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1993-12-03 第128回国会 参議院 規制緩和に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十二月三日(金曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         林  寛子君     理 事                 斎藤 文夫君                 陣内 孝雄君                 今井  澄君                 野別 隆俊君                 矢原 秀男君     委 員                 尾辻 秀久君                 加藤 紀文君                 笠原 潤一君                 沓掛 哲男君                 須藤良太郎君                 竹山  裕君                 岩崎 昭弥君                 喜岡  淳君                 佐藤 三吾君                 村田 誠醇君                 山本 正和君                 武田 節子君                 泉  信也君                 小島 慶三君                 古川太三郎君                 足立 良平君                 西山登紀子君                 西川  潔君    事務局側        常任委員会専門        員        菅野  清君    参考人        創価大学経済学        部教授      岡野 行秀君        株式会社長銀総        合研究所理事長  竹内  宏君        東京大学経済学        部教授      植草  益君        株式会社テレビ        東京取締役解説        委員長      宮智 宗七君        日本商工会議所        労働委員会副委        員長       浅地 正一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○規制緩和に関する調査  (規制緩和に関する件)     ―――――――――――――
  2. 林寛子

    委員長林寛子君) ただいまから規制緩和に関する特別委員会を開会いたします。  規制緩和に関する調査を議題とし、参考人から御意見を聴取いたします。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、五人の方々から御意見を賜りたいと存じます。まず、午前は創価大学経済学部教授岡野行秀君、株式会社長銀総合研究所理事長竹内宏君に御出席いただいております。  この際、参考人方々にお礼を申し上げたいと思います。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、ここに御意見を聴取することができますことにつきまして、委員会を代表いたしまして厚く感謝を申し上げる次第でございます。皆様からの忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の調査参考といたしたいと思います。  次に、議事の進め方でございますが、まず岡野参考人竹内参考人の順で、それぞれ二十分程度御意見をお伺いいたします。その後、一時間二十分ほど質疑をいたしたいと存じます。  本日は、あらかじめ質疑者を定めないで、委員には懇談会形式で自由に御質疑をいただきたいと思います。質疑を希望される方は挙手を願い、私の指名を待って、質疑は五分間以内にお願いをしたいと存じます。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、これより岡野参考人に御意見をお述べいただきたいと存じます。岡野参考人
  3. 岡野行秀

    参考人岡野行秀君) お手元に簡単なレジュメを差し上げてございますので、書いてある分につきましては多少はしょって御説明させていただきたいと思います。  一番最初に私が政府規制問題どこれまでどういうふうにかかわってきたかということをちょっと書いておりますが、私は交通経済学を担当しておりましたので、国鉄問題等前からタッチしていた、あるいは運輸省のいろいろな研究に携わったこともありました。その間に、例えば運輸省あるいは業界の方からこういう問題があるんだというお話を聞きまして、どうしたらいいだろうかと。よく話を聞きますと、どうも実は規制が問題であって、規制がなければそういう問題は起きないというケースが結構ございました。そして、昭和四十六年の運政審総合交通体系の議論をやりましたときにもかなり私は疑問を持っておりました。  たまたまイギリスに行きましたときに、ここに持っておりますが、「トランスポート ポリシー-ゴーディネーション スルー コンペティション」、こういう小さい本を見つけまして、私が考えていることと全く一致しておりましたので、それ以来そういうことを勉強してまいりました。  それから、昭和六十二年から三年にかけまして行革審公的規制の在り方に関する小委員会に参与として参加しまして、答申作成に協力いたしました。  一九七九年に私、オックスフォードに二年ばかりおりまして、そのときに今紹介しました「トランスポート ポリシー-コーディネーション スルー コンペティション」という本を書いた人にお会いしまして、日本では私は規制緩和論者なんだけれども大変マイノリティーで力にならないと言いましたら、老人の方でしたけれども、自分も一九三〇年代マイノリティーだった、今やマジョリティーになってきた、そのうちにマジョリティーになるから頑張れというふうに激励を受けたことがあります。最近では流行語の金賞に規制緩和なんという言葉が出てまいります。私としてはちょっと苦々しく思う点もあるわけでございます。  規制というのはもともと、日本では今社会的規制と呼んでおりますけれども、そういうところから始まったんですが、経済的規制につきましては、鉄道事業を対象にしまして一八八七年にインターステート・コマース・コミッションを設立して鉄道規制をやるということになりました。その規制目的独占的事業独占の乱用を防いで公衆利益を守るということでありました。  幾つかの条件がございますが、その条件が満たされない場合を除きますと、市場競争的であれば市場機能が働いて社会的に望ましい資源配分が達成されますので、政府は何もする必要がなく市場に任せればいいわけであります。市場競争政府規制も実は目的は同じで資源配分を最適にするということであるわけでして、この点は実は大変重要なことだと思います。  政府規制は、本来はアダム・スミスの市場の見えざる手にかわって見える手で市場をうまく導こうとしているものである。したがって、後にちよっと書いてございますが、もし全能の神ですべてのことが予知でき、かついろいろな利害にとらわれないでやるのであれば、実は規制でも同じ結果が得られるということになるはずのものでございます。  ところが、なぜ規制緩和が問題になったかといいますと、規制をする側においてやはり規制失敗があると。市場失敗を是正するために見える手でそれを是正しようとしたんですけれども、実は政府規制にも規制失敗があったということがわかってきたからであります。その結果、たとえ市場失敗があっても、それによる社会的な損失規制失敗がもたらす社会的損失よりもかえって規制失敗による社会的損失の方が大きいんじゃないか、むしろ市場失敗で少し問題あるけれどもその社会的な損失の方が小さいのではないか、そういう疑問が出てまいりました。  それに加えまして、政府規制規制当局にかかわる経費とそれから規制当局は余り感じていないわけですが被規制者を、経営者を呼び出していろいろな行政指導をする、その場合には被規制者の方は費用を負担しなければならないわけでありまして、JRのある会社の社長さんは、私は東京へ月に三回か四回は行かなきゃならないと。本当は経営に時間を当てられる人でもやはりこうして東京へ出てこなきゃならない、これは実はコストになるわけであります。  規制失敗しましたのはどういうことによるかといいますと、それは一つは誤診であります。これは病状あるいは原因判断についての間違いであります。過当競争とよく言われるんですけれども、過当競争という言葉は悪いイメージを持っておりますが、よく考えてみますと実は競争が激しいだけでありまして、規制があるために、例えば白タクが発生するのも、それは実は市場が要求しているものに対してそれが対応していないから白タクが発生するわけであります。白タクが発生しますとこれをまた規制しなきゃならないということで、規制規制を呼ぶという形で、誤った規制原因でそれを正そうとするのにさらにまた規制を加えるという形で規制がふえていくわけであります。  したがって、アメリカの場合でもそうだったんですが、鉄道の場合も実は、もっともさっき申し上げましたように独占規制のために鉄道規制を始めたんですけれども、交通市場競争的になっているにもかかわらず独占的な規制をやることは実はまずかったわけですが、そのことに気がつかないでその上に別の規制でそれを正そうとしたことが実は国鉄問題の一つの要因であったわけであります。  このようにまず病状原因判断の間違いをいたします。  それから二番目が今度は処方せんあるいは治療誤りであります。診断は正しいんですが、治療が間違って病気を悪化させる。これは過当競争を正すために競争規制するというのはまさにそれであります。それから、多分銀行利子規制についても同じだろうと思いますが、臨金法による金利規制もその一つだろうと思います。それから、場合によっては予測誤りを犯します。国鉄がおかしくなった一つ原因としては四十六年代後半に国鉄貨物輸送量過大予測をしまして、貨物部門に巨大な投資をしたということが後々響きました。  それから三番目に、政策についての見解の相違というのがあるわけですが、ある政策について見解が異なるのはなぜかといいますと、一つ政策評価の基準に違いがある場合でありまして、それは政策とその効果についての判断の差異があるからです。目的は、病気になった人を治そう、病気を完治させようということでありますが、病状判断が一致していましても、ある治療法についての効果判断に違いが出てくるということがあります。したがって、しばしば新聞紙上で、よかれと思った政策が裏目に出ると言いますが、実はこれはもともと政策が間違っていたということの証拠であるわけです。  私が、規制のもたらす弊害のうち、特に一般に言われていることよりも強調したいのは、規制当局がまず被規制産業のとりこになってしまっている。元来、公衆利益保護のためのものであったものが被規制産業利益保護になってしまった。これはジョージ・ステイグラー等が早くから指摘していたことでありますが、もう一つ規制の存在が被規制産業経営者を一種の視野狭窄症にかからせて経営の活力を失わせる。その結果として市場成果が悪化するということであります。  例えば、私のかつての教え子が遊びに来まして、先生郵政審議会メンバーでしたねと言いますから、ああそうだと言いましたら、郵貯を何とかしてくれませんかと言うんですね。私は怒りまして、もう今は任期が切れたから審議会メンバーではないけれども、君ら若い人が何とかしてくれというのは一体どういうことなんだ、郵貯をつぶすというぐらいの気持ちで物を考えないのかと言ってしかってやったことがございます。  それから、私は東京大学を定年退職しましたときに退職金が出ましたので大口定期にしたんですが、その大口定期預金自動継続にしますと、六カ月にしますと次の六カ月は金利がだんだん悪くなるんですね。私がそのことを、たまたま二人の別々の信託銀行に勤めている教え子たちが来ましたときに、一体どうなっているんだ、自動継続してくれるようなお客さんというのはいいお客さんだから当然いい金利をつけてしかるべきだろう、まあ集める競争があるだろうから一番いいやつとは言わないでも、二番目ぐらいにいいのを出すのが当たり前だろうと言ったら、いや先生、釣った魚にえさはやりませんと、そう言うじゃないですか。  じゃ、社内では一体どういう評価をするのかと聞きましたら、集めできますとやはりかなり評価されるわけですね。同じ集めてきた中で、今度は集めてきたものが解約された場合には同じ点だけ減点になるかというと、どうもそうじゃなくて集めてきた方の点が高くて、解約されたときの点の方が小さいと。それじゃ、二人いるんだからキャッチボールをやったらお互いに評価が上がって銀行の中で偉くなれるんじゃないかと言ってからかってやったことがございました。  こういうのは、やはり自分たちがやれる、使うことができる経営戦略というもの、あるいは経営手段戦略について、それが規制によって限られているものですからその限られているものの中でしか物を考えなくなる、こういうことがあると思います。そういう意味で、私は視野狭窄症というふうに呼んだわけです。  もう一つ例を挙げますと、先日までタクシー規制緩和特別委員会に私はおりまして、最終的な答申をつくる段階でもかなり力を入れたわけでありますが、そこでも事業者の方と話しておりますと、今羽田は移りましたけれども、前の羽田ですと、蒲田までと言いますとまず嫌な顔をするんですね。大変嫌な顔をする。あるいは、常識外だというようなことを言われるわけですが、蒲田までだったら何人かなぜ相乗りさせてやらないの、相乗りさせれば十分にペイするんだからいいだろうと言ったら、そう言われりゃそうですねと。そういう発想は全くありませんでしたというふうに事業者が言うわけであります。  私は、やはり規制がもたらす弊害というのは、そういう経営の中で採用できる経営政策手段の限界を狭くしてしまう、範囲を狭くしてしまう、これが問題であって、それになれてしまうとその中でしか物を考えられなくなるということだろうと思います。  規制緩和のあり方についてでありますが、経済的規制原則廃止と、私は原則というふうにつけました。  それから適正な実効ある社会的規制実施であります。  規制関係の法律はたくさんあります。一万幾らあるということはよく言われますけれども、実は数の問題ではなくて、市場成果を悪くするのに非常に影響のあるようなものを廃止ないし緩和するということが重要であると思います。  参入規制、この中に退去規制もあります。参入規制退去規制とそれから価格規制市場競争を妨げまして、特定産業特定企業超過利潤をもたらして、いわゆる準地代が生じます。これが既得権化するわけでありまして、最近不況タクシーの方も収益が余り上がりませんので今存在しないんじゃないかと思いますけれども、大変景気がよくてタクシーの需給がきついときにはタクシーナンバー権というのが存在して、新しい免許がおりないものですから、したがって車をふやすには他の業者から車を買う。そうしますと、ひどいときには一台一千万円に近いような、あるいは一千万円を超えるようなナンバー権が成立していたそうであります。  それから、現在はこれもどうかわかりませんけれども、鮮魚の仲買人の権利、これもかなり高い権利金がついていたようであります。  これは、規制が存在して特定人たちに準地代を提供する、そういう関係であります。そういうものを得ている人たちは、当然それを侵すようなものについては猛烈に反対するという形になります。  それから、社会的規制がございましたが、社会的規制というのは日本語でありまして、経済的規制と言われているのは、実はイギリスの一九六八年のトラック運送業規制緩和のときにクオンティティーライセンシング、量的免許という言葉がありました。それに対してクオリティーライセンシング、質的免許というのがありまして、この違いを日本語では経済的規制あるいは社会的規制というように呼ぶようになってきたようです。  したがって、クオリティーですから主として安全等にかかわる規制であります。これは必要不可欠で厳格に実施する必要がありますが、しかし社会的規制が実質的に経済的規制機能を果たす可能性があります。  例えば、過度の安全規制をやることによって参入をしにくくするということがあります。それから、場合によっては意図的に経済的規制として働くように社会的規制をデザインするというおそれもありますので、この点のチェックが必要であろうと思います。  そこのレジュメには書かなかったんですが、私が一つ気になりますのは、都市計画上の規制緩和をして容積率を緩和すべきだという主張であります。  私はこれにはにわかに賛成しがたいわけであります。  ある特定の地域あるいは特定の地点をとってそこの容積率規制が厳し過ぎるということは十分あり得ると思いますが、しかしこれを一般化しまして全部すべてについて容積率を緩めるべきだということについては大変問題があると思います。  現在の狭い道路のまま道路の両側が高層化したら一体どうなるかということを考えてみたらいいわけでありまして、さらに増加したフロアで働く人がふえますと通勤者がふえます。生活大国が叫ばれ、通勤混雑率を二〇〇〇年に一八〇%にするという目標を立てていますが、さらに東京で働く人がふえますと鉄道通勤混雑率は低下しないということになります。  したがって、容積率緩和のためには、少なくとも未整備都市計画道路を完成するとか、あるいは高層化するときには道路からセットバックするとか、そういうことをしていきませんと問題がありますし、さらに都市鉄道輸送力増強コストを負担する等の条件整備が不可欠であります。  ヨーロッパの都市なんかに行きますと、都市が大変きれいだなと我々思いますけれども、あれはやはり非常に厳しい都市計画があるからでありまして、個別の部分において問題があるからといってすべてに及ぼすのほかえってよくないというふうに思います。  それから六番目に、行政手続透明化であります。  規制を正確に定義する場合には私は行政指導まで含めて定義すべきだというふうに思います。  経済的規制を完全に廃止できない場合というのがあるわけです。それは、例えば今回のタクシー規制緩和もそうですが、順繰りに段階を追ってやろうということですので、したがって過渡的には段階ごとに多少の規制が残るわけであります。こういう規制とそれから社会的規制実施に当たっては行政手続を透明にする必要があります。その点で行政手続法は重要でありますし、行政指導も書面をもって実施するなど指導内容明確化指導責任を明らかにすべきだと思います。こういうことをいたしますと、しばしば外国からの、行政日本企業を有利に取り扱っているというような問題は一切解消しまして、英文上の誤訳か何かがあればそこでは問題は起きるかもしれませんけれども、別に差別していないということがはっきりするだろうと思います。  届け出は、例えば内容証明配達証明で送付すれば完了するということとして、実質的に許認可と同じである事前届け出制のようなあいまいな行為はなくすべきだと思います。  それから七番目に、これはそこに書いてないんですが、もう一つ、いわゆる政官業癒着の話をちょっと申し上げておきます。  マスコミは、政・官・業の癒着をもたらし、その中で官は規制にしがみついているという構図で記事を書いておりますが、これは私は必ずしも正しくないと思います。  行革審規制緩和小委員会に参加しましたときに、昭和三十九年にできた肥料価格安定臨時措置法廃止を提言いたしました。行革審廃止すべきだという意向に対して農水省通産省が反対し、かなり強い抵抗をいたしました。しかし、行革審意向が強いとわかったときに通産省は、実は私たちのところは本当はどうでもいいんですと言って先におりてしまいました。残ったのは農水省だったんですが、農水省も最終的におりまして、百十四回国会だと思いますが、次の国会廃止されました。  そのころちょうど海外出張をしまして、東南アジアのある国に行きましたんですが、その国の日本大使館通産省から出向しておりました東大時代ゼミ生に会いまして、何をやっていますかと言うので、実は今行革審でこうこうこういう提案をしたと話すと、ああそうですか、前に実は私は肥料関係の部署にいたときに廃止しようとして努力したけれどもできませんでしたというふうに感慨深げに語るわけであります。  私の見るところ、官庁でも緩和すべき規制があるということに気がついていることが少なくありません。ただ、自分たちの力では簡単にできないというのが現状であります。官がすべての力を持っているというふうには私には思えないわけであります。行革審が取り上げて提案すると、役所の方は、行革審が今度はやれと言って聞かないから我々はやらなきゃならないということを言いますけれども、実はそれを大義名分にしてやっと手がつけられるというケースが私は少なくないというふうに思います。そういう意味で私は、行革審は国産の外圧だというふうに以前に書いたことがございます。  こういう規制緩和の問題につきまして何よりも重要なのは自己責任原則であります。企業個人を問わず自己責任原則を必要とします。企業行政に庇護を求めてはなりません。これは経済的規制です。個人自己責任をないがしろにして行政責任を転嫁させてはなりません。社会的規制に関連します。今日、産業界から規制緩和の大合唱が起きておりますが、既存の多くの規制は、その発端が企業あるいは個人の要請にあった、もともとそこから出発しているということを忘れてはいけないわけであります。  また、国民個人個人自己責任を負うべきであります。例えば、私が使っておりますバス車内放送があるんですが、最近車の乗りおりで事故が起きますので、バスに乗るときには子供を先に乗せ、親が後に乗り、おりるときには親が先におり、子供を後におろしましょうとか、そういう車内放送放送があります。  一つ例がありますけれども、ウオーターフロントで、これはお役所の方で金網を張ってもう中へ入れないようにしょうかという話が出ましたときに、それでは水辺に親しむということができないからなるべく低くして中に入れるようにしよう、そのかわり浮き輪をそこにつけておけばいざというときに使えるだろうというので浮き輪幾つか用意したそうでありますが、一カ月たたないうちに浮き輪が全部なくなっておりました。  それから、イギリスバスの中には出入り口のところに上に書いてあります。動いているバスに乗りおりする人はあなたの責任でやりなさい、アト・ユア・オウン・リスクという言葉が書いてありますが、日本でもやはり我々国民アト・ユア・オウン・リスクという考え方を少しは頭に入れないとこの社会はよくならないというふうに思います。  以上、ちょっと時間を超過いたしまして失礼いたしました。
  4. 林寛子

    委員長林寛子君) ありがとうございました。  次に、竹内参考人にお願いいたします。
  5. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 御紹介賜りました竹内でございます。日本経済の立場から規制について御報告申し上げます。  結論は規制撤廃すべきだということであります。  お手元の一ページ目に順序が書いてございます。一から順次申し上げます。  現在、御案内のとおり大変不況が深刻になっております。大変不況が長引いております。既に三十三カ月になります。戦後第二回目の長期の不況でございます。生産指数もトップと比べますと一五%落ちております。第一次オイルショックあと二〇%落ちましたのですけれども、戦後第二回目の大きさであります。設備投資はピークと比べまして三五%落ちております。第一次オイルショックあとが二五%ですから、これは戦後最大の落ち込みであります。  御案内のとおり、企業は、現在経営に大変苦しんでおります。バブル経済のときに膨大な設備投資を展開したということでありますし、労働力不足を考えまして思い切って人を雇い、人を雇うために賃金を上げ、労働時間を短縮し、豪華な単身寮をつくったというようなことかもしれません。  それから高度成長、過去のバブルのときにはいろいろな耐久消費財を初めとしてモデルチェンジが非常に速うございました。モデルを次々に変えますと売れたわけであります。ですから需要に少しの変化が生じますと直ちにそれを生産開発部門に回し、新しいモデルをつくり直ちに生産に向けた、それで販売したというような非常にダイナミックな動きやすい企業システムをつくりました。その結果、従業員数もふえましたけれども、賃金コストの上昇は売上高の上昇によって吸収されました。けれども、現在はどれだけモデルチェンジをしても売れないという時代になりました。つまり、モデルチェンジのために抱えていた膨大な労働力が一挙に過剰化したというようなことであります。既に今申し上げましたように、設備投資企業が次々に削っております。  それから残業手当を減らしボーナスをカットし、これから指名解雇、希望退職に移ろうかな、いよいよ本格的な雇用調整が行われるわけであります。でございますから、さらに景気は下降していきそうだというような感じが強うございます。  その上に、御案内のとおり大変な不動産不況で、現在もこのあたりでも空室率、ビルの空室率は八%を超しているということであります。現在も建てかけのビルが次々にできておりますので、大体間もなく空室率は一五%ぐらいになり、賃貸料はさらに下がり、地価はさらに下がり、それが不動産不況と金融不安を呼ぶというような非常に難しい段階に立ち至っているというようなことであります。  そうした時期に、悪いことに円高がやってまいりました。企業は円高のもと、従来の円高ですと半年ぐらいたちますと輸出価格を七〇%ぐらいドル建て価格を引き上げたんですけれども、現在は三〇%ぐらいしか引き上げられないわけであります。つまりもはやコストを引き下げる余地が非常になくなったというような状態になっているわけであります。もちろん中進国の追い上げが急ピッチであり、アメリカのリバイバルによりましてアメリカにおける競争力も失っているというような事情もございます。そんな意味でいわばお先真っ暗だというような状態にございます。  さらに、そのような状態がございますと、現在の不況は到底立ち直りそうもないなんて考え方も出てまいります。というのは、技術進歩がとまっておりますので、我々の回りに買う物、物欲をそそるようなものがすっかりなくなった。子供の数も若者の数も減る一方でございますから、燃えるような消費需要がないというような事情も加わっているんじゃなかろうかというようなことが言われているわけであります。でございますけれども、それはとりもなおさず、大変不況になりましたけれども、個人の生活で見ますと買うものがないということはある意味では幸せであります。  それから、余談ですけれども、火葬場の操業度が落ちてきたようであります。それから葬儀屋さんも大変不況であります。お医者さんも二割ぐらいは患者が減ったという話であります。これはいろんな理由がございましょうけれども、その一つは、残業手当がなくなり、残業がなくなり、早く自宅に帰られ、真っすぐ帰ってきますから親子団らんがあり、それから精神的にゆとりが生じ、それから健康な生活ができるので病気がなくなったんじゃないかというような説もございます。原因はよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、経済は真っ暗でございます。けれども、さしあたって個人的な生活はゆとりがあるというようなところで、現在はなかなか対策が直ちに出てこないというようなことかなというふうに思われるわけであります。  経済的に見ますと、せっぱ詰まっておりますから何とか打開する方法はないかという袋小路に追い込まれたということであります。そのときの打開策の一つが、長期的に見ますと、直ちには打開にはなりませんけれども、日本経済は今申し上げたように先を見ましても真っ暗でございますから、そこで打開の策として考えられた一つがこの規制撤廃かなというようなことであります。  お手元の一番最後の図表、第三表というのがございますけれども、これは九〇年と八五年の比較でございます。この間に一番下の実勢為替レート、二百三十九円から百四十五円に上がったわけであります。そのときに同じもの、円とお考えになって結構でございますけれども、乗用車は百八十七円から百四十六円まで合理化努力によって下がってきているということであります。乗用車とかあるいは輸送用機器とか電気機械とか、国際競争にさらされている部門は素直に下がってきているわけであります。ところが、食品とか衣料とか、輸入制限がかなり加わったり、それから原材料とかさまざまなところに規制があるような産業でございますとほとんど値段が下がらない。下がったとしても極めて緩やかであるということであります。食品・飲料でございますと二百九十四円から二百七十円までわずかしか下がらなかった、その水準もかなり高いというような状況であります。それから交通費など、特に家賃などを考えてみますとむしろ大変上がってしまった。通信、交通費も上がってしまったというようなことであります。  つまり、国際競争規制がないかなり自由な産業でございますと素直に生産性が上がってまいりますけれども、規制が加わっている産業はほとんど生産性が上がらないというような状況にございます。  その前の第二表をごらんいただきますと、八五年と九〇年でございますけれども、アメリカとの価格差でございます。八五年の円が二百三十九円のときでございますと、アメリカを一〇〇とした日本の物価はかなり低かったわけであります。つまり円はかなり安かったことを意味しております。そのときでも食品・飲料は高かったわけであります。九〇年になりまして、このとき百四十五円でございます。これだけ円高になってまいりますと、アメリカと比べますと、貿易財といいますか自由な競争が展開されている産業ではアメリカの水準とほぼ同じでございますけれども、競争が制限されていたりあるいは貿易が困難であるサービス業を見ますとアメリカよりもはるかに高くなっているということであります。これが百四十五円のところでございますから、現在の百九円になりますとこの差がさらに絶望的なほど拡大したということになるわけであります。  つまり、貿易財といいますか、日本の経済を支えている産業は懸命な輸出努力をし、その結果輸出価格を下げて、国際的に見て飛び抜けた低い価格を実現しているわけでございますけれども、その他の産業はそれに応じられないということであります。この輸出産業にとってみますと、輸出産業は、世界一の努力をしながらそこの従業員の方は国際価格の七倍の米を食い、十二倍もする砂糖をなめているわけでございます。  でございますから、この方々が現在ほど円高になりまして輸出産業がもはや合理化の余地がない、最後に賃金しかないというところに追い込まれたときに、本来でございますと他の産業が合理化しておれば賃金が下がっても生活水準は上がるというような状態になっていくわけであります。  あるいは別の言い方でいきますと、こういう産業が普通の産業のように国際的な水準ぐらいに合理化されておれば価格は下がり、その結果消費者物価が下がり、消費者物価が下がるということは実質所得は上昇いたしますので内需が拡大し、景気は上昇し、その結果、輸出が減り輸入が拡大し、円は高くならなくてさらに輸出も振興しやすくなるというような、輸出産業も大打撃を受けないというようなことになるわけであります。  ところが、現在はそうなっておりませんから、もはや輸出産業は行き場がなくなっております。でございますから、行き場というのはかってはASEAN諸国に猛烈な勢いで一九八〇年代から九〇年代、欧米にも出ていきましたけれどもASEAN諸国にあっと言う間に出てまいりました。家電でもあるいは自動車でもそうでありますけれども、例えばルームクーラーでございますと、多くの企業はほとんど生産拠点を東南アジアに移し、日本はそれを輸入しているということであります。ルームクーラーの世界の貿易高の五〇%はマレーシアから輸出され、それをつくっている企業は日系企業であるというようなことであります。VTRもテレビも間もなく輸入額の方が多くなるというようなことであります。現在はこの円高によりましてさらに猛烈な勢いで海外に工場を移転しているというような状態にあります。現在はASEAN諸国から中国に向かい、中国からさらにベトナムに関心が向いているという状態であります。  御案内のとおり、大連とか上海の工場団地はほとんど日本企業で埋まっております。私もこの前上海に行きまして、私のうちの電話番号をそこで押しますと、かけますと、驚くことに私のうちの住所が出てき、私の川崎の家の地図が出でき、また押すとだんだんでかくなって隣のうちの道路も出てくるわけでありますし、それから朝日新聞と読売新聞、日経新聞をとっているなんてつまらないことまで出てくるわけであります。  なぜそうなのかといえば、日本の自治体は、例えば住民登録票を御自分のところで打つのは大変でございますから、その入力を多分下請けに頼み、その下請けは中国の合弁会社に頼む。漢字が読めるからだそうであります。あるいは日本のマーケティング会社は、例えば一千万円以上の所得の方の一覧表をつくってそのうちの家族構成とかあるいは新聞のとり方などを調べ、それを日本のインプット会社に頼みますとそれが中国でインプットされるというようなことでありますし、どうも国立病院のカルテもかなり中国でインプットされているそうであります。そうなりますと、余分のことでありますけれども、もし日中国交が断絶したら日本役所の仕事もとまるかもしれませんし、国立病院に通っている人は大変だというようなぐあいに、それは一例でありますけれども、猛烈な勢いで現在の円高のおかげで本格的な海外への工場移転が進んでいるというような状況だということであります。  でございますから、これをとめてやるには規制を撤廃して、今まで競争にさらされていないところを競争にさらして生産性を高めるしかないというようなところに追い込まれてきたのかなというふうに思われるわけであります。その上に、福祉部門などでございますと、競争を導入してやれば直ちに生産性が上がりやすいというような分野が多々あるわけであります。お手元には医療の例が書いてございますけれども、思いつくだけでもいろんな例が挙げられるというように思われるわけであります。これは無限だというふうに思われます。  ところが、規制撤廃いたしますと日本のしきたりが変わるわけであります。我が国は大変麗しいもたれ合いの社会であります。でございますから、よくわかりませんけれども、仮に建設業で談合といいますか指名入札されていても、あるところが順番になりますと、そこから漏れた人のところに下請で回してやり、それから五十万人もいる全国の建設業者に全部行き渡るようにあるいは地域に行き渡るようにうまい具合に配分してやるというような麗しいもたれ合い関係があったということであります。それによりまして多少むだがございましたけれども、社会保障費といいますか、失業保険が明らかになくて済んだというような意味があったと思われるわけであります。  でございますから、何かそこには大変麗しいもたれ合いがございますが、それは一種の不正といいますか、不法行為ではございますので、不法行為には代金が要るわけであります。けれども、その代金もインドネシアでは三〇%であり、タイでは一〇%ですけれども、我が国は一%という意味ではかなり合理化された麗しいシステムができ上がっていたというように考えてもいいかなというように思われるわけであります。  でございますから、多くの人は悪いとすべてお上に持っていくわけであります。お上が適当にやってくれるからこそ先ほど岡野先生が言われましたように規制があるわけでありまして、規制は我が国の国民性といいますか、もたれ合いのシステムの上に乗っかったというようなことであります。でございますから、現在のように、先ほど申し上げました規制が行われて価格が高くなっているところにはいろんな多数の人々がいて、ここから規制を撤廃したら失業が大変出てき、五五年体制のシステムが変わってしまうというような重要なところでございましたから、規制があったということであります。  ところが、冷戦構造が解消し、五五年体制が要らなくなれば規制もある程度緩めてもよろしいわけでございますけれども、緩めることはとりもなおさず我が国の統治システムの変化だということになるわけであります。今までのもたれ合いから、これから一々企業に訴訟を起こし、あるいは流通業を訴訟し、相手を訴訟するというようなぎすぎすした社会に、自己責任というのはそれでございますから、そんな点で風土の変化を直ちに確保しながらここに果敢にチャレンジしていかざるを得ないのかなというような感じがするわけであります。  そうなりますと、もう規制だらけの社会でありますから、これを幾つか留保できましたら、あっという間に規制が崩れ去ったときにそれに対応するような私どもの心構えがそれまでにできているかというと必ずしもそうではないような心配があるわけでございますけれども、それも仕方がないのかな、新しい社会のチャレンジかなという感じがしているわけであります。  それから最後に、大きな規制ももちろん要るわけであります。規制撤廃いたしましても、そこに書いてございますような自然環境であるとか都市美観であるとか、あるいは私権よりも公共を優先させるようなそのような規制も新しくつくっていかなきゃならない。そういう意味では規制撤廃は同時に新しい規制への衣がえかなというような感じがするわけでございます。けれども、何といっても日本の経済から申し上げますと、規制は撤廃して低生産性部門の生産性を高めるということが絶対必要でございます。けれどもそれと同時に、いろいろなぎすぎすした社会に変わるのかなというような多少のあるいはかなりの不安を感じているわけでございます。  以上で御報告を終わらせていただきます。
  6. 林寛子

    委員長林寛子君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの御意見の聴取を終わりたいと存じます。  これより質疑を行いたいと思います。  先ほど申し上げましたように、きょうは自由質疑形式で質疑応答を行っていきたいと思います。委員の方あるいは参考人の方、ともに御発言は着席のままで結構でございます。御質疑の際は会派名と氏名、答弁を求める参考人を冒頭でお述べくたさい。また、質疑時間は五分以内とさせていただきたいと存じます。  それでは、質疑のある方は私から指名させていただきますので、挙手をお願いいたしたいと存じます。
  7. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 自由民主党の沓掛哲男でございます。よろしくお願いいたします。  岡野先生にお願いしたいんですが、いわゆる規制緩和について、マクロ的全体的な規制緩和について先生に主に教えていただいたんです。  この規制緩和には今のいわゆる景気対策上短期的なものもいろいろ検討しなきゃならないと思います。岡野先生がその一つとして容積率の緩和のお話をされました。これはほかの付随した道路や下水やそういう関係で全国的にやれば非常に難しいんだと。だけれども、局部的にやるということについてある経済学の先生が、ある地域、特に非常に発展性が高いようなところだけについて規制緩和をやればそこへみんな投資が集中して、そういうことによって景気回復のインパクトができるんじゃないかというようなことをおっしゃっておられました。そこで、それもそうでいいんですが、何か特効薬的な景気対策として、短期的に効果の出るような規制緩和があれば先生に教えていただきたい。  もう一つそれとの関連で、例えば土地の流動化を図るということで、土地を長期に保有した譲渡益課税を前に一〇%ほど上げましたけれどもそれを下げるとか、あるいは現在の土地を売って新しい償却資産を買うときの買い取りごとの減税をもう一回やるとか、そういうふうな話が今出ているんですけれども、そういうものも含めてどういう御見解かをお聞きしたいのが先生の方でございます。  それから、竹内先生にお願いしたいんですけれども、いろいろの経済対策がある中で、今までほとんどのことをやってきたけれどもなかなかうまくいかない。確かに所得減税はやっていませんけれども、これもなかなか私は後のことを考えると大変だと思います。そこで、今先生もちょっとお触れになったけれども、いろんな企業主にけさも労働部会でいろいろ話を聞きますと、今円安に持っていければ、例えば一ドル当たり百二十円に持っていければ我々製造業等も非常に活力が出てやりやすくなるんだと、何とかしていわゆる円高対策をやれないかという話でした。  しかし、今現在の円高対策は何をやっているかというと、企業はいわゆる輸入物をふやすとか、あるいは今先生がおっしゃったように海外に投資するとか、そうするといずれも雇用がどんどん減っていき、ますますみんなに不安を抱かせて、そしてまた懐の財布のひもをきちっと締めてなかなか消費に回らない、それがまた悪循環にもなっているように思うんです。  そういうこの円安、例えば貿易的には日本は大変今黒字なんだ、ファンダメンタルズがいいからいいというだけでなくて、ことしの春から見ればかなりだだっと下がってきた、あれにはかなりの政治的要因も私いろいろあると思うので、今例えば一ドルが百二十円ぐらいになれば我々は元気が出るんだという製造業の方々のけさの話でもあるんで、何かそういういわゆる特効薬的なものがないか、その点教えていただければと思います。
  8. 岡野行秀

    参考人岡野行秀君) まず第一の御質問の容積率の点ですが、要するに条件が整っているところですね、例えば道路整備がちゃんと終わっているし、したがって容積率を緩和して高いビルができることによってその外部不経済が周りに及ばないという条件が満たされているところについては私は緩めていいんではないか、そういうふうに思いますが、さもないとなかなかそうはいかないだろう。  それから、短期的な観点で見ますと、容積率を今緩和したからといってすぐ景気がよくなるかというと、私はかなり疑問に思っております。なぜかといいますと、御存じのように東京の中のオフィスは大変がらがらあいておりまして、二十数%も空室があるという状態で、だれが今また高いビルをつくって貸し室をつくるのか。ですから、特定の場所で条件が非常にいいところでそこならば需要があるというところであれば別ですけれども、一般的に言ってそれほど影響が出てこないだろうというふうに私は思います。  それから住宅でいいますと、土地税制のことをおっしゃいましたが、土地税制の問題も、多分今一番うまくいかないのは、土地を流動化したいとしても、持っている人たちが既に負債を抱えていて、その負債がもうどうにもならないという状態じゃないかと思うんです。  ですから住宅なんかでも、本来ですとフィルタリングといって一番安いところに若い人が入る、次に少し裕福になってきたら次の段階のいいところに移る。そういう形でやっていて、そのうち社会としては一番質の悪いものからだんだん建て直すという形で社会全体の住宅の質をよくするというフィルタリングのプロセスというのがうまく働けばいいんですが、今そのフィルタリングのプロセスが全くとまってしまっているのは、まさにせっかく買った不動産でローンをたくさんつけた、ところが価格が下がってしまって今は処分し、ようとするとローン全部を返せない、そういう状態になっている。ですから、税制がちょっとぐらいよくなったからといってこれも動き出すかどうかなと私は多少疑問に思っております。  したがって、不動産の流動化をしようとするならば、やはりある程度負債の方を何とか何らかの形で面倒を見て、一回流動化のプロセスを始めさせるということがないと多分動かないんじゃないかなというふうに思います。  以上でございます。
  9. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 円安にはなかなか持っていきにくいという感じがいたします。  御指摘のように、百十五円よりも安くなれば採算に乗る企業がかなり出てくるだろうというようなことならば百二十円になれば非常に結構だというふうに思われますけれども、現在のように景気が深刻な不況でございますと、どうしても天然資源やエネルギー資源の輸入が減ってしまいまして、それから内需もふえません。それから不況だといっても輸出がどうしてもプレッシャーがかかってしまって、そして輸出が伸び輸入が減り貿易収支の黒字が拡大するということはとまらないという感じがいたします。  それからさらに悪いことは、企業が大変不振でございますから、海外の証券投資も、あるいは過去のような大規模なあの欧米に対する投資も手控えて、むしろ引き揚げている段階であります。でございますから、海外投資が、資本流出が減るということはドル買いが減ることでありますから、それだけドルを高くする力がない、つまり円高の力として働く。つまり貿易収支の黒字と資本収支の赤字が大きいということこそまさに円高の原因でございまして、これは今の景気ではなかなかとまらないというような感じがいたします。  それから、対策は何かといえば多分景気を上げることですけれども、これは非常に絶望的だというふうに思われます。御指摘のように所得減税をやっても上がることは、これ以上悪くならないという、どんどん悪い方に行くのをストップさせる力が出るかもしれませんけれども、これによってぐっと上がるという力はなかなか期待できないのかなというような状態にあります。  でございますから、ただやれることは一つ金利をもう一段下げるかというようなことであります。金利を下げますと、そのときの大蔵大臣や日本銀行の総裁は歴史的な低金利になりますから多分経済の教科書には残るということでありますから、これは極めてリスキーなことだと思いますけれども、下げることはできる。ただ、下げますと老人の方の福祉が困る、個人消費が減るというようなことで公定歩合一・七五をこれ以上下げることはなかなか難しいかなというような限界のところまで来ているというふうに思われますけれども、やるとすれば金利を下げるというのが最もいい方法かなと思われます。  それでもやっぱり非常に難しいのは、これは話がずれますけれども、現在貿易収支の黒字が千五百億ドルぐらいあります。これが日本円に直せば約十五兆円であります。十五兆円を国内で使えば、東北新幹線はたった三兆円でできますし、関西空港がお金がかかったといってもたった一兆八千億円であります。十五兆円の金が、ものが使い切れなくて海外に流出しているということこそ問題で、これを国内に使えるようなシステムに変えなきゃならぬ。その変えるシステムこそ土地制度の改革であり、あるいは土地の私有権の制限であり、あるいは入会権とか漁業権とか水利権とかいろいろな過去の特権を除いてやることであり、さらに規制撤廃化というようなことがなければこれだけのものを持ちながら使い切れないで、それからそれに対応するものは何とか海外に投資して出過ぎて済まなかったと謝りまして、戦争が起きれば百三十億ドルぐらい取られちゃったり、世界一ODAをばらまいたりするというような状態が残念ながら続いていくんじゃなかろうかというような感じがしてならないわけでございます。
  10. 古川太三郎

    古川太三郎君 日本・新生・改革連合の古川でございます。  何といいますか、規制緩和は非常にいい面もありますが、またそのために非常に弊害もあるだろうと、こう思うんです。例えば、今規制緩和が本当に流行語のように叫ばれてはおりますけれども、これを行って経済がよくなるというものでも決してないと思います。また、やらなきゃ経済はよくならないという場面もあろうかと思うんです。  例えば、電気自動車を今生産するとか、あるいはソーラー自動車を生産するとか、例えば百万人なら百万人の都市の中ではそれしか使えないとか、あるいはそういうソーラー自動車を買う人に国家が補助するとか、そういうガイドラインのようなものをむしろつくっていく方が、経済というのはそのためによくなるのではないかと。排気ガスのNOxの制限をすることによって非常に日本の自動車の競争力も上がったというような過去の例もございますから、そういう部分での大きな誘導をするようなガイドラインが私は必要ではないかと思います。  また、都市の美観にしても、こういう容積率の緩和というような単純なものじゃなくて、もっと共同でおつくりになったら、しかもこういう美観をきっちりするものだったら国家が補助していきましょうとか、そういうようなものであるべきだと思っております。  いま一つ規制緩和の、先ほどの岡野先生がおっしゃいましたようなお話ですけれども、審議会方式で幾らやってもこれは実際国産の外圧みたいなもので、屋上屋を架するようなものだと思うんです。これはやっぱり三権分立てございますから、せっかく日本でも初めて行政手続法もできましたし、これから情報公開もできるだろうと思いますが、こういうようなものを使いながらやはり訴訟社会というのがある程度進まない限り、国民に根を持った規制緩和というものは、国民に協調される規制緩和というものはできてこないだろうと、こう思うんです。やはり行政だけで一生懸命やるよりも、一つの司法の関係でも私はできるようにならなければうそだろうと思います。今の行政では、行政の公定力とかいうことで、とにかくお上がやったことは間違いないんだという前提がある限り、なかなか規制緩和が進んでいかない。国民からやっぱり確実にその規制緩和の方向に向かうようなものであるならば、訴訟についてももっともっとその手続をしっかりしていかなきゃならぬ部分があるのではないかと思います。  いろいろそういう意味で非常に迷うところはございますけれども、竹内先生がおっしゃるようなそんなにぎすぎすした社会ではなくて、日本言葉というのは「まあまあ」とかいろいろのわからない部分がございます、外国のように必ず論理をもって対抗するものではないと思うので、私はむしろ今日本に必要なのは訴訟社会が必要なのではないか。権利意識を高める意味でも必要だと思うんです。  それからいま一つ、公定歩合のことですけれども、これは幾ら下げられても本当に借りる人にメリットがあるというものでは決してなくて、今は日銀としてはお金の出しを緩めていくということでないと、公定歩合というのは本当に今不要論もあるぐらいですから、私としてはむしろお金の出しを緩めて銀行も貸しやすいような、しかもコールのレートがどんどん下がるような方向に持っていけば自然と短期金利も長期金利も下がっていくんではないか、公定歩合は別にいじる必要はないんじゃないかなという気持ちでおりますが、その点をお聞かせいただきたいと思います。  公定歩合の件については竹内先生、それから岡野先生は前段の訴訟社会も必要ではないかということでお願いします。
  11. 岡野行秀

    参考人岡野行秀君) 規制緩和で経済がよくなるかとおっしゃったんですが、その経済という意味は、多分お使いになった言葉は今の場合ですと景気という意味だろうと思うんですが、景気がよくなるということについてよく言われておりますが、私は余りその点では評価しません。  もともと規制緩和というのは、緩和をした場合にそれに関連する人たちが行動を変えることによって影響が出てくるわけですから、その行動を変えるためには負担を要することは間違いないわけでありまして、したがって即座に影響が出てくるというものでは私はないというふうに思います。  それから、電気自動車、ソーラーカーを使ってはどうかというお話でありますが、これはちょっと専門的になりますけれども、電気自動車というのは大変問題がありまして、非常に皮肉なことですが、原子力を使った発電であれば電気自動車はメリットがあります。さもないと、イギリスでありました研究のように火力発電で電気を起こしてそして長距離を運んで電気自動車に使うということになりますと、電気自動車によってすぐ路側のNOxは減りますけれども地球環境にとってはマイナスであるという研究まであるわけでありまして、したがってかなり注意が必要であろうと思います。  ガイドラインをつくってやるということはわかるんですが、ガイドラインをどうやってつくるかということが実は大変問題でありまして、ガイドライン自体がまた一つの利害関係をもたらすわけですので、私は余り積極的にやらない方がいいんじゃないかというふうに思います。  ただ、お話がありました都市の美観とか共同の施設に国の補助を、これは私も賛成であります。場合によっては、住宅の質が悪いということから考えますと、もう少しいい住宅を多少安い家賃で貸すということをやりますと景気刺激にもなりますし、また日本の住宅のストックの質をよくするということにもなるのではないかと思います。  最近これがなかなか進まないのは、進まないといいますかよくないと思うのは、年収の五倍で住宅が買えるようにするというようなことをやった結果はどうなっているかといいますと、確かに購買力が減っているからかと思いますが、マンションなんかでも狭くなりまして、かえって現在の方が四十から五十平米ぐらいのもので、そしてしかもどうも質的には落ちているようであります。  こういうのがふえていくということは、日本社会にとっては将来住宅のストックとしては質の悪いものがふえていくということになるわけですので、もう少し広い住宅でしかも設備もちゃんとしたものを少し安い家賃で貸す、そういうことによって、いたずらに土地をつくってそして一戸建ての住宅を持ちたいという意欲も多少そぐようなことをやった方がいいんではないか、そのように思います。  以上でございます。
  12. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 私、間違いでございました。公定歩合というのは金利を下げるという意味でございまして、たまたま象徴的に使ったわけでございまして、公定歩合を下げても現在は市中金利と直ちに連動しないわけでございますから、正確に言えば金利水準をもっと下げると言うべきであったということで、訂正させていただきます。  それから、これは景気上昇のためではなくて、円安に持っていくためにはどうしたらいいかというようなことで公定歩合、金利を申し上げたわけで、金利を下げても直ちに景気がよくなるという状態では現在全くないというような感じはしております。  それから、規制を撤廃しても景気はよくなるということはまずないというのは、岡野さん言われたように、あるいは私はむしろ失業者がふえるから景気は悪くなるというような感じすらするわけであります。規制撤廃というのはもっと長期的な手段だというふうに思っております。
  13. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 自民党の須藤でございます。  両先生にお願いしたいわけでありますけれども、第一点は、私権より公共優先という話があったわけですが、一極集中という問題は規制緩和としてはどういう考え方ができるのかということ。  それから二点目は、両先生とも、例えば竹内先生の方は真の人間の自由の時代になる、そうするといろんな面で不安もあるということをおっしゃり、また岡野先生の方は政・官・財の癒着にしても企業側、個人側の要求がある、そういう中でできてきた、いずれにしろそんなに急激な規制緩和というのはなかなか難しいだろう、こういうお考えだと思うんですけれども、今後の規制緩和の進め方はどういう形がいいのかということをお聞きしたいわけであります。  それからもう一点、竹内先生に。  食料関係規制でなかなか安くならない、こういうことでありますけれども、例えば米は十五年間全く上がっていない、砂糖にしても相当食費の中では少ないウエートなわけです。これは規制云々の問題は別にして、いろいろな論議の中で食料の価格がなかなか下がらない、そういう中で規制がどのくらいのウエートを占めているかということをお調べになったというか検討されたことがあるのかどうか。  以上、お聞きしたいと思います。
  14. 岡野行秀

    参考人岡野行秀君) 一極集中との関係ですけれども、非常に政府の権力が強い中国、あるいはかつてのソ連でもそうですが、ソ連の場合にはモスクワヘ集中しないように、それから中国では上海や北京に集中しないように強力にいろいろやっているようですが、実効はないわけですね。実効はないといいますのは、一時偽装結婚のような格好をすればこれは人が入ってくるのを妨げることはできない、したがって規制でやるということは私は無理だろうというふうに思います。  それから、今後の規制緩和の進め方でありますが、私は一挙に進めるということは難しいだろうと思うんです。といいますのは、私が幾つ関係してきたことで言いましても、こうこうこうだからこうなるだろう、したがってちょっとつらいことはあるかもしれないけれどもそんなに問題はないというふうに言っても、信用してくれないですね、それは。私が責任を持つからと言いますけれども、信用しません。それは不安に感ずるからであります。  今度のタクシー規制緩和につきましても、私たち考えまして、まずあるところまでやってみよう、そこである程度の規制緩和が行われてそしてそれに対処するように事業者がしようとしたときに、実際にやってみたら心配していたけれども大したことはなかった、これならやっていけるというようになれば次の段階に進むことができるわけです。したがって、最終的な目的を明らかにしておけばそれに矛盾しないように常に段階を追って規制緩和をしていけるわけです。  ある程度の時間を置きますとその間に行動の調整ができますから、したがって痛みを多少負わなきゃならない人でも痛みを少なくすることができる、そういうふうにやっていくほかないだろうと思います。  その点では、タクシー規制緩和答申を出しましたときにテレビのコメントで、こういうのが出ましたがと言ったら、ある学者がなまぬるいという一言で終わってしまったんですね。  私たちは、実際に現実にやっていこうとしますと、逆にそういうステップをどういうふうにやっていくかということをちゃんと考えなければいけないというふうに思っております。そうすれば、意外と問題だと思われていたことが余り問題じゃなかったという形で進むというふうに私はその点では楽観的に考えております。
  15. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 一極集中でございますけれども、これはもうなかなか直らない感じがいたします。  東京は皆、住みよくてあこがれてやってきてついに日本最大の観光地になって若者が喜んで来るわけでありますから、これをなくすということは、ただし現在のように成長率が鈍化していますと東京への流入がとまっておりますから、現在の不況では一極集中はとまっているということになります。これを直してやるためには、やっぱり地方分権というか、地方分権ところか地方主権といいますか、道州制とかそんなふうに持っていかないととてもとまらないという感じがいたします。  東京には、例えば政府があったり華やかな町があるだけじゃなくて、全国ネットのテレビもあるし全国ネットの新聞もありますから、こここそ情報の発信地でありますから、ここに住んでおれば自分意見は全世界に全日本に伝わるかもわかりませんけれども、稚内の先っちょとか大隅半島の先っちょに住んでいたら、自分の存在を全国に伝えるんだったら放火と殺人しかないというようなことで、どうしても存在感がある場所にあります。そのようなキー、情報の発信地になるようなことをつくってやるということは、地方分権どころか地方主権というようなシステムを変えてやらないととても無理かなという感じがいたします。  ただ、現在のところ非常にさしあたっての問題は、現在は東京は今申し上げた集権といいますか、一極集中がとまってむしろ地方分散しております。これは、現在はサラリーマン失業時代でありますから、雇用がないから幸いなことに地方に散っております。その結果の一つのあらわれが、先ほど申し上げましたビルの空き家率七%であり、間もなく一五%になる。ビルの値段が下がっておりますから、もしここでちょっと景気がよくなって一挙にこれが埋まったとしたら、東京に直ちに人口が六十万人ふえるわけであります。あっと言う間に再び過密状態になるということが、今たまたま不況でございますからいいんですけれども、もうこれがちょっと景気がよくなったら大変な事態が目先に待っているわけであります。ここにこそ何らかの規制が必要になるというような感じがいたすわけであります。  それから、第二番目の点でありますけれども、飲食費でございますけれども、表の二ページで食料・飲料費は個人消費の中で二一%を占めているということでございます。でございますから、これは支出の中で最も効きやすいことでありますし、ここが最も国際的に見て高いというようなことで例として申し上げたわけであります。  その高くなっている最大の原因は、米の問題であるとか、さまざまな一次産業に世界まれに見るほどの、かつてのソ連、ロシアも驚くほどの規制が加わっているというところに最大の問題があるのかなと思われるわけであります。この問題は、全体として消費者物価を上げているだけではなくて、土地の有効利用であるとか、あるいは農家の方の方が勤労者よりも平均所得が高くなおかつ預金残高も高く資産残高も大きいにもかかわらず過大な保護を受けられていることこそ、経済原則といいますか、意欲を失うといいますか、世の中の正義感が大変失われてしまうような大変な問題を抱えているのかなというようなことがここの高さに出ているのかなというような感じがしているわけであります。  でございますから、規制はどういたしましても、まじめに働かなくて何かプレッシャーグループになった方が得をするというような感じが強まってくることにこそ問題がございまして、この規制といいますか、規制された産業はそのような力が余りにも多過ぎる。それがもし規制社会になりますとそういうようなことばかりになりますから、まさにそれがかつてのソ連の経済システムに似たような感じになるというようなことが問題かなというように存じているわけでございます。
  16. 武田節子

    ○武田節子君 公明党・国民会議の武田でございます。  両先生にお願いいたしますけれども、まず初めに岡野先生にお尋ねしたいと思います。  岡野先生は、最近の御発言の中でもまたきょうのお話の中でも、規制緩和を進めるには政・官・業、そして国民自己責任の確立が不可欠であるという御趣旨のお話を伺ったわけでございますけれども、その前提として、今日の我が国の許認可行政の基本認識について先ほどちょっと触れられておりましたけれども、どのような御見解を持っておられますか、もう少し具体的にお教えいただきたいと思いますことが一つ。  それから、規制規制を呼ぶというお話がございましたので、私はその規制がきちっと規制緩和できているかということをチェックするところが、オンブズマンの設置が必要ではないかというふうに思っているんですが、その効用に対して先生はどのようなお考えをお持ちですか、それをお伺いしたい。  もう一点は、やっぱり各省の縦割り行政の縄張りがこれをなかなか進めないでいるのではないかというふうに思っているわけでございまして、人事の採用のときからむしろ各省にまたがった丸ごと人事の採用といいますか、そういうことが大事ではないか。一つのところに、それは出世コースとしてはそこをずっといかなきゃならないんだろうと思いますけれども、新しい国民重視の生活ということを考えた場合、その辺の人事の採用のあり方にも重大な考え方があるのではないか、こんなふうに思っているわけでございます。  それからもう一つは、先日、ある特別養護老人ホームの視察に参りましたときにそこの施設長から、今在宅介護になってきていますから、在宅介護のショートステイに非常に力を入れた場合、二十四時間体制をしいている。どこどこで困ったといったらすぐ車でもって迎えに行くというのに対しては、時間とか車とか人というもので大変な思いをしているので何とかこれの輸送を下請に出したいと思うけれども、規制がかかっていてそれがなかなか思うように進められていないというお話を伺いましたけれども、この辺の規制は速やかに緩和できるのではないかというふうに考えてきたわけですけれども、その点についてお伺いしたいと思います。  それからもう一点、竹内先生には、大変今雇用が厳しい状況にありまして、そして逆に日本が今黒字大国になって外国から批判を受けているという状況のときに、私は日本の構造というのが中小零細企業の労働者の低賃金によって下支えをされている、そして栄えてきた大企業の二重構造をやっぱり今変えなければならないんじゃないかというふうに常日ごろ考えていたわけなんです。その二重構造になって中小零細企業の下支えによって栄えているというこの状況は、見えざるところの規制というのが大分あるのではないか。この辺のところを変えていくことが今とても大事なんではないかというふうにも考えているわけなので、この辺に対して竹内先生のお考えが伺えたらと思って御質問いたします。  以上です。
  17. 岡野行秀

    参考人岡野行秀君) 第一の許認可行政の件ですが、御質問の意味がはっきりわからなかったんですが、規制規制を呼ぶというのは、もともと規制がなければ出なかった問題が実は規制があったために出てきた。そして、規制があるために出てきた問題について、その問題を持って例えば役所に行きまして、こうこうこういう問題があるんだと。そうすると、そうか、困ったな、じゃまた何かしようというのもまた規制になる。そうすると、またその次の規制が起きてくる。そういう形で規制規制を呼ぶということであります。  こういう例は例を挙げようとすればたくさんありますけれども、やはり前に申し上げたようにもともと最初は役所の方、役所というか、官庁の方がイニシアチブを持ってこういうことをやろうというのはむしろ企画に関係するようなことから始まるわけで、そうでない場合はやはり何か持ち込まれた問題を解決するためにやることがまず規制になるということが多いと思います。  それから、オンブズマン制度ですが、これは適切な人がいて適切な組織ができればそれは私は機能はある程度するというふうに思います。  それから、問題は縦割り行政にあるのではないかというんですが、縦割り行政は確かに問題はあると思うんですが、私はマイナスの面だけ見るのもどうかなと。じゃ縦割り行政を直すために、例えばこの間提案がありましたように六省にしてしまう、大きなものにまとめる。私はむしろある程度縦割りの方がいいんではないか。縦割りですと、今我々が問題にしていますように問題が目に見えてまいります。大きくしてしまったら問題は中に埋まってしまって我々に見えてこない。要するに、各省は逆に競争で出てくるからそこに問題があるのが我々はわかるわけですけれども、もし大きくなってしまったら中で議論が行われて我々の目には見えなくなってくる。そして、それぞれがある程度競争するということはある意味ではいいんではないか。  ただ、問題はあります。  その問題は、各省が協力して何かプロジェクトをやるということを、それをインセンティブを与えることがないということなんですね。あるお役所なんかで聞きますと、例えばある役所と一緒になってこういうことをやろうという話をまとめたとします。予算もつきます。しかし、それは単独で小さい予算を獲得してくるものと比べたら、何かやはり共同で獲得してきたものというのは省内の評価は高くないとか、そういう話を聞くわけです。  これは、先ほど銀行の中の評価のシステムということを言いましたけれども、同じようにやはり役所の中でも評価のシステムいかんで、ほかの省と一緒にやっていいことができるのであれば、それはそれなりにちゃんと評価してくれるということになれば、中で働いている官僚の皆さんももう少しインセンティブがわくんじゃないか。そうすればあらかじめ各省で、例えば電線の地中化などと言っても実は道路予算が六〇%になるわけですけれども、そういうものについても、じゃその電線の地中化をやるについては、どことどこと一緒に組んでやろうと、要するにプロジェクトがいいものであればそれを進めるというようなインセンティブを与えるシステムになれば、私は縦割りのままでいいとは言いませんけれども、大きくしてしまうよりはむしろいいのではないかというふうに思います。  それから、人事採用のあり方については、それは日本でうまく通用するかどうかわかりませんけれども、今イギリスはそういうふうにしておりまして、そのやり方のいいところは自分がやりたいと思っている仕事が最初に入った役所で必ずしもぴったり合わない、ちょうど卒業生が就職しましてうまく合わないから転職するのと同じように役所の中でも転職がきくようなことを考えるんだったら、むしろ最初は全部一括採用して、少し方々でやっているうちに自分はここにその仕事を見つけたいというところで先をやるというシステムというのは十分あり得るというふうに思います。  それから特別介護老人ホームの、これは私知りませんでしたけれども、結局こういうものに規制がかかるというのは最終的な責任がだれになるかというところが問題になるわけでして、そしてその責任が問われたときに責任のありかがはっきりわからないときには最終的には結局役所がちゃんとしていないからというように来るものですから、がんじがらめにして最終的に責任はだれがちゃんととるかわからないような格好にするために規制ができているというケースがたくさんあります。  したがって、そういう規制はどういう目的でどういう形で行われているか存じませんけれども、こういうものを改善することはそんなに難しいことではないと思います。要するに、悪い場合が起きたときに困るから規制があるというふうになっているんですが、実はその悪い場合というのが起こる確率が本当に高いのか高くないのか、ほとんど起こり得ないようなことが起きたときにまで責任をとれというのが実は無理であって、常識で考える範囲内で起きないのであればそれで規制を緩めてやるということの方が、むしろこういう場合には現実の問題として解決しやすくなるのではないかというふうに思います。
  18. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 大企業と中小企業でございますけれども、待遇は若年者にとってはほとんど差がないと思います。中小企業の問題は、年配になっていくときに年功序列的にカーブが上がっていきませんので、例えば二十二、三歳を比べたときにほとんど差がなく、あるいは中小企業の方が高いかもしれませんけれども、四十歳ぐらいを比べますと圧倒的な差が出てくるのかな、そういうことが一つあります。  それから第二番目に、大企業と中小企業ですと福利厚生施設が圧倒的に違うという問題がございます。現在の問題は、雇用との関係でいけば大企業はホワイトカラーが余っており、現在百五十万人とか二百万人の企業内失業があると言われておりますけれども、一方、中小企業はまだ人手が足りないとか、まだ募集をしていると言っている中小企業が少なくないわけであります。でございますから、中小企業は終身の待遇が余りよくありませんし、それからもう一つは労働がきつい可能性がございますので、ここでなかなか人が集まらなくて、集まるのはむしろ大企業を退職された老人の方が行かれるというような、そういう意味で暗い職場になっているのかなというふうに思われます。  これからの日本経済との関係で言えば、一番問題になるのは、そのような日本の強さはまさに中小企業にあったわけでございますけれども、ここでちょうど金型工とか多年の経験を持つ多能工の絶対数がいなくなってしまったというようなことでございまして、特にそれが若年層にいなくなってしまったんで日本経済の基盤が緩んできたという点は大変深刻に言われているのかなという感じがするわけであります。それと、貿易収支の黒字とどうもこれとは直ちに関係がなくて、貿易収支の黒字が大きいのは日本では投資が少な過ぎる。貯蓄が多過ぎるから黒字になるわけでございますから、貯蓄に応じた投資が少な過ぎるということであります。  それを非常に具体的に言えば、今までは自動車をどんどん買っていた。今度は地域でいきますとまだ下水がないとか、下水で浄化槽をつくると百万円だと。浄化槽を百万円で買ったらどうかということでいきますとまた投資が起きるわけでございますけれども、その辺の次の生活水準を上げるための投資についてはなかなかコンセンサスが得られないし、これをやろうとすると地価が高いし、いろんな権利が錯綜して何もできないというところにむしろ日本の貿易収支の黒字の問題があるのかなと、そんなような感じがしているわけでございます。
  19. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 自民党の笠原です。  どうも私は質問の仕方が下手だし、自分の思っていることがうまく言えないかもわかりませんのでその点お許しいただきたいと思いますが、どうも日本人というのは熱しやすく冷めやすくて、ついこの間までは古米が余っておる、そんなの規制をせにゃあかぬせにゃあかぬと言ったのはみんななんです、日本人全部が。今やもう規制緩和規制緩和と言い出した。これも恐らく来年になったらこんなことは言わないと思うんですよ。  政治改革もそうですね。この前までやかましかったけれども最近流れが変わったのと同じように、どうもおかしい。今西先生のお話を聞いておりまして、規制緩和というものは必ずしもそれほどの効果がないんだと。景気が悪いから規制緩和をやると何か今にもばっと曙光が見えてくるという話ですけれども、どうも違う。私もそう思っているんですよ。実際にこんな規制緩和をしたって地方分権をやったって、何もそんなに簡単にうまくいくと思っていないんです。むしろ反対の効果の方が私は大きいと思うんですよ。  例えば岐阜県の場合は、飛騨川の事故が起こっているんですよ。あんな台風の中をバスで行って、そして山の上からだあっと流されて飛騨川に転落して何百人も亡くなった。それでどこが責任かというと、裁判の結果、公の責任、国の責任ということになったものだから、もうみんなとめなきゃならぬということになりました。あるところでは三百メートル上から石が落ちてきてバスが転落したんですよ。これ何と岐阜県の職員が裁判の結果、お前の方に責任があると。民有地ですよ。そういうことになってくると、結局日本人の考え方というのは何か全部人に責任をなすりつけるんですよ。  しかし、同時にアメリカがそうですね。アメリカヘ行ってごらんなさいよ。ヨーロッパヘ行ったってまずまどろっこしいこと、頼んでもやってくれないし、それはおれの責任じゃないと言って逃げてしまうから。そういう点で言えば、日本規制があって、官公庁だってちゃんとトップは責任をとらなきゃならぬということになっているわけですから、私はそういう点では非常に効果があると思うんですよ、どうもうまく言えないので申しわけないんですけれども。  それから、岡野先生にお尋ねしたいんですが、先生はフリードマンの信奉者。ところが、アメリカではもうフリードマンもケインズもだめになってしまって、みんな百家争鳴で一体アメリカの経済学はどうなっているかということになっているんですよ、はっきり言って。私はそう思っているんです。  ですから、いろんな学派が出て全部だめだけれども、今何がアメリカで起こっているかというので竹内先生にお尋ねしたいのは、カリフォルニアはコンピューターその他でやってすごく盛んになっていますよ。東の方は、それはコンベンションとかあるいは軍需産業でよかったけれども、これはもうだめ。今いいのはシカゴを中心として製造業がいいんです、実際言って。  だから、日本だって考えてみますとアメリカと同じことをこれやっているんですよ。三十年ぐらい前のジョンソン時代にリセッションがあって、それからコングロマリットでみんなどんどん技術者がずっと出ていってしまった。今日本は同じことをやっているんですよ。何にも変わっていない。ですから日本の為政者が、通産も大蔵も何か最近になって景気が悪いから、どうもきのう藤井大蔵大臣の話を聞いていたら子々孫々に赤字を残しちゃいけないと。でも今日本は重病人です、実際に言って。実際に重体でしょう。それに、今四十度で肺炎になってもう死にかけておるのにカンフル注射も打てないというようなことじゃこれはおかしい話であって、金だけがあって、何か病人は金だけここに置いておいて、そして今あれですよ。だから今本当に注射を打たなきゃならぬというなら、赤字国債かつなぎ国債、建設国債でもやってどんどんやっぱりやらなきゃならぬと思っています。  子々孫々といってどうなるんですか、実際。きのう私が自民党でお話ししたように、だって税制調査会も、はっきり言って、高齢化社会のことを言うけれども、子供が全然生まれてこないじゃありませんか、一・四、五人で。どうやってこれから支えていくんですか。だから、片手落ちなことばかりやっていますから、おかしいことばかり言っているなと思っているんですが、大蔵省も今どうするかということになったら、やっぱりそれしかないんじゃないですか、実際に。建設国債やつなぎ国債を発行して今景気を押してどんどん、時間が余りないから言いませんけれども、そこら辺の問題でどうも私は最近おかしい。それは細川さんのおじいさんの近衛さんもそうだけれども、何か一遍に大政翼賛会ではっとこうくるわけです、日本人は。これはやっぱりもう少し慎重にやってもらわなきゃならないし、規制緩和も、また同時に規制緩和のためにまた規制が出てきます。  先ほど岡野先生がおっしゃったように、アメリカは弁護士がどえらいふえているんです。それはそうでしょう、結果的に責任を追及するには弁護士に頼まなきゃしようがなくなってくるんですから。だから先ほどどなたかおっしゃったように、日本の美風からいってやっぱりほどほどが問題であって、私はどうもそこら辺のことをもう少し、政府当局もそういう有識者の、例えば企業の皆さんも何かそんなことばかり言っています。いろいろと例証を挙げたりしていろんなことがありますけれども、時間がありませんから申し上げませんが、そこら辺のことをもう少しやって、どうも格好よく規制緩和と言ったり地方分権と言っていればそれで済むようなことでは私はいかぬと思うんです、本当に。  そういう点で、どうですか、両先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  20. 岡野行秀

    参考人岡野行秀君) 熱しやすいというお話がありましたが、それはそのとおりであって、もともと私のように規制緩和を早くから叫んでいた者からしますと最近はちょっと苦々しい感じがいたしまして、例えば容積率の緩和もどなたが言っていらっしゃるのかなと。要するに、例えば東京をよくしようというふうに考えていらっしゃる方が規制緩和して容積率を上げようとしているのか、既に土地を取得された方が、四〇〇%のところが六〇〇%になれば自分の土地の利用価値が上がるので自分のプラスになるということを隠しながら、実はそういう一般的な形でおっしゃっているのか、その辺がかなり問題がある。  そういう点で私は申し上げたわけですが、飛騨川の事故なんかでも、本来やはりあれは、最終的に国ですけれども、本当は走らせちゃいけないわけです。それから、ああいう走らせ方をしてはいけないというところが問題なんです。でも、日本人は最終的にはだれが本当に悪かったかということについては余り追及しないという、いいところなのかもしれませんけれども、私は余りいいところじゃないと思うんです。要するに、悪いことは悪いんで、いいことはいいんであって、それはだれがやろうとも同じことである。したがって、あの場合に最終的には国が責任を負ったですけれども、今の例えば自動車の賠償保険も全く同じ考え方で、要するに事故で被害者が出てしまった、責任を裁判でやっていくのに大変時間がかかる、ここに血を流した人がいるんだから何とかしなきゃならないというところからできてしまったわけですから。そのことはいいんですけれども、できた後の運用とかやり方がどうなっているかということになるとかなり私は問題があると思います。  日本人は責任をなすりつけるというんですか、これは責任を回避したいというのはどこでも同じことなんですけれども、日本人の一つの特徴は、私の後輩の竹内靖雄君というのが「嫉妬と羨望の経済学」という本を書きましたけれども、まさにあれであって、自分が同じであればほかの人がよくなってくれれば自分もうれしいと思う、少なくともねたみは持たないという社会ですといいんですけれども、自分が同じであっても他人がよくなるんであったらそれはもう自分の満足が下がるというようなことを思っているわけですから、これを直さない限りはもうどうしようもないわけで、したがって責任の問題はそういうことがあります。  それから赤字国債の問題ですけれども、私も今は多分大々的な景気刺激はもうやらざるを得ないだろう、そのときに赤字国債を発行するということも多分現在ではやらなきゃならないだろうと思うんですが、やはり将来余り財政負担になるようなことをやるのはよくない。ただ、財政負担というのはどうなるかというと、今のところは、今使ってそして将来またそれを減らしていくということを考えているんですが、やはり支出の方も多少減らすというよりも膨らまないようにすることは必要だと思うんです。  つい最近のアメリカの学術雑誌ですけれども、アメリカに七十万人のティーンエージャーの女性がいて、そのうち十人に一人が婚外妊娠して、そのうちの半分が子供を産んで、ティーンエージャーでしかも子供を持っているわけですから、フードスタンプスとそれからメディカルケアをやるわけですが、これがあと二十年もたつと大体一人一万四千ドルになるだろう。それは全部財政負担になるわけです。  したがって、我々はそういうようなことにならないようなことを考える必要がありますし、それからこれは私の全く私見ですけれども、例えば社会福祉にしても社会保障にしても、特に社会福祉の関係ですけれども、私は消費税を社会福祉の目的税にする考え方であります。ただし、目的税といってもそれで全部やるということではなくて、例えば四〇%とか五〇%は消費税でやる、そしてそれに対応して一般財源からマッチングでつけてやる。そういうふうにしますと、国民政府にやれやれと言いますけれども、それをやるについては消費税を一%あるいは二%上げないとできませんよということになれば、そこまで要求すべきかどうかということを国民判断するようになってくる。そうしますと財政の膨張を防ぐことができる。何かそういう仕組みを片一方で考えながらやっていきませんと、ただ当面赤字国債で、将来またふえる分についてはそれでやっていくというようなことは、私もだんだん年をとってきたものですから、次の世代にそういうふうにやってもいいんだろうかということを感じるわけでございます。
  21. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 何か日本経済日本大変、ある意味先生おっしゃったように右、左一斉に同質社会で揺れていくんで、この揺れながら直していけるという点では何かいいのかなという感じがいたしますし、数年前と正反対なことを言っても全然責任を問われないというのは、ある程度大変麗しい社会がなというような感じすらするわけであります。最近の憲法論議なんかそんな感じもいたしますけれども、大変麗しい社会だと思います。  現在、特に規制撤廃と言われますのは、例えば今先生おっしゃったように日本経済大変な危機でございまして、手当たり次第何かやらなきゃいけないということで、赤字国債でも発行してどんどん、所得税減税もやらなきゃならないような羽目に追い込まれているということであります。そのような羽目に追い込まれたときにどうも目立つのは、この不況はただの循環的な不況ではないらしい、もっと深いところに問題があるのかなという感じがいたします。  その問題の中には、何か今の中で大変規制で守られている業種の極めて不合理なところがあって、その不合理なことこそ日本経済の効率を妨げているんだ、これを直してやらないと事によると成長ができなくなるかもしれないということがございますし、それから先と言われましたようにまさにアメリカのドル高と同じように、現在の状態ですさまじい勢いで企業の海外進出がふえております。現在のスピードでいきますとわかりませんけれども、中国に物すごい勢いで伸びていきますので、既に中国は香港と台湾と中国本土を足すと日本の経済力を抜いたかもしれないというようなところにさらに出ていって、しかもここに壮大な、例えば華僑の方々も中国の軍備力が拡大するとともに自信を持たれて香港で華僑大会なんてやられているようなときに出ていくというようなことがどうかという点の総合的な判断が必要で、できればそうならないで国内にいてもらうようなシステムができないか。そのためにはこの規制で守られた産業をどうにかしてくれという問題があるという意味規制撤廃かなという意味で、これは何か非常に重要なことかなと思っているわけでございます。  それから第二番目には、規制撤廃、お上にすがることでありますけれども、お上にすがって、今こちらの先生おっしゃったような老人介護の問題も出ておりますけれども、現在も余り弱くない人が、強い人が自分は弱いんだと言い過ぎることがあります。現在の高年齢者でございましても、六十歳以上の人、あるいは六十五歳でもかなり七〇%ぐらいは大変豊かであります。若い人よりもよっぽどぜいたくといいますか、年金を二十万円もらって、それから貯金が千五百万円以上ある人が四〇%から五〇%いて、資産を五千万円以上持っている人が半分いる。これは若い人よりもはるかにぜいたくであって、その人たちが若い人からお金を取っちゃって、その結果若い人たちの担税率が重くなって、負担が重くなって若い人の方が貧しいから子供が産めないよというようなことで、年寄りがかわいそうだというのは一種の神話ですけれども、かわいそうだと言うとかわいそうだということになって、そこにどっと行ってしまうわけであります。  同じようなことをこれからやったならば、あと三十年たてば三千五百万人の六十五歳以上が出てきて、そのうち二百万人や三百万人はアルツハイマー病になってどうしようもない人が出てくるんだ、これを一体どうするんだというときに、全部救えというか全部手出しをやれと言ったら、みんなで介抱して日本経済はなくなっちゃうよというような深刻な事態が出生率の低下とともに目先へ来るわけですから、すべて人情だとかということじゃいけないよというようなことかなということ。そんな点で考え方を変えるこの不況こそ絶好のチャンスだ、このように存じているわけであります。
  22. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 公明党の矢原でございます。  まず、竹内先生に一点お伺いしたいんですけれども、三番目の「福祉の拡充等の効果」で医療の四点を挙げていらっしゃいますけれども、確かに院長が今は経営専門家にならざるを得ない、もう借金で病院倒産というような形も出てくるんではないかなと思うんですが、薬の宅配便の利用、漢方の保険化、こうありますけれども、薬剤が非常に高いためにという苦悩を持っているのでございますが、ここの点でちょっと具体的に詳しく御説明をお願いしたいことが一点でございます。  岡野先生にお願いをしたいことは、規制緩和の御意見、本当に一〇〇%そのとおりでございますが、先生総合交通体系の構築の論文「競争規制」を本に出されておられます。今全国で各府県が高速道と大量輸送の鉄道、これをすべて一番二番の要求にされているんですけれども、この点で整備新幹線を今考えているわけでございます。これが「競争規制」の中で、私、第三セクターで私鉄やなんかももちろん利用すべきではないか。資金的な問題と思うんですけれども、そういうものと関連して規制緩和に経済の活性化ということを絡めて簡単な所見をお伺いをしたいと思います。  以上でございます。
  23. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 私、ここに医療を挙げましたのは、医療は規制緩和すると生命と直接かかわって極めて厳しい問題でございますけれども、規制緩和いたしませんと、これから老人化してまいりますので、ここのコストが膨大になってそれによってつぶれてしまうかもしれないという深刻な問題がございますので、それを徐々に今から考えていかなきゃならないのかなということであります。  病院経営も黒字を出さないでずっと経営していかざるを得ないというのは、これもある程度大変苦痛なことでございますし、それからここでございますような在宅ケアをふやしていくためには、看護婦さんが医師の指示を得なくても、ある程度の裁量権を持たないととても在宅ケアができませんし、それから薬の宅配便なんて書きましたのは、大きな薬を寝たきり老人の方は自分でとりにいく。直接薬剤師の人しか手渡せませんので宅配便ができないわけですから、何かそういう細かいいろんなすぐ直りそうなところを、一番上なんか大きいわけでありますけれども、順次直していかなければ、医療の効率化といいますか、あるいは寝たきり老人がこれからふえていくときにとてもそれに耐える力がないのかなという感じがしております。  それから、私、大変これは口幅ったい言い方でございますけれども、事によると介護のパワーが足りませんから、将来は必ず外国人に依存せざるを得ないだろう。外国人に依存するということは、外国の方に日本の看護婦学校に四、五年来ていただいて、日本語を習って、ただにしていただいてそのかわりお礼奉公として三、四年勤めて帰っていただくというような、何か経済援助と同時に、我が国と結びつけたそんなようなことも考えていかないと、将来を考えますと寒けがするような世の中がやってくるのかなというようなことで一例挙げさせていただいたわけでございます。
  24. 岡野行秀

    参考人岡野行秀君) 御質問は整備新幹線の問題でありますが、高速道路整備新幹線、いつも並べられるんですけれども、全く実は性格が違うわけでありまして、高速道路の方は用地費、建設費はかかりますけれども、一回つくってしまいますと維持管理費は余りかかりません。そして、利用者は自分で車あるいはトラックを持ってきて自分で運転してくれるわけですから、維持管理の費用はかかりますけれども、運営費はかからない。  新幹線の場合には、最終的に車両、そして労働者を雇って輸送サービスを提供するところまでやらないと使えないわけでありますから、したがって建設費だけでなくて後の費用が必ずかかるわけです。ですから、この費用が実は大変問題で、今JRの中でも民営化された後ですから、そういう費用を考えるとなかなか採算がとれないということがあるわけです。したがって、建設費だけを見てくれたからといってとてもやれない、やれる線ももちろんありますけれども、やれない線もたくさんあるわけです。そうなりますと、今度は運営費まである程度面倒を見抜くことをしないと、もし整備新幹線をつくれとおっしゃるならばそこまで見ないとできないだろう、そのように思います。  そのときに、第三セクターになっておりますものでも、第三セクターを利用するというのは、実は国なり地方なりの公共団体が補助金等を与える場合あるいは出資する場合に第三セクターでないといけないわけですからそれで第三セクターができているわけでして、したがってお金の出し方について、あるうまいつくり方をやれば民間でもやれるというようにすればまたやり方は違うと思います。第三セクターは、実際上見ていますと、ある意味では実際の運営あるいは経営については、どちらかというとやはり民間の経営者がやるよりは私は劣るように、というのは経営のインセンティブがやはり低いものですから、したがってもしそういう国やあるいは地方の資金を入れる場合でも特定条件で民間がやれるというようにした方が多分手を挙げるところも出てくるだろうと思います。  ただ、その場合でも規制の問題がありまして、国やあるいは地方自治体がお金を出す場合にはそれに対して非常に厳しい条件をつけるということをやりますと、また民間の方ではそういうひもつきといいますか、面倒なことをそれほど言うのであれば我々はやらないというようになると思いますので、その点の問題が残るかと思います。
  25. 足立良平

    ○足立良平君 民社党の足立てございます。  ちょっと手短に、まず岡野先生にお聞きをいたしたいと思います。  先生レジュメを拝見いたしましても、先ほどもお話があったんですが、経済的規制社会的規制、実際的にはこの社会的規制が実質的に経済的規制機能を果たす可能性があるという御指摘で、私もそういう感じを実は持っております。概念的には経済的規制というものは外す、社会的規制というのはこれから考えていかなきゃいけない。わかるんですが、先生も御指摘のように、頭ではわかるんだけれども現実の問題としてはなかなか区分が難しい感じ、例えば先生から先ほどお話がありました。国鉄が貨物の輸送力を大変増強した云々というお話がございましたが、あれにいたしましても、実際的には国の例えば公害問題とか、あるいはまた効率的に物を運送する物流のことを考えてまいりますと、本当にこれからの状況からすると、省エネルギーの観点からも、例えば大量の輸送手段というものはこれから大変必要になってくるんではないかという感じもいたします。そういう点で国家のこれからの方向性というものと、そして経済的なそういう観点だけですべてゆだねていくことが可能なのかどうなのか。その辺のところの考え方をお聞かせ願いたいと思います。  それから、竹内先生にお願いをしたいと思うんです。  竹内先生のお話の中で、このレジュメの中にもございますが、規制の見直し論というのがちょっと言葉としてあったかと思うんです。私の聞き間違いかどうかわかりません。ある面におきましてはちょっと似通った質問ですけれども、いわゆる経済的規制というものと社会的規制というものの概念からすると、もう一度この規制というものを見直していくという概念が私はある面では必要だろうと思います。そういう面で、先ほど東京の一極集中等をこのままほうっておかないで何らかの規制をしなければいけないのではないかというお話が先ほどあったように思います。本来、規制で人口集中を排除することが可能かどうかというのは私は疑問に思いますので、ちょっとその点。  それから、これから本格的な空洞化が始まると。今までの円高不況なり、あるいはまたそれぞれのオイルショック等の中で日本経済が相当外へ出てまいりましたけれども、実質的には空洞化というのは余り進んでいなかったのではないかというふうに思うんです。けれども、これから本当にどういうふうに変化するのか、ちょっと先生の御所見をお聞かせ願いたいと存じます。  以上です。
  26. 岡野行秀

    参考人岡野行秀君) 御指摘のように、経済的規制社会的規制をはっきり区別するのは境界領域にわたるところがかなりありますし、それからある意味では意図的に社会的規制経済的規制に使うということはできます。  例えば一つの例を挙げますと、ロンドンのタクシーの運転手は免許制になっておりますが、運転手の免許制の試験を厳しくしますと、当分の間供給を制限することができると。これは、アメリカなんかでも開業医について同じことがありまして、開業医が大分ふえできますと、しばらくの間大学の医学部での卒業生の試験を厳しくして卒業を余りさせないようにする。  こういうことができますが、これは実は社会的規制の名をかりているんですけれども、その運用次第では経済的規制になるという例であります。  しかし、規制としてはタクシーの運転手免許はちゃんと質的にクオリティーがあるかどうかという問題ですから、その規制そのものは本当はいい規制なんですね。だから、その運用の問題でありますから、したがって多分社会的規制経済的規制は概念的あるいは目的的には分けることはできると思います。ただ、問題は、その運用の仕方次第では社会的な規制が本来の社会的規制の枠を超えて経済的規制になるということは十分あり得ると思います。  それから、先ほど申し上げました国鉄時代の貨物輸送に関する投資の件ですけれども、私があの投資は間違っていたと言うのは、貨物輸送に投資をしたのが間違っているんじゃなくて、その内容が間違っていたと。あれはヤードの近代化に大変お金を投入したんですが、私は実はそのころ、もう国鉄の貨物輸送はヤードが要らない輸送であるということを盛んに言っていたんですけれども、実際にはヤードに大変お金を投じた。それは貨物輸送の改善には何の役にも立たなかった。  そういうことでありまして、したがって国がそういうことを考えるということは、私は大変重要だと思うんです。特に、交通施設の場合には私はできるだけ自由にした方がいいと思いますが、最終的には大きなインフラだけはやはり国が考えざるを得ないだろう、ただその大きなインフラを考える場合にどういう考え方でインフラを考え、そのインフラをどういう形でやるかということについては、もう少し民間の知恵を使う方がいいんじゃないか、そのように思います。
  27. 竹内宏

    参考人竹内宏君) 規制でございますけれども、例えば自分のおうちの庭に大きな木があっても切っちゃいけないとか、自然環境を守ったり都市美化を守るための何かそういうような新しい規制ももちろん必要かなと思います。  それから、先ほど御指摘の東京につきましては、多分東京から工場を追い出したことがあります。同じように、工場をつくりますと、工場でございますと、その周りに道路をつくったりあるいは港湾をつくったりせざるを得ないわけでございますけれども、ビルをつくりますと、そこに働く原材料といいますか人間は勝手にやってくるわけでありますから、ビルは何もしなくてもいい。またビルが一つ建つと、あたかも廃棄物のように住宅がいくわけでございますから、そういたしましても、緊急的にビルの入居を制限するとか、何らかの緊急措置をとりながら住宅とバランスさせていくというような規制がどうしても必要かなというような感じがいたすわけであります。  新しい規制の例としては、そんなふうに考えさせていただいているわけであります。これはあらゆるところに同じような問題があると思われます。  それから第二番目の御質問でございますけれども、空洞化でございます。  多分空洞化はかなり進んだのではなかろうかというふうに思われるわけであります。特に、典型的なのは家電でございまして、家電の拠点の既に二五%以上は海外に移っております。それから、現在、円高になりまして多くの産業は大分競争力を失っております。もしこれが今から二十年前か十五年前でございますと、こんなような大不況はないと思うわけであります。自動車不況であり、家電不況であり、半導体不況である。というのは、まさに日本の賃金水準が上がって、あるいは先ほどの例で言えば、おくれた部門の生産性が上がらないから袋小路に落ちてしまったということになるかもしれませんし、思い切った先行的な政府の財投が今までなかったからその結果貯蓄過剰になり、その結果円高になり、空洞化が一層進んだとも言えるわけであります。両面から何か空洞化、不況がやってきというふうに思われるわけであります。  企業としてはこれを乗り切るためにはどうしても、中国は日本の賃金の六十分の一でございますし、それから中国人は日本人よりも、ちょうど物が欲しい時代でありますから、我々も昭和三十年代に通ったのと同じように物欲に狂っている時代の人々でありますから、一生懸命どうしても働きますし、手先は大変器用ですし、鉛筆は削りますし、田植えはやりますし、それから夜見ますと空には星空が輝いておるわけでありますから、目が大変よろしいわけであります。そういう点では、労働力として極めてすぐれて魅力的だということで出ていっているわけであります。  現在、御案内のとおり、釈迦に説法でございますけれども、例えばバンコクで言えば、従来ですと、バンコクの市内から二十キロぐらい離れたところは沼地であって水牛がいて、お坊さんが黄色いけさを着てはだしで歩いていた同じ場所が、四車線道路が真っすぐ走り、その両側に見渡す限りの日本のハイテク工場が並ぶ工業団地が続くわけであります。こんなぐあいにどっと出ていったということであります。現在も大連などはまさにそのどっと出ていく勢いが感ぜられるわけであります。  そうした結果、我が国はアジアでは圧倒的な経済力を持つようになったということであります。つまり、我が国の中の成長率は鈍化し、我が国の経済的な影響力というのは企業が伸びたということであります。でございますから、このような状態ですと、企業はどんどん外に行って伸びるということでありますし、税制の問題で法人税がこのままですと企業はさらに行きますし、お金持ちは、まあ日本のスーパーさんでももう移されたところがございますけれども、海外に拠点を移される。海外で稼いだお金は日本に持って帰らぬ。なぜかというと法人税が高いからだということで、既にそれが進んでいるわけであります。  もしそれが下げられないとすれば、膨大なアジアにおけるこの影響力をどのように政治とか外交に結びつけていかれるのかなというようなビジョンが同時にあって出ていかれるなら非常に結構でございますけれども、もし仮にそういうのがないままこのままで出ていくというのは非常に残念でございますから、何か古典的で恐縮でございますけれども、私も六十三で昔の人間でございますから、それをぜひ防ぎたい。そのためには規制撤廃だ、このように考えているわけでございます。
  28. 林寛子

    委員長林寛子君) 以上で午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の皆さん方に一言ごあいさつを申し上げたいと存じます。  本日は、御多忙中のところを長時間にわたり本委員会に御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  私どもは、規制緩和に関しまして現在多くの議論がなされておりますけれども、大変重要な課題であると考えておりますので、御指摘いただきました数々の御意見参考といたしまして、これからの調査を進めてまいりたいと思います。  本日はどうもありがとうございました。  それでは、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  29. 林寛子

    委員長林寛子君) ただいまから規制緩和に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、規制緩和に関する調査を議題とし、参考人から御意見を聴取いたします。  午後は、東京大学経済学部教授植草益君、株式会社テレビ東京取締役解説委員長官智宗七君、日本商工会議所労働委員会委員長浅地正一君に御出席いただいております。  この際、参考人方々に御礼を申し上げたいと思います。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、ここに御意見を聴取することができますことについて、委員会を代表いたしまして厚く感謝を申し上げる次第でございます。  皆様からの忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の調査参考といたしたいと思います。  次に、議事の進め方でございますが、まず植草参考人宮智参考人、浅地参考人の順でそれぞれ二十分程度御意見をお伺いいたします。その後、二時間ほど質疑をいたしたいと存じます。  本日は、自由質疑形式をとっておりますので、参考人方々意見の陳述及び質疑に対する答弁とも、着席のままで結構でございます。  それでは、これより植草参考人に御意見をお述べいただきたいと存じます。植草参考人
  30. 植草益

    参考人(植草益君) 東京大学の植草でございます。  規制緩和に関する本日の私の意見は、既に皆様方に配付されております日本経済新聞の十月十六日の「経済教室」に発表いたしました論文をベースにしておりますので御参考にしていただければ幸いでございます。  なお、私は去る十月二十七日に衆議院の規制緩和に関する特別委員会においても参考人として意見陳述をいたしております。本日の意見もこの衆議院での意見陳述とかなりの程度重複いたしますが、そこでは述べられなかった問題も含めて本日は意見を述べたいと思います。  細川政権になってから、政府はまず九月十六日に緊急対策の一環として九十四項目の規制緩和を発表いたしました。また、十月二十七日には第三次行革審が最終答申を発表して、この中で規制緩和行政改革について答申を提出しております。さらに、細川総理の私的諮問機関としての経済改革研究会、通称平岩研究会が十一月八日に中間報告の中で規制緩和の基本方針を発表いたしました。これらの動向を見ますと、細川政権になってから規制緩和が従来に増して一層大きな政策課題として位置づけられているのがよくわかります。  中でも、平岩研究会の中間報告は規制緩和に関する基本方針と推進の方向についてかなり具体的に意見をまとめております。この研究会の現在の国内及び国際情勢における役割を考慮いたしますと、この中間報告は今後かなりの拘束力を持つと思います。しかし、率直に言ってこの答申は産業別及び法律別の現行の規制をいかに緩和・撤廃するかという具体的な内容についてはほとんど白紙に近いと言って過言でないと思います。規制緩和の具体的な方策についてはさらに今後の検討が必要と思います。  規制緩和の具体的な内容に入る前に、規制緩和の必要性について考えておきたいと思います。規制緩和は、一九八一年発足の第二次臨調、臨時行政調査会以来、現在の第三次の行革審まで十三年間にわたって取り組んできた課題であり、今さら規制緩和の必要性を述べる必要もないと考えられますが、現時点に立ってみても規制緩和の推進は次のような観点から必要であると思います。  第一に、主要な規制産業としての公益事業、電気通信、運輸及び金融業は社会経済のインフラストラクチャーを形成しておりますが、日本の二十一世紀に向けた社会経済の発展には新たな高度のインフラストラクチャーの構築が不可欠となっています。       まず、電力業におきましては、全国的な規模での新たな電源立地の確保や送配電網の建築が今や緊急課題となっておりますし、都市ガス産業においても、地球環境問題、国際的なエネルギー事情、国内のガス供給体制の整備の観点から全国的なパイプライン網の建設が必要となっております。電気通信産業においてはISDN体制に向けた全国的なディジタル回線網を早期に構築する必要があります。運輸業においては、新たな高速の鉄道網や道路網の建設整備が課題となっております。金融業においても、国内的には銀行、証券、保険を統合した総合的なサービス供給体制の整備やそれらを統合した国際的な金融決済、情報処理システムの構築が必要になっております。  このような公益事業、電気通信、運輸及び金融業におけるインフラの再構築は、国土の効率的有効利用の観点から各産業が一体となって推進される必要があります。しかし、この新たなインフラの構築には官庁間の縦割り行政や時代にそぐわなくなっている事業法による規制が大きな障害となっております。  第二に、日本の産業構造は今大きく変化しようとしています。日本の製造業においては、一九七〇年代からエネルギー事情の変化や生産技術体系の変革などを背景にいたしまして、基礎素材型産業から加工型産業へと生産の比重が変化してまいりました。  中でも、機械産業、これは広い意味でございますので具体的には一般機械、電気機械、それから輸送用機器及び精密機器でありますが、これらが国際競争力を強化いたしまして、主導的産業になってきました。しかし、輸送用機器や電子機器の国内及び先進向け需要は既にサチュレートした感があります。しかも、国際競争力を再強化しつつある欧米企業や新たに競争力をつけつつあるNIESの企業によって日本の機械産業は追い上げられておりまして、生産、販売の効率化と、より高度な製品の開発に向けた新たな企業努力が必要になっております。  生産、販売の効率化は生産の自動化、省力化、情報化が中心となりますが、これらは最終的には電気代を含めたエネルギーコストや通信コストの支出の上昇を招くことになります。それが全体的なコストを引き上げるわけでございます。そこで、製造企業はこれらの料金の引き下げを要求しておりますが、現在の硬直的な料金制度のもとではこれに対応できません。また、現在ハイテク分野を中心に新たな産業が生々発展しておりますが、これらの産業の発展のためには、インフラストラクチャー分野の産業の料金の低下やサービスの多様化が不可欠となっております。この観点から見ても、現在の規制産業の料金制度を含めた規制緩和が不可欠であると思います。  第三に、配付した資料に詳しく述べてありますが、規制緩和参入価格規制の自由化によって企業競争を激化させます。その結果として、料金水準の低下、料金体系の多様化、サービスの多様化をもたらすだけでなく、それらが需要の拡大を生み、また競争に生き抜くための合理化・効率化投資や新規サービス提供のための投資が拡大します。この結果として、内需を中心とした経済成長を促進いたします。  別の言い方をいたしますれば、規制緩和は多様なサービスの提供に伴う消費者選択の拡大、規制領域において特に大きな内外価格差の縮小、ビジネスチャンスの拡大、外国企業への市場開放、内需を中心とした経済成長など、多様なメリットをもたらすわけであります。  第四に、近年の政治汚職、金融業の不祥事、建設業の談合事件は、いずれも規制産業において発生しております。許認可行政は、新たに許認可を受けようとする企業独占的ないしは安定的な供給権を与え、既に許認可を受けている企業にその権益を維持させることになるので、企業規制官庁やその行政に影響力を持つ議員に多様な献金等を贈る誘因を持つわけであります。また、既に競争が展開されている産業において無理に価格規制実施されますと、アンバランスな価格体系が形成され、その結果として証券業における差益還元問題等が発生するわけです。現在、これらの問題と関連して政治改革の大きな課題となっておりますが、それと同時に行政改革と規制緩和を一体とした新しい日本経済の構築ということが大きな課題になっていると思います。  さて、規制緩和の具体的な方策でありますが、これについては、先ほども述べましたように平岩研究会の報告がグランドデザインを発表しておりますが、具体的にはまだ白紙の状態であります。ここで、私は具体的と言いましても約四百九十にも及ぶ規制関連法律について、全体にわたって具体的意見を述べることはとてもできませんので、概略だけを述べさせていただきたいと思います。  公的規制は、規制目的からいたしまして経済的規制社会的規制の二つに大別できます。経済的規制につきましては、さらに自然独占分野と競争分野に分けて見ることが大切でして、自然独占分野については、まずこれは電気、ガス、水道、市内電話などの規模の経済性やネットワークの経済性の大きい産業についてでありますが、これらの産業につきましては、現在でもこれらの経済性が大きく作用しているか否かを検討することが先決であります。  私ども経済学者は、現在の規制緩和について大きな関心を示しておりまして、近く「講座・公的規制と産業」全五巻を刊行いたしますが、その研究の中で、技術革新、産業融合、国際競争等の進展によって自然独占性が薄れている産業が多くなっていることを明らかにしてまいりました。電気では特に発電分野、都市ガスでは大口需要分野、電気通信では市内電話を除く第一種通信事業における規制緩和が重要な課題となっております。しかし、これらの産業ではなお自然独占性が強く残る分野もありまして、例えば電気における配電分野、都市ガスにおける小口需要分野、電気通信における市内分野などでありますけれども、ここでは規制を緩和・撤廃することは国民経済的に見て適当ではないと判断いたします。  ただし、この分野では従来の規制を存続するよりはインセンティブ規制を大胆に導入すべきであると思います。インセンティブ規制についてはかなり専門的でありますので、できれば私が書きました「公的規制の経済学」という本を参照していただきたいと存じますが、具体的には規制企業間が生産性を向上させて料金を下げたりサービスを多様化するように企業にインセンティブを与える制度でありまして、これは意外なほど大きな効果をあらわします。  次に、運輸、金融、流通、建設などの企業数が多い競争構造における規制につきましては、多くの場合に利用者保護の観点から規制実施されておりますが、実際には利用者保護よりは企業保護の方が強く、消費者の選択を阻害している場合が少なくありません。  すなわち、企業が多過ぎると過当競争によって倒産する企業が発生して生活必需的なサービスが十分に確保できなくなるという理由で参入規制価格規制実施されておりますが、それは利用者保護よりは企業保護になって、結局は消費者が多大の規制費用を負担し、高い価格のサービスを買わされることになります。競争構造の規制産業においては、大胆に参入規制価格規制を緩和・撤廃することを最優先にすべきであると思います。  経済的規制分野において、実質的な規制緩和実施するのであれば、何よりも規制の核となっている参入規制価格規制を緩和・撤廃することが必要であって、それに付随した多様な規制をさらに体系的に緩和・撤廃する必要があるわけであります。  ただし、金融業のように利用者保護の観点から参入が一定程度必要な場合には、従来のような需給調整を目的とした参入規制でなく、財務、経験などを主体とした参入適格要件を設けまして、それにパスする企業にはすべて参入を許可するという参入要件規制とか、最近では難しく義務許可制という言葉を使いますが、こういう方式に転換すべきであると考えます。  また、価格規制については公共性の強いサービスについてだけ規制を残し、その他の価格規制は撤廃してよいというふうに考えます。  次に、社会的規制について見ますと、社会的規制国民の健康、衛生、安全の維持向上、自然環境の保全などを目的としております。経済学的に言えば、公害などの外部不経済の発生防止、麻薬などの非価値財の供給制限、医療などの社会的公共サービスの安定供給を目的としております。  したがって、市場経済を基礎とする経済体制においては社会的規制は欠くべからざるものでありますから、この規制緩和には慎重に対処する必要があります。しかし、現在のように企業自己責任が強くなり、消費者の価値観が多様化した経済社会では、政府が余りに多くの事項にわたって社会的規制実施することは時代にそぐわなくなっていると思います。  さらに、社会的規制目的としながら実際には経済的規制に転化しているものが多く、このようなものがその産業の発展を阻害している場合があります。例えば医師法、医療法、薬事法などはいずれも国民の健康、衛生、安全の確保を目的とする法律であり、まさに社会的規制の範疇に入るものでありますが、これらの法律が一体となりますと経済的規制全般が実施されてしまうということになります。  すなわち、病院などの開設に関する参入規制、薬価基準による価格規制、多様なサービスの質の規制、事業計画規制投資規制、財務・会計規制など、すべての経済的規制実施されているわけです。社会的規制の本来に立ち返って、資格制度や安全確保を中心とした規制に戻すべきであるというふうに私は考えます。  さらに、社会的規制には基準・認証制度や検査・検定制度がありますが、企業における品質の高度化が進んだ現在ではこれらの制度は不要なものが多くなっておりますし、製造物責任制度を確立すれば、その多くは廃止してよいというふうに考えます。  規制緩和について、これまで主に産業別、法律別の内容について申し上げましたが、規制緩和規制の仕組みの改善ということも含めるべきであると思います。これは行政指導とか、縦割り行政とか、役人の天下りとか、規制を監視、是正する制度などを含むものであります。  まず、行政指導弊害を是正し、行政透明化するために行政手続法が今国会で成立いたしましたが、この内容国民に知らしめる努力と、これに関連する諸法律の改正を期待いたします。  また、縦割り行政弊害を是正するためには、第三次行革審行政官庁の統廃合を提案いたしましたが、これを素材として行政組織の改革にぜひ着手していただきたいと思います。特に、特定の産業だけを対象として法的規制実施している官庁に規制弊害が目立ちますので、この問題の解決に向けた組織変革が必要だと思います。  次に、規制を監視、是正する制度に目を向けますと、これは国会による監視、総務庁による行政監察、行政被害者による行政訴訟、行政に対する苦情を処理するオンブズマン制度、審議会など多様なものを含みます。  行政権の乱用を是正するためにこのような幾つかの監視、是正制度があるということは、民主国家として誇ってよいと思いますが、いずれも改善の余地が大きいと思います。国会による監視については、議員の産業界との癒着を発生させないような制度を担保しつつ、このような制度については、特にここに開かれておりますような特別委員会を常置するということが私は必要だというふうにかねてから考えているところです。  二番目の行政監察については、これを今後さらに拡充し、さらに行政勧告を守るよう義務づけるような法改正を期待したいと思います。  これをさらに一層強化するとすれば、行政委員会のような新たに独立した強力な機関をつくるという必要もあると思います。  行政訴訟は、日本では余り多くなく、その多くが教科書裁判に集中しておる現状でありまして、現在の規制に関する行政力の乱用について行政訴訟をするというケースは非常に少ないのであります。行政手続法が制定されましたので、今後行政訴訟がやりやすくなると私は判断しておりますが、行政訴訟をしようとする企業に対して官庁が種々の嫌がらせをする行為がありますけれども、今後はこれに対する是正をお願いしたいと思います。  さらに、総務庁、経済企画庁、法務省によるオンブズマン制度が現在ありますが、これはかなりの程度有効に機能していると私は判断しております。規制に関する特別のオンブズマン制度をつくるべきだと私は判断いたします。  最後に、規制緩和をすれば、競争の激化を通じて消費者被害、雇用調整、企業倒産、不公正取引が増大する可能性があります。この問題には、製造物責任制度、製品信頼保険制度、預金保険制度、雇用確保対策、独占禁止法等をもって対処する必要があります。これらは新たな規制ではなく、企業及び消費者の自己責任を主体とした制度であります。既に、日本企業はその責務を果たすに十分な能力を備えており、消費者も意識改革を果たしつつこれに対処するだけの能力を備えていると私は判断いたします。その能力を発揮するための新たな制度だと思います。  最後に、現在のように規制緩和が必要だということで規制緩和の大合唱があるわけであります。まさに規制緩和に対する大きな流れがあるわけでありますが、私はこの流れはそう長くは続かないと判断しております。今は総論として賛成している産業の多くは、規制緩和の具体案が出れば反対の立場に転ずることが目に見えているというふうに私は思います。どうか粘り強い規制緩和実施を期待いたします。  以上であります。
  31. 林寛子

    委員長林寛子君) ありがとうございました。  次に、宮智参考人にお願いいたします。宮智参考人
  32. 宮智宗七

    参考人宮智宗七君) テレビ東京宮智です。  規制緩和について、意見を述べる機会をつくっていただいて大変ありがとうございます。私は、この規制問題ないしは規制の撤廃問題について非常に強い関心を持っている経済ジャーナリストですから、その立場から意見を言わさせていただきます。  お手元に配付させていただいた資料は、細川内閣のこの問題についての政策路線についての私の考え方をまとめたものでして、実はこれのもとになっているものは、十月の中旬にニューヨーク大学の経営学部の大学院で市場開放あるいは北米自由貿易協定についての公開フォーラムがありまして、私はそのパネリストに選ばれたものですから、日本市場開放と規制の問題についてのかかわり合いをこういう形でメモにいたしました。それが母体になっております。そういう性質のものです。  もちろん、このテーマはさっき植草先生がおっしゃいましたように九月十六日の政府の緊急経済対策の第一項目目に規制緩和というのが出ておりますし、あるいはさらにその前に日本新党が昨年の十二月に政策要綱をまとめたその中にも書いてありますから、細川内閣の意思としてはかなり持続性があってしかも強いものだろうと思います。私がメモをつくった後、現実にそのメモの中に入っております行政手続法国会を通過成立しましたし、これによってかなり恣意的な行政による規制、論拠不明な行政指導、全くえたいの知れないものが多いと思いますが、そういうものの乱用にも私は一応くつわをかけられる体制ができたと思います。  また、さっきこれも植草先生がおっしゃったような第三次行革審もあるいはいわゆる平岩研究会もこの問題について触れておりまして、その中では、独禁政策の強化あるいは独禁法の適用除外条項の縮小ないしは今後にかけて情報公開法を制定する必要があるというふうな具体的な動きが、私にとっては大変好ましい形で具体的に進展しているものですから、現実の状況としては、私が配らせていただいたメモよりはスタンスは前進をしているというふうに私は理解しております。それは大変喜ばしいことなんですが、私はこの問題について植草先生同様前途については大変悲観的です。  実は、お配りしたそのメモは、しばしば私が規制緩和規制撤廃に反対のためのメモと誤解して読まれるくらいに実は悲観的で、とてもこんな状態では規制緩和は進まないというようなところに重点がかかっていることになっちゃっているんですが、私の趣旨は規制の撤廃が現在の日本経済日本産業に必要であるという立場に立っておりますから、その辺は誤解のないようにお願いしたいと思います。  私の論点は、現在国内にある経済的な規制が恐らくは日本市場開放にとって最も大きな非関税障壁の一つになっているんではないか、対外関係という視点から規制の撤廃問題について若干のことを話させていただこうと思います。  私は、中曽根内閣当時にできたアクションプログラムの中に盛られている、これはたしか内閣官房副長官が一番偉い方だと思いますが、内閣にできました市場開放問題苦情処理推進本部という機構の下部組織の苦情処理特別会議というところのオンブズマンの一人を六年間しております。そこで私が体験した具体的な例を一、二話させていただきたいわけです。  一つは、現実の国民の消費生活が急速に変わっている中で、国内の法律、制度、それに基づく規制というものがいかに立ちおくれていて、消費者の選択を狭めているかということにぶつかったというのが最初の例です。  それは、あるアメリカの食器メーカーが日本にフィレナイフという若干刃渡りの長いナイフを売り込もうとしたわけです。こういうところでこういう表現をするとテレビ調になって申しわけないですが、クリスマスディナーか何かのときに一家のあるじが銀のお盆の上に乗っかったスタッフドターキーないしはローストビーフのようなものを切り分けるときに使うナイフなんです。当然食生活が変わっているわけですからそういう食器が日本に輸入されてしかるべきだというふうに私は思いますが、これが水際で見事に撃退されました。どこが撃退したかというと、実は警察庁でして、銃砲刀剣類所持等取締法に基づくとフィレナイフの刃渡りは凶器に属する。  私は、その苦情処理特別会議メンバーの一人ですから、その問題が当然外国の食器メーカーからクレームとして出てきたときに、それはおかしい、刺身をつくるのは柳刃包丁だというふうに昔から決まっているけれどもあれでも人は殺せるわけたから、何ゆえにローストビーフを切るフィレナイフは日本の国内に入れないのかと言ったんですが、法律でそう決まっているからということで見事に撃退されたというのが一つです。  それからもう一つ日本の国内の規制がほかの国の規制と合わないために日本市場がいかに不透明ないしは非開放的であると受け取られているかという例を一つお話ししたいんです。  それは、ベルギーのある壁紙メーカーが日本にプリントの壁紙を輸出しようとしたことがあるんです。御存じのように、ヨーロッパの壁紙というのは大変かわいくて格好いいんですけれども、これがやっぱり途中でブロックされた。そのブロックされた理由は、日本の壁紙の安全基準を満たしていないということなんです。日本の安全基準というのは、壁紙に対してどう決まっているかと申しますと、一定面積の壁紙を燃やして、その燃やした壁紙からどのくらいの煙が発生するかということが安全基準のキーポイントになっているんです。ところが、ベルギーが加盟しているECの壁紙の安全基準というのは一定面積の壁紙が燃える速度を基準にしている。それで入れないというのです。もしどうしても日本市場に入りたいならば、日本の安全についての検査を受けなさい。  ところが、安全の検査をどこでするかというと、実は日本の国内に事業者団体がありまして、そこはメンバー以外の製品の検査は扱わない。初めて売り込んでくる企業ですから、当然ロットは小さいわけですし、しかも事業者団体に加入するのにはかなりの経費がかかる。一方、建設省に安全検査をする試験場があるんですが、それは実際は稼働していない。そういうクレームがやはり外国の壁紙メーカーから来たことがあるんです。そのときも、一方の安全基準が煙で一方が火だというと、それは果たして別のものだろうかということを私は建設省の方に申し上げたんです。昔から、火のないところに煙は立たないというとおり、火だけ出る壁紙とか煙だけ出る壁紙というのは世の中に存在しないはずであります。  結果としては、これは私が属しているOTOで物すごくもませまして、割合安い検査料でその壁紙メーカーが検査を受けて日本国内でそれを売ることができるという結末まで持っていったんですけれども、実は結果としてどうなったかというと、相手は業を煮やしてベルギーへ帰っちゃったわけです。  これをやっていると延々長くなっちゃうくらい実は例が多いんですが、こういう例というのは、私はかなり平均的な日本人だと思いますが、私には理解できない規制なんです。日本人の私が理解できない規制というのは、外国人に理解できるはずがないというふうに私は思います。  そういう点で、現在各先進国だけでなく発展途上国からも要求されている日本市場の閉鎖性の除去とか透明性の維持ということを実現する上では、どうも行政による規制が非常に大きなボトルネックになっているというか、障害になっているというふうに私は考えます。  現実に私が属しているOTO、苦情処理対策会議ですか、それが受け付けている各国からのクレームを見ますと、私のお配りしたメモの五ページにそれが書いてありますが、クレームを所管省庁別に分類しますと、厚生省、通産省、大蔵省、農林水産省、運輸省の順で実はクレームが多いんです。しかも、クレームに絡む法律というのは実に数が多い。我々が受け付けているクレームの八五%はこの五省によって占められておるわけです。しかも、この五省というのは、順序は違いますけれどもメモに書きましたとおり現在日本の中央官庁が持っている一万九百四十二件の全許認可権限の七五%を持っている。したがって、国内の規制の撤廃問題と海外に対する日本市場の透明性の維持というのは、私にとってはイコールで結べるテーマになっております。  現実に、昨年の七月に終わりました日米構造協議で、この市場開放と規制撤廃という問題に絡めて申しますと、アメリカは明らかに日本市場に対して欧米先進国と同様の同質化要求を出してきている。つまり、同じような市場のルール、同じような市場の構造になるようにということを言いまして、それに従って規制は撤廃すべきである、その規制を可能にしている行政権限を排除しろ、行政権限を排除する上で必要な法の改正ないしは法の撤廃を求めるというスタンスを一貫してとりました。現実に、先日国会で成立した行政手続法の影響でたしか九百近くの法律が改正されたと思いますが、それほどに法がどういうふうに変わるかということがこの規制の撤廃問題の先行きを支配すると思っております。  現実に、釈迦に説法ですけれども、日本の経済活動、GNPは世界のGNPの合計の中で一五%近くのシェアを占めますし、アジア・太洋州二十二カ国の全経済活動の中で七〇%弱は日本経済ですから、日本経済が少なくとも市場の透明性と開放性を維持しているということは世界経済の安定性と発展にとって大変重要である、そのためにも私は経済的な規制が最大限に撤廃される必要があるというふうに思っております。  主に対外面から規制の問題をこういうふうにとらえるというのが私の立場ですが、対内的な影響を含めると実はこれまでの規制緩和政策については私は幾つか重要な点が、弱いと申しますか薄く見えるというのと同時に疑問点が幾つかあります。  その第一は、こういう平成大不況と呼ばれるような経済が停滞している状態というのは、規制緩和を進める、規制撤廃を進める環境として妥当であるか妥当でないかといいますと、明らかにこれは最も不向きな環境であるというふうに私は思います。  昔から、不況はカルテルの温床ということわざがあるらしいんですけれども、こういう需要が収縮している状態の中で規制撤廃を進めるということはまず恐らくは不可能だと思います。関連の業界が当然に既存の権益を守るためにすこぶる防衛的になるでしょうし、それから規制の撤廃・緩和が当然に招く経済の構造調整、そこから発生する政治的、経済的、社会コストを吸収する余裕がこういうマイナス成長のもとでは恐らく発見できないからです。したがって、規制撤廃の問題は即刻スタートすべき重要な問題だと思いますけれども、これには大変時間がかかる。しかも、経済成長というそれを応援してくれる追い風がないと非常にやりにくい性質のものだということがしばしば忘れられかける。  現実に、九月の緊急経済対策の中に景気対策として規制緩和策が出てきたのは、私は経済政策の観点からいうと明らかに間違いだと思います。これは構造対策として行われるべきで、例えば全国で地ビールが方々でつくられたからといってこれで景気がよくなると思う人はだれもいないようなものです。  第二点は、規制の撤廃・緩和政策というものを少なくとも経済政策として進める場合は、独占禁止政策の重要性が一層増してくるという点だと思います。  これは二つありまして、一つは、現在の規制から発生している市場の排他性を除去する上で独禁政策というのは大変大きな効果を持ってあろうということと、それから規制が撤廃された後の市場競争が激しくなって寡占とか独占弊害が発生した場合にそれを排除するものは独禁政策である。  だから、現在から未来にかけて独禁政策の重要度というのは増してくると思うものですから、現在までの政策の展開を見ていると、時系列的に言いますと、まず規制緩和が出てきてその後に独禁政策を強化するとか独禁法の適用除外を見直そうというふうな動きが出てくるのは、あれは話が逆であるというふうに私は思います。これは、明らかに車の両輪といいますか、相互補完的な立場に立つものであると思いますし、同時に情報公開の制度がきちんとする。だから、規制の撤廃と独禁政策と情報公開がフルセットになって運営されるべきものではないか、そういうふうに私は思っております。  これは、私はマスメディアに属する人間ですから若干自戒の思いもありますが、規制の撤廃・緩和というのをトピック的に扱うとしばしば政策の体系なりなんなりがぼけてくるという欠陥がありまして、一つ一つの事例でやるものではなくて、経済政策としての体系性がはっきりまず総論としてきちんと出てきて、それに基づけばこの規制は撤廃されるべきであるというふうに類別されていくのが普通だと思うんですが、どうも現実の順序は、あれはやめられそうだとか、そういうふうなことになっているのは私には解せないという点を申し上げたいと思います。  将来にかけての私の考え方なんですが、例えば第三次行革審が提案したような第三者的な推進機関であるとか、あるいは平岩研究会が提言をしている規制緩和のための推進計画、たしか五カ年計画だと思いましたが、そういう具体的なスケジュールとそれから幾つかの原則を盛り込んだ大型の計画ができることが、やはりこの問題についての処理を後退させない上で大変重要ではないか。  現実には、日本の消費者のすべてが規制の撤廃・緩和に賛成をしているわけではなくて、むしろ無関心か消極層が私は大変多いと思いますから、この際この委員会委員方々にお願いしたいのは、政治の一つ機能としては実は啓蒙とか教育という機能が私は大変重要だというふうに前から思っておりますから、少なくともこの問題についての我々国民の理解を深めるための議論を積極的にしていただきたいというふうに思っています。  現実に規制の撤廃についての条件というのはかなり整ってきておりまして、その一つがやはりことし初めに比べればという意味での円高の進行ですし、それから、よくて安いと言われた日本商品を海外市場が吸収する余地が世界経済の停滞でだんだん乏しくなっている。そういうふうなことがありますし、現実に、例えばアジア地域での国際金融センターといえばだれしもが東京だと思ったのが、余りの規制の多さに多くの金融活動が香港なりシンガポールの方に移動しつつあるということへの懸念が発生している。まあ若干アジア地域のほかの国からおどかされているみたいな状況になっている。そういうふうなことも、規制撤廃・緩和を推進する上での客観条件としては私は有効に作用するものだと思います。  それから、現実に、これは人に聞いた話ですから余り統計をきちんと言えないんですが、自動車電話の普及率が単位台数当たりで日本の一に対してアメリカが六であるというふうなことを考えますと、今この停滞した経済の中で日本企業が多くのビジネスチャンスを求めているわけですね。そのビジネスチャンスが現実化するための一つ条件としては、行政による民間への介入、多くの規制がやはり撤廃されることが企業にとっては大きな栄養素になる、将来の日本経済の成長のシーズをここでまくことができるというふうに私は思っております。  どうもありがとうございました。
  33. 林寛子

    委員長林寛子君) ありがとうございました。  次に、浅地参考人にお願いいたします。浅地参考人
  34. 浅地正一

    参考人(浅地正一君) 日本商工会議所の浅地でございます。  本特別委員会におきまして規制緩和問題について所見を述べさせていただく機会を与えていただき、まことにありがとう存じます。  商工会議所は、現在全国五百九カ所に設立されておりますが、中小企業を中心として約百五十万余の会員を擁する地域総合経済団体でございます。本日は、こうした立場から私見を交えつつ述べさせていただきたいと存じます。  まず、規制緩和に対する基本的な考え方でございますが、戦後の我が国は欧米の先進諸国に追いつき追い越せを目標に経済社会の発展に鋭意努力してまいりました。この過程におきまして規制は、国内産業の育成、国際競争力の強化等に一定の役割を果たしてきたと言えることは確かでございます。しかしながら、今や世界有数の経済力を有するに至った我が国が二十一世紀に向けて国際的に調和のとれた自由で活力のある豊かな経済社会を構築していこうとするのであれば、規制緩和を通じた既存の社会経済構造の抜本的見直しが求められるものと承知いたしております。商工会議所といたしましても、規制緩和は大きな時代の流れであり、中長期的には我が国経済社会の活性化を図っていく上で避けて通れない課題だと考えております。  先ほども両先生からお話がございましたが、最近ちょっとした規制緩和ブームとも言えるような状況が見られ、一昨日でございますか、何とか大賞というようなはやり言葉のアワードをいただいたくらいの状況でございます。それほど各方面で規制緩和の議論が盛んに行われておりますが、それらを伺うにつけ、ややムードに流されている嫌いがあり、どうも安易な議論が行われているような感じがしてなりません。  もちろん、規制の中には社会経済情勢の変化、技術革新等により存在意義が薄れてきたものがあるでしょうから、これらは縮小ないしは廃止することも必要です。また、企業活力を発揮する際の妨げとなったり、国民生活を過度に制約しているような規制についても緩和の方向で見直していただくことが必要だと考えます。  しかしながら、一口に規制と言ってもその数は一万件を超えており、経済的規制社会的規制など実に多種多様なものがございます。一つ一つ規制の中身を吟味せずに、規制すべてが悪いもの、不要なものとするような見方には賛成いたしかねる立場でございます。規制にはそれなりのいきさつと理由があって行われているものも少なくないということを再認識すべきであると考えます。したがって、規制緩和を行う前提といたしましては、大変な作業だと思いますが、個々の規制を十分点検していただいた上で、ケース・バイ・ケースでその必要性を判断していただくことが重要ではないかと考えます。  次に、個別規制の検討に当たっての留意点という立場で幾つか述べさせていただきたいと思います。  第一に、規制緩和は本来構造改革を進めていくための中長期的課題でありますが、中には景気対策としての効果が期待できるものもあり、まずこれらを優先的に検討していただきたいということであります。  御高承のとおり、現下の経済運営における最大の課題は景気を一刻でも早く回復の軌道に乗せることであります。日本商工会議所実施しております景気観測調査結果を見ましても、消費需要や民間設備投資の動向には依然回復の兆しが見られず、業況悪化の長期化等から人員削減など雇用調整の実施、廃業、倒産の発生等を指摘する声が増加するなど、足元の景気は極めて深刻かつ憂慮すべき状況が続いております。政府におかれましては、大規模な所得減税の早期実施等、残されたあらゆる手だてを講じることにより景気回復に向けて全力を挙げて取り組んでいただきたいと存じます。したがって、規制緩和についても、景気浮揚効果が期待できるものを当面の緩和としては最優先に考えていただきたいと存じます。  このような効果が期待できるものとして、例えば都市開発や工場、住宅建築の促進に資するような土地の利活用に係る規制緩和が挙げられます。  日本商工会議所は、本年六月に、全国の商工会議所の正副会頭等約二千七百名を対象に、二十一世紀の経済運営のあり方等に関する全国アンケート調査実施いたしました。お手元にお配りした報告書の中にその結果を掲載してございますが、この調査結果でも、土地利用関連の規制について廃止ないしは削減、緩和すべきだとする意見が大変数多く寄せられております。中表紙以降の二十二ページでございます。  土地利用に関する規制の一例として、あるいは大都市固有のものかもしれませんが、工場等制限法による既成市街地での工場等の新増設に係る規制が挙げられます。  この規制により、制限区域内において一定面積以上の新増設が原則として認められていないため、工場の移転跡地に新たな工場を建てられない等、土地の有効利用の妨げとなっております。また、現行では、地場、伝統産業や食料品、出版等の都市型産業が制限除外とされていないため、地域の活力が低下しているケースが見られます。しかも、既成市街地の活性化の観点から、例えば高次加工型、研究開発型、情報関連型等の工場を新設しようとしても、この規制がネックとなります。さらに、工場、施設の老朽化に対応してリストラを図るために工場のリニューアル、設備の更新を行おうとしても、現行の基準面積ではうまく対処できないケースも多々出てきております。  したがって、工業集積の低下等に伴う空洞化を避け、都市機能の維持や都市の再活性化を図るとともに、企業のリストラ等を支援するために基準面積の引き上げ、制限除外業種の拡大等の制限緩和が必要だと考えます。これが実現すれば、企業設備投資意欲を少しでも喚起させ、景気に対してもプラスの効果が出てくるものと期待されます。  なお、近年大都市における工業も大きく変容を遂げてきておりまして、かつてのように騒音、振動、ばい煙といった公害を引き起こし、住民環境を悪化させるような生産活動は徐々に影を潜め、高付加価値型、試験研究型のものが大半を占めるようになってまいりました。したがって、規制緩和による工場の新増設が住民環境の悪化につながるということはほとんど考えられないと存じます。  このほか、土地の利活用を促進するために、都市計画法等による開発規制容積率制限、農地転用制限等の緩和も今後の課題ではないかと考えます。  第二に、経済のサービス化がますます進む中で、産業構造の変化を踏まえた労働規制の見直しも課題であると考えます。また、多様化する雇用形態という視点で近年の労働行政を見ますと、時短問題に代表されるように、規制緩和の方向に反して逆に規制強化の傾向が目立つように見受けられます。  私は、労働省の各種審議会委員を仰せつかっておりますが、労働規制をめぐるこうした動きにはかなりの疑問を感じておる場面がございます。経済が高度に発展し、貧富の格差が少ない、いわゆる所得が平準化した我が国社会における労働問題は、基本的に労使当事者間の協議にゆだねるなど、労使の自主的な取り組みに任せるのが筋ではないかと考えます。すなわち、今後はいたずらに法制化に頼ることなく、むしろ労使自治を最大限に尊重するという観点から、労働行政全般にわたり脱規制化を進められることを強く望んでおるわけでございます。  具体的には、産業構造の変化や高齢化の進展等といった状況を考えると、労働力確保、人材の有効活用に資するような規制緩和を進めていくことが重要だと考えます。  例えば、女性の意欲と能力が有効に発揮できる環境を整備するため、労働基準法の時間外・深夜・休日労働にかかわる女子保護規定は、母性保護に配慮しつつ緩和すべきでありましょう。また、産業構造の変化に伴う産業間の人材移動の円滑化を図るとともに、高齢者の雇用機会を拡大し、その能力を積極的に活用していくためにも、労働力需給の円滑な調整を図る必要があります。このため、公共職業安定所等の機能を補完する意味で、商工会議所等の地域の公的団体が労働者のあっせん業務を行えるよう、職業安定法上の職業紹介に関する法的規制の緩和も望まれます。さらに、女性や高齢者が保有する専門的な知識あるいは技能を有効に活用するために、現在対象業務を十六種に限定している労働者派遣事業法にかかわる規制緩和等も必要ではないかと考えます。  第三に、中小企業の適正な事業機会の確保を図るという目的で設けられている規制については、ぜひとも慎重に検討していただきたいと存じます。  中小企業は、相対的に経営資源に乏しく、大企業との間に歴然とした格差があります。競争条件に差がある中でお互いが真っ正面から競い合えば、その勝敗はおのずと明らかであります。中小企業の多くがそうした競争に敗れ、倒産や廃業に追い込まれるような事態になれば、経済社会国民生活に与える影響は甚大であります。したがって、そこにはおのずと適正な秩序やルールがあってしかるべきではないかと考えます。  一例として大店法を取り上げてみたいと思います。  昨今、規制緩和の枠組みの中で、大店法を廃止すべきなどの意見があるやに伺っております。仮にこれが廃止されるということになりますと、熾烈な競争の激化により中小小売商の淘汰が進み、雇用面にも非常な悪影響が出るおそれがあります。また、大型店の無秩序な出店に伴う摩擦や混乱が多発し、地元中小小売商と進出大型店との共存共栄を阻害し、地域経済の調和ある発展に多大な影響を及ぼすことにもなります。  そもそも、改正大店法の施行以来、新しい調整の枠組みは全体として見れば円滑に機能しており、大型店の出店調整は極めて順調に推移しております。したがって、地域社会に及ぼす影響の重大性を考慮し、また法運用の現状から見て、現行の大店法の基本的枠組みは変更する必要はないと考えております。大店法問題は、ぜひとも慎重に検討されるようお願いしたいと存じます。  もちろん、中小企業においても、今後は規制保護のもとにただ甘んじているだけでは許されません。急激な円高、アジア諸国の追い上げ、高齢化の進展等、中小企業を取り巻く環境は従来にも増して厳しいものがあります。みずからの存亡をかけて、新たな環境に対応すべくリストラに向けて懸命な努力を続けていかねばなりません。ただ、このような意欲ある中小企業の自助努力を側面的に支援していただくためにも、中小企業の活力の発揮に資するような規制に対しては肯定的な評価が与えられるべきだと考えます。  先ほど申し上げました日本商工会議所の全国調査でも、規制緩和は基本的に賛成だが、大企業との格差を是正し、中小企業の活力を維持発展させるような規制は今後とも必要であるという意見が七割弱と最も多くなっておる次第でございます。  第四に、消費者救済のために現在法制化が検討されている製造物責任制度、いわゆるPL問題について若干触れておきたいと存じます。  私どもとしては、製品の安全対策について、我が国企業は最大限の努力を傾注しており、総じて大きな問題は発生していないと考えております。また、本制度導入がとりわけ中小企業に与える影響の大きさを考えると、基本的には賛成しがたいと考えております。仮に新たな制度を導入するとしても、予想される社会的、経済的影響等を十分検討し、対策を講じていく必要があります。その場合、特に中小企業におきまして、クレーム対応等にかかる負担増や親企業の選別強化による取引関係への影響など多くの問題を生じることが予想されますので、中小企業に対する特段の配慮が不可欠であることを指摘しておきたいと思います。  個別規制の問題につきまして、会員企業から寄せられた意見等をもとに、特に御配慮いただきたい点を申し上げましたが、最後に、規制緩和を実際に進めていく上で留意していただきたい点について述べさせていただきます。  まず、規制緩和を着実に進めていくためには、推進体制を整備することが必要であります。特に、規制緩和という問題の性格上、政治のリーダーシップを十分発揮できるような体制をとることが望ましいと考えます。同時に、その進展状況をフォローするための第三者による監視機関の設置も必要となりましょう。  また、規制緩和を進めていく場合に、まず早急に実施するものと時間をかけて実施するものとの仕分けを行い、優先順位をつけることが必要です。その上で、実施の手順やスケジュール等を明確にした具体的な実施計画を策定し、それに基づいて計画的に進めていっていただくことが重要と考えます。規制緩和実施までの道筋があらかじめはっきりと示されれば、我々企業がそれに備えて対策をとりながら経営を進めるということが可能になるからでございます。  とはいえ、規制緩和実施のプロセスにおいて経済社会の一部にかなりの苦痛を与えるものであります。当然のことながら、競争は激化し、衰退企業があらわれ、短期的には失業者の増大も懸念されます。反面、規制緩和によってビジネスチャンスが広がり、新たな成長産業が出現する可能性も高まります。そこから新規の雇用機会も生まれてまいりましょう。したがって、失業問題を顕在化させないためにも、新しい産業分野ができるだけ円滑に労働力を吸収していく必要があります。このためには、労働力需給のミスマッチを解消し、地域間、産業間の労働力移動がスムーズに行われるようシステムづくりも今後の課題であることを指摘しておきたいと思います。  なお、規制緩和をどのような手順やスケジュールで進めるかということは、国の経済計画の策定やその運営と大きなかかわりを有するものと考えます。その意味では、今後の経済運営の中で規制緩和を有力な政策手段として位置づけながら進めていただきたいと考えております。  以上、いろいろと申し述べさせていただきましたが、現在ある規制はすべて過去の国会の場を経たものであることを考えてみますと、今後の国会等の場におきましてさらに規制緩和問題を議論するに当たって幾分なりとも御参考になれば幸いだと存じます。  また、先ほど申し上げましたように、実効ある規制緩和実施に当たりましては政治のリーダーシップの発揮に期待するしかございません。したがいまして、今後の先生方の一層の御尽力を切に切にお願い申し上げまして、簡単ではございますが、私並びに商工会議所の所見とさせていただきます。  重ねて、このような貴重な機会を与えていただき、まことにありがとうございました。
  35. 林寛子

    委員長林寛子君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの御意見の聴取を終わりたいと存じます。  これより質疑を行います。御質疑の際は、会派名と氏名、答弁を求める参考人を冒頭でお述べください。また、質疑は簡潔に、五分以内にまとめてくださるようにお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  36. 喜岡淳

    喜岡淳君 社会党の喜岡淳です。宮智参考人にお尋ねしたいと思います。  私は規制緩和については、やはり規制廃止するもの、規制は緩和するもの、規制は逆に強化するもの、こういった三つの仕分けになるかと思います。私は今運輸委員会におるわけですが、運輸の規制緩和に当たっては、安全性、公共性、環境の保持と、こういった三点の立場から廃止、緩和、強化ということを考えるべきではないかというふうに思っておるわけです。  もし規制緩和を推進するに当たっては、やはり一定の前提条件をきちんとしておかなければ大変な事態が起こりかねないというふうに思います。そういう意味では、幾つかの前提条件の中の一つとして参考人がおっしゃった例の独禁法の適用除外の扱いがあると思うんです。特に、日本の航空業界の運賃でいつも問題になるのは、独禁法の適用除外になっておりまして自由競争ができない。  そこで、規制緩和を進めるという前提としてはこの適用除外の廃止を行うべきだろうというふうに私は思いますけれども、参考人のさっきの御意見では縮小、減少という御表現だったと思います。私は、適用除外を縮小していくということでもいいんですが、あわせて独禁法が厳格に運用されておるかどうか、その監視体制というものも考えていかなければなかなか実が上がらないのではないかと思いますので、この点について御意見を聞かせていただきたいと思います。
  37. 宮智宗七

    参考人宮智宗七君) 独禁法の適用除外を縮小させると言ったのは私の表現の間違いでして、大変失礼しました。申し上げたいことは、撤廃すべきであると。  これはたしか一九七五年ごろだったと思うんですが、過去の最高裁の判決の中にも、独禁法の適用除外というのは、現行の独禁法の制度のもとで適法と認められているから適用除外が認められているのではなくて、競争政策とは別の経済政策上の視点からこれは認められるものであるというふうな判例が、おぼろげな記憶なんで失礼ですが、あったように思います。  もしそういう論点を延長するとすれば、市場内の環境と条件が変化した場合には当然適用除外と。いうのは存在意義を失うわけですから撤廃されるべきだと思いますし、たしか平岩研究会でも適用除外の廃止ということをあの中間報告の中には盛り込んでいると思いますが、私はその立場に賛成です。
  38. 喜岡淳

    喜岡淳君 ありがとうございました。
  39. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 自民党の沓掛哲男でございます。よろしくお願いします。  最初、植草先生にお願いしたいと思います。  経済的な規制緩和、この経済的な規制にもいろいろ自然独占、その他競争的になじむもの等々あるということですが、長いこと私も役人をやっておりましたけれども、私は基本的にはやっぱり規制の緩和というのは不断の努力であるというふうに思います。突然思い出してあることをどんとやるというものではなくて、やはり不断の努力をしていかないと、お役所というのは大変規制が好きですし、それに関係した企業というのはそれを求めてやってくるものですから、そういう点では私は規制は不断の努力が必要だというふうに思っております。  そこで、では今の経済的なこの規制緩和を全部撤廃したら雇用問題がどうなるかという観点で経済学者の方々の試算を一度お聞きしたことがあります。今ある日本の経済的な規制と言われるものを全部撤廃すると、大体四、五年のうちで失業者が二百万人から千万人ぐらいになる。これは範囲が大きいんですが、それはいろんな前提条件があるでしょう。しかし、十年ぐらいたてば、新しいビジネスチャンス等を通じて雇用が千百万人ぐらいになって結果的には雇用がふえるということを言っておられます。  レーガンが今から十二年ほど前に徹底した規制緩和をやりました。それがどんな結果になったかは三年前のプレジデントにマッキンゼー社が調査したものがずっと出ておりますから、それを私も読んでみました。そういうものをあわせて見ると、確かにこの学者さんの言うことは数だけはそう間違っていないんじゃないかな、そう思います。二百万人から千万の人が職を失い、そしてまた新しい千百万の人の雇用の場ができる。千百万人の雇用の場ができるからいいというレーガンのその政策が成功したかどうかは私は知りません。  現在、雇用がよくなり経済がよくなりつつあることは幾分そういう影響があると思うんです。しかし、日本とアメリカとは随分違うのであって、日本の場合でいえば、終身雇用制がいいかどうかは別として、やはり終身雇用体系ですし、アメリカのように能力を買われていってまた次の会社へ次々と移っていける、そういうような体制でもありません。特に中高年齢層にとってみれば、今やめさせられたらこれまた大変なことになるので、なかなかアメリカ的なそういう形は非常に問題があるんじゃないか。だから、経済が安定している時期にこういうものは不断の努力としてやっていくものであって、突然どんとやるとか、あるいはまた現在のような不況のときに規制が行われればいわゆる行動原理がそこで何か変わってくる不安が出てくるし、失業の不安、そしてますます経済的には悪くなっていく、いわゆる消費マインドが冷えていく。そういうようなことで余りにも強力に規制規制だ、そして今にもやり出すようなことは現在の景気対策としては非常にマイナスではないかというふうに思いますんですが、先生いろいろおっしゃっていただいたんですが、その辺もう一度お話を承りたいと思います。  それから、宮智先生、大変歯切れのいいお話を聞かせていただいたんですけれども、徹底していわゆる経済的な規制を撤廃していけば当然弱肉強食になることはこれは明らかでありまして、そういうものをある程度自制させていく上において独禁政策とを車の両輪としてやっていく、そしてまたそこで情報公開という三本柱でいくということは大変よくわかるんです。  しかし、そのことは、私は次に浅地さんにも質問したいんですが、これは一緒なんですけれども、日本人の私たちが今まで六十年間いろんなことをやってきたのは、ことわざにもあるようにできるだけお互いに和をたっとび、けんかをしないでそしてお互いに信頼を保ちながらいろいろやってきたんだというふうに思います。  しかし、私も実は建設関係のところの役所に長くいたものですから、今、建設の市場開放についてアメリカからの強い要求がいろいろあります。そういう中で彼らが盛んに言うことは、そういうのはもうだめだ、いわゆるアメリカ的に契約主義で訴訟主義で厳罰主義でいくんだ、いわゆるおとりを使え、あるいは密告制度をやれということを盛んに言って日本のいろんなものを変えていこうということなんです。  私は、もちろん従来のままの日本でいいとは毛頭思っておりません。しかし、余りにもそういう形のドラスチックなことをやるのは日本人にはなじまないんじゃないか。そういうことが今、浅地さんの言われた大店法の関係、中小企業等に対する大店法についてのことだというふうに思います。したがって私は、やはりこの規制緩和というのは不断の努力として当然やっていかなきゃいけないので、ドラスチックにどんとこの今の景気の悪いときにやるのは適切ではないのじゃないかというふうに思いますので、その点を宮智先生にお尋ねしたいのです。  それから、浅地さんには、今、土地税制の改正など土地のいわゆる流動化を図っていくこととか容積率のいろんなことをお話しになりましたけれども、いわゆる土地の流動化を図るために土地税制の改正をどうするかということが議論されて、長期保有土地について重課税化しているのをもっと下げろとか、あるいはその買いかえ規制をどうとかいうのがあるんですが、仮に今その重課税を下げたとすると土地の値段は私は下がると思うんです。なぜかと言えば、売り手については確かにそれでいいんですが、今度は、今買い手がないんですね、問題は買い手がないことにあるんですから、今度は買い手は、おまえ、税金をそれだけもうけるならその分の半分はおれによこせということで土地の値段は下がっていく。土地の値段が下がるということはこれは不良債権を抱えた金融その他にとってもいろいろな問題があるので、やっぱりプラス・マイナスがあるので今の景気対策上必ずしもいいことになるのかどうかなという疑義も持ちます。  そのほかにもいろいろ聞きたいんですが、これ以上聞くとあれだと思います、これ一つだけ聞かせていただきたいと思います。
  40. 植草益

    参考人(植草益君) 規制緩和は不断の努力が必要である、まことにおっしゃるとおりです。私は、日本における規制緩和は一九八〇年、第二臨調以来十三年間やってまいりまして、これだけの積み上げがあったということはやはり見逃すべきでないと思うんです。  ただ、この間の規制緩和について顕著な経済的な大きな成果があったという産業は、私が見る限りでは電気通信産業だと思います。電気通信産業におきましては、明らかに公共法人が民間、NTTにかわりまして、そして第一種通信事業に、特に市外に多くの企業が入り、国際にも入り、そして多様なサービスが提供されるという形でサービスの多様化が進みましたし、驚くほどに価格が下がりましたし、投資効果もかなり大きかったと思います。  第二次行革審において規制緩和委員会がありまして、私、そこで副座長として務めましたが、そのときにある消費者の方から規制緩和のメリットは何ですかということが質問としてありまして、第二次行革審の中で最終報告で規制緩和のメリットという章を書きましたのでぜひごらんいただきたいのですが、我が国において規制緩和をして大きなメリットが出たのは、このほかやはり国鉄の改革、それを通じての鉄道改革ということもあると思います。前よりも料金が上がらなくなったということは確かに大きな成果だろうと思います。そのほか、規制はまだ強くていろいろ問題はありますけれども、前に比較すれば航空はややよくなったというふうに思います。  しかし、そのほかの多くの産業においては実質的な規制緩和はほとんど起こっておりません。そこで現在のような大きなうねりが出て新しいシステムをつくろうというところに来たわけでありまして、今のような不況の時期に大胆な規制緩和をやることはやりづらい。先ほど宮智参考人が御指摘のように、むしろこれは好況期にやった方がやりやすいのでありますけれども、しかし、これまで不断に努力を続けてきてなお大きな変革をしなければならないという強い認識を持たないと大きな変革はできないというふうに思うんです。  雇用問題につきましては御指摘のとおりで、確かにかなりの多くの失業が短期的に発生すると思います。しかし、私は、現在、いろいろな試算が最近いろいろな研究所から出ておりますけれども、新しいビジネスが出てまいりますし、そのほかにも現在の雇用のミスマッチを解消するのに大変いいというふうに思いますので、長期的にはぜひ規制緩和を推進し、短期的には雇用問題についてさまざまな政策を打たなきゃならないと思います。その短期政策をどうするかという具体的な内容こそが検討されるべきであろうというふうに思っております。  むしろ規制緩和はアメリカにおいては効率の促進とか経済成長の進展とか消費者選択の拡大という意味で総合的に言えば評価されておりまして、雇用問題、特に航空業における雇用問題は非常に大きな問題がありましたけれども、これらを踏まえつつもなお成果の方が大きいという評価もぜひ御考慮いただきたいと思います。  景気対策と規制緩和については先ほど申し上げました。おっしゃるとおりでございます。
  41. 宮智宗七

    参考人宮智宗七君) 私の意見を言わさせていただきます。  私が申し上げているのは、景気の悪いときに規制の撤廃政策というのは明らかに不向きであるということを確かに申しましたけれども、若干舌足らずで、景気の悪いときに規制撤廃政策を進めるために必要なものは有効な不況対策であると。  残念ながら、今までの日本の経済状況を去年からことしにかけて見ていますと、政府が去年の八月、ことしの四月、それからことしの九月にやった三回の総合経済対策ないしは緊急経済対策と呼ばれるものの発表された事業規模の総額は三十兆一千億円に上りますが、現実にそれが有効に作用していない。どの産業界にお聞きになってもおわかりになると思いますが、例えば公共事業の積み増しということがあれだけ喧伝されていながら、現実に鉄鋼業界の受注量は公共事業用の鋼材の面で統計を見る限りはふえていないというふうな感じの景気対策しか行われていないわけですね。それで、そういう景気対策の実効性が担保されない中でその規制の撤廃なり規制の緩和、細川内閣は規制の緩和という表現をとっていますが、それをするということは、これは最もやりにくい条件をつくり出しておいて進めようという点が無理だということを申し上げているんで、こういうときはやめようというふうに私は申し上げているつもりは全然ありません。むしろ規制の撤廃政策を進める上で有効な需要創国策を政府、日銀がとるべきだというふうに私は思っているものですから、逆に言えば、規制撤廃が十分にできるような景気対策をやるべきだということを実は申し上げているのだと私は思います。自分ではそう思っております。  それからもう一つ。  余りドラスチックなやつは日本人に向かないんだというふうにおっしゃいましたが、それについては、たまたまちょっと持ってきたものがあるので読ませていただきたいんですが、これは、ことしの何月何日か忘れましたが日本経済新聞の一面の下の方に「春秋」というコラムがありまして、そこで競争というものを扱った日があったんです。  この「春秋」というコラムによると、コンペティションという英語を競争という言葉に訳したのは福沢諭吉だそうで、幕府の高官に頼まれて経済学の本の目次を翻訳したときに知恵を絞った末の訳語だったそうだ。ところが、それを見た高官が拒否反応を示した。「「争(あらそい)という文字がある。どうもこれが穏やかでない」。諭吉が「隣で物を安く売ると言えば、こっちの店ではそれよりも安くしよう、また甲の商人が品物をよくすると、乙はそれよりも一層よくして客を呼ぼう……それでもってちゃんと物価も決まれば金利も決まる、これを名づけて競争という」と説明すると、その高官は「西洋の流儀はキツイものだね」」。と言ったと書いてあるんです。「この表現では御老中方に見せられないという高官と、ほかに訳しようがない、という諭吉が折り合わず、結局「競争」の一文字を黒く塗りつぶして提出したという。「競争」をきらうのはこの国の役人の伝統らしい。」という実はコラムがあるんです。  御指摘の点に戻りますが、私は別に、猛烈なドラスチックで弱肉強食そのもののような競争がこの国に起こることを必ずしも好むものではありませんし、それから正直のところ、まあ今の程度の進め方だったらそんな激しいことには絶対ならないだろうという確信に近い思いがありますから、実はそのくらい起こってくれた方が市場競争は保障されるんではないかという感じの方が強いんです。  ただ、今まで見ていますと、私の先ほど申し上げた最初の論点から申しますと、どうもこの和をとうとぶのが、日本人のビジネス社会の中だけで和がとうとばれているというのが各国から批判されているのではないかというふうに私は思います。  多くの現在の行政による規制というのは、全部ではありませんが、戦後の日本の産業の国際競争力を強めるためにいろんな産業政策が導入された。その産業政策企業規制し、それの裏側で企業保護する。そういうところから生まれた結果として日本の多くの産業政策は何をもたらしたかといいますと、市場に対する新規参入の拒否とそれから、全部ではありませんが経済ないしはある産業の寡占構造を強めることに大変役立ったわけです。それと現在のその規制の構造というのはかなり隣接している位置にあるものですから、そのインナーサークルの中に入れば損をしない、ないしはより多くのメリットが受けられるという奇妙な、日本人専用の市場構造が僕は発生したんだと思うんです。それをもって和をとうとぶと言うのであるならば、ほかの国から見ればその和をとうとぶというのは非関税障壁になっているということをさっきから申し上げているのでありまして、その中には随分実は古いものがあると思うんです。  釈迦に説法を覚悟で申し上げますけれども、現在、酒屋さんの開業が免許制になっているのは昭和十三年からです。この昭和十三年から何で酒屋さんが免許制の開業をするようになったかというと、大正時代に倒産したり夜逃げをした酒屋さんが大変多かったとみえて、昭和十二年は日中戦争の二年目に当たりますが、戦費を調達するために酒税がちゃんと取れるような体制にしたのが実は現在の免許制の始まりだというふうに私は勉強しました。そういうふうなものがあって、しかもその中で和だけが限られた日本のビジネス、企業の中でとうとばれるということになるというのは、私の目から見ればそれは市場の透明性と開放性に対する障害になるというふうに私は思っております。  これが私の考えです。
  42. 浅地正一

    参考人(浅地正一君) ただいまの土地税制の件でございますが、やはり土地神話時代に育ってきたわけでございますが、そういった意味では、土地に対する譲渡益課税を緩和すると景気浮揚効果はあるかというふうに御質問を解釈いたしますと、そういった意味で後生大事に資産として土地を保有してきた企業にとっては、片方で本来の営業で苦しくなった場合に営業利益の損を土地を処分して補てんするという選択肢の一つとしてそういった意味での生き延びるための効果は十分にあると思います。したがって、結果的には土地の流動化の効果も出てくると思います。  しかし、再び経済が立ち直ってさあお金ができて何を買おうかといったときは、やっぱり日本人たちは土地を買うのではないかというのはやはりつけ加えておく必要があるので、時限立法的に対策をとっていただくということが必要だというふうに思います。
  43. 岩崎昭弥

    ○岩崎昭弥君 社会党の岩崎昭弥です。  先ほど宮智参考人からお話がありましたが、三十兆一千億円も投資してそして景気が浮揚しない。これは戦後なかったことであろうと思うんです。それは、ある学者が言いますように、複合不況ということで、循環論では解決せぬのだということを思うんです。それに関連して私は思うんですが、一説によると、日本全体で資産の目減り、一種のデフレですが、それで五百兆円ぐらいだと言われているわけです。しかし、そのうちに土地がどれだけあるか私は知りませんが、土地もかなりのウエートを占めているというふうに思うんです。だから、都市銀行でもその資産デフレで十四兆何千億円かの資産の目減りを起こしているようですが、それがやっぱり景気に一番大きな影響を与えているというふうに我々素人なりに思うんです。  そこで、やっぱりかつて土地神話ということがありましたが、土地の流動性を加速することが当面必要ではないかと思うんです。三十兆一千億円も投じて景気が回復せぬというのは、これはある程度長期にわたって手当てする必要が私はあるんじゃないかと素人なりに思うんです。  その土地のことなら私は簡単にできると思うんです。例えば国土法で今用途地域を決めています。それをもう少し現実に即して、ある程度その流動性が持てるようにする。つまり調整地域の中で当然開発してもいいようなところはそういうように調整をしたらいいんじゃないかというふうに思うんです。現実に私どものそばへ行くと、集落の連檐地域でも今土地の転用をさせぬわけです。地方へ行きますと、百坪、二百坪、三百坪の土地を何か工場とか事業所に使いたいと思っても、そういうことをさせないわけです。だからそういうことを簡単にできるように洗い直しをするというようなことが一つは必要だというふうに思うんです。  それから、今土地税制の話がありましたが、私は、土地税制は特に譲渡所得については緩和した方がいいというふうに思うんです。少なくとも改正前の税率に戻すとか、あるいはもう少しその税率を下げるとか、そういうことも必要ではないかというふうに思ったりするんです。  それから、もっと必要なことは、大蔵省の問題ですが、土地を交換するでしょう、あるいは贈与する場合でも、特に交換の場合です、交換の場合ですと、大体相続税の評価基準で二〇%以上は全部課税してしまうわけでしょう。それを、いや実際に相続税の評価基準の五〇%までは課税はしないよと、そういうふうにすれば私は土地は相当流動化するというふうに思うんです。  それからもう一つは、これはごく最近のことですが、地方自治体が全部固定資産税の見直しをやりました。そのままいくと三・八五ぐらい上がってしまうんです。それを一挙に上げたら大変ですから、緩和措置十三年にわたって調整していますが、これが不動産取得税になる、つまり県でですけれども。これは全然まだその見直しができておらぬわけです。こんなのも見直ししなければいけませんし、それに対して登録税から免許税から皆上がっていくわけです。これが三・五倍ぐらいに上がるでしょう。そういうものはこんな不景気なときに緩和したらいいと思うのです。そういうことを私は考えるわけですね。  それからもう一つは、慎重を要しますけれども、都市計画の用途地域の中で、ここには今の工場のシステムからいうと住居地域に工場が入ってきてもいいような企業も工場もいっぱいあると思うんです。そういうものは見直して、そして住宅地域にも適合するような工場なら、騒音がなくてそして公害もなくてということならこれは私は緩和したっていいというふうに思うのですね。  だから、そういう見直しをしてはどうかというふうに思うのですが、三人の参考人の方にひとつ御見解をお聞きしたいと思います。
  44. 宮智宗七

    参考人宮智宗七君) いわゆるバブル期に地価の高騰がありまして、それを抑えるためにとられた手段というのは相当厳しいものだと思います。今御指摘の一つ一つのことにお答えをする用意は正直のところ申しわけないんですがありませんが、緊急避難的にとられた土地に対する規制とか、あるいは税法上の締めつけといいますか、そういうものは事情が変わってきているわけですから、特に金融機関の不良債権の背景にあるものは土地が動かないということですから、私は早急にそれは緩和すべき性質のものだというふうに思っております。どうもまとめてお答えをして申しわけないんですが、総論としてはそう思います。  ただし、なぜバブル期に地価が高騰したかということを考えると、やはり東京への一極集中の問題とか、あるいは都市計画がどのくらいの指導性を持っていたかということにやはり思いがまたさかのぼってしまう性質の問題だと思いますから、その点は無視できないだろう、そういうふうに考えます。  話が景気対策のことですからついでに申し上げさせていただきたいんですが、確かにおっしゃることは重要だと思いますが、それは起爆力になるかどうかは私はかなり疑問があります。同時に、そのくらいの緩和をしても今の金融界と不動産業界のくたびれ方からいうと、当分バブルなどは起こりそうもないと思っているからこういうことが言えるのかもしれませんが、現実にその三十兆一千億円の中で、お上が金を払って民間に仕事をさせるという形の需要創出の部分というのは大変限られているものだと思います。幾つかのシンクタンクが試算をしておりますが、最も甘く見ているところで三十兆一千億円のほぼ半分ぐらいがいわゆる真水ではないと。私は実を言うともう少し少ないんではないかと思っていますが、そういうふうなものではこの需給デフレが巨大なときには有効ではない。  それと、現在この平成不況を深刻にしている恐らく最大の原因企業業績の悪化だと思います。企業業績の悪化を考えると、なぜ中東湾岸戦争のときに国際貢献増税といって、たしか申告所得八百万円超の部分に法人臨時特別税というのを一年限りで課して、戦争がとっくに終わっちゃった後の来年の三月三十一日まで法人特別税と名前を変えた税金が二年も存続しているかというふうなことは私にとって大変疑問です。この際、企業の税負担というのは近未来の景気の動向を考える上では大変重要だと思うものですから、そういうものがすべてワンセットになって出てくるのが景気対策ではないだろうか。本日の論題から外れて大変恐縮でございますけれども、私はそういうふうに思っております。
  45. 植草益

    参考人(植草益君) 私は土地問題については専門ではありませんので具体的なお答えができないのでありますけれども、むしろ現在の不況について、確かに土地対策も必要だと思いますけれども、これだけ長い景気の後には長い不況は当然であってその調整には非常に長い時間がかかる。それは単に複合不況というような表現でも構わないんですけれども、そうではなくて土地を含めた資産の全体的な需給ギャップ、そのほかさまざまな分野における需給ギャップというものの解消には非常な時間がかかりますので、この時間を超越して何か即効性のあるものを今求めてもそう出てこないという私はむしろ悲観論者であります。しかも世界の情勢を見たら、今すぐに日本で大型の景気対策をやってもそう即効性はないというふうに私は判断しておりまして、そういう観点からしますと、確かに資産デフレに関して土地政策をいろいろ打たなくちゃいけない。特におっしゃった三点は私も賛成であります。しかし、これをもって景気対策とするというようなことではないと思います。  以上です。
  46. 浅地正一

    参考人(浅地正一君) 結論から申し上げますと、金融というものが、従来物づくりの立場では物づくりとお金とがイコールであった時代はお金ががっとふえちゃったわけですが、そのお金が急に減っちゃったわけですから、その人質として土地というものがあらゆる面で今塩漬けになってしまっていると思います。したがいまして、今先生からの御指摘のようなことについては、そういうことの塩漬けをほどくきっかけになることは間違いないと思います。  したがいまして、そうすれば企業としては当面キャピタルゲインというのは望めないわけでございます。つまり土地値上がりによる利益というのは。したがって、土地放出意欲にマイナスであろうととにかく手放せるという事実のきっかけに間違いなくなるだろうと思います。  問題は、そこで政策誘導的にそれがゆとりある生活とかそういうような方向に、あるいはインフラ整備、一点に絞れば僕は快適な住宅というふうに言いたいと思いますけれども、そういった方に、例えば団地でももう古びておりますから、そういうようなところへ割合いい土地のところにそういうところも持ってくるような、有効利用するような政策誘導でサポートしていただければ、単なる減税とかいうことにとどまらないでいい将来への布石が今敷けるんではないかという意味先生に全く賛成でございます。  また、会議所といたしまして、会議所という名前を出していいのかどうかはわかりませんが、全体のムードといたしましては、バブル時代に土地を冷やすためにつくったそういうような規制の緩和というものは、慎重な判断を要するけれどもここまでの景気情勢の落ち込んだ現在については、結果的には土地の流動化効果も出るということははっきりしておるのでむしろ早急にこういうことをすべきだというのが現在の意見だと思います。
  47. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子ですが、植草先生にお伺いをさせていただきます。  今規制緩和というのが一つ流行語というのかブームのようにもなっているわけですけれども、私はそういう状況について一つの危惧を抱いております。流行になっているのは先生も先ほど御説明いただきましたけれどもやはり理由がありまして、その理由というのは、細川総理は所信表明で民間活力の最大限の発揮について努力をしたいというその具体的な施策の最初に規制緩和を挙げられているということで、やはり今の内閣の目玉商品というんですか、そういうものとして一つ規制緩和流行語になっていっているんではないかと思うんです。  その中身が、十一月三十日の本会議で、総理自身の御答弁の中で、経済改革研究会の中間報告というものに従いまして、それを受けて全般的に作業に着手するようにしたと。結論を得られるものは政策目的効果を考えて年内を目標に成果を取りまとめていきたい、このようにも答弁して言っておられるように、やはりそのねらいは、先日もこの特別委員会で青木参考人の方からお話を伺いましたけれども、いわゆる経済改革研究会の中間報告というものに沿って今政府規制緩和の方法を考えているということだと思います。その中間報告の中には、やはり米の市場開放の問題だとか土地の規制緩和だとか、先ほどもちょっと触れられましたが労働基準法を対象にするような内容など、やはり私は大きな問題を含んでいるというふうに考えているわけです。  そこでお聞きしたいわけですが、私どもも規制の緩和、確かに日本の国内では非常に複雑で官僚的な多くの規制があるというふうにも思いますので、こういうもう時代おくれになったといいますか、時代の要請にこたえられないような規制は撤廃をしていく、このことは必要だと思っています。しかし一方で、例えば公害だとかPL法のように、大企業利益を優遇する余り、国民とかあるいは消費者保護の点では外国に比べても規制の点で非常におくれている面もあるというふうに思います。  ですから、こういう規制緩和あるいは規制という問題はだれのための規制なのか、あるいはだれのための規制緩和なのか、そしてその内容は何であって、またそのいろいろな規制にも歴史があるというふうにも思いますので、そういう一つ一つ規制あるいは規制緩和につきましては個別的に分析的に対処をする必要があるのではないかというふうに思っております。  先生の先ほどの御説明にも若干そういうふうなところもうかがわれたわけですが、こういう規制緩和という漠とした大きな概念のようなところで議論をしているのではなくて、やはり一つ一つの問題について分析的、個別的に対応するという、そういう接近のアプローチの方向というのは先生はどのようにお考えなのかということをひとつお聞きしたい。  それから、規制緩和のメリットということですが、先ほど先生がお話しになりました規制緩和の成果、メリット、評価という点は、海外企業に対する市場開放、それから国内市場においては競争の活性化、こういうふうなことで結果としてはこれこれの成果が上がるというふうにも述べられておりますし、そして「本格的な規制緩和をすれば、競争の激化を通じて消費者被害、雇用調整、企業倒産、不公正取引などが増大する可能性がある。」という点も御指摘になりながら、最後のところで、「政治改革と行政改革と規制緩和を一体とした改革によって、「規制を使って民と利益を争う」政治を改め、活気と自己責任に満ちた企業と消費者による効率的で民主的な社会経済システムをつくり、それらを基礎として国際社会経済に貢献することが、最大の課題である。」というふうにお書きになっていらっしゃるわけです。  そこで、実は私の地元は京都なんですが、競争の活性化といいますか、競争が非常な混乱を生んでいるという一つの事例なんですけれども、最近、一日からある一つの会社がタクシーの運賃を一方的に六十円値下げをいたしましたということで、四つの法人と労働組合が裁判に訴えて出る。そして京都駅なんかで待っていらっしゃる中ではお客さんに対するいろいろな混乱も生じているということです。これは同一地域には何一運賃という一つ規制があるわけですけれども、それが自由化に向けて拍車をかけて一つもう踏み込んでしまったということで、これは非常に大きな問題を京都に、また全国的にも投げかけていると思います。  その値下げに踏み込んだ会社なんですが、これは私なんかもよく乗りましていろいろ労働条件なんかを聞いてみますと、非常に劣悪な労働条件で働かせているんだというようなお話を聞いているんです。そういうふうな点で、競争の活性化ということが利益が対立することを往々にして生みます。そのときには何を基準に対応して考えていくべきなのかという点で、植草先生のお話をお伺いしたいと思います。
  48. 植草益

    参考人(植草益君) 大変本格的な問題の質問でありますので、まず第一に、だれのための規制でありだれのための規制緩和がという問題について、それぞれ全体的かつ個別的両アプローチできちんと体系を立てなければならないという御意見についてでございます。  これを説明するのは大変難しいんですけれども、実は本を一冊書いてありますから読んでいただきたいんですけれども、まず、経済的規制についても社会的規制についても、なぜ規制というものが存在するのかということなんです。これは私たちは、市場経済というものを基礎とする経済社会において、市場経済にだけ任せられないものがかなりの領域においてある、これを経済的には広い意味市場失敗というふうに申し上げます。  この市場失敗というのは、まず第一に、競争が十分に働かない分野、それは一つには先ほどから申し上げておる自然独占の分野なんです。規模の経済性が非常に働く産業、ネットワークの経済性が働く産業、そしてそのときには統合の経済性が働くような産業というところでは、巨大企業特定の地域、特定市場というものを一人で供給してしまうというような規模の経済的な役割を果たしてしまう。こういうものについては競争に任せておいても自然的に独占ができてしまうわけです。もしこれに任せますと、独占力を使って高い価格をつけてしまいますので、どうしても価格規制が必要になる。さらに、どうせ一人でやった方が効率的ならば一人でやるように参入規制もした方がいいということになりまして、自然独占分野については各国ともに価格及び参入規制実施しているわけであります。  ところが、今技術革新が非常に進みまして、規模の経済性という大規模システムよりは分散型の小型システムで十分対抗できるものが出てきているわけです。そうなりますと、規模の経済性というものよりも小規模のものをどんどん育成していく。電力、発電なんかがそういうような分野であります。そういう分野については規制緩和をしていく必要がある。  それから、経済的規制のうちでも、例えば先ほどからお話しのタクシー等々、運輸とか金融とか企業数がかなりたくさんある。普通のほかの産業だったら、企業数がたくさんあったら自由に競争させておけばいいではないかという分野なんですけれども、なぜ金融とか運輸とかというところに規制があるかといいますと、一つには情報が十分に働かないということなんです。例えば、銀行に私たちお金を預ける。どこの銀行に預けたらいいかということを、一切今の規制がなかったら不安でどこへ預けていいかわからないし、どこが財務力が豊かなのかということは、一般の消費者は有価証券報告書を調べたりするようなこともできません。そこで、一定の経営の安定性というものを確保して消費者の利益を確保しなきゃならない。その根本にあるのは情報の非対照性というものなんです。  それからもう一つは、タクシー等多くの人たちが一緒に使うようなものというのは、なるべく公平な扱いをしてほしいということで規制がだんだんできていく。ところが、私たちは普通買い物に行ったときに、こちらの八百屋どこちらの八百屋というものについて価格差をいつも意識して競争しているものの中から適切な選択をしているわけですね。タクシーにしたって私たちはこれからこのサービスがいい、それからこの価格が安い、その総合判断の中で自分たちで選択できるという、そういう時代になってきているんだろうと思うんです。  そういうことを考えますと、経済的規制につきまして、従来の規制体系ではなく新しい規制体系をつくらなきゃならない。時には規制を撤廃していいものが非常に多いということで、どういうふうなものを規制緩和し、どういうものを規制で残すかというと、私たちはやはり自然独占性があるかどうか、情報の非対照性によって消費者がどれだけ混乱をもたらすかということをまず基準に置きまして、その上で現在はここまでなら大丈夫というものについては規制緩和をする。それから、社会的規制につきましては、先ほども原則的にはこれは安易に緩和することはできないわけなんです、国民の健康・衛生管理ですから、そして環境の保全でありますから。しかし、日本においてはこの規制が余りにも多いということなんですね。  そういう意味でこれはかなりの程度整備していい。しかし、今度平岩研究会が社会的規制について随分例をうまくまとめてくれておりますが、保健・衛生、公害・廃棄物、危険物等々、これらの項目の分け方は大変結構だと思います。この分け方にのっとって、これは大事だけれどもこれは規制緩和をしてよろしいというものを個別に検討していくということはそう難しいことではないと思うんです。  実は第二次行革審のときに、社会的規制関係につきましては統計もこういう法律の整備も余りなかったわけです。私ども委員が総務庁にお願いして、まず法律を全部リストアップしてください、そしてこれを分類いたしましょうという作業を始めてようやくこういう表ができるようになってきたところなんですね。社会的規制については、その実態も実はよくわからないものがたくさんあるんです。これから研究しなきゃいけないというものもたくさんありまして、社会的規制についてはこれからの研究を待った上でいろいろやっていかなきゃならないと思うんです。  最後に、大変長くなって失礼でありますけれども、競争というものが産業界を活性化させていくというけれども、混乱も起こすんではないかというふうにお話しでございますが、そのタクシーのお話を一つする前に、我が国の全産業のうち約三分の二の領域が規制は余り強くなくて、主に規制の基礎になっているのは独占禁止法で、その独占禁止法の枠組みの中で企業が行動をして効率を上げていくという形なんですね。それから三分の一が規制領域なんです。  この三分の二の領域については、国際的にこれまで発展した大変な成果であり、三分の一の領域もそれを支えてきた大きな役割を果たしてきたわけですが、一九八五年の円高のときに、あの円高差益還元について国会でも随分議論になりまして、何とか早くこの還元を進めなきゃいけないといって経済企画庁に対しても随分要請をしたわけですが、二年後になってみますと、非規制分野、競争的な分野においては円高差益はほとんど還元されています。一〇〇%に近いぐらい還元されております。ところが、規制分野、この三分の一の規制分野においては内外価格差がちっとも解決できないという非常に大きな問題がいまだに残されたままなんです。  これに対してどう対処するかといったら、先ほどから申し上げているように、安易に規制緩和をすべきではないけれども、規制緩和によって内外価格差が解決できるようなものについては何とか手を打たなきゃいけないという形で、第三次行革審も、そのほかいろんな審議会も随分真剣に討論をした中で、この分野はやはり競争をもう少し入れようということで、タクシーについても同一地域同一運賃の原則を一定程度緩和したわけでありまして、それを通じて確かに一部混乱が出るかもしれませんけれども、先ほど申し上げたように、私たちはいろいろな財を競争過程を通じたものとして合理的に選択しているわけですから、これからはそういうものについて消費者自身も合理的に選択をするという方向に持っていかなければいけない。  残る問題は労働条件です。確かに第一次、第二次、第三次行革審でこういう問題についてやるときに、非常に競争が強まったときに、そこに働く人たちの労働条件が非常に悪化する。特に運輸においてそういう要請が強かったです。労働組合からも強い要請がありました。この問題については、一つには社会的規制の問題もいろいろあるんです。それをうまく使いつつ、さらに雇用対策も使いつつ対処しない限りはできないんですね。  そういう点を十分考慮しつつ、どうか内外価格差、そして市場メカニズムが経済全体を活性化し、長期的に日本の経済の発展を支えるという基本的な路線をまず基礎に据えた上で、それぞれの産業における規制緩和というものを考えていただきたいというふうに思うんです。
  49. 今井澄

    ○今井澄君 ちょっと視点を変えまして、規制緩和の今後の進め方について、平岩研究会の中間報告にある第三者機関のことについて植草先生とそれから浅地先生にちょっとお伺いしたいと思います。  先ほどからのお話でも、第二次行革審から十三年、一方で電電公社の民営化、それに伴う第一種電気通信事業における規制緩和の進みぐあいや成果のお話があったわけですが、しかし一般的には、この間十三年、規制緩和は進んでいないという評価があったり、また件数だけで言うと、むしろこの間ふえてきているということから強力に今度出てきている問題もあると思います。特に平岩研究会の、強力な推進本部をつくって計画をつくることと、そして法に基づく第三者機関をつくるべしというのは、かなり強い表現での答申ではないかと思います。  それは、一つ言われていることは、確かに規制によってもたれ合いの社会があるという中に、特に官庁が規制というものに、官庁と業界がもたれ合うといいますか、官庁の方がなかなか規制を手放したがらないということがあるということも一説に言われていると思います。  それについては、内閣の中に強力な推進本部をつくるだけでは不十分で、第三者機関をつくる必要があるということだと思いますが、先ほどの植草先生のお話では、一つ国会による監視あるいは今の総務庁の行政監察局、この機能を強化するということ、ないしは行政委員会をつくるというお話、それから裁判のお話とか、もう一つオンブズマンのお話がございました。それから、浅地先生のお話では、政治のリーダーシップということが繰り返し強調されております。  その場合、一つは推進本部というのは恐らく総理大臣のもとにつくられると思うんですが、それは政治のリーダーシップあるいは国会の監視ということの関係で言えば、そこに例えば国会議員を含めてその推進本部に入っていくのか、あるいはそれは行政の機関として各省庁から、普通で言うと事務次官あたりを集めてつくることが多いのかもしれませんが、そういう形でいいのかどうか、どういう方向がいいだろうか。また、第三者機関は国会自体がその役割を果たせるのかどうか。あるいはさっきの行政委員会というお話でありますとすると、国家行政組織法の第三条に基づく委員会をつくれというかなり強い意見もあるようですが、なかなか難しそうで、八条の委員会でも十分機能を果たせるのか、あるいは果たす場合にはどうすべきかということですね。業界あるいは官界からかなり自立した独立した機関をつくる必要があるのではないかという意見について具体的な方策についてお伺いできればと思います。
  50. 植草益

    参考人(植草益君) これも大変重要で、かつ難しい問題だというふうに思います。  現在、鉄のトライアングルという言葉がよく使われますけれども、私は必ずしも好きな言葉ではありません。なぜかといいますと、政・官・民という三角形だけで見るのは間違っているというふうに思っているからです。  少し詳しく申し上げますと、本来は議会が官庁を監視するという役割があるわけです。そして、官庁は産業界に対して規制をする。そして、企業は政治に対していろいろな雲とかいう形で結びついていたり、いろいろな献金という形で結びついて三角形になるわけですけれども、実は政治というものの、皆さん方は投票ということを通じて選ばれてくるわけで、産業界だけで選ばれてくるわけではなくて、もう一つ国民というものがあってその投票の上に選ばれてくるわけですから、政治と企業、産業との間にはもう一つの核として国民というものを置かなきゃいけないというふうに思うんです。  それから、私がきょう、行政を監視するシステムとして議会というもののほかに行政監察、それからもう一つ行政訴訟という裁判制度というものをもっと拡充すべきだということを申し上げたんですが、特に裁判制度、行政訴訟というものができるというふうにすると、三角形の横に、片方に国民、こちらに裁判制度というものがある。この五つのシステムがうまく結びつかなければ規制 というものの新しい仕組みはできないと思うんです。  そして、緩和するということができれば、これでこのシステム、これはかなり離れてくるんですけれども、緩和できない場合にはこの五つがうまくかみ合っていくというシステムをつくらなきゃならないということをベースにした上で、私は行政訴訟ができやすいような体制をつくるとかそれから国会が官庁をもっと監視ができるシステムをつくるとかいうようなことを申し上げましたので、そういう意味で私は、ちょっと皆さんに黒板がないものですから説明しにくいんですけれども、鉄のトライアングルというのよりは、五角形の中の、わかりやすく言えば民主的な新しいシステムをつくるということについてお考えいただきたいということを申し上げたわけでございます。
  51. 浅地正一

    参考人(浅地正一君) まず、直接的な第三者機関ということ、政治のリーダーシップということの前に、ちょっと聞いた話でございますが、言わせていただいてよろしゅうございましょうか。
  52. 林寛子

    委員長林寛子君) どうぞ。
  53. 浅地正一

    参考人(浅地正一君) 規制緩和行政の肥大化を招くという話を聞いたことがございます。  例えば保険行政というのが仮に大蔵省の中であって、こういうものを野放しにした場合、日本では五十人で済んでいるけれども、アメリカではいろんなケースが出てしまって、結局受け皿として何かつくらなきゃならない。そうすると、それに要する行政上の人数は千五百人だというような格好で、日本の方がそういう意味では効率的にやっているのではないかというような感じを例にとられまして、その先生は、規制緩和は必ずしも行政をスリム化していくものではないというケースもあり得るということを念頭に置いておく必要があるということを言っておられました。  同じような形で大変僣越でございますが、我々第二次大戦を経験したわけでございますが、あのとき、敗戦という言葉を私は使うべきだったと思いますが、終戦という言葉を使ってまいりました。そういったような使い分けという意味での現在の競争という概念は、スポーツのように、勝った負けたといっても後でにこにこしているような関係を何とかしてつくり上げようというような意味の、穏やかな、和をたっとぶような競争というものが今まではぐくまれてきたんではないかなと思いますが、今回論じられているのは、競争概念を戦争概念に置きかえなければ納得されないような議論に向かっていくんではないかというふうに思っております。  つまり、市場の中から相手を排除する。先ほど植草先生も、規制緩和をした場合には独占企業があらわれるとか、あるいは大企業による地域支配が起きる、こういうようなことを言っておられます。そういった意味で考えて、つまりとことん行くというようなことまで考えますと、やはり行政、司法、立法府と、この三つから成り立つ機関が私は必要ではないかと思う。  そして理論的な部分とそれから現実的にどういう問題があるか。例えば、こういう法律があってこういう規制あるいは許認可がある、これは何ゆえにこうこうこうだったんだというのは、民間の方からでは一切私は説明できないと思います。そういうことが御専門の学者さんでもいらっしゃれば。しかし、行政官がその他あるいは政党のブレーンの方にそれぞれの理由みたいなものを附せんをつけていただいて、法律の後ろに。そして、現実にその中で生きてきた人たちというのはヒアリングというような形で呼び込んでいただいて、やはり結論から申しますと、あくまでも選挙で選ばれた皆様方にゆだねて、国のあり方像として将来に向けてこれが必要かどうかという決定をしていただけるような機関を政治家の先生で設けていただくのがよいのではないかというふうに、これは私見でございますが、考えております。
  54. 植草益

    参考人(植草益君) 御質問があった点にお答えし忘れてしまいましたので、よろしいでしょうか。
  55. 林寛子

    委員長林寛子君) はい。
  56. 植草益

    参考人(植草益君) 第三者機関について御質問がありましたが、その点答え忘れましたので意見を述べさせていただきます。  平岩研究会の報告には、第三者機関を設置して、規制緩和推進計画を審議するとともに、その実施を監視し、必要に応じて総理大臣、関係行政機関長に勧告、意見表明するという内容が書かれておりまして、第三者機関というのは、法律に基づく強力な機関ということだけで、その性格については必ずしも十分にわかっていない。一体どんな形のものにするのかということがよく議論されているところでありまして、私の推測で言えば、行革審、第三次までやりましたけれども、必ずしも規制緩和はうまく進まなかったと。細川さんもこの機関に入っていて、必ずしもうまくいかないということで、もっと強力な機関をつくらなきゃならないというようなことを言っておられたということを新聞で読みましたけれども、私も経験いたしまして、現在の行革審では必ずしもうまく進まないということであります。  総理大臣の直属の審議会でありますけれども、そしてまたそこで勧告したものは内閣が実行するということを担保しなければならないというふうに書かれているんですけれども、勧告したことが必ずしも十分に実行されていないというような実情でもありますし、また勧告自身が非常に具体性に欠けるものですから、実施が非常に困難であったりというようなことがあるんですけれども、それ以上にやはりいろいろな官庁の抵抗というものが非常に強くて、実質的な規制緩和がなかなかできない。それで、何とか少し強力なものにしなきゃいけないということで内閣の中に置くというような案もあったようでありますけれども、第三者機関として法律に基づくものをつくるとするならば多分私は行政委員会的なものになるだろうと思うんですが、行政委員会は我が国の法律では違憲論がかなり前からありまして、多分これではいかないのではないか、私は法律学者じゃありませんから、必ずしも正確なことは申し上げられませんけれども、できないのではないかと思うんです。  そうすると、法律によってどういう機関としてつくるかということは非常に玉虫色であって、今のところわからないというのが実情ではないかと思うんです。私は、何とかして強力な機関をつくらなければならないというふうに常々思っておりますけれども、具体的な内容についてはむしろもう少しここのところをはっきりしていただきたいというのが私の意見であります。  それから、ここに国会議員が入るべきかどうかということについては、私はあくまで第三者を中心にした方がいいんではないかというふうに思います。率直に申し上げて皆さんにやや失礼かもしれませんけれども、やはりいろいろな政党というものがあって、それぞれを代表して来られる場合には、その政党間の調整はこういう計画をつくる段階に入るとほとんど推進ということができなくなってしまう運命のようなものがありまして、そういう意味ではかなり専門の方々にお任せいただいた方がいいんではないかというふうに思っております。  以上であります。
  57. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 実は、この規制緩和の問題ですが、もともとこれは人間は性善であるのか性悪であるのかという、そこに問題が走っておると思うんです。ですから、規制をやったというのはこれは性悪説で、人間なんてこうやると何でも適当なことをやるからこれは一応規制をかけよう、こういうことでどんどん生まれてきましたし、今規制緩和をしてもらいたい人、これは企業だって企業のエゴがあると思うんです。また、国民の方の……
  58. 林寛子

    委員長林寛子君) 質問の相手を、先生の相手をおっしゃってください。
  59. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 宮智先生、お願いします。かつて、先生とは七、八年前かな、犬山で日米のシンポジウムのときにお会いしまして、お話ししたこともあるんです。  そこで、これお話しすると質問が長くなるんですが、例えば私どもが政治の世界に入る前に民間人として考えたことは、中へ入ってみますと全然違うことがあるわけですね。というのは、例えば水道が赤字になれば、これは市民に負担をかけさせちゃいけないから税金で持ったっていいじゃないか、一般会計に入れてもいいということになりますと、しかしこれは公営企業の法律があるものですから、それはいかぬ、どんぶり勘定はいかぬということになって、なるほどなということになるわけです。  したがって、いろんな法律があって、まずそれは機能していいこともあるし、例えば水道公営企業会計で今実際問題になっているのは、各市町村でも物すごく水道の建設起債なんか借り入れていまして、高いときは一〇%近くです。しかし、今実際金利は物すごく安くなっていますから、市中銀行から借りれば四%ぐらいで借りられるんですけれども、それでは借りかえができない。何となれば、それは公営企業金融公庫とかいろんなものがあって、そこで職員の皆さんもいらっしゃるし、その利息で食っているんですから。そうなるとそこで雇用不安も生まれてくる、いろんな問題がこの規制緩和一つでもいろいろと錯綜しているわけですよ。  したがって、これは言うはやすくなかなか行いがたしということで、第二次行革審から今日までもう十三年もたっても何ら進展を、まあ国鉄の民営化とそれからNTTは別としても、そんなに大きく進展していない。これはこの先も、行革審の今度の新しい答申にしても全く玉虫色、じゃ本当に実行するのかということになって、何かそれだけいさかっておって実際できなかったら、これはもう本当に国民も不信に陥ると思うんですよ。と同時に、細川さんは質実国家とおっしゃって、人間皆、質実国家といえば質実剛健だと思ってスリムになると思っているんだけれども、どうも考えてみるとそうでもない、こういうことになっております。  先生にここで特にお尋ねしたいのは、アメリカの場合、例えば航空会社は今デルタとかユナイテッドとか三社ぐらいが非常に強くなってきまして、あとだめだと。それでハブ空港を持ってハブ・アンド・スポークで物すごくやっている。したがって、それはもう問題にならぬし、先ほど金融は香港とかシンガポールということですが、それはそうでしょう、日本の空港状況は物すごく悪いものですから、それはもう向こうの方がはるかにいいわけですから。したがって、羽田に例えば国際空港があればもっと勝手が違ったんでしょうけれども、成田から来るまで大変なことだし、そういうようないろんな問題もある。  同時に、ボーダーレスの例えば航空産業。日本航空なんかかっては非常に独善的でして、本当に日本航空なんというのはもう乗せてやろうかというような話でした。かつての国際線。にもかかわらず、最近はいろいろサービスに努めていますけれども。しかし、そういうボーダーレスになって、今規制をやっていて、例えば航空運賃もそうですけれども、それはこんなものは完全に本当に通用しないようなことを運輸省は許可しているわけですよ。  こういうものを早く直した方がいいと思いますけれども、しかしそれ以上に、先ほどおっしゃったように規制緩和をやったら新しい産業が生まれるのは非常に難しいとおっしゃったし、またある人は新産業が生まれてくると。武村官房長官はベンチャービジネスとかなんとか言っていますけれども、もう日本くらい第三次産業が発達して人を雇用しているところはないと思うんですよ、アメリカと比べたら。ですから、何でこの後規制緩和をやったらどんな新産業が生まれてどんな雇用が行われるかといったら、本当に私は不確実だと思うんですよ、実際。私はそういう点で、みんな口先ではうまく、これは規制緩和をやって新産業が生まれてくると言いますけれども、それじゃどんな新産業、ベンチャービジネスが生まれてくるのかといったら、本当に私は疑問だと思いますよ。  そこら辺の点で、どうも規制緩和だけが何かお題目のように唱えられていまして、どうもその点は先生どうですかね、新産業が生まれて本当に雇用ができて吸収できますか、実際に。
  60. 宮智宗七

    参考人宮智宗七君) 実は大変痛いところをつかれているという印象があるんですね。  構造調整の後に日本の産業がどういう姿になるかというのを予測することは、率直に言って大変困難だと思います。普通だと製品の高付加価値化とかなんとかということを言って逃げちゃうわけですけれども、それで大体逃げ切れるとは思いませんから正直に申し上げるんですが、やはり構造調整後の日本の産業の姿では、今おっしゃった第三次産業がもっと拡大するしウエートを持っていくだろうというふうに私は思っております。  現実に第三次産業の中にはいろいろ新しい成長の芽のあるものがかなり含まれていると思いますし、手近なところで言いますと、私は、やっぱり情報通信の分野というのは日本で多くの規制のおかげで相当発展を妨げられているんじゃないかというふうに思うんですね。  さっき移動通信体のことを例として申し上げました、けれども、実はあの話はもっと大きなヒンターランドを持っているわけで、少なくとも今のGNPの構成でいけば第三次産業のウエートはアメリカよりもまだ低いというふうに私は理解しますから、そちらの方に構造調整の方向は向かうだろう、少なくとも向かう一つの方向だろう。それから、現実に製造業でも、今アメリカの製造業が復活しつつあるのを見てもわかるとおりに、製造業がこれでおしまいになるなどということは私には考えられないんですね。  そういうふうなお答えの仕方になります。どうも不十分だと思いますが、それで御勘弁ください。
  61. 西川潔

    ○西川潔君 参院クラブの西川潔と申します。よろしくお願いいたします。  三人の先生方にお伺いしたいんですけれども、毎日の暮らしの中で公的な規制に対しましてそれほど抵抗感がなかったと申しましょうか、ごく当たり前のように感じて僕も生活をしてまいりましたが、日々の生活の中で国がしっかり規制してください、あるいは国がもっと監視を強めてくださいという声はたくさんありました。国の規制はやめてくださいというような声は今まで余り耳にしなかったようですが最近とみにふえてまいりましたし、現在の日本社会の中では知らず知らずのうちに人の生活を法律や規制に合わせているのではないか。しかし、規制の本来の役割とは人の生活に合わせることがその姿ではないか、そんな印象を本日先生方のお話もお伺いして強く感じたわけです。  私は福祉のお仕事を主にやらせていただいておりますが、日本では身体障害者の定義と申しますと、例えば身体障害者福祉法では都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けます。そして、その手帳を持っている人が身体障害者としてさまざまな公的なサービスを受けることになるわけですが、しかし伺うところによりますと諸外国にはそういった例はないということでございます。  つまり、日本のように法律によって障害者であるかそうでないかを区別するということではなく、障害者が必要とするサービスを受けるためにその都度障害者手帳を見せる必要もなく、また社会の中で働く場が得られ就労を含めた経済保障がなされていれば、例えば日本のように交通機関の割引などを受ける必要もなく、自分自身で切符を買ってそして乗る、障害者手帳の必要性そのものがないということでございます。  しかしその一方で、障害者の方々が共同で生活をするグループホームというのがございますが、日本の場合ですとグループホームにはグループホームと書いてあるわけですが、余り御近所の方々ともおつき合いもございません。しかし、アメリカではグループホームにはグループホームとも書いてありません。全く普通の生活、御近所の方々とも仲よく暮らしていらっしゃる。全くもう違わない生活のリズムがあるわけですが、そこにはグループホームをつくるときは必ず一定の距離を置いて、それ以上近くにはつくってはいけないという規定がアメリカ各州にも出ているそうでございます。  このお話をお伺いいたしまして、本来の公的規制のあり方というのは人が豊かな生活を送るその演出をするものであると、こう思うわけです。ところが、日本社会では公的規制が音楽会で言えば指揮者のごとく人を動かし、そして人もそれに合わせているのではないかなと、自分自身の反省も含めましてこのような印象を強く持っているわけです。今後この公的規制の緩和を進めていく中で規制の本来のあり方とはと、諸先生方からいろいろ出ましたが、おさらいの意味も持ちましてあり方とは何なのか、また生活者一人一人がどのような意識を持って取り組んでいくべきなのかなと。  また、これからは少なくしようということですけれども、ひょっとすれば今宮智先生もおっしゃいましたようにそういう新しい産業という意味ではふえてくるかもわかりません。もう一度現在のこの行政組織の、このままではいずれまた規制がふえてくるような気が僕自身いたしますが、不要な規制をしないように。政治というのはあすはわからぬわけですから、また新しい内閣になるかもわかりません。私がこちらに参りましてもう六人も七人も総理大臣が変わっておりましてきょろきょろいたしておりますが、いずれにいたしましても規制がふえてくるような気がいたします。不要な規制をしないように、将来のあり方を考えるならばどういう行政組織、そして機構がよいとお考えなのか。  先ほど植草先生はいろいろお話をなさっておられましたですけれども、どうもひとつここでもっていいアイデアがない、意見がないというふうにおっしゃっておられましたが、この点宮智参考人と浅地参考人にもあわせてお伺いしたいと思います。  よろしくお願いします。
  62. 林寛子

    委員長林寛子君) お三方にということでございますので、それじゃ植草参考人からお願い申し上げます。
  63. 植草益

    参考人(植草益君) どういう規制政策行政システムがいいかということについて具体性に欠けるというお話ですが、その前に、この規制というのは本来豊かな生活のためにあるものであるはずだと、おっしゃるとおりだと思います。その豊かな生活をするための規制というのは、実は非常に広いわけなんですね。  先ほども申し上げましたように、独占が成立してしまってそれを放置すれば非常に高い価格というものが形成されまして、国民はそこで非常に苦しむ。使いたいものが非常に高いために一部の人しか使えない。それが生活必需的なものであったら、それは一層大きな問題になるわけですね、電気とかガスとか運輸関係のそういうものとか。そういうこともありますし、それから福祉に関連するようなさまざまな、私が申し上げるような広い意味での社会的規制というものも入ってくると思うんです。それらが総合的に組み合わさって、戦後ばかりでなく明治維新から現在まで我が国はいろいろな経験を経て現在のシステムをつくったわけですね。これが我が国の経済の発展と安定に大きな役割を果たしてきたことはもうだれも否定できないわけです。  また、規制というものがない状態で市場経済に任せた場合にどんな混乱になるかというのは、最近の中国とかロシアを見れば、また東欧を見れば明らかでありまして、市場経済だけではうまくいかないということはもう明らかなんですね。  そうなりますと、規制というのは必要なんですけれども、なぜ現在私たち規制緩和が必要かということ。これは、規制の今申し上げたようなメリットといいますか、経済社会を安定させ発展させるということのメリットよりは規制に伴ってデメリットの方が大きいものが余りにも多いというふうになってきたことが、ここで大きな規制緩和の話になってきているんだろうと思います。  その場合に、先ほどから、いやメリットもあるじゃないか、デメリットばかり言ったってしょうがないじゃないかというのが何人かの方から出てきているわけですけれども、もしデメリットの方が大きかったら、メリットについては一定程度確保できる手段を残しづつデメリットを改善するための措置を私たちはとらざるを得ないわけですね。そこへ日本は今きたわけなんです。そして、これからそのデメリットが一層大きくなるであろうという時代が展望できるわけです、二十一世紀に向けて。  それは、何よりもやはり今の現在の政治機構と行政機構というものが、日本国民経済、政治システムのあらゆるところが旧来のシステムではできないものになっているということでありまして、そういう基本認識に立ったときに、まず経済システムについて見れば、先ほど申し上げたようなGNPベースで三分の一の規制領域というものをここで大きく変えない限り日本は新たな発展はあり得ないというふうに私は思っているわけです。  そこで、規制というものは一方のベースとして豊かな生活を確保するものでありますけれども、同時に日本経済全体の新たな発展と日本の政治経済それから行政システム全部の新たなシステムづくりというものをやっぱりやっていかなきゃいけない。その場合には、今まで日本がうまくやってきたシステムというものと、そしてそれを新たに脱皮させるシステムというものを十分に考慮しなきゃいけないわけでありまして、平岩研究会が苦労してこういうのをつくったり、かなりこういう具体的なものは毎回行革審が出しておりますけれどもしかし新たな方向へはなかなか動かないという状態でありますから、私はまず何よりも新たな方向へいくという必要性をまず認識していただきたいということが第一点。  それから、行政システムとしてそれじゃどんなシステムがいいかということについては、これは私が今までお話しした中から一つだけ申し上げれば、三分の二の競争領域におきましては土地問題、いろいろな問題を日本は抱えておりますけれども、円高差益の還元のときに二年間で見事な還元ができたということは日本市場経済システムが世界に誇ってよいすばらしい成果だった。この成果がもっと三分の一の規制領域にも出てこないとだめだ。そうしますと、行政のあり方として、まず規制行政とそして規制官庁というものを変えなきゃいけないということがあります。  社会的規制については一定程度必要ですが、先ほども申し上げましたように日本社会的規制というのは微に入り細に入って、福祉についてもいろいろ私たち不満もありますけれども先進国の中でも非常にいい水準の方になったと思うんですが、微に入り細に入っているものは実質的にはもう社会的規制から経済的規制にまで全部あらゆるものをがんじがらめに規制しながらやっているというものが多いんですね、先ほど医療について私申し上げましたけれども。そうなりますと、そういうものも変えなきゃならないということでありまして、行政システムとして一番根本にあるのは、規制領域における官庁というものの規制のあり方とそれから官庁組織のあり方というものを変えなきゃならないというふうに私は思っております。そのためには、今直接規制というものを担当しているないしは直接規制を特に大きな政策課題としてやっている官庁というものの再編が一番重要だというふうに考えております。
  64. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。
  65. 林寛子

    委員長林寛子君) ありがとうございました。宮智参考人、お願い申し上げます。
  66. 宮智宗七

    参考人宮智宗七君) 植草先生が言われたことを受ける形で申し上げることになりますが、非常に抽象的なことになりますので、それはちょっとお許しください。  私は非常にばらばらなことを申し上げますが、例えばよく言われているとおり、今日本から国外に出かける人が大体年間一千万人、今不況ですからちょっと落ちるかもしれませんが、この中にリピーターも含めての話ですが一千万人ぐらいが海外に出かけているわけです。で、今もって、成田でも大阪でも、入国をするとき税関に申告をしなければならない限度の金額が二十万円と決まっていることは私は大変不思議だと思っているんですね。  それは、マクロに見れば年間千五百億ドルぐらいの大変な対外黒字が発生していて、これは午前中にここで意見を述べた竹内宏さんの口癖ですが、これは東北新幹線が一年に四つぐらいずつできる金額でして、その黒字を出している国から海外へ旅行に行く人が高い航空券を買わされて、僕は本当に哀れだと思うんですね、日本の消費者というのは。海外へ行かなければ安く買えない化粧品などを買って帰ってきて、しかも持ち込み限度が二十万円だというような規制はやめてもらいたいというのがまず第一の例なんです。僕は日本の消費者をばかにしていると思うんですよ、こういうことっていうのは。今幸いにして平成大不況だから海外で買ってくるネクタイより国内の廉売の方が安くなったという奇妙な現象が起こって多少は救われる面もあるんですけれども、明らかに現在のそのクレームの中での消費者利益保護されていないと私は思います。それは、日本の経済政策全体が戦後ずっと追ってきた一つの傾向でもあると思いますけれども、そういうふうに鋭角的に出ている点があるんですね。それはほかのすべての面にも僕は及ぶと思います。それが第一点です。  それから、ばらばらだということは初めにお断りしましたが、第二は、この国は行政がかゆいところに手が届く以上に実は面倒を見てくれちゃっているということが、例えば福祉の面を含めて規制の物すごく濃密な網の目をつくっていると僕は思うんですね。  例えば、福祉の面で見ても、私は体験した海外生活というのはロンドンとニューヨークに住んだだけですけれども、ほかの国のそういう面を見ると、法なり制度が負わないでいる福祉の面については企業の例のフィランソロピーとかあるいはボランティアの活動がその法が負い切れないものを埋めている。法制がいかに網の目を濃くしても、福祉の問題というのは人間一人一人にかかわる非常に個別性の強い問題ですから、恐らく負い切れなくて、一律のしゃくし定規で、そこできっと不満だの空隙が起こるだろう。私の体験した社会では少なくともそういうボランティア活動が埋めているということがかなり法の過剰なこの面での介入というのを抑えるバッファーになって、しかもプラスに働いているだろうというふうに私は思っています。それは委員の御質問に対する直接のお答えにはならないと思いますけれども。ただ、規制と受ける側の満足度という関係からいうと、私は大変重要な点ではないかというふうに思います。  それともう一つ、さらに抽象度が増すんですが、私はどういう規制が必要でどういう規制が必要でないかということに関連して申し上げると、通常の市場経済の社会ですと、ちょっと大上段に振りかぶって恐縮ですが、三角形があって、その一つの三角形の頂点には消費者という巨大な存在があって、もう一つの頂点には企業という存在があって、残る一つの頂点には行政ないしはその背景にある政治というものがあるという正三角形の状態が望ましいのではないか。それはお互いにチェック・アンド・バランスがきく、言いかえれば拮抗力を相互に持ち得る社会だろうと思っております。  それが、どうも見るところ行政ないしは政治と企業の間の距離が正三角形じゃなくてその辺がかなり短くなっちゃって、消費者が非常に遠いところにあるというふうな状態になっているのを少なくとも直すということが私の場合は規制を撤廃ないしは緩和するという場合の基本的な文法になっております。そういうお答えの仕方で勘弁してください。
  67. 浅地正一

    参考人(浅地正一君) 福祉のお話をちょうだいいたしましてこの規制緩和という問題を考えてみますと、揺りかごから墓場までという言葉がありますけれども、恐らくライフサイクルでずっと追いかけてみますと、生まれたところが病院であろうとそうでなかろうと、あるいは生まれた直後に戸籍を入れるとかということが起きますと、すべてやはり何らかの法律にかかわる生き方だろうと思います。  しかし、先ほど申し上げているように、それはやっぱりそれなりの理由と経緯があってでき上がったことだと思いますが、それを国民方々保護されてきたというふうに思うかあるいは制限をされているというふうに思うかという分かれ道に、この何年かあるいは今かあるいはこれからもうちょっと先か、スパンはわかりませんが、そういう時期に入ってきたのではないかというふうに私は考えております。  例えば身障者雇用率というものが義務づけられておりまして、そういう方々は会社に届け出ていただく場合に身障者手帳を見せろ、こういうことでございますが、自分は心身ともにこれで元気でやっているんだから身障者の扱いは要らないという形で、例えばある種のプライバシーの問題になるんでしょうか、本人が拒否される場合がございます。そして、会社としては、現実にそういう法律に認定され得る社員を抱えながらも雇用率違反、あるいはその統計に加えられないといったような矛盾というようなものも考え合わせますと、この規制緩和のあるべき姿あるいは行く先ということになりますと選択の場がある、あるいは選べる。  先ほどの独占というような、最終的に独占になるといった場合には一つになるわけですが、そのゴールインする直前あたり、あるいは何らかの形で選べるということを競争という言葉に置きかえていいのかどうかわかりませんが、要は選べる、複数以上で選べる選択肢がある社会というのが一つの目指すべきゴールヘのキーワードではないかな。したがって、例えば身障者の人が自分はそうじゃない、健常者と同じにしてくれといったらそれはそれでいいじゃないか、無理に手帳を渡さなくてもいい、私はそういう選択肢がある社会がいいと思います。  そして、先ほどおっしゃられた目的でございますが、やはり個人の幸せと企業の活力と国益というものを合わせ持ったものがこの規制緩和一つの目標だと思いますが、現代的な課題としては海外諸国との調和というものがその国益論の中に入ってきているんではないかな、かように思っております。
  68. 村田誠醇

    ○村田誠醇君 社会党の村田でございます。  植草参考人宮智参考人に共通の質問をちょっとしたいんでございますが、経済的理由による規制ということをしきりに言われますし、私どももそう感じるんですけれども、もとになっております法律を読んでみますと、決して経済的理由があるから規制するなんということは書いてなくて、経済的な条項を新規参入する人に、その市場に満杯であるかどうかを役所に書類を提出するということだけなんですね。  私らが非常に不思議に思うのは、例えば日米構造協議でいろいろ問題になった途端に大手スーパーに酒販免許を一斉にばんと渡してしまう。個別の小さい企業免許を申請すると、この経済的理由をもって一切だめよ、こういうことが起きてくるんですね。もとの法律そのものは全然直っていない。  一番典型的に出てくるのが、いろいろ問題になっております大規模小売店舗法が問題になるわけですけれども、あれもどこを見ても決して許可しないとかいうことにはなっていなくて、ただ近隣の人たちが強力に反対しているということを理由にもって一切書類を受け付けないという形で規制が強化されている。アメリカからクレームがつくと途端に、多少法律をいじった部分もありますけれども、条件が変わってくる。そうしますと、私どもが国会でつくり上げた法律というものが果たして行政のサイドでそのとおり運営されているんだろうかなということを疑問に思ってくるんですね。  ですから、日本の場合はドイツ法の系統を受け継いでいますので、極めて厳格にいろんなことを書いてくるんですけれども、実際に運営する段になるとどうもその辺があいまいになって、英国流の慣習というんでしょうか、行政慣習みたいな形でこれが許可したりこれが許可されなかったりということがどうも起こってくるんではないか。  そういう意味で、規制緩和をするというときに、民間にとっては規制緩和かもしれませんけれども役所にとっては規制強化になるようなことをしない。つまり役所に持っている権限の三分の一なら三分の一、どれとは言いませんけれども、量的規制で三分の一は開放しなさい、要するにアメリカみたいに量的にもある程度放すものと放さないものとを、自分たちの選択の中で三〇%なら三〇%目標値をつくって強制的になくしてしまいなさいというようなシステムでもとらない限りはどうも言うことを聞かないんじゃないかなということがあるんですね。  あるいは、そういうことを実施できなければ補助金や助成金を思い切って大幅にカットするとかいうような、そういう強制的な形をとらないとどうもうまくいかないんではないかなというふうに私自身は思っているんですけれども、それについては両参考人先生方はどのようなお考えをお持ちなのか、ちょっとお聞きをしたいと思います。
  69. 植草益

    参考人(植草益君) 法律に書かれている内容と具体的に規制が行われている内容とについての乖離があるというのは、私どもも本当にいつも感じていることです。  これが実は行政指導というものとか、さらには政省令というその官庁自身でつくっているものとか、そういうものがかなりあるわけなんです。これを何とか正さなきゃいけないということで今国会行政手続法ができましたので、まだ本当にこれがどれだけ大きな力を持って日本の経済及び行政に大きな影響を与えるかというのはほとんどの方が認識されていないのではないかと思いますが、非常に大きな力になると私は思っておりまして、この法の成立を十年間願ってきた一人であります。その一番の基礎にあるものは現在行われている官庁における自由裁量的な行政というものを何とかしなければならないということであるわけです。そういう意味行政手続法を通じて行政透明化とか、それから法の形骸化というようなことはかなりの程度改まってくるだろうというふうに期待しているわけです。  しかし、先ほど西川委員からもありましたけれども、官庁に対して多くのことを依存するという体質がどうも日本の消費者には多い。法律学で行政需要という言葉があるんですけれども、易しい言葉でお上に頼るというその姿勢が非常に強い国でありますから、その上に立って行政がいろいろなことをやってしまうということが現在問題になってきてこれを今改めるという新しい段階に入ったというふうに思うんです。  ただ、それだけでは真の行政の変革にはならないというふうに思いまして、そこで規制緩和をする。規制緩和といっても、単に何をどうするといっても本格的な緩和にならないから二分の一とか三分の一、規制権限を持っているものを削減してしまうという考えてあります。ある程度量をやれば質に転化することは間違いないんですが、私は一割削減とか三割削減とか五割削減というような形の方式は決して望ましい方式ではないというふうに思います。  なぜならば、経済的規制に関しましては、一番大事なのは参入規制をまず緩和することです。そして、そこで新しい企業が入ってきていろいろなサービスを提供していくということが既存の企業に非常に大きなインパクトを与える。例えば国際通信に関して二社が入りましたが、入るということが予測される数年前からKDDの国際料金はどんどん下がったわけですね。  そういう参入圧力というものがいかにその産業を変革させるかということを考えると、まず参入というものの規制を撤廃していくことが大事でありまして、そして次が価格規制であります。そして第三は、それに絡まる事業規制とか財務規制とかそれから投資規制というようなものでありまして、そういうような規制参入価格規制がかなり自由化されれば付随的に緩和されていくというふうに思います。私も、できれば一遍に五割ぐらいどんと減らしてしまえばいいというふうに一方では心の中で思うんですけれども、それでは真の対策にはならないなと学者としては思います。やはり、それぞれの産業、それぞれの経済的規制の根本になっているその核心に触れるところを緩和しなければならないというふうに思いますので、そういうアプローチでこれから規制緩和の具体策をつくらなければならない段階にあるんではないかと思うんです。  五年を通じて平岩研究会では何とかやっていくというんですが、本格的な具体案づくりは、専門家を集めれば二年もあれば十分できると私は思います。今までの総務庁における行革審のいろいろな資料、経験というものを使えば相当程度できる段階に来ていると思います。  それから、それぞれの産業ごとに今のこの状態でいいかということで経団連とか同友会とかいろいろなところが案を出しておりますし、いろいろな研究所も出しております。私たち経済学者も、随分この問題については発言してまいりまして、具体的な案を出しております。それらを総合すれば二年ぐらいでできます。  先ほどお話のあったように、日本的よさを残しつつ新しい段階というものをつくることは不可能と思っておりませんので、そうなりますと本格的な体系、具体的な緩和づくりということが今課せられた課題ではないかというふうに思っております。
  70. 宮智宗七

    参考人宮智宗七君) 私は、現行の規制は一たん全部廃止するのが妥当だと思っているんです。  例えば、現在独占禁止法の適用除外というのは、あれはたしか六十八の法律を動かしているくらいに範囲が広いんですね。そういうものが現存しているわけです。この前調べましたら、そのうちのたしか九〇%近くが昭和二十年代から三十年代にかけてできている。特に二十年代のものが多いわけですが、日本で行われている規制というのはサンセットクローズがありません。要らなくなったときにやむというシステムになっていないものですから、そうだとすれば一たんまずこれをみんな御破算にして、以後どうしても必要な経済的規制に関しては組み立てられていくという方が順序としては正当ではないかというふうに私は考えます。  立法府の方々がつくられた法律がそのとおりに運用されていないというような趣旨のことをおっしゃいましたが、私も全くそう思っております。日本は果たして法治国家であるかという疑問をかねがね持っているのは、この間成立した行政手続法の中に、私が配らせていただいたメモの中にも私の宮智語で書いてありますが、どの役所もその権限を超えた行政指導をしてはならないという趣旨の条文がたしかあの中に入っている。これはまさにブラックジョークとしては大変できがいいと思ったくらいです。まして植草先生のおっしゃった行政指導という得体の知れないものがあるので、これはよっぽどそこから洗い直さないと法による規制が法の求めるとおりに行われるかどうかということに私は行政手続法が成立した現在でもまだ非常に疑問があります。特に行政指導というものが初めて戦後あの法律によって公的に認知されちゃったものですから、どのくらいこれからいや増しに威力を発揮するかということで私は大変興味を持っているわけです。  日米構造障壁協議のときに、アメリカ側の行政手続法の早期の成立を要求したときに実はおまけが一つあって、総務庁とUSTRが非常に長時間にわたる交渉をしたテーマがたしかルールメーキングと言われたと思うんです。それは法律以降の政省令に至るまで全部所管官庁が案を公表して一般から意見を求めるというふうな交渉を延々とやって、現行の行政手続法では法体系の中にそれが入り得ない、時間的にも間に合わないということでアメリカがあきらめたといういきさつがあるように聞いておりますけれども、私はその種類の問題に及んでいることをおっしゃったんだと思います。  以上が私の答えです。
  71. 野別隆俊

    野別隆俊君 私、社会党の野別でございます。  規制緩和は当然進めていかなきゃならぬと思い、ますが、私はある事例について浅地先生にお伺いします。  大店法の改正に伴って今度規制緩和が行われるとすれば、特に生鮮食料品とか零細な衣類販売店、こういうところは大変な状況が出てくるわけでありますね。もう十年も前からこの問題はずっと続いています。このままでいいとは私は思いませんけれども、仮に規制緩和が行われるとすれば、どんどん大きなスーパーが入ってくる。これは経済的には確かに大スーパーがやった方が有利な面もあるでしょう。しかし、その地域に住んでいる住民の立場に立つと逆に不利になるということが起こるんです。  特に町村あたりに行きますと、今度スーパーが三カ町村に一カ所でも進出しますと、もうその一帯の小売商店は自滅状態になる。これに対する商工関係日本商工会議所、地方にも商工会議所はありますが、もう少しそういう零細企業の体質を変えて競争できるようにはできないか。  私もちょっと青果関係の団体とつき合ったことがございますが、例えば一つのチェーン組織をつくって仕入れを一本化する。元方からも食料品などを仕入れる。野菜類は市場から全部入っていますから、あとの食料品はそういう卸問屋から直接買う。スーパーが買う値段で小売が仕入れる。小売店というのはやっぱり地域に密着しておりまして、朝から晩までやっておるわけですから、駆け込みでもいつでも対応ができるし、住民に非常にサービスをしているわけです。  ところが、今度は三つの町の真ん中に大きなスーパーができるとすれば、これはもう自動車だけで相当な経費を使ってそこまで行かなきゃならぬ。今まで三カ町村に八十五店の生鮮食料品があったとすれば、二・五人働いているということになると二百十二名が働いている。それから衣類店で八十六名働いている。こうしますと、そういった市町村の過疎化も防げているわけです。ところが今度は、それが三つの町の真ん中に二十人ぐらいしか働けない企業が出てくることになります。そうすると、今までやっている商店は自滅状態に追い込まれますから、ここの人口はどんどん過疎化が進んでいくわけです。  これらに対して日本商工会議所がどういう対応をされるのか。私は、これは家族経営ですから一・五人分の賃金があれば経営できるのですから、仕入れが統一をされていけばスーパーと十分対抗できるのではないか。しかもその地域の利便性というものに対して大きな貢献をしている。こういった問題について、ただ大店法を緩和してこういう人たちをこのまま自滅させるのか。ただ資金で対応するとかということじゃなくて、仕入れを統一するとか、体質強化を図るような指導がある程度何年間か行われて、その後にこういった大店法についての緩和というものがなければならぬのではないか。  今のままでいくということになれば、とてもこれは中小零細商店は対応できなくなっていくわけです。地域のそういった崩壊にもつながっていきます。住民の利便性という面から見ても非常に大事ではないか。今、冷蔵庫ができましたから一週間分買いだめるというようなこともありますが、これも栄養面からいけばやっぱり毎日仕入れて毎日消費するのが一番正しいわけでございますから、そういったこと等を考える指導が今後どういうふうに行われるのか。  そういう対応をしながらやらなければ零細企業を守ることはできない、このように考えるのですが、まず浅地先生宮智先生、植草先生の御意見をもし聞けましたらお伺いをしたいと思います。  以上です。
  72. 浅地正一

    参考人(浅地正一君) 先ほど私の冒頭の意見の中に事例としての大店法という問題を入れさせていただきまして、会議所にとりましても実に頭の痛い問題でございます。メリットとデメリットと双方あるというふうに思っておりますが、やはり大型店の無秩序な出店、あるいは逆にもうからなくなったからさっと引き揚げてしまう、やはりここら辺あたりには大きな問題を抱えているというふうに考えております。  また、従来から商店街というようなものが構成されている町については、商売を超えた一つのよしみといいますか、そういうものの上で成り立っている零細、四、五人以下あるいは一-九人以下のお店というようなものが、結果的に地域を離れないことによって地場産業あるいは伝統産業というような形で町を多様化する、そういう町づくりの中に歴史を背負ってきている部分が大店法という経済メカニズムによって破壊されてしまう。  どっちも正しいという立場で、それではどうするかということで商調協という形ができております。私の立場でこういうことを申し上げるのはいかがかと思いますけれども私見として申し上げれば、場面によっては形骸化しているという部分もあろうかと思いますが、これこそまさに頭の痛い問題でございまして、これは本来は地元の方の意見を優先して、物は価格のみにあらずという部分も大切にしていかなければいけないんではないかなと思っております。  ただ、大都会ということに限りますと、大店法の問題とは別に、商業地等における地価高騰というもののツケをしょった現在、店を続けるか、あるいは同族経営の場合に相続税を払うために廃業するか、あるいは税金を払ったら店を続けるわけにはいかないというような問題もはらんでおります。そこら辺のところとあわせて大店法というものについては慎重に考えていく必要があろうかということで、そのための意見を言う機関として商調協というものがございますので、そこら辺のところをもう少し形骸化しない形で、実質的な意見交換で町づくりというものを視点にした立場で結論を導くようにしていくべきであろうかというふうに考えております。  お答えになったかどうかわかりませんが。
  73. 宮智宗七

    参考人宮智宗七君) 私は、日米構造障壁協議の結果大店法が改正される前の状態からお話ししたいと思うんです。  中小小売業などの商店を守る目的を少なくとも大店法は持っていたと思うんですが、通産省の商業統計によると、その厳しい大店法のもとでたしか零細小売業というのは年々お店が減っていたと思うんです。その中で減らなかったのは、これはうろ覚えの記憶ですけれども、たしか薬屋さんと化粧品屋さんだけが減らなかった。これはもう明確に再販売価格規制のガードがきいていたためだと思うんです。そういう統計で見る限りはというふうに申し上げるべきだと思いますが、特にパパママストア型のお店が減っていくことについては、大店法はねらいどおりの機能を果たさなかったというふうに私は思っております。  あるいは、その後継者難という問題もあるでしょうし、実際には日本の各地を回ってみると、零細のお店がそれが可能であるかどうかはわかりませんが、アメリカの郊外に見られるような随分きれいなショッピングモールに小売店が集まる形でできている時代になってきているわけです。むしろ大店法が零細小売業、零細商業を守るというような位置づけよりも、もしできるのだったら別の形で、私はそっちの方は素人ですからわかりませんが、小売商業の体質を強めるような政策がとられる方が、少なくとも大店法をフルに機能させるよりは実は有効ではないか、私はそういう立場に立っております。
  74. 植草益

    参考人(植草益君) 私も宮智さんとほぼ意見は同じなんでありますけれども、第二次行革審で大店法の改正を随分苦労してやった一人といたしましては、大店法というものの歴史的なものを見ますと、戦前の百貨店法からだんだん波及してきたものでありまして、実質的には地域商業の保護、中小零細商業の保護をもって地域の消費者の発展に資するということであります。けれども、私の感ずる限りでは、確かに大規模店舗が出ましてそこの中小商業がかなり壊滅的になったという例も一部の地域でありますけれども、逆のケースも物すごく多いんです。  それからもう一つ申し上げたいのは、最近の日本の流通機構は非常に複雑で多層的で零細である、ゆえに非常に非効率であるというふうに指摘される。けれども、私たちの専門の分析によりますと、日米比較とか日欧比較をいたしましてもそんなに非効率ではないという結果が出ております。しかも、我が国においては、アメリカやヨーロッパよりは中小の商業が新しいビジネスとして次々と出てくる、これほどダイナミックな国もないんです。例えばNIESショップなんかが出てきたと思うとあっという間に関西で広まるというふうな形でありまして、さらに大きな通りがありますとそこに中規模のいわゆる安売りショップが非常に出てくる。そうなりますと、大店法があって地域商業をそんなに圧迫しているかというと、むしろ大店法があってうまくいかないとそこに新しい業態がどんどん出てくるというふうなケースも多いわけでありまして、いたずらに中小商業保護ということを言うのは私は間違いだと思っております。  我が国は世界に誇るほどに中小企業が多くてその生産性が高く、下請なんかも含めてこの日本国家の発展に大きな役割を果たしてきているわけですが、他方で我が国ほど中小企業保護している国もないわけでございます。保護しているからまた発展もしているのかもしれませんけれども、保護し過ぎという感を私は強く持っているんです、これは票にもつながるわけでありますけれども。  私は効率化ということを考えていくときに、日本というのはそういう意味ではニュービジネスというものにどんどん転換したりそれから新たな業態が出てくるという実態を考えますと、大店法というものについて、一部の地域は確かに慎重にやらなきゃいけないと私も痛感はしますが、基本的には、参入するときは自由だけれども出ていくときにはすべて保護してくれというような体質を変えなけりゃならない。そうなりますと、おっしゃるとおり真の意味での商業政策というものを確立しなきゃならない。おっしゃられたような共同販売とか共同購入とか、これまでいろんを施策を打ってまいりましたけれどもうまくいっていないわけです。中小の経営強化ということについては、これは打つ手はなかなかない。やはり自分たちが新しいものをつくっていく、リストラクチャリングするとか転換するとか、そういうことを助けることがやっぱり基本だろうというふうに私は思っています。  以上です。
  75. 林寛子

    委員長林寛子君) ありがとうございました。  まだ御質問の手が挙がっておりますけれども、予定の時間を少し回りましたので、本日の参考人に対する質疑は終了させていただきたいと存じます。  参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、長時間にわたりまして本委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。  私どもは、規制緩和に関しまして現在多くの議論がなされておりますけれども、大変重要な課題であると考えておりますので、御指摘いただきました数々の御意見参考にさせていただきまして、これからの調査を進めてまいりたいと存じます。  本日は長時間ありがとう存じました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五分散会