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政府委員(濱邦久君) 先に
法務省の方からお答えできる範囲のことをお答えさせていただきたいと思います。
委員のお尋ねの第一点の必要的付添人制度あるいは国選による付添人制度の導入の可否の問題でございます。
これはもう
委員も十分御案内のとおり、現行法のもとでは、少年は
被疑者または被告人といたしましては
刑事訴訟法によりまして成人と同様に弁護人選任権が認められているわけでございます。また、事件が家庭
裁判所に係属中は少年法によって付添人を選任することが認められているわけでございます。
ところで、昭和五十二年の法制審議会の少年法改正についての中間答申には、これも
委員十分御案内のとおりでございますが、国選付添人制度、それから年長少年の一定の重大事件についての必要的付添人制度が、少年審判における検察官関与等とともに盛り込まれていたわけでございます。この答申に基づく改正には、日弁連等の
反対もありましたなどの事情もあって立法には至っておらない、今直ちに立法できるという見通しも立っていないわけでございます。
それから、第三番目の御質問になるわけでございますが、現行少年法についての、例えば黙秘権告知の規定がない、あるいは証人尋問権、特に
反対尋問権が保障されていないのではないか、あるいは三十二条で抗告が制限されている、こういう点についての
考え方はどうかというお尋ねについてお答えを申し上げたいと思います。
委員が御
指摘になられましたとおり、少年法には黙秘権あるいは証人尋問権に関する具体的な規定はございません。しかしながら、現在行われておりますところの実務の運用におきましては、これらの権利は十分に保障されているものというふうに承知しているわけでございます。
もう少し具体的に申し上げますと、実務の運用につきましては、これは本来
法務省でお答えすべき事柄ではないかもしれませんが、私ども承知しておりますところについてお答え申し上げますと、まず
委員御
指摘の黙秘権告知の点でございますけれども、在宅の事件につきましては、各家庭
裁判所において、例えば少年と保護者の皆さんへなどと題する
書面を少年に郵送あるいは交付するという方法で黙秘権等を告知しているというふうに承知しているわけでございます。また、身柄事件の場合には、家庭
裁判所において観護措置決定を行う場合に少年に対して黙秘権を告知しているというふうに承知しているわけでございます。さらに、審判を行う場合には、第一回の審判期日において裁判官が少年に対してまず黙秘権を告知する、その後に非行事実を説明して陳述を聞く運用がなされているというふうに理解しているわけでございます。
次に、
委員が御
指摘の証人尋問請求権の問題でございます。
少年法は、申すまでもないことでございますが、職権主義的審間構造をとっていることから、少年及び付添人からの直接的な証人尋問請求権に関する規定はございません。しかしながら、少年及び付添人は証人尋問に関しまして裁判官の職権発動を求める申し立てができるわけでございます。また、裁判官が合理的な
理由がなくて証人を尋問しない、あるいはそれが保護処分の決定に影響を及ぼす場合には、これは抗告
理由となるというふうにされているわけでございます。裁判官がこれを十分尊重する運用が定着しているというふうに
考えているわけでございます。
少年審判の実務運用上は、裁判官は少年の言い分を十分に聞いた上で事実を争う機会を与えておるわけでございまして、少年が第三者の供述調書の重要な部分を争っているというような場合には、
裁判所は原供述者、もとの供述者を証人尋問して少年側に
反対尋問の機会を与えている。弁護士である付添人が選任されていない場合には、裁判官が少年側の希望する事項について少年側にかわって尋問するというような配慮もなされているというふうに承知しているわけでございます。
それから、
委員が御
指摘の第三番目の抗告の権利でございますが、少年法三十二条は、「保護処分の決定に対しては、決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認又は処分の著しい不当を
理由とする」抗告を認めておりますけれども、保護処分の決定以外の決定については、抗告は認められていないわけでございます。
その
理由につきましては、ごくかいつまんで申し上げますと、例えば審判不開始及び不処分決定に対する抗告が認められていないというのは、これは非行事実の存在を認めた点を争いたいという場合でありましても、これらの決定が少年にとっては不利益な処分ではないということなどから、
刑事訴訟手続においても免訴、控訴棄却、管轄外の裁判に対する被告人の上訴が認められていないのと同様に、抗告を認める必要はないと
考えられているからであろうというふうに
考えるわけでございます。
また、児童相談所長等送致決定あるいは
刑事処分相当の検察官送致決定につきましては、これは端的に申しますと、当該事件の処理という面から見れば、言うなれば中間的な処分にすぎないという
理由から抗告を認める必要はないというふうに
考えられているものと理解しているわけでございます。
いずれにいたしましても、昭和五十二年の法制審議会の少年法改正についてのいわゆる中間答申では、「少年の権利保障の強化及び一定の限度内における検察官関与の両面から現行少年審判手続の改善を図るものとすること。」とされておるわけでございます。
委員御
指摘の見地からの改正事項として、少年の証拠調べ請求権及び証人尋問請求権等について事実認定手続に関する規定を整備するということ、それから少年等の不服申し立て制度を整備してこれを拡充するということが盛り込まれているわけでございます。この答申に基づく改正には、先ほど申し上げましたように、日弁連等を初めとして強い
反対があることなどから実現には至っていないわけでございます。
質問事項が多岐にわたっておりますので、項を分けてお答えいたしました。以上でございます。