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1994-06-06 第129回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年六月六日(月曜日)     午前九時二分開議 出席委員   委員長 白川 勝彦君    理事 逢沢 一郎君 理事 甘利  明君    理事 尾身 幸次君 理事 額賀福志郎君    理事 伊藤 達也君 理事 古賀 正浩君    理事 大畠 章宏君 理事 河合 正智君       浦野 烋興君    小川  元君       小此木八郎君    金田 英行君       谷川 和穗君    土田 龍司君       豊田潤多郎君    二階 俊博君       西川太一郎君    西村 眞悟君       矢上 雅義君    吉田  治君       松本  龍君    和田 貞夫君       赤羽 一嘉君    赤松 正雄君       佐藤 茂樹君    井出 正一君       枝野 幸男君    矢島 恒夫君       吉井 英勝君  出席政府委員         経済企画庁国民         生活局審議官  塩谷 隆英君         通商産業大臣官         房総務審議官  江崎  格君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       清川 佑二君  委員外出席者         参  考  人         (社団法人経済         団体連合会副会         長・経済法規委         員会委員長)  歌田 勝弘君         参  考  人         (日本商工会議         所常務理事)  西川 禎一君         参  考  人         (主婦連合会副         会長)     清水 鳩子君         参  考  人         (元日本弁護士         連合会会長)  中坊 公平君         参  考  人         (成城学園学園         長)      加藤 一郎君         商工委員会調査         室長      山下 弘文君     ————————————— 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     住  博司君   中尾 栄一君     浜田 靖一君   武山百合子君     矢上 雅義君   豊田潤多郎君     栗本慎一郎君   山田 正彦君     二階 俊博君   吉田  治君     青山  丘君   吉井 英勝君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   住  博司君     梶山 静六君   浜田 靖一君     中尾 栄一君   青山  丘君     吉田  治君   栗本慎一郎君     豊田潤多郎君   二階 俊博君     山田 正彦君   矢上 雅義君     山本 孝史君   矢島 恒夫君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   山本 孝史君     藤村  修君 同日  辞任         補欠選任   藤村  修君     小泉 晨一君 同日  辞任         補欠選任   小泉 晨一君     武山百合子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  製造物責任法案内閣提出第五三号)      ————◇—————
  2. 白川勝彦

    白川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出製造物責任法案議題といたします。  本日は、参考人に対する質疑を行います。  参考人は、社団法人経済団体連合会会長経済法規委員会委員長歌田勝弘君、日本商工会議所常務理事西川禎一君、主婦連合会会長清水鳩子君、元日本弁護士連合会会長中坊公平君及び成城学園学園長加藤一郎君、以上五名の方々でございます。  なお、加藤参考人は間もなく到着の予定でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、ただいま議題となっております本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人から御意見をそれぞれ十六分程度お述べいただき、次に、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず歌田参考人お願いをいたします。
  3. 歌田勝弘

    歌田参考人 ただいま御指名いただきました歌田でございます。  経団連の副会長並びに経済法規委員会委員長を務めております。本日は、経済界考え方を申し述べる機会を与えていただきましたことに対して、厚く御礼申し上げたいと存じます。  さて、経団連では、最近、活動一つの柱といたしまして、消費者生活者重視を掲げてまいりました。そうした理念のもと製造物責任の問題につきましても、私どもはこれを非常に重要なものと受けとめまして、特別の部会を設けまして検討するなど、これまで真剣に対応をしてまいりました。  製品安全性確保事故未然防止策、さらには事故が起きた場合の迅速、円滑な対応と、製品安全対策にかかわるあらゆる面におきまして、企業品質管理はもちろんのことでございますが、法律、規則、行政指導等におきまして、我が国は既に世界で最も進んだ状況にあると確信をいたしておりますし、また、OECDの評価にもあるわけでございますが、経団連といたしましては、そういった状況に満足することなく、一昨年の十二月には「製造物責任に関する自主的ガイドライン」を取りまとめました。お手元にお配りしてあると存じます。このガイドラインもとに、製品安全性確保、万一事故が起きた場合の迅速、公平対応などに一層きめ細かく取り組むよう、改めて各業界企業に呼びかけてまいったところでございます。  その後、ガイドライン精神にのっとった対応が多くの業界団体企業におきまして進められておりまして、警告表示充実とか業界団体などの場を利用しての対応窓口設置充実といった面で一層の積極的な対応を進めておる業界もあるわけでございます。  さらには、安全性の一層の確保を図る観点から、国際標準化機構、ISOと申しますが、それが制定いたしました品質保証品質管理に関する国際規格我が国においても活用できるよう、経団連が中心となりまして国際規格認定機関の設 主を進めてまいりました。この認定機関は既に昨年の秋から活動を開始いたしております。  さて、法制化の問題につきましては、企業のこれまでの努力を正当に評価し、各業界における実情も十分に踏まえた上で、我が国実情に合った内容のものを取りまとめるべきであるというのが、私ども経済界の基本的な考え方でございます。  具体的に申し上げれば、ソーシャル・コスト・ミニマムを第一に、豊かな生活を目指す消費者生活者のためになり、また、企業創意工夫、新製品開発支障とならないようなバランスのとれた形のものが必要ということでございます。  とりわけ、経済的、社会的影響を十分に見きわめた取りまとめが不可欠でありまして、中小企業に対しては、過度負担を与えることのないよう、十分留意すべきであると考えております。  その意味から申しましても、目下提出されております法案は、長い年月をかけ慎重に検討されてまいりました。政府国民生活審議会産業構造審議会、さらには法制審議会など幾つかの審議会でまとめられた答申を踏まえ、かつまた国民各界各層意見をできるだけ反映し、合意の上取りまとめられたものでございまして、これを尊重した御審議が行われますことを御期待申し上げております。  とりわけ以下の四点につきまして、私どもの考えを申し述べさせていただきたいと存じます。  第一に、欠陥概念具体化明確化でございます。具体的にどのような場合に欠陥とされるのか、企業消費者双方にわかるよう、欠陥概念をできるだけ具体化明確化することが必要と考えます。欠陥責任原則導入は我が国法制度の大転換でありまして、そのような大きな変更国民ができるだけ円滑に対応していくためには、欠陥概念具体化はどうしても不可欠な措置でございます。また、欠陥概念明確化とあわせて、原告が製品のどこに欠陥があったかを明らかにすることが必要と考えます。  第二は、既に法案に盛り込まれております開発危険の抗弁についてであります。研究開発技術革新が阻害されないようにするためには、開発危険の抗弁を認めることが必要でございます。企業製品開発意欲の萎縮は、結局は消費者にも不利益を及ぼすものであり、既に法制化している欧米諸国におきましても、開発危険の抗弁は認められておるわけであります。なお、その場合の技術レベルは、製造者我が国で実際に入手可能な最高水準とすべきと考えます。  第三に、推定規定について、これを本法案に盛り込むことが見送られましたことは大変評価をいたしております。  推定規定導入した場合には、企業活動に大きな混乱がもたらされることは必至であり、その場合には結果として被害救済にも支障を与えることになろうかと存じます。最終的に欠陥の存否が不明な場合にまで企業側賠償責任を負わせることは、公平性観点からいっても受け入れられません。  欠陥存在時期につきましても、購入後の製品消費者管理下にあるわけでありまして、流通開始後に改造、修理などの第三者行為が行われたかどうかを企業側が立証することは極めて困難であることを考えますと、推定規定を置くべきではないと考えております。  推定規定を法文上置いている国は存在しないことは御案内のとおりであります。欠陥存在欠陥損害との因果関係欠陥存在時期のすべての場合におきまして、推定規定を置くべきではないと存じております。  第四は、責任期間の問題でございますが、法案にありますように、流通開始後十年とすることが妥当と考えます。制度に円滑に対応できるようにするためには、適切な責任期間を置く必要がございます。製品耐用年数消費者の一般的な使用期間を考慮いたしまして、また、EC諸国やアメリカの状況参考にして、一律に責任期間を置くのであれば、流通開始後十年とすることが妥当と考えます。  以上申し上げました私ども考え方と本法案は基本的に合致するものでございまして、経済界といたしましては、この基本線を堅持して法案が成立されますことを強く期待いたしております。  今後の国会審議に際しまして、重複いたしますが、重ねて次の二点について格別の御配慮お願いいたしたいと存じます。  第一に、法案審議の過程において、欠陥概念がより具体的な形で国民にわかりやすいものとなることを期待いたしております。欠陥を判断するに当たって、総合的に勘案すべき事情を可能な限り明確にしていただきたいと存じております。この点につきましては、裁判規範機能と、また、我々企業側行動規範としての機能を両方あわせ持っておることを御勘案いただきたいと存じます。  第二に、中小企業への影響を考慮した十分な準備期間設置普及活動あるいは国民生活に特に大きな影響を与える問題について、法の運用面での御配慮お願い申し上げたいと存じております。  なお、法制化の問題と並びまして、裁判外紛争を調停するための機関、いわゆる第三者機関設置が残された重要な問題でございます。相対交渉裁判に加えて、行政による調停機関設置することは、いたずらに制度複雑化させることになりまして、コストの面からいきましても、円滑な紛争解決の面からいきましても、消費者にとっても、また産業界にとっても必ずしも利益とならないと考えます。  ひとまず、第三者機関については、それぞれの業界が知恵を絞り、商品特性について配慮し、業界実情に応じた体制をあくまで自主的につくっていくことが重要と考えております。  いずれにいたしましても、今後いろいろと規制緩和をすることになると思いますけれども企業自己責任自助努力で解決できるようにすることが大切であります。経団連といたしましても、今後とも、製品の安全の確保、万一事故が起きた場合の迅速、公平処理再発防止などについて、さきに申し上げましたガイドライン精神にのっとった対応を進めていくよう、企業に呼びかけてまいる所存でございます。さらには、消費者方々とも十分な意思疎通を図り、安全教育などにも一層取り組んでまいりたいと考えておりますので、先生方の御理解、御支援お願いいたしたいと存じます。  以上、経済界意見を述べさせていただきました。諸先生方の御理解を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。  御清聴いただきましてありがとうございました。(拍手
  4. 白川勝彦

    白川委員長 歌田参考人、どうもありがとうございました。  次に、西川参考人お願いをいたします。
  5. 西川禎一

    西川参考人 日本商工会議所常務理事西川でございます。  商工委員会先生方には、平素いろいろ御支援を賜っております。また、本日は、製造物責任制度法律導入に関しまして、参考人として意見を述べさせていただく機会をつくっていただきまして大変ありがとうございます。  この法律の問題でございますが、商工会議所といたしましても大変強い関心を持ってまいりました。一昨年来、商工会議所の中に特別委員会をつくりまして、いろいろ議論をしてきたわけでございます。通産省の商業構造審議会あるいは経済企画庁国民生活審議会においていろいろと検討を重ねられてまいりましたけれども、その折にも私ども意見最大限審議会で述べさせていただいてまいっております。  御案内のように、商工会議所の会員は中小企業方々がほとんどでございます。私どもも、この法案検討に当たりましては、主として中小企業立場から問題を把握してまいりました。皆様御承知のように、中小企業は、大企業に比べまして、財務、法務、技術人的組織、いずれの面に おきましても大変脆弱と言わざるを得ない状況にあるわけでございまして、こうした中小企業実態を踏まえた制度ができ上がることがぜひとも必要ということを訴え続けてまいったわけでございます。  現在、国会に提案されております法案内容につきましては、結論として申し上げますと、私どもが主張してまいりました事項が相当取り入れられているということを考えておりますが、正直に申し上げまして、新たな法制度として対応できるぎりぎりの線ということではないかと考えております。仮に、さらに法案内容中小企業者にとって厳しいものになるような変更が行われるというようなことになりますと、製造物責任制度導入自体に、大変心配をしている中小企業といたしましては、それ自体に反対するという声が強まるのではないかと考えるわけでございます。  法に則しまして幾つか具体的な点を申し上げたいと思います。  一つは、欠陥概念の点でございまして、できるだけ明確にしてほしいということを主張してまいったわけでございます。欠陥概念があいまいでございますと、製造者が的確な判断をし、また措置を講ずるということに対しまして支障を来すことにもなりますし、製品安全性向上の妨げにもなることが考えられます。同様のことは消費者にとっても言えるのではないかと思うわけでございます。  第二は、推定規定の点でございまして、推定規定には、欠陥存在推定、あるいは欠陥損害因果関係推定、あるいは欠陥存在時期の推定等があるわけでございますが、いずれをとりましても、現行不法行為法の体系的な整合性観点からこれを置くということは不合理ではないかと考えます。また、原因が特定されないまま製造者過度責任が課されるおそれがあると考えます。  第三点は、開発危険抗弁の点でございます。予見可能性の全くない欠陥につきまして製造業者責任を課することになりますと、新製品開発意欲が阻害され、技術革新の停滞による不利益消費者にも及ぶという可能性があると思います。さらに言うならば、産業活力の衰退という点にもつながることが強く懸念される次第でございます。  四番目が責任期間の問題でございまして、製品の平均的な使用期間企業におきます製品データ保存負担といった点を考えますと、十年が妥当と考えます。  五番目は、部品・原材料メーカー等の扱いでございますが、取引先企業からの設計や指示に起因して発生いたしました欠陥責任は免除されるべきだと考えております。  それから、この法律の実施の時期という点も非常に大きな問題でございます。  中小企業におきましては、製造物責任制度に対する理解が十分とは言えない面も現にまだ見受けられております。また、制度自体導入に対して強い不安感を持っている者も大変多いのが実態でございます。  そこで、法施行を急ぎますと、中小企業の不安が一層募るということになりかねません。やはり十分な周知期間対応準備期間を設けることが必要であります。法律公布施行までの間に、少なくとも一年間以上の準備期間が必要ではないかと考えます。  以上申し上げました点につきましては既に法案にいずれも盛り込まれておりますので、ぜひともこれを維持されるよう御理解を賜りたいと存ずる次第でございます。  次に、中小企業立場から、今後の対応等の問題について若干御意見を申し上げさせていただきます。  今日、科学技術の発展に伴いまして、製品高度化複雑化がますます進展をしております。製品安全対策事故未然防止対策はさらに重要性を増しておりまして、その取り組みのためのコスト負担も増大しているわけでございます。  冒頭に申し上げましたように、中小企業脆弱性や今後のこの新しい制度への対応などを考えますと、中小企業のこうした不安を解消し、さらに中小企業がこの問題に積極的に取り組むことを促進していくことが重要でございます。このため、中小企業が安心して対応できますような環境整備支援策について十分な配慮政府お願いいたしたいと考えます。  その主要な点を申し上げたいと思います。  第一に、法施行前に制度について十分な啓蒙普及を図っていただきたいことでございます。  第二は、製品安全対策あるいは警告表示方法等について、企業向けのマニュアルの作成とか、あるいは企業業界団体におきます製品安全確保対策への取り組みに対します助言、相談などの体制を整備していただきたいということであります。  第三点は、製品安全性向上あるいは事故未然防止生産管理管理体制向上のために、企業がいろいろな取り組みをこれからすることになると思います。新たな技術やシステムの開発、機械・装置等の設備の取得などでございますが、これらに対しまして、税制・金融上の優遇措置を講じていただきたいと考えます。  第四は、万一事故の発生により紛争が生じた場合、速やかな対応ができるように、事故原因究明機関あるいは紛争処理機関を一層整備していただきたいことであります。  第五番目は、被害者救済の履行を確保するための資金的な手当てが要るわけでございますが、中小企業が加入しやすいような保険制度をいろいろと御工夫いただく、政府として御配慮いただくということをお願いいたしたいと思います。  以上、るる申し上げましたが、中小企業としても製品安全対策事故未然防止対策の問題の重要性十分理解をいたしております。法律のあるなしにかかわらず、みずから取り組むべき問題だということは基本的にはよくわかっておるわけでございます。しかしながら、先ほど申しましたような中小企業の現実ということに十分御理解を賜りまして、今五点ばかり申し上げましたようなことにつきまして特段の御配慮がいただけますようにお願い申し上げる次第でございます。  以上、中小企業立場を主に踏まえまして意見を述べさせていただきました。  どうもありがとうございました。(拍手
  6. 白川勝彦

    白川委員長 西川参考人、どうもありがとうございました。  ただいま加藤参考人が御到着になりました。本日は、よろしくお願いいたします。  次に、清水参考人お願いをいたします。
  7. 清水鳩子

    清水参考人 ただいま御紹介いただきました主婦連合会の副会長清水でございます。  私は、四本くらいの柱に分けて、消費者立場から意見を申し上げたいと思います。  一つは、これまで私どもが取り組んでまいりました運動の経過と、その到達点、二番目は、欠陥商品による消費者被害実態、それから、今国会で御審議いただいております法案に対する意見、そして最後に、今日本の置かれている状況の中でPL法制定早期実現が必要だという意味のことで御発言したいと思います。  まず、一番目の柱でございますけれども、私どもは、消費者のためのという言葉を頭に乗せまして、製造物責任法制定を求める全国連絡会を一九九一年の五月十八日に結成いたしました。この連絡会は大変幅広い構成で運営されております。例えば、私どものような消費者婦人団体はもちろんのことでございますけれども消費者センターとか国民生活センター、また中には企業消費者窓口相談実務に当たっておられる相談員方々、それからそういう機関法律的、専門的なお立場でアドバイスをしていただいております学者とか弁護士方々などを構成メンバーにして運動を進めてまいりました。  どんなことをしてきたかということでございますが、これはPL法という非常にわかりにくい、難しい法律でございますけれども、この連絡会の三年余りにわたります運動の中で大変大きな世論 喚起と申しますか、自分たち生活商品の選び方も含めまして、どういう法律が一番二十一世紀に向かって望ましいかということを勉強してまいりました。  例えば、勉強会の開催ですとかシンポジウム、それから集会ももちろん開きましたし、先生方にも何回か大変御迷惑をかけたと思いますけれども、毎週火曜日には国会への要請、先生方へのお願い国会の中に伺わせていただいたりいたしましたし、それから署名も、去年の十一月末現在で約五十万余の署名が集まっております。そういうことで、ここにおられる歌田さんとか商工会議所方々とももちろん何遍も話し合いの場を持っていただいたりいたしました。こういうふうにしまして、消費者立場に立ったPL法というのはどういう中身が必要かということも具体的に提案もしてまいりましたし、案もお示ししてまいりました。  中でも、この連絡会運動の大きな成果として、地方自治法第九十九条二項に基づいて、各地方自治体で早期制定を求める意見書の採択をしていただいております。これは、ことしの三月現在で、四十二都道府県にわたる三百十二地方議会でございます。これは先生方十分御承知でいらっしゃいますけれども、全会派の先生方紹介議員になっていただいてこの決議を採択しております。そういう意味では、地方議会における地域の消費者議員先生方との幅広いネットワークがここでできてきたというふうに思います。  製造物責任法と申しますのは、初めこの問題を取り上げたころには、ちょうどPKOの問題なんかも起こっておりまして、PKOと間違ってみたり、LPガスと間違ってみたり、もう大変に混乱いたした時期も正直言ってございます。今商工会議所先生も、商工会議所の中でもそういう理解の難しさがあるというお話でございましたけれども、まして一消費者ですと本当に大変難しいことでございましたけれども、こういう難しい問題にも本当に丁寧にみんなで学習をして、パンフレットもつくったりいたしまして学習をいたしておりました。  それから、立法運動というのは、私は昭和二十三年から主婦連合会に参加しておりますけれども立法運動というのはそう数多くないのでございます。ましてPL法のように、すべての商品を総合的に網羅して、しかも民法という大変難しい法律の特例ということで、今までの割賦販売法ですとか、そういうものとはまた一味も二味も違って大変難しいテーマでございましたけれども、それを乗り越えてやはり運動ができたということは、ぜひ先生方に御理解いただきたいのは、これが消費者国民の世論だということでございます。  そして、宮澤総理、細川内閣、羽田内閣と、ずっと各総理が、最近、生活者重視消費者重視ということを強調しておられまして、この考え方はやはり経済大国日本の世界的な一つの大きな使命とも言える政策目標だと思いますので、私たちが取り組んでまいりましたこの運動の成果が今度の立法の中で十二分に生かされるような内容であっていただきたいということをきょう申し上げたいと思います。  私は国民生活審議会産業構造審議会委員もいたしました。それで、本当にけんけんがくがく、激しい議論がございまして、当初はやはり賛成か反対かという非常に抽象的な意見の対立て、本当に先行きどうなるかなということもございましたけれども、数重ねる審議の中で、やはりお互い、決して自分たちの考えが一〇〇%通ったというふうにはそれぞれの委員が言い切れないと思います。ある部会長先生が、この答申はみんながそれぞれの不満を少しずつ持ちながらここまで到達したんだというふうにおっしゃっておられましたけれども、やはり私もそうだと思います。しかし、過失責任から欠陥責任にという大きな流れの中では全部の関係者が合意を得たということで、この法案の中身にはそういうことが色濃く盛られているとは思いますけれども、中身については一、二私も意見がございますので、また後ほど申し上げたいというふうに思います。  それから第二点の消費者被害実態でございますけれども、被害を把握するための制度としては、国民生活センターの危害・危険情報、これは消費者センター国民生活センターをバイオネットというネットで結んでおりますけれども、その情報システム、それから通産省の事故情報収集制度、厚生省の医薬品副作用モニター制度、それから運輸省にも自動車の情報を直接収集する仕組みがございます。それから、私たちの大変身近なところでは、消防署とか警察の事故情報の収集制度がございます。それから、自主的な活動といたしましては、筑波大学ですとか大阪大学の中毒情報センター、こういうところに情報がたくさん集まっておりますし、それから、私たち消費者団体の中にも日常的に消費者苦情を受け付けております。私どもの方でも年間約四千件近い一般からの苦情相談が参りまして、その中にも製品事故にかかわるものも決して少なくはございません。  さきにちょっと申し落としたのですけれども連絡会として「欠陥商品一一〇番」というのを過去五回ほど開催いたしました。この「欠陥商品一一〇番」は、一般の消費者から潜在的、要するに埋もれている製品による消費者被害を幅広く受けとめて、そしてその処理をしていくということ。それから、その中からPL法の中身について、こういう具体的な中身を盛り込むべきだというふうな立法提案の中につなげてまいります。  それを見ますと、これらの公的な機関の被害把握制度というものは、やはりあくまでも件数としては非常に氷山の一角と申しますか数が少ないわけですね。そういう制度のあることも一般の消費者はなかなか知りませんし、どこへどういうふうにしていいかわかない方がほとんどでございますので、そこに挙げられている件数が少ないからといって消費者製品による被害が少ないというふうには言い切れないということは、一一〇番をやってみて常に実感していることでございます。  それから、消費者がどこに苦情を持っていくかということですけれども、これは国民生活センターが調査したのをここに数字として挙げさせていただきますと、苦情をどこにも持ち込まないというのは四九・二%です。それから、販売店、セールスマンに苦情を言うというのが三八・六%で、メーカーに直接言うというのは一三・二%です。それから、消費者センターとか国民生活センターに持っていくという件数は二%か三%。それから、欠陥商品一一〇番では六・何%というオーダーですけれども、非常に少ないわけですね。  なぜ苦情が潜在化しているかということは、いろいろ原因があると思いますけれども、きょうここで申し上げるのは、苦情の件数が少ないから製品による消費者被害は少ないとは言い切れないということと、それからよく企業の方がおっしゃるのですけれども相対交渉でうまくいっているから別に新しい法律をつくる必要はないんじゃないかということでございますけれども、この相対交渉というのはいろいろな問題を抱えております。ちょっと整理をしてまいりましたので申し上げたいと思いますけれども、五点ほどございます。  まず第一点は、メーカーによって事故原因を誤使用と判断されるケースが多くて、これが消費者にとって相対交渉の不満につながっている。この誤使用ということは、通産省の調査にもありますけれども企業消費者苦情の中で誤使用と判断する件数と、それから私ども消費者が実際に使ってみて、メーカー、販売店から誤使用といって切り捨てられるレベルの違いというのは相当幅があるわけですね。そこがまず第一点です。  それから第二点は、製品欠陥を証明しようとしても、製品の製造過程の情報の入手が非常に難しくて消費者が証明困難である、これは製造物責任法の中でも大変大きなポイントだと思います。泣き寝入りをするとかあきらめてしまうというのは、これは私たち消費者だけでなくて弁護士会の調査にもございますけれども、そういう相談を受けても立証困難だということで、裁判まで取り次 げないという件数も決して少なくないという日弁連の調査も拝見したことがございます。  それから三番目は、企業消費者相談窓口における紛争解決ルールは必ずしも明確でない。少なくとも一般消費者にそのルールは開示されていないわけです。ですから、専門の弁護士とか相談員とか消費者団体がそこに関与した場合のレベルと、本当に普通の素人の消費者が苦情を申し出た場合の相対交渉の水準というのは全く違うわけでございます。  四番目は、それともちょっと関連するのですけれども、被害者一人一人の解釈の水準には差があるのではないかということです。これはメーカーの方が、やはり公平さ、それから透明性の確保ということにおいてやや問題があるのだというふうに思います。  それから五番目ですけれども相談員とか弁護士の専門家が介入したことによって解決水準が変わる、これは一一〇番をやっていて明らかなことなんですね。いかに消費者一般は、今の法体系もしくは企業の苦情処理体制の中で切り捨てられているかということが明らかになってきていると思います。  それで、ここの問題が製造物責任法の中で解決されると、今前の参考人の方がおっしゃっておりましたけれども製造物責任法というのは、一つの過失から欠陥へという責任のあり方の変更だけでなくて、やはりこうした相対交渉の規範にもなるわけですから、かなりきちっとした消費者立場に立ったPL法制定されない限り、こういった相対交渉の規範にも相当大きな影響を及ぼすということもここで申し上げておきたいと思います。  それから三番目に、法律そのものに対する意見ですが、ちょっと時間がなくなってまいりましたので幾つかに絞って申し上げますけれどもPL法によって被害者の立証負担が軽減されることになるはずなのですけれども、やはり被害者の立証負担というのは依然として重く残るわけです。被害者にしてみれば、メーカーの過失を立証することよりは、製品欠陥を証明することの方が容易であるということは言えるわけですけれども、先ほどから申し上げているように、製品安全性に関する証拠開示の規定がない我が国においては、冠が変わっても実態がどこまで変わり切れるかということで、欠陥の証明自体が必ずしも簡単ではないということで、ここのところにも法律の中できちっとした位置づけをしていただきたいというふうに思います。  それから、もう一、二申し上げますけれども推定規定でございますけれども法案では推定規定は認められないというふうに書いてございまして、消費者団体も、連絡会でも、それから私たち委員としてもこの必要性を訴えてきたわけですけれども、いろいろ法律的な解釈とか、ほかの法律的な体系の中で難しいということでございまして、見送られて大変残念ではございますけれども、もしそれが認められないのであれば、欠陥の立証の困難性を補う工夫というものが不可欠でございます。  これは裁判所に申し上げることかもしれませんけれども、先日の八尾市のテレビの出火の判決のように、事実上の推定というのが柔軟に働くかどうかということに、私たちは大きな戸惑いと不安というのを隠し切れないで今おりますのは事実でございます。これは、国、地方自治体の事故原因究明機関の整備ですとか、民間の各種の検査機関、試験研究機関充実を図ることによってこの被害者の立証負担の問題に対応するなど、行政としてどこまで軽減を図るかということが大きな課題として残されていると思います。  それから二番目には、条文の解釈の問題です。目的規定のところに「国民経済の健全な発展に寄与する」というふうに規定されておりますけれども産業界配慮する余りに、消費者保護がおろそかにならないようにということです。これは、私たちもう何遍もその目的の解釈については確認をしてまいりまして、消費者保護のための法律だということは伺っておりますけれども、往々にしてこの法律の解釈というのはそのときの力の関係によって非常に右左に大きく揺れるわけですから、この製造物責任法はあくまでも消費者保護の法律であるということを明確にしていただきたいというふうに思います。  それから、最後ですけれども、第二条の欠陥の定義の規定ですけれども、ここで判断要素の例示として三つ挙げておりまして、初め言われておりました六項目は除外されましたけれども、この中の製品の特性という表現がこの六項目の判断要素を意味するものであるとしたら、この法律そのものが限りなく過失責任に近づいてしまうということでございますので、欠陥概念は、先ほど申しておりますように、裁判基準となるだけでなくて、相対交渉の基準ともなる重要な点だと考えておりますので、判断基準を限定しないということを強くお願いしておきたいと思います。  最後に、この国会でぜひこの製造物責任法を立法化していただきたい。会期が非常に詰まっておりまして、私ども素人ですけれども、はたから見ておりまして本当に心配でございます。新聞の隅々まで注意をして見ているようなことでございますし、三日も私は商工委員会を傍聴させていただいたし、きょうも大勢の消費者の方が傍聴しておりますけれども、ぜひ今国会で成立をさせていただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手
  8. 白川勝彦

    白川委員長 清水参考人、どうもありがとうございました。  次に、中坊参考人お願いをいたします。
  9. 中坊公平

    ○中坊参考人 中坊でございます。  私は、今国会審議されております製造物責任法案について、一弁護士として法律実務家の立場から意見を申し上げたいと思います。  もっとも、私自身は、かつて森永ミルク中毒事件の被害者弁護団の一員として参加した者でもございますし、また、製造物の欠陥による被害の予防と救済のために、あるべき製造物責任法内容について調査研究を進めております日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会にも所属している者でもあります。また、日本弁護士連合会が平成三年、すなわち一九九一年三月に製造物責任法要綱案というのを作成して、これを公表した当時の連合会の会長でもございます。  まず、結論から申し上げたいと思います。  私は、現在、内閣から今国会に提出されております製造物責任法案というものは、製造物の欠陥による被害者の保護を図るという目的から見てまだ幾つかの不十分な点があり、また、運用によっては被害者の保護に相反する結果を招くおそれもあることを指摘しながらも、従来の過失責任の原則というものを客観的な欠陥責任考え方に転換して被害者の保護を図るという本法案の基本的な立場というものを高く評価いたしまして、本法案に賛成いたしたい、このように考えております。  そこで、まず、過失責任から欠陥責任に転換することの意味について一言申し上げたいと思います。  いかなる時代におきましても、またいかなる社会現象に対しましても、法の理念というのは常に正義の実現であります。そして、その指標は自由と公平であります。  しかしながら、従来、我が国では、製造物責任に関しまして、常に企業という組織体と消費者という一個人の力の強弱というものを無視して、あるいは科学技術の進歩に伴う製品の高度技術化、複雑化という社会の変化に目を覆い、ひたすら不法行為制度におきます過失責任の原則が形式的に適用された結果、消費者が加害企業の故意過失を立証してその責任を追及することは極めて困難でありました。その結果、製造物に内在する危険を社会的にそれではだれが公平に分配するのがいいのかという方法としては、従来の過失責任の原則というものは著しく正義に反する結果を招いてくることになっていたのであります。  私が関与いたしました森永ミルク中毒事件につ いて考えてみますと、昭和三十年に発生しましたこの森永ミルク中毒事件におきましては、森永乳業株式会社が製造しました乳幼児の実は唯一の食糧であります粉ミルクに、その製造過程で砒素という毒物が混入いたしました。その事実を知らずに飲み続けて砒素中毒に罹患した乳幼児は、当時の厚生省の発表だけでも一万二千百三十一名に及び、このうち百三十名が死亡するという大事故になりました。それからきょうまでもう四十年に近い時日が経過いたしました。しかしながら、我が国ではこの事件の多くの被害者がその後なお後遺症に苦しんでおるわけであります。  森永乳業株式会社は、事故発生の直後から少なくとも昭和四十九年まで十九年間にわたり、一貫してみずからの過失責任存在を否定し続けられたのであります。私たちが昭和四十八年四月に製造物責任による損害賠償の訴えを提起したときにも、まさに絶対的な安全性が求められる乳幼児のミルクについてさえ、森永は食品企業として、原料の一部として購入した第二燐酸ソーダという化学合成品に砒素が混入していたけれども、これは専門の商社から安全な商品だと信頼して購入したのであって、本件事故予見可能性はなかったのだ、また、みずからその安全性を検査する義務もなかったと強弁して、過失責任を争い続けてきたのであります。  これが私から言わせれば企業実態であります。過失責任という原則が被害者にとってどれだけ高い障壁であったか、また、そのためにどれだけ多くの被害者が泣き苦しんでいたかを、本日御審議いただく皆様にもどうか御理解いただきたいと思うのであります。  企業を代表される立場方々から、日本製品は世界に冠たるすぐれた品質管理によって、世界じゅうの人々から極めて良質だという評価を得ておる、そして、日本企業は決められたルール以上に厳しいチェックをし、よい製品をつくるよう努力しているのですというような発言をよく聞くわけであります。しかしながら、これは一面において当を得ているとは思います。しかしながら、製品欠陥によって体や命を失った被害者にとっては、この言葉は余りにも薄情な言葉なのであります。  そして、この非常さこそが、サリドマイド、スモン、クロロキン、カネミ油症、世界に類のないような悲惨な食品薬害事件を我が国において発生させ続けてきた根幹に実は横たわっているのだと私は思っております。  このような大規模な被害だけではなく、日常生活の中で発生する製品被害についても過失責任の壁は厚く、これを突破するためには、損害賠償で得られる補償よりも実は何倍かの労力と費用と時間を必要としたのであります。まさに製造物責任において過失の原則が維持される限り、法の理念である正義は、この意味においては失われていると断言しても過言でなかったと思います。  こうした時代に終止符を打って、製品に客観的に欠陥存在することさえ証明すれば被害者に救済の手が差し伸べられる状況になることを確認することということは、本当に限りない前進なのであります。  欠陥責任化は、欧米諸国もとより、今日世界の趨勢であります。遅きに失したとはいえ、本法案欠陥責任立場に立つことを確認している限り、私は基本的にこの法案に心から賛成をしたい、このように思うわけであります。  さてしかし、一応弁護士という法律実務家の立場からこの法案を少し子細に検討いたしますと、前述の画期的な企図を完全に実現するという視点からは、なお幾つかの不十分な点あるいは問題点があるようにも思われるのであります。そこで、以下、主なものの五点ほどについて申し述べたいと思います。  まず第一点は、大変重要な「欠陥」という言葉の定義についてであります。  欠陥を、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と定義しております点は、社会通念に照らし、利用する人が通常期待し得べき安全性を欠いていることだということと同じ意味だ、こういうふうに解されるならば、これは全く是認できるところであります。しかしながら、本法は、よく見ていますと、欠陥の定義に関しまして、考慮事項として、「当該製造物の特性」及び「その他当該製造物に関する事情」を加えられております。このことは、欠陥概念を不当に限定して解釈されることにはなりはしないかと危惧しておるものであります。  第二番目に、この法案では、欠陥存在及び欠陥損害との因果関係推定規定並びに事故時の欠陥存在から引き渡し時の欠陥存在推定する規定は全く置かれておりません。  裁判上、製造物責任を追及するに当たりまして、実務家にとって最も重要な課題というものは、いわゆる帰責事由に関する証明の問題であります。これまでの裁判実務では、事実上の推定が働いて、妥当な結果が得られていたのではないかというような説があるかもしれませんが、我々の実感としては実はそうではありません。通常人が合理的に疑いを入れることの余地のない程度の真実性の証明が要求される我が国裁判実務の実情を考えるとき、前述のいろいろな問題に関する推定規定が全部排除されているということは、本法を利用する被害者にとっては今後もなお重い障壁が残っておるわけであります。  さらに、製造に係る証拠や情報並びに科学的技術的な知見が一方的に製造者に偏在して、しかも証拠開示の制度がほとんど存在しない我が国の訴訟法のもとでは、被害者にとっては、証明負担欧米諸国の人たちに比較して困難が倍加されることになると思います。今後、本法を解釈運用するに当たりましては、公平損害の分配のために、企業が保有する安全性に関する情報と公的機関の情報が容易に裁判の場に提供される証拠開示に関する制度が改正され、社会常識に合致した事実上の推定が行われるということがぜひ必要なことではなかろうか、このように考えておるわけであります。  三番目といたしまして、本法案では開発危険の抗弁が認められました。  製造物の種類によりましては、開発危険の抗弁を必要とする製造者側の論理は理解できないわけではありませんが、この場合も、世界最高の科学・技術の水準によっても知り得ない危険についてのみ抗弁となるものでなければならないと思っております。そうであったと仮に仮定いたしましても、この場合においても、力の弱い被害者側にとっては、この最高の科学知見と資料を探し求めることが必要になってまいります。弱者である被害者側にこの点も重い負担になることを見逃さないでいただきたいと思うのであります。  四番目に、製造物の範囲についてであります。  本法案が製造物の範囲を製造または加工した動産に限定しましたことは、被害者保護という立場からは不十分さを残したと思っております。特に、欠陥商品一一〇番で苦情の大変多かった建築物を全く除外していることは問題であります。  さらに、今回の法案審議の中では、血液製剤の中で全血製剤あるいは血液成分製剤を法の適用対象から除外せよというような議論があるとも聞いておりますが、血液製剤そのものは最も危険性の高い製造物の類型の一つでもあり、除外されるべきではないのではないか、このように考えております。  五番目に、そのほか、日本弁護士連合会が提案してまいりました懲罰賠償を認めることになる付加金の制度を提案いたしましたが、これも認められておりません。このことは、特に実質的に少額被害の救済を進めてまいります上に、結局、費用の方が多くなるということになって、不十分さを残しておると思うのであります。  このような問題点は残しながらも、先ほど申しますように、大きな原則において我々はこの法案に賛成したいと思っておるのであります。  さて、この法案が成立いたしましたといたしましても、被害者の十分な救済が図られるためには、なお幾つかの問題が残っております。  この法案は、御承知のとおり、製造物責任に関する諸制度のうち、不法行為に基づく損害賠償責任の基本原則に関する部分を立法化したものであります。  製造物責任に関しましては、このほか、製品安全対策、証拠開示の制度事故原因究明制度紛争解決制度損害賠償義務の履行確保制度など、被害者保護を図るという立場から新しい制度あるいは諸制度充実した運用が不可欠であり、この意味におきまして、この機会に改めて、立法、行政及び司法の各分野において、各関係者の一層の努力が期待されるところであります。  さて、最後に、本法案の成立によって製造物責任に関して法的救済を求める訴えが増加することが期待されますが、それでは、我が国の司法の分野でこの機能を十分果たせる体制になっているかどうかについて一言申し上げておきたいと思います。  我が国裁判制度を含む司法制度全体は、市民にとって遠い存在であり、わかりにくく、時間と費用がかかり過ぎるという批判があります。私たちは、司法をもっと市民に身近で、わかりやすく、納得できるものにして、利用しやすいようにしなければならないと考え、この視点に立って司法改革運動を進めております。  この司法改革運動におきまして、まず私たち弁護士の自己改革から進めなければならないと考えております。なぜならば、弁護士という職業は、本来、市民と裁判、市民と法とを結ぶ接点に立っているからであります。そして、今求められていることは、この点に関する自覚であり、公に奉仕する行動だと考えております。  アメリカにおきまして製造物責任に関連して訴訟が乱発されていることが問題にされております。この批判の当否は別に置きまして、弁護士が公に奉仕する精神を失いましたならば、我が国においても同様の批判が起こることが予想されます。私たちは、ビジネスオンリーに堕することのないよう一層の努力を続けていきたいと思います。  本日はどうもありがとうございました。(拍手
  10. 白川勝彦

    白川委員長 中坊参考人、どうもありがとうございました。  次に、加藤参考人お願いをいたします。
  11. 加藤一郎

    加藤参考人 加藤でございます。  私の専門は民法でございますが、その中でも特に不法行為による損害賠償を専門としておりますので、製造物責任についてはかねてから関心を持っておりましたし、民法学界ではいろいろな検討が行われてまいりました。それで、この法案ができたこと、そしてこれが本国会で成立することがいわば民法学者の悲願であった。ほとんどの民法学者はこれに賛成していると思いますし、私もぜひこの国会で通していただきたい、こういうふうにお願いをする次第でございます。  私は、製造物責任が発展してきた今までの経過を第一に申し上げて、これが今日の自然というか当然の勢いであるということからこれを支持したいと思います。それから、この法案審議会などで検討し、また立法作業の途中で問題になった点について私の考えを申し述べさせていただきまして、この法案は決して欠陥のあるものではなくて、十分機能し得るものであるということを第二に申し上げて、この法案を支持したいと思っております。  まず第一の製造物責任の歴史と申しますか発展の経緯を申し上げてみたいと思うのですが、これは何か大学の講義みたいになって恐縮でございますけれども、お聞きいただきたいと思います。  今日の製品の製造あるいは販売過程というものが非常に変わってまいりましたことがこの製造物責任が論議されるもとになっていたと思うわけですが、これについて、過失責任で足りるのかどうかという議論は前からございましたが、一九六三年にアメリカのキャリフォーニア州の最高裁判所で、過失にかえて欠陥による責任を認める、そうすると過失はなくていいことになりますので、日本式に言えば無過失責任ということになりますけれども、アメリカではもともと責任を三つに大きく分けておりまして、故意による責任、過失による責任、厳格責任、ストリクトライアビリティーと言われているものをイギリス法から承継しまして、そういうふうに三つに大別しております。この製造物責任については、過失責任を厳格責任日本式に言えば無過失責任を切りかえて欠陥ということを要件とする、過失責任から欠陥責任へという判決が生まれたわけでございます。  御承知のように、英米法では判例法が中心でございまして、立法も州なり連邦から出ておりますが、司法の分野においては判例法がもとでございますし、立法した場合にもその判例法を基礎として解釈されるというようなことで、いわば判例による法の改編ということが行われているわけでございます。そして、この製造物責任はそれの非常にいい例でございまして、キャリフォーニアで一九六三年に判決が出てから、それが各州に広がり、またその範囲が広がってまいりまして、非常に大きな製造物責任法の体系というものができ上がってきているわけです。今日、それは少し行き過ぎであるという批判もアメリカの内部でございまして、これについてはまだ後で簡単に申し上げたいと思います。  それで、EC、ヨーロッパ共同体、今EUになりましたが、そこでもずっとアメリカのことを見ながら議論が行われてまいりましたが、アメリカのようになっては大変だという反対も相当ございまして、時間がかかりました。そして最後に、一九八五年だったと思いますが、EC指令というのが出まして、加盟十二国に、こういう方針で立法せよ、そういう指令が出まして、初めは数年内ということだったのですが、なかなか立法が進みませんで、ドイツが一九九〇年に立法ができた、そういうような経緯だったと思います。今できていないのはフランスだけですけれども、フランスは判例で随分この欠陥責任的な方向を認めておりますので、法律をつくるのほかえってマイナスになるのじゃないかというような議論さえあって、法案はつくられましたが、まだ国会を通っていない。ほかの国では全部立法ができております。  それから、日本のことになりますけれども、アジアの諸国でも製造物責任法をつくっているところがございまして、中国でももう既にそれができております。我が国では、アメリカの動きを見て、民法学者の間で、日本でもこれを検討し、立法の準備をすべきだということで、我妻先生それから四宮先生が中心となって研究会をつくられまして、そこの要綱試案というのが昭和五十年、一九七五年にできて、公表されております。これが今日の日本製造物責任法のいわば議論のもとになっているわけでございまして、その後各方面で法案の試案などが出ておりますが、これを基礎にしているあるいは下敷きにしているようなものがほとんどでございます。問題になりました推定規定というのもこの中に入っておりまして、それがその後の法案として提唱されているものの中にずっと承継されているというのが実情でございます。  アメリカでの判例の発展は、最初は、製造過程でちょっとしたミスといいますかそれがあって、外れの品ができたときということが議論されていたのですが、そればかりでなくて、つまり製造物自体に何か欠陥があるということだけではなくて、それが設計の瑕疵、デザインデイフェクトという方に広がってまいりました。つまり、その製品をつくるもとの設計に間違いがあれば、そこでつくったものは外れじゃなくて全部に欠陥が出てくるわけですが、そういうものも含まれる。  それからさらに、警告による責任ですね、いろいろ注意書きを書いたり、あるいは欠陥商品が出たときにそれの回収がおくれたりしたことによる責任、その警告上の欠陥ということもこれに含まれるというふうに、いわばもとからだんだん拡大されてきたわけです。これには学者の間でも批判がございますけれども、そしてまたアメリカの商務省などでタスクフォースをつくって調査をしました結果によりますと、今の設計の瑕疵とかあるいは警告上の瑕疵というものは、厳格責任とは 言っているけれども、判例の内容を分析してみると、それはかなり過失責任に近くなっている、濃淡の差がそこにあるというようなものも出ております。  それから、ECの立法に当たりましたタシュナーという人が日本へ来て話をしたときには、ECの立法ではそういうものは含まない、つまり設計の欠陥あるいは警告上の欠陥というものは含まないというつもりでつくっているんだ、こう言われたのです。しかし、条文の中にはそれは全く出ておりませんで、私はそれを質問したのですけれども、つくるときの自分の考えはそうだったんだということだけで、これは後の判例の展開などを見なければわかりませんが、ECでもまだできて五年か、まあ十年たっておりませんから、判例などはまだ十分出てきておりません。しかし、そういう問題が含まれているということはございまして、この点は日本法案も別に区別をしておりませんので、あとは裁判所が具体的な事件でどう判断するかということになるわけでございます。  今の設計の瑕疵については、これは当然含まないと、もとの設計が悪くて欠陥商品が出たということは当然あり得るわけですから、これは当然含まれる。それから、警告についても、当然注意すべきところをしなかったということはやはり欠陥に含まれると思いますけれども、それは具体的な状況によって、製造物責任による被害というのは、商品によっても被害者の使い方によっても千差万別と言ってもいいくらいですから、具体的な事例に応じて裁判官が適切に判断してくれるものというふうに期待をするわけで、言葉としてはそういうものも一応含まれるというふうに解釈されると思われます。  そして、我が国での立法過程を申しますと、前から各方面で議論がございましたが、経済企画庁国民生活審議会というのがございまして、これが今から四年前の審議会で、審議会の置かれている経済企画庁といいますと首相からの諮問になりますけれども、総理からこの点について検討せよという諮問がございまして、それに対する答申を一昨年、平成四年の暮れに出すつもりでいろいろ検討を重ねてまいりました。ところが、やはり企業側がいろいろ反対というか苦情が多かったので、もう一年検討して結論を出そうということで、昨年の十二月に最終的な答申を出しまして、それが本法案もとになっており、経済企画庁がその責任を負って立法を進める、こういうことになっております。  しかし、この問題は関連するところが非常に大きいわけでございまして、関係の省庁でも一昨年から昨年までの一年の間に十分検討してほしいとお願いをしておりましたところ、各省からその報告が出てまいりました。各省の審議会あるいは研究会、それぞれやっていただきまして、その大もとは、一番製品をたくさん所管しているのは通産省でございますが、そのほかに医薬品を所管している厚生省、食品を所管している農水省、この三つがこういう製品の大どころでございますが、そのほかにも航空機、自動車を所管する運輸省、それから住宅を所管する建設省というところも関係がございまして、そちらの方からも検討の結果が出ております。  それで、いろいろ議論を重ねた結果と思いますけれども、たまたま結論はほぼ同じ線にそろっておりまして、国民生活審議会でもそれを受けまして、まとめて昨年の暮れに答申を出した。各省の御検討の結果は一応全部取り入れて答申を出しておりますし、それから法案をつくるにつきましても各省の御協力を得て、経済企画庁法案を作成しているということと伺っておりますので、お役所の方はみんなこれでぜひ通していっていただきたいということで一致しているように聞いております。  以上がこの法案のできるまでの経過でございまして、次に、第二部でございますこの法案自体のことに触れてまいりたいと思います。  この法案をつくるあるいは答申をつくるにつきまして非常に問題になりましたのは、やはり過失責任欠陥責任に切りかえるということでございます。これがこの法案の最も基本でございまして、それに関連してその欠陥の定義とか考慮事情をたくさん書かないと、欠陥というのは初めての概念だから不安である、企業側は非常に不安を訴えられたわけでございます。  先ほど一つ落としておりましたのは、法制審議会でも議論が行われまして、私がたまたま国民生活審議会会長を務め、法制審議会では民法部会の部会長を務めてこの法案審議に参加したわけでございますが、法務省としては、欠陥というのはもう常識的にわかっていることで、余り細かく定義をしたり考慮事情を挙げたりする必要はないんじゃないか、そういう報告を出しております。  つまり、現在の民法の過失ということについても何も定義はございません。定義規定があるのは大体お役所と市民との関係で、お役人を縛っておかないと市民としては不安だ、そういう意味で、お役所を縛る意味での定義規定というのはいろいろ行政立法の中には多いわけです。  ところが、この民事立法、民法の系列について申しますと、これは最後は裁判所が判断するわけですが、裁判官を縛るのがいいのか練らない方がいいのかという議論は昔からございます。十九世紀の終わりにドイツ民法をつくったときには、裁判官を練らないと不安だということがございまして、例えばドイツ民法では慰謝料の請求は一定の場合に限定するというような規定が置かれておりますが、これは今ちょっと障害になって、ドイツではない方がよかったということじゃないかと思いますけれども、英米法の系統では、裁判官を信頼する、最後の判断は裁判官に任せるほかはないという考えでございます。日本はドイツの流れを引いておりましたので、やや裁判官を縛るという考えもあると思いますけれども裁判官の話を聞きますと、裁判官は縛られではかえって公正、妥当な判決がしにくくなる、むしろ基本を決めて、つまり過失から欠陥へという基本を決めてくれれば、それに応じて個々のケースを裁判できるように手は練らないでおいてもらった方がいいということがございました。  これは、後で申します推定規定にも関係するわけでございますけれども、今の欠陥の定義についてもそんなに細かく書く必要はない。ただ、これは裁判所ばかりでなくて、消費生活センターとかそういう民間のところでも扱いますから、そういうところの一応指針というかガイドラインになるようにはっきりさせておいた方がいいという意見もございます。  それで、定義は非常に簡単ですが、三つ考慮事情を挙げております。これは国民生活審議会の答申には六つあったのですが、それでも通産省のものよりちょっと減っております。それをさらに減らしまして、三つの考慮事情に限定をしております。  それから次に、推定規定でございますが、法律上の推定というのは裁判官を練るわけでございますけれども、理論的に申しますと、推定規定の前提としては、こういう事情があればこういうふうに推定するという前提事情が必要なわけですね。欠陥あるいは因果関係推定につきましてもそういう事情を一応挙げでありますが、これは極めて漠然たるもので、例えばこの前のテレビの発火事件のように、欠陥があれば過失があったと推定する、こういうことはよろしいわけで、本当はもっとそういう裁判が早く出てくれれば製造物責任にもこんなに時間をかけずに実現していたのではないかと思われますけれども、そういう前提をどうするか。事故があったなら欠陥があった、因果関係があったと推定するというのでは、事故があったときには全部企業側責任を食えということになりかねないので、それはやはり理論的にも適当ではないだろうというのが、各省もそれから法制審議会の結論でもございました。  そして、それでは立証が非常に不十分だという点については、事実上の推定ということで足りるだろう。これは、アメリカではレス・イプサ・ロクター、物それ自体が証明するというので、事実 推定則などと訳されておりますが、一定の事実があればそこからある法律要件を推定するということができるようになって、そこは裁判官が判断をするわけですね。それから、ECでも推定規定は置かれておりませんけれども、今の事実上の推定で十分いくのだろうということでございます。我が国でも、大体我が国はEC並みの立法になっておりますが、事実上の推定で十分賄えるし、それが適当ではないか。我が国裁判所でも、例えば公害の事件とかあるいは医療過誤の事件につきましては、かなりの推定をしているわけです。  ただ、製造物責任については大きな事件が割に少なくて、つまり少額事件が多いものですから、それほど裁判所に出ていがなかった。そのために、この前、テレビの発火事件で初めて欠陥から過失を推定するというようなことが言われたわけですけれども、今までの裁判所の動きを見れば、これだけ規定が置かれておりますと、もう必要に応じて欠陥を事実上推定するということはやってくれるだろうと私は期待をしております。
  12. 白川勝彦

    白川委員長 加藤参考人に申し上げます。  あともし項目がございましたら、質疑の途中で意見を述べていただきたいと思います。
  13. 加藤一郎

    加藤参考人 時間が過ぎて申しわけございません。  そのほか、開発危険の抗弁を立法でどうするか非常に問題になったわけですが、これは、その当時の科学・技術の水準でわからなかった点については責任を負わないという免責規定で、この法案にも入っておりますけれども、いろいろ議論している過程では、この水準というのはその当時の最高水準をいうものと解すべきだ。そして、現在はいろいろなデータベースが世界的にできておりますので、こういう点で、欠陥はないかということを調べるのは、前に比べて今かなり簡単に調べられるようになってきているということでございます。通産省の方の案では、入手可能だというのがございまして、入手可能なものに限るというのですが、今では少し努力をすれば入手が可能な状況になっておりますので、世界の最高水準からいって欠陥がないと思ってつくった場合には責任を負わない。そうしないと、結局開発の意欲を失わせるということが問題になるわけで、そこから開発危険の抗弁が入っております。  EC指令では、これは各国の立法でオプションといいますか選択していい、開発危険の抗弁を認めるか認めないかは選択だということになっておりましたが、みんな開発危険の抗弁を認めているわけで、認めていないのはルクセンブルクだけだったと思われます。  実際に具体例を考えますと、今まで出てきた例では、例えばサリドマイドの事件というのは……
  14. 白川勝彦

    白川委員長 加藤参考人に申し上げますが、あと申し出たい事項を項目だけ申し上げて、後は質問者が適宜お聞きすると思いますので、お願いいたします。
  15. 加藤一郎

    加藤参考人 それぐらいで、実際に問題になるのは、理論的には非常に問題になって、これは企業寄りになった、消費者寄りになったということで新聞は書き立てて、対立をさせてけんかをさせようというふうに見えるのですけれども、大体それはめったに起こらない枝葉末節のことが割に多いので、基本は過失責任から欠陥責任へということである。それに関連していろいろ問題は出ておりますが、それはそれぞれ具体的に解決できるものだと思っております。  大変時間が超過して申しわけございませんでしたが、私はこの法案をぜひ通していただきたいという意見を申し上げて、終わることにいたします。どうもありがとうございました。(拍手
  16. 白川勝彦

    白川委員長 加藤参考人、どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  17. 白川勝彦

    白川委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑者にあらかじめ申し上げます。  質疑の際は、質疑する参考人のお名前をお示しください。  なお、念のため参考人各位に申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。また、時間の制約がございますので、お答えはなるべく簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。額賀福志郎君。
  18. 額賀福志郎

    ○額賀委員 自由民主党を代表いたしまして、まず最初に私、額賀福志郎、後に逢沢一郎先生がそれぞれ参考人に対しまして御質疑を行い、このPL法につきまして国民の間に理解を深めて、そして円滑にこの法案が通過できればよいなというふうに思っておるところであります。  それぞれの諸先生方に、御意見あるいは御質問をしたいと思っております。  本日は、早朝から、大変お忙しいところを、各先生方にはそれぞれのお立場で貴重な御意見を賜りまして、心から厚く御礼を申し上げるとともに、示唆に富む御意見をちょうだいしたものと受け取っております。  まず、被害者救済の問題につきまして、歌田先生それから清水先生が特に強調なさっておりました。これまでの戦後の例を見ますと、訴訟までたどり着いた製造者責任問題というのは百五十件くらいだというふうに聞いております。欧米諸国と比べると大変少ないという印象があるわけでありますが、これにはそれなりの理由があったのだろうというふうに思いますし、また、我が国国民性というか、そういう体質的な問題もあったのだろうという感じがいたします。判決までに時間がかかるとか、あるいはまたメーカーと被害者が直接交渉をして何とか話をつけるとかいうことがきっと多かったのではないかというふうに推測をいたすわけであります。  今回、先ほど来からお話がありましたように、過失責任から欠陥責任ということで、この訴訟の数がふえていくのではないかという感じもするわけでありますが、これは経企庁のお調べになったデータによりますと、欠陥責任制度になってからもそれほど訴訟件数がアメリカほどふえているわけではないというような報告もいただいているわけであります。  そういたしますと、我が国の場合は、そういう被害者救済のために、これまでは医薬品の副作用の被害救済制度だとか、SGマークだとかBLマークだとか、それぞれの業界で個別にいろいろ補償的な救済制度みたいなものがあったわけでありますが、このPL制度とこういう個別の補償制度の役割分担というか関連というものはどういうふうに位置づけたらいいのか、その辺を消費者それから産業界立場からそれぞれ御意見を聞かせていただければありがたいというふうに思っております。     〔委員長退席、逢沢委員長代理着席〕
  19. 歌田勝弘

    歌田参考人 お答え申し上げます。  被害者救済実態については、今額賀先生からお話がありましたとおりと私どもも認識をいたしております。製造者にとりまして、自分が出した、製造・販売した商品については、どうしても品質の点で消費者方々に深い信頼を得ていただくことが第一番のことでございまして、そのためには、先ほど来申し上げております安全性の問題等について、まず事前防止ということに努めておるわけでございます。そういう意味で私どもは、今度の法律ができたといたしましてもそれほど急にふえるという状態ではなかろうというふうには思っておりますが、さりとて、この法律の成立によりまして当初はかなり出てくる。それは、今の訴訟という問題については日本ではなかなか簡単にまいりませんので、相当大きな案件でなければなかなか出てこないだろうというふうに思うわけでございます。  今、クレーム等が先ほどおっしゃったより大変な数があるとよく言われておりますが、この面については、ほとんどが少額であり、また非常に身 近なことでございますので、やはりそういう裁判外第三者機関というものでの解決というのが日本においては非常に大事であり、今後もそれが大いに活躍するであろう。そういう面での整備というのは確かにまだ不十分であるというふうに思うわけでございまして、先ほど私が申し上げましたような第三者機関のあり方、それと裁判との関連、こういう面については私どもも非常に重要なことと考えております。  それにつきましては、先ほど基本的な考え方を申し上げましたように、また行政の面での屋上屋という形でなく、極力、民間の、例えば既成の業界団体でありますとか業界ごとにありますいろいろな検査機関等を整備いたしまして、そしてその解決に当たっていくということが非常に大事だというふうに思っております。  以上でございます。
  20. 清水鳩子

    清水参考人 二つの御質問でございますけれども、まず最初の訴訟がふえるかどうかということですけれども、要するに製品事故から消費者を救済するという場合には、未然防止、拡大防止、それから最終的に訴訟という手続があるわけでございまして、やはりこの法律ができることによって安全な製品をつくろうという企業の意欲はもっと高くなるでしょうし、それから表示とか取扱説明書などについても今のままでいいかどうかという議論が進むし、一方、消費者から見ましても、ただ便利だから商品を買うということではなくて、買う場合、購入後の手入れですとか修理の問題とか、苦情が起こったときにどういうふうに対応するかというようなことも含めまして、全体的に製品の安全レベル、それから消費者の使用のレベルが上がってくるというふうに思いますので、この法律が直ちに最後の段階の訴訟にストレートにつながるよりは、むしろ全体的な予防、拡大防止という機能の方に効果が多く及ぶのではないかというふうに思います。  それから、もう一つの点でございますけれども、例えばSGマークのような賠償責任のある安全マーク、ああいうものにつきましては製造物責任に置きかわるものではない。なぜかと申しますと、あの制度は任意でございまして強制ではないということと、それから賠償の限度額も定められておりますし、対象も、すべての製品が網羅されるわけではなくて、指定された商品だけであるというさまざまな限界がありますので、やはりSGマーク制度というものはPL法にかわるものではなくて、むしろPL法がきちっとしていることによってそういうさまざまな賠償を伴う制度充実してくるというふうに思います。
  21. 額賀福志郎

    ○額賀委員 私も、PL訴訟と、そういう業界あるいはボランティア的にやっている被害者救済制度が、これが相乗効果というかお互いに役割分担をして消費者の皆さん方に安心感を与えていくという形を、産業界等々と消費者の皆さん、あるいは消費生活センター、国民生活センターの皆さん等々よく留意していっていただければ、この法律をつくった意味が余計重みを増してくるのではないのかなという感じがいたすわけでございます。  ただいま清水先生からもお話がありましたように、この法律ができることによって産業界が自覚をし、より以上にそういう製品事故の予防、安全対策に力を入れることを期待なさるということでございますが、私も、当然、産業界もそういう形でこたえていく責任があろうと思います。  そこで、歌田参考人にお尋ねをしたいわけでありますけれども、先ほど来お話があるように、もちろん企業もそういう努力、その決意は伝わってきているわけでありますが、その場合に、今まで行政側がいろいろな製品の保安基準だとか安全基準だとか、これは拘束力というかそういったものは持っていないと思うのでありますが、一定のガイドライン的なものをつくり上げております。そうすると、企業産業界側からすれば、PL制度ができることによって、こういう安全基準あるいは保安基準というものの存在がどういうふうな位置づけになっていくと考えておられるのか。  まさに規制緩和的な時流もこれありますし、PL法制定によって、企業側がみずからの自己責任で安全とか保安を追求することによって、行政側が今まで志向してきたそういうガイドラインというのは意味をなさなくなっていく可能性もあるし、それはまた時代の流れに沿って、小さな政府というか余計な出費は要らないという行革にも通じていくわけでありますが、そういう規制緩和と今度のPL法安全対策についてはどういう御認識をなさっているか、お聞かせ願いたいと思います。
  22. 歌田勝弘

    歌田参考人 お答えいたします。  私どもも、今回のこの法案が成立いたしました場合には、なるべくいろいろな規制を緩和していただきたいというのが基本的な考え方でございます。  ただ、業種あるいは業界によりまして、安全の問題についても非常に特性がございまして、したがって一律にそういうことを言うということはちょっと差し控えなければならぬかなというふうに思っております。  そういう意味で、今御指摘のような現在あります基準について、基準というのは、限度の最高を決めた場合と標準あるいは最低を決めておる基準とかいろいろ種類があるわけでございますので、私どももそれに応じて今までもやっております。例えば、基準が行政で決められておりましても、業界ごとにとか自分の企業ではこれで満足せずにもっと品質のいいものあるいは安全性の高いものを出すという、自分のところ独自の基準を別につくっておるというような例もあるわけでございます。  私どもは、やはりそういう意味で全体的には規制緩和ということをお願いしたいのでありますけれども、そういうめどになるという意味では、JISマークとかJASマークとかいうようなそういう基準というものはある程度あってもよろしい、我々がそういうことで自主的にこれをうまく活用させていただく、こういうふうに考えております。  以上でございます。     〔逢沢委員長代理退席、甘利委員長代理着席〕
  23. 額賀福志郎

    ○額賀委員 一般的に行政業界の皆さん方に御提示申し上げているガイドラインというのは、大体これだけは守ってほしいというような最低基準の場合が多いのだと思います。皆さん方が物をおつくりになるときのガイドラインは、この法律で言っている入手可能な科学的な世界最高の水準とは全く次元を異にしたものであろうというふうに思いますし、その場合に、国がいろいろなガイドラインを示しておりながら、その基準で示す範囲内で物をつくっても仮に事故が起こった場合に、もし欠陥がそこに認定されたときにだれが責任を負うのかといった場合には、これは、国が一定の最低ラインのガイドラインを示しておりながら責任をとるというようなことは法律の解釈にはないわけでございますから、その意味におきましては、そういうガイドラインを示すことが果たして製品の予防、安全措置等にどういうふうに影響を与えていくのかということについて、甚だこれまでとは違った形で推移していくのではないか。  それよりも、民間の努力、民間のそういう最高水準に肉薄していく形で物づくりをするという努力の方が際立って飛び抜けていくという感じて受け取りますから、行政側の行政ガイドラインというものが意味をなさなくなっていく可能性が私は強くなっていくのではないかという感じがするわけであります。  先ほど来もう一つの大きな論点になております産業界中小企業対策の問題でありますが、この法文にも触れられておるわけでございます。この点については、西川参考人歌田参考人にそれぞれお聞きしていきたいと思っております。  西川参考人がおっしゃるように、中小企業我が国の産業構造の圧倒的な部分を占めているわけでございまして、しかもなおかつ、技術力あるいは財政、人的資源、いろいろな意味で脆弱なところがあることは、私もそのとおりだろうというふ うに思っております。  そういう中で、西川参考人は先ほど五つぐらいいろいろと今後の問題として取り上げておりますが、西川参考人にとりまして、こういう問題をきちっと具体化していっていただきたいと思うのでありますが、この中で、我々がこれから立法化していくに当たりましてこの点には特に気を配ってくださいというようなことがありましたら、二つ挙げていただきたいというふうに考えます。  また、産業界立場から、親企業というか、そういう立場で、下請の皆さん方、中小企業に対しましてのお考えを歌田さんにお聞きしたいと思っておりますが、何だかんだといっても今日の経済を支えてきたのは中小企業であります。例えば、親企業の場合は、中小企業を非常に大事にして、日本的な形で、系列とか取引関係だとかお互いに連帯責任を持ってやってきたという答えが返ってくるかもしれませんけれども、例えばトヨタのかんばん方式なんというやり方が世界で脚光を浴びました。あのかんばん方式なども大変合理的で効率的なやり方であるということは世界のだれもが目をみはったところもあるわけでありますが、あるとき、日米構造協議の中で、かんばん方式というのは、在庫を置かないで、できる限りコンピューター操作によって流通・物流関係を効率化したわけでありますけれども、これは必要なときに下請の皆さん方に注文をして、必要なときだけ持ってくればいいということにつながっていくわけでございまして、これは結果的には非常に自動車産業にとりましては効率化だったけれども、下請にとってはやはり無理な注文だとか、親会社から午後から注文があれば夜中でも届けなければならないとか、そういう下の無理難題の上に乗っかったかんばん方式ではないかということがわかって、アメリカの代表の皆さん方が大笑いをしたという話も伝わるわけでございます。  そういう意味からすると、ここのところをどういうふうに親企業としては、産業界としては対応していくかということをひとつ明快にお答えしていただければありがたいというふうに思います。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕
  24. 西川禎一

    西川参考人 私ども中小企業日本経済を支えているという、あえて言えば自負心を持っているわけでございますけれども、このたびの新法の導入後も、それに基本的にいささかも支障がないようにすべきだという立場から重点を述べてみるという大変温かいお言葉をいただきまして、意を強くいたしておるわけでございます。  実は、この法案がほぼ最終段階で固まりました。そのときに、その事前のPRを兼ねまして東京商工会議所でセミナーのようなものを開いたわけでございます。そのときに二百六十六社、約四百人ぐらいの方が出席いたしましたので、その方々に簡単なアンケート調査を行いましたところ、PLの法制化自身に対しまして参加者の八五%ぐらいの方が心配とか不安、これは中身はいろいろあろうかと思いますけれども、そういうものを感じているというアンケートが寄せられました。  具体的には、一体、欠陥商品の判断基準はどういうふうに運用されていくんだろうかな、あるいはこういうことに対応するとすればコストが増加になるが、これは価格転嫁がちゃんとできるだろうか、その結果収益が維持できるだろうかというような心配、あるいはクレームがやはり増大してくるだろうけれども、それに対して企業内の対応体制をどうやってつくり上げていくのかなというような点が非常に大きく指摘されたポイントでございます。  PL法の議論は非常に長い議論がございまして、これは新聞などの報道の影響を受けているかもしれませんけれども、アメリカ型の訴訟社会になるのじゃないかとかいろいろな心配が率直に言ってあったわけでございますけれども、今回まとめられました法律は、そういった議論を乗り越えましてまとめられましたので、一応私どもといたしましても全体としては受けとめ得る法案になっているわけでございますけれども、なおこういった不安が現に存在しているのも事実であるわけでございます。  したがいまして、法案施行までの間に、この法案内容、それから今後どういう形でこれが世の中に作用していくのだろうかということにつきまして適切な啓蒙普及を図っていただくということが、やはり何よりもスタート時点において重要な点ではないかというふうに考えます。  それから、幾つか申し上げました点の中で、事故原因究明の問題がございます。これは商工会議所検討の過程でアンケート調査をしたときに出てきた数字でございますけれども原因究明ということ自身は中小企業立場からもなかなか制約があるという点も実はあるわけでございまして、国といっていいのかどうかわかりませんけれども、公的あるいは民間のしっかりした機関でもいいわけでございますけれども、そういった機関原因を究明するという体制を強化していただくということが必要なのではないか。恐らく、そのことによりまして、事故再発防止あるいは事前防止にこれがつながるというふうな認識をしているからではないかと思います。特に、業種別に見ますと、化学とか薬品とか、こういった分野の方々ではそういう希望が強く示されておるわけでございます。  それから、紛争処理機関の整備でございます。これも大変重要なことだと思います。ただ、裁判外紛争処理と申しましても、これは非常に幅の広いものでございます。相対交渉が円滑にいくように環境を整備してもらいたいというのが一番の眼目ではないかと思います。補償のルールや基準の一般性というのか透明性というものがだんだん世の中でわかるようになっていくということが望まれるわけでございまして、もちろんこれは一つ制度なりなんなりで一朝一夕にでき上がるものではではございませんけれども、法の施行過程におきまして徐々にこういったことが一般化していくということが中小企業にとりましても望ましいということが言えるのではないかと思います。  それから、もう一つ最後にお願いいたしたいと思いますのは、現在、先ほども話題に出ておりましたSGマークとかあるいは業界独自の幾つかの制度がございまして、製品の安全基準に到達したものに関して補償制度を設け、一定の限度で補償するという制度がございますが、それは今後一層充実したものになろうかと思いますけれども、とてもそれだけではすべてがカバーされるわけでないわけでございますので、やはり一般的に中小企業被害者救済のための原資確保を円滑にし得をような保険と申しましょうか、言葉は余り正確な意味ではないかもしれませんが、そういった制度が世の中にできてくる必要があると思います。現在既に製造物保険制度というものが損保会社から発売されておりまして、かなりの方がお掛けになっているわけでございますけれども中小企業で掛けておる者は非常に少ない。また、その料率が非常に高くてとても掛けられないというような実態のようでございます。  今後、この法律施行後、こういう補償がより従来よりは的確に行われる必要があるわけでございますので、そのための履行ができる制度づくりということについて御配慮いただければ大変ありがたいと考えております。  以上でございます。
  25. 歌田勝弘

    歌田参考人 ただいまの額賀先生の御質問について、私は二つの点でお答えしたらいいかなと思っております。一つは、この法案を今御審議になられておるということについて中小企業を含めて業界としてどういう受け方をしておるかという問題と、もう一つは、先ほどトヨタのかんばん方式でおっしゃいましたような、一社だけが利益を得るということではいけない、そういうことについての考え方について御説明を申し上げたいと思います。  PL法につきましては、もう既に、先ほど来お話があるように、数年議論になっておるわけでございますが、経団連としても非常にこれを重くとらえて、先ほども御説明申し上げましたような部会をつくり、あるいはガイドラインをつくり等し ております。ただ、業界によりまして、経団連のメンバーも非常に業種が多岐にわたっておりますので、素材産業と消費財産業では受け方が少し違いますけれども、しかし、現在の大きな流れから見てこういうものがやはり必要であるといことにはなっておるわけでございます。しかし、これができた以上は、これとの対応をどうするかということについて、今それぞれの業界ごとに非常に真剣に取り組んでおるわけでございます。  私事で大変申しわけございませんが、私は食品業界の出身でございますが、食品業界は特に、御案内のとおり、非常に中小企業の多い、しかも企業数の多い業界でございまして、しかも消費者の方との接点が多くていろいろとクレームも承ることが間々あるわけでございますが、業界団体でこの点について既に数年前から盛んに検討を加えております。  ただ、中小企業方々については、先ほど清水参考人がおっしゃった消費者方々だけでなしに、業者の方もPL法とは何かということについてなかなかまだ御理解いただいていないところも多いというようなところもありますので、今後これの普及啓蒙活動をしていくということに努めなければなりませんし、また、第三者機関の設立についても、当然我々として、業界としてこれを扱いますし、また、共済組合等の救済措置も今後考えていかなければならぬということで、今盛んに検討を加えております。  特に、下請業者の安全性の問題、品質管理という面については、当然、親会社が責任を負うわけでございますし、また、いろいろと技術指導あるいはこういう観念の徹底ということを親会社が当然徹底してやっていくということでございます。私どもの会社でも、若干そういう下請を使っているところもございますが、十分注意をしてやっておるつもりでございます。  それから、日本企業経営において、従来の考え方とかなり今変わりつつあるということでございます。  経団連として、今度おやめになりましたけれども、平岩さんが会長に御就任になってから間もなく、経団連の大きな柱として言われた言葉に、共生という言葉がございます。これは、これからの企業のあり方として、一社だけの売り上げ増進、マーケットシェアのアップあるいは利益確保というだけではこれからの企業というものはあり得ないんだ。先ほどもお話がありました下請業者とか部品の提供業者、資材の納入業者、あるいは顧客、取引先、消費者、あるいは地域社会の人々、こういういわゆるステークホルダーという方々とともに栄えていくという考え方でいかなければこれからの企業経営というのは立ち行かないんだ、こういうことを非常に強く打ち出してきたわけでございます。特に今のような不景気になってそれが衰えてはいけないということでございまして、そういう意味の啓蒙活動といいますか、どこへ行ってもそういう話をしておる。  そして、それをまた海外に行きましても、ECとかアメリカヘも何回か我々は行っておりますが、そのたびごとにこういう話をいたしますと、かなり共鳴をしていただいております。特に海外との共生ということも非常に大事なことでございますので、我々は今後ともそれをやっていくつもりでございます。  続きまして、経団連としては、昨年、それに続いてヒューマンキャピタリズムという考え方を打ち出しておりまして、どういう時代が来ても、今後の二十一世紀へ向かって我々の企業経営の中心をなすものはヒューマンということ、人間というものを中心にして考えていかなければいかぬ。お金、物、これも大事でありますけれども、それ以上に大事なものは人である、こういう考え方で今後はいかなければならぬ、こういうふうに覚悟をしておるところでございます。  以上でございます。
  26. 額賀福志郎

    ○額賀委員 ありがとうございました。  さて、PL法の中で、これまでの審議の中でも議論の大変大きなテーマになっていました欠陥概念につきましてなのでありますが、これは、歌田参考人もそれから西川参考人清水参考人も、消費者立場からしても、物をつくる側からしても、明確にきちっと書いてあった方が努力目標があってよろしいという感じで発言をお聞きいたしました。この点につきまして、加藤参考人が責務を果たしました国民生活審議会では、欠陥の判断の基準を示すことについては可能な限り明確にした方がいいという考え方を当初持っておったというふうに聞いておりますが、法務省等々との意見の調整の過程で法文に書いたような感じになったというふうに集約されたと聞いております。  ちょうど消費者やメーカーと裁判所を結ぶ中坊参考人がおられますから、中坊参考人としては、この法案に書かれた欠陥概念規定に基づいて今後実際に具体的な訴訟あるいは紛争問題の相談を受けたときに、自分としては仕事がやりやすいのか、それともこういうふうにした方がいいというようなお考えがあるのか、その辺を聞かせていただきたいというふうに思います。
  27. 中坊公平

    ○中坊参考人 お答え申し上げたいと思います。  まず、基本的に、欠陥という概念が今後裁判所の中で問題になってまいりました場合には、若干従来の取り扱いとは異なってくるおそれがあるのではないか、そういう意味で若干の心配をいたしております。と申しますのは、定義というのは、「通常有すべき安全性を欠いている」という言葉があれば、一応それで大体は理解できるというのが普通の概念だろうと思うのです。  ところがそれに対して、そういうものを考えるのに際しては、特性であるとかその他の事情とか、こういうふうなものを参考にせよということが条文の中で明確にうたわれてくるというのは、どちらかといえば少ないと思うのです、条文の決め方としては。しかし、それが決めてあれば決めてあっただけの位置づけ、重みがあるわけですから、それとの関連において、通常、欠陥と言えば、あの人欠陥のある人やなどか、あれは欠陥のあるものやでと大体わかるものに、それとそれとが入ってくるというところは一体どこを意味するのかということがさらに裁判の中では問題になってくるおそれがあるというふうに考えます。  そういう意味では、今回、いろいろな中から、単なる裁判規範としてではなしに、いろいろ業界の方が初めてこういうことに遭遇するのでもう少しそれを明確にしてほしいというような概念の中から、いろいろな要請の中でこういう条文として決まってきたというふうに思いますが、今後、裁判の運営の中ではこの辺をめぐってやはり新しい局面の問題としていろいろなことが考え得る、このように私は今のところ想像をいたしております。そういうことであります。
  28. 額賀福志郎

    ○額賀委員 これからこの法案審議をし、法案内容をどういうふうにしていくか、我々が議論をしていくわけでありますが、中坊参考人としては、もうちょっと具体的に個別に羅列していった方がいいんじゃないかというお考えでございますか。
  29. 中坊公平

    ○中坊参考人 先ほど私の申しておりますところから御理解いただけますように、むしろ逆であります。むしろ、「通常有すべき安全性を欠いている」という程度でよかったのではないか。それにいろいろな要素が入ってきたから、その関連で、ますます今度、いざ裁判規範になってきたときに問題が起こりはしないかと思っておりますので、私は、これにさらに加えていくというのはますます物をおかしくしていく。だから、最小限この程度で、いろいろな要請の中でこの程度でお決まりになっているのであれば、私は、この程度でも、少なくとも法案としてはいいのではないか、こういうふうに考えている、こういうことです。
  30. 額賀福志郎

    ○額賀委員 もうちょっと簡単な姿が一番いいということでございますが、そうするとこれは、最終的な判断は、事実関係のやりとりの中で裁判官に任せるということになるわけでございますね。
  31. 中坊公平

    ○中坊参考人 おっしゃっているとおりだと思います。
  32. 額賀福志郎

    ○額賀委員 今、中坊参考人考え方が示されたわけでありますが、加藤参考人にお聞きしたいと思います。  加藤参考人も、余り細かいことは決めずに、裁判官に最終的な判断はお任せになった方がいいのではないかというふうな先ほどのお話でございました。それにもかかわらず、特例措置というか、この法律で言いますと、「当該製造物の特性」「使用形態」あるいは「引き渡した時期」「当該製造物に係る事情等を考慮して」というような条文になっているわけでありますが、国民生活審議会の当初の考え方ではもっと詳しく書いた方がいいのではないかと言う中で、しかし、加藤参考人としては、最終的な判断は裁判官に任せた方がいいのではないかという考え方を持ち合わせておりながら、ある程度の条件というか、そういう附帯的な条件もおつけになったということについてのいきさつと考え方を聞かせてください。
  33. 加藤一郎

    加藤参考人 私の個人的な考え方は、これはなくてもいいという、定義規定、考慮事項というのはそんなに詳しく書く必要はないという意見でございます。  ただ、国民生活審議会の答申では、これは各省からの意見参考にいたしましたが、そこでは相当詳しく書けという御意見があったものですから、それを尊重して、また、委員の中でもそうした方がいいという御意見もありましたのでそうなっておりますが、法務省の方で議論したときには、そういうものはなくていい。そして、その結果の定義で消費者寄りとか企業寄りとかで議論するのはちょっと本末転倒というか、基本は欠陥ということなので、今の過失だっていろいろ議論がありまして、人によって考え方が違いますけれども、それは裁判になったときにはお互いに主張すればいいことなので、それを決めるのは裁判官である。  裁判官は、考える場合に、ここに書いてあるようなことは当然考えてやることなので、書くとすれば極めて当たり前のことを書くか、それなら書かなくても同じことなので、書かなくてもいいというのが私の個人的な考えですけれども、そのほかに消費生活センターとか、裁判にならずにやる場合もありますから、そういう意味ガイドラインとしてこういうことを考慮しろというのは、それはあってもいいだろうというようなところでございまして、法案でこれだけ書くことは別に害はないし、ある意味ではいい点もあるだろうと思いまして、この程度なら結構だというふうに思っております。
  34. 額賀福志郎

    ○額賀委員 それぞれの先生方からお話を聞きました。私の率直な印象なんでありますが、私は法律には全くの素人でございますが、このPL法というのは、国民生活関係に直結する民法上の大原則である過失責任主義というものから、いってみればちょっと特例措置的な形でつくられたものと思います。  我々が生活している現在の近代自由主義社会というものは、原則的には自分に落ち度がなければ、ミスがなければ責任は負わないという社会だと思っておりますが、一方で、逆に個人の自由な契約に基づいて、そして信頼関係の上に立って今日の社会生活あるいは産業生活をして豊かな生活を築いてきたということだろうと思います。この法律が、お互いのそういう自由主義的な我々の生活環境や経済活動あるいは物の考え方等々を侵食するようなことがないような、そういう形で運営されていくことがまず第一であるというふうに思っております。  先ほど来お話がありますように、今までは生産基盤あるいは生産機能、そういったものが重要視されてきた嫌いは確かにあったわけでありますから、そのバランス修正上、消費者重視、生活者重視という言葉が今言われているものと思っております。しかし、本来的には、我々は生産者であり、消費者であり、これを明確に分けることはなかなか難しい問題であり、我々はそのバランスをどうやってうまくとっていくかということの一つの大きなきっかけになるものと思っているだけでございます。  したがって、これがまた消費者だけのことを考えでいろいろな法律が運用されていってもまずいし、生産者寄りになって、企業者寄りになって運用されてもまずいし、そこのところはこれから法律をつくるに当たって、本日の参考人の貴重な意見をよく参考にさせていただいて議論をしていきたいと思います。  以上で質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  35. 白川勝彦

    白川委員長 次に、逢沢一郎君。
  36. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 自由民主党の逢沢でございます。額賀委員に続きまして、自民党を代表いたしまして、幾つかの点について確認及び質問をさせていただきたいと思います。  参考人先生方には、本当にきょうはお忙しい中こうしてお出かけをいただきまして、ありがとうございます。国民経済や国民生活に大変大きな影響を与える、また、それだけに関心の強い法律案の審議をいたしているわけでありまして、きょういただきました貴重な御意見を十二分に体しまして、堂々たる法案審議に資してまいりたい、そのように思っております。  時間も限られておりますので早速お伺いをしてみたいと思いますが、まず最初に、加藤参考人にお聞きをいたします。  先生からは、とにかくぜひこのPL法案を通過、成立させてほしい、いろいろあったけれども大変高く評価をしている、そういう御所見があったわけであります。私たちは、この法案審議することを通じて、非常に矮小なというか狭い意味での消費者であるとか生活者であるとか、そこだけに視点を当てるわけにはいかないな、広く国民生活全般、あるいは国民経済とでもいうのでしょうか、そのことも当然念頭に置き、また、企業活動のこれからにも大変大きな影響を与えるということでございますが、そういう広い観点から見た場合に、先生は先ほど高い評価をこの法律案にはしているというふうにおっしゃられたわけでありますけれども、もう一度そこのことについてお伺いをいたしたい。  こんな乱暴なお聞きの仕方は適当ではないかもしれませんが、本音のところ百点満点と思っておられるのか、いや、ちょっと点数をつけるとすればこういうことであるかな。後ほどお伺いいたしますけれども幾つかの問題意識も持っておられるという御意見がございました。まず最初にそのことをお伺いいたします。
  37. 加藤一郎

    加藤参考人 大変基本的なお話でございますが、私自身はこういう法律、まあ法律一般にそうですけれども、一方に偏るということがあってはいけないので、いろいろな点の利害のバランスをとって、公正に解決できるということが必要だろうと思っております。  今の損害賠償の関係から申しますと、我が国では今まで余りそれが、責任がないとかあるいは賠償を認めるにしても金額が少ないとか、企業寄りといいますか、そういう考え方が強かったものですから、賠償を認める方を促進する、賠償が取れればいいという考え方が強く主張されてまいりましたし、私もそれを支持してきたつもりです。  しかし、ここまで来てみますと、やはり賠償の基本は公正な賠償ということだろうと思いまして、被害者保護ということももちろんその中に入ってくるわけですが、被害者が当然受けるべき賠償を取れるようにしなければいけないけれども、被害者保護に偏って過大な負担企業側に負わせるということもまた適当でないだろう。賠償の基本理念は、一時、被害者保護ということを言われましたけれども、私は、公正な賠償ということであるべきなんで、どちらから見ても公正でなければいけない、そんなふうに思っております。  この製造物責任法についてもそういう考えで、この法案はそういう点でバランスをとると言うと言葉はよくないのですが、今まで企業寄りにバランスがあったものを消費者寄りに少しバランスを変えて公正な賠償を実現するということだと思いまして、これを支持しているわけです。  その基本は過失責任から欠陥責任ということでございまして、過失といいますと、これは主観的な要素も入ってまいりますから、なかなかその立 証が困難である。これに対して、欠陥といいますと、これは客観的な責任ですから、欠陥のあるなしというのは判断が容易である。被害者側の立証も容易ですから、この基本的なルールを変えると申しますか、それによって被害者の公正な救済が得られる、そんなふうに考えております。  一部には、被害者側でも非常に過大な期待を寄せられたり、企業側ではまた過大な不安と申しますか懸念を表明されたりして、問題が何か非常に難しくなった点がございますけれども、民法の立場から申しますと、この社会情勢、生産、消費のあり方が変わってきたことによって、当然、過失を欠陥に変えればいい、ある意味では極めて単純なことだろうというふうに思っているわけです。それに伴っていろいろな問題が出ては来るわけですが、それは個別的に解決できることでございまして、欠陥責任にルールを変更する。本来は民法七百九条の基本原則の変更でございますけれども、それは製造物に限ってのことでございますから特別法になっているということでございまして、基本はやはり民法のルールの改正ということだと思っております。  それから、ついででございますが、企業側からもいろいろ懸念は伺っておりますので、その点も触れてよろしゅうございましょうか。
  38. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 それはまた後ほど。  もう一つ加藤先生にお伺いいたします。  推定規定の問題でありますが、いろいろ議論はあったわけでありますけれども、この推定規定については今回の法案の中には入っていない。しかし、先ほど参考人先生方からもお話がございましたが、先般のテレビから火が出た、出火をした、その裁判の中身を見ておりますと、事実上、裁判官、裁判長の判断でそのことが取り入れられたという解釈が広く世間に受け入れられているというふうに思います。  先生は、ちょっと私の聞き方が誤っていれば御指摘をいただきたいわけでありますけれども、そのことは結構であったと、その裁判評価しているというお立場からの御発言であったというふうに思いますが、やはり製造メーカーといいますか企業の側の立場に立ては、製品のどの部分に落ち度、不備があったのかが明らかにされないままに、全体として欠陥、そして場合によっては過失ということはやはりなかなかちょっとつらい話だな、承服しかねるな、本当に問題を突き詰めていくためにはもっと上級の裁判に上げた方がよかったのかな、個人的にはそんな印象といいますか感想も持つわけでありますけれども先生はそのことについてどう評価なさっておられますでしょうか。
  39. 加藤一郎

    加藤参考人 今の御質問は、欠陥存在箇所といいますか、その部品のどこに欠陥があったかということだろうと思います。  通産省の産業構造審議会製品安全部会では、その点相当議論があって、部品の部分の特定を要するという御意見が強かったように伺っておりますけれども、これもその実情に即してと申しますか問題となった製造物によって違ってくるわけで、非常に大きな機械のような場合ですと、その機械全体に欠陥があったと言われても困るわけですから、機械のどの辺に欠陥があったということを言わなければならないだろう。しかし、小さなものでしたら、どこということをなかなか特定しにくいので、この製品欠陥があったということでもいいだろう。そこら辺の判断は、どこまで立証が必要かということは、これは裁判官の判断にゆだねられることで、一概に決めることは難しいわけです。  今テレビのお話がございましたが、テレビは中ぐらいか少し小さ目のものだと思いますので、それからまたテレビの場合には、恐らく具体的な例でいろいろございますけれども、もう全体焼けてしまってなかなかどこに欠陥があったかということは言いにくいことが多いんじゃないかと思うんですが、そういう場合には、そのテレビがともかく燃えたのでどこかに欠陥があったはずだ、こう言えば、あと材料をいろいろ持っているのは企業側ですから、それはそういうはずはない、これはこういうふうに完全にやったんだということで争うということになるんだろうと思うので、今のその欠陥存在場所についても法律で画一的に決めることは難しいので、裁判官が具体的事情に応じて判断すべき問題で、当事者もそれをにらみながら立証を尽くすということで解決すべき問題だ、そんなふうに思っております。
  40. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  時間の関係もございますので、次に移らせていただきたいと思います。  次に、中坊参考人にお伺いをいたしますが、この法律が日の目を見て施行されるということになると、実際問題、世の中のどういう部分にどんな変化が起こってくるだろうか、いろいろと想像をしてみるわけでありますが、想像する範囲の中にどうしても、いわゆる司法の社会、訴訟の分野の世界の話がどんなふうになるんだろうか。一部には、それで告発といいますか訴訟が大変な数になって、もうにっちもさっちもいかなくなるというようなことは全くの杞憂だ、こういう指摘もあるわけでありますが、しかし、日本の戦後の歩みを見ておりますと、アメリカで起こったことが大体五年後か十年後かには日本で起こる、そのスパンというのはもっと短くなっているかもしれない。大ざっぱに言えば、だんだん日本の社会というのはアメリカ型になっているというふうにも言われているわけでありますが、そうなるとやはり少しばかり心配になってくる。  言うまでもないことでありますけれども、アメリカには大変たくさんの弁護士の方がおられ、活躍をなさっておられる。ざっと七十万ほどおられるのでしょうか。それに対して、我が国では一万四千人から五千人ばかりの弁護士先生方が御活躍をなさっておられる。  こういう例えが適当かどうかわからないんですけれども、患者さんと病院のベッド数、病院がたくさんできてベッドがふえればその分だけ診療報酬の支払いがどんどんふえてきた、経験的にはやはりそうだったな、まあそういうこともあって、医療法の二次改正でベッド数を制限したんですよね。ざっくばらんな本音の話をすれば、そういう経緯を我々は経験をしているわけでありますが、これから先日本の訴訟の社会が本当のところどうなのかな。  法と正義という言葉を先ほど先生がおっしゃられました。法治国家であり、一つ一つ事故法律に照らしてどう判断をされるか、法と正義に照らしてきちんとした結論を出そうと思えば、それは筋論からすれば、ある意味では訴訟がふえる、その方が法と正義という言葉からすれば正しい社会とでもいうのでしょうか、そういうとらまえ方もできなくはないかなというふうに思うわけであります。  先ほど先生は、アメリカのPLあるいは製造物の責任についての大変裁判が多いということについての直接の言及、評価は避けられたように聞こえたわけでありますが、先生御自身はアメリカをどう評価なさっておられるのか、あるいは日本は将来やはり、何だかんだ言っても、時間を置けばだんだんアメリカ型になっていくというふうにお思いかどうか、またそのことをよしとされるかどうか、先生がどうお思いか、お聞かせいただきたいと思うんです。
  41. 中坊公平

    ○中坊参考人 大変司法に関する基本的な問題をお尋ねいただいておりますので、まず最初に、今回のこのPL法ができましたことによって、我が国においてもこのPL法の訴訟はふえていくだろう、こういうふうにまず感じます。それは、言うまでもなく、その被害者の負担が少なくなってくるから、そういう意味でやろうということになってくるのではないかとまず想像をされるわけであります。  さて、そのようになってまいりました場合に、それでは我が国の司法で、アメリカと同じようないわゆるPL法の訴訟の一種の濫訴と言われるようなものが起き、あるいは膨大な金額の損害賠償が命じられるというような社会がこれからやって くるのだろうかということでありますけれども、私は少なくとも当面はそうはならないと言いたい。  それは、言うまでもなく、先ほどおっしゃったように、私の言う市民と司法とを結ぶ接点に立つそもそもの弁護士の数が非常に少ない。アメリカは人口が日本の倍ですから、向こうの理屈でいえば、私のところは最低四十万人ぐらいの弁護士がいなければいけない。それがわずか一万四、五千である。そういう点もありましょう。  それからさらに、細かいことになるかどうか知りませんが、アメリカではいわゆる報酬の決め方が、着手金というのは全然もらわないのだ、そのかわりうまくいけば一挙にもらったお金の五〇%とか六〇%をもらってもいいのだというような報酬規定が多いわけですね。だから、どちらかといったら、一発かけ屋といいますか、やったら一山当てだというような感じになってくる報酬の定めが非常に多いというようなことも関係しできます。  それからまた、御存じのように、日本は印紙代というのが要るわけです。ところが、アメリカは御存じのように印紙代というのは大変安くて、百ドルであるとかいうことで、何十億円請求したって百ドルでよろしい、こういうふうな規定になっています。だから、裁判費用にもっと費用がかからないというふうになっています。  そういうふうないろいろな要素が関連してまいりまして、訴訟が少ししやすくなったからたちまちのうちに日本においてこういう訴訟が非常に激増するだろうということは恐らくないのではないかというふうに考えています。  しかし、これは私個人といいますか、日本弁護士連合会の会長をしておりました当時から私が申し上げてきたことではありますけれども、そもそも、先ほども御指摘いただきましたように、法治国といいましょうか、法の世界というのは、日本国はやはりもう少し大きくしていかなければいけないと私は思っているわけです。  大変基本的なことを申し上げるようですが、法とはそもそも何かというところからの発想が必要だろうと思います。私は、法とは、端的に言えば、社会を合理的に運営するための道具なのであります。いかなる社会にあっても合理的に運営するための道具なのであります。したがって、国民主権のもとにおいては、国会でその道具をつくっていただいて、国民がそれを使う、利用するという発想が必要ではなかったか。ところが、遺憾ながら、我が国では、法といえば常にお上の命令であった。ここに、司法、法というものの見方が、我が国は少なくとも西欧とは著しく違うことになってきている。これが国際性の問題でもいろいろ問題になってきているので、また、国民主権の立場からいえば、そういうふうにならなければいけない。私は、そういう意味では、そういう社会になっていかなければならないとも思っているわけです。しかし、激増はしません。  さて、そういうふうにして、三つ目に、それじゃ今後なる危険性はないのかという問題であります。私は、やはりなる危険性はあると思うのです。また、それじゃなっていいと思うのかというお尋ねには、私はなって悪いと思っていますしてはならないと思っているのです。  なぜそれを言うかと申しますと、向こうの方は、そういったことに本当に泣いた被害者のあれを言うというよりも、むしろもうけるという発想があるのですね。ビジネスなのですね。だから、被害者の人もそれによってもうけたろう、弁護士ももうけたろう。もうかる可能性がある、いうところの商売に、裁判が商売になっている危険性が多い。やはり日本はそうあってはいけない。  だから、私も、先ほど意見陳述の最終に申し上げましたように、これは私たち弁護士自身が大きく反省をして、ビジネスオンリーになっていかないように、少なくとも我々は公の奉仕ということが大切である。まさにそのことについての我々の自覚と行動が今求められるし、私たちは少なくともそういう意味運動は今後とも続けていきたい、そういうふうに思っております。
  42. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  せっかくのPL法でありますから、これが通過、成立をした、そのことがひとつの契機になって、弁護士の方が随分ふえる、ふえればふえたで事件を探すようにして訴訟をつくり出してしまうといったような悪循環にならないようにお互いが意を払ってまいりたい、そんなふうに思います。  そこで、ちょっと細かい話になりまして大変恐縮ですが、中坊先生、製造物の範囲のところで、いわゆる建築物がこの範囲の中に入っていないと、いうことについて、不快感といったらいいのでしょうか、おかしいぞ、そういう意思表示をなさったわけであります。例えば住宅なんかの場合を考えてみて、住宅プレハブメーカーと特別の何年間保証とかそういう契約があるとか、いろいろなことを背景の理由にして説明をされたようであります。  しかし、私も素直に考えてみて、例えば造成をされた土地というのですか、そういうものの欠陥というのは指摘されなくていいのかなとか、素朴に、素直に頭をひねったこともあるわけでありますが、弁護士をなさっておられて、何か過去の事犯といいますか事例から、特にそのことについて言及をなさったのでしょうか。簡単にコメントをいただけたらと思うのです。
  43. 中坊公平

    ○中坊参考人 私としては、条文の概念の決め方としては、動産というふうに限定されたのもわからぬでもないし、まあそれでいいというふうにも考えるのです。  ただ、今おっしゃるように、動産、不動産という分け方そのものが、世の中みんな境界がファジーになってきて、動産か不動産かわからなくなってきた。そして、製造物責任というのは製造するというところに核心があるのだという概念でいくならば、建築なんてやはり一種の製造という概念の中に入ってくるのじゃないか。宅地だって、宅地造成、土地のままだけだったらこれは何も加工されていないからだけれども、それが造成されるということになれば、やはり製造という概念にも近づいてくるのじゃないか。  そういうことだけじゃなしに、実際、これは各消費生活センターであれ、弁護士会であれ、「欠陥商品一一〇番」というのをやれば、商品という概念で市民の方々は、一番とは言いませんけれども、大きい数字が不動産、いわゆる建物の瑕疵あるいは宅地造成の瑕疵がその商品の中に入っているのですね、今、感覚の中で。そういう環境の中にあるときに、やはりその問題が一つ残っているのではなかろうかというふうに私は思っておる。  しかし、概念を決めるときに、やはりそこまで進んでいいのかどうかについては、私は現行法のまま、これはやむを得ないかもしれないけれども、しかし、それはやはり一つの問題点として残っていくのじゃないか、こういうふうに思っております。
  44. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  それでは、歌田参考人にお伺いをいたしたいと思います。  結論からいうと、このPL法制定をされれば、結果的にはどうしてもコストが上がる、製品コストに転嫁せざるを得ないさまざまなものを企業が抱え込むということはもう避けがたいのではないか。どのくらい物価が上がるということになるのか、そういう研究といいますか、報告も一部ではなされているというふうにお伺いいたします。確かに、ヨーロッパの経験に学ぶとすると、結論からいうと、そうそう直接消費生活国民生活に目に見えた形での大きな影響を与えたというふうな報告ではないようであります。  しかし、製造コストにいろいろなものがはね返る、保険料もどうしても必要になってくるだろう、そういうことは素人ながら想像もし、予想もするわけでありますけれども、そのことをいかに吸収しよう、こなそうとなさっておられるのか、あるいは内部でどういう努力が展開されるということになるのか、言及をいただきたいと思うのです。
  45. 歌田勝弘

    歌田参考人 お答え申し上げます。  私どももそういう面についての細かい計算はいたしておりませんが、製造者にとってはかなりコストアップになるであろうというふうに感じております。と申しますのは、よく言われるのは保険のことでございます。保険金というのは、これも御案内のとおり、アメリカでは相当大きな保険金になって、そして損害賠償額がかなり大きくなっておるために、保険会社がどちらかというと商事にならなくなってきたというような状況があるようでございますが、それに対して企業がどれだけ保険をかけるかという問題になってくるわけであります。日本の場合も、保険会社と我々との間でいろいろと折衝が始まり出しております。今まで日本企業でやっておったところはありますが、これはほとんど特にアメリカ向けの、輸出向けの商品のためにというのが多かったように思いますが、これからは日本のためにも必要になるというふうに思います。  ただ、私どもとしては、その保険以外の面で、企業の内部での品質管理、安全のための機能強化ということは、これは各企業ともやらざるを得ません。ということで、これが人件費及び設備投資費等にどれだけはね返るのかというところは、これも業態によって違いますが、特に中小企業ではほとんど今までそういう人件費等もなかったのが今後必要になるということで、中小企業さんにとってはかなり大変だなという感じがしております。大企業は大なり小なりかなり今までもやっておったわけでありますから、それでの強化という面では中小企業が大きいということだと思います。  そのほか、先ほどから申し上げております。界としての窓口あるいは調停機関あるいは認定機関、こういうものをどういう形でだれがどういうふうに負担をしていくか、この辺がまだこれから残った問題だというふうに思っております。これも経団連に所属しております。界ごとにいろいろ意見が違っておりまして、先ほど来申し上げている、基本的には民間が主体になってやるべきだということでありますが、コスト的に考えますと、民間が全部それを負担したのではとてもやっていけないということから、行政にかなり依存したいという意向の業界もあるわけでございまして、この辺についてはこれからやってみないとよくわからない、こういう状況でございます。  ただ、総じて、そういうある程度のコストアップになっても、これからの企業のあり方としてこれは必要なコストである、企業経営にとって大事なコストである、こう考えて処理していかなければならぬというふうに私は存じております。  以上でございます。
  46. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  続いて、歌田参考人にお伺いいたします。いわゆる開発危険の抗弁に関しまして、今世界じゅうにある最高の情報を入手しなきゃいけない、こういうことなんですが、じゃ実際問題どうやってその情報にアクセスをすることになるのか、果たしてそれが本当にうまくできるのだろうか。アメリカやヨーロッパは少なくとも日本よりもデータベースは完備をしているようですし、インターネットというのですか、どこからでもコンピューターを通じてあらゆる情報にアクセスができる、そういうシステムといいますか、そういうものが相当程度進んでいるようでありますが、日本においては残念ながら少し欧米に、特にアメリカに対しては水をあけられておるということからして、それへの具体的なアクセスということになると、そうすべきだということはわかるのだけれども、メーカーといいますか企業立場からすると、これはまたちょっとえらいこっちゃなというところではないかと思います。  そして、そのこととあわせて考えれば、時々心配として指摘をされているようでありますが、いわゆる新しいことに対するチャレンジ、新製品開発に対する意欲というのですか、どうしてももし万一のことがあったら大変だということで、一歩前に出るところがちょっと半歩ぐらいでとどまっておくとか、まあまあ安全な範囲の中でということになってしまうということがあるとすれば、それこそやはり日本経済全体の活力にも大きく影響をしてくるのではないか、そういうことが心配されるわけでありますが、その点についてはいかがかということ。  あわせて、私の杞憂に終わればいいわけでありますが、このPL法施行されるという段になると、やはりある種の企業防衛のために、ある程度の規模の会社からすれば、腕ききの弁護士さんを専従で三人か四人か、さらにもう少し抱えることにならざるを得ないなという実態にだんだんなっているのか、そうではないのか、あわせて御発言をいただきたいと思います。
  47. 歌田勝弘

    歌田参考人 なかなか機微に触れる問題でございましてお答えしにくいのでありますが、最後の方から申し上げますと、今まだその体制づくりをやっておるわけで、その中に弁護士さんとかあるいは特定の専門的な知識を持った人を入れるかというところまで余りいっておらないのではないかというふうに存じます。  まず、新しい商品を出す場合の機構としては、先ほど私が申し上げましたISOというような国際的な基準が決まっておりまして、これはスイスに本部があるわけでありますが、それのための検査機風が日本にも数カ所あるわけでありまして、その商品が果たして妥当であるかどうかということを認定をする機関認定機関を昨年経団連が中心になってつくったわけであります。昨年の十一月からそれが発足しておりまして、そこの検査機関の検査結果なら信用が置ける、こういう認定をするわけであります。  ただ、その規格があるような商品というのは既に世の中に知られた商品でありますので、今先生から御指摘のような全く新しい製品開発をした場合のその安全性についての基準をどこで選ぶか、また他のそういう学術的な情報をどこで得るかということ、これもまた業界によって非常に違うわけでございますので何とも言えませんが、やはりそういうものをやる製造者は世界の学界の動きあるいは日本国内における他社の動きをよく研究をする必要がある。そういう意味の情報機構といいますか、そういうものをどこかに整備する必要もあるというふうに思うわけでございます。これも業界によっては既にあるところもありますけれども、大部分がこれからということではないかというふうに思っております。
  48. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 次に、中小企業の問題を西川参考人にお伺いをしたいというふうに思います。  先ほど先生方のお話の中に、PLって一体何だ、こんなに長い間テレビや新聞でもかなり扱ってこられたと思いますが、国民の皆さん、とりわけ中小企業方々にはPLというものが一体何なのか、その意図することはどういうことなのかということが必ずしも十二分に理解がされてない、それは恐らくそのとおりだろうなというふうに思うのです。  どうなんでしょうか、こうして鳴り物入りで国会で今まさに審議をやっているわけでありますが、今の段階で中小企業の特に物をつくっておられる製造業の皆さんがそのPLの内容をどの程度知っておられるか、理解をしておられるか、それに対して自分たちはどう行動しなければいけないのかという認識がどの程度おありになるのかどうなのか、中小企業を育成、指導なさっておられる西川参考人のお立場からして、率直なところをまず最初にお聞かせをいただきたいと思います。
  49. 西川禎一

    西川参考人 PL法の議論は大変長いわけなんですけれども、どういう形のPL法としてまとまるのかということは、非常に最近までよく見えなかったというのが実態じゃないかと思うのです。心配症の立場といいましょうか、そういう立場からいいますと、やはりアメリカ的なPL法ができて、日本の社会もそういうふうになってしまうんではないか、そういう観点から、やはり非常に強いアレルギー的ともいうべき反発があったのも事実だと思います。したがいまして、PL法そのものの意義というものは徐々に浸透していると思い ますけれども、現行の法案につきましての浸透度は必ずしも高くないというのが実態だと思います。  ただ、私どもは、中小企業の皆様方にこういうことを知っていただく立場でございますので、随分いろいろな形で周知徹底に努めておりまして、中小企業の中でもこの問題をかなり勉強してきた方々、あるいは指導的な立場に立つ方々におかれましては、この法案は、限りない心配をすれば心配がたくさんあるけれども、一応これでいいのではないかと。あとはこれをよく中小企業者方々にわかっていただくとともに、やはりそれを円滑に実行するために、先ほどるる申し上げましたけれども、いろいろな面で国の指導あるいは援助をしていただかなければならないなと。  そしてまた、そのものを、今全部要求してみると言われても、必ずしもわからない点もありまして、実行の段階でこういうことをさらにしてほしいというようなことが将来出てくる可能性もあると思いますが、そういうことを含めましていろいろと御配慮をいただきたい。  そういうことを前提に、中小企業の皆様方にこの制度の円滑な実施という点について、私どもといたしましても引き続き啓蒙をしていきたいというふうに考えている次第でございます。  以上です。
  50. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 続いて、西川参考人に少し、各論になるかもしれませんが、お伺いをいたしたいと思います。  言うまでもないことでありますけれども中小企業というのは、少なくとも大企業に比べればその安全対策について強化をする力というのはやはり限界があるかな、そんなふうに思いますし、仮に万一何かあったときの賠償負担能力、これにも限界があるというのは当然のことだろうというふうに思います。  そして、先ほど西川参考人の方から、中小企業が加入しやすい形での保険制度、これをぜひ研究してほしい、そういうお話がございましたが、この保険についても、それはいろいろな意味で、資金能力その他がある大企業に比べればやはり保険料率はどうしても高くなる、そういうことが予測されると思うのですね。  そういう状況の中で、特に私がここはやはりちょっと気をつけておかなきゃならぬなと思うのは、いわゆる親会社、その下請、そういう関係が基本的にちょっとおかしなことになるとすれば、大きく言えば日本経済の根幹にかかわってくるということにもなりかねない、そんなふうに思うのです。  例えば、親会社からその下請として仕事をもらっている、部品をつくり供給をしている、しかし、親会社からすれば、同じ部品をつくるという仕事を出すのも、本当に小さな小さな町工場よりも大きな部品メーカーに出した方が、全体としてはPLを想定すればリスクを回避することができるという発想になるかもしれない。あるいは何かもし起こったときに、その責任を一方的に、上下の力関係というのでしょうか、そういうことを背景にして、下請の中小企業に押しつけられてしまうということが、不幸にして結果的に起こるというふうなことがあってはならぬなというふうに非常に私も心配をいたすわけであります。  その親会社、下請の関係においてこのPLをどうこなしていこうとされているのか、あるいは乗り越えられるか、あるいは本音のところこういう心配があるという思いを持っておられるのか、その点についてお話を聞かせていただきたいと思うのです。
  51. 西川禎一

    西川参考人 このたびの法案を見ますと、部品・原材料メーカー、これは下請の中でも中心の部分を占めると思うのでございますけれども、その責任が免除されるというケースが書いてございまして、親企業からのいわば指示その他言うとおりにつくった結果それに欠陥があったという場合は、部品・原材料メーカーまでPL法責任を負うものではないということが書かれております。  しかしながら、逢沢先生御指摘のように、結果として親企業負担した補償を中小企業に押しつけてくる、押しつけやすいところに事前に発注するんだというおそれがないかと言われますと、私どもは大変そのことは心配をいたしております。しかし、心配しているからどうこうというふうなことも今の段階では言えないと思うわけででざいまして、やはり親企業と子企業のいろいろな関係を律することに関しましては、中小企業関係の法律もございますし、あるいはいろいろな産業政策上の指導ということも今後あり得るんだと期待をいたしておりますので、そういうことで、ただいま先生がおっしゃったようなことに結果としてもならないようにぜひしていただきたいというふうに私どもは思っております。
  52. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 私どもといたしましても、その点については十二分に目を光らせておかなくてはならない、そういう強い気持ちを持っているわけであります。  もう一つ西川参考人にお伺いするのですが、先ほど税制や金融のことについても簡単にお触れになったのですけれども、安全ですとか品質の担保のための取り組み、特に中小企業の場合であろうと思いますが、例によってというとちょっと語弊があるかもしれませんが、税の支援や金融の利子補給その他ということになるんでしょうか、そういうことについてお触れになられたわけでありますが、簡単で結構でありますが、具体的にはこういうイメージなんだというふうなものが既に御研究の成果として何か上がっておられるとすればお教えをいただきたいと思いますし、一般論としてそういう議論があるんだという範囲のことでございましたら、そういうお答えでも結構でございます。
  53. 西川禎一

    西川参考人 一般論の域を出ないわけですけれども安全対策を遂行する上で、いろいろな機器の導入、システムの導入というのは恐らく必要になってくるんだと思います。その場合、やはり金融とか税制面で御援助をお願いしたいと申し上げたわけでございます。それ以上のことはちょっとまだ研究が至ってないということでございます。
  54. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  時間も大分押してまいりましたので、次を急ぎたいと思います。  お待たせをいたしました。清水参考人にお聞きをいたしたいと思うのですが、二つお伺いいたします。  まず第一点は、いわゆる欠陥という概念の中に商品の取扱説明書や表示の不備も含まれると理解をされる、こういうことなんですけれども、こういうことになると、メーカーが発売をする製品商品にやたらと細かいというか多い説明とか解説とか、そういうものが結果的に出てくるのかなと。今でも何かこんな紙が箱をあけますと入っていますよね。ちょっと見て、もうぽいっと捨てちゃうんだけれども、結果的に消費者の方が、もうこんなの全部読んでいられないわといったようなことになって、かえって注意を喚起するという目的を阻害をしてしまうんじゃないか、これは男性ですからそういう見方をするのかもしれませんけれども、そういう心配もございますが、その点なんかについてはどんなふうなことなんでしょうか。  あるいは、場合によっては商品そのものに何か記載があるというふうなことになると、物を使うのにかえって不便だという実態が起こるという心配もアメリカなんかでは少し事例として報告がされているようでありますが、そういうことについては何か、連絡会ですか、そういう中で議論がおありになったのかどうか。  そしてもう一つは、被害の実態のところで御報告をいただきましたが、結局、苦情やそういうことを何かあっても黙っていて言わないという方が、先ほど御紹介の数字だと四九%、約半分の方が販売店にも文句を言わないし、メーカーにも手紙を書くわけじゃないし、センターに駆け込むわけでもない。半分の方がそうだということでありますけれども、何でそうなのか。お金を出して買って使っているのに、何か不備があった、壊れ たとか、それによって損害があったというのに、どうしておっしゃらないのか。その心理をお伺いしたいというとちょっと大きな話になるかもしれませんが、その点についてどう分析なさっておられるのか、お話をいただきたいと思うのです。
  55. 清水鳩子

    清水参考人 表示がふえてふえてかえって消費者にとって迷惑じゃないかということですけれども、私たちの理解では、今の商品の表示というものが、消費者が必要とする表示が優先的に書かれているかというふうに見てみますと、かなり削ってもいいような表示がむしろ大きい字で書いてありまして、キャッチフレーズとか売り込みとか、それに対比して本当に必要とする表示というものが後回しになっているという部分があると思いますので、今通産省の中にこの問題を検討する委員会ができておりまして、消費者団体の者も、それから相談業務に携わっていらっしゃる方もその委員に入りまして、どういう警告表示なり取扱説明書が望ましいかということを検討しておられる最中で、そこでも十分いろいろな意見が出ると思います。  ですけれども、一般的に見まして、商品の安全に関する表示というものは絶対的に不足していると思います。どうでもいいと言うと語弊がありますけれども、そういう表示がやたらに多過ぎるということで、そういうところを交通整理していくことで、かえって消費者にとって有利な作用をもたらすんじゃないかというふうに思います。  それから、なぜ二分の一が泣き寝入りしてどこへも言わないのかということですけれども一つは、訴訟にするとか大騒ぎするほどの程度じゃないからというのもあると思うのですね。  それから、今先生がおっしゃったように、消費者の意識の問題もあると思いますけれども、もう一つは、これはいろいろな調査があるのですけれども、一遍言っていったけれども、やはり立証責任を相当こっちに負わされるので、それはもう今の情報開示の規定の中では消費者がそんなにいろいろなことを言われてもできない、それが結果的に泣き寝入りになるということがあると思うのです。  それから、三日の日の商工委員会を傍聴させていただいておりましたけれども、そこでもやはり各地のセンターなどの苦情処理体制が必ずしも十分じゃないわけですね。消費者センターがどこにあるかということを知っている人ばかりかというと必ずしもそうではないし、それから、地域にありましても、非常に自分の居住地から遠く離れているということになると、行きたくても行かれないという問題もあると思うのです。  そういう意味では、消費者センターとか苦情処理体制をもっと強化していくということで、だれもが簡単にそういうことを相談に行けるという体制をつくっていけば、もっともっとふえると思うのですけれども
  56. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので終わりたいのですが、最後にもう一点だけ、歌田さんに輸入のことについて、何かこのことが契機で少し変化があるのか。賠償の負担能力のある、はっきり言えば欧米の大きなしっかりしたところからやはり輸入するなら輸入した方がいいということになって、結果的にちょっとヨーロッパでもそういう数字の動きがあったようですけれども、途上国からの輸入が減るというようなことがあるのか。どんなふうに経団連で予測をされておられるのか、されておられないのか。何かコメントがありましたら、簡単におっしゃってください。
  57. 歌田勝弘

    歌田参考人 ただいまの件につきましては、経団連としてまだ見解をまとめているわけではございませんが、私個人の気持ちとしては、やはり輸入業者が今度はこの責任を問われるわけでありますから、輸入先についてかなり厳選をしてくるということは当然ではなかろうというふうに考えております。
  58. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。  先生方には、本当にありがとうございました。
  59. 白川勝彦

    白川委員長 次に、松本龍君。
  60. 松本龍

    ○松本(龍)委員 社会党の松本でございます。  きょうは、各界各層の参考人の皆様、大変御繁忙の中にこうやって審議に参加をしていただきまして、先ほど来貴重な、示唆に富む、またうんちくの深いお話を聞かせていただきましたことに心から感謝を申し上げますと同時に、私自身この委員会に所属をいたしまして、こういう皆さんのお話が聞けて本当によかったなと今改めて思っているところであります。  先ほど来皆さんのお話を伺いまして、各界各層の皆さんがさまざまな立場を乗り越えてきょうの製造物責任法審議に参加をされている。清水参考人のお話によりますと、まさにそれぞれが不満を持ちながらここまで到達をしたということについて、私は皆さんに敬意を表したいと思っております。  そこで、何でこういうふうになったのかなと考えますと、立場はそれぞれ違うでしょうけれども一つ共通の立場は、それぞれ生活者であられる、消費者であられるという立場から、この日本において製造物責任法が必要であるという思いがやはりそういう流れをつくってきたんだなというふうに考えているところであります。  歌田参考人にまずお伺いをいたしますけれども、今日の日本の発展、あるいはそのために大変な御努力をされてきたことに敬意を表したいと思います。  私は、この製造物責任法をつくるメリットといいますか、そういうのが一つあるとすれば、当然、製造物の安全性向上というのはありますけれども、もう一点では、これだけ国際化社会になってきた、日本製品が世界各国を飛び回っている中で、アメリカや欧米並みに製造物責任法ができることによって、日本もやはり国際協調ということが必要であろうということで、そういう意味での大きなメリットがあるというふうに思っています。  かってLトリプトファン事件というのがありまして、外国の被害者にはそれなりの措置があって、日本ではなかなかそれができなかった。つまり、今までの日本は大変な高い品質管理もとにやられてきたけれども、言ってみれば日本の国内の消費者を犠牲にして、ある意味では国際競争力を身につけてきたんだなというふうないわゆる外国のそしりもあろうかと思います。  そういったことも払拭する意味で、私は、今回の製造物責任法制定は絶対やらなければならないと考えているわけですけれども、そういう観点から、国際社会においてこの製造物責任法の持つ意味、あるいは日本の経済がこれから国際的にどういうスタンスをとらなければならないか、メリットをお話ししていただきたいし、もしデメリットがあるようでありましたら、それもお話し願いたいと思います。
  61. 歌田勝弘

    歌田参考人 私は、やはりこの製造物責任法日本でできることは、日本の国内の大きな今までの流れに対して非常に画期的なことであるというふうに考えておりますし、また、今松本先生お話しの国際的な面での日本のあり方というのにも沿っておることだというふうに評価しております。  ただ、私ども経済界の基本的なスタンスとしては、まず法律ありきではなくて、やはり生活者消費者主体になった、製品というものについての安全性とか品質をよりよくしていくということについて、総合的な面でもっともっとやはりやらなければいけないことがあるのではないか。そのうちの一つにこの法律もあるということで、法律さえできればもうすべてが解決とか、あるいは法律がないのが非常に大欠陥であるというふうには私は考えておりません。  特に、今ちょっとお言葉の中にありましたような、日本生活者を犠牲にして、輸出優先で、海外にはいいものを出してこちらではというようなことは、日本の少なくとも代表的な産業についてはそういうことはまずあり得なかったというふうに私は今も存じておりますが、しかし、今後とも やはり世界の中での信頼を得るという意味では、こういうことが必要ではないかというふうに思っております。
  62. 松本龍

    ○松本(龍)委員 お話をお伺いいたしまして、参考になりました。  日本消費者を犠牲にしたとかいうくだりがありましたけれども、それは外国からそういうことが言われては困る、だからやはり製造物責任法が必要なのだということの意味から私も申し上げたわけで、今おっしゃったように、双方のこれは意識革命といいますか、メーカー側はメーカー側の、本当に製品に対する安全性をしっかりやらなければなりませんし、また、消費者側もいわゆる誤使用等々をしないように学習をしなければならない、そういったこともこの製造物責任法の大きな意味であろうというふうに私は思います。  陳述をされた御順にお伺いをしたいわけですけれども、次に西川参考人にお尋ねをいたしますが、私も中小企業にかつて身を置いておりましたので、この法案に対する不安、あるいはどうなるのだろうかというさまざまな声も私のところに届いてまいりました。そういう意味では、先ほど逢沢委員がお尋ねになったように、金融財政面の措置あるいは保険制度等々、いろいろ方策を考えられると思いますけれども、ひとつ私は切り口を変えまして、今まで日本は大変な技術立国と言われて、それもやはり中小企業がその分野分野で大変な技術を持って今日の日本を支えてきたと思います。  例えば、CDの金型を研磨するダイヤモンドをつくる人たちはもう日本では二、三人しかおられないという、大変熟練技能者が不足をしてきている今日であります。汗をして地道に働いてきて、手にすばらしい技術を持つということがなかなかこれからの日本の社会の中では難しくなってきている。そういうことがやはり製品安全性、製造物の安全性を担保するのに逆の意味で危ないのじゃないか。  つまり、雇用の問題、人材の問題、そして汚した者が報われるといいますか、地道に技能を磨いてきた人たちを地位的にも身分的にも保障していく制度が私は必要だろうと思いますけれども、そういったいわゆる人材育成の視点から、この製造物責任法に少し関連しますけれども、これからの日本の産業の中でそういった懸念をどういうふうに克服していく必要があるのか、その辺の切り口からお話を願えればありがたく思います。
  63. 西川禎一

    西川参考人 中小企業の人手不足、特に有能な専門家の確保、これはもうずっと悩んできている問題なのです。もちろん、中小企業の諸環境の面でこれを改善して、そういう方々に生きがいを持って働いていただけるようなふうにしていく必要があるということで、その面の努力をするように私ども機会あるごとに啓蒙しているという段階です。  そうは申しましても、実際問題として、なかなか中小企業に人は来ていただけないということでございます。業種別の団体でもあるいは各地の商工会議所でも、人材育成のための研修とか、そういうものに努めておりますけれども、そんなことだけではとてもこれが足らないわけでして、いろいろ公的機関での御努力とかいうことが強く求められるわけです。  私、ただいま御質問を聞きながら、どういうことをお答えしたらいいのかなと考えておりました過程で頭の中に浮かんできましたことは、やはり各地に公設の試験所なりなんなりございますけれども、こういうものが生きた形で使われていないのではないかという気がいたしますので、そういったところの活用の面で、中小企業の人材が現場的な意味でも能力アップになるというような余地が大いにあるのではないかと思っております。  深く考えてまいっておりませんので、不十分なお答えになるかと思いますけれども、以上にさせていただきます。
  64. 松本龍

    ○松本(龍)委員 本法と少し離れた視点からの切り口で、唐突な質問で申しわけなく思っていますけれども、これからやはり、言われますように、中小企業が本当に今まで日本を支えてきた、そしてこれからも支えていくという意味で、PL法に関するいわゆる優遇措置なり保険制度なりさまざまな試みは必要だろうけれども、やはりそういったすばらしい安全性を担保する技術確保するということもある意味では必要がなということでお尋ねをしたところであります。  清水参考人にお話をお伺いしたいと思いますが、先ほど来現場で大変頑張ってこられたいろいろな方々のお話があったと思います。そういった中で、要はいわゆる対応が違うということを言われました。つまり、大きな声は聞くけれども、小さな声はなかなか聞いてもらえない。「欠陥商品一一〇番」にしても、そういった事例は今までに聞いたことがない、どこかの官僚答弁じゃないですけれども、前例がない、したがってこれは欠陥ではないというふうなことが現場ではいろいろあったと思いますけれども、そういった現場におられて、消費者の態度あるいはメーカー側の態度等々で、PL法そのものの周知をしていくのは大切なことだと思いますけれども、それ以外に、こういう基本姿勢を改めてほしいとか、そういったものがありましたら、参考までにお話をお伺いしたいわけです。
  65. 清水鳩子

    清水参考人 お役に立つかどうか、最近の事例で申し上げたいのですけれども、PL訴訟で、自転車のハンドルの欠陥でメーカーに責任を負わす判決が五月の末ごろ出ました。この事件は、実は主婦連合会の苦情相談窓口に寄せられたものでございます。このときの企業の一番最初の対応は、要するに私たちの方に欠陥商品を提供した覚えはないということで、使用者の問題だということで切り捨てられて、それで和解金がある一定額提示された。それは本当にわずかな金額でございましたけれども、訴訟に持っていった過程の中でいろいろなことが明らかになったわけですね。何が明らかになったかというと、要するに自転車メーカーが完成品に使ってはならない試し打ち品をチェックしないまままぜてしまったということが訴訟の中でわかってきたわけです。そこでメーカーの方は過失を認めていくわけですけれども、やはり訴訟しないとこういう事実がわからないわけです。  先ほど相対交渉の問題も申し上げたんですけれども相対交渉で問題だというのは、その中が公にならないということです。ですから、訴訟をやってみればその中が明らかになってくるということで、本当に公平、公正な社会というのは、こういう透明性の確保された社会制度と、そういうものによって培われる社会なんだろうと思うのですね。そこには当然自己責任ということも来ると思いますけれども、その自己責任を前提にした上で、そういうお互いの公平、公正な社会をつくるという意味では、先ほどから訴訟のお話が出ますけれども、やはり判例の積み重ねをすることによって紛争解決基準が明確になってくる。明確になってくれば、そのことによってクレーム処理もおのずから公平、公正に、しかも簡易に、余り時間をかけずにできてくるということで、裁判というものは私たちの国民生活になじまないとよく言われますけれども、これからはそういう意味では私たちも製品事故を単なる泣き寝入りに終わらせるのではなくて、実績を重ねる、判例を重ねていくということが必要なんだろうというふうに思っております。
  66. 松本龍

    ○松本(龍)委員 ありがとうございます。  いろいろな方々の御意見を聞かれて、今日まで苦労されたと思うんですけれども、法制定後、さまざまな問題、懸念があられる思いますけれども、その課題として、一つ原因究明機関充実、また、裁判外紛争処理機関とか、開発危険の抗弁が認められた場合のいわゆる被害者救済の問題等々あると思うわけですけれども、こういった点どのようにお考えでありますか。また、これからどのようにした方がいいというふうにお考えか、お聞きをしたいと思います。清水参考人お願いをします。
  67. 清水鳩子

    清水参考人 今の原因究明とか少額被害の裁判外紛争解決制度の問題ですけれども、今いろい ろ審議会の答申の中にも盛り込まれておりますけれども、こういう行政改革の時代に新たな機関をつくることはいかがかということで、既存の制度充実させていくということで、この前の委員会でも御議論が出ておりましたけれども、それらのネットワークをしていくということでございました。それで方向的にはよろしいと思うのですけれども、ただ、既存の制度を拡充強化というときに私たちが願いますことは、やはり第三者的な、客観的な運営ということと、何よりも不可欠なことは、そこの中の審議とか情報の開示、国民の前に明らかにしていくということがなければ、既存の制度をがちゃんとつないだだけでは消費者側の被害の救済の解決につながらないというふうに思います。  それから、そういう第三者機関に対してさまざまな法的な権限と申しますか、調査権とか命令権とか立入検査の権限とか、そういう新たな権限も附加して、そしてきちっとしたものにしていかないといけないんだろうと思います。そういうことを前提にした上で、開発危険の抗弁とか推定規定の問題についても私たちは譲歩している部分もあるわけですね。ですから、片一方が完全に抜け落ちてしまって、法律の中から私たちが制定当時から要求してきた項目が落ちてくるということは、私は、先ほどから申しているように、本当の意味の国際的な水準の製造物責任法にはならないというふうに思います。  その原因究明機関とか裁判外紛争処理機関のあり方については、またこれからきちっとした議論を政府の方でしていただきたいと思うし、そういう御準備もあるというふうに伺っております。ぜひそこにも私たちが積極的に参加して、発言をして、提案をしていきたいというふうに思っております。
  68. 松本龍

    ○松本(龍)委員 ありがとうございました。  続きまして、中坊参考人にお尋ねをいたします。  きょうは遠方からわざわざお越しをいただきましてありがとうございます。先ほど来、法の理念は正義の実現である、まさに自由と公平が一番問題なんだという、今までずっと現場でやってこられた中からの発言、示唆に富む発言をお聞きしたわけですけれども、いろいろずっとこの間携わってこられまして、裁判例をいろいろごらんになったと思うわけですけれども、その中で事実上の推定が働かなかったことによって被害者が救済されなかったような例、そういうものがありましたら、具体的な先生の事例でも結構ですので、その辺のところをお聞かせ願えませんでしょうか。
  69. 中坊公平

    ○中坊参考人 私自身はさほど担当しておるわけでもありませんののて、単に聞いておるところを一、二例申し上げたいと思います。  かなり有名な事件では、昭和五十一年に福団地裁であった判決があるのです。それはいわゆるダンプカーの事故でありまして、ダンプカーの荷台がおりないものだからその下へ入って直しておった。ところが、下へ入って仕事をしているときに、その荷台が突然上から落ちてきた。それで死んじゃった、亡くなられた。買うてからわずか九カ月ほどしか日がたっていなかったという事案なんですね。ところが、メーカー側の方にいたしますと、いや、そういう事故で亡くなったような例とか、そういう突然理由なく荷台が落下するような実例はどこにもないということになるわけです。それが立証されるわけです。そうすると、ほかにだれかが何かなぶったんじゃないか、だれもしたことがないというまま、結局その事件は、そのダンプに何らかの欠陥があったということはわかるけれども、どこにどういう欠陥があって過失責任につながるということは証明できなくて、敗訴になる、こういう事例も多かったと思います。  あるいはファンヒーターの事件で、これは昭和六十一年に静岡地裁の沼津支部であった判決だと思いますが、その判決では、ファンヒーターから火が出た、こうこちらは言うわけですけれども、そのそばにまた別の同じような過熱するものがあった。そうすると、全部焼けちゃってしまっていますから、その結果がはっきりしない。すると、こちらはそこへは寄っていない、こういうふうに言いましても、二つ類似したような過熱のものがあれば、どちらかわからない。それはどちらかだろうということは想像がつくわけですけれども、結局、どちらだということがわからないまま責任が否定されていく。  このようにいたしまして、やはり従来の過失責任というもとでは、どこに欠陥があったか、欠陥の部位が、まず当該物品がわかって、また欠陥の部位までが証明されて、そしてまたその主観的な認識が必要だということから、結果的に数多くの方々が立証不足ということのもとに敗訴されている事件が数多く続いてきた。これはもう一、二例だけではなしに、数多くの、ほとんどの事件がそういう意味ではむしろ敗訴の確率の方が多かったというのが実情ではないか、このように思っております。
  70. 松本龍

    ○松本(龍)委員 先ほど来、情報公開の問題、証拠開示の問題、いわゆるアメリカのディスカバリー制度のような問題等々がありまして、やはり日本の今の裁判制度等々でなかなか難しい問題があると中坊参考人おっしゃいましたけれども、そういった中で、企業行政などが持ついわゆる安全に関する情報といいますか、そういったものがいかに重要であるかということも、先生の今までの経験の中から痛いほど経験をされているというふうに思うのですけれども、情報の開示がされない現状について今どういうふうな御認識を持っておられるか、簡単にお願いします。
  71. 中坊公平

    ○中坊参考人 例えば、まず火災になったといたしますね。そうすると、火災になった場合の消防署の判定記録というのがあるのですが、あれはいわゆる裁判を起こして初めて裁判所に出てくるのですね。だから、起こす前には出てこないから、実は当てずっぽうで起こさないといけないというような状況です。そしてまた、実際火災になったとして、警察の資料というのは全く出てくる方法がない、こういうような実情になっております。  そして我々は、この裁判の中で相手方が持っている証拠等を出してもらえるというのは、文書提出命令の申し立てというのがあって、それによって相手方の資料が出してもらえる、出さなかったら相手方に不利益に判断される、こういう規定があって、その活用が望まれるわけです。  しかしながら、この文書提出命令というのは、基本的にいわゆる権利義務に関する文書だというふうに決められておるわけですね。そういたしますと、本件の場合は、不法行為による場合ですから、権利義務は直接関係ありません。そういうことからいたしますと、文書提出命令の対象にもならない。そういうふうにいたしますと、先ほど言ってますように、欠陥が発生したことに関する情報その他は相手方が任意に出してくれる、あるいは何らかのことでたまたま見つかる、そういうこと以外に裁判の過程にそれが乗ってくるということがほとんどない、これがやはり現状の裁判の実務でありまして、そういうもとで、我々は何らかの方法で欠陥の中核を証明をしていかなければならない、こういう状況もとであります。  それが今回の事実上の推定だけでは非常に無理だ、だから何とか推定規定を置いていただきたいという日弁連のお願いの提案をしたのですけれども、今回は入っていない。だから、そういう意味では、我々は、確かに大きな原則はよくなったけれども、しかし、今のもとにおいてもなおかつ立証の困難性は従来どおり残ってきている、こういうふうに理解しなければならない、このように思っております。
  72. 松本龍

    ○松本(龍)委員 私どもも当初はいわゆる推定規定を設けるようにということを主張してまいって、さまざまな論議を経て今日に至ったわけでありますけれども、やはり立証負担の軽減なり、いわゆる証拠開示なり、さまざまな問題がこれから法制定後も議論されなければならないというふうに私自身は考えているところであります。  加藤参考人にお尋ねをいたしますけれども国民生活審議会会長に昨年の一月に選出された折に、内容的にはアメリカに比べて少し緩やかなE C指令型といいますかのPL法導入で何とか意見を取りまとめていきたいというふうに述べられておりますが、今回、こういう状況でこの法案が提案されたわけですけれども、今日に至るまで中心になってやってこられた先生としての感慨といいますか思いを、一言お述べをいただきたいと思います。
  73. 加藤一郎

    加藤参考人 思いといいますと、大変複雑ではございますけれども、私は最初からこの問題に非常に取り組んできたつもりでございますし、私の先生でありましたた我妻先生が研究会をつくってやってこられたのがやっとここまで来て、初めから、昭和五十年ですから、もう我妻先生から二十年、最初のキャリフォーニアの判決からだと三十年ということで、やっと日の目を見ることになりつつあるということで、大変うれしいことだと思っております。  EC型ということは、結果的にそうなってまいりましたけれども、実は国民生活審議会が、何年でありますか、最初にこれの諮問を受けたときにはまだはっきり方針は決まっていなかったと思うのですが、いろいろその二年間議論をいたしまして、一昨年その報告を出すところまで議論を重ねました結果、EC型のあたりがいいんじゃないかというようになってきて、そしてその後また二年間議論をいたしまして、結局はEC型というべきところに落ちついたわけでございまして、これも結果的に見ればそこら辺が妥当なところかなというわけでございます。  先ほど申しましたように、アメリカでは随分行き過ぎ、随分というか行き過ぎがありまして、いろいろそれを是正しようという努力がある程度行われて、緩和されたところもございますけれども、まだ十分でないという意見もございます。ECの方はそれを見ておりまして、やはり日本に出たのと同じように、アメリカ型になっては大変だという意見がかなりございまして、それがおくれていた原因だと思われます。  それで、十年以上前にEC指令が出ましたが、その後各国で立法の段階でも似たような議論があったようでございまして、やっとそれがそろってきた。その間の実施された実情は、日本からも調査団などが幾組か行きまして調べられたものがございますけれども、アメリカのようにはなっていない。訴訟の件数もそれほどふえているわけでもないし、保険料が上がっているわけでもない、そういう報告を私も見ております。  それじゃなぜ訴訟がアメリカが多くてECでそうでもないのか、そういうことを考えてみますと、これは日本でも同じことなんですが、アメリカのバックグラウンドと日本とが相当違う。  これはアメリカの学者で、キャリフォーニア大学のバークレーの教授で、私も親しくしているフレミングという英米法の権威の学者がおられますが、フレミングの「アメリカン・トート・システム(アメリカの不法行為システム)」というぺーパーワークみたいなもので出ている本がございますが、これは内容が非常に充実しておりまして、なぜアメリカがこういうふうな不法行為が栄える国になったかということが非常によく分析されております。  それはさっき中坊さんもおっしゃいましたように、アメリカは弁護士がたくさんいて、競争社会で、皆で金もうけのために競争しているというようなところがあるわけですけれども、もう一つ、余り今まで言われていなかったこととしては、アメリカの裁判所が非常に積極的で、司法積極主義などと言われて、これは民法ばかりでなくて憲法なども言われるわけですが、不法行為の分野では、アメリカでは社会保障が不十分である。ですから、被害者が被害を受けた場合に、社会保障、健康保険とかあるいはその他の社会保障で十分な救済を受けられない、裁判所がやるほかはないんだということで、裁判官が積極的に被害者救済を図ろうとしたということが書いてありまして、ここら辺も非常におもしろい指摘だと思いました。  そのほかに、アメリカに例えば陪審制度があって、陪審があるとどうしても被害者に味方するようになるとか、それからさっき中坊さんのおっしゃいました成功報酬制度というのは、これは成功報酬という訳がちょっとわかりにくいと思うんですが、原語はコンティンジェントフィー。コンティンジェントというのは偶然なというような意味になるんですね。つまり、それを引き受けて、当たれば二分の一か三分の一報酬がもらえる、当たらないで負けたらこれはもうゼロなんです。そういう非常に訴訟の勝ち負けに依存する報酬だという意味でコンティンジェントフィーと言っておりまして、日本では勝った場合のことだけ言って、成功報酬と言っているわけですが、つまりある種のかけみたいになって、弁護士がそういう被害者を探して歩く。アンビュランスチェーサーということがよく言われますが、緊急自動車を追っかける、そんなことがあるとか、いろいろそういうことがその本に書いてありまして、今私が翻訳中でございますので、間に合うように出したいと思いますが、ちょっと間に合いませんが、お買い求めをいただければありがたいと思います。
  74. 松本龍

    ○松本(龍)委員 もう一問質問しようと思ったのですけれども、御熱心にお話しをいただきましたのでやめることにいたしますが、当然、アメリカでは法律事務所のコマーシャルがテレビで流れたり、いわゆる市民と弁護士、そして裁判というものがかなり近い距離にあるわけですけれども、まだまだ日本はそういうわけにはいかない。  それで、三日の委員会でも訴訟社会になるのではないかというふうに言われましたけれども、先ほど先生のお話につけ加えますと、やはり懲罰的な賠償制度とか保険制度等々も絡んで、やはり日本とアメリカではさまざまな違いがあるというふうに今のお話を聞いて認識をいたしました。  委員の皆様の御努力に対して敬意を表して、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  75. 白川勝彦

    白川委員長 次に、西村眞悟君。
  76. 西村眞悟

    ○西村委員 民社党、改新の西村眞悟でございます。  きょうは、参考人先生方、それぞれのお立場で、重い、そして教訓に富んだ、示唆に富んだ御意見をありがとうございます。十分聞かせていただいたというふうな思いでございますが、もう少し聞かせていただきたいなという点を二点お尋ねいたしたいと思います。  さらにまた、法律実務家の中坊先生からは、この法案について評価する、あとは運用の問題であると。運用の問題といいますのは、法律実務家、そして市民に投げ返された問題であるというふうな評価をいただきました。また、権威であられる加藤先生には、PL法には欠陥はないという評価をいただいて、非常に心強く思っている次第でございます。  したがって、両先生に二点、一点ずつお伺いしたいのでございますけれども、中坊先生、森永砒素ミルク事件で非常に御苦労なさって、長期な裁判を最後まで持っていかれたのですけれども、あの裁判の当時に、今出ておるPL法案が成立しておって、それを適用する実務家の立場であられた場合に、どのような展開になったであろうかということを、御体験を踏まえて少し御説明いただきたいと思うのです。
  77. 中坊公平

    ○中坊参考人 この当時は、事件が発生しましたのが昭和三十年ですから、もちろんこのような製造物責任法あるいはそれに類するような物の考え方自体が少なかった時代ではなかったかと思います。そういうことで、もうその直後にやはり被害者の一部の方が訴えを提起されておられます。しかしながら、結果的にその訴えは取り下げになっております。立証できないということで、敗訴の可能性が高いということから、訴えを取り下げたということになっております。  言うまでもなく、先ほど言いますように、その製品の中に砒素が入っているというもう典型的な欠陥なわけであります。しかしながら、問題は、欠陥であったとしても、過失責任を問おうと思うと、その主観者の意思が問題になってまいります。それと、先ほど申し上げたように、自分は専門のある商社から買って、いい製品だと思って 買ったんだ。そうなってくると、注意義務の前提としてのそういう悪くなる結果の予見可能性がなかったのではないか、あるいはそれを避けることができなかったのではないか、こういう主張を、昭和三十五、六年ごろの訴えを取り下げられました記録を見てみますと、森永は一貫して主張しております。そして、事実、その事件は一審は刑事事件が、昭和三十八年ごろでしたか、無罪になるわけでして、その過程の中で訴えが取り下げられるという、今から思えば悲しいことになっております。  もし製造物責任法がその当時あれば、欠陥があったことだけは事実なんですから、これはやはりその当時からその被害者は裁判に勝ち得た、すなわち責任が追及できた、このように思うわけでして、やはりその当時のことを考えますと、胸が痛む思いがいたします。
  78. 西村眞悟

    ○西村委員 ありがとうございました。  加藤先生、私が大学に入学したときは昭和四十三年でして、七百九条に関する教科書は先生のあの有斐閣の教科書しかなかったと思うのです。その後、先生、四十年代に一度判例の進展を踏まえてちょっとつけ足されたと思うのですが、それでも、ちょっと失礼な評価ながら、判例のすべてを網羅したようを改訂をなされる時間的余裕は余りお持ちではなかったのではないかと思います。  このように判例が物すごく発展してきておりまして、先生、先ほどはアメリカで厳格責任、ストリクトライアビリティーが判例として認められて今日まで流れてきたとおっしゃいましたけれども日本でもやはりアメリカに匹敵する、それは先生評価ですから私はわかりませんけれども、アメリカに匹敵するような判例の集積が現在まであると思うのです。PL法は、明治維新に法を制定したように、何もないところにこの法を持ってくるのではなくて、実務家が形成した判例の集積の上にこの法がさらにつけ加わっていくという思いがするのです。  そこで、この点をもうちょっとお聞きしたかったなと先ほど感じた点ですが、我々日本の判例の集積をどう評価されるのか。そして、このPL法というものがそれをスムーズに推進させる方向での法制定なのか、何かギャップがあるのか、それともまた逆行さすのであろうか。この点、ちょっと漠然とした質問で恐縮ですが、判例とこの法律というものの両者をどのように結びつけて評価されているかという点について、お答えいただきたいと思います。
  79. 加藤一郎

    加藤参考人 私の本を読んでいただいて本当にありがたいのですが、いずれその改訂版もと思いながら、その余裕がなくて、十分でございません。  それで、製造物責任については、日本の判例法の発展が不十分であるということは御指摘のとおりでございます。先ほど百五十件ぐらい判例があるという話も出ておりましたが、これについては弁護士の中村雅人さんという方がまとめたものを出していたり、あるいは医法研という医薬品企業法務研究会、これは薬事関係の会社、製薬関係の会社でつくっている研究会ですが、まじめに勉強して、これは非売品だと思いますけれども、そこでまとめたものも出ております。  ただ、日本で判例がなぜ発展しなかったかというと、それはやはりそれだけ訴訟がなかったということなんだろうと思うのです。それは、先ほどから言われておりますように、過失の立証が非常に困難である、だから訴訟を起こそうかと思ってもなかなか起こすだけの勇気がないという、これが一番だと思いますが、もう一つは、やはり製造物責任といいますと少額被害が多いのですね。それは中には、アメリカなどでは自動車とかあるいは薬品で高額のものとかいろいろございますけれども、つまり訴訟をして引き合うほどの価格のものでなくていろいろ被害があったんだということではないだろうかと思うのです。  現在の裁判制度では、九十万円までは簡裁に行くということですが、九十万円を超える被害というのは普通の市民の中には少ないわけですし、それから九十万円以下ですと、百万円になっても弁護士の方もそう喜んで引き受けるという金額ではないというようなこともございまして、訴訟になっているものが非常に少ないということがございます。  それで、今度この法律が通ったといたしますとどうかというと、やはり少額被害が多いと思うので、なかなか裁判所には行きにくくて、消費生活センターとか、そういう裁判外での請求というのが多くなるだろうとは思いますけれども、しかし、今まで過失の立証が困難なためにあきらめていたという人は、欠陥ということなら、それじゃ訴訟してやってみようという人は出てくると思いますので、若干訴訟はふえるのではないか。  そして、一番大きなことは、訴訟になった場合に、過失についての争いということはなくなって、欠陥という客観的なもので争われることになりますから、訴訟が早く片づくということが言えると思います。そういう意味で、訴訟で勝つ見込みがふえてきたということ、訴訟がそれだけ迅速に片づくのではないか、そういう意味の効果が非常に大きいというふうに期待はしております。  以上です。
  80. 西村眞悟

    ○西村委員 ありがとうございました。  そのほかにも、この法律に関するその他の問題点をいろいろきょうは午前中御指摘いただきまして、これから審議に、また、この法案のみならず、この法律の周辺にある問題にも生かしていきたいと思います。  ありがとうございました。
  81. 白川勝彦

    白川委員長 次に、矢島恒夫君。
  82. 矢島恒夫

    矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  私の持ち時間は極めて短いものですから、清水さんと中坊さんに、お二人にお聞きしたいと思います。  皆さん方のこれまで二十有余年にわたっての御努力に対して心からの敬意を表したいと思います。同時に、やっとここまで来た以上は、真に消費者被害を救済するという中身が求められていると思います。そういう点で、清水さんが先ほど情報開示の問題、あるいは欠陥の定義の問題、推定規定の問題等々御指摘になったわけですが、開発危険の抗弁について御意見があったら承りたい。  それから、中坊参考人でございますが、やはり同様に問題を指摘されました。四月七日に日弁連の会長さんが、まだ問題が多い、さらにこれを検討審議して、速やかな救済、それから国際的に調和のとれた製造物責任法にという談話を発表されました。この法案に対して修正を望まれるのか、もし望まれるとすれば、この点がひとつ修正できないかというあたりを御指摘いただければと思います。  以上です。
  83. 清水鳩子

    清水参考人 開発危険の抗弁につきまして、私どもは、抗弁を認める場合には、そのレベルを高くしておくと。そのレベルがあいまいですと、要するに全部開発危険の抗弁のところに逃げ込まれてしまって実質的な審議ができなくなりますので、レベルは高くするということと、その水準を明らかにするということを言ってまいりました。  それともう一つ開発危険の抗弁を認めることによって救済されない被害者が出てくることが当然予想されますので、その場合にそれをどうするかということもあわせて検討していただきたいというふうに言っております。そういうことでございまして、やはり周辺の整備もかなりこれから重要になってくるというふうに思います。  スモンのときに開発危険の抗弁、今度はコンピューターが進んでいるから以前のように情報を入手するのに時間がかからないのじゃないかというお話もございましたけれども開発危険の抗弁を認めるに値する情報があるかないかということを探し出すだけで七年も八年もかかったということですから、認めるということは、その被害救済にとって、幾らコンピューターシステムが進んだとはいえかなり難しいことだと思いますので、十二分な水準というものを明らかにしていただきた いというふうに思います。
  84. 中坊公平

    ○中坊参考人 私の当初の意見陳述のところで、現在の法案につきましては、私たちが子細に検討しますと、やはり幾つかの不十分な点あるいは場合によっては問題点になるのじゃないかという点があることを当初指摘さしていただきました。  しかし、私自身といたしましては、同時に申し上げましたように、今過失責任から客観的な欠陥責任に変わるという意味は本当に大きい。まさによく言われておりますような消費者の視点から、あるいは生活者の視点から社会を見るという意味では、これほど大きな変わりが、この原則の中で変わるということを本当にどこまでも高く評価したい、このように考えています。そういう意味では、この法案がやはり一日も早く通ることこそが望ましい、このように考えておりますので、現時点において、私といたしましては、修正というようなことを求める意思はありません。
  85. 矢島恒夫

    矢島委員 ありがとうございました。
  86. 白川勝彦

    白川委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、お忙しい中を長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  この際、申し上げます。  消費者問題等に関する特別委員会との連合審査会は、本日午後一時三十分より開会いたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十六分散会