこそこの二十九条でちゃんと「
児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させる」というふうになっているわけですから、これがならないというのはやっぱりどこか指導要領に問題があるんではないかというふうに考えるのは、だれでもそういうふうに考えるんですけれ
ども、文部省としてはこのことについてどのようにお考えになっているか、まず最初にお聞きします。