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1994-06-08 第129回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年六月八日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 高橋 辰夫君    理事 小澤  潔君 理事 斉藤斗志二君    理事 島村 宜伸君 理事 山本 有二君    理事 中村 時広君 理事 山田 正彦君    理事 小森 龍邦君 理事 冬柴 鐵三君       奥野 誠亮君    塩川正十郎君       津島 雄二君    笹川  堯君       土田 龍司君    山岡 賢次君       佐々木秀典君    坂上 富男君       山花 貞夫君    大口 善徳君       富田 茂之君    弘友 和夫君       荒井  聰君    枝野 幸男君       正森 成二君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中井  洽君  出席政府委員         法務政務次官  牧野 聖修君         法務大臣官房長 原田 明夫君         法務大臣官房審         議官      森脇  勝君         法務大臣官房司         法法制調査部長 永井 紀昭君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 則定  衛君  委員外出席者         警察庁刑事局暴         力団対策部暴力         団対策第二課長 村田 保史君         大蔵大臣官房審         議官      西方 俊平君         大蔵省主税局税         制第一課長   大武健一郎君         最高裁判所事務         総局民事局長  今井  功君         最高裁判所事務         総局刑事局長  高橋 省吾君         参  考  人         (学習院大学法         学部教授)   前田  庸君         参  考  人         (経済団体連合         会副会長)   歌田 勝弘君         参  考  人         (東京証券取引         所副理事長)  井阪 健一君         参  考  人         (日本大学法学         部教授)    稲田 俊信君         法務委員会調査         室長      平本 喜祿君     ───────────── 委員の異動 六月八日  辞任         補欠選任   大口 善徳君     弘友 和夫君   枝野 幸男君     荒井  聰君 同日  辞任         補欠選任   弘友 和夫君     大口 善徳君   荒井  聰君     枝野 幸男君     ───────────── 本日の会議に付した案件  商法及び有限会社法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四六号)      ────◇─────
  2. 高橋辰夫

    高橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出商法及び有限会社法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として学習院大学法学部教授前田庸君、経済団体連合会会長歌田勝弘君、東京証券取引所理事長井阪健一君、日本大学法学部教授稲田俊信君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  前田参考人歌田参考人井阪参考人稲田参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、前田参考人にお願いいたします。
  3. 前田庸

    前田参考人 ただいま御紹介いただきました前田でございます。  発言機会を与えていただいて、大変光栄に存じております。  このたびの商法改正法案は、長年経済界から要望されておりました自己株式取得規制緩和要望にこたえるとともに一規制緩和による弊害が生じないようにするためのものでございます。  自己株式取得規制は、比較法的に見ますと、二つのタイプに分けることができます。第一のタイプは、自己株式取得したらその株式消却することを要求するというものでございます。これを消却型の自己株式取得と言うことができると存じます。第二のタイプは、取得した自己株式保有することを認め、相当の期間内にこれを処分するということを要求するものであります。これを保有処分型の自己株式取得と言うことができるかと存じます。  アメリカ自己株式取得規制は、消却型のものしか認めてない州と保有処分型のものを認める州とに分かれております。いわゆる金庫株制度を認めている州は後者に属するものと言うことができます。イギリスでは、原則として消却型のものしか認めておりません。ドイツ及びフランスでは消却型のものと保有処分型のものの双方を認めております。  このたびの改正法案におきましては、株式会社一般についての規制と、定款株式譲渡を制限している株式会社についての規制とを区別しております。株式会社一般につきましては、保有処分型のものは使用人、いわゆる従業員譲渡するためにする場合にのみ認めております。しかも、その取得する株式数につきましては発行済み株式総数の百分の三以下といういわゆる数量規制を付しております。消却型のものにつきましては、何のために取得するかという目的も制限しておりませんし、かつ何株取得するかといういわゆる数量規制もいたしておりません。広く認めているということが言えるかと存じます。  定款株式譲渡を制限している株式会社につきましては、右に述べたほかに、株主から株式譲渡請求及び先買い権者指定請求があった場合及び相続により株式取得して株主になった場合に、このような株主からの自己株式取得を、両方合わせて発行済み株式総数の五分の一以下という限度で認めております。中小企業特殊性に配慮したものでございます。  なお、有限会社につきましても、定款株式譲渡を制限している株式会社原則として同様でありますが、使用人譲渡するためのものはその必要性がないということから認めておりません。  いずれにしましても、自己株式・持ち分の取得財源につきましては、資本充実維持原則を損なわないように、配当可能利益によることを限度とする等の規制をしていることは言うまでもないところでございます。  以上に述べましたように、改正法案は、株式会社一般につきましては、保有処分型のものは使用人譲渡するためにのみ、しかも比較的厳しい数量規制のもとで認めているにすぎません。この点につきまして、規制緩和が限定的過ぎるという不満を抱く向きがないとは言えないかもしれません。アメリカの、先ほど申し上げました金庫株に相当するものを認めるべきだという意見があることも承知いたしております。  しかし、保有処分型の自己株式取得を広く認めるという立法のもとでは、取得した自己株式処分する場合に、商法上のみならず証券取引法上も新株発行と同様の規制をする必要があります。と申しますのは、会社取得した自己株式処分するということは、会社がその取得した者とその分につきましては新たな社員関係株主関係に入るということでございまして、これは実質的に見て会社新株を発行するということと全く同じ結果になるからでございます。金庫株制度のように一般的に保有処分型の自己株式を認め、しかもその処分について新株発行と同様の規制をしないということは、自己株式取得新株発行に関する規制を免れるための脱法として利用されるということを認めることになりますので、許されないというふうに考えられます。アメリカ金庫株制度を認める州において、その処分につきまして新株発行と同様の規制をしているというのは、これは今も述べたことからいいまして当然のことであるというふうに考えられます。  このように考えますと、保有処分型の自己株式取得を広く認めて、そのかわりにその処分につきまして新株発行と同様の規制をするという立法と、それから消却型の自己株式取得を広く認めて、株式消却後に資金調達の必要が生じた場合には新株発行によってその必要性を賄うという立法とは、形式的には異なっても実質的には差異がないということが言えるわけでございます。アメリカ消却型のものしか認めていない州と金庫株制度を認めている州とで、両者の差は形式的な差にすぎないと言われているのは、今申し上げましたところから理解できるわけでございます。  そして、我が国のこのたびの改正法案は、第一に、消却型の自己株式取得につきましては、目的規制数量規制なしに広く認めるという立場をとっております。第二に、保有処分型の自己株式取得につきましても、使用人譲渡するためという具体的な目的規制と、それから比較的厳しい数量規制のもとではありますが、これを認めておりまして、しかもその処分につきましては新株発行と同様の規制をしない、そういう見方をしているわけでございます。  以上に述べましたことから、このたびの改正法案は、自己株式取得規制緩和につきまして、決して限定的だという批判は妥当しないのではなかろうか、しかし弊害防止のために必要な限度での規制はしている、そういう意味で妥当な内容なものであるということを御理解いただきたいと考える次第でございます。  私の意見表明はここで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手
  4. 高橋辰夫

    高橋委員長 ありがとうございました。  次に、歌田参考人にお願いいたします。
  5. 歌田勝弘

    歌田参考人 経団連の副会長並びに経済法規委員長を務めております歌田でございます。  本日は、経済界考え方を申し述べる機会を与えていただきましたことを厚く御礼申し上げます。  初めに、商法改正に対します私どもの基本的な考え方を申し述べさせていただきます。  商法企業活動にとってまさに基本となる法律でございまして、私どもは大きな関心を持ってその動きを見守っております。また、昨今の経済社会変化並びに急速な国際化の進展などからいたしますと、経済法規については必要な法改正はタイムリーに速やかに行うことが、ますます重要な課題となってきていると考えております。今回お取り上げいただきますこの自己株式の問題は、まさに必要性が高く、また時宜にかなったものでありまして、ぜひとも今国会における改正を実現していただきたいと存じております。  さて、自己株式取得規制緩和の問題につきましては、経団連といたしましては、二十数年来要望しております重要課題でございます。この要望の背景といたしましては、従業員持ち株制度運営円滑化などさまざまなものがございます。とりわけ諸外国においては、我が国と違って自己株式取得について、これを広く認めるという法制になっておりまして、我が国と諸外国法制の違いから、海外に進出した我が国企業活動に大きな影響が出ております。ストックオプション制度利用などによって、アメリカ企業とイコールフッティングで経営できるようにしたいという強い要望があるわけでございます。  加えまして、昨今の資本市場の大きな変化を見逃すわけにはまいりません。自己株式取得は、ともすれば企業側立場からのみ論じられておりますが、株主利益にもつながるということでございます。また、グリーンメーラーや悪質な乗っ取りをたくらむ者が、日本企業自己株式取得という防衛手段を持つというアナウンスメント効果によって、乗っ取りをちゅうちょする場合が出てくるということも考えられまして、そのような点からも、自己株式取得が認められること自体に意味があると考えております。  私どもといたしましても、単に規制緩和を求めるだけでなく、資本充実原則に反しないよう、取得財源配当可能利益の範囲に限定すること、並びにディスクロージャーに関し必要な規定を置くといった弊害防止措置を具体的に提案してまいりました。  特に、ディスクロージャーに関しましては、企業保有する自己株式について、商法上は貸借対照表並び附属明細書に細目を書くということで現行制度ができております。さらに今後は、証券取引法上、四半期ごと特別報告書によって自己株式取得状況をディスクローズすることになりますが、経団連といたしましてもこの制度化に側面から協力してまいりました。  インサイダー取引株価操作懸念につきましても、今回、そのような懸念を完全に払拭する意味から、あわせて証券取引法上の制度整備するということで解消されると思っております。  今回、商法改正法案を取りまとめていただき、ともかくも自己株式取得保有の禁止という今までの厳格な規制が見直されまして、規制緩和に向けて一歩踏み出しますことを、私どもといたしましては高く評価いたしております。  しかしながら、改正法案におきまして、自己株式保有できるケース従業員持ち株会譲渡する場合に限定されましたことは、私どもとしていささか不満が残るところでございます。自己株式保有には、株式持ち合い解消の受け皿でありますとか、これは、持ち合い解消の申し出があったとき一時的にこれを自己株式の形で保有し、譲渡先が見つかった段階で売却するというものでございますけれども、このようなケースや、あるいは先ほど申し上げましたようなストックオプション利用、例えば日本企業海外に持っております子会社のトップに優秀な現地の人を採用したいという折に、現地企業がやっておりますようなこの制度が使えることが競争上必要であるというようなことでございますが、さらには、敵対的な企業買収への対応など、さまざまなニーズが見られます。また、時代の急速な変化に伴い、今後新たな必要性が出てくる可能性も十分にございます。私どもといたしましては、従業員持ち株会への譲渡以外のケースにつきましても、臨機応変に自己株式保有が認められますよう、弾力的な措置をお認めいただければ大変ありがたいと考 えております。  なお、自己株式取得に関連いたしまして、かねてからみなし配当課税見直しが懸案となってまいりました。この点につきましては、平成六年度の税制改正で一部手当てがなされましたものの、依然としてみなし配当課税そのものは残されております。実際に、自己株式取得並びに消却を円滑に行いますためには、やはりみなし配当課税を撤廃する必要がございまして、この点につきましても御理解を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。  以上、商法改正に関する経済界意見を述べさせていただきました。重ねて申し上げますが、今回の改正は、経済社会の急速な変化対応いたしますとともに、法制度の国際的な整合性をも考慮するという意味から、まさに一歩先に出たという意味で、まことに時宜を得た改正だと存じております。  諸先生方の御理解を賜りまして、この法案ができるだけ早期に成立し、早期に施行されますよう、お願い申し上げる次第でございます。  御清聴いただきましてありがとうございました。(拍手
  6. 高橋辰夫

    高橋委員長 ありがとうございました。  次に、井阪参考人にお願いいたします。
  7. 井阪健一

    井阪参考人 東京証券取引所井阪でございます。  法務委員会先生方には、平素から証券市場運営につきまして御高配を賜っておりますが、本日は、商法等の一部を改正する法律案審議に当たりまして、意見を申し述べる機会を与えていただきましたことを、大変ありがたく存じております。  御高承のとおり、証券市場は、企業資金調達及び国民の資産運用の場として、その役割を担うものでございます。私ども証券取引所といたしましては、その健全な発展のため、公正、透明で、効率的かつ流動性の高い市場維持運営していくことが重大な責務と存じております。  こうした基本的な考え方のもとに、私どもは、株式投資者層特に個人投資者層の拡大のための諸施策を講ずるとともに、上場会社に対しましては、配当政策見直し投資単位引き下げ等株主重視の経営を強く要請してきたところでございます。  このような証券取引所の基本的な責務政策課題を踏まえつつ、意見を申し述べさせていただきます。  初めに、自己株取得規制緩和意義につきまして、一言触れさせていただきます。  欧米におきましては、自己株取得企業資本構成是正株式需給バランス改善等のさまざまなニーズによって行われていることは、御高承のとおりでございます。今回、自己株取得規制、特に利益による消却のための取得規制緩和されますことにより、こうしたニーズにも対応が可能となりますとともに、我が国におきましては、株式所有構造是正にも役立つのではないかと考えられます。  従前から議論されておりますように、行き過ぎた株式持ち合いは、市場における公正な価格形成や円滑な流通を阻害するおそれがございます。したがいまして、その是正を図ることは、証券市場機能強化の面で強く望まれるところでございます。こうした観点から、自己株取得規制緩和を図るこのたびの商法改正は、証券市場運営に携わる者として意義深いものがあると考えております。  それでは、具体的な改正点につきまして意見を申し述べたいと存じます。  まず、使用人譲渡するための自己株取得といたしましては、従業員持ち株会への譲渡目的による取得が中心になると考えられますが、この目的での自己株取得につきましては、法務省でまとめられた各界の意見の中でも賛成の意見が多かったようでございます。持ち株会への譲渡目的での自己株取得が認められますことは、持ち株会による株式買い付け時期の弾力化が図られ、その運営円滑化に資することとなるため、結構なことであると考えられます。  次に、利益による消却のための自己株取得につきましては、現行商法上も、定款規定に基づく取得が認められておりますが、この規定に基づく取得につきましては、その手続に解釈上の争いがあること及びみなし配当課税の存在のため、実務上はほとんど行われてこなかったわけでございます。  今回の改正は、こうした問題に対応して、新たに定時株主総会普通決議に基づく利益による消却のための自己株取得を認めたものであり、また、税制につきましても、平成六年度の改正により一定改善が図られておりますので、今回の改正は、証券市場機能強化に資するものと考えられます。  なお、消却のための自己株取得方法につきましては、市場での買い付け及び公開買い付けによる取得に限定されております。私どもといたしましては、株主平等の原則に反することなく買い付けが行われますことに加え、取引透明性確保も図られますことから、これらの方法に限定されましたことは適当であったと考えております。  このほか、今回の改正では、自己株取得に関する株主への情報開示自己株取得を行った会社取締役の責任などについても適切な規定整備が行われており、株主利益保護などの観点から好ましい内容になっていると考えております。  特に、開示につきましては、株主総会招集通知自己株取得に関する議案の要領の記載が義務づけられるなど、株主に対して事前の説明が十分に行われますことは、適切な対応であったと考えております。この商法規定による開示と、別途国会に提出されております証券取引法改正による一定期間ごと自己株取得状況開示などとが相まって、株主及び投資者に適切に情報開示されるものと考えられます。  なお、証券取引所といたしましても、上場会社株主総会自己株取得承認決議案を提出することを取締役会などで決定した時点でその開示を求めるなど、投資者保護のための適時開示充実に努めてまいりたいと考えております。  最後に、商法改正案に関連いたしまして、市場における取引公正確保観点から、留意すべきと思われる事項につきまして申し述べたいと存じます。  まず、自己株取得にかかわる内部者取引につきましては、別途国会に提出されております証券取引法改正案において、自己株取得を行うことについての決定を、内部者取引規制上の「重要事実」とするなど、所要の整備が図られることとなっており、証券取引所といたしましても、法令の改正に合わせて必要な対応を図ってまいりたいと考えております。  次に、自己株取得方法のあり方につきましては、発行会社による相場操縦的行為を防止する必要がある一方で、会社相場操縦疑いを持たれることを恐れて、取得に過度に慎重になることを避ける必要もございます。したがいまして、公正かつ円滑な自己株取得が行われるためには、証券取引審議会報告で示されておりますような、相場操縦疑いを招くような具体的取引態様が周知徹底されていくことが必要であり、私どもといたしましても、適切な対応を図ってまいりたいと考えております。  以上、証券取引所立場から、今回の法律改正案について意見を申し述べてまいりましたが、私どもといたしましては、証券市場機能強化観点から、本法律案早期に成立し、一日も早く施行されることを願っております。  本委員会及び委員の諸先生におかれましては、今後とも証券市場発展に御高配を賜りますようお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手
  8. 高橋辰夫

    高橋委員長 ありがとうございました。  次に、稲田参考人にお願いいたします。
  9. 稲田俊信

    稲田参考人 ただいま御紹介にあずかりました 日本大学稲田でございます。  私ども研究会におきまして、さきに「自己株式取得及び保有に関する問題点」という質問事項につきまして、その意見をまとめまして既に法務省の方に提出させていただいております。そこで、本改正についての意見を述べさせていただく前に、この改正要綱と関連する問題につきまして、私ども研究会において検討した概要をまず述べさせていただきまして、その後に私の本改正要綱についての意見を述べさせていただきたいと思います。  現行の二百十条によりますと、自己株式取得というものにつきましては非常に厳格な規定が設けられておりまして、現実的には不可能と言われるほど非常に難しいものになっており、例外的に認められるものは必要やむを得ざるもの、こういうふうに規定されております。このことにつきましては、御承知のように、従前から一応商法学者の間では支持されてきた見解でございますが、最近いわゆる株式金融政策と申しますか、こういう論からもう少し緩和したらどうか、こういう意見が述べられ、商法学者の中でもいろいろな形で議論されております。  今回の改正要綱の中で、一番企業界から要求されている事項と申しますのはへやはり利益をもってなす株式消却という点であろうかと思います。この理由をいろいろ検討していきますと、一番大きく挙げられるというものに、最近出てきた株式金融論から見ていきますと、証券市場に非常に株式が多くなり過ぎた。このことはバブル時代新株発行、あるいは転換社債転換、こういう状況下においては確かに多くなったということが認められる、その結果一株の利益配当が非常に下がっている、これを上げるためにはもう少しそこに利益配当額を高くする必要があるのではないか、こういう論があります。  これにつきましてはいろいろな理由が述べられておりますけれども、果たして、自己株式取得をすることによりまして市場の全体的な割合を下げることができるのか、それによって利益配当を高くし、株式市場を盛況にもう一度導くことができるのかということにつきましては、少々疑問を感ぜざるを得ません。株式が少なくなった段階におきまして、もし配当が、今までのような一株当たりが五円、十円というようなものではなく、もう少し高い基準になっていくならば、その効果は上げることができると思うわけでございますが、果たしてそのような方向に企業が向いてくれるものかどうかは、少々疑問になります。  また、利益をもって株式消却するということについて、日本企業従前は、できる限り利益というものを内部留保いたしまして、体質改善、自己資本の強化ということを図りたい、こういうところから、どちらかというと、利益留保ということについて非常に気配りをしてきたという面があるわけでありますが、今回のような形で、利益留保というよりも、それをもって消却するということが、このような従前企業考え方というものを完全に否定しているのかということについても、疑問を感じております。  問題となりますのは、全体から見た場合に一番危惧することは、やはりこういう自己株式取得ということを認めることによりまして、企業内におけるいわゆる株価操作あるいは内部者取引ということについて、完全な整備というものをなしたことを前提といたしまして、この自己株式取得というものを考える必要があるのではないか、これが我々の研究会における大体の方向でありました。  それを前提といたしまして、ここに出されております改正要綱の各内容について、少々述べさせていただきたいと思います。  使用人譲渡するための自己株式取得というものは、これはもう従前から、いろいろな形で従業員持ち株会の方からも要求が出されており、株価が急激に変動したりするということはまずいということを言われていた限りにおきましては、この改正というのは非常に当を得ているのではなかろうかというふうに思います。  ただ、本改正の要綱の中には、持ち株会の方からの枠組みといいますか、買い取りの要求額というものについての配慮が何ら規定上なされていない。もちろんこれは、恐らく企業持ち株会との間の意思の疎通といいますか要求というものをもってなされるというふうに考えられますが、やはり持ち株会のために購入するためには、そのような前提条件を企業持ち株会の間で結んでからなされるのが至当ではなかろうかというふうに思います。  また、先ほども申しましたような株価操作というようなとられ方、あるいは事実そのような株価操作をなすというようなことを、他の、何といいますか、利益による消却による取得等をあわせてなされた場合には、そういう疑いがなされる可能性がありますので、ここいらも厳に慎んで、至当な時期において購入するように図る必要があろうかと思います。  次に、利益による株式消却につきましては、この要綱を見る限りにおいては、非常に周到な規定が設けられております。これは、本日、参考人で先ほどお話しいただきました、こちらの方で御説明された前田先生が非常に気を配られましてつくられた法案で、さすがというふうに敬服をしております。そういう限りにおきましては、規定上問題はございません。  むしろ、運用上、証券取引法改正整備ということと相まって、このようなものを利用することによって企業界の要求にこたえることができればよろしいのではないかと思います。  最後に、株式譲渡につき取締役会の承認を要する会社自己株式取得について述べさせていただきます。  この問題は、本来、前回、前々回と言った方がよろしいのですか、さきになされました大小会社の区分立法の段階において検討されるべき問題であったというふうに考えるわけでありますが、ここにおいて取り上げられたということは、やはり至当な問題点の指摘であろうかと思います。  この改正要綱によりますと二つの場合がございますが、会社から脱退しようという者あるいは相続の場合、いずれにいたしましても、この二つの場合につきましては、会社側の都合によって異質な者が入ってくるのを排除しよう、こういう形で規定されております。  この原因自体につきましては至当であろうと思うわけでありますが、この取得する際のいわゆる財源規制というものが非常に厳しい規制でございます。これは、ある意味では、利益をもってなす株式消却よりももっと厳しい規定をもってこの財源を限定しております。こういう厳しい中におきまして、果たして閉鎖会社株式取得ということが可能なのかということにつきまして、少々この財源をもってしては苦しいのではないか、こういうふうに思います。  そういうようなところから考えていきますと、もう少し、何といいますか、広い観点から、単に自己株式取得という観点ではなく、もう少し広い観点として、いわゆる物的閉鎖会社におけるところの閉鎖性の維持というような観点から見ていく必要があるのではなかろうか。  そうした場合考えられる問題は、取引先を探すに困難な株主の方、また、異質な人が入ってくることを排除しようとする会社側から、それぞれの買い取り請求権というものを認め、そして、財源といたしましてはやはり配当可能額というものをもってなす、しかし、それは各年においては非常に少のうございますから、これをもう少し分割払いにしていくというような方法も一つの配慮ではなかろうか、このように考えるわけでございます。  以上、少々原稿をはしょったところがございまして意の通じなかったことがあろうかと思いますが、私の意見として、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手
  10. 高橋辰夫

    高橋委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 高橋辰夫

    高橋委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島雄二君。
  12. 津島雄二

    ○津島委員 大変お忙しい中を、参考人の皆様方、お出ましいただきましてありがとうございました。また、我々、いろいろな立場から強く望んでおりました自己株式取得について、皆様方それぞれのお立場で熱心に御議論をされた結果がこうやって国会提出法案になりました。そのことについて、まずもって心から敬意を表したいと思います。  そこで、先生方の大変短いお話でございましたが、その中に非常に重要な幾つかの御指摘がございまして、もっとお時間をいただきたいような問題点はたくさんありますけれども、とりあえず絞りまして何点かお伺いしたいと思います。  まず、前田先生でございますが、大変明断に分析をされて、私も理解をさせていただきましたけれども、一つだけ、消却型の自己株式取得について数量制限がない、これは果たしてどういうものだろうなと。これは例えば、稲田先生にもちょっとさっきおっしゃっておりましたのでお伺いをしたらどうかなと思うのですが、従業員組合の一それはまた別な話をします。前田先生には、消却型で数量制限を置かなかったということについて弊害の心配がないかどうかということをお伺いをしたいと思います。  それから、歌田先生につきましては、これまで経済界の御意見として何度もお話を伺っておりまして、同感するところが多いわけでございますけれども、問題は、一つは、外国法制参考にしながらやっていく場合に、日本ではやはり、日本資本市場のよしあしは別として、その性格、特殊な性格がございまして、そのある種の後遺症というものを乗り越えていかなきゃならない面がございますね。資本自由化されるということで、大変だというわけで、持ち合いを一生懸命やっちゃったり、基本的には株式市場に出てくる株式が非常に少ないという中で、ところがここ三年ぐらいの状況の中で非常に株式市場取引はしぼんでしまった。そういうことの中で、いやいや、これはもともと閉鎖的な構造である市場にもかかわらず出てこないものだから、だから何というのか個人株主の参加も非常に限られてくる。株式は多過ぎるんじゃないかと逆の議論が出てきて、株式消却して配当率を上げた方がいいんじゃないかという議論になってきた。しかし、基本構造は残っておるわけですね。  そういうことを頭に置きまして、ひとつお伺いしたいのですが、将来に向けて、持ち合い解消等につながる、言ってみれば、私が御指摘している日本株式市場の本当の合理化、健全化につながるようなもう一段の措置が欲しい、こうおっしゃっている。それを具体的にひとつ御提案をいただきたいし、できることならば、これからもどんどん経済界としては御提言をいただきたいと思います。  ただ、その裏でもう一つ心配なのは、そのストックオプションなんですけれども、これは恐らく日本でも将来だんだんと使われるようになると思います。ただ、ストックオプションをやるようになりますと、これのための規制というのは、それなりに必要です。ストックオプションができる立場の、例えば重役さん方がどんなに厳しい、何というのか不断の御詮議を受けているか、これは私も友人から聞いておるのでありますが、その点について、日本ストックオプション利用をするようになった場合にどういうことをやはり考えなきゃならないかということについて、歌田先生のお考えをお示しをいただきたいと思います。  それから、井阪先生の御意見、大変賛成をしながら聞かせていただきましたが、先生に対しましても、将来の株式市場の健全化のために、次にやはり御提案があると思います。歌田先生と同じような御質問になるかもしれませんけれども、もう少し個人株主が参加をしてくれるような状況をつくる、そのためにも今まで過去においてしこっているものをどんどんどんどんもみほぐしていく必要がある、利益による消却というものをもう少し使えるんではないであろうかという立場から、御提案があればお伺いをしたいと思います。  最後に稲田先生、興味深く伺わせていただきましたが、自己株式取得が今回いわゆる使用人に対する、使用人会に対する取得だけが広く認められたということなんでありますが、これは一応、保有処分型ですね、いわゆる保有処分型として従業員組合だけ認められた。従業員組合と会社との関係が、実は私もこれ何にも書いてないのはおかしいなと思うのですね。  そうであると、例えば百分の三の限界であればいつ買ってもいい、そして六カ月以内に売り渡せばいいといいますと、極端に言うと常時取引している、しかし帳簿上は六カ月でみんなこう従業員組合に行きましたよというやり方をしながら、まあ一定株式市場への影響力を行使するということをやりはしないかな。ですから、従業員組合との関係についてやはり何らかのあれが要るんじゃないかと今お話を伺いながら感じさせていただいたのですけれども、その点についての御意見をお伺いしたいと思います。
  13. 前田庸

    前田参考人 お答えさせていただきます。  消却型の自己株式取得につきまして数量制限がないということが適当かという御質問であったかと思いますが、甚だごもっともな御質問でございまして、実は法制審議商法部会でこのたび審議する段階で、数量規制をするということも一時的には検討いたしました。しかし、結局数量規制の必要がないということでこのたびの法案になったわけでございますが、必要がないという理由としましては、基本的には会社としては資金の需要があった場合には新株発行によってそれを賄う、もし資金に剰余が生じた場合には株式消却によってその問題は解決する、そういうことは基本的に自由なのではあるまいかということが基本にございます。  といいますのは、現行法のもとでも手続的には規制がありますけれども、数量的な規制はございませんので、原始定款消却型の自己株式取得について規定しておきますと自由にできるということになるわけでございます。また、比較法的に見ましても、消却型の自己株式取得について数量規制をしておるところはございません。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕  それから、実務的に見ましても、先ほど歌田参考人から株式持ち合い解消のために自己株式取得利用できる、ただそのための保有処分型のものが認められないのは不満だということでしたけれども、このたびの改正法案では、そういうもののためには消却型の自己株式取得利用するということになっておりますが、その場合にはやはり相当多量の取得が必要になるということも予想されますので、それについて規制をしますと、その需要を満たせないのではなかろうか。商法的にいいますと、そういう意味で数量制限しなくても問題ございませんが、しかし相当多量の株式取得がなされますと、証取法上の問題、相場操縦等の問題はあり得るかと思いますが、その点につきまして、先ほども井阪参考人からも御発言ありましたように、証取法上、相場操縦等に利用されないような十分な配慮をするということが前提となっております。  そういうことでお答えさせていただきます。
  14. 歌田勝弘

    歌田参考人 お答え申し上げます。  今津島先生からお話ございました、株式の分布状況等につきまして日本的なものが残っておるのではないかというお話、まことにそれは同感でございます。しかし、今、一歩一歩国際化のハーモナイゼーションの方へ向かっておるということだというふうに存じております。  第一番の、株式持ち合いの問題についての解消策というお話でございますが、現在、株式持ち合いというのは、御存じのとおり、主としてMアンドA等の防止策として、安定株主工作という形でできておるということがもちろんございますし、 あとまた、長い間のつき合いとか、日本的なそういう面が残っておるということでございますが、現在のところ、大分持ち合い解消しつつあるという状況でございまして、これは、今の不況の影響もございますが、だんだん個人株主づくりをしようという企業サイドの努力もあるというふうに考えております。  それで、今後一層それを進めていくという意味では、やはり自己株式の今度の制度はかなりプラスになるということでございますが、さらに一歩進めていただいて、一たん金庫株にしておいて、そして、それを適当な譲渡先ができたときに譲り渡しができるというところまで進めていただければ、非常にこれが進むのではないかというふうに存じております。  それから、二番目のストックオプションの問題でございます。  これも申すまでもないことでございますが、我々企業経営者として考えましたときに、日本の風土の中でストックオプションというのがどういう形で実現していくだろうかというふうに考えますと、まず、小企業は別でございましょうが、大中企業ではなかなか一遍にはそういう風土になってこないという感じがするわけでございますが、当面のところは、先ほどもちょっと申し上げましたように、例えばアメリカに子会社を持っておる企業で、アメリカ人をトップマネジメントに迎え入れるときに、やはりこういう制度が親会社が今禁止されております状態では、どうしてもアメリカでもできない、こういうことでございますので、これを何とかしていただきたいというのがまず最初だというふうに考えております。これは、今病気されましたが、ソニーの盛田会長あたりが盛んに要望しておられまして、国際戦略上ぜひ認めていただきたいということを言っておられたわけでございます。  以上で終わります。
  15. 井阪健一

    井阪参考人 これまで我が国企業経営におきましては、企業自体の成長ということが最優先に考えられて、株主に対する利益還元といった株主重視の経営が必ずしも十分行われていなかったということは、否定できないところがあろうかと思います。また、先生御指摘のように、企業間で、海外からの資本自由化に備えて対抗してということで、企業間の持ち合いが進んだということもあったと存じます。  こういったことから、私ども証券取引所としましては、上場会社等に対しまして、機会あるごとに、配当性向の向上、また配当政策見直し株主資本利益率の向上、投資単位引き下げ等株主重視の、また資本市場重視の経営を重ねて要請してまいったところでございます。最近におきまして、このような株主重視の経営というものが企業サイドにおいても次第に意識されるようになってきておりまして、株式分割、さらに単位のくくり直し、また配当政策見直しを実施する企業もふえてまいっております。  こうした中で、今回の改正によりまして、株式消却のための自己株取得の要件が緩和されたわけでありまして、こうしたことによって、将来一層の健全化が図られるのではないかと期待しているところでございます。
  16. 稲田俊信

    稲田参考人 津島先生から御質問ありました、従業員持ち株会というものと企業の間に一定の何らかの意思疎通を必要とするということにつきまして、私どもは、やはり少なくとも組合の方から何株買いたい、財源はこのぐらいということの提示を前提として買うべきではないか。今のままでいきますと、百分の三の範囲内であるならば会社の方がまず買っておいて、先生も言われましたように、適宜これを売り出す。まさに株価操作につながるんではないか、こういうふうな気がいたしますので、できる限り、そういう何らかの規制が法の上にあらわれる必要があるかどうかというと、問題があるという指摘もあるかもしれませんが、私は、やはり歯どめをかけておくべきではなかろうか、こういうふうに考えております。
  17. 津島雄二

    ○津島委員 ありがとうございました。  時間がまだ幸いにしてございますので、それじゃ、もう少し質問を進めさせていただきます。  さっきの歌田先生ストックオプションについての御答弁ですね。私は、アメリカばかりでなくて、日本会社アメリカ人なり外国人の社外重役を入れる場合に、まず起こってくると思いますよ。つまり、外国のああいう経営者というのは、ストックオプションがあるのは当たり前だというあれで入ってこられますからね。そうしますと、そういう方々が日本の代表的な企業にお入りになる、それで、任期が終わるときに、これをどういうふうにお考えになるか。そうなりますと、日ごろからいわゆる株価操作疑いのないような、一種の防遏措置をしておかなきゃならない。例えば、例のシティコープにいる私の友人の八城君なんかは、アメリカ会社にずっと長くいますから、もうストックオプションの世界の中にいる。彼は、そのために日ごろ会社の方から、あなたはどのくらいの株を持っていますか、どうしていますかという監督を受けている。非常に強く言っておるんですね。  ですから、私は、経済界としましても、このことをやはり外国の話ということでなくて、もうそろそろ本当に真剣にお考えになるべきではないかという立場から御意見を伺ったわけでありますが、重ねて何かあれがあれば、お伺いをいたしたいと思います。  それから、稲田先生と私と、そこでは大体意見が一致したわけなんですけれども、きょうの午後のあれで法務省に聞いてみたいと思うんですけれども、正当な理由があるときに、こう書いてあるんですね。使用人譲渡するための自己株式取得、この正当な理由があるときということで、そういうことが読めるのかどうなのか、この辺、何か御意見がございましたら、お伺いいたしたい。
  18. 歌田勝弘

    歌田参考人 今津島先生のお話、まことに私ももっともだと思う次第でございます。これから日本国内において外国人の経営者がどんどん出てくるということは、当然考えられるわけでございますので、先ほど私が申し上げた例ではちょっと足りなかったというふうに思うわけでございます。  それから、先ほど言い落としましたが、その場合の規制というものがあってしかるべきではなかろうかというお説でございますが、私もそう思います。やはり経営者の独断とかあるいはインサイダーとか、そういう懸念が持たれないようにすることが必要だというふうに思いますので、アメリカ等でももちろんこれはございますけれども、やはり日本的な風土の中でそういう規制というものが必要だろうというふうに思います。  なお、経団連でも「企業行動憲章」という中にもそういうことを入れてございまして、今後そういうことになれば、やはりよく指導していくといいますか、そういうことが必要ではないかというふうに考えます。
  19. 稲田俊信

    稲田参考人 規定上の要件といたしましては、正当な事由という中に組合からの要求があった場合までというような解釈は、ちょっと出てこないんじゃないか。そこの正当な事由というのは、例えば長年勤めた勤続者に対しての褒賞として渡したい、あるいは従業員持ち株会のために買いたいと、ここまでは出てくると思いますが、一歩進めて、要求があった、その額で買うんだというところまでは、私はあの規定からは出てこない、こういうふうに解釈しております。
  20. 津島雄二

    ○津島委員 どうもありがとうございました。
  21. 山本有二

    ○山本(有)委員長代理 冬柴鐵三君。
  22. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。  本日は、連立与党を代表して先生方にお尋ねをいたします。本日は、本当にお忙しいところを御出頭いただきまして、また、ただいま貴重な御意見を伺いました。ありがとうございました。  それでは、順次前田先生からお尋ねを申し上げます。  先生消却自己株式取得について、配当可能利益の範囲内ということで、比較的厳しいといいますか、ただし目的、数量には制限をつけずに取得ができる、こういうふうにしたということを評 価しておられるわけでございますけれども、大体今の上場会社配当可能利益でどれぐらいの自己株取得できるのかということを資料によってちょっと見てみますと、自己株のうち配当可能利益消却できる範囲が二〇%超三〇%以下という株式消却できる会社が二千四十八社中五百九社、二四・八%ある。そして、そのようにずっと見てみまして、五〇%超、すなわち半分以上を消却できるという会社が百十五社、五・六%ある。すなわち、二〇%以上三〇%以下から五〇%超まで入れますと、四九%の会社がそういうふうに相当大きい部分を消却できるような状況に財務諸表上現在ある。  こういうことを考えてみますと、相当大きい消却ができる。しかもそれが目的、数量を制限せずにできるということになりますと、相当な消却がされてしまうんじゃないかと危惧するんですが、それについてどう考えられますかということが一つです。  それから二番目は、使用人譲渡するという目的の、いわゆる先生保有処分自己株式取得、これについても比較的厳しい数量制限を付した、このような評価を先生はされたと思うのですが、これも資料によりますと、現在、従業員持ち株会株式を所有している状況について資料をちょっと見てみますと、上場会社では発行済み株式総数の一・〇二%というところにあるようです。それから、そうでない対実施会社全体で見ても一・〇四%、これが平成四年度の資料でございます。そうすると、三%というのは、これは厳しいというよりも相当緩やかな条件と考えられないかという感じを受けるわけでございますが、その点についての先生の御意見を伺いたいと思います。
  23. 前田庸

    前田参考人 消却型の自己株式取得につきまして、数量制限をしていない、配当可能利益という財源規制のみであるということから、御指摘のように、相当多量の消却のための自己株式取得ができるということは御指摘のとおりでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、繰り返しになって恐縮でございますが、株式会社としましては、不要な資金が生じた場合には、株式消却によってそれを消滅させるということは基本的には自由なのではあるまいか。ただ、それが株式払込金の払い戻し的なことになって資本充実維持原則を害するということになってはいけない、その規制さえあれば原則的には企業の自由であるということが、このような立法の根拠になっているというふうに私としては理解してございます。  繰り返しになりますけれども、そういう多量の株式取得するということになりますと、相場操縦等に利用される場合に大きな問題が生ずる、あるいは内部者取引利用される場合にも弊害が大きくなるということはございますが、それは、証取法上の問題としてこのたび証券取引等監視委員会等もできてございますので、そっちの方で厳格に監視していくことが期待されるということでございます。それが第一の問題に対するお答えでございます。  それから、第二の問題でございますが、おっしゃるとおり、現行従業員持ち株制度というのは、現在利用している上場会社において発行済み株式総数の一・〇四%であるということは、審議の過程でも十分に意識して立法したわけでございます。  ただ、比較法的に見ますと、四、五%というところもあるというようなことを参考にしまして、当初はもっと大きな割合を考えていたのでありますが、それを百分の三まで下げたというところでございまして、もちろん、百分の三まで認めたからといってその分だけ全部使えるということではございませんで、株主総会の決議が必要であるということでございますので、今後その意味での規制あるいは限界は図られるであろう、そういうふうに理解しております。  以上でお答えにいたします。
  24. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、歌田先生にお伺いいたします。  消却自己株式取得の採用、こういうものを評価をしていただきながら、持ち合い解消には利用できない、そういう意味でもう少しその点配慮があってもいいのではないかという趣旨の御発言があったように伺いました。  これについて、若干私弁護士をやっていたものですから、そういう場合、まず消却をして、そして新株を発行するという形でこういうものを解決できないのかなという感じがするわけです。もちろん株価操縦の疑いを受けるようなやり方はいけませんけれども、結果的には、そういう持ち合い解消にも、今回の制度を複合して利用することによって目的は達成できるのではないか、こんな感じを受けたのですが、その点はいかがでございましょうか。第一点。  第二点は、みなし配当課税そのものを残した、いわゆる源泉徴収義務については改めたけれども、各みなし配当課税そのものを残したということについて、もう少し竿頭一歩を進めてもよかったのではないかというふうに受けとめられるような御発言がございました。  その点について私は、それでは通常配当との、これは二〇%源泉徴収、相当あるわけですが、それとのバランスはどうなるか。やはり、消却してしまえば株式保有している人はそれだけ会社に対する、資産に対する持ち分が自動的にふえてしまうわけですが、それについての課税というのはやめにしてもいいのじゃないかというのは、どんな根拠からそういうことになるのだろうかという感じを受けました。  歌田参考人は味の素の会社を経営され、そして諸外国でも多くの会社を経営していらっしゃるということも伺っておりますので、諸外国との兼ね合い等も含めて、今の二点についてお教えいただければと思います。
  25. 歌田勝弘

    歌田参考人 お答え申し上げます。  第一の御質問の、消却をして、増資をすればでき得るではないかというお話でございます。  確かに、法律上はそういうことに相なるかと思います。ただ、企業経営の立場として考えますと、やはり消却をするということは、かなりこれは重要な決断を要することだというふうに思いますので、そう軽々しくはでき得ないというふうに思いますし、今回の法制度でも厳重に縛られた中でやるわけでございますから、慎重な対応をするであろう、こういうふうに存じます。  それから、二番目のみなし配当課税の問題でございますが、これはちょっと商法の問題と別でございますので、余り詳しく申し上げるのも何かと存じますが、やはり今回の場合は、利益準備金の、これは株式分割と同じ意味だというのが今学説で有力になっておりまして、配当というよりはそういう株式分割としての扱いで税法もお考えいただきたいということでございます。
  26. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では、井阪参考人にお伺いをいたします。  行き過ぎた持ち合いというものが日本では行われている。これは海外からも批判をされているわけでありますが、それがどういう結果を生んでいるかということについて、株価の公正な価格構成を妨げている、それからまた円滑な流通も妨げている、こういうようなことを例示をいただいたと思うわけでありますが、今回の、利益によるいわゆる消却消却自己株取得ということが行われますと、先ほど前田参考人にもお尋ねしたのですが、相当大きな部分が現在公表されている財務諸表からも消却できるということに照らしますと、それがずっと行われることによって、持ち合いと同じあるいはそれ以上に、今のような市場で流通する株が少なくなるというようなことから、行き過ぎた持ち合いについて、今言われた阻害要因と同じようなことが起こってしまうのじゃないかということを私は危惧するのですけれども、それに対して先生はどういうふうにお考えなのかをお尋ねしたいということが、第一点でございます。  第二点は、消却のためにする自己株取得がやはり一株価格をもちろん高騰させるわけで、新株発行と同じような気持ちでここは考えていかなければいけないということで、それは株価操縦を疑われるようなことが行われないようにということで、証券取引所としても、例えば自律的規範のようなもので適切な対応をしてまいりたいという決意をお述べいただいたと思うのですが、この自律的規範に即してやったのだけれども、法に照らすとどうも残念ながら違反になってしまったという場合もあるわけでして、若干危険があると思うのですね。  そういう意味で、私は、むしろ立法法律でできるのか、あるいは法律である程度委任して、政令とか省令とかというもので、こういうものを、具体的な類型を示して、例えば取引を終える五分以内の取引はどうとかこうとか、そういうものは具体的に商いの中であると思うのですね。むしろ他律的規範といいますか、国がそういうものを定める方がいいのじゃないかというふうに僕は思うのですけれども、それに対する御意見があればお教えいただきたい、このように思います。
  27. 井阪健一

    井阪参考人 最初の御質問に対しましてですけれども自己株取得規制緩和によりまして流通市場にどの程度の影響が生ずるかは、現時点で申し上げることは非常に難しいというふうに思います。  しかし、今回の自己株取得規制緩和によりまして、利益消却のための自社株取得の環境が整い、それによって株主資本利益率が上昇するということから、マーケットに対する、株式に対する信頼感がふえる、そのことが結果的に証券市場機能強化につながっていくのではないかというふうに考えまして、その面でのプラスが期待できるというふうに考えております。  企業間で株式が持ち合われていることによって、マーケットの個人株主の参加比率が減ってきているわけですけれども市場というのは、より多様な価値観を持った、そして多数の意思を持った投資家が参加することが厚みのあるマーケットを形成することになりますので、そういった意味で、個人投資家の持ち株比率が買い入れ消却を行うことによって相対的にふえる場合も考えられます。そういったことをひっくるめて株主構成の是正に役立つのではないか、こういうふうに申し上げたわけであります。  それから、二番目の御質問に対してでございますけれども発行会社買い付けることから、自社の株価形成に有利となるような方法買い付けを行う、株価形成に関与するおそれがあること、また、フリーハンドで発行会社が自社株を買い付けることによって投資者に不信感を生ずるおそれがあるというようなことなど、不公正取引防止の観点から何らかの対策が必要であるというふうに考えております。  その際の具体的な規制方法としまして、アメリカにあるようなセーフ・ハーバー・ルールにより買い付け価格、時間、数量等に一定の制限を設けて規制を行うことが、流通管理という観点から、発行会社の使いやすさという観点からも好ましいのではないかと考えられますけれども我が国における相場操縦禁止規定は、主観的要素、取引の態様等を総合的に勘案した上でその適用の有無が判断されているということから、外形的な基準のみで相場操縦とならない行為を法令で規定するということは非常に難しい要素があるのだろうと思います。  したがいまして、証券取引審議会報告に示されておりますような取引態様が周知徹底されて、今後自己株取得取引慣行が確立していく中で、避けるべき行為の一つの目安として定着し、機能していくことが望ましいのではないか、かように考えております。
  28. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ありがとうございました。  稲田先生には大変失礼なのですが、私の持ち時間が終わってしまいましたので、またお教えをいただきます。  どうもありがとうございました。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  29. 高橋辰夫

    高橋委員長 坂上富男君。
  30. 坂上富男

    ○坂上委員 どうも先生方、お忙しいところありがとうございました。大変勉強をさせていただきました。  若干の疑問点と、また今後の参考のために、御意見をさらに質問という形でお聞かせをいただきたいと思います。社会党の坂上富男でございます。  ちょっと本題に入る前に、歌田先生の方から、大変商法というものはいわゆる社会の変化あるいは国際化対応する、したがいまして、改正は特にできるだけタイムリーにやった方がいいというような御意見でございまして、大変示唆に富む言葉でございます。  そこで、商法問題で問題にすべき改正点というのは、今出てきたわけでございますが、さしあたりまた必要のある部分というのは、相当御意見ありましょうか。項目だけで結構でございますので、ありましたら言っていただきたい。
  31. 歌田勝弘

    歌田参考人 本案の後、今検討されております合併・分割規定、ここらが中心ではないかというふうに考えております。
  32. 坂上富男

    ○坂上委員 あとはございませんかな。御無理なさらないでいいのですが、いろいろ商法上の問題で。
  33. 歌田勝弘

    歌田参考人 ちょっと前の、たしか平成二年の改正のときに積み残しになっておるものが残っておりまして、大小会社区分の問題でございますね、この問題がまだ残っておるということだと思います。
  34. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございます。  前田先生はあれでございましょうか、私は不勉強でわかりませんでしたが、法制審議会でこの問題の御審議をいただいたのでございますか。──はい、ありがとうございました。  それでは、ちょっとそういう点でまたお聞かせをいただきたいと思っておるのでございますが、従業員に対する譲渡については百分の三でございますか。それから、いわゆる消却型につきましては発行済み株式の総数の五分の一ということを限度と、こうしてあるわけでございますが、この数字は、私たち素人から見ますると相当大きな数字のような感じをしているわけでございます。特にこの五分の一というのは大変大きい感じなのでございますが、審議会ではこの数字についてはいろいろ議論があったものでございますか。ちょっと審議会の模様のお話をお聞きをしたいのでございますが。
  35. 前田庸

    前田参考人 ただいま御質問の五分の一と申しますのは、定款株式譲渡を制限している会社におきまして、譲渡承認の請求を会社側にした場合に、その会社側としてほかにその株式を譲り受けようという適当な人がいないという場合に、会社がとりあえず取得するという場合と、それから同じように定款株式譲渡を制限している会社におきまして、株式の相続がなされて相続人が株式取得した、しかしその相続人としては株主として会社の経営に関与するというような意向もないというような場合に、会社に対してその相続した株式取得を請求するという場合に、会社側としてそれに応じて取得する、そういう定款株式譲渡を制限している会社についての数量規制でございます。  このような会社におきましては、これは問題点についての回答につきまして、各方面から、中小企業立場からの御意見があったのでございますが、中小企業の場合には、個々の株主の持ち株比率が多いのが通常でございます。大規模会社の場合には株主の持ち株比率というのは極めて小さいものでありますが、中小企業の場合には非常に大きいと何分の一というようなことがあり得るわけでございます。その場合に、数量規制を厳格にしますと、せっかく、そういう譲渡制限している会社について、自己株式取得規制の、そのような必要な場合についての規定を設けましても、実際には役立たないということが中小企業立場からも主張されたところでございます。  そのために、それにつきましては、二つを合わせて、相続の場合と譲渡請求の場合とを合わせて五分の一ということにしまして、今申し上げたような需要を満たそう、中小企業特殊性を考慮しよう、そういうことでございます。  御質問に対するお答えとさせていただきます。
  36. 坂上富男

    ○坂上委員 稲田先生自己株式取引禁止条項について、やはり少し緩和したらどうかという意見が大きくなってきて、今回の改正問題になったというお話でございます。そこで、やはり自己株式取得禁止理由というものが、今回の改正についてどう見るべきかということが大事なんだろうと思っておるわけでございます。  そこで、先生、あれでございましょうか、特に先生の方から、実定法上は問題はないのじゃなかろうか、問題は運用上の問題になってくるのではなかろうか、こういうふうな御指摘があるわけでございますが、運用上の問題点は今後どんなことを予想されてこういう言葉なんでございましょうか。
  37. 稲田俊信

    稲田参考人 私の説明が少々足らなかったような気がするのですけれども、現在改正理由として挙げられているその株式金融と申しますか、そういう理由はどうも合理性がないということが、まず前提です。そして必要性があるということについては、決して否定するわけではございません。企業の中において確かに株式の多い会社もあるし、あるいはまた新しい事業等を目的とする場合の提携関係をより有利にするだとかいろいろな目的がある、そのこと自体で反対しているのではない。  そうすると、問題は、では規定をどうするかということですが、規定は非常によく整備されている、とすると運用上の問題。そうなりますと、どちらかといいますと、証券取引法の問題である。そこでやはり出てくるのはディスクローズの問題、これがやはり各投資家あるいは株主にとりましては非常に関心事であろう。公正な取引という限りにおいては、ディスクローズという点を証券取引所では力を入れていただきたい、こういうように思うわけでございます。
  38. 坂上富男

    ○坂上委員 前田先生、また再度恐縮でございます。先生の有斐閣の本、「会社法入門」を読ませてもらっているのでございますが、この中に自己株式取得禁止の理由についてお書きをいただいておるわけでございまして、大変私たちもわかりやすい感じなのでございますが、この部分から見て、今回の改正点についてまずお聞きをさせていただきたいのでございます。  一つは、資本維持原則から見ていかがかということ、さっきちょっとお話がありましたので、繰り返しであったら簡単で結構でございます。それから第二は、相場操縦内部者取引利用されやすいこと、この点が指摘をされておるわけでございます。それから三番目に、経営陣が会社の資金で自分たちの地位を不当に守るために自己株式取得がなされることを防止するために禁止されておるのだ。四番目に、自己株式取得は、その株式の流通性が高くない場合、あるいはその対価の決め方によっては、会社が一部の株主にのみ株式譲渡機会を与えることとなり、株主平等の原則上の問題が生ずるのだ。したがって、いわゆる自己株式取得禁止の理由は大体こういうところにあるんだという御指摘をいただいておるわけでありますが、これと今回との関係についてもう少し解説をお願いしたい、こう思います。
  39. 前田庸

    前田参考人 私の本を読んでいただいて大変ありがとうございます。心から御礼申し上げます。  第一に、資本維持原則についてでございますが、このたびの改正法案におきましては、いずれの事由による自己株式取得につきましても配当可能利益の範囲内であるということは共通してございます。さらにその上に、前期の配当可能利益の範囲内でも、次の期で貸借対照表上欠損が生ずるおそれがある場合には自己株式取得をしてはならない、もしそういうおそれがあるのに取得した場合には取締役についてその責任を負わせる、そういう規制をしております。そういう意味で、資本充実維持原則という観点からは、このたびの法案は十分な配慮をしているというふうに私としては考えております。  それから第二に、相場操縦内部者取引につきましては、先ほどもお答えしあるいは井阪参考人からもお答えあったと思いますけれども内部者取引につきましては、証取法上の改正ということを今回の国会でお願いしているところでございますし、相場操縦につきましても、証券取引審議会公正取引特別部会というところで慎重に検討しまして、相場操縦になり得るような事例というものを例示しまして、そのようなことがないようにという報告書を出しているところでございますので、その点でも心配がないのではなかろうかというふうに考えております。  それから、経営陣に不正にその地位を維持するための機会を与えるということにつきましては、このたびの改正法案におきましては、その使用人譲渡するためという以外は原則として消却のためということでございまして、消却させてしまうということであれば、こういった弊害も生じないであろうというふうに考えるわけでございます。  それから、対価の一環で流通性のない株式について株主平等の原則に反することになるということでございますが、具体的に言いますと、譲渡しにくい場合に、ある株主株式を買い取ってやる、そういう形で自己株式取得するということになりますと、その譲渡人である株主だけを特に優遇する、あるいは値段によってはなおその弊害が大きくなるということでございます。  しかし、このたびの改正法案におきましては、上場株式あるいは登録銘柄株式というものを除きましては、今申し上げましたような特定の譲渡人からの自己株式取得につきましては株主総会の特別決議を要求する、しかもその譲渡の対象になっている株主でない、それ以外の株主に対しましても自分の株式を売り渡す、そういう請求を認める、そういうことで株主平等の原則につきましては十分な配慮をしているというふうに言えるかと思います。  以上でお答えにさせていただきます。
  40. 坂上富男

    ○坂上委員 時間がありませんので、急がせていただきます。  井阪参考人にお聞きをいたしますが、これは実務面から、流通の面からいいまして、今回の改正によって大体どんなような変化が起きてくるというふうに御理解なさっておりますか。率直な感想で結構でございます。
  41. 井阪健一

    井阪参考人 これは株価の水準とか、その局面によりまして、どういうようなインパクトが出たり、どういうような影響が出るのか、ここでははっきりと申し上げるような材料を持ち合わせておりませんけれども、自社株を買い入れ、消却することによって、その会社の自己資本利益率が上昇する、それによって配当性向を高め、中長期的に株式の投資魅力が上昇する、そしてマーケットにいろいろなニーズを持った投資家が幅広く参加することによって厚みのある流通市場が形成できる、このように考えております。
  42. 坂上富男

    ○坂上委員 この法案ができたら、翌日ばっと株価が上がって景気に結びつくというような事態を期待をいたしておるわけでございますが、それで最後に稲田先生、私たち日弁連の方で「自己株式取得保有規制に関する問題点に対する意見書」が出ておりまして、反対意見が結論として出てはいるわけでございます。この中に、弊害ということと必要性という二点から指摘をしておりまして、今までずっと先生方のお話をお聞きをしておりまして、大体出てはきておるのでございますが、ちょっと項目だけ挙げますから、この項目の中に先生が問題にすべき点だというものがありましたら、御指摘いただきたいのでございます。  弊害の一つは、お話あったのでございますが、不当な株価操作の危険性、これはさっきありました。それから二番目のインサイダー取引の危険性。それから三番目は、会社資産の垂れ流し、空洞化の危険性。それから、現経営者の不当な会社支配を許す危険性、これもさっきあったようですが。それからいま一つは、一部株主による不当な取得要求の危険性。それから六番目に、買い占め時の高価肩がわりの要求を頻発する危険性。それから七番目でございますが、閉鎖会社での濫用の危険性ということを指摘をしているのでございます。  時間がございませんので、日弁連で大体こういうような御指摘をされておるわけでございますが、これはまたこれでなるほどなと思う点もあるわけでございますが、これらをお聞きくださいまして、先生、率直に学問の立場からどういうふうに見たらいいのかお聞かせいただきたいと思います。
  43. 稲田俊信

    稲田参考人 挙げられる弊害は、今先生が御指摘されたようにたくさんあるわけですが、その中で私どもが関心を持ちましたのは、かつて大小区分立法を検討した段階におきまして、閉鎖会社における閉鎖性というものを考える場合に、今先生から弊害の一つとして濫用という御指摘があったわけですが、我々としては、閉鎖会社の閉鎖性の維持という点からいきますと、非常に深刻な問題を抱えているのではないのか。むしろ積極的に認めて、閉鎖性の維持というものを中小企業には図る方向で検討すべきである、弊害という形では我々はとらえませんでした。
  44. 坂上富男

    ○坂上委員 どうも先生方、ありがとうございました。
  45. 高橋辰夫

    高橋委員長 正森成二君。
  46. 正森成二

    ○正森委員 私は、まず第一に、井阪参考人に伺いたいと思います。  今我が国では、個人株主が非常に少なくて二〇%そこそこだ。金融機関が四三%強持っており、事業法人が三〇%強を持っております。法人資本主義と呼ばれている状況で、それからさまざまな問題点が出ていると言われております。  東京証券取引所の証券政策委員会というのがあったようですが、昭和四十九年の六月に、「株式所有構造変化証券市場のあり方」という報告書を出されたと聞いております。お答え願うのが筋ですが、既に申し上げておきましたので、時間の関係から私が一部だけ読ませていただきます。  その第一項を見ますと、個人株主が減った理由として「一、株式投資魅力の減退。額面発行増資のもとでは増資が事実上の増配になり、これが株式の長期所有の要因として働いたが、時価発行増資のもとでそれがなくなり、増配や無償交付が十分に行なわれていない。また額面発行増資は実質的に株式分割の役割を果たし、株価水準の引き下げが行われてきたが、時価発行増資になって株式分割があまり行なわれず、それによる株価の引き下げがないため、株価は高水準に固定されがちとなり、投資金額との関係から一般投資家が投資しにくい状態になっている。」その次、少し略しますが、五のところで「新株発行段階における個人取得の減退。第三者割当増資が増え、また時価発行増資の親引け比率が高く、新株発行段階で法人に対する優先的割当てが多かった。」その次に「六、証券会社の営業態勢の問題。長期的視点で投資を行なう個人顧客層を積極的に開拓する努力を証券会社が十分にやっていない。」等々のことが言われております。  これは私は、非常によい御意見だと思うのです。しかし、以来二十年たって事態はますます悪化している。それは、株主、特に個人株主を大事にしないという企業のあり方があります。それは、例えば配当性向に典型的にあらわれておりまして、我が国の配当性向は、アメリカに比べれば極端に低く、イギリスや欧米諸国に比べても低いということがあります。  あらかじめ申し上げておきましたが、東証上場の昭和三十年、四十年、五十年、六十年、六十五年、現在の企業の配当性向をお述べいただきたいと思います。また、先ほどの点についての現在のお考えは。
  47. 井阪健一

    井阪参考人 まず、昭和三十年から現在に至るまでの十年ごとの配当性向についてお答えいたします。  昭和三十年の配当性向は二九・三%でございます。四十年が三一・七%でございます。五十年が七五・二%でございます。六十年が三五・七%でございます。以上、いずれも昭和の年号でございます。平成二年が三一・三%、直近の数字が出ておりますのは平成四年までですけれども、五三・三%、こういうふうになっております。  その中で、平成四年に配当性向が大きく上昇しておるわけですけれども、これは要因は必ずしも定かではございませんけれども、昨今の企業業績の悪化により、安定的な額面配当主義をとり続けてきた発行会社の配当性向が結果的に上昇したというような面は否定できないのだろうというふうに考えております。
  48. 正森成二

    ○正森委員 私の聞き誤りかもしれませんが、昭和五十年は何とおっしゃいましたか。
  49. 井阪健一

    井阪参考人 七五・二%でございます。
  50. 正森成二

    ○正森委員 異常に高いのですが、それはどうしてですか。
  51. 井阪健一

    井阪参考人 これは、オイルショック等があってかなり経済変動が大きかった、企業が減益の中で配当を継続した、こういうことだろうと思います。
  52. 正森成二

    ○正森委員 今お話がございましたように、オイルショックがあって、利益が少なくなってしまったときは、配当性向を上げなければふだんの配当を維持することができない。また一番近いものでも、バブルで利益が減少したので配当性向を上げなければ通常の配当はできない。しかし、平均的に見ますと、もうかったうちの大体三割しか配当しないのですね。あとは大体内部留保を行うということになって、株式会社というのは本来株主が主権者ですが、それが経営者主権みたいになっておるのです。  それを端的にあらわしたのが、東燃の問題がありましたね。東燃は、外部のメジャーが五〇%株式を持っているのですが、高配当で有名な会社で十割配当をやっているのですね。五十円配当しているのですが、株価が千五百円だからそれでも利回りは三%ぐらいだ。アメリカから見ると、これでも低い。ところが日本では、私が持っておりますのは読売新聞ですが、ことしの一月で東証の大体の傾向は、間違っておるかもしれませんが、〇・七%強だ、こう言っているのです。ですから、我が国の東証上場平均の一般よりも四倍も五倍も高いものを払っておっても、アメリカの大株主から見れば少ないということで、私は、このような介入が、長期的な会社の経営から見て妥当かどうかには、大いに考えなければならない問題があると思います。しかし、考えなければならない問題があるでしょうが、余りにも我が国が株価から見て配当が少ないという点に非常に大きな問題があったというように思わざるを得ないのですね。  そのことを指摘した上で、歌田参考人にちょっとお伺いしたいと思うのです。あなたが月刊「経団連」一九九三年七月に論文を書いておられます。それで今度の商法改正について述べておられるのですが、それを見ますと、「そこで、経団連では経済法規委員会において、あらためて同問題点に則した検討を行い、さる五月、意見を取りまとめ、法務省法制審議会に提出した。 今回の経団連意見は、これまでの要望をより具体的に表明したものであるが、第一に自己株式取得保有ニーズとしては、特に従業員持ち株制度運営円滑化を挙げたい。従業員福祉のために、わが国においても従業員持ち株制度充実させていく必要があり、自己株式取得保有規制緩和によって同制度を安定かつ円滑に運営できるようにしたい。」その後で軽く「また、自己株式取得株主利益にもつながる面があることも、この際強調しておきたい。」こう言っておられるのです。  だから、持ち株会への譲渡というのを非常に重視して、しかもそれを、あなたのこの論文では「従業員福祉のために、」と言っているのです。しかし、それはある意味では建前であって、非常に言いにくい言葉ですが、あなたの目くらましであって、持ち株会というのは実際はそうではないのじゃないですか。  例えば私は、ここに一般の新聞、赤旗ではありません、持ってまいりましたが、三月十九日の日経新聞によれば、こう書いてあるのです。  「異議なし!」。株主総会の会場の最前列に陣取った従業員株主から一斉に声があがる。最近の株主総会でよく見受ける光景だ。従業員持ち株会の議決権は持ち株会理事長に一括委譲される。理事長は総務課長などが務めるケースが多く、経営者にとっては、これ以上ない安定株主だ。 こう書いてあるのです。だから、持ち株会はこれ以上ない安定株主だということで持ち株会に非常に力を入れる。後で質問もしますが、奨励金も多く出すということをやっているので、福祉が第一番目にあるというのは実際とは違うのじゃないですか。
  53. 歌田勝弘

    歌田参考人 ただいまの従業員持ち株会の性格についてのお話でございますし、また、私どもの論文を読んでいただいているそうで、まことにありがとうございました。  従業員持ち株会、私ども会社もやっておりますが、これは強制ではありませんで、希望者によってやっておるわけでございますし、また口数も希望によってということでございます。私どもの経験なりあるいはよく知っている会社の状況を見ますと、従業員がこの会に入ることによって非常にモラールアップをするということで、もちろん企業発展しなければ株価も下がりますから、従業員の持ち株も価値が下がってしまうということでありますけれども、一生懸命それで会社をよくするということもございますし、また会社の経営そのものに対する関心の度合いといいますか、そういうものも非常に厳しくもなっております。そういう意味で、私は、福祉という言葉は広い範囲でございましょうが、その意味でも十分役に立っておると存じます。  また、原稿のお話もございましたが、先ほど来御説明申し上げておりますように、もちろん従業員持ち株会だけの意味での自己株式では決してございませんが、当面のところはその面で既に現実に困っておるところもかなりあるというようなことでそれを例示させていただいたということでございます。
  54. 正森成二

    ○正森委員 参考人は御意見を承るためにおいでいただいているので、政府のように追及するわけではありませんから、あなたの御意見には必ずしも同意しておりませんが、これ以上は申し上げません。  それでは稲田参考人に伺います。  あなたの御意見を承っておりますと、持ち株会について当を得ているとか、利益消却については周到な規定を置かれている、前田教授がおられたからかもしれませんが、さすがに前田教授というようなこともありまして、そういう意見を述べておられます。しかし、私としては、あなたの御意見は必ずしもあなた及びあなたの属する日本大学意見を正当に反映していないのではないかという感じがいたします。  非常に失礼ですが、ここに別冊商事法務の百五十二号を持ってまいりました。そこには「日本大学法学部商事法研究会意見」が載っております。学者の方が約二十名近く名前を連ねておりますが、その筆頭が稲田俊信と書いてあります。あなたのことですね。  そこで、これは大分長いので全部読むわけにはいきませんから、私がさわりと思うところを読みますと、こう言っておられます。  「株主への利益還元」という点については、株主への利益還元がこういう目的で行われると、(ア)、(イ)、(ウ)と分けてありますが、その中で、株主への利益還元の意味を「社外株式の株価の上昇と考える場合、次の問題がある。」「これは自己株式の買取により市場の需給関係の好転を図るのであるから、それには相当多大な量の自己株式を購入する必要がある。これはそのこと自体資本充実の点から問題がある。」それからさらに、「自己株式取得が株価に好影響を与えるというアナウンスメント効果は、そのこと自体が株価操作利用される虞がある。」  その次に、従業員持ち株制度についてはこう言っておられます。従業員持株制度運営円滑化については、「従業員持株会による株式の買付が株価の定期的変動要因となっているのなら、」私が注釈しますが、例えば十五日なら十五日になっているから、その日には買いが入るだろうというので株価が上がる、そのことを指しておられるのだと思います。「従業員持株会の規約を弾力化し、買付の流動性を持たせるなど他の方策を考えるべきではないか。従業員持株制度円滑化のため、自己株式取得規制緩和することは本末転倒であると思われる。」今の意見と大分違います。  あるいは株式需給の適正化については、「株式の需給関係が適正か否かの判断基準はあいまいであり、また誰がそれを判断するのかも問題である。もし、会社自身が判断するとすれば、それは事実上自己株式取得を放任する結果にならないか。また、株価操作利用される可能性も高い。」こう言っておられます。  時間の関係であと一つだけ申し上げます。取得財源配当可能利益に限定することについて、「配当可能利益財源とした場合、会社目的を定めて積み立てた剰余金をこれに含めることには問題があり、」中略「自己株式取得財源配当可能利益に限定したとしても自己株式取得緩和すべきでない。」こう言っておられます。  これは、きょうここで言われた御意見と大分違うと思うのですが、あなたを参考人に指定された政党の御意向が働いたのかもしれませんが、しかし、学者としてお伺いしているのですから、なぜこんなに意見が違うのかということをお伺いして、私の質問を終わります。
  55. 稲田俊信

    稲田参考人 お答えさせていただきます。  一番最初にお断りいたしましたように、改正要綱についての問題点の前に、我々の会で検討した改正要綱との関連事項について一応見解を述べさせていただく、その後に、私の要綱に対する見解を述べたい、こういうふうにお断りしてお答えしたつもりでございます。  我々が質問を受けた当時におきましては、改正要綱は何ら示されていない、一般的にこういう事項についてはどうですかという形で聞かれてまいりましたので、とりわけ株価の変動について財政的な株式金融という面で説明することについては私は納得できないというふうに述べて、一応区別して、私はここで述べさせていただいたつもりでございます。
  56. 正森成二

    ○正森委員 結構です。  終わります。
  57. 高橋辰夫

    高橋委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  参考人各位には貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  58. 高橋辰夫

    高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所今井民事局長、高橋刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 高橋辰夫

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  60. 高橋辰夫

    高橋委員長 内閣提出商法及び有限会社法の一部を改正する法律案について審査を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島雄二君。
  61. 津島雄二

    ○津島委員 せっかくの機会でありますから、法 務行政の重要性という見地からいろいろ法務大臣にお伺いしたいと思います。  最近の状況を見ますと、私からるる申し上げる必要もないけれども、法務大臣というポストがいかにも軽く扱われているという印象は国民がみんな持っていると思うのですね。行政あるいは司法、それぞれのつかさつかさがしつかりやれば大丈夫だというものではないのであって、そういうことをひとつ中井さんと議論したいと思っておったわけでありますけれども、残念ながらきょうはその機会を得なかった。  そこで、最高裁の事務局からおいでになっておられるので、最初に一問だけお伺いしたいと思います。  裁判制度というのは、世界じゅうどこの国でも、その国の伝統あるいは文化的な背景、社会的な状況の中からだんだん育ってくるものですから、それぞれの特色を持つのは当然のことなんでありますけれども日本の裁判制度は裁判に非常に時間がかかるというのは前から言われてきております。特に最近は、国際的な交流がふえてくると、もちろん日本企業外国でいろいろ裁判ざたになることもたくさんありますけれども、同時に、逆に海外からいろいろな立場からの司法の機能を求めるということがふえてくるわけですね。  私は、この間ある人、外人から言われてなるほどと思ったのだけれども日本の非関税障壁のうちで非常に大きなものが司法制度と言われておる。一般的に、弁護士さんのどうのこうの、弁護士法の問題という次元の話にされておるのだけれども、そうではなくて、適時適切に司法の判断が下されるかどうかということについて、外国から見るともうとてもとても想像できないくらい時間がかかってしまう。そのことについて、司法の頂点にある最高裁の皆さんはどういうふうに考えているのか。まず、日本の裁判に係る、この件でいえば主として民事裁判だけれども、どういう印象を持っておられるか、それに対して、何か問題があるとすればどういう対策を打っておられるか、御答弁をお願いしたい。
  62. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  民事裁判の使命は、私的紛争の適正迅速な解決ということによりまして国民の権利を実現、救済して、社会の要請にこたえるということでございます。このような観点から見ますと、今委員御指摘のございました裁判の迅速性ということにつきましては、非常に重要なことであるというふうに思っておるわけでございます。  現在、日本の民事裁判は、適正、公正さというものにつきましては大方の信頼を得ているものと考えておるわけでございますが、審理期間につきましては、次のような実情にございます。  代表的な、地方裁判所の民事の第一審通常訴訟事件、この審理期間を見てみますと、最近はだんだん短くはなっております。例えば、三年前の平成二年では平均審理期間が十二・九カ月ということで、一年ちょっとかかっておったわけでございますが、昨年、平成五年では十・〇月ということでございます。それから簡易裁判所の方は、これは事件が小そうございますので、平均審理期間は、平成五年では二・六カ月ということになっておりまして、いずれも次第に短くはなってきておるわけでございます。しかしながら、争いのある事件、いわゆる対席事件と我々は申しておりますが、その事件のみの審理期間について見ますと、平成五年の地裁の事件では十六・九カ月ということでございまして、なおかなりの時間を要しているということも事実でございます。  また、裁判につきましては、この手続がわかりにくく、利用しにくいという声も国民の方から聞かれているというところでございます。これに対する対策でございますけれども、やはり最近は非常に、御指摘のような国際化時代、あるいはテンポが速くなったというような時代でございますので、そのような時代の要請に合わせたように民事裁判の促進を図り、また利用しやすくわかりやすいということが必要でございます。  その努力でございますが、一つは、民事裁判の運営改善ということに裁判所の方ではここ数年来力を入れているところでございます。  具体的にはどういうことかと申しますと、民事裁判は両当事者からの争点について判断するということでございますので、できるだけ争点を早期に解決するということでございます。そのために口頭弁論がございますが、その準備をいろいろやって、弁論期日をできるだけ充実したものにする。その上で、その絞られた争点に対しまして証拠調べを集中的に行って、判決なり和解ということをやるということでございます。  それからもう一つは、これは法務省の方で、法制審議会で議論をしておられますが、現在、民事訴訟法の改正作業が進行中でございまして、その中では、裁判を国民に利用しやすくわかりやすいものにしようということで、いろいろな努力がされております。裁判所といたしましても、裁判をするという立場から、この改正作業に対しまして十分協力をして、この目標が達せられるようにやりたいというふうに考えておるところでございます。
  63. 津島雄二

    ○津島委員 十三カ月から十カ月に短縮してきたというのはいいことであり、やればできるのだね。私の感じから言うと、ドイツの場合のように、民事の第一審は六カ月くらいが平均だというのが世の中の普通の常識ではないかな。だから、これから格段の御努力が要ると思うけれども、そのためには、今局長御指摘のように、裁判官の訴訟指揮をもう少しばちばちやっていただいていいと思う。僕は弁護士として法廷に立ったことがないものだからあれだけれども、もう少し日本の裁判が法律の実態をどうするかということを、確かに裁判の適正ということは大事だけれども、しかし時期を失ってしまえば意味なくなってしまうケースが多いわけですから、今おっしゃったような方向でもっともっと進めていただきたい。そのためには、きょうは御答弁はいいのですけれども、もう少しそっちの方向で訴訟法の改正をやってもらいたい。これは法務省の話になるわけで、今度じっくり、中井さんがまだいれば、どのくらい内閣続くかわからぬけれども、まだいればゆっくりやることにしましょう。よく大臣に言っておいてください、政務次官。  それでは最高裁の方は結構です。御苦労さまでした。  もう一つ最近心配なのは、大臣のポストが非常に軽く考えられていることと並んで、検察行政、これは私からちょうちょうなんなんと申しませんけれども、しかし我々が法律学徒であった時代から今日まで考えてみて、ちょっと考えられないような事態が表に出ているのだね。平気で拷問みたいなことが行われているとすれば、ゆゆしいことだ。それは、御当人を訴追いたしました、検察ぐるみで始末しましたというわけにはいかない。もう私から言うまでもなく、検察官一体の原則なんてここで僕は言う気持ちはないけれども、しかし一体として責任を持ってもらわなければいかぬあれがある。一体検察官の皆さん方は、刑事法、訴訟法、法律、それを勉強する以外にどういう訓練をしておられますか。まず社会人として、立派な法曹人として職責を果たしていくためにどこが欠けているのだろうか。どなたからでも結構です、御答弁をお願いしたい。
  64. 原田明夫

    ○原田政府委員 まずもって、長年法務、検察の運営につきましていろいろ御助言をいただき、また種々の角度から御指摘をいただいておりましたが、最近の状況におきまして、ただいま御指摘のような事態が現実に発生しているということにつきまして、ここで改めておわび申し上げたいと思いますし、そういう観点から御指摘をいただいていることに対しまして、法務省の中で検察官の採用また指導育成について責任を持つ者の一人といたしまして、深くおわび申し上げたいと思います。  ただいま津島委員御指摘のとおり、私どもといたしましても、従来の一般的な物の考え方、職務のあり方から考えまして、全く思いもかけなかった事態が発生したということで、大変厳しく受けとめておりますことをまず申し上げさせていただきたいと思います。  そして、事案につきましては、刑事事件としても与えられた条件の中で最善の措置をもって事態を明らかにさせていただきまして、その責任を明確に問わせていただきました。また身分上の措置についても、事案に即しまして適正な措置をとらせていただいたと思っておりますが、ただいま御指摘のとおり、問題はそういうことではなくて、国民一般の目から見た場合に、刑事司法全体に対する国民の信頼、これまで見守っていただきました当委員会を初めとする国会の諸先生方の御助言とこの問題に対する深い関心からいたしまして、そのような一般的な流れの中で考えましても大変申しわけなかったと思いますし、今後の刑事司法ということを考えていく場合に、容易でない事態があるというふうに受けとめております。  ただいま御指摘のとおり、検察官たるものは、単なる法律的知識のみならず、社会一般的な常識と豊かな人間性を備えて事に当たらなければならないということは、まことに当然でございます。そして従来から、検事でいいますと任官一年間というものを新任検事ということで教育期間がございました。その後、数年たった後に全員を順次集めまして、一般研修ということで、一般的な教養を高めるとともに、捜査、公判等検察実務に関する基本的知識を改めて検証して高めていくというような研修もやらせていただいてきました。それよりまた数年たった後、専門的な技能の修習ということで研修をやらせていただきましたが、やはり基本的な人間性のあり方ということについてさらに反省を加え、個人個人の資質を高めていかなければならないというふうに考えております。  そういう観点から、まず新任検事制度につきましても抜本的にこれを考え直そうということで、法務総合研究所、関連する諸機関の協力を得まして、基本的にそのカリキュラムのあり方、何を伝え、どのような検察官をこれから養成していくのかということにつきましても改めて検討を加えて、そのような体制のもとに明年度の新任検事制度からこれを適用したいということで、現在鋭意検討させていただいております。  ただいま御指摘いただきましたことを含めまして、さらに一層検討を加えた上でこれを実施、実現する方向で法務省、検察挙げて努力させていただきたいと考えております。
  65. 津島雄二

    ○津島委員 真剣な御答弁でありましたから、それなりに多として拝聴いたしましたが、これも次の機会にトップと議論しなければいかぬ。こういう場面こそは、やはり法務行政のトップが国民の立場に立ってリーダーシップを発揮しなければならぬ。変な指揮権発動する必要は全くないのだけれども、こういうことについては大いにやってもらいたいと思っておるわけだが、私の持っている印象は、それはやはり氷山の一角ですよ。どういうところからくるかといいますと、一つは、検事さん方は、言われると怒るかもしれないけれども、やはり世間知らずなところがあります。例えば、地検なんかへおいでになった方、僕らはおつき合いしようとしても、政治家とつき合ったりするとぐあい悪いななんといって、その気持ちはわかるけれども、そういうような、自分は検察の一員であるということを朝から晩まで頭に置いているということが、言ってみれば人間としてゆがめさせる。では、そういう人たちがどこに関心を持つかといえば、やはり検察行政の中で上司に認められるということになってしまうんだね。だから、円満な常識というもの、それから社会人としてのいろいろな生きざまというものを大事にしていくことが大切だと思います。  私自身人生を振り返ってみて、学校を出て十年間というものは物を知らなかったなということを、今から考えてみると多過ぎた。別の意味の権力行政である税務行政をやっていて、今から考えるとあんなことはちょっと無理だったなというようなことをやったこともあります。そういうこともありますから、ひとつ謙虚さというもの、これはみんながわきまえておやりになるようにぜひお願いをしたいと思います。きょうはこれだけにしておきますが、これも宿題にしておきます。  そこで、残る時間少し山本さんの御理解も得て時間をいただくかもしれませんから、商法及び有限会社法の一部を改正する法律案について御質問をさせていただきます。  自己株式取得について踏み切られた、私は英断であったと思います。また、ここ三年ぐらい前から絶えず法務省の御当局や関係者の皆様方に制度見直しを求めてきた一人として、心からの感謝をいたしたいと思います。そうであるからには、みんなの期待の中で発足する新しい制度がそれなりの役割を果たしてもらいたいと思う。そういう立場から、二、三質問をさせてもらいます。  最初に、従業員持ち株会のための株式取得でありますけれども、これは考えてみるとなかなか厄介な問題をはらんでいるのですね。今のやり方というのは、いつも私は指摘してきたのだけれども、株を買う日まで決まっておるんだね。それで、その日に買わなければならぬということになりますと、これは逆の意味株式市場に影響を与えたりしかねないような硬直した制度になっている。それを今度こういう制度にしていただいたのはいいのだが、逆に新しい制度で大丈夫かなという気がする。けさおいでになっていただいた参考人先生の御意見の中にもそういう御意見が散見をされたわけでありますけれども、どうなんでしょうね、発行済み株式総数の百分の三以内であればいい、六カ月たって従業員、会員に渡ればいい、その二つのところ、二つの規則だけでやっていきますといろいろやれるなという感じもするのです。入り口のところと出口のところをしっかりしていれば、その間は六カ月の範囲内でいろいろやれますな。そうすると、多少とも会社の株をいい方向へ持っていこうなんというようなことにならないわけではない。どうでしょうか、百分の三以内、それから六カ月間保有できる、この二つの条件だけで弊害はないとお考えになっているのかどうか、御答弁をお願いします。
  66. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 取得数を百分の三という割合にした、それから保有できる、処分しなければならない時期を六カ月にしたということ、これはこの数量が多くなればなるほど、また期間が長くなればなるほど自己株式保有に伴ういろいろな弊害、特に経営者による会社支配の問題でございますとか、あるいは株価操縦の問題とか、そういう弊害が出てくる。それを絞れば絞るほどそういう弊害が相対的に少なくなるという問題があるわけでございますが、片や、従業員持ち株制度会社の判断あるいは従業員の判断において将来適正に活性化していくという観点から、余りこれを厳しくし過ぎても実際上ワークしにくくなるという問題がございまして、そういうことの兼ね合いの中でこういう制限数量、制限期間を設定したわけでございます。  こういった制限のもとで、先ほど申しましたような弊害というのは、証取法上の規制、運用等もあわせてほぼ防止できるのではないかというふうに考えておるわけでございますが、なお、そういう数量あるいは期間があるということを利用して会社がいろいろなことにこれを使うおそれはないかという御指摘でございますけれども、この規定による株式取得は、あくまでも従業員譲渡するためという規制をしておりまして、この規定に従って取得したものを任意に処分するというようなことは許されておらないわけでございます。もしそういうことが行われれば予想外の弊害を生ずるという懸念もあるわけでございますが、そういうことは規定上許されておらないということでございますので、今御指摘のような弊害を生ずるということ、一般的な懸念があるということではないであろうというふうに考えておるところでございます。
  67. 津島雄二

    ○津島委員 そういう御答弁になるのだろうと思うけれども、けさ参考人のお一人が言われた問題点、つまりこの法律を読む限りは、従業員持ち株会からどうのこうのと言われること、持ち株会の 方の意思とか何かが全く要件になっていないのですね。だから、取締役がそのことを開示することは求められているけれども、そういうような意味の正当の理由があるという前提で進められることということになっているので、私は問題が起きる可能性もあるなと思っておりますよ、そこのところはもう少しやらなければ。  それでは、証券取引所の方でルールをつくって株価操作等に利用されないようにしよう、それはそれでやった方がいいのだけれども、それではどうも不十分ではないのだろうかな。やはり持ち株会との関係について、これは検討の材料にしておいた方がいいのではないかなということだけ、ここでまず御指摘をしておきたいと思います。  それで、これは二百十条ノニの読み方なんだけれども会社は、「正当ノ理由アルトキハ使用人株式譲渡ス為ニ発行済株式ノ総数ノ百分ノ三ヲ超エザル範囲内ニ於テ自己ノ株式取得スルコトヲ得」こう書いてあるのですね。この「正当ノ理由アルトキハ」というのをここに入れた理由は何なんですか。
  68. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 この規定を設けました主たる目的従業員持ち株会運営円滑化を図るということでございますけれども、そのほかにも、会社の運用といたしましては、永年勤続の使用人とかあるいは功労ある使用人株式譲渡するという目的のために自己株式を持ちたい、こういう要請もあったわけでございます。そういう要請に弊害の生じない範囲内で適切に対応するということで、従業員持ち株会譲渡というような規定の仕方でなくて、使用人株式譲渡するという目的のために自己株式取得することができるという規定にしたわけでございますけれども、そういたしますと、単に使用人譲渡をするという目的であれば何でもいいのか、納得できるような理由もないのに特定の従業員を優遇するというようなことで取得するということでもいいのか、こういった議論がございまして、そういうことではなくて、やはりこの制度目的である会社の業務の運営上相応の理由があるとか、あるいは従業員の福利厚生といった観点から相当であるとか、そういう場合におのずから限られるはずである、そういう趣旨で「正当ノ理由アルトキ」という要件を加えておるわけでございまして、これは、言いかえれば、今申しましたように、会社の業務の運営上あるいは従業員の福利厚生等、そういった観点から相応の理由がある場合というものを意味するというふうに考えております。     〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
  69. 津島雄二

    ○津島委員 これは、立法論として僕がひっかかったのは、「正当ノ理由」とさりげなく書いてあるけれども、「正当ノ」というのはどっちの立場に立つかによって随分違う。会社にとって正当なのか、株主にとって正当なのか、従業員会にとって正当なのか、いろいろあり得るわけですよ。そういうすべてのことを含んで「正当ノ理由」と書いてある。これは文脈からいうと会社にとってなのかもしれないのだけれども。だから、そういう意味では余りいい条文ではない、この書き方は。僕ならやらない、こういう書き方は。だから、そうはいっても、意味のある文章、条文であるとすれば、ある方がいいというような解釈を肉づけをしていただく必要があるかな、専門家が御検討いただいて、こういう言葉が入れてあるのはこういう意味であるという、もう少し方向づけをしていただいた方がいいのではないかなというふうに思います。  次に、利益による株式消却の問題でございますけれども、こちらの方は、けさも参考人の方の御議論がありましたけれども取得株式総数の制限がないわけですね。これは制限を置かなくても本当にいいのかなという疑問はどうしてもわいてくるのですね。その点はどういう御議論を立法の過程でなすったのでしょうか。
  70. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 私も先ほど参考人に対する質疑を傍聴しておりましたが、そのとき御説明があったように、一つは、これは、現行規定で実際上はワークしないと言われております二百十二条第一項ただし書きの定款の定めによる利益をもってする消却というもの、この要件を緩和してこれを使いやすくするという観点からスタートしたわけでございます。そして、二百十二条第一項ただし書きの利益消却については、これはもともと数量の制限がないということでありますので、その点についてはそれに合わせるということが適当であるというふうに考えられたこと。それから、会社の行動として、新株の発行をして株式数をふやすということについても、これはもちろん授権資本の範囲内でございますけれども、特に商法上、実体上の制限がない。それに対応して、事情に応じて余剰利益をもって株式消却するという行動についても、商法観点からいえば、特に制限をしなければ具体的な弊害を生ずるという理論上の問題もないというようなことで、制限をする必要がないということになったわけでございます。  そのほか、こういう取得の量が多くなるということに伴う弊害の問題としまして一般的に言われておりますのは、経営者の支配が高まるとかあるいは証券取引上のいろいろな弊害があるとかということが言われておりますが、これは、他の場合には一定期間保有が認められるということでございますけれども、この消却の場合は取得したらすぐ消却するということでございますので、そういった面で、この消却のためにする取得については、保有を認める場合に比べてそういう弊害が少ないということも今のような対応をすることにした理由の一つでございます。
  71. 津島雄二

    ○津島委員 割り切って考えれば、株式消却をするという歯どめもあるし、そう自由闊達にはできないであろう、消却のための株式取得というのはおのずから限界があるであろうということだろうと思うのですけれども、また、広く考えますと、今までのように定款で定められた場合だけだというのではなくて、一般的にいいよ、こうすることは、資本調達、自己資本の調達について非常に大きな影響がある制度変更なんですね。つまり、一方で新株発行もあるし、消却もある。それを株式市場の状況に応じて自由濶達にやりなさいという世界に入ってくる。そういうふうに考えた方がいいのだろうと思います。  そして、私は基本的にはその方がいいと思う。日本資本市場発展していくためには、これはそうした方がいいと思うのだけれども、ただ、御案内のような株式市場の現状でありますから、やはり日本市場というのは多かれ少なかれ操作に影響されやすい構造もあるものですからね。だから、消却をすることによって一株の値打ちをふやしてしまう、また時期が来たら新株発行をやろう、これは株式対策としてうまくやっていくと、まことにいい話になるのですよ。いや、そういういい話はどんどんやってもいいという世界に私は行ってもいいと思うのだけれども、ただ、よほどこれは気をつけていかなければいかぬのかなということで、あるいはこれは法務省の方でなくて市場の方、つまり取引所の方で、十分この問題、この制度変更が及ぼす変化というものを注目していってもらいたいな。必要とあれば法務省御当局においてもこれを再検討していただく必要があるのじゃないかということだけ御指摘をしておきたいと思います。  そこで、きょうは主税局来ておるな。最後に、利益による消却という話になると、けさの御議論にも出たけれども、みなし配当課税はけしからぬ、こういうお話があった。けさも全廃をしていただきたいという御主張がありましたね。私は、幾らか主税局に影響を受け、まだ影響が残っておるのかな。株式の持っている含みに対する経済的な影響力というものがふえれば、これはもう財がふえたのじゃありませんか、そういう立場から、けさ冬柴委員が、課税しないという方が無理じゃありませんかという議論をどうするかという非常に鋭い質問をしておられたのだけれども、そのときに、株式分割と同じように観念してくださいという御答弁があった。僕は、そこはちょっと理解できないのだけれども、税務当局の方はこの場合、利益による消却の場合のみなし配当課税というものは、日本はもとより、外国立法例を見ても、こういうふうに考えているんだということがあれば、今示してもらいたいと思うのです。
  72. 大武健一郎

    ○大武説明員 ただいま御質問のございました自己株式取得した場合のみなし配当課税の問題といいますのは、先生一番よく御存じでありますように、配当所得に対する課税のあり方の基本にかかわる問題でございます。消却された株式を所有していた株主につきましては、株式の売却に応じて金銭の交付を受け、交付された金額のうち、資本金額を超える部分について配当可能利益株主に還元されることになるので、これを配当とみなして課税することはやはり当然であるということなのだろうと思います。  そういう意味では、まさに利益といいますか、還元されていない形のものとはおのずから性格が違うのであって、その意味では、自己株式取得した場合のみなし配当課税原則そのものは、やはり動かすことはできないのではないかと思われるわけでございます。  ちなみに、今先生からございました諸外国では、例えば残存株主に対するみなし配当課税の問題はどうなっているのかというお話がかねてからあるわけでございますが、調べてみますと、諸外国、米、英、独、仏などは、原則としまして、自己株式取得消却の際には減資を伴うという制度になっているわけでございまして、日本の、今回考えておりますような利益をもってする自己株式取得消却というようなものではございませんで、減資でございますから、一株当たりの資本金額には変化はないという仕組みに実はなっているわけでございます。したがいまして、これらの諸外国では、自己株式取得に当たって、我が国で問題になるようなみなし配当課税の問題は生じないということなのかな、こういうふうに思うわけでございます。
  73. 津島雄二

    ○津島委員 そこにまだちょっと議論が残るのだね。減資を伴うということから、裏からいえば、利益による株式消却ではないのだということを今あなたは答弁しているのだろうと思うけれども、結果として利益による消却と同じ形になる場合があるのじゃないかと私はまだ勘ぐっているんだ。  きょうは時間がないから、これはまたゆっくり議論をすることにしまして、最後に確かめておきたいのは、今まで一番問題になったのは、仮に利益による消却をした場合に、残存株主にとっては何の配当もないのに、おまえはみなし配当をもらった、税金を納めろ、こう言われるから、これは困るということで、無理無理金銭で配当もしなければならなくなる、そこで源泉徴収の話も出てくる、こういう話だったね。そういう無理があるから、源泉徴収をやめちゃえということで、租税特別措置法の改正をこの間やっていただいたというロジックになるわけだが、これでどうかね、大体問題は十中八、九片づくとあなたの方は見ていますか。
  74. 大武健一郎

    ○大武説明員 先生御指摘のように、今度の平成六年度税制改正、租税特別措置法の改正によりまして、配当可能利益をもって株式消却した場合の残存株主に対する課税につきまして、みなし配当課税は従来どおり行うわけですが、ただ、そのみなし配当につきまして源泉徴収を適用しないという措置を講じさせていただいたわけでございます。  その結果、今先生が申されましたように、源泉徴収税額納付のために、会社サイドで、従来であればファイナンスが必要になるのじゃないかと言われるような部分についてのファイナンスが不要になるということ、さらには消却株式取得時期及び株式消却の時期が定時総会の前後に限定されず、適宜に行えるというようなことになったわけでございまして、従来私どもが聞いておりました利益消却の事実上の阻害要因と言われてきた税制上の問題につきましては、ほぼ解消しているのではないだろうかと思っているところでございます。
  75. 津島雄二

    ○津島委員 大きな進歩だと思いますけれども利益による消却というのは、企業資本市場の間の関係をより弾力的なものにする、片っ方では消却もやる、片っ方では新株発行もやるという多様な関係を育てていくという面がありますから、みなし配当に対する課税制度がこういう大きな変化の阻害要因にならないということは当然頭に置いておかなければならない。そういうことで、引き続きみなし配当課税のあり方について御検討をいただきたいということだけ要望しまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  76. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員長代理 山本有二君。
  77. 山本有二

    ○山本(有)委員 商法改正有限会社法改正について、引き続きお伺いいたします。  会社法というか商法会社に関する法律の要諦というのは、まず株主がいて、そして経営者があって、そして取引の相手方がいる、つまり、株主利益会社経営上の取締役活動を保障するということと、さらに債権者、会社債権者を保護する、こういうような観点があるだろうと思います。  自己株式取得規制緩和ということにおきましては、それぞれ今まで厳格に、自己株式取得してはならないぞ、例外は四つくらいしか認めないぞといったことは、我々には非常にわかりやすく、会社利益だとか株主利益だとか債権者利益だとかいうようなことで言われてきたわけであります。今回、この規制緩和目的は、実経済的な目的、つまり、今の株価市場がどうだとか国際的な整合性がどうだとか、こういうように教えていただいておるわけでございますが、ここで改めてこの規制緩和目的につきましてお伺いさせてください。
  78. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 今回の改正目的ということでございますけれども、これは現在の自己株取得保有規制が余りにも厳し過ぎて、会社の方でいろいろな目的のために自己株取得したいという、これはそのときどきの経済情勢に応じたいろいろな目的のために使いたいという場合に、それが使えない。そういうことから、かねてからその規制緩和を求める声が大変強かったということを受けまして検討を開始し、これまではともかくもそういう自由な取得保有処分を認めることになると、今御指摘のような会社債権者のための会社財産の基盤の保持あるいは株主平等といったことに反するおそれがある、害するおそれがあるということで、こういう要請に対しては、言ってみれば商法学会というのは比較的冷たかったということが言えるかと思うわけでございますが、しかしながらそういう要請が強まってきている。それからまた、政府のサイドでも、いろいろそういった観点からの対応を求める、あるいはいわゆる規制緩和という観点からの適正な対応をすべきであるという声の高まりもありまして、やはりいろいろな実務界の要請があるけれども、その要請に相当程度対応できて、かつ今のような弊害を可及的に防止する対応をすることができる範囲はないだろうか、そういう観点から、もう少し細かく検討をしていくべきではないかという考え方が、これは商法学者の間にも広まってきた。  そういう状況を受けて、今申しましたような観点から、要するに、本来企業活動というものは弊害がなければ自由であるべきだ、そして、そういう要請に対して弊害を防止することができる手段というものを詰めて考えて、できるだけ企業の自由な活動対応することができるようにという観点から考えようということで検討した結果が、今回の改正であるというふうに考えております。  自己株式取得したいという要請、これはそのときどきの経済情勢によっていろいろ違ったものが出てまいります。昨今は、株価の暴落ということを受けて、その底支えというようなことが言われておりますけれども、これは決してそのことだけを目的として今回の改正をしようというわけではございませんで、そういうことに対応するための、何らかの企業としての適切な対応をしようとする場合にも、こういうものがその一つの手法として使える、そのほかの事情でこういう制度を使おうと思えばまた使える、そういう企業活動のいろいろな自由なビヘービアというものを弊害が除去できる範囲内で認めよう、こういう考え方で、商法立場としてはこの改正を実現したというふうに考えているところでございます。
  79. 山本有二

    ○山本(有)委員 午前中の参考人歌田経団連会長が、国際的整合性と言われました。このことは、恐らく日本企業の資本に参加してくる外国企業、こういったものに対しての、イコールの方式でないと我が国だけ損するではないかという観点とか、あるいは、さらにはストックオプション、こんなふうな、いわば取締役に迎えるためのインセンティブを起こすような方式をアメリカはとるから経営に能力のある人が来るんだとかいうようなことを言われておったと思うのですが、こんなふうに国際的整合性というようなことが商法改正のこの理由の中に入っているのですか、歌田さんが言われるような。
  80. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 特に今回の改正の直接の目的ということではございませんけれども企業活動国際化してきているわけでございますので、一般論として申し上げますと、各国の会社制度が似通ったものであるということが、そういった面からは好ましいということは言えようかと思います。余りに違っていると資本の相互乗り入れというようなことについて弊害が生ずるということがあろうかと思いますが、今回の改正の中では、やはりこの自己株式規制のあり方について、これは諸外国制度参考にさせていただいた、アメリカが一番自由で、ECがその次くらいに位置しておって、日本は一番厳しいという状況の中で、先ほど申しましたような観点から、我が国会社法のあり方としてどこまで緩和すべきかという点については各国の法制度参考にしたという意味では、結果として整合性に近づいたということが言えようかと思うわけでございます。  それから、ストックオプション観点からの御指摘がございましたけれども、これは私ども承知しているところではアメリカで大変使われているということのようでございまして、そういうことで、今御指摘のような観点から、経済界からはそういう道も認めてほしいということがあったわけでございますが、結果的に、これは今回は導入しないということにしております。  これは我が国固有の企業の要請としてはまだ定着しておらないというようなことから、この改正を見送ることにしたわけでございますけれども、私どもとしては、基本的に、冒頭に申し上げましたような国際的な整合性ということは常に一方に念頭に置かなければならないと思いますけれども、何が何でも諸外国制度に合わせるのだという考え方は、これはまた問題があろうかというふうに思っております。
  81. 山本有二

    ○山本(有)委員 この国際的整合性ということを言い始めると、これを改正の趣旨に加えていくと、私は、逆に幾つか矛盾が出てくるような気がします。  それは一つは、商法というのは株式会社規定しておるわけですが、百三十万から百四十万の株式会社があって、五億円以上の資本金を持つものが八千社、上場が二千社、こういう中で、その二千社だけのためにあとの百三十万以上の株式会社も全部右へ倣えでこんな改正をされるということは、そもそも、何となく実情に逆に合っていないのじゃないか。特に商法の、今まで法制審議会でも多分出ておるでしょうが、零細な企業と中小とさらに大企業とそれぞれあって、特に大企業にばかり目が向いているということに対しても、これは多少無理がある改正理由になるだろうと思います。  それからもう一つ、こればかり強調することによって、取締役が自分の会社利益、対外国との利益だったら普通の一般株主も債権者も納得するかもしれませんが、これを対外国じゃなくて、こういう手段を国内の自分の自己取引だけに限ってやってしまえば、それは一体債権者の利益になるのか、株主利益になるのか、ちょっとわけがわからなくなるような気が私はします。ですから、国際的整合性という実経済上の要請があるかもしれませんが、これが本当に機能した改正趣旨になるのか、私は疑問があるというように思います。  もう一つ、企業のビヘービアをできるだけ自由にしたいと局長さんはおっしゃいました。そのビヘービアの中に、企業のリストラを図っていく、とにかくバブルのときに新株発行して、CB発行して、どんどんだぶつくぐらい株式が余っている、だからそれを回収して消却してということもよくわかるのですが、これは何となく武士の論理として、特に局長のような武士の論理として、自分でやったことじゃないか。よく言われる、バブルのツケをまたこれ政府に持ってくるのかというような、改正について、株式市場が低迷するから上げてくれだとか、何となく寄りかかりの多い、自主性のない、しかも市場価格についてリードすることができないから、市場の価格をやり方によって上げてくれというような、野菜や魚市場でいうと何を言っておるかと言われるような、そんなふうな感じもせぬではないですが、それについてどうお考えであるか、お聞かせいただきたいと思います。
  82. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 今回の自己株式取得してこれを消却するということが株価の底支えをする、あるいは引き上げるという目的で使われるというようなことが経済界から言われておるわけでございますけれども、私ども、経済の動きあるいは株価の動きがどうなるかということは、専門でございませんので予測の限りでございませんけれども、理論的に申し上げますれば、消却によって一株当たりの会社の資本に対する持ち分というのはふえるわけでございますけれども、資本だけでない、会社の全体の純資産額に対する一株当たりの価額というのは、これは消却のためにお金が出るわけでございますので、変わらない。したがって、消却して株式数が少なくなれば当然に株価が上がるという関係には、理論上はあるわけではないというふうに思っております。  ただ、要するに、将来の会社発展、成長ということを考えれば、株式数が少ないということがそれだけ一株当たりの期待感が大きいとか、あるいは将来の一株当たりの配当額が上がるかもしれないとか、そういう期待感があって、例えばアメリカなんかの例でも、実際に株価がある程度上がるという経験もあるというようなことを聞いているわけでございますが、実際にそういう結果になるかどうか、それは予測の限りでない問題ではないだろうかというふうに私どもは思っているわけでございます。  ただ、これも先ほど申しましたように、私ども商法立場としては、そういうことを目的として今回の改正をするということではなくて、会社の方でそういうことを期待されて、そういう行動に出られる。それが会社法上の、先ほど委員御指摘の、株主利益あるいは会社債権者の利益ということに反するものでない限りは、余計な規制はない方がいいだろう。そういう目的のために会社の方でそういう制度をお使いになりたいというときには、それを使っていただく道をあけるということが適当であろうということで、弊害を除去しつつ、今回の改正を実現させていただいた、こういうふうに考えております。
  83. 山本有二

    ○山本(有)委員 弊害のことも考慮しつつ改正をするわけですが、この弊害防止策についてどのような措置を講じておられるか、御説明をお願いします。
  84. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 従来から言われております、自己株式取得保有処分を認めることによる会社法の立場からの弊害といたしましては、一つは、資本の充実維持に反する、会社財産の基盤を危うくするということによって会社債権者の利益を害するおそれがあるということと、いま一つは、その取得方法あるいはその場合の対価のいかんによっては特定の株主を優遇する、特定の株主から高い値段で買い取るというようなことになりますと、株主平等の原則に反するおそれがある、こういう指摘があったわけでございます。  こういう観点からどういう対応をしているかの概要を御説明させていただきますと、まず、資本の充実維持を害するおそれを除去するための方策といたしましては、この審議でも既にいろいろ御説明させていただいておりますように、すべての取得について、配当可能利益の範囲内でそれを財源として取得していただく。したがって、資本及び法定準備金等に食い込む、それがマイナスになるというようなことはないようにということで、これは例えば総会決議で一年分の枠を決める際の基準としても、そういう規制をはめると同時に、また、その決議に基づいて取締役が個々の取得をしようとする、そのそれぞれの時点におきましても、その時点の状況を考えて、それを取得すると次の決算期において配当可能利益がマイナスになる、いわゆる資本等に欠損が生ずるということになるおそれがないかどうかということを注意して、そのおそれがあるときは取得してはいけない。それに反して取得すると、特別の取締役の責任規定を用意して損害賠償責任を負ってもらう、こういうような規制をしているわけでございます。  それから、株主平等の原則に反しないようにという観点からは、いわゆる株式を公開している会社上場会社でありますとか店頭登録会社、そういう会社従業員譲渡するため、あるいは消却のため株式取得する場合におきましては、これは必ず公開の市場で買い取らなければならない。特定の株主との間で相対で買い取るということは禁止するということにしております。  なお、正確に申し上げますと、消却の場合の取得につきましては、公開の市場証券取引所あるいは店頭登録株式取引方法以外に、いわゆる譲渡人を公募する公開買い付け方法によることも認めておりますが、これも株主平等の観点から問題がないということでございます。  さらに、上場していない、いわゆる非公開会社の場合には、これは相対で取得せざるを得ないわけでございます。特定の株主から買い受けることになるわけでございますが、そういう場合につきましては、総会の決議を特別多数決議という特に重い決議にするとともに、総会の決議といたしまして、だれから買い取るのかということを明らかにする、そして会社の方で、だれから買い取るということの議案を出しました場合にも、はかの株主から、私も売る側になりたいという場合には売り主として議案に追加してもらうという権利も認めることにしております。そして、その売り主になる人は総会の議決権から排除するというようなことで、特定の株主が優遇されるということになるような事態を徹底的に排除するという制度にしているわけであります。
  85. 山本有二

    ○山本(有)委員 大蔵省の方は、おいででございますね。証券取引法上、弊害の除去を幾つかされておるだろうと思います。これは、それこそ、厳格に規制をしておったのを緩和するわけですから、その点の措置が十分かどうか、大蔵省の方にお伺いします。一般論で結構です。
  86. 西方俊平

    ○西方説明員 弊害除去の問題につきまして、ただいま商法に関しましては法務省の方から御説明がございましたけれども、証券取引固有の問題としても、私ども、いろいろ検討を重ねてきたところでございます。特に、この自己株式取得というのは、会社情報を十分知っている人が行うということでございますので、この問題につきましては昨年から証券取引審議会でいろいろ審議をしていただいて、今回、商法改正に合わせまして証券取引法改正案国会に御審議をお願いしているところでございます。  具体的な内容でございますけれども、まず第一に、相場操縦の問題がございます。この相場操縦の問題というのは、現在、法律上、証券取引法規定がございまして、この規定が当然のことながら適用されるわけでございます。  ただ、どのような行為が問題になりやすいかということについては、証券取引審議会でも御議論がございまして、例えば、多数の証券会社に同時に自己株式買い付けの委託を行うというようなことがあると、これはあたかも取引が繁盛であるというようなことを一般の投資家に誤認させるということになるわけで、こういった適当でない、相場操縦禁止規定に違反する疑いを招くような具体的行為、先ほどのものも含めて五つを挙げていただいております。  これが避けるべき行為の一つの目安として機能するということを私どもは期待しておりまして、法律が仮に通りました暁には、関係者にこういったことについての周知を図っていかなければならないものというふうに思っております。  それからもう一つは、インサイダー取引規制との関係の問題でございます。  現在、インサイダー取引規制につきましても証券取引法では規定がございます。今度新しく自己株式取得の決定が行われるということになりますと、これは会社の財産に関するものでございまして、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすものでございます。現在、例えば新株等の発行とか資本の減少とか利益の配当といったようなことが重要事実であるというふうに証取法で規定されておりますので、それを勘案いたしますと、この自社株取得の決定というのは、内部者取引規制上重要事実にすることが適当ではないかということで、今回の商法改正対応いたしまして、法令によりこれを重要事実として規定しているわけでございます。  それからなお、先ほど公開買い付けの話が法務省の方からの御説明にございましたけれども市場外で株式を仮に取得するということになりますと、これは利益による株式消却のときに特にこういう規定を設けておりますけれども、ある意味取引透明性確保できるのではないか、それから、一般の投資者に対しましても公平にその取得に関する情報を適切に開示できるのではないか、こういったようなことでございます。  それからまた一方、短期間に大量の株式消却を行いたいといった企業ニーズもあろうかと思います。こういったものにも対応できるのではないかということで、今公開買い付けの枠組みというのがございまして、これを今度の自己株式取得の場合も適用できるように証券取引法改正を行っているところでございます。  以上でございます。
  87. 山本有二

    ○山本(有)委員 審議官、通告にはなかったのですが、気になるので。  例えばインサイダー取引の重要事項の中に、取得予定日、自己株式を買うときの取得予定日ですね、あるいは数量、こういったものが入るかどうか。つまりこれ、取得予定日が入ると買いが必ず入るというんです。だから、公開の株式の五〇%以上を配当可能利益で買える会社が一割以上あると午前中の冬柴先生の質問でありましたけれども、そんなでっかいシェアで買い付けの予定日がもし公示されたら、みんなそれはどんどん買いに行きますわね。そうすると、証券市場が上がるのは当たり前だけれども、これは、法の目的が上がることが目的だというのであればそれはそれで結構ですが、これでもってまた不当な取引云々というようなものもあり得る話でございますし、取得予定日というのは重要であるけれども、こういったことを公表すると逆に証券市場が乱高下を重ねるという非常に矛盾を感じるのですが、この点いかがでしょうか。
  88. 西方俊平

    ○西方説明員 今の御指摘のとおりだと思います。  そこで私どもは、自己株式取得の決定を例えば取締役会で決めるとか実質的な会社機関が決定するというときには、そのことについては公表していただくということが適当だと思いますけれども、今お話しございましたような具体的な取得予定日を公表するということは、かえって相場操縦等につながりかねないというような問題がございます。したがいまして、その場合は、その公表を行わなくても会社自身は自己株式取得は行えるということが適当ではないかということで、そういうような法律の立て方になっております。
  89. 山本有二

    ○山本(有)委員 それと、もう一つ気になることをお伺いしますが、例えば薬の会社なんかで、が んに効く薬、水虫に効く薬、これを開発できた、それで製品化する、こういうことも重要事項に入るのですか、入らないのですか。これもちょっと。
  90. 西方俊平

    ○西方説明員 会社が新製品開発を行っている、そのことがやはり会社に対して大変財務上の影響を与えるというようなものは、現在も重要事実に指定されているところでございます。
  91. 山本有二

    ○山本(有)委員 ともかく、これはまだ法が十分改正されていない段階でもありますし、それからまた、法律に書かれていない取引慣行にゆだねられる部分が非常に多いというように聞いておりますので、これは本当に、法の目的が全うされ、弊害ができるだけ起きないように、ぜひここらあたりの行政指導をよろしくお願い申し上げます。  また法務省にお伺いしますが、二百十二条一項ただし書きの規定、厳格な自己取引規制した規定があるわけでありますが、今回、改正をして二百十二条ノ二というものを新設するわけですよね。局長、そうですよね。そのときに、配当可能利益消却する場合、定時株主総会で簡単にできますよね、これ。自己株取得について定時株主総会。そうではなかったら、原始定款かあるいは株主全員の同意、これが必要なわけです、商法原則は。それが今度二百十二条ノ二というもので定時株主総会でできるわけですよね。この定時株主総会でできるということになると、私は、アメリカ株主総会と違う、日本の形骸化された、非常に短時間で済む株主総会、しかもシャンシャン大会でこんな大事なことが簡単に決められるということで株主利益を保護できるのかどうか、株主総会のあり方についてまで突っ込んでこれから商法改正の議論を尽くさなきゃならぬと思うのですが、その点いかがですか。
  92. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のとおり、株主総会の形骸化ということはかねてから言われており、批判の的になっているわけでございますが、これはもう商法上の制度といたしまして、株主総会というのは最高の意思決定機関でございます。その最高の意思決定機関である株主総会が適正に機能するようにということは会社法にとって大変重要なことでございますが、こういった観点からの改正というのを、御案内のとおり昭和五十六年の改正で実現したわけでございます。その効果が相当程度上がってきているというふうに考えておりますけれども株主総会の実態として、まだまだ会社側に工夫、努力をしてもらわなければならない部分もあろうかと思います。  そういう問題がございますけれども、ともかく、株主総会というのは最高の意思決定機関であるということでございますので、やはりこの重要問題については株主総会で議決していただくということのほか道がないわけでございますが、この改正が実現しました場合には、会社の運用につきまして今回の改正の趣旨を十分周知して、今後とも総会が適正に機能するように私どもとして広報活動等に努めたいというふうに考えております。
  93. 山本有二

    ○山本(有)委員 二百十二条の規定、自己取引禁止規定に違反しますと、取締役、監査役等は刑事責任、商法四百八十九条二号でこれを負うわけですね。刑事責任まで負わされておるという大変厳格なこの禁止、それを今度は配当可能利益という形で大幅に緩和してしまったということは、これは原則と例外、どっちになったのかなというように思うわけです。  これは非常に法制上の技術論的なことかもしれませんが、二百十二条というものをそのまま置いたままで二百十二条ノ二というものを後ろへつけ加えておるわけです。そうすると、例外的にいわば許してあげるよ、緩和してあげるという規定になるわけですけれども株式消却、しかも利益配当でということで、現実には本当に自己株式取得原則認められているというようになっていると私は思うのですが、こういうように法制上二百十二条をそのまま変えなかったというのには、何か理由があるのですか。
  94. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 二百十二条一項ただし書きと今回の新設した規定との関係でございますけれども、御案内のとおり、現在の二百十二条一項ただし書きの規定が、解釈上、この定款というのは原始定款または株主一致による変更定款によらなければならないという厳格な解釈がされておりますために実際上使われておらないということから、もっと簡単な手続でこの取得をすることができるようにということで、新規定を創設したわけでございます。  現行の二百十二条一項ただし書きの規定、これはいわゆる任意消却のほかに強制消却、要するに、株主が任意に消却してもらいたいという場合にそれを認めるのが任意消却であり、会社の方で抽せん等によって強制的に消却するのが強制消却でございますが、その両方を含むということでございますので、そういうことを踏まえて厳格な手続になっているわけでございますけれども、今回新設する規定は、あくまでも株主が自由な意思で譲渡する、それに対応して取得して消却をするということ、すなわち任意消却の場合に限るわけでございます。  そういう意味で、現行の二百十二条一項ただし書きの規定とは性格が異なっているということ、それから、今回の新しく制度を認めるということのためには、改正案として準備しておりますように、非常に細かい規定をこのために特に置かなければならない、そういった実質上及び立法技術上の理由から、現行規定は存置したまま新しい規定としてこういう規定を用意するということにした次第であります。
  95. 山本有二

    ○山本(有)委員 次に、配当可能利益の範囲内であれば幾らでも自己株式取得ができるという、朝も議論がありましたけれども、これを本当にまじめに考えていくと、商法改正とは一体何なのだろうという感じがするのですけれども、これは株式会社ですから、理論的に言えば、配当可能利益があればどんどん消却していって、残り一株にまで消却することができるかどうか。ゼロになってしまったら会社がなくなるわけですけれども、これは一株までできるのですか。
  96. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 午前中から、財源規制だけで数量規制がないということで、果たしてそんなことでいいのかという御指摘、御議論がされているわけでございますが、これにつきましては、私ども理論上、商法立場からいえば、会社法の立場からいえば、特にそれを規制しなければ弊害を生ずるということは考えられない。もともと、授権資本の範囲内で会社がどれだけ株式を発行するかということも自由であると同様に、それを配当可能利益の範囲内で減らしていくことも自由だ、そういう理論上の考え方から規制を置かないということにしているわけでございます。それから、先ほども御答弁申し上げましたように、そういった証券取引上の弊害というのも、消却してしまう、保有を認めないということでありますので、相対的に少ないということも考慮しているわけでございます。  そこで、配当可能利益の額というのは現在の会社の実態としてかなり大きなものがある、株式数にして二〇%以上に相当する会社が四十何%もあるというような御指摘がございましたけれども、実際は、配当可能利益の多くの部分は、会社定款あるいは株主総会の決議によって一定目的のために積み立てる、任期積立金と言われておりますけれども、そういう形で、実際上は定款あるいは株主総会の決議によって使途が拘束されているものが大部分でございまして、その余の剰余金というのはそれほど大きいわけではない。一般的な会社のビヘービアとしては、その余の剰余金の範囲内でこの消却をすることを考えられるということであろうと思っております。それから、その期に配当をしあるいはその他の利益処分をした残余の枠をもって消却するということでございますので、配当を全然しないで全部消却のために充てるということではなかなか株主理解が得られないというような制約もおのずからあるわけでございます。  そういうことでございますので、それからまた、そういっなどの範囲でどういう行動をとられるか、それは経営者の健全な経営判断に基づいてやられるということを期待しているところでございますが、理論上は先ほど申しましたようなことでございまして、委員御指摘の最後は一人会社になってしまうということも理論上はあり得ます。しかし、そういう極端な行動というのは、それはやはり健全な経営判断のもとではそういうことが行われることはまず考えられませんし、そういう判断をする、そういう行動をとるということは、これは経営者の責任として厳しく株主から批判を受けるということになろうと思っております。     〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
  97. 山本有二

    ○山本(有)委員 株主のチェックがあるというのですが、先ほど申し上げましたように、株主総会が形骸化してシャンシャン大会で済む以上、どんな議案が出てどういうようになるかということを全体の株主が知らされない、そして知る由もないような日本の現状でこのままいっていますと、私は一特に任意清算の規定の脱法になりはせぬだろうか、こう思うのです。清算が事実上行われるということ。  あるいは、もう一つ言えば、会社設立のときには銀行証明までとって払い込みをしなければ資本充実原則会社設立を認めてくれないのに、今度は配当可能利益でどんどんやっていけば、いわば会社設立のときよりも資本充実が侵されていく、こういうことになって、会社設立のときの法制もこれまた脱法されていきはせぬかというようなうらみがあるような気がしますが、この点はどうでしょうか。
  98. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 委員の御心配、お聞きしていてごもっともという点もあるわけでございますが、今の御指摘の点に関して申し上げますれば、これは配当可能利益の範囲内ということですから、資本及び法定準備金そのほか商法が二百九十条で定めております一定の金額、これには食い込まないということでございます。会社の設立の際に資本があるわけでございますが、この資本の充実が厳しく守られるように設立規定ができておりますけれども、その後そのほかに法定準備金としての資本準備金とか利益準備金とかというものが積み立てられて、資本以上のものが会社財産として確保されているという状態の中で、そこに食い込まない範囲内でこの自己株式取得消却ということを認めるわけでございますので、設立のときの資本に食い込むというようなことは、これはあり得ないことでございます。
  99. 山本有二

    ○山本(有)委員 使用人譲渡する今度の改正案ですが、どうしてわざわざ自己株式取得をこの使用人に認めたのか、まだもう少し釈然としません。  この使用人というのは、使用人組合というかというと、そうではなくて従業員持ち株会、こういうわけでありまして、使用人という言葉ではない。  では、この従業員持ち株会というのはどういうことなのかというと、商法上あるいは商法関連法規の中で、法律では何の規定もないというわけであります。その何の規定もない、事実上の上場会社の一部がつくっているこういう従業員持ち株会というものの存在を認め、かつそれを対象にしてこういう法改正が行われたことについて、もう一つまだ腹の中にずっしりと入らないのですが、この点についての改正趣旨をお答えください。
  100. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今委員の方からいろいろな問題が御指摘ございました。一つは使用人従業員という言葉の問題でございますが、これにつきましては、商法においてはすべて使用人という言葉で統一されております。ただし、商法の中でこの使用人という言葉が使われている場合にも、商業使用人という場合と、従業員全体を指すという意味での使い分けがしてございますが、今回の立法に当たりまして、この使用人譲渡するための自己株式取得という場合の使用人従業員一般を指す、こういうことでございます。  それから、このような制度が他の法律等にないにもかかわらず、これを公認することになるのではないかという点でございます。確かに御指摘のとおりでございまして、従業員持ち株会というのは、その性質上、商法規定すべき事項ではないというように承知いたしております。  ただし、何度も出てきておりますように、従業員持ち株会というのが上場会社の多く、また非上場会社においてもかなりの会社において現実に実施されておるという現状がございまして、そこに種々の、運用上好ましくない点が出てきておる。それは、株価に定期的な変動を与える要因になっているとか、従業員持ち株会市場で十分な株数を取得し得ないといったような事情が出てきておりまして、これを解決する必要というのが一方に迫られておるわけでございます。  そうしたことから、今回、使用人譲渡するという形で、この従業員持ち株会に生じている問題ともあわせて、長期間勤続した者に対する株式譲渡、あるいは功労のあった使用人に対する株式譲渡、こういったものも含めて解決を図るという形で今回の立法がなされたということでございます。
  101. 山本有二

    ○山本(有)委員 その従業員持ち株会という制度についてもう少し詳しくお伺いさせていただきたいと思いますが、どんな制度で、かつどれぐらい普及しているかをもう一回正確にお願いします。
  102. 森脇勝

    ○森脇政府委員 従業員持ち株会制度でございますが、これは一般に事実上行われているということでございます。従業員が任意の団体をつくりまして、これが従業員持ち株会となるわけでございますが、給与の中から一定額を毎月この従業員持ち株会に拠出する、従業員持ち株会で自社の株式買い付け保有するという形をとります。これによって、従業員の方は少額の資金で簡易な株式投資が可能になる。また、会社にとっては長期保有株主確保あるいは株価の安定に寄与するといったようなメリットがあるところから、このようなメリットが着目されまして、昭和四十年ごろから普及し始めてきたというように言われております。  現在のこの従業員持ち株会の普及の状況でございますが、平成四年度に全国証券取引所協議会によって調査されました株式分布調査によりますと、上場会社二千百二十三社中二千十一社、パーセンテージにしますと九四・七%の上場会社において従業員持ち株会が実施されておる。さらに、この従業員持ち株会保有する単位株式数の割合でございますが、一・〇四%。それから、その従業員持ち株会を実施している会社の全従業員のうち持ち株会に加入している者の割合、これは四四・一%。それから、これらの加入者の一人当たりの持ち株数は一・五八単位である。こういうように報告されております。  また、非上場会社についてでございますが、これは昭和六十年にアンケート調査によって調査されたところでございますが、調査対象約一千社のうち三割近くの会社従業員持ち株制度を実施しておる、こういうように言われております。
  103. 山本有二

    ○山本(有)委員 この従業員持ち株制度の福利厚生として今回自社株取得を認められたというように理解しているのですが、この従業員持ち株制度、その従業員持ち株という組織の中の規定が全部これは整っているかどうかということについて、御存じですか。  一つは、こんな例もありました。ワールド事件と言うらしいのですが、一九八七年、神戸地方裁判所で和解ができたというもので、社員が退社するときに、自社株を持っているのでその会社の株を時価で評価してくれ、こう言うと、会社が、いやいや、そうじゃない、時価じゃないんだ、我々の評価は一株三万円だ。それでその退社した社員の方は、七十三万円だ。ここにこんな差ができておりまして、それで訴訟を、そして和解が成立したらしいのですが、退職時についての明確な規定がなかった。一九八七年三月三日付日本経済新聞でこういうことになっておるわけであります。  従業員持ち株制度というのが立派なことはもうわかっておるわけであります。しかし、内部規定もきちっとしていないところを法律でこれほど守っていいのかどうか、私は少々疑問に思ってい るのですが、この点についていかがですか。
  104. 森脇勝

    ○森脇政府委員 何分にも法規制がない中でなされておることでございますので、それについて全部が完備したものになっているかという御質問でありますとすると、そこまでは保証できないというお答えにならざるを得ないのかと思っております。  ただ、非公開会社等におきまして、退職時に従業員から会社株式を額面額で買い取るといったような契約で従業員持ち株会運営されているというものがあるということは聞いております。ただ、このような規定が常に違法なものであるかといいますと、これは直ちにはそうは言えないのではないかと思われるわけです。それは取得するときの価格がどうなっておるかというような問題、あるいは利益配当の関係がどうなっているかというような問題、そういったもろもろの条件を考慮して、その適法、違法が判断されるということになってくるのではないかというふうに考えられます。
  105. 山本有二

    ○山本(有)委員 非常にわかりにくいことをわかりやすくお聞きしたいと思いますので、こんな例を引いてみました。  会社が千円で公開市場から買った、従業員持ち株会に五百円で売り渡した。時価がそのとき五百円だった。千円で時価で買って、六カ月の間に、五百円で売り渡す、時価が五百円だから。そうすると、会社は五百円分損するわけですが、これについては会社の福利厚生と言うことはできるだろうと思います。今度は逆に、千円で買って千五百円で売った。千五百円で売ったならば、会社がこんどはもうけてしまうわけですね。これは会社がもうけてしまうと福利厚生どころでなくて、従業員に時価で売るならば高くなるし、時価じゃなければいろいろ問題点が生じていく。  会社がもうけたり、あるいは内部でもうけたり、普通の株主さんと違う形で随分やりとりの中に不明朗な点も出てくると思います。千円で買って、五百円その補てんを会社でした場合、あるいは千五百円で売って会社がもうかった場合、こういう点どう理解をするべきか、これを教えてください。
  106. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今回の商法におきましては、会社使用人譲渡するために株式取得した場合に、それを使用人にどのような形で譲渡するかというその価格の点等については規定を設けていないわけでございます。したがいまして、取締役の判断によってその価格が決められるということになるわけでございますが、取締役には善管注意義務がございますので、原則的に申し上げれば、その時点での時価によって譲渡するということになろうかというふうに考えております。  したがいまして、会社が千円で市場から取得した、しかし株価が下落して、譲渡しようとするときには五百円になっていたといった場合には、五百円で譲渡するということになります。その場合に、会社に損が立つわけですが、これは自己株式の売却損ということで処理されるということになるのだろうというふうに考えております。  それから、逆に会社が千円で取得して、そのときの時価が千五百円になっておったという場合でございますが、これは千五百円で譲渡して会社利益が入るということも考えられますし、あるいは従業員持ち株制度の趣旨を考えますと、別にそこで会社利益を出すための制度ではございませんし、仮に時価を下回る千円あるいは千三百円で譲渡したといたしましても、会社に損害が生ずるわけではございませんので、これは取得価格千円あるいはそれ以上の千五百円を下回る価格で譲渡することも取締役の裁量の範囲内の行為ではないかというふうに考えておるところでございます。
  107. 山本有二

    ○山本(有)委員 以上で質問を終わります。
  108. 高橋辰夫

  109. 枝野幸男

    枝野委員 さきがけ・青雲・民主の風の枝野でございます。改新の皆さん、それから公明党の皆さんの御理解をいただきまして、与党の立場から今回の商法有限会社法改正について御質問をさせていただきたいと考えております。  あるいは順序が適切ではないかもしれませんし、既に御質問された方と重複する部分もあるかと思いますが、まず今度の改正法の中で二百十条ノ四の二項、三項あるいは二百十二条ノ二の六項、二百九十三条ノ五の五項など、いわゆる自己株式取得によりまして資本充実原則を害したときには取締役会社に対して賠償責任を負うという規定が設けられております。確認させていただきますが、これはいわゆる二百六十七条の株主代表訴訟の対象になり得る責任である、こういう理解でよろしゅうございますでしょうか。
  110. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のとおりでございます。
  111. 枝野幸男

    枝野委員 さてもう一つ、この明文で資本充実原則を害した場合だけではなくて、先ほどの山本委員からの質問の中でも善管注意義務という言葉が御回答の中で出ておりましたが、自己株式取得に関連して善管注意義務違反がありましたとき、このときの取締役会社に対する賠償責任、これも株主代表訴訟の対象になる、これもよろしゅうございますね。
  112. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 その点もそのとおりでございます。
  113. 枝野幸男

    枝野委員 さてそこで、この株主代表訴訟の問題でございますが、昨年の十月一日施行でございましたか、前回の商法改正で印紙額が八千二百円ということの確認を明文上していただくことができました。それからまた、二百六十八条ノ二の第一項でございますか、株主代表訴訟に関連します調査費用等について、相当額の支払いが認められるというふうになっております。株主代表訴訟を行いますときには、その訴訟資料となります証拠の収集等、調査が非常に重要であることは言うまでもございません。  ところで、この株主代表訴訟を行います前提としての調査、その中で最も基本的な調査の方法というのは、二百九十三条ノ六の第一項で認められております株主の帳簿閲覧請求権、これがこういった調査の一番最初の足がかりになる株主としての権利ではないかなと考えております。この帳簿閲覧請求権の要件につきましては、昨年十月一日施行の改正によりまして、発行済み株式の一〇%を持っていなければならなかったものが三%でよいというふうに改正されている。これはこれで要件を緩やかにしたということで結構なんでございますが、株主代表訴訟は一株でも持っていれば認められる。一方、その前提として非常に重要な権利であります帳簿閲覧請求権を行使するのには、発行済み株式の三%を有していなければならない。代表訴訟よりもその前提となる調査のための権利の方が要件が厳しいという現状になっていると思います。  もちろん、帳簿閲覧請求権等の行使に関しましては、濫用等の危険もございますが、その濫用等の危険の防止については、二百九十三条ノ七で十分対応がとられております。そうした中で、あえて代表訴訟よりも、その前提となる帳簿閲覧請求権の方が要件が厳しいということについての理由を御説明いただけますでしょうか。
  114. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘の株主の帳簿閲覧権は、御案内のとおり昭和二十五年の商法改正によって認められた権利でございまして、株主会社に対する経営監督権を行使する前提として、会社の経理状況を正確に知るために認められた権利でございます。  ただ、商法は、会社の帳簿書類には会社の営業秘密にかかわる記載もあることから、この権利が会社荒らし等による濫用として行使されるおそれが大きいということを考慮いたしまして、この権利は単独株主権とはしないで、いわゆる少数株主権ということにしたわけでございまして、御指摘のとおり、従来十分の一でありましたのを先般の改正で百分の三に緩和することにしたわけでございます。  一方、代表訴訟の方は、これは、制定当時から一株の株主でも足りるということで定着してきているものでございます。御指摘のように、代表訴訟を提起する場合の準備として帳簿閲覧をすることができれば非常に便利だという観点はあろうか と思いますけれども規定の上からは、制度としてはあくまでも代表訴訟の準備行為として帳簿閲覧権というのが位置づけられているわけではないわけでございまして、これは、それぞれ株主による経営監視機能という面は持っておりますけれども、それぞれ別個の権利というふうに位置づけられているわけでございます。  そして、代表訴訟の提起ということとは違って、先ほど申しましたように、帳簿閲覧権の行使という点については、会社の健全な経営という観点から、そういった弊害のおそれがあるということでそういう要件を課しているわけでございますので、これは、それぞれ別個の制度として設けられたもので、それぞれについてそれなりの理由があるということであろうというふうに考えております。
  115. 枝野幸男

    枝野委員 御説明いただいた御趣旨はよくわかりますけれども、今のお話でも出てきましたし、次に質問させていただく中にも出てくる話ですが、株主代表訴訟等が会社荒らし等の材料に使われかねない状況、あるいはその前提になる帳簿閲覧請求権もそういったことに使われかねないおそれがあるという事実はあると思いますけれども、逆に、私も弁護士として仕事をしている中で、例えば株主代表訴訟などを起こそうと思いましても、会社の内部事情について株主立場からなかなか知ることができない。まじめな立場から代表訴訟を起こそうとしたときには、なかなか内部のことがわからなくて、きちんとした権利行使がしにくい。逆に、会社荒らしをねらう方については、勝つか負けるか余り関係ないわけでございますから、そういった調査等についての余り意味もない部分がある。このあたり、うまく株主代表訴訟の制度が機能できるように、特にまじめに権利行使をしようとされている方の実質的な権利保護が図られるような検討を今後とも続けていただきたいと考えております。  関連いたしまして、警察庁の方においでいただいていると思いますけれども、今も少しお話ししましたが、この株主代表訴訟に関しまして、昨年の改正で、株主代表訴訟の要件が非常に楽になったといいますか、印紙の額について非常に楽になったということが影響しているのかもしれませんが、いわゆる会社荒らしといいますか、総会屋さん、特殊株主の方が株主代表訴訟を起こすぞということを会社の側、取締役にほのめかして、これが一種の脅迫的な行為としてなされているのではないか、一部の報道等でもそういったことが最近出ているというふうな話もございます。  こうした株主代表訴訟に絡んだ特殊株主の態様、現状等について把握していることがありましたらお教えいただきたい。また、それに対する対応等についてどのようにお考えになっているのかお聞かせいただければと思います。
  116. 村田保史

    ○村田説明員 六月の株主総会シーズンを迎えまして、企業に対する揺さぶりをねらったと見られます総会屋等の動きが活発化しております。御指摘の、株主代表訴訟をほのめかした質問状の送りつけといった動きもその一環と見られます。このほかにも、企業に対して、情報誌の購読、それから寄附金等の供与を求めるなどの動きが見られておるところでございます。  警察といたしましては、総会屋等に係る違法、不当な行為に対処するため、本年三月以降、関係都道府県警察におきまして特別の態勢をとり種々の対策を講じているところであります。  総会屋等の問題に関しましては、何といいましても、企業の側の毅然とした対応、それから警察と企業との緊密な連携、これが極めて重要であります。この点につきましては、昨日も警察庁長官が経団連等経済四団体に対して文書により協力要請を行ったところであります。  警察としましては、今後とも、総会屋等の動向には重大な関心を払いながら、万全を期してまいる所存であります。
  117. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございます。  この株主の権利と総会屋との関係ということについては、株主の権利行使をしやすくしようとすればしやすくしようとするほど、総会屋さんがおかしなことをする手がかりといいますか、そういったものを与えかねないというジレンマを抱えているのだろうと思いますが、株主の権利行使という面はそれとして、総会屋対策についてはぜひ警察の方で万全を期していただいて、株主の権利行使をできるだけ緩やかにしても総会屋がはびこらないような状況を一日も早くつくっていただきたいと思います。  警察庁はわざわざおいでいただいてありがとうございました。  さて、今回の改正では、使用人に対する譲渡の場合の自己株式取得ということを認めているわけでございますが、この場合、株主総会での議決が必要であるというふうな規定になっております。これは確認させていただきますが、株主総会使用人への譲渡について議決をしなければならないのは、具体的な何月何日に幾らの価格でどういうふうに購入するという意味ではなく、権利を授ける、次の総会までの一年間に使用人譲渡目的で購入することのできる株式の総数と総額について授権をする、その決議をするということでよろしゅうございますね。
  118. 森脇勝

    ○森脇政府委員 御指摘のとおりでございます。
  119. 枝野幸男

    枝野委員 そこで、これは、大蔵省においでいただいておりますので、大蔵省にお答えいただいた方がいいのかと思いますが、では一年間にこれだけの株式使用人譲渡のために買いましょうということについて計画を立てて、株主総会で議決する。当然、株主総会は公開されておりますので、この情報は外へ流れます。しかしながら、具体的に一年間に、その議決された一年間の購入の計画を全く無視して購入をしないということも理屈の上では可能であろうと思っております。  さらに、翻って考えますれば、そもそも自己株式使用人譲渡目的で購入する意図がないにもかかわらず、そういう目的でございます、ですから御承諾くださいと株主総会に諮る。株主総会に諮れば、当然、おお、会社はこれから一年間でこれだけの株を買うのかということが市場情報として流れます。こういったことが株価操作の対象にならないかどうか、株価操作の手段に使われないかどうかという懸念というのは決してないわけではないだろうと思います。このあたりについての御認識、それからその対応といいますか、どのようにお考えになっておられますでしょうか。
  120. 西方俊平

    ○西方説明員 ただいまのお話でございますけれども自己株式取得を行う意図がないにもかかわらず自己株式取得の決定もしくはその公表を行うということは、その自己株式取得の決定やその公表そのものが相場に影響を及ぼし得ることが考えられるわけでございます。したがいまして、これが相場に影響を及ぼす目的でなされた場合には、当然のことながら不公正取引行為禁止規定との関連で問題が生ずるというふうに考えておるところでございます。  この点については証券取引審議会でも御審議をいただきまして、こういったことについては問題が生ずる可能性があるということでもって御報告いだだいております。この点については、法律改正された後は関係者に周知を図っていかなければならないというふうに考えております。
  121. 枝野幸男

    枝野委員 似たような話ですが、もう一点だけ確認をさせていただきたいと思います。  さて、一年分の授権がなされているといった中で、じゃ、どのタイミングでどういうふうにその自己株式取得しょうか、これは取締役会の判断にゆだねられているということになろうかと思いますが、一年といえば相当な幅がございます。その間に株価も相当上下することもあろうかと思います。そうした中で、会社あるいは取締役の置かれている状況によって、一年という幅の中で株価操作というところまでいくかどうかわかりませんけれども取締役の思惑によって、このタイミングにやればいろいろメリットがあるとか、この人に損をさせるとかさせないとかいったことが、ある程度可能な範囲がないではないんじゃないかというふうに考えております。このあたりのところについて、授権をされた範囲の中での購入のタイミング等について問題が生ずるおそれがないかどうか、それについてお教え願えますでしょうか。
  122. 西方俊平

    ○西方説明員 相場操縦の問題につきましては、現在の証券取引法におきましてその禁止規定が定められておるわけでございます。  この問題も、先ほど御紹介いたしましたように証券取引審議会におきましていろいろ御審議いただきましたけれども、一口に相場操縦の禁止規定と申しましても、どういう行為が問題になり得るのかということについてわかりやすくした方がいいのじゃないかというような御議論がございました。そこで証券取引審議会では、そういう禁止規定との関係で疑いを招くような自己株式取得の具体的な取引態様を五つ例示しております。  例えば一つでございますけれども、多数の証券会社に同時に自己株式買い付けの委託を行うこと、これは買い手は自己株式取得しようとする会社一社でございますけれども、それが意図的に多数の証券会社に注文を出すということになると、あたかも繁盛な取引が行われているような印象を一般の投資家に与えかねないという意味で、非常に問題があるわけでございます。  こういったことを初めといたしまして、ほかに四項目ございますけれども、こういったことが禁止規定との関係で避けるべき行為の一つというふうに考えているわけでございます。したがいまして、これも法律が通りました暁には、証券界だけではなくて産業界も含めてこういった趣旨の周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  123. 枝野幸男

    枝野委員 わかりました。  済みません、もしかするとちょっと通告の範囲内から外れるかもしれませんが、おわかりになればで結構ですが、今のような違法なことがあった場合、この制裁といいますか、それについてはどういうふうになっているか、すぐおわかりになるようでしたらお教え願えますか。
  124. 西方俊平

    ○西方説明員 証券取引における不公正な取引というのは、相場操縦のほかにもインサイダー取引とかいろいろあるわけでございますが、一昨年の七月に新設されました証券取引等監視委員会、これがそういった問題について担当するということでございます。日常の業務につきましては証券取引所においても不公正取引について目を光らせているというようなことがございまして、そういったところとその委員会が連絡をとりながら不公正取引について問題を摘発していくということになろうかと思います。
  125. 枝野幸男

    枝野委員 従業員持ち株会に株を譲渡するために自己株式取得を認める、決して悪いことではないと思いますし、そんな中で株価操作のようなおかしなことをする企業はほとんどないとは思いますけれども、万が一にも一つでも二つでもありますと証券市場に対する信用というものが阻害される問題でございますので、そのあたりのところの指導監督、それから万が一の場合の取り締まりといいますか、その辺についてぜひとも十分な御配慮をお願い申し上げる次第でございます。  さて、株主総会の議決に基づきまして自己株式従業員譲渡のために取得した場合でございますが、これは購入から六カ月以内に使用人、いわゆる従業員持ち株会譲渡するというふうになっております。この従業員持ち株会への譲渡価格あるいは譲渡時期についてはどういった形で決まっていくのか、これについて確認のためにお教え願えますでしょうか。
  126. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 自己株式取得した会社とその株式を譲り受ける従業員持ち株会、これは一般に民法上の組合と考えられておりますが、その間の売買は民法上の売買契約ということになるわけでございます。法律的に言えば、譲渡の都度幾らで売るか買うかということを決めることになるわけでございますけれども、運用といたしましては、恐らく会社従業員持ち株会との間で、こういった方法で、あるいは具体的には決められなくても、こういった値段の決め方で売買をしましょうというようなことをあらかじめ包括的あるいは概括的な合意をしておいて、それを踏まえて、定時総会においてそれを説明して決議をする、こういう運用になるのではないかというふうに思っております。そういった中で、会社従業員に対する福利厚生の考え方といったものを反映して、適切な範囲内で価格が決定されるということになるのではないかというふうに考えております。
  127. 枝野幸男

    枝野委員 その価格についてですが、先ほど山本委員の質問にもあったようでございますけれども、買ったときの値段と持ち株会に売るときの値段に差が出る可能性というのは当然あるわけでございます。確認のために、譲渡損失が出た場合、これは計算上どういったところに計上をされるのか、それから逆に譲渡益が出た場合はどの項目で計上されるのか、これについてお教えいただけますでしょうか。
  128. 森脇勝

    ○森脇政府委員 お答えいたします。  自社株を取得いたしました会社使用人譲渡する場合には、ただいま御説明ございましたように、自由な売買契約によって価格が形成されるわけでございますが、これを商法立場から見ますと、取締役としては適正な価格で売却するという義務は常に負っているという形になるわけでございます。したがいまして、取得時と売却時において価格の相違があるという場合には、損失あるいは利益が生ずるということになってまいります。  こうした場合の損失の方でございますが、これにつきましては、自己株式売却損という形で会計上処理されるというふうに承知しております。さらに、利益が生じた場合でございますが、これは自己株式売却益という形になるのであろうというふうに思っております。
  129. 枝野幸男

    枝野委員 それが営業外損益なのか特別損益なのか、どちらになるわけですか。
  130. 森脇勝

    ○森脇政府委員 営業外の損益になるというふうに理解しております。
  131. 枝野幸男

    枝野委員 そこで、持ち株会との契約は一般の普通の民事契約、売買契約だということになりますと、大部分の持ち株会会社との間では、きちんと仕入れた以上は買ってもらえると話がつくとは思いますけれども、時として、会社の方としては持ち株会に売却する目的で購入はしたものの、持ち株会との間で例えば価格について折り合いがつかないとかという状況になって、六カ月以内に譲渡ができないというケースも、これはレアケースだろうとは思いますけれども可能性がないわけではない。このような場合には、例えば取締役の責任の問題、あるいは六カ月以内に譲渡しなければならないのに手元に残ってしまった自己株式の扱い、こういったものはどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。
  132. 森脇勝

    ○森脇政府委員 使用人譲渡するための自己株式取得ということで、定時株主総会で決議を受け、その授権に基づいて自己株式を購入したということになりますと、それはあくまでも使用人譲渡するための取得でございますので、その使途に充てなければならないという拘束を受けるわけでございます。したがいまして、六カ月の期間内に処分できなかったという場合におきましても、その性格を変ずるというものではございませんので、依然として使用人譲渡するという義務を負っておるということになるわけでございまして、これを使用人以外の者に譲渡するとか、あるいは消却するとかいうことは認められていないわけでございます。  その場合に生ずる責任でございますが、六カ月以内に処分することを怠った取締役に対しては、科料の制裁を科すということになってございます。先生御指摘のとおり、多くの場合には、あらかじめ従業員持ち株会の方でどれだけの需要があるかということをはかりまして、その上で自己株式取得に至るということでございますので、そういったことはめったに生ずるものではないと思われますが、従業員持ち株会の方で買い受けできないといったような事情が生ずる場合もあるわけでございます。こうした場合は処分を怠ったということには当たらないと思われますので、そのような正当な理由によって売却ができなかった、六カ月の保有期間を超えてしまったというような場合にはこの科料の制裁は科すことができないのではないかというふうに考えております。
  133. 枝野幸男

    枝野委員 よくわかりました。この従業員持ち株会に株を持ってもらうというシステムというのはいろいろな意味でメリットもたくさんあるということで、私もぜひ推進をすべきであるというふうに全体としては考えております。ただ、その中に、例えば持ち株会、要するに使用人従業員が株を持ちましても、従業員という立場を兼ねている以上、なかなか株主としてのきちんとした権利行使がしにくい。一定の発行済み株式の中で、事実上株主の権利を主張するわけがない人間が入ってくる。それから、あるいは万が一その会社の業績が悪化したときに、当然従業員としては、例えば給料、ボーナス等の点でデメリットを受けると同時に、持っている資産という意味での持ち株会の株、これも当然評価が下がるという意味で、万が一会社の業績が悪くなったときに、持ち株会があるがゆえに二重の損失といいますか、特定の企業の名前は言いませんけれども、現在そういったことで非常につらい思いをされている方が少なくないという現状もございます。  こうしたデメリットの部分について、今回従業員持ち株会のシステムがより拡大するような方向での改正でございますので、この機会にどういった御見解を持っておられるのか、法務省としての御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  134. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 持ち株会株式を持った場合の議決権の行使の問題でございますが、これは一般に、従業員持ち株会買い付け株式株主名簿上の名義は持ち株会の代表者、理事長という名が多うございますが、その理事長株主名簿上の株主となりますので、議決権は理事長の名で行使されるということになろうと思います。その理事長が議決権を行使する場合に、私どもとしては、その持ち株会のできるだけ民主的な意思決定方法によって議決権を行使していただくということが望ましいと思っているわけでございますが、現状を幾つか聞いてみますと、例えば規約の中で、議決権の行使につきまして、本来議決権を行使することができる一単位以上の株式に相当する持ち分を持っている者については、総会ごとに理事長に対して特別の権利行使、例えばその分についてはいわゆる議決権の不統一行使をしてもらいたいといったような指示をすることができるというような規約例を承知しております。そういう形で、できるだけ民主的な議決権の行使のあり方が運用上されるということを期待しているところでございます。  また、会員の持ち分が一単位に達した場合には、その当該の会員の意思によって申し出て、それを持ち株会から取り出して自分の名義にしてもらうということができるという運用が一般的でございますので、そういう形でみずから名簿上も株主になって議決権を行使するということもできるわけでございます。  次に、持ち株会に参加した人が損失をこうむる、しかも会社の経営、業績が悪くなると、いろいろ労働条件も悪くなると同時に株式の価格も下落するということで、二重の損害を受けるというようなこと、こういった問題があることは御指摘のとおりでございまして、現実にもそういう状態が生じているのではないかと推測いたします。  ただしかし、この従業員持ち株会制度というのは、これに参加する、あるいは途中で脱退するというのはあくまでも従業員の自由ということでございますし、さらには、今申しましたように、一単位になればそれを引き出して、その時点で市場処分をするということもできるわけでございまして、決して従業員の意思に反してそういう事態になるというわけではない。これはやはり従業員としては、自己責任の原則にのっとって、そういうことを踏まえてそういう制度に参加するかしないかということを決めていただくということに期待するということでございます。これは先ほども答弁しましたように、この制度は昭和四十年以来普及して定着しておるということで、従業員の方々もそういう危険というものは認識されながら、過大な投資ということにならない範囲で行動してきておられる。たまたま先般の株価暴落というような事態になりますと、そういうことが生じますけれども、そういうことで運用されているというふうに承知しているわけでございます。  なお、この制度の成立後の周知徹底という中では、そういうことにも言及するというようなことを考えていかなければならぬというふうに思っております。
  135. 枝野幸男

    枝野委員 今のように、自己責任で購入されている、確かに理屈の上でそのとおりでありますし、大部分の場合そういったことが言えるのかなと思いますけれども、現実の日本企業会社の風土といいますか、それを考えますと、みんなは買っているのにおまえは買わないのか、入らないのかといった事実は残念ながら残っているという側面があると思います。あるいはまた、特に株主としての議決権等の権利行使の問題についても、そういった風土を前提にした中で具体的にどうやったら実際に権利行使できるのかといった側面は難しい点があるのは事実じゃないかなと思っております。  ただ、しかしながら、そういったデメリットがあるとはいえ、例えば株式の相互持ち合い的なところで、会社がだれのものなのかわからない、だれが実際に会社の持ち主なのかよくわからない、そして個人株主というシステムがなかなか日本では定着していかない。これからの時代株式会社という制度全体を考えたときにも、まさにそこに働いていてその会社のことをよくわかっている人間が若干ずつでも資本という形でそこに参加していくという意味で、従業員持ち株会的な制度をますます発展させていくことが、我が国全体にとっても非常にメリットがあるのじゃないかと私は個人的には考えております。  そうした中で、今規制緩和の世の中でございますので、何か法律をつくって規制をするというのはおかしな話、逆行だと思いますけれども、例えば従業員持ち株会会社との契約は単純な普通の民法上の売買契約である。そのあたりのところを、規制というやり方ではなくて、例えば会社の側も持ち株会の側も安心して、せっかく自己株式取得する形で会社が仕入れたものをきちんと手にすることができる、あるいは先ほど問題として取り上げました株主としての権利行使あるいは資産デフレの問題、こういったところについてある程度のリスクの分散といいますか、そういったことができる制度が考えられないかどうか、ぜひ御検討をいただきたい、私どもの方も検討しなければならないと思っておりますが。  そういった側面から、大蔵省の方にきょうもおいでいただいておりますが、証券行政の方をつかさどっているお立場といたしまして、この従業員持ち株会のような制度についてどのようなとらえ方をされていらっしゃるのか。それからさらに、持ち株会制度促進という側面から政策的な配慮があるのかどうか、そのあたりについて御説明をいただきたいと思います。
  136. 西方俊平

    ○西方説明員 私どもが扱っております証券資本市場で求められている機能を考えてみますと、言うまでもなく、これは資金の調達に対応するというようなこと、それからまた一方で投資家の資金の運用の場を提供するということで、これは適正に機能するように努めていかなければいけないと思っているわけでございます。  そういう意味では、今後の証券市場発展のためには、日本の場合、特に個人投資家が長期的で安定的な株式投資を行っていただくということはいろいろな意味でもって大事だな、特にそういった意味でのすそ野の拡大を図っていくことが重要だと考えているわけでございます。これまでの数次にわたる経済対策におきましても、こういう面からのいろいろな対策を講じさせていただいたわけでございますが、その中の一つでございます従業員持ち株制度につきましても、その弾力化ということについて、私どもも及ばずながらいろいろなことをさせていただいているわけでございます。  特に従業員持ち株会制度そのものは、先ほど法務省の方からお話がございましたように、主に民法上の組合ということで、契約自由の原則でございますけれども、これが実際に株を買うような場合には証券取引のいろいろな規制との関連があるものでございますので、証券業協会におきまして持ち株制度に関するガイドラインが作成されているわけでございます。ここで今までかなりの弾力化が図られているようなことがございます。  例えば入会時期につきましては、従来は年一、二回だったものが随時に入会ができるというようなこととか、拠出金につきましても、従来は入会後年一回拠出金を決めるわけでございますけれども従業員の方が拠出する金額につきましては機動的に変更することができるというようなこととか、退職するときには、一単位に満たない株の場合があるわけでございますけれども、退職金なんかを利用して一単位までの買い増しを認める。それからさらに拡大従業員持ち株会という制度がございまして、これはその企業が上場されているということじゃなくても、親会社が上場されている場合に、子会社従業員が親会社の株を買い付ける場合の組織でございますけれども、こういったものにつきましては、従来は上場株式に限られていたわけでございますが、今回店頭登録株式についてもこれを追加するというようなことで、従業員持ち株会は基本的には従業員の方々の自由な発想によるわけでございますけれども、それがなるべく使いやすいような環境の整備には努めてまいっているところでございます。
  137. 枝野幸男

    枝野委員 大変大事な制度だと思いますので、大蔵省と法務省、双方できちんと連絡を取り合いまして、ますます充実発展できるようにぜひ御努力をいただきたいと思います。大蔵省の皆さんにはおいでいただきましてありがとうございました。  次に、今回の改正では株式消却目的の場合の自己株式取得が認められております。株式消却については、今までも自己株式取得という方法以外での消却方法はございましたが、そうした中で、一部には自己株式取得は例えば資本充実原則に反するとか証券市場に云々とかと言われるという指摘がありながら、ほかの方法もある株式消却についてあえて立法された意図について改めてお尋ねしたいと思います。
  138. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 今回の改正によります利益消却制度立法趣旨でございますが、御指摘のように、現行商法二百十二条一項ただし書きにおきまして、定款規定に基づいて利益消却をすることができるということを規定しておりますけれども、この定款をどのように定めるべきかということの解釈については学説は分かれておりますが、一般的な考え方は、これは原始定款あるいは後に新しく定める場合には株主全員一致により変更した定款規定であることを要するという考え方が一般でございます。そのために、この規定による利益消却が行われた例はほとんどないようでございます。  こういう解釈がされておりますのは、一つには、この規定のもともとの立法趣旨は、例えば鉱山会社を設立する、しかし、その鉱脈は何年間で尽きてしまう、したがって、会社の存立は何年間であるということを予定して設立したような会社については、こういう形で順次株式消却していく、そういうことを主に念頭に置いてこういう規定が置かれたというふうに紹介されておりますが、そういうことであれば当然原始定款になるというようなこともございます。いま一つは、この規定による利益消却は、先ほども御答弁申し上げましたけれども、いわゆる株主が自由な意思で消却に応じるという場合の任意消却のほかに、一定方法で、例えば抽せんで会社の方で一方的に株式を失効させてしまうという強制消却の両方を含むということでございますので、そういうことからもそういう厳格な要件に基づく定款でなければならないという解釈になっているということでございます。  しかしながら、今回考えております自己株式取得してする消却制度は、これは要するに株主の自由な意思によって行うということでございますので、そういうものを取り出して、そしていろいろな会社の経済情勢に応じた対応を可能にするという観点から、商法上あるいは証券取引上の弊害を除去し得る範囲内で通常の定時総会の決議をもって消却することができるという制度を新設することにしたわけでございます。特に公開会社におきましては定時総会の普通決議で足りるということにしておりますので、通常の定款変更決議に比べましても簡易な手続によって、かつ機動的にこの制度利用することができるということになるものと考えております。
  139. 枝野幸男

    枝野委員 よくわかりました。日本の国、会社だけじゃなくて一般に言えるのかもしれませんけれども、後片づけというか、そういったものがなかなか苦手なようで、例えば会社をやめるとか、それからリストラをして小さくするとかというようなことについてはなかなかうまくないようでございます。私の乏しい弁護士の経験でも、例えば会社が小さくなる、なくなるときというのも、法律上の手続は余りとらないでいつの間にか小さくなって消えていったという、特に中小の企業などではたくさんございますが、後になってから何か問題が出てきて、もう登記も消えてしまったんだけれどもどうしようかなんという話が決してないわけではありません。ましてこれから、消却という意味では、リストラの時代、今までのようにすべて右肩上がりというわけにはいかない時代でございますので、ある意味では、こういった会社を一たん小さくするというふうなことについては、今回のことだけに限らずある程度の配慮をしていかなければならないのかなというふうにも考えておりますので、ぜひ今後もほかの部分の弊害がない範囲内で、右肩上がりだけではないんだということを前提とした会社制度というものについて検討していかなければならないんじゃないかなというふうにお願い申し上げる次第でございます。  この消却に関しましてちょっと一点だけ、非常に学問的といいますか、興味から一点だけお尋ねしたいと思いますが、消却いたしますと当然発行済み株式数は一たん減少いたします。それと授権資本との兼ね合いで、例えば授権資本が一万だった。今まで五千株出していたのを千株消却して四千になった。そうすると、残りあと六千出せるのか、それとも一たん五千まで出しているからあとは五千しか出せないのか。授権資本と発行済み株式数との兼ね合いについて、この消却の場合はどうなるのかお教えください。
  140. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のとおり、株式消却をいたしますと発行済み株式総数が減少いたします。御質問の数字をもって端的にお答え申し上げますと、五千株発行していたものが消却によって四千株になった場合に、授権の株式数が五千株のままであるか、六千株に、千株分を復活するのかということについては、結論的に申し上げれば、復活しない、五千株のままであるという考え方でほぼ学説も一致しておりますし、法制審議会の議論でもそういう解釈のもとにこの制度をつくったということでございます。要するに、授権に基づいて一回発行した株式については、もうその授権の範囲は既に行使したのであるから、消却しても復活しないという考え方であります。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕
  141. 枝野幸男

    枝野委員 さて次に、もう一つ自己株式取得できる場合として閉鎖会社の場合についても規定がされております。この閉鎖会社の場合の取得株式については相当の時期に処分をすることという規定になっております。この「相当ノ時期」というのは具体的にどの程度のことを考えているのか。それは期間的でも結構ですし、あるいは状況的でも結構でございますが、もう少し具体的に御説明をいただけますでしょうか。
  142. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 この「相当ノ時期ニ」という規定は、現行制度のもとでの自己株式取得につきましてもこの表現が用いられている、それをそのまま今回新設した閉鎖会社の特例の自己株取得に ついても適用したということでございますが、その趣旨は、自己株式取得に伴って生ずることがあるべき危険を回避するという観点から最もいい時期というふうに申し上げられるかと思います。同じ条文の中に「遅滞ナク」という規定がございますが、それに比べてそれほどの迅速さを意味しないけれども、できるだけ早い時期であって、かつ会社にとって不利益にならない時期という意味であるというふうに考えております。要するに、遅滞なくとか直ちにとかいうことになりますと、買い手が見つからないということで会社に損害を生じさせるというおそれがありますので、会社に損害が生ずることを可及的に回避する範囲内でできるだけ早くというふうに申し上げることができようかと思います。  具体的にいつの時期がその時期に当たるかということにつきましては、それぞれケースに応じて取締役が善管忠実義務に従って判断していただくということになります。
  143. 枝野幸男

    枝野委員 そういたしますと、自己株式取得いたしましてから相当の時期の処分までの間に複数の営業年度をまたがるということは、当然可能性としてはあり得るということになると思うのですけれども、一番最初に御質問いたしましたとおり、取締役資本充実原則に反したときの責任というのは、今回の改正の中で明文でうたわれております自己株式取得した営業年度の年度末に配当可能利益を割ってしまったという場合でしょうか、そういう表現でよろしゅうございましょうか。そうした場合には、当然に取締役に責任が発生するというふうな規定になっておりますが、抱えている間にそういった状況になってしまった、二年、三年と抱えている間に、購入したその年度ではなく、翌年度あるいは翌々年度、資本充実を害するような状況になってしまった場合、これは今回の改正法の規定ではなくて、通常の善管注意義務違反の可能性が出てくるということでよろしゅうございますか。
  144. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 そういうことでございます。
  145. 枝野幸男

    枝野委員 大きな会社、上場されているような企業である場合には、逆にそういった心配というのは余りないのかもしれませんけれども、特にこの「相当ノ時期」という規定のある閉鎖会社の場合には、えてして、中には企業経営がちょっと一方づいているといいますか、そういった会社もないわけではない。そういったところで、自己株式取得したのはいいけれども、「相当ノ時期」というのをきちんと考えずに、いつの間にか抱えていて資本充実を害するようなことになってしまう、この可能性というのは決して少なくないだろう。そうした場合には、同族系のような会社で非常に小さくて内輪でけんかを始めるなんということも決して少なくないだろうというおそれがございますので、このあたりのところを、ぜひ今回の商法改正に伴います周知徹底、「相当ノ時期」というのはきちんと考えて、買った以上はちゃんと売らなければならないのですよ、損が生じないように、余りのんびり抱えていてはだめなんですよというようなところをぜひ周知徹底を図っていただきたい、このように考えております。  さて、るる伺ってまいりましたが、もう一度、一番最初の株主代表訴訟の話に関連したところに戻ってまいりますが、今回の改正、証券取引との関係あるいは資本充実との関係、いろいろと御配慮いただいておりますが、人間のやることでございますので、常に一〇〇%完璧なものがなされるというわけではございません。取締役がおかしなことをしてしまって、株主に、この自己株式取得に絡んで迷惑をかけるというようなことは決してゼロではあり得ない。そうしたときには、いざというときにはやはり代表訴訟のような形で、裁判できちんと回復できるようにしなければならない。  ところが、残念ながら、日本の現在の裁判のシステムを考えてみますと、どうしてもその証拠の偏在、証拠を持っている方が偏っている。特に企業、大きな企業と一個人ということになりましたときには、そもそも抱えている裁判資料の量に圧倒的な差がある上に、それを調べる、収集する能力という意味でも圧倒的な差がある。  これは、今ちょうど商工委員会でも並行して審議をしていただいております製造物責任法などのようなところでも同じような問題が出てきて、あちらの場合は推定規定をどうしようかなどという話にまでなりましたけれども、こうした状況を考えますと、どうしても民事訴訟法自体について、証拠の偏在という社会的な現実をきちんと踏まえて、弊害のない範囲内で、証拠を持っている人にきちんとそれを裁判所に出していただくというようなシステムをつくっていかなければならない。それも余りのんびりとしているのがいいのかどうか。どうしても法務の世界、法律の世界、弁護士会などもそうでしょうけれども、社会の動きにワンテンポちょっとおくれぎみじゃないかという御批判も受ける社会でございます。今民事訴訟法改正のための作業を法務省を中心にされているというのは十分存じておりますが、現在までの進行状況、今後の見通しについてまず御説明いただけますでしょうか。
  146. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のとおり、平成二年の七月以来、法制審議会の民事訴訟法部会で、民事訴訟法手続全般にわたっての見直しの作業を行っております。その中には、委員御指摘の証拠収集手続の充実という点も一つの重要なポイントとして、検討課題として取り上げられているところでございます。  この進捗状況ということでございますが、昨年の十二月に、それまでの審議結果を取りまとめた「民事訴訟手続に関する改正要綱試案」、いわゆる中間試案でございますが、これを公表いたしまして、関係各界の意見をちょうだいいたしました。現在、その意見を集約して、それを踏まえての最終の要綱の確定のための作業に入ったところでございます。何分にも広範な事項を対象にしておりますので、最終的な要綱の取りまとめまでにはなお時間を要することになろうかと思いますが、現在の目途といたしましては、平成七年度中には成案が得られるようにということで努力をしているという状況でございます。
  147. 枝野幸男

    枝野委員 わかりました。  敬愛する政務次官にきょうはずっと座っていていただいておりますので、最後にひとつお尋ねをさせていただければと思っております。  今のお話にもありましたが、質問の中にもありましたが、この民訴法の改正などにつきましても、これは法務省だけの責任じゃなくて、司法界といいますか、法務省、検察庁、弁護士会、裁判所、法律の世界というもの自体全体が問われている話だと思うのですけれども、どうしても社会の動きよりも法務行政あるいは法曹界というものの動きのテンポというのはワンテンポぐらいおくれているのじゃないか。若干その性質上、時代にすぐに即応するというのがいいことかどうかわかりませんけれども、どうもタイミングがいつも二歩か三歩ぐらいおくれているのじゃないかという御批判をいただかないではない。私も弁護士の一人として、それは反省しなければいけないなと思っておりますが、例えばこの民訴法改正にいたしましても、非常に時間がかかっていて、もうちょっと速いテンポでできないかどうか。  それから、ちょっと話題はそれますけれども、例えば前回法務委員会で質問させていただいたときにも申し上げたのですが、今家族法の改正ということで、夫婦選択別姓を入れるかどうかという話、議論をしていただいております。四十代、五十代になってもう結婚されている方にとっては、五年後だろうと十年後だろうとどうでもいい話かもしれませんけれども、私、ついこの間三十になりまして、まだ独身でございますが、では同世代の女性に夫婦選択別姓ができるまで結婚しないで待っていろよということが言えるのかどうかということになると、これはやはりどうせやるなら早くやっていただかないと、その該当する世代は非常に迷惑をこうむる話ということで、ぜひ法務行政に関しましても、時代にすぐに、同時のタイミングで動いてくださいとまでは申しませんが、何とか可能な限り──時代のテンポが速くなっております。前向きに法務行政についても、今は時代から二歩おくれ、三歩おくれであれば、せめて半歩おくれぐらいでついていっていただけるように御努力をいただきたいと思うのですが、御所見を伺わせていただければと思います。
  148. 牧野聖修

    ○牧野(聖)政府委員 ただいまの枝野議員の質問にお答えをさせていただきます。  現在の民事訴訟法手続につきましては、わかりにくい、利用しにくい、あるいは現在の社会の状況に適合していない、そういうような指摘がなされておりますが、今回の民事訴訟法の改正作業は、このような状況に照らし、民事訴訟を国民に利用しやすく、わかりやすいものにするために、あるいは訴訟手続の記述を現在の社会の要請に合った適切なものとするために行われているものでありまして、現在法制審議会において鋭意調査、審議が行われているところであります。  また、審議におきましては、裁判所、弁護士会、学界等を初め、関係各界の意見を十分に取り入れるとともに、諸外国における民事訴訟法の改正の動向等にも留意しつつ検討が行われると承知しております。  今回の調査、審議に基づく民事訴訟法の改正により、民事訴訟手続が国民にとって真に利用しやすく、またわかりやすいものになることを期待し、できるだけ早く進めていきたい、このように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
  149. 枝野幸男

    枝野委員 どうもありがとうございます。ぜひとも牧野政務次官が大臣を支えてどんどん前向きに法務行政が進んでいくように、これからの御活躍を御期待申し上げておりますので、よろしくお願いいたします。  以上で質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  150. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 小森龍邦君。
  151. 小森龍邦

    ○小森委員 商法及び有限会社法の一部を改正する法律、これにかかわりまして若干私が問題とするところをお尋ねしてみたいと思います。  まずは、この四、五年の間に何回か商法改正がこの法務委員会で論議をされてまいりました。その何回かの商法審議に関しまして、時あたかも日本アメリカとの経済の構造に関するいわゆる日米構造協議というものが進んでいたわけでありまして、アメリカ側の要求に基づく日本経済のいわば体質改善といいますか、そういうものもその中には含まれていたように思います。したがいまして、この数年間の商法改正の経過といいますか、つまり構造協議との関係の改正というものはどの時期のどの法律であったかということについて、まず概略のところ御説明をお願いしたいと思います。
  152. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のとおりこの五年間ということを見ますと、まず平成二年、平成五年、それから今回ということで、今回が三回目の改正法案の提出ということでございます。  平成二年には、最低資本金制度の導入、それから会社設立手続の合理化等、いわば中小規模の会社対応するための改正でございました。平成五年は、既に御案内のとおりと思いますが、株主代表訴訟制度株主の帳簿閲覧権、それから監査役制度、それから社債制度改善ということを内容とする改正が行われてまいったわけでございます。この間、日米構造協議の問題がございましたけれども、私どもとしては、この日米構造協議との関連において改正したという認識は持っておらないところでございます。
  153. 小森龍邦

    ○小森委員 今回の商法及び有限会社法改正は、一種の規制緩和であるように思います。  日米構造協議の項目をずっとあの当時読んでみたことがありますが、認可、許可とか規制とかあるいは行政権の恣意とか、そういう言葉がずっと出てきていたのであります。  そこで、これは一種の規制緩和、自社株の取得に関する規制を少し取り払うということであると私は思いますので、やはりそういうことに関係があるのではないかと思いますが、その点は、再度念を押すようですけれども、どうでしょうか。
  154. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 今回の自社株取得規制緩和の問題を含めまして、先ほど申し上げました、最近の改正法をもあわせまして、日米構造協議との関係について補足申し上げたいと思います。  まずもって、平成二年、平成五年、今回の改正、これらの位置づけといたしましては、古い話になりますが、昭和四十九年に監査制度それから大規模会社については会計監査人制度を導入するための商法特例法の創設等の改正を実現した際の衆議院、参議院の各法務委員会の附帯決議の中で、今回の改正は是とするけれども、しかし会社制度については、企業の社会的責任、大小会社の区分等大変大きな問題を含むいろいろな面について、全面的に見直しを検討すべきだという御指摘をいただいた。それを踏まえて、昭和五十年から法制審議会において商法の全面的な改正作業に着手してきたわけでございますが、いずれも、全面改正の一環として実現をしてきたということでございます。  当初は、全面改正ということで、全部を一挙にということでスタートいたしましたけれども、やはりそれは大変大規模かつ影響を与えるところも多いということで、そんなことをやっていては何年かかるかわからないということで、それを実現できるものから順次実現するということで、その後、昭和五十六年、そして平成二年、五年、今回というふうに改正してきたわけでございまして、いずれも、我が国固有の契機に基づく改正であるというふうに考えております。  ただ、日米構造協議におきまして、アメリカ側から株主の権利の拡充という観点から、代表訴訟制度改善あるいは帳簿閲覧権の持ち株要件の緩和、それから株式持ち合い解消するための自己株式取得保有規制緩和という要望があったことは事実でございます。そういう要望に対しまして法務省といたしましては、そういった問題については、今申しましたような観点から、すなわち、我が国固有の契機に基づく観点から、現在法制審議会において検討が進められているということを説明してきたという経過がございます。  そういうことで、日米構造協議におけるアメリカ側の要求に、結果として一部適合したという部分があることは間違いございませんけれども、しかしながら、日米構造協議におけるアメリカ側の要求によってこれを実現したというものではないというふうに考えております。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕
  155. 小森龍邦

    ○小森委員 そうすると、図らずも一致したというか、そういうことに説明がつくのだろうと思います。しかし、アメリカ側が心配をしておる我が国会社のシステム、つまり先方が心配しておったことは、やはりある程度当たっておったということになるのじゃないかと思います。  それはそれでよいといたしまして、日米構造協議で先方が指摘した中には、先ほど来いろいろと問題になっておりました株式の相互持ち合いといいますか、これについては、先方はどういうことを言っておったでしょうか。
  156. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 アメリカ側の基本的なスタンスは、企業系列というものを解消するという観点から、株式の相互持ち合い解消するという方向での会社法上の手当てということでございます。
  157. 小森龍邦

    ○小森委員 それに対する手だてというのは、私も不勉強でよく承知していないのでありますが、今、どういう程度のところまで進んでおるのでしょうか。
  158. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 株式の相互持ち合いの問題というのは、これはかねてからの古い検討課題でございますけれども、この点について、もう既に過去においてもこの改正作業の中でその課題として取り上げられてきたという経過がございます。その結果といたしまして、たしか昭和五十六年改正だったと思いますが、一定の割合以上の株式保有している関係にある場合に、議決権の行使を制限するという改正を実現した。これによって、直接に相互保有規制するということではございませんけれども、相互保有に基づく弊害の一部を解消するということにしたという経緯がございます。  なお、長い目で見れば、引き続きこの問題は一つの検討課題であるというふうに受けとめております。
  159. 小森龍邦

    ○小森委員 これは、日本の経済の民主主義ということで非常に大事なことだと思いますので、重ねてお尋ねをしてみたいと思うのであります。  私がちょっと調べてみたところによりますと、大きな企業の集団というかグループ、公正取引委員会は六大企業グループ、企業集団という言い方をしておるようでありますが、株式持ち合い率というのが、三菱グループの場合は三五・五%ということを書いている書物がございます。かなり大きい、例えば六大企業集団全部押しなべて言うと、二〇%を少し超えて二一・六%ぐらいのようでありますが、先ほど議決権について制限を加えるところで多少経済の民主化を図っておるというふうな意味の答弁がございましたが、具体的には、例えば何%以上持ち合いをやったら議決権というものを幾ら削減するというふうな、余り詳しいことでなくてもよろしいですけれども、傾向がわかりさえずれば私のまた判断の材料になりますので、その点をお答えいただければと思います。
  160. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 他の会社から発行済み株式総数の四分の一を超える株式を持たれた会社は、その持っている方の会社の議決権を行使することができない、ごく大ざっぱに申し上げればそういう規定でございます。
  161. 小森龍邦

    ○小森委員 重ねてお尋ねいたしますが、四分の一以上のところが議決権としては失効するという、何か四分の一を超えたらその四分の一の全体が失効するというのか、それはどちらでしょうか。
  162. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 四分の一を保有されている会社は、その相手会社株式全部について議決権を行使することができないということでございます。
  163. 小森龍邦

    ○小森委員 それからもう一つ、今日の株式の構成について私の危惧するところをお尋ねしてみたいと思うのであります。  昨日、これは共産党の正森委員の方からある程度数字を出されて質問をされておったようでございますが、私の調べたところ、昨日の正森委員の資料も参考にさせていただきまして、一九五〇年の株主の構成分布を見ると、個人が持っておる株式が六一・三%という非常に高い数字を示しておりまして、法人は金融機関と事業会社等を含めて二三・六%でございました。ところが一九九〇年代に入って、これがその四十年ほどの間に全く逆転をしておるのです。むしろ逆転をいたしまして、金融機関を含める事業法人の方がさらにその数字を上回っておる。一九五〇年ごろの個人の株式所有というものよりも数字は上回っておって、七〇%内外になっておるということでございます。  これは結局経済の民主化というか、我が国が国際的にいろいろ問題にされて、特に貿易摩擦などとの関係において日本の経済はアンフェアだというようなことがよく言われますが、そういうことと関連して、この数字というものをどういうふうに行政当局は、これは経済企画庁でないから厳密な意味でなくてもよろしいですけれども商法を担当される法務省民事局とすれば一定の見識というものはお持ちでなければならぬと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  164. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 委員御案内のところかと思いますけれども、私どもが所管しております商法の中の会社法あるいは株式会社法、これは、会社組織というものによって企業活動が行われるという視点、観点に立って、その会社組織を利用することによって出資者である株主利益、それから会社取引をする第三者の利益、そういうものが害されることがないようにしなければならない、そういう観点から会社の組織法として規定しているわけでございますので、そういう観点から商法を所管しているということでございます。  その株式会社における株主の構成がどのようにあるべきかということについては、これは商法自体が直接所管する問題ではないわけでございますので、一般的に申し上げれば、個人株主というものの健全な育成が重要であるということは私ども承知しておりますけれども、そういった問題については、むしろ大蔵省証券局の方でそういう観点からのいろいろな施策を実施しておられるというふうに承知しております。  私ども立場として、それがどうあるべきか、今御指摘の現状がどうあるべきかということについては、いささか権限を越えることになりますので、御答弁をお許しいただきたいと思います。
  165. 小森龍邦

    ○小森委員 最低のところ、我が国政府ですから、それぞれ専門がおってよいわけですけれども、その専門との間の相互の知識の交流といいますか、そういうものがないと、やはり商法が非常に大きい影響を持っていますからね、こういう株式の問題がどういうふうになっていくかということについては。したがって、きょうはあえてそのことを、しっかり認識を持っておかなければ困るじゃないかというところまでは私は迫りませんけれども、常識としてある程度のところは持っていただかないと、総合的な国の行政施策というものがうまく調整できないのではないかと思うわけであります。  そこで、先ほど四分の一以上の相互持ち株の場合は議決権が失効するということでございました。それは、幾らか持ち株制度を困難にしよう、こんな考え方でできたのじゃないかと思いますけれども、しかし、それがそうなってもなお、一九九〇年とか九一年とか、九〇年代の数字を見ると、先ほど申しましたように相当程度高い数字を示しておる。つまり、金融機関と事業法人が持っておる株というのは相当高い率を示しておる。しかし、その高い率を示しておるということは、結局は株式の相互保有ということが非常に深い関係を持っておるのじゃないかと私は思うのですね。個人が小口で株を持っておるよりは、法人が持ち株の相互保有というような関係で、企業グループがいわば計画的にどんどんやっておる。それは会社の乗っ取りを防ぐとかいろいろなことがあるのだろうと思いますけれども、後ほどまた私は私なりの考え方を申し上げたいと思います。  そういう、法人が株主としての構成とすれば高い率を示すということは、やはり株式の相互保有という、アメリカから見てちょっと文句を言いたくなるような、また経済の仕組みの中に、大衆個々の力の総合されたものが日本経済の土台にあるという方が好ましいと思いますが、そういうことになっていないというのは、やはり先ほどお話がございました五十六年のときの改正がほとんどそういう意味では効果を持っていない、それよりももっと大きな動機で物事が動いておる、こういうふうに私は思いますが、その点はどうでしょうか。
  166. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 株式持ち合いが行われていることに基づく弊害というのはいろいろな面から指摘されておりますけれども商法観点から問題でありますのは、要するに、A会社がB会社株式をたくさん持っておる、そのB会社がA会社株式を持っている場合に、B会社がA会社株式について議決権を行使すると、結局のところ、A会社会社自体の意思がA会社株主総会における議決権の行使ということで反映される、株主総会の議決権の行使のあり方を歪曲する、こういう観点があるわけでございます。そういう視点から、先ほど申しましたように、昭和五十六年において、一定の場合に議決権行使を制限するという規定を設けたわけでございます。  繰り返しになりますけれども、相互保有の問題についてはいろいろな観点から考えていかなければならない、先ほど申しましたように、商法観点からも考えてまいらなければならない問題であると思いますけれども商法観点から申しますと、相互保有というのは非常に複雑な形で行われている、単に二つの会社が持ち合っているという単純な形ではない、非常に連鎖の中で持たれているということでございますので、商法立場からそういうものを規制するということはなかなか難しい面があるという問題もございます。そういう難しい面があるということを御理解いただきたいと思いますが、最初に申しましたように、重要な課題であると受けとめてまいりたいというふうに思っております。
  167. 小森龍邦

    ○小森委員 なかなか難しいということでございますが、そういう難しいことがいまだ実績を上げざるうちに、それにさらに加えて自社株の取得に今回いささか道を開くということになると、我が国経済が、先ほど来いろいろな委員の方が御指摘になっておられましたけれども、危惧すべきことがまた一つふえるのではないか、こういうふうに思うのであります。  民事局長が御答弁になっておられますことは、遠回しな答弁でございましたけれども、大体言われんとすることは私もわかるわけでありまして、例えば三菱グループ、私が先ほど株式持ち合い率が三五・五%だということを言いましたけれども、この三五・五%というのは、三菱グループの中のAという会社とBという会社が相互に持ち合っておるというよりは、この三菱グループなんかは金曜会といいまして、社長会へ集まってくる企業の数だけでも二十九社だと聞いております。この二十九社が複雑に絡み合いますと、それはまあ四分の一は、相互には四分の一よりはるかに下のところで抑えることができるわけでありますから、実際は議決権のところに余り影響がないのではないかというふうに私は見ておるわけであります。  そういうことでありますから、さらに三菱グループのことについて、今度は役員の派遣率というのを調べてみたら、驚くなかれ、役員の派遣率は九六・六%と相互に入り乱れております。そうなると、これはまあ株式の持つ意味の民主化とか企業の民主化とか、もっと言うならば企業の社会性あるいは社会的責任というのを、何人か強引な会社の経営者がおったら、それはなかなか国民のサイドから見てうまくやってくれないじゃないかというようなことになると思うのですね。  国益からいうと、それが国際競争力に勝てる我が国の一つのシステムかもしれませんけれども、それでは憲法が言うところの「自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、」この憲法の精神を私は守っていないということになると思うのですね。  この数年間、例の湾岸戦争のときに盛んに、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」というのは、日本外国に軍隊を送らないで、自分のところだけ平和で豊かにやっておる、それではだめだというような意味に悪用されていますけれども我が国憲法の精神というのは、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」というのは、あの戦争によって物すごい被害を諸外国に与えた、だから「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」、国際主義的な考え方に立たなければならぬということを言っておるのでありまして、やはりアメリカが少々腹を立てるのは無理もないと私は思うのですね、こういう我が国のシステムでは。  ということを申し上げまして、そういった我が国の基盤の上に立って日常生活しておる者の意識というものがどういうふうになるかということを、いつも私は人権闘争の観点に立って、人権というのはすぐれて人間の意識の問題ですから、だから、いつもそういうことを考えるのです。  この際に、この商法及び有限会社法改正の提案理由の説明のところで、まず商法のところで出てきますが、「まず、商法につきましては、第一に、会社は、正当の理由があるときは、定時総会の決議に基づき、配当可能利益の範囲内において、発行済み株式の総数の百分の三を限度として、使用人譲渡するために自己株式取得することができることとする」「取得した自己株式は六月内に使用人譲渡しなければならないこととしております。」こういうふうに、使用人従業員持ち株制度という言葉が、持ち株会とか持ち株制度という言葉が先ほど来盛んに使われておりますが、こういうことに法律が道を開くことから出てくる問題点というのは、一体どういうことであろうか。  これは簡単に言うと規制緩和でありますけれども、言葉は過ぎるかもわからぬが、都合のいいところは規制緩和をして、都合の悪いところは、いやなかなか複雑でありますので、なかなかうまくいかぬのですと言う。私は、今回の、一般的に各党が問題にしておる規制緩和、それぞれ研究は始まっておると思いますけれども規制緩和にはしっかりした哲学がないとだめなんです。規制緩和すればいいというものではないのです。極端に言うと、公害問題なんかもっと規制を厳しくしなければいけないのです。  ところが、規制緩和が何か正義であって、それにもし刃向かう者がおったら、社会的不正義を主張しておる。まあ今の政治改革の議論もそうですけれども、政治改革おかしいじゃないかと言うと何か不正義であって、いや、政治改革は政治資金の規制がうまくできていないじゃないかというようなことを言ったら、何だかあいつは保守派だとか守旧派だとか、私は日本で一番進歩的と思っておるのですけれども、どうもそういう烙印を押されそうだということで、言葉がひとり歩きをするのですね、規制緩和の問題についても。  したがって、この規制緩和というのは、私がこれまでのいろいろな運動的取り組みの中でいたく痛感することは、これは従業員、ここでは使用人という言葉を使っていますが、労働者に対して、会社に対する帰属意識を持たせて、会社のやっておることが社会的に正当でなくても、企業の社会的責任を十分に果たしていないようなときでも、要するに、おれは会社株主なんだ、都合によって油にまみれて働いている、おれはれつきとした株主なんだ、こういう一種の錯覚に近い、私はこれを哲学的には自己疎外と呼んでいますけれども、おのれの利益を忘れてしまって、自分の利益を棚に上げてしまって、それこそ殉国の精神、我々は少年時代には、天皇に忠誠を尽くすのを殉国の精神と言っておりましたが、殉国でなくて殉社精神ですかな、殉会社精神に基づいて、専ら忠勤を励む。一種のこれは、私が恐れるのは、労働問題として、労働者が本当に労働組合法が保障するような労働者の権利というものを主張し得ないように少し骨抜きにしていくことになりはしないか、これを私は心配しておるのですね。  今ごろ労使対立なんか、これも時代おくれだと言うかもしれませんけれども、私はこれは時代おくれじゃないと思いますよ。ソ連が崩壊したのは、ソ連の独裁主義的な政治形態が人々の権利意識というものをだんだん損ねていって、ああいう形で崩壊したと私は思っています。基本的に社会の中にあって利害の対立するものが、双方が平等な立場に立って権利を主張し合うということは、これは要するに、洋の東西を問わず、歴史的な若干の時間的ずれがあったとしても、それは私は決して間違いではないと思っているのです。そういう意味で、このことは、労使問題に悪い影響を持ちはしないか。  これに類似したことで、会社に対する帰属意識というのは、大きな会社は大概やっていますけれども、提案制度というものです。うちの会社のどこをどう直したらいいか、ちょっと提案せいといって、私の知っておるある会社、当時約三万人ほど従業員のおる大会社でありますけれども、年間九十万件提案があるのですよ。三万人が年間九十万やるのです。だから一人平均三十件ぐらいやることになるのですね。それで、一番よい提案をしたと思われるものは賞金十万円なんです。一番つまらぬものでも、採用されたということになったら二百円なんです。たばこ一個なんです。それで、私が言うたことを採用してくれた、それだけでも会社に対する帰属意識があるし、ひどいのは、作業現場のコンクリートがちょっとこげておるの、あれちょっと塗り直しておけよなんという提案をしたら二百円で、明くる朝行ってみたら塗り直しておるから、おらが大将じゃ、わしが言うたとおり聞いておる、こうなってくるのです。  それで、その会社には実に立派な附属病院があるのですけれども会社のために忠勤を励まなければいかぬといって、受診率が物すごく悪いのです。そして私は、その会社の中の作業工程を視察するのに、労働組合の三役にずっと連れて歩いてもらった。そうしたら、労働組合の三役がどう言うかといったら、息ができぬほどのあのラインの中にもぐれて手を休める暇もなくやっているのですね、どうですか、うちの会社、ようやっておるでしょう、こう言うから、一体労働問題の観点から言っておるのか、どういう観点から言っておるのかと思って、それは会社の専務が言うのならわかるけれども、組合の幹部が言うのにはわからぬなと私は思って、ちょっとがっかりしたことがあるのです。  これは要するに、労働者が経営者側の方に身も心もつまり吸い取られてしまうというようなことになりませんでしょうか。全然角度は違いますけれども、私はそういうことは問題だと思うのですね。
  168. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 従業員持ち株会というものを念頭に置いた今回の改正は、従業員持ち株会運営というものが、そこに参加する従業員の財産形成を通じてその福利厚生に資するということ、それから今御指摘があったことに関連いたしますが、従業員会社の業績の向上に参加する意欲の向上につながる、そういうことが指摘されておるわけでございますが、そのほかに、従業員にとりましては、少額な資金で簡便な方法によって株式投資が可能になるというようなことから、一般に従業員に歓迎されているというふうに聞いているところでございます。  今回の改正は、そういった従業員持ち株会運営上、何らかの手当てがないと隘路があるということで、その隘路を解消するという観点から、使用人譲渡するための自己株式取得というものを一定限度で認めたわけでございます。この改正後において、これによって従業員持ち株会運営円滑化が図られるという効果があろうと思いますが、従業員持ち株会に参加するかどうかということは、従来どおり従業員の自由な意思によってされるわけでございますし、しかもその円滑化が図られると申しましても、個々の従業員がこれによって大量の株式、自社株式取得するということになるわけではないわけでございますし、また、運用といたしましては、自分の持ち分が株式の一単位以上に相当することになった場合には、持ち株会から自分の固有の名義に引き出して、そしてこれを適宜市場処分をして換金するということも活発に行われているということでもございます。  したがいまして、持ち株会への譲渡を円滑に行うことができるということによりまして、これによって従業員会社に従属することになったり、帰属意識がこれによって著しく強くなるという性質のものではないのではないかというふうに考えているところでございます。
  169. 小森龍邦

    ○小森委員 民事局長、私はそこまで、最後の一言までよう答えぬのじゃないかと思ったら、一応答えられた。一応答えられたということになるけれども、それは見解の相違みたいな格好になるのですね。  現実に実は、日本企業というのがヨーロッパと競争しても強いとかアメリカと競争しても強いとかいうのは、どういいますか、封建時代の家臣団のような、だから会社の社長のことをまだよくおやじというふうに言うでしょう。会社の社長のことを親指を出してうちのおやじがと、こうやるでしょう。これは封建家臣団みたいな意識がまだ抜けていないのです。その抜けていないときにこんなことができると、先ほどもどなたかがお話しになっておりましたけれども、わしは持とうという気はないんだけれども、出世に影響するかもわからぬから、ちょっとわしもその便に乗っておこうかということになるんだね。  それが要するに帰属意識というのでありまして、言葉で否定されるのは簡単ですけれども、現実の事実というものはそう動いて、日本社会の市民法的公正原則といいますか、私らは運動ではよくこれを市民的意識とか市民的感覚とか市民的権利意識とかいう言葉を使うのですけれども、そういうものがうまく歴史的に発展せぬのじゃないかというふうに思うわけです。私は、部落差別の意識の問題について実態と心理ということをよく言いますが、これはもっと言葉をかえていえば、経済と、それから法律とかその他人間の精神分野との相互関係、同対審答申に言っていますが、相互関係の問題だと思っておるのです。したがって、世の中が少しでも経済の面において後ずさりをするようなことをしてもらうと、これは直接労働問題のことを今言ったのですけれども、全体的に不合理な感覚がずっと根を張るのですね。私はそれを恐れるのです。  それで、非常に時期が一致をしておりますので、この辺でちょっと、本来商法からいえば横道にそれますけれども、昨日、我が党の坂上富男委員が質問をいたしました、京都における朝鮮人学校ですか、正式な学校名は私知りませんけれども、それに対する家宅捜索とかあるいは物品の押収とかという事件がありまして、何か捜索中に、いや間違いだったということがわかったような、きょうらの新聞を見るとそういうことのようですね。  それで、きょう最高裁にもおいでをいただいておりますが、これから申し上げますことは、一つの事件にかかわったというのは私の頭の中にはずっとそれはあるけれども、答えやすくするという意味もありましてお尋ねをしますが、裁判官が令状を、捜索する捜査令状というのですか、あるいは押収する許可の令状とかそういうものを出す場合に、真にこれは必要であるか必要でないかというような、建前は裁判官がそれは判断することになっているのですが、こんなに、ちょっとやりかけてすぐ間違いだということがわかるようなことへ判を押すということは、これは裁判官が良心に基づいてやっておるとは言えないと思うのですけれども、その点はどうでしょうか。
  170. 高橋省吾

    高橋最高裁判所長官代理者 令状の請求を受けた裁判官としましては、憲法の要請する令状主義の精神にのっとって十分に司法的なチェックをする、そういうチェック機能を果たすという観点から捜査官から提出された資料を厳密に検討して、それで令状発付の要件があるかどうかを一件一件慎重に判断していると思っております。  それで、実際の令状発付ということになりますと、まず捜索・差し押さえ許可状について御説明いたしますと、その請求を受けた裁判官としましては、まず犯罪の嫌疑があるかどうか、それからそういうような捜索・差し押さえという強制処分必要性があるかどうか、そういったことを提出された書類に基づきまして、疎明資料に基づきまして十分慎重に検討する。捜査官から出された疎明資料が足りないということになりますと、その請求者あるいはその関係者からさらに資料を追加させたり、あるいは直接にその請求者等から具体的な事情を聴取した上で、その令状を発付するかどうかを検討する、こういうことになっております。そういう意味で、令状請求を受けた裁判官としては個々の事件ごとに慎重に判断しているものと考えております。
  171. 小森龍邦

    ○小森委員 先ほど来、今回の商法のことを審議するこの審議の私の質問というのは、商法自体の問題でもありますし、そのことはひいては我が国の国民の市民的権利意識、それから司法、行政、立法のそれぞれの我が国の権力構造の中の権力を行使できる者の恣意的な横暴性というものをいかにして抑えるか、これは、三権分立の精神はそもそもそれですからね。権力というものがむちゃをしたときは、これは一番怖いのです。私はこれは思うのですよ。いろいろ社会的にむちゃをする者もおりまして、極端に言うと、私なんか十カ月ぐらい右翼に追われて物すごい修羅場をくぐり抜けてきましたが、そのときも思うたですな、これはしかし権力よりはまだええわいと。権力というのは、それはもうやりようないですよ。どこまで行ったってそれはもうひっつかまえようと思ったらひっつかまえるからね、全国ネットワークですから。だから、権力というものが非常に怖いというのは近代の民主主義の思想なのですよ。  だから、権力というものがいかに公正に権力行使をするかということが問題だ、こういうふうに思っておるのでありますが、今最高裁刑事局長は建前としては言われた。それはそのとおりなのですよ。そうでなかったら、これはもうだめなのですね、建前。しかし、建前どおりいっていないから、実は私はこの令状主義というものの根本精神というものをもう一度わきまえてもらわねばならぬ、こんな気持ちがあって言っておるわけです。  その初歩的なことをやると言われるけれども、初歩的なことを調べると言われるけれども、それは、憲法第三十五条に書いてあります非常に重点的に読み込まなきゃならぬことは、「正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」「侵されない。」という言葉、国民の立場で「侵されない。」ということを言っているのですね。だから侵さないように最大限の努力をしなきゃいかぬです。そして、「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。」これはもう私は物すごい名文句だと思って、私が中学二年の折にこの憲法ができたのですけれども、中学三年、高校生のころ、ここはもうべらぺらっと言えるように覚えたものですわ。これが日本の市民的権利の、司法権力が我々を守ってくれる非常に大事なところだ。だから「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。」そしてしかも「捜索する場所及び押収する物を明示する令状」によらなければならぬということになっていますが、今回の京都におけるのは何か二十七カ所捜索させたそうじゃないですか、二十七カ所。そして押収されたものは何ぼに及んでいるのですかな。これは新聞にも書いてあるからね。相当のものでしょう。つい二十点や三十点じゃないのでしょう。つまり百の単位でしょう。そういうものを、裁判官が捜索する場所二十七カ所必要なんということをどうやって判断するのですか。向こうが言ってきたのをぽんぽんぽんぽん判を押しさえずれば裁判官の任務が済むと思って、何時ごろ令状を請求したのか知らぬけれども、夜だったらもう眠たいとか朝だったらちょっといらいらしょるとか、そんなことでは国民の権利は守れぬと思いますが、どうやってそれ、二十七カ所がだいじないこと、どういう基礎資料、それはあそこのことでなくてもいいのですよ、京都のことでなくてもいいのですよ、二十カ所とか三十カ所とか裁判官がわかるわけがないじゃないですか。それはどうなんですか、そこらは。
  172. 高橋省吾

    高橋最高裁判所長官代理者 先ほども御説明いたしましたとおり、令状の請求がありますと、その強制処分必要性ということを裁判所は考えるわけです。通説、判例によりますと、裁判官は令状の発付に当たり、捜索・差し押さえの必要性についてまで判断することができる、その結果、明らかにその必要性がない場合には請求を却下できる、こういうふうに解釈しており、実務もそのような解釈に基づいて運用されております。  このように、通説、判例によりますと、必要性審査、そういう面におきましては、必要性を積極的に認定することを要求しておらずに、明らかに必要性がない、そういったふうに判断される場合に請求を却下すべきだ、こういうふうにしておるわけです。しかし、このことは、もとより裁判官の行う捜索・差し押さえの必要性審査がいいかげんなものでよい、そういうことではありませんで、裁判官としましては、捜索・差し押さえがこれを実施される者に対して非常に大きな負担を強いるものである、そういうことを十分に認識した上で、請求者から差し出された資料を慎重に検討して、その資料からうかがわれる諸般の事情に基づいて捜索・差し押さえを行うまでの必要性がない、そういう捜索・差し押さえを認めるのはどうも社会の常識に照らしても相当ではない、そういうふうに判断いたした場合には、その令状請求を却下する、こういうことになるのでありまして、令状請求を受けた裁判官としましては、先ほど申し上げたとおり、非常に慎重にその必要性について判断している、こういうふうに考えております。
  173. 小森龍邦

    ○小森委員 そういうことを平気で言われるからちょっとこれは私としてもますます不信感を持つのですけれども、国土利用計画法に基づく届け出義務、これは、取得をしておるとか取得の契約を結んでおるとかということは、その土地はもう逃げないんですよ、これは全然。また、消しゴムで消すこともできないんですよ。そしてまた、その届け出が出ておるか出ておらぬかは、市役所なんですからね、これもまあ泥棒が入って盗めば別かもしれませんけれども、そんなことは常識上あり得ないんですから、これも逃げないんですよ。証拠隠滅しようと思ったってできないんですよ、これは。そういう両方からきちっと挟み打ちにしておるような動かない証拠をめぐって、これは社会的不正義ならば、法律違反ならばしかるべき法律的処置をとったらよいのであって、何で二十七カ所もごそごそごそごそ集めて持って帰らにゃいけぬかったか。それはあなたね、慎重にやるんじゃとかなんとか言うたところで、それは口の先だけですよ。これはそういうようなことを言えば言うほど、国民はみんな変な気持ちで見るんです。  きのう私は、これも超党派だったですよ、いろんな議員の人と、おい、京都おかしいことしよるのうと。超党派だったですよ、十人、もうその辺だったんですよ。おい、小森君、京都おかしいよのうと言って。裁判官だけがおかしゅうないと思っても、これはだめですわ。  そこで申し上げておきますけれども、私は、これは国会へ出た直後でございましたが、その前に一つ、一九八八年の九月二十七日に、外国為替及び外国貿易管理法に基づいて、通産大臣の許可を受けないで規制品であるコンピューターを輸出したということで一遍やっていますわな。朝鮮総連の新潟出張所、それから商工連合会へも強制捜査をやっています。これは、ソウル・オリンピック開催に合わせ、開催に反対する北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国、総連の動向の資料収集がねらいであったのではないか。大概もう時期が一致しておるんですよ。  私が直接かかわって、これは警察庁にも抗議に行きましたけれども、東京の朝鮮中高級学校、朝鮮総連事務所に対する家宅捜索をやったね。立会人がおらぬのにかぎをこじあけてやっておったね。何か公務員を連れてきたらええんじゃというような法律があるらしいが、これは一九九〇年の五月六日のことなんです。その中身は、外国人登録法違反なんです。これも逃げも隠れもしないことなんですよね、外国人登録法違反は。そのときに逮捕者を三名出している。百数十名の機動隊員が来て、それで八カ所をそのときには捜索しておるんですね。学校の中もごそごそやっておるんです。約三百点の書類を押収したんです、そのときに。そのときの政治的背景は、私はぴんと来た。盧泰愚大統領が来るという少し前だから、また日本政府は格好よくやっとるわと思うた。  それから今度は、この間のこともまだ記憶に新しいでしょう、朝鮮総連大阪府本部に対してやっておるのは。これは威力業務妨害罪、やった人間はだれかわからない、氏名不詳ですわ。被疑者は不詳ですわ。これは簡易裁判所の石田さんという裁判官の判をもらっておるようでありますが、これは五百数件にもわたる文書を押収して帰っておるんですよ。これは準抗告の手続をとっておるようですけれどもね、何人かの弁護士は。  これは何かというと、残念ながら、政治家たる私の感覚に訴えれば、日本国内における有事立法の問題が議論されておるときに、ぽんとやっておることなんです。そしてこのたびの問題、四百余名の機動隊員と、さらに加えて武装警官、十三台の機動車両というようなものが出ていきまして、そして二十七カ所の捜索を行い、百二十件もの文書を押収して、それでやりよる間に間違うておったということがわかったというのだが、ひとつ刑事局、よく聞いてくださいね、やっぱり人間とい うものは、こんなことがずっと法則的に続いたら、私はこれは画策だと思いますよ、私の感覚からいったら。そして、ちょっと調べたらそういうことはやっておるかやっておらぬかわかるのに、たまたま間違うた報告をしたというのを上手に使うて、しかし市役所の方は、告発はちょっと待ってください、もう一度、再度うちの方で調べてみますからというやりとりが警察との間にあったのに、それを無視してばっとこの捜索に出るということは、これらの被疑事実を調べるというよりは、やっぱり何によらず朝鮮総連あたりから書類を持って帰りたいんじゃないんですか。返すと言いよるが、返すまでの間にどれだけの時間があって、このごろはもうコピーかけたらそのまますぐとれるからね。裁判官は、それぐらいは裁判官の要するに憲法感覚と人間としての良心に基づいて、最後のとりででしょう、人々の人権を守る。  要するに、先ほど言いましたように、そういう手続をとらなければそういう権利は侵されない、捜索されるようなことはないということをこの憲法が言っておることが、最後の頼りでしょう、国民は。しかもこの場合は、憲法第三十五条は国民と書かずに「何人も、」となっておるんですよ。内外人を問わずですよ。「何人も、」ですよ。それを裁判官がそれもう私は良心を疑いますわ。そして今の経済の構造なんかも、表向きはよいけれども、市民的権利がどんどんどんどんむしばまれていくような状況になっておるときに、それに歩調を合わせるかのごとく裁判所がそんな形で動いたんじゃだめだ。  以前こういうことがあったでしょう。これは私が出てから後のことで、私の質問がきっかけになって、最高裁は、これは司法行政の立場からやられたんだと思うけれども、勾留請求に対する許可を与える場合に慎重にやれと、勾留期間がまだたくさんあるのに第二回目の勾留をとるという請求が出たらぽんぽんぽんと判を押していたが、それを慎重にやれというのを出したことがありますよ。これは法務省刑事局も検事の皆さんに対して、そういうものを簡単に請求するな、期間いっぱい調べて、なお調べ足らないものがあるというときにやむを得ざることとして人々の人身を拘束する、これは四年ほど前のことですよ、ありましたよ。だから、これはやはり司法行政の立場から人々の人身を守るという観点で厳格にやってもらわなければならぬと私は思いますね。  だから、先ほどあなたが答弁されたことについて、通り一遍の言葉でなくて、人権を守るためにそれは本当に厳密でなければならぬ、私はきょう裁判所のそういう気持ちを聞きたいんです。答弁してください。
  174. 高橋省吾

    高橋最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げたとおり、令状請求を受けた裁判官は個々の事件ごとに慎重にやっている、そういうふうに理解しているところですけれども、なお一層今後ともその方向で、非常に慎重にやっている、そういうふうに私ども理解しておりますけれども、その令状請求につきましては、慎重に判断するように日ごろからいろいろ研さんに励んだりして、今後ともしっかり頑張っていきたい、そういうふうに考えております。
  175. 小森龍邦

    ○小森委員 なかなか当たりさわりがあって答えづらいと思うけれども、先ほどの大阪の問題は、これは本来は名誉というようなことを考えねばならぬのですけれども、これほどの権力の位置にある人は、国民から見て間違うたことをしておるというような人は国会でその名前ぐらいは議論に出てもよいと思うから申し上げておきます。大阪は簡易裁判所の石田譲という裁判官ですね。長らくやはり議事録にこういうようなのは残しておかないといかぬと思いますね。京都の方は、京都地裁の飯田勝之という裁判官ですね。年齢がどのぐらいで、どれぐらい経験があった人か知りませんけれども、やはり慎重な上にも慎重を期してやってもらわなきゃならぬ。自分らの三権の権力の上にさらに主権者たる国民というものがおるんだということを忘れぬようにやってもらわなきゃならぬということを申し上げておきたいと思います。  時間が相当迫ってきておりますので、もう一点だけ、本論というか商法の問題に返りますが、そういうふうに日本の社会が、商法がどっちへ動くかとか経済のシステムがどっちへ動くかということによって、かなり不合理な感覚というものがまかり通るということで、それは微妙にいろいろなところに影響する、こういうことで私はそれに重点を置いて申し上げておるわけでありますが、こういうことですね。  先ほど公正取引委員会日本の六大企業集団という言葉を使っておるということを言いましたが、三井、住友、三和、三菱、芙蓉、第一勧銀、これらがやはりそれぞれ関連会社の社長会というのを持って、それぞれが二十四社とか二十社とか四十四社とかあるんですけれども、この六大企業が百六十三社の社長会というものを持っておる。それで、これは我が国会社の数の比率でいったら〇・〇〇八%なんです。その〇・〇〇八%の会社が全体の会社の、約二百万社ある我が国会社の資本金の一七・二%を占めておって、総資産は一三・五%を占めておって、売上高は一六・二%を占めておるんですよ。もうそれだけでも、ここらのところがどういう動きをするかということによって日本経済がかなり揺すぶられるんですね。  ところが、それは百六十三社の場合はそうでありますが、それらの百六十三社がそれぞれもう密接不可分なる子会社を持っておりまして、その子会社が五千九百八十社。この五千九百八十社の総資本金は二〇・九%、総資産は一七・七%、売上高は二〇・四%。こうなると、ここらのところで今申しましたような労働者の気持ちがどうなるかということになると、相当日本経済に大きい影響を持って、国際的にも整合性のないようなことが起きてくるかもしれないんですね。そういうことを思うから、私はきょうはこんな視点でお尋ねをしたわけであります。法務省民事局とすれば、こんなことは常識程度の知識のバックグラウンドとして持っておいていただいて、商法の問題について議論になるときには、やはり法務省民事局なりのいろいろな考え方というものを発揮してもらわなければならぬ、こう思うのであります。  証券スキャンダルの問題が数年前国会で大きな問題になりましたが、損失補てんというのは自己責任原則からの逸脱でしょう。自己責任原則からの逸脱ということは何かといったら、これはやはり市民法的な公正原則というものが大分後退しておるという証拠なんですね。残念ながら、私が大変問題としておる、生涯かけて頑張ろうとしております部落差別の撤廃も、実はこの市民法的な公正原則の復活を願っておるんであります。何も我々はどこかの事業をしてくれというような、そんなけちなことを言っておるのではないんであります。それはそういう一つの手段として考えられるということを言っておるのであります。  そういうことで、最後のところは指摘だけにとどめておきますので、どうぞひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。
  176. 高橋辰夫

    高橋委員長 正森成二君。
  177. 正森成二

    ○正森委員 昨日に続いて質問をさせていただきます。  私は、同僚委員が先ほどから御質問になりました従業員持ち株会の問題についてまず聞かせていただきます。  ここに持っておりますのは、ことしの二月十九日の日本経済新聞でありますが、「自社株取得緩和への疑問」という題で、こう言っております。  現在、社員持ち株会株式取得は恣意(しい)的な運用を避けるため、毎月一回、決まった日に行われている。しかし、一定日に買い注文が必ず出ることから、逆に市場の思惑的な取引を招きやすく、高値で買わざるを得ないとか、逆に売り物がなくて必要な買い付けができないといった問題がある。そこで、会社があらかじめ有利と思われるときに先行取得しておき、あとで持ち株会譲渡する仕組みにしようとしている。  先行取得した株価のほうが、持ち株会譲渡する日の株価よりも高いときは、譲渡日の株価で持ち株会に売り渡し、値下がりに伴う損失は会社が負担することにしている。  しかし、持ち株会が毎月一回、決まった日に買うというのは、法定されたものではない。特定日を毎月の五日、十五日、二十五日といったように増やせば問題点解消する。基本法である商法に、わざわざ会社が間にはいって先行取得するための規定を置く必要はない。  仮に、会社が先行取得できるようにするとして、なぜ、会社なら恣意的な運用を許されるのか。むしろ株価操作の危険すらある。また、先行取得に伴って生じる会社の差損負担まで「福利厚生」とみなすのは、大企業社員の優遇だし、株主利益にも反する。 云々、こう書いてあります。これは日経新聞の主張ですが、非常に道理があると思うのですね。  それで、ここに持っておりますのは、衆議院法務委員会の調査室が苦労して調査していただいた資料であります。それを使わせていただきますと、会社従業員持ち株会の事務委託料その他を負担しております。これは、証券業協会の持ち株制度に対するガイドラインがありますが、それに従ってやっておる。そのほかに奨励金支給がありまして、調べでは、拠出金千円当たりの支給金額ということで、実施会社のうち九一・九%までが奨励金を出しております。そしてその奨励金は、四十円以上六十円未満を支給している会社が五一・七%、それから百円以上百五十円未満を支給している会社が二三・四%という数字が出ております。それで、千円当たりの金額ですから、大体四%から一五%ということになり、大したことがないように思われるかもしれませんが、私が午前中に参考人質問で言いましたように、現在、株価に対する配当の利回りは、東証上場全銘柄を平均して〇・七%余りであります。〇・七%というのは千円について七円ということであります。ですから、大部分の従業員持ち株会は、千円支出すれば四十円から百五十円もらうということは、配当金の大体十年から二十年を、持ち株をやれば一括して会社からの支給を受けるということになっているのですね。これは非常な利益であります。だから持ち株会というのはいろいろ問題点を指摘されているわけであります。  午前中の参考人質問で引用いたしましたが、これも日本経済新聞の三月十九日の記事でありますが、これでは「労使協調」ということで、先ほども同僚委員から話がありましたが、もう一度読みますと、   「異議なし!」。株主総会の会場の最前列に陣取った従業員株主から一斉に声があがる。最近の株主総会でよく見受ける光景だ。従業員持ち株会の議決権は持ち株会理事長に一括委譲される。理事長は総務課長などが務めるケースが多く、経営者にとっては、これ以上ない安定株主だ。 こう日経新聞は言っております。そして同じ日の記事では、日立製作所のある常務は、「従業員持ち株会持ち合い崩れの重要な受け皿になる」こう言い、「ヤマト運輸は昨年の経営計画で、従業員持ち株会を筆頭株主にする計画を盛り込んだ。購入奨励金を現行の五%から八%にアップすることも検討中で、」「保有比率を五%以上に高める考えだ。」こう書いてあります。こうなれば、持ち株会というのは福利厚生などということから遠く離れて、安定株主工作、そして、その株についての権利行使を会社の思うようにやってもらうということの有力な手段だというように言わざるを得ません。  そうだとすれば、商法の二百九十四条ノ二を見ますと、二百九十四条ノニでは、「会社ハ何人ニ対シテモ株主ノ権利ノ行使ニ関シ財産上ノ利益ヲ供与スルコトヲ得ズ」「会社が特定ノ株主ニ対シ無償ニテ財産上ノ利益ヲ供与シタルトキハ株主ノ権利ノ行使ニ関シテ之ヲ供与シタルモノト推定ス」となっております。  この点について、法務省はどう考えているのですか。これについては、私はあらかじめ言われるであろうことを申し上げておきますと、学説等が二つに分かれております。そして判例には福井地裁判決、昭和六十年三月二十九日がありまして、これは福利厚生の一環であるから推定は覆るという説を出しているようであります。しかし、これはおかしいのではないですか、私が今言ったような例から見て。
  178. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘の商法二百九十四条ノ二との関係でございますが、この規定は、今御指摘のとおり、会社株主の権利の行使に関して財産上の利益を供与することを禁止するものでございます。  今御指摘のように、従来、その従業員持ち株会運営といたしまして、私ども承知しているところでは、拠出金千円について、平均をとりますと五十円程度、御指摘のとおり五%程度の奨励金が支払われるのが一般的である。もちろん、御指摘のようにもっと多いのもあるということを承知しております。  これが今の株主の権利の行使に関してする財産上の利益供与に該当するかという問題でございますけれども、これは、今御指摘の裁判例も含めて、学説の通説は、これは従業員に対するいわゆる福利厚生費としての性格を有するものであるから同条の利益供与には当たらないというふうに解しておるわけでございまして、私どももそういう解釈を前提にして今回の立法をさせていただいているわけでございます。
  179. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁をされるだろうと思って、あらかじめ判例をこちらから引用しておいたのですが、同じコンメンタールを見ますと、それを支持する学説もありますが、例えば、田中誠さんとか中村一彦さんとか、あるいは大和正史さんなどは、この判例に反対ないし非常に疑問の意見を述べておられます。  いわんや、今度自己株取得について大幅に拡大される。伺いますが、百分の三が限度だと言いますが、一回の機会に百分の三以下ということになっても、二年ないし三年たってもう一遍また百分の三買う、合わせて累積になれば百分の三を超えるということも可能なのでしょう。
  180. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 百分の三という株式数の制限は二つの面で働くわけでございまして、一つは、定時総会で一営業年度分の授権枠を決定するわけでございますが、その一営業年度中に取得するものの総量としての規制として働きますとともに、従業員譲渡するために会社がその時点その時点で保有している株式の総量という点についてもその規制が働くということでございます。
  181. 正森成二

    ○正森委員 総量で働くといったって、法律規定では六カ月以内に売らなければならないということになっているんだから、六カ月たって従業員持ち株会譲渡して、また一年、二年後に買う場合には、従業員持ち株会が百分の三を超えたっていいのでしょう。現にこの三月十九日の日経の記事では、ヤマト運輸などはこれを五%にふやすんだとか言っておりますし、現にこの記事によれば、既に一〇%を超えて持っている企業はいっぱいあるのですよ、従業員持ち株会が。五〇%持っているところだってあるのですよ。  だから、そうだとすれば、そういうものに奨励金を、株価に対する配当比率が〇・七%ぐらい、日本は有名な低配当なんですが、それの十年分、二十年分を奨励金として出すというようなことは、福利厚生費と言えないで、明らかに便宜供与だ。  同じこの記事を読んでいたら、おもしろい記事がありまして、「法務省民事局の吉戒修一参事官は」、どっかで聞いたことのある名前だなと思ったら、あなたのことですね。「吉戒修一参事官は「米国式の馬の鼻先にニンジンをぶら下げるやり方はできないが……」」云々と、こう言って、記事になっておるのですよ。まあストックオプションみたいなのはいかぬという意味なのかもしれませんけれどもね。だから、馬の鼻先にニンジンをぶら下げるやり方ではないにしても、五メートルぐらい離れたところにニンジンをぶら下げておるというのであるのは間違いがないのです。  だから、そんな十年も前の判例でいいようになっているからといったって、有力な反対意見もあるので、こんな奨励金をそのままにしているというようなことは、これは他の株主に対しても、あるいは権利行使の公正さからしても、十分に考えてみなければならない問題であるということを私は指摘しておきたいと思うのですね。いいですか、吉戒さん。鼻の先にはぶら下げてないけれども、大分先にはぶら下がっておるのですよ。  それから、その次に申し上げたいと思いますが、皆さんのお手元に、きのう私が質問のときに御理解をいただくための参考資料ということでお渡しをしましたが、その資料の五を見ていただきたいと思います。これは法務委員会では余り議論されないことかもしれませんが、私は大蔵委員会にもおりましたので、税金のことがやはり重要な関係を持っておりまして、みなし配当課税の問題についてであります。  そこで、大蔵省、来ておられますか。主税局、来ておりますね。今度の改正を見ますと、商法及び証券取引法改正によりまして、取得方法について定めておりますね。それは、使用人譲渡する取得は、上場株式取引取引、それから利益消却のための取得は、上場株式については取引取引または公開買い付け、こうなっておりまして、非公開株式は相対取引と、こういうぐあいになっております。  そこで、そのときに、取引取引の場合はだれが売ったかわからないで買うわけですね、売るという人があればそこから買うわけだから。だから、これを会社から買ったというように特定しにくいという見解があるようであります。そうすると、公開買い付けの場合はどうなるのですか。
  182. 大武健一郎

    ○大武説明員 ただいま御質問のございました公開買い付けにつきましては、相対取引と同様と見まして、あくまでも消却に直接応じるものでございますので、従来どおりのみなし配当課税を行うということを考えております。
  183. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁によりますと、公開買い付けの場合は相対取引と同じようにみなし配当課税を行う。  そうすると、取引取引の場合は、これは通常の取引所売買と考える、それから、非上場といいますか、非公開株式は相対取引、こうなるのですね。そうすると、それによって税制上物すごく大きな差異ができるのです。  資料五を見てください。これは、商事法務の一九九二年五月五日号に載って、経団連関係の人が、こういうことが起こるのですといって計算をしたものであります。これを詳細に説明すると時間がかかりますので、下の方の実例①の場合を見てください。これは、初めの方は理論的に説明してあるのですが、文章は省略しました。  実例①を見ますと、これは、実際にある高株価の会社五社を平均したものですが、株価が八千二円だそうです。これは一九九二年ですが、一株当たりの資本等の金額、資本及び資本準備金、これが六百六十円。そうすると、利益消却によるみなし配当所得は八千二円から六百六十円を引いた七千三百四十二円になります。仮に売った人が所得税率三〇%の納税者だったとします。各人の所得によって二〇%の人もあれば、三〇%の人もあれば、四〇%の人もありますが、この場合は仮に三〇%の人をとったのです。そうすると、利益消却による税金は、7342円×(30%-5%)、なぜ五%かというと配当控除があるからですね。そうすると千八百三十五円になります。つまり一株当たり千八百三十五円。一単位が千株ですから、この人は百八十三万五千円税金を払うことになります。  一方、取引取引をやった人は、キャピタルゲインであるということで、今の税制では八千二円の一%の八十円を払えばいい。だから、一単位の場合は八万円だけ払えばいいということになります。つまり、相対取引であるか公開買い付けであるか取引取引であるかによって、ある人は、今の税制の非常に資産者優位から、キャピタルゲインとみなされればごく安い安い税金で済む。そして、みなし配当所得と見られた人は、もう非常に重い、これで見ますと、二十五倍くらいの税金を取られる。  それで、この一番下の欄を見てください。  消却されなかった一株当たりのみなし配当所得というのがあって、これは売った者でない、何もしなかった株主株式が減ったことによって利益を得た。今も議論が出ておりましたが、例えば、一〇%消却された場合は、一株当たりのみなし配当所得は五円五十五銭ということで、それに対してみなし配当所得として税金がかかってくる。今度の法律では、それについて源泉徴収の義務だけは免除しましたが、税金だけはやはりかかってくる、こういうことになる。  私は、みなし配当所得に課せられるというのは当然のことであるということで、それについて大蔵省をとやかく言っているのではありません。しかしながら、同じ売買が、みなし配当所得とみなされるか、あるいは、通常の株の売買とみなされるかでかくも税金が違うということは、ある意味では資産課税がいかにでたらめであるかということを示していると思うのですね。  あなた方は、消費税がどうのこうの、益税がどうのこうのと言う前に、こういうものを是正して、どういう方法によってもそんな不公平がないというようにするのが当然じゃないですか。
  184. 大武健一郎

    ○大武説明員 ただいまの御質問に関しては、多分二つの点があるのだろうと存じます。  一つの点は、先生が御存じのとおり、みなし配当課税原則そのものを崩すことはできない、その中でどのような便宜的手法があるかということで考えているわけでございますが、その消却株式取得市場において行われる場合には、まさにその売り主が株式消却に応じるという認識を持つこと自体がまれであるということ。それから、市場取引の性格から消却株式等の持ち主の確定が困難であるということ。そのようなことから、利益消却のために会社取得された株式に対し、その譲渡段階でみなし配当課税を行うことが事実上困難であるということから、税制上の対応につきましては、今回の商法改正案も念頭に置きながら適切に対処するということになりますと、やはり先生言われましたように、譲渡益課税を行うこととならざるを得ないのではないかなというふうに考えております。  それから、もう一つの点として、それでは株式譲渡益課税の適否がいかがかというのが多分今の先生の主たる御質問の方になるのだろうと思います。  この株式譲渡益課税につきましては、先生の方が十分御存じのとおり、さきの抜本改正におきまして、原則非課税でありましたものを、今回、その意味では課税に移しまして一律二〇%の税率による申告分離課税と、事実的に譲渡代金の一%の課税による源泉分離課税の選択制とされたという経緯があるわけでございまして、この取り扱いにつきましては、税制調査会でもいろいろ御検討いただき、長期的には総合課税なりの道というようなことの検討があるわけでございますが、現在の状況から、納税者番号制度の議論等も留意しながらさらに検討すべき課題だとなっていることでございますので、長期的な課題になっているということでございます。
  185. 正森成二

    ○正森委員 時間が来ましたのでそろそろ終わりますが、念のために申しておきますが、私は、みなし配当課税をするななんて言っていないのですよ。その点についての今回の大蔵省の対応はおおむね妥当であるという見地から聞いているのです。  しかし、そうだとすると譲渡益課税と余りにも差があるのではないか。いいですか、選択制で一方の方法をとれば売買高の一%だけで済むのです。どんな貧乏人でも今消費税は三%かかるのです。ところが一方は一%だ。今度消費税は、それを七%、一〇%に上げようとする。そんなことでどうして国民が納得しますか。だから、そのことを言って、そんな間接税を上げろ上げろなどと言わないで、資産課税もきちっとしなければ国民は納得しないだろうということをこの機会に言っているのです。  それから、法務省の審議官に言っておきますが、あなたは先ほど同僚委員の質問に対して、千円で買ったものを持ち株会にそのときの値段五百円で売る、それはいい。それで、千五百円のときに千三百円で売っても、あるいは千円で売っても会社に損害を与えるわけじゃないから構わないみたいなことを言ったけれども、私の聞いているところではそういう意味のことを言われたけれども、それは、あなたは当然株価がある、非公開でない会社のことを言われたのだと思うのですけれども、それだったら、今度の商法やら証取法で決めている取引取引でも公開買い付けでも、そんな恣意的なことはできないのですよ。  あなたは、千円で買ったものを千五百円の値がついているときに千三百円で売ったって、会社はもうかるのだから損でないというようなことを言ったけれども、ようも法務省の役人ともあろう者がそんな大ざっぱなことを言うなと思う。その日の値段が千五百円なのにわざわざ千三百円だったら、得べかりし利益を二百円失うのですよ。それを、会社に損害をかけていないからいいなんて、そんなずさんなことを法務省の審議官が言っていいのですか。もってのほかじゃないか。第一、これは法の規定取引取引公開買い付け規定をないがしろにして、相対取引を持ち込むものじゃないか。しかも、会社に損害がないというようなことを勝手に決める。それが議事録に残って、そんなことを全国でやり出したらどうなるのです。取り消せ。
  186. 森脇勝

    ○森脇政府委員 先ほどの答弁が誤った御理解を与えるような発言であったとすれば申しわけないことをしたと思いますが、私が申し上げましたのは、公開されている株式について、従業員譲渡するために取得する場合には市場から買い入れをしなければならない、これはそのとおりでございます。そして今度は、その取得した株式使用人に対して譲渡するとき、これは当然に相対取引になるわけでございます。したがいまして、その場合に、市場価格で譲渡しなければならないという制約は課せられない、こういう意味のことを申し上げました。
  187. 正森成二

    ○正森委員 それだったら、いよいよもって重大ですね。そんなもの、持ち株会は、大体今なら十五日なら十五日に株式市場で買うということになっているのですよ。それが、その日が決まっておるから、価格が変動していろいろあれだから、会社が事前に買っておいて、玉がないとか、あるいは値段が変動するというような場合に備える、こうなっておるのです。そういうように言っておきながら、買うときはそれは市場で買うでしょうが、売るときは相対取引で自由に価格を決められるというようなことを今でもなお言っておるということになれば、それはもう、いよいよ持ち株会に対する株の売買の不公正さを天下に明らかにしておるようなもので、断じてこのまま済ますことはできませんね。  私の持ち時間は終わったけれども、こんなことで自分の質問を終わって、このまま採決なんというようなことはできないな。だから、一審議官の答弁じゃなしに、局長もいるし、それから何かニンジン云々と言った参事官もいるし、よく相談して態度を統一してもらわないと、そういうことがまかり通ったら、この自社株取得はますます不公正なものになる、こう思います。
  188. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 ただいま審議官が御説明申し上げましたとおり、会社取得した自社株を従業員持ち株会譲渡するという関係については、これは相対取引会社従業員持ち株会との契約に基づいての譲渡である、そういうことを前提として、法制審議会におきましても、これまでずっと審議をしてまいったわけでございますし、今回の改正法案もそういうことを前提にして、これはもちろん法律規定そのものにはあらわれておりませんが、そういうことを前提にしてこの制度を策定したものでございます。  そういうやり方の当否についてはいろいろ御意見があるかもしれませんが、法制審議会の審議、今回の法案の趣旨は先ほど審議官が申し上げたとおりであって、決して考え方に不統一があるものではないということを申し上げておきたいと存じます。
  189. 正森成二

    ○正森委員 局長がとんでもない答弁の裏書きをしたのですが、もしそうだとすれば、私は商法の二百九十四条ノ二の違反になる可能性が極めて高い。私が裁判長なら、もう間違いなく違反だといって判決を下すというように思わざるを得ないですね。急なことだから最高裁の刑事局長にはあえて質問をいたしませんが、そういうようなことで審議が行われてきたのなら、もう一層、今度の自社株取得はとんでもないことだということを申し上げて、私の時間が参りましたから、終わります。
  190. 高橋辰夫

    高橋委員長 これにて質疑は終局いたしました。  次回は、来る十日金曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十四分散会