○小島慶三君 ありがとうございました。
恐らく、こういう
産業からこういう
産業へといったような形のビジョンというのはなかなか描きにくいんだと思うんですけれ
ども、これからのさっきお話の出ました
産業の質的な展開というか、あるいはレベルアップというか、その辺のところをねらって大きな流れを巻き起こされるということではないかと思うんです。ですから、従来ですと一辺倒で外へ出ていく。例えば、
日本のまねをした中国の郷鎮
企業なんというのは千二百万ほどこれはつくられたけれ
ども、全部これは輸出に特化していくということで外貨を稼いで必要な資本財を買う、
日本がかつてやったようなコースをとっているわけであります。
日本はむしろその
段階でなくて、輸出一辺倒というよりもむしろ内熱といいますか、内に熟するといいますか、そういうことが恐らく必要になってくるのではないかと思うのでございます。
それで、次に
中小企業の転換能力ということでございます。
なかなか牛を水のところまで引っ張っていっても水を飲まないということでは困りますが、そういった
意味の転換能力というものをどのようにお考えになっておられるかということで、私の家の経験から申しますと、私の家は、忍藩で下級武士の内職が青じまというものだったんです。一時使われなくなりまして、今はジーパンなんかでかなり使われておりますが、その青じまをつくっているうちに、
需要が限られているものですから、作業衣とかあるいは大工さんとか屋根屋さんとかそういう方の使用、あるいはゲートル巻きをつくるとか、そういうことでだんだん
需要、マーケットが変わってまいりまして、それじゃ何に転換しようかというので、一大決心で足袋に転換したわけでございます。
足袋も一時華やかな
時代があったわけですね。それで、私
どもは行田地区の足袋でございますが、これはもうかなり零細であるにもかかわらず一大
産業団地になりまして、それで、これが大阪の福助さんといったような大
企業とも十分拮抗して伸びてきたわけでございます。それには
一つのノウハウというかそういうものがありまして、徹底的に作業工程を分業化する。足袋のあんなものでも二十五工程ぐらいあります。ですから、それを分割して分業形態をとる。さらにその分業を
もとにした協業というものを進めるということで、これはかなりな力になって転換していったわけであります。
それからその次に、足袋がだんだん売れなくなりまして、これはおはきになる方もなくなって、例えば屋根屋さんとかそういう方は足袋をはかれますけれ
ども、あとは室内用という形で使われるということで、だんだん
需要が減ってまいりまして困ったと思っている間にいわゆる軍需
景気が次々に起きてまいりました。日清とか日露とか欧州大戦とか、その軍需
景気というのはどういうことかと申しますと、船の上で足袋をはけば滑らないわけです川だから艦上足袋と申しておったそうですけれ
ども、そういう
時代があった。しかし、これは戦争が済むとぱったりなくなって、今度は学童服とか作業服とかそういうものをつくり始めたわけでございます。したがって、その辺の転換は非常にスムーズだった。
しかし、今度の戦争の後でそういった
需要も見込めなくなりまして、ファッションに転換した。ところが、ファッションに転換するにはかなりのデザイン能力が必要であるということで大変苦労したわけでありますが、それから最後の転換としてICに転換したわけであります。これは女工さんの手先の器用な労働力がありますから、それをそっくりICに転換した。ところが、ICの方は初めは末端の作業は労働集約的だったんですけれ
ども、これがだんだんに機械化されてまいりました。その機械化というものが急ピッチで、せっかくの女工さんの指先のしなやかな労働力がこれも
余り意味がなくなってしまいましたということで、転換の最後に私の家は失敗したということになるわけであります。
そのときに一番問題だったのは、やはり大
企業とのジョイントベンチャーを組んだということが非常なミスでありまして、これは大
企業の
設備投資能力と比較になりませんから合弁といっても一緒にやっていけないわけですわ。それでだめになってしまったという経験がございます。
ただ、これは転換と申しましても、全部ミシンを使うわけでありますから、いわば異業種への転換というよりもミシン
産業といったような展開であったと思うんですね。
だから、恐らく今度の場合も、そういう従来の作業なり生産工程の延長でやれるところは
余り心配がないんだろうと思うのであります。むしろそれよりも心配なのは異業種交流ということで、それがある
程度のお互いの結びつきを持って展開していく、こういうところにどういうふうに支援、応援をしていったらいいかというのがかなり問題になるのではないかと思うのでございます。そういった転換能力の問題について、これは後でまた御
質問させていただきますけれ
ども、一に金であり、二に技術であり、三にシステムであるというふうに私は思っております。
中小企業庁の方の今度のこの
法案を通じてのそういった転換能力という問題についてのお考えを伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。