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政府委員(新欣樹君) まず、
放射光というものでございますが、これはもう先刻
先生御
承知のとおりでございまして、電子ないしは陽電子を加速器によりまして光の速度に近いところまで加速をいたします。これを蓄積リングという装置の中に導入をいたしましてその中でぐるぐる回すわけでございますが、そのときに磁力によってこの電子ないし陽電子の軌道を変えます。曲げるわけでございますが、そのときにちょうど円軌道の接線万句に強い光が出てくるわけでございます。これが
放射光というものでございます。
この
放射光は、現在、私の
承知しておる限りでは中・小型のものが国内に十四もう既にございまして、いろいろな
研究ないしは半導体の加工といったようなことに使用されておるわけでございますけれども、この播磨科学公園都市に
建設中のスプリング8は八GeVという御指摘のとおりのものでございまして、非常に大型のものでございます。これに類するものとしては、先ほど
大臣が申し上げましたように、ヨーロッパにおきます六GeV、アメリカにおきます七GeV、いずれも
建設中でございますが、こういったものがございまして、そういう意味ではこの八GeVというのは
世界で最高性能を有するというものになるわけでございます。
この八GeVから得られます
放射光は、まず第一には、赤外線領域から硬エックス線領域までの広い
エネルギー領域の光が出るということ。それから第二に、非常に指向性が高く発散せずに遠くまで届くというようなこと。三番目に、非常に明るいということで、現在あります中・小型の
放射光の一万倍以上明るいというような性質を持っているわけでございます。この
放射光を利用することによりまして、各種の材料あるいは生命を構成する物質の構造や性質、こういったものの
解明などに幅広い利用の方法があるものと考えられております。
現在想定されております具体例ということで御
説明申し上げますと、一つには半導体や超電導体などの電気的及び磁気的性質を支配している原子、分子の構造解析や分析によりまして新しい素材、材料の
開発が
できるというようなこと。それから第二には、生物・生体の機能維持に関与しております各種たんぱく質の構造解析を行うことによりまして、発生・分化・老化・がん化、さらには神経・免疫・内分泌などの機構
解明が
できるわけでございまして、こういうことが
できますとまた新しい医薬品の
開発につながるというようなことでございます。
さらには化学反応がございます。これは非常に高速で進行するわけでございますが、この反応の過程を現在の解析手段では見ることが
できません。しかし、これを連続的に観察・解析することがこの
放射光で
できることによりまして、新しい化学反応プロセスの
開発なども
できるわけでございます。
さらに、医学利用といったようなことが
期待をされてございます。例えば、がんの診断について現在よりも高精度のエックス線CT像の撮影で早期のがん診断が
できるというようなこと、あるいは心臓冠状動脈の診断、これも従来の診断方法に比べましてより安全で簡便な方法で行うことが
できるというようなこと等々、あらゆる
分野への利用というものが
期待されておるわけでございます。
なお、八GeVで十分かということでございますが、先ほど申し上げましたように、ヨーロッパ、アメリカにおきましても六、七GeVというようなところで、この八GeVを上回るような
計画というものは今のところございません。したがいまして、この八GeVというのは、
でき上がりましたら恐らく今後十年、十五年あるいは二十年といった期間を通じまして
世界一の最高性能を有する
施設になっていくものと思われます。