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1994-06-02 第129回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年六月二日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員   委員長 山口 鶴男君    理事 衛藤征士郎君 理事 中川 秀直君    理事 野中 広務君 理事 深谷 隆司君    理事 月原 茂皓君 理事 山田  宏君    理事 後藤  茂君 理事 中西 績介君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    伊藤 公介君       石原慎太郎君    稲葉 大和君       小此木八郎君    小里 貞利君       小澤  潔君    越智 伊平君       川崎 二郎君    熊代 昭彦君       後藤田正晴君    近藤 鉄雄君       志賀  節君    関谷 勝飼君       東家 嘉幸君    中山 太郎君       萩山 教嚴君    原田昇左右君       松岡 利勝君    松下 忠洋君       水野  清君    村田敬次郎君       村山 達雄君    谷津 義男君       柳沢 伯夫君    横内 正明君       若林 正俊君    綿貫 民輔君       岡島 正之君    岡田 克也君       川端 達夫君    工藤堅太郎君       笹山 登生君    鮫島 宗明君       白沢 三郎君    田名部匡省君       高木 義明君    長浜 博行君       二階 俊博君    宮本 一三君       山本 幸三君    吉田  治君       伊東 秀子君    緒方 克陽君       坂上 富男君    鉢呂 吉雄君       細川 律夫君    三野 優美君       東  祥三君    石井 啓一君       長内 順一君    北側 一雄君       竹内  譲君    谷口 隆義君       弘友 和夫君    渡海紀三朗君       穀田 恵二君    松本 善明君       吉井 英勝君  出席国務大臣         内閣総理大臣  羽田  孜君         法 務 大 臣 中井  洽君         外 務 大 臣 柿澤 弘治君         大 蔵 大 臣 藤井 裕久君         文 部 大 臣 赤松 良子君         厚 生 大 臣 大内 啓伍君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  畑 英次郎君         運 輸 大 臣 二見 伸明君         郵 政 大 臣 日笠 勝之君         労 働 大 臣 鳩山 邦夫君         建 設 大 臣 森本 晃司君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     石井  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長官熊谷  弘君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 石田幸四郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      佐藤 守良君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 神田  厚君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      寺澤 芳男君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      近江巳記夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 浜四津敏子君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 左藤  恵君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       坪井 龍文君         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第一         部長      津野  修君         内閣総理大臣官         房審議官    石倉 寛治君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  上村 知昭君         総務庁行政管理         局長      八木 俊道君         総務庁恩給局長 稲葉 清毅君         防衛庁参事官  熊谷冨士雄君         防衛庁長官官房         長       宝珠山 昇君         防衛庁防衛局長 村田 直昭君         防衛庁教育訓練         局長      上野 治男君         防衛庁人事局長 三井 康有君         防衛施設庁建設         部長      森本 直孝君         経済企画庁調整         局長      小林  惇君         経済企画庁総合         計画局長    吉川  淳君         環境庁長官官房         長       大西 孝夫君         国土庁長官官房         長       藤原 和人君         国土庁土地局長 原  隆之君         法務大臣官房長 原田 明夫君         外務省総合外交         政策局長    柳井 俊二君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省条約局長 丹波  實君         大蔵大臣官房総         務審議官    田波 耕治君         大蔵省主計局長 篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 小川  是君         大蔵省理財局長 石坂 匡身君         大蔵省銀行局長 寺村 信行君         文部大臣官房長 吉田  茂君         文部省初等中等         教育局長    野崎  弘君         文化庁次長   林田 英樹君         厚生大臣官房総         務審議官    佐々木典夫君         厚生省保健医療         局長      谷  修一君         農林水産大臣官         房長      高橋 政行君         農林水産省経済         局長      東  久雄君         林野庁長官   塚本 隆久君         通商産業大臣官         房長      牧野  力君         通商産業大臣官         房総務審議官  江崎  格君         通商産業大臣官         房審議官    稲川 泰弘君         通商産業省通商         政策局長    坂本 吉弘君         通商産業省貿易         局長      中川 勝弘君         通商産業省産業         政策局庁    堤  富男君         通商産業省環境         立地局長    高島  章君         通商産業省機械         情報産業局長  渡辺  修君         中小企業庁長官 長田 英機君         運輸省自動車交         通局長     越智 正英君         運輸省自動車交         通局技術安全部         長       樋口 忠夫君         郵政大臣官房財         務部長     楠田 修司君         労働大臣官房長 征矢 紀臣君         労働省職業安定         局長      七瀬 時雄君         建設大臣官房長 伴   襄君         自治大臣官房総         務審議官    松本 英昭君         自治省行政局長 吉田 弘正君         自治省行政局選         挙部長     佐野 徹治君         自治省税務局長 滝   実君  委員外出席者         通商産業研究所         次長      大塚 和彦君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 六月二日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     水野  清君   小澤  潔君     萩山 教嚴君   越智 伊平君     小里 貞利君   後藤田正晴君     原田昇左右君   志賀  節君     熊代 昭彦君   島村 宜伸君     稲葉 大和君   関谷 勝嗣君     松岡 利勝君   高鳥  修君     中馬 弘毅君   東家 嘉幸君     川崎 二郎君   中山 太郎君     石原慎太郎君   川端 達夫君     吉田  治君   工藤堅太郎君     白沢 三郎君   田名部匡省君     岡田 克也君   坂上 富男君     緒方 克陽君   石井 啓一君     弘友 和夫君   谷口 隆義君     長内 順一君   穀田 恵二君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     松下 忠洋君   稲葉 大和君     小此木八郎君   小里 貞利君     越智 伊平君   川崎 二郎君     東家 嘉幸君   熊代 昭彦君     志賀  節君   中馬 弘毅君     相沢 英之君   萩山 教嚴君     小澤  潔君   原田昇左右君     後藤田正晴君   松岡 利勝君     横内 正明君   水野  清君     江藤 隆美君   岡田 克也君     田名部匡省君   白沢 三郎君     宮本 一三君   吉田  治君     川端 達夫君   緒方 克陽君     坂上 富男君   長内 順一君     谷口 隆義君   弘友 和夫君     竹内  譲君   吉井 英勝君     穀田 恵二君 同日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     高鳥  修君   小此木八郎君     島村 宜伸君   松下 忠洋君     中山 太郎君   横内 正明君     関谷 勝嗣君   宮本 一三君     工藤堅太郎君   竹内  譲君     石井 啓一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成六年度一般会計予算  平成六年度特別会計予算  平成六年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 山口鶴男

    山口委員長 これより会議を開きます。  平成六年度一般会計予算平成六年度特別会計予算平成六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。羽田内閣総理大臣
  3. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 昨日、水野委員の方からお尋ねがございました、政治団体政治献金が行われていると新聞に書いてあるがというお話でございますけれども、お尋ねの私の政治団体に対する寄附につきましては、確認をいたしましたところ、会計帳簿が保存されている平成二年以降の分につきまして、寄附をされた相手方の方にも御了解を得た上で回答があったということであります。  毎日新聞には、道白観光役員四人が政治献金をしたと書かれておりますけれども、調べたところによりますと、役員四人の方が個人寄附されたのではなくて、役員四人の方がそれぞれ経営をされております四つ会社から、それぞれ年間十二万円を私の政治団体である親和会寄附していただいたとのことでございます。  これは、年によって会社の数は異なっておりますけれども、平成五年には四社でございますけれども、平成二年と四年は三社、平成三年は二社とのことでございます。いずれもこれは適正に処理されているというふうに承知しております。  また、お尋ね団体に対する寄附につきまして、これを道白観光役員と先ほど申し上げたわけでございますけれども、四つからの会社寄附はいずれも親和会への寄附でございまして、トーリという会社から平成二年から五年まで十二万円、鶴亀という会社から二年から五年まで十二万円、それから喜創という会社が二年から四年、五年と三年間十二万円ずつ、それからダイワ・コーポレーションというのは平成五年から十二万円。  それから、これとは別に、道白観光役員のお二人の方から平成三年に個人寄附がございまして、それぞれ百万円が親和会寄附されております。山下さんという方と上原さんという方であります。  以上であります。
  4. 山口鶴男

  5. 左藤恵

    左藤国務大臣 ただいまお話のございました件につきまして、昨日北海道庁を通じて調査した結果を御報告させていただきたいと思います。  現在までに判明した事実といたしまして、まず、報道された土地について、道白観光が譲り受け人となります国土利用計画法の第二十三条第一項の届け出があったかどうかということについて北海道胆振支庁届け出台帳を調査いたしましたところ、そのような届け出は現在まで出されておりません。  それから、道白観光所有権移転されました土地筆数が約七十筆ありまして、全貌がまだ把握はできておりませんけれども、一部の筆につきまして、登記簿上では所有権の移転の原因は真正な登記名義の回復ということになっておるという事実がございますので、御報告をさせていただきたいと思います。
  6. 山口鶴男

    山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野清君。
  7. 水野清

    水野委員 ただいま、昨日の私の質問に対しまして、総理及び国土庁長官から御答弁をいただきました。この件につきましては、私もなお勉強して、いずれどこかの機会でもう一度よく御質問申し上げたいと思いますので、きょうのところは承るだけにさせていただきます。  さて、昨日に続きまして少し通産省内のことで承るわけでありますけれども、どうですか、官房長官、また大蔵大臣とかわって前の方においでになりませんか。その方が時間の節約でございますので。  まず最初に、少し私からこの席で申し上げたいことがあります。実は、私のきょうの質問に対しまして、多くの先輩、友人国会の内外から、君も子供ではないし、余り通産省内部のくだらぬことを暴き立てないでくれというような、まあ表現はいろいろございましたが、御忠告がございました。これは私は、その御忠告はしかと私の胸に刻んでお話を承っておきます。  ただ、私がここで何でこうしつこく質問をするかということでありますが、熊谷官房長官通産省に一生をささげた内藤正久という一人の男を、大変な陰謀であなたは消し去ろうとしてきたわけです。通産省から消し去ったわけであります。これはきのうも申し上げましたが、その手口は、あなたではないかもしれませんが、あなたの周辺人たちが、例えば通産省の某局長周辺人たちと言った方が正確でしょう、怪文書をつくる、そしてばらまく、どうも効果が薄いと思うともう一度出す。まあ怪文書をばらまかれる人も私はなかなかの話だなと思って怪文書を読みましたけれども、ともかくそういうことをする。国会でやらせ質問計画をしてあなた御自身が働きかける。いいですか。そこが問題なんです。  さらに告訴状を出す。いわば三点セットですよ。一昔にはやった三点セットをつくり上げて、一人の、私は内藤正久というのはなかなか正義感のある人物だと思って、いろんな資料を読みました。私は直接つき合いがありません。しかし、これはなかなかの男だなと思って、私は実は彼に関する、彼がつくっていったメモまで私は手に入りました。読んだわけでありますけれども、この男を消し去ろうとして計画的にまたあなたは陰謀を張りめぐらした、こういうことであります。それについてきょうは少し私は詰めてお話を聞きたいと思います。まず最初に、私の要望した方々が御出席いただいているか。牧野官房長、いますか。高島章さんというんですか、局長、いますね。それから江崎総務審議官、いますね。大塚通商産業研究所次長、いますね。それからもう一人、実は今要求したんですが、国会担当ですからおられると思いますが、春山さんという国会担当の方がおられるはずです。この方も後ほど、日笠郵政大臣の御質問に対して接触をしたいきさつがありますので、ここにいていただきたいと思います。  今冒頭に申し上げましたとおり、私は通産省のお役人をいじめるつもりはさらにございません。これは最初に断っておきます。ですから、私の質問にお役所の方は正直に答えていただきたい。あなた方がいろいろ謀議をしますと、私はしようがないから、何といいますか、まああなた方の答弁を崩そうというわけですから、わきから攻めなきゃならない。わきから攻めると関係者がふえるんです。関係者がふえるということはいろんなお役所の人が出てくるんです。私はさっき冒頭に申し上げましたように、なるべく関係者を少なくして今の方々だけで質問をしていきたいと思いますから、その意味で御協力をいただきたいのであります。  もう一度申し上げますが、あなた方は熊谷大臣のやらせ質問事件というのを隠ぺいをするために役所を挙げて奔走してきたわけですね。きのうの答弁もそうですよ。役所隠ぺい工作です。熊谷さんという前の大臣が、事もあろうに日笠議員、今の郵政大臣及び井上一成議員のお二人にやらせ質問依頼をする。自分役所の恥部であるはずの怪文書内容を、これは大臣以下隠すのが本当なんです。なるべく公開の席で議論をするように、広げるようになさるわけであります。御自分の出所の、大変世話になった、あなた世話になったんでしょう、大変、陰に陽に。きのうも佐藤さんが質問しておられたけれども。いろんな、人事その他でお世話になった役所に傷をつけよう、それもあなた方が通産省という役所のヘゲモニーを握ろう、このこと一つだけなんですね。これはまことに私は陰険でけしからぬ話だと思います。  官僚諸君もきょうはひとつうそ答弁をしないでいただきたい。中尾栄一君もこの席でバッジを外すと言ったのですから、彼も。職を賭すと言ったのですから。私も友人としてシロクロつけて、はっきりしないで中尾君をやめさせるわけにいかないのであります。よろしくお願いをいたします。  もう一度申し上げますが、官房長以下まじめに、正直に、うそのない答弁をしてもらいたいと思います。今からでも遅くないというのは昔の二・二六事件の言葉であります。今からでも遅くないのですから、正直に答えていただきたい。  そこで、最初に、冒頭でありますが、きのう実は佐藤委員がおられましたので質問を打ち切ったのでありますが、日笠郵政大臣にまず承りたい。  十月一日金曜日の夜、当時日笠議員は、怪文書問題について質問をするという質問通告をなさったはずであります。国会担当春山さんがあなたのところへおいでになりました。春山さんに対していろんなお話をなさいました。時間がなくなるといけませんから私の方から言いますが、私の調べたところでは、春山さんに対してあなたは、おれは大臣と同じ宿舎なんだ、宿舎大臣から頼まれたので、大臣からもう一度やめてほしいと頼まれなければやめるわけにはいかないとお答えになった、こういうことでありますが、本当でしょうか、いかがですか。
  8. 日笠勝之

    日笠国務大臣 まず、経過がございますので、ちょっと御説明を先にさせていただきたいと思います。  メモを、私どもの日程表を見ますと、九月の二十七日でございますが、連立与党初予算委員会総括質疑が近々にあるということで、各党テーマごとに分担をしてやらないと、重複したのではいかぬということでテーマを分けたわけでございます。各党の持ち時間が二十分でございます。  そこで、各党それぞれテーマを決めようということで分担して協議した結果、社会党さんの方からは外交防衛をやりたい、新生党さんは災害復旧をやることになりました。(水野委員「なるべく、時間がないので関係外のことはひとつ……」と呼ぶ)要は、テーマを決めて、それぞれがやることになったわけです。たまたま、私はそのときは私が質問をすることにはなっていませんでしたけれども、公明党の担当が、いわゆるゼネコン汚職綱紀粛正というテーマであったわけでございます。これは昨日の総理報告のとおりでございます。  そこで、会議録先生読んでいただいたと思いますが、全部で十一問質問しております。その中で、初め政界、業界のいわゆるゼネコン問題、モラルということでやりまして、最後の一問が、いわゆる官界モラルも大事だということでワンクェスチョン質問をしたわけでございます。  質問を読んでいただくとおわかりのように、個人名だとか具体的な事例ですね、当時週刊誌等で報じられておりましたような、いろいろなことが報じられておりましたが、具体的にこれについてどうかというような質問はしておりません。ですから、こういう人事のことに何か意思を働かそうとかそういう意思がないことは、質問を読んでいただければおわかりかと思います。  そこで、先ほどの記事の、記事でしょうか、先生のお調べの……(水野委員春山さんに関して」と呼ぶ)春山さんの件は、私の方は宿舎が同じでございまして、私が質問をする一日か二日か、これははっきりいたしませんけれども、宿舎エレベーターでたまたま国会に行くときに朝お会いいたしましたので、いよいよ質問しますよ、通産省いろいろ言われていますから、官界綱紀粛正ということでやりますよ、こう申し上げたら、どうぞそれは結構ですよというふうに言われました。  そこで、十月一日に国会関係者の方が来られて、何とかならないかというようなお話は確かにございました。そこで私は、エレベーターでやると言ったら、大臣は、どうぞ、こうおつしゃったのだから、やめろと言われれば、頼まれれば、それは人間ですから少し人情も働くけれども、どうぞと言われたのだから予定どおりやらしていただきます、まあ軽く、いわゆるオブラートに包んだような質問でもありますしと、こういうことを申し上げたわけでございまして、直接やれとか頼まれたというようなことじゃございません。
  9. 水野清

    水野委員 ありがとうございました。この話は、また後ほど少し詰めてお話を申し上げます。  そこで、これ、きのうの質問と同じようでございますが、私は実証的にやりたいものですから。去年の九月二十一日の時点に話を集中させてもらいます。  この九月二十一日、昨日も申し上げましたが、正午に、熊谷通産大臣井上一成先生と会談をなさいました。お昼をこの国会の近くでとって話をされた。その間に質問依頼をした、こういう話が伝えられております。  この話のところでキーパーソンは、井上代議士がこの話をしてお帰りになってから、かねて親しかった大塚さんという通産省の、さっきの通産研究所次長さんですね、この方に電話をされたようであります。その電話内容その他についてこれから伺います。大塚さん、いますね。ちょっと前へ出てきてください。  大塚さんにまず伺いますが、九月二十一日の午後、井上一成先生から電話を受けたかどうか、簡単に答えてください。
  10. 大塚和彦

    大塚説明員 御説明いたします。  電話をちょうだいいたしました。
  11. 水野清

    水野委員 その電話内容、そのときは大塚さんは何か用事があって、普通ならば井上先生のところへすぐ駆けつけなくてはいかぬのだけれども、何か用事があって翌日行かれたようですが、その電話内容は、何か怪文書について国会での質問を頼まれた、井上先生はどうも怪文書というものを見てないというので、どういうことなんだ、その背景その他について何か君は知っているか、こんなお話があったはずですが、いかがですか。
  12. 大塚和彦

    大塚説明員 御説明いたします。  そのとおりでございます。
  13. 水野清

    水野委員 その井上先生お話の中に、熊谷通産大臣から質問を頼まれた、こういうことがありますか。ちょっと聞いてくださいよ。通産大臣から質問を頼まれたかどうか。これは大事なことですから、よく言ってください。
  14. 大塚和彦

    大塚説明員 ちょっと長くなってよろしゅうございますか。そのとおり申し上げます。幸い、九月のことでございますけれども、当時の手帳とかメモが残っておりますので、それに沿って自信を持って申し上げられることを申します。  先生がおっしゃいましたように、確かにその怪文書のことがあるか、そしてそれについて教えてほしい。そのときに私は先生に、もちろん怪文書というのが当時出回って、通産省がこういう卑劣な文書によって大変暗くなっておりました。そこで、そのとおりですが、それはどうしてですかと伺いました。そしたら、君のところのトップから頼まれ事をしたんだとおっしゃいました。  それで私も、実は私の前職は政府委員でございましたから、したがって国会の重みというのを非常に心得ておるつもりでございます。したがって私は、それは国会質問をしてほしいというようなことでございますかと伺いましたら、まあそんなところだ、こうおっしゃいました。  以上でございます。
  15. 水野清

    水野委員 そこで大塚さん、もう一つ質問があります。  あなたはこの話を役所におられて電話をしたはずですが、役所牧野官房長にすぐ報告をしたはずであります。いかがですか。
  16. 大塚和彦

    大塚説明員 御説明いたします、またちょっと長くなりますが。  私は、その井上先生電話を伺いまして、そして申し上げましたように、政府委員などをやっておりましたので、これは大変なことだと思いました。そして、そのとき私は、実はこの問題について通産省の官房でどのように扱っていたのか、あるいは外に対してどのように説明すべきか、こういうことを全く知らされておりませんでした。したがって、これは大変。しかも九月二十二日、井上先生電話お話しいたしましたのは、たしか十一時ごろでございました。(水野委員「二十一日でしょう」と呼ぶ)いえ、その翌日で――失礼いたしました。今お尋ねは、その電話のときですね。失礼いたしました。実は二十一日は、ちょっと申しわけありません、私は時間の系列をちょっとだけ誤解していたかもしれませんが、二十一日の夕方は私は会議があって、電話をいただいたのに対して返事ができなかったのです。そしてもう夜になってしまいました。  そこで、次の九月二十二日の午前十一時ごろにお電話を申し上げました。そしてその電話でもって、今水野委員がおっしゃいました、そのようなお話井上先生から伺ったわけでございます。井上先生は非常に慌てておられまして、なるべく早く会いたいんだ、そしてきょうの昼来てくれとおっしゃいました。結果的には議員会館の、第一議員会館の七階の部屋にその十二時にお伺いをいたしました。それで、一時間しかございませんでしたので、そして先ほど申しましたように、私は怪文書の問題について省として、国会質問というのはやはり省として答えることでございましょうから、どういう対応をすべきかということについて井上先生にどう申し上げたらいいかわからなかったわけでございます。  そこで、本当にこれは申しわけないのですが、井上先生にはまことに申しわけありませんが、内々官房長電話をいたしました。そして、官房長はそのとき外出をしておりまして、外の車に乗っておりました。そのときの私の走り書きが残っております。「〇三〇一三四九六一四、牧野車」と、こう書いてございます。そして牧野官房長からどのように井上先生に対応すべきかという指示を受けたわけでございます。  以上でございます。
  17. 水野清

    水野委員 どういう指示を受けられましたか。内容
  18. 大塚和彦

    大塚説明員 幸い、そのこともその小さな紙切れに残っております。三点でございます。  第一点、これははっきり申し上げます。人事でおかしなことはなかった。第二点、既におさまったことだ。第三、質問はやめてくれ。これが私がそのとき電話で書き取ったメモでございます。  一言だけ説明をさせていただきたいと思いますが、最初の、人事でおかしなことはなかったと言われるのは、その怪文書の中に、前の次官とそれからその当時の産業政策局長を誹謗する内容が入っておりました。委員御存じだと思います。そしてその中で、棚橋前次官の令息が選挙に出るときの箔づけ人事という、これがけしからぬと書いてございました。牧野官房長が私に申しました第一点の、大事についておかしなことはなかったというのは、通産省の中で調べてみたところ、その大事については不正不当はなかったんだ、だからもうおさまつたことだ、だから質問はやめてほしい、こういう趣旨でございました。  委員よろしければちょっと脱線いたしますが、ところが、それから三カ月後の十二月になりまして、内藤前産業政策局長は、その調査の結果不正不当でなかったはずの人事問題でもって辞熾をされたことになったわけでございます。したがって、私はいまだにその点についてはキツネにつままれたような気持ちでいる、かようでございます。
  19. 水野清

    水野委員 さあ、そこで官房長、あなたはきのうの答弁で、熊谷さんから井上さんにやらせ質問を頼んだという話を今の大塚さんからは全く聞いていない、何か怪文書があって云々という話はいろいろあったが、やらせ質問は頼まれたとか頼んだとかいう話は全く私は大塚さんから聞いていない、こう言ったのですが、大塚さんは今、そういうお話もあったとあなたに説明をしたと言っていますが、そこの食い違いはどうなっていますか。
  20. 牧野力

    牧野(力)政府委員 お答えいたします。  昨日、私がお答えをいたしましたが、今先生がおっしゃったのと若干違うと思います。私は、熊谷大臣と、前大臣井上先生との間にどういう話があったかということについては、これは非常にハイレベルの方々の二人の話の内容でございますので、私どもの口からどうこう言うことについては、これは御容赦いただきたいというふうに申し上げたはずでございます。
  21. 水野清

    水野委員 実は、きのうのあなたの答弁が非常にあいまいなんで、速記録がまだ読み切れてないんです、私は。そうすると、そのことはあったかもしれないし、ないかもしれぬし、自分たちのタッチすることでないから申し上げられないと、こういうことですね。
  22. 牧野力

    牧野(力)政府委員 さようでございます。
  23. 水野清

    水野委員 それでは、今大塚さんのお話にあったように、大塚さんはあなたに報告をしたと言っておりますが、改めて伺いますが、そのとき報告をもらいましたか、どうですか。
  24. 牧野力

    牧野(力)政府委員 日時その他詳細については記憶はございませんが、ただいま大塚次長が申し上げたとほぼ同じことを聞いております。
  25. 水野清

    水野委員 ここで熊谷官房長官、客観的に、通産省のあなたの使っていた役人たちも、あなたが井上先生にどうも頼んだらしいと。井上先生は、よくわからないから、かつて政府委員であった大塚さんにその内容を詳しく聞いてきたと。質問を頼まれたんだ、おれは内容をわからぬのじゃと。それは、よその役所怪文書なんというのは、私だってこれを読むのに随分骨折れましたよ。肩が凝つちまった。ようやくわかってきた。いいですか、そういうことをこの人に聞いているわけです。これは、客観的に、あなたが井上先生に頼んだということに私は断定せざるを得ないんです。  それから、さっきの、日笠郵政大臣エレベーターであなたに会ったと、質問をおれはするが、通産省人事のことその他でも若干綱紀粛正なんだからやるがと言ったら、どうぞとあなたは言ったというんでしょう。客観的に見ると、本来、私も大臣二回ばかりやらしてもらいましたが、自分役所のことは在任中なるべく事なく、役所の諸君の立場を考えて守っていくのが普通なんですがな。あなたは、何かこう、やっていらっしゃるんじゃないですか。
  26. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 この件につきましては、既に私の回答は申し上げているわけでありますけれども、ただ、今、本件について、委員のお感じと私の見解は大分差があるように思います。  この問題は、当時はもう既に相当の方々に議論になり、もちろん報道だけではなくて議論にされ、私自身もいろいろな形で御意見も伺ってまいりました。そして、これに対して、今委員は、なるべく隠すのが本来の筋ではないかということでございましたけれども、私の基本的な考え方は、事務次官というのは、事実上の人事権者でございます。そして、官房長はやがてそういうポストにつく、必ずっくかどうかは別といたしまして、いわばそういう大きな役割を持った方でございます。そういう人たちが、事柄の、怪文書にどう書いてあるかは別として、私も確認をしたわけですが、その部分については、つまり御子息の問題については、ほぼ書いている内容と同じものであったと。それが違法、合法かは別として、私は、当不当を問えば、決して当を得たものではないというふうに判断をしておりましたし、またそれを隠ぺいしてどうこう言うというのは決していいことではないと。きちっとした考え方は、そういうものは今後はやらないというふうにすることが正しいと私は思っておりましたので、別に逃げ隠れせず質問にはお答えするよということを申し上げたわけでございます。
  27. 水野清

    水野委員 そんな答弁で私は満足しませんが、もう少し傍証を固めていきましょうや。  そこで、官房長、あなたは大塚さんから、その前に大塚さん、ちょっともう一遍。  あなたはその後、井上先生から、再度熊谷通産大臣から電話があって、日にちもわかっているんですが、九月の二十四日に、熊谷大臣から井上先生のところへ再度電話があって、あの頼んだ質問はどうなんじゃということが、問い合わせがあったと。その話を井上先生から聞いておられるはずですが、いかがですか。
  28. 大塚和彦

    大塚説明員 御説明申し上げます。  ただいま御指摘になった事実そのものは、私は存じません。ただ、関連した事項は存じております。
  29. 水野清

    水野委員 大塚さん、その関連とは何ですか。
  30. 大塚和彦

    大塚説明員 ほかの場所で井上先生にお会いいたしましたときに、先生、あの質問は結局お断りになりましたかと伺いましたら、いや、断ってはいないんだと。というのは、断ってしまえばほかの議員に回してしまうから、おれは断らないでそのままにしているんだと。私は井上先生が本当に大物だと思います。こういうことにかかずらわず、そのようになさった。私は大変立派な方だと、こう思いました。
  31. 水野清

    水野委員 これはけしからぬ話で、今あなたは鉄面皮ですよ、何だかんだおっしゃっているけれども、再度、やってくれと、また井上先生に頼んでいるわけでしょう。そういう話が周辺に漏れているんです。  この記事だって、これはそうなんですよ。この記事を書いた人たちとも私はお目にかかっていろいろ話を聞いてみたが、まことにけしからぬ。しかし、皆さんの名誉を大事にして、抑えて記事を書いたよと皆さん、言っているんです。あなた、これ本当ですか、うそですか。これ一つでもそうです。あなた、うそなら、読売新聞を何で告訴しないんですか。
  32. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 私はそのころたくさんの毀誉褒貶、いろいろな記事が出ておりましたので、一つ一つを法的に対応するというようなことはやっておりませんけれども、抗議も申し上げましたし、いろいろ事実ではないというふうなことはいろいろやっていたように記憶しております。
  33. 水野清

    水野委員 うそを言っちゃいけませんよ。あなたはじくじたるものがあるから告訴一つできないんでしょう。省内では、まだそのころ自分たちの、自分の部下を叱咤激励して質問をさせようといろいろ工作をしておったじゃないですか。何を言っているんですか。  官房長、あなたに承りたいんですが、あなたは今大塚さんから聞いた一切のことを、あなたは省内ではどういう取り扱いをなさいましたか。
  34. 牧野力

    牧野(力)政府委員 ちょっと前置きになりますが、昨日も申し上げましたとおり、その当時、国会の議員の先生方に質問を呼びかけて、ぜひ質問してほしいという前書きをつけたいわゆる怪文書が相当幅広く出回っておりました。そういう状況の中で、昨日も申し上げましたが、私としては質問も非常にあり得べし、あり得ることは、これはもう非常に蓋然性が高い。しかしながら、これは私どもとして、別に後ろめたいことはございませんが、省内の人事でもございますので、なるべくこれは避けられるなら避けてほしいということで、その旨を国会担当だけではなくて、国会先生方と関連のある幹部の職員には言っていたところでございます。これは昨日も申し上げました。  そういう状況の中で、一環として、大塚次長から今の報告があったわけでございますが、いずれにしましても、大塚さんから聞いた話、あるいはメモで来た話は、井上先生質問をする意思がないというふうにおっしゃっておりましたので、私としてはそれで結構だと。ただ、大塚君の依頼もありましたので、怪文書に端を発する省内の状況がごうごうと、これに対しては省内はきちんと対応をしたい。万が一、いずれ質問をされるというような気になりましたら、それは先ほど申し上げました一般的な立場から御勘弁をいただきたいと、こういうことを伝えて、コンタクトしておくようにということを言っていたわけでございます。  国会対策につきましては、事実上私が省内の最高の、事務的には最高の責任者でございますので、これは、今の話は、質問が結局される意思がないということでもございましたので、大臣はもちろんのこと、事務次官にも連絡はしておりません。本件の処理はすべて私の判断と責任においてやりました。次官には毎日いろいろな話をしておりますので、あるいは話をしたかもしれませんが、ちょっと記憶にはございませんが、事改まって次官に報告するというようなことはございませんでした。
  35. 水野清

    水野委員 あなたが熊野次官をなるべくかばっていこうとする御意思はよくわかるのですが、これは役所にとって非常に大事なことなんです。大変なことですよ。私はほかの役所をよく知っていますが、官房長一人でこんなもの処理できる話じゃありません。あなたが国会対策をやっている人あるいは総務審議官その他とだけで、まあこんなことだと。まあ、省議にかけることではない。こういう嫌な話は省議にはかけないけれども、中枢部ではきちっと受けとめてきちっと話をしなくちゃいかぬ、こういうことであるはずですが、今の話はちょっとあなたは次官をかばって物を言っているようですが、そうじゃないんですか。
  36. 牧野力

    牧野(力)政府委員 特別に私、次官をかばうつもりはございません。  一般的に国会対策につきましては私がそういうことで最終判断をいたしまして、それで対処をしておりますので、本件について私は特に、しかも私どもにとりましては、大臣井上先生の個別の二人だけの会談でどういう話があったかということにつきましては、これはそう、何といいますか、興味のある話ではありませんで、いずれにしましても、国会質問井上先生がなされないということでございますので、私は、今先生お話ではございますが、そう重大な、次官に一々わざわざ相談をしてどうするかというようなこととは一切思いませんでした。
  37. 水野清

    水野委員 あなたもおとぼけをやっておられるけれども……。ちょっともう一つ別の面から、大臣がハッパをかけていたという傍証があるはずですから、もう一つ実証的に伺います。  総務審議官江崎さん、前の方へ出てください。あなたに承ります。  あなたは十月一日金曜日の夕方、日笠議員から、私が質問に立つ、怪文書その他についてということか、文言はちょっと違うかもしれませんが、質問通告があったはずであります。  そこで、国会連絡担当春山さんという方がいらっしゃる。春山さん、手を挙げてください。――いない。春山さんにそういう電話があったのだそうですが、まず春山さんだな、そのとおりですか。春山さん――政府委員じゃないのかな。じゃあ、まあ総務審議官
  38. 江崎格

    江崎政府委員 お答えいたします。  委員のおっしゃるような正確な日付は記憶しておりませんが、十月の四日に御質問がございまして、その前日に質問の通告があったというふうに承知しております。
  39. 水野清

    水野委員 そのとき、通産省内部で協議の結果、質問はなるべく御遠慮願おう、こういうことになって、また春山さんが日笠先生のところへ伺って、できればひとつやめていただきたい、こういうお願いをしたはずですが、いかがですか。
  40. 江崎格

    江崎政府委員 お答えいたします。  通常、いつもそうでございますが、質問の御通告がございますと、まず政府委員室が参りまして、それで質問内容を御確認いたします。本件につきましてもそのとおりでございまして、そのときに政府委員室長の方から、余り格好のいい質問ではないものですから、できればおやめいただけないかということを申し上げたというのは、そのとおりでございます。
  41. 水野清

    水野委員 審議官、これからあなたは正直に答えてもらいたいのです。  ところが、驚いたことが起こったわけであります。日笠先生は、おれは大臣と同じ宿舎なんだ。さっき郵政大臣に承ったことなんですね。日笠郵政大臣の御答弁にあった、御質問したことと同じなんですが、おれは大臣と同じ宿舎なんだ、宿舎大臣から頼まれたんだ、もう一度大臣からとめてくれと頼まれなければとめるわけにいかぬといって、全く取り合っていただけなかった、こういう話であります。本当ですか、うそですか。これは正直に言ってください。
  42. 江崎格

    江崎政府委員 私の記憶で申し上げますので一字一句正確かどうかわかりませんが、私の記憶によりますと、大臣日笠議員は確かに同じ宿舎に住んでおる、それで、たまたまどこかで行き会ったときに日笠議員は、私はこの問題について質問しますよということをおっしゃられて、それに対して大臣が、どうしてもおやりになるならどうぞというふうにお答えになって、したがって、自分はやめる気はないぞということを私どもの政府委員室長におっしゃったというふうに聞いております。
  43. 水野清

    水野委員 おれは大臣と親しいから云々ということはなかったのですか。もう一度。
  44. 江崎格

    江崎政府委員 そのようなことをおっしゃったかどうか記憶にございません。
  45. 水野清

    水野委員 まああなたじゃない、春山さんですからね。  記憶にないというのが、これは出てきたわけですな。ですから、さっき申し上げたように、正直言ってもらわないといろいろなことを傍証するためにまた余計な人を呼び出さなきゃならぬのですが、官房長、いいですね。あなたに聞いているんじゃないんだ、あなたに言っているんですよ。いいですか。私が言ったことを、私もそばにいたわけじゃありませんが、大体事実を確認して御質問申し上げている。それにもかかわらず話をはぐらかされるのでは、私はいろんなことをやらなきゃならないんです。  再度申し上げておきますが、この国会答弁、やらせ質問というのは、さっき言ったように三点セットの一つなんです。怪文書がどうしてっくられたかということも、これ大事なことなんです。これは、私も三分か四分しか調べてありません。しかし、きのう委員長にお願い申し上げましたとおり、ひとつ委員会で議決をしていただいて国政調査権を発動していただければ、私はこれは解明すると思います。この際、こういう不明朗な話を、勝手にやって勝手にもみ消すというのは、これはほっておけない。その問題を実は、きょうもう時間がないから、質問する時間がないんです。ないんですが、これをやり出すともっとおたくの役所に犠牲者が出るんですよ。わかっていますな。僕がこれだけ言えばわかっているはずだ。その問題を私はできれば総務審議官だけで承ろうと思っているのですが、次に進みましょう。  春山さんが日笠議員からお話を聞いてびっくりしたんですな。大臣に頼まれたのかと、これはえらい話じゃと。普通は大臣電話して、皆さん方も大臣やった方は、大体政務次官がこんな仕事はやらされるのですよ、嫌でもね。走り回ってやるわけであります。  そこで、江崎さんが熊谷当時の大臣にお目にかかって質問を確認をしたはずであります。そしたら大臣が、この話はとめる必要がないと、こう言われた。これ実は、これはもういいでしょう、出所を、自分の名前言ってくださいというんですが、内藤さんのアメリカへ行く前に残していったメモがあるんです。このメモから私は拾って読み出したのです。  内藤さんが、当時内藤さんは、十月のころはまさか自分の首絞める――中国のあの壁新聞と同じですよ、劉少奇がやられる。まだ劉少奇一生懸命前の方で演説してたら、いつの間にか三角帽をかぶらされた。それと同じ陰湿なやり方ですよね。それで、内藤さんはこれをメモにしているんです。ですから、内藤さんの話なんで、私は実はこれは別な話で委員長にお願いしたいのですが、けさ人を介しまして内藤さんに電話をいたしました。  内藤さんに私は、予算委員会で、きのう、証人としてお願いできないかということを、証人喚問の要求を出したのだが、あなた本当に出てもらえるかどうかということで。喜んで、あすでも飛行機に乗って帰ってまいります、自分は証言をします、このこと一切については自分がぜひ証言をさせていただきたい。自分のささげた通産省のためにですな。私は、かわいそうだと思うよ。委員長、帰ってきて証言をしたい、こう言っているんです。  総務審議官、話を戻しますが、あなたは大臣に聞いて、それやらせろと、こう言われたんでしょう。どうですか。
  46. 江崎格

    江崎政府委員 先ほど申し上げましたような政府委員室長報告を受けまして、私、まず官房長に相談いたしまして、日笠議員がこういう御質問をされそうだということを御相談しました。官房長は、かねてこういう質問はできればやめていただきたいという方針でございましたが、先生がそうおっしゃるのであればやむを得ないなということで、特段それ以上日笠委員に接触することはやめようということでございました。大臣には私、電話で、御質問がございますということを簡単に御報告いたしました。大臣も、わかったとおっしゃったということでございます。
  47. 水野清

    水野委員 わかったということですが、そのままやらせろという話ではなかったのですか。正確に言ってください。
  48. 江崎格

    江崎政府委員 正確に記憶しておりませんが、今申し上げたとおりでございます。
  49. 水野清

    水野委員 ともかくこの問題は、客観的に言うと、熊谷さん、あなたが自作自演をやっているのですよ。けしからぬ話なんです。これはもう少しあなたは、きょう突然ですから、いろいろな話を言ってあれですが、きちっと整理をして、きちっと答弁をしてもらいたい。私は、先ほど来の答弁では満足できません。
  50. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 今までの起こった事柄について、つまり、怪文書以来のお話について、国政調査権を使ってきちっとお調べいただくというのは、実は私も正直言いまして、入閣をして以後、いろいろな文書が出ており、またさまざまな報道機関なり、だんだんこういう問題にいろいろなところから御忠告や御批判もいただいたりしているうちにからめ捕られたような感じになってきたことでありまして、本来であればあのときに、今反省いたしておりますのは、この事件全体を徹底的に調査すべきだった。一体あのころ何が行われておったのかと。  実は、私もこれは事務方に、どうなんだということで聞いて、それからの聴取を受けただけにとどまっておったわけでございます。したがいまして、徹底的に調べるということは、私も大事なことだと思っております。  ただ、先生と私の意見の違うところは、この問題は隠すべきである、そして国会で議論をすべきでないということは、私はそうは思っておりませんで、私自身は、政治とそれから行政の間というのは、ある種の緊張関係があり、お互いに過剰な政治介入をすべきではないということはそれなりにそのとおりだと思いますけれども、しかし政治家として、ルールに触れるようなことがあれば、それはやはり政治家、指導者として、役所に入った以上は対応していくべきだ。しかも、それはオープンに、隠してこそこそやるのではなくて、国民の見ている前でやるべきことではないかなというふうに思っております。
  51. 水野清

    水野委員 私も、終わりの、なるべく公開すべきだ、私も同じ意見なんです。しかし、先ほど申し上げましたとおり、あなたの政治家としてやった卑劣な行為のために、通産省の諸君が犠牲になることを私は避けようと思って、なるべく避けて御質問申し上げているのです。  それは、こういうところで質問すること自体が本来通産省の諸君には気の毒ですよ。本当に気の毒だと思う。あなた一人のために、こんなに通産省がかき回されて、世間的に信用を失って、だめですよ、あなた。それを鉄面皮というんだ。私は、あなたのような答弁では満足できない。これは今後の、きょうよく読んで、きちっとした答弁をつくってきてください。だめです。
  52. 山口鶴男

    山口委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  53. 山口鶴男

    山口委員長 じゃ、速記を起こして。  熊谷官房長官
  54. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 私自身、ただいまのこのいわゆる怪文書に至るまでの、いわゆる怪文書に至るまでの経緯については、実は事実関係を丁寧に調べたわけではございません。ただ、その結果としていろいろな問題があるということが、まあ承知したというのがさきにお答えを申し上げたところでございまして、決して御質問に挑戦的に何か申し上げようというふうな意味で申し上げたのではございません。
  55. 山口鶴男

    山口委員長 暫時休憩いたします。     午前十一時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時十四分開議
  56. 山口鶴男

    山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  水野清君の残余の質疑は後刻行うことといたします。  松岡利勝君。
  57. 松岡利勝

    松岡(利)委員 早速ですが、質疑に入らせていただきます。  まず最初に、林業振興に対する取り組みにつきまして、総理の御熱意あふれる御決意を承りたいと思うわけでございますが、総理は山の多い林業地帯の長野県でございます。そういう意味でよく御理解、またおわかりをいただいておると思うわけでありますけれども、我が国の森林は国土面積の七割を占めておりまして、そして大変いろいろな役割、働きをいたしております。言ってみれば、一言で言いますと国民生活のまさに源である、このような重要な役割を担っているわけでございます。  ところが、これに対する施策といいますと、公共予算におきましても実に四%程度、こういうことでありまして、七割に対して四%、比較が妥当かどうか知りませんが、そのような位置に置かれております。そしてまた、この地域は国土全体の中でも一番弱っているといいますか、停滞しているといいますか、そのような状況にあります。  国民生活の中で、非常に重要な役割はますます求められております。そのような意味から、この地帯の活性化が非常に重要でございます。この点に対しまして、御理解深い総理の振興に向けた御決意というものをお伺いできればと思うわけでありますが、よろしくお願いいたします。
  58. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 お話ありましたように、山はともにいろいろと苦労したことがありましたけれども、山の崩壊というのは低地にまで影響してくることでありまして、まさに国土の崩壊につながる。また、これは海の近いところでは海にまで悪い影響を及ぼしてしまうということでありますし、またそこで生活し、その業を営む人たちも大変なことになってしまうということであります。  その意味で、かつては税をということで皆さんと一緒に活動しましたけれども、残念ですけれどもその新しい税というものはできなかった。そういう中で、水と緑の基金というものをつくったわけでありますけれども、ただそれだけではとても山というのは難しいなということで、いろいろな手だてを講じてきておりますけれども、私どもといたしましても、そういった重要な山というもの、これをやはり念頭に置きながら、何が今必要なのかをよく皆さんと議論しながら、適切に対応しなかったら本当に国土というものがおかしくなってしまうという認識を私は持っております。     〔委員長退席、中西(績)委員長代理着席〕
  59. 松岡利勝

    松岡(利)委員 ぜひともそういうような、今承りました御決意でもって各般の施策に反映をさせていただきたい、心からお願いをいたす次第であります。  さて、ウルグアイ・ラウンドの問題につきましてお尋ねをさせていただきたいと思います。  十二月十五日に合意、そしてまた、四月には当時外務大臣として出かけられましたマラケシュでの調印、そういった形で進んできておるわけでございますが、国会でこれからこのことを果たして受け入れられるのかどうか。こういうようなことで、私は、十五分野を網羅した合意内容の詳細、そしてまた各国の利害得失がどのように決着をしたのか、そのことを十分検討の上、国益の確保にいささかの間違いもあってはならないもの、このように思います。そういう意味で、まさにこれからがいよいよ国内論議としては本番である、このような位置づけに立って、認識に立って、私は以下質問させていただきたいと思うわけでございます。  米は、もう言うまでもなく、言わずもがなでございますが、三度にわたる国会決議がなされた。このことは、憲法と同等もしくはそれ以上、私はそういう重みのあるものだと思っておりますが、我が国最高の、最大のこれは政治公約でもあります。我が国最大の国益ということは、こういった面からもこれは明らかになっておると思うわけでございます。そういうことを体して、十二月十五日までは何としても例外をかち取る、このような決意で、今は総理でありますが、副総理・外務大臣としてのときにおきましても臨まれたもの、そのように信じております。  そしてまた、具体的な交渉に当たりましては、当時も私どもの党の先輩、保利先生等の質問に対しても、総理もいろいろ当時お答えにもなっておられますけれども、そういう重要な問題であるからして、具体的な交渉を進めるに当たっては、外務省が司令塔の役割を十分果たしながら、十五分野をそれぞれに関連づけて、そして比較検討の上に国益の調整を図って万遺漏のないように対処してまいる、こういったことを総理はおっしゃっております。また一面においては、十五分野にわたって各国それぞれが困難な問題を多く抱えておる。そういう中で、各国がそれぞれの困難な問題を乗り越えるときには、我が国としてもまたこれは対応を迫られるものだという厳しい面といいますか、覚悟を過去の国会答弁で言われておることでございます。  そこで、お尋ねをしたいのでありますが、総理、十二月の十日だったですか、私どもも実は七日から最終場面のジュネーブに同志とともに行っておりました。総理は、私どもが帰るのと入れ違いに、最後の努力をということで、自民党や他の党の要請も受けられまして、そしてまた細川総理の命を受けられまして、まさに全権を託されて、最後の努力ということでジュネーブに総理は乗り込まれたわけでございますね。大変失礼な言い方をいたしますと、形だけを取り繕われるというような感もなきにしもあらずだったのですが、いずれにいたしましても、総理、当時の副総理・外務大臣としてジュネーブに乗り込まれた。  そこで、その最終の場面の中で、いよいよ最後の努力をする、そしてまた最後の決断もしなきゃいけない、こういうときに、まず一番最初に、私は、日本の前線司令官である、総司令官である遠藤大使からまずその情勢、状況はどういうものであるかとお聞きになったと思うのであります。そのとき遠藤大使は、当時の羽田外務大臣に対してどのような情勢、状況の御報告をなさったのでありましょうか。その点をちょっと簡潔にまずお尋ねしたいと思うのです。
  60. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ちょっと私も遠藤さんとの話、もう定かでございません。というのは、要するに遠藤氏とは年じゅう連絡等をとっておりましたから、そこで特別に情報を聞くということではありませんでした。  ただ、私の記憶に残っておりますのは、我が国としてここまで来たのは、ここで我が国がもしおかしくなると本当に全体ががたがたになってしまうなということ、これは率直に私は彼らと会いながら感じたことであるということを申し上げることができます。
  61. 松岡利勝

    松岡(利)委員 もう一度確認をしたいのですが、そういたしますと、例えば、交渉事ですから相手があるわけですね。その相手の国の、当時いろいろな国がいろいろな問題を抱えておった。当然のことながら、我が方としてもそれを判断する上で、相手はどうなっている、そういったことが一番最大の関心事であったと思うわけであります。  そういう意味で私はお尋ねしているのでありますが、遠藤大使が他の国の問題についてどうということをなされたか、何も言われなかったかどうか、もう一度確認したいと思うのですが。
  62. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 他の国のことといいますか、他の国がもし決着をつけてしまったら、日本のような立場の国が、特別な手当てといいますか別枠といいますか、そういったものをかち取ることというのは非常に難しいだろうという認識をお互いにしたものであります。
  63. 松岡利勝

    松岡(利)委員 それでは個別の、どの国がどういう問題、これについてはどうなっているこうなっているということは特になかったと……
  64. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 ちょっと委員長、一言だけ、短く。  一つ、韓国が今までは途上国のあれとして対象にならぬだろう、要するにらち外になるだろうということであるけれども、どうもそうじゃないらしいということで、要するに、我々とは一緒じゃないかもしれないけれども、彼らもやはり一つの物を負うことになるような今動きがあるということの報告は受けております。
  65. 松岡利勝

    松岡(利)委員 それで、重ねてちょっとお尋ねしますが、最後の努力ということでありますから、サザーランド事務局長、さらにまた一番この米問題では要求の強かったアメリカ、こういったところに対して総理は御努力をされたと思うのですが、最後、どういった方にどのような形で最後の努力をされたのでしょうか。そのところ、ちょっとかいつまんでぜひお聞かせ願いたいと思います。
  66. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まず日本の食糧事情、要するに人口と食糧の事情等を話すと同時に、やはり環境に対しても大変な大きな影響を持っているのが日本の米作であるということの確認をもう一度申しました。  それと同時に、我々としてもやはり一つの役割を果たさなければならないかもしらぬけれども、しかし将来にわたっての問題について、やはり一つの例外の扱いというものをしてもらわぬと困るということの中で、例えば環境等の問題についてあるいは食糧安全保障の問題について、そういったものを必ず考えてもらわぬと困りますよという話を相当強くやった記憶がございます。
  67. 松岡利勝

    松岡(利)委員 それはサザーランドさん、そしてまたアメリカのカンター、そういった方々ですか。
  68. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 カンターさんとはもちろんでありますけれども、カンターさんたちは、それ以外の大変な幾つもの問題についての日本に対する譲歩というもの、先ほどあなたから一番初めにお話のあった問題なんかについても実はすごい関心を持っておりまして、それに対して日本のさらなる譲歩を求めてきたということもあります。  ただ、カンターさんたちに対して、カンターさんたちは、米の問題というのは実際にあの方たちが直接長いことやった人じゃございませんけれども、それだけに私は、日本の事情というものはこういう事情なんだという話をよくしたところであります。
  69. 松岡利勝

    松岡(利)委員 大体今御確認をいただいたのですが、遠藤大使からは韓国のことがあったということぐらいでありまして、あとは一応一通り日本の立場をまた改めて主張をされた、こういったことだった。  そこで私は思うのでありますが、交渉ですから、幾つも困難な問題はそれぞれに持っておって、これは総理も保利先生にお答えになっているのですが、保利先生質問は、例えばECはブリタンがいる、アメリカはカンターさんがいる、そのもとで十五分野をそれぞれに統括して、ここは出すからここは許してくれとか、そういうような相互に駆け引きをしながら最大的な国益を守るためのトータル的な交渉をされておる。  それに対して当時の羽田外務大臣も、それは我が国においても外務省が司令塔的役割でそれはやっているんだ、こういうことだったわけであります。それで今私はあえて御確認をしたのです。  私ども、もう一昨年からこの問題は取り組んでまいりました。私もジュネーブに二度、アメリカに三度、韓国、台湾にも参って行動してきたところでございますが、もうそのときからわかっておりましたことは、日本は米という大変な問題を抱えている、しかしアメリカも海運、海上輸送の海運、この問題を抱えている、ヨーロッパもオーディオ・ビジュアルを抱えている、いろいろほかにもあったのですけれども、こういうような問題が、お互いそれぞれ、これだけは例外にしてくれと言っておる、こういうことだったのです。  そこで私も、このあとの二つがどうなったか、それとの見合いにおいて日本も米がどうなのか、こういうことをずっと最後まで関心を持っておったところでございます。  もうこれわかっていることですからあえて質問せずに私から申し上げますが、海運は、アメリカの内航海運と外航海運といいますか外航航路と分かれておりまして、アメリカの内航海運の方は、これは何とガットの祖父条項、グランドファーザーですね、祖父条項、これを適用してアメリカのジョーンズ法という法律、これに基づく祖父条項の適用で、言ってみれば無傷のままそっくり生き残ったという結果に、結果としてなっているのです。そしてまた外航海運は、そんなのは受け付けられないということでけっ飛ばして、言ってみれば、だから知らない、受け付けられないということで、全くこの合意から外れて、どうなるのかわかりませんが、現時点でいいますと昔のまま、合意から外れた、こういうことになっているわけであります。  オーディオ・ビジュアルはもう御案内のとおりでございまして、ECは受け付けられない、そういうことで、わかりやすく言えばけんか別れといいますか、決裂したまま後はそのまま残っている。したがって、私どもが、どうなるだろうかと確認をして、この三つが大問題だな、この二つとも相手が本当に乗り越えて、だから日本も乗り越えなきゃいけないというなら私もまだ少しは納得がいくのです。  したがいまして、私が、総理、遠藤大使からどういう報告を聞かれましたかと言ったのはまさにそのことだったのです。いよいよ最後の、最大の国益を捨てるか、それこそ守るか、これはやはり決断をしなきゃいけないというときに、私は、総理、だから十五分野全体を通して、こういうことも申し上げましたのはそういうことなんですが、そういうような御確認をして、相手が海運をそうするなら、日本もこれはどうして祖父条項の適用ができないのか、そしてまた外航海運はけ飛ばすというなら、日本もそういった他の国のそういう問題が整理されるまでは留保するとか、これはもう普通一般の民間のちょっとお互い私的な関係だってその程度の交渉はしますよ。  そういうことを考えましたとき、私はこれは納得がいきませんし、これはまさに外交交渉としては不平等な交渉を結果としてされたのではないか、こう思うわけでありますが、この今言いました海運そしてジョーンズ法、そしてまたオーディオ・ビジュアル、こういったものを総理はいつの時点で知られましたか。
  70. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今お話のあった問題は、サービスの問題そして知的所有権の問題、これは今までのガット、関税と貿易一般協定、この中には実はなかった問題なんですね。それを新たに今度は一つのルール化していこうじゃないか、そういった問題をこれから議論していこうよ、そしてこういった問題もこれからやっていかなければ、サービスあるいは知的所有権というものの貿易額というものは普通の物の貿易以上になってしまっておるという中で、今度新しくこれが取り入れられた問題である。まさに新しいルールというものをつくっていく一つの課題であったろうと思います。  この問題については、私はもうそれこそ何年も、やはりこのこともきちんと入れなければいけませんよということを実は申し上げてまいりました。ただし、オーディオ・ビジュアルにつきましてはそんなに早いころから騒ぎはなかった。ただ、残念ですけれども、日本の米というのは、あなたも御案内のとおり、もう七年何カ月前に始まったときに、日本の報道も日本の議会も、ほかの問題についての議論というのはほとんどなかったのですよ。米、米、米、米、米だけだったのですよ。それで、世界の中ではまさに米というのが何か一つの大きな象徴的なものになってしまって、ここに日本の、我々の交渉というのはどのくらい難しかったかわからない。  私は、テレビですとかそういったものに出るたびに、あるいは雑誌、新聞、こういったところと議論をするたびに、みんな米だけをこうやって問題にするということはおかしいよという話をずうっとし続けてきたのですけれども、残念ですけれども、我が国の中では要するに米、そしてよその国が責めるのも全部米に集中しておったというのが現状であったろうというふうに思います。それと同時に、米の管理についてまで実はこれがあって、国家貿易というものを取り外せという実は声もあったところを、国家貿易のあれを残したということもあるということであります。  いずれにしても、米は、各国の抱えるところの農産物、物の貿易、この中の一つであるということであったことで、ほかの問題とは多少やはり違う関係にあったのだろうというふうに私は思っております。
  71. 松岡利勝

    松岡(利)委員 私が質問いたしましたといいますか求めましたこととかみ合っていないと思うのですよ。私は、十五分野全体を通じて今回のウルグアイ・ラウンドというのは交渉されたものである、そして途中、プロセスの中でもこれは十五分野を通じた、まあ総理もおっしゃっていますよ、米の問題だけじゃないんだ、他の問題も他の分野もいっぱいあるんだともちろんおっしゃっています。だけれども、今度の交渉というのは、これは一括承認でしょう。私は英語は余り詳しくありませんからわかりませんが、詳しい、私どもの佐藤剛男代議士あたりに聞きますと、まさにこれは一括承認、私は日本語でしか言いませんが、そういうようなことになっている。  だから、一つの分野だけ抜き出して、これは別だ、独立だということでやるんじゃない。承認も一括承認でやる。だからまさに相互に関連して、トータル、一体のもの、パッケージなんですね。それはそう最初からおっしゃつておりました。それは今回初めて入ったことかどうかしれませんけれども、交渉テーブルにそういうことでお互いがのせておったのは事実ですよ。交渉テーブルにのせておって、サービス分野においてもこれを自由化しようではないか、そういうときに、最後、アメリカはジョーンズ法という、そういう国内法を祖父条項という形に適用させてすり抜けた。それなら、なぜ日本は国内法、食管法を適用させてその祖父条項でそういうことを整理できなかったのか、こういうことも私は思うわけでありますし、またオーディオ・ビジュアルにしても、あれだけ交渉しておった。初めてだとか二度目だとかということは関係ないと思うのですよ。  ですから、そういうような中で、例えば一般国民が見たときに、農民だって見たときに、いろいろな分野があって、みんなどこも、外国は全部それを乗り越えて受け入れた。そこに日本の米だけが残っている。米で、そういうようなウルグアイ・ラウンド全体を一括承認というか一括交渉という中で、米によって例えば農業分野だけがまとまらないから、あとの十四分野がまとまるんだというのならごねられるけれども、それじゃ悪いからというのが今までの論理だったのでしょう。だから全体を米でつぶすわけにはいかない、こういうことだったわけでありますから、だったら、そういう他との関連もある中で、なぜ日本の米だけが、アメリカもヨーロッパもそういう自分の主張が生き残って、そして何も無傷で残っておるのに、何で日本はこれだけの代償を払わなければいけなかったのか。  これはやはり総理、今までこんなことを全部、みんなだれも国民がわかった形で知らせていないものですから、そこのところを、ああ米だけが問われて、仕方なく米はこれだけやられたのかという、まさにそういう単一世界でしか見ていないものですから、そんな、通ってきたのですけれども、これはやはり国民から見たら納得のいかないことだと思うのですよ。総理、普通の言葉でしゃべって、そして普通に説明したとき、そこのところをどう国民が理解するか。私は理解できないと思うのですがね。
  72. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今、全体で、確かにこれはアメリカの場合にはファストトラックというので一括のものでやりますね。これは日本の場合でも一括で対応をするわけです。しかし、もう御案内のとおり交渉というのは、今十五分野それぞれの委員会がありながら、その中で議論しているわけですよ。お米の問題というのは、農業分野の中で実は議論されるわけですよ。ですから、そういう中での結論であったということ。  ただし日本の場合には、何か言われるたびに、今度向こうが米と言えば日本はびくっとするという中でやたらに変なふうに扱われた分野、これはもうずうっと長い、まさに、今度のたった何カ月の細川政権の問題じゃない、本当に過去の長い歴史の交渉の中の過程からこういう結果になってきたということで、そして、それぞれの分野の中の交渉の中であるということでありますから、まさかほかの問題とこれを一緒にして議論するという問題じゃない。ですからアメリカの、例えばウェーバーの問題ですとか、そういった問題とは議論ができるということであろうと思います。
  73. 松岡利勝

    松岡(利)委員 総理の今おっしゃった、これは農業分野だから他の分野との比較的な形での取引というか、それはできなかったんだとおっしゃっていますが、これまでの国会答弁はそうじゃないのですよ。それは全体を、十五分野を見渡しながら、そして相互に関連づけながらトータルとしての国益を守るようにやっていくということでおやりになってきたのですから、これは、他の分野がどうあろうと、農業は農業だけの世界だけでもう独立してやるんだということはちょっとおかしい。これは後で、今の答弁はいいですが、これはやはりひとつきちっとした、果たして本当にそうなのかどうなのか、私のあれじゃないですから、これは見解をきちっとしてもらいたいと思う。  それは十五分野を、全体を対象として、その中で農業は農業だけで、これはもう別世界でやるんだということじゃなかったはずなんです。十五分野をトータルとしてとらえながら、そしてその総トータルの国益を考える中でやられたはずだ。これはまたどの国もそういうようにしているはずだと私は思うのです。  と同時に、これはぜひ、私どもはそういう意味において、これは総理の御説明を今幾ら聞きましても、はいわかりましたと納得いく問題じゃないです。この問題はやはり基本の問題として、これからも私どもは、国会批准なりなんなりが求められてこられると思いますが、これは十分にこの点は議論をして、本当にこれは国益として間違いなかったのかどうかということは議論をさせていただかなければいけない、このように思っております。  幕末のあの不平等条約、これは後で取り返すのに日清戦争の後までかかって、大変な苦労をして先輩たちはやってきたのですね。私は、そういった点から見てもこれはまさに平成の不平等条約じゃないか、こういうふうに今思っているわけであります。この点は十分これから、問題提起をさせていただきますから、議論をしっかりさせてもらわなければいけないと思っております。  そこで、その交渉プロセスにおきましてもちょっと御指摘だけさせていただきたいと思うのですが、私どもずっといろいろな行動をとってまいりました。そして最終場面の七日から十日、十二月七日から十日もジュネーブにおりました。韓国の議員団も一緒でした。そういう中で、韓国の農林大臣も行っておられました。何で日本の大臣は、日本のそういう政治家は来ないのかな、そういうことを思いながら、というのは、こういうことなんです。  なぜかといいますと、本当にぎりぎりまとめなければいけない、しかし絶対それはだめだと言い切っている、こう言うのなら、最後まで何と言おうとかんと言おうと、知ったことじゃない、もうこれは絶対受け入れられない、だからもう行く必要もないんだという態度か。しかし、それじゃ余りにも相手に対して、貿易で成り立っている日本が、その貿易の取り決めの話にそういうことだけではこれは済まされないはずですから、私はそうではなかったろうと思うのです。  そうなると、あとは、勘ぐっては悪いですが、勘ぐりじゃないということは後でちょっとお話をしますが、もう前もって決まっていたから、もう行く必要もないから、あとはもう時間が来て終わるのを待っていたというふうに思われても仕方がない。そういうような意味で、当時、最後の最後まで、細川総理も、そして関係各大臣もおっしゃっておられましたことは、何ら合意は一つもないんだ、こういうことをずっとずっとおっしゃってこられました。  そこで私どもは、韓国の議員団と一緒に、サザーランド事務局長にも会いました。ラボレルという次長にも会いました。そしてアメリカのストーラ公使、この人が実質の責任者です。彼にも会いました。ECのトラン大使にも会いました。そうすると、一々会ったのをそれぞれ個別には申し上げませんが、私どもが言ったことに対して、向こうは何と言ったか。それは全く何の合意もなかったなんということは、白を黒と言うものだ。もう既に、日本との間においては秋ごろ、秋というのはジュネーブの秋ですから正確にいっかというのははっきりわかりませんが、秋ごろ、これはもうそういうことで合意をしたんだ。  しかもこのドゥ一二ーさんというのはカナダの人で、この人が調停案を出したということになっておるけれども、アメリカのストーラに至っては、自分たちが出した妥協案ではない、それは日本の方から提示された妥協案なんだ、過去、スイスで農産物のそういう問題があったときに、スイスの例として、なかなか受け入れられないから、じゃ期間を先送りしようかということで決着した、妥協した例があるんだ、その同じ例を今回これに当てはめたんだ、こういうことでありまして、どう考えても勘ぐりではなくて、もう既にそういうふうに決まっておった。  したがって、だから私が申し上げたいのは、最後の場面で本当に国益をかけて、相手の国がどういう最終の交渉態度をとってくる、それとのまさに突き合わせの上に、じゃ我が国としてはおりれるかおりれないか、なお突っ張るか、そういうまさにぎりぎりの政治判断、政治交渉、そういったことはなかったということが、もっと時間があればもっと詳細に私はこれは証明をいたしますけれども、まずそのことをひとつ御指摘をしておきたいと思うわけであります。  そして、先にちょっと進みますが、先ほど総理は、農業分野、こうおっしゃいました。じゃ農業分野でウエーバーがどうなるか、総理、ウエーバーはどういう扱いになるか御存じですか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  74. 東久雄

    ○東(久)政府委員 ウェーバーの取り扱いでございますが、御承知のとおりガットにおけるウェーバーはアメリカの農産物、いわゆる農業調整法二十二条の農産物の数量制限以外にもたくさんございます。その中で残す、この新しくできる機構、WTOの中に残すべきウエーバーのリストというのができておりまして、その中からはアメリカのいわゆる農業調整法二十二条による数量制限のウエーバLは入っておりません。したがいまして、それはWTOのウェーバーとしては引き継がれないということでございます。  またアメリカは、アメリカの出しております国別の譲許表の中で、このウエーバーをとっておりました品目並びに食肉輸入法、これはウエーバー以外でやっておった制限法でございますが、これらについて関税化するという譲許表を出しておりますので、現在そのような方向で米側の方で手続されるものというふうに考えております。
  75. 松岡利勝

    松岡(利)委員 いや、羽田総理に実はお尋ねしたがったのですが、それはそれとして局長の御答弁でいいですが、それは私も知っているんですよ。だから、羽田総理が本当にこのウエーバーのことをどの程度私は御自覚をされておるかということを本当はお尋ねしたがったのです。  確かに今事務当局から御答弁がございましたように、WTOに引き継ぐウエーバーのリストとしては、これは中に入っていないのですよ。ところが、先般保利先生が御質問をされましたとき申されましたように、違う条項で、ウエーバーについては審査機関を、どういう審査機関か知りませんが設けて、そこで審査をして、その審査の結果、延長するもの、修正するもの、また廃止するものを決める、こうなっているんですね。  私ども、アメリカに何度も行きまして、先ほど三度と申しましたが、その都度七、八人ずつのアメリカの上下両院の議員さんたちと、特に農業地帯の議員さんたちとお話をしてまいりました。その話の中で出てきますことはこういうことなんですよ。  私どもが説明することに対して、向こうは、いや、もう農産物を日本はそれだけ買ってくれていると言うけれども、私らの国は、朝起きると歯を磨きます、サンスターの歯磨きだ、そういう話から始まりまして、もう全部は言いませんが、とにかくすべて日本製品なんですよと。その結果五百億ドル、六百億ドルのこれは私ども赤字だ、それを思えばおれたちの農産物をもっと買ってくれたっていいではないか、こういう話なんですよ、こういうことなんですよ。  そういうことで米の自由化を求めているのに、私どもアメリカのウェーバーを、これをやめて、そしてアメリカが自由化しなければいけないなんて、そんなばかな話がどこにあるんだというのがアメリカの農業地帯の国会議員さんの、一言で言うと、いろいろな言い方がありますが、そんなお答えなんですね。そしてウエーバーをやめるなんということは、とてもじゃないが、それこそもう冗談じゃないというか、一笑に付す、歯牙にもかけないというか、全く相手にならない、こういうようなまず向こうの議員さんたちの認識なんです。  私は、そういうようなアメリカの議員さん方の反応からいたしましても、今経済局長がここで事務的におっしゃいましたような形で、アメリカの国内が黙ってさっと決着がつくなんということは到底考えられない。そういうことを考えますときに、そのリストには載っていない、しかし、一方の条項で、この祖父条項で、ジョーンズ法でちゃんと逃れたように、私はウエーバーは必ずアメリカは、これはもう時間がたってくればはっきりするわけです。幾ら総理、これは違うとおっしゃっても、これは時間がたてばすぐ明々白々、明らかになるわけでありますけれども、そのこと一つをとったといたしましても、私はそう確信しています。これは必ずそうなるだろう。  だから、そういった点からしても、これは日本だけが、日本の農民だけが言ってみればばっさりと切られてしまった、そういうようなことになるような愚は犯してはならない。そういう点からも、先ほどの他分野との問題、そして農業分野の中においてもこのウエーバーとの問題、そういった点から見まして、私はそういったことが明らかになって、日本だけがこれはのんだのだということではないことがはっきりするまで、どうでしょうか、これは留保して、この米の自由化というものは留保して、そして再交渉なり手直し交渉なり求める、それをした上で、じゃ、他の分野についてお互い一括承認を国会で批准を求める、そのようなお気持ちは総理ございませんか。
  76. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 もしそれをやったならば、これは農業交渉すべてがだめになるでしょう。ということは、これはWTOそのものが進んでいかないということになって、まさに貿易立国である日本の立場というのは本当に台なしになってしまうというふうに私は思っております。  そして、今御指摘がありましたけれども、ウェ――バーというのは、これはもともとガットの始まるときに認められた、ガットの中の一つのあれなんですね。それから、たしかあれはスイスでしたか、あそこにもう二十何項目か何かのたしか対象のあれがあったと思います。あれはみんなガットの加入のときに認められておるものであるということで、これはもともと別の中でそういう処理はする、しかし、テーブルにのせて、これは同じ農産物であるからお互いに痛みを負いましようということでやっておるわけでありますから、私はアメリカもそれを粛々とやっていかないとするならば、アメリカそのものが一体何だったんだろうということでやはり疑われることになるだろうというふうに思います。
  77. 松岡利勝

    松岡(利)委員 総理、そんなことじゃ済まないのですよね。これはまあ大変羽田総理には失礼な言い方ですが、細川総理が受け入れられて、しばらくたった四月にああいう形で御退陣されました。(羽田内閣総理大臣「その前の内閣で」と呼ぶ)いや、御退陣されました細川総理は、十二月十五日に受け入れをされて、そしてああいう形で御退陣されました。同じ熊本からすれば、これは県民の一人として残念なことでありますが、その後を羽田総理継がれまして、短命とか少数とかいろいろ言われておられますから。  じゃ、ウェーバーも、それはアメリカがどうのこうのという前に、結果としてウエーバーはもう無傷で残っていってしまう。そういうようなことに……(羽田内閣総理大臣「ならない」と呼ぶ)いや、仮になったときです、なったとき。それはだれも実際そんなことはないというのはここで断言できないわけですから。きのうも経済局長にも確かめましたら、それは今アメリカは議会でいろいろやっておるということでありまして、その結果がどうなるかというのは、そこがなってみなければ、アメリカのまさに承認が議会で通ってみなければこれはわからないのですよ。  そういうことを考えますとき、私はだれがこれの責任を持つのか、これほどの国益を。まさに言い方とすれば、日本の有史以来の文化の源であり、国民生活の土台である。きょうは東京の出身の大臣の皆様方もおられますから、米というのは農業の世界の話で農村の問題だと思っておられるかもしれませんが、そういうことではなくて、当然主食ですから、一番これは食糧の基本だ、それ以上に水田というものが水を、雨水を受けとめて蓄えて、そしていろいろな下流の都会のそういったところの水として供給源になっておる、そしてまた災害も防ぐ、水田のその働きというのは、稲をつくるからそのあぜの高さが守られるわけでありまして、そういうことで成り立っているわけでありまして、まさに国民生活のこれはもう基本の土台なんですね。  そしてまた、外交をするときも、これは食い物がなくては相手に強いことも言えない、最後は兵糧攻めというようなことで、すべて戦いは、戦争でも何でも最後は兵糧攻めなんですから、そういうようなことを考えますときに、外交の基本でもある、民族国家の将来の基本である、私どもはそういうことで、そういう認識のもとに、これはしっかり守らなければいけないと思ってやってきたところでありますけれども、私はそういう米がまさにそういう形で、総理が、いや、そんなことはないだろうと、今これをやったら世界の貿易は壊れるよと。世界の貿易は成り立つけれども、日本の国は成り立たなくなる、そういうことになるようなことになっては、これはだめなのであります。  そして、私は間違いなく申し上げますが、米がそういうことで、私どもが理にかなって、これはほかの例えばオーディオ・ビジュアル、アメリカの海運、そういったところがいずれ決着がつくまで私どもとしても、国内にもああいう問題との絡みで、日本だけがノーとは言えない。だから、そういうことが決着つくまでこれはやはり留保させてもらう。そしてまた、ウエーバーの問題もあって、それはそういったこととの見合いで、お互いにこれはそうだということがはっきりするまでは、これは留保させてもらうというようなことを申したって、これは全く何も理不尽でも何でもないと思うのですよ。当然そういうことをすべき、私は、政府としては国益を守るためにそれはやるべき責任である、こういうふうに思うわけでございます。この点は強く求めたいと思います。  また同じ答えでしょうから、この点は強く求めて、この点については終わりまして、次に参りたいと思いますが、あとこの四%から八%、私は、今度は十分な議論が足りなかったと思うのですね。  何でかといいますと、いわゆる関税化を受け入れる本則でやるならば三%から五%ですよね。そして、では七年目以降はどうするかまだ決まっていない。したがって、五%のまま七年目以降はずっとそのまま行くかもしれない。そして、一五%だけ引き下げて、そのまま黙って行くかもしれない。ということを考えますと、これは四%から八%を受け入れた、受け入れたので、それは六年間だけで見るなら、黙って原則どおりやるよりも一ないし三%これは上積みですよ。  そして、上積みしたところからこれは交渉しなければいけないということになるならば、これはその分黙ってとられたのではないか、こういう疑問も持つわけでございます。これは疑問でありますけれどもね。七年目以降がどうなるかということがわからないからその疑問でありますが、これはどっちが国益にかなうのか、農業、農村、農民のためにいいのか、そういうことが本当は議論されて、その上で決断というのはあってしかるべきであった、私はこの点は指摘を申し上げたいと思います。  そこで、この四から八ですが、これは数値目標ですか、目標ではありませんか、どっちでしょうか。
  78. 東久雄

    ○東(久)政府委員 数値目標という御質問がちょっと趣旨をとりにくいのでございますが、消費量の四%を初年度では輸入をする、それから合意の最終年度、六年目だったと思いますが、そのときには今の消費量の八%を輸入する、そういう形になっていまして、目標というのか、いわゆるそれを合意してそれだけのものを入れるという約束でございます。
  79. 松岡利勝

    松岡(利)委員 私はそんなことを聞いたのじゃないのですよ。初年度四%、六年目八%ということは、これはもう前からわかっていることでありますから、そうじゃなくて、これはどういう性質というか性格の数字ですか、こういうことをお尋ねをしているわけでありまして、時間がないですから簡潔にお願いしたいのですが、数値目標なのかどうなのか、こういうことをひとつ。
  80. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私の方から申し上げます。  この前農林水産大臣の方からもお答えをいたしてもおりますけれども、これは先方が例えば災害等によって売れないということであれば別でありますけれども、しかし日本の方では食管として、一元として扱おうとしているわけでありますから、一応、ともかくそれは恒常的に、恒常的といいますか、平常であれば入れていくということであろうというふうに考えております。
  81. 松岡利勝

    松岡(利)委員 ということは、約束的なものであるし、責任を負うものである、こういうことですね。
  82. 加藤六月

    ○加藤国務大臣 この問題につきましては、政府としての統一見解を先般当委員会において出させていただいております。当然の義務であると心得ております。
  83. 松岡利勝

    松岡(利)委員 そういたしますと、羽田総理に再度お尋ねいたしますが、細川政権のとき、細川総理は二月に日米経済協議で行かれましたね。そのとき、数値目標は管理貿易につながる、また規制緩和にも逆行するんだ、そういったことから、数値目標はもとより、数値目標につながるようないかなる数字も、そういったものはだめだと言ってこれは決裂になったわけですね。  そういたしますと、いや国家管理貿易だからとおっしゃると思いますが、それは形が国家管理であって、品物の扱いが国家管理であって、貿易は、これは国家管理であろうが民間の管理であろうが、何でもそれは私は同じだと思うのですよ。そうすると、羽田政権は細川政権の、貿易において数値目標的なことはとらない、数値目標はもとより数値目標的なことはとらない、こういうことは踏襲されないのですか、ちょっとその点をお聞きしたいと思う。
  84. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 その問題とはやはりちょっと違うと思うのですね。片やこれは自由貿易の中でどうしようかという話ですよ。そして今度の場合には、要するにそうでなかったらすべて関税化に置きかえてほしいというのが、これが世界の国の日本に対する声だったわけです。ですから日本は、それは無理ですよ、ではこのぐらいまでは入れましようということでこれは話し合った問題でありまして、先ほどの、これから競争力のあるものが日本には入ってくるこの自由貿易の中におけるところの話し合いとは、これはちょっと違うというふうに理解していただきたいと思います。まず第一歩なんですよね。
  85. 松岡利勝

    松岡(利)委員 幾らそう言われましても、なかなかそれはちょっと理解ができないと思います。それは、例えば、これが過去には、義務的なもので約束ではないという答弁もあったのです。  それで、私は先ほど申し上げましたように、管理貿易だから、国家管理だから、こういうことで、だから数値目標的なものがあってもおかしくないんだよということもいろいろ、国会の場じゃないですよ、いろいろな場で議論したとき、これはそういう話も聞きました。それはおかしいのではないか。それは扱いが国家管理であって、貿易としては、例えば、米は別に国が生産しているのじゃないのですから、農家がそれぞれまさに民間の立場で、自由な立場で生産しているのですから。  ただ、売り買いの扱いがこれは国家管理的になっている、こういうことだけでありまして、だから当然のことながらそれは入ってくる。そこに、一つの言ってみれば品物というか産品の分野にそれを貿易として入れるのを約束的にもしするとするなら、これは数値目標。では、そこだけを数値目標としてとらえても、細川政権でおっしゃった、また羽田政権も引き続いてそれは守っていくその方針と、どこがどう理由がちゃんとあって、整合性がとれて、そして、だからこれは矛盾がないんだ、そごがないんだと言うのなら、私どもなかなかわかりにくい頭にも十分わかるように、ひとつこれは体系づけて整理してお示しいただかない限りは納得がいかない、このように思うわけでございます。  その点は後でまた答えも求めたいと思いますが、ちょっと時間もなくなりましたので、私はこの数値目標ということについては、これはもしそうだとするならば、工業が、いいですか、先ほど交渉は農業の分野で独立してやったのだからとおっしゃったけれども、それならそれで貿易問題もそれぞれの分野でやっていただくと、農業がこんな目に遭わなくて済むのですよ、三百億ドルも入れているのですから。  工業の方で出た製品が結果として差し引きとして五百億ドル、六百億ドル、それを日本は大変な形で世界からたたかれておる。アメリカとの間で五百億ドル、六百億ドルですが、たたかれておる。その工業製品の貿易の取り扱いの分野では、いかなる数値目標も認められない、ノーと言っている。もう減反をして、そしてつくらせなくて締めつけておるところに今度は数値目標でよその国の米を入れる、これではやはり農民からしたときには、工業ではノーで農業ではイエス、こういうふうにしか受け取れないのですよ。  だから、そういった点からしましても大変これは矛盾がある。この点は、総理、後で私の疑問に対してはわかりやすく、一遍きちっと整理してお答えをいただけますでしょうか。
  86. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今度のガットというのは、御案内のとおり百以上の国が集まって、そして今お話があった十五分野のそれぞれの分野で話しておるということです。そして、その中の農業分野において、農産物をより自由に貿易できるようにということ、その中で大体国際的な合意というのは、今までのそれぞれの国境措置というものを、例えばこれは輸入はしませんという日本のある国境措置、こういったものをともかくある程度、ある程度じゃない、関税に置きかえてほしいというのが実は各国の要請でしたね。それで、これを六〇〇%とか七〇〇%の関税にしてくれというのが日本に対する要求であったわけです。  ところが、私が皆さん方とお話ししたときにも、これは関税化なんか絶対だめであるということ、そして、やはり米というものは主食である、これは基本的に日本の中で自給を旨とするという国会の決議で実は今日まで進んできたわけです。  ですから、関税化なんかどうにもだめだよということの中で、しかしそれができないとどうにもならぬということで、新しいルールを日本には適用してほしいということを実は要請して、その中で、じゃここまでだったら、こういうことをやってくれるんだったらということがミニマムアクセス、そして四%から八%までということが実は話し合われたということでありまして、そういうルールを一つつくる中でやられたことであるということ。  片や、さあ自由貿易であるけれども、日本には市場に全然入れないじゃないか、そういう中で競争力のあるものが入る方法、ということは、日本が、規制があるとしたら規制を外してもらいたいという実はこれは話し合いですから、その中で数値目標というものをつくってしまったならば、これは自由貿易というものじゃないじゃないですか、競争力のあるものが入ってくるというのじゃなくて、競争力のないものまで入れなさいという話じゃないですかということでありまして、そこに、ガットというものの決着の仕方と、今度二国間における貿易問題についての話し合いというものは、私はおのずとやはり違うものがあろうというふうに考えております。
  87. 松岡利勝

    松岡(利)委員 総理が言っておられることは言っておられることなりに私もわかるんですが、しかし、これはやはりもう少し、本当に日本政府の経済政策なり貿易政策なり、そういう全体的観点からも、これは全体の体系、その中でこういうふうにこれは矛盾しないんだという整合性をきちっと示してもらわないと、これはやはり総理、納得いかないです。  この点につきましてはいま一度、私どもまた農林水産委員会なりいろいろな場があると思いますから、それはそういった形でも、この点はまた改めて、国会批准の問題とかいろいろ出てくれば、そういう場でもまたぜひこれは議論をさせていただきたいと思いますから、この点はやはり大変大きな問題点として、そして、例えばガットの三から五、これは機会を与える、チャンスを与えるんだ、こういうようなことにも聞いておるわけであります。それに対して四から八というのは特例だから、言ってみればこれは機会を与えることよりも重い性格があるんだ。そうすると、やはりいろいろな意味で私どもは、じゃどっちが得だったのか、そういう比較対象というのは、これは本当に考えなきゃいけない。いろいろな問題を含んでいるところでありますから、きょうは、あと私ももう十分足らずになってしまいました。もう少しまだほかの問題もありますから、問題提起としてしっかりこれを受けとめてもらいますように申し上げておいて、あとに進みたいと思います。  輸出補助金にしても、総理、これは大問題なんですよ。本来輸出補助金というのは、工業の世界で輸出補助金が認められているものは、これはもうないでしょう。もしあるんだったら答えてもらいたいのですけれども、ないと思うのですよね。工業の世界では認められない。ガットというのは、工業の取り扱い、工業製品の取り扱いと同じように他の分野もしていこう、こういうことでいろいろ進めてきておるのに、この農産物もガットの世界で工業製品と同じような取り扱いをしようと言いながら、一番問題である農産物の世界で残っておる問題である輸出補助金は残したまま。  しかも、一応ダンケルペーパーでは二十四減らすことになっていたのだけれども、これは二十一まで後退して、さらに、今度は基準年度を一九九一から九二と変えたことによって、結果として、これまでの、これからの期間において、トータルとしての輸出補助金を減らす額はまた減ったんですよ。だから、もう二重にそういうことで後退をしてきておる。  私はいろいろな行動、活動の中で、外務省の幹部にあるとき伺ったことがあるんですが、この輸出補助金こそおかしいではないか。輸入があって輸出があるというなら、輸出補助金というのは、もうまさに武器を持って、よろいを着て攻めてくるようなものですよ。こっちはそういうものも全く何もなく裸でやるようなものですよ。だから、ただでさえ体力差でいうと、相撲でいうなら、例えて、名前を挙げる人に大変恐縮だけれども、中学生と曙か小錦が相撲をとるような、そのことの上に今度はまた輸出補助金というよろいを着てくる。  こういうことではこれはたまったものじゃないわけでありまして、何でこの問題をやらないんだと言ったら、外務省の幹部いわく、だれとは言いませんが、いやこれは、輸出補助金のことは余り相手に強くこっちから攻撃するなと実は言われているんですよと。こんなことで今まで交渉してきておったわけでありますから、どうもこれは既定の路線というのがあって、これはやはり私は非常にいろいろ疑問を持っているんですよ。  このウルグアイ・ラウンドというのは、ひとつ米、農業、そういったことを犠牲にしてもう一遍いろいろな日本の貿易的利益を守ろうかな、そういうようなことがあったのではないかと勘ぐりたくもなるような、そういう輸出補助金を攻撃しないみたいな、そういうおかしなことがあった。これは事実あったのですから。先ほどみたいに、そんな徹底して、だれがあのときいて、言った、言わないまでやろうかということになるとまた変な話になりますから、それ以上ここで言うつもりもございませんが、そういうこともあったのです。事実なんです。  そして、そういうようなことを私ども思いますときに、これだけはぜひ皆様方に御認識いただいておきたい。あの牛肉の自由化がありました。あれからどれだけ今外国牛肉が入ってきたか。もう今、国内の牛肉というのはシェア四二%、四〇%、四割前後ですよ。そこまでもう落ち込んできた。言ってみれば、もう半分なんというのはあっという間に超した。だから、経済界では農業は過保護だなんて言っているけれども、とんでもない。これは、牛肉の世界なんというものはそういうことであっという間に半分以上突破されちゃって、大変な風圧、大変な濁流にのみ込まれた中で今必死で何とかやっておる。畜産だけではなくて、その畜産の肉、酪農から出ます廃牛、ぬれ子、こういった副産物収入というのが大打撃を受けている。そして酪農も青息吐息、こんな状況になっておる。  そういうことを考えますときに、私は先ほどから何度も申しておりますように、この米問題といいますものは、今回の農業分野の合意といいますものは、他分野の、他の外国のその結果、決着、そういったことにかんがみて、そしてまた農業分野の中でも、アメリカのウエーバー、こういうようなものとの関係からかんがみて、私はいま一度総理に、この点に対しまして再交渉をして、そして留保する、そういう形での対応をぜひともお願いをしたい。私どもはこれからの国会批准の中でそのことを強く求めていかなければいけないと思っております。  そして最終的には、とにかく地球環境、私はサザーランドさんにも言ったのです、最後立つときに。サザーランド局長、あなたは地球環境の将来にとって、人類の将来にとって大変な問題を起こした人になりますよ、こんな経済コストだけで農業を律するようなことをやってしまえば、これから人口が一億ずつ毎年ふえていくときに、それこそ農業がいろいろな地域で成り立たなくなる、まさに、コストだけで成り立つようなことになってしまえば世界の農業は滅んでしまう、そのときに地球環境、人類の将来にとってどういうことになるんだ、だから農業は切り離して、まさに新たなラウンドで、緑のラウンド、グリーンラウンド、そういうことでひとつ農業は扱おうじゃありませんか、今あなた決断したらどうですかと言ったのだけれども、彼は、何といいますか、口をゆがめた笑いを残しながら去っていったわけでありまして、どうかひとつ羽田総理、今の私の提案に対しましてはどうでしょうか。
  88. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今お話がありました輸出補助金を初めといたしまして、あるいは環境の問題、それで先ほどずうっとお話しになったこと、私が七年何カ月、これは世界各国に、そして報道に、あるいは国会で話すときにずうっとそのことを、全く同じことを語り続けてまいったわけです。しかし、結果としては、あの段階にあってぎりぎりの決断をせざるを得なかったというのが実情であったということです。  そして、今御提案のありました問題は、この食糧問題というのは、これは物によっては逆に自然を破壊するというようなことを言われる場合もありますけれども、少なくも水田農業というのは日本の大きな環境というものを支えておりますし、また水田で耕作をしている各国の自然というものを支えておること、これは間違いない。  それと、やはり世界の食糧という問題も、人口の増加あるいは農地が壊廃していくような問題、こういったものを考えたときに、ただこれは貿易の関心品目だけじゃいかぬよということで、まさに今度、次の交渉をするときにはいわゆる環境問題も含めてということを今度の一つの話の中に入れてあるということもありますし、今お話のあったことは、私どもはよく念頭に置きながらこれからも話し合いを、話し合いといいますか、いろんな場所で提起をしていきたいというふうに考えております。
  89. 松岡利勝

    松岡(利)委員 最後の整理に入りたいと思うのですが、私ども、ただ反対、けしからぬと言うのではなくて、他の分野との比較における不平等ですね。他の分野、アメリカの海運とかヨーロッパのオーディオ・ビジュアルとか、そういう他の分野との比較における不平等、不公正、そしてまた農業分野の中におけるウエーバーとの関連、そういったことからして、これは不平等、不公正とならないということがはっきりするまで私は留保をしてやるべきだ。そしてまた、さらにこれは地球全体、人類全体の将来のためにも、新たなグリーンラウンドでこの農業問題は扱うべきだということを、ひとつ羽田総理、勇気と英断を持ってこれを諸外国に提起をしていただきたいということをお願いをする次第でございます。  そして最後に、総理また農林大臣の御決意をお伺いしたいと思うのですが、酪農問題、畜産問題、もう中身を一々るる申し上げるまでもなく、大変な状況に立ち至っております。よほど抜本的な対策を講じない限り日本の酪農、日本の畜産は滅んでしまう、そのような私は認識を持っております。  どうか、これに対してそれこそ御熱意あふれるお取り組みをお願いしたいと思いますし、また農業全体に対しましても、先ほど総理も、農業がいかなる大事な役割を持っておるかと述べられました。その農業が、予算配分で言うと、もう何度も議論になっておりますが、(A)、(B)、(C)と、大蔵省がつくった財政審の答申ということにはなっておりますけれども、これの基準では一番後回しの方になっておる。これではやはり日本の農業は将来大変危ぶまれるわけでありまして、決してそんなことはないんだと、あれは細川総理のときなんだから、細川政権のときなんだから、羽田政権、私ども自民党の時代も、羽田総理は農林関係の一番中心的な人で御指導もいただいてきたわけでありますが、御造詣も深いわけでありますから、細川政権のときと違って羽田政権ではこの農業、決して(C)なんてことはない、これはもう全体のもとだから(A)に持っていく、そういうつもりでやるというようなことをひとつお答えを願いたいのです。  また、あわせて農林大臣にもひとつそういう御決意をいただきたいと思うのですが、御答弁をお願いいたします。  まず、総理から。
  90. 加藤六月

    ○加藤国務大臣 もう改めて私が申し上げるまでもありません。日本の農業、酪農、その他に対する憂い、気持ち、松岡委員と全く同じ認識を持っておるところでございます。  特に、今回こうやってミニマムアクセスを受け入れるという新しい国境措置というもとの中で、日本の農業というよりか農村、農業、ひいては日本国というものをどのようにして活力ある、潤いのあるものに持っていくかということにお互い英知を結集し、そして努力してやっていかなくちゃならぬ。それが今回大変厳しい選択のもとでミニマムアクセスを受け入れた私たちの覚悟である、こう思っておるところでございます。よろしく御理解、御協力のほどを心からお願い申し上げます。
  91. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 基本的には、まさに農林水産大臣がお答えしたとおりであります。  今、ぬれ子の問題等につきまして具体的なお話もありました。私どもも当時いわゆる乳肉一体の経営ということを盛んに進めてきたものであります。それが今度の自由化の中にあって非常に厳しい状況にあるということは、私どもよく承知しております。その意味で、これからの酪農経営というものを一体どうしていくのか、ここらあたりを本当に腹を据えて考えていかなきゃならぬ問題であろうというふうに思っております。  そのほかの農林水産の問題につきましても、ともかくやはりその生産の場にある人たち、あるいはその人たちが住む、生活する場、そしてもう一つは、やはり国民に食糧をどうして安全なものを安定して供給するかというこの視点に立ちながら、我々としては間違いのない対応というものをしなければいけないということ、これを私からも申し上げたいと存じます。
  92. 松岡利勝

    松岡(利)委員 時間でありますから、終わります。ありがとうございました。
  93. 中西績介

    ○中西(績)委員長代理 これにて松岡君の質疑は終了いたしました。  次に、石原慎太郎君。
  94. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 最初に、総理に永野発言についてお伺いしたいと思いますが、永野前法務大臣は、あれは首ですか、それともやめたんですか。罷免ですか、それとも辞任ですか。
  95. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 辞任でございます。
  96. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 それでは、永野さんの辞意のどこをどういうふうに是とされて彼の辞任を、辞意を入れられたんですか。
  97. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは、中国というだけでなく、このアジアの中に、やはり日本のちょうど戦争中の問題あるいはその以前の問題、こういったもので深いぬぐい去れない悲しみだとかあるいは傷を負っている人ですとか、そういった人たちがある。みんなが最近の日本の外交努力、いろんなものに対して、彼らがそれを理解しながら未来志向で動こうと、これからも未来に向かって歩こうということを言っておったときでありました。そういう中で、それが今度逆流するような形になったということでは、これはならぬという思いを御本人も持たれたということで、私たちもそれを了としながら辞表を受け取ったということであります。
  98. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 私は、次の世紀はもうじきやってきますけれども、まさにアジアの時代になると思いますし、そういう一つの予見で日本も加担し、協力し、アジアの国々と前向きの姿勢でこれから大いにつき合っていこうというのは大変結構ですが、それを逆流させる可能性があった発言というのはどういうものなんでしょう。あの発言のどの部分なんでしょう。
  99. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 いや、どの部分というよりは、先ほども申し上げましたように、いろんな外交努力を進める中にありまして、各国が、日本という国が過去の戦いあるいは傷ついた人たちに対しての思いというものをきちんとして持ってくれたという中で、まさに未来に向かって進もうということ、これを各国の首脳も実は、例えば中国にありましても韓国の金泳三大統領にいたしましても、そういう思いで未来志向をこれから進めていこうということであった。  それが今、あるいはこれからお話があるのかもしれませんけれども、南京問題についての評価はいろいろとありますけれども、こういった問題について明確に話してしまったというようなこと、そのほか幾つかの問題があったようでありますけれども、古い傷といいますか、そういったものをまた改めて思い起こさせたという中で、各国から大変な反発があったことは御案内のとおりであります。
  100. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 もっともらしいけれども、何というのか、ある意味で非常に危険な発言で、将来は現在を踏まえてあり、現在は過去を踏まえてある、将来もまた過去を踏まえてあるわけですね。我々がどれだけ前向き志向でアジアとの協調を考えても、つまりそういう姿勢の中で、例えば日中関係の中での南京事件を含めて過去の忌まわしい問題について一切考えるな、一切発言をするなと言うなら、これはちょっと歴史の機能というか構造というものを無視した非常に乱暴な発言だと思いますけれども、まさしく永野さんは、南京事件という、あえて申すれば非常に虚構に満ちた、概念のはっきりしない事件についてある発言をされた。  私は、こういうくくり方は失礼かもしらないけれども、あの人の場合は物を知り過ぎていて舌足らず、それを非常に憂慮し、その辞任を受けられたあなたの措置は、余り物を知らない人間の拙速ということを感じさせるのですけれども。あの人が南京事件について触れたということ、つまり、あの事件に実はある虚構性があるのではないかという、そういう発言をしたことそのものがやはりいけなかったのですか。
  101. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 国と国との関係でも、それは事実とかそういった問題について語ることはいいでしょう。しかし、実際にまだ傷つき、そういった人たちが現存しておるということ、そういった中で、相手の皆さん方に対して不快とかあるいは悲しみとかそういったものをもう一度呼び起こしたということ、これはやはり私どもは、外交というもののときにはそれらもやはり配慮しなければならない問題であろうというふうに思っております。
  102. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 いや、あなたの言うことはよくわかるんですけれども、それは過去の忌まわしい出来事について語るということはお互いに気持ちのいいことではありませんが、あの場合、永野さんがあの発言をしたということ、発言そのもの、つまり過去の事件に触れたということがやはり思わしくないんだ、それともあの発言が非常に誤解を受けやすかったという部分があるということ、その軽率さなんでしょうか。
  103. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 あのときの発言は、たしかあのときの事件の人数とかそういったものについて触れられたということ、だからそれを大虐殺というのかどうかということが言われたのでしょう。しかし、永野さんも後ほど話されておりますけれども、例えばこれが数千人であろうと何十万人であろうと、これは虐殺であったということだけは否定できないということを後ほど語られておるわけでございますから、私はそこに問題があったのだろうと思います。
  104. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 あの事件を報道した各紙の書き方の中で、皮肉なことに、朝日だけが、いわゆる括弧南京大虐殺事件か、あるいは、いわゆる括弧南京事件という報道をしておりました。つまり、いわゆるという言葉書きがついていた。これは非常にサジェスチブ、暗示的で、大事な表現なんですよ。  私は、政治というのは、往々それぞれの利益のためにかなり乱暴なことをするし、野蛮なことをするし、非文化的なことをする、それが政治のある意味でのあしき本質かもしれないけれども、その中でも一番許せないことは、歴史というものを改ざんすることなんです。歴史というのは人間全体のとにかく財産ですから、それを政治の一つの意図というもののために改ざんするということは、私は絶対に許されないと思いますけれども、いかがですか。
  105. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 昔からよく言われますけれども、為政者が歴史を改ざんするということが言われております。しかし、歴史というものは常に客観的に見るものであろうということは、もう御指摘のとおりであります。
  106. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 大変結構な見識だと思います。  そうすると、恐らく、これは類推かもしれませんが、要らざることを言ったというか、過去の最も忌まわしい歴史の事実について舌足らずの発言をしたとか、あるいはなりたての法務大臣が言わなくてもいい問題に触れたとか、いろいろ見方があるでしょうが、しかし、南京事件というのは私はあったと思います。あそこで多くの非戦闘員を日本軍が殺したということは事実だと思います。私はそれに対して、あの戦争が聖戦だったとか植民地解放のゆえにそんなものが許されてしかるべき、そんなばかなことを全然言うつもりはありません。  しかし、いろんな性格づけはあるでしょうけれども、非戦闘員を軍隊が殺すということは非常に残虐なことだし、同時に、言ってみれば戦争で軍人同士が戦場で殺し合うということも、これも決して好ましいことではない、私は残虐な行為の一つだと思います。ですけれども、あそこで一体日本人がどういう質的、量的な装備を持ち、どれだけの兵隊が何日間の間に一体何人殺したかということになると、これはその数によって大虐殺、中虐殺、そういう呼び方はあえてするつもりもありませんが、巷間言われている南京、中国、シナ側の表現によれば南京大屠殺、つまり括弧つきの南京大屠殺というのはどういう事件だったんですか。どれだけの時間帯にどれだけの人間を日本が殺したというふうな受け取り方をされているんですか。教科書にも書いてあるから、総理がわからなかったら文部大臣、ちょっと見解をお述べいただきたい。
  107. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 文部大臣といいますか、教科書を担当している者といたしまして、教科書に現在どういうふうに書かれているかということでお答えになるかと思いますが……
  108. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 ちょっと委員長。  いろいろ書き方が違っていたら、どういうふうに違っているか、ちょっと教えてください。
  109. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 このように例えば書かれているわけでございます。「日本はっぎつぎに大軍を投入し、この年の末に首都南京を占領したが、国民政府軍は武漢からさらに奥地の重慶にしりぞいて抗戦を続けたので、和平への試みも効果がなく、長期戦の様相を呈していった。」という本文のところに、注として「このとき、日本軍は、非戦闘員をふくむ多数の中国人を殺害し、敗戦後、東京裁判で大きな問題となった(南京事件)。」  また、別の教科書では「十二月、日本軍は国民政府の首都南京を占領し、南京城内外で十万人をこす中国人の捕虜や民間人に対して虐殺・暴行などの残虐行為をおこなった(南京虐殺事件)。 この事件」……(石原(慎)委員「ちょっと待って。南京の何、城外」と呼ぶ)南京城内外。(石原(慎)委員「城内、はい」と呼ぶ)続きでございますが、「この事件における中国人の軍・民の犠牲者の数については、中国政府発表の三十数万人説があり(この数字は、戦闘行為による戦死者も含む)、日本では十五万人から二十万人前後という説がある。英米のジャーナリストは、この事件を南京残虐(アトロシティー)事件と報道した。」  もう一つございますが、「南京を完全に包囲して中国軍を繊滅させる作戦をとった日本軍は、十二月十三日に南京を占領し、ひきつづいて市内の掃蕩戦をおこなった。この間に大量の捕虜や市民を虐殺したのをはじめ、婦女への暴行、放火・略奪など残虐行為をくりかえした(南京大虐殺)。」これは注がございまして、「南京大虐殺は、南京にとどまっていた外国人の報道によってはやくから海外では知られ、「南京アトロシティーズ(虐殺)」として世界の非難をあびたが、当時日本国民にはいっさい知らされなかった。」  代表的なもの三つ御紹介いたしました。
  110. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 ありがとうございました。  今三っ事例をお挙げになりましたが、その中にも、数字が書いてあるもの書いてないもの、それからまた、教科書は何も教科書ゆえにすべて事実を、史実を正確に数字を含めて記述しているとも思えない節がほかでも多々ありますが、いずれにしろ、例えば借行社のように、かつての陸軍の有志たちがつくっている組織がこの問題を非常に重要なものととらえて詳しい調査をしている。その中には日本にしかない資料もあります、それを含めて。それから同時に、何人かの生存しているあのとき南京にいた外国人のジャーナリストにも日本の新聞記者がインタビューをして、その人たちの証言もある。  例えば、もう亡くなったかもしれませんけれども、二、三年前に、九十過ぎたばかりぐらいの年で、サンディエゴにダーディンさんというニューヨーク・タイムズの記者がおられた。それに産経の古森記者がインタビューして、かなり長い記事を新聞なりあるいは雑誌に書いてありましたが、その中で、ダーディンさんの記事というのはなかなかおもしろいんです。  あの人のニューヨーク・タイムズに対する通信をずうっと見ますと、最初にシナ軍は、焦土決戦を覚悟して、南京の城外で非常に邪魔な市民をシナ人自身が殺すんです。それは非常に野蛮な行為で、チンギスハーン以来の大残虐だということを、ダーディンさんだけじゃなしに、ほかの外人の記者も書いている。  そしてまた、あのとき日本とドイツの関係はちょっとまだよくなくて、特にドイツの外務省は日本が嫌いだったものですから、それを通じて、蒋介石の国民政府軍に顧問団としてついているドイツ人の軍人たちは、城内で戦ったりすると余計な被害者がふえるので、ぜひ、要するに城を捨てて、とにかく城外で戦いなさいと進言するんですが、蒋介石は、自分の師でもあった孫文の故地であるこの南京、しかも国民政府の首都である南京を一戦も交えずに放棄するわけにいかぬということであえて戦闘をするのです。そして陥落して、その後いろいろな出来事があった。それについていろいろな人がいろいろな報告をしています。  ダーディンさんが言っていることは、結果としてシナ軍も日本軍も非常に無節操になったということが書いてある。そして日本人がやった大虐殺についても報道していますが、彼の挙げている数字は三万ということでした。それで、たしかあのとき南京の人口は二十万しかいなかったはずだけれども、何で三十万になったか私は理解できない。同時に、南京が陥落した後、城外に逃げていたシナ人たちもたくさん戻ってきたという報道もあるわけです。それをもって私は絶対のものといたしませんが、つまり、大事なことは数字なんです。  日本人は過去に戦争で悪いことをした、私はそれを何も否定はしない。戦争のいい部分もあったとは言いません。ですけれども、あの戦争が侵略だったか進出だったか。皮肉なことに、正当性のない東京裁判で日本を裁いたアメリカ、イギリス、フランスという国々は、裁判の中で日本の論告に日本が侵略したとは一言も言っていない、不思議に。それは自分の、つまり天につば吐いて自分の顔につばがかかってくることだから、日本を一方的に裁いた連中も、日本の例えばシナ大陸進出を侵略とは書いていない。つまり、やったことは実質的に彼らと同じだと。言ってみれば、先進国、先進軍事大国の縄張り争いの巻き添えをアジアの人たちは食った、それは本当に申しわけないことだと思いますけれども、それを勝者という形で一方的に裁いた東京裁判では、皮肉なことにアメリカさんもイギリスさんもフランスさんもオランダさんも、日本のやったことを侵略と言っていないんですよ。  私は、だから日本のやったことが侵略じゃなくて進出だと言いませんよ。しかし、その過程でいろいろなことがあった。確かに南京で捕虜を含めた非戦闘員をかなりの数殺した、これは本当に忌まわしいことですが、これが万単位のこと、三十万という、当時の人口が二十万しかいなかっただろうというほとんどの人の証言にかかわらず、教科書にはいろいろ書いてあるみたいだけれども。  共産主義政府が南京に建てた記念館に私行ったことないが、日本人はここで三十万殺したと書いてあるそうですな。閣僚の中でごらんになった人いますか、だれか。いたら挙手願いたい。いや、ごらんになったことが罪でも何でもないですよ、それは。見るものは見たんだ。私南京という場所へ行ったこともないから、どなたかおられますか一いないみたいだ。三十万と書いてあるそうですね。  だからといって、一つのイデオロギーを持った政府が、その政府の力で建てた記念館に三十万殺したと書いてあることで、私は日本人がすなわち三十万殺したとはとても思えない、いろいろなほかの証言を突き合わせると。しかも大事なことは、あの東京裁判で私たちはまさに寝耳に水で、南京でとんでもなく悪いことをしたという、そういう事実を裁判で突きつけられた。愕然とした。  しかし、興味のあるのは、あの南京が陥落した直後ですね。日本のジャーナリストは優劣いろいろありますけれども、最もすぐれた文人である林芙美子、石川達三、大宅壮一という人たちが従軍報道班員ということで南京に入っている。この人たちがあそこで日本人が三十万と、言ってみればホロコースト、ジェノサイドをやったということは一行も書いていないし、私はそのことを実は石川達三さんに聞いたことがあるのですよ。  この人は「生きてみる兵隊」を書いて陸軍ににらまれた人だ。それからまた、一部の左翼が自分の味方だと思ったのでしょうが、あの人は自由にも二つあると言って、自由に関するダブルスタンダードという非常に勇気ある発言をして、日本のそのころリベラルか左翼か知らぬけれども、そういう連中たちに何か非常にひんしゅくを買ったことがある。しかし、非常に冷静な勇気のある人だった。  その石川さんに私は、一体日本人が、あなたは報道班員で行っていて、そんなことやった形跡ありましたかと言ったら、いや、実にあれは不思議、不可思議な話だな、僕に関する限りそういう記憶は、印象は全然ない、実にあれは怪しげな話だよと言いました。これは戦争裁判で突然出てきたのです。  例えば、話は飛びますけれども、ジェノサイド、ホロコースト、ホロコーストというのは大虐殺、ジェノサイドも大虐殺ですけれども、これは皆殺しの意味があるんですけれども、ホロコーストと辞書を引きますと、事例として何が出ているかというと、アメリカが広島、長崎に原爆を投下して瞬間的に数十万の人間を殺した、後遺症でもたくさん人が死んでいる。もう一つは、ナチスが計画的にやったユダヤ人、ジプシー、そしてポーランド人のこれは皆殺し作戦です。この二つが、順は逆だけれどもちゃんと載っている。私たちが南京でやったことがその同列にされたら、これはちょっと民族の資質、それにかかわる非常に不名誉な話だ。  ちなみにダーディンさんはそのインタビューの中で、私が認識している限りは二万から三万の人が殺されたと思う、しかし人間というのはいろいろ業が深いところがあって、戦争という極限状態の中で人間が一種のヒステリーを起こしたときに、あの程度といったって三万の人が死んだのですけれども、そういう事件が起こるということは、私は人間の過去の歴史に照らしてあり得ることだと思う、だから私は、あの事件を目撃した人間の一人として、日本人が非常に他の民族と違って資質の違う人間とは思わない、日本人を特別に見ることはない、ということを言っている。  そのとき、これは私の憶測だけれども、ダーディンさんが東京裁判の実態を考え、自分たちが二発の原爆でほとんど非戦闘員を殺して、今日まで、とにかく後遺症で死ぬ人を合わせれば三十万人が死んでいるわけだ。辞書にもジェノサイドの、ホロコーストの典型的な例として載っている。そういうものを思い合わせて、つまり一種のギルティーコンシャスで、南京事件をそういうふうな認識でとらえたのかどうか知りませんが、いずれにしろ、三十万の人間をわずか六週間、六、七、四十二日で、あの質と量しか持ってない軍隊、兵器の性能もあるでしょう、それが殺したということはまず物理的に私は無理だと思うけれども、そういう事件があり得たのかなと。  総理総理でいろいろこの問題について心を悩まされたでしょうが、まずその以前に一人の人間として、あなたも戦中を生きてその記憶はあるだろうし、東京裁判の記憶も。要するにその経験、認識を踏まえて、南京の何とかという記念碑に書いてあるような実態があったとお思いですか、お思いじゃありませんか。     〔中西(績)委員長代理退席、委員長着席〕
  111. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今私の立場でこれをどう思うということは、これは控えたいと思います。  そして、確かに今お話がありましたように、もうそういう虐殺というのは、民間人を虐殺してしまったという事実はあったのだろうということを石原委員もお認めでありますけれども、これが数千人であるとかあるいは数十万人であるとか、いろいろな説があることは私も承知いたしております。しかし、非戦闘員の殺害あるいはその略奪行為があったということは、これは否定できない事実であろうというふうに思っております。そして、こういった問題について、何というのですか、これがどういうあれであるということを政府同士でどうこうという話をまだ言える全体の環境にはないというふうに私は思っております。
  112. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 あなたの言うことはわかりますよ。ですけれども、いろいろ説があるという認識をお持ちだということは大事なことで、今両国の政府がこの問題について公式に話し合う時期ではないと言うが、私ちょっと後で違う提案をしますが、私はその時期だと思うんだ、まさに。  私が何で数字にこだわるかというと、この間「新潮45」という雑誌にも曾野綾子さんという冷静な日本の知性が、つまり、こういう問題の数というものは非常に大事なんだということを書いていた。もし必要だったら後でお送りしますけれども。  それは、東京裁判でもこの問題が問題になっている、この点が。松井石根という、この責任をとらされて結局処刑された大将は、三十万なんという人間をわずか六週間で殺すには国家の意思が要る。つまり、それを反映したきちっとした命令の体系が要る。そんなものはなかったし、あり得なかったと。実際にどこをどう考証しても、アメリカ軍があるいは先勝国側が東京でその証拠というものを検証しようとしても、そういうものはなかった。結局、松井石根大将と広田弘毅という時の文官の総理大臣、外務省出身の総理大臣は、その責任をとらされて首をくくられるわけだけれども、その罪状は何かというと、監督不行き届きです。監督不行き届きということになれば、松井大将は中支派遣軍の総司令官、その中の幾つかの司令官を見まして、南京を攻撃した上海方面軍の司令官は皇族だけれども、これは朝香宮さんだ。ここにいろいろな虚構があって、それはやはり、天皇の戦争責任というものをソビエトがいろいろ言ってきた。つまり、皇族をこれに巻き込んじゃいかぬという形で、しかし、自分自分の名誉があるし、国家の名誉のために、松井さんは、国家の意思なんかなかった、その命令系統もなかった、自分はだからあえて監督不行き届きという罪状で甘んじるという形で処刑されるんです。これは大事なことですよ。  私は、例えばゲルマン民族、ドイツ人というのは非常に優秀な民族だと思うし、偉大な思想、偉大な芸術を生み出しているが、やっぱりちょっと偏ったところがあると思っていたら、同じことを林健太郎さんがこの間ある雑誌に言っておられたけれども、私もそのとおり。それに比べると、イギリス人というのはコモンセンスがあるということで林さんはばかにイギリスびいきですけれども、私はイギリス人がそんなにコモンセンスがあるとは思わない。  イギリスの宣教師が香港へやってきて、自分の持っているステッキでシナ人を殴ればこいつら利口になるから、自分のステッキのことを文化棒と呼んでいたなんていうのは事実として残っているし、日記にも残っているけれども、まあどっちもどっちですが、民族には時々そういう突出した、ある偏った性格が突然出てくることがある。それが、ヒトラーの命じたアウシュビッツにおける二年間で四百万か五百万の人を殺したという、これだってなかなか検証されないから、加害者の方も被害者の方も、今でもやっぱりドイツは、あのときのナチス・ドイツは組織的に一体何人の人を殺したかという検証をいまだに続けているわけです。これは大事なことですよ。  ただ、あの南京事件なるもの、つまり数字がばらついていていろいろな認識があるけれども、その南京事件なるものの概念が正確に規定されていない。だから、朝日はいわゆるという括弧つきで書いたのでしょう。これは、ある意味でほかの新聞に比べれば冷静な記述とも言えないでもないが、どうですかね。やっぱり民族の資質が問われかねないこの問題、これがこのまま、一つのイデオロギーを持った政権がつくった記念館に三十万屠殺されたと書いてあるだけで、私たちはそれをそのまま素直に歴史の事実としては是認することはできない。  ちなみに、おもしろいことを話しますと、七、八年前に、アービングという非常にすぐれたイギリスの現代史家が、十年ぐらいかかって、もう解禁された新しい資料をもとにヒトラーの伝記を書いた。それを見ますと、あのアウシュビッツの虐殺というのはヒトラーは最初非常に嫌がって、そんなことまでするなと言って、突き上げてきたヒムラーに抵抗しているうちに、こっちも忙しくなってそれどころじゃなくなっている間にヒムラーが勝手にどんどんどんどん計画を遂行して、中間的に報告が入ってくると、それを聞くたびにヒトラーというのは慎悩したという、そういう事実が出てきたんですな、いろいろ。  ところが、やっぱりこの本はヨーロッパで黙殺された。というのは、ヒトラーという悪魔的な天才というものに全部責任がかぶせられていたものを、ドイツ人もそうかもしらないけれども、ヒムラーというのはどの程度の人間だったか知らないが、つまりそのアウシュビッツに関するコンセプトが、非常に史実的に正確なアービングという非常にすぐれた歴史家の叙述によってむしろ一部覆っていく可能性があるから、この本は不思議なことにヨーロッパで黙殺された。これは回りくどいような事例かもしらないけれども、私はこの問題を考えるためにも非常に大事なサジェスチョンじゃないかと思います。  私は総理に申し上げたいのだが、事実としても非常にばらつきがある。だったら、そのいわゆる括弧つきの南京大虐殺というものが、内容が数字を含めてどんなものだったかということを、これは私、これからアジアの時代に、中国がこのまま一つの単一国家になるか、それとも連邦国家になるかわかりませんよ。そして、その南京がその幾つかに分かれた連邦国家の首都になるかならないかは別にして、そこに、とにかくかつてチベットまでを強引に併合した毛沢東主義の北京の政府が形を変えながら今も続いているわけだが、それがつくったあの南京の記念館にある記念碑に書いてあるというだけで、私たちはどうもこれを素直に是認するわけにいかない。  そしてまた、これからのシナ大陸の幾つかの国々あるいは一つの国かもしらぬけれども、そこと日本が、アジア全体のために協調していく、言ってみれば日中両国の将来の関係のために、どうですか、もうそろそろみんな頭を冷やして、こちらも人が生きている間に証言も含めて資料を出しましょう、そちら側もお出しになったらどうですかという、そういう提案をされたらどうですか、総理
  113. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 この問題につきましては、そういう考えも私はあろうかと思います。  ただ問題は、現在日中関係というのは、この間の発言一つをとりましても、あれだけ大きく反発を、そして政府に対するあそこの国民の反発というのはやっぱり相当大きなものだったようですよ。そして、我々の知り合いの人たちが文化人の会合に行っても、やっぱりあの問題で、江沢民さん初め皆さんは日本の立場はわかったということで評価をしてくださいましたけれども、民間の人たちの議論の中では大変実はまたこれが蒸し返されて大きな議論になっておるということでありまして、国と国との関係の中で、私は今調査をするということについては、被害者である中国あるいは中国国民、この感情というものを害するということは、両国関係というものをかえって悪化させていくものであろうというふうに思っておりまして、今私はその環境にはないというふうに考えるところであります。
  114. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 私は、過去にこの問題でちょっと巻き込まれかかったことがある。それは、私がある本を、かなりプロボカティブなものにアメリカに映ったんでしょうけれども書きまして、それに関する集中インタビューで、アメリカ版の「プレイボーイ」という、日本はどんな雑誌かよく知らぬけれども、アメリカの「プレイボーイ」というのはなかなかソフィスティケーテッドないい雑誌ですけれども、そこでシェフというかなりすぐれたライターにインタビューを受けて、いろいろな話をしたついでにこの問題について問われたのです。  私はそのとき、数字のことをたしか言ったはずだけれども、いずれにしろそれはフェイクだと私は言ったのです。それがよく伝わらなかったのは、その数字の部分が外れて出たために、あれは要するに、フェイクという言葉を日本語に訳せば何になるんですか、うそですか、でっち上げですか、虚構ですか。いずれにしろフェイクだと言ったら、アメリカにいるシナ人たち、アメリカンチャイニーズが非常に反発して、訴訟を起こすと言うから、どうぞ起こしなさい、私も受けて立ちましょう、そのかわりあなた方もお金を出して、日本の政府に、私はたまたま与党自民党にいるから、政一府に言って、シナの、中国の政府にも言って、北京の政府にも言って、両方でお金を出して専門家を雇って調査の委員会をつくろうじゃないかというオファーをしたんですよ。そしたら、それっきりぷつんと切れちゃった、ぷつんと。何か非常に唐突にそれで切れちゃった。  歴史というものはやっぱり正確に把握する必要があるし、例えば、あなた今言ったけれども、今そんな状態じゃないと言うけれども、随分時間はたったんだが、だれかが要するに運転を間違って人をひくなり、はね飛ばした。痛い痛い痛い痛いと。それは、自分がはね飛ばしたのは間違いないんだから。だったら病院へ連れていってレントゲン撮って、骨折しているのか打撲で済んでいるのか内臓破裂か、調べたらいいじゃないですか。それがお互いに大人の冷静な認識でしょう。  あなたが一国を代表する日本の総理大臣として、民族の資質にかかわるこういうぬれぎぬというものを着せられかねないそういう問題が提起されているときに、確かに私たちは加害者であったかもしらないけれども、だったら、これからのことを考えて、冷静にこの問題を検証しようというぐらいのことを日本の総理大臣が中国の政府に言えないんだったら、私はちょっとあなたに失望しますないかがですか。
  115. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 中国の政府に申し上げるとか申し上げないということだけではなくて、これは先ほども申し上げたように、この間の問題についても少し説明すれば中国政府はちゃんと理解してくれます。しかし、残念ですけれども、中国の大衆というものがそれを認めてくれなかったという現実があります。
  116. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 それはおかしな話で、やっぱり国民を代表している政府ならば、その政府が、あなたの気持ちはわかる、言うことはわかると言うんだったら、つまり問題の把握を正確にし切れていない大衆というものが、大衆同士のつき合いだってあるんだから、日本の国民、中国の、シナの国民、その国民たちが政府を離れてでも、民間ベースのつき合いの中でも、誤解がないように、国民に対するそれぞれの啓蒙のために科学的な、歴史だって一種の科学なんだよ、科学的な手を尽くしてこの問題を検証しようと。そこで、例えば日本人は三十万ないし四十万殺して、とにかく事実がはっきり出てきたら、それは私たちのまざるを得ない。  しかし、そういう歴史、科学としての歴史の考証、検証を経ていないこの事実を、向こうの大衆が誤解しているからこれを正確に検証していこうということも言えないんだったら、政府の資格ないですな、政治家の資格ないですな。どうですか。だって、お互いにそれだけ冷静に話し合えるんだったら、江沢民さんかだれか知らぬけれども、あなた、江沢民さんに言ったらどうですか、それを。  案外、聞くと、あそこへ案内された民間人が、へえ、三十万と書いてある、本当に。おれあのときどこどこにいたけれども、そんな話は聞いたことないなと言うと、向こうのガイドは、これは違いますと。そういう話も伝わってくるけれども、まあそれはいい、小さなエピソードだから。  しかし、そういう大衆もいるんだったら、あなた、両方の政府の首相が冷静に話し合えるんだったら、今こそ日中両国の将来のために、このどこかに刺さったとげを抜くために、私は何も南京で悪いことしていないと一言も言っていないのです。だったらやはり、どんなことをしたか、何があったかということを正確に浮き彫りにする努力を、それは公的な機関ならなおさらよろしいけれども、それを提唱するのは、あなた、日本の総理大臣の責任じゃないですか、国民に対する。中国の国民に対する責任でもあるし、日本の国民に対する責任でもあるんじゃないですか。それぐらいの歴史自覚をお持ちなさいよ。
  117. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 それはもうあなたのそのおっしゃることについては、私はよく理解いたします。  例えば、韓国にあります、あそこの記念堂なんかがありますね。あの問題なんかも、昔から実はいろいろとこの国会の中でも議論されたことがありますけれども、しかし、事実ともかく十二億という民を抱える国でありますよ。  そういう中にあって、今、政府政府で話し合う、あるいは政府がどうこうするということよりは、もしそういうことがあるとするならば、それこそ民間の中でも、例えば韓国の中でなんかはもう民間といろいろなその話し合いなんかされていきますよ。そして、そういう中で本当の理解というのは深まっておるということでありまして、私は、そういった努力というものを一つずつ積み重ねていくということが重要なことであろう。そして、お互いに本当の真髄に到達するということが大事であろうというふうに考えております。
  118. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 おっしゃることは大変いいんですよ。ですから、今おっしゃったあなたの結論に近づいていくためにも、ここまで来たんだったら、今そういうものを冷静にあなたが提案されたら、私は、むしろ拒否する中国の方が後ろめたくなって、それじゃとにかく調べ直しましょうという合意を得ると思いますけれどもね。それはあなた、やはり日本人に対する責任と同時に、中国の人に対する責任であり、アジアに対する責任ですよ。  私は何も、あそこで日本が悪いことしていないなんて一言も言っていない。ただ、民族の資質を問われかねない三十万というジェノサイドを、当時人口はどうも二十万しかいなかったみたいだけれども、だから、これがこのごろつじつまが合わなくなった。何人かわからない日本人が一生懸命やったやったと言っている。そんな人たちに論を挑みますと、話が変わってきて、南京の中ではなしに、杭州湾に上陸して南京が落ちるまで三十万殺したと。それならそれで話は別だ。だったら、中国大陸全体で私たち、もっとたくさんの犠牲者を出しているかもしらない。  ちょうどこれは、アメリカが日本に原爆二発を投下して、厚生省の調べだけれども、これは厚生大臣、間違いないと思いますが、とにかく今まで、後遺症で死んだ人を含めると三十万、人が死んだ。ほとんど非戦闘員。アメリカは、それを何と発表していますか。一発の原爆で、広島で数万の人が死んだ、非常に効果があったとだけ言っている。彼らは三十万という数字を言うと黙っちゃう。それだって、やはりいろいろな政治的な配慮があるんでしょう。  だったら、大統領が天皇とすれ違いで、こっちが真珠湾に行くから向こうも広島へ行ってお参りしよう、そんなことしなくたっていい。そんなことよりも、アメリカを代表する政治家が、あの原爆二発で瞬時にして何十万の人を殺し、それからプラス後遺症で何万の人を殺して、総計、あの二発の超近代的兵器で何人の非戦闘員を殺したかということを認識するということが、二十世紀といういろいろ功罪あった私たちのつくったこの現代史に対する問責だと思う。  例えば、私も東京の焼けるのを眺めていたけれども、あのルメーが指導してやったじゅうたん爆撃、ドイツもその目に遭ったのだけれども、一晩にして、東京で何人、何万人が死にましたか。全部非戦闘員だ。東海でもみんな死んだ。それで、岡田資という当時の東海軍管区の司令官が、B29から落下傘でおりてきた搭乗員を、国際法違反だといって、要するに非戦闘員の殺りくだといって処刑した。この人はB級戦犯で、ほとんど抗告の余地なく一方的に処刑された。  そういう歴史を私たち振り返ってみると、あなただって私だって、戦争、戦後の経験があるんだから、みんな記憶が薄れてしまって次の世代が登場すると、つまり、もう何かこの姿勢でいくと、括弧つきの三十万の大屠殺が歴史になっちゃうんですよ。  私は、それはやはり歴史の改ざんであって、政治が、意識か無意識かは知らぬけれども放置した。つまり、人間に対する罪だと思うし責任だと思うから、向こうが受けても受けなくても、あなたがこういう質問をされたし、私も本当にもう迷惑千万で、とにかく、それだったらお互いの二つの国の将来のために、どうですか江沢民さん、こういう努力をしてみませんか、歴史も科学じゃないですか、私たちも資料を出しますけれども、お国の方でも出して、冷静な人間を委員に立ててやったらどうですかというぐらいの提案をすることで、私はその余波で羽田内閣がつぶれるとは思わないし、むしろ私は、あなたに対する期待と支持が集まると思うけれどもね。やるんなら、私、新生党へ行ってもいいよ。そうでもないか。それはうそだ。
  119. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 御意見よく承りました。大変重要な御意見として承っておきたいと存じます。
  120. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 こういうのを柳に風というんだな。  とにかく歴史の改ざんだけは、目を背けて許すことだけはしますまいよ。それはやはり民族の一人としての責任であるし、ましてや高い地位にいる政治家としての責任だと私は思います。  この問題については、どうも何かそういうやりとりで切りなく進行しそうなので、一応私の、多分これは国民の声を代表したお願いとして繰り返して、終わります。  次に、このごろだんだん度合いが濃くなってきた言葉狩りについて、ちょっと総理の見解をお聞きしたい。  差別用語というのがありますね。差別用語というのは、一体どういうものをもって差別用語と認識されておりますか。
  121. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 一般論で申し上げますと、何というのですか、言葉によって相手を傷つけてしまうということが一番大きなあれだと思います。
  122. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 その、言葉によって相手を傷つけるということは、確かに差別用語の一つの本質ですけれども、だから、どういうことで相手を傷つけることになるんでしょう。
  123. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今、私、相手と申しましたけれども、相手というよりは、その言葉によって痛みを覚える人たちがある、そういう言葉のことを言うのではなかろうかというふうに思います。
  124. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 例えば、私この前、細川君のときにやったら、あのときは社会党も向こうにいらしたので、きょうはそのやじが聞こえませんが、メンバーもかわったのか同じだか知らないけれども、私は中国のことをシナと言うんです。どうしていけないんですかね。シナと言うなという声が聞こえたから。私にとって中国地方というと、岡山県とか山口県とか広島県ぐらいのことだと思ったんだけれども、日本だって、日本は日本、日の本と言ったって、外国人は、日本を日本と言わないですよ。やはり漢字も読めないからジャパンと言いますよね。  何で日本人がシナ人のことをシナ人とかシナのことをシナと言って嫌なんだと言ったら、揚さんという前の大使がこう言ったな。漢字がよくない、漢字。漢字の当て字が、あの支えるにそれから那と。あれをやめてほしいと言うから、それは本当にそうだ、僕は漢字そこまではわからぬから、あなた方の漢字に対するニュアンスがわからないから、それじゃ片仮名ならいいんですか、片仮名なら結構です。それはそうでしょう、チャイナなんだから。シナ、フランス語ではシノワ、スペイン語ではチノか。そういう日本人だけがシナと言っちゃいけないということも一種の差別だけれども、これはだれが差別しているのか、日本人が自分で勝手に自粛しているのかもしらないけれども、とってもこっけいなことですが。  また、楊大使のその言葉に力を得て、だから私は書き物に全部、北京政府、要するに大陸のことを話しているときは「シナ」と書くのです。「シナ人」と。そうしたら、気をきかし過ぎてかあるいは愚かなのか知らないけれども、私の論文を載せる雑誌社とかあれが、シナは困りますと言うから、いや構わない、おれは責任持てる、楊大使のお墨つきがあるんだからと言うと、やっとこのごろわかってきた。  私は、かつて環境庁の大臣をしているときに、この問題でひどい目に遭いかけたことがあるのです。ほかの方へ移っちゃったんでほっとしたんですけれども、だれかが、とにかく役人の言うことを黙って何でもフン、フンと聞いてやれと、彼らにとってぐあいの悪そうなことは聞いて聞かないふりしてやる。  つまり、何でもかんでもめくら判を押してやって、つんぼ桟敷にいてやることが名大臣だということを椎名さんが言ったというけれども、私は、椎名さんはとてもそんな大臣じゃなかったし、あの人は大官僚、大政治家でありましたが、だれかが何かいつの間にか、お役人の方がそういう大臣の方が都合がいいからそういう風聞を流布して、これはなりたての大臣、気をつけた方がいいですよ、あなた方。諸君、絶対につんぼ桟敷にいちゃ  いけない、絶対にめくら判を押しちゃいけない、あなた方は国民の代表なんだから。  私はそう思っていたから、だから、そんなものは男のやる仕事じゃないと言ったら、まず一つは、フェミニズムが台頭しているころだから、男の仕事とはだめだと。そのころは女の大臣はいなかったのでね。これは女の人だってそうだ。赤松さんにしたって、もう一人何とかという人だって、浜四津さんか、あなた、やっぱりそれはめくら判を押して、つんぼ桟敷にいるのが女性のすぐれた大臣では決してありませんぞ。だから、私はそのとき、そんなものは男の仕事じゃないと言ったら、第一、それは女に対する差別だと。これは確かにちょっと、だから人間のする仕事じゃないと言えばよかったのです。政治家のする仕事じゃないとね。  だけれども、つんぼ桟敷とかめくら判というのは何でいけないんだと言ったら、私を非難した社会党のあるなりたての、後で仲よくなりましたけれども、その相手の議員が、やはりめくら判なんていかぬ、目の不自由な人に気の毒だ。じゃ何と言うんですかと言ったら、目の不自由な人が押す判こと言えと言う。それは、とてもじゃないけれども時間がかかるし、日本の言語文化の一つの特質は、物事を縮めるんだ。ショートンするんだ。だから、ベースアップのことをベアと言うんだ。それからサラリーマン金融のことをサラ金とも言うんだ。  一事が万事で、そこがやっぱり日本人の一つの言語に対する特質だけれども、そういう伝統の結果できた言葉というのは、私はそれを撤回するつもりはないと言ったら、委員会がとまつちゃったのです。そのうちに、どこかの週刊誌、週刊朝日かな、それが引き受けてくれて、私を弁護したらそつちの方へ攻撃がいっちゃって、後どうなったかわかりませんけれども、私はやっぱりいまだにめくら判とかつんぼ桟敷という言葉を使いますよ。  この間、私の友人の筒井康隆君という一種のSF小説を書く非常に人気のある作家が、彼のブラックユーモアを書いたある小説が教科書に載る載らないの問題で結局阻害されて、こんなことだったらおれはもう小説を一生書かぬと言って、違う名前で書くのか書かないか知らないけれども、今のところ断筆している。一人の資質のある芸術家がそういう言葉の、要するにおかしなトレンド、ヒステリアに巻き込まれて物を書かなくなる、つまり抗議するために断食をするということは痛ましい話で、私はここで文学論をするつもりはありませんけれども、ちょっとこのごろそれが目に余る。  この間、私はあるテレビに出た、スポーツの番組で。そしてそこに、題材はヨットの世界レースのあれだったけれども、同じような競技で非常にすぐれた資質を持っている、私は知らなかったのだけれども、日本で初めて世界の選手権でオートバイで優勝した、もう引退しましたけれども、その人が来ていた。そして、引退した後は自分は道場をつくってやっているんだと言って、その経歴が書いてあって、それをアナウンサーが二輪道場と言ったんだ。そうしたら、二輪道場ではない、正式な呼び名は二輪道場ですと、なかなか凝っている。その後で、あのとき冷やっとしましたと、スタッフたちが。あれがもし、フォーミュラなりインディなりで、そういう四輪の車で優勝した人が後輩を育てようということで、四輪道場という道場をつくってそれを四輪と呼ばしていたら、テレビでも早速やってきますな。  四つという言い方があるのです。これはかつて解放部落の人たちがいろいろな惨めな思いをして、これは本当に気の毒だとは思うけれども、そこで、だんだんそれが、何というんでしょうか、拡散していって、つまり、四つ足の四つという言葉が言えなくなった。  では数を勘定するときどうするんですか。一つ、二つ、三つ、そこだけ四というんですか。一、二、三、四、五、六ならわかる、物の番号で。ただ、勘定するときに一、二、三、四とは言えないでしょう。これは、そこで四だけ飛ばして言うということもおかしなことだし、そういうトレンドがどんどんどんどん濃くなっているのですよ。  それで、例えば、皆さんの中に、ドストエフスキーの愛読者いらっしゃるかもしれないけれども、羽田総理、ムイシュキン公爵とラゴージンという対照的な男が出てきて、ナスターシャという女性をめぐっての三角関係のあの小説、何と言います。
  125. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 「白痴」です。
  126. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 大変あなたの勇気ある発言に感謝いたしますけれども、白痴と言っちゃいけないの。それではドストエフスキーの作品これから訳すときどうやって訳すのですか。イディオット、イディオッタ、韓国語もシナ語も全部日本と同じ漢字書いていますよ。それから、英語だってフランス語だってみんなそうですよ。日本だけ、ドストエフスキーの、人間の財産として要するにオーソライズされているあの傑作の小説を新版で翻訳して出すときに、何てつけるんだろうね。本当に困っているらしい、みんな。  こういうばかな現象を私は非常に野蛮で非文化的だと思いますけれども、図書館のスタッフでもいらしたし、文化を一応担当している、本当は内閣全体の問題だけれども、文部大臣、いかがお考えですか。
  127. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 今のドストエフスキーの件につきましてどうすればいいのか……(石原(慎)委員「いや、違う違う。このトレンド、この全体のヒステリア、言葉狩りの」と呼ぶ)では、差別用語についての基本的な考えを申し上げますと、差別というのは……
  128. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 そんなこと聞いているんじゃないのよ。あなた、いつもあなたの答弁を聞いていると模範少女みたいでだめなんだ。要するに、こういうわけのわからぬ不必要な言葉狩り、これは非常に野蛮でまた非文化的だし、ドストエフスキーの「白痴」という小説を「白痴」として出版しにくいみたいな、この時代の混乱というのをどうお思いですかと聞いているのです。好ましいですか、好ましくない、仕方がない……。
  129. 赤松良子

    ○赤松国務大臣 仕方のない面もあると思います。といいますのは、差別用語というのは、差別される身になって考えますと非常に深く傷つけられるわけでございまして、傷つける方は気がつかない、そして傷つけられる方は深く傷を受けるということは非常に多いわけでございますから、そういうことを気をつけて使うということは悪いことではない。しかし、もちろん、一方、表現の自由だとか思想の自由とかあるわけでございまして、それを守るということも大事なことだと思いまして、そのバランスをどの辺でとるかということになろうかと思います。
  130. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 全然だめ、非常に非文化的な答弁で。  それじゃ、文化人の代表らしい柿澤さん、あなたどう思う、外国通の。
  131. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私、所管でございませんので個人の感想で申し上げますが、今文部大臣もおっしゃいましたように、自分の責任でなくいろいろなハンディキャップを負っている方々について、そうでない人たちが思いやりを持つということは、やはり温かい社会をつくる上では大事なことであろうかと思います。その点で、最近そういう傾向が強まっているということは石原先生御指摘のとおりでございますが、さりとて歴史的ないろいろな表現というのがございますし、そういうものを全部否定していいのだろうかという点については、私もいささか疑問なしとしないと思っております。
  132. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 芸者さんの手踊りに有名なレパートリーがあったのですけれども、このごろそれはさすがにやらなくなっちゃった。それは三人かたわというのですよ。それは見ているとコミックだけれども、やっぱりあれは不自由な人が見たらちっともいい気しないと思う。目の悪い人は見えませんから、もちろん。ですからこれは自粛されて当たり前だと思いますけれども、ドストエフスキーは自分の「白痴」という、ロシア語でも白痴と書いてあるんだけれども、それが違う題で、頭の悪い人というのかな、頭にハンディのある人、何か知らぬけれども、そんな訳で出されたらどう思うだろうね、これ。これはドストエフスキーだって私は被害者だと思うのですよ。  それで、このごろはひどくなって、塗装業のことをペンキ屋と言っちゃいけないんだ。ペンキ屋さんならいいんじゃないかね、ペンキ使っているんだから。おまわりさんのことをおまわりさんと、おまわりと言ったらやっぱりおまわりさんを侮べっしているような感じがするけれども、おまわりさんと言ったっていいでしょう。  私は、殊さら肉体的なハンディキャップを持っている人を侮べつするような表現というのはよくないと思いますよ。しかし、物の勘定をとにかく一つ、二つ、三つ、四つとできないみたいな、何というのかな、そういう規制というのは非常に非文化的だし、例えばかつてそういう表現で呼ばれて傷ついた人たちだって、私はそういうトレンドというのを望んでいないと思うんだ。  ですから、日本人というのはとにかくそういう点でヒステリアで、私はこれは非常に不健全だし、筒井君もそういうものにプロテストしてみずから筆を折るという宣言をして我慢をしておるのかもしれないが、これは文学者にとってはやはり一種の断食ですよ。これは、私はここで文学論をするつもりはないし、それは強者の居直りだなんと言う人もいるけれども、しかし、私はそういうものまで誘発している、今日このある意味での言語の混乱、これはやはりゆゆしき問題だと思いますよ。最高責任者の総理として御見解を伺いたい。
  133. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これはもう私も一つの御見識であるというふうに理解をいたします。やはり言語というのは一つの長い歴史の中から生まれてきているということであろうと思っておりまして、やはり一国の文化のなしたものであろうというふうに思っております。ただ、先ほど柿澤さんからも言われたと思いますが、人をいわゆる差別した言葉によって傷つけられる、やはりこの人たちの立場を考えるということも大事でしょう。それと、やっぱり表現の自由というものも大切であろうと思います。  ただ、この問題についてはやはりなかなか行政がどうこうというものではないというふうに思っておりまして、こういった問題は大いに議論していただきながら、私なんかでも、テレビなんかで発言したときにふっと切られたり何かすることもありまして、あなたほど語彙はないのですけれども、それでもよくやられまして、しかし、その言葉を使わないとなかなか表現できない場合があって困っちゃうことがあるんですね。今お話は、よく私も理解することができます。
  134. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 あなたがおっしゃるように、こういう文化の問題に余り行政が、要するに開放なり規制なりそういう形で踏み込んでくるのは私はいいことじゃないと思いますけれども、ただ、やはり政府政府で文化に対する責任を、マルチな配慮というのをしなくちゃいけない。その文化の、まあ言ってみれば一つの大きな要因である言語というものがこういう形で不必要な制約をされ、非常に混乱し、また危険な傾向にあるということをやはり閣僚の皆さんにも認識していただきたい。  だから私は、あなた方が役人に向かって、おれは絶対めくら判つかぬぞと、別にそこで強いてそういう表現をしていただかなくて結構だけれども、おれをつんぼ桟敷に置くなよと、そういう表現されなくても結構だけれども、ただ、やはりいろいろな点でその制約を、政治家は一番焦点にさらされるから物を言いにくいことになっているけれども、同時に、やはり言語で仕事をしている人たちも非常に痛痒を感じているということを政治家全体が認識して、ちょっと私は今のこの傾向というのは病的だと思う。やはり文化が成熟するのは結構ですけれども、病的に成熟していくと、それは成熟じゃなしにやはり衰退ですよ。それをひとつ皆さんに認識していただきたいということをお願いいたします。  次に移ります。  行政改革、そしてディレギュレーション、規制緩和は大変結構なんですけれども、役所があげつらって出してくるものを見ると、余り役所にとってエッセンシャルなものはないんだね。つまり、省益を別にお役人が考えるのをけしからぬとは言わないけれども、省益が非常に偏重される政治というのは、過去の自民党政権、今新生党に移られた方々も含めて、柿澤さん、何党というんだったっけなこのごろたくさん出てきているからわからないけれども、そちら側にいらっしゃる方を含めて、かつて自民党に属した人たちの責任だ。  だけれども、私は、やはりあなた方がやらないなら、自民党は再生を期してこの問題を本気で、要するにラジカルにでもやろうと思いますが、どうも提出されてくるアイテムを見ますと、省益にはかかわりないけれども、つまり一部の国民の利益になるけれども、一部の国民には不利益になるかもしらぬような、そういう問題ばかりが優先されて出てくる気がしてならない。私は運輸省にいたので、余り運輸省の事項を取り上げたくないのですが、しかし、逆にあえて申し上げるのですけれども、これ、委員長いいですか。ちょっと参考資料で……
  135. 山口鶴男

    山口委員長 配るわけ。
  136. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 いや、配るというか、ちょっと総理に見ていただきたい。
  137. 山口鶴男

    山口委員長 いいですよ。
  138. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 それは、このごろユーザー車検とか何とか車検というのができてきまして、そこで出た、要するに車検は通ったけれども、今の限りでは通しますが、このブレーキはもうあと一、二カ月しかもちませんよ、二百キロ走ったら摩滅して事故を起こしますよと言うんだけれども、車検を通っちゃったら、次の二年間やっぱり大丈夫だろう、お上が、とにかく国家が資格をつけてくれた、クオリファイしてくれたのだから大丈夫だというのが大体国民の、まあ一般的な感じですよ。それで、その人はその後事故を起こした。そして、三百万払わざるを得なかった。  私は、いいんですよ。確かに今の整備工場がリーズナブルな仕事をしているとは思えない節が多々ある。余計なことをやって車検通すためにべらぼうに金がかかる、これを節約したらもっともっとお金が浮くというのを大前研一君なんかしきりに言ったけれども、必ずしもそうではない。  私は調べてみると、日本の車両の不整備による交通事故というのは、交通事故の総体というのはかなりふえてきたけれども、何と世界で抜群に少なくて、車両の不整備による交通事故というのは〇・〇二%なんですね。あとは二一%とか五%とか、とにかく桁が二つぐらい違うのです、二つも三つも。  私は、ユーザーの負担というものを整備について軽減することは結構だと思います。前までは一年ごとにやっていたのですから、ある年月たった自動車は。だけど私は、大体日本人のメンタリティーとして、国が保証してくれたんだから大丈夫だろうという、非常にお上に対する依存心が強い。  例えば、これも運輸省の例を挙げて申しわけないのだけれども、私はとにかく政治家になる前から反対していたのですが、果たせるかな、結局事故になったのは1小型船舶操縦士という法律がある。こんなものつくらなくてよかったんだけれども、つくっちゃった。そしたら、またそれを繁雑にして一級から四級に分けちゃった。すると、新しく船を買う人が何を言っているかというと、おれ一級取った、おまえ何級、おれ二級、何だ二級か、三級か。一級ならよっぽどシーマンシップが、シーマンシップというのは船の操船技術のことです。それがあって、とにかく海へ出ても何でもない、そういう錯覚を持つ。何しろとにかく天下の運輸省が一級を下さったんだからと。  ところが、それでいてばたばた死ぬんですよ。シーマンシップなんてそんなものじゃない。そんなもの全然持ってない漁師の方が、漁船と違ってその船をやらせたって、このごろは漁師も堕落して、何か知らぬけれども遊漁船でやっているからちょっとしけてくると帰ってくる。だけれども、とにかく、むしろレジャーのボートのユーザーの方が勇敢なところがあるんだけれども、それは勇敢で済まなくて一族全滅したなんてケースがたくさんあるわけです。  私はちょっとそれに似ていると思うのは、この自動車には非常に欠陥があってもうじきそれが露呈してきますけれども、今現在走れますから、国は一カ月、ニカ月先の責任は持てませんけれども、とにかくまあ車検は通しましょうと。それで結局その人はぶつけて三百万、とにかく、どういう形で払ったか知らないけれども、そういう事故を起こした。それ以上のことを申しません。  これはユーザーにそういう責任感を持たせるというけれども、その具体的な策がどこまでどうなっているかよくわからないが、たまたまこの例を一つ挙げましたけれども、総理、省自身が痛みを分かたぬ、つまり、結局痛みも得も国民に頒布されて、担当役所としては痛くもかゆくもない、そういうディレギュレーションだったらやる必要ない。まあやるにこしたことないかもしれないけれども、やはり相当考えなくちゃいけないと思うし、この新しい車検制度が徹底して、今世界に比べて〇・〇二%しかない不良整備の車の事故が一桁、二桁あったら、だれが責任とるのですか。運輸省の責任じゃないでしょう、これ。やはり政府の責任全体になりますよ。  昔、こんなことがあった。福田さんの時代に、私、政調にいたのだけれども、トラックの過載が、非常に積み過ぎがひどくて事故が起こる、急にふえた。それで何とかしろということで徹底して取り締まろうということで、特に東京と大阪のメガロポリスを結ぶ東名なり東海道が問題になった。それで、そこで徹底してやったら確かに事故は減ったんですよ。そしたら物価が上がっちゃったんだ、流通が抑えられちゃったから。  福田さん、非常に物価に敏感な人だったから、何とかしろというまた御質問があって、どうしようかということになって、それじゃ抜き取りでやって、静岡県でやったら神奈川県で抜いて、東京でやって、一県ごととにかく手を抜いたらどうだなんというばかな案が出て、苦笑いで、その結果はどうなったかわからぬけれども、そういうことで追いつかない。これはやっぱり、もう生命にじかにくることですからね。  だから、繰り返して申し上げるようですけれども、今世界に比べて〇・〇二%しかない車両不整備による事故というものが例えば一%なり二%にはね上がったときに、そこで棄損される生命というものはもう取り返しがつかないので、これはどういう足かせ手かせを加えるか知らないけれども、ユーザーの責任ということは結構ですが、その措置をきちっとしていただきたいというお願いと、これは具体例でありますけれども、繰り返して申しますが、つまり省益を損なわない形で、整備工場をやっている人なんて零細企業ですよ。それから、それで事故を起こすかもしらないユーザーは一市民ですよ。そういう人に損得が還元されて、役所は全然関係ないみたいな、そういうデレギならもうやめてもらいたい。それを繰り返してお願いして、総理の見解を聞いてやめます。
  139. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 確かに、整備というものが数が少なくなるということによってそういう問題が起こってくることがあろうと思います。  ただ、もうこれは石原委員が一番あれでございましょうけれども、日本の場合には、余りにも役所が一々一つのチェックをするということの中で、自立心といいますか、みずからが責任を負うということがなくなってしまっておるということ、これもやっぱり考えなきゃならぬことだろうと思います。  それと、今お話があったように、省益というか、役所が痛まないで、そんないわゆる規制緩和なんかないよと。やっぱり役所自身だって痛まなきゃならぬ、これもやっぱり重く受けとめなきゃならぬ言葉だと思います。
  140. 石原慎太郎

    ○石原(慎)委員 わかりました。  終わります。
  141. 山口鶴男

    山口委員長 これにて石原君の質疑は終了いたしました。  速記をとめておいてください。     〔速記中止〕
  142. 山口鶴男

    山口委員長 速記を起こして。  次に、相沢英之君。
  143. 相沢英之

    相沢委員 相沢でございます。  本当に久しぶりにこの予算委員会質問に立たしていただくわけでございますが、自民党も野党になりましてからいいこともあるので、今まではなかなか質問の機会を与えていただけませんでしたけれども、きょうは、そういうことでお許しを願いまして、主として経済財政問題について、幾つかのテーマについて伺いたいと思います。  私は、こうやって立って閣僚席を拝見いたしておりますと、同じ自民党におられた方が十人ほどもおられますし、どうも昔からの仲間のような気がいたしますから、私は、別にここで今の内閣の方々をつるし上げようという気持ちではなくて、ただ、現在の経済財政状況を見ますと、どうしても皆さん方にいろいろとお考え願わなくちゃならない問題が多々ございます。そういう点について率直に御質問をし、意見を伺いたいと思いますので、どうも時間は限られておりますから、私も質問も簡潔にいたしますが、御答弁もひとつぜひ簡潔にお願い申し上げたいと思うのでございます。  最初は、景気対策でございます。  長いこと不況が続いております。イザナギ景気が昭和四十年の十一月から四十五年の七月まで五十七カ月続いた後は、どうも景気の波というものが、いろいろございましたけれども、余りいい時期はない。そして、このたびの不況の始まりは、平成三年の四月からと言われますので、相当長い間続いているわけであります。この経済の現況が果たしてどのくらい続くものか、景気が回復してくるのはいつごろなのかということについて、ひとつ率直に見通しを伺いたいと思うのであります。
  144. 寺澤芳男

    ○寺澤国務大臣 お答えいたします。  現在、やはり企業収益が引き続いて低下している、あるいは設備投資も低下している、そして円高がこれまた追い打ちをかけているということで、大変に景気が低迷をいたしておりまして、引き続き経済企画庁としては、諸情勢をよく見ながらこの景気の低迷、底入れの状態を観察していきたい、こう思っております。  それから、先生のおっしゃった、いつごろかということにつきましては、今のところ少し明るい兆しが見え始めてきたのでありますが、なかなかつかめないというのが現状であります。
  145. 相沢英之

    相沢委員 平成五年度の経済の見通しにおきましては、実質経済成長が三・三%というふうに見積もられておりましたが、まだ確かな見込みではありませんけれども、どうも到底一%にも達しない、〇・二%程度ではなかろうかという数字をいただいております。そして、平成六年度は二・四%という当初の見込みになっておりますが、どうもこの二・四%という実質経済成長を達成することは、現状では到底困難ではないかというふうに私は考えております。  と申しますのも、平成五年度の実績を根拠としてこの平成六年度を考えますと、いわゆるげたであります、平成六年度の当初におけるところの平成五年に対しましての実質経済の成長分は、わずか〇・三%というふうに聞いております。といたしますと、年度で二・四%の経済成長を実現するには、年度末においては恐らく実質四%程度の成長がないと実現はできない。果たしてそのようなことが可能かどうか。  私は経済企画庁に、経済の見通しにおけるこういう数字の意義をあわせてお聞きをしたいと思います。
  146. 寺澤芳男

    ○寺澤国務大臣 先生御指摘のように、二・四%というGDPの成長ということにつきましては、決して容易な数字ではないと私も考えます。いろいろな民間の研究所がまた違った数値を出しているということも、よく承知をいたしております。  ただ、これから、今まで平成五年度に政府が施策として実行しておりました、例えば住宅政策あるいは大規模な減税、これらが国民の投資、公共投資、それから住宅建設をも含めて一般的な投資、これの喚起をいたしますし、それから個人消費の喚起をいたしまして、結局、平成六年度の残された日月で何とかこの目標を達したいというふうに考えておる次第であります。  先生もう一つの御質問の、その持つ数字の意義でありますが、あくまでもこれは、経済の見通しとして、いろいろな数値をもとにして科学的に精査そして分析して、考えられる一つの推測というふうに私は考えております。
  147. 相沢英之

    相沢委員 平成六年度の経済の成長に関しまして、おっしゃるように民間の各機関は非常に低い見込みをいたしておりまして、一%を超える見通しを示しているところはほとんどないと思います。この民間の経済機関の見通しということについては、おっしゃるような意味だと思いますけれども、しかし私は、やっぱり政府として経済の見通しを、これは閣議で決定しているということになりますと、この経済成長の数字も決して単なる見通しということではなくて、政府としてはその数字、経済成長について言えばその成長に近づけるべく各般の施策を集中して努力をする、そういう意味を持った数字ではないかと思いますが、その点についてどうお考えですか。
  148. 寺澤芳男

    ○寺澤国務大臣 先生御指摘のとおりだと思います。  先ほど答弁させていただきましたように、政府が今まで立ててまいりました総合経済対策を初めとして、その達成のためにやはり着実に努力を傾けるべきだと思いますし、そのようにやってまいりたいと思っております。
  149. 相沢英之

    相沢委員 今企画庁長官から答弁がございました点について、総理、いかがお考えですか。
  150. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私も今長官がお答えしたとおりだというふうに考えております。
  151. 相沢英之

    相沢委員 私もそういう意味を持つ数字だというふうに思います。では、それに対応するような政策が果たして行われているかどうかということが問題になるわけであります。  他面、私が経済のこういう状況を特に取り上げて問題にしておりますのは、例えば雇用の面であります。雇用の面についていいますと、今、ことしの三月で完全失業率が二・九%、求人倍率は〇・六六倍ということでありまして、例えば昭和四十五年の完全失業率は一・二%、あるいは有効求人倍率が平成元年では一・四三倍でありましたが、そういう数字から見ますと、完全失業率では倍以上になり、有効求人倍率ではまた倍以上になっているということでありまして、雇用の面で非常に軽視できないような状態が既に始まっているのじゃないか。  私は幾つか雇用の点についての、これは主として新聞等の情報でありますけれども、申し上げておきますと、例えば雇用調整でありますけれども、NTTは二十三万三千人の従業員の中で五年の十月から一般職を対象に一万人の希望退職者を募集する。あるいは新日鉄は五万三千三百人の従業員のうちから、これは昨年の十月二十九日でありますけれども、八年度末までに管理、販売、研究開発部門四千人、生産部門で三千人を削減をする。それから、日本鋼管は従業員二万三千人につきまして、これはことしの一月二十六日の発表でありますけれども、八年度末までに四千五百人の削減を実施する。これは現在雇用している人たちの、これは一、二の例でありますけれども、相当な数の人たちが離職しなければならない。  それからまた、最近五年間におけるところの新規大学卒業者の就職状況を見てみますと、これは文部省の調査でありますけれども、平成五年におきましては、大卒は就職率は七六・二%、それから短大で就職が七九・八%という数字でありまして、従来の数字は申し上げませんけれども、相当従来に比べても厳しい情勢にある  それから、各種の新聞を見ましても、例えば「女子学生就職戦線 採用ゼロ、抑制続出 厳しさ昨年以上」、これは来年春の卒業生の問題であります。あるいは「中高年の再就職厳しく」、また主要五十社の新卒の採用計画を見ますと、前年よりもふやして採るというのは四社しかない、こういう状況であります。あるいはまた、少し面が変わりますけれども、「予備校異変」ということで医学部、歯学部のコースに女子が殺到する。つまり女子の学生の就職が大変難しくなっているので、手に職ということで医科、歯科あるいは薬学部のコースを選択する者がふえている。  こういうことの反面に、また、例えば都の職員の採用試験でありますけれども、七百二十五人を採るのに対しまして二万三千三人、つまり倍率でいうと三一・七倍が応募をしている、こういう情勢であります。  私は、いろいろと不況に伴うところの経済的なあるいは社会的な現象があると思いますけれども、特にこういう社会的な現象に対しては、とてもこれはほっておくことができない状態に既にあると思います。そういう点について労働大臣の所感と、これに対してどういうことを対策としてお考えなのか、あわせてお聞きいたしたいと思います。
  152. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 相沢先生がいろいろ御指摘になられましたことは、すべて現実に起こっていることでございまして、そのすべてにできる限り有効な政策手段をもってこたえていかなければならないと思っております。  まず一般的な言葉で申し上げれば、四月の有効求人倍率は〇・六六のままではあったのですが、分母である有効求職者数はふえているのですね。それから、分子である有効求人数の方は微減をしているわけですね。ですから、数字としては実際には悪化するのですが、四捨五入の関係では〇・六六にとどまっているという程度でございます。  しかも先生御承知のとおり、雇用に関する指数はいわゆる遅行指数でございますから、今景気に明るみが出たとしても、直ちに雇用情勢が一転してよくなるという、そういう状況にはなくて、大分おくれてまいりますので、先生が御心配されておられます来年三月の新卒の方の就職というのは大変大きな問題でございまして、特に女子学生につきましては、より一層厳しさが予想されております。今の「予備校異変」という新聞記事、私も読ませていただきましたが、あれもいわゆる一般職、事務職を採用ゼロにするというような企業が非常にふえてきております関係で、そういう現象が起きていると思います。  ところが、そんなことも踏まえまして、総理大臣から、女性の能力というものをうんと引き出すようなことを考える場合には、来年の女子学生の就職については特に意を用いるべきであるということで、総理を中心として、官房長官、通産大臣、文部大臣、そして私で閣僚の懇談会をつくりまして、あすも第二回目を行うようにいたしております。  実は男女雇用機会均等法の指針というものを変更いたしまして、相当厳しい内容にいたしたわけでございます。女子に対して不利益な取り扱い、例えば資料を送れというのに送ってこないとか、あるいは女子だけ筆記試験をやって男子は筆記試験をしないとか、そういうような例もありますので、これは都道府県のそれぞれの婦人少年室の方に特別相談窓口を設けるというようなことでもやっております。  特に新聞報道に、何とか株式会社が来年の春の女子の採用をゼロにしたという、こういう活字が目立つわけでございますが、これは実は男何名、女何名というような、そういう募集は新しい指針によって禁止をされておるわけですから、いわゆる事務職というのか一般職がゼロだというと新聞の方はそれを女子がゼロと、こういうふうに書くような実態もありまして、この辺はより一層厳しい運用をしてまいりたいと思っております。  先生いろいろと御指摘されましたけれども、例えば大手の企業で人が余っている。これはそれぞれの企業が大変な過剰感を持っているわけですが、どういう年齢であるかというとちょうど私のような年齢で、戦後のベビーブームに生まれた私たち、先生が私の父とのおつき合いでよくうちにお見えになったころにちょろちょろしておった我々の年齢が、ちょうど今ホワイトカラーとして四十五というような年齢で一番人が過剰になってしまっておるわけです。そういう方々が失業しないで済むように、例えば出向するとか教育訓練とか一時休業でまた戻れるようにということで雇用調整助成金の拡充をいたしておるわけで、その辺が昨年の十二月に策定をした雇用支援のトータルプログラムということで一生懸命やらせていただいておるわけでございます。  また、そういう今後のホワイトカラーに対する新しい政策としては、例えばでございますが、前も中川秀直先生から御指摘がありましたが、予算が通るとできる仕組みでございますが、ある企業が、ちょうど我々のような年齢の者が将来のために一時的に研修に出る、そういう有給休暇を認めるような企業には奨励金を出すとか、ありとあらゆることを考えてはおりますけれども、大変厳しい雇用情勢であることは基本に認識をしておかなければならないと思っております。
  153. 相沢英之

    相沢委員 大変御丁寧な御返事でありましたけれども、ちょっと時間が限られておりますので、簡潔にお願いを申し上げたいと思います。  ところで、日本の経済にとりましてもう一つ大きな課題は、国際収支の黒字、特に貿易収支の黒字であります。この国際収支、特に貿易収支の黒字について、平成五年度の実績、それから平成六年度はどの程度になるかということを考えておられるのか、御返事を願いたいと思います。
  154. 小林惇

    ○小林政府委員 三月四日に閣議決定を見ました平成六年度の見通しに基づきますと、平成五年度の実績は貿易収支で十五・四兆円程度の黒字、それから平成六年度の見通しにつきましては十五・〇兆円、十五兆円程度の黒字となっております。
  155. 相沢英之

    相沢委員 貿易収支の黒字が大きくなっています原因は、円高にもかかわらず輸出が堅調で、実質的に円表示では若干減っておりますけれども堅調であること、あるいはまた輸入につきましては、石油消費の合理化が図られている、あるいは、これは円高の要因も非常に響いているわけでありますけれども、オイルの値段が非常に低迷をしている、いろいろな要素はあると思います。  しかし、特に貿易収支の黒字については日米間におきましても大きな問題となっていることは、私が申し上げるまでもない。日米の間における経済交渉におきまして幾つかの問題点が取り上げられ、例えばその中におきまして、内需振興ということで公共投資の拡充が言われ、あるいは独禁法の改正あるいは大店法の改正等々が言われてきておるわけであります。  この日米の貿易収支の黒字につきましては、私は、日本側としても十分な言い分がある。つまり、アメリカの製品が売れないということについての原因をこちら側のみに求めるということは、これは不当であるというふうに考えておりますが、いずれにしても、現実の外交問題としてこれが大きく取り上げられている以上、放置することができないというふうになっているわけであります。  この点につきましては、総理も外務大臣として御苦労をなすったところでもありますし、またこれからも、日米の間の経済外交関係がなかなか思うように進展をしないということの大きな原因でもありますので、この点についてどのようなお考えを持って対処されるおつもりか、総理大蔵大臣からお話を伺いたいと思います。
  156. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 この点につきましては、今お話があったとおりでありまして、日本の経常収支が黒字になるというのは、日本の製品というのがやはり各国から求められたということもありましょう。そしてまた、日本の方の場合には、確かに不況によって高級なものが買われなくなったというようなことなんかも一つの原因にはなっていることがあります。  ただ問題は、恒常的という言葉はどうかと思いますけれども、やはり相当長い間黒字が日本は一方的に高い割で続いておるというところに問題があるわけでございまして、このためには日本としてでき得る対応というのを積極的にやはりやっていくことが必要であろうということで、規制緩和等の対応をしようということですとか、あるいは予算面におきましても、あるいは税制面におきましても、金融面においても輸入を促進する方向に持っていこう。しかも、そのことが結局国民の生活というものを向上させることにつながるんだという考え方を持ちながら対応しようということでやっておるところであります。  いずれにしましても、我々としても、これはただアメリカというだけではなくて他国にも黒字が、合計で千三百億ドルなんという大変高いものになっておるということでありますから、これに対してやはり我々としても積極的な対応をすることが必要であろうというふうに思っております。
  157. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 私も、ただいま御指摘のように、一国が長い間恒常的に経常収支の黒字を続けるということは、その国のためにとっても世界のためにもよくないと思っております。  したがいまして、今総理も言われましたように、また相沢委員も御指摘のように、いろいろな構造的な問題があるほか、やはり景気循環のサイクルのずれというか、日本の経済が必ずしもいい状態にないというところに来ていることも事実でありますから、全力を出して内需拡大政策等を推進してまいりたいと思っております。
  158. 相沢英之

    相沢委員 なかなか政府としての対応を考えられても思うように進展しないということは事実でありますけれども、しかし、といって放置することができない状態であるとすれば、何らかの実行し得る、かつ効果ある対策を考えていかなければならない、このように思います。  そこで、輸入の数値目標の設定ということにつきまして、今どのような外国との交渉になっているのか、あるいはまたこれをどのような考え方で対処されるのか、まず通産大臣にお伺いしたいと思います。
  159. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 御案内のとおり、数値目標の問題をめぐりまして、とりわけ日米間における経済摩擦という大きな問題が横たわったわけでございますが、いわゆる管理貿易的な要素を含む危険性のあるこの数値目標につきましては、やはり何としてもこれを排除しながら自由貿易体制の中で健全なお互いの経済発展を期していく、かような原則に立って、幸いに先般来、ようやくその辺につきましての協議再開ということになったわけでございますから、この姿勢を堅持しながら事柄を解決していかなければならない、かような立場に立っておるわけでございます。
  160. 相沢英之

    相沢委員 外務大臣にひとつ。
  161. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 先般、日米包括経済協議再開にこぎつけるに当たりましても、客観基準についての考え方、日米でできるだけ調整を図りました。その中で、数値目標は設けないということで合意をいたしております。客観的な基準の中には定性的なものと定量的なものが入るということは両者で合意をいたしましたので、その定量的な基準というものが数値目標にならないよう、今後それぞれの分野で交渉担当者にお願いをしていきたいと思っております。
  162. 相沢英之

    相沢委員 いや、そこが問題なんでして、数値目標は示さないといいながら定量的、定性的な一つの基準というものを示す、これは新聞などにも言われているわけですよ。それを私はそのまま受け取るわけじゃありませんが、定量的な基準というものを示すという、そういうところのラインに乗っかっているうちに、いつの間にかそれがまた数値目標というものになってしまう、すりかえられちゃうような。これは日米間の交渉においてはそういうことが今までもありました。ありましただけに私はその点を心配するのですけれども、重ねてその点について、今、特に定量的なことについてお話がありましたから、外務大臣、そしてまた総理から御返答を伺いたいと思います。
  163. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 これは、昨年の七月の東京サミツトのときの宮澤・クリントン会談で合意をいたしました客観的基準というものの解釈に関する問題でございます。その意味で、定量、定性、両方を含むということまでは合意ができましたが、アメリカ側には、ある意味では結果重視という考え方が強うございます。その点は事実でございます。  ただ一つ、幾つかの基準を総合して判断をするということで合意はいたしておりまして、その中の特定の一つの基準、例えば定量的な基準だけをとらえて我々の市場開放の努力を評価するようなことはないというところまで合意はいたしておりますので、そうならないように期待をいたしております。
  164. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今相沢委員が御指摘があったこと、これをまさに私たちも心配したということであります。  先方では、決してターゲット、いわゆる数値目標にするものじゃないんだ、しかし、過去のトレンドをずうっとこうやって延ばしていく、これを一つの判定基準にしたいという話がありました。私がそのときに言ったことは、今御指摘があったように、過去のいろんな協定というものを見たときに、例えばこれは民間がやったにもかかわらず、いかにも約束をした、公約をしたというような形になってしまって、それによって日本は不誠実であるとか、あるいはこれに対して制裁を加えなきゃならぬという議論になったんだと。だから最終的に、こういうもので、トレンドでこうやって見るだけだと言うけれども、結局は、これは数値目標になっちゃうということになるので、これはだめですよということで、私どもとしてはしつこくしつこくお話しした結果が、二月十一日未明の不調に終わったということであります。  しかし、先方も日本がどういうことに懸念しているのかということは、お互いにマラケシュその他での話し合いの中で、また、柿澤大臣電話等でも何回も話し合っておりますように、そういう中でそういうことについての理解というのが大きく深まってきたということで、新しいステップに今入ろうとしておるということであります。
  165. 相沢英之

    相沢委員 数値目標というようなものを要求すること自体に自由貿易を標榜しているアメリカにとっての大きな矛盾があると思いますし、また、ガットの精神上問題でありますから、私はぜひ、これは日本の国内の経済のあらゆる面に大きな影響を及ぼす問題であるだけに、ひとつその点はしかと交渉に当たりましてその考え方を明らかにし、また、それを貫いてほしいということを御要望申し上げておきます。  それから、国内のそういう経済状況からいいましても、また国際収支、特に貿易収支の、改善じゃないのですね、黒字減らしというのは。改悪なんだけれども、とにかくそのためにも内需振興をしなければならないということは明らかであると思います。  ところで、GDPの構成を見てみますと、御案内のように、これは平成四年度のGDPでありますけれども、四百六十五兆四千億、この中で、民間の最終消費支出が五七・二%、民間住宅四・九%、民間の企業設備が一七・九%、それから公的需要が一七・三%、そのうちで公的の固定資本形成が七・九%、それから、財貨・サービスの純輸出が二・五%、こういうことでありますが、この民間の最終消費支出五七・二%、六割弱であります。これが何といっても一番大きいファクターになっているのでありますが、これはずっと過去を振り返ってみてもそう大きく違ってはいないのですね。  そこで、何といってもその景気対策としては民間の消費支出を刺激するということが大きな対策になるわけであります。そのためにはどういうことをしたらいいかということになると、手っ取り早いのは月給を上げることでありますけれども、そうもなかなかこの状態のもとではいけない。となると、次は当然に減税が考えられるわけであります。そこで、減税をしてもそれがすべて消費に回るわけはない。日本の高い貯蓄率のもとでは、相当額が貯蓄に回ってしまって効果は発揮しない、こういう議論はありますけれども、しかし、すべてが貯金になるわけのものでもない。減税が景気対策として大きな役割を持つということは明らかであると思います。  ところで、平成六年度の二割の減税と申しますか、これは、どういう目的でお考えになったか。私は両面あると思いますけれども、特に平成六年度の税制改正については、どこを主たる目的としてお考えになったか、伺いたいと思います。
  166. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 前国会のときにもよくお答えしていたのでございますが、現在の、特に当時でございますが、経済状況の中で、あらゆる努力をして政府が景気対策に取り組んでいるという姿勢を示す必要が非常にある。それで、当時とすれば、公共投資政策あるいは政策減税、公定歩合政策、いろいろやってきたけれども、まあ世間的に言えば、あと減税が残っているじゃないかというような御議論がありました。私は、そういう意味で、減税というものが、企業家の方を初め国民の皆様のマインドといいましょうか、そういうものにプラスになるということが一つあると思います。  もう一つは、今相沢委員御指摘の、やはり実際の消費に結びつくという問題でございまして、理論的には何%が貯蓄に回る云々はありますけれども、当然これは減税の効果が消費に結びつくという前提のもとにやらせていただいた次第でありますが、この二〇%というものの考え方は、昨年来の住宅の非常な好調というものが当然電気製品等に結びついてくるはずだったわけなのが、少し遅かったのですが、ようやく結びついてきたというような状況じゃないかと思います。それが、最近の消費の明るさの一つだと思いますが。  そういう意味で、ボーナスを中心にして、いわゆるストック的な消費財、耐久消費財のようなものは、そういうときを機にひとつ購買力に回っていくというようなことなども考えながら、かつ、なぜ一律にしたかと申しますと、これは基本的税制改正というものを本来の姿として考えておりますので、その基本的な仕組みをいじらないで、かつ、今申し上げたように消費に結びつくために一律主義というものをとらせていただいた次第でございます。
  167. 相沢英之

    相沢委員 そこで次は、これから先にどういうような税制改正を考えていくかということになるわけであります。  その問題に入る前に、ちょっと一言、どうしてもこれは承っておかなければならない点は、御案内のように、平成六年度の予算は大変に成立がおくれているわけであります。本来ならば、一月の下旬に衆議院に提出、衆議院一カ月、参議院一カ月、まあ三月下旬か、おくれても四月の四、五日には成立するというようなのが普通の姿でありましたが、実質審議が始まったのは五月の二十三日。ですから、通常のペースでいけば、あと二月かかったら七月の二十何日かになってしまいますが、そこはやはり今の経済状況から考えると、やはり予算は早く成立をさせることについて、我が党も御協力をしなければならぬ、こういう気持ちでおるわけでありますけれども。  ただ、こういう状態になった一番の大きな原因は、これはもう再三お話があったかと思いますけれども、とにかく昨年の十二月の十五日です。十五日、年内予算編成をして、そして早く予算を成立させて、政治改革諸法案はそれからでもいいじゃないかと。とにかく予算は一日を争う問題だ、政治改革は一日を争う問題ではないという、私どもはそう思っておりました。とにかく予算を先に成立させてという、そういう考え方でおりましたのが、とにかく会期延長、そして予算は後回し。それが一番この予算がおくれた原因であることは明らか。その後にいろいろ問題がございました。細川首相の問題もありました。しかし、やはりおくれた原因についてはそこにあると。  そこで、予算がおくれて、それは暫定予算でもってカバーしているからいいじゃないかという議論もあると思います。十分に暫定予算で公共投資を初めとして所要のものを盛り込んであるからと、そういうお答えがあるかもしれませんが、やはり暫定予算である限り新規事項を盛り込むことができない、そして公共事業等についても、細切れに出されても実際問題としてはなかなか全般的な工事の契約に及ばないのですね、これは、私が申し上げるまでもなく。ですから、非常にそういう点は影響が出ているわけです。  そこで、今までで一番長かった暫定予算は、たしか昭和二十八年です。そのときは四、五月暫定を組んで、そして五月追加、六月追加して四カ月の暫定を組んだ。これはもっとも、御承知のように、例のバカヤロー解散、吉田ワンマンのバカヤロー解散だ、そういうことがあっておくれたということはありますけれども、こういうような状態のもとにおくれたということは、私は連立内閣としては大いに責任を感じてもらわなくちゃならぬと思いますが、この予算のおくれによって経済成長にはどのような影響があったか、それをお答えになるならひとつお答えしてください。
  168. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まず、おくれたその理由につきましては、今御指摘があったとおりであります。  ただ、私どもといたしましては、やはり政治というものの改革が進まないと、国民に向かっての発信というものがやはりなかなか受けとめられないということで、政治改革を優先せざるを得なかったということであります。しかし、そうかといって、予算というものは非常に重要なものでありますから、暫定というよりはその以前に、これを埋め合わせるための補正予算というものを御審議をお願いし、これを通していただいたということで、まさに今これを執行させていただいておるということであろうと思っております。  これによって景気がどうだというお話でありますけれども、昨年でしたか、景気についても一応底をついたのじゃないかという、そこまで実はやってきたのだと思うのです。ところが、御案内のとおりの円高と長雨、そして不作ということのために、完全に経済の足を引っ張ってしまったということがやはり不況が長引いている私は大きな理由だろうと思っております。  ただ、昨今、住宅ですとか、あるいは公共事業、こういったものが着実に進んでおるということの中に、少し日差しが見えてきたことと、消費活動、多少ここのところちょっとまたおくれておるということがありますけれども、やはり一つの循環のときを迎えておるということもありまして、個人消費なんかについて、これから私は明るいものが見えてくるだろうというふうに思っております。  ただ、やはりマインドというのがあることはもう御案内のとおりでありますから、予算が余りにもおくれるということは、当然これはマインドを冷やすということにはなろうと思いますし、もう一つは、やはり新規のいろいろな工事というものが進まない、あるいは事業が進まない、あるいは手当てが進まないということになっては、これはやはり全体に足を引っ張っていってしまうということでありますから、この点は私たちも考えていかなきゃならない。  いずれにしましても、これからの景気の動向というものに十分配慮し、そしてこの予算が通過したならば直ちにこれが執行できるように、しかもこれを前倒しでやはり執行していくということ等についても、我々は配慮していかなければいかぬというふうに思っております。
  169. 相沢英之

    相沢委員 大分今までで時間を消費いたしましたので、あとのことを考えますと、もう少し申し上げたいことが多いのですけれども、一応これからの景気対策として私が幾つかのことを申し上げますので、それをぜひひとつ御検討を願いたいと思うのであります。  一つは、先ほど平成六年度の税制改正については伺いましたが、平成七年度以降の税制改正、これをどうされるか。税制調査会で審議をされるわけでありますが、いろいろと既に税制調査会で大蔵省の試算なるものが示されておりまして、消費税を、七%じゃ足らないのだ、一〇%まで上げるのだ、上げなきゃならぬと書いてあったかどうか覚えていませんが、そういう試算もあるようです。  ただ私は、この点いろいろな、これからも申し上げますけれども、特にこの点は承っておきたいのは、六・二兆円、まあ六兆でもいい。六兆円の減税をする。しかし、消費税を七%とか一〇%に引き上げる。これは数字的に言えば完全に、これは大蔵省も認めているようでありますけれども実質増税なのです、実質増税。しかも、消費税の一%というのがどの程度になるか。  私は、これはひとつよく検討してもらいたいと思いますのは、平成四年度の消費税の実績がたしか二兆二千億だと思うのですね。平成五年度の消費税の実績はまだ承っていませんが、私が承知しているのでは、十二月の三十一日現在で、そこまでの、平成五年度分の消費税収入は、平成四年に対して三・三%増加している。いろいろ原因があるようです。そして、平成五年度としてはどうも九%ぐらいの増加になるのじゃないか。これは、普通の〇・二%というような実質経済成長、そして平成五年度の経済成長は恐らくノミナルでも一・一%ぐらいじゃありませんか、〇・二%に比べて非常に大きい。  原因はいろいろあると思うのです。いろいろとあると思いますが、これからの経済成長を考えますと、二〇〇〇年の数字を大蔵省が示しておりますが、二〇〇〇年までというと、ちょうど一九九四年から六年間ある。六年間で、仮に五%ずつ、控え目に見て、平成五年度の実績は今申し上げましたように九%にもなるようですけれども、仮に五%ずつ見ても、六年間あれば三〇%ですね、そういう計算はいいかどうかお話があるかもしれませんけれども。  そうすると、既に平成五年度で二兆四千億は超すと思うのです。五年間ある。だから、五%ずついっても二五%。そうすると、もう三兆超すのですよね。三兆超すと、三から七に上げる、四%でも十二兆になるのですね。ましてや、三から一〇にすれば七%です。二十一兆にもなっちゃう。そういう計算がいいかどうか知りませんが、少なくともおっしゃるような、大蔵省が言われるようなその十二兆とかそんな数字じゃないだろうと私は思います。  しかし、そういうように、六兆円減税をする、十兆も二十兆も消費税で引き上げるということになれば、右のポケットには金を入れるけれども、左の方からはもっと引き出しちゃうというのじゃ、これは一つも景気対策にはならない。ましてや、御承知のように、所得減税と消費税との関係からいうと、所得の低い者にとっては何もメリットない。恐らく今の数字でいきましても、消費税を七%に引き上げるといっても、たしか七百万円台でしたね、七百万円以下の方については消費税の方が多くなる、こう言っていますね。だから、一〇%にも上げればもっともっと、恐らく一千万ぐらい以上にならないとその減税の恩典に浴せないなんということになるかもしれません。  ですから私は、ここは、景気対策として減税をお考えになるならば、それは思い切って減税をやる、しばらくの間は赤字国債でつなぐというぐらいのことをしませんと、まあ減税してあげますわ、もっと先へ行って増税しますわということじゃ景気対策にはならない。そこのところだけちょっと、私は特に、非常に大きく疑問を持っておりますものですから、お答え願いたいと思うのです。
  170. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 まず、税制改正でございますが、今度の特別減税法の修正の際に、全党一致で七年度以降の減税を行う、その際には基本的税制改正を行う、こういうことになっておりますので、私どもとしては、こういう国会の御意思に従って行動させていただきたいと思っております。  それから、第二番目に、この出した数字でございますが、これは二十六日の日に自由民主党の大島委員の御質問にもお答えしたのでございますが、全く機械的な計算だということは何度か申し上げております。定量的なものがないと税制調査会としても議論ができないということから、六つのケースについて定量的な数字を出させていただき、これは機械計算でございますが、そのとき税制調査会がこれだけの条件は満たしてくださいというのがありました。  一つは、所得課税の軽減、消費課税の充実というセットであること、第二番目に、今相沢委員が御指摘になった点でありますが、将来の福祉需要にこたえられる、対応できるものであること、第三番目に、これによって財政体質を悪化させないこと、この三つでございましたために、今お示ししましたようなことになったわけでありますが、同時に、連立与党の方から、そうまで至らない数字も出してみなさいということがございました。これにつきましても、私どもの姿勢が基本的に機械的計算でございますから、それらについてもお出しする方向で現在検討させていただいているところでございます。  ただいま相沢委員の自然増収等のお話がございました。自然増収の見方はいろいろあると存じますが、私どもといたしましては、あの機械的計算の付表に自然増収はお出しいたしておるつもりでございます。それからまた、あの機械的計算の中には時間差格差の問題につきましてもいろいろなケースを出させていただいておりまして、今の相沢委員の御指摘にもお答えしているのではないか。いわゆる歯どめなき赤字国債はよくないということは当然御理解の上と存じますが、そういう時間差格差もっけた案を提出させていただいていることも御理解いただきたいと思います。
  171. 相沢英之

    相沢委員 まだ今の御答弁で納得はいたしませんけれども、先に進ませていただきます。  とにかく大蔵省も金のかかる方はできるだけ多く見て、収入はつつましやかというか、低目に見るということは、藤井さん、私ども大蔵省にいてやっていましたから、だから天につばするような話かもしれませんが。また、余りそういう驚かすようなことを言われぬ方がいいと思うのですね。  単に試算ということじゃない、ひとり歩きするのですよ。もっともそれは連立内閣がこんな増税するんだということになって評判悪くなるかもしれませんから結構なことなんですけれども、しかし、総理、私、そういう増減税問題は特に一般の人たちが非常に関心を持っている問題ですから、慎重にお願いをしたいというふうに思うのであります。  これに関連して、実は実質所得倍増計画というのを総理が言われて、そしてこれはどうもどこか行っちゃったようで……。「また寝耳に水「実質所得倍増」」これは新聞ですよ。日経の五月二十五日「企画庁、羽田流に戸惑い 「計画経済でもない」冷ややか」、それから五月二十六日、毎日の朝刊「首相構想、一夜で幻に」、東京新聞の五月二十七日の朝刊は「経済オンチの思いつきに官庁サイドはシラけた声 羽田首相「幻の所得倍増計画」」。まあ、いろいろなことが書いてありますが、私は一つの考えであったかと思います。  思いますが、しかし、これをやりますと、これはそういうことになると、とてもじゃないけれども、経済は逆回りすることになっちゃって、とても日本の持っている経済の力を発揮することにならないと思う。ですから、見送りになりましたことは大変幸いなんですが――してないの。この点について御答弁があれば。     〔委員長退席、後藤委員長代理着席〕
  172. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 実質所得倍増計画なんという言葉は、私は一度も言ったことがございません。(相沢委員「新聞で」と呼ぶ)いや、それはだから、新聞がだれかからどう聞いて書かれたか知りません。私が申し上げていることは、かつて池田内閣の場合には所得倍増計画というのがあったと、そしてあれからずうっといわゆる賃金というのはどんどんどんどん上がる方向で来た、しかしこれからは、安定成長の時代にはもうそういったことはあり得ないだろうということ、こういったことを申しました。  そして、私どもとしましては、これはある大臣からもお話があったわけでございますけれども、基礎物価というものが日本の場合にはよその国と比べたときにやっぱり高いというのが現状で、所得は上がったけれどもそれだけの使いでがないじゃないかという御指摘、そういう中で、私たちは今市場開放する、あるいは規制緩和をする、そして、そういうことによっていろいろな製品なんかも値段を下げることができるという話があります。そういう中で、内外価格差を縮小しながら実質的な生活といいますか、そういった使いでのあるものにしていくことが私たちがこれからやっていかなきゃならぬことじゃないかということを申しております。  それは決して私は何も旗をおろしたつもりはありませんし、それは経済企画庁の方にもきちんと検討するようにということを私は指示しております。
  173. 相沢英之

    相沢委員 羽田大臣が旗をおろしたらハタでなくなりますからあれでしょうけれども、実質所得倍増計画というのは、これはそういうことをおっしゃらぬということならそれで結構ですが、各紙一斉に書いていますから取り上げて申し上げたわけでありまして、公共料金の引き上げをストップする等は、これはまさに一つの対策だと思いますけれども、後ではね返りがないように、これは十分に注意をする必要があるというふうに思っております。  もう時間がちょっと詰まりましたから、次に、財政問題について少し申し上げます。いろいろお聞きしたいことがありましたが、時間がありませんので数点に絞って申し上げます。  一つは、やや技術的な問題になるかもしれませんけれども、余りこういうことを聞く人がいないかと思って聞くのですが、平成五年度の三次補正、公共事業がこの手元で三兆五千九百億という数字になっていますが、一般会計の予算額では違うかもしれません。それはいいのです。それはいいのですが、平成五年度の補正予算が成立してから、もう年度末までほとんど時間がない。  私がお聞きしたいのは、制度としては明許繰り越しという規定があります。これは財政法第十四条の三ですか、「その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内にその支出を終らない見込のあるものについては、予め国会の議決を経て、翌年度に繰り越して使用することができる。」いわゆる繰越明許費と称されるもの。ただ、「その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内に」云々ということなんで、明らかに年度内に使うことができない予算を計上するというのは、私は財政法違反じゃないかと思いまして、その点伺いたいと思うのです。
  174. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 第三次補正の御論議をいただきましたときにも、その議論が出たことは事実でございます。  丸めた数字で大変恐縮でございますが、平成五年度の公共事業費総体の契約率は三月末で九三・六%でございますから、私は全体として相当執行は進んでいると思います。ただ、相沢委員御指摘の第三次補正に限定してのお話でございますが、私は、それなりに執行できるという前提のもとに組ませていただきました。そういう意味で御理解をいただきたいと思います。
  175. 相沢英之

    相沢委員 それは私は少し実態を調べる必要があると思いますが、一月やそこらでそれだけのものを契約するということは、それは実際問題としては難しいと思うのですね。だから、そんなに無理されることはなかったのですね。ゼロ国債にすればよかったのですよ。平成六年度に歳出を計上すれば済む話なんだ。それを無理に平成五年度の歳出として組むから問題がある。どうしてそうなさらなかったのですか。
  176. 篠沢恭助

    ○篠沢政府委員 三次補正を組みます際に、今大臣から御答弁がございましたように、とにかくこの三次補正を早期に上げていただきまして、年度内にとにかく全力を挙げて執行するという前提のもとに、各省とも相談をして組んだということでございます。  そして、お尋ねのゼロ国債でございますが、確かに年度をまたぎます段階で有効に働くことは承知をしておりますが、平成五年度の場合には、最初の一次補正を組みました際に、そのゼロ国債というものをかなり年度末を想定しつつ、既に入れてございますので、ゼロ国債のさらなる重複ということはあえて避けた次第でございます。  そして、執行に鋭意努めました結果、年度全体といたしましては、先ほど大臣がお答えしましたように、確かに委員おっしゃいますように相当繰り越しも生じましたけれども、年度全体としての契約率は九三・六まで達したということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  177. 相沢英之

    相沢委員 もう一つ、私はこれは平成六年あるいは七年だけで片づく問題ではないと思うのですけれども、ぜひひとつ、日本の国の財政の健全化を図る意味で十分に検討願いたいと思う問題は、いわゆる隠れ債務の問題であります。  時間が詰まりましたので少しはしょって申し上げますけれども、これはたしか大蔵省からちょうだいした資料だと思いますが、後年度の処理方法が法律で定められている事項、これで定められている措置にして行っていないもの、後年度の処理方法が法律で定められている措置として、例えば国民年金特別会計への国庫負担金の繰り入れの平準化とか、地方財政対策の改革による交付税特会借入金、それから地方財政対策に伴う後年度負担等々、これが九兆六千四百九十五億。それから、政管健保の国庫補助の繰り入れ特例、それから政管健保の棚上げ債務等々、これが三兆二千四百十三億、これらはすべて、要するに法律上はその当該年度で処置しなければならない事項をいろいろな理屈をつけて処置をしていない。  それから、もう一つ取り上げられるのは、日本国有鉄道の清算事業団の長期債務というのは二十五兆八千億ある。さらに、国債費の定率繰り入れ等の停止、これは私の計算が間違っているかどうか知りませんが、足してみますと二十一兆七千七十億になる、二十一兆にもなる。つまり、減債基金制度を設けられて、ちょうど国債残高の百分の一・六、ほぼ六十分の一ですね、六十分の一の定率繰り入れをすべきことが定められているにかかわらず、それを財政上の都合によりまして、もう何回もこれをストップしている。  それからもう一つ申し上げますと、例えば特例公債、いわゆる赤字国債であります。これも本来ならば十年とか五年とか、あるいはもっと短い期間で償還しなければならないものを、これを昭和六十年度に特例公債の償還を六十年に切りかえた。これもまたおかしな話だと思う。  大体、六十年というのは何かというと、建設国債の対象となる公共事業等を、税法上の償却年限を平均してみると大体六十年ぐらいになる、したがって百分の一・六ということでいいのじゃないかと。これは私が担当課長でやったことでありますからよく承知しているのですが、そういう減債制度というのは、今後いろいろな財政状況の変化はあろうけれども、国の債務というものを償還していくのについては、ひとつ平準的な措置としてそういうものをやっていこうというのがその本旨であったわけです。  NTT株の売却益その他があるということをきっとおっしゃるに違いないと思いますが、そういうものは一時的なものなんです。やはり、苦しくとも償還すべきものは償還する。そしてまた、債務の先延ばしということをしていって、毎年度のつじつまを合わせていくということが、私は本当にいいかどうか。それは赤字国債を出すというのはつらいでしょう。あるいはさらに借金をふやすということはつらいでしょう。しかし、国の債務を見えない形にしておくよりは、私はその方がいいと思う。  こういう実態だから、例えば私は消費税の引き上げというものに賛成しているわけじゃありませんが、とにかくこういう状態だから何とかしなくちゃならぬじゃないですか。国民の皆さん、どうですかという呼びかけをして理解をしてもらうためにも、私は隠れ債務というようなものは、いわゆる隠れたままの状態でおるということは適当ではないと思う。  国債の減債のための繰り入れにしましても、できないことはないのです。やればいいのですよ。その分は借り入れをやればいいのです。債券発行すればいいのですよ。そうしないで、何となくつじつま合わせている、もう何とかしてふたをして、何とかうまくいっていますというような状態にしていくということについては、それは私も長いこと主計局におりまして、まあそういう努力もしてきたから反省も込めて、反省も込めて思うわけだ。やはりそれは実態を明らかにするということが必要じゃないか。いかがですか、その点。
  178. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 直接予算編成で御指導いただいてまいりました相沢先輩に一つ一つ申し上げるのはちょっとちゅうちょをするのでございますが、まず隠れ問題は、私はもちろん望ましいこととは全然思っておりません。思っておりませんが、一体これを赤字国債にしてしまうのとどっちがいいかということでございますが、俗な言葉で言えば、なるたけ家庭の中でもやりくりをして外から借金をしない方がいい、どんどん外にツケ回していくよりはいいという感じがあると思います。特に、隠れ部分は、もう十分御承知のように、その内部のやりくりの中で一つの仕組みができておりまして、そこに歯どめがあるという点はひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから、定率問題は、これも御指摘もよくわかります。減債制度が、昭和四十年のあのとき国債発行して以来一つの仕組みができたのは事実でありますが、借金をしてまで定率に入れることが果たしていいかと前々から議論していたところでございますが、この点も、御指摘のようにすべて表にさらして赤字国債にするという物の考え方も、御指摘のこと、わかりますが、私どもとしては、単なる歯どめなき赤字国債よりは、内部でやりくりをして、その内部のやりくりというのは、制度の仕組みの中で何としても歯どめができているということであろうというふうに考えておりますので、御理解をいただきたいと思います。  また、六十年問題も、おっしゃるとおりだと思います。赤字国債が六十年であるという理屈は、私もないと思います。ですから、昭和五十年補正、赤字国債を出したときには十年で始まったと思います。それが、どうにもやりくりがっかなくなったということはもう御承知のとおりであります。  すべていいこととは思っておりません、端的に申しまして。しかしながら、何とかやりくりをしている実態も御理解をいただきたいと思います。
  179. 相沢英之

    相沢委員 やりくりというのは、実質的にうまくいくことなんで、これはそうじゃないんで、隠してしまうから問題なんだ。そこのところはひとつ取り違えないでいただきたいと思うのであります。     〔後藤委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つ、シーリングの問題であります。  これは、私は、ちょっといろいろ資料も持ってきたのですけれども、ちょっと時間がありませんので結論だけ申しますと、シーリングは御承知のように昭和三十六年に始まった。アメリカの制度をまねしたわけです。もっとも、そのときはシーリングとそれからターゲットフィギャーズと、アメリカは二つの種類のやり方を考えていまして、シーリングは文字どおりそれを超えられない。それから、ターゲットフィギャーズというのは、例えば軍事費なんかについて、その程度をひとつ基準にして要求してほしい、そういうふうな仕分けをしておったのですね。しかも、アメリカの場合は、シーリングは各省庁別に全部決めるのですね。こういう日本みたいな一律のやり方ではない。  そこで、導入したのは昭和三十六年でありましたが、そのときは前年度に対して五〇%増の範囲内において要求するという、今から考えてみると夢のような話。それを三〇、二五、二〇、一五とだんだん下げてきて、一〇%増から今度は前年同額、それからマイナスシーリング。  それで問題は幾つかあるのですが、一つは、例えば前年並みとか、公共投資についても前年に対して五%の範囲内というと一律になるのですよ、一律になってしまう。幾ら内閣の予算編成方針として重点的にやるんだということを言っても、予算要求自体が一律に五%の増の範囲内ということで抑えたんじゃアクセントがつくはずがないのですよ。これは数字を申し上げません。ここ十年ほどのものを見てごらんなさい。生活関連を重視ということを言っているけれども、そんな大して違いができていない。できていないのでいいという考え方もありますよ。ありますけれども、それでは私は重点的な予算編成というのはできないと思う。  それからもう一つ、例えば経常経費、見てみると毎年一〇%減だ。昭和五十九年度からマイナス一〇%というものは何年やっていますか、経常経費を。十一年やっていますね、十一年。マイナス一〇%を十一年やったらゼロになってしまう。にもかかわらずちゃんと前の年からそう変わらないことになっているのは、節約はするけれども、ことしの平成六年の予算編成方針にも示されているように、余り減った場合は、前年より減った場合は半分戻してやるなんということを書いているじゃないですか。私は、そういうことをして大蔵省と各省が、はっきり言うとつまらないことで神経をすり減らすことはよくないと思うんだ、精神衛生上。ですから、どうせ結論が見えて、大体経常的な経費については前年程度というならもう前年程度にしたらいいじゃないですか。それで、その範囲内で各省にもう少しいろいろと知恵を出さすということを考えたらいいと思う。  これは実は総務庁にも申し上げたいのだけれども、定員についてもそうなんですね。定員を何カ年計画かでもって縮減することになっています。ああいう制度を始めたのは実は私どもがそうなんですが、あれも結局よく見てみると、もうとにかく減らすことは減らすんだけれども、かわりにまたふやして、いろいろ理屈をつけてふやして、四十三年から平成六年までの国家公務員の増減状況を見ると、削減が二十六万七千四百十二名だ、そして増員が二十二万七千二百九十一名で、差し引き四万百二十一人の減だ。それは、四万人も減になったのはこのおかげだという見方もありましょう。事実また削減の対象になっているところと増員の対象になっているところが違うから、その間において人のシフトができているんだという見方もあります。ありますが、もうそろそろこれは限度じゃないですか。  日本の役人が諸外国に比べて非常に多いというならこれまたひとつ考えなきゃならぬ問題ですけれども、どうもそうでもない。日本は人口千人当たりで、これでいうと四十人。イギリスは八十人、フランスは百二十人、アメリカは八十一人。それぞれ国の制度としては違いがありますから一律には言えないでしょうけれども、人減らしもそういうような一律のやり方で減らして、そしてまた戻してやるという、経費も人間もそうですよ。この点はひとつぜひお考え直し願いたい。  シーリングについては大蔵大臣、人については総務庁長官、ひとつお答え願いたい。
  180. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 もう十分御承知のとおりでございますが、予算編成の一つの手法としてこういうものが考え出されてずうっと踏襲されてきたということは事実でございますが、今転機ではないかというような御指摘と思います。その道の大先輩の御意見でございますので、よく承らせていただきました。
  181. 石田幸四郎

    ○石田国務大臣 定員問題についての御指摘をちょうだいをいたしたわけでございます。  こういうような、特に税制問題についてもいろいろな御議論があるさなかでございますけれども、それだけに行政の効率的な運用を図っていかなければなりませんし、スリムな行政をつくらなければならないのも一つの要求であろうというふうに思うわけでございます。  これはもう先生御承知のとおりでございますから、例えば今、在外公館あたりはやはり相当要求が多い項目でございます。逆にまた、食糧事務所等が毎年相対的に減っている。今お示しになった千人当たり四十人というような、そこら辺のところもにらんでいかなければならないわけでございますので、今先生のおっしゃったこと、今後の定員問題の議論の参考にさせていただきまして、鋭意また検討してまいりたいと思います。     〔委員長退席、後藤委員長代理着席〕
  182. 相沢英之

    相沢委員 持ち時間があと十五分ほどになりましたので、残りちょっと二つありますから質問をさせていただきたいと思います。  一つはデノミネーションであります。これは私は、前々から、ぜひひとつこの日本の国においてもデノミを実施したい、実施しなければならないということで研究もし、検討もし、また事実自民党の中にデノミの推進のための研究会もつくったのであります。大蔵大臣も外務大臣もそのメンバーになっていただいておりました。まさか反対だということでお入りになったんじゃないというふうに理解をしておりますが、これは研究会であります。ただ私は、もうここまで来たらば、先進国の中でドルに対して三けた以上の国というのは、日本とイタリー。フランスも一九六〇年にやりました。日本がやはりここでデノミを考えるべきではなかろうか。  一円玉が落ちていても子供も拾わないというような、基本的な貨幣の単位というものである円が無視されているということは大変に残念なことでありますし、また諸外国とのいろいろな交渉事におきましても、三けたも違うという円をもっての話し合い、これもまた不便なことでもありますし、またそれから、円にどの程度のデノミをするかによりますけれども、まあまあ言われているのは百分の一、百円を一円にすることでありますが、そのことによりまして計算が便利になる、事務の合理化が図れる、あるいはまたお金に対する尊重の気持ちをあらわす、これはさっき申し上げましたが、いろいろな点でメリットがあるわけであります。  無論デメリットもあります。何でこの景気の悪いときにそういう余計なことをするかという議論があると思いますが、しかしやはり、物価が安定をしていること、それから国際収支が黒字基調であること、それからデノミが実施できないほど不況ではないこと、そして第四に政治が安定している、これがデノミの条件であります。この第四の条件はいささか問題でありますから、今すぐこれをどうこうということではありませんが、私は、ここまで来れば日本の国も本当に真剣にデノミを研究すべき時期が来ているのではないかというふうに思うのであります。  昭和四十六年に、水田大蔵大臣のとき、私はちょうど幣制担当の理財局長をしておりまして、このデノミを検討しよう、そこの労働大臣のお父さんの鳩山威一郎さんが当時次官で大変な熱心なデノミ論者、やろうじゃないですかということでもっていろいろ準備しまして、大体まあ二年以内の準備期間があればやれるというところまで実はいったわけでありますが、その後、ニクソン・ショックがあったりいろんなことがありまして、オイルショックがあったりしてこれが実現できなかった。  ただ、その間も、いろいろ申し上げますと、五十三年の一月には福田総理が私はデノミ論者だということでお伊勢さんで発言をされたこともこれあり、あと十分だというから少し省略しますが、いずれにしましても、これはもうぜひデノミをひとつやってもらいたい。  景気対策としてこれを言われる方もおるのです。事実、デノミをやることに伴っていろいろなコストがかかります。コインをつくったり、札をつくったりすることは、そう大した金ではないけれども、帳簿だとかあるいは自動販売機だとか、いろんな点で費用がかかる。まあそれがどのくらいか、一兆円あるいは二兆円という人もあります。逆に、それがまた需要の喚起になるので、経済に対しては、GDPに対して少なくとも〇・五%ぐらいの影響があるとかという議論があります。そういうことも含めて、私は、ぜひひとつこのデノミを真剣にお考え願いたい。  実は、デノミをやるのについては、どういうような具体的な手段がとれるかということで、これは衆議院の法制局にお願いをしまして、デノミの法律もつくってあるのです。これは一九六〇年のフランスの例に倣いまして、政府に対してそういうことを実施することを要請する、義務づけるという形の法律をつくって、それでその細部については、例えば各省各庁所管の法律を相当広範囲に直さなくちゃならない、それは各省各庁の責任ということにしてやれば処理できるのじゃなかろうかということなんで、私もぜひこれは実現に向けての努力をしたいと思いますので、大蔵省においてもひとつ真剣にお考え願いたい。  大蔵大臣並びにその議員連盟に入られた外務大臣、それから総理大臣、御意見を承りたいと思います。
  183. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 私は、ただいまお話のありましたドゴール・デノミのときの経緯、それからスミソニアン・レートを決めるときのいろんな議論、そういうのもよく承知をいたしております。また、尊敬すべき先輩、今お名前を挙げられたような方々がデノミ論者であることも知っております。  ただ、今私の立場で申し上げられることは、やはりそういう経緯をずっと見てまいりますと、国民の理解を得るということはなかなか無理だし、難しいし、現在もそういう理解はないと言わざるを得ませんし、また、そういうがゆえに、経済社会情勢に対する影響も非常に大きいと思いますし、また、技術的にもいろいろ問題があるということで、これは、大変先輩には恐縮でございますが、デノミは考えていないということを申し上げなければならないと思います。     〔後藤委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 御指名がありましたのでお答え申し上げますが、私は、個人としては相沢先生の御意見に賛成でございますが、閣僚としては発言を控えさせていただきます。
  185. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私は、実は、皆さんが御議論あったこと、それから、鳩山さんのお父さんなんかもデノミ論者であったことを承知しておりますけれども、今の円になれ親しんでおります若い世代で国民の過半を占めるようになったこの時代に、今デノミというのは余り期待というのはないのじゃないのか、むしろ不安というものを引き起こしてしまうのじゃないのか、あるいはコンピューター化というのが非常に進んだ今日というのは、これを切りかえていくというのもこれまた大変なことなんじゃないのかなというふうに思いまして、私、今これを考えていないことをもう率直に申し上げざるを得ません。恐れ入ります。
  186. 相沢英之

    相沢委員 デノミ論議はまた場所を変えてやらしていただきたいと思いますが、何としてでもこれを近いうちに実現に持っていきたいという執念を持っていますので、またひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  それから最後に、ソ連抑留問題であります。  私は、昭和二十年にソ連に抑留されまして、三年間、雪と氷の中で暮らした者の一人であります。まあ首尾よく帰ってまいりましただけに、抑留中に亡くなった六万人の方々、そしてまたソ連から、抑留から帰りましたけれども、帰ればもう既に不在地主としてその土地が収用されざるを得なかった、あるいはまた就職先もなくなった、その他いろんな関係で影響を受けた方々、六十万といい、それ以上といいます。そういう人たちが抑留によってどれだけの被害と申しますか、を受けたか。  私はその一人でありますし、私どもは言うのですよ。私どもが言うのは、昭和二十年の八月の十五日に終戦なんですよ。我々は、戦争中に白旗を掲げて降伏したならば、これは捕虜と言われても仕方がない。生きて虜囚の辱めを受けずということもあったと思うのです。ただ、我々は八月十五日の終戦で、もうこれは天皇陛下の命令だということでもって武器弾薬等を引き渡して、そして内地へ送ってもらえると思ったらば、内地へ送らないで、シベリア奥深く運ばれた。私は貨物列車で二十三日間運ばれた。ヨーロッパ・ロシアにいました。  これは明らかに日ソ不可侵条約に違反をしているのです。そしてまたポツダム宣言、ソ連も当事国でありますだけに、もうすぐ帰さにやならないという、ほかの国はみんなそうしたでしょう。ひとりソ連だけがそういうことをしたのです。それはもう本当に厳しい生活でした。私のことを申し上げて恐縮ですけれども、私もあらぬ嫌疑を受けて四カ月半独房で暮らしたのです、監獄で、帝政時代のね。本当に屈辱を味わったのです。  ですから、いろんな問題で、日本軍の起こしたことについて、それは侵略的行為もこれあり、日本が謝らなければならぬこともあったと思うけれども、同時にこういう点について、私は、言うべきことは敢然として日本も言わなければ救われない人が本当に多いと思う。ですから私は、抑留者の運動の中で、全国戦後強制抑留補償要求推進協議会中央連合会という大変長たらしい名前の会の会長として十数年やってまいりました。何とかその補償をということでしたけれども、それは結局、慰労金品、慰労金十万円と銀杯それから書状ということになりましたが、私はそれはそれでもって、国としてそういうことを考えてくれたということでもって、満足じゃありませんよ、満足じゃありませんけれども、それは了解しています。  ただ、やはり私はソ連に対して、今はソ連じゃない、ロシアですけれども、そういうことをしたことについての謝罪を要求しなきゃならない、そしてまた強制労働に対しては補償要求をしなきゃならぬという気持ちで、ゴルバチョフが来られたときも、ハズブラートフ氏にも、エリツィン大統領にも会いました。そのことを言いました。あなた方は日ソ不可侵条約を一方的に破ったじゃないか、ポツダム宣言に違反して、我々をソ連奥深く連れていって強制労働に服させて一割も死んだじゃないか。戦争中の激戦地といえども一割ですよ。一割以上が死んだら激戦地ですよ。ですから、そういうような目に戦後遭わなきゃならなかったというのは大変な私は苦しみだった。  でありますので、今、我々、ロシアに対してのいろいろなことを要求しています。それはそれとしてひとつ外務省も応援していただきたいが、国内的な問題としては、千島並びに南樺太において抑留されていた者、これは同じように作業大隊で働いておった者がいるのです。何でソ連の領土内におった者だけをやるのか。これも広げてもらいたい。  それからもう一つ、恩給の戦地加算でありますけれども、それは一年・一年なんです。南方にいた者もどこにいた者も、抑留ということでもって一年が一年、一月は一月になっている。それはいささかアンバランスじゃないか。そこを、だから、もう一月ないし二月とか、戦地並みとはいわないにしても加算をしてもらいたいというのが我々の要求なんです。もしできなければこれは議員立法でもってお願いするしかないということでやっておりますが、これについて、ひとつ官房長官並びに総理のお考えを承りたいと思います。  それからもう一つ、もう時間がないようでありますから、我々、平和祈念基金として団体で五億ちょうだいしていますが、平和記念館、平和記念資料館をぜひつくってもらいたい。これは、ちょうど来年は戦後五十周年になります。その記念事業として平和記念資料館をつくるための、言うなれば一部の金として、それを基金で使えるようにしてもらえぬかということ、これは総理にもお願いして、質問を終わります。よろしく。
  187. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 先生の御指摘の中で、二点質問にお答えさせていただきます。  いわゆる抑留者に対する慰労のための金品の支給対象に千島、樺太抑留者も加えるべきではないかということでございますけれども、戦後、いわゆる強制抑留者に対する慰労金、慰労品の贈呈は、旧ソ連及びモンゴル人民共和国の地域に強制抑留された方々を対象に行っておるわけでございますが、これは戦後、戦争が終了したにもかかわらず異郷の地に連れていかれ、厳寒かつ食糧不足等の厳しい状況のもとで強制的に労働させられたという特別な事情を考慮したものでございます。  御指摘の南樺太、千島につきましては、強制的にソ連軍の使役に従事させられたという事実は承知しているわけでありますが、これらの地域は戦前はもともと日本の領土でございまして、日本人も多数居住し、終戦後の状況も旧ソ連等の地域とは異なるため、これらの地域に抑留された方にいわゆるシベリア抑留者の方と同様の措置をとることは困難であるということをぜひ御理解をいただきたいと思うのでございます。  それから、いわゆる軍人恩給の加算措置についてでございますけれども、これは先生も議論をしていただきましたとおりでございまして、今日の時点でこれを見直すことは政府としては適当でないと考えているところでございます。
  188. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 平和記念の資料館等につきまして、ちょうど五十年という中で一体どう考えていくのかということがあります。いずれにしましても、これからまたいろいろと御相談申し上げていかなければいけない問題であろうというふうに思っております。
  189. 相沢英之

    相沢委員 ありがとうございました。終わらせていただきます。  なお、ちょっとおくれて参りまして、前の質問がもう少し続くつもりでおりまして、申しわけございませんでした。
  190. 山口鶴男

    山口委員長 これにて相沢君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後五時三分休憩      ――――◇―――――     午後八時三十九分開議
  191. 山口鶴男

    山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  平成六年度総予算審査のため、参考人として内藤正久君の出席を求めることとし、その日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」「反対、異議あり」と呼ぶ者あり〕
  192. 山口鶴男

    山口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  193. 山口鶴男

    山口委員長 この際、水野君の残余の質疑を許します。水野清君。
  194. 水野清

    水野委員 遅くまで大変、委員先生方、閣僚の皆さんにも御苦労さまでございます。私の残された十五分の時間につきまして、少し補足質問を申し上げたいと思います。  通産省通商産業研究所大塚次長さん、おられますか。あなたに少し補足して伺いたいと思います。  あなたは、これは九月二十一日と思われますが、井上一成先生電話の後、翌日かなんかに会っておられるはずであります。いっお会いになって、どのようなお話があったのか、あるいはそのお話の結果をメモにして官房長に差し出されたと聞いておりますが、そのメモはあなたはまだ持っておられるかどうか、これらについて少し詳しく御説明を承りたいと思います。
  195. 大塚和彦

    大塚説明員 御説明申し上げます。  井上一成先生とは、昨年九月二十二日の大体十二時ごろから議員会館の井上先生のお部屋でお目にかかりました。そして、そのときのお話の様子は、その大筋は、私は先ほどお答えを申し上げました。そして、これは井上先生と二人の間の話でございますから、同じことでもそれぞれに記憶の違いというのがある可能性がございます。したがって、これ以上の御説明は、もし御容赦いただけるならば、御容赦いただければと思います。  ただ、その結果のメモは、実は私の一存で作成して牧野官房長に提出いたしておりまして、牧野官房長には破棄をしていただくようにお願いをしてあったわけでございますが、私は、予備のために一部コピーをつくりまして、そのコピーはいまだに保存しております。  以上でございます。
  196. 水野清

    水野委員 大塚さん、そのコピーを、あなたの、井上先生との信義上許される限り説明をしていただきたい。
  197. 大塚和彦

    大塚説明員 ただいま申し上げましたように、同じことでも両方で記憶の食い違うことがございます。そこで、できれば、その中で私が、これはきっと井上先生も御記憶に違いないと思う自信のあるところだけを言わせていただくことで御容赦いただければと思います。  そのときに井上先生がおっしゃいましたことは、当時の熊谷通産大臣から質問をしてほしいという趣旨がございまして、そのときに熊谷大臣は、井上先生質問をしてくれたならば、自分綱紀粛正をするという旨を答えて、そしてしかるべき措置をとりたいと、こう熊谷大臣がおっしゃったということを私は伺いました。そして、それと関連して、私は非常に異様に思ったわけでございますが、井上先生が、通産省の中で熊谷大臣が非常にやりにくい年長の人がいるのかということを非常に、何と申しますか、熱心にお聞きになったわけでございます。  それで、私は、今から考えてみますと、いかにもとんちんかんなお答えをしたと思うのですけれども、当時熊谷大臣がよく省内のパーティーなどで、私は入省当時熊野次官にいつもいじめられておりましてということを絶えず、考えてみたら冗談だったんだろうと思います。私はうかつにもそれを真に受けておりまして、井上先生に、それは熊野次官との関係がうまくいってないのかもしれませんということを盛んに私は申し上げた覚えがございます。そして、そのことを帰りまして牧野官房長報告をいたしまして、どうも大臣は熊野次官を嫌っておられるのかもしれないと申しましたら、牧野官房長は、一笑に付して、君、そんなことはないよ、こういうふうに言われましたという、大体これが私が確信を持ってお答えできるところでございます。
  198. 水野清

    水野委員 もう少し綱紀粛正ということで承りたいのですが、あなたの答弁で、当時の熊谷大臣は、綱紀粛正をやるために質問をしてくれと、こうおつしゃった。この綱紀粛正という意味が、私流に解釈をしますと、あなたのお話は、怪文書国会で取り上げてもらう、そして、それをきっかけに綱紀粛正の名のもとに熊谷さんの思っている人事をやりやすくする、こういうふうに受け取ってよろしいですかな。
  199. 大塚和彦

    大塚説明員 御説明申し上げます。  先生のおっしゃったところまでは私は自信はございません。  私のメモによりますと、熊谷大臣は、自分綱紀粛正をする旨国会で答えて、そしてしかるべき措置をとりたい、こういうふうにおっしゃったという旨だけを井上先生がおっしゃったと、かようにメモには残っております。
  200. 水野清

    水野委員 どうもちょっと説明がわかりにくいのですが、私は、今のお話を聞いて、井上先生は結局おやりにならなかったけれども、質問依頼は結局、内藤さんという局長の首を切るための環境づくりの質問工作だったというふうに私はとれるのですが、いかがですか。
  201. 大塚和彦

    大塚説明員 私は自分で自信を持ってお答えできるところまでを今までお答えしておりまして、今先生がおっしゃいましたところまでは私は自信を持っては申し上げられません。
  202. 水野清

    水野委員 総理、少し聞いていただきたいのですが、私がこうやって通産省官房長並びに今の大塚さんから聞いた状況を、あなたもきょうはずっとお聞きでいらっしゃったと思います。どうも怪文書内容も、総理ですから、まだごらんになっておられないかもしれませんが、怪文書内容その他からいって、これをただ怪文書だけにおいておくわけにいかぬと、何とか公開の席に出して議論をしてもらいたい、それをきっかけに省内人事をやりやすくする、こういったどうも私は環境づくりのように思われるのです。  御承知のとおり、もう一つ訴状も出ております。先ほど来、昨日来申し上げていますが、言ってみると三点セットでこの内藤という人を、まあこの人は既にやめた棚橋ですか、棚橋という次官の亡霊みたいになっておるわけですが、亡霊が後ろにいて内藤さんがその犠牲になるわけですが、そういう構図をつくり上げていって、どうもこれが世論である、こういう形にしてそして人事をやりやすくする。自分の出身の役所ですから、今のお話のように、先輩もいるし、役所にいたときに仲よくなかった人もおる、そういうものを上手に整理していく環境づくりをした、そういうふうにごらんに、おわかりになりませんか。
  203. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今の大塚さんのお話をお伺いしておりますと、例えば井上さんのお話というのは何かそんなふうに私も受けられるように聞こえます。  ただ、先ほどこれは、日笠議員の方からは、直接水野議員の方から御質問をなさいましたけれども、そこの私はやりとりをこうやってお聞きしておりましたら、決して別にそんな依頼を受けておらないということで、御自分意思でこれを質問したというふうにたしかお答えになったというふうに思っております。
  204. 水野清

    水野委員 総理、ついでに承りますが、きのう、私のこの質問冒頭に御報告をいただきました。この文書はもう総理がお読みになったからおわかりのとおりだと思いますが、この中に、「本件について国会での質問依頼した事実は一切ないとの報告を受けております。」こう言い切っておられますが、間違いございませんか。
  205. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私どもの方で調査したのでは、そのように聞いております。
  206. 水野清

    水野委員 そこで、日笠郵政大臣日笠当時の議員に少し承りたいのですが、実は、あなた様の御質問がそういう意図があったかどうかは別として、結果として少なくとも内藤さんという人を首切り、追い出すことに客観的に役に立ったのじゃないかという感じをお持ちになりませんか。
  207. 日笠勝之

    日笠国務大臣 先生、十月四日の会議録を読んでいただいたでしょうか、私の質問でございますが。本当にワンクェスチョン、三十秒か四十秒ぐらいのスペースだと思いますが、そこには一切、いわゆる内藤さんのお名前も、私会ったこともございませんし、出ておりませんし、大事に介入しようかというような表現は一切ない。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、政財官の癒着を断ち切るという細川総理の所信表明を受けまして、二十分の間で十一問の中の、政界と財界ですね、これはゼネコン汚職でやったわけですね。残るが官界モラルということになりますですね。そういうことで、ここで申し上げているのはいわゆる官僚、官界モラルについて大変、総理が言ったけれども、大切なことで、どうなんでしょうかということを聞いているわけで、人事だとか怪文書の俗に内容ですね。週刊誌にも出ておりました、いろいろなことが。しかし、これについてどう思うかとか、これについてどうなっているかという具体的なことは一つも聞いてないわけなんです。  ぜひそういうことでおわかりいただきたいと思います。  それから、先ほど先生、私と熊谷大臣が親しい仲とちょっとおっしゃいましたけれども、実は私、この十年間、国会議員になってなりますが、一度も食事を二人でしたこともありませんし、お酒も飲んだことはありませんし、これは本当でございます。もし見ていた人がいらっしゃればぜひお知らせ願いたいと思いますが、いわゆる出身も違いますし、そういうことはないということを、まず親しいとおっしゃったところをちょっと訂正申し上げたいと思います。
  208. 水野清

    水野委員 こんなことを承るつもりはなかったのですが、日笠郵政大臣、あなたは、それじゃ承りますが、かって熊谷大臣がまだ大臣になっておられる前、自民党におられたころでありますが、熊谷さんの依頼で大蔵委員会で御質問をなすったことはないですか。  急ですから思い出せないかもしれませんが、もっと具体的に申しますと、ある銘柄の株が暴騰いたしました。あなたはその株の暴騰についてけしからぬじゃないかという御質問をなすったことがあります。そのあなたの御質問によりまして、その株は翌日から暴落をしております。こういう事件が一つあるのです。  これは、あなたが熊谷さんと連絡あったかないかは私もそれはわかりません。ただ、あなたが株について御質問をなすったことは、これは国会の御質問ですから残っているはずであります。これはいずれ、私は速記録を国会図書館で調べて御提示をいたします。  それから、株価というのは長い間これはコンピューターに入っておりますから、その銘柄の、ある銘柄と申し上げておいた方がかえっていいと思います。その上がり下がりについても、これは証明できます。客観的には非常に奇妙なことがあって、私の聞いている範囲では、当時の熊谷代議士と非常にリンクを組んでおやりになったのではないか、こういうことが言われているわけでございます。思い当たりませんか。
  209. 日笠勝之

    日笠国務大臣 大蔵委員会に所属していた当時、たしか証券不祥事かなんかで毎日のように質問したりしておりましたので、ひょっとしたらそういう質問をしているかもしれませんが、熊谷大臣からお聞きしてやったということは一切ありません。
  210. 水野清

    水野委員 いや、それは私も証明がつかないのですよ。ですから承っておるのです。この件はこれでいいことにいたしましょう。  これからいろいろ……(発言する者あり)人の質問を邪魔するな。
  211. 山口鶴男

    山口委員長 御静粛に願います。
  212. 水野清

    水野委員 そこで、これは熊谷官房長官、あなたに申し上げたいが、総理もお聞きになってください。私が客観的に調べて今日までようやく通産省の官僚たちの答弁を引き出してきたのでありますが、いずれ内藤さんが参考人で来てくれればもうちょっとクリアになると思いますが、私は、内閣の大臣ともあろう者がやらせ質問をつくり出して、いいですか、これは立法府なんですね。自分の行政の大事に、人事権の行使に、自分の思うとおりにしよう、恣意のままに行使しようということをおやりになった少なくとも疑いがある。私はおやりになったと信じておりますが、これは立法府の審議権を悪用したと。しかも伝統のあるこの予算委員会でそういうことをなすったということについて、私は極めてこれは罪が重いと思うのですね。いかがお考えでしょうか。  しかも、今日内閣のかなめにこの方が座っておって、内閣官房長官というのは内閣全体の人事、少なくとも次官人事あるいは公団公社、そういったところの理事長、総裁の人事も、これは閣議にかけますから全部官房長官の了承を得なきゃできないのです。それから、総理の主宰をされる審議会の委員その他もそのとおりであります。  これは、こういう疑いのある方が内閣官房長官に座っているということは極めて私は重大な問題だと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  213. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 まず、私が井上議員や日笠議員質問依頼をしたことはございません。これは再三申し上げたところでございます。  また、私自身もこの問題については、日笠議員質問に答えたときにこれで一区切りっけたというふうに実は思っておりましたし、また省内の者たちともそういう話をしたことがございます。  しかしながら、先ほど盛んにやらせと言っておられますが、告発も出ました。そういうような中で、非常に我々省内が動揺しているというようなことを踏まえて、十二月の段階で私も事務当局ともよく相談をして決断した人事でございまして、今おっしゃられるように何か怪文書といお話でございますけれども、怪文書自体よりもその中身に書かれていたことが事実であったということが私は出発点であったと思っておりますし、まして人事を恣意的に何かをしたということは今までもございませんし、これからもそんなつもりはございません。
  214. 水野清

    水野委員 怪文書内容を私はわざと読まないのは、先ほど申し上げましたように、余りこういうことをやって通産省の諸君を困らせてもいけない、それより政治家同士の話をきちっとしようと思ってあなたに承っておるのです。あなたがいろいろな、先ほど来御答弁を聞いていますと、こういう汚い話はどんどん出したらいいんだ、そうここでおっしゃっておられる。何のはばかるところがあるかとおっしゃっておられる。開き直っておられると、こう思うしかないのですな。  そこで、それじゃ、あなたの部下でありますけれども、これは実は怪文書作成にかかわる問題の一部でありますけれども、高島環境立地局長さんという方がいまして、この方について少し私は質問させていただきます。私は実はする気なかったのですが、野中議員が少しぐらい時間を出してもいいよ、こうおっしゃるものですから。  高島さん、いらっしゃいますか。あなたは今どこへお住まいですか。
  215. 高島章

    高島(章)政府委員 渋谷区に住んでおります。
  216. 水野清

    水野委員 松濤にお住まいですか。
  217. 高島章

    高島(章)政府委員 そのとおりでございます。
  218. 水野清

    水野委員 ある写真誌にあなたの住んでおられるマンションの写真が出ました。これは二月ぐらいでしたか、ちょっと私もあったのですが、今手元にありません。これは大変びっくりいたしました。それ以来実はあなたは、ここが問題なんです、二カ月間省議を欠席しておられる。何か御病気であったのですか。本人に聞いています。高島さんに聞いていますから、官房長は言わぬでください。
  219. 高島章

    高島(章)政府委員 御質問のことを承っておりましたので、私の方で会議の出席の状況を調査してまいりました。御指摘の雑誌が出ました後でございますが、いわゆる局長クラスの省内の会合がございますが、十二回中十回出席をしておりまして、二回はどうしても他の行事がございまして欠席をいたしました。また、同じくその後に、省内の大きい会議といたしまして産業構造審議会というのがございますが、そこの我が方の関係の部会には四回全部出席をしております。また、そのほかの主要な審議会にも全部出ているという実情でございまして、二カ月間省内の会議を欠席しているという事実は全くございません。
  220. 水野清

    水野委員 私も通産省の人間じゃないものですから、それは私の聞いている話が違うのかもしれません。違っていたらこれはお役に対して失礼なことですから、私が調査した上で、今ここでは謝じません、きちっと調査、それこそ官房長、きちっと私に調査を出してください。
  221. 牧野力

    牧野(力)政府委員 ただいま局長答弁をいたしました省内の最高会議の省議でございますが、これは私が司会をやる会議でございます。私の責任でございます。既に調査をしております。彼が今申し上げたことに、事実に間違いはございません。
  222. 水野清

    水野委員 それでは次に、高島さんに伺いますが、あなたのそのお住まいの、こんなことは嫌なことなんですが、公務員としてはちょっと私不思議でしようがないので、家賃はお幾らでございましょうか。どなたでもいいです。
  223. 牧野力

    牧野(力)政府委員 水野先生、まことに恐縮でございますけれども、本件は当省幹部職員の綱紀に関係する御質問かと思いますが、当省の職員の綱紀に関する問題につきましては私が責任者でございますので、恐縮でございますけれども、この場におきまして極めてプライベートにわたる件につきまして、御本人に、本人に問いただすことはひとつ御容赦をいただきたいと思います。当省の職員の綱紀に関することにつきましては私がお答えをさせていただきたいというふうに思います。これはお願いでございます。
  224. 水野清

    水野委員 これは結局、綱紀に関することになるんです。熊谷前通産大臣綱紀粛正のために内藤君の首を切ったと、結論、短絡的に言えばおっしゃいましたけれども、私の調べたところでは、あなたの、高島さんのお住まいのマンションは、家賃が月百二十六万円、長谷工の所有のものを借りていらっしゃる、こう聞いております。  そこで、これも本当に恐縮なんですけれども伺いたいのですが、一体、高島さんの給料は幾らであるか。給料以外にどういう御所得があるか。実は国会議員も、これは大臣方もそうですが、我々ももう資産公開をやっておるんです。ですから私は、高島さんにこの際、どうもいろいろなことを余りにも言われておりますから、資産公開をおやりになることがあなたの身の潔白を私は晴らす非常にいいチャンスだと思うので、御提言申し上げるのです。  簡単に申し上げますと、百二十六万円と十二カ月を掛けますと千五百十二万円なんです。あなたの所得申告にそんなものはどこにもないのです。あなたはもう一つマンションをお持ちなんです。それは、マンションは人に貸しておられる。家賃が幾らかまで私は調べ切れませんが、そういうデータもあるんです。それは四、五十万で貸していらっしゃるかどうかわかりませんが、この辺の所得申告その他について、あなたはこれだけいろいろなことを週刊誌その他で言われておりますから、公務員は、しなくていいのかもしれません、今の法律上は。しかし、熊谷大臣があれだけ綱紀粛正ということを盛んに言っておられる。言わなければ私も聞かないです。綱紀粛正のためにやったのだ、どこが悪いんだ、自分は間違っていないとおっしゃる。あなたのような方がまだ通産省におられるのに、熊谷さん、どうお思いですか。
  225. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 私は、今委員が御指摘になったような事実あるいはその全体の姿というのは承知いたしておりませんが、高島局長が何かしたというふうにも思えない。しかし、これは、事実関係は私が調査したことはございません。
  226. 牧野力

    牧野(力)政府委員 私どもの非常に信頼します同僚がこういう席上でただいまのようなお話の対象になりますことにつきましては、私は非常に悲しい思いでございます。  今先生が御指摘になりましたようなことは、昨今週刊誌その他で取りざたをされていたことは私も承知しております。もちろん捨ててはおけませんので、本人に十分私は問いただし、もちろん我々は税務署でもありませんし、そういう調査は、細かい調査はできるわけではございませんけれども、世上言われているおかしなことといいますか、そういったことは一切ないというふうに、私のみならず確信をいたしております。これは、私の極めて信頼する同僚としての、三十数年にわたる私のこれは真情でございますので、ぜひそこは御理解をいただきたいというふうに思います。
  227. 水野清

    水野委員 官房長にもお願いしますが、私がさっき申し上げたように、この席で公開するのがお嫌ならば、高島さんとお二人で相談されて、高島さんの資産の、こういうことでございますと、これは間違っていますということなら、そういうふうにお示しを願いたい。  私はなぜこんなことを言うかというと、熊谷大臣が盛んに綱紀粛正を必要である、こうおつしゃつておられる。内藤さんについて、これだけ週刊誌が書かれたことはないんです。それにもかかわらず、内藤という人物はけしからぬ男だからというふうに環境づくりをして辞任に追い込んでいく。去年の暮れですね。そういうやり方は極めて汚い。それにもかかわらず、御自分のいいと思っていらっしゃる官僚については非常に大目に見ておられるんじゃないか、そういう私は印象を持っている。これは印象ですよ。私もあなた方と長いつき合いをしたわけでも何でもない。しかし、大体調べたことはこういうことなんです。ですから、これだけ私から言われれば、御本人の名誉のためにもきちっと証明をしていただきたい、これをお願いをしておきます。  大変お時間をいただきましてありがとうございました。野中先生の時間までとってしまいました。内藤参考人がここに出席されてからまた私はいろいろ質問をさせていただきたい。その際、またいろいろ申し上げることがございます。  ありがとうございました。
  228. 山口鶴男

    山口委員長 これにて水野君の質疑は終了いたしました。  次に、野中広務君。
  229. 野中広務

    ○野中委員 私は最初に、本委員会の開会以来の審議経過について若干、自分の感想を交えて総理並びに大蔵大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  どうも私は、本委員会が開催をされてから、いや去年の十二月に平成六年度の予算編成が年内編成を見送られ、そして三月に入ってから国会に提案をされるという異常な事態が出ましてから今日までの経過をたどってみて、本当に細川内閣から羽田内閣、一体、この平成六年度の予算というのを、これだけ国民生活が深刻であるにもかかわらず、政府・連立与党一体となって通そうというそういう気持ちがあるのかどうか。そんな気持ちがにじみ込んで我々に伝わってこない。ときに、前総理のみずからの疑惑をみずから晴らすことなくやってみたり、あるいは辞任表明後は政策合意だといってまた審議をとめてみたり、あるいは羽田内閣が始まってから順調に審議がいくのかと思いましたら、大臣の居直り発言みたいなことまでが出てまいりました。各駅停車、各駅停車で非常に予算の審議がおくれてきております。  そういう中におきましても、私ども自由民主党は、他の野党の皆さんと御一緒になって何とか予算を早く上げたい、そういうことから公聴会を一日に短縮し、あるいは分科会も一日に短縮し、そういう日程の協力をもしてまいりましたけれども、きょうに至ります経過を振り返りますときに、全く、先ほど申し上げましたように政府・連立与党からの予算成立への熱意というものが感じられないことは、まことに残念に思うのであります。私は、一体なぜこんなことになるんだろう、そんな不思議な思いでございます。  結果的には、予算をおくらすことによってこれを政局の展開への何か手段に使おうとされておるのではなかろうか。あるいは大蔵もまた予算がおくれていったらそれだけ執行がおくれるから、結果的にはことしの歳出は繰り延べられていく、国民生活が困ろうがどうしようが財源的には助かる、そんな思いすら勘ぐらなくてはならないほど予算のおくれは異常であります。総理並びに大蔵大臣のお考えをお伺いをいたしたいと思います。
  230. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 御指摘でございますけれども、確かに細川内閣がああいう形で退陣されたという中にありまして、これは新しいスタートになるということのために政策合意等で時間を費やしたこと、これは御指摘のとおりであります。しかし、私どもといたしましても、何としてもやはりこの平成六年度の予算を一日も早くこれを可決していただきたいということのために、我々としてもこの審議の問題につきましてお願いを実は申し上げ、しかもこの間に、地方行政委員会ですとか、あるいは決算委員会なんかあわせてやっていただいておりますことに対して、私は実は感謝さえ申し上げておるところでございます。今後とも御審議をまた精力的にやっていただきますことを心からお願い申し上げたいと思います。
  231. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 ただいま野中委員から御指摘のように、いろんな事態によってきように至っていることを本当に残念に思っておりますが、政治絡みの問題につきましては、私は行政府の一員として言及することを差し控えさせていただきますが、いずれにしても、連立与党の一員としてこの事態は重く受けとめております。さらに、行政府、大蔵省としては、三月四日に提出したということが非常に例年に比べ遅く、そのことがこれにも影響しているということを率直にお認めさせていただきます。
  232. 野中広務

    ○野中委員 私は、そういうことなら、今地方はもうそれぞれ六月議会を迎えようとしておるのですよ。けれども、補正予算すら組むことができないわけであります。もし総理が本気でこの予算について、何とか地方に迷惑をかけないで国民生活を守るために、あるいは東北、北海道あたりの寒冷地帯の冬場の仕事のできないところに配慮をしてみたり、あるいは医療器具等早くかからなくては間に合わないもの、こういうものについて、例えば与野党の党首会談やあるいは政策担当会議をお願いをされて、そして予算審議中であるけれども、こういう異常なものについては少なくとも何とかして合意をしていただき、了解をしていただいて、前倒し執行準備行為に入るようなことをお願いをされる、それぐらいの気構えが必要だと私は思うのですよ。  何でそういうものを総理初め連立与党の皆さんはやられないのかと思うと、先ほど申し上げたように、この予算をおくらせおくらせすることによって政局の展開に何か利用しようとしておるのじゃなかろうか、あるいは結果的には財政支出をずっと延ばすことによって、財源を少なくすることに手伝いをしようとしておるのではなかろうかと勘ぐりたくなるのですよ。本当にあなたに熱意があれば、私が申し上げたように本当に困っておるところの措置について、そういう与野党間の呼びかけなり、そしてお願い事がされるような行為がされて当たり前だと思う。これについてお伺いします。
  233. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私どもは今度のこのおくれというもの、このために政局に絡めて、こんなことを考えているなんということは一切これはございません。ともかく一日一日を本当に誠心誠意やるよりしようがないという思いでおります。また、大蔵当局といたしましても、これによって財源をまた生み出そうだとか、そんな意思は全然ないということであります。  ですから、私ども、始まりまして直ちのときでありましたか、自民党の皆様にも、これを一日でも早くひとつお願い申し上げたいということを河野総裁あるいは森幹事長にもお願いしたところであります。しかし、私どもは中では執行を何とかできないかというような話をしておりますけれども、そういった今の御示唆なんかは私は大切に承りたいと存じます。
  234. 野中広務

    ○野中委員 私は当然、国民生活の現状を考え、先般来いろいろと地域の課題について質問でそれぞれ指摘がされております。あるいは新聞記事等では、外国の国立大学の講師が予算が通らぬために四月分の給料の振り込みがない、こんな苦衷さえ出ておりました。あるいは入間の基地では、それぞれ基地の本部から、この期間において騒音防止の事業をやりますから御了承願いたいという地域の合意が求められたけれども、予算が成立しないので工事にかかることができません、こういう通知があったきりで、いつからかかれるかも何にもない、こんな話をたくさん私ども各地で聞くわけでございます。したがって、私は、第一には予算を通すことに総理以下連立与党の皆さん方はいろんなことで時間を食わないで努力をされるべきであるし、私が提案した問題についても、なお努力をされるべきであると思うわけでございます。  私は、次に政治倫理について、熊谷官房長官柿澤外務大臣についてお伺いをいたしたいと思いましたが、とにかくきょうは伺います、伺いますけれども、保留はしません。  まあ私、去年の十月の六日、十二月の八日、それからこの間の二十四日質問をいたしましたけれども、質問の前の晩からけさに至るまで連日連夜、恫喝とおどしとそして嫌がらせと無言電話と、ゆうべでもほとんど、家庭に病人を抱えておりますから電話を切っておくわけにはいかないので、大変な嫌がらせであります。具体的に閣僚の名前を挙げて、何で嫌がらせをするんだ、おまえは何でやるんだという恫喝さえあります。徹底してやってやるぞという話まであります。  近代国家と言われる日本で、まだこんな情けないことが残っておるのかと私はあえて思うのでありますが、そういう意味で、若干静かな質問を行いまして、そして私自身の気持ちの整理をしながら、きょうのこの私の時間中に、柿澤外務大臣熊谷官房長官の政治倫理責任についてお伺いをいたしたいと思います。若干順番を変えたいと思います。  どうしても、羽田内閣が短命だとかなんとか言われますので、政策について余り私は質問をしたくはないわけでございますけれども、しかし、税については既に政府税制調査会に、先般大蔵大臣が言われましたように、五月の三十日に大蔵大臣から、三つの前提条件をつけて、そして機械的な計算をして、消費税の試算を政府税調に申し上げた、こういうお話がございます。そう説明をされましても、私はやはり、初めに消費税ありきだ、そういう感じがしてならないのであります。  きょうは、若干私は福祉の現場にある人間として、今度の消費税アップというのが深刻な高齢化社会における福祉の充実ということが前提に立っていろいろと言われる機会が多うございますので、そういうところに視点を置いて質問をいたしたいと思うわけでございます。  しかし、一番私、異常なのは、最近の財界の一部の人たちの発言であると思うのであります。今日まで振り返ってみますと、この人たちは、景気が悪ければ予算を組めと言うんだ、そして公定歩合を下げろと言うんだ、景気のいいときは黙っている。そして、自分たちの企業にはそれぞれ租税特別措置を講じろと、膨大な租税特別措置をやっているわけでございます。そして、振り返ってみると、あの忌まわしい証券事件、リクルート事件、バブルの崩壊。自分たちの責任を厳粛に反省し、とらえるのじゃなしに、最近では何か政治の上に自分たちが存在して、自分たちが日本の政治を動かしているような、そんな感じさえする財界の一部の人がおるというのは、私は日本のために恐ろしいことだし、それに呼応するがごとく敏感に反応する政府のあり方もまた異常だと私は考えておるのであります。  そんなことを思うときに、私は、消費税のアップというのが、超高齢化の社会を前にいたしまして、今申し上げましたように、福祉充実の視点だけとらまえて必要だと言われるのは、何か現在のお年寄りが長生きしているのが悪いみたいな、そんな感じすらこのごろ持っているのですよ。何か自分たちは長生きしているのがいかぬのかなと。そのために税金を上げなければならぬ、税金を上げなければならぬと、こう言われてくると、生きていることを感謝し、生きがいを感じるような世の中をつくらなくてはならない、そして喜ぶ世の中をつくらなくてはならないのに、高齢化社会のために、高齢化社会のためにと言われると、長生きさせていただいておることがいけないみたいな、そんな感じでこのごろのお年寄りはおるわけでございます。  また、現在、社会を一生懸命に支えてくれておる人たちは、我々がやがて迎える時代の深刻さを、今のそれぞれ税が論じられ、福祉ビジョンが論じられる中から、より深刻に考えるようになってきております。そして、直間比率の是正という前提で消費税の大幅アップというのは、どうもそういう視点だけで言われると納得ができない。もっと深刻なこの国民感情というのを私は肌で感じてほしいと思うのですよ。  例えば、つい二、三日前も聞いた話ですけれども、直間比率直間比率と言われますね。けれども、家庭の主婦は、毎日買い物に行って取られるのを直接税と思っているのですようちのお父ちゃんが給料で引かれてくるのは間接税と思っているんだ。これを一言であなた方は直間比率直間比率とおっしゃっているわけだ。そういう庶民の本当の、毎日納税者になっておる主婦の気持ちを考えながら、税制というのは私は議論をしていただかなくてはいけないと思うのです。  一方、二十一世紀の福祉ビジョンが発表されました。私も通読をさせていただきましたけれども、このビジョンを消費税との、消費税を上げることへの整合性というのは私はないと考えるのです。もっともっと、第一に、何といっても特殊法人の見直しやら大胆な行政改革やら、そして先ほど申し上げたような租税特別措置を徹底して廃止をしていく。みんなさらになって、その中からこれからの社会というのを考えなければ、矛盾をはらんだままで私は国民に税の負担を求めていくことは困難だと思います。そういう点で、消費税の先に税率アップありきというのは私は反対であります。  そこで、社会保障と国民の役割について私は考えてみたいと思うのですが、あわせて厚生大臣にもお伺いをいたしますけれども、若干私ども政治の分野にある者も反省をしなければいけないと思うのです。選挙のたびに福祉の充実をうたい、そしてすべてを公に依存するような体制をつくること、それが福祉の充実だと、何か年金とか医療とかいろいろな分野については、バナナのたたき売りみたいに選挙になったらみんなやって、公の負担をすることが福祉の充実だという印象を与えてきたことは、私ども政治の場にある者の反省をしなければいけないことだと私は思うのです。  したがって私は、自分の社会保障と国民の役割というものについて一つの考え方を持っているのです。それは、一には無理なく。無理なくということは、過重な負担ではないということです。二番目にはむだなく。むだなくということは、効率的であるということであります。三番目はむらなく。すなわち、公正で公平な負担を、受益と給付のバランスをとる、むらがないという。そういう私は三つの考え方を持っておるわけでございます。したがって、安易な公への依存、いわゆる国任せ、公任せの意識改革というものを第一にやつていかなくては、私はこれからの福祉社会を健全に築いていくことはできないと思うわけでございますが、以上申し上げました視点について、総理大蔵大臣、厚生大臣のお考えをお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、後藤委員長代理着席〕
  235. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今御指摘のありましたことは、私も全く同感でございます。  先日もお答えを申し上げましたけれども、要するに多くの負担というのは、これは確かにきついことであります。ですから、適正な負担であるということ、それからやはり福祉も、ただ大きくということだけではなくて、自立していただかなければならないという中で、適正な福祉という言い方をしておりまして、適正な負担と適正な福祉という言い方、今の三つの野中委員のお考え方というものは私も同感であるということを申し上げたいと思います。
  236. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 私も、今野中委員の話は、本当に私ども考えているとおりのことを言われたように思っております。  その中で、コメントさせていただきますが、私は、本当にこの長寿社会というのは幸せなことだと思っています。大変いいことだと思っています。その社会を何か特別視するのじゃなく、この普通の社会の中に溶け込ませていくということだと私は思っておりますし、羽田内閣の発足の際の記者会見でもそれを言いました。普通の社会の中に長寿社会を溶け込ます、そのためのいろいろな負担の関係だとか給付の関係をバランスとってやろうということでございます。  また、おっしゃるように、初めに消費税ありきでは絶対にございません。今御指摘のように、行政改革あるいは財政の支出のあり方、また不公平税制、これは本当に一生懸命やりたいと思っております。  また、念のためでございますが、私は、直間比率という言葉をこの委員会の場で使ったことはないと思います、お調べいただければ。そういう御質問があっても、消費課税の充実、所得課税の軽減という言葉を使わせていただいたと思っております。なるたけわかりいい言葉で語り合っていきたいと思っております。
  237. 大内啓伍

    ○大内国務大臣 野中先生は、実際に老齢施設や障害施設を手がけておられますし、また、村長あるいは副知事というキャリアの中で、現場でこういう問題をじっくりごらんになってきた方だと認識しております。  ただいま御指摘のスリーMといいますか、無理、むだ、むらのないというこの考え方は、これから私どもが社会保障を考えていく上での基本哲学になる、私もそう考えておりますし、今度の福祉ビジョン作成に当たりましても、言葉こそ違いますけれども、そういう面を配慮しながら、実は私が昨年の八月に大臣就任早々、今の税制改革論議が始まる前に、これからの社会保障制度の再構築という問題が三十年先を展望しながら重要になってきた、社会保障というのは、公的支援だけで支えられるものではなくて、個人や、特に家庭やあるいは企業や、いろいろな団体や地方自治体、国がそれぞれの立場に立って協力し合ってこそ初めて本当の社会保障ができる、そして、今こそ国民のコンセンサスをいただけるような、そういう将来の福祉ビジョンをつくっておかなければならぬ、そういう一念でこの問題を手がけてまいったわけでございます。大方の御批判をちょうだいしなければなりませんが、曲がりなりにも三月二十八日、そういう形でビジョンを出させていただいたのでございますが、先生の御指摘の社会保障を考える場合の一つの基本的な姿勢、これは私も大賛成であります。
  238. 野中広務

    ○野中委員 余りお褒めをいただいて困るのですが、皆さんのおっしゃる普通の国とか普通の家とか普通の社会とか普遍的というのは、どうも私には怖く映りますので、私は、やはり福祉社会を支えていくためには消費税アップが必要だというそんな安易なとらまえ方じゃなしに、今厚生大臣おっしゃいましたけれども、若干福祉の現場にある人間としてこういうことを私の口から、福祉の現場にありながら言うのは嫌なんですが、私はあえて言って、福祉の現場をもっと直視してほしいと思うのです。  というのは、私は、今大内厚生大臣からもお話ありましたけれども、三十年ほど重度障害者の収容施設、授産施設、そして養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、障害者の方はすべて理事長をやって無報酬です、他は理事をやって、理事長をやったときもありますけれども、三十数年かかわってまいりました。現に仕事をしております。  例えば、理事長をやっております私の重度障害者の施設について申し上げますと、一級の障害者手当というのは、申し上げるまでもなく、特別障害者手当で月額二万三千四百五十円であります。そこへ障害基礎年金があります。これが月額七万三千百二十五円であります。合計九万六千五百七十五円になるわけであります。これが二級の障害者になりますと障害基礎年金だけでありまして、月額五万八千五百円であります。これは施設に入っておろうと入っておるまいと、障害者であれば一級、二級それぞれ支給をされるわけであります。一方、施設については、いわゆる月額三十六万円の措置費が国から給付されます。これは施設に入っておるからであります。そうすると、家庭の中で障害者を抱えてやっておる人はこの措置費は全然入らないのであります。施設に入っておる人は措置費が入る、そして手当と年金は一緒なんです。こういう状態。  あるいは、老人ホームについて申し上げますと、養護老人ホームは十四万九千五百八十九円の措置費がつきます。特別養護老人ホームは二十五万二千四百七十四円であります。これは私が今関係しておる老人ホームですよ。別に、それぞれ入っている人は、恩給の人、共済年金の人、厚生年金の人、国民年金の人、こういう人があるんですよ。これは、この恩給なり年金は、老人ホームに入っておろうがおるまいが関係ないです。  そうすると、どういうことが起きるか。もちろん、所得のある人あるいは同居親族の所得のある人は費用負担がありますよ。費用負担がありますけれども、これは実に軽微なものであります。そうすると、入所しておる人の手当を、結局、私自身は削れと言うわけではないのでありますけれども、今申し上げたように、同じ老人でもあるいは障害者でも、同じ給付を受けるという部分に検討を加えなければ、これからの深刻な時代というのは、私はいいことずくめでは歩いていけないと思うのです。大蔵省がどんな計算をして今度の消費税を算出しておられるか知りませんけれども、私は、ここに物すごい問題点を見出して自分自身悩んでいるんですよ。  というのは、入所を頼んできます。そのときはひたむきにお願いをされます。もう今待っている人はすごいんですよ、施設が少ないから。だから、障害者の施設であろうがあるいは老人の施設であろうが、希望する人は多いけれども、これを満たすことはできません。だから、例えば私の重度障害者収容施設も、あるいは授産施設も、あるいは老人ホームも、個人の、それぞれ一人一人の預かり金は大体一億五千万から二億あります。私ども経営しておる理事長は、自分は無報酬でありながら、これを事務員がおかしなことをしないか、預かり金でございますから、個別にやっていますけれども、みんな持っているのですよ。  ところが法人は、御承知のように、非常に乏しい金で経営しております。一施設建てるのに、補助をいただいても大体五億か六億の借金をしなければできません。そして、利子補給をそれぞれいただいたとしても、私個人個人版で、自己、個人保証で建設をしたり修理をしているわけですよ。  ところが、入っておる人たちは、重度の障害になればなるほどあるいはもう寝たきりの特別養護になればなるほど、外へ行きませんから余り金使いません。だから預かり金はふえていくんですよ。これはどうなる。亡くなったときは、つい三カ月前に亡くなったときに、一番多いのが四千万持っておった。そうしたら、一度も園へ訪ねてきたことのない親戚縁者が飛んできて、そしてお骨をどこへ持って帰るということよりも、残った金が何ぼあるんだ、それの群がって取り合いをするんですよ。悲しいことじゃないですか。  そして、中には、これは学歴の高い人ほど、私はひがむんじゃないけれども、賢いんだな。親は里に置いておいて、自分は東京やら、ここらにおるんだろうけれども、全部置いておいて、そして扶養家族でもらえる間はもろうておくの、扶養家族手当を。扶養家族だから。そうしておいて、田舎の田畑はほったらかし、山もほったらかし、それは市町村が見なくちゃならないの。そして今度は、施設へ入れるときは世帯分離しちゃう。賢く考えるんですよ。そして、ひどいのは、預けますけれども、うちの親は共済年金をこれだけもろうておりますから、だから負担金を払っても月五万円は私の方へ送ってくださいと条件つけるやつがおるんですよ。  こんな社会にしてしまったのか。悲しいじゃないですか。残念ながら、こういう社会に我々はしてきたんですよ。そして、重度の障害者で本当にもう動けないようなそういう子供の障害手当を取りに来る親や兄弟がおるんですよ。私は、ここのところにメスを入れて、そして本当に相互に扶助し、みずから立ち上がることの福祉というものを考えなければ、どんなに声高に叫んだって、日本の福祉なんてよくなっていかない、これは。そして、もう若い人はそういう社会を捨てていくと思うのです。それは先進国にも見られるとおりであります。  そう考えたときに、私は、日本の家族制度、この二十一世紀福祉ビジョンにも若干相続税について、相続のあり方について触れていらっしゃいますけれども、やっぱり根本的に子供は親を養うもんだ、生んでもらって大きくしてもらったんだから、だから、兄弟が何人おろうと親を最後までみとった者が相続するというぐらいのことをきちっと決めてやらなければ、親が死んでお通夜の悲しい晩が、実は残った遺産の取り合いの醜い場面になることが今日の残念ながら日本の近代社会だということをぜひ考えて、今度の税制問題あるいは二十一世紀福祉ビジョンが打ち出されましたから、あえて私申し上げる。そうでなかったら、何ぼ税制の出入りだけ勘定されたって私はよくならないと思いますので、あえて総理、厚生大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  239. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 私どももそういう話は聞いたことがございましたけれども、しかし、実際に施設を経営されながら、そういう具体的な場面に当たられたお話を今お聞きいたしまして、まさに福祉というものを考えるときに、そこまで考えながら対応していかなかったなら、これは幾ら対応してもでき得るものではないということを改めて知らされました。ありがとうございます。
  240. 大内啓伍

    ○大内国務大臣 今本当に人間の生き方の基本に触れるお話をいただきまして、私もいろいろな言葉を思い浮かべながら今拝聴いたしましたが、人の心はそのときの社会がつくる、これはゲーテの言葉でございますけれども、私は、社会保障制度という問題だけで今御指摘のような問題は解決できる問題ではなくて、日本の社会全体のいろいろな問題についてメスを入れなければならないのであろう、そういう感を深くしながら聞かしていただきました。  かつて川端康成氏が、ストックホルムでノーベル文学賞を受賞されたときに、「美しい日本の私」と題する序説を講演されまして、美しい日本人の心とは、雪月花のとき最も友思うと、つまり、いいものを見たときに本当に人に分かち合おうと思う心が日本人の心だと。これは世界の人々に感銘を与えたのでございますが、私は、これから正しい社会保障制度の再構築の前提として、そうした日本人の今の精神的な構造についてもいろいろな面でメスを入れていくことが必要であると、先生の御指摘に全く同感であります。
  241. 野中広務

    ○野中委員 いささか福祉の現場にある者として、私はその実態に立ちながら申し上げました。  決して、先ほど申し上げましたように、私はその福祉の現場にある人たちの手当を削れという前提に立つのではありませんけれども、現実を直視しながらこれからの高齢化の福祉社会を考えていただかなければ、当初に申し上げましたように、生きていることが悪いことやら、長生きさせていただくことが悪いみたいな、そんな遠慮せにやならぬような世の中をつくってみたり、あるいは生きていることが苦しい。感謝し、喜び、生きがいを感じるような、そういう世の中をつくらなければならないと思いますだけに、あえて申し上げた次第であります。  さらに、政府税調で今それぞれ税制改正が論議をされておりますので、この機会にいささか地方の税財源について申し上げ、お伺いをしておきたいと存じます。  申し上げるまでもなく、国の財政の中期見直しが出されまして、財政状況が非常に厳しいという報道をされておるわけでございますけれども、一方、地方の財政も深刻であり、非常に財源不足が生ずる状況になっております。何か国税のみが増強されるのではないかなというそんな感じを最近の税制審議の中で私は感じてならないんです。それは私のひがみでなければいいんですが、地方の視点から見るとそういう感じがしてなりません。したがって、地方の税源もやっぱり国税と同じように抜本改正ということをやって、同じような増強をしてもらわなければ、口で地方分権なんて言っておったところで、言葉と活字だけがひとり歩きするだけであって、私は今の政府税調の、あるいは自治大臣にもお伺いしたいと思いますけれども、現在言われておる税財源のあり方については、国の税制のあり方、財源のあり方だけが重点視されておるのではないかというような感じがしてなりませんので、その点についてのお考えを聞きたいと思います。
  242. 石井一

    石井国務大臣 長年の地方自治に携わってこられました体験をも踏まえて、いろいろと現状の御指摘であろうかと思います。  平成四年度の決算及び平成五年度の見込み地方税収は、二年連続して前年度の決算を下回るという厳しい状況になっております。先般、西暦二〇〇〇年、平成十二年における地方財政に関するいわゆる計算を提出していただいた一つの試算というものがございますけれども、この時点で地方財政は五兆四千億から十二兆五千億の歳入不足になる、こういうふうなものが試算でございますけれども出ております。地方の税収の割合が低い。現在のいわゆる税収の構造の中で基本的な問題があり、地方歳出に地方税収を近づける努力がまず重要であろうか、そういうふうに思います。  今御指摘がございました高齢化の社会、介護等の地域福祉、生活環境の整備等、地方公共団体に必要な財政の需要というものはますます増大する方向にございます。今申しましたように、需要が大きくなりますことと、財源が少ないという二重の意味で地方財源が非常に苦しい状況にありますので、今度の税制改革に当たっては、国税以上に地方税の充実強化を図っていただきたい、そういう考え方を持っております。
  243. 野中広務

    ○野中委員 時間がありませんから、ひとつ私の考え方について、また改めて六日にもお伺いしますけれども、申し上げておきたいと思います。  政府税調の地方消費税のワーキンググループでは、一つには、地方税源の充実が必要であること、二つ目には、法人課税に依存した都道府県税の構造が問題であるということ、もう一つは、消費課税を地方税として導入すべきであり、その選択肢をさらによく検討すべきであるという結論を出しておられるようでございます。  政策の判断が、税調にゆだねるということで総会に報告をされておると聞いておるのでありますけれども、ところが、先般の新聞報道では、地方消費税といった具体論は先送りにすべきだという総会の意向が、私は新聞報道でございますからわかりませんけれども、報道をされております。あるいは政府税調の議論は一体どうなっているんだ、国税だけが議論を煮詰めて、地方税はもうどうでもいいのか、全く煮詰めないのか、煮詰める気持ちもないのか。さっき申し上げましたように、地方分権と口では言い、言葉では語りながら、どうも政策判断をするつもりがないのではないかな。このままほっておきますと、今後の地方税は譲与税化をしていく、そういう方向の道をたどるのではなかろうかという危惧がするのであります。私はそういう点について、今後十分、大蔵大臣も自治大臣も真剣にお考えをいただきたいということを特に申し上げて、この問題については改めてまた質問をいたしたいと思うのであります。  私は、事既に終わっておりますが、政治改革について一言だけ言っておきたいんです。私にはこういう質問の機会がもう与えられるかどうかわかりません。したがって、政治改革法案は既にもう成立をしまして、今さら何を言うんだということであろうと思いますけれども、この時代におった、たまたまおった政治家の一人として、私は、この法案の審議に加わった国会議員として、どうしても発言をしておかなければならないと思うのであります。  一つは、今さらと言われるかもわかりませんけれども、さきの政治改革法案が参議院で否決をされた後の処理が全く不明朗で、これほど憲政史上汚点を残す経過をたどったことはないのではないか。後世この批判にたえられるのかな、私はそう思えてならないのであります。  その一つは、御当人にお伺いすることができないのは残念でありますけれども、何といってもあの土井議長の調停なるものであります。憲法学者である土井議長がなぜ、参議院で否決された法案を、細川総理と河野自民党総裁を呼んで、そしてそこで理解がされ、合意がされるような方途を選ばれたのか。二院制の権威を考えると、少なくとも参議院で否決をされたものは、参議院の議長を含めて、まず反対をした自民党や共産党や二院クラブの代表の意見を聞き、かつ議長の考えを伝えられるのが常道ではないのか。野党と与党との話し合いはむしろその後にされるべきではなかったのか。私は、我が国初めての女性議長として、また憲法学者でもある土井議長の采配を、今なお惜しみて余りあるものがあるのであります。  次に、政党助成であります。  私は、政治改革という私に言わすと美名に隠れて、これほど国民をばかにしたような、恥ずかしい悪法はないと自分で考えておる一人であります。人それぞれお考えがありましょう。けれども、国民一人に二百五十円という、一見、一人単価に見せると非常に安いように見えるのでありますけれども、この根拠は何にもないのであります。  国民の税金から政党へ助成するのですから、税金を納める人が単位になります。しかも税金を納める人は、選挙権のある人もない人も、あるいは外国の在日法人、個人も税を納めておるのであります。あまっさえ観光ビザで日本へ来ている外国人も、消費税やたばこ、酒税等の諸税を負担をしておるのであります。このような我が国の政党活動と全く関係のない、選挙権もない人たちに対して、しかも現在は深刻である不況であり、消費税を上げなくてはならないような議論が今進んでおるときに、連立与党は、年内に増税について一定の決定を行うという政策合意もされておるわけでございます。  全く何の人格も有しない任意団体である政党、政党は、申し上げるまでもなく建物を建てましょうが自動車を買いましょうが、政党の名で登記をすることはできないのであります。そんなところへ三百九億も国民の税金を、さらに先ほど申し上げましたように、選挙権もない人あるいは外国人の人たちの納めた税金をも持っていこうと、私は、そういう考え方が今度の政治改革という大きな流れの中にでき上がったというのは、一人の政治家として、まことに恥ずかしい気持ちでいっぱいなのであります。むしろ国民に申しわけないと思っておるのであります。  先日来この助成について、何か聞こえるところでは、行政府は、交付後の政党の使途や経理の内容については詳細に立ち入らないような歯どめをかけるような発言をされておる向きもあります。国民の税金を任意団体に助成することすら問題があるのに、政党法もつくらないで、支出内容を調査しない、そんなことを決めるのは政治改革の道じゃない。まず、石井さんとそして松永さんと、それぞれ合意をされました政党助成法が先にあるべきである、私はこう考えるのでありますが、お考えを、あればお伺いをいたしたいと存じます。     〔後藤委員長代理退席、委員長着席〕
  244. 石井一

    石井国務大臣 いろいろ申し上げましたが、御意見として伺っておきたいと存じます。  政党法の上限のシーリングに関しましては、総総合意で合意されたものでございまして、前年度の実績の三分の二をめどに、それ以上上回らない、実績を見ながらそれを助成するということであります。  また、助成の金額の一人二百五十円の三百九億という積算は、議論いたしました中には、このたび政治資金規正法の改正によりまして資金に対します相当の制約を加えますので、この際、それにかわる財源として、これを国民の理解を求めながら得るということでありまして、政党の、これまでの自民党、社会党等既存の政党の年額の総額の三分の一程度というところでこの三百九億というものが出てきておるわけでありまして、あとの三分の二は党費でございますとかあるいはその他の、政党のいわゆる事業収支その他というふうな、毎年毎年報告されております。そういうふうな中からこれを一応の目安として出してきた、こういうことでございます。  また、政党法の問題に関しましては、政党法は、当然この資金を受ける場合にこれをきっちりと法制によって規定するべきであるという意見がある反面、そのことによって結社の自由その他を阻害するのではないか。また、政党と政党でなくなるものとの基準、議員数でありますとか得票数であるとか、いろいろの子細のことについてどのような規定をするのか。各国の情勢を見ましても、政党法を規定をしております国はごくわずかでございます。そういうようなことをも考えまして、今後自民党とそして連立与党の中で御協議をいただく、こういうふうなことになっておるわけでありまして、野中議員も御承知のとおり、何十時間、何百時間の議論を経た後に、今のような問題はいろいろの角度から議論をいたしまして四法案の成立に至ったことは、御承知のとおりであります。
  245. 野中広務

    ○野中委員 今の御答弁で私は満足したわけではありません。したがって、ぜひ政党助成法の制定を前提とされることを私はこの機会をかりて要望をしておきたいと存じます。  さて、お待たせいたしました。柿澤外務大臣、政治倫理についてお伺いをいたしたいと存じます。  私は、先日、五月二十四日の質問のときに、あなたの幾つかの政治献金や、例えばイトマンやあるいはリクルート、佐川、あるいは台湾の事務所等についてお話を聞きました。あなたは、全く関係がないと。さらに私が追加して、そして本当にあなたは台湾に事務所をお持ちになったことはありませんかと重ねて私がお伺いをいたしましたら、あなたは、全くありません、私は議員になった直後に同志とともに台湾を訪ねたことはありますけれども、事務所を持ったことなどありませんとお答えになりました。間違いありませんね。
  246. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 間違いありません。
  247. 野中広務

    ○野中委員 お伺いをいたします。  そうすると、あなたは、ウン・ツォン・ミン、日本の字で呉聰敏と書きます。ウン・ツォン・ミンというんだそうです。それから、これは立法議員をかつてやっておられましたから御承知だと思いますけれども、ザン・スウ・リャン、張、世界の世、良と書きます。この方を御存じでございますか。
  248. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 友人として知っております。
  249. 野中広務

    ○野中委員 この方は、呉聰敏とおっしゃる方は、一九九一年七月十七日に私の知り合いにこういう名刺を渡していらっしゃいます。「衆議院議員柿澤弘治台北後援会顧問」そして「呉聰敏」という名刺が刷ってあります。事実でないんですか。事務所までみんな書いて、ファクスナンバーも書いて、電話番号も書いてある。
  250. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 呉さんの息子さんがアメリカへ行くときにお手伝いをしてあげたことはありますが、そのような名刺があることは承知いたしておりません。
  251. 野中広務

    ○野中委員 私の知っている人に、この人から手紙が来ております。確かにこの人の次男は、日本留学そして東京大学大学院に入学をされました。また、長男はアメリカに留学をされました。そしてこの人の手紙、長いから全部読めませんけれども、「私は目下、台北で衆議院議員柿澤弘治事務所一外交部認可)の顧問として柿澤議員の代表としていろいろな仕事に当たっております。柿澤衆議院議員は」随分前ですからね。十年ほど前でしょう。「五十歳」、十年前ですね、あなたも還暦になられたんだから。「五十歳、東京都出身、以前は大蔵省参事官、上院、参議院議員」と書いてある。「一回に任じました。迫力のある若い将来の期待される衆議院議員であります。特に台湾に対して非常に厚い協力をいただく方であります。」そして、この中に柿澤さんの事務所の写真を同封するといって写真を同封してきていらっしゃいます。一九八三年四月十三日、台北柿澤事務所です。御存じでしょう。この人がウンさん、呉さんです。(柿澤国務大臣「見せていただけますか」と呼ぶ)どうぞ。あなたの写真がこの事務所の奥に飾ってある。どうですか。
  252. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私は、十年以上も台湾に行っておりませんし、呉さんともその後ほとんどおつき合いをしておりません。その写真は、たしか十一年ほど前だったと思いますが、これも二度目か三度目の訪台であったと思います。今お話しのように、子供さんたちのお世話をしてあげた縁がありまして、一度私の事務所へ遊びに来てくださいということで遊びに行ったことはあります。そして、ここをいつでもおいでになったときには使ってくださいということを言われて、台湾の人たちの人情の厚さというものに感激をしたことは覚えております。
  253. 野中広務

    ○野中委員 そんな中途半端なことを言っちゃだめですよ。  もう一通、この呉さんが手紙を出していらっしゃいます。いろいろずっと次男のこと、三男のことをお書きになりまして、そして三男がアメリカに留学されることを書いて、自分は福岡へ団体旅行に行くという話を書いていらっしゃる。あるいはまた東京にも行くと書いていらっしゃる。そのときに、「私は柿澤弘治東京六区衆議院議員の台北後援会事務所のお手伝いをして時間を消耗しております。心臓病もおかげでよくなり、毎朝五時に起きてバドミントンを行っております。」こう書いてある。これもうそですか。(柿澤国務大臣「見せていただけますか。だれに出した手紙か、拝見させてください。」と呼ぶ)ここです。だからこの前で見ればいいでしょう。そんな顔色変えないで。この前で見ればいい。私はうそを言っているのでも何でもない。そうでしょう。
  254. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 いずれにいたしましても、柿澤弘治事務所なるものは存在をいたしません。何人かの台湾の人たちが、一回か二回しが会ったことがないにもかかわらず日本に対して親しい感情を持ってくださって、しかし国交がありませんから、そういう意味ではおつき合いにもいろいろと制約がありますけれども、私は友人としてお手伝いができることはお手伝いをしてまいりました。  しかしそれを、今、野中先生のおっしゃることを聞いていますと、何か自分の利益のためにやっているかのごとくおっしゃっておられますが、そんなことは一度も考えたことがありませんし、その名刺のようなことを刷っているということも知りませんでした。呉さんという方も決してそんなに大きな企業をやっている方でもありません。しかし、御自分で御商売、たしか御事業をやっていらっしゃる方だったと思っておりますし、息子さんたちは今お話しのように東大に留学をしたり、またアメリカに留学をしたり、立派な家庭を持っている人でございます。私は彼の友情を信じておりますし、その意味で私を利用したというふうにも考えたくありません。
  255. 野中広務

    ○野中委員 私はあなたが台湾で利益を得ているなんて言ってませんよ。事務所を持っているか、持っていないかと言ったんだ。そうしたら、ないと言ったんだ。だから、ある証拠を出したんだ。(柿澤国務大臣「ないよ」と呼ぶ)ないってあなた、こういうものを見せられて……(柿澤国務大臣委員長」と呼ぶ)黙って聞きなさいよ。  じゃ、あなた、田中英光という方を御存じですか、横浜にお住まいの。
  256. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 存じております。
  257. 野中広務

    ○野中委員 どういうことを知っておられましたか。
  258. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 まず、その名刺や後援会という名前でございますが、議員の方であれば御承知のとおり、何らかのおつき合いがある方がそういう名刺をつくって活動をしていることはあるかもしれません。その点については、もしそういうことであったとすれば、私の不徳のいたすところだと思っております。また、田中英光、田中栄光さんと私は言っておりますが、これも私の友人でございます。長い間台湾に暮らし、台湾にたくさんの友人があって、台湾と日本との関係をいろいろな形で取り持ってきている方でございます。しかし、これも病気がちで、現在病に伏せっておられまして、もう数年その活動も停止しているというふうに聞いております。私もお手伝いをさせていただいてまいりました。
  259. 野中広務

    ○野中委員 まあ途中まで合うてますね。ずっとこの方は台北市で香柿会、香る柿澤の柿という後援会、これはさっき私が申し上げました元の上院議員もメンバーに入っていらっしゃいます。四、五十人おられます。その台北の駐在員としてあなたの秘書としてやってこられました。昨年体を害されまして、そして日本へお帰りになるまで柿澤弘治秘書田中英光という名刺を持って活動をしてきていらっしゃいます。あなた、それをうそだと言うんですか。
  260. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 うそだということは申しておりません。田中さんが私の友人であるということは先ほど来申し上げております。  田中さんの生活ぶりについて私は十分知りませんけれども、しかし質素な暮らしをしていらっしゃるというふうに聞いておりますし、そうした意味でも、私どもとしては清らかな友人だと思っております。
  261. 野中広務

    ○野中委員 私は、今幾つかのものを見せ、そして写真も出し、名刺も出し、具体的事実を聞きました。時に友人であり知り合いである、こう言いながら、非常に言語をあいまいにして、柿澤さんは正確に答えようといたしません。私は、このことの事実が明らかにされることを要望して、その返事があるまで私は質問することができません、これは。
  262. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 先ほど来伺っておりますと、私があいまいなことを言っているというふうにお話しになりましたけれども、私はきちっとお話をしているつもりでございます。その意味では全部お話をしているわけでございまして、これ以上調査をしろと言われても、何もすることはございません。
  263. 野中広務

    ○野中委員 外務大臣は、事務所を持ったことがないと二度、三度、きょう言われて、そして私は具体的に向こうの人の名前を、そして手紙を見せ、そして日本に今帰っておられる田中さんの話もしました。それでもあなたは、香柿会という、コウシカイと読むんですか、これ、台湾の後援会は。それすら明らかにしようとしない。善良な友人がおるとか、そういう表現だけじゃありませんか。もっと国会における答弁というのはきちっとするべきであります。
  264. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 何をもってあいまいとし、何をもって正しいというのか。野中先生は何か先に先入観を持ってお話しのようでございますが、そういうことはございません。香柿会というのは、多分コウシカイと読むのだと思います、中国語で何と言うのかわかりませんが。私がおつき合いをしている仲よしの友人たちが、まあファンクラブのようなもので名前をつけてくれただけでございまして、それを後援会と言うのは当たらないと思っております。
  265. 野中広務

    ○野中委員 だめだめ。
  266. 山口鶴男

    山口委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  267. 山口鶴男

    山口委員長 速記を起こしてください。  柿澤外務大臣
  268. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私は、今まで野中先生質問に対してお答えいたしましたように、事務所ないし秘書というものを台湾に持ったことはございませんが、そうした誤解を与えるようなことがあったとすれば、私の不徳のいたすところでございます。
  269. 野中広務

    ○野中委員 えらい話が変わってきたですね。  あなた、そうすると、田中英光という方はあなたの友人になるんですか、秘書だったんですか。何ですか。
  270. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私は友人だと思っておりますが、選挙を手伝ってくれたりしたこともございます。
  271. 野中広務

    ○野中委員 この人は、私、先ほど心臓病と言いましたが、これは違って、糖尿病で去年台湾から日本へお帰りになったことを御存じですね。それまで台湾にずっといらしたことを御存じですね。
  272. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ずっと台湾にいたとは私は思っておりません。家族がたしか日本におりまして、行ったり来たりしていたのではないかと思っております。
  273. 野中広務

    ○野中委員 金府ホテルの部屋に二部屋、田中さんの住居と、そして香柿会、あなたの後援会、これを去年お帰りになるまで、畳むまで借りておられましたが、これは、あなたが日航とのつなぎをやられましたので、そのお礼にロイヤルホテル台北のオーナーが提供したと言っております。あなた、それでも知らぬとおっしゃるの。
  274. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 その事実は全く知りません。
  275. 野中広務

    ○野中委員 委員長、私は、この前の質問のときは全くないと言われた。今度は、私の友人で秘書を名のっておったかどうか知らぬと、台湾へ行ったり来たりしておったという事実を認めたり。あるいはこの手紙を出して私にくれた人は、既にこの手紙を出した人は、先ほど申し上げましたようにお亡くなりになりました。日本の友人に出した手紙を私に出してくれ、この写真を送ってくれたのは、この間、五月二十四日の私の質問を聞いておられて、何と白々しいことを柿澤さんという人は言うんだろう、私はこれ以上こんな人が外務大臣をやっておったら国益にかかわると思って、勇気を出してあなたに送りますと言って、すべてを送ってきたんですよ、本人が。私と何回も話をした。私は許すことができぬと言って。  あなた、そんなことで、今日まで台湾との長い関係を続けておって、それを外務大臣になったから否定しようというのですか。一体どうなんですか。
  276. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 外務大臣になったから否定しようとしているわけでもありません。先ほど来申し上げておりますように、もう十年も行ったこともありませんし、呉さんともその間お会いしていないと思います。そういう意味でも、そうした手紙があることも存じませんし、ただ、先ほど来申しておりますように、呉さんのお子さんたちが留学をするとき、ですからもう十年以上前だったと思いますけれども、お手伝いをしてあげたことは事実でございます。
  277. 野中広務

    ○野中委員 この人の手紙には、「衆議院議員柿澤弘治台北事務所(外交部認可)の顧問として」毎日を暮らしておりますと書いてある。私は、これは外交部認可ですからね、外務大臣、はっきりと答えておいてくださいよ。あなたは、呉さんにそれから会うてないかもわからないと、そういう中途半端な答弁をしないで、明確にやはり答えるべきじゃありませんか。  この間からころっと変わっちゃっているんだ。次から次から証拠を出されたら、あなた、変化していくというのは何だ一体。
  278. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私は静かに話すつもりでございますので、先生の方もよろしくお願いいたします。  外交部認可というのは、私にはどうしても、どういう意味かわかりません。日本のことなんでしょうか、向こうのことなんでしょうか。向こうがそういうものを認可する姿勢になっているのでしょうか。その辺は全く私の理解のできないところでございます。
  279. 野中広務

    ○野中委員 私は、一国の外務大臣の名誉にかけて質問をいたしました。私も、柿澤外務大臣にこれを言う以上は、横浜にお住まいの田中さんの問題、あるいはこの手紙を送ってくれた人とも何回か話をし、私自身が今紹介をした手紙の中身についても、この人は私にすべてを渡してくれ、そして勇気を持ってこの柿澤さんの写真の飾ってある、そして日本の日の丸と台湾の旗が立っておる机に呉さんを含め関係の皆さんが立たれて柿澤さんが正面に座っていらっしゃる写真を、私はああいうことを許せないと言って送ってきてくれた。それにこんな答弁をするのは絶対私は許せませんね。私は審議することはできません。
  280. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 その手紙を送ってくれた方、野中先生に送られた方がどういう印象を持たれたかわかりません。私も理解ができませんけれども、しかし、私としては誠意を持って今まで呉さんにも接してきたつもりでございますし、その点では決して友情を裏切るようなことを前回の質問に対して答えたとは思っておりません。(野中委員質問できないです。そんなばかな話はない」と呼ぶ)
  281. 山口鶴男

    山口委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  282. 山口鶴男

    山口委員長 じゃ、速記を起こしてください。  野中君。
  283. 野中広務

    ○野中委員 私は、幾つかの事実に基づいて質問をしたつもりでありますけれども、柿澤外務大臣は、善良な友人であるけれども秘書の名前を使っておったかどうかわからないとか、あるいは台湾の呉さんについても非常にあいまいな答弁をされました。私は、現に名刺を見せて、写真を見せて、そしてやっておるわけでございます。けれども、なぜか手紙についても、顔を硬直させて、まともに私が納得できる答弁を得ることができません。  したがって、この質問は、私は、柿澤さん自身がよくお調べになって、そして改めて答弁を求めたいと存じます。委員長の御配慮をお願いいたします。
  284. 山口鶴男

    山口委員長 ただいまの質問者の要望に的確にお答えいただくように、私からもお願いを申し上げておきます。  野中さん。
  285. 野中広務

    ○野中委員 今の質問は、以上で保留をいたします。  そこで、若干時間がありますので、先ほどの政治改革に関連をして、石井自治大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  今日まで、衆議院選挙区区画制定審議会が開催をされてまいりましたけれども、ここに五月十一日の「新いばらき」という新聞があります。これは、新生党県支部連の今度の小選挙区の区割りを書いた表であります。もしこのとおり――これは海部案と違います。海部さんの第八次案と違います。もしこのとおりになったとしたら、非常に問題があるわけであります。  最近私に聞こえてくるのは、石井自治大臣のところへ新生党の代議士が、このうちの区割りについてはどうだこうだという相談をされておるという話が聞こえてまいります。そんなことがもしあるとするならば、あなたはここで何回か公平、公正とおっしゃいました。けれども、五月の十二日には、熊谷官房長官は、区割りの審議会の石川会長が入院をされた話に関連をして、一番慎重な人が入院してくれたんだからこれで早う進む、こんな話すらされたと、私にはその日のうちに入りました。こんなことが、改革を標榜し、そして厳正、公平、中立に区割りを行おうとする、そういうあり方に非常な疑問を投げかけるわけであります。  私は、個別の問題についてこれ以上具体的に言おうとしませんけれども、あなたのところで相談をされておる人も知っております。こういう不明朗なことで今度のことが推移されるとするならば、まことに残念であります。新いばらき新聞のこういう区割りがそのままできたとしたら大変な話であります。あなたのお考えがありましたら、お伺いいたします。
  286. 石井一

    石井国務大臣 その新いばらき新聞というのは、私、今初めて拝見するわけであり、またその中身がどういう区画になっておるかということは存じません。西日本のことに関しましてはかなり頭に入っておりますが、その北関東以北につきましては、いささか私も疎く、地理カンもないというのが率直な意見であります。  それから、その次に、今御指摘になりました問題、これは大変重要な問題ですから、ひとつ明快にお答えをしておきたいと思うのでありますが、私はこれまで政治改革の特別委員長あるいは政治改革協議会の座長等いろいろな形でこの審議に深くかかわってきたことは確かでございますが、今申されましたようなことにつきましては、常に心を砕き、そういうふうな意味では御批判のないように努力をしてきたつもりであります。  例えば、この審議会の七人のメンバーを指名されたのは細川総理でございますが、その方々に対しましても何ら接触を持ったことはございません。また、審議が始まりましてから今日まで、電話で一回あるいは面会もしたこともなげれば物も言ったこともない、そういうふうな状況の中で今日まで推移をいたしております。  もちろん議員の中には、非常に選挙区の区割りについて関心を持っておる人もございますけれども、私が申しておりますのは、この区画というものは神聖なもので、七名の方が決められることに対して議員は一切くちばしを入れないという、そういうしきたりになっておるんだと、希望はあると思うけれども、それを守らなければこういう性格のものは処理ができないんだということを口を酸っぱくして申しておるわけでありまして、どの委員に対しましても、そのような言葉をかけたり、希望を求めたり、ましていわんや、私のところでその区割りができるというふうなことは絶対に不可能であると、天地神明に誓ってそういうことはないということを申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)
  287. 山口鶴男

    山口委員長 御静粛に願います。
  288. 野中広務

    ○野中委員 私もそうあってほしいと思います。ただ、私のところに聞こえてくるのは、そういう具体的な話をあなたとされておるということが聞こえてくるから、私は申し上げるわけであります。  区割り審議会というのは総理府につくったんですね。残念ながら、私は、総理府を所管される長官から一度も今回の選挙制度の改正についてお答えをいただくことができないわけでありますけれども、そういうところにも、いわゆる自治省の選挙部で中心になってこれをやっておるから、自治大臣が常に答弁されるところにまた誤解も生むんじゃないですか。総務庁長官、どうなんですか。
  289. 石田幸四郎

    ○石田国務大臣 私の方は、この区割りの策定の委員会には直接何もかかわりはございません。
  290. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 何か私が、この会長が病気でどうのこうのというお話ですが、そのような事実は全くございません。私が聞いておりましたのは、会長が検査入院をされるので、そんなに心配はないというのは秘書官から聞きましたけれども、そのような事実はございません。  それから、この区割り審議会は総理府所管であるということでありますけれども、私どもは実務を一切タッチしていないのでございます。
  291. 野中広務

    ○野中委員 官房長官の所管というのは、そうすると、自治省にすべてをお任せになっているということですか。
  292. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 そのとおりでございます。
  293. 野中広務

    ○野中委員 石井自治大臣が連立与党を代表し、松永光氏が自民党を代表して、いわゆる総総合意の後、「政治改革協議会協議結果」を平成六年二月二十四日におつくりになりました。この中に、先ほど申し上げましたように、「政党交付金の交付を受けることができる政党は、法人格を有すべきであるとの自由民主党の意見に留意し、今後連立与党と自由民主党との間において協議を行い、衆議院議員の選挙区を定める法律案の国会提出までに結論を得るものとする。」これについてどんな協議をされたのですか。
  294. 石井一

    石井国務大臣 御承知のように、総総合意で十項目の合意がございまして、それが我々の与野党の協議におりてきたわけでありまして、その間、六回か七回の長い議論をいたしました。ほとんど合意に達したわけでございますが、どうしても時間的に合意に達しなかったことが二つありました。  その一つが、政党の法人格という問題であります。もう一つは、参議院と衆議院における投票の方法についてという問題でございまして、しかし時間も切迫しておりまして、与野党の中でこの二つの問題については延長線に置こうじゃないか、とりあえずここで合意をしなければどうにもならないというところから、そういう合意をいたしました。その合意にのっとって、今後連立与党と自民党と社会党がお話しをいただきたい、こういう性格のものでございます。
  295. 野中広務

    ○野中委員 そうすると、自民党と社会党、連立与党がなお協議を、区画法案を出されるまでにやるべきものだと、自治大臣はかつての連立与党を代表してこれに署名された人として確認をされるわけですね。重ねて。
  296. 石井一

    石井国務大臣 これは、自治大臣なりなんなりの介入すべき今では問題ではなくて、政党間の合意、そこには共産党は参加をされておらなかった。そういう中から、政党人が政党同士の話し合いとしてしかるべき結論を出されるものである、そのように認識いたしております。
  297. 野中広務

    ○野中委員 先ほど柿澤外務大臣に対する私は質問をいたしましたが、残念ながら満足な答弁をいただくことができません。柿澤さんがさらに外務大臣としての職責にたえ得るような調査を十二分にされて、改めてお答えになることを要望し、残念ながら熊谷官房長官に対する政治倫理について時間的に質問をする機会がございませんでしたので、次に譲りまして、私の質疑を終わります。
  298. 山口鶴男

    山口委員長 これにて野中広務君の質疑は、保留部分を除き終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  299. 吉井英勝

    吉井委員 不況の中で日本の産業が今空洞化していることに、多くの国民が大変心配をしております。  我が国の輸出の五〇%以上というのは大企業三十社が占めておりますが、中心は自動車、電機です。黒字が円高圧力となり、その黒字を生んだ自動車、電機などの大企業が生産拠点を海外へ移転して、国内では人減らしで大きな黒字を出して、一層円高をひどくしてきた。この悪循環を断ち切ることが、今我が国経済にとって重要な問題になっていると思うわけです。  ところで、今大企業は、不況の中でリストラと称して一層の人減らしと下請いじめをやりながら、海外移転をさらに進めて不況を加速している、こういう事態にあります。総理はこの現状をどのように考えていらっしゃるか、まず最初総理の御所見を伺っておきたいと思います。
  300. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 昨年来の急激な円高などを背景にいたしまして、コスト面の優位性などを求めまして、さらに製造業を中心に海外進出、これが進む可能性があるということは、今お話があったことを私も感じております。これが行き過ぎた場合には、国内の製造業の空洞化が生じるのではないかという懸念を私も持っておるところであります。このような懸念に対しましては、我が国といたしましては産業の活性化を促すことによりまして、内需主導の国際調和型の産業構造の形成を進めるとともに、雇用の確保を図っていくことが基本的に重要と考えるところであります。  具体的には、規制緩和の推進ですとか、あるいは総合的な雇用対策の推進、また新規産業の発展ですとか、創造的な事業展開を図るための各般のやはり施策をする必要があろうと思っております。今後とも、これらの総合的な政策対応を進めることによりまして、経済活動の国際協調を促進するとともに、活気ある経済社会の実現を目指していきたいというふうに思っております。  そして、規制緩和等市場開放していく中にありましては、例えばいろいろなものが日本に入ってくるというだけではなくて、やはり競争力のあるもの、そういった産業なんかも、日本の中に逆に投資というものは相当大きな希望というものがある、こういうものに対するインセンティブ等も与えていく必要があろうと思っております。
  301. 吉井英勝

    吉井委員 ここで、資料の配付をお願いしたいのですが。
  302. 山口鶴男

    山口委員長 結構です。
  303. 吉井英勝

    吉井委員 では、資料をお願いします。  私は、実は現在家電製品とか自動車などの海外生産比率がどれぐらい高まってきたかということについて、本当に深刻な事態だということをぜひ総理にも改めて御認識いただきたいと思うわけでありますが、今総理のところに行っておりますが、一九八五年と九二年で、まずカラーテレビ、一九八五年の三八・八%が今六五・九%、それから電子レンジは二一・六%が六四・五%、電気冷蔵庫で一九・〇%が四一・二%、そしてVTRで六・三%が三六・一%、自動車は五・三%が二一・二%というふうに、今本当に日本の産業の中で、海外移転によって国内が空洞化していくという深刻な事態が生まれてきております。  そこで、私は志位書記局長などとも大阪へ調査に行って、松下の孫請の人たちの声を聞いたりとかしましたが、生産が海外へどんどん移されていく中で仕事が半分になったとか、このままでは日本の産業はすべてなくなるという深刻な訴えなどを聞いてきました。もちろん、私はそこだけにとどまらないで、総理の方の長野県ですね、諏訪も深刻な事態です。調査に行きました。  松下の一次下請の業者から聞いたのですが、松下は二次下請以下を切るように指導して、そして一次下請に対して、二次以下にどう対応しているか調査票を持って調べに行く。いつでも二次、三次の下請は切れるようにしておけと言って、自分は手を汚さずに一次下請に孫請以下の切り捨てをやらせていく、という、こういう事態もありました。  それからさらに、海外生産した場合のコストを示して、海外へ行くか国内か、貴社はどうしますかと二者択一を迫るということもやっておりますし、つまりこの下請も、海外へ工場を移すか、それとも国内でも海外並みの単価でやるかと迫られているわけですよ。事態は、私は諏訪も行きましたから、総理も諏訪のことは御存じかもしれないけれども、本当に深刻な事態なのです。  そこで、この大企業の海外移転によって産業空洞化という深刻な事態が現実に起こっている、懸念じゃなくて起こっている、そういうふうに認識していらっしゃるかどうか、この点を、総理の認識を伺っておきたいと思うのです。
  304. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 まさに今グラフをもってお示しをくださったような企業、特に大企業と言われるものが海外に進出するということになりますと、実際に今お話があった事態というのは、私は数年前からやはり起こってきているというふうに認識をいたしておるところであります。
  305. 吉井英勝

    吉井委員 産業空洞化が数年前から起こってきているというのが総理の認識であると、今伺いました。  それで、実は、九二年と九三年度、自動車の生産状況を見てみたのですよ。国内生産をこの一年間で百二十七万台減らしているのです。そして、海外生産を四十四万台ふやしているのです。これは総理、どういうことかといいますと、一年間に本田一社分を超えるぐらいの生産を減らしている。つまり、本田が一社なくなって富士重工が海外に一つぽんと生まれた、こういう事態に今相当するわけですよ。自動車は、国内生産能力は大体約千四百万台ぐらいになりますが、国内需要が約六百万台、貿易が約五百万台で、大体現在国内の設備過剰は二百五十万台ぐらいになっているわけですね。海外生産能力の方は、せんだっての発表がありましたが、自動車八社の九四年計画によりますと、輸出を追い越して五百四万台、これが海外での生産だ。ですから、そういうふうにどんどんどんどん海外へ、一年間に本田が一社消えて、富士重工が海外に一社ふえるという、そういう事態がどんどん進んでいるということは大変なことであります。そうして、海外からの逆輸入、これは電機その他にも見られますが、これが中小下請企業の受注減、単価切り下げなど、不況を非常に深刻なものに今してきております。  そこで、これが続けばどうなるかということについてでありますが、これは、例えば、せんだって三和総研が海外移転による雇用喪失予測というのを発表いたしました。これを見ますと、直接投資が九三年度水準で推移した場合、六十八万人の雇用喪失が生まれる。それから、九四年度以降、年率一〇%で増加すると、九十五万人の雇用喪失が生まれる。それからまた、九四年度以降、年率二〇%で進めば、百二十六万人の雇用喪失が生まれる。これは三和総研の一つの試算ということではありますが、しかし、極めて大変な事態です。空洞化を放置すれば、これは日本の雇用の面でも、中小企業の面でも、地方自治体への影響も深刻なことになります。本当に取り返しのつかない事態を生み出してしまう。私はそれを非常に心配しているわけであります。  そこで、総理、少なくとも不況の間は、企業の海外への工場移転を取りやめさせるように求めていくとか、そういう積極的な取り組みが私は今必要なときだと思うんですが、総理の見解を伺っておきたいと思います。
  306. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 これは通産大臣担当されたり、あるいは労働大臣お話しすることかもしれません。ただ、これは自由経済の中における産業でございます。そういう中で、これが外に行くことに対して、これを阻むというようなことを、国としてどうこうするということは私は難しいなというふうに思います。  ただ問題は、私どもといたしましても、やっぱりそういったものの雇用を、今度、創出は生まれ出す方の創出でありますけれども、創造の創でありますけれども、そういったことを真剣に考えていかなければならないのであろうというふうに思っております。  しかし、いずれにしましても、よく、何というんですか、ハードなものをつくるよりサービスだけになった方がいいんだと、まだそういう時代だということを言われる方もありますし、また日本はソフトの方の分野を担当すべきだと言う方もいらっしゃいますけれども、しかし、それも一つの議論でありますけれども、やはりハードの分野というのがなくなると今お話しのあったようなことが起こりますし、また、本当の意味でのソフトというものもつくれないんだということ、こういったことはやっぱり産業界の方にもぜひとも理解していただかなければならないだろうというふうに思っております。
  307. 吉井英勝

    吉井委員 雇用は後でまた聞きますから。  まず、新規産業の発展、創造的事業展開では、これは解決できないんですよ。少し調べてみますと、自動車のような広い関連産業分野を持つ産業の空洞化というのは、少々の新規産業の創出じゃとてもじゃないがカバーできません。これは、自動車の場合は、日本の経済に占める割合から見ますと、製造業の生産額で、自動車自体が四十四兆三千億円ですが、これは日本の製造業の一二・九%を占めているんですよ。それから、我が国主要産業の自動車産業への依存度というのをちょっと見ておきますと、ゴム製品で七四・六%、板ガラスの四五・二%、ベアリングの四〇・九%など極めて高い比率があるんですね。しかも、自動車製造部門の従業員で百九十二万人、電機産業の従業員でいきますと百九十八万人ですから、これだけの雇用がかなりの部分が消えたときに、新規産業の創出などでとても埋め合わせができるようなものじゃないという、そういう深刻な問題を抱えているということをまず見ておいていただきたいと思うんです。  その上で、私は、政府自身がこれまでやはりこの大企業の海外進出を積極的に支援をしてきたという面を見れば、海外投資損失準備金等の優遇措置であるとか、輸入促進税制であるとか、海外投資保険であるとか、それからまた、東南アジアなどの進出相手国への産業基盤整備にODAを利用することとか、税制、財政、金融、行政指導などあらゆる国の機能を挙げて、総動員して、いわばこの大企業の海外進出、産業空洞化を支援するような、そういう面があったということは、これは否めない事実だと思うんですよ。  私は、我が党は、この大企業を悪と見ているわけじゃないんですよ。民主的なコントロール、それが必要であるという立場であります。そういう点から申し上げるわけですが、海外の進出の規制の問題ですね、税、財政、金融、行政指導挙げてこういう事態を生み出したわけだから、またその力を活用して、本来海外進出の規制もできるわけでありますし、私は今、本当にこういう事態を招かないように、総理としてもこれは真剣な努力というものが求められているときだと思うのです。そのことについて簡潔に一言。
  308. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 簡潔に申し上げるのは大変難しいのでございますけれども、やはりこの新しい自由貿易の時代というのは、水平分業というのはこれは避けられない問題であろうと思っております。  ただ問題は、アメリカを初めとしてカナダその他の国なんかでも、やはり海外に進出していった、そういう中で空洞化が起こる。まさに構造的な問題であるということで、今度のサミットの中でも一番大きなテーマはそうであるし、またデトロイトでのこの間の会議なんかも、やはりそこに問題があったのだろうというふうに考えております。  ただ、日本としても世界の理解の中で今日まで発展してきたというときに、途上国、そういったところはやはり大きく日本の進出というのを求めておるというのは現状でございまして、そういったものの中でどう対応していくのかということをこれから、これからというより、我々も今真剣にこの問題については議論をしておるわけでありますけれども、そういったものと新しい雇用の創出というものが並行して起こらないとすると、今おっしゃるとおりの現象が起こってくるだろうということを我々も肝に銘じておかなければいかぬというふうに思っております。
  309. 吉井英勝

    吉井委員 総理も今少し触れられたように、アメリカなどは空洞化のために、自国での製造業、生産をやめたために、景気がよくなると今度は、よくなれば海外製品の購入がふえるということでますます貿易赤字が膨らんでくるというそういう仕組みになっておりますし、また、その産業空洞化の中で失業とかホームレスとか麻薬、売春、殺人、暴力といった社会の荒廃も随分進んでいるという事態にありますから、日本もこの社会の荒廃を招かないためにも産業空洞化の問題については本当に真剣な取り組みが必要だ、このことを指摘しておいて、次に、下請企業も含めた空洞化の深刻な事態をもう少し私は見ておきたいと思うのです。  大阪の現状を少し紹介しておきたいのですが、大阪の松下電器の下請をずっと回りまして伺いました。  設備投資をさせられた上に仕事を打ち切られ、借金の返済と従業員の退職金に充てるために、三十年間働いて蓄えてきた預貯金の全部をはたき出した。その結果夫はタクシーの運転手になった。それで、家へ帰ってきても、一応仕事場と二階の居宅部分は残っておりますが、仕事場を見るのがつらい、そういうことを、涙ながらの奥さんの訴えでした。  庶民は内部留保を空っぽにして不況の中を生きているわけでありますが、大企業の方は不況を口実に人減らしで逆に内部留保をふやしていっております。これは後ほどまたそのことを触れますが、松下の本社の方は一割弱の減産でやっても、一次下請になると三割の減産、二次は五割の減産で、末端にいけば仕事が来ない。下請中小企業振興法によれば、その振興基準によれば、親企業というのは自分会社の減産分を超えて子会社に減産を押しつけてはならないとしておりますが、こういうことに照らしても違法行為と言われる事態があります。  それで、VA、バリューアナリシス、価格分析と称して、すべての部品を並べておいて、そこへ下請を集めて、集まった下請業者に、おまえさんのところだったら幾らでできるか、これは各部品ごとに単価を出させるのですが、結局下請同士の価格競争で無理な安い単価を自発的につけさせられる。つまり親企業の方は単価をたたいたという形にならないのですね。そういう場合があるということはかなり訴えられております。  さらに、末端の下請になると請求書さえ空欄で出す。つまり単価は全く相手の言い値、それも納品した後の言い値になる。発注を行うときにも納品のときにも単価を決めずに、支払いのときに親企業から一方的に通告してくる。それも請求書が空欄のままにしてあり、下請代金支払遅延防止法をじゅうりんするような、そういう事態も現にあります。  私はそういうのを随分調べてきたわけですが、せんだって、公取の方の下請法違反の調査報告が発表されました。違反の疑いありというのが前年に比べて三〇・五%増の二千八百八十二件ですよ。違反の警告処分が二五・六%増の二千四百二十八件になっています。その調査によると、支払いの遅延とか代金の減額など、こういう違反がふえているということが報告されておりました。  少なくとも、私は、下請二法を厳格に守って、こういうふうな違法行為、下請いじめを断固として一掃するという、そういう対処が今国の方でも強く求められているときだと思うのですが、この点についての取り組みを伺いたいと思います。
  310. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 ただいま先生御指摘のとおり、とりわけ一つの具体的な厳しい実態としての産業の空洞化、このよって来る原因、いろいろ諸情勢があるわけでございますが、その一つは、やはり円高という問題が今日大きな一つの要因をなしておりますこともこれまた先生御案内のとおりでございます。  そういう中にございまして、ただいまいろいろ事例が御紹介あったわけでございますが、この一つの証左としまして、いわば残念ながら返済ができない、政府系の三機関に対します金融の返済ができない、そういうような御相談も極めて数が大きくなっておるというのもこれまた実態でございまして、さような意味合いでは、ただいま先生御指摘のような、いわゆるよく御相談に乗ってきめの細かい対応をということをさせていただいているわけでございます。  これは余り褒められることではございませんけれども、その一つの事例としましては、ただいま返済猶予という意味合いで、政府系三機関におきましては、残念ながらと言った方がいいかもしれませんが、前年度対比大体五〇%の増、金額にいたしまして一兆四千億円といったような実態にも相なっておるわけでございます。  さような意味合いでは、御指摘のような新分野進出の手当ての問題等も法的な裏づけをしていただいておりますので、あらゆる施策、そしてまた金融措置、こういうものを挙げてただいまの厳しいこの実情を乗り切るように、引き続き努力を督励をしてまいりたい、かように考えております。
  311. 吉井英勝

    吉井委員 通産大臣、大分お疲れの模様で、私とあなたとは毎晩大体商工委員会で十時、十一時ごろから質疑をやっておるものですから、大体私の聞いたことと違って、事前に通告をしておきました内容の先の事務方の答弁書をお読みのようなのですが、そうじゃないのですね。  私は、こういう事態に対して、下請法違反の問題、これについては下請二法を厳格に守ってびしつとした指導をやはり断固としてやってもらわなければいかぬ、ここを言っているので、そっちの方の答弁を求めているのです。
  312. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 言葉が足らなかったと思いますが、ただいま、そういったような意味合いでの現場でのきめ細かなひとつ対応をと、さような意味合いでは、そういった違法行為等々に対しましても厳しく行政指導をやっていくべきだと、かように考えております。
  313. 吉井英勝

    吉井委員 実際黒字で、円高のお話がありましたが、実は、下請をどんどん単価を切り下げたり痛めて、それから会社の中では人減らしが進んで、それで輸出競争力をつけて、これで黒字を蓄えてまた円高という、この悪循環をずっと続けてきたわけですよ。だから、ここを断ち切るためには、もっと下請に、まさに下請二法を使って温かい対策をとっていかなければいけない。それを、逆のことをやっておったのでは、これは断ち切れないということを私は言っているわけです。  それで、一片の法律や通達だけでうまくいくものではありません。現実は、下請中小企業というのは親企業に物が言えないのですよ。弱い立場にあるわけです。だからこそ、私は、行政の役割というのが非常に大事だと思うわけです。そういう法律も活用してというお話ですが、私は、この点では本当に責任ある対処というものを、特に通産大臣、これは本当に強力な対応をしていただきたいというふうに思います。  それで次に、通産大臣、お待ちかねの、私、金融の問題も触れたいのですが、仕事とともに深刻な一つが、これまで借りてきた借金の返済の問題です。今緊急に中小企業への支援策として必要なのが、返済猶予と既往債務のある中小企業への貸し付けのことなんですが、これは大臣から、この点で頑張りたいという趣旨のことはありましたが、返済猶予をせめて不況の間は認めるような、また猶予していても新規融資の差別をしないようなその指導というものは、確かに昨年私も一部中小企業庁長官名の通達等を見ましたけれども、ここのところを本当にやってほしいというのが、これは業者の方の悲痛な声です。ぜひこの点しっかりやってもらいたいと思うのです。
  314. 畑英次郎

    ○畑国務大臣 ただいま先生にも申し上げたような、いわゆる返済金猶予五〇%増というこの数字は喜んでいいのか悲しんでいいのか、ちょっとなかなか複雑な心境ではあるわけでございますが、そういう中にございまして、とりわけ最近の実態に照らしまして、現場の方に向かいまして、行政指導というような意味合いにおきましては十二分に相談に乗ってさしあげなさい、そしてまた、これだけの厳しい実態を踏まえて、いわば、言葉が適切かどうかわかりませんけれども、弾力的な対応をしなさい、かような意味合いでの私なりの気持ちを引き続き伝えてまいりたい、かように考えております。
  315. 吉井英勝

    吉井委員 民間金融機関の方ですね、特に都市銀行の方は、バブルのときは借りたいと思っていない人のところまで、借りてくれ借りてくれと泣き落としに行ったんですよ。ところが今、借りたいときに貸してくれない、また、既往債務の返済猶予に全然応じてもらえないという中小業者の深刻な訴えをこれまた私は大阪で随分たくさん聞いているわけです。  不況で本当に困っている業者に融資をしていない。保証協会のもともと保証があれば、仮に倒産しても代位弁済が行われるわけですから金融機関は困らぬわけですよ。ですから、信用保証つき融資について、実はこれは一番活用しているのはどこだというのは、これは大蔵大臣一番よく御存じのように、都市銀行など全国銀行で、ことし三月末現在の保証債務残高は二百二十五万件、二十一兆二千二百三十七億円。信用保証つき融資については、私は、民間金融機関についても、せめて中小企業への返済猶予を認めることとか、それから、残債があっても新規貸し付けや追加貸し付けを認めて貸し渋りをしない、そういうところへいくように、やはり大蔵大臣、もう少しそういう中小業者の今の不況にこたえたような、そういう指導を厳格にやってほしいと思うのですが、どうですか。
  316. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今の吉井委員お話は大変大事な点だと思います。輸出産業の問題、特にその下請、それには金融が非常に重要であるということはもうおっしゃるとおりだと思います。  ただ、民間金融機関に対して、この債権を徴収猶予しなさいというようなことはなかなか言える立場にないということはひとつ御理解をいただきたいと思いますが、例外的には民間金融機関がそのような措置を講じているとは存じます。特に、私ども、大事なのは、今御指摘のように、二月八日の私どもの総合経済対策を出したときに、金融についての行政指針を出しまして、今御指摘の貸し渋り問題でございますね。また、吉井委員おっしゃったようにバブルのときのような貸し付け態度はいけないということをはっきりさせながら、本当に必要なところには十分出すようにしなさいと特に私どものこの行政指針には書いたのでございますが、担保に偏重するな、担保に偏重しないで事業の将来性があるものにはなるたけ貸しなさいということも言っております。  また、吉井委員御指摘の点、信用保険公庫、保証協会を通ずる仕組みというのは非常にいい機能を持っていると思います。したがいまして、二月八日のこの指針では、特定業種、つまり担保限度額を二倍にする業種を非常にふやしました。そういうようなことによって信用保証協会を通ずるこの保証制度の充実なども図ってまいることにより、御指摘の点にこたえてまいりたいと思っております。
  317. 吉井英勝

    吉井委員 実は、銀行局長名で通達、文書等を出していらっしゃいますね。私、それを見せていただいたのですが、昨年の秋に出されたものでは、保証協会には、適時適切な保証をと、それから、国金、中金には、適時適切な貸し出しをと、それからまた、返済猶予に配慮されたいと。ですから、政府系には銀行局長もなかなかちゃんと言ってはるんですが、民間の銀行に対してはどうか。「融資相談の充実」と、これは何とも抽象的でもう一つ迫力のない働きかけですね。  私は、今のなかなかの大臣の決意のほどを聞かせてもらったけれども、やはりそういう文書を出すからには、もう少し一しかも言いましたように、代位弁済があるわけでしょう。銀行は困るわけじゃないんだから、だから、この点については、もう少し力のある文書等による指導も含めて、どういう具体的な指導をされるか、その点、もう少しこの問題では大蔵大臣、一点だけ聞いておきたいのです。
  318. 藤井裕久

    ○藤井国務大臣 今の御指摘の点でございます。政府関係機関と民間金融機関には、おのずから差があることはひとつ御理解をいただきたいと思いますが、民間金融機関に関しましても、今申し上げたように、昨年そして本年にかけまして、銀行局長通達をもって、担保に偏重せず事業の将来性等に着目する姿勢のもとに融資体制の一層強化をしなさいと、こういうことを申し上げているので、御理解をいただきたいと思います。
  319. 吉井英勝

    吉井委員 返済猶予についても、ぜひあわせてそうやっておいていただきたいと思います。  次に、今の空洞化が進む中で問題になっております雇用のことですね。これは、先ほどから大分待っていただいておりました労働大臣の方に一言だけ伺っておきたいのですが、リストラ、空洞化の中で雇用が本当に深刻になってきております。そこで、最初にあなたに聞いておきたいのは、雇用保険法そしてこの法に基づく雇謝金制度の目的というのは、失業の予防、雇用の維持、この点にあると思うのですが、この点だけ伺っておきたいと思います。
  320. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 雇用調整助成金の趣旨というものは、それはいろいろ景気の変動等もありますし、それぞれの企業の調子のいいとき悪いとき、いろいろあるわけでございましょうが、そして、経営が厳しくなりかけたときに、これはもちろん失業の予防という観点がございましょう。一時的な休業をするような方、させざるを得ないようなケースとか、そういうような場合に教育訓練に出すとか、いろいろな方法でこれをつなぎとめておいて、日本型の長期雇用システムの長所というものをできる限り生かせるような、そういう方法をとろうということだろうと思っております。
  321. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、目的のところは、当然のことながら法律に書いてあるんだからおっしゃったとおりで、失業の予防と雇用の維持、これが雇謝金のもともとの目的です。  それで、先ほどの資料の二枚目の方を少しごらんいただきたいのですが、二枚目の左側ですね。雇調金の産業別、大・中小企業別支給実績、これで全部見ておりますと大変ですから、一九八六年から八八年までの三カ年分のそのトータルを書いておきました。これで鉄鋼の大企業のところの欄、真ん中ですね、見ていただきたいのです。四百十八億円、この三年間で一この時期というのはちょうど前回の円高不況時に当たるわけです。鉄鋼大手は受給第一位で、雇調金四百十八億円を受け取りました。この鉄鋼大手五社合計で同じ時期にどれだけの人が減ったか、実はこれが右側の表です。これが八六年三月と八九年三月、これはちょうど左側の年度に相当する分ですが、その間に三万五千人、人減らしが行われているんです。  そこで、羽田総理は緊急雇用問題対策会議の本部長でもあるわけですから伺っておきたいのですが、こういうことをやったら、これは総理、雇調金の意味というのはないんじゃないですか。
  322. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 確かに、先生からいただいている資料を見れば、結果として残念な形、結果になっている、趨勢になっているということは言えるわけですが、確かにおっしゃるとおり失業の予防、雇用の維持ということが雇用調整助成金の目的ではありますけれども、でも、それではもし雇用調整助成金がなかったらどうなっていたかということを考えれば、それなりに大きな意味があったのではないか。  例えば、教育訓練に行っている間に新しい職能を開発して、次のところへ移っていって立派な仕事をするとか、あるいは出向している間にまた立ち直って戻るとか、当然そういうことがあり得るわけですから、結果としてはこういう形になるのは残念ではありますが、それはある意味でいえば日本の産業構造の変化というものをあらわしていると思うわけで、本来私どもとしても、雇用調整助成金を支給をする場合には、解雇とかそういうことが行われる前に手を打つわけでございますから、そういうことのないように経済団体にもお願いをしているわけでございます。  ただ、結果として最終的にみずからの経営判断をして人員をどうするかということは、個々の企業が定めること、決めていくことでございますので、そこまで私どもは口を挟むことはできない、こういうことでございます。
  323. 吉井英勝

    吉井委員 私はきょう鉄鋼労連の資料を持ってきておりますが、その資料の一つに、この資料の目的として、雇調金を、有効に活用できるよう調査したものであるとして、あわせていろんな資料がつけてありますが、雇用保険法に基づく休業、教育訓練、出向の実施状況をまとめております。  それを、ここで資料を出してやっておりますと時間をとりますから、私の方で調べたことを申し上げておきますと、休業だけでも、新日鉄は昨年十一月からことし二月だけで延べにして十七万九千七百九十四人、住金は九三年十月から十二月だけで七万八千四百六人と、このわずか二つの企業だけで二十五万八千二百人分の雇調金を受けているわけです。  このほかも見ておくと、今度は鉄鋼五社の教育訓練の方を見てみました。教育訓練だけでですよ。延べにしてですが二十四万七千九百六十八人分、従業員一人当たり二回以上教育訓練を実施したということで雇謝金を受けているわけです。これは過去の話を今やっているのじゃなくて、そういう中で、新日鉄の七千人を初め、九五年、九六年度までの三年間で二万三千五百人の人員削減計画というのが発表されて、現に実施されております。  これでは明らかに失業の予防という雇用調整助成金の目的に反している。この雇謝金を受けている大企業については、やはり相当期間、少なくとも三年間は人減らし計画を凍結するように指導する、私はそのぐらいのことはやるべきだと思うのです。  これは労働大臣じゃなくて、緊急雇用問題対策会議の本部長として、やっぱり総理に、それぐらい今のこの深刻な雇用情勢の中で、大企業は大変だからということじゃなくて、やはり雇用を守ると、雇調金を出しているんですから、その点についての総理の決意というものを私は伺っておきたいのです。
  324. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 確かに、今こういった人減らしというものが実際に行われておる。しかし基本的には、先ほど労働大臣からお話がありましたように、その社がどんな人数を抱えるかということについては、これはその会社が考えることであろうと思っております。  しかし、今雇用調整助成金ですか、こういったものを我々は考えておりますので、こういった手当てをしておりますから、そういった中でやっぱりでき得る限りの頑張りといいますか、それはしてほしいなという思いがありますけれども、しかし、これは企業の中でやっぱり考えるべき問題であって、我々が余りこれに対して介入するということは避けなければいけないんじゃないかというふうに思います。
  325. 吉井英勝

    吉井委員 雇調金の予算、九四年度一千百二十七億四千八百万円組んでいるんですね。これだけの予算を組んで、解雇や出向や玉突き人減らしに使われたとしたら、これは本来の労働者の失業予防のためのこの目的を達し得られない、これは明らかだと思うんです。  そこで、私、先ほどの資料の下の方を見ておいていただきたいのですが、一つは雇調金を受けながら大量の人減らしをやり、ところが、短期間に生産が上向いて景気を回復して巨大な利益を上げてきている、この実態というのを二枚目のグラフで見ていただきたいと思います。  二枚目の資料のうちの上の方ですが、平成四年版の通商白書、これは丸写しですが、大企業は不況のたびに経常利益を確かに一時期は落とすんですが、すぐに人減らしその他で企業の競争力をふやしてこうぐっと上がっているというのは、これはグラフを見れば明らかなわけです。  もう一つは、さらに重大なことに、内部留保の方は、不況があれ何があれ、着実に積み増しをしていっているんです。つまり、日本の大企業というのは雇用を維持して拡大するだけの体力を十分持っている。そこのところをやはりきちっと見て、そしてこの雇調金を出している企業には、やっぱりそれだけの体力があるわけですから、こういうときにこの人減らしについては、少なくとも雇調金を出している相当期間は、これはこの人減らしを規制するように求めていくということは私は大切なことだと思うんです。この点、もう一遍、総理、どうですか。
  326. 羽田孜

    羽田内閣総理大臣 今御指摘があったのは九一年ということまでであります。九一年のこのあれが出ておるわけですけれども、確かにこのころというのは、まだ実は、何というのですか、不況のときではないということが言えるんじゃなかろうかと思っております。  ただ、内部留保をあれして、今日本の企業というのはどんどん人減らしを進めておるというお話でありますけれども、これはまあ、日本はどちらかというと潜在的な失業を日本の会社というのは抱えているんじゃないかとよその国から指摘があるぐらいでありまして、日本の場合にはその点はまだ頑張ってくれておるというふうに考えておりますし、我々としても、そういったものがうまく進められるように、これを助長することについては努力をしていきたいというふうに思っております。
  327. 吉井英勝

    吉井委員 私、このグラフを見れば明らかなように、総理、確かに不況の時期がありますね。落ち込みます。この時期に、不況だから不況だからということで、これは実は前回の円高のときも、新日鉄の社長の、円高で大変だからということで人を減らす方にもぜひ御協力をという、そういう呼びかけの文書などを私ここに持ってきておりますけれども、それを訴えて人が減ったと。しかし、それで今度は体力をぐんと回復して、そして黒字が生まれる。これはまた円高圧力を生み出していくという、そういう循環をずっと遂げてきているんですよ。その間にあって、内部留保の方は着実に蓄えをしてきているわけであります。  ですから、私はこれ、総理、やはりこの体力はあるんだと。少なくともことしも一千百二十七億の予算を組んでいるわけですよね。そしてこの雇謝金制度を使って、失業の予防、雇用の維持ということをやっているわけですから、少なくともこの制度の目的からしても、これはこの雇謝金を出している企業には人減らしの規制を行う、私はそういう強い姿勢で臨んでいただきたい、このことを申し上げておきまして、もう一つ最後に、時間がだんだん迫ってまいりましたので、次の問題として、現在、総理、ことし四月の新卒者の就職は大変ですよね。  総務庁のせんだっての発表によっても、労働力調査によりますと、今春の高校、高専、大学、短大を卒業した学生の中で十五万人の就職浪人が出たと明らかになっておりますが、来年はもっと深刻だと言われていますね。私も各種の資料を見て、本当に、これはもう深刻な事態だと強くそれを受けとめているんですが、青年の失業問題というのはアメリカでもヨーロッパでも深刻です。これはこのままいったら日本の将来を左右する青年が将来に希望や展望を見出すことができない、本当に大変な事態に今なってきていると思うわけです。ここで、労働省や文部省の一片の通達やお願いじゃだめだと思うんですよ。  総理自身、先ほど来言っておりますように、こういう時代だからこそ緊急雇用対策の本部長として頑張っていただいているわけだし、だから、日本の最高責任者として、大企業に対して社会的責任において採用抑制を行わないこととか、または大学、短大、高専、高卒などの新卒者の採用拡大を行うよう、実効ある対策というのを私は強力に求めていただきたいと思うわけです。特に前途ある青年、学生の皆さん、全国のすべての親たちの本当にそういう今を憂うるこの願いにこたえて、大企業に対して社会的責任を果たすようにしかと取り組んでいただきたいと思うんですが、総理の明確な決意を伺いたいと思います。
  328. 鳩山邦夫

    ○鳩山国務大臣 その点は実は総理にイニシアチブをとっていただいて常に御指導をいただいておりますし、とりわけ来春の女子の学生の就職については男子以上により厳しいものがございますので、先般も総理を中心に閣僚の懇談会を開催いたしましたし、あすの朝も第二回目の真剣な議論をいたすところでございます。当然、あすの議論、予想されますことは、各大臣にもできる限りお集まりをいただいて、その辺はきちんと経済界に、私も申しますが、みんなでお願いをしようというふうに考えております。  先ほどの先生の御質問にも関連をいたしますが、確かに、企業の社会的な責任というものの中には、それは景気がよくなったらうんといっぱい雇う、ちょっと景気が悪くなったらもうだめだといって人を吐き出すというような――景気変動の波は大きくてもそのいわゆる採用の波は小さくというのがこれからの企業の責任ではないかということで、私も日経連等各経済団体にそのようなお願いをいたしておるところでございます。
  329. 吉井英勝

    吉井委員 五月十八日付の日経などで、ソニーの佐野さんなどは、取締役は、雇用に対する責任を考えれば、国内の空洞化を招くような海外生産をそう簡単に進めることはできないと、今の経営者の中にもそういうお考えの方もおられるわけでありますが、本当に今日の深刻なこの産業空洞化の問題、そしてそれをどうして防止していくか、その中でどうして雇用を確保し、中小企業の経営を守っていくかということは、私は今の日本の政治の中の本当に重要な課題の一つであると思っておりますし、この点でぜひこの雇用の問題、これは本当に、雇調金を受け取りながら、しかし人減らしをやる、こういうことはもう断じて許さないという強力な態度をとって進めていただきたい。  そしてなお、購買力を取り戻すためには、公共料金とか消費税率の引き上げとかやってしまうと、これはまた賃金の問題とともに、この購買力を冷え込ますことにもなりますし、そうした生活の問題は、時間がなくなりましたので、私はきょうは置いておきますが、値上げ等はしないこととか、そのこともあわせて取り組んでもらいたい、このことを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  330. 山口鶴男

    山口委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日午前十時より公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十一時三十八分散会