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武田邦太郎君
日本新党、新生党、民主改革連合を代表いたしまして、米の市場開放に関する
ガットの
調整案受け入れについて
所見を述べまして、
細川総理大臣、
畑農林水産大臣、赤松文部
大臣のお
考えを伺います。
今日、
ガットの
調整案受け入れをめぐって大変な混乱と御苦労をされているわけでありますが、これは
日本の
農業ないし稲作の近未来について具体的な展望なり計画なりに言及しないで論議を重ねてきたことが重大な原因の
一つではないかと思います。
現在の
日本の
農業における最大の問題は、若い世代の大部分が
農業に絶望しまして離農しつつあることであります。農水省の
農業調査によれば、昨年の一月一日現在、全国の
農業後継者は四万二千人、
農家八十九戸に一人であります。特に稲作県に後継者がおりません。新潟県では二百五十六軒に一人、秋田県では二百四十二軒に一人、宮城県では百八十軒に一人などであります。老いた世代が農作業からリタイアするのに後継者がいない、だれかに農地を貸そうとしても借りる人がいない、こういう状況が至るところにあります。国境を閉じさえすれば一千万トンの米が自給できるかのように
考えるとすれば大変危険であります。
こういう状況は、外国の
農業に負けたのではありません。国内の二次、三次産業に負けているのであります。農水省の米生産費調査によれば、稲作
農家の家族労働報酬は日当で七千円から一万円以下であります。ところが、二次、三次産業では、ボーナスを含み年間所得が五百万円の人は日当二万円、七百万円の人は日当三万円近くなります。
したがって、農村の青年たちが稲作に全力を打ち込むようにするには、日当二、三万円、年間所得五百万から七百万になる稲作を一般化することが絶対的に必要であります。しかも、青年たちは生涯に三十五年からそれ以上も
農業をするのです。その間、輸入
自由化は必ず阻止するということはだれも約束できないわけです、三十五年からそれ以上の年間。でありますから、
自由化しても大丈夫という稲作の計画に全力を傾注しなければなりません。
農水省は昨年六月、歴史的とも言うべき新政策、新しい食料・
農業・農村政策を発表しました。千数百年にわたり一戸当たり一ヘクタール程度であった
農業構造を、稲作の個別経営体、つまり家族経営で一戸当たり十ないし二十ヘクタール、組織経営体で三十五ないし五十ヘクタールにしようというのであります。私はこの構想を高く評価するのですが、これほどの構想を打ち出すのであれば、さらに進んで輸入
自由化に勝てる新新政策を検討してはいかがであろうか、このように思います。
例年の
農業白書によれば、従事者一人当たり年間純生産は、
農業を一とすれば、二次、三次産業は三・二あるいは三・三見当の格差があります。また、農産物の輸入価格と国内生産者価格の間には一対六前後の格差があります。ですから、労働力一人半の家族経営ならば、都府県で三十ヘクタールの二毛作、二毛作ができない北海道では五十ないし七十ヘクタール、あるいは若干それ以上で大体輸入
自由化に対抗できるし、今後十年の経済成長にも対応できるであろうと思います。自作農の形での規模拡大でなくて、土地代金の要らない借地主体で進むことにしてはどうかと思います。後継者が八十九戸に一人になっておるのでありますから、しかも今後ますます減少する勢いにあるんでありますから、この規模拡大は十分可能なはずであります。
既耕地は、
平成三年八月一日現在五百二十万ヘクタール、うち平野部は七〇%弱、緩傾斜地は一七%、急傾斜地は約一三%でありますが、傾斜地はそれぞれ比較優位作目を選定すれば平野部の普通作物三十ヘクタール相当の所得の上がる経営は可能であります。野菜や果物は普通作物の半分か三分の一の面積で同等の所得を上げることができます。このような形で、全農地にわたり所要資本の投下と高度技術の導入によりまして自然を守り国土を保全することが可能と存じます。
そこで、肝心の稲作ですが、平野部に約二百万ヘクタールの水田がありますから、これに圃場区画の拡大など高水準の基盤整備を施行し、男子一人の肉体労働、女子半人分の頭脳労働が主体となってこなすくらいの三十ヘクタール標準の家族経営を一般化すれば堂々と
自由化に対抗し得る稲作が実現できるのであります。また、単収が現在程度の五百キロでも年間に一千万トン、単収六百キロには必ずなりますから、そうなれば千二百万トン、必要に応じて確保することができるのであります。
農水省は、今年度から第四次土地改良長期計画に十年間四十一兆円、年平均四兆一千億円の事業費を予定しております。平野部二百万ヘクタールの水田基盤整備の事業費は十アール当たり五十万、計十兆円で可能であります。もし年間二兆円の予算を前倒し施行するならば、五カ年で完成するわけであります。施行に先立ちまして
農家の
理解と支持を求める準備期間に一カ年、基盤整備の後、耕土の熟成に二カ年のゆとりを見まして、計八カ年で
自由化体制の整備が可能と思います。
このようにして、国の内外にわたって保護政策を必要としないプロ
農家はおよそ四十万戸前後になろうかと存じますが、これとは別に、農外所得と安定した小作料所得で生活する
農家約三百四十万戸、現在農村地域に居住している約一千万戸の非
農家、それに都市居住者の中の希望者相当数のために平均一アール程度の自家菜園的な福祉
農業千数百万戸分の農地、合計十数万ヘクタール程度でありますが、整備しておいたらいかがかと存じます。これは傾斜地でもよろしいのであります。米国のライフスタイルファーマー、ヨーロッパのホビー
農業と同じ性格のものであります。
そこで、
農林水産大臣にお願いしたいのは、第一は先ほど申しました新政策の再検討であります。第二は、各地の
農業試験場と大学の協力で
自由化を乗り越え得るパイロットファームを五、六戸ずつ設計いたしまして、志望する
農家を公募して担当してもらいまして、全
農家、全
国民の前に新時代の
農業経営を展示することはいかがでしょうか。五戸分で十億円程度の予算であります。新規学卒者の
農業就業が激増するのではないかと思います。ぜひ文部
大臣と御一緒に御検討を願います。もちろん研究の自由はどこまでも尊重されなければなりません。もっといい研究があればどしどしやっていただきたいと思います。
両
大臣のお
考えを伺います。