○正森
委員 審
議官、一生懸命答えているのは顔を見ていたらわかるのですけれども、私の聞いた一番肝心なことには答えていないですね。だから、学校の成績でいえば、学校の先生としてはいい点をつけられないですね。厳しい先生だったら零点ということになるのですよ。
私が聞いたのは、エクイティーファイナンスの経済的な本質は何かということを聞いたのです。それは何かといえば、株を発行する会社によるキャピタルゲインの
取得なんです。いいですか、五十円の株が何で千円、二千円に上がるのかといえば、これは後で申します法人資本主義の需給
関係がタイトであるという結果にもよりますけれども、土地を持っておったら土地には含み益がある、あるいはさまざまな内部留保がある、それが反映されて、株の額面は五十円だけれども、あるいは五百円だけれども、これは千円で買っても値打ちがあるということで買うのですよ。これを
一般の株主がやれば、まさにこれはキャピタルゲインになるのです。そのキャピタルゲインを逆に株を発行している会社が獲得する、これがエクイティーファイナンスによる資本金を超える額なんです。これは経済学者なんかがちゃんと言っていることなんですよ。
だから、そういうことをやって非常に安い資金を獲得して、それで一生懸命設備投資をしてもうけようとしたけれども、バブルが破裂して、そしてCBにしろあるいはワラント債にしろ、自分が設定した価格よりはるかに株価が下がった。だから、そんなものはだれだって転換はしないし、新株を引き受けようとしない。だから今、劣後債などを発行して、普通の社債へどんどんかえようというので、資金コストが一%、二%から六%に上がって、それが企業の採算分岐点を上げているんでしょう。それが今の不況の複合不況たるゆえんなんです。だから、そういうことをやっておいて、それで困ったら今度はエクイティーファイナンスはやらないで、逆に株を自分がもうけさせたお金で回収する。何から何まで企業主権の考え方でこれをやっておるのです。
聞きますが、あなた方は何か、後で聞きますけれども、取引所を通じて企業は買い戻すのだというでしょう。企業は一体、エクイティーファイナンスをやって大もうけしたときの額で買い戻すのですか。それとも、今の下がった値段で買い戻すのですか。それは言わなくてもわかっている。今の価格で買うのでしょうが。そうしたら、一株八千円ぐらいでエクイティーファイナンスやっておいて、四千円で買い戻したらどうなるんですか。物すごく会社がもうかっていることになるじゃないですか。そういうことを公然と可能にするような
制度が、この自社株
取得なんです。
まだ言いましょうか。資料の四を見てください。資料の四は、これも宮崎さんの本から引いたんだけれども、九二年の三月ぐらいのケースかな、日経平均がちょうど一万九千三百四十五円。九二年三月末でしたが、そのときに、日本経済研究センター、これは住友系ですかな、住友系ではなかったかもしらぬな、自己資本比率の推計値を出しました。そうしますと、上から見ていただいたらわかりますように、自己資本比率というのは、国際決済銀行、BISで八%なければいかぬということになっているのでしょう。それが九二年三月には、ずっと見ていただきますと、ぎりぎり八%になっていますが、その
一つ右の一万七千円割れのケースということになれば、八%のBIS規制をクリアしているのは住友以外にないのです。ほかは全部八%を割っているのです。このときに経団連を初め財界が一番慌てて、公的資金を投入せよ、自社株買いを認めろ、こういう大合唱をやったのです。
今ここに、経団連の自社株
取得についての要望書を出した資料を持ってまいりました。これを見ますと、なるほどあなたが言っているように、一番最初は昭和四十三年から
平成四年三月十日まで、九回にわたって自社株についての要望を出しております。しかし、そのたびにその事由が違うのですよ。そして、まさに
平成四年三月十日というのは、このBIS規制をクリアすることもできない、そういうときに財界の利益から、公的資金を
導入せよということで福祉事業団などに株を買わせる、その資金をもっと出せという一方で、自社株買いをやってくれ、こう言ってきた。そのときの要望書の中にはこう書いてあります。
自己株
取得規制の緩和は、株主への利益還元の充実、
従業員持株
制度の運営の円滑化、ストック・オプション
制度の利用、余資のより適切な運用等のため、喫緊の課題となっている。とりわけ、我が国資本市場の活性化が緊急を要する重要課題となっている折、自己株の
取得は、流通株式の減少に伴う一株当たり利益の向上により、結果的に株主への利益還元となることを認識すべきである。
こう言っているのです。今あなたが言うたことはこの財界の見解ですよね。
そして、財界がなぜ
平成四年三月十日にこういうことを言うたかといえば、ここの資料に書いてあるように、株が大暴落をして我が国の主要な世界に冠たる企業がBIS規制をクリアすることができないというような
状況のときに、自社株を
取得して、余っている余資をそういう方へ突っ込めば、株数が減って、そして株の値段が上がってくるだろう、こういう要望から出ているのです。いいですか。だから、商法の自社株
取得の制限の撤廃というのは、単なる
法律問題じゃないのです。すぐれて財界の要望である景気対策であり、経済対策の一環であるということを
指摘しておかなければならないというように思うのですね。あなたはまだそこまで、見解の相違で思っておられないかもしれませんが、そういうように思うのです。
〔山本(有)
委員長代理退席、
委員長着席〕
そこで、私は、あす参考人が来られるからそこでも伺おうと思いますが、なぜ日本の株が三万八千円も九千円も、はね上がったかといえば、それは奥村宏教授なんかがよく言われておりますように、法人資本主義の結果ですね。
私の差し上げました資料でもわかりますように、個人株主はわずか二〇%にしか過ぎません。そして金融機関が四三%で、事業法人が三〇%を超えております。証券も入れればほとんど八割近い、そういう数字であります。そうなれば、株の需給
関係がタイトになるのは当たり前であります。そして、事業法人と金融機関は、今まで問題が出たように、相互の株の持ち合いによって、これは利益配当を受けることが目的じゃなしに支配証券であります。だから売らないんですよ。東証に聞いてもらってもわかりますけれども、最近は少し崩れて売られるようになったけれども、二、三年前までは総売買数のうち、法人はこれだけ持っているのに、売買回数では一割にいくかいかないかぐらいであります。そして、二〇%ぐらいの個人が売買をする。そうしますと、全体の株数は極めて少ないから、法人が買いに入って、そしてある程度売買が上がれば、それは物すごく需給
関係に影響するんですよ。これが日本の高株価の大きな原因だということは、学者に繰り返し
指摘されているところであります。
今度は、株式会社がおのれの利益でそれをやろうとしているのが、この自社株
取得の解禁じゃないですか。株の値が高いときはエクイティーファイナンスで大もうけをして、そしてバブルで崩れたら、今度は内部の金で株を支えるために買う、そんな勝手なことがありますか。そういうことでは、個人株主は株式市場から逃げ出す以外にはないというように言わなければならないと思います。
そこで、あなたのお顔を見ていると、大分それは立場が違うからな、まさか仰せのとおりですとも言われへんし、反対すればまたかみつかれるし、?りいところだと思うので、具体的な問題に移りますが、今同僚
委員も聞きましたが、利益消却の場合は配当可能利益の
範囲内でと、こう書いてありますね。そこでちょっと具体的に聞きますが、この配当可能利益というのはどういうことですか。それは
一般的には、これは法務省の答弁守備
範囲かもしらんが、普通は商法二百九十条の「利益の配当」のところに、「利益ノ配当ハ貸借対照表上ノ純資産額ヨリ左ノ金額ヲ控除シタル額ヲ
限度トシテ之ヲ為スコトヲ得」というように書いてありますが、このことを指しているんだと言われていますが、そういうことですか。