○遠藤登君 私は、
日本社会党・護憲民主連合を
代表し、
ガット・
ウルグアイ・ラウンドの
交渉経過、その
報告に対する
質疑を行います。
まず、七年越しの長期にわたり、広範な
分野で
交渉に粘り強く御
努力をされた各位に、深く敬意を表したいと思います。
しかし、基礎的な食糧の例外なき
農業合意には幾多の問題がありますので、この点を中心に御
質問をさせていただきます。
まず、
羽田総理に対してでありますが、
世界の食糧・
農業、
環境問題に対する認識についてお尋ねをいたします。
今や
世界の人口は五十五億人を超え、しかも年間一億人以上の割合でふえ続けているのであります。一方、
世界の農耕地は、
環境の悪化により、年ごとに
我が国の全耕地をはるかに超えて減少を続けているのであります。あわせて、食糧の生産も減少に減少を重ね、飢餓人口の増大、
環境の悪化とともに、二十一世紀の全人類が生存をかけた今日の状況をどう
考えるのか。
また、
我が国の現状はどうなのか。穀物自給率は三割を割り込み、食糧の過半数以上を
海外に依存し、その度合いは一層
拡大にあります。二十一世紀に向かって、それを保障するすべはどこにあるでありましょうか。
国民生活の将来に展望の持てる
責任ある
政治、農政の確立を今こそ急がなければならないと思うのであります。それは、現代を生きる全
国民の
責任であると思うのであります。
また、
農業は、工業とは異質なものであります。
農業と
環境は表裏一体であることは今さら言うまでもありません。人間の命である食糧・
農業、
環境は、百年単位で人類や
国民の将来に
責任を持って対応しなければならない最重要
課題であると思うのであるが、どうか。
ガット農業合意報告に対する
質問でありますが、前段で申し上げましたように、
農業・食糧、
環境問題は、人口問題とともに、人類存亡の
課題として急迫する今日、その
課題を解決するためには、今、全
世界の国々が英知を結集して立ち上がることなくして解決することは不可能であると確信するものであります。
総理及び農林水産大臣はどのようなお
考えでしょうか。その所見をお示しいただきたいと存じます。
基本的には、
我が国の米などを初めとして、基礎的食糧は
ガット自由貿易協定になじまないのではな
いか。同
協定より除外されるべきであります。ましてや、
我が国の米のような問題については、二十三年間も減反政策を継続して、生産調整に汗を流してきた品目であります。したがって、六年後の見直しを目指し、
ガット協定の例外
措置を明確にするよう、その
努力を強く要請するものであります。
総理並びに農林水産大臣の所信をお示しいただきたいと存じます。
次に、
ガット合意の中で、問題点を幾つか
質問いたします。
まず第一に、
輸出補助金つきの
自由貿易協定とは
いかなるものか、どう
考えても
理解することができない問題であります。
また、アメリカとEuの間で未解決の食品の中に含まれる抗生物質、ホルモンなどの食品
自由貿易協定は
理解できません。また、アメリカのウエーバー条項は、どのように処理されるのか。
また、国際的に最も重要な
課題であります人口急増問題、
環境の悪化問題、異常気象の多発、食糧生産の減少、飢餓の増大など、人類存亡の
課題に、
ガット農業自由貿易協定は何を意味し、どのような役割を果たすのでありましょうか。このことは、新世紀の人類にとっては、百害あって一利なしの憂慮すべき事態と断ぜざるを得ないのであります。
総理、農水大臣、
外務大臣のお
考えをお聞かせください。
また、
合意受け入れに当たって、当時、
細川総理を初め
政府は、国境
措置、国内対策について展望の持てるように万全の対策をやりますと
宣言し、
国会と
国民に重大な
決意で公約をなされたことは、記憶にいまだ新しいものがあるのであります。内閣を継承された
羽田総理が、その所信をお示しいただきたいと存じます。
我が国の食糧・
農業の実態はどうでありましょうか。御案内のとおり専業農家は全体の一割にも満たない現状にあり、兼業農家が大
部分であります。就農者の六割以上は六十歳を超える方々であります。また、新規学卒の就農者は、年間千七百人にすぎません。これは、三千三百の全国の市町村に学卒就農者が一人もいないケースが約半数を占めるのであります。しかも、労働力の大
部分が女性であり、特に注目すべきは
農業所得の低落傾向であります。農家収入に占める
農業所得の割合は年ごとに減少をたどり、今や一七%以下であります。
特に中山間
地域は深刻であります。山村の加速度的な高齢化と集落崩壊が相次ぎ、
農業センサスの調査では、五年間に二千五百の山村集落が
日本列島から姿を消して廃墟と化しているのであります。放棄農地は三十万ヘクタールを超えようとしているのであります。
翻って、国土の七割を占める山林の実態はどうなのか。木材消費量の七割を輸入に依存し、国有林会計の赤字の慢性化や、労働力不足による民有林の経営圧迫など、
我が国林業の
課題もまた深刻そのものであります。川上が荒れれば川下にその被害が及ぶ、そのことは長い歴史の教訓であります。
また、酪農家、畜産農家を中心に莫大な負債を抱えて、厳しい市場
経済の中で廃業も転業もできかねる実例が珍しくありません。また、
我が国の
国民生活に不可欠で、新鮮な果物、例えばミカン、リンゴ、果汁なども深刻であります。
昨年の異常気象によって、二百万トンを超える米の緊急輸入、そして綱渡りの食糧政策、このような実態の上に
ガット・
ウルグアイ・ラウンドの
農業合意がなされたわけであります。米の
部分開放、関税化、その引き下げは即、
我が国農業・食糧、
環境を破壊に追いやる懸念を憂慮するものであります。
総理の持つビジョンと当面の指針をお示しください。
以上のような国内外の実情に立って、以下、具体的
課題についてお尋ねをいたします。
まず、都市勤労者並みの所得をと、選択的
拡大、自立農家育成を目指した三十二年間の農基法農政は何であったのか。それは、
農業以外の高度
経済成長政策に押し流され、再編されてきた事実は明らかであります。三十二年間の農基法農政とその延長線にある新農政のあり方を、今こそ食糧の自給を原則として、
農業・農山村、国土と
環境保全の視点に立って、改めて
農業・食糧基本法を制定すべきだと
考えるのでありますが、
総理の所見をお聞かせいただきたいと存じます。(
拍手)
次に、生産性の向上、合理化、効率化は、近代産業が持つ宿命的な
課題であります。また、国情により内外価格差も当然なことなのであります。大自然の恵みの中で生命をはぐくむ
農業は、基本的に第二次産業とは次元の異なるものなのであります。せめてGNPの二%ぐらいの予算を投入すべきであります。そして、食糧・
農業、漁業、
環境基金制度の創設、中山間振興基金制度の創設、補助・融資制度の大幅な改善を要求するものであります。
羽田総理、農水、大蔵大臣の所信をお示しいただきたいと存じます。
次に、食管制度の見直しの問題でありますが、まず、基本政策として、ミニマムアクセスの米を含めて主要食糧は国家管理とするべきであります。また、異常気象等に対して、非常時に対応するための主要食糧の備蓄に
責任を持って万全を期すことであります。また、他用途利用米制度は廃止して、限度内米穀に組み入れることであります。ミニマムアクセスの米及び備蓄の古米は、他用途利用米を原則として対応することを求めるものであります。米の潜在生産力が大幅に低下している現状にかんがみ、全国一律の減反政策を改め、集落、集団に配慮して農家の選択制とすること、米、麦などの価格政策については、需給事情に配慮するも、原則として生産費所得補償方式を堅持することを要求するものであります。(
拍手)
さらに、もみ貯蔵保管による農家備蓄制度を創設することも御検討願いたいと思うのであります。食糧の
規制緩和は、投機の対象となることなどは断固として排除されるべきであります。
羽田総理並びに農水大臣の所信をお聞かせいただきたいと存じます。
次に、基盤整備事業についてでありますが、混在化
社会に共用化している排水路、水門、基幹農道を初めとする建設費及び維持管理費を含めて完全に公費負担とすべきであります。さらに、生産費の中で一番比重を占める
農業機械費についてでありますが、各種機械の開発促進とともに、耐用強化、各種生産資材を含めて特別な価格対策を要求するものであります。
また、大型圃場整備事業については、二次、三次と圃場整備が相次ぎ、今莫大な借金の返済途中にあります。農産物価格の低迷と相まって、展望の見えない状況の中で、大型圃場の再整備、さらに連動する大型農機等に対する
投資意欲も能力もないのが大方の現状なのであります。したがって、無利子の長期融資制度の創設、国庫補助など公的助成の引き上げを強く求めるものであります。
また、大切なことは、
我が国農業の大半を担っている就農女性の
農業者年金の制度化であります。さらに、現行
農業者年金の給付額の改善を求めるものであります。
地域の農林業を支援するために、市町村の希望により、国の助成を初め公的助成を強化して、
地域グリーン支援センターなどの創設を求めるものであります。
また、国際貢献を強く求められている昨今でありますが、異常気象や災害の多発、八億人を超えるとされる飢餓の増大、
環境の悪化防止などを積極的に支援するために、食糧を含めた国際支援センター基金制度の創設なども強く求めるものであります。(
拍手)
羽田総理、外務、農林水産大臣の所信をお聞きいたしたいと存じます。
次に、本日は麦価
審議会が開催をされておりますが、価格政策が重大であります。国産麦は年ごとに大幅な減少にあり、国内産麦の自給は既に一〇%を割り込んでいる事態は重大な寒心事であります。特に、生産費を下回る価格政策は重大であります。ポスト
ガット対策を含めて現行価格を上回るよう強く求め、農水大臣の
決意をお示しいただきたいと存じます。
最後に、孤立したIWCの現状と
我が国の対処方針、また、アメリカ産リンゴを初め果実の輸入解禁が問題であります。万が一病害虫が侵入した場合に、
政府は全
責任を負って対応できるのか。また、園地の再構築を初め国内対策に
政府は
責任を持って対処できるのかをお示しいただきたいと存じます。
ポスト
ガット対策の対応について万全を期することを強く求めて、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣羽田孜君
登壇〕