○
前田主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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平成二年度
厚生省所管一般会計及び特別会
計の決算に関する説明
平成二年度
厚生省所管一般会計及び
特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。
まず、
一般会計の
歳出決算額につきましては、当初予算額十一兆五千六百五十二億四千四百四十八万円余でありましたが、その後、
予算補正追加額九百七十五億八千六百三十三万円、
予算補正修正減少額九百八十七億七千七百六十万円余、予算移替増加額四百億四千五百十五万円余、前
年度繰越額五百六十六億七千二百二十八万円余、
予備費使用額五十億五千六百四十九万円余、差引千五億八千二百六十五万円余を増加し、
歳出予算現額は十一兆六千六百五十八億二千七百十四万円余となりました。
この
歳出予算現額に対し、
支出済歳出額は十一兆五千四百五十七億三千三百三万円余、翌
年度繰越額は四百七十八億四千七百十九万円余、不用額は七百二十二億四千六百九十一万円余で決算を結了いたしました。
次に、その主な事項につきまして、概要を御説明申し上げます。
第一は、
生活保護費であります。
生活保護法による
生活扶助基準につきましては、国民生活の動向等に対応して改善を行ったほか、
教育扶助等の改善を図り、総額一兆百六十三億百十八万円余を支出しております。
第二は、
社会福祉費であります。
社会福祉施設の運営費につきましては、入所者の
一般生活費等の増額をはじめとして、職員の給与の改善などを行い、所要の経費を支出しております。
また、
施設整備費につきましては、
特別養護老人ホーム、
心身障害者福祉施設等の
各種社会福祉施設及び
地方改善施設の整備に対して九百七十八億四千八百八万円余を支出しております。
老人福祉費につきましては、
老人保健法に基づく老人医療の給付に必要な経費のほか、ねたきり老人等に対する
福祉対策として
家庭奉仕員派遣事業、
デイサービス事業(日帰りで
介護サービスを受ける事業)、
ショートステイ事業(
特別養護老人ホーム等に短期滞在する事業)等の拡充強化を図るとともに、
都道府県高齢者総合相談センター運営事業の推進を図り、一兆四千百七十五億三千二百一万円余を支出しております。
児童保護費につきましては、
児童保護措置費の内容改善を図るとともに、
心身障害児(者)対策、
母子保健衛生対策などの推進を図り、四千六百八十一億二百四十一万円余を支出しております。
さらに、
児童扶養手当及び
特別児童扶養手当につきましては、これらの支給に要する経費として、二千七百八十七億六千三百五十二万円余を支出し、
母子福祉対策につきましては、
母子福祉資金及び
寡婦福祉資金の貸付原資として、二十六億五千六百二十五万円余を支出しております。
このほか、
身体障害者の
福祉対策として、「障害者の明るいくらし」促進事業、「住みよい福祉の
まちづくり」事業及び
身体障害者デイサービス事業(日帰りで
創作的活動、
機能訓練等を行う事業)の拡充を図るほか、障害者のための
小規模作業所に対する助成を実施するとともに、在宅の
重度障害者に対する
特別障害者手当等の支給のための経費、
身体障害者更生援護施設の運営のための経費を支出しております。
以上、
社会福祉費として、総額二兆四千二百七十九億八千百四十七万円余を支出しております。
第三は、
社会保険費であります。
国民健康保険事業につきましては、平成二年度末における
保険者数は、三千四百二十四であり、その被
保険者数は、四千三百六万余人となっております。
平成二年度におきましては、
国民健康保険の医療費及び事務費等に要する経費として、二兆五千六百六十四億七千七百三十四万円余を支出しております。
また、
社会保険国庫負担、
厚生年金保険国庫負担及び
国民年金国庫負担に要する経費として、四兆四千九百五十七億千七百八十三万円余を支出しております。
このほか、児童手当の給付費及び事務費に要する経費として、二百七十五億三千七十一万円を支出しております。
以上、
社会保険費として、総額七兆千十二億三千八百七十一万円余を支出しております。
第四は、
保健衛生対策費であります。
原爆障害対策費につきましては、各種手当の額の引上げ等の改善を行うなど施策の充実を図り、千二百一億六百二十万円余を支出しております。
精神保健費につきましては、
精神保健法に基づく
措置入院費及び
通院医療費の公費負担に要する経費として、四百四十四億三千五百十一万円余を支出しております。
このほか、
結核医療費として、二百九十八億五千六百八十万円余、疾病予防及び
健康づくり推進費、保健所費、
らい予防対策費、
老人保健法による
保健事業に要する経費等の
保健衛生諸費として、千七十四億二百六万円余を、それぞれ支出しております。
以上、
保健衛生対策費として、総額五千五百三十二億七千八百四十六万円余を支出しております。
第五は、遺族及び
留守家族等援護費であります。
戦傷病者戦没者遺族等の援護対策につきましては、
遺族年金等について恩給の改善に準じて額を引き上げるとともに、遺骨収集及び慰霊巡拝を実施いたしました。
また、
中国残留日本人孤児等の援護対策につきましては、
中国帰国孤児等の
落ち着き先における
自立支援体制の整備を図るため、
定着促進センター入所中の孤児二世を対象とした
地域体験実習事業の
実施等定着自立促進施策の充実・強化を図ったところであり、遺族及び
留守家族等援護費として、総額千四百十五億五千四百四十五万円余を支出しております。
第六は、
環境衛生施設整備費であります。
環境衛生施設の整備を推進するため、平成二年度は、
廃棄物処理施設千二百七十一か所、
簡易水道等施設七百二十四か所、
水道水源開発等施設三百二十一か所の整備について、それぞれ補助を行い、
環境衛生施設整備関係費として、総額千九百九億千五百二十四万円余を支出しております。
次に、
特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。
第一は、
厚生保険特別会計の決算であります。
厚生保険特別会計につきましては、
一般会計から三兆九百四億五千五百三十一万円余を繰り入れました。
まず、健康勘定の決算額について申し上げますと、
収納済歳入額六兆八千五百十五億千七百六十四万円余、
支出済歳出額六兆五千百三億三千三百四十一万円余でありまして、差引三千四百十一億八千四百二十二万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成二年度末の事業所数は、百二十七万余か所、年度平均被
保険者数は、千七百九十七万余人に達しております。
次に、年金勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額二十六兆五百八十億二千二百六十二万円余、
支出済歳出額十九兆四千百五十二億四千百五十四万円余でありまして、差引六兆六千四百二十七億八千百八万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成二年度末の事業所数は、百四十一万余か所、年度平均被
保険者数は、三千九十二万余人に達しております。
次に、
制度間調整勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額五兆六千五十二億九百六十七万円、
支出済歳出額五兆六千五十二億九百六十七万円で、決算を結了いたしました。
次に、
児童手当勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額千五百七億六千四十一万円余、
支出済歳出額千百八十八億二千八百二十二万円余、翌
年度繰越額三億八千二百七十万円余でありまして、差引三百十五億四千九百四十八万円余については、このうち八十一億三千七百五十三万円余をこの勘定の積立金として積み立て、二百三十四億千百九十四万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
なお、
年度平均支給対象児童数は、三百一万余人であります。
最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額四千七百七十三億八千百十一万円余、
支出済歳出額四千七百六億九千八百九十四万円余でありまして、差引六十六億八千二百十七万円余については、このうち、六億六千二百六十二万円余を健康及び年金の各勘定の積立金に組み入れ、五十九億九千九百九十五万円余については、翌年度の歳入に繰り入れ、千九百五十九万円余については、
特別保健福祉事業資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。
第二は、
船員保険特別会計の決算であります。
船員保険特別会計につきましては、
一般会計から五十七億二千百八十五万円余を繰り入れました。
その決算額は、
収納済歳入額千百四億八千八百四十六万円余、
支出済歳出額千十五億五千三百五十一万円余、
超過受入額九億五千八百七十六万円余でありまして、差引七十九億七千六百十九万円余については、この会計の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、年度平均の被
保険者数は、十三万余人であります。
第三は、
国立病院特別会計の決算であります。
国立病院特別会計につきましては、
一般会計から千九百七十億四千七百二十三万円余を繰り入れました。
まず、病院勘定の決算額について申し上げますと、
収納済歳入額四千七百十億五千六百二万円余、
支出済歳出額四千六百六十三億五千四十二万円余、翌
年度繰越額四億三百三十万円でありまして、差引四十三億二百三十万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成二年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万余人、外来患者数は、一日平均四万四千余人であります。
次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額三千九百五十八億五千七百七十二万円余、
支出済歳出額三千八百九十八億二千六百二十五万円余、翌
年度繰越額五千百五十万円でありまして、差引五十九億七千九百九十七万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成二年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均四万余人、外来患者数は、一日平均一万四千余人であります。
第四は、
国民年金特別会計の決算であります。
国民年金特別会計につきましては、
一般会計から一兆四千二百七十億七千百三十七万円余を繰り入れました。
まず、基礎年金勘定の決算額について申し上げますと、
収納済歳入額七兆七千三百五十五億六千八百四十五万円余、
支出済歳出額七兆六百二十二億千七百二十七万円余でありまして、差引六千七百三十三億五千百十七万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして 決算を結了いたしました。
次に、
国民年金勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額五兆七千百四十七億九千六十七万円余、
支出済歳出額五兆七百九億四千四百九十三万円余、
超過受入額二千三百三十八億八千七百十六万円余でありまして、差引四千九十九億五千八百五十七万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成二年度末の被
保険者数は、二千九百五十三万余人で、そのうち、保険料の免除該当者は、二百十六万余人であります。
次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額四千七百三十二億六百八十万円余、
支出済歳出額三千六百十九億五千五百四十七万円余でありまして、差引千百十二億五千百三十三万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額一兆四千五十四億四千三百八十三万円余、
支出済歳出額一兆四千二十八億七千二百七十万円余でありまして、差引二十五億七千百十三万円余については、このうち、一億七千百十万円余を
国民年金勘定の積立金に組み入れ、二十四億二万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
以上をもちまして、
厚生省所管に属する平成二年度
一般会計及び
特別会計の決算の説明を終わります。
何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
平成二年度決算厚生省についての検査の概
要に関する主管局長の説明
会計検査院
平成二年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項百二十三件及び意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。
まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。
検査報告番号三八号及び三九号の二件は、
健康保険及び
厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもので、いずれも事業主又は船舶所有者が制度を十分理解していなかったりなどして、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬月額、資格取得年月日等の届出が事実と相違していたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、保険料の徴収額が不足していたものであります。
検査報告番号四〇号は、
厚生年金保険の
老齢厚生年金等の支給が適正でなかったもので、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったりなどして、これら年金の受給権者が
厚生年金保険の被保険者資格を取得した際の資格取得届の提出を事業主が怠っていたものなどがあったのに、これに対する指導及び調査確認が十分でなかったため、
老齢厚生年金等の支給が適正を欠いたものであります。
検査報告番号四一号から一一五号までの七十五件は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。
これを診療報酬の支払と療養費の支給の別に区分いたしますと、診療報酬の支払では、医療機関が診療報酬の請求に当たり、
(1) 看護料については、正看護婦の数がそれぞれの基準看護の要件を満たさなくなっているのに、変更の申請を行わないまま従前の高い看護料を算定したり、同様に、正看護婦及び准看護婦の数がそれぞれの基準看護の要件を満たさなくなっているのに、変更の申請を行わないまま従前の高い看護料を算定したりなどしていたものが十二件、
(2) 診察料については、
特別養護老人ホームの嘱託医が
特別養護老人ホームで入所者に行った診療について、初診料、再診料等を算定したりなどしていたものが十八件、
(3) 検査料等については、多くの入院患者について検体検査や生体検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定したり、正看護婦又は准看護婦の数が特例許可老人病院に係る許可基準を著しく下回っているのに、不実の申請をして許可を得て、血液形態・機能検査料、一定の血液化学検査料等の検体検査料を割高に算定したりなどしていたものが十一件、
(4) 注射料等については、救命救急医療で救命救急入院料を算定しているほかに、点滴注射及び中心静脈注射の精密持続点滴注射等に係る技術料の加算を行ったり、人工透析の患者に対して人工腎臓の回路を通して行った点滴注射について、人工透析の処置料のほかに注射に係る技術料を別途算定したりなどしていたものが十三件、
(5) 入院時医学管理料等については、特例許可老人病院又は特例許可外老人病院であるのに、一般病院分として定められている割高な点数により入院時医学管理料等を算定していたものが三件、
(6) 給食料については、栄養士が退職していなくなり、基準給食の承認基準に適合しなくなったのに、基準給食の点数を加算して算定したり、特別食とする必要のない者も含めてほとんどの入院患者について、特別食の点数を加算して算定したりなどしていたものが六件、
(7) 投薬料については、薬剤を標準とされる用法によることなく画一的に投与し、これにより投薬料を算定したり、厚生大臣が長期投与に適するとして定めた薬以外の内服薬を一回に十四日分の限度を超えて投与したりなどしていたものが四件、
(8) 運動療法料等については、複雑な訓練でないものについて、複雑な訓練を行った場合に用いることになっている高い点数で運動療法料を算定したり、非救急的処置としての高気圧酸素治療に係る処置料を、対象疾病のない患者について算定したり、漫然と数か月にわたって算定したり、特例許可老人病院において、画像診断料を三月に一回の制限を超えて毎月算定したりなどしていたものが五件ありました。
また、療養費の支給では、
付添看護料の支給申請において、一人の
看護補助者が担当する患者数は三人までとされている
付添看護を受けたとしていたが、同一の
看護補助者について四人以上の患者から支給申請がなされていて、実際は
付添看護制度の対象外となっていたり、一人付看護又は二人付看護を受けたとしていたが、同一の
看護補助者について二人又は三人の患者から支給申請がなされていて、実際は二人付看護又は三人付看護となっていたものが三件ありました。
これらはいずれも審査等が十分でなかったことなどのため、市町村等における医療費の支払が適切でなく、国の負担が適正を欠いたものであります。
検査報告番号一一六号は、
医療施設運営費等補助金の経理が不当と認められるものであります。
この補助金は、離島、山村等の医療に恵まれない地域住民の医療の確保を目的として、へき地診療所運営事業等を行う都道府県、市町村等に対して、その実施に要する費用の一部を補助するものであります。そして、愛媛県越智郡岩城村では、この国庫
補助対象事業費の精算に当たり、へき地診療所の診療収入額を実際の額より過小にするなどしていたため、国庫補助金が過大に精算されていたものであります。
検査報告番号一一七号から一二三号までの七件は、
生活保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。
この負担金は、都道府県又は市町村(特別区を含む。)が、資産及び能力等あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する者に対し保護を行う場合に、その実施に要する費用の一部を負担するものであります。そして、釧路市ほか六事業主体では、被保護者が相当額の就労収入を得ていたり、年金を受給していたりしているのに、被保護世帯から事実と相違した届出がなされ、これにより収入を実際より過小に認定して保護費の額を決定していたため、保護費が不適正に支給されていたものであります。また、遺産の分割に日時を要し急迫の場合に至っても当該財産を活用できないなどのため保護費を支給した者について、遺産分割の調停成立により現金を取得したのに伴い被保護世帯から保護費を返還させる際、同世帯からの申立てのままに根拠のない経費を控除して返還金の額を決定したため、返還金が過小になっていたものであります。
検査報告番号一二四号から一二八号までの五件は、
老人福祉施設保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。
この負担金は、介護等を要する老人を
特別養護老人ホーム等に入所させ養護した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その実施に要する費用の一部を負担するものであります。そして、根室市ほか四事業主体では、この
国庫負担対象事業費の精算に当たり、入所者やその扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。
検査報告番号一二九号から一五一号までの二十三件は、
児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものであります。
この負担金は、保育に欠ける児童を保育所に入所させ保育した市町村(特別区を含む。)に対して、その実施に要する費用の一部を負担するものであります。そして、会津若松市ほか二十二事業主体では、この
国庫負担対象事業費の精算に当たり、児童の扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。
検査報告番号一五二号から一六〇号までの九件は、
国民健康保険の
財政調整交付金の交付が不当と認められるものであります。
これは、札幌市ほか八市町において、
国民健康保険の保険料(税)の調定額を実際に賦課した額を下回る額としたり、収納額を過大にしたりして、
財政調整交付金の額を算定するときの基礎となっている保険料収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと及び北海道ほか四府県のこれに対する審査が十分でなかったことなどのため、普通調整交付金が減額を全部又は一部免れて過大に交付されたり、交付すべきでない特別調整交付金が交付されたりしていたものであります。
次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。
これは、付添看護に係る看護料の支給に関するものであります。
付添看護に係る看護料は、医療機関の外部から看護担当者を求めて
付添看護を受け、その費用を支払った患者に対して支給するものであります。そして、看護担当者一人が担当する患者数は三人までとし、四人以上を担当する看護は
付添看護制度の対象外となっております。また、看護担当者一人が担当する患者数が多くなるこ従い
付添看護料の患者一人当たり支給額は、低く定められております。しかし、
付添看護の形態等について調査したところ、同一の
看護補助者(看護担当者のうち看護婦資格を有しない者)が、四人以上の患者を担当していたり、二人の患者を担当したとする支給申請よりも多い三人の患者を担当していたりなどしている事態が見受けられました。
したがいまして、このような事態の発生を解消するため、厚生省におきまして、多数の
看護補助者が常態としてその看護体制に組み込まれている医療機関について介護職員等の確保に関する指導の徹底を図り、また、
付添看護の申請書類を充実するなど
付添看護料の支給に係る審査方法等を整備するとともに、
付添看護の適正な運用について指導し、保険者、医療機関等に対し
付添看護制度の趣旨の周知徹底を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。
なお、以上のほか、平成元年度
決算検査報告に掲記いたしましたように、
母子福祉資金及び
寡婦福祉資金の貸付事業の運営並びに医師看護婦等が標準人員に対して著しく不足している病院等の把握について、それぞれ処置を要求し又は意見を表示いたしましたが、これらに対する厚生省の処置状況についても掲記いたしました。
以上をもって概要の説明を終わります。
…………………………………
平成二年度
決算検査報告に対する説明
厚 生 省
平成二年度の
決算検査報告において掲記されております事項につきましては、
会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に堪えないところであります。
今回不当事項として指摘を受けましたものは、
健康保険及び
厚生年金保険並びに船員保険の保険料の徴収額が不足していたもの二件、
厚生年金保険の
老齢厚生年金等の支給が適正でなかったもの一件、医療費に係る国の負担が不当と認められるもの七十五件、
医療施設運営費等補助金、
生活保護費負担金、
老人福祉施設保護費負担金及び
児童保護費等負担金の補助事業の経理が不当と認められるもの三十六件及び
国民健康保険の
財政調整交付金の交付が不当と認められるもの九件であります。
意見を表示され又は処置を要求された事項は、
付添看護に係る看護料の支給が適正でなかったものであります。
不当事項として指摘を受けたもののうち、保険料の徴収不足については、既に徴収決定を完了し、これに基づき全額収納済みでありますが、今後とも、適用事業主及び船舶所有者に対し、報酬に関する適正な届出のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、実地調査等のなお一層の強化を図り、保険料の徴収不足の解消に努力いたす所存であります。
厚生年金保険の
老齢厚生年金等の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、年金受給権者及び適用事業主に対し、適正な届出のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、関係書類の審査等のなお一層の強化を図り、その支給の適正化に努力いたす所存であります。
医療費に係る国の負担が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも診療報酬明細書の点検、調査の充実・強化及び保険医療機関等に対する指導の積極的な実施について、都道府県に対し、指導の徹底を図り、適正な保険診療が確保されるよう努力いたす所存であります。
医療施設運営費等補助金、
生活保護費負担金、
老人福祉施設保護費負担金及び
児童保護費等負担金の過大精算のため不当であるとの指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後は、このようなことのないよう事業主体に対する指導を一層徹底し、補助事業の適正な執行に万全を期する所存であります。
国民健康保険の
財政調整交付金の交付が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、保険者に対し、適正な交付申請等のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、国及び都道府県においても交付申請書の審査等のなお一層の強化を図り、
財政調整交付金の適正な交付に努力いたす所存であります。
意見を表示され又は処置を要求された
付添看護に係る看護料の支給が適正でなかったものについては、御指摘の趣旨を踏まえ、所要の措置を講じているところであります。
…………………………………
平成二年度
環境衛生金融公庫の業務の概況
一、
環境衛生金融公庫の平成二年度の概況につきまして御説明申し上げます。
平成二年度の貸付計画額は、二千百五十億円を予定いたしました。
その原資としては、資金運用部資金からの借入金二千百五十八億円から借入金償還等八億円を控除した額二千百五十億円を充てることといたしました。
これに対しまして、貸付実績は、二千六十六億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、三・八パーセントの増となっております。
二、次に貸付残高について、御説明申し上げます。
平成元年度末における貸付残高は、六千百九十六億二千万円余でありましたが、平成二年度中に二千六十六億円余の貸付を行い、一千三百八十七億二千万円余を回収いたしましたので、平成二年度末においては、六千八百七十二億八千万円余となっております。
三、次に貸付金の延滞状況について御説明申し上げます。
平成二年度末におきまして延滞後六ケ月以上経過したものが百四十億四千万円余でありまして、このうち一年以上のものは、百三十五億円余で総貸付金残高の二・〇パーセントとなっております。
四、次に平成二年度の収入支出決算について御説明いたします。
平成二年度における収入済額は四百十四億九千万円余支出済額は三百九十億二千万円余となりました。
まず、収入の部におきましては、本年度の収入済額は四百十四億九千万円余でありまして、これを収入予算額三百八十三億八千万円余に比較いたしますと、三十一億円余の増加となっております。この増加いたしました主な理由は、貸付金利息収入等が予定より多かったためであります。
次に、支出の部におきましては、本年度の支出予算現額三百九十三億九千万円余に対し、支出済額は三百九十億二千万円余でありまして、差引き三億七千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。
五、最後に平成二年度における損益について申し述べますと、本年度の貸付金利息収入等の総利益は四百五十一億六千万円余借入金利息、業務委託費、事務費、貸倒引当金繰入等の総損失は四百五十一億六千万円余となりました。
この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。
以上が平成二年度における
環境衛生金融公庫の業務の概況であります。
なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
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平成三年度
厚生省所管一般会計及び特別会
計の決算に関する説明
平成三年度
厚生省所管一般会計及び
特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。
まず、
一般会計の
歳出決算額につきましては、当初予算額十二兆千八百十九億三千九十六万円余でありましたが、その後、
予算補正追加額千百四十一億七千六百六十五万円余、
予算補正修正減少額八百六十億九千百二十一万円、予算移替増加額四百二十七億七千七百八十一万円余、前
年度繰越額四百七十八億四千七百十九万円余、
予備費使用額四十億七千百九十七万円余、差引千二百二十七億八千二百四十三万円余を増加し
歳出予算現額は十二兆三千四十七億千三百三十九万円余となりました。
この
歳出予算現額に対し
支出済歳出額は十二兆二千百四十二億九千九百四十四万円余、翌
年度繰越額は四百七十二億二千百四十二万円余、不用額は四百三十一億九千二百五十二万円余で決算を結了いたしました。
次に、その主な事項につきまして、概要を御説明申し上げます。
第一は、
生活保護費であります。
生活保護費につきましては、
生活保護法による生活扶助、住宅扶助、
教育扶助等に要する経費として、総額一兆百九億四千二百四十万円余を支出しております。
第二は、
社会福祉費であります。
老人福祉費につきましては、
老人保健法に基づく老人医療の給付に必要な経費のほか、
特別養護老人ホーム等の運営に要する経費として、一兆五千二百三十三億二千七百五十八万円余を支出しております。
また、寝たきり老人等に対する在宅
福祉対策として、ホームヘルプサービス事業、
デイサービス事業、
ショートステイ事業等に要する経費を支出しております。
児童保護費につきましては、児童
福祉対策、
心身障害児(者)対策、
母子保健衛生対策に要する経費として五千九十七億二千百三十二万円余を支出しております。
さらに、
児童扶養手当及び
特別児童扶養手当につきましては、これらの支給に要する経費として、二千七百四十一億六千三百二十万円余を支出し、
母子福祉対策につきましては、
母子福祉資金及び
寡婦福祉資金の貸付原資として、二十九億九千五百七十三万円を支出しております。
また、
身体障害者の
福祉対策として、「障害者の明るいくらし」促進事業、「住みよい福祉の
まちづくり」事業、
身体障害者デイサービス事業、障害者のための
小規模作業所に対する助成、在宅の
重度障害者に対する
特別障害者手当等の支給及び
身体障害者更生援護施設の運営のための経費を支出しております。
このほか、
社会福祉施設整備費につきましては、
特別養護老人ホーム、
心身障害者福祉施設等の
各種社会福祉施設及び
地方改善施設の整備に対して千百四億四千八百七十万円余を支出しております。
以上、
社会福祉費として、総額二兆六千九十七億七千九百六十万円余を支出しております。
第三は、
社会保険費であります。
国民健康保険事業につきましては、平成三年度末における
保険者数は、三千四百二十であり、その被
保険者数は、四千二百九十万余人となっております。
平成三年度におきましては、
国民健康保険の医療及び事務等に要する経費として、二兆六千二百七億八千八百四十七万円余を支出しております。
また、
社会保険国庫負担、
厚生年金保険国庫負担及び
国民年金国庫負担に要する経費として、四兆八千七百四十二億九千四百十万円余を支出しております。
このほか、児童手当の給付及び事務に要する経費として、二百七十七億四千九百七十八万円余を支出しております。
以上、
社会保険費として、総額七兆五千三百六十一億九千百三十一万円余を支出しております。
第四は、
保健衛生対策費であります。
原爆障害対策費につきましては、医療特別手当、健康管理手当等の支給に要する経費として、千二百六十一億七千九百万円を支出しております。
精神保健費につきましては、
精神保健法に基づく措置入院及び通院医療の公費負担に要する経費として、四百十億千三百四十七万円余を支出しております。
このほか、
結核医療費として、二百八十二億二千八百八十三万円余、疾病予防及び健康づくり推進、保健所、らい予防対策、
老人保健法による
保健事業に要する経費等の
保健衛生諸費として、千百六十九億五千四百四十一万円余を、それぞれ支出しております。
以上、
保健衛生対策費として、総額五千九百二十五億五千三十九万円余を支出しております。
第五は、遺族及び
留守家族等援護費であります。
戦傷病者戦没者遺族等の援護対策につきましては、遺族年金、遺族給与金等の支給及び昭和五十八年四月二日から平成三年四月一日までの間に、新たに、戦傷病者等の妻となった者等に対し、特別給付金の支給を行ったほか、戦没者の遺骨収集及び慰霊巡拝のための経費を支出しております。
また、
中国残留日本人孤児等の援護対策につきましては、帰国孤児等に対する自立指導員等派遣事業等及び中国残留婦人等の一時帰国援護の滞在等のための経費を支出し、遺族及び
留守家族等援護費として、総額千三百三十六億四千五百八十五万円余を支出しております。
第六は、
環境衛生施設整備費であります。
環境衛生施設の整備を推進するため、平成三年度は、
廃棄物処理施設千六百六十四か所、
簡易水道等施設四百三十四か所、
水道水源開発等施設三百六十二か所の整備に対して、
環境衛生施設整備関係費として、総額二千三十五億八千六百九十四万円余を支出しております。
次に、
特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。
第一は、
厚生保険特別会計の決算であります。
厚生保険特別会計につきましては、
一般会計から三兆三千九百八十一億五千七百六十五万円余を繰り入れました。
まず、健康勘定の決算額について申し上げますと、
収納済歳入額七兆三千四百二十三億九千三百七十六万円余、
支出済歳出額六兆九千七百三十四億二百六十二万円余でありまして、差引三千六百八十九億九千百十三万円余については、
事業運営安定資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成三年度末の事業所数は、百三十五万余か所、年度平均被
保険者数は、千八百六十万余人に達しております。
次に、年金勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額二十九兆五千百三十八億六千三百七十三万円余、
支出済歳出額二十二兆三千七百八十億五千七百八十二万円余でありまして、差引七兆千三百五十八億五百九十万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成三年度末の事業所数は、百四十九万余か所、年度平均被
保険者数は、三千二百万余人に達しております。
次に、
制度間調整勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額七兆五千三百九十九億千八十九万円余、
支出済歳出額七兆五千三百九十九億千八十九万円余で、決算を結了いたしました。
次に、
児童手当勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額千五百十五億九千十二万円余、
支出済歳出額千二百七億五千六百九十四万円余、翌
年度繰越額二億六千百万円余でありまして、差引三百五億七千二百十八万円余については、このうち七十七億九千五百六十四万円余をこの勘定の積立金として積み立て、二百二十七億七千六百五十三万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
なお、
年度平均支給対象児童数は、二百七十九万余人であります。
最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額五千百八十六億六百十四万円余、
支出済歳出額五千九十五億五千八百十五万円余でありまして、差引九十億四千七百九十九万円余については、このうち、六億八千二百八十九万円余についてま、
事業運営安定資金こ、七億七千六十八万円余については、年金勘定の積立金に組み入れ、七十二億五千七十二万円余については、翌年度の歳入に繰り入れ、三億四千三百六十八万円余については、
特別保健福祉事業資金に組み入れることとして、決算を結了いたしました。
第二は、
船員保険特別会計の決算であります。
船員保険特別会計につきましては、
一般会計から五十九億六千六百九十万円余を繰り入れました。
その決算額は、
収納済歳入額千百三十八億四千九万円余、
支出済歳出額九百九十七億四千七百五十二万円余、
超過受入額七億六千百七十二万円余でありまして、差引百三十三億三千八十四万円余については、この会計の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、年度平均被
保険者数は、十二万余人であります。
第三は、
国立病院特別会計の決算であります。
国立病院特別会計につきましては、
一般会計から二千二百二十四億千六百八十五万円余を繰り入れました。
まず、病院勘定の決算額について申し上げますと、
収納済歳入額四千九百二十四億四千五百五万円余、
支出済歳出額四千八百六十一億二千八百五十四万円余、翌
年度繰越額三億七千七百六万円余でありまして、差引五十九億三千九百四十三万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成三年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万余人、外来患者数は、一日平均四万四千余人であります。
次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額四千九十六億五千六百六十八万円余、
支出済歳出額四千五十億三千九百四十一万円余、翌
年度繰越額六千七百九十八万円でありまして、差引四十五億四千九百二十八万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成三年度の事業概況を申し上げますと、入院患者数は、一日平均三万九千余人、外来患者数は、一日平均一万四千余人であります。
第四は、
国民年金特別会計の決算であります。
国民年金特別会計につきましては、
一般会計から一兆四千九百七十九億千九百三十一万円余を繰り入れました。
まず、基礎年金勘定の決算額について申し上げますと、
収納済歳入額八兆四千九百三十四億六千七百六十七万円余、
支出済歳出額七兆七千四百九十七億二千八百六十一万円余でありまして、差引七千四百三十七億三千九百六万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
次に、
国民年金勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額六兆二千三百九十九億四千八百五十四万円余、
支出済歳出額五兆二千八百十五億千七百一万円余、
超過受入額二千三百三十億三千四十三万円余でありまして、差引七千二百五十四億百九万円余については、この勘定の積立金として積み立てることとして、決算を結了いたしました。
なお、平成三年度末の被
保険者数は、三千五十八万余人であります。
次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額四千二十五億六千七百十五万円余、
支出済歳出額三千百四十二億九千四百三十八万円余でありまして、差引八百八十二億七千二百七十六万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、
収納済歳入額一兆五千四百二十億五千百五十三万円余、
支出済歳出額一兆五千三百八十億七千九百五十九万円余でありまして、差引三十九億七千百九十三万円余については、このうち、五千八百七十四万円余を
国民年金勘定の積立金に組み入れ、三十九億千三百十九万円余については、翌年度の歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。
以上をもちまして、
厚生省所管に属する
一般会計及び
特別会計の決算の説明を終わります。
何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
…………………………………
平成三年度決算厚生省についての検査の概
要に関する主管局長の説明
会計検査院
平成三年度厚生省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。
検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項百二十五件、意見を表示し又は処置を要求した事項三件であります。
まず、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について御説明いたします。
検査報告番号二五号は、
健康保険及び
厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもので、事業主が制度を十分理解していなかったりなどして、保険料算定の基礎となる被保険者の資格取得年月日、報酬月額等の届出が事実と相違していたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、保険料の徴収額が不足していたものであります。
検査報告番号二六号は、
厚生年金保険の
老齢厚生年金の支給が適正でなかったもので、受給権者又は事業主が制度を十分理解しておらず、年金の受給権者が被保険者資格を取得した際の資格取得届の提出を事業主が怠っていたものなどがあったのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、
老齢厚生年金の支給が適正を欠いたものであります。
検査報告番号二七号から一一一号までの八十五件は、医療費に係る国の負担が不当と認められるものであります。
これらについては医療機関が診療報酬の請求に当たり、
(1) 看護料については、正看護婦の数がそれぞれの基準看護の要件を満たさなくなっているのに、変更の申請を行わないまま従前の高い看護料を算定したり、看護職員一人当たりの入院患者数が、基準看護の要件を満たさなくなっているのに、変更の申請を行わないまま従前の高い看護料を算定したりなどしていたものが十三件、
(2) 処置料については、特例許可老人病院で皮膚科軟膏処置料を病院の収入増加を図るため架空
請求していたり、人工腎臓実施中に食事を給与した際に、医療用食品を使用した事実がないなど医療用食品加算の要件を満たしていないのに、医療用食品加算をしていたりなどしていたものが十一件、
(3) 診察料については、
特別養護老人ホームの嘱託医が同ホームで入所者に行った診療について、初診料、再診料等を算定したりなどしていたものが十九件、
(4) 検査料等については、多くの入院患者について検体検査や生体検査を毎月画一的に繰り返し実施し、これに係る検査料を算定したり、ほとんどの患者について、毎月、二十項目以上の血液化学検査を実施するに当たり、検査を二回に分けて実施することなどにより、上限として定められた点数によらずにその都度血液化学検査料を算定したりなどしていたものが十二件、
(5) 注射料等については、人工透析の患者に対して人工腎臓の回路を通して行った点滴注射、静脈内注射等について、人工腎臓の処置料のほかに注射に係る技術料を別途算定したり、救命救急医療で救命救急入院料を算定しているほかに、点滴注射及び中心静脈注射の精密持続点滴注射に係る技術料の加算を行ったりなどしていたものが十八件、
(6) 運動療法料等については、
特別養護老人ホームが本来の業務として行った医師の指導監督の伴わない運動機能回復訓練を、同ホームの診療所が行った運動療法料として算定していたり、複雑な訓練でないものについて、複雑な訓練を行った場合こ用いることこなっている高い点数で算定したりなどしていたものが四件、
(7) 室料については、定数超過入院となっているのに、翌月の室料について所定点数を減ずることなく算定していたり、厚生大臣が定める基準による重症者に該当しないのに、多数の患者について重症者室料特別加算を行っていたりなどしていたものが四件、
(8) 在宅療養料等については、有料老人ホーム内診療所の非常勤の医師が、同診療所で有料老人ホームの患者に対して行った診療について、同医師が開設する診療所から訪問したとして寝たきり老人訪問診察料を算定していたり、基準給食に係る知事の承認を得ていないのに、特別食の点数を加算していたりなどしていたものが四件ありました。
これらはいずれも審査等が十分でなかったことなどのため、市町村等における医療費の支払が適切でなく、国の負担が適正を欠いたものであります。
検査報告番号一一二号から一一八号までの七件は、
生活保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。
この負担金は、都道府県又は市町村(特別区を含む。)が、資産及び能力等あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する者に対し保護を行う場合に、その実施に要する費用の一部を負担するものであります。そして、北海道ほか六事業主体では、被保護者が就労していて相当額の収入を得ていたり、年金を受給していたりしているのに、被保護世帯から事実と相違した届出がなされ、これにより収入を実際より過小に認定して保護費の額を決定していたため、保護費が不適正に支給されていたり、年金を受給しているのにその申告を行わないで保護費を過大に受給していた者について、年金受給の判明に伴い被保護世帯から不正受給に係る保護費を返還させる際、その全額を返還させるべきであるのに、正当な根拠なしに、その一部を返還金の額として決定していたため、返還金が過小になっていたものであります。
検査報告番号一一九号から一二七号までの九件は、
老人福祉施設保護費負担金の経理が不当と認められるものであります。
この負担金は、介護等を要する老人を
特別養護老人ホーム等に入所させ養護した都道府県又は市町村(特別区を含む。)に対して、その費用の一部を負担するものであります。そして、東京都ほか八事業主体では、この
国庫負担対象事業費の精算に当たり、入所者やその扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。
検査報告番号一二八号から一三八号までの十一件は、
児童保護費等負担金の経理が不当と認められるものであります。
この負担金は、保育に欠ける児童を保育所に入所させ保育した市町村(特別区を含む。)に対して、その費用の一部を負担するものであります。そして、千葉県市原市ほか十事業主体では、この
国庫負担対象事業費の精算に当たり、児童の扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担金が過大に精算されていたものであります。
検査報告番号一三九号から一四八号までの十件は、
国民健康保険の
財政調整交付金の交付が不当と認められるものであります。
これは、帯広市ほか九市町村において、
国民健康保険の保険料又は保険税の調定額を過小にしたり、収納額を過大にしたりして、
財政調整交付金の額を算定するときの基礎となっている保険料の収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと及び北海道ほか七県のこれに対する審査が十分でなかったことなどのため、普通調整交付金が減額を全部又は一部免れて過大に交付されたり、交付すべきでない特別調整交付金が交付されたりしていたものであります。
検査報告番号一四九号は、職員の不正行為による損害が生じたものであります。
これは、
国立療養所宇都宮病院で、庶務課会計班の職員が、収入官吏所属出納員として歳入金の収納事務に従事中、入院患者から現金で受領した診療収入を領得したものであります。
なお、本件損害額については、四年十月に全額が同人から返納されております。
次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。
その一は、
保健事業費等負担金の精算に関するものであります。
保健事業費等負担金は、成人病の早期発見及び保健指導等を行うための健康診査などの
保健事業を実施している市町村に対して交付しております。
この負担金の算定方法については、基準額及び対象経費の実支出額並びに事業費から収入額を控除した額とを比較して、最も少ない額に負担率を乗じることになっております。そして、収入額のうち、健康診査に要する費用の徴収額は、厚生省で定めている
徴収基準単価に受診者数を乗じて得た
徴収基準額によらず、市町村が実際の徴収に用いた単価に受診者数を乗じて得た実際徴収額とされています。
しかし、負担金の算定方法について調査したところ、交付要綱において、
徴収基準単価を負担金精算上の基準とする趣旨が生かされていなかったため、実際徴収額が
徴収基準額より下回っていてもこれを徴収額としている市があり、
徴収基準額を徴収額とする市との間において負担金交付額が不均衡、不合理となっている事態が見受けられました。
したがいまして、このような事態の発生を解消するため、厚生省におきまして、負担金の精算については、
徴収基準額により算出するように交付要綱を改めるよう改善の処置を要求いたしたものであります。
その二は、
身体障害者療護施設等の入所者に係る診療報酬の請求に関するものであります。
身体障害者療護施設等には医師が配置されておりますが、この医師が入所者に行っている健康管理、
生活指導等は、社会福祉各法に基づく施設本来の基本的な業務の一つで、医師の人件費については、入所措置費の一部として国庫負担の対象とされております。
しかし、これらの施設の入所者に係る診療報酬の申請について調査しましたところ、同施設に配置されている医師が施設に赴いて入所者に行った健康管理、
生活指導等について、当該医師が所属する医療機関が、重ねて初診料、再診料等を診療報酬として請求している事態が見受けられました。
したがいまして、このような事態の発生を解消するため、厚生省におきまして、市等及び
身体障害者療護施設等に対し、同施設等に配置されている医師が入所者に行う健康管理、
生活指導等は施設本来の基本的な業務である旨の周知徹底を図るとともに、当該健康管理等については、初診料、再診料等を請求することはできない旨を定め、
保険者等及び医療機関に対しその周知徹底を図るよう是正改善の処置を要求したものであります。
その三は、
国民年金の
未納保険料の収納の促進に関するものであります。
国民年金は、国民の老齢、障害等に関して年金の給付を行うものであります。そして、その費用は被保険者の納付する保険料などにより賄われております。しかし、保険料の納付の状況を調査したところ、
国民健康保険の保険料を最高限度額で納付しており、かつ過去に
国民年金の保険料の納付実績もあって納付督励を強化する要があると認められる未納者が多数見受けられました。そして、ほとんどの市区町村で、
国民健康保険の保険料を納めているのに
国民年金の保険料は納めていない者についての十分な把握がされておらず、社会保険事務所においてもこれらの者に対する適切な債権管理が行われておりませんでした。
したがいまして、このような事態を解消するため、
社会保険庁におきまして、
未納保険料について積極的な解消対策に取り組む必要があると認められます。なかでも、未納者が多い都市部における
未納保険料を減少させるため、当面、納付督励を強化する要があると認められる者の具体的な選定要件及び選定方法を定めて市区町村に示し、また、社会保険事務所と市区町村が連携をとることにより、これらの者に対する積極的な納付督励を行うよう指導するなどして、
未納保険料の収納の促進を図るよう是正改善の処置を要求いたしたものであります。
なお、以上のほか、平成元年度
決算検査報告に掲記いたしましたように
母子福祉資金及び
寡婦福祉資金の貸付事業の運営について、及び平成二年度
決算検査報告に掲記いたしましたように、
付添看護に係る看護料の支給について、それぞれ意見を表示し又は処置を要求いたしましたが、これらに対する厚生省の処置状況についても掲記いたしました。
以上をもって概要の説明を終わります。
…………………………………
平成三年度
決算検査報告に対する説明
厚 生 省
平成三年度の
決算検査報告において、不当事項として指摘を受けましたものは、
健康保険及び
厚生年金保険の保険料の徴収額が不足していたもの一件、
厚生年金保険の
老齢厚生年金の支給が適正でなかったもの一件、医療費に係る国の負担が不当と認められるもの八十五件、
生活保護費負担金、
老人福祉施設保護費負担金及び
児童保護費等負担金の補助事業の経理が不当と認められるもの二十七件、
国民健康保険の
財政調整交付金の交付が不当と認められるもの十件及び職員の不正行為による損害が生じたもの一件であります。
意見を表示され又は処置を要求された事項は、
保健事業費等負担金の精算が適正でなかったもの、
身体障害者療護施設等の入所者に係る診療報酬の請求が適切でなかったもの及び
国民年金の
未納保険料について収納の促進を図ることでありますが、これらの御指摘については、誠に遺憾に堪えないところであります。
不当事項として指摘を受けたもののうち、保険料の徴収不足については、既に徴収決定を完了し、これに基づき全額収納済みでありますが、今後とも、適用事業主に対し、報酬に関する適正な届出のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、実地調査等のなお一層の強化を図り、保険料の徴収不足の解消に努力いたす所存であります。
厚生年金保険の
老齢厚生年金の支給が適正でなかったとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、年金受給権者及び適用事業主に対し、適正な届出のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、関係書類の審査等のなお一層の強化を図り、その支給の適正化に努力いたす所存であります。
医療費に係る国の負担が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも診療報酬明細書の点検、調査の充実・強化及び保険医療機関等に対する指導の積極的な実施について、都道府県に対し、指導の徹底を図り、適正な保険診療が確保されるよう努力いたす所存であります。
生活保護費負担金、
老人福祉施設保護費負担金及び
児童保護費等負担金の過大精算のため不当であるとの指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後は、このようなことのないよう事業主体に対する指導を一層徹底し、補助事業の適正な執行に万全を期する所存であります。
国民健康保険の
財政調整交付金の交付が不当と認められるとして指摘を受けたものについては、既に返還の措置を講じたところでありますが、今後とも、保険者に対し、適正な交付申請等のための指導・啓もうの徹底を図るとともに、国及び都道府県においても交付申請書の審査等のなお一層の強化を図り、
財政調整交付金の適正な交付に努力いたす所存であります。
職員の不正行為による損害が生じたものとして指摘を受けたものについては、既に全額が返納されたところでありますが、今後は、このようなことのないよう各国立病院等に対する指導を一層徹底し、会計経理の適正化に万全を期する所存であります。
意見を表示され又は処置を要求された
保健事業費等負担金の精算が適正でなかったもの、
身体障害者療護施設等の入所者に係る診療報酬の請求が適切でなかったもの及び
国民年金の
未納保険料について収納の促進を図ることについては、御指摘の趣旨を踏まえ、所要の措置を講じて参る所存であります。
…………………………………
平成三年度
環境衛生金融公庫の業務の概況
一、
環境衛生金融公庫の平成三年度の概況につきまして御説明申し上げます。
平成三年度の貸付計画額は、二千二百五十億円を予定いたしました。
その原資としては、資金運用部資金からの借入金二千三百六十六億円から借入金償還等百十六億円を控除した額二千二百五十億円を充てることといたしました。
これに対しまして、貸付実績は、二千二百二十四億円余でありまして、これを前年度と比較いたしますと、七・七パーセントの増となっております。
二、次に貸付残高について、御説明申し上げます。
平成二年度末における貸付残高は、六千八百七十二億八千万円余でありましたが、平成三年度中に二千二百二十四億六千万円余の貸付を行い、一千四百四十五億三千万円余を回収いたしましたので、平成三年度末においては、七千六百四十九億一千万円余となっております。
三、次に貸付金の延滞状況について御説明申し上げます。
平成三年度末におきまして延滞後六ケ月以上経過したものが百三十一億六千万円余でありまして、このうち一年以上のものは、百二十二億三千万円余で総貸付金残高の一・六パーセントとなっております。
四、次に平成三年度の収入支出決算について御説明いたします。
平成三年度における収入済額は四百九十九億八千万円余、支出済額は四百五十七億八千万円余となりました。
まず、収入の部におきましては、本年度の収入済額は四百九十九億八千万円余でありまして、これを収入予算額四百七十八億三千万円余に比較いたしますと、二十一億五千万円余の増加となっております。この増加いたしました主な理由は、貸付金利息収入等が予定より多かったためであります。
次に、支出の部におきましては、本年度の支出予算現額五百一億四千万円余に対し、支出済額は四百五十七億八千万円余でありまして、差引き四十三億六千万円余の差額を生じましたが、これは借入金利息等が予定より減少したためであります。
五、最後に平成三年度における損益について申し述べますと、本年度の貸付金利息収入等の総利益は五百二十六億九千万円余、借入金利息、業務委託費、事務費、貸倒引当金繰入等の総損失は五百二十六億九千万円余となりました。この結果、利益金は生じなかったので国庫納付はありませんでした。
以上が平成三年度における
環境衛生金融公庫の業務の概況であります。
なにとぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
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