○中西珠子君 この条約の目的は二つあると思うんです。デュアルというか、二つあると思います。家族的責任を有する男女
労働者の間の差別というものが行われないようにするということと、家族的責任を持つ
労働者と家族的責任がない
労働者との間の差別をなくして
機会均等と均等待遇を促進していくということを目的とする二つの面があると思うのでございます。
この条約は、非常にフレキシブルに国内の事情に合った措置をとって批准をすればよいと。日本は何でもかんでも
法律にびっしりとなっていないといけないということをいつもおっしゃいますけれ
ども、
法律だけの整合性ではなくて、第九条にございますように、「法令、
労働協約、
就業規則、仲裁裁定、判決若しくはこれらの方法の組合せにより又は国内慣行に適合するその他の方法であって国内事情を考慮した上適当とされるものにより、
適用することができる。」と書いてございます。ほとんどのILO条約はこういうことを書いているんですけれ
ども、殊にこの条約に関しましては、第一条の定義につきましても、「被扶養者である子に対し責任を有する男女
労働者であって、当該責任により経済活動への準備、参入若しくは
参加の可能性又は経済活動における向上の可能性が制約されるものについて、
適用する。」と、こう1に書いてございまして、2が御承知のように「この条約は、保護又は
援助が明らかに必要な他の近親の家族に対し責任を有する男女
労働者であって、当該責任により経済活動への準備、参入若しくは
参加の可能性又は経済活動における向上の可能性が制約されるものについても、
適用する。」と、こうなっておりまして、この
内容については第九条に掲げているものの中の
一つによって定義されているものを使ってよいと、非常にフレキシブルに言っているわけでございます。
それから、先ほどおっしゃいました第八条「家族的責任のみをもって
雇用の終了の妥当な理由としてはならない。」というところが大変問題だとおっしゃいましたけれ
ども、これにつきましても、法的な禁止というもの、また法的な強制というものを
要求しているのではない。ただ、家族的責任そのものを解雇の妥当な理由とすることは許されない、間違いであるということで、それで加盟国はこれを
適用するに当たっては、方法は何も
法律によることを強制してはいないんで非常に柔軟性を与えているということなんです。とにかく国際家族年というものが来年参りますけれ
ども、他の国も非常に柔軟な対応をもってこれを批准していくのではないかと
考えておりますので、日本の政府もぜひ柔軟な対応をしていただきたいと思うわけでございます。
それから第十条に、外務省の方はこれを問題点の
一つとして挙げていらっしゃいますけれ
ども、「この条約は、国内事情を考慮した上、必要な場合には段階的に
適用することができる。」と決めておりますけれ
ども、仮に段階的に
適用する場合、最低限どの
程度まで
施策を講じておく必要があるのかということが問題だ、こうおっしゃっているわけでございます。段階的
適用につきましては、第一条の「被扶養者である子に対し責任を有する男女
労働者」、これは絶対段階的には
適用できなくて、こちらはもうそれに対する
施策というのは
適用しなくちゃいけないわけですが、第一条の2の方の「保護又は
援助が明らかに必要な他の近親の家族に対し責任を有する男女
労働者」に対する
施策というものは段階的に
適用してもいいと、こういうことになると私は
考えるわけでございます。
日本は、
育児休業法も既に実施しておりますし、
育児休業法の
休業中の経済支援についても、
雇用保険法の中かも、それを改正することによって何らかの支援策を講じて、漏れ聞くところによりますと、従前の給与の二割ぐらいは何とかなるのではないかということも聞いておりますけれ
ども、そのような状態でございますから、ぜひ百五十六
号条約は批准していただきたいと
考えるわけでございます。
それから、外務省がもう
一つ問題点としてお挙げになっています第十一条ですね。これは「使用者団体及び
労働者団体は、国内の事情及び慣行に適する方法により、この条約を実施するための措置の策定及び
適用に
参加する権利を有する。」と定めておりますが、ここではどの
程度まで労使団体との協議を行うかが問題であると、こうおっしゃっているわけでございます。
これに関しましても、ついこの間の総会に
提出いたしました条約勧告
適用専門家
委員会の報告によりますと、この十一条は使用者団体及び
労働者団体に対する協議というのは、必ずしもこの条約を実施するための措置について両者の同意というものを必要とするものではないし、また国内の
状況に適応した方法で相談や協議をすればよい。そして、「この条約を実施するための措置の策定及び
適用に
参加する権利を有する。」と言っているのは
参加を奨励するという
意味であると、このように専門家
委員会は説明しているわけでございます。
とにかく、各国の事情に合った方法でやっていただきたいという非常に柔軟性を持った条約であると私は
考えるわけでございますが、外務省さんはいかがでございましょうか。