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内閣総理大臣(
細川護熙君)
税制改革についての
総理発言についてのお尋ねでございましたが、もとよりみずからの
発言の重みについては重々
認識をいたしております。
連立
政権の
政策決定はどうしても政党間
交渉にならざるを得ないという一面がございますし、その結果として議論の経過が従来より表に見えやすくなって、あたかも
政策が左右に揺れているかのように受けとめられる嫌いがあるということも一面で事実であろうというふうに考えておりますが、今後とも
政策決定過程のあり方につきましては、試行錯誤もいろいろあろうと思いますが、
政府・与党間の
合意を踏まえまして、誤りなき
政策運営に努めてまいりたいと思っております。
国民福祉税の
決定過程についてのお尋ねでございましたが、私が
さきに御提案させていただきました
税制改革草案につきましては、各方面から御批判があったことは重々
承知をいたしております。
私としては、就任以来、所信表明等におきまして、
所得、資産、
消費のバランスのとれた
税体系の構築につきまして総合的な検討を行っていきたい旨を繰り返し表明をしてまいりました。また、
政府税調や
経済改革研究会からは、
直間比率の
見直しあるいは
税制改革の一体的な
実施などを
内容とする答申、報告をいただいておりましたし、私が年頭に発表いたしました「二十一世紀ビジョン」におきましても、活力のある
高齢化社会の構築のためにそれなりの負担が必要である旨を申し述べてきたところでございます。さらに、昨年十二月からは与党・
政府の
経済問題
協議会、代表者
会議などでも精力的に御論議をいただいてまいりました。
税制改革草案につきましては、第三次
補正あるいは当初
予算、
訪米など期限が限られている中で、こうした今申し上げたような御議論の積み重ねというものを踏まえて、さらに
与党各党の代表者の御
意見も承って、
所得税減税を含む
経済対策を打ち出す必要から、ぎりぎりの判断をさせていただいたということでございます。もちろん、このような手順だけで十分であるというつもりはございません。今後、
税制改革の実行に当たりましては、与党や
政府部内、さらには
国会、
国民各位の御論議を真摯に受けとめて取り組んでまいらなければなるまいと思っております。
それから、
国民福祉税の
政治的
決定過程についてのお尋ねでございましたが、一月二十九日に、私が
消費税率引き上げにつきまして念頭にないと申しましたのは、昨年の十二月末以来、
税制改革の問題につきましては、
経済問題
協議会におきまして鋭意
協議を進めていただいておりましたところから、税率が何%とか、そういった具体的な点については私として特段のアイデアがあるわけではないという意味で申し上げたものでございます。
税制改革のあり方につきましては、
さきにお答えをいたしましたように、各方面で御議論をいただく中で私なりにイメージを持ってきたところで、最終的には、第三次
補正、当初
予算、
訪米と厳しい
日程の中で、
与党各党の御
意見も承った上で、先ほども申し上げましたように、ぎりぎりの判断をし、その具体案を
税制改革草案として提示をさせていただいたということでございます。
それから、迅速な
政治決定かあるいは透明性のある
政治決定かといったような趣旨のお尋ねでございましたが、民主
政治におきましては、一般的に透明性のある
政治決定過程が尊重されるべきであることは、これはもう言うまでもないことで、私もこの
政権においてそのような
政治決定過程を心がけているつもりでございます。しかしながら、一方では、
政治は結果的にどのような福利を
国民にもたらしたかによって評価されるという一面もあるわけで、そのためには、時に限られた時間の中で迅速な
政治決定が求められる場合もあろうと思います。要は、過程と結果の兼ね合いの問題であって、リーダーシップというものを特定の固定的な型にはめて考えるのはいかがなものであろうかというふうに思っております。
なお、今のお尋ねの中で、私が連立の
政策決定のデメリットとして議論過程が外に出やすいことを強調したというお話がございましたが、私が申し上げました趣旨は、連立
政権は議論経過が外に出やすいためにあたかも論議が右左に揺れているかのように見られることが多いということを申し上げたわけでありまして、議論過程が外に出やすいこと自体をデメリットと言ったわけではございませんので、念のためにそのことは申し上げておきたいと思います。
いかなる福祉ビジョンを持っているのかというお尋ねでございましたが、
我が国は、今後
高齢化、少子化が急速に進行し、二十一世紀には本格的な高齢・少子
社会を迎えるわけでございますが、そうした
状況にありましても、活力ある豊かな福祉
社会を築いていくことが重要であることは申すまでもございません。
そうした福祉
社会の
実現に向けて、私としては、第一に、本人が希望すれば少なくとも六十五歳あるいはそれ以降も働くことができる仕組みをつくっていくということ、それからまた第二には、仕事と育児が両立し得る働きやすい
環境をつくるということ、第三には、高齢期にも健康で安心できる
社会を築くために、介護サービスの充実であるとかあるいは給付と負担の公平を図りながら、付き添いを必要としない看護体制の確立や在宅医療の
推進などに取り組んでいきたいと考えているところでございます。
いずれにしても、裏づけとなる
財源の負担や関連
施策のあり方も含めた総合的なビジョンの策定につきましては、現在、医療、年金、福祉などの
社会保障を所掌する厚生省におきまして、大臣のもとに懇談会を設置して、三月をめどに検討を急いでいるところでございます。
高福祉高負担へ転換するのかというお尋ねでございますが、
社会保障のあり方につきましては、北欧諸国のように公的保障中心の高福祉高負担型と、
米国のように自助
努力型と、その両者の中間型があるというふうに
認識をいたしております。
我が国は、高福祉高負担型でもなく、低福祉低負担型でもない、
我が国の実情に即した、公民の
役割が適切に組み合わされた
我が国なりの福祉
社会の形成を目指してきているところでございます。今後、
高齢化、少子化などに伴って、
社会保障の給付に要する費用はふえていかざるを得ないわけでございますが、今後とも
国民のコンセンサスを得ながら、公正で効率的な
社会保障制度の構築に努めてまいりたいと思っております。
国民福祉税を導入した場合の人生設計という趣旨のお尋ねでございましたが、
我が国は現在
世界に例を見ないスピードで
高齢化が進んでおりますが、現行の
税体系のままでは、
高齢化社会を支える費用の負担がますます勤労世代に偏ってしまうことになるわけで、
経済社会の活力や安定性を弱めてしまうことになりかねないということが懸念をされるところでございます。来るべき
高齢化社会を公正で活力あるものとするためには、世代を通じた税負担の平準化を図り、
社会の構成員が広く負担を分かち合うことが必要であるということから、繰り返し申し上げますように、
所得、資産、
消費の間でバランスのとれた
税体系を構築することが喫緊の
課題であるというふうに申し上げてきたところでございます。
税制改正草案は、このような
認識を持ってお示しをさせていただいたものでございます。
いずれにしても、公正で活力のある
高齢化社会を
実現するための
税制改革につきましては、先日、与党の代表者
会議におきまして、「年内の
国会において
関係の法律を成立させるものとする。」という
合意が成立をしたところで、
政府としては、この与党
合意に沿いまして、速やかに
政府・与党間の
合意を得て、年内に
税制改革を
実現するように
努力をしてまいりたいと考えております。
行政
改革への熱意ということでございますが、
我が国の行政を取り巻く内外の
社会経済情勢の変化に
対応して、新たな時代にふさわしい行政の
実現を目指すべく、行政の
改革に取り組んでまいらなければならないと思っております。
政治改革に続いて
経済改革、行政
改革ということだと思っておりますし、行政
改革に当たる熱意につきましては、いささかも御指摘のような、御懸念のようなことはないというふうに申し上げたいと存じます。
行政
改革による歳出削減についてのお尋ねでございますが、今回の行政
改革の
推進方策は、中期的な観点にも立って行政
改革に関する今後の取り組み方策を定めたものでございます。この
推進方策は、
規制緩和、
地方分権、情報公開の
推進など、各般にわたる行革の
課題につきましてその方向づけを与えるものでございます。もとより、今申し上げたようなことがすべて
財政効果に直接結びつくというものではございませんが、今後の行政
改革の
推進に当たっては、
財政改革面におきましても、制度、
施策の
見直しや歳出の節減合理化の
努力を積極的に払ってまいらなければなるまいと思っております。
官僚制
改革への取り組みということでございますが、行政
改革を
推進するに当たりまして、
内閣の
責任のもとに主導権を発揮をすることはもとより基本とするところであろうというふうに考えます。
それから、
景気の現状
認識と成長率についてのお尋ねでございますが、
我が国の
経済は、
公共投資は堅調に推移をし、
住宅投資は高い水準で推移しておりますものの、個人
消費は総じて低迷をしておりますし、設備投資も減少が続いております。
今後の
景気回復には予断を許さないものがあると再々申し上げてきたところでございますが、このたびの十五兆円を上回る
経済対策、それからまた
平成六
年度予算も
景気に配慮して
編成をいたしておりますし、こうしたことによって今後
住宅投資もさらに堅調に推移していくものと見込まれますし、さらにまた、
減税によりまして個人
消費の伸びも見えてまいりましょうし、民間部門のマインドは総じて好転をしていくものと期待をいたしているところでございます。設備投資も
回復に向かっていくものと期待をいたしております。
我が国経済は、六
年度中に本格的な
回復軌道に乗るものと見込んでおりまして、六
年度の国内総生産の実質成長率は
政府経済見通しにお示しをした伸びになるものと見込んでいるところでございます。
円高に対処する
決意ということでございますが、
為替相場は
経済のファンダメンタルズを反映すべきで、過度の変動は望ましくないというのが、昨年四月のG7以来、
日米を含むG7通貨当局共通の考え方になっているというふうに思っております。今後とも
為替相場の動向に注視をして、適宜適切に対処し、
為替相場の安定を図ってまいりたいと思っております。
残余のお尋ねにつきましては、
関係大臣からお答えをいたします。(
拍手)
〔
国務大臣藤井裕久君
登壇〕