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五十嵐参考人 おはようございます。御紹介いただきました
日本労働組合総連合会、連合の
五十嵐と申します。
本
委員会で議題になっております
健康保険法等の一部を
改正する
法律案に対して御
意見を申し上げさせていただきます。
まず、結論を先に申し上げますならば、私
どもは、今回の
改正法案に対して、おおむね了解できるものではないかと
考えているところであります。
その理由を申し上げますと、今日、人口の
高齢化の進展にあわせまして、疾病構造が変化をしてきている、あるいは
医療サービスに対するニーズの
多様化や高度化など、
保健、
医療、
福祉を取り巻く環境が大きく変化をしてきているわけでありまして、それにこたえる
施設として今回の
改正が行われているのではないか、そう
考えますと、私
どもはこれを
評価をしたいと思っているわけであります。
より具体的に申し上げますれば、
付添看護・
介護給付の
改革なり、あるいは
在宅医療の推進、さらには
入院時の
食事の改善、
現行現金給付等の
見直しなどが行われているわけでありまして、
健康保険法はもとより、国民
健康保険法、
老人保健法等の
改正について、私
どもは
評価をしてまいりたいと思っています。
しかし、残念ながら、
評価をするにいたしましても、今回の
改正にもろ手を挙げて
賛成できない点が甚だ残念でありまして、その点についてはぜひ改善を図り、そして慎重な御
配慮をお願いをせざるを得ない。この政治の場で御
配慮をお願いを申し上げたいと思うところであります。
その慎重な
配慮を求める点であります。それは、もう既に御論議いただいているかと思いますが、今回新たに創設をされます
入院時
食事療養費制度の内容であります。
入院時の
食事にかかわる保険給付の
見直しにつきまして、新たに標準
負担額といいますか、そういうものを設定をいたしまして、本人で一日八百円、
住民税非課税世帯で六百六十円、さらに低所得者に三百円の定額自己
負担を求めることが盛り込まれているわけであります。この定額自己
負担の算定といたしましては、総務庁の家計
調査に基づく平均的な食料等の費用とされてはいるわけでありますけれ
ども、うがった見方をしますならば、これは
入院であろうと
在宅であろうと
食事代はかかるものでありますから、自己
負担をすべきだという
考え方ではないのかと思います。
しかし、私
どもは、この
入院給食を
医療の一環として位置づけていくならば、あるいは
医療の一環として重要な要因を持つ疾病等による
入院患者等については、
医療保険審議会の建議にもありますとおり、やはり引き続き保険給付の
対象とすべきものではないかと
考えます。すべての
入院患者に対しまして一律
定額負担を導入することは、私は、現時点では時期尚早ではないのかと思います。特に、疾病構造が
慢性疾患に現在変化しつつあるわけでありますから、これら
慢性疾患の
入院患者に過大な
負担を求めることにつながるものでありまして、そういう点で、私
どもは慎重な
配慮、慎重に対処していただきたいと申し上げているところであります。
また、これらの
入院時におきます
給食の
患者負担の導入は、
付添看護・
介護給付の改善、
在宅医療の推進、
入院食事の改善を一体のものとして推進するということを言われているわけであります。これは、
患者負担によって生じました
財源で措置をしようというものでありましょうが、最大の課題であります
付添看護・
介護給付の改善について、全体の姿が、あるいはこれに要する費用の内容が残念ながらまだ明らかにされていないので
はないかと私
どもは
考えます。
多額の保険外
負担としてその
解消を求めてきたこの
付添看護・
介護の
改革は、私
どもにとっては大変喜ばしいものではありますが、
看護や
介護サービスの
診療報酬上の
評価をどのように行っていくのか、あるいは
看護・
介護マンパワーをどのようにして今後確保していくのか、あるいはそのためにどの
程度の費用が必要になるのかなどについて明らかにすべきではないかと
考えます。
医療保険審議会の論議経過等もお聞きをする中で明らかにされたこの制度
改革によります
財源影響は、
入院時の
食事に係る給付の
見直しで三千二百七十億円生ずるという
試算が明らかにされているわけでありまして、このうち、
医療給付の改善に三千百六十億円を充当するというふうに言われています。当局は、この
付添看護・
介護の
解消に大部分を充てる
考えのようではありますけれ
ども、これにかかわる給付の
改革については、まだ中医協の段階での論議ということで明らかになっていないのではないかと思います。
私
どもがここで重視をいたしますのは、
付添看護の院内化とあわせまして、平成八年度以降に新しい
看護・
介護体制に移行するプロセスと、いわゆるこの人材確保の問題であります。
計画では、新たに必要とする
看護婦、准
看護婦数、約三千人、そして新たに必要とする
看護婦、准
看護婦以外の補助者の数が約六万人と言われていますが、これを一体どのように確保していくのか、さらに、これらの人
たちに対しまして、
診療報酬上どのような
評価を行っていくのか、さらには、それにどの
程度の費用が必要なのかについてきちんと説明をすべきだと私は思います。これらの点を明らかにして提起をすることが、国民の皆さん方に余分な
負担といいますか、不安感を与えないものになってくるのではないか。
そういう点で、私
どもがまず第一に重視をしなければなりませんのは、この人材確保の面で、
看護・
介護サービスの質の低下を来さないような
配慮、さらには、これらの人
たちの人材の育成、能力開発などについて、やはり労働省と
連携を密にいたしまして、対応を進められるようにお願いを申し上げる次第であります。
私
たちは、今後の
高齢社会における
増加する
負担に対してやみくもに反対をするものではありません。それなりに
負担が生じてくるものについては、私
どもは、税であれ、保険料であれ、自己
負担であれ、前向きに対応してまいりたいと思います。ただし、ただ単に提起されたものについてすべてオーケーということにはならないのではないか、その前提として、むだな支出を排除をし、そして資源を有効に活用していくというシステムが確立されていることが条件になるだろうと思います。
もっと言えば、それだけではなくして、
行政に対してもあるいは政治に対しても、国民から信頼されるそういうものにしていかない限り、
負担だけを求めてきたら私
どもは断固としてこれについては反対をしていく決意であります。
ですから、
医療保険制度においても、むだな
医療費を排して
医療費の適正化を図ること、さらに
入院給食にいたしましても、果たしてむだはないのかということについて、やはり我々としましては、検討が必要ならば根本的に基本的に検討してみようではないかと
考えているところであります。
そういうことを前提にいたしまして、むだを排することによって今後の
介護やあるいは
看護費用に充てるということがまず必要であろうと思います。即、
入院給食の自己
負担をもってこれに充てるという
考えではなくして、やはり国民にそれなりの
負担を求めるということでしたら、現在の
医療保険制度におきます
医療費の適正化の問題についてやはりメスを入れるべきであろうと思います。そういうことを行うことによって保険外
負担の
解消というものを図りつつ、国民に不安感を植えつけない、与えない施策というものを進めていくべきであろうと思います。
特に
負担の問題では、今回の健保
法改正によります
入院給食に加えまして、厚生年金や国民年金の保険料の引き上げも予定をされているわけであります。今回の
負担の導入は、国民に対して
医療に対する不安感を植えつけるものであってはならないと思います。むしろ、
付添看護や
介護体制の整備とその実行
目標というものを定めていただきまして、
現行の
看護職員配置基準の質的な拡充を図るなど、国民に対する不安感の払拭というものが大変対策としては重要だろうと
考えておりますので、この点についての対策といいますか、緊急な施策を打ち出していただければ幸いであります。
冒頭申し上げましたとおり、今回の
改正については
評価をするものがあります。しかし、繰り返し申し上げますが、この
入院給食の標準
負担額については、やはり疾病内容を問わずに一律に定額の
負担を求めるということについては私
どもは再検討が必要だろう。そういう点では、ぜひ政治の場で慎重な御
配慮と、提起をされております金額の抑制について極力御努力をいただきますようにお願いを申し上げまして、時間がちょっと余りますが、私の御
意見とさしていただきます。
どうもありがとうございました。(拍手)