○佐々木(秀)
委員 永井部長、ずうっとお疲れだろうと思いますけれども、もうしばらくおつき合いをいただきたいと思います。
今回のいわゆる外弁法の
改正問題、その中身それから背景などについては、同僚
委員から午前中からしばし
お尋ねがあって、大体明らかになっていると思います。そしてまた本法案も、実は、私の
法務政務次官在任中に皆さんと御
協議の上で出させていただいたものでありますので、もちろんこれをどうしても通す必要があるという思いでございます。
しかし、何といってもこの問題は、午前中の同僚
委員、特に
宮里委員の指摘されましたような経過も踏まえて、国際的な
関係、特に日米交渉あるいは日米の
経済問題としての
観点、それからまたウルグアイ・ラウンド、
ガットのステージでのテーマにもなっているというような
関係などもあって、将来にもまだこれだけで済まないぞ、また問題が出てくるかもしれないという要素も含んでおりますので、この際やはり認識を共通にし、あるいは確認すべきことなどをはっきりさせておきたいというような思いを込めて、
質問をさせていただきたいと思います。
今度のこの
改正については、私は本当に
法務省も
日弁連もよくやったなと思います。比較的短期の間でこれだけの結論を得たということは、非常に私は大きな大きな成果だったろうと思います。
法務省にしても
日弁連にしても、それぞれの立場をわきまえ、
国際関係も十分念頭に入れ、そしてそういう中で
改正すべき点は
改正しようということに踏み切っている、この御努力の点を高く評価したいと思います。
しかし、それというのも、実は、この
外国弁護士による
法律事務の
取扱いに関する
特別措置法が六十一年につくられた。それで、このつくられるまでの間には本当に産みの苦しみがあったわけですね。ここで相当な論議をして、各方面からの御意見も聞いて論議をした、その上であの
法律をつくった。そういう
議論を踏まえた上でのことであったから、それを土台にして、今度の
改正についての論議というのは比較的スムーズに進んできたのだろう、私はそういうように思っておるわけであります。
その経過をもう一回考えてみますと、この問題が
アメリカ側から提起されたというのは、実は一九七四年、昭和四十九年のことだったと思うのですが、このときにはまだ
政府間交渉の問題にはなっていなくて、ニューヨーク州の
弁護士会が
日弁連に対して
弁護士の門戸の開放を申し入れたということに始まったのだと思います。まさに鎖国を破る黒船の来襲みたいな
感じで
弁護士会も受けとめたのですね。私も当時
弁護士会の役員などもやっておりましたので、それからの
弁護士会の受けとめ方なども今思い起こしているわけです。
そういう問題提起があった後に、これも
関係者はおわかりですけれども、シャピロ
事件というのがあって、
アメリカからある
ローファームに所属する
弁護士が
日本にやってきて、これの在留を認めたところが、これが
ローファームを代表するような
法律事務所をさっさとつくってしまう、それで
活動を始めるというようなことから、
弁護士会でもこれは非弁
活動になるのじゃないかという大騒動になって、その後同じようなことで、さらに入ってこようとした
アメリカの
弁護士に対して
法務省が在留の点で問題ありとクレームをつけるというようなこともいろいろあった。
そのあげくに、それから八年たって昭和五十七年ですけれども、
アメリカの
政府が
貿易問題として改めて、初めてと言ってもいいかもしれませんが、
日本政府に対していわゆる
貿易摩擦解消の問題の一環としてこの問題を提起してきた。中曽根内閣時代で
政府としてもこれを受けとめるというような態度があったわけですけれども、日米
貿易摩擦、さまざまな問題が提起された中で、この問題が出てきた。それを
日本政府としても受けとめてしまったのですね。
そこで、今度は
政府間レベルの話となってどんどん進んでくる。
経済的な側面が非常に強調されるということになったものですから、
日本弁護士連合会、
弁護士側としても、先ほど来のこの
質疑の中でも出ていたように、これは
司法制度の根幹にかかわる問題じゃないか、それをないがしろにして
経済優先的な
観点から進められていくのではたまったものではない、これはえらいことになるということで、
弁護士会側もあるいは
法務省の方でも、重大な問題意識を持ちながらこの問題に取り組んできたというような経過があったと思うのですね。そういう
関係者の本当に御努力の中でできたのがこの外弁法だった。
ところが、せっかくそういう御努力でやれやれ一安心と思っていたやさきに、この
法律ができて間もなく、さっきもお話に出ましたけれども、また
アメリカの通商代表部が、こうしてできた外弁法によってもなお市場の開放問題から見て問題あり、なお
貿易障壁の項目に該当すると指摘をして、再びこの問題を持ち出してきたのですね。しかも、一番具体的だったのは、これも先ほどお話が出ておりましたけれども、
平成元年六月に通商代表部、USTRの次席代表が当時の法務事務次官を訪問してこの話を出す、さらにこれを具体化したのがヒルズ代表だったと思うのですね。
ヒルズさんというのは、この人も
アメリカの女性
弁護士ですけれども、なかなかのやり手で、私もずっと農林水産
委員会にいたものですから、例の
ガットでの農産物の問題には非常に私どもは苦労したのですけれども、特に米の
市場開放の問題などでも、非常に強い姿勢でこのヒルズさんは
日本に臨んできた。あわせて
弁護士の
市場開放問題でも、この外弁法の
規制、これを取っ払えということで、お話に出ていたようないわゆる五項目を突きつけてきたのですね。こういう態度というのは、私どもから見ると、
日本側が本当に苦労して、苦労して、苦労してこの外弁法をつくったにもかかわらず、それができた途端にまた文句を言ってくるという態度は、少なくとも責任ある一国の
政府の代表としてはいかがなものか。これまでの経過というのは
日本側の説明を聞いて十分わかった上で交渉に臨んでいるはずではないか、まさにこれは力を背景にした強権的な押しつけではないかということで、非常に憤慨した思いを持っております。
ところが、こうした
要求に対して
日本の世論の中では、やはり
日本はまだまだこういう国際的な
関係で
規制を強めているということは好ましくない、もっと
市場開放については積極的になるべきだというようなことを言う向きがあったり、財界の中でもこれに迎合するような
主張をする論調があったり、そしてまた一方、臨時行政改革推進審議会などがこの問題について取り上げるというようなことが動きとして出てきたわけですね。
そこで、私どもとしても大変心配をいたしました。実は、これが具体的な論議になりましたのが
平成四年でありますけれども、
平成四年の一月だったと思いますが、第三次行革審で、先ほど
永井部長お話しのように、世界と共に生きる部会でもこれを検討事項として取り上げたわけですね。
特に、これはいかがなものかと思ったのは、
我が国の内なる
国際化を進め、世界に対して開かれた社会にしていく必要があるということをこの部会の方で言われて、国際的責務を果たし得る行政の実現に向けて行政改革を推進する
観点から、行政の
制度、機構等の見直しを行い、具体的改革を検討するということを趣旨として言われ、「調査・検討事項」の主なるものの中の第四番目として、「
制度・基準の
国際化」というものをうたい、そして、その具体的なテーマとして、「
資格」の項で
外国弁護士の問題を取り上げている。ここでは、
日本の
弁護士との
共同経営などの面で、
外国法事務弁護士の
活動に対する
規制を
緩和する必要があるかどうかということを具体的な検討事項にする、こう言われているのですね。
これが(5)項で「
資格」となっておりまして、そのもう
一つ前の項、(4)では、「国際的視点からの
国民生活、消費者
利益の向上等」というのが挙げられて、その
最初には、「運転免許更新手続きの簡素化」なんというのがあるのですね。
弁護士問題はその下にきているわけですけれども、こうした運転免許の問題と
弁護士の問題とを同列に扱う、あるいはその下位に置きながらというあたりにも私は大変な不満を
感じて、そして実はその年の予算
委員会の分科会でも
質問をさせていただきました。
三月十一日の分科会ですけれども、主として、現在は民事
局長をなさっておられる濱崎さんが、その当時は調査部長をおやりになっていて、濱崎さんあるいは外務省の方、それから行革審の方に対して
質問をし、お答えをいただいたということがございまして、今申し上げましたような問題点を指摘したことを思い出しております。
そうした問題はきょうの
議論の中でも出ておりますし、今後もやはり引き続いて意識しておかなければならなかろうと思っております。しかし、それにいたしましても、今回の
改正案がこういう形でまとまった。改めて繰り返しますけれども、
関係者の皆さんの御努力に私は心から敬意を表したいと思います。
そこで、この
制度ができてから今日まで、随分繰り返しということもあり、後退ということもあるようですけれども、
アメリカを
中心にしながら、各国の
弁護士が
日本に来られている。部長のお話ですと、きのう付でですか、七十九名ぐらいだということですね。総数として八十名は超えたことはないのですかな。少し超えたことはあった
のですか。しかし、八十名前後だということで、当初私どもが予想していたよりは比較的少なかったわけですね。その少なかったという
理由の
一つは、外弁法による
規制が強いんだ。
そこで、今度の
改正でさらに
規制が
緩和されるんだということなんですけれども、これはなかなか難しいかもしれませんが、今度の
規制緩和で、今まで大体八十前後で維持されてきたこの入国者の数というか、いわゆる外弁の数ですね、これは今度は相当数ふえるという見込みをお持ちになっているのか。これは
日弁連とも話し合っておられるかもしれませんけれども、その辺の予測というのはどんなものですか。うんと大幅にということでもなさそうには思うけれども、どんなものでしょうか。