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1994-06-03 第129回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年六月三日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 菅  直人君    理事 小杉  隆君 理事 鈴木 宗男君    理事 原田昇左右君 理事 福田 康夫君   理事 柴野たいぞう君 理事 高市 早苗君    理事 秋葉 忠利君 理事 若松 謙維君       安倍 晋三君    斎藤 文昭君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       二階堂 進君    伊藤 英成君       小池百合子君    伊藤  茂君       濱田 健一君    松前  仰君       赤羽 一嘉君    草川 昭三君       前原 誠司君    古堅 実吉君       糸山英太郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 柿澤 弘治君  出席政府委員         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁防衛局長 村田 直昭君         外務政務次官  平田 米男君         外務大臣官房審         議官      小池 寛治君         外務大臣官房領         事移住部長   畠中  篤君         外務省総合外交         政策局長事務代         理       野上 義二君         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官  林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省欧亜局長 野村 一成君         外務省中近東ア         フリカ局長   須藤 隆也君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 丹波  實君         海上保安庁長官 井山 嗣夫君  委員外出席者         外務省国際情報         局長      澁谷 治彦君         水産庁振興部長 遠藤 保雄君         工業技術院総務         部総括研究開発         官       深山 英房君         郵政大臣官房国         際部国際政策課         長       大橋 郁夫君         会計検査院事務         総局第一局外務         検査課長    檜垣 敏夫君         外務委員会調査         室長      黒河内久美君     ───────────── 委員の異動 六月二日  辞任         補欠選任   斎藤 文昭君     中山 太郎君 同日  辞任         補欠選任   中山 太郎君     斎藤 文昭君     ───────────── 本日の会議に付した案件  航空業務に関する日本国とブルネイ・ダルサ  ラーム国との間の協定締結について承認を求  めるの件(条約第一号)  航空業務に関する日本国政府モンゴル国政府  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第二号)  航空業務に関する日本国政府ハンガリー共和  国政府との間の協定締結について承認を求め  るの件(条約第三号)  航空業務に関する日本国南アフリカ共和国と  の間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第四号)  航空業務に関する日本国とジョルダン・ハシェ  ミット王国との間の協定締結について承認を  求めるの件(条約第八号)  航空業務に関する日本国政府ヴィエトナム社  会主義共和国政府との間の協定締結について  承認を求めるの件(条約第一五号)  所得に対する租税に関する二重課税の回避及び  脱税の防止のための日本国政府とシンガポール  共和国政府との間の協定締結について承認を  求めるの件(条約第九号)  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 菅直人

    菅委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木宗男君。
  3. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 柿澤外務大臣、連日御苦労さまです。予算委員会では相当厳しい状況かなという感じもしますけれども、この外務委員会は大体仲間内でありますから、リラックスして、ゆっくりときょうはそこにお座りをいただきたいな、こんなふうに思います。  ただ、私は外務大臣にお願いしたいのは、やはり政治家信念を持ってやってもらいたい。政策的に間違ったことを言うならばいかなる批判をも受けなければいけないけれども信念を持って、理念を持って発言した以上はそれを守ってもらいたい。同時に、外務大臣は、何といったってこの自由主義体制の堅持ということを絶えず頭に入れながら、外交責任者としてその任にあると私は思っております。その点信頼をしておりますので、ぜひとも頑張っていただきたい、こう思っております。  難儀があると書いてありがたいという言葉でありますから、こういった試練を乗り越えることによって柿澤外務大臣政治家としてもまた大きくなるのじゃないかということも期待をしておりますので、胆力を持って頑張っていただきたいな、こう思っております。  それでは、時間もありませんから質問させていただきますが、北朝鮮核兵器疑惑が緊迫の度を深めていると私は認識をしているのでありますけれども、きょう未明、現地時間では二日ですか、IAEAから国連安保理へどういった内容報告がされたのか。同時に、これを受けて安保理では直ちに経済制裁決議の討議に入るのかどうか、あるいは段階的制裁可能性の方に行くのかどうか。そしてさらに、制裁決議された場合の我が国対応についてお尋ねをしたいと思います。
  4. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 鈴木宗男先生の御激励を大変ありがたく、感謝を申し上げます。先生のお言葉にこたえて日本外交の重責を一生懸命担ってまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしく御指導のほどをお願いいたします。  また、第一点、二日に発出されましたブリックスIAEA事務局長書簡でございますが、これはガリ国連事務総長あてでございます。IAEAは、二日の夜、おおむね以下のような内容書簡ブリックス事務局長からガリ国連事務総長あてに発出いたしました。  まず第一に、北朝鮮に残留している査察員からの報告に基づき、IAEAとしては、IAEAの基準に従って今後の測定作業を行うために五メガワット実験炉燃料棒を選別、分離、収納するために残っていたわずかな機会も今や消失したとの結論を下した。  第二点は、このため、IAEAが、五メガワット実験炉燃料棒が過去において軍事転用されたか否かを十分な確信を持って究明する可能性もまた消滅したという点でございます。  これから、五月三十日の国連安保理議長声明を初めとする国際社会による粘り強い呼びかけにもかかわらず、北朝鮮IAEAとの合意に達しないままに五メガワット燃料棒の取り出しを続行した結果、過去における同炉の燃料棒軍事転用を確認することが不可能になったということは、極めて遺憾なことだと存じております。  我が国としては、こうした事態を深く憂慮しながら、今後の対応につきましては、米国韓国中国を初めとする関係国と緊密に連携しつつ検討していきたいと考えております。国連安全保障理事会でどのような措置がとられるか、そうした各国との連携の中で協議を進めていきたいということを考えております。
  5. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今大臣から、米国韓国との緊密な連携をとっていきたいという話がありました。あすワシントンで日米韓国協議が行われるやに聞いておりますけれども、そのときの我が国対応、どういうふうにお考えか、お尋ねしたいと思います。
  6. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 我が国といたしましては、現在の状況を大変憂慮いたしておりますが、できることなら、北朝鮮IAEA査察を受け入れて、そして過去における軍事転用を証明できるような措置協力するよう呼びかけることが大事だと思っております。  そうした観点に立って、できる限り安保理における措置につきましても段階的に進めていくことがよいのではないかという考え方を持っておりますので、そうした方向話し合いをしたいと考えております。
  7. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣北朝鮮に対しましては、いろいろなチャンネルで、さらには国際世論なんかも巻き込みながら、今までもいろいろ説得に当たってきたと思うのですね。しかし北朝鮮は、国連事務総長に対して、制裁なら破局的な結果をもたらす、これはまさに恫喝ともいうべき発言すらあるのですね。こういった言葉を聞くときに、今の大臣日本対応というのは、若干なまぬるいというか、これでいいのかなという気が私はするのですけれども、その点どうでしょうか。
  8. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 我が国は、再三にわたりまして、国連における措置が決定した場合には我が国憲法の許す範囲内でその措置協力をするということは終始表明してきているところでございます。そして、北朝鮮側発言の中に国際世論に対する恫喝とも思えるような部分があることは大変遺憾に思っておりますし、それに対して、アメリカ世論の中で厳しい反発を示す向きもあることも承知をいたしております。  ただ、鈴木先生承知のとおり、やはり北朝鮮に対して国際世論として圧力をかけるといいますか、それを理解させるためには中国の関与というものはどうしても必要だと私ども考えておりまして、その点で、中国北朝鮮との特殊な関係も配慮しながら、そこに向かって粘り強く、国連決議国連措置に対して中国協力してもらえるような態勢にいま一度努力をすることが必要ではないかなというふうに考えているわけでございます。
  9. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今大臣から、中国の存在といいますか、中国影響力というような話がありましたけれども、現時点で、外務省として、例えば中国はどういう考えでおられるか、同時に、アメリカあるいはロシア対応はどういうふうなことになるのか、わかる範囲で教えていただきたいと思うのです。
  10. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 中国の場合には、きのう中国トウカセン外交部長と私が会談をいたしましたので、その点だけ申し上げ、その他の点については政府委員から答弁をさせますが、トウカセン外交部長は、中国朝鮮半島に核が存在する事態を望んでいない、その意味では、国際社会協力をしてそうしたことを防ぐべく今までも努力をしてきたし、これからも努力をしたいということを明確におっしゃっておられます。しかし同時に、朝鮮半島における平和と安全を守るということにも重大な関心を持っている。つまり、軍事的な衝突が起こるようなことは避けなければいけない。この二つをどうバランスをさせていくかだということをおっしゃっておられましたので、その点では、我々と同じ、核疑惑に関しては大きな懸念を持っているというふうに感じております。
  11. 川島裕

    川島政府委員 あとロシア米国について御説明いたしたいと思います。  ロシアは、前は、ソ連のころは、北朝鮮に対して恐らく中国と並んで一番影響力のあった国であろうと思いますけれども冷戦の終了に伴ってかなりその影響力というものは減じているという判断でございます。ただ、ロシアも国境を接しておりますし、その意味危機感を持っていて、とにかく北の核兵器開発というものがあるのであれば、これはとめなきゃならないという問題意識においては、我々と全く同じでございます。  金泳三大統領がたまたまモスクワを訪問しておりまして、非常に両首脳とも認識を一にした。つまり、何とかしてこの核開発問題を解決しなければならないということでございます。  それから、米国の方は、これは日米、従来から緊密に対応しておりましたけれども、何と申しましても、この東アジアの安定にとって非常に重大な問題であるという認識に加えて、やはり全世界的な観点から、この核拡散が進むということはある意味冷戦後の一番危険な話であるというグローバルな観点での問題意識も非常に米国は持っておる。  ただ、中国にいたしましても、ロシアにいたしましても、米国あるいはみんな、とにかく核兵器開発があるのであれば、それはとめなきゃならないという意識においては全く同じだろうと思います。ただ、アプローチにつきまして、若干、例えば中国の方が、より時間をかけてやれとか、ニュアンスの相違はあろう、こういうことだろうと思います。
  12. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、けさのテレビ報道等によりますと、米国独自制裁考えているというふうに流れてきておりますね。ロシアは、制裁は時期尚早だというふうに語っているというふうに流れていました。また中国は、制裁には反対だ、こういうふうに言っているのですね。  そうすると、今の局長答弁とは、何か局長答弁の方がちょっと時間的なずれがあるような感じが私はしているのですけれども、もう少し正しい、しっかりとした認識というものを教えていただきたい、こう私は思うのです。
  13. 川島裕

    川島政府委員 今のは制裁自身に関するお話かと思いますけれども、北に、だから核開発を断念させる方法論としていろいろあろうかと思います。ただアメリカも、行政府の中でいろいろな考えはございますけれども、まとまったものとしてまだ私どもとしては、やりとりしたことがございません。  当然のことながら、相当これまで一年間我慢してきたものですから、いらいらが各方面にたまっている。その中には制裁という声も強いということでございますけれども米行政府そのものとしての確固たるものはまだ検討段階にあるという感じでございます。ただ、確固たる姿勢を示すべきであるという方向は間違いないと思います。  これに対して、中国の方は、やはり制裁というものに対しては非常に慎重な姿勢がある。ロシアはその中間とでも申しましょうか、安保理でみんなで国際社会としての検討を行えば、これに同調してするのにやぶさかではない、そういう感じかと思います。
  14. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣アメリカは、経済制裁が不調に終わった場合は独自の制裁考える、こういうふうにも言っていますね。その場合、先ほど大臣は、憲法範囲内でというお話もありましたけれども日本としても、やはり日米関係というものはきちっと考えていかなくてはいけない。その場合、アメリカ独自制裁をとった場合、日本はどう対応するのですか。
  15. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 まだ仮定の問題でございますから、公の場で議論することは避けたいということで一貫してきているわけでございますが、鈴木先生のせっかくの御質問でございますから、私どもの基本的な考え方というか、若干御説明をさせていただきますれば、国連措置が決定されて、それに日本協力することが私どもは望ましい、措置が行われる場合にはですね。  しかし、それが不調に終わってアメリカが独自に行動するという場合、これは独自ということはあり得ないと思います。韓国日本に対しては協力を呼びかけてくると思いますが、その場合には、それが有効性を発揮するものであると我々としても認識する場合には、これは先生御指摘のような日米安全保障体制、これは我が国の安全にとって基軸的な問題でございますし、また、韓国を含む朝鮮半島、極東の安全というものは我が国の安全に直接関係してくる問題でございますので、できる限りの協力をすることが我が国の基本的な外交姿勢であるというふうに考えております。
  16. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今の大臣の、アメリカ協力することが基本的な外交基本方針だという話があります。しからば当然、日米安保条約がありますから、これは事前協議の話なんかも出てくると思うのですけれども、その点の大臣の腹づもりはどうですか。
  17. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 この辺は、どのような措置が実施されるかということによって異なってこようかと思います。たとえ国連決議がなくても、当面考えられる措置というのは経済的な措置であろうかと思います。例えば送金の問題とか貿易の停止とか、そういうことであれば日米安保条約に基づく事前協議というようなことは起こってこないのではないかというふうに思っております。
  18. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今大臣から、いわゆる経済的な措置をとるという話ですけれども、今送金の話がたまたま出ました。そのほかに、外務省としては、例えば段階的に制裁措置をとるとするならば、どういったことを速やかにやろうとしている  のか、お知らせをいただきたいと思います。
  19. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ここから先はどのような事態が発生するか、私ども話し合いによる解決というものを目指しておりますし、また、国連においてどのような措置考えられるかという、国連措置といいますか、むしろ国連における意思表明ですね。安全保障理事会としての意思表明がどのような形で行われるかが今後議論されるわけでございますので、具体的な措置については当面、発言は控えさせていただきたいと思っております。
  20. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 しかし、もう既にいろいろなメディアの中でこういったことが考えられて出ているわけですから、やはり外務省がこういった問題での対応で余りにも閉鎖的な話をするのは逆に外交にとってよくないと私は思いますよ。日本はこのぐらいの姿勢でいるぞということをやはり外に向かってきちっとすることによって、アメリカ信頼も得たり、あるいは北朝鮮にまた次の慎重な行動を起こさせる、あるいは話し合いにのせるまたレールが敷けるのではないか、こう私は思うのですね。  その点、送金の問題は言ったわ、しかし、ほかの問題は触れられないというのはちょっと片手落ちだと私は思うのですけれども大臣、どうです。一般の人は、これはできるのじゃないか、こういうことも考えられるのでないか、大体頭の中にありますよ。それすらここで言わないというのがおかしいのではないかと私は思うのですよ。
  21. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、我々としては許される範囲内でやらせていただきたい、やる決意であるということだけ申し上げさせていただきたいと思います。
  22. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 限られた時間ですので、大臣、では、許される範囲はこういったことだということを、外務省の公の資料にも出ていることあるじゃないですか、それがなぜ言えないのですか。
  23. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私どもが直接そうした措置に加わるわけではありませんで、関係部局においてそうした点は検討していただいているわけでございます。
  24. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 こちらから言ってもいいのですけれども、これはまた外交でありますから私も慎重に対応したいと思って、この議論はこれぐらいでやめまして、また、この北朝鮮問題については原田先生小杉先生からも質問があるかと思いますので、お譲りをしたいと思います。  とにもかくにも、やはりこの朝鮮半島の動向というのは日本安全保障にもかかわることでありますから、的確な情報をきちっと把握して対応していただきたい、このことを強くお願いしたいと思います。
  25. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 鈴木先生のおっしゃる点をよく体して努力をしたいと思っております。
  26. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 次に、北方四島周辺水域の問題に関しましてお尋ねしたいと思うのです。  ポキージン南クリル行政区長より根室市に対し、いわゆる漁業操業についての提案があったという報道がされておりますし、また、国会でも取り上げられておるのでありますけれども、この提案に対し外務省はどう対応しているのでしょうか。
  27. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 北方四島在住のロシア側関係者より、今ポキージンという名前が挙がりましたけれども根室市長に対して、貝殻コンブ協定方式による日本漁船操業の拡大に関するテレックスが接到したことは私どもとしても承知をいたしております。しかし、これがロシア側より日本政府に対して正式な提案なのかどうかということは判然といたしません。その点を確認をしなければならないと思っているところでございます。  なお、この提案の中に言及されております貝殻コンブ協定は八一年に締結された民間協定でありますけれども、これと同様な考え方で今回の問題を解決できるかどうかについては相当慎重に検討する必要があるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、北方四島周辺水域の問題の検討に当たりましては、北方四島に関する我が国の基本的な立場を踏まえることが必要であるというふうに考えております。
  28. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 一地区長提案かもしれませんけれども、私は、四月五日、衆議院の北方及び沖縄特別委員会の派遣でモスクワに行った際、ソロビヨフアジア局長と会談した際、ソロビヨフさんからも、一緒に仕事をしましょう、ロシアは受けますよ、あと日本判断だけですよというふうに言われているのですよ。  これは向こうからの電報で事務当局も把握していると思うのですけれども、そこまで言っているということは、これは連動している話じゃないか。同時に、日ロ関係をもっともっと改善する、進めていくためにも、あるいは島の人たちの理解を得るためにも、やはりお互いに働く機会が欲しい、働く場所が欲しいということは共通の認識なのですね。  ただ一地区長提案というよりも、北方領土の解決の前進のための一助になると私は思っているのですよ。そういった意味でもこれは前向きにとらえるべきだと私は思っているのですけれども、いかがでしょうか。
  29. 野村一成

    野村(一)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣の方から、今回のポキージンさんの話については正式な御提案ということではないというふうにお答えございました。  ただ、一般的な考え方といたしましては、例えば三月に外務大臣ロシアを訪問した際に、ロシア側から、この問題につきましては、警備の取り締まりという側面と経済的な側面があるけれども日ロ双方に受け入れられるような解決策が重要であろうというような御発言がございまして、そういう意味で、一般的な考え方というのは表明されておりますけれども提案という形ではない、そういう趣旨でございます。
  30. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今、北方四島周辺では昨年来、拿捕だとか臨検が非常にふえています。同時にこれは、日本越境操業ということも指摘されているわけですね。特に、四月なんか一週間くらいモスクワで、日本は法律を犯しているのだというキャンペーンを張ったというふうにも聞いております。  漁民側からすれば、昔我々の島であったという思いと、目の前に魚がいるとどうしても魚を追っかけるという自然の営みでありますから、慣性的にそうなってしまうのですね。しからば、拿捕だとかあるいは相手から無用の批判を受けないためにも、この北方四島周辺水域における操業というのは十分検討に値するし、やるべきだと私は思っているのです。この点、大臣、どうでしょうか。
  31. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 北方四島周辺におきまして、ロシア側からのたび重なる拿捕等措置周辺漁民の皆さんが大変御苦労されているということは私どももよく承知しておりますし、何らかの解決が図られないかということは外務省としても検討しなければならないと思っております。  また、拿捕につきましては、拿捕された漁船員を釈放するように、二月の次官級協議、それから三月の羽田外務大臣訪ロ機会にも累次申し入れしてきているところでございます。  それから、北方四島周辺における漁業をめぐる昨今の状況、今申しましたように大変憂慮すべき状態でございますので、北方領土問題に関する我が方の基本的な立場が万が一にも損なわれることがあってはならないという基本的な立場の枠内で、何ができるかを検討しているところでございます。  本件につきましては、今申しましたような北方領土問題に対する我が国の基本的な立場と、さらに種々の複雑な要素を慎重に勘案しながら検討を進めていかなければならないというふうに考えておりますので、検討結果の取りまとめの時期等、現在特定することはできませんけれども現地の事情を踏まえて今後とも検討を促進していきたいというふうに考えております。
  32. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 この問題につきましては、外務省は今まで検討すら言ってくれませんでした。それは主権の問題が絡むからということで、外交上、国益上の問題が絡むということで一切触れてきませんでしたけれども、最近、外務省検討ということになってまいりました。しからば、検討されているというならばいつをめどに考えているのか、お知らせをいだだきたいと思います。
  33. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ただいま申しましたように、この点についてはロシア政府としての姿勢がどうであるか、またそれに関するさまざまな、日本側の漁民と言われる方々の中にも違法操業をしている方もいらっしゃいますし、正常な形での操業を目指している方もいらっしゃいますし、そうした複雑な利害を勘案しながら検討していきたいというふうに考えているわけでございまして、できるだけ速やかにというふうにお答えをさせていただきたいと思っております
  34. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 政経不可分から今や拡大均衡という流れの中で、さらにゴルバチョフ大統領が来られて、エリツィン大統領も来られた、東京宣言もあった。その中で領土問題も解決しようというふうにして、間違いなく日ロ関係、領土問題については進んでいると私は思っているのです。  その中にあって、この漁業問題だけがおくれをとってはならぬと思っているのです。しかも、ビザなし渡航も始まって、ほぼ定着して、それなりに相互理解が深まってきていると思うのです。私はこれは速やかに検討してもらいたい、まとめてもらいたい。  できるならば今月中か来月中にもまとめて、即外交交渉に当たるべきだと思っているのですけれども、遅くとも八月くらいまでには日本として何ができるかきちっとまとめて、しかも、スケソウのあの羅臼近辺は一月から三月が漁でありますから、それまでにやるとするなら、最低半年ぐらいの期間がなければ私は交渉にならぬと思っていますから、八月くらいまでにはぜひとも検討結果をまとめてもらいたいと思うのですが、どうでしょ  うか。
  35. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 本件に関しまして鈴木宗男先生が終始御尽力をいただいていることは私ども承知しております。また、その御努力に心から敬意を表するものでございます。  先ほど答弁いたしましたように、漁民の皆様方の窮状も考えながら、外務省といたしましても、できるだけ早くロシア側と話を進めたいと考えておりますが、時期につきましては、ただいま先生から御指摘の点も踏まえて最大限の努力をさせていただきたいと思っております。
  36. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、その踏まえたは結構ですけれども、八月までにある程度の検討結果を出して、そして進めていくと理解してよろしいですか。
  37. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 最大限の努力をするよう事務当局に指示をいたします。
  38. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 それならば、私は八月めどという表現をしたいと思います。八月をめどに何とかまとめてもらいたいと思いますけれども、もう一回それを確認させていただきたいと思います。
  39. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 その意を体して事務当局に指示をいたします。
  40. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 今の大臣答弁は、殊に羅臼、根室、別海、標津、旧島民が生活している地区にとっては極めて大きなニュースなのです。今まで土俵にすら上がれなかったのが土俵に上がれる話でありますし、同時に、期限を切ってやってくれるというわけでありますから、大変な明るいニュースだと思っているのです。特に羅臼は、三年前に比べると、ことしの漁というのは五分の一まで減りました。生活できないのが実態なのです。  そういった意味で、とにかく働く場をつくってくれというのが気持ちでありますから、私は今の大臣答弁北方関係者にとっては極めて明るいニュースだと思います。ぜひとも八月をめどに検討結果をまとめて、速やかにロシアと交渉してもらうよう再度お願いしたいと思います。
  41. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 これからロシア側と話をしなければならないわけでございますので、期限を切っての交渉ということはいろいろな問題点も出てまいりますが、漁期の実態その他、今鈴木先生から御指摘の点もよくわかりますので、その方向努力するよう事務当局を督励してまいりたいと思っております。
  42. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 そこで、今大臣からも違法操業等の話が出ました。一部の心ない人が法律を犯すことによって逆に日ロ関係信頼をも損なってしまったり、また地域がそれによって大変な迷惑をこうむっているのですね。そういった意味で、きょう海上保安庁も来ていると思いますけれども、海上保安庁としてはどういう取り締まりをしているのか。  同時に、ロシア側は漁期94作戦というのですか、これをまた六月からやるという情報も入ってきておりますので、今の北方周辺操業問題を速やかに進めていくためにも、日本国内できちっとルールを厳守する、厳しく国内でもやっていくのだという姿勢を見せることによってまたこの交渉がうまくいくのではないかと私は思っているのです。  そういった意味では、海上保安庁、さらには水産庁はどう対応をするのか、はっきりした答弁をいただきたいと思います。
  43. 井山嗣夫

    ○井山政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のとおり、北方四島周辺では、特に我々が問題としておりますのは、暴力団まがいの連中が非常に違法操業を激しくやる、これは反社会性が非常に強いということで、これを私どもは第一の目的で検挙しております。平成四年には三隻九名、五年には四隻二十八名というぐらいにふえております。現在はちょっと鳴りを潜めているという感じでございますが、この努力はさらに続けていきたいと思います。  それから、越境操業の防止につきましては、私ども巡視船艇をあそこに重点的に派遣いたしまして、越えていかないようにという御指導を申し上げているところでございます。ただ、どうしてもそれをかいくぐって向こうへ行きまして、拿捕される方が時々出るというのは非常に残念なことでございます。  それから、ロシア側で漁期94作戦というのをやりましたが、結果として地元であの作戦で検挙された、向こうに拿捕されたのはございませんで、むしろロシア船が二十隻、これはロシアの国内の漁業関係違反のようでございます。それから、日本船四隻が摘発されたといいますが、これは樺太の西の方とかカムチャツカのずっと北の方ということで、この海域ではなかったのでございますが、これからまた六月からやるという情報もありますので、一応地元の方とよく相談してやっていきたいと思っております。
  44. 遠藤保雄

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  北方四島周辺操業につきましては、我が国漁業法令では原則として操業を許可しておりません。したがいまして、北方四島周辺水域ロシア側拿捕されたものの多くはこの漁業法令の措置に違反する疑いというのが非常に強うございます。したがいまして、帰還後、事情を聴取いたしまして、適切に措置しているというところでございます。  また、安全操業の確保ということにつきましては、地元漁協等に対してきちんと周知徹底する、かつまた越境操業をしないように、海上保安庁との連携、さらには北海道庁の取り締まり者の適正な配置等に意を用いているところでございます。
  45. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 この問題につきましては、海上保安庁、水産庁、道庁がきちっと連絡を密にして対応してもらいたいと思っております。  時間が来ましたから、最後に大臣、来月ナポリ・サミットが行われます。もう恐らく、近々には最後のシェルパ会議も開かれるかと思うのですけれども、このナポリ・サミットでは何が主な議題として話し合われるのか。同時に、このナポリ・サミットに臨む我が国姿勢等をお聞かせいただきたいと思います。
  46. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ナポリ・サミットにつきましては、現在議長国でありますイタリアを中心として協議が進められているところでございますが、先進諸国における失業問題の重要性から見て、今回は成長と雇用が最大のテーマとなる見通しであります。  その他、経済問題としては国際貿易問題、対ロ支援の問題、途上国や旧ソ連邦諸国との関係、環境問題等についての議論が行われると承知しておりますし、政治面では、サミット時の国際政治情勢にもよりますけれども、旧ユーゴスラビア情勢等が議論されるものと考えております。  いずれにいたしましても、冷戦後の国際社会の抱える問題への対応に当たって、サミットは日米欧の政策協調の場として経済、政治両面で重要な機能を果たしているわけでございますので、日本としては、G7間の政策協調の一層の強化のために、他の諸国と緊密に協力の上、サミットの成功に向けて努力をしてまいりたいと思っております。
  47. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 大臣、今度のサミットでは、ロシアが政治問題に関する討議に参加するのかどうかもちょっと教えていただきたいし、また、南アが全人種参加による制憲議会選挙も終わりまして、また今新しい歴史を歩み出そうとしております。私は、アフリカに対する日本立場というものを鮮明にするためにも、サミットあたりでは日本からでもこの南ア問題を出してもいいのじゃないかという感じもいたします。また、北朝鮮の問題なんかも出て当然ではないかと思いますが、その点も含めてお知らせをいただきたい。  同時に、北方領土問題についてはどう扱うのか。ヒューストンでは議長サマリー、ミュンヘンでは経済宣言に入れました。そしてロンドンでは政治宣言に入れました。去年、日本でも、私は北方領土問題を日本での開催ですから何とかやった方がいいのではないかと言ったけれども、これはコンセンサスを得ているということで話し合いはしてもらえませんでした。  ヒューストンでスタートしたときの議長サマリーでは、第二次大戦の残滓としての北方領土問題があるということは明確にG7の国の中では認識としてあるわけでありますから、私はやはりアメリカやイギリスの側面からの支援を得て解決していくのが一つの手法だと思いますので、この北方領土問題をどうするかについてもあわせてお答えをいただきたい、こう思っております。
  48. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ロシア国際社会の一員として、重要な構成員として建設的な役割を果たせるよう我々としても考えていかなければならないと思っておりますし、その点ではG7におけるロシアの政治面での参加というものは大きな意義があると思っております。ただ、どのようなステータスといいますか立場で参加をしてもらうかにつきましては、今後メンバー国と相談をしていきたいと思っております。  また、南アフリカについて鈴木先生が長い間御関心を持っていただいていることは承知をいたしておりますし、この自由選挙、そして新しい政府の成立というものはこれからのアフリカの発展、民主化、経済の発展について大きな出来事であったと認識をいたしておりますので、そうした点も議論の対象になることも期待をされるところだと思います。  また、北朝鮮の問題につきましては、そのときにどのような情勢になっているかによりますが、我々としても大きな関心事項だと思っております。  そして、北方領土問題でございますが、御承知のとおり、ミュンヘン・サミットでは言及をされました。しかし、東京サミットの場合には宣言の中には加えませんでした。これは、その後ロシアのエリツィン大統領の訪日、東京宣言の中での四島に対する明確な言及というものもあるわけでございますので、そうした情勢の進展を踏まえて、あえてサミットの中で宣言の中に加えていただくかどうか、この辺は今後検討していきたいと考えております。
  49. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員 時間ですから終わります。大臣、きょうはありがとうございました。  私は、限られた時間の中で、八月めどに北方周辺の問題がそれなりの交渉のテーブルに着けるということを得ただけでもきょうは非常に意味のあることでありましたので、感謝を申し上げて、質問を終わりたいと思っております。
  50. 菅直人

  51. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 私は、きょうは時間もありませんので、北朝鮮の核問題、それから日米包括協議の問題、そのほかODA等に関連して、大臣のこの間の当委員会におけるあいさつに関連して質問をしたいと思います。  さて、まず北朝鮮問題ですが、きのうの夕刊に「北朝鮮 数日内、一線越す」、こういう記事があります。アメリカのクリントン大統領が、欧州歴訪のため、ワシントンからローマに向かう専用機の中でスタッフと、クリストファー国務長官らと会談をし、北朝鮮問題について討議した。その中で米政府は、北朝鮮がここ数日以内にも制裁へ至る一線を越えるとの認識で一致した、こういうことになっております。  そこで、この報道について確認をしておるかどうか、どこが一線になるのか。ここまで来たらだめだとか、その越える一線というのは何だということについて、大臣認識を聞きたいと思います。
  52. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 二日付でIAEAブリックス事務局長から国連のガリ事務総長あての手紙が発出されたと聞いております。その中で述べられていることから今の御質問にお答えをいたしますと、五メガワット原子炉の燃料棒の取り出しを北朝鮮は今進めているわけでございますが、この燃料棒の取り出しがIAEA査察のもとで行われない場合には、過去におけるプルトニウムその他の燃料の軍事転用があったかなかったかということを将来にわたって証明する方法がなくなるということで、燃料棒の引き出しについてIAEAの申し入れる方法でやってもらいたいということを再三にわたって北朝鮮側に申してきたわけでございます。  北朝鮮側はそのIAEAの要請を無視して燃料棒の取り出しを続け、現在では、その点に関して軍事転用の有無を検証する方法がなくなったということが明確になりました。この点が、今おっしゃった一線を越えたということではないかと理解をいたしております。
  53. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 せっかくの大臣のお言葉ですが、私はちょっと違うと思うのですね。  きのうの、「北朝鮮に早期回答迫る」というIAEAのテレックスを日本の有力新聞が入手した。そのテレックスにありますが、それには、北朝鮮に三項目を示して、そしてその三つの選択肢を明示して、北朝鮮の早急な回答を要請しているのですね。しかもその中で、将来の信頼ある測定が不可能ではないかもしれないとみなして、実行可能な三提案提案するとしておるわけです。  そういうことで、ここで三項目を細かく言うのは省略しますけれども、恐らく外務省もキャッチしておられると思います。具体的に北朝鮮がこの中の選択肢の一つをやれば、プルトニウムをしっかりと保管すること、あるいはプルトニウムをどれだけ使ったか、どういうように使ったかということが明らかになりさえずればいいのだということになっておりますから、まだちょっと大臣の言うことは早計ではないでしょうか。
  54. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 原田委員の御指摘の点もございますが、時間的な経過がちょっとございますので、その点、政府委員から答弁をさせます。
  55. 林暘

    ○林(暘)政府委員 今の点についてお答え申し上げます。  原田先生が御指摘になりましたIAEAからの北朝鮮に対します提案と申しますのは、三十日の安保理議長の声明を受けまして、三十一日に、まだ残されております相当数の燃料棒について、こういう方法をすればまだ今後の確認の方法があり得るという三点の提案をしたわけでございますが、その後、北朝鮮側燃料棒引き出しの作業がとまりませんで、引き出し作業を継続いたしました結果、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、二日夜の時点になって、IAEAの事務局長が、今のような五メガワットの実験炉の燃料棒の引き出しの状況においては、今後、今申し上げましたような過去のプルトニウム抽出の歴史を検証する手段はすべて失われてしまったという判断に達したわけでございまして、三点のIAEAからの提案というのは、それの前の時点のことでございます。
  56. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そうすると、プルトニウムの抽出をどのくらいやったかというのはもう検証できない、わからない。ではこの新聞にある、テレックスで返答を求めたというのは、これはもう過去の問題で、それからもう話は進んでいて、燃料棒の引き出しを中止しなかったからわからなくなってしまった、そういうことですか。  しかし、それでも、実際に燃料棒抽出は、これだけ貯蔵してあって、これだけこういうように使い、こういうようにやりますよということが改めて検証できればいいのではないですか。
  57. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 原田先生、非常に専門的な御質問でございますので政府委員から答弁をさせますが、その引き出した燃料棒を収納する場合に、どこの場所にあったかというのがわかるように分別収納をしていただければその検査が可能だったわけですけれども北朝鮮側は、そうでなくてまとめて、どこにあったかがわからないような形で今収納しているという状況でございますので、検証の可能性が失われたというふうにIAEA側は判断をいたしたわけでございます。
  58. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いや、私はそこがわからないのだ。  分別収納は絶対条件なのか、あるいは収納してそれを抽出して、問題は、収納より先のプルトニウム抽出が問題なのですから、どのくらい爆弾をつくるだけのものを抽出し、また爆弾を製造する能力を持つかというところが問題なので、それをやっているかやっていないかがはっきりすればい  いのではないですか。
  59. 林暘

    ○林(暘)政府委員 この五メガワットの実験炉の問題につきまして、二つございます。つまり、過去にこの実験炉で燃やされた燃料からプルトニウムが抽出されたかという問題と、交換をいたしました、今引き出した燃料から今後プルトニウムがどういうふうに抽出されるかという二つの問題がございます。  今後の問題につきましては、もちろん今冷却プールの中に引き出しました燃料棒は入れてありますので、それを今後監視をしていけば今後の問題についてはわかるわけでございますが、過去この実験炉で燃やされました燃料棒からプルトニウムが抽出されたのかされないのか、されたとすればどのくらいの量が抽出されたのかということがわからなくなるという点でございます。
  60. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 その辺は査察を、仮にプルトニウムの抽出状況についての査察の方法というのはできないものでしょうか。何か今、収納はプールの中へきちっと入れておるのだ、こういうことですが、プールの中へ燃料棒がほうり出されてあるうちは何てことはないのです。  問題は、そこからプルトニウムを抽出するかしないか、抽出する能力があるのかどうか、どのくらい抽出したかということが一番問題であり、それからまた、これからしようとしているか、そこが一番問題ではないですか。それを、どうして検証するかということを何で議論しないのですか。
  61. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私が承知している限りでは、八千本近く燃料棒があるわけですが、どこから抽出したものが何かということが特定されないと、過去においてプルトニウムを抽出したかしないかが確証できなくなるということでございまして、今、林審議官が申しましたように、これから抽出するかしないかではなくて、過去において既に抽出されているかいないかを検証する必要があるという点についての証明の可能性が、ブリックス事務局長の手紙を読みますと、IAEAとしてはそうした可能性、わずかな機会も今や消失したとの結論を下したというふうに書いているわけでございます。
  62. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 これは、きのう実はたまたま夜テレビをつけておったら、テレ朝でしたか、ロシアの核兵器製造をやる専門家が、北朝鮮はまだとてもプルトニウムを、核爆弾をつくるだけのものは持っていない、実験ももちろんやっていない、核爆弾も持ってないし、能力もまだちょっと不足しておるということを言っておりましたが、これについてどう思いますか。
  63. 林暘

    ○林(暘)政府委員 北朝鮮がどれだけの量のプルトニウムを過去において抽出したのか、また、そのプルトニウムを使ってどれだけの兵器をつくったのかつくらないのか、その辺につきましては我々は承知いたしておりません。
  64. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 もちろん日本承知しているわけがないと思うのですけれども、今の、ロシアの専門家が言っておることについてどう考えているのか、どう見たかと聞いておるだけの話です。あなたの方に聞いたってわからないのだから、答弁要りません。  それから、もう一つ伺いますが、大臣北朝鮮は核を持っていると思っているのですか。もちろんつくろうとしているかもしれないとは思うのですが、その辺、大臣の感想はどうか、ちょっと伺っておきます。
  65. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 この点につきましては、的確な情報によって判断をすることが大事だと思っておりますので、私自身としては、そうした判断をするに十分な情報を持ち合わせていないということを申し上げたいと思います。
  66. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 開発しようとしているのかどうか。
  67. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 国際社会の中にそうした疑念が広まっていることは事実でございます。今までのIAEA査察を拒否する北朝鮮の態度から見て、そうした疑念がわくことは当然のことだと思います。  その意味では、我が国政府は終始一貫して、そうした疑惑を晴らすべく北朝鮮として誠意ある態度をとってもらいたいということを、いろいろな方法を通じまして申し入れをしてきたところでございます。
  68. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 九一年十月、金日成主席は中国の鄧小平との間で、北朝鮮は核兵器を開発する意思も能力もないと明言し、核兵器の開発を否定している。こうしたことも中国北朝鮮の核を否定する根拠となっていると思うけれども我が国はこうした約束の信憑性をどの程度考えているのか、お聞きしたいと思います。
  69. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 金日成主席の言葉を私どもとしても信じたいわけでございますが、それには、IAEA査察を通じて科学的に証明されることが必要であろうと考えております。
  70. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今まで伺ったところによりますと、今のIAEA事務局長の手紙でも、検証することはできなくなったということで、すべてだ、こういうお考えですが、日本政府として独自に調べる方法はないし何も情報もない、だからそれしかないのですと言うのなら、国民にもう少しわかりやすく、そこはこれだからこうだよという話をしないと、どうもわかりにくいんだな。  これはもう最後の引き金を引く一線ですよというところで、あなたのお話だったら、IAEAの事務局長が言ってきたから、もうこれですべてです、一線越えたんです、これ以上もうこれについてはだめです、こういうお話だ。もうちょっとその辺の状況を国民にわかりやすく知らせないとわからないのじゃないですか。そんな大事な話を、一片のIAEAの事務局長の手紙だけでアウトですということになるのですか。
  71. 林暘

    ○林(暘)政府委員 この北朝鮮核開発疑惑の問題につきましては、原田先生御案内のとおり、北朝鮮がNPT条約に加盟をいたしまして、若干時間はかかりましたが、NPT条約に基づきます保障措置協定締結をいたしまして、昨年から保障措置に基づきます査察を受け始めたわけでございます。  その査察におきまして、IAEA査察をしました結果、北朝鮮が冒頭に彼らの原子力活動として申告をしましたところによりますプルトニウムの抽出、これは、今議論になっております五メガワットの燃料棒の一部分が破損をしたので、その際に燃料棒の交換をし、その際にプルトニウムを数十グラム抽出したということを北朝鮮は言ったわけでございますけれども、その北朝鮮の申告の内容査察をした結果に重大な不一致がございまして、したがって、その不一致を解明するために特別査察をしなくてはいけないということが起こったわけでございます。  北朝鮮が特別査察を拒否した結果、去年以降、米朝会談を含めましていろいろな協議が行われたわけでございますが、その際、過去にそういうことを北朝鮮側が言ったことについて、査察の結果、不一致があったということは事実としてあるわけでございますから、その不一致というものがどういうところから来ているのか。不一致がある以上、北朝鮮が申告した以上のプルトニウムを抽出した可能性もあるということで、IAEA側がいろいろな形の査察をする必要があるということを言ってきたわけでございます。  一番重要な使用済み燃料を出します炉、この五メガワットの実験炉の燃料棒を交換するに当たっては、その燃料棒を子細に査察をすれば、過去実験炉がどういう使われ方をしたか、そこから北朝鮮が言ったことと違った使われ方をしたか、その他がわかるということで、交換の際の燃料棒のチェックというのは重要である、測定は重要であるということで検討をしてまいったわけでございますが、その過去の履歴を測定する機会が失われたという意味で、今回の北朝鮮がとりました措置というのは極めて重大であり、かつ遺憾なものであるというふうに我々は考えている次第でございます。
  72. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の御説明で、ともかく日本としては重大な段階に入った、これ以上は大変だ、こういうところへ来て、四日の日ですか、日米韓協議をワシントンでやるということでございますが、これに対して日本は、先ほどのお話では、査察の受け入れを強く要請するとか、段階的な措置をとるようにという形で臨むというお話でしたが、そういうことでいいですね。
  73. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 おっしゃるとおりでござます。  また、冒頭、原田先生、新聞報道の一線を越えたというお言葉を非常に大きく受けとめていらっしゃいますが、一線を越えたというのは、ちょっと私は表現としても言い過ぎではないか。  今申しましたように、五メガワット原子炉の燃料棒の選別、収納を査察によって過去に軍事転用があったかなかったかを検証する方法が完全に消滅したということで、非常にIAEAとしては検証が難しくなったという状況になったということでございますので、それを国連事務総長報告をしたということでございます。  ですから、国際社会としてそれに対してどのような対応をとるべきかという点では新たな局面に入ったとは考えておりますが、一線を越えて直ちに軍事制裁とか経済制裁とかにいくかどうかは、これから私ども関係諸国と議論をしていかなければならないことというふうに考えております。
  74. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そうすると、今の状況ではもう検証できなくなったということなのだから、これから査察を受け入れますと言ったってもうだめだ、燃料棒を抽出しない限りそこのところはもうわからなくなっちゃったのだ。こういう話で、あなたのおっしゃる査察受け入れを強く要請するのだというのはちょっと矛盾しませんか。そんなことを言ったってしようがないでしょう。
  75. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 現在のところ北朝鮮は、登録している核施設、また存在するであろうと国際社会IAEA考えている施設の全部について査察を受け入れているわけではありません。そういう意味で、例えば廃棄物の処理施設とかそういうものの検証、また、検査ができるならば、新たな方法で過去における軍事転用可能性の有無を検証する可能性があるかもしれない。  この辺はまだ、私、専門家でありませんので正確なことは申し上げられませんけれども、そういう点も含めて我々としては平和裏の解決といいますか、話し合いによる解決、そして北朝鮮IAEA、核不拡散体制への完全な復帰というものを期待をしていきたいと考えているわけでございます。
  76. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 御答弁ですが、矛盾が多少あると思うのですね。査察という形でやっていってもう不可能な段階になったという話と、さらに査察を受け入れることを強要、言うのだと言ったって、もう不可能だと言っているのだから、そんなこと言ったってしようがないじゃないですか。それより、むしろ別な方法を考える以外にないじゃないですか。
  77. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先ほど御説明申し上げましたとおり、五メガワット実験炉燃料棒交換に伴いまして、その燃料棒がどういう使われ方をしたかということを燃料棒の測定を通じて確認するという機会を失われたとIAEA判断しているわけでございますが、理論の問題として申し上げれば、北朝鮮におきます原子力施設、廃棄物を捨てているところを含めましてあらゆるものが査察の対象となることがあり得ますれば、それ以外の方法で過去のことを検証することもあり得るかというのが先ほどの大臣の御答弁だというふうに理解をしております。
  78. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 だから、つまり査察をさらに別な方法でやればいい、可能性はあるということだね。さっきの話と全然違うじゃないですか。
  79. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 その点については、北朝鮮は従来も断固として受け入れないという姿勢でございますので、それを変えさせることは非常に難しいと思っております。
  80. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 どうも納得できません。今の、もう不可能になったと言っておいて、別な方法なら可能だと言うのらな、それじゃ何なんですか、おかしいじゃないですか。
  81. 林暘

    ○林(暘)政府委員 今御説明申し上げましたとおり、IAEA機会が失われたと判断しておりますのは、今回の燃料棒の交換、今まで使っておりました燃料棒を引き揚げたことに伴って、その燃料棒を測定することによって実験炉がどういう形で使われたかということを検証することが不可能になったということを言っているわけでございます。  ただ、ほかの方法も可能性としてはということを申し上げましたのは、もし過去において、一部分の燃料棒を取り出して、再処理をして、プルトニウムを抽出していたということがあるといたしますと、それに伴いまして、その結果出てきた廃棄物であるとかそういったものがあるはずでございますので、そういったものを子細に点検することによって、別な方法によって過去のことがわかる可能性もあるかもしれないということを申し上げたわけでございます。
  82. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そうすると、そういう趣旨を日米韓協議提案するなり、IAEAにそういう提案をするのですか。
  83. 林暘

    ○林(暘)政府委員 それの一つの方法が、まさに昨年重大な不一致が発見されました際に、特別査察という形で、寧辺にあります未申告の二施設の特別査察を要求したわけでございますが、それに対して北朝鮮側は、これは軍事施設であるということでその特別査察を拒否するということがございました。  そういうことでございますので、特別査察という形での未申告の施設の査察ということについては、可能性としてはございますけれども、甚だ難しい問題であろうというふうには考えております。
  84. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の御答弁ですと、そういう新しい未申告の施設の査察、特別査察提案しても恐らく拒否されるだろう、こういう話ですが、今までの状況からいって、非常に困難な事態に立ち至ったということは私は認めますけれども、しかし、いろんな方法があるのならもうあらゆる努力を払うべきだ、こう思うのですよ。  それから、日米韓協議をしても、先ほどもちょっと議論があったし、予算委員会でも我が方の中山委員からも指摘があるのですけれども、要するに、中国を抜いて制裁なりなんなりというのはなかなかできないのですよね、実効ある問題は。だから、やはり中国というのをここで非常に重視しなきゃならない。  連立政権を出すとき、中国を入れるか入れないかなんていって大分議論したというので、私はもう非常に恥ずかしい思いをしておったのですが、中国というのを抜きにこの問題を決めることは非常にむだな話だと僕は思うのですよ。むしろ中国を通してやってもらうということが大事なので、国連安保理事会は中国が入っておる、そして日米韓で今対応協議する、この間に少しギャップがあるのですね。  日本というのはどういう役割を演ずるかというと、私は、外務大臣日本こそ中国との間に立って、中国に十分理解してもらって協力してもらう。アメリカにもその立場をよく伝えて、アメリカ中国との橋渡しをするのが日本の役割じゃないのですか。そこを、アメリカ協力するだけで、アメリカの言うなりだ。情報も何もみんなアメリカに押さえられておって、アメリカの言うとおり動いていくのが日本外交だというように短絡的に考えるべきではないと私は思うのです。  日米安保条約はもちろん大事だし、日米同盟というのは大事だけれども、同時に中国というのを、日本は隣国として非常に親交関係を結んでおるわけですから、中国との橋渡しをやるということをどういうように考えておられるのか。  きのう唐家センとお会いになったと思いますが、そこでももちろん、先ほどのお話のように、中国朝鮮半島の核の存在というのを望んでいないということははっきりしているのですから、しかも中国朝鮮半島の平和と安全が非常に関心事だ、これは日本と全く立場は同じなのですよ。我が国もそうなのですね。しからば中国ともっと緊密にやって、むしろアメリカを説得する、そしてこちらもいろいろ切り札を考えるということが我々のやるべき方法ではないでしょうか。外務大臣、いかがですか。
  85. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 原田先生の御指摘はまさに当を得たものであろうと思います。私どもも、従来のプロセスでも中国とは緊密に連携をとり、中国考え方等も念頭に置いてアメリカとの話し合い等もしてきているところでございます。  今後国連においてどのような措置がとられるか、その有効性を確保するためにもやはり中国協力が必要であるということはお説のとおりでございますので、できる限りの努力をしてまいりたいと思っております。
  86. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今の点、大変大事だと思うので、ぜひ日本はそういうことで、アメリカ中国との間で最善の努力をしてもらいたいと思います。  今までどうも日本外交というのは、アメリカに対して受け身ばかりでやっておるということですが、この問題については、まさに中国考え方と、今御説明いただいたのでは、全く同じ立場だと思うのですね。ぜひひとつ大臣、これからしっかりした外交をやっていただくことを期待を申し上げる次第であります。  さてそこで、これは情報ですが、北朝鮮はノドンというのを持っているのですね。長距離ミサイルは、この前何か実験して能登半島の沖に落ちたというのが一つあるのですけれども、さらに北朝鮮は、この短距離のノドンを長距離にして日本列島をカバーするように今盛んにやっておる、その実験の準備中だということを、これはアメリカ大使館から政府の官房長官に内々に伝えた、ところが、官房長官は記者会見でそれをばらしちゃったという話で、アメリカが非常に怒っておるということをちょっと情報として聞きましたけれども、この事実についてひとつ伺いたいと思います。
  87. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 今先生の御指摘のように、機微にわたる問題でございますから、私からの答弁は差し控えさせていただきます。
  88. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 ともかく、こういうように、アメリカから情報をいろいろとらないと日本としても判断ができないというところは確かにあろうと思いますが、この辺の情報連絡についてはもちろん緊密におやりになっていると思いますが、さらに念には念を入れて慎重にやっていただきたいと思います。  それから、金日成がこの間NHKの記者と会談して、門戸は開いているというような、非常におおらかな態度でテレビに出てきたのを私は拝見しました。さらにアメリカのジャーナリストとも会見をし、アメリカに行きだいとかいろいろなことを言っておるのですけれども、これらについては日本の我々の外務省はどういうふうに考えておられるのか。
  89. 川島裕

    川島政府委員 ああいう形で西側のメディアに金日成主席が出てきましたのは非常に珍しいことだと思っておりまして、大変注目しております。  どういう配慮からああいうことになったのかというのはいろいろ推測はございますけれども、一つには、その前に三月の段階で、南北会談で、ソウルを火の海にとか、割にやや危機をあおるような雰囲気の発言をして、これがかえって国際社会の反発を呼んだので、むしろソフトなイメージを出そうとしたのではないかというような推測が当時なされておりました。まあそういうこともあるのかなという気はいたします。  いずれにいたしましても、あの発言、それから米国に一度行ってみたいとかいろいろな発言がございまして、私どもとしても関心を持った次第でございます。
  90. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 我が国との間では最近、全然交流、国交がないわけですけれども、今度我が党でも二人か三人北鮮を訪問したいということで、社会党からも出られるようですが、いずれにしても、やはり交流の窓口というのは少し開いておく必要があると私は思うのですね。  それから、北鮮の経済状態を聞いて驚いているのですけれども、三食を二食にしようという運動が始まっておる。食糧が非常に窮乏しておるということもあるようですが、できるだけ彼らが、そういう国民の生活を改善することが一番大事だということに気がつくように、できるだけ国際社会との融和をできるように、特に日本との間でも、我々だっていざとなれば経済援助だってできるわけですから、その辺を少し別な、外交チャンネルじゃなくて別なチャンネルでいろいろアプローチしておくことは大事だと思うのですが、いかがでしょうか。
  91. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 羽田総理大臣も再三にわたって答弁をいたしておりますように、北朝鮮が、核開発疑惑という国際社会にとって重大な懸念事項を解決していただく、そのために誠意ある姿勢を示していただけるならば、我々としては日朝国交正常化の交渉をできるだけ早く再開をして、今おっしゃったような形で国交の正常化を図っていきたいという日本姿勢には変わりありません。
  92. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 この問題については、時間も参りましたのでこの辺にしておきますが、ぜひこの我が国の進路を誤らないように、大変大事な問題でございますので、柿澤外務大臣に特に要望しておきます。  それから、次に行きますが、日米経済包括協議の問題でございます。  大臣は、外務大臣のごあいさつの中で、私自身、カンター通商代表と数回にわたって電話で協議し、日米包括協議もようやく再開の運びとなりましたと述べられました。この点は大いに評価いたしますけれども、あなたが電話でやったから再開できたようにおっしゃっておるが、実際はそうじゃないのじゃないですか。何かカンターは、これは新聞情報ですが、クリントンから呼びつけられて、これをどうしてもまとめろというように指示をされて、そして、それから態度ががらっと変わったというように情報では承っておりますが、どうでしょうか。  それからもう一つ。やはりあのノーと言って一種の決裂状態になった、それからアメリカの情勢が変わったのですね。何といっても、アメリカの経済は、円高誘導なんてやってられない、ドルが全面安になった、インフレになって金利が上がる、こういう懸念が出てきた。さらに、アメリカのアジア政策について大分批判が高まってくる。  こういうことで、これはやはり日本との間でいつまでもこういうことではまずいぞという判断が働いたのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  93. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 原田先生御指摘のような、日米両国において環境が少しずつ変わりつつあるということが、この再開にこぎつけたバックグラウンドであろうかと思っております。  アメリカ側も、日本側が受け入れないのであれば円高誘導するというような発言もございましたけれども、円高は全面的なドル安につながっていって、アメリカ経済にとって必ずしも適切な政策ではないということも認識をされたと思いますし、また、数値目標を求めるということは自由貿易の原則に反するという、アメリカの中の有力な経済学者やオピニオンリーダーの意見も出てきている。そういうものが背景にあって、日米経済包括協議の再開を促進させる要因になったことは事実でございます。  しかし、同時に、マラケシュにおける羽田現総理、当時の副総理・外務大臣とカンター特別代表との会談において、二月の日米首脳会談で決裂した後の問題の整理というものが行われました。その中で、かなりこうした問題を議論をして、差を縮めていくならば再開にこぎつけられるであろうというバックグラウンドができたということも一つございました。  今回は、六月末から七月にかけての我が国の取りまとめ、そして日米首脳会談、そしてナポリ・サミットというものを念頭に置いて考えますと、包括経済協議をできる限り早く再開をすべきであるということで日本側も考えておりましたし、その点では、非公式の協議をいたしましたところ、そうした両国の情勢、事情、バックグラウンドの変化というものもあって、再開にこぎつけられたものというふうに思っております。  私も、その間、予算委員会の合間を縫って数回電話をいたしました。これがどのくらい効果を発揮したのかというのは、決してこれで成功に導いたというほど申し上げるつもりもありませんけれども、カンター特別代表は、合意に至った日のワシントンでの記者会見で、今回合意に至るまでには羽田総理また柿澤外務大臣の政治的なイニシアチブが大きな効果を発揮したということで、羽田総理と私の名前も挙げていただいた。  なかなか日本のメディアは伝えてくださいませんでしたけれども、そういうことがあったものですから、ごあいさつの中に加えさせていただいたわけでございます。  また同時に、林審議官を初めとする日本側の代表団、これも先方といろいろな形でしっかりとした交渉をしてくれました。この点についても、先方も日本側の交渉の仕組み、つまり官僚主導でもなく、また政治家と交渉すればすべて全部が解決するということでもない、ある意味では、政治的なリーダーシップと、それから官僚機構というものは車の両輪として動いていくことが大事だということを認識してくれたのではないかと思っております。
  94. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 そこで、一番問題は、客観基準として数値目標はとらないということははっきりしたと言っておられるのは日本立場ですが、どうもアメリカのいろいろな報道を見てみると、これはワシントン・ポストが言っているのですが、日本人の好きな玉虫色の決着だ、こう言っているのです。アメリカのある交渉担当者は、アメリカは自国の交渉上の立場をいささかも譲ることなくデッドロックを突破した、こう言っておるわけです。これはワシントン・ポストの報道です。  それから、二十四日に再開合意されたのですが、その翌日、カンター代表は、自動車について、例えば外国車を取り扱う販売店を一定期間に一定数にするように約束することができるということを言っているのだな。販売店の数を一定、幾つかにするという約束をしてくれればいいのだ、そういうことは十分可能だというように、つまり数値目標、輸入量何台というのではなくて、販売店の数でいきましょうとか、いわばいろいろなそういうものを総合的に判断するのだ、こういうことを言っておるわけですね。  これについては、我が国との間でどうも玉虫色の決着をやっているのじゃないか。つまり、あなたの方が絶対に数値目標というのはないのだと言うなら、はっきりした証拠を見せてください、こういう合意ですよ。だから、ないのですよ。
  95. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 詳しくは政府委員から答弁をしてもらいますが、今回の合意につきましては、非公開ということになっておりますが、文書がございます。その中で、客観的基準というものは数値目標を目指すものではないということは明確に合意をいたしております。  また、客観的基準の中には、定性的なもの、つまり市場の開放度をはかる、定性的といいますかこういう処置をとったというような、量に関係しないものと、また定量的なもの、過去の伸展度合いといいますか、そういうものを両方含むということも合意をいたしております。  その上で、私どもは何度も繰り返して、半導体交渉のときのように、いろいろな合意がありながら二〇%という数字のところだけが光が当たって、これだけで日本が誠意があったかなかったかというような誤解を受けることがあってはならない。  その意味では、特定の基準だけを念頭に置いて判断をしてはいけない、判断をすることはないというところまで合意をいたしておりまして、複数の基準を総合的に判断する、こういうことになっておりますので、そういう意味では、数値目標と言われるものについてはアメリカ側も求めてこないものと思っております。  ディーラーの云々という点につきましては、政府委員から答弁をさせていただきます。
  96. 原口幸市

    ○原口政府委員 今回、客観的基準が数値目標でないという点を含めまして、包括協議の目標や客観的基準をめぐり共通の理解に達したということは大変大きな意義があると私たちは考えておりまして、今後各分野の協議においては、こうした共通の理解に立ちまして、具体的な措置や客観的基準の内容について議論を深めていくということは日米双方共通した理解だろうと思います。そういう意味では、問題の先延ばしとか玉虫色という御指摘は必ずしも当たらないのではないかと思っております。  御質問の、輸入車を扱うディーラーの問題でございますけれども、輸入車を扱うディーラーの数等に関しましては、民間ディーラーの経営判断にかかわるものでございまして、輸入車がどれだけ消費者に購入されるかに依存して、最終的には消費者の嗜好に依存すると考えております。したがいまして、こうした民間企業の活動について政府が何らかの保証を行うことは……
  97. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 ちょっと委員長大臣お帰りになるので、一言だけ大臣に。政府委員の方、途中で恐縮なんだけれども大臣にかわっていただいて。  私の時間、もうなくなりますものですから、大臣、一言だけお聞きしたいのです。  日米協議については政府委員に今聞いているところですが、要するに、アメリカ側との合意文書はあるということだし、合意文書が新聞に流れてきております。それは、保険市場では市場の顕著な改善、それから自動車分野では販売増加をもたらすような販売機会の顕著な増加、つまり、代理店を何ぼにするかというような話になってくるわけだな。結果の保証を求める余地を十分残したことになっておりますね。カンターが、例のモトローラの携帯電話の問題でも、日本政府は保証をしたということを言っているわけです。あれをモデルにしてやろう、こういうことを言っているのです。  こういうことで、ともかくこれから大いに交渉してもらいたいのだけれどもアメリカの言うなりにならぬように、それから、一方的な報復措置というものを絶対に排除して、ガラス張りでひとつやってもらいたい。これはもう我々も十分応援をさせていただきますので、その点を、今少数政権だからといって恐れることはありませんけれども、それと同時に、やたら焦って先に合意してしまわないようにぜひ頑張ってもらいたい。それについて、一言言ってください。
  98. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 これは国益に関する問題でございますので、その意味で、原田昇左右先生から御支援をいただけるという言葉を大変重く受けとめ、感謝を申し上げたいと思います。  現在、分野別の作業部会が始まったところでございまして、これは各省の関係者で議論をしていただいております。先生の御趣旨を体してこれから努力をすることをお約束を申し上げます。
  99. 菅直人

    菅委員長 それでは、大臣は他の委員会へ若干退席をされますので、先ほどの答弁を継続して言ってください。  原口経済局長
  100. 原口幸市

    ○原口政府委員 答弁を続けさせていただきます。  したがいまして、輸入車のディーラーの数を云々するということは、言ってみれば、政府としてその責任の入る範囲を超えるものにほかならないわけでございますので、我が方としては受け入れないと考えております。  今原田先生、モトローラの問題に触れられましたので、それでは、これと現在の包括協議日本の数値目標との立場とどういう関係があるかということになると思いますけれども、この移動電話の問題に関しましては、米国企業と我が国自動車電話事業者間でビジネスベースの合意が得られたことを受けまして、政府間の話し合いを行い、その解決が図られたものでありまして、関係民間企業の自主的経営判断がその解決に大きく寄与したものと認識しております。  今回日本政府がとる措置につきましては、以上のように、民間事業者たるIDOとモトローラ社の自発的意思に基づき、両者間で一定の協力関係が設定されたことになった事実を踏まえまして、日本政府として、電気通信事業法あるいは電波法、既存の法令に従って一定の措置をとることを確認したものでありまして、政府として、その責任の範囲を超えて、民間事業者の所轄の活動の結果を保証するといったたぐいのものではないわけ  でございます。  したがいまして、モトローラのケースがあるから日本の包括協議における数値目標等に対する態度が怪しくなるという例証とするのは当たらないのではないかと私ども考えております。
  101. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 では、保険の分野では代理店とか何か、保険のエージェントとか何かの数というのはどう考えますか。
  102. 原口幸市

    ○原口政府委員 実際に各交渉分野におきましてどのような具体的な数値目標を導入するかは、今後具体的に日米間で交渉していくわけでございますが、一般論として申しまして、私どもは過去の……(原田(昇)委員「ちょっと待ってくれ、数値目標を導入するの」と呼ぶ)いえ、客観基準でございます。もし数値目標と申しましたら訂正させていただきます。  いかなる客観基準を導入するかは今後、各交渉分野におきまして日米で交渉していくわけでございますが、一般論として申しまして、定性的、定量的客観基準を導入することは合意しておりますので、具体的には定量的基準がどういうものになるかということでございますが、一般論として申しますと、この定量的基準におきましても、過去の実績を把握する、それをもってその分野の状況がどうなっていくかを把握するというようなものであれば、我々として検討に値するのではないかと考えております。
  103. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 私が言っているのは、あなたの希望だけ言ったってしようがない、向こうとの間でどう合意したのかということを聞いているのだ。こちらの都合のいい解釈をしたってしようがないよ。
  104. 原口幸市

    ○原口政府委員 アメリカ側からは将来につながる客観基準の要求が出てくるという可能性は全くないわけではございませんが、先ほども申しましたように、具体的な客観基準をどのようにするかはこれからの交渉マターでございまして、今私が申し上げたことが日本政府の確固たる立場でござ  います。
  105. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 今、断固として数値目標に類するような将来の約束はしないということでございますので、それはよくわかりました。そのとおりやってください。  ただ、モトローラについてちょっと付言しますと、モトローラというのは本当にけしからぬ協定をやったのです。局を開設する、移動電話の交換局、放送局を開設するのですが、何かおびただしい数の局がある、全部その機器はモトローラから納入するという協定をやったのですね。私は本当にこれは全く、何か裏にあるのかなというくらいおかしな協定だな、こういうように思います。これについてはどうですか。
  106. 原口幸市

    ○原口政府委員 先ほど言及いたしましたが、モトローラとIDOとの間の合意、これは両当事者間の合意でございまして、政府の関与していないところでございます。  政府が約束したことは、例えばIDOから、割り当てられている電波の一部を北米方式に使いたいという要請があったときには考えましょうというような種類の話でございます。
  107. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 時間がありませんから、この問題はまた別途やることにしまして、一つお伺いしたいのは、ODAの問題をもう少し取り上げようと思ったのです。一言だけ申し上げますと、ODAに対する日本の役割というのは非常に大事だと思うのですね。これからODAをどういうように国別に決めていくかということについて、どうも基準が透明でない。  それからもう一つは、特にアジアの場合ですが、中国を初め各国ともかなり大幅に軍事予算をふやしておる。ロシアから買ったりアメリカから買ったり、かなり武器を購入しておるわけであります。あるいはさらに輸出する国まである。そういう場合にODAをどうするのか。金は天下の回り持ちなんだから我々はお金を上げるが、向こうの予算の中で軍事費を削減してもらえば十分賄える場合だってあるわけですね。一体、日本のODAと各国の軍事との関係をどういうように考えていったらいいのか。  将来、アジア安保という問題について、これはいろいろ試みがあるのですけれども、ASEANの地域フォーラムというのが七月にやられるということでもあります。これについて日本は、何かPKOセンターとか各国の国防白書の作成と公表とかを提案したけれども、どうもなかなかうまくいかないようだ、こういう話も聞いております。  今のODAの問題、それからアジアの安全保障をどういうように考えているか、御答弁いただきたいと思います。
  108. 平林博

    ○平林政府委員 お答え申し上げます。  常日ごろから大変な御理解をいただいてありがとう存じます。  ODAの国別の割り振り、その他ODAの運用につきましては、先生承知のようにODA大綱がございまして、人道的な観点あるいは日本との相互依存関係、さらに環境の保全とか、どのくらい相手が自助努力をしているかといったようなことを総合的に考えるわけでございますが、ODAもあくまでも日本外交の一環でございますので、日本の国益を踏まえまして、いろいろと要素を勘案しながら施策を決めているわけでございます。  その結果、何といいましてもアジア地域が重点地域になりますが、日本外交も幅広く、またグローバルになっておりますので、中近東、アフリカ、中南米にもどんどんと及んでいるわけでございます。  二つ目の軍事支出あるいは武器輸出の御懸念につきましては、政府といたしましても全く先生のおっしゃるとおりでございまして、これはODA大綱にもございますが、途上国側における軍事支出の動向、さらには武器の輸出入の動向につきましては十分な注意を払いながら、またその注意を払った結果、先方にそういう動きがかなり顕著に見られるようになった場合には、重大な懸念だということでいろいろと外交的な説得、折衝を行うことをやっております。その結果、極端な場合には、やむを得ずODAを削減するとか停止するとかいうようなこともあり得ると思います。  したがいまして、今後とも、非援助国、受け入れ国におきます軍事支出あるいは武器の輸出入の動向等につきましては十分に注意を払いながら、政策対話を進めていきたいというふうに考えております。
  109. 野上義二

    ○野上政府委員 アジア安全保障体制の点について御説明させていただきます。  御承知のように、アジアにおける安全保障上の問題点というのは、ヨーロッパと違いまして、いろいろ複雑多岐にわたっております。したがいまして、ヨーロッパで考えられているようなCSCEといったような形で一括して考えることは非常に難しいと思うわけでございます。  我々といたしましては、基本的には、まず米軍の地域における存在、それからそれを支える日米安保体制、そういったようなものを前提といたしまして、各国間での思惑の違いとか不信感とかいったものをできる限り除去していくために、安心感を深めるためにいろいろな対話を行っていくということを考えております。  これは二国間の政策対話、それからアジア全体と言わないまでも小さな地域、北東アジアなら北東アジアの対話、それから東南アジアの対話、そういったいろいろな対話を通じてお互いの信頼醸成といいますか、安心感の醸成をやっていくということ。  それから最後には、先ほどの経済協力にも関係してまいりますけれども、やはり各国それぞれの経済的な強靭性みたいなものを確保していくことで、経済協力というようなことを通じてやっていきたいと思っております。  御指摘のASEANのリージョナルフォーラムでございますが、第一回会合が七月二十五日にバンコクで行われます。これは第一回でございますから、何でもかんでもうまくできてしまうというわけではないと思いますけれども、こういったものがせっかくできましたので、これをずっと支援して、積み上げていくというようなことにしていきたいと思っております。
  110. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 質問を終わります。
  111. 菅直人

    菅委員長 小杉隆君。
  112. 小杉隆

    小杉委員 既に同僚議員の方から、北朝鮮の核問題また日米交渉あるいはODAの問題が取り上げられましたが、私は主としてODAを中心に、大臣並びに外務省の見解を伺いたいと思います。  今お話があったように、一昨年、平成四年六月三十日に政府開発援助大綱というのが発表になりました。これによりますと、四つ大きな項目がございまして、一つは環境と開発の両立、二番目に軍事的用途及び国際紛争助長への使用回避という項目、三番目に軍事支出、大量破壊兵器、ミサイルの開発、製造、武器輸出入の動向注意、そして四番目に、民主化あるいは市場経済導入の努力、あるいは基本的人権とか自由の保障、こういうようなことがODAを実施するに当たっての一つの基準ということになったわけであります。  この理念あるいは原則というものは羽田内閣でも継承されると思いますが、そのとおりか。そして、この原則に基づいてどのようにここ二年間努力をされてこられたか。まず、その辺から聞きたいと思います。
  113. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 小杉先生御指摘のODAに関する我が国の基本的な方針は、ODA四原則に基づき実施する、この点は羽田内閣においても継承し、さらにその内容を質的にも充実させていきたいというふうに考えております。  具体的にどのように努力をしてきたかにつきましては、政府委員から答弁をさせます。
  114. 平林博

    ○平林政府委員 お答え申し上げます。  先生がおっしゃいましたように、日本のODA大綱、世界的に見ても遜色ないものだと思っております。  環境と開発の両立につきましては、これを日本のODA施策の最大の柱に据えてやっておりますが、リオデジャネイロの世界環境開発会議日本政府がお約束いたしました、五年間で九千億円から一兆円をめどに環境に重点的にODAを使うという世界的なお約束につきましては、二年で五千億円ぐらいのお約束ができておりまして、順調に進んでおります。  また、日本のODA軍事用途に使われない、あるいは国際紛争を助長してはならないということにつきましては、私どもは受け入れ国に厳しく言っておりますが、これが実行されていないというケースは今のところ全く承知しておりませんので、遵守されていると思います。  三番目の軍事支出の増大あるいは大量破壊兵器の開発等につきましては、先ほど原田先生にお答えしたとおりでございます。  最後の民主化あるいは市場経済化への支援、さらには基本的人権の尊重等を考えるということにつきましても、十分にこれを念頭に置いております。その結果、非常にいい方向に動いております国々、例えばモンゴルだとか中央アジアの幾つかの国あるいは中米の幾つかの国、さらには、これからは南アフリカ共和国ということになりましょうか、こういうところにはODA大綱に基づいて積極的に援助をやっていく。  他方、このODA大綱にもとるような行動が行われる国につきましては、説得を試み、いろいろと努力をいたしますが、万やむを得ない場合には援助の削減ないし停止を行うこともやむを得ないと思っておりまして、例えばハイチとかナイジェリアとかザイール、一部でございますがミャンマーとかいうところに実際の例として適用されております。
  115. 小杉隆

    小杉委員 幾つかの成果が報告されましたけれども、今原田先生が指摘された中国の問題、これについては私も大変釈然としないものを感じております。中国に対するODAの供与額は近年、急上昇しておりまして、一体どこまでふえるのだろうかというふうに思うわけですが、最近の中国に対するODAの金額並びに順位、それをちょっとお話しいただきたいと思います。
  116. 平林博

    ○平林政府委員 お答え申し上げます。  中国に対しますODAの総額でございますが、有償資金協力、無償資金協力、技術協力等いろいろございますが、九二年度、千五百三十一億円ということで集計されております。その前の年、九一年度は千四百三十一億円、八九年度になりますと千六十九億円、八八年度には千七百五十六億円ということになっております。この八八年のピークほどではございませんが、九二年度、千五百三十一億円ということでございます。九三年度につきましては目下集計中でございますが、円ベースでございますが、九二年度より多少下回るのではないかと考えております。  ちなみに中国の順位でございますが、ここのところ、インドネシアに次ぎまして、日本の援助対象国としては第二の受け取り国ということになつ  ております。
  117. 小杉隆

    小杉委員 中国軍事支出がどのぐらいになっているのだろうかというのを私なりにいろいろ調べたのです。実際のところよくわかりませんが、一九九二年、これはミリタリー・バランスあるいはジェーン海軍年鑑等の資料だと思いますが、中国軍事支出は百五十億ドルということになっております。  最近、中国が南沙諸島の海軍力を増強して、周辺諸国に非常な脅威を与えているということもありますし、中国の国防費が対前年度対比で二〇%以上伸びたということが伝えられておりますが、中国のこういった軍事支出や国防費の伸びというものについてどうお考えでしょうか。
  118. 川島裕

    川島政府委員 お答えいたします。  一番新しいデータでございますと、九四年度の国防予算総額の対前年比で見ますと二二・四%増となっております。ただし、中国側はこの数字を気にしておりまして、この間インフレが一三%だったので、見かけよりははるかに少ないのであるということを我々とのやりとりで必ず言っております。  それから、ドル換算は非常に難しゅうございまして、人民元をしょっちゅう切り下げるものでございますから、ドルベースでとりますと、切り下げが進行した結果どんどん減っているという、若干おかしな現象にはなっております。六十億ドル弱でございます。
  119. 小杉隆

    小杉委員 それから、中国の武器の輸出を見てみますと、ちょっとこれは古い資料しかありませんが、一九八四年から八八年まで、第三世界向けの武器輸出を見ますと、ソ連が一位、これは今ロシアになりましたが、それから米国、フランス、それに次いで第四位に中国がランクされておりまして、一九八四年から八八年の五年間では七十七億三千万ドル、こういう数字が出ております。全世界向けにいたしましても第五位、こういう武器輸出大国であります。  しかも、中国の主な供与国は、これまた一九八四年から八八年ですが、エジプト、イラン、イラク、パキスタン、サウジアラビア。要するに中近東周辺に行われているわけですけれども、最近の中国の武器の輸出入の実態というのは把握されているでしょうか。
  120. 川島裕

    川島政府委員 お答え申し上げます。  ストックホルムにございます国際平和研究センターの年鑑というのがございまして、これが先生が今言われたより若干新しいデータを出しておりますが、姿としてはおおむね同じような感じで、例えば九二年の中国の兵器輸出は米、ロ、独に次いで世界第四位で、十五・四億ドルであったということ。それから、八八年から九二年までの累積で足すと七十六・六億ドルで、米、ロ、仏、独に次いで第五位ということのようでございます。  それから輸出先等々を見ますと、パキスタン、スリランカ、スーダン、イラン、バングラ、タイというようなところに対する通常兵器の戦車とか大砲、そういうものが中心でございます。
  121. 小杉隆

    小杉委員 いずれにしても、日本は武器輸出登録制度を主張したりしていますが、現在、冷戦後にいろいろなところで地域紛争が起こっています。こういう、特に安全保障常任理事国五大国から相当武器の輸出が行われて、それが結局、途上国、第三世界の紛争に使われている。いわば死の商人みたいな役割を果たしているわけですし、そういう武器に対抗して、国連もまた新しいそれにまさる武器を購入しなければいけない。中国のことわざにある盾と矛の矛盾という形が今展開されているわけですね。  そこで私は、中国に早く発展をしてもらいたい、隣国としてそう思いますけれども、今述べてきたようなこういう状況考えますと、今の中国への経済援助のあり方というものが果たしてこれでいいのだろうかと思うわけであります。  特に、最近における中国の経済成長は著しいものがありまして、恐らく一三%とか一四%という二けた成長、世界一の経済成長率を誇っているわけであります。恐らく二十一世紀には世界に冠たる経済大国になるだろうという予測も行われているわけですが、こういう中国に対する経済援助というのは、今民間が物すごい勢いで、各国とも中国に投資を集中させている状態を考えますと、むしろODAよりもそういう民間ベース、企業ベースの投資というものがどんどんふえていくことが望ましいわけで、私はこの際、このODAについては見直す必要があるのじゃないかということを尋ねたいわけであります。  そこで、現在の中国に対する投資ブームあるいは経済成長、あるいは最後に申しました中国へのODAの見直し、これらの点についてひとつ大臣の見解を伺いたいと思います。
  122. 川島裕

    川島政府委員 先に事実関係と申しますか、投資のところだけ申し上げたいと思います。  まさに御指摘のとおりでございまして、特に九〇年代に入ってから爆発的と言っていいのか、例えば一九九三年、昨年の外国からの投資、契約金額で一千億ドルを超えております。外国からの対中投資の累計が二千億ドルちょっとでございますから、いかに急速にふえているかということがおわかりかと思います。それで、それは香港、マカオあるいは台湾等からでございます。  我が国はここ一、二年急速にふえておりますけれども、契約ベースで見ますると約二・七%程度の比重でございます。ただ、ミクロのレベルで申しましても、いろいろな企業と話しておりますと、その熱意というものは衰えておりません。
  123. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 中国の経済発展の中で民間投資が占める役割が非常に大きくなってきているということは、小杉先生御指摘のとおりでございます。先般訪日しました朱鎔基副首相と私もお会いしましたけれども、そのときにも、日本の企業の積極的な投資を歓迎するという言葉がございました。  ただ、それがODAを不要とするかどうかという点につきましては、必ずしもそうではない、相互補完的な部分があるのじゃないかと思います。  一つは、経済発展が急速であるがために、これは小杉先生も御専門でございますが、環境の破壊、そして空気や水の汚染の深刻化というものが問題になっている地域がたくさんございます。その意味では、環境に対するODAをふやすことによってそうした環境破壊を改善する。  しかも、中国の空気汚染等は我が国の森林破壊にもつながりかねないという形で、我が国にも直接影響してまいりますので、そういう点はやはり努力はしていかなければならないのではないかと思いますし、民間投資がふえればふえるほど、いわゆる公共投資、インフラストラクチャーの整備不良という問題が出てまいります。そういう点では、交通網の整備を初めとする上下水道の整備とか、そうしたニーズも大きくなってきておるわけでございます。  その点を勘案しながら、しかし余り長期的なコミットメントもいかがかということで、従来の五年計画を三年に短縮するということで対応しながら、今後のODA政策を弾力的に運用していきたいと考えております。
  124. 小杉隆

    小杉委員 民間投資が非常に活発ですから、そういうこととの関連で、できるだけODAは、今話が出ましたような脱硫・脱硝装置であるとか、あるいは代替エネルギーであるとか、食糧の増産とか森林保全とか、衛生医療とか情報通信インフラとか、こういうところにもつと集中をして、民間ベースでやれるところはなるべく減らしていく、こういう姿勢でないと、中国の占める比重が非常に大きいものですから、私はこの辺は特に検討していただきたいと思います。  次に、このODAがどのように効果を上げているかということは、私は非常に大事だと思うのです。国民生活がこんなに厳しいときに対外的なODAが一兆円を超える。ことしは事業費規模では一兆七千億、そういうオーダーになっているわけですけれども、そのODAをやった結果の評価についてはいろいろやっていると思うのですが、この評価について、外務省はどのようにやっているか、概略説明してください。
  125. 平林博

    ○平林政府委員 先生今御指摘のとおり、経済協力につきましては評価が極めて大事だと思っております。もちろん事前の調査も大事でございまして、我々は援助の川上と川下などと言っておりますが、あるいは援助の出口と入り口というのでしょうか、大事だと考えております。  そこで、評価につきましては、援助が実施された後、ある程度の時間がたった後でいろいろと、調査団を派遣いたしまして評価活動を行っております。これは主として外務省が行っておりますが、そのほか、実施している官庁がそれぞれ独自でやっておるものもございますし、また国際協力事業団及び海外経済協力基金、二つの実施機関が行うものもございます。  ちなみに、外務省につきましては年間百五十件程度の評価を毎年実施しておりまして、これとほかの評価を合わせまして毎年一度、国会を含めまして各方面に公表させていただいております。  また、その評価の結果に従いまして、必要な手当てを事後的にとるとかあるいは次の援助のために教訓を生かすとか、そういうことをやっております。  また、これに加えまして、例年、会計検査院が会計検査を行っております。我々の省庁あるいは実施機関に対する会計検査が行われておりますが、その一環といたしまして、海外に会計検査院の係官に行っていただきまして援助案件の視察も行われておりまして、これも例年七十件ないし八十件が行われております。  今後とも、この評価あるいは事後のチェックという点につきましては万全を期しまして、国民の皆さんの期待にこたえるように援助を改善してまいりたいというふうに考えております。
  126. 小杉隆

    小杉委員 会計検査院の海外現地調査の概要について伺いたいと思います。
  127. 檜垣敏夫

    ○檜垣会計検査院説明員 お答えいたします。  政府開発援助につきましては、国民の関心も高く、援助額も年々増大してきております。そういうことから、私どもといたしましてもその必要性を十分認識し、検査体制の整備に努めてきております。  若干詳しくなりますが、私どもでは昭和六十二年十二月に外務検査課を設置いたしまして、ODAの実施機関である外務省、国際協力事業団及び海外経済協力基金の三機関を一元的に検査することといたしました。  そして、お尋ねの、実際の検査はどうなっているかという御質問でございますが、現在私ども外務省などの援助実施機関におきまして検査を行いますほか、その検査の一環といたしまして海外に赴きまして、我が国援助実施機関の職員等の立ち会いのもとに、相手国の了解が得られた範囲内におきまして、年間五カ国程度におきまして、プロジェクト数にして約七十件程度現地調査を行っております。  以上でございます。
  128. 小杉隆

    小杉委員 昨年の十二月十五日の新聞によりますと、この会計検査院の報告によって、例えば十四億円の漁港に砂が入ってしまったので、改修に二十一億円かかったとか、発電所に九十九億円かけたけれども、それは需要に比べて非常に過大であって、二三%しか使われていない、こういうようなむだが報告されております。  確かに、外務省もみずからそういう評価をしているということには私も敬意を表しますけれども、諸外国の仕組みを見ますと、例えばスウェーデンなどはオンブズマン制度ということで、必ずしも外務省じゃない別の組織がやっているというようなことで、外務省がみずからの評価をしたのでは今まで余り問題点というのが出てこないのです。やはり第三者のそういった評価というものが必要じゃないかと思うのですが、このオンブズマン制度とか今後の評価のあり方について、ひとつ見解を伺いたいと思います。
  129. 平林博

    ○平林政府委員 貴重な御意見だと存じます。  ちなみに、調べましたが、スウェーデンのオンブズマン制度と先生が今御指摘なさったのですが、いわゆるオンブズマン制度というものがあるかどうかちょっと今はっきりしたところがわかりません。ないのではないかという感じもしておりますが、しかしこれとは別にいたしまして、政府の委託を受けた調査委員会が、援助の効率化につきまして政府に意見を出しているということはございます。  それから各国とも、この評価につきましては援助の実施機関がみずからやるのが適当だということで、それぞれ外務省あるいは援助庁等の中に評価部局がございまして、この点は日本と同じでございます。  なお、確かに、援助実施機関がみずから評価をする場合には多少公正さに欠けるのじゃないか、甘くなるのじゃないかという懸念も十分に我々も自覚しておりますので、今御指摘のとおり第三者評価、日本で申し上げますといろいろな有識者、プレスの方々、学者の方々、開発の専門家等にお願いしまして、独自の御判断で評価も行っております。  また、世界銀行とかよその国の援助機関と、評価の相互乗り入れというのですか、お互いやった援助をお互いに批評し合うというような合同評価とか、いろいろな手法を取り入れてやっております。  もちろん被援助国自身による評価ということも行われておりまして、年一回外務省の方から御提出させていだだいております評価の報告書には、そういういろいろな手段を通じて行われました評価が公表されております。  今後とも、評価の公正を期していろいろと努力してまいりたいというふうに考えております。
  130. 小杉隆

    小杉委員 海外現地調査をやっている会計検査院は、先ほどの援助四方針に照らして、それの評価というようなことは事実上できないのでしょうか、会計検査院。
  131. 檜垣敏夫

    ○檜垣会計検査院説明員 私ども会計検査院といたしましても、我が国のODAがODA大綱の諸原則にのっとって実施されているということは重要だと考えております。しかしながら、これらの原則の中には、例えば援助国の選定でございますとか国別の援助額といったものがODA大綱にのっとっているか、そういう点はなかなか会計検査にはなじみにくいのではないかと考えております。  しかしながら、今後のODA検査に当たりましては、先生の御指摘も踏まえまして、例えば援助が十分な環境配慮のもとで実施されているかどうか、そのような点につきましては十分調査してまいりたいと考えております。
  132. 小杉隆

    小杉委員 少し具体的な話にしていきたいと思うのですが、まず、今までのODAについては、外務省が海外土木建設省になっていたのじゃないか、こういうような批判もあります。どうも巨大プロジェクトにばかり集中している、そういう批判がありますけれども大臣はどういうふうに受けとめますか。
  133. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 小杉先生や私どもも仲よくつき合っております大前研一さんがそういう趣旨のことをおっしゃっておられますけれども、確かに戦後のODAの中で箱物といいますか、そういうものが重点になってきたということも事実であろうかと思います。  ただ、それはそれで、東南アジアのインフラストラクチャーといいますか、基盤整備のために大変役に立っておりまして、ある意味では、それがアジアの経済発展の原動力にもなってきたという点では評価されてしかるべきであろうかと思います。  しかし、これからは、さらにきめの細かい援助が必要な段階に入ってきていると私自身も認識をいたしておりまして、そうした意味では、環境、医療保健、教育、さらに人材養成、そしてソフトウエアの提供というようなことで幅広い援助をしていく。  加えて申しますれば、さらにきめの細かい援助としては、NGOとの協力ということを念頭に置きながら、きめの細かい援助を展開していくべきだというふうに考えております。
  134. 小杉隆

    小杉委員 そういう方向をぜひ目指してほしいのですが、現実の予算の配分を見ますと、全く従来の巨大プロジェクトに相当のウエートがかかってしまって、新しいそういう分野の金額が非常に少ないということを残念に思います。  私は、今後の新しい一つの、東南アジアその他に対する援助として三つの点を申し上げたいと思うのですね。  一つはバイオテクノロジー、これは特に農業におけるバイオテクノロジーというのが非常に大事だと思います。開発途上国におきましては、急激な人口増加あるいは食糧難、砂漠化とか森林の減少によりまして農産物がますます減ってくる。これからの急激な人口増加に対応できない。こういうところがほとんどでありますので、これはひとつ地球規模で考えても、こういうところにバイオテクノロジーで、農産物に対する技術援助がもっともっと必要じゃないかと思っております。  それから第二は、再生エネルギーということです。これから途上国はどんどん経済発展をし、生活水準も高まり、人口もふえていく。そういう中で、エネルギーに対する需要が非常にふえてまいります。   二年前のリオデジャネイロで開かれた地球サミットにおきまして、地球温暖化防止条約というのが結ばれて、CO2を二〇〇〇年までに一九九〇年レベルに抑えるということで、日本も行動計画を発表しているわけですけれども、こういうことを考えますときに、地球環境という観点からもあるいはエネルギーという観点からも、私は新しい一つの再生エネルギーが必要だというふうに思います。  エネルギーについては、現在石油、石炭、天然ガスがありますけれども、いずれも将来枯渇をする危険性があります。つまり、石油につきましてはあと七十年しかない、あるいは天然ガスは百数十年、石炭が一番長くても三百年、こう言われております。  そこで、こういったエネルギーの見通しあるいは環境問題、その両面から考えて、私は一つの新しいエネルギーとして、ソーラーシステムあるいは風力発電あるいは地熱発電、こういった新しいネルギー源が必要だと思います。こういう問題については、かねてから通産省工業技術院、資源エネルギー庁等が努力をしてこられておりますが、特に今、このソーラーについては技術的な発展が非常に著しいと聞いております。  工業技術院なり資源エネルギー庁に、ソーラーの技術の現状と将来展望、あるいはソーラー発電の普及の現状と将来展望、これについて簡単にお話をいただきたいと思います。
  135. 深山英房

    ○深山説明員 太陽エネルギーは典型的なクリーンエネルギーでございまして、地球環境上も、またエネルギーセキュリティー上も極めて重要な手段ということで、私ども、ニューサンシャイン計画の中でも重点的に研究開発を行ってきております。  おかげさまで、現状で申しますと、技術的にはほぼ実用化のレベルに達したということが言えるかと思います。コストの面で、過去二十年間の研究開発によりまして、ほぼ三十分の一ぐらいに下げることができました。しかしながら、既存の電源に比べますと、まだ数倍から十数倍といった現状にございます。私ども、今後一層の研究開発努力を傾注いたしまして、コストの低減に努めたいと思っております。
  136. 小杉隆

    小杉委員 技術的にはかなりのところまで来たということですが、問題はコストだ、こういうことであります。  今ここに私が持ってきたのは、一番簡単なソーラーの見本ですけれども、これはソーラーランタンといって、一日じゅうこれをひなたに置いておくと一晩電気がつく。これをこの間、私のうちにホームステイしていたスリランカの人に持たせましたら、非常に喜ばれたのですね。  ソーラーシステムというのは、これは全く無限のエネルギー源である太陽を利用する。太陽光線というのは一時間で、全人類が現在使っているエネルギーをすべて賄える。こういう無尽蔵のエネルギーであるということ。それから、石油、石炭、天然ガスといういわゆる化石燃料も使いませんし、プルトニウムで大騒ぎになった原子力も使わない。そういう意味では非常にクリーンなエネルギーであります。しかも、開発途上国は非常に太陽に恵まれているわけでありまして、こういうものは一番途上国向けに合っていると私は思っているわけです。  このソーラーシステムによって、例えば途上国で、診療所で薬を全く保存できない。ワクチンを保存することができない。それをソーラーの冷蔵庫によってワクチンを保存することができる。あるいは家庭で一番の重労働である水くみ。井戸から水をくんでくる。これが女性とか子供たちの大変な負担になっているわけですが、そういう重労働からもこのソーラーによって解放されるし、また、海岸沿いの人は海水を淡水化することができる。あるいは農業地帯では農村のかんがいができる。  そういうことで、途上国における貧困とか人口とか、あるいは教育とかエネルギー、環境、そういうすべてのものに適合したこのソーラーシステムを私はもっともっと途上国に広める必要があると思うのであります。  今までこういう技術については非常に努力をしてまいりましたのに、コストが高いために普及をしない。そこで、今度政府は約七百世帯について半額補助ということを出しましたけれども、例えばインドネシアのように一万七千も島があるところに一つ一つ水力発電所とか火力発電所をつくることはできないわけでありますから、こういう小型分散型のエネルギーをもっとやったらいいのじゃないか。  一つの橋をつくるのに何百億円もかけるよりも、それだけのお金があったらこのソーラーシステムはかなり普及させられると思いますし、そして、海外だけじゃなくて国内でもこれを普及させてコストを大幅に下げることができれば、これは先進国にとっても途上国にとっても大変有効な手段だと私は思っております。  そういうことで、ぜひこういうソーラーシステムを外務省としても大いに検討し、促進してもらいたいと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  137. 平林博

    ○平林政府委員 今小杉先生のおっしゃることに全面的に同感でございます。  環境的な観点からも、今おっしゃいましたようないろいろな観点からも、ソーラーエネルギーを初めといたします新しい技術を開発途上国に伝えて、効率のよい援助をするということは大事だと考えておりまして、本格的かどうかというとまだまだこれからだと思いますが、パキスタン、タイ、ブータン、ネパール、カーボベルデ、マダガスカル、セネガル、そういうところに既に太陽エネルギーを利用したいろいろな経済協力を行ってきております。  費用、技術等の面でまだ改善する余地があるそうでございますが、今後とも、環境配慮の観点から、このような援助はぜひ強化してまいりたいと考えております。  同じことはバイオテクノロジーについても言えるということで、これも同感でございまして、既に植物遺伝資源を利用したいろいろな品種改良等の面で、スリランカ、パキスタン、マレーシア、チリ等に経済協力を行ってきておりますが、今後ともこの面での強化を講じてまいりたいと考えております。
  138. 小杉隆

    小杉委員 既に本会議の予鈴が鳴りましたからこれでやめますが、私が先ほど申し上げたように、開発途上国に対するODAのあり方、従来のようないわゆる建設とか土木中心ではなくて、こういう新しい分野、バイオテクノロジーあるいは再生エネルギーあるいは情報通信──情報通信につきましては、アメリカのゴア副大統領がGII、グローバル・インフォメーション・インフラストラクチャーというのを提唱しております。  きょうは郵政省にも来ていただいたのですが、時間がなくなったので申し上げませんが、先日、電気通信審議会から、二〇一〇年を目標とした光ファイバーを中心とする情報ネットワークという構想が発表されました。これはアジア地域のAIIというのですか、アジア・インフォメーション・インフラストラクチャー。  そういう展望に立って、外務省としても、郵政省あるいは農水省、通産省と連携をとって新しい一つの経済援助のあり方を開拓していただきたい、このことを申し上げて質問を終わります。  ありがとうございました。
  139. 菅直人

    菅委員長 午後二時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ────◇─────     午後二時三十五分開議
  140. 菅直人

    菅委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松前仰君。
  141. 松前仰

    ○松前委員 ちょっと時間はおくれておりますが、外務大臣、今、外務大臣にとりましても、また日本の国にとりましても北朝鮮問題で大変、一番重要なときだと私は思うのです。外務大臣発言それから決断で日本の国の行く先というものが決まってくるのではないか。  今ニューヨークはちょうど夜中でありますけれども、もうすぐ明けて、恐らく新しい動きが出てくるに違いない。夜が明ければ恐らく相当な緊張が出てくるのじゃないか。   ですから、今外務大臣に私が要求したいのは、この重要な時期にはっきりした考え方を持って進んでいっていただきたい。大臣が身を張って、体を張って外国に訴えていけるか、行動ができるかどうか、そういうような時期だと私は思うわけでございます。  今そういうような観点から、私はこれまでの質疑を聞いておりますと、どうもはっきりしないところがたくさんありますので、ちょっと通告と順番を変えたりしまして大臣のお考えをお聞きしたいと思っております。  さっきちょっとテレビを見ておりましたら、IAEAが核査察が不能であるということを文書で流した、それで大騒ぎをしているというような映像が出ていました。核査察不能。  そして、先ほど外務大臣の御答弁がありましたけれどもアメリカ韓国日本で会談を行うということがほぼ決まっておるようですが、それとは別に日ロというようなことも考えていきたい、それよりもそれを実行に移したい、そういうことでおられるようでございます。  私はここでお聞きしたいのは、一体この問題をどのような方向に持っていこうとされているのか。すなわち、はっきり申し上げますと、経済制裁に持ち込みたくないというような方向お話をされているのか、それとも経済制裁というものをやって、そして北朝鮮の核問題の解決を図ろう、そう考えておられるのか。いずれなのか、御答弁をお願いします。
  142. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 松前先生御指摘のとおり、我が国にとって大変重要な時期を迎えておりますので、私もその責任の重さを痛感しながら、内閣の一員として努力をしてまいりたいと思っております。  また、IAEA書簡が発出されたという御指摘がございました。五メガワット原子炉の燃料棒に関しての従前の軍事転用の有無については、これはもう確認ができなくなった、この事態IAEAとしては大変深刻に受けとめて、国連の事務総長あての書簡が発出されたわけでございます。  したがって、議論の場は国連安全保障理事会に移っていくわけでございますが、その前段階として、アメリカ日本韓国と打ち合わせをしたいということで、これの打ち合わせが行われることになっているというのが現状でございます。  そういう状態でございますから、当然のことでございますが、私たちとしては、北朝鮮核開発疑惑を晴らし、そして国際社会の懸念を払拭する、この点が一番大事なことだと思っております。なぜならば、この点は北東アジアの安全保障に大きくかかわるだけでなく、国際社会全体が核不拡散体制の維持という面からも大きな関心を示しているからでございます。  それに対して、今経済制裁かどうかというお話がありましたが、これは北朝鮮核開発疑惑を晴らせるようにIAEAとの話し合いを進めるための手段の一つというふうに位置づけなければならない問題であろうかと思っておりまして、どちらをとるべきかという選択の問題ではないと思っております。
  143. 松前仰

    ○松前委員 核開発疑惑、北東アジアの安定、そういうことで、そのためには核査察をきちっとやらなければいけないということはわかるわけでありますけれども、しかしそこだけしかもう方法がないということになると、今私が申しましたように、その先は紛争状態が起こらないようにすること、特に韓国の国民の皆さんが大変な目に遭うかもしれないし、北朝鮮も同じです。同時に、日本の国民もかなりの悲劇を味わうかもしれない、こういうところの問題になってくるわけですよ。  ですから、核査察不能というならば、この時点で経済制裁というところにぱっと行かないで、さらに核疑惑を解く方法がほかにあるかどうか、そういうことも考えるということが一つあろうと思うのです。それをやらないというならばもう道はなくなってきてしまう。後の方の、道がないような方向をどうも何か一生懸命選択しているという感じしか見えない。  それで、どっちなんだという話を聞かせてもらいたいと私は先ほど言ったわけですが、米韓日の話の中では一体何を相談しようとしておられるのですか。それから、日ロについてどういう考えでお臨みになるか。
  144. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 今松前先生から御指摘の点も含めて、日米韓話し合いをすることになろうかと思います。我々としては、制裁というものに一直線に走ることなく、北朝鮮を正常なIAEAとの関係に引き戻すための何らかの方法はないだろうかということもぜひとも検討してみたいし、またアメリカ韓国とも話し合ってみたいと思っております。  また、日ロという御指摘がございましたが、けさの私の答弁では日中ということを申し上げました。けさも申し上げましたように、やはわ中国北朝鮮と国境を接する非常に重要な国でございますし、国連のP5の一員でもございます。そうした意味では、中国のこの問題への関与、そして引き続きの責任の分担というのが私たちにとっては大事なことだと思っておりますので、その点についてもぜひとも対話を続けていきたいと思っております。
  145. 松前仰

    ○松前委員 日中ですね。  それで、一つどうしてもわからないのは、これはもう専門家の皆さんはわかっているのだと思うのですけれども、核査察不能ということなんです。  北朝鮮の言っていることは、八千本のうちの半分くらいを抜き取った。五%くらいあれば査察は可能だが、四十本まとめてどこかへとってあるというわけですね。それで査察は可能と言っている。ところが、IAEAはそれはだめだということを言っているのですけれども日本の原子力関係者はどういうふうに言っているのですか。
  146. 野上義二

    ○野上政府委員 けさほどの答弁でも政府委員の方から御説明申し上げましたように、IAEA査察を希望して、この燃料棒とこの燃料棒を見ればある程度過去のことがわかると考えられていた燃料棒を全部抜き取ってしまって、その位置をきちっと明示できるような形で収納すればまたわかるかもしれなかったものを、位置もわからないような形で、どこの燃料棒をどういうふうに抜いたのだということがわからないような形で一括して北側が貯蔵しているということから、IAEAとしては、燃料棒を見ることによってこの五メガワットの原子炉で過去どのようなプルトニウムの抽出が行われたのかということがもはや検認できなくなったという説明をしていると理解しております。
  147. 松前仰

    ○松前委員 その説明も、説明を聞いているだけでありますからね。本当に日本の原子力関係者がどれだけそのことについてしっかりと検証したのかどうか、私はどうも疑問に感じてはおりますけれども、そういうことなのかもしれません。  しかし今、外務大臣、非常に重要な場所に、途中に来ているということですが、この時点で査察不能になっても、これはまだまだ、経済制裁というところに踏み込まなくちゃいけない、必ずそういかなければいかぬというところではないと私は思う。まだいろいろと交渉があり、そしてやりようがある。  先ほど日中のお話もございました。そういうようなところを使って、そして外務大臣の体を張った努力というものを期待しなければいけない、またそうしてほしいと私は思うわけであります。ですから、本当はこんなところで委員会をやっているのもおかしいぐらいなのですけれども、きょうは委員会の日取りで、たまたまそういうようなことになってしまったということもあります。  そこで、韓国金泳三大統領ロシアに行って、いろいろとエリツィン大統領と話をされている。一生懸命外交努力をされている。近い国でありますから、非常に危機を感じているに違いない。韓国自体だって経済制裁を望んでいないと私は思います。韓国の大統領が向こうへ行かれて努力をされた結果、ロシアに対して、武器の部品の援助がある、これをやめてもらうということくらいまで申し入れているということであります。  こういうような努力について、御自身のこれからの行動も含めて、柿澤大臣の御所見を伺いたいと思います。
  148. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私自身も外交責任者としてそうした行動をとりたいと思っておりますが、今週も一週間ほとんど予算委員会で拘束をされておりまして、動くことができない状態でございますし、来週もまたそういう状態でございまして、その点は大変残念に思っておりますけれども、これは国会のお決めになることでございますので、その点は従わなければならない。  しかし、外務省としては、全力を挙げてそうした状況対応すべく、北京の大使館、また国連の代表部、またワシントンの大使館、モスクワの大使館等でそれぞれ接触をして、いろいろと対応もいたしております。  そうした中で、三月三十一日に、制裁措置もという一部の国連常任理事国の声も抑えて、議長声明という形になったわけでございます。この点では、中国もそういう方向を志向しましたし、我が国もそういう方向を志向いたしたわけでございまして、我が国としては、今松前先生おっしゃったように、できるだけ話し合いによってこの問題を解決しようという方向で今までも努力してきておりますし、今後ともそうした方向努力していきたい、こう思っております。  ただ、一つだけつけ加えなければなりませんのは、北朝鮮もなかなかしたたかな外交交渉をいたしておりまして、そうした形で話し合い路線を打ち出せば、これはもう一つ前まで自分の方の我が通せるのではないかということで押してまいりま  す。  ですから一週間ごとに、今度はうまくいくかなと期待を持つと途中でその路線がうまくいかない、そしてまた悲観的な時期が来る。そして、国際社会がある意味では強い姿勢をとりますと、また北朝鮮側は一歩退いてIAEA査察団を受け入れる。そして、これがうまくいけばと思っておりますと、その査察の途中でどうも予定どおりの査察が実行できないという事態になって、もう一回。  その再三の繰り返しの中で、御承知のとおり、アメリカの議会や世論がかなりいら立っている。クリントン政権は北朝鮮に翻弄されているのではないかという議論すら出てきているという状況国際社会としては見逃すわけにまいらないわけでございまして、我が国としては、その間に立って、大変ジレンマもありながら、しかし、できるだけ話し合い路線を維持したいということで懸命の努力をしていることは御了解いただきたいと思っております。
  149. 松前仰

    ○松前委員 北朝鮮がしたたかであるというお話は私もいろいろな資料を見てわかるし、そう言ってはいけないかもしれないけれども、大変な政治的手腕を持っている、駆け引きでやってきていることは間違いないのであります。  しかし、これは北朝鮮というものをどういうふうに私たちが見るかというところに非常に大きな課題があるのじゃないか。あそこはとんでもない国だ、核をつくっている、持っている、だからあそこはっぷしてしまえぐらいの考えを持っている人も随分いると思うのであります。  しかし、同じ人間であるという立場に立てば、これは北朝鮮といえども一つの国として私たちは認めることも必要であろう。今まで孤立化の方向で進んできたということ自体にも問題はあるに違いない。そこまでさかのぼるとちょっと今の議題とは違ってしまいますけれども、そういうところに原因がある。  そこで、向こうも何とかして自由世界との間で自分たちの主張を通したい、そして、朝鮮統一の中の主導権、あそこだけが合法的な国であると言っているわけであります。そのために、周りが今包囲網で覆われておりますけれども、何としてもアメリカ話し合いの場を、窓口を持ちたい、これが向こうの考えていることじゃないだろうか。そういうようなサインすら見える。それは緊張を話し合いの路線に持っていくというサインとも見えるわけであります。  そういうことを考えると、向こうが本当に軍備を使って、核兵器を使って世界をやっつけるんだ、そんなことを思っているとは私は思いませんが、そういう危機がいかにもあるようにたくさんの情報が流れてきている。  外務省と防衛庁にちょっとお聞きしますが、その北朝鮮に関します危機を示す情報というものをどのくらい集めておられるか、ここら辺のところを簡単に伺いたいと思います。
  150. 澁谷治彦

    ○澁谷説明員 北朝鮮の問題がこういう状況に至っておりますので、我々は常日ごろから北朝鮮に関する情報は集めております。例えば、先般行われました対艦巡航ミサイルの発射実験、あるいは間もなく行われると言われております中距離弾道弾の発射実験の準備が進められているといった点についても情報は持っておりますけれども、これらの諸点につきましては、それ以上の詳細な点についてはこの場では申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  151. 高島有終

    ○高島(有)政府委員 防衛庁といたしましても、北朝鮮軍事的な情勢につきましては関心を持って情報収集に努めているところでございます。  一般的な軍事情勢につきましてはかなり高い緊張状態にあることはもう御承知のとおりでございますし、そのような緊張状態のもとで、一つには北朝鮮軍事的な体制、特に百万に上る地上軍の三分の二あたりをかなり軍事境界線に近いところに配備をし、かつ、過去一貫してその火力を中心とした戦力の強化、近代化に努めてきているといったような状況を注目して見てきているところでございます。特に最近では、軍事境界線からかなり長距離に達する砲の配備、あるいは多連装ロケットの配備といった点が非常に注目されているところでございます。しかしまた、先ほど外務省政府委員の方から説明がございましたような新しい状況もございます。  ただ、軍事的な情勢という点で見ますと、このような状況はかなり長年にわたって築き上げられてきたものでございまして、最近特に核疑惑との関連で注目を集めておりますこの時期に、軍事的な意味合いにおいて特別、特異な情勢があるのかという点でございますと、そのような危機的な兆候というのは見られていないということは申し上げられると思います。
  152. 松前仰

    ○松前委員 予算委員会を聞いていましたら、中山議員の質問外務省の皆さん、新聞情報についてすらよく把握していないような答弁がございまして、外務省自体、一体何をやっているのだろうかというぐらいの感じもしたのでありますけれども、今のお話の中で、重要な情報は出せないみたいですが、たくさん持っておられるというような話でもあろうと思います。  しかし、私が思うに、そういう情報はもっともっとあってほしかったわけでありまして、非常に足りないのは、例えば各国の首脳、責任者考え方というものの情報ですね。本当にどう考えているのだろうかということの情報がほとんどない。要するに、外交努力が何もなされていないということを私は指摘をしたい。  ですから、外側の情報ばかりで、外見上のものばかりですべて事を運ぼうとするものだから、最初のうちに有事立法なんというような話まで飛び出してくるということであって、柿澤大臣は最近は非常に平和主義になっていただいて、私は大変安心をしておるわけでございますけれども、やはり今必要なのは、相手の関連の国と接触を持っていただいて、そして我々の主張を、非常に大変なことなんだときちっと説明する。  そして、日本の国民のために、また朝鮮半島の人々のために何としても、経済制裁に踏み込んでいってずるずると奥まで行かないようにするということ、これを訴えて、そして何らかの提案をしていくということが必要ではないか。その辺が大人の国である、私はそういうふうに思う。大人の国になるにはそういうことをやらなければいかぬ。  そういうことをやって、そして解決できた暁には常任理事国という話だってすんなり受け入れてもらえるかもしれない。もらえるとは言いませんけれども、私はそういうふうに思うのです。その辺いかがでしょうか。  私がいかがでしょうかと言っても答え、なかなか難しいでしょうけれども、何としても今やっていただきたいのは、一番の重要な時点ですから外務省としての努力、最後ではありませんが、経済制裁に持っていかないという努力がまだできるから、それを全力を挙げてやっていただきたい。その決意を聞きたいと思います。
  153. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 最後まで、話し合い路線によって解決できるよう、我が国も一生懸命努力をしていくつもりでございます。  また、過去について何もやってこなかったという御批判、御指摘をいただきましたけれども、御承知のとおり日朝国交正常化交渉をずっとやっておりました。一昨年の十一月に中断をしてしまいまして、その後正式な接触はできなくなっておりますが、いろいろな機会に私どもも先方と接触する努力はしてきたところでございます。  ただ、この核疑惑問題が発生してまいりましてからは、松前先生も御指摘のとおり、北朝鮮側は、アメリカとの国交正常化というのを最優先の課題というようにとらえておりまして、我が国からの接触に対しては積極的にこたえてきてくれていないという点もあることをぜひ御理解をいただきたい。にもかかわらず私どもは、羽田総理が予算委員会でも何度も答弁しておりますように、常に門戸を開いて話し合うつもりでございます。
  154. 松前仰

    ○松前委員 北朝鮮は直接ということは大変難しいと思いますが、それでもやりたいということで、自民党の谷さんですか、それから山崎さん、行かれる。必死の気持ちだろうと思うのですね。それから、私どもの社会党の団が行くというようなことで、何としても直接話し合ってみたい、そういう気持ちがひしひしと伝わってくると思うのですね。そういうこともしっかり受けとめておやりになっていただきたい。  そして、北朝鮮アメリカとの交渉、そこにすべてをゆだねているということならば、日本アメリカは今非常に近いということでありますから、我々はアメリカに対しても我々の立場をもっと主張といいますか、主張という言葉はちょっと強いかもしれないけれども、訴えるということ、そして理解してもらうということ、それをやっていただきたい。  どうも、危険なサインといいますか、その方向言葉が出てくるのはアメリカ日本関係者なのでありまして、いろいろな委員会で答弁をなさっておられる大臣の皆さんの答弁を見ますと、どうも何か制裁方向に向けた答弁が非常に多い。それから、アメリカもそうでございます。ところが日米以外のところ  しかし、アメリカの有力者が、制裁を回避したいというような言葉も言っておりますように、いろいろな中で、やはり話し合いというものをにおわす、そして、その方向に行きたいというメッセージすらたくさん見受けられるということがあるわけです。  これはもうずっと、最初の、ソウルを火の海にすると言ったところ、ソウルを火の海にするということをそのままずばり受けて、そしてこれは大変なことになった、北はこういう考えか、そう言っておりますけれども、実はその前に韓国側からクリントン大統領の話を出して、今回の特使交換の機会を逃したらもうチャンスはない、アメリカがこのまま放置しないだろう、クリントン大統領はソウルを訪問したときに断固たる処置をとると約束していると言ったことに対する反論。反論というのはそれよりももっと高いレベルでの、高いというか強い反論になるのが普通であります。そこでその話が出たということで、その前の話を全部カットして、ソウルを火の海にというところだけ取り上げている。  それを言ったということは、私は、北朝鮮はまだ話し合いたいというサインを示していたに違いない、そんなようにも思うのです。それからずっといろいろな経過を見ると、話し合いに持ち込みたいというサインをいっぱい出してきている。それをきちっと受けとめて対応していってほしいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、北朝鮮というのは大変な国だというお話もございましたから、その辺も踏まえながら、何としてもここは、国民やら朝鮮半島人たちが大変な目に遭わないような方向に向けて、事を処理していただくということをお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  そこで、安全保障についてちょっとお話しさせていただきたいと思うのですけれども、今朝鮮半島のこの問題を取り上げていると、これはもうまさに非常な大きな勉強になろうと思うのです。朝鮮半島の緊張にかかわっての反省も含めて考えますと、今この時点でやっていることはまさに安全保障そのものであろうと私は思うのです。  その前に、安全保障というのはもっと広い意味がある。それは日常の安全保障だ。こういう緊張をもたらさないような安全保障があるわけで、北朝鮮との国交の問題、こういうことだって大きな安全保障、そして経済のあり方もそうです。  日本の経済、これはアメリカとの関係で貿易摩擦が起こっている。たまたまアメリカだからいいけれども、そのほかの国でもっともっと過激な国だったら、これはもっとひどい緊張状態ができるかもしれない。日米の経済問題、それ以外に日本の経済のあり方というものについてもやはり安全保障というものを考えてこれからやらなきゃいけないだろう。  昔はエコノミックアニマルと言われて、いろいろ言われました。だけれども、そのままずっと続けてきて、そして今日の日本がまだ存在している。さらにこれから先、外国から資源を輸入して、そして先進国を市場として、日本の経済を、日本を豊かにしていこうという姿は、もう既に経済のトップに躍り出た日本がこれからとっていける道ではないのである。そういうところも含めた安全保障ということも考えられると思うのです。  そして、緊張が起こったときには、緊張緩和の実力というものがあれば、交渉力があれば、今の外務省が交渉力があるかどうかわかりませんが、交渉力があるならば、その交渉力というものも安全保障になる。実力がないときには、緊張を深めない努力しかできないということだろうと思うのですね。そして、もう一つは緊張を力ずくで取り払ってしまうという、今の時点の選択肢が三つあるような気がしてなりません。そして、緊張が切れていざ紛争となったときにはPKO。  ですから、私たちはこれまでPKOのところの話ばかり中心にしておりましたけれども安全保障といったら、大きな、すべての日常の活動そのものからすべてが安全保障である、そういう見地に立ってやらなければいけない。経済活動にしたって、日米安全保障があって、それがあるからそれだけでいいのだ、あとは何でもやっていいというわけにはならないと私は思うわけでございまして、その辺について、柿澤大臣、どういうお考えをお持ちでしょうか。
  155. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 松前先生のおっしゃるとおりでございまして、世界の平和、安全は軍事力だけで守られるものではありません。まず、紛争の原因になるような経済的な貧困とか対立とかいうものを解消していくことが大事だと思っております。  その点では、日本の経済援助を初めとする国際経済への貢献、これも平和への貢献であろうかと思います。また、我が国は、御承知のとおり、国連の活動の中で軍縮・軍備管理の面でいろいろな形で積極的な貢献をしてきております。これも第二次大戦の経験、そして広島、長崎での被爆の体験を踏まえての努力でございますし、こうしたものも続けていかなければならないと考えております。  また、日米関係につきましても、日米安全保障条約だけで日米の友好関係が保たれるわけではございません。その点でも、日米包括経済協議の再開は日米信頼関係を回復する上で大事な課題だと考えまして、予算委員会の最中でございましたが、私もカンター特別代表とも何度も電話でやりとりをしながら、ちょうど向こうの昼間が日本の深夜なものですから、夜寝る時間を惜しんで努力をして再開にこぎつけました。  しかし、これはまだ道半ばでございます。各分野での協議がこれから残っておりますが、そうした点についても粘り強く交渉をして、我が国の主張は主張として通しながら、日米関係の安定した基盤をつくっていくことが大事であろうと思っておりますので、そうした総合的な見地で今後とも安全保障の問題は考えていきたいと思っております。
  156. 松前仰

    ○松前委員 今、柿澤大臣もお答えいただきましたけれども、こういうことが、言葉の遊びみたいになってしまって申しわけないけれども、集団安全保障に対します普遍的安全保障ということになるのじゃないか、私自身は自分でそう言い聞かせているわけなのであります。いろいろな定義があろうと思いますけれども、そういうことだろうと思います。  そこで、 一つだけ確認をしたいのですけれども、総理が予算委員会の初めに、この普遍的安全保障という言葉について、集団的安全保障とほぼ同じという答弁をなされたことを私は見て、聞いております。五月三十一日でしたか、伊藤公介議員の質問に対しまして、軍事的なものを含んでいないというような意味のことを御答弁いただいたと思うのですが、それでよろしいですね。
  157. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 当時の連立与党間の合意、確認書でございますので、私がそれを有権的に解釈する立場にはございませんが、総理大臣答弁について私なりの解釈を申し上げさせていただきたいと存じます。  普遍的安全保障という概念は、国連がつくり上げるさまざまな安全保障の枠組みの総体を指すということで、先ほども松前先生がおっしゃったような概念をすべて含んでいるというふうに考えてよろしいのではないかと思います。その意味では、いわゆる集団安全保障よりも幅広い概念だと考えられると思います。  そして、そこに軍事的要因を含まないという総理の御答弁は、そうした幅広い概念の中で我が国ができることは何かということを考えますと、あくまでも憲法の枠内という、その確認書にもきちっと規定されておりますので、そういう意味では軍事的な貢献というのは日本としては必ずしもできない部分が多いということを答弁をされたのではないかと考えております。
  158. 松前仰

    ○松前委員 次の質問の秋葉先生がいらっしゃいましたので、最後に申し上げますが、先ほど冒頭の方で私も質問いたしましたけれども、今非常に重要な、一番重要なときだ思います。  日中の会談も持たれるということでございますから、話し合い解決という方向に向けて、そしてもう一つ、査察がもうだめだというのでありましたら、査察がだめであっても、何かしら経済制裁に持ち込まないような方向を探る努力をぜひともしていただきたい、そのことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。
  159. 菅直人

    菅委員長 秋葉忠利君。
  160. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 きょうは一日じゅう、外務大臣は本会議でも答弁されまして、かなりお疲れだと思いますが、大事な問題ですので、もうしばらくおつき合いいただきたいと思います。  何点かについて伺いたいと思うのですが、私は、特に、広島と長崎の被爆体験を現代の社会、それから今後の社会にどう生かしていくかという視点から幾つか質問をさせていただきたいと思います。  まず第一点。これは、外務大臣が就任当時いろいろな勇ましい発言をされて、大分物議を醸し出したところとも関連があるのですけれども、連立与党をつくるための確認事項というものがございます。この中に明確に書かれている幾つかの言葉があるのですけれども、総体としてこれを読むと、国連憲章と日本国憲法との関係において、国連憲章が優先するといったふうに読めます。国連憲章と日本国憲法の間には非常に大きな差があることは、外務大臣、もちろん御存じのとおりだと思いますけれども、私たち広島における解釈というもの、そのうちの一つ、たくさんの人が広島、長崎ではこういうふうに解釈しておりますけれども、それは次のようなことです。  国連憲章というのは、一九四五年にもちろんできたわけですけれども、これは広島、長崎の原爆体験以前のものである。そして、その国連憲章においては、平和という目的のために戦争を行っていいとまでは、そのとおりの言葉遣いで書いてありませんけれども、平たい言葉で言えば、平和のためだったら戦争をやってもいいのだということが書かれております。それに対して日本国憲法の場合には、平和のためであっても戦争をやってはいけないのだということを明確に述べています。  その違いが何かというと、それはやはり間に挟まっている被爆体験である。被爆体験、原爆の惨禍によって、人類全体の歴史の集積といったものを被爆者たちがある意味でまとめて、その一瞬のうちの自分たちの経験をこれからの世界の指針としてあらわしたものが日本国憲法の中に結晶しているのではないかというふうに広島では考えております。  自民党の、そして政府のこれまでの憲法解釈でも、憲法が優先するという原理は非常に明確だったわけですけれども、非常に残念なことにこの確認事項ではそうはなっていないというところで、外務大臣として、こういった条約日本国憲法との間の関係というより広い問題もありますけれども、この際、この確認事項に縛られるのか、それともこれまでの伝統的な日本の、日本国憲法が優先するという立場をとられるのか、外務大臣のお答えを伺いたいと思います。
  161. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 羽田内閣が成立するに当たりまして、羽田総理は、この確認事項を尊重しつつ内閣の運営を行いたいということをおっしゃっておられます。その意味で、私もその一員としてそれを尊重しつつ外交を進めていきたい、こう考えております。  また、憲法国連憲章とのどちらが優位に立つかという問題につきましては、秋葉先生御指摘でございますが、先般、予算委員会の議論で憲法が優先するという解釈を政府はとっている旨を説明をいたしております。この点については条約局長から御報告をさせます。
  162. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいまの憲法条約との関係につきましては、先般の予算委員会におきまして、政府の統一見解というものを連立政権樹立のための確認事項に関連して出しております。  その第二項におきまして、その関係について政府の見解を述べておりますが、時間の関係で簡単に申し上げますと、政府としては憲法優位説というものをとっておるということを明確にいたしておりまして、この考え方国連憲章との関係でも同様であるということを述べておる次第でございます。
  163. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 今の答弁外務大臣、それから外務省、きちんと忘れずに、誠実に忠実に履行していっていただきたいというふうに思います。  今申し上げましたように、広島の立場というのは、この憲法の裏打ちとしてといいますか、憲法がこういう平和主義をとっているその理由の一つとして、それはさまざまな日本の戦争体験、その中から生まれた反省等さまざまなことがありますけれども、その一つとして被爆体験というものがあるというふうに考えております。  ですから、この憲法を尊重するということは、いわば被爆体験を生かしていく、これからの政治に生かしていくということが中心になるわけですけれども、その広島の願い、メッセージの中でやはり中心的になっているものは、これは核の廃絶ということです。  そういった立場から、つい先ごろ広島で国連の軍縮会議、これは広島で開かれたのは第二回目ですが、この軍縮会議が開かれました。外務省からは平田次官も来られたわけですけれども、そこでの議論も踏まえて、その場で中心的な課題の一つになったNPT、核不拡散条約、これの改定について意見を伺いたいのです。  この問題については、私は、広島の平岡市長が非常に明確に広島の立場というものを述べられたと思います。私もそれを補強する意味での発言をいたしましたけれども外務省出席者の方、それから国連から、あるいはそれ以外のところから来られた方の多くが無期限、無条件延長ということを主張されたのに対して、平岡市長としては大体三点を言われたというふうに思います。  その第一点は、被爆地として広島が核保有を永久に認めるような条約に賛成するわけにはいかない。それは当たり前でしょう。私も当然、日本としても、唯一の被爆国ということを都合のいい場面で言うのであれば、やはりそれは論理一貫した態度で、首尾一貫した態度でこういった問題についても、核保有を永久に認めるような公式の国際的な文書に署名をするなんということは、これはだめなんだということをまず明確にする必要があるのではないかと思います。それが第一点です。  第二点は、しかしながら現実は厳しいものがあるし、核保有国が存在することも確かなんだから、では、核保有国にも協力をしてもらいながら核の拡散を防ぐという立場をとるとどういうことが可能なのか。そのための一つは、核不拡散条約というのがただ単に、核を持っている国はこれからずっと持ち続けてもいい、持たない国を核保有国にしてはいけないんだという条約から、核保有国も着実にその核を廃棄する方向で誠実な努力を行う。そのための、ただ単に言葉でやりますと言うだけではなくて、きちんとした手続によってそのことが可能なような枠をはめていく、そういった態度が大事ではないか。そのために、無期限というところは仮にそれが必要であれば認めるとしても、無条件というところは認めずに、最低限、私はこれは本来三つあるべきだと思うのですが、平岡市長は二つの点について言われました。  一つは核実験の全面禁止、これを一つの条件にするということ。それからもう一つは、核の先制使用をしないということを核保有国の中できちんと宣言をして、実行をするということ。この二つの点を条件として、日本が核不拡散条約にそれでは賛成しましょう、無期限延長に賛成しましょうというのであれば理屈は通るけれども、そうでなくて、それ以外の無期限、無条件ということなどを日本という立場で認めてしまってはいけないのではないかということを強く主張されました。  この点について外務省のお考えはいささか違うようでありますが、私は、外務省も、広島、長崎のその体験を尊重する気が少しでもおありになるのだとしたら、やはり広島市長と同じような立場をとるべきではないかというふうに思います。この点について、まず外務大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  164. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 広島、長崎の体験は、そこにお住まいで犠牲になった方々の痛ましい犠牲であり、体験であったと同時に、日本国民すべてにとって忘れられない体験であったと私ども考えております。その意味では、核のない世界をつくるということは、これは理想であり、その点で広島市長のお考えと究極において私ども異なるものではないと考えております。  ただ、現実の政治の世界で核不拡散条約を今後どうするかという議論になりましたときに、核保有国に削減を求めるということは当然のこととして求めていかなければなりません。できるだけそれも明確な形で規定されることを私どもは主張していきたいと思っておりますが、この点では核保有国側に強い抵抗があることも事実でございまして、最終的には、その場合、核不拡散条約そのものが成立しないという状態と、妥協しながら成立させる状態と、どちらが我が国にとって望ましいかという選択を迫られることになろうかと思います。  また、核実験の全面禁止、これも日本が終始訴えてきたところでございますし、これについては別途交渉も行われております。そういう点では、ぜひともそういう方向に向かって進んでいくことを期待をいたしたい、またそのために日本努力をしてまいりたいと思っておりますが、それと核不拡散条約の延長の問題とを条件として絡めますと、今申しました第一の条件と同じような状態が起こってまいりまして、そこにジレンマが起こるわけでございます。  そのときに、どちらが現実的に核を削減する、そして核戦争のない世界をつくるのに望ましいかという点を選択をしていかなければならない。この点は秋葉先生にも御理解をいただきたいと思っているわけでございます。
  165. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 今のお答えを伺っていまして、連立政権に入っていた時代の社会党の執行部の説明とぴったり同じだなという印象を受けました。これから政界再編がありますから、事によったら、我々の新しいどこかの、A党、B党というのがあるみたいですが、柿澤さんにそういうところのリーダーになっていただくと、連立も事によったらうまくいくのかなという気がいたしましたけれども。  ただ、今のお答えの内容についてはいささか異論がございます。  一つは、日本政府として、外務省として、もっともっとこの核廃絶の問題について熱心に、しかもとのような場でもきちんとした声を上げているのであれば、例えば今おっしゃったようなことも、そうだ、いつもよくやってくれている、我々の意思国際社会の中で堂々と主張をし、そしてやってくれているのだから、ぎりぎりのところでの妥協をすることもこれはしようがないのだ、あるいはその逆に、本当におかしなところで壊れちゃうものを妥協して、よくうまいところでまとめてくれたというような称賛の言葉が出てくると 私は思うのですが、残念ながら事実はそうではないのです。  核廃絶について外務省のこれまでの態度というのは、よく言って及び腰、そして非常にしばしば私自身も経験いたしましたけれども、かえって、アメリカの前でそういうことを言ってもらっては困るのだということさえ、外務省の中のインフォーマルな答えとしては答弁が返ってくるような場合がございます。  それから、これは「新保守革命」という本ですが、本のPRぐらいはいいと思いますが、柿澤さんが渡辺美智雄さんと一緒にお書きになった本です。中にはなかなかおもしろいアイデアがたくさん入っていますし、これは読んで勉強したいと思っているのですが、たまたま国際問題についてのところをぱらぱらと、関心がありましたので見ていたのですが、ここでも柿澤大臣御自身、渡辺さんと一緒にお書きになっているわけですから同じ考えだというふうに思いますけれども、核廃絶に対するもっと強い意志がこの本の中に表現されていてもよかったのではないかという気がいたします。  そこのところ、つまりあれはあくまでも理想なので、今我々が努力をしてもできない、そういうことを前提にした上で、それじゃ何をやろうかというような、さっきの説明もそういうふうに聞こえましたし、この本に書かれている、例えば核査察の強化なんというところについても、やはりそういう姿勢を受けているような気がしますけれども、それは二つの理由で、できたらもっと積極的な態度にぜひ変えていただきたい。  その理由の一つは、核の問題について私は広島の被爆者の経験というものを生かしたいと思う。生かすということはどういうことかというと、我々から考えたら非現実的であろうと、あるいは事によったらさまざまな形容詞がつくかもしれないけれども、我々自身としてはその態度はとれないというふうに常識的には思ってしまう態度ではあっても、そこのところを乗り越えて、被爆者の立場で世界を見るということをやる必要があるの  ではないか。  そういう意味で、その視点をとらないという判定をすることは、ある意味でその経験を否定することにつながるわけで、そこのところをぜひもう一度、もう先ほどのお言葉で非常に深い御理解をしていらっしゃることはわかりましたけれども、もう一度そういったことを考えていただけないかというのが一つです。  それからもう一つは、論理的なレベルでの反論ですけれども、理想だからできないということを暗黙のうちに認めてしまって努力を始めたら、これは絶対にできません。ですから、そういった立場からも、より具体化するという意味で、核廃絶に対する態度をもっと積極的なものに変えていただきたい。そのための努力をしていだだきたい。このことをお願いしたいと思います。
  166. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 もう私も自分で書いた本を読むのがちょっと怖くなっておるのですが、十年ほど前に書いた本では、もっと積極的に核廃絶の、核禁止のために日本努力すべきだということを書きました。  それは広島、長崎の体験というだけでなく、日本ほど核戦争に対してバルネラブルといいますか、脆弱である国はない。人口密度が高く、そして非常に狭い国土の中で核戦争が起こったらひとたまりもないという状況でございますから、核のない世界をつくることが世界の中で最も大事な、必要な国だというふうに考えておりまして、防衛費がGNPの一%であるなら、平和、軍縮のための費用は防衛費の一%を支出すべきだということをそのときにも提案をしたつもりでございます。そういう意味では、今後ともその努力をしていかなければなりません。  また、外務省が必ずしも熱心でなかったというお話がありましたが、世界の情勢が大きく変わったと私は思う。変わったから日本はさらに積極的にやらなければいけないと思っています。五五年体制、冷戦構造では、よかれあしかれアメリカとソ連の大量の核兵器というものが抑止力になっていた。しかし、冷戦構造崩壊の後は、むしろ核の拡散、そして核の戦争の危険が、米ソの対立というような大きな規模でなく起こってくるおそれが別途出てきております。  それだけに、そういう中で核兵器の保有国を最小限にし、そして核兵器を持っている国々が努力をして削減をしていく、そのために日本が一生懸命努力をするということは、冷戦構造時代の恐怖の均衡というものと違った意味で、新しい視点から取り上げるべき課題だ、日本外交が取り上げるべき課題だと私は考えております。
  167. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 世界が雪解けの時期を迎えて、核軍縮についてもさまざまな大きな前向きの変化が起こっていることは確かなのですが、非常にその中で残念なのは、日本という国が、あるいは外務省が先頭に立ってそういった世界の大きな変化をもたらしたわけではないという点です。もっとももっと大きな働きができたのではないか。これから、もっと条件はよくなっているわけですから、ぜひ先頭に立って頑張っていただきたいということをお願いしておきます。  それに関連して、実は広島の軍縮会議で非常に建設的な提案が広島市長から出されたと私は思います。外務省の皆さんもそのことについては十分お聞きだと思いますけれども、これは北朝鮮核疑惑に関してです。  エリツィン大統領もそのアイデアを公表しています。関係六カ国プラス国連というのがエリツィン提案ですけれども、それでも結構ですし、あるいは六カ国だけでも私はいいと思います。その関係六カ国の外務大臣でもいいですし、あるいは首脳でもいいかもしれないが、ともかく広島という場所でこういった会議を開いて、何らかの道を探る。  先ほど松前委員がおっしゃっていましたように、仮に現在の努力が実を結ばないようなことがあったとしても、ではその先に何をやるかというところで、やはり人類の共通の体験としての広島がその場所としての、地理的な場所としての役割を果たすことができるのではないか、そういう気がいたします。  日本がこれを呼びかけて、日本がリーダーシップをとって、何か汗を流して平和のために頑張るということはやはり世界的にも非常に大事なことではないかと思いますし、今の時点で日本がこの関係六カ国の中で仲裁あるいは調停のための努力をするのに実は非常によい条件に恵まれていると思います。逆に言うと、日本以外にはこの役割は果たせないというのが現在の北朝鮮の問題です。  それはどういうことかといいますと、中国それから北朝鮮韓国アメリカ、これはまあアメリカと言ってしまっていいのかどうかわかりません、現在は軍事休戦中ですけれども、これは交戦国です。したがって、その国々の中から、対立する側にある国が手を挙げて調停をするというのは、やはりこれはなかなか難しいところがあると思います。  そうすると、残るのはロシアとそれから日本ですけれども、現在の世界的な影響力、そして、特に海を隔ててある程度客観的な立場がとれるということを考えれば、日本がこの際、調停の中心的な役割を果たす。日本だけがやって、ほかの国のやることには全部協力しないなんということを言っているわけではありません。ほかの国の調停があってももちろんいいですし、協力することも必要だと思います。国連の場で解決の道を探ることも大事だと思います。しかしながら、それと同時に、日本がリーダーシップをとることによって平和への道を探るということもこれまた大事だと思います。  私は、昔の外務大臣だったら、事によったらこういった役割は不適切かもしれないけれども柿澤大臣だったら、こういったものを提案して、それを引っ張ってまとめるだけの力量をお持ちだと思いますから、ぜひ積極的にこういった提案をして、世界の平和への貢献というところで本当に実のある成果を上げていただきたいと思って、こういう提案を平岡氏とともにしているわけですが、この点についてぜひ前向きのお答えをお願いしたいと思います。
  168. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 秋葉先生の御提案は大変御見識のある提案だと思います。ただ、当面国際社会が取り組んでおります問題は、北朝鮮がNPT体制の中に残りそしてその査察を受け入れるというための説得の努力をしているところでございますので、その中心的な機関はやはりIAEAであり、それとの連携において国連安保理ということになっているわけでございます。  それとあわせて、先ほど松前議員にもお答えいたしましたように、北朝鮮側が米朝の対話を重視しているという状況でございますので、その中で秋葉先生の御提案が各国から素直に受け入れられ  るかどうかという問題はあろうかと思いますが、長い目で見て東北アジアの平和を維持していくため今のようなメンバーによる何らかの話し合い機会をつくっていく、そのときに広島がシンボリックな都市としてそういうものを主催されるということは、私ども傾聴に値する御提案であろうかと思っております。
  169. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 ぜひもう少し積極的な役割を果たしていただきたいというふうに思います。そのことを重ねて申し上げたいと思います。  状況は確かに難しい。状況が難しいから、それでは受け身の姿勢に徹すればいいじゃないかというのが実は今までの日本外交でした。その日本外交を積極的に変えようという意思がおありだと思いますけれども、積極的に変えるということは、何も自衛隊を外国に出して、武器を持たせて戦争をやるということではないと私は思います。そうではなくて、難しい状況の中で日本が建設的な平和的な提案をして、それをまとめる説得行動を行うということがまず第一になくてはならないと思います。  それは何回か失敗すると思います。しかしながら、そういったことを積み重ねることによって日本の誠意が各国にも伝わるわけですし、そのうちには一つや二つうまくいくのが出てくるでしょうし、そこのところが非常に大事ではないかと思います。それは柿澤大臣も十分おわかりの点だと思いますから、重ねて御努力をお願いしたいと思います。  それからもう一点。これとはちょっと場所が違いますけれども、ゴランハイツ、ゴラン高原に対するPKO支援ということがどうやら議題に上がっているようです。この点について、まずこれは、PKO法の例の五原則というのがありましたけれども、その五原則を全部クリアしているのかどうかということを改めて確認しておきたいことが一つ。  それからもう一つは、やはりこういった問題について日本が参加するかどうかということですが、ただ単に必要条件をクリアしたらあとは何でもやっていいというようなことでは、これまた外交の本質とは著しく違う方向への外交が展開されてしまう可能性が出てくるというふうに思います。  やはり、世界的に日本がどのような役割を果たしていくのかというグランドデザインがあって、その中の一環として例えばこういうところには協力をする、こういったところにはしないといったような個々の方針が出てくるのだと思いますけれども、そういう意味でこのゴラン高原に関しても、ただ単に要請があったから出しますということではなくて、より大きな問題意識というものを日本が持つ必要があるのじゃないかと思います。  そういう意味で、例えばこの外務委員会でもっと活発なこういった問題についての集中的な議論をする必要があるのじゃないか、これは委員長にもお願いしたいところです。それから同時に、外務省でも、例えば外務省の案としてそういったグランドデザインといったようなものをぜひつくっていただきたい、そういったことも同時にお願いをして、その五原則について確認をしておきたいと思います。
  170. 野上義二

    ○野上政府委員 ただいま秋葉先生の方から、ゴラン高原、UNDOFに対する参加が五条件を満たしているか否かという御質問でございましたが、この問題につきましては、国連の方から、カナダの部隊が交代するので、その交代に日本として参加する可能性があるかということを非公式に打診してきた段階でございます。  私どもは今とりあえず、カナダがどういった部門から交代していくのか、どの程度の規模で交代するのか、そういったようなことをカナダ側にこれから問い合わせるということでございまして、仮に技術的にそういった部分がある程度満たせると判断された場合にはさらに調査をして、現地の情勢等も踏まえまして、それから今の平和協力法の条件等を満たしているかどうかを判定した上で参加するか否かを決めるということで、まだ全然参加ということを決めた段階ではございません。
  171. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 私も、外務大臣就任の直後に中東四カ国を回ってまいりました。今御指摘のゴラン高原をめぐるイスラエル、シリアも訪問してきたわけですが、中東和平は二国間協議、多国間協議両方で今進んできております。特に、日本は多国間協議の分野では環境支援、また観光事業等の発展のために主導的な役割を果たしてきておりまして、それから水資源ですね、そういう意味では高く評価を受けております。  また、二国間協議でもクリストファー国務長官のシャトル外交日本としても支援するように、私自身、イスラエル、シリアの間でいろいろと話をしてまいりました。  ゴランの状態というのは、これは返還交渉がこれから行われることになると思いますけれども、一応軍事的には安定しているということも聞いてまいりました。  そういう中で日本が何ができるかということでございますので、決して自衛隊を送るということが目的ではなく、アジアのカンボジアでの貢献、そしてアフリカのモザンビークでの貢献、そして、日本でも中東についてもその平和と安定に関心を持っているということを示していくことが、世界の平和に日本が大きな役割を果たしていくその一環であろうかと考えておりますので、その点だけを突出して、自衛隊の派遣だけを突出して考えているということでないことは御理解をいただきたいと思っております。
  172. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 その点について、また慎重に事実を見きわめながら対応をしていただきたいと思います。  時間が参りましたので、これで私の質問は終わります。ありがとうございました。
  173. 菅直人

    菅委員長 古堅実吉君。
  174. 古堅実吉

    ○古堅委員 北朝鮮核疑惑をめぐり、国連あるいはアメリカ北朝鮮に対するいわゆる制裁問題が緊迫した状況を強めています。  そこでまず、国連であれアメリカであれ、北朝鮮のいかなる行為を制裁の対象としているのか、そこから聞かせてください。
  175. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生承知のとおり、安保理におきましては、まだこの制裁の議論というものは公式には行われておらない段階でございますので、先生の御質問にこの段階でお答えするのはなかなか困難だと思います。  しかしながら、一般論として申し上げますと、安全保障理事会は国際の平和と安全の維持ということにつきまして大変広い権限を持っておるわけでございまして、その権限の中で、特に具体的には国連憲章第三十九条でございますけれども、国際の平和に対する脅威あるいは平和の破壊というものの存在があるかないかを決定した上で、その決定を前提として、いかなる措置をとることが国連として、あるいは安全保障理事会として適当であるかということを決定する仕組みになっておることは、先生承知のとおりだと思います。
  176. 古堅実吉

    ○古堅委員 その仕組みを聞いておるのじゃない。総理は所信表明で、「国連の方針が決定された場合にはその方針を尊重するのは当然であります。」と述べられました。羽田総理は何が制裁の対象になっているのかということについてよく知らないままにそういうことを言ったのでしょうか。  今お答えがありませんけれども、ペリー米国防長官が四月二十二日に東京の外国特派員協会の講演の中で、原子炉から取り出された使用済み燃料によるプルトニウムが一個もしくは二個の核爆弾の製造に既に使われたのではないかと推測しているというふうに述べています。いわゆる推測するというふうに言われているそれそのものが制裁の対象というふうなことにでもなるのでしょうか、大臣
  177. 丹波實

    ○丹波政府委員 ただいま申し上げましたとおり、安保理におきましては、この問題はまだ具体的には論議になっておらないわけでございます。  したがいまして、再び一般論として申し上げますと、北朝鮮の行為との関連でもし安保理が一定の制裁措置をとるということになるとした場合、それは恐らく先ほど申し上げましたように、国連憲章第三十九条によります平和に対する脅威あるいは平和の破壊といったようなことが存在するという決定の上に立ってそういう措置をとることになるであろうという想像ができるわけでございますが、具体的な議論が行われておりませんので、これ以上の御答弁はできない段階でございます。
  178. 古堅実吉

    ○古堅委員 大臣、お答えいただきたいと思うのですが、三十九条に基づいて国連がそういう論議をすることがあるにしても、北朝鮮が何をしたからそういうふうな論議になっていき、制裁云々という、そういうような対象になるのか、そこを説明してください。
  179. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 これは今条約局長が二度答弁をいたしましたとおり、何を議論の問題にするかということ自体がまだこれからの課題でございますので、この段階で私から公の席で答弁することは差し控えたいと思っております。
  180. 古堅実吉

    ○古堅委員 先ほども言いましたが、総理は所信表明の中で、「いずれにせよ、国連の方針が決定された場合にはその方針を尊重するのは当然であります。」というふうに言っておる。そう言うからには、それにかかわる内容などについても念頭  に置いてのことでありましょう。答えてくださ  い。
  181. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 総理がおっしゃっておられることは、国連が決定をした場合にはということでございます。その国連安保理の決定には、常任理事国五カ国の賛成と多数の賛成が必要なわけでございます。  そうした形で国際社会が三十九条に基づきます平和への脅威と認定した場合には、国連の一員として我が国もその決定に従って、我が国の許される範囲で、あくまでも憲法範囲内でとおっしゃっておられますけれども協力をするのは国連の一員としての責務であろうかと思います。
  182. 古堅実吉

    ○古堅委員 あくまでも脅威というだけで、北朝鮮で何がなされたから脅威があり、制裁の対象になるのだというふうなことについての説明はいただけません。  インドは一九七四年に核爆発実験を行い、既に核兵器保有能力を持ちながら、ことし一月の米ロ共同声明が核不拡散条約加盟を要求したことに対しても、不平等条約であるとしてそれを拒否しました。その上に、中国が核兵器の保有を認められておるのに対して、インドがその対抗手段を持つことが否定されているというふうな主張までしておるのであります。  パキスタンも、一九八七年に模擬形式だが核実験を行い、原爆製造技術を持ったことを昨年、元陸軍参謀総長が明らかにいたしました。そのパキスタンの首相は、ことし四月七日に、核施設の査察を受け入れることはないというふうに言明しています。  先ほど来北朝鮮核疑惑云々ということがありましたが、それとの関連で制裁、そういうものに結びつく、そういう流れになっていることは、これはもう否定することもできない問題であります。政府の言い分でいきますというと、そういう今挙げたようなインドとかパキスタンとか、そういう諸国も制裁の対象になるというふうになるのではありませんか。
  183. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 補足説明があれば政府委員からいたさせますが、インドもパキスタンもNPTのメンバー国ではございません。しかしながら、北朝鮮は核不拡散条約のメンバーとしてその義務を履行する責任があるわけでございます。  それに対して、その責任を果たしていないということから疑惑が生じているという事態国際社会としては大きな懸念として受け取っているということではないかと思います。
  184. 林暘

    ○林(暘)政府委員 インドとパキスタンが核保有能力を有しておるのではないかという点につきましては、今先生御指摘のとおりでございます。かつ、この二カ国がNPT条約にも加盟していないということも今大臣が申し上げたとおりでございます。  事実関係として申し上げればそういう状況でございますので、日本としては、インド、パキスタンが一刻も早くNPT条約に加入してもらうようにということを含めまして、この二カ国とはいろいろな形で協議をいたしまして、その際にNPT条約への早期の加盟ということを慫慂をいたしております。  ただ、残念ながら、インド、パキスタンというのが、今先生御指摘のような理由も含めまして、NPTに加入していないというのが現状でございます。
  185. 古堅実吉

    ○古堅委員 NPT加盟国でないというふうなことで今の言い逃れができるとすれば、それじゃ、北朝鮮がそれから抜けてしまえばすべては解決するというふうなことになるのでしょうか。NPT条約そのものはそういう制裁ができるような仕組みになっていないじゃないですか。  過去の国連制裁は、イラクなどの平和の破壊は別とすれば、南ローデシアの場合は、白人少数政権による一方的な独立宣言を非難するものであったし、南アもアパルトヘイト政策とその行為が非難されました。  今回のように疑惑があるというだけで制裁するということは、従来の国連措置とも異なるように思いますけれども大臣いかがですか。
  186. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 これはあくまで私の私見でございまして、日本政府は、先ほど来申し上げておりますように、まだ議論がされる前に予断を持って申し上げるという立場にないということをお許しいただきました上で申し上げれば、最近の状況を顧みますれば、古堅先生承知のとおり、核の保有というものがいわゆる大国でなく中小国にまで広がる危険が出てきているわけでございます。  その意味で、核不拡散条約に加盟をしている北朝鮮がその査察の義務を免れながら核兵器生産を実現するというようなことが万が一にも起こりますと、核不拡散体制そのものが崩壊をし、そして、北朝鮮と同じ程度の経済力を持っている国々が核保有国になっていったとき、それを想像すると、国際の平和にとって大きな脅威になるということは先生も御理解をいただけるところではないかと思います。そうしたことを何としても避けなければならないというのが現在の国際社会の懸念でございます。  そういう点は、パキスタン、インドの核実験のときとは状況が違ってきているということもあるのではないか。これは私の個人の見解でございます。
  187. 古堅実吉

    ○古堅委員 核兵器保有国が、自国の核兵器を含め核兵器は全廃するという立場から新たな核兵器保有国を許さないというのではなく、自国の核兵器は温存しながら他国が核兵器の疑惑があると推測するだけで制裁するというのは、全く何の道理もないと申さねばなりません。だから、安保理の方ですんなり論議が進み決定が出るかどうか、そういうこともわからないような状況が続いています。  重大なことは、最大の各保有国であるアメリカが、国連決議がなくても独自に制裁を進めるという動きを強めていることです。  そこで、次の三点を明らかにしてください。第一、アメリカが独自に制裁を実施する場合、それは国際法のどういう根拠に基づいて合理化できるのか、それが第一です。  第二は、このアメリカが独自に行う、そういう構えを見せている制裁について、日本もこれを支持し支援するつもりか、これが二点。  第三点は、大臣は、けさ来、できるだけ話し合い解決したいというふうな答弁を繰り返しておられます。それは結構なことです。それならアメリカに向かって、制裁に同調し支援するなどという方向に行くのではなしに、制裁には反対だということを伝えるべきではないか。  その三点についてお答えください。
  188. 丹波實

    ○丹波政府委員 先生、これも一般論としてお受け取りいただきたいと思うのですが、ある国の行動が国際社会の重大な利益を維持するという観点に重大な阻害を与えておるというような場合に、関係各国が個別または共同で国際法に従って制裁措置をとるということは、独立国家が国際法上有する外交に関する機能の行使として当然認められるところであるというふうに考えられております。したがいまして、その場合、いわゆる括弧つきの制裁措置と言われるものは国際法の範囲内で可能な措置である。  例えば、一国が他国と貿易をするということはその国の裁量でございまして、行っている貿易をとめるということは、その国とその対象国との間でのいろいろな条約関係その他から禁じられていない場合にそういう貿易をとめるということは国際法上可能である。  恐らく、アメリカがもし何か考えているとすれば、そういう考え方に立って物を考えているのではないかと想像をいたしておる次第でございます。
  189. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 古堅先生質問の第二、第三の点でございますが、これも仮定の問題でございますから、公式に日本がそれを支持する、しないと言うことは差し控えさせていただきたいと思います。  一般論でお答えをすれば、日本の近隣に核保有国ができるということは日本にとっては大きな脅威の種になる、これはだれしも感じている日本人の不安ではないかと思います。また、日米安全保障条約日米関係日本の安全と経済の発展、繁栄のために基軸的な関係であるということも、これも大方の国民の皆様の理解を得られることであろうかと思っております。そうした意味で、日米関係を大事にし、そしてなおかつ、北東アジアの安全保障に貢献できるように日本協力をしていくことは当然であろうかと思います。  ただし、日本には日本の制約もあります。また、日本アメリカと違った考え方もありますので、その点は、具体的な対応はやはり、そうした事態が発生するかどうか、その段階にならなければ予断を持って考えることはできないと思っております。  それから、第三点に関しましては、私ども、今外務省から二人、ワシントンに協議に行っておりますが、これは、アメリカ協力をするとかアメリカの言うことに賛成だということを言いに行くために行っているわけではありません。日本考え方をきちっと伝えて、先ほど来申し上げておりますように、あくまでも話し合いの中でこの問題が解決されるよう日本日本なりの努力をしたいと思っておりますし、日本の意見はアメリカにも伝えたいと思っているところでございます。
  190. 古堅実吉

    ○古堅委員 きちっと、こういう国際的な道理もない新たな無法な事態を持ち込むようなことがあってはいかぬという立場で、制裁はノーだというふうにアメリカにも伝えて、あくまでも話し合い解決するような努力をすべきです。  先ほど経済制裁がそういうふうにしてできるのじゃないかというようなくだりがありましたが、アメリカ経済制裁だけを考えておるのではありません。軍事的な面をも含めて考えている。いろいろと出されている資料、それを見れば明確です。そういうこととの関係においても、国際法に照らしてどういう根拠に基づきこれが正当だなどというふうなことが言えるのかという、その説明はできないはずであります。そのことを前提にして最後の質問に入ります。  アメリカ制裁に踏み切った場合に、ペリー国防長官自身が戦争の危険性を高めると言っているくらいであります。先ほど来の論議でもございました。心配されることは当然です。そのときに事前協議の問題が出てまいります。事前協議制度は、これまで長い間、自民党政府時代にも、戦争に巻き込まれないためのものだというふうな説明をしてまいりました。  その事前協議の要請があった場合に日本はイエスと答えるのか、ノーと答えるのか。これはアジア全体にとっても、我が国にとっても極めて重大なものにならざるを得ません。明確にノーと答えるべきだというふうに思います。その点について、大臣からお答えください。
  191. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 古堅先生、経済的制裁の是非すらまだ議論されていない段階で軍事制裁の是非について議論をするのは余りにも早計であろうかと思います。そうした意味でも、話し合い解決されるよう我々としては全力を挙げて努力するということだけを申し上げさせていただきたいと思います。
  192. 古堅実吉

    ○古堅委員 終わりますが、いずれにしても、何を対象にして制裁をということについても答えられない、それなのに経済制裁ができるのじゃないかという話まではいく、そういう無法は断じて許してはならぬということを申し上げて、終わります。      ────◇─────
  193. 菅直人

    菅委員長 航空業務に関する日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国政府モンゴル国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国政府ハンガリー共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国南アフリカ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国とジョルダン・ハシェミット王国との間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国政府ヴィエトナム社会主義共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより順次政府から提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣柿澤弘治君。     ─────────────  航空業務に関する日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定締結について承認を求めるの件  航空業務に関する日本国政府モンゴル国政府との間の協定締結について承認を求めるの件  航空業務に関する日本国政府ハンガリー共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件  航空業務に関する日本国南アフリカ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件  航空業務に関する日本国とジョルダン・ハシェミット王国との間の協定締結について承認を求めるの件  航空業務に関する日本国政府ヴィエトナム社会主義共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件  所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  194. 柿澤弘治

    柿澤国務大臣 ただいま議題となりました航空業務に関する日本国とブルネイ・ダルサラーム国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ブルネイとの間で航空協定締結するため、ブルネイ政府と交渉を行いました結果、平成五年十一月二十九日に東京において、我が方羽田外務大臣と先方ザカリア通信大臣との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、我が国とブルネイとの間の定期航空業務を開設することを目的としており、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。  この協定締結によって我が国とブルネイとの間の人的交流及び経済的交流が増進され、両国間の友好関係の一層の強化に資することとなることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国政府モンゴル国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、モンゴルとの間で航空協定締結するため、モンゴル政府と交渉を行いました結果、平成五年十一月二十五日に東京において、我が方羽田外務大臣と先方ツォグト通商産業大臣との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、我が国とモンゴルとの間の定期航空業務を開設することを目的としており、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。  この協定締結によって我が国とモンゴルとの間の人的交流及び経済的交流が増進され、両国間の友好関係の一層の強化に資することとなることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国政府ハンガリー共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ハンガリーとの間で航空協定締結するため、ハンガリー政府と交渉を行いました結果、平成六年二月二十三日にブダペストにおいて、我が方堤在ハンガリー大使と先方シャムシュラ運輸・通信・水資源管理大臣との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、我が国とハンガリーとの間の定期航空業務を開設することを目的としており、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。  この協定締結によって我が国とハンガリーとの間の人的交流及び経済的交流が増進され、両国間の友好関係の一層の強化に資することとなることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国南アフリカ共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、南アフリカとの間で航空協定締結するため、南アフリカ政府と交渉を行いました結果、平成六年三月八日にプレトリアにおいて、我が方瀬崎在南アフリカ大使と先方ヴェルヘムット運輸郵政大臣との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、我が国と南アフリカとの間の定期航空業務を開設することを目的としており、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空業務がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。  この協定締結によって我が国と南アフリカとの間の人的交流及び経済的交流が増進され、両国間の友好関係の一層の強化に資することとなることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国とジョルダン・ハシェミット王国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ジョルダンとの間で航空協定締結するため、ジョルダン政府と交渉を行いました結果、平成六年四月十三日にアンマンにおいて、我が方池田在ジョルダン大使と先方ジュウェイバー民間航空庁長官との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、我が国とジョルダンとの間の定期航空業務を開設することを目的としており、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。  この協定締結によって我が国とジョルダンとの間の人的交流及び経済的交流が増進され、両国間の友好関係の一層の強化に資することとなることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、航空業務に関する日本国政府ヴィエトナム社会主義共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、ベトナムとの間で航空協定締結するため、ベトナム政府と交渉を行いました結果、平成六年五月二十三日にハノイにおいて、我が方古屋駐ベトナム臨時代理大使と先方ニー民間航空庁長官との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、我が国とベトナムとの間の定期航空業務を開設することを目的としており、そのための権利を相互に許与すること、業務の開始及び運営についての手続及び条件等を取り決めるとともに、両国の指定航空企業がそれぞれの業務を行うことができる路線を定めるものであります。また、この協定は、我が国が従来締結した多くの航空協定と形式、内容においてほぼ同様のものであります。  この協定締結によって我が国とベトナムとの間の人的交流及び経済的交流が増進され、両国間の友好関係の一層の強化に資することとなることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、シンガポールとの間の現行租税条約にかわる新たな租税協定締結するため、シンガポール政府と数次にわたって交渉を行いました結果、平成六年四月九日にシンガポールにおいて、我が方川村特命全権大使と先方コー内国歳入庁長官との間でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、現行条約にかわるものであり、同条約を含めこれまでに我が国が諸外国との間で締結してきた租税条約と同様に、経済的、人的交流等に伴って発生する国際的な二重課税を可能な限り回避するとともに、二重課税が発生する場合には、これを排除することを目的として、我が国とシンガポールとの間で課税権を調整するものであります。この協定を現行条約と比較した場合における特色といたしましては、協定の対象税目に地方税を追加し、用語の定義を整備し、一定の投資所得について源泉地国において限度税率を引き下げるとともに、譲渡収益、協定の不正利用防止等について新たに独立の条項を設け、また、みなし外国税額控除の適用に期限を設けたほか、協定全般にわたって最近の租税条約の改善された規定をできる限り取り入れたものであり、近年我が国が諸外国との間で締結した租税条約と同様、OECDモデル条約案に基本的に沿ったものとなっております。  この協定締結によって我が国とシンガポールとの間の二重課税回避の制度がさらに整備され、両国間の経済及び文化の面での交流が一層促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  以上七件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いをいたします。
  195. 菅直人

    菅委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十分散会      ────◇─────