運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1994-06-07 第129回国会 衆議院 逓信委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年六月七日(火曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 高橋 一郎君    理事 佐田玄一郎君 理事 自見庄三郎君    理事 森  英介君 理事 岡島 正之君    理事 河村たかし君 理事 田中 昭一君    理事 遠藤 乙彦君       荒井 広幸君    川崎 二郎君       岸本 光造君    斉藤斗志二君       塩崎 恭久君   田野瀬良太郎君       林  幹雄君    谷津 義男君       山下 徳夫君    青山  丘君       海江田万里君    吹田  愰君       松沢 成文君    今村  修君       大木 正吾君    横光 克彦君       吉岡 賢治君    赤羽 一嘉君       高木 陽介君    小沢 鋭仁君       中島 章夫君    矢島 恒夫君  出席国務大臣       郵 政 大 臣   日笠 勝之君  出席政府委員       郵政大臣官房長   木村  強君       郵政省放送行政       局長        江川 晃正君  委員外出席者       外務大臣官房海       外広報課長     西林万寿夫君       参  考  人       (日本放送協会       会長)       川口 幹夫君       参  考  人       (日本放送協会       専務理事)     海老沢勝二君       逓信委員会調査       室長        丸山 一敏君     ――――――――――――― 委員の異動 六月六日  辞任        補欠選任   荒井 広幸君     村田敬次郎君   川崎 二郎君     江藤 隆美君   岸本 光造君     中山 太郎君   斉藤斗志二君     中尾 栄一君  田野瀬良太郎君     桜井  新君   虎島 和夫君     松岡 利勝君   矢島 恒夫君     吉井 英勝君 同日  辞任        補欠選任   江藤 隆美君     川崎 二郎君   桜井  新君    田野瀬良太郎君   中尾 栄一君     斉藤斗志二君   中山 太郎君     岸本 光造君   松岡 利勝君     虎島 和夫君   村田敬次郎君     荒井 広幸君   吉井 英勝君     矢島 恒夫君 同月七日  辞任        補欠選任   川崎 二郎君     塩崎 恭久君   虎島 和夫君     谷津 義男君   木村 守男君     松沢 成文君   山崎  泉君     今村  修君   神崎 武法君     赤羽 一嘉君   小沢 鋭仁君     中島 章夫君 同日  辞任        補欠選任   塩崎 恭久君     川崎 二郎君   谷津 義男君     虎島 和夫君   松沢 成文君     木村 守男君   今村  修君     山崎  泉君   赤羽 一嘉君     神崎 武法君   中島 章夫君     小沢 鋭仁君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  放送法の一部を改正する法律案内閣提出第七  五号)      ――――◇―――――
  2. 高橋一郎

    高橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出放送法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。日笠郵政大臣。     ―――――――――――――  放送法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 日笠勝之

    日笠国務大臣 放送法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、放送による情報国際交流促進するため、日本放送協会がその放送番組外国において受信されることを目的として他人委託して人工衛星無線局により放送させる業務を行うこととするとともに、一般放送事業者である委託放送事業者がその放送番組国内及び外国において受信されることを目的として他人委託して人工衛星無線局により放送させる業務を行うことができることとし、あわせて、有料放送に係る規制を合理化するため多重放送についてはその契約約款認可制から届け出制に改める等の改正を行おうとするものであります。  次に、法律案概要を申し上げます。  第一は放送の定義に関する事項についてであります。  日本放送協会委託により、その放送番組外国において受信されることを目的としてそのまま送信する放送であって、人工衛星無線局により行われるものを受託協会国際放送と、また、他人委託により、その放送番組国内及び外国において受信されることを目的としてそのまま送信する放送であって、人工衛星無線局により行われるものを受託内外放送ということとしております。  第二は日本放送協会に関する事項についてであります。  日本放送協会は、電波法規定により受託協会国際放送をする無線局の免許を受けた者または受託協会国際放送をする外国無線局を運用する者に委託してその放送番組放送させる委託協会国際放送業務を行うこととするとともに、日本放送協会は、放送番組及びその編集上必要な資料を外国有線放送事業者提供することができることとしております。  第三は一般放送事業者に関する事項についてであります。  受託内外放送委託して行わせる委託放送事業者は、その放送番組編集に当たっては、国際親普及び外国との交流が損なわれることのないように、当該放送放送対象地域である外国地域の自然的経済的社会的文化的諸事情をできる限り考慮しなければならないとしております。また、受託内外放送受託国内放送とみなし、国内放送放送番組編集等に関する規定を適用することとしております。  第四は有料放送に関する事項についてであります。  有料放送に関する規定は、国内に設置する受信設備により有料放送役務提供を受ける者との契約関係等に適用することとしております。また、有料放送事業者多重放送である有料放送を行う場合の国内受信者提供する当該有料放送役務の料金その他の提供条件に関する契約約款については、認可制から届け出制に改めることとしております。  その他、所要の規定の整備を行うこととしております。  なお、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  4. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 高橋一郎

    高橋委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本放送協会会長川口幹夫君及び日本放送協会専務理事海老沢勝二君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 高橋一郎

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  7. 高橋一郎

    高橋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森英介君。
  8. 森英介

    ○森(英)委員 自由民主党の森英介でございます。  私は、本日の冒頭の質問となりますので、総論的なところから始めさせていただきたいと思います。  まず、国境を越えるテレビ放送は、ヨーロッパ地域などで既に活発に行われております。また、アジア地域でも、欧米アジア太平洋地域放送機関放送を行っておりまして、現に日本の上空にもこれらの電波が飛来しているところは、皆さんも御存じのところでございます。  今回の法改正は、このような現状を踏まえたものと推察されるわけでございますけれども法改正のポイントを簡単に説明していただきたいと思います。
  9. 江川晃正

    江川政府委員 先生指摘のとおり、欧州地域ではアストラ衛星とかユーテルサット衛星などを利用したり、またアジア地域でもアジアサット衛星等を利用して、映像放送海外発信が実現しているところでございます。社会経済国際化が急速に進展している今日、我が国からの情報海外発信力をより一層強化することが重要な課題だと考えております。  今回の法改正は、そういう中に立ちまして、一つ我が国からの情報海外発信力を強化し、情報国際交流促進に資するため、放送による映像情報海外発信の継続的な実施ということと、二つ目には実施主体多様化を図るための制度的枠組みを整備しようとするものでございます。  具体的には、映像による国際放送を行うことをNHK必須業務とすることによって、NHKによる映像情報海外発信継続的実施を確保するとともに、民間事業者外国に向けた放送を行うことを可能とすることによって、実施主体多様化を図り、NHK及び民放併存体制によって多彩な映像情報海外発信が実現されることを主たる目的としているところでございます。
  10. 森英介

    ○森(英)委員 わかりました。  続きまして、そういうことで、日本から外国向けテレビ放送を出していくためには、外国合意も必要ではないのでしょうか。例えば、アジアの一部の国では映像国際放送を禁止しているというふうにも聞いておりますが、アジア向け映像国際放送を行っても問題はないのでしょうか。
  11. 江川晃正

    江川政府委員 御指摘のとおりでございまして、例えばマレーシアとかシンガポールなどでは、一般人による映像国際放送受信を禁止するなど、アジア諸国においても、その国の主権により、国内での受信規制措置というのがとられているところでございます。  日本からアジアに向けて放送実施する場合には、主として混信防止観点から、周波数等に関する技術的な国際調整というのを行う必要がありますが、外国に向けた放送実施そのものにつきましては、技術的な調整さえ行われていれば、日本判断により実施することは可能ではあります。  外国に向けた放送効果を最大限発揮するという観点からは、日本からの放送相手国において円滑に受け入れられるような環境を整備することが重要となります。このため、ことしの四月に、アジア太平洋電気通信共同体、APTと申しておりますが、会議日本国で開かれまして、国境を越えるテレビに関して自由な情報流通促進するようアジア太平洋地域での番組ガイドライン策定等について合意がなされました。我が国としましても、アジアに向けた日本からの映像情報発信が円滑に行われるよう、コンセンサスの形成に向けて最大限努力していこうと考えているところでございます。
  12. 森英介

    ○森(英)委員 せっかくのよい企てが逆効果にならないように、くれぐれも慎重に進めていただきたいというふうに思います。  次に、今回の法改正で、一般放送事業者、すなわち民放が、日本近隣諸国を同時に対象とする放送ができることになるそうでございますけれども、なぜ民放については日本外国を同時に対象とする放送のみを制度化したのか、この辺について説明をお願いしたいと思います。
  13. 江川晃正

    江川政府委員 外国に向ける放送発信というのは、民放にとりましては全く新しい分野でございまして、現時点では、日本からの放送が諸外国でどの程度受け入れられるかということについては、かなり未知数の部分がございます。したがいまして、有力な広告市場あるいは有料放送市場である日本サービス対象エリアから除外して放送を行っても、商業ベースで採算がとれるかどうかとなると相当厳しいという予想がございます。民間においても、当分の間は需要が具体化しないんじゃないかなというふうに考えられるところでございます。それから、CS放送事業者需要につきましては、国内外国あわせたものについて希望があるというのが実態だ。そこで、今回の改正では、当面具体的な需要が想定される日本外国を同時に対象とする受託内外放送のみを制度化したところでございます。  それで、民放による専ら外国に向けた放送制度化、これは将来の課題になるわけでございますが、これについては、受託内外放送実施状況や諸外国における日本放送受け入れ状況等を今後よく把握し、それらを踏まえた上で、どうやっていくべきかということについて検討を継続していきたいと考えているところでございます。
  14. 森英介

    ○森(英)委員 受託内外放送についてもう一つ質問させていただきますが、各国生活習慣ですとか文化、風土あるいは宗教など大変まちまちで、この場合の放送番組規律はどういうふうになるのでしょうか。国内番組と同じ規律でいくのでしょうか。この辺についてお伺いしたいと思います。
  15. 江川晃正

    江川政府委員 国内外国の双方を受信目的とする放送でございますから、まず国内放送向けとしましては、その性格から、現行の国内放送放送番組編集に関する規律がそのまま適用されます。さらにもう一方、外国向けにも出ていく放送としての性格がございますから、その放送実施によって国際親普及び外国との交流が損なわれることのないように、外国の経済的とか社会的とか自然的とか諸事情をできる限り考慮しなければならないこととしているところでございます。
  16. 森英介

    ○森(英)委員 次に、今回の法改正で、NHKについては、委託協会国際放送業務という形で衛星による国際放送が本来業務と位置づけられておりますけれども、本来業務となると、NHKはどのような義務を負うことになるのでしょうか。また、本来業務とした理由を伺いたいと思います。
  17. 江川晃正

    江川政府委員 NHKは、従来から実施しております短波での国際放送とあわせまして、委託して衛星により国際放送を行うことを継続的に実施していくということが必要となります。  また、NHK必須業務と位置づけました理由は、映像国際放送が、従来の短波国際放送と比べても今後有効な役割を果たすメディアとして大いに期待されるということが一つ。もう一つ、国際的にも大きな影響力を有し得るものでありますから、最初に申し上げましたように、NHK必須業務という位置づけをしたものでございます。
  18. 森英介

    ○森(英)委員 次に、今度はNHKお尋ねいたします。  今回の放送法改正全体につきまして、NHKとしてはどのようにお考えになっていますでしょうか。
  19. 川口幹夫

    川口参考人 NHKは、これまでも、国際社会における日本理解促進をするために、国会等の論議を踏まえまして、全国民的な課題として、短波国際放送拡充ということのほかに、映像情報内外発信拡充というところに積極的に取り組んでまいりました。今回の放送法改正によりまして、放送法上のNHK国際放送という名前の上に、従来からの短波放送のほか、映像による放送も含まれるということがはっきりいたします。海外視聴者に向けた映像国際放送実施がこれで可能になるというふうに見ておりまして、これはまことに時宜を得た法律であろうかというふうに思います。  ただ、NHKとしてちょっと一言申し上げておきたいのは、制度上、NHK映像国際放送短波と同様に郵政大臣実施命令がかかるというふうなことになる点につきましては、映像発信には、短波のような送信自由の国際ルールが存在しません。それに、映像国際放送命令放送がかかることで、国営放送ではないかという誤解を受けて、アジア諸国を初め海外諸国からの反発とかクレームを招く懸念があります。映像国際放送の円滑な実施に支障を来すようなおそれがあるというふうなことも想像されます。  映像国際放送への命令放送の導入に当たりましては、将来にわたって、運用上にくれぐれも慎重な配慮がなされるように強く要望したいところでございます。  この法改正を受けまして、NHKとしては、映像国際放送にどのように取り組んでいくか、これからの検討課題でございますが、映像国際放送実施に当たっては、相手国国民感情社会体制あるいは生活習慣倫理観等々に最大限に配慮をする必要があります。また、映像国際放送国内視聴者受信料を充てるということは、おのずと限度があります。したがいまして、現在行っている衛星による海外への番組提供あるいは短波国際放送との関係も踏まえながら、可能な範囲で段階的に強化をしていく、そういう実施の仕方をしてまいろうかと思っております。
  20. 森英介

    ○森(英)委員 今のお話に基づきまして、ぜひ積極的、前向きにお進めいただきたいというふうにお願いさせていただきます。  また、通信衛星が発達いたしまして世界情報が瞬時にして地球を駆けめぐる時代になっておりまして、映像情報海外発信の果たす役割は極めて大きいと考えます。NHKはこれまで短波による音声国際放送のほか海外への映像発信に力を注いでこられたことはよく認識しておりまして、今回の法改正映像国際放送が可能になるわけでございますけれども映像国際放送ということになると、これまでNHKが行ってきたこととどこがどのように違ってくるのか、例えば現在欧米で行われておりますテレビジャパンですとか、それからNHK映像国際放送とどこがどう違うのか、この点についてお尋ねをいたします。
  21. 海老沢勝二

    海老沢参考人 映像による国際放送といいますのは、直接一般視聴者といいますか、個別受信ができるようなものを我々は映像国際放送と言っております。それから、もう一つ映像による海外発信ということがあります。これは番組提供するといいますか、配信するだけのもの、つまりNHK編集権とか編成権がないものを指しております。そういう面で、これまで先生承知のようにアメリカヨーロッパ現地法人があります。その現地法人に対しましてNHK番組を配信しております。  今度の放送法改正によりまして、映像による国際発信が認められることになりました。それによりますと、今度はノンスクランブルといいますか、CMなしの、NHK自分で金を負担してやるいわゆる国際放送ができるようになるということであります。そういうことで、私どもとしては今実績を上げておりますアメリカヨーロッパに対して映像国際放送をしたい、そういうふうに考えております。
  22. 森英介

    ○森(英)委員 ここで実際に行われます映像国際放送はどのような内容になるのでしょうか。例えば外国向けの場合、番組は新たに制作されるのか、あるいはすべて二カ国語放送にされるのか、そういった具体的な内容について少しお尋ねをしたいと思います。
  23. 海老沢勝二

    海老沢参考人 放送内容、規模というのはこれから具体的に検討しなきゃならない課題だと思っております。私ども考えておりますのは、アメリカヨーロッパに対して一日三時間から四時間の国際放送をしたい、内容につきましてはニュースニュース関連報道番組、あるいは娯楽といいますか、紅白歌合戦とか、そういうような娯楽あるいは日本のスポーツ、文化、さらに、海外では在留邦人がたくさんおりますので、そういう人たちの子弟、いわゆる子供さんたちのための教育番組あるいは小さい子供さんたちのための幼児番組、そういうものをいろいろ総合しながら番組放送したいと思っているところであります。  ただ、これは主にNHKが無料でCMなしでやるわけでありますけれども、そのほかに、現地法人NHK番組提供して、現地法人自分たち判断といいますか、編集権編成権有料による放送もあります。そういう面で、今このテレビジャパンNHK国際放送合わせて十一時間から十五時間、さらにそれをふやすふうに今考えているところであります。
  24. 森英介

    ○森(英)委員 また、アジア地域向け映像国際放送も重要であると考えるわけですが、アジア地域の一部には過去の日本に対する警戒感もあり、映像国際放送日本から行う場合にはそれなりの配慮も必要ではないかと思われます。このことについてNHKはどうお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。
  25. 海老沢勝二

    海老沢参考人 アジア一つなりという言葉がありますけれども先生先ほど御指摘のように、アジア文化的、宗教的、人種的、社会制度的あるいは倫理観価値観等が非常に多様でございます。そしてまた国境を越えるテレビのありようといいますか、発展状況なりあるいは受けとめ方、それぞれ多様であります、まちまちであります。このアジアという非常に多様な国々を相手にするわけでありますから、そういう面で各国国情なりあるいは国民感情を十分に配慮しながら対応しなければならないと思っております。  そういう面で、私どもは今アジアに対しては、ニュースなりそういうものを中心に、いわゆる番組配信という形でアジアの十四の国・地域の二十五の放送機関に「トゥデイズ・ジャパン」とかあるいは「ジャパン・ビジネス・トゥデイ」とか、衛星放送でやっております、五つの海外発信番組という言葉を使っておりますけれども、いわゆる英語版ニュースあるいは夜七時のニュース、これは二カ国語、英語日本語でやっておりますけれども、そういう番組を一日二時間程度提供しております。そのほか、関連団体を通じて十五の国・地域に年間一千本以上の番組提供あるいは販売をしております。  そういう面で、これまでもアジアに対しては日本国情を正しく伝えるようなニュースあるいは番組提供しておりますけれども、今度の改正を機会に、さらにこういうアジアに対する海外への番組発信というものを拡充強化していきたいと思っております。できれば、この一日二時間程度のものを三時間なり四時間にふやしていきたいというふうに考えております。そういう段階を経ながら、近い将来には、トラポンの性能のいいものを借りるなり、そういうものをして本格的な映像国際放送を進めていきたいと思っております。それには、先ほど会長からも答弁がありましたように、各国国情なり国民感情を十分に配慮しながら段階的に進めていきたいというふうに考えております。
  26. 森英介

    ○森(英)委員 何しろ初めてのことですから、いろいろ考えていることと実際と違ったようなことがあると思いますし、始めるに先立っての環境づくりと、それから始めてからの非常に慎重な配慮をくれぐれもお願いしたいというふうに思います。  最後に、NHKは、これまで短波による国際放送拡充には大変精力的に努めてこられたわけでございますけれども平成六年度では、一日の放送時間が六十五時間になったというふうに伺っております。これは世界主要国水準にもう達したというふうにも伺っているわけでございますけれども映像国際放送が今後年を追って拡充されていきますと、この短波国際放送についてはどのようになさるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  27. 海老沢勝二

    海老沢参考人 今、森先生から、短波による国際放送を非常に充実したというお言葉がありましたけれども、去年の平成五年度から平成六年度は六十時間から六十五時間にふやしました。特にアジア近隣諸国言語による放送を多くしたということであります。今のところ、この国際放送に国の交付金を十八億円余りいただいております。と同時に、NHKから八十億程度、合わせて九十数億、百億近い金をこれに投入しております。そういう面で、現在、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、ドイツ、インド等のその下の第九位まで、時間数、言語数ともになりました。御承知のように、世界の国の半数、九十カ国が短波による国際放送をやっています。そのうち、NHKがフランスを抜いて第九位ということにまでなってきております。  そういう面で、現在私どもの推定では、世界各国でこのラジオ日本という短波による国際放送は千五百万人から千六百万人の方に聞かれているというふうに推定しております。そしてまた、このラジオ日本の信頼といいますか、期待というのは非常に大きいものがありますので、やはりこの短波による国際放送も引き続き続けていかなければならないと思っております。ただ、これ以上どれくらいふやすかはまだこれから検討しなければならぬと思いますけれども、今の水準を下げることはしないように、できるだけ充実する方向で進めていきたいと思います。  ただ、これから世の中、国際情勢も変わり、映像による国際放送がさらに拡大すれば、映像と音声による国際放送を総合的に勘案するといいますか、見直していかざるを得ないのではなかろうかと思っております。いずれにしても、各視聴者の反応なりあるいは国際情勢を見ながら、最終的には結論を出したいと思っております。
  28. 森英介

    ○森(英)委員 最後に、本法案の趣旨が生かされて、これまた日本のため世界のために役立ちますよう、郵政省並びにNHKの御努力をお願いして、質問を終わらせていただきます。
  29. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、自見庄三郎君。
  30. 自見庄三郎

    ○自見委員 放送法の一部を改正する法律案について、基本的な部分は今、森英介代議士に質問をしていただいたわけでございますが、私も若干質問させていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  こういった国際放送、今まで短波でやっておりまして、短波ではきちっとある程度国際環境といいますか、合意と申しますか、そういったものが調っていたわけでございますけれども映像による国際放送と申しますか、映像国際放送に関しては、まだ世界的な合意が成り立っていないということでございまして、ECだとか、一部では合意が成り立ったところもあるわけでございますが、言うなれば未開発、未開拓の分野、未知の分野に踏み出すのだということが今さっきの討論の内容であったというふうに思うわけでございます。  私、こういった海外放送と申しますか、国際放送をする目的は二つあると思っております。  一つは、もう御存じのように、日本を正しく理解をしていただくということでございますし、二点目は在留邦人と申しますか、私もしばらくアメリカの方で生活をしたことがございますが、やはり今は変わっておりますが、まさに大変やはり日本国からの情報に飢えているという状態でございました。  私も、しばらく外国で生活させていただいたときに、十五、六年ぐらい前ですから、当時はまだこういったテレビだとかラジオとかございませんから、三日おくれ四日おくれの新聞が届いたのを本当にむさぼるように読む、あるいは時には週刊誌、月刊誌を家庭から送ってもらいまして、それを本当にむさぼるように読んだ私自身経験があるわけでございます。  そういった在留邦人の方々へ今大変日本国国際化につれまして六十万人に近い方が海外で暮らしておられる。多分六十万人だったと思いますが、そういった中でやはり在留邦人に正しい情報を伝えさせていただく、この二点にあるのではないかというふうに私は思うわけでございます。  ひとつ、この放送法改正をいたしまして、NHK、また一般民放の方々、あるいはまた特に郵政省、こういった時代でございますから、ぜひそういった時代の要求に合った、今、森先生の質問にもございました、こういった趣旨は大変正しいことでいいことだと私は思っておりますから、しっかりやっていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  それでは、NHKにお聞きをしたいのですが、今回の法改正によって日本からの映像国際放送が可能になるわけでございますが、この法改正が成立して、この改正に基づく映像国際放送が可能になれば、NHKは、今さっきのお話にも一部出ておりましたが、いつから具体的に始める予定であるかということを聞かしていただきたいと思います。
  31. 海老沢勝二

    海老沢参考人 今のところ、平成七年度、来年度からアメリカヨーロッパ映像による国際放送実施したいと思っております。  今のところ、内容、規模等は、先ほど森先生に答弁しましたようにまだ正式には決まっておりませんけれども、三時間、四時間やりたいというふうに考えております。
  32. 自見庄三郎

    ○自見委員 地域的には欧米向けとアジア向け、こういうことになるわけでございますが、最初にまず欧米向けの放送をやってみよう、こういうお考えでございますか。
  33. 海老沢勝二

    海老沢参考人 先生御案内のように、三年前から、アメリカヨーロッパ現地法人がありまして、そこでNHK番組を配信、提供してテレビジャパンという形で日本国情なり日本文化等を伝えているわけでありますけれども、今度の法改正によって本格的な映像国際放送ができるということでありますので、私どもは、まずこの二つの現地法人業務委託して放送をお願いしようということであります。  それから、だんだん拡大して、できれば早くアジアに対しても映像による国際放送をしたいと思っているわけでありますが、アジアについては、先ほど答弁しましたように、とりあえず今やっております映像によるいわゆる海外配信、各放送機関に対する配信をさらに強化して、放送機関、これからアジア各国もCATVが普及の速度を速めるというふうに聞いております。そういうCATVの配信、あるいはホテルなり、在留邦人がたくさん住んでいる地域等にそういう受けの受信装置をつけてもらうなどして、そういうところにも配信して、とりあえずそういう配信業務をさらに強化拡充したい、その後に、各国事情国民感情等も勘案しながら慎重に国際放送を進めていきたい、そういうふうに考えております。
  34. 自見庄三郎

    ○自見委員 まず、テレビジャパンの事業、アメリカヨーロッパでやっておられるということでございますから、それを拡充すると申しますか、それを活用すると申しますか、そういった方法でやりたいという話でございました。  今さっきからもう論議に出ておりますけれども、特に映像国際放送に当たりましては、相手国国民感情社会体制生活習慣倫理観などを最大限に配慮する必要がある、こういうふうに思います。  所変われば品変わると申しまして、我々では当たり前の常識のことが、外国人にとっては非常に奇異に映るということがよくあるわけでございますね。私も大学生のころ、留学生がおられまして、東南アジアから来た留学生でございましたが、一番びっくりしたことはおふろに入ることですね。我々も学生時代、皆様方御存じのように、銭湯なんかに行きました。あれが本当に屈辱的だったという話を聞きまして、また、我々は当然刺身を食べますが、刺身を出されたら、これくらい嫌なことはなかったという話を聞きまして、所変われば品変わる、特に宗教、倫理観、伝統が変わりますから、日本人の社会では当たり前と思ったことが大変相手の国にとっては当たり前でないということは、まさに国家が多様、特にアジアの場合、宗教あるいは社会、政治、いろいろ非常に多様性があるということでございますから、くれぐれもそういったところに配慮をして番組を編成していただきたいと思います。これはもう注文でございますから、答弁はよろしゅうございます。  それでは、放送法改正の中で、実施命令、今さっきから少し出ておりますが、そのことについてお聞きしたいわけでございますが、短波国際放送については、郵政大臣実施命令が出され、そのための交付金として、今さっき海老沢専務理事から、十八億でしたか、出ているということでございました。このことについては、先般逓信委員会でNHK予算で審議をさせていただいたところでございます。  今回の法改正により、制度上は映像国際放送に対しても実施命令が出せるように、当然法律改正上はなったわけでございますので、映像国際放送に対して実施命令が出された場合の問題点を含めて、NHKとしてはどう考えるかということですね、まずNHK側から御意見を聞きたいというふうに思っております。
  35. 川口幹夫

    川口参考人 先ほども簡単にお答えしましたけれども、これまでは短波国際放送につきましては郵政大臣実施命令が毎年出されております。それに伴って、NHK交付金を受領し、短波放送をやっております。  この短波による国際放送につきましては、実は世界的な合意があるわけでありまして、各国放送機関は、定められた周波数を用いて国境を越えて自由に放送ができるということになっております。そして、短波国際放送実施している各国放送機関の大部分が公的資金というものを財源にしてやっております。したがいまして、現在NHKが国から交付金を受け取っても、そのことについて不都合だとか、それは困るとかいうふうな議論は全くございません。  ところが、一転して、映像国際放送につきましては、短波のような世界的な合意がまだできておりません。そして、映像国際放送受信を受けてはいけないんだということを決めているところもあります。それはマレーシアとかシンガポールなどであります。また、各国放送機関による映像国際放送の形態とか財源もさまざまでございます。  こういう時期に、映像国際放送に対して国からの実施命令が出されて、そして国から交付金を受け取る。そうしますと、受け取る側は、外国人の方は、これは日本国営放送ではないかというふうなことを考える、そういう誤解をする。そして、アジア諸国を初め諸外国から反発やクレーム等がつくおそれがございます。それは映像国際放送の円滑な実施に支障を来すおそれがあるのではないか、私どもはそのことはいささか危惧をしております。したがいまして、映像国際放送については、これはNHKの自主業務として実施していった方がいいのではないか、こう考えております。  映像国際放送への命令放送の導入については、将来にわたって運用上にくれぐれも慎重な配慮がなされるように強く要望をしておきたいところでございます。
  36. 自見庄三郎

    ○自見委員 今度は郵政省にお聞きをしたいわけですが、今そういうNHK考えでございますが、まず確認です。  当たり前のことですが、NHK国際放送については郵政大臣による実施命令規定があるが、今回の委託協会国際放送業務についても実施命令を行うことができることとしているのかどうか、確認でございます。
  37. 江川晃正

    江川政府委員 委託協会国際放送業務につきましても、実施命令を行うことができるということにしてございます。
  38. 自見庄三郎

    ○自見委員 そうしますと、法制上はこの実施命令、できるということでございますが、今NHK会長からるるこのことにつきまして御意見があったわけでございます。  そうしますと、今の中でも大変大事なところは、短波の場合は国際的ルールがある、ですから交付金を十八億もらってやっておるけれども、国際映像の場合、まだそういった国際的な合意がなされていないから、この映像国際放送命令放送がかかることで国営放送との誤解を受けると、非常に各国との関係でも難しいことになるのではないかということでございますから、実際法律があっても、この映像国際放送への命令放送の導入については、将来にわたり運用上くれぐれも慎重な配慮がなされるように強く要望するということでございますね、今NHK側からあったわけでございます。  それで、そういった趣旨でございますが、郵政省としては、委託協会国際放送業務に関する実施命令をすぐに行う考えなのかどうか、このことについてお聞きしたいと思います。
  39. 江川晃正

    江川政府委員 NHKとしましても、この新しく設けます委託協会国際放送業務実施命令を行うことのできる枠組みを設けることは、それはわかったということになっているわけで、それの具体的運用を過たないようにしようというのがNHK及び郵政省の議論した、現在得ているコンセンサスでございます。  その意味では、この業務はまだ実施もされていないわけでございますから、とりあえずはNHKの自主業務として実施をしていただくことを期待しておりまして、郵政省としましても、当面その状況を把握するということに努めてまいりたいと思います。  くれぐれも、文化摩擦、文化侵略とか、そういうようなことにならないような運用の仕方を自主放送の中においてもやってもらいたいし、我々もそういう配慮で対応していきたいと考えているところでございます。
  40. 自見庄三郎

    ○自見委員 局長も今、そういった運用上くれぐれも慎重な配慮をしていきたい、こういうことでございましたが、逆に、当面委託協会国際放送業務に関する実施命令を行わないとすればということだったと思いますが、どのような状況になったときに実施命令を行おうと考えているのか。これは郵政省に質問でございますけれども、当面は当然そういった実施命令は出さない、できるだけ慎重な配慮をするということをさせていただきたいということがNHKの方からあって、それに対して郵政省もしっかりその点に対しては十分な慎重な配慮をするという答弁でございましたが、逆に、そういったことになれば、どのような状況になったときに実施命令を行うことになると考えていますかという質問でございます。
  41. 江川晃正

    江川政府委員 この新しい業務は、長年の実績を持ちます短波国際放送と異なりまして、新しい実績のない分野でございますから、ただいまの先生の御質問の、国が命令により実施させるというその必要性の判断を行うに当たりましては、NHKの自主的な当該業務実施状況、具体的に申しますと、受信状況でありますとか、視聴者からの反応であるとか、実施に要する費用とか、そういったいろいろなものを把握し、また諸外国による映像放送発展状況とか国際情勢、あるいは短波との役割分担など、いろいろと考えていかなければならない、そう考えております。  そのため、とりあえずはNHKの自主的な当該業務実施状況を見守っていこうと考えておりまして、ただいま先生から、いつごろどうなのかということにつきましては、そのような事情が明らかになって判断をさせてもらいたいと思いますので、今ここでにわかに実施命令の時期とか是非を申し上げることは大変困難で、御了解いただきたいと思います。
  42. 自見庄三郎

    ○自見委員 今局長の答弁でも、NHKの自主業務として見守っていくつもりだ、こういうことでございますから、ぜひ放送の基本的なかかわり方というのは、当然報道の自由ということも大変貴重な価値としてあるわけでございます。同時に、公共放送でございますから、こういった接点があるのだろう、こう思うわけでございますけれども、私から今さっき申し上げました、NHKの自主業務としてできるだけ自主性を重んじるということでやっていっていただきたいと強く要望をさせていただきます。  それから、映像国際放送短波よりもはるかにお金がかかる。短波でも十八億、NHKが出して合計百億近いお金がかかっているということも、今さっきも海老沢専務理事の答弁にあったわけでございます。当面はアメリカヨーロッパということでございますが、将来この映像国際放送は規模が拡大するし、また私は拡大せねばならない、こういうふうに思っておるわけでございますけれども、また内容も漸次充実させていかねばならない、こういうふうに思うわけでございます。NHKは基本的に受信料で運営しておられるわけでございますが、受信料だけでやっていけるのかどうかという問題について、NHKの方に意見を聞かしていただきたい。
  43. 海老沢勝二

    海老沢参考人 先生から、映像による国際放送、どのくらいの経費がかかるのか、そしてNHK受信料の負担にたえられるのかという御質問でございます。来年、平成七年度の映像による国際放送アメリカヨーロッパでやりますけれども、これはきちっとした数字は出ませんけれども、私の見積もりでは、十数億から二十億程度のお金がかかるだろうというふうに見ております。それをさらにアジア等に拡大していきますと、プラス十億前後の費用がかかるというふうに考えております。  遠い将来でございますけれども、やはり衛星放送のといいますか、通信衛星の技術の発達によっては、全世界をカバーするような二十四時間のネットワークを組むべきだろう、それが理想的な映像による国際放送だろうと思っております。この二十四時間による全世界をカバーする本格的な衛星放送時代になりますと、やはり百億以上の費用がかかるだろうと見ております。  ただ、私ども当面は、NHKの地上波、総合、教育の二波、それから衛星第一、第二放送、合わせて四波の中から世界各国におります在留邦人の皆さんあるいは旅行者あるいは日本国情を理解してもらうための外国の方々、そういう人たちに合うような番組を選択して、今の放送の中の再送信、再放送という形でやっていきたいと思います。これをさらに各国国情に応じたような独自の番組を制作したり、あるいは二カ国語なり、いろいろな言語の吹きかえなりやっていきますと、かなりの費用がかかります。そういう面で、二カ国語放送あるいは多言語放送あるいは独自番組の制作等をやっていきますと、これはかなりかかりますので、その辺はこれから段階的に放送する中で考えていきたいと思っています。  そういう面で、どの辺が受信料負担の限界かということになりますと、なかなか難しい問題がありますが、今音声が百億かかっておりますので、その辺との兼ね合いあるいは国民の反応、その辺を見ながら、これから慎重に考えなきゃならぬだろうと思っておるところであります。
  44. 自見庄三郎

    ○自見委員 将来国際映像放送拡充していって、二カ国語放送なんかも拡充していきたいということでございます。バイリンガルと申しますか、二カ国語放送というのは、我々も英語番組を見まして、大変助かるわけでございまして、逆に相手の国の方も、日本語で聞いてもなかなかわからないけれども、それが英語だとかあるいは中国語だとかいろいろなものに翻訳されていけば、また見ていただく方も大変ふえるし、見た人も自分の国の言語でございますから非常に印象も強くなる、こういうふうに思うわけですね。  今さっきから、映像国際放送に関する実施命令についてはいろいろな御意見があって、私もぜひこれは慎重にしていただきたいということを強く要望させていただいたわけでございます。短波の場合は交付金という形で十八億のお金が出ておりますが、映像国際放送では、やはりそういった事情もあるから、法律のスキームはあっても、交付金という格好で映像国際放送にお金を渡すということは、私はにわかには賛成できないということでございます。  しかし一方、今言いましたように、地域的な対象が広まれば規模や言語数などは大変ふえるわけでございますから、多額の経費がかかってくるということでございます。特に二カ国語に訳すところには非常に専門家が要りまして、大変経費がかかるところだというふうに私はお聞きをしておるわけでございます。命令放送交付金という形ではなく、公的資金で、例えば今言いました外国版をつくるためのそこの部分ですね、二カ国語に翻訳をしたりするところに助成金を出していただくとかいうふうな方策も、将来考えていただければいいのではないか、こう思うわけでございます。  局長、そのことについて、私はぜひそうしていただきたい、こういうふうな強い要望なのでございますけれども、そのことについての御意見がございましたら、お願いします。
  45. 江川晃正

    江川政府委員 国際放送への交付金の額をふやすということにつきましては、郵政省としてはもう長年大変苦労して、先生方にも御尽力いただいて、やっと十八億にまでなってきたという現実がございます。それで、毎年の悩みではございますが、また考えるところではございますが、何とかふやせないかということで、この交付金そのものの増を図ってきているわけでございます。  先生ただいまおっしゃいましたのは、単なる交付金という枠組みでなく、新しい何か別の枠組みでも考えて、そういうところにつけて実質的に応援になるようなことを考えたらどうかという趣旨で私は承りまして、アイデアとしてはあり得るなと、予算のシーリングというのがございますから、その玉になれるかどうかはちょっとわかりませんが、そういうアイデアは確かにございましょうから、いろいろ検討はさせていただこうかと思います。我々も、少ない交付金でもってさあやれと踏ん反り返っているわけではないということで、一生懸命頑張りたいと思います。
  46. 自見庄三郎

    ○自見委員 今の質問ですけれども短波には交付金を出していますけれども、それは当然ふやしていただきたいということは我々もいつも応援をさせていただいておるわけでございますが、この映像国際放送につきましては、交付金という形で映像国際放送がじかにお金を取るということはいろいろな問題点があるという話が、今さっきからずっとあったわけでございます。  しかしながら一方、規模、言語数などが拡大した場合、経費がかかってくるわけでございますから、私の今お願いをしたのは、二カ国語放送をする場合そういったところに大変経費がかかるから、むしろ政府としては、映像国際放送に関しては交付金という形でなくて、例えばそういった外国版を制作するところに助成金を出すとか、そういった実質的な援助が必要ですが、国際映像放送という特殊性を考えて、そういったきめの細かい、別のスキームと申しますか、それが必要じゃないか、こういうことを言ったわけでございます。それに関して局長も、ひとつ新しいアイデアとして前向きに考えたい、しかしながら財政当局がある話ですからという話だった、こう思うわけでございますが、何かございますか、局長。
  47. 江川晃正

    江川政府委員 先生がおっしゃいましたこと、まことに私わかりまして、私の説明の仕方が、交付金と、別の枠組みで何かないかという話とがごっちゃのように聞こえたかもしれません。それは意識としては、先生おっしゃいますように、先生の御主張としては交付金で今はやるべきでなく、別の手法で何か応援できないかということで私も理解いたしましたので、そういう別の何らかの助成方法と申しましょうか、それが考えられないものかということは、今後とも郵政省としては検討してまいりたい、そう思います。
  48. 自見庄三郎

    ○自見委員 結構でございます。  そろそろ時間のようですので、最後に、民間放送事業者も今回の法律改正によって当然国際的な放送ができるようになったわけでございますけれども、今回の法改正に伴い民間放送事業者においてはどのようなことができるようになり、これは民間放送事業者と郵政省の関係というのはなかなか、マスコミでございますから法律以外によって規制はされないという項も放送法にマスコミの当然の基本原理としてあるわけでございます。そういった中で、NHKのことはきょうは会長専務理事においでいただきまして、具体的にまず欧米あるいはヨーロッパから始めたい、そういったいろいろな話、御要望も承ったわけでございますけれども、そういったことにつきまして、民間放送事業者もまさに日本国テレビを担っている大変重要な部分でございますから、そのことにつきまして郵政省としては今後どういうふうにお考えでしょうか。
  49. 江川晃正

    江川政府委員 従来の放送法でいきますと、民間放送事業者については国内放送実施のみが予定されているわけでございまして、外国に向けた放送実施というのは予定していなかったところでございます。そういうことでございますので、民間放送事業者も衛星を使いまして外国に向けた放送実施できるようにしようというのが今回の改正でございます。  具体的には、他人人工衛星を利用しまして、日本国内と外国の双方において受信されることを目的とする放送、これを受託内外放送という言葉で整理いたしましたが、これを実施することを可能とするということにしているところでございます。
  50. 自見庄三郎

    ○自見委員 最後に、そういった民間放送事業者の具体的な動きについて何かお聞きしておりますでしょうか。
  51. 江川晃正

    江川政府委員 この法案をつくっていく過程におきまして、NHKはもとより民間放送事業者の人たちとも随分いろいろと意見交換、要望を聞いたりしているところでございます。それで、大変関心は持っているということがよくわかります。CS放送の事業者とか民放とか商社などが関心を持っているというところでございますが、具体的に参入を打ち出してきているというところはまだございません。ただ、この法律ができ上がるのを関心を持って見守っているというところでございます。
  52. 自見庄三郎

    ○自見委員 まだ具体的に出てきていないけれども、この民間放送事業者が大変関心と興味を持っておられるということを私もお聞きしておりますので、ぜひ郵政省としてもそういったところでしっかりできる範囲でバックアップをしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  ちょうど時間になったようでございますので、私の質疑はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  53. 高橋一郎

    高橋委員長 自見君の質疑は終わりました。  次に、田野瀬良太郎君。
  54. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 では、早速質問に入らせていただきたいと思います。  今回の放送法の一部を改正する法案によって、いよいよNHK短波による放送から、さらに加えて映像による国際放送が始まるわけでございまして、私はその意義たるやもう甚大なものがあると非常に期待をしておるところでございます。  そこで、まず最初に改めて大臣に、今後それについて果たすべき役割あるいはその意義、どんなふうに考えられておるのか、まずお聞きをさせていただきたい、かように思います。
  55. 日笠勝之

    日笠国務大臣 先ほどからの御議論がございますように、海外邦人六十万人、また日本語ブームというような中にもございますし、日本がこれだけGNP世界第二位という大きな経済的な地位も占めてきた、そういう中にあって日本を理解しよう、理解したい、こういういろいろな要請もあるかと思います。いずれにいたしましても、日本のこの文化、社会、経済の情勢というものを音声だけではなくて映像を通じて諸外国発信をしていくということは非常に意味のあることだろうと思っております。  特に、NHKにおきましては受信料で成り立っております公共放送でございますが、今までは短波国際放送で非常に実績も経験もあるわけでございます。そういう意味では、NHKのこの経験を生かしながら、海外に向けたテレビ放送発信についても先導的にひとつ取り組みをお願いを申し上げたいと思っている次第でございます。  なお、テレビとなりますと、諸外国における社会的な影響が非常に甚大でございますので、先日、四月でございますけれども、APT、アジア太平洋電気通信共同体のセミナーを行いまして、その中におきましても、先ほどからおっしゃっているような映像の中での各国文化の尊重であるとか、いろいろなガイドラインの勧告を決議しておるわけでございまして、その勧告を受けまして鋭意これからガイドラインの策定に向けて、文化的な侵略だとか言われることのないような、そういうことを期待しておるわけでございます。
  56. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 大臣のこれにかける並み並みならぬ決意というようなものを今よく理解させていただくわけでございます。  そこで、NHKがこれから制作していくであろうその内容につきまして、先ほど自見先生の質問ではNHKの自主的な制作が非常に重要なことであるということは十分わかりつつも、郵政省が法で定める以上やはり郵政省としてこの放送番組にかける期待、あるいはどんなものをイメージしておるのか、そんなものがあろうかと思うのです。それにつきましてひとつ郵政省のお考えをお聞かせいただきたい、かように思うわけでございます。
  57. 江川晃正

    江川政府委員 先ほどのNHK会長あるいは専務理事の御説明の中にもあったかと思いますが、この国際放送というのは二つの目的がございまして、我が国海外に紹介するということが一つと、海外にいる我が邦人、在留邦人と申しましょうか、その慰安に、楽しみのためにという目的、この二つがございます。  そういう意味で、今も短波による国際放送はその視点に立ちまして、最近の日本国の日々の生活の新しい情報であるとかいろいろな政治情報とか経済情報などを含めまして送って、かなりバランスのとれた情報を送っております。それが映像になるわけでして、もっと生き生きとと申しましょうか、リアリティーを持ってインパクトの強い情報となっていく、しかし中身は今短波放送がやっているジャンル、その辺のことは十分カバーしながら、なおかつ生き生きと情報が伝えられるようになるだろう、ともにそこの部分をバランスよく番組をつくって出していただけるとありがたいな、そう思っているところでございます。
  58. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 NHKに求めるあるいは期待するものが、郵政省を含め国民からもこれから大きなものがあろうと思うのです。  ということになってまいりますと、先ほどの自見さんの質問で詳しく質疑応答がされた、その財源の問題ですね。私も、国際放送をやれ、ただし受信料で貯えというのもいかがなものかと思いますが、また反面、国から交付金でどんどん出すということもNHKの自主の確立ということが損なわれていきはしないか、その矛盾をはらみながら、再度お聞かせいただきたいと思うのです。  先ほどの自見さんの質問で局長さんがお答えされておりましたように、一部の交付金、あるいはほかの財源があるのかないのか、求められないのかということになりますと、受信料で一〇〇%賄うということは適当でないというふうにお考えなのかどうか、その辺のところの基本的な考え方をちょっとお聞かせいただければと思うわけでございます。
  59. 江川晃正

    江川政府委員 端的にお答え申し上げますと、一〇〇%受信料でやることが適当でないかという問いに関しましては、今回これは一〇〇%受信料でやっていこう、それが適当であると考えているところでございます。  なお、その際、自見先生のお話で、何か別の枠組みで応援することができないかというのは、まさに、先生もおっしゃいましたが、交付金という形で出れば文字どおりすぱっと話がわかりやすいのですが、いわばこういう仕事をする上でのサイドワークの応援というところに金が出せないかということでございますから、これはそういう金が、例えば国から何か出たとしても、これは受信料でやることを否定しているものではないと私は考えております。
  60. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 私も基本的にはその考えに賛成でございますし、ぜひそういう形で、受信料で賄うという形で進めていっていただきたい。ただ、よりよい番組をつくっていただくということで工夫をしていただきますように、私も改めて要望させていただきたい、かように思うわけでございます。  そこで、NHKにこれからお聞きをしていきたいと思うのですが、いよいよこの委託協会国際放送業務が始まるわけでございますが、そのために、これからNHKとしていろいろな調査研究あるいはいろいろな準備が必要になってこようかと思うのですね。そんなことで、これからどんなふうに進めていこうとされておるのか、日程がどういうことになっていくのか、もう一度改めてお聞かせいただきたい、かように思います。
  61. 海老沢勝二

    海老沢参考人 先ほど映像による国際放送アメリカヨーロッパをやると申しました。その前に、本格的な映像放送をするに先立って、視聴者のニーズといいますか、意見等も参考にしながらやはり番組の編成をやらなければならぬと思っております。  そのために、今年度、平成六年度に調査をしてみようということにしました。そのための予算を今年度のNHK予算の中に調査費という形で三億円ほど計上され、国会でも御承認いただいたところであります。この三億円を使いまして、アメリカヨーロッパで今テレビジャパンが使用しておりますアストラ衛星アメリカのK1という通信衛星があります、この二つの、テレビジャパン現地法人が使っているところに、その一部を借りて、一日二時間程度、ノンスクランブルといいますか無料の放送をして、視聴者の意向といいますか、ニュースとかあるいは先ほど言いました教育あるいは幼児番組等も流しまして、どういうものが一番好まれるのか、どういうものが目的に合うのか、その辺をこの一年かけて調査をして、その上で平成七年度、来年の四月から一旦二時間ないし四時間程度国際放送に踏み切りたい、そういうふうに考えております。
  62. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 いろいろと、この一年間調査研究をされながら、平成七年度からそれを実施していくということでございますが、この映像による国際放送NHKにとって未知のものであるとはいえ、しかし現在もう既に短波による国際放送は十分経験されておられるわけでございまして、改めて今の短波放送に、どんなところに気をつけて制作をしておられるのか、あるいはまた、それがどんな効果をもたらしておるのか、あるいはまた、この短波による国際放送がこれからの映像による国際放送にどういうふうに生かされていくのか、この辺のところをお聞かせいただければ大変ありがたい、かように思うわけでございます。
  63. 海老沢勝二

    海老沢参考人 先生御案内のように、短波による国際放送は、日本としては昭和十年から国策としてやってまいりました。終戦と同時に、この海外放送が中止になりまして、NHKが新しい法人として二十五年に再発足したわけでございますが、昭和二十七年の二月から今のラジオ・ジャパンという形で短波による国際放送が始まりました。この短波による国際放送は、やはり日本国情を正確に早くわかりやすく伝えよう、そして、日本国情なり、いわゆる国民生活なり、物の考え方なりあるいは文化外国に理解してもらおう、そういう趣旨でやってきたわけであります。  その結果、先ほど申し上げましたように、今一年に九万通の反響といいますか、九万人の方々から手紙なりあるいは電話なり、ファクスなりに好意的な、あるいはこういうふうにやったらどうだとか、いろいろな意見が寄せられております。そういうものを勘案しますと、世界で千五百万人から千六百万人の人たちに聞かれているというまでに実績を上げております。それはやはり、NHKが客観的に公平にニュースなり報道番組をつくってやっているということがその成果だろうと思っております。そういう面で、私どもとしては、ニュースなり報道番組、今合わせて六三%、そのほかは教養あるいは教育、娯楽番組放送しておりますけれども、できるだけニュース、報道番組については、公平にそして客観性を持った、世界のどこの人が聞いてもNHKニュースを聞けば世界の情勢がわかる、あるいは日本国情がわかる、そういう姿勢で放送しております。  そういう面で、この映像による国際放送につきましても、これまでの経験、ノウハウを生かしながら、やはり各国から日本文化侵略とかあるいは日本の宣伝放送というような、いわれなき抗議を受けないように、そういう経験を生かしながら慎重に各国事情も見ながら放送していきたいというふうに考えております。
  64. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 大変な歴史、この短波による国際放送NHKお持ちでございまして、私は、その経験が今度の映像による国際放送に必ずや生かされるもの、こんなふうに考えるわけでございます。それで、その効果のほどもよくわからせていただいたのですが、ただ、短波による放送映像による放送とでは、そのインパクトたるや、もう大変な差があるというか、はるかに、映像による国際放送の効力というのでしょうか効果を私は期待しておるところでございます。  日本の同胞というのでしょうか、海外駐在員というのでしょうか、その方々への情報発信はもちろんでございますけれども、この映像による国際放送、私は、世界各国の、日本に対する理解度の低い各国に対する効果、今ほど日本国際化、ここまで日本が豊かで自由で安全で平和で、日本国際社会の中で果たすリーダーシップ、役割、貢献が今ほど期待されておる時期はない。ますますもってこれからの日本国際化は重要なものになってきた。  しかし、その中で、どうも日本人は顔が見えない、考え方がわからない、これは言葉の障壁もあろうと思います、あるいは異質な日本人、すぐこう言われてしまいますね。いろいろな障害もあろうと思いますが、どうしても日本が理解されておらないことがやはり最大の原因であろう、かように私は考えるのですね。  我々の日常の中で、もう日常茶飯事で、西洋の文化にもう常に囲まれておるというか、触れておるというか、非常にその機会に恵まれておるわけでございますけれども、音楽とかテレビ等で、もうありとあらゆる西洋文明に我々は今恵まれておるところでございますけれども、どうも日本の状況、あるいは文化というか実態が、諸外国、特に欧米諸国に非常に欠乏しておるのではないかなという感が私は本当にいたすわけでございます。  実は私、学生のころに一年間、無銭旅行と称してロシアを皮切りに、ヨーロッパから中近東、東南アジア、ずっと働きながら、野宿をしながらちょうど一年間旅をした体験を持っておるのですけれども、そのころ、まさに世界じゅうは坂本九の「上を向いて歩こう」という歌、これがもうそれこそ大流行というが、大ヒットしておりまして、しかしながら、それが正確に伝わっておらない。その題名は「スキヤキ」という題なんですね。我々日本人を見たら、おい、スキヤキ、スキヤキ、こう言われました。当時、どこのレストランヘ行ってもスキヤキのメニューが登場しました。何とも釈然としなかった。正確に伝わっておらない。また逆に、「上を向いて歩こう」、なるほど、明快なすばらしい音楽だと思いますけれども、これくらいの音楽であれば幾らでもあるのにな。何かのきっかけでこの「スキヤキ」が全世界に広まったのでしょうけれども、坂本九さん、亡くなった方に悪いですけれども、これくらいの歌なら、日本にすばらしい歌は幾らでも、どこにでもある。  そうしたら、なぜこの「上を向いて歩こう」、「スキヤキ」だけがヒットしたのかな、そんな思いで一年間、もっともっとうまくこの文化を紹介すると、映画にしろ音楽にしろ、あらゆる芸能にしろ、もっと世界じゅうに広まるきっかけ、機会、そんなものは幾らでも落ちておる、こんなふうに私は思うわけでございます。  よく言われることなんですけれども、非常にすぐれた先端技術を駆使した日本の商品が一方にあると思えば、一方では、紹介される文化といえばほとんど日本の古典文化、踊りだとか能だとか歌舞伎だとか、どうもそれがアンバランスですね。諸外国の皆さん、日本の状態がどうもアンバランスでいまいち理解できない。現在の日本の生々しい文化日本人のライフスタイルというのでしょうか、こんなものをもっともっと紹介する必要があるのではないか。そういう意味で、私は何度も申し上げますけれども、今度の映像による国際放送、私は本当に期待をしておるところでございます。  そんなことで、これからNHKが取り組まれるわけでございますが、今持っておるノウハウあるいは制作力と言った方がいいのでしょうか、センスあるいは技術力、私は必ずや成功するものと確、信をいたしておりますけれどもNHKとして、どんな内容番組をつくっていこうとしておるのか、ひとつ詳しくお聞かせいただければ大変ありがたい、かように思うわけでございます。
  65. 海老沢勝二

    海老沢参考人 今先生から、我々にとっては非常に勇気づけられる御発言をいただきまして、ありがとうございます。  今、番組をどういうふうにつくっていくかという御質問でありますけれども、当面は、今NHKが総合と教育テレビあるいは衛星第一、第二でいろいろな番組をつくっております。この中から抜粋するといいますか選択して、それを国際放送として発信したいというふうに考えております。  それで、この四波の中には、先ほど申し上げましたように、日本英語版で紹介する「トゥデイズ・ジャパン」、いわゆるきょうの日本、あるいは「ジャパン・ビジネス・トゥデイ」とか「ジャパン・ビジネス・ウイークリー」という、いわゆる高度成長で発達を遂げた日本の経済の現状、あるいは産業の状態というようなものを毎日放送しております。そういう番組もありますし、そのほか、NHKは毎正時にニュースをやっておりますし、朝、昼、夜の長時間のニュース番組がありますし、そのほかドキュメンタリーとか、報道番組もあります。そういう面で、それに教育、教養というようなものもまぜながら、バランスのとれたものをバランスよく発信していきたい、そして将来は、各国に合うといいますか、例えば中国向けなりインドシナ向けなり、あるいは中近東向けなり、それぞれの国情に応じたような独自の番組も制作する時期が遠からず来るだろうと思っております。  そういう面で、これを一遍にやりますと、お金もかかりますし、またいろいろな問題もありますので、当面は今の四つの波の中から抜粋したものでとめておきたい、それからさらに段階的に進めていきたいというふうに考えております。
  66. 田野瀬良太郎

    ○田野瀬委員 どうかひとつ、確かにお金、財源の問題、これは早く解決をしていただきながら、日本の国を十分に正確に伝える、そういう内容のある番組制作のために、ひとつ大いに期待をしたい。NHKの技術力あるいは制作力をもってすれば、私はこれから爆発的な、国際的な話題を呼ぶような番組がどんどんとできていくのではないかな、そんなふうにほうふつとして想像するわけでございまして、これから期待を申し上げますので、御努力をよろしくお願い申し上げまして、私、時間が参りましたので、これで質問を終えさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  67. 高橋一郎

    高橋委員長 田野瀬君の質疑は終了いたしました。  次に、田中昭一君。
  68. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 質問も四人目になりますと、ダブる点がかなりございますけれども、私なりに大綱三点くらいについてお尋ねをしたいと思います。  現代は情報化時代だと言われたりあるいは国際化社会だと言われたり、そういう中で情報が極めて重要な価値を持っている時代になっているということは、もう御承知のとおりでございます。そういう中で、今日欧米からの情報というのは瞬時に日本に入ってくる、こういう状況になっていますが、日本からの情報発信というのは必ずしも十分に行き渡っていない。したがって、諸外国において我が国のいろいろな面について必ずしも十分に理解が得られていない、こういう面が多々あるんじゃないか。外国の教科書などを見てみましても、我が国の紹介などについては相当誤った記事などがありますように、もっともっと我が国情報というものを発信をしていく、こういうことは必要であろうとかねがね考えております。  とりわけ、今回実施をしようとする映像発信というのは、日本を理解していただく手段として極めて有効である、こういう点については、逓信委員会でもかつて議論をしたこともございますし、NHKの予算の議論の中でも、「国際化の進展に対応して映像メディアによる国際交流をより一層推進するとともに、国際放送の充実にさらに努めること。」こういう附帯決議もございます。そういう意味からいいますと、今回のこの提起については私たちはもう大賛成でございまして、問題は、今後どのように運用をしていくか、こういうことにかかっているだろうと思います。  そういう意味で、賛成だということを基本に、今から若干の質問をしたいと思います。  まず、非常に重要な問題だと私は思っているわけです。しかし、誤解をされた情報がとられていくということになりますと、これは大変な国際間の摩擦ということも起こり得ることでありますから、そういう意味ではやはり慎重を期さなければならない点もある。こういう点から、まず大臣の方から、今映像情報海外発信の強化ということがなぜ必要なのか、そしてその基本的な考え方はどこにあるのか、これをまず簡単にお聞かせをいただきたいと思います。
  69. 日笠勝之

    日笠国務大臣 今日まで諸先生方の御尽力をいただきまして、映像情報海外発信をということを御要請また御忠告等々いただいてきたわけでございます。  もう社会経済がボーダーレス化になっておりまして、先生おっしゃるように、情報国際交流というのは日常生活に欠かせない最重要部分ということになってまいりました。近年、衛星技術が大変に進歩いたしまして、ヨーロッパにおきましてもアストラ衛星であるとか、またアジアにおいても、有名な香港のスターTVのアジアサットであるとか、また最近では中国、韓国なども映像放送衛星によって可能になるような状態になってきたわけでございます。  一方、我が国からの放送海外発信は、先ほどから御論議ございますように、NHK短波国際放送のみ、音声のみでございます。映像による影響は、先ほどの田野瀬先生からのお話もございましたように、大変大きなインパクトを与えるわけでございまして、我が国といたしましても、積極的にこの映像情報海外発信を行っていくことが、国際交流、相互理解の大きなかなめとなろうと認識をしております。そういう意味で、今回、放送法改正しようということになったわけでございます。  先日、ある新聞を見ておりますと、NHK番組で「おしん」という番組がございました。これがもう中国、東南アジアはもとより、今エジプトにまで行きまして、大変な大好評で、エジプトの子供さんの名前がおしんという名前までできたとか、そういう大変大きなインパクトを持っておるわけでございますので、ぜひひとつ日本からの映像情報発信を今後大いにやっていこう、その第一歩の仕組みが今度の法律改正であろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  70. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 先ほども若干申し上げたわけですが、例えば冷戦構造が氷解をいたしまして、ソビエトが崩壊をするあるいはベルリンの壁が崩れる、その要因の一つとして、よく情報化問題というものが言われております。先ほど申し上げましたように、情報発信というのは、やり方次第では国際間の、各国間の文化摩擦にもなりかねない、そういう危険性もはらんでいるわけですね。特に、私は先々週も中国に参りましたけれども、中国、アジアの中では、過去の侵略戦争の傷跡がまだ必ずしも十分にいえていない、いろいろ我が国に対する偏見なり不信などがやはりまだ残っておる。特に永野発言などもございまして、そういう意味では我々の自覚、責任というのは非常に重要である、こういう気持ちを持っているわけです。  したがって、この情報発信日本政府のプロパガンダ放送という危機意識や警戒感を生む、こういうことになるとすれば、私はむしろマイナスになるのじゃないかな。そういう意味で、郵政省なり外務省というのは、こういう問題について今後きちんとした、まあ変な意味でない指導力を発揮することが必要であろうというふうに考えていますし、また、NHKなど実施をする機関としても、そこらの責任とかいう問題については十分な配慮が必要だろう、こういうふうに思うのですが、この点、郵政省、あるいは外務省も来ておられましたら、若干の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  71. 江川晃正

    江川政府委員 日本映像情報アジアその他の諸外国発信することは、日本と諸外国との相互理解を深めるもので非常に望ましくて、積極的にやらなきゃいけないということは、もう先ほど来先生方も私たちも同じことを申し上げておるところでございます。一方、その番組内容につきましては、受信国からいわば文化摩擦と申しましょうか、文化侵略と申しましょうか、そういったような批判を受けることがないように十分配意しなければならないということは、もう先生指摘のとおりだと考えます。  今回の法律改正におきましても、放送番組規律につきましては、国際親善という視点から、必要な規定を設けております。先ほども申しましたけれども各国の経済的社会的自然的文化的ないろいろな諸事情配慮しなければならないというふうにも勘案しております。  もう一つアジア太平洋地域における国際的コンセンサスの形成のためにも、ことしの四月半ばでございますが、APT、アジア太平洋電気通信共同体衛星セミナーというのが行われました。日本国で行われたわけでございますが、そこで先生の御指摘の問題、同じものが議論されまして、一つ合意が得られたところでございます。いわば、簡単に申し上げますと、国境を越えるテレビに関して自由な情報流通促進するよう、アジア太平洋地域での番組のガイドラインの策定ということに合意されたわけでございます。そのガイドラインの中身には、青少年に害を与えないように性の問題であるとか暴力の問題であるとかを抑えようというようなことも、みんな議論されたところでございます。そういうようなこともございまして、情報発信につきましての注意を払っているところでございます。  今後とも、アジアの多様性や歴史的経緯等に十分配意しつつ、アジア地域における映像国際放送の調和ある発展に努力してまいりたいと考えているところでございます。
  72. 西林万寿夫

    ○西林説明員 情報化の進展とか、また技術革新の中で、この映像情報国境を越えて伝播し多大な影響を及ぼす、こういったことは今日の国際社会の大きな特色の一つであろうと外務省としても認識しておりまして、外務省といたしましても映像情報の国際的な伝播が今後ますます大きな意味合いを有すると考えております。国際的な相互理解や諸外国の対日理解を促進していく、こういった観点から、今後映像分野の対外発信とか国際交流活動を一層積極化させていきたいと考えております。  しかし、その際、先生指摘のとおり、日本情報発信が対外的な摩擦につながらないように、アジア等いろいろ微妙な対日感情等もございますでしょう、関係諸国との関係、こういったものにも配慮していきたいと考えておる次第でございます。
  73. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 今郵政省なり外務省から発言された問題については、今後さらに慎重なる御配慮をいただくようにお願いを申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので、次の問題ですが、郵政大臣のいわゆる命令放送についてお聞きをしたいと思うのです。  放送法の第三十三条には、郵政大臣は協会に対して国際放送を行うべきことを命ずることができるという事項がございます、条文については省略をいたしますが。この規定に基づいて、これまで郵政大臣は毎年命令を出してきたと思います。この命令は短波による国際放送に対して出された命令であった、こういうふうに理解をいたしております。短波国際放送については国際的な合意があって、周波数の割り当ても行われているということだと思います。また、この短波国際放送実施している各国放送機関の大部分が公的資金を財源にしていると聞いております。その意味で、短波国際放送に対する実施命令に伴って交付金を出すことはそれなりに私たちも理解をしてきた、こういう経緯がございますが、今回の映像発信につきまして、郵政省は制度上できるとされるこの命令放送を出していくのか出さないのか、ここらの問題について少し見解をお聞かせをいただきたい、こういうように思います。
  74. 江川晃正

    江川政府委員 端的に申し上げますと、当分の間はNHKがこの新しい業務を自主的な業務として実施していくことを期待しておりまして、またNHKもそう考えているというところでございますが、その実施状況受信状況とか視聴者の反応とか実施に要する費用とかなどなど、あるいは諸外国による映像国際情報実施状況の進捗状況とか、進展する国際情勢がどう変化するかとか、それから現に行っております短波放送との役割をどう分担していったらいいだろうかなどなどのことをよく見定めなければ、枠組みがこうだからさあやろう、やってくれというのは軽率ではないかと思います。  そういう意味で、ただいま実施命令の、端的に言えば是非といいましょうか、出すか出さないかという点の御質問として受け取りますと、そういうような事情がわかるまではその判断を今ここではにわかには申し上げられない、そういう事情把握の方を先に努めてまいりたい、そう考えているところでございます。
  75. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 それでは、当分の間この実施命令は出さない、当分情勢をよく判断をした上だ、こういうことに理解をしていいのですね。
  76. 江川晃正

    江川政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  77. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 先ほど基本的な認識の問題としてプロパガンダ放送の問題について若干申し上げました。私も勉強不足なんですが、アメリカではプロパガンダ放送規制する規定、いわゆるFARAというのがあると聞いているのですが、その内容を政府としてどういうふうに理解をしておられるのか、今後これに類する日本版のFARAを設けるというような考え方はないのかどうなのか、この辺の問題についてお聞きをしたい。
  78. 江川晃正

    江川政府委員 アメリカ合衆国にありますFARAといいますのは、フォーリンエージエントレジストレーションアクトでございますが、これは一九三八年にナチのプロパガンダ活動を阻止するために設けられた法律だと承知しております。それがその後いろいろと改正されまして、一九六六年が最終の修正のようでございますが、その結果、米国政府のデシジョンメーキングのプロセスの保全並びに外国の政治プロパガンダに関する米国国民の知る権利がこの法案の主目的となって現在に至っているというふうに承知しております。  ちょっともう少し整理して我々の仕事とのかかわりで触れさせていただきますと、この法令の趣旨は、原則として、外国人や外国組織の代理として活動する者は、外国との関係、事業活動等を登録しなければならない、そういうことになっておりまして、政治宣伝の届け出とかあるいは政治宣伝の明記とか帳簿の公開等が義務づけられております。ただ、この法律放送に限ったものではございません。それで、それに違反した場合には罰金とか禁錮の罰則などもついてございます。そういうようなものがFARAの概略でございますが、いわば言論統制法みたいなところがあるのではないかと私たちはちょっと見ております。  その意味で、先生後半の御質問でございますが、いわば日本版のFARAを必要あるのかないのかということにつきましては、一つには、ただいま申しましたようにFARAというのがひとり放送のみを対象としたものではないということと、言論にかかわってくる法律だなということがあります。それがやや消極的な理由の方でございますが、もう一つ、実定法上申し上げますと、現在の日本国放送法あるいは電波法の中で、放送局の免許においては外国性排除の規定を置いております。役員とか議決権の五分の一以上はだめだとかなんとかというのがございます。  それからもう一つ放送番組編集につきましても、放送法の三条の二で、政治的に公平であるとか報道は事実を曲げないとか意見が対立している問題について多角的に扱えとか、いろいろございまして、そういう言ってみれば義務づけがございますから、それに沿って放送を行うとすれば、いわば一つのことを主張するプロパガンダということができる仕組みにはなってないなと私たち考えております。  そういう意味におきまして、我が国放送分野に、今私が申し上げた意味でのアメリカにおけるFARAと同様あるいは同種の規定を設ける必要はないのではないかなと考えているところでございます。
  79. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 時間がございませんので、この点はきょうはこれでやめておきますが、今局長言われるように、これは言論、報道の自由との関連などを含めまして、かなりやはり慎重な議論が必要であろう、こう理解をいたしておりまして、今後改めて私ども勉強いたしまして問題提起をしたい、こう思います。  最後に、三つ目の問題ですけれども、先ほど、冒頭申し上げましたように、この映像発信という今回の提起については我々は賛成である、そしてもっと我が国のいろいろな問題について世界各国で理解を深めてもらいたい、こういうことを申し上げたのですが、そういう立場から、財政上の問題につきまして、若干お聞きをしたいと思います。  映像海外放送というのは、既にテレビジャパンアメリカなりヨーロッパで行われておるようでございまして、その内容趣旨についてはよく理解をしているつもりですが、経営状況は大変厳しいというふうに聞いておりまして、平成四年度の決算を見てみましても、アメリカで七億、ヨーロッパでは三億五千万ぐらいの欠損、赤字だというふうに聞いておるわけです。  この映像発信を、内容を充実してきちんとしたものをやっていくということになれば、それぞれの受信地の言語発信をしなければいけない、こういうことなどを考えた場合には、やはりそれなりの財政上の問題が必要じゃないか、こう思うのです。NHKは営利事業ではございませんで、ぱかぱかもうかっておる、利潤を上げておるという経営体じゃないわけで、やはり視聴者受信料で経営をやっている、こういう状況などを考えた場合に、今後ますます内容を充実するという立場に立った場合には、将来の展望も含めまして、財政上どういう形をとっていこうとするのかという点について、NHK並びに郵政省の御見解をお聞きをしておきたいと思います。
  80. 海老沢勝二

    海老沢参考人 今先生からテレビジャパンの二つの現地法人が非常に経営が苦しいだろうという指摘がありました。  この三年間の経営状況を見ますと、日本の経済が、いわゆるバブルが崩壊したというような、景気の停滞の影響によって協賛金なりあるいは広告代が取れないというようなことから、予定されたいわゆる採算ベースに乗らないということは全く事実であります。しかし、やはりこのテレビジャパンの事業というものは、我が国にとっても、またこれをこれまで受信してきた人にとっても非常に有意義な事業でありますし、これをここでやめるということは、我々にとっても、また現地法人にとっても社会的責任が大いにあるわけでありますから、そういう面で、この事業は苦しくてもお互いに歯を食いしばって継続すべきだろうということで、かなり苦しい経営状態にありますけれども、これからこの事業をさらに普及させ、内容を充実させ、そして受信者をふやすことによって経営は健全な方向に向かっていくだろうというふうに私は希望を持っております。そういうことで、私どもの方もこの現地の二つの法人と一緒になって、テレビ事業の普及に努力していきたいと思っております。  そういう中で、この二つの法人に我々のいわゆる国際放送業務委託という形で、お互いに共存体制で当分の間やっていくわけであります。そういう面で、現地法人の方も、来年度からは心を新たにして健全な経営へ向かって努力するということを私どもと確約しておりますので、この事業は必ず成功の方に向かっていくだろうというように考えております。
  81. 江川晃正

    江川政府委員 このNHKの新しい業務は、結局のところ、国民全体に利益をもたらすということが期待されるものでございますから、費用は受信料でという形で国民に公平に負担してもらうという形でやろう、こういうふうに考えているところでございますが、いろいろと財政の問題も出てまいります。先ほど来御議論ございますように、郵政省としても、何かどこかから応援できるような手だてというものはないものかということについてはいろいろ研究、検討してまいりたいと思っております。
  82. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 放送番組国際交流センターというのがございますね。これには公的補助として、金額はそんなに多くないのですが、郵政省の補助金が約一億円ですか、外務省が国際交流基金の助成として約一億円。この国際交流センターの目的ですが、「放送番組に係る国際交流促進し、我が国と諸外国との相互理解の増進及び開発途上国をはじめとする世界放送の発展に寄与する。」こうなっているわけですね。「放送番組に係る国際交流促進」、若干の違いはございますけれども目的とするところは一緒だ、こう思うのですが、いわゆる放送番組国際交流センター、JAMCOに、今申し上げましたように、外務省なり郵政省から補助金を出しておる。  今回の国際放送に対して、直接国がNHKに対して金を交付するというのは、いろいろ問題点がまたある意味ではあるわけで、そういう意味では、このJAMCOを活用するとか、あるいはこのJAMCOの方式などを考慮して助成金的なものでNHKの費用負担、いわゆる受信料に転嫁をするものをなるべく負担を少なくする、こういうのが考えられないかどうかというふうに、素人的な考え方ですが、考え方を持つのですが、郵政省としても何らかの形、こう言うのですけれども、しかしそれは今形としてないわけで、当面はやはりNHKの一般の受信料の中からやりくりする、こういうことだと思うのですが、将来のことを考えれば、そこのところはもう少し、どこから幾らということは言えないにしても、基本的な考え方としては、ある程度のものが郵政省の中におありになるのではないか、こう思うのですが、いかがでございますか。
  83. 江川晃正

    江川政府委員 先生の御提案のJAMCOを利用したらどうかということでございますが、事務的にいろいろ詰めてまいりますと、そう容易なことではないなという感じがいたします。したがいまして、ここでJAMCOを通して何か支援しろということに対して、わかりましたとかなんとかというふうによい返事ができないのはお許しいただきたいと思います。  ただ、我々としましても、先ほど来申し上げておりますが、何か助成の方法がないかということにつきましては、考えていかなくちゃいけないなということを申し上げているところです。ただ、現に具体的なアイデアがここにあるかと言われますと、これからやはり予算要求に向かって考えていく段階で、まだここで発表させていただくような段階でないということをお許しいただきたいと思います。
  84. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 時間がありませんが、私の問題提起について、NHKのお考え方は何かおありでしょうか。
  85. 川口幹夫

    川口参考人 ただいまは田中先生からお考えを伺いまして、私も大変心強うございます。  ただ、今のJAMCOの問題は、実際上JAMCOが開発国、特に東南アジアあるいはインド等々でありますが、そちらの方に番組を送るのを専らの業にしておりまして、国際放送の方にお金を回すという余裕はただいまのところありません。残念ながら、財政基盤が予定したよりもちょっと集まりが悪うございまして、多少JAMCOの今後について強化すると同時に、私ども国際放送、特に映像国際放送受信料だけで賄われるべきものではないと思いますから、いろいろな努力をして、これから少してもいい映像国際放送ができるようにしたいと思っております。先生方の御助力をお願いするところでございます。ありがとうございます。
  86. 田中昭一

    ○田中(昭)委員 これで終わりますが、私は、JAMCOにあるお金を出しなさいとか、JAMCOにもう少しお金をふやして出しなさいということを直截的に言ったつもりはないわけで、そういう形か何かとれないかどうかという例示的な意味で申し上げましたので、そういうふうにぜひ御理解をいただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  87. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、矢島恒夫君。
  88. 矢島恒夫

    矢島委員 私は、まず最初に、国境を越えるテレビ放送、つまり映像国際放送を一般的に否定するものではありません。そういう立場に立つものではありませんし、また、その意義というものは認めるものでございます。  しかしながら、本法案の作成過程を見ますと、きょう今まで各委員の質問またはそれに対するお答えを聞いていまして、いわゆる国際的合意だとか国民的合意という点で多々問題があるという疑問を持ったわけであります。  やはり一番最初にどの委員からも出されている問題としては、国境を越えるテレビ放送というものが、一つには国際親善だとか国際交流というものに役立つ、しかし一方、受信国の事情だとかあるいは国民的な感情だとか、こういうものを無視すれば文化侵略というような危険性を持つものだということ。  そういう点からいえば、ヨーロッパでは一九八九年、欧州の評議会の中で、国境を越えるテレビ放送に関する欧州協約というものをつくっておりますし、同じときにやはりEC指令というものも大体同じ内容でつくり上げられております。  基本的には、人権及び基本的自由の保障ということを第四条にうたっておりますし、一般原則として人間の尊厳あるいは基本的権利を尊重するとか、ニュースの公平性あるいは反論権の行使、これの機会を保障するという問題や、ポルノや暴力の規制の問題等々書かれているわけであります。  そういう点で、先ほどまでの論議をいろいろお聞きしている中で、アジア太平洋地域におけるいわゆる越境テレビのルールづくりという問題では、APT、アジア太平洋電気通信共同体会議のセミナーというものが出されておりました。私もそのセミナーの内容等については読ませていただきましたが、郵政省として、アジア太平洋地域のルールづくりの状況その他何か把握しておりましたら、御答弁願いたい。
  89. 江川晃正

    江川政府委員 先生御案内かもしれませんが、ちょっと申し上げますと、この四月に今も御指摘のAPTの衛星セミナーが東京で開かれました。十六カ国、一地域、六国際機関等が参加してやったわけでございます。このときに、私たちとしたらば大変進んだすばらしいことが合意されたなと考えております。  先生も資料をごらんになったということで御案内かもしれませんが、ちょっと大事なところを触れさせていただきますと、このサービス、というのは海外越境の情報流通でございますが、その本地域における調和ある発展を促進する上で、何らかのガイドラインが必須だというところで合意された。しかも、その中でどういう点に留意すべきかというと……(矢島委員「大体わかっている」と呼ぶ)では、繰り返しませんが、そういうことで、いわばEC指令が書いてあるようなことはほとんど触れて、取り上げて、そういうものをつくろうじゃないか、最後に決まったことは、またそのための会合を持とうというふうになっております。  それで別れたわけですが、日本国ではまた予算をとれてございまして、郵政省は会議をまた開くということも予定したりしております。そういうことで、そういうAPTの合意された内容の具体化のものをいろいろ我々は整理していきたいなと考えているところでございます。
  90. 矢島恒夫

    矢島委員 今答弁にもありましたとおり、ガイドラインは必要だという方向のセミナーが行われた、つくろうという機運というのが今あるというわけであります。それを待たずに、私は、国民的合意、国際的合意ということを言いましたが、余りにも今度の法案というのが性急過ぎるのではないかという点で質問をしていきたいと思います。  つまり、日本がそういうガイドラインをつくろうという機運が高まっている状況の中で、それを待たずに外国向けテレビ放送を解禁する、国際親善というよりはむしろ文化侵略という非難を起こしかねないということではないか。そういう意味から、NHKにちょっとお聞きしたいのですが、衛星放送をスタートさせたときに、韓国などからスビルオーバーの問題が提起された。これはどういう内容でどういう対処をしたかということ。
  91. 海老沢勝二

    海老沢参考人 スビルオーバーの問題につきましては、韓国等一部のマスコミで日本文化侵略を懸念する記事が二、三出だということを私は承知しております。そのほか、こういうスビルオーバーについていかがなものかというのは非公式に耳に入ってきておりますが、公式の直接的な、これはよくないというような抗議めいた話は来ておりません。
  92. 矢島恒夫

    矢島委員 大臣にちょっとお聞きしたいのですが、今いろいろと外国との摩擦、十分慎重に配慮しながらという方向の論議がずっとなされてまいりました。こうした中で、今度はこのスビルオーバーとは違って、むしろ外国電波を流すということを目的にした方向へ行くわけであります。そうした中で、基本的な合意がない、いわばノンルールの状態だ、こういう状況の中で実施していくということに非常に懸念を感じるわけなんですけれども、これは国際上、外交上の問題ですので、ひとつ大臣からどのようなお考えかをお聞きしたい。
  93. 日笠勝之

    日笠国務大臣 おっしゃるように、現在、現時点においては共通ルールはございません。しかし、今回の法律改正におきまして、国際親善等の観点から、NHK及び民放についても放送番組編集準則が定められておるところであります。よって、これにのっとって、おっしゃるような懸念のないような国際的な発信ができるのではなかろうかと思っておりますし、今後とも、郵政省といたしましては、先ほどから局長が答弁申し上げておりますように、アジア太平洋電気通信共同体、APTの場において、多国間、二国間、いろいろな対話のチャンネルを設けまして、国際的なコンセンサス、ガイドライン等の形成へ向けて最大限の努力をしていく所存でございます。
  94. 矢島恒夫

    矢島委員 大臣、最大限の努力とおっしゃられますが、やはり我が国に対するアジア各国の感情というのは複雑である。これは前にも別の委員の方から出ました。やはり過去、現在、こういう中で日本アジアの中でどういうことをしてきたかということに対する複雑な感情を持っている。最近では永野前法務大臣の発言が重大な問題になりました。侵略戦争にかかわる問題であります。予算委員会の中では、羽田首相も侵略戦争ということを認めずに侵略的行為と矮小化するような答弁もございました。それに現在、大企業がどんどん進出していくという中で、いわゆる経済的な侵略だという非難もある。こういう状況ですから、テレビ国際放送実施というのは、国際親善ということを何回となくおっしゃっておられますけれども、逆になる危険性もあるんだという点を指摘しながら、ガイドライン、ルールづくり、これがまず環境整備という上では必要ではないだろうか。今まで江川局長も、この問題で運用上誤らないようにということで、NHKもそうお答えになっていますけれども、やはり環境整備もしないで、それで自主的業務としてやっていくんだ、だから運用は誤らないようにというだけでは済まされない問題であり、郵政省としてもそれなりの責任を果たしていく必要がある。  このことを指摘しながら、今度は国内的な合意の問題でお聞きをしたいのですけれどもNHKに全く新しい業務として映像国際放送を義務づけるわけですけれども、郵政省、この間、こういう何か新しい業務をやるときには、例えば私的諮問機関としての懇談会や研究会というようなものを開きながら大いにいろいろな意見を聞くという態度をとってやってきた、しかし今回の法案の場合にはそういうことをやってない、これはなぜなんですか。
  95. 江川晃正

    江川政府委員 理由は特段ございません。しかし、必要なジャンルの必要な関係者の方々からいろいろと話を聞き、情報をいただき、議論をしながらこの案を詰めていったところでございます。
  96. 矢島恒夫

    矢島委員 いろいろなところからと言いますが、郵政省内部の関係者の非公式なヒアリングなどを行いながら法案作成を急いだということを聞いております。  NHKとしては、このテレビ国際放送について、国内視聴者、いわゆる国民の意向を何か調査したような結果がございますか。
  97. 海老沢勝二

    海老沢参考人 今度の放送法に基づく映像による国際放送についての世論調査は、まだいたしておりません。ただ、国民の代表者で構成されております当衆議院の逓信委員会等におきまして、昭和六十三年から今日まで、映像メディアによる国際交流促進すべしという附帯決議を我々受けております。これを深く受けとめております。  それと同時に、私ども放送法で義務づけられております国際放送番組審議会あるいは中央放送番組審議会、地方の八つの番組審議会等におきまして、委員の方々から、こういう国際化の進展に伴ってNHK海外映像国際発信を大いにやるべしという意見をちょうだいしております。それと同時に、各界各層で構成されております視聴者会議等でもそのような意見を受けておりますので、そういう有識者の意見も参考にしながら、やはり国際放送に踏み切るべきだろうということで、この改正案を大いに歓迎しているところであります。
  98. 矢島恒夫

    矢島委員 本委員会の附帯決議は、映像メディアによる国際交流の推進というのがございます。今回提案されております法案というのは、いよいよ実施段階ということで、その規定をつくろうというわけであります。  そういう意味では、実施に当たっての、例えばルールづくり、今日ノンルールの状況で、本当に日本の公共放送の機関としてのNHK国際放送実施していいのかどうかとか、あるいはこの業務NHK必須業務とするのか、それとも試験的に当面実施するのか、それとも任意の業務とするのか、いろいろな論議がされてしかるべきだと思うのですね。国際的にも国内的にも、いろいろな論議を抜きにしてどんどんと法案を性急に進めているという点についての疑念を持つわけです。  先ほど来財政の問題がいろいろ出てまいりました。当面、江川局長は、いえば自主業務ということでやっていくので受信料で賄っていくということで言っております。  いわゆる交付金の問題ですけれども、政府の交付金も十八億ということに一生懸命ふやしてきたという答弁もございました。しかし、実際にその交付金の状況を見てみますと、時間の関係もありますので、いただいた資料の方で申し上げますと、十年前は、大体NHK国際放送予算に占める割合は二六・九%だったのです。それが、今度の予算を見ますと、なるほど十八億となっていますが、国際放送予算は九十七億ですから、占める割合は一八・六%と実際には減っているわけなんですね。額だけではなくて、こういう状況もきちんととらえながら郵政省は考えていくべきだということ。  それと同時に、これは放送評論家の志賀信夫さんという方の「衛星放送の越境と自由化」という本であります。この中に、その問題等についていろいろ書かれております。「国際化基金のようなものを別途つくらなければならない。」あるいは「国際放送国際化基金で、第三セクターで行うというのがNHKの本音」だ。本音がどうか、この本にはそう書いてある。こういうような本も出されております。  やはりもっともっと多くの意見というもの、きょうも財政問題では出されました。例えば、別の助成を考えたらどうか。江川局長は、アイデアとしてはあり得るというような答弁をされました。しかし、そういう問題について具体的にきちんと論議がやられていないから、いろいろな問題が出てきているわけなんですね。  NHKは、この放送実施することによってどれくらいかかるかという試算をしたことがあるのですか。――では、郵政省にお聞きします。
  99. 江川晃正

    江川政府委員 試算も我々としてはやってございますが、その前に先生、この法案についてちょっと事実誤認をしていらっしゃるのではないかと思われるところがございますので、御説明させていただきたいと思うのです。  いろいろな議論が必要ということは当然でございまして、我々としたらば、先ほどいろいろな方と言いましたが、あえて申し上げますと、放送事業者で十何人、番組制作、広告、新聞、著作権団体、衛星事業者、電気通信事業者、メーカー、商社、経済界、労働界、大学、官庁、有識者その他、数十人からいろいろな話を聞き、いろいろな議論をしながらこの法案をつくってきたつもりでございます。そういう意味で、必ずしも懇談会、研究会というのはいわば法案をつくる上での前置主義ではございませんので、いろいろな行政の手法として我々はこういうことをやってきたということで、私の御説明言葉が足りなかったとすれば、今そこにつけ加えさせていただきます。  そして、最後になりますが、交付金の場合でございます。これはとりあえずNHKがいろいろと試算してくれておりますので、それを私承知しておりますが、むしろそれはNHKの側からお答えしていただこうかと思います。
  100. 海老沢勝二

    海老沢参考人 映像による国際放送の経費の問題でございますが、今年度、アメリカヨーロッパで調査をします。その結果を見て最終的に決めたいと思いますが、放送番組の編成あるいは時間等の幅によりまして若干変わりますが、当面は十数億から二十億円くらいかかるだろうというふうに見ております。  先ほども、これを全世界にネットワークといいますか、二十四時間カバーするようになれば、トラポン代がかなりかさみますので、百億を超えるかもわかりませんというふうに答弁をしました。今そういう段階でございます。
  101. 矢島恒夫

    矢島委員 江川局長、あちこちからたくさん聞いたというのでいろいろ挙げましたけれども、国民的な合意、つまり受信料でこれを当面賄っていくんだということを郵政省がNHKに要請した以上は、有識者の意見を聞いたからこれがこれでいいんだというものじゃない、いわゆるNHKのオーナーである国民にどうなんだということを聞きながら、本当にその合意を得ながらやらなかったら、これは本当の国際親善になりません。国民の合意なしにどんどん進めて、国際親善だなどということだけを金科玉条のごとく挙げていたって、これは無理な話という点を指摘しておきます。  時間がなくなりました。最後の質問に入ります。  この法案を出すに当たって、いわゆる発信受信を一体にしていこうというので論議が進んでいたということは、もう郵政省も御案内のとおり。ところが、海外からの受信については法改正できなかったというのが今日の状況だと思うのです。なぜこれを早急に急いだかという点について、私は今まで国内的な合意やあるいは国際的な合意の問題を取り上げましたけれども、もう一つあるのです。それは規制緩和の問題ですよ。昨年秋に細川内閣が経済政策として規制緩和というのをやって、その項目の中に国境を越えるテレビが入っているわけですね。だから、法案はどうしても出さなければならないというのがメンツじゃないですか、こうなると。もっともっとよく論議をして、財政の問題もそうですが、とりわけ運用上の注意すべき点、それらを一つ一つ煮詰めながら、それでいこうとなれば、これはNHK会長さんも、ぜひ運用上誤らないような一つのやり方をつくってもらいたいという御意見もあったくらいですから、そういう点では余りにも急ぎ過ぎているんじゃないか。  そこで、時間の関係がありますので、大臣、最後にお聞きしたいのです。  こちらから発信する放送電波については法改正でやっていこう、ところが相手からは実際まだガイドラインもないという状況の中でこれをやるわけです。いわゆる受信という面についてはまだ法改正ができていない、国際親善とか交流ということに本当になるだろうか、少し身勝手な態度じゃないのだろうか、こういういわゆる海外への国際放送という問題だから、今まで論議されたような重要な問題があるのだから、国民的な論議を積み上げていくべきだと私は思うわけなんです。先ほど申しましたように、余りにも規制緩和策に縛られて性急な法改正に走って、それで将来禍根を残すというようなことがあってはならないと思うのですが、この点について大臣の御見解をお伺いいたします。
  102. 江川晃正

    江川政府委員 外国からの国境を越えるテレビ受信につきましては、今回の法改正にあわせて、発信者の意図や秘密の保護等の観点を考慮しつつ、放送として位置づけられるものを公示し、受信の円滑化を図ることとしているところでございます。  また、APT等の場を通じまして、番組ガイドライン策定等について国際的コンセンサスの形成に努めることとしておりまして、これらによりアジア太平洋地域における映像国際放送の調和ある発展を目指すこととしたいと考えているところでございます。
  103. 矢島恒夫

    矢島委員 大臣、コメントはありますか。
  104. 日笠勝之

    日笠国務大臣 いや、そのとおりです。
  105. 矢島恒夫

    矢島委員 終わります。
  106. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  107. 高橋一郎

    高橋委員長 本案について、日本共産党から討論の申し出がありましたが、先刻の理事会で協議の結果、御遠慮願うことになりましたので、御了承願います。  これより採決に入ります。  放送法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  108. 高橋一郎

    高橋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 高橋一郎

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  110. 高橋一郎

    高橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時二十五分散会      ――――◇―――――