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公述人(
浅野史郎君) 御紹介いただきました
浅野でございます。おいしい米の
代表でありますササニシキとひとめぼれで有名な
宮城県から参りました
宮城県知事の
浅野でございます。
おいしい米ですが、私は
新米の
知事でございまして、ことしの
新米の炊き方にはコツがあって、少し水分を多く炊いてほしいと
皆様にもその
ように
お願いをしておりますが、またよくかんで味わっていただきたい、だんだん味がわかってくるでしょうということで、
新米知事一カ月半ばかりやらせていただいております。
私がこの場に呼ばれたこと、大変光栄でございますが、これは私のこの問題に関する見識というよりは、最も最新の
知事選挙で選ばれた
知事である、またそのほかの若干の
話題性ということではないかと。したがって、私
個人が申し上げられることは一般の方とほとんど変わらない
感想文程度のことになろうとは思っております。その中で私がここで申し上げられることと言いますと、
自分の
体験に基づいたやはり
選挙の
経験、とれからくる率直な
感想ということになろうと思っております。
二カ月半前までは私は公務員をやっておりまして、
政治というものについては全くの門外漢でございました。しかし、この私が急遽
ふるさと宮城県の
知事選挙に出るということになった時点以降、
選挙ということが私について回ったわけでございます。そして、ほんの一カ月半前に終わった
選挙は大変強烈な私にとって
印象を残しました。また、まだ生々しい
経験として残っております。本日は、そのことについての
感想を申し上げることでいささかの
参考になればということでここに参っております。
申し上げました
ように、初めての
経験で右も左もわからずやってまいりました。また、私をその
選挙で支えてくれた
人たちも実は中心は私の高校の
同級生ということで、これは私以上に
素人でございました。
出陣式のときには、
たすきが間に合わない。これは
たすきは
選挙管理委員会からもらえると信じ込んでおった。そういったところにもあらわれた
ような
素人もいいところのメンバーが私を支えてくれたわけでございます。
また、
お金はかかりませんでした。これは威張って言うところもございますけれども、かけ
ようがなかったというのが
実態でございます。
選挙告示前、三日前に、それまで勤めておりました厚生省を退職して急遽出馬したわけでございまして、
お金をかける時間がなかったということが
一つでございます。また、
お金をかけるすべも知らなかった、どこで使っていいかもわからなかったということも事実でございます。また、もちろんそういった使える
お金が
手元になかったということが大きな
理由でございますけれども、
使いようがなかったというのが
実態でございます。
そういった
選挙を終えてまいりまして感じたこと三点ばかり、本当に
感想文になってしまいますけれども、申し上げたいと思います。
まず第一点目は、十七日間の
選挙でございましたけれども、一応戦ってまいりまして私が感じたのは恩というものでした。
選挙を通じてたくさんの
方々に私は恩を受けたという感じをしております。どうしてこの私のためにこんなにやってくれるんだろうと
同級生の諸君にも心の中で手を合わせてまいりました。また、道端で名前も知らない方から千円、二千円という
カンパもいただきました。また大変広く薄くの
カンパもいただきました。いろいろな形で御協力をしていただいた方に心の中で手を合わせながら恩を感じました。
そして、その恩を感じて、もし仮に私が
知事に当選することがあったときに必ずその恩には報いなければならないということも感じました。これは人間として当然のことだろうと思っております。私はその恩には必ず報い
ようというふうに決心をしたわけでございます。
私の恩の報い方は、私の
ふるさと宮城県を
日本一の
福祉先進県にし
ようということで恩に報いる、その道もあろうと思っておりますし、またお一人お一人の私にかけられた、また県政にかけられた期待というものにこたえていこう、そのことが恩に報いる道というふうに考えております。ただ、これがある
個人ないしある企業、団体から多額の献金といいますかをもらった場合、これも私はその恩に報いたいと、この気持ちは隠すことができません。したがって、そのとき感じましたのは、そこでもらってはならないということでございます。そういった恩を受ければ必ず返す、これが人の道と。人の道からは外れたくない、であるとすれば、それはもらってはならないというふうに感じた次第でございます。
二番目に感じたことは、先ほど申し上げました
ように、私の
選挙を支えてくれたのは
素人集団でございました。
候補者ももちろん初めての
選挙でございましたし、またそれを支えた
集団もそれ以上の
素人、先ほど申し上げたとおりでございます。
ノウハウを知らない。先ほどの
ように、
たすきが
出陣式に間に合わなかったというのはまだ
笑い話程度でございますけれども、いろいろ
プロの方の話をまた
素人集団は聞いてまいります。
選挙というのはこうやってやるものだ、プラクティカルな
部分での
ノウハウもございますけれども、
お金の使い方とか集め方とか、いろいろなことについての示唆がございます。そのときにいろいろ感じましたけれども、やはりこれは知らないよりは知っていた方がいい。ただ、それはひょっとすると法の
抜け穴であったりいろいろな
意味での裏であったりということもあるのではないかということでございます。
そこで、私
ども素人集団の
選挙から申し上げますと、
選挙を公平にやってもらうためには
ルールがなければならない。これが今回の
法律の改正によってその
ルールがまた新たに確定されるわけでございますけれども、
ルールがなければならない、これがまず第一点でございます。実際に
選挙をやって感じましたことは、その
ルールをだれもが守れるものでなければこれは
勝負にならない、公平な
勝負にならないということでございます。
選挙を何回も何十回も
経験してきた方は、いろんな
意味でのまともな
部分と申し上げましょうか、
選挙の
戦い方ということを知っていることは当たり前でございますが、それ以外の、どうも我々のひが目かもしれませんが、いろいろ裏にも通じているとか
抜け穴を知っている。そうすると、知っていない側はそれだけいわば不公平な立場に立たされるということがあるのではないかということも感じた次第でございます。
この
法案は必ず通過成立させていただきたいと思いますが、もう
一つこの段階で
お願いしたいことは、つくった
ルールは絶対に守っていただきたい。その法の
執行においても、百戦錬磨の
選挙の
プロが大変に得をするといった
ような
執行の仕方は厳にできないという
ようなところにもぜひお心配りをいただきたいというふうに感じた次第でございます。
三番目の
感想でございますが、やはり
選挙は
素人にはわからないということ、これが実は
選挙民の間にも浸透しているのではないかということでございます。今回の
宮城県知事選挙、
有権者数はざっと百七十万人でございましたが、
投票率が三九・二%でございましたのでざっと百万人以上の方が
選挙に行かなかったということでございます。私は二十九万余票の票を獲得したわけでございますけれども、百七十万マイナス二十九万人の方は、実は
選挙に行かなかったか私を支持しなかったかいずれかでございます。大変その
意味ではその事実の重さを今もかみしめているところでございますが、これは推測するに、
選挙というものに対する県民の期待といったものがやはり大きくはなかったということを示しているのではないかというふうに感じております。やはり、
素人には
選挙というものはわかりにくいし、また何かうさん臭いものというふうにとらえられている。これをぜひ解消しなければ、本当の
意味での民主主義ということにはならないのではないかというふうに感じた次第でございます。
選挙を実際やってみて、庶民の感覚から見ていかがかというふうに思うこともございました。例えば、
戸別訪問が禁止ということでございますが、
候補者としてやっておりますと、ぜひ親しくお話をしたい、これは素直なところでございます。それがだめだということ。それから、立会演説会というのがなくなったというのも実は今回初めて知りました。私、
候補者としては相手方の
候補者がどんなことをお考えになっているのかということを対面しながら知りたいということも感じました。また県民の方はなおさらそうだと思っております。どちらの考えがまともなのかということを
候補者を並べ立てて見たいと思うのは率直なところではないかと思っておりますが、いろいろな観点からそれが今実現されていないというのは、
選挙を庶民、県民の方に広くわかっていただくという
意味では大変抜けている
部分ではないかというふうにも思っております。
素人と
選挙の
プロとの違いということで、
一つ私がショックを受けた発言を紹介したいと思いますけれども、残念ながら我が
宮城県で
知事にまつわる不祥事が生じました。その結果として今回の
知事選挙があったわけでございますが、それをめぐって、前
知事が
お金をもらい、それを
選挙に使ったのならともかく私腹を肥やしたのは許せない、そういった発言が実はございました。それは何か当然の
ようにおっしゃっていたと私は聞いたんですが、
選挙に使うならともかくというのを公然とおっしゃる感覚がやはり庶民からは遠いのではないかというふうに感じた次第でございます。
選挙に関しての
感想ということになってしまいましたが、三点でございます。残された時間、あと二点について申し上げたいと思っております。
二番目は
政治活動ということでございます。
今回の
政治資金規正法、
政治活動に使われる
お金をどうし
ようかということでございますが、その
政治活動というものに関しては、私の
ようないわゆる首長と
議員さん方と違うのではないかという感じがしております。
私の場合は、一カ月半の
経験でございますけれども、いわば毎日毎日の仕事が広い
意味での
政治活動である。行政の中で仕事をしておりますけれども、これを全うしていくということが
政治活動そのものであろうというふうに感じて、その
意味では大変楽だなというか、仕事即
政治活動というのは楽だという面がございます。
一方、県会
議員という
方々を見ておりますと、なかなか
自分の
政治活動というのはどういうものかというのがわからない、したがって勢いいわゆるサービス競争といったものになりがちで、それ即
政治活動というふうになってしまう。何とか政策本位の
政治活動というのができないものかということは考えておりますが、まだ私としてはどうしていいかはわかりません。
次に、
政党助成の問題でございます。
これはさまざまの場で、国のレベルとそして私ども地方のレベルとでは違うという御議論がございました。同じ
政党の系列化を地方
政治に持ち込むことはできないのではないか、私も含め首長の九九%が無所属ということでございますので、その面からも
政党の系列化というのはややそぐわないという感じはしております。
そこについての論点はかなり言い尽くされておる
ようでございますので、私は別な観点から申し上げたいと思います。
政党ということで考えた場合、これはもちろん政策を同じにする
人たちがグループとして活動をする、これが
政党でございますが、国のレベルでございますと、防衛問題、外交問題、税制問題、そういったことが論点となり、そしてそれが
一つの政策となり
政党を形づくっていくと思っておりますが、地方の場合、県の場合はいささか違うのではないかというふうに思っております。
私は、先ほど申し上げました
ように、
宮城県を
日本一の
福祉先進県にしたいというふうに、これを公約として
知事選挙も出たわけでございますが、例えばこの福祉の問題について、できる限りやるというのと、まあそれはそこそこにしておいてもうちょっと開発とかそちらの方に力を入れるべきだ、それはいろいろ
意見があっていいと思います。地方の場合には、そういった考え方、ニュアンスの違いで
一つの政策グループというのができていく、これは国の場合といささか違うのではないかというふうに思っております。
政党というものを
一つの受け皿として
政治資金の流れを考えていく、これは方向としては正しいと思っておりますけれども、その系列というか、それが国のレベルと地方のレベルとでは争点の違いから違ってくることが十分あるのではないかということを今感じている次第でございます。
最後になりましたが、
政治改革四
法案の行方についての期待を申し上げて、私の陳述を終わらせていただきたいと思います。
確かに
選挙制度につきましても、さまざまな
政治改革の方向につきましても百点満点のものはなかろうと思っております。しかし、
現状よりも一歩でも二歩でもより理想に近い形であれば、私はぜひ今
国会で成立をさせていただきたいというふうに思っております。それは、実は
政治改革の問題もございますけれども、今、
宮城県を含めた地方の持っている懸案が山積をしております。冷害の問題、そして農業問題、深刻な景気の問題、これについて早く全力を挙げてやっていきたい。そしてその際には、国のレベルでの御支援、御指導もともにやっていかなければならないという時期でございます。
政治改革法案が今
国会で成立を見ずに、さらにこれが次の
国会以降へも引き継がれるということになりますと、今言った
ような懸案がどうなるのかということを大変心配しているところでございます。百点満点はないということで、ぜひあるところで妥協もしていただき、今
国会での成立を図っていただく、これが地方の立場といたしましても、心から念ずるところでございます。
きょうは、この
ような場を設けていただきまして大変ありがとうございました。(拍手)