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武田邦太郎君 先ほど来、
先生方からいろいろの問題提起がございました。
沖縄問題は非常に切迫した問題が多うございますし、戦争体験、
基地問題等、非常に困難な条件がございますが、私、少し視野を変えまして、幾らか長期展望に立った問題提起をやって
長官の御
見解を伺いたい、こう思います。
基地問題についてはいろいろ意見がありましょうけれ
ども、これがいつごろになれば
返還の可能性が生まれるのかということについてはほとんど明確な
見解が見当たらないようでありますが、
一つの考え方としては、日本の平和にとっても世界の平和にとっても、非常に困難な問題はアメリカと中国の核対決であります。
中国は、今世界で最も軍拡に熱心な国でございますし、先ほ
どもロシアから一千名の核技術者を入れたと。これは恐らくエリツィン大統領は全然知らないはずはないわけでありまして、アメリカ、中国、ロシアの間に余り日本としては気楽に考えられない問題が高まっているのではないか、こう思います。我々は戦争放棄を誓った国柄でありますから、この三国の間に立って、特に米中の間に立ってそういう核競争はやめてほしい、こういうことを言うべき
立場に立っておるのではないか、こう思います。
中国は、近い将来、世界第一の経済大国になることは確定視されておりますから、したがって核装備の急速な前進も疑う余地がありません。中国がアメリカの本土を直撃し得る状態になることはアメリカの最も警戒するところであるに違いないのでありますけれ
ども、まず核の攻撃はできるけれ
ども核は防ぎ得ないというのが今日の科学技術の常識であろうと思います。現在では主としてモラルの問題になっておりまして、夢のような問題かもしれませんけれ
ども、そのころまでに核廃絶をやらなければ全人類的な安全保障は確保できない。こういう状況は、かつての米ソほど世界を二分する競争ではありませんけれ
ども、太平洋を挟む二超大国の核の激突ということを絶対に避けなければならない。もし、それが避け得たとすれば、当然
沖縄の
基地は要らなくなるわけでありまして、そういうところに
一つの見当をつけられぬことはないだろう。
中国にとりましては
沖縄ほど危険きわまりない
基地はないわけでありまして、仮に激しい状況になりましたら、
沖縄が再び真っ先に戦争に巻き込まれないとは言えないわけでありますから、そういう状況を踏まえて、少しも早く人類の世界から核廃絶をやらなきゃならぬということが日本に課せられた歴史的な役目だと言えぬことはないと思うんです。
そういう見地から、
沖縄の問題をやや視野を広げて考えますと、やはりあそこの自然条件からいいまして、産業経済は農業、林業、水産、こういう一次産業がまず考えられると思います。先ほど来、農業の問題についていろいろお話がございましたが、
沖縄の耕地面積は四万七千ヘクです。農家戸数が三万八千戸ありますから一戸当たり一・二ヘク強ということになりますけれ
ども、農業後継者は七十二戸に一人しかおりません。日本全体では九十軒に一人しかおりませんけれ
ども、
沖縄はややおる方であります。それでも七十三軒に一人の後継者ということは、
沖縄の農業構造が今や一戸当たり九十ヘクくらいに拡大する
方向に急傾斜してきているということになります。
日本の農業全般もそうでありますけれ
ども、農業が、イノベーションにイノベーションを重ねておる二次、三次産業と、生産性あるいは従事者所得、経営利益がバランスするためには規模拡大が絶対的に必要でありまして、
沖縄の場合にはまず一戸当たり八十ヘクになるような傾きを持ってきておる。そんなに拡大しなくても、恐らく四、五十ヘクあれば
沖縄のサトウキビ産業は世界第一級のスケールを持ち得る。カンショも同様であります。こういう土地利用型農業では、こういう規模拡大を前提として長期
計画に立つプランをもう
一つ持つ、当面の
計画と並んで長期の
計画を持つということは若い
人たちに感激を持って農業に取り組ませる最大の条件だ、こういうふうに思います。
そのためには、先ほど来お話がありましたように、かんがい、水管理システムが不可欠の問題でありますけれ
ども、これは非常な御
努力が進んでおります。恐らく、太陽エネルギーが採算ベースに乗れば
沖縄の水問題は一挙に
解決するわけでありまして、そういうことも考えに入れて、
沖縄の農業がいかに洋々たる前途をはらんでおるかということを今から
沖縄大学を
中心としまして研さんするということが大事だと思います。
そうなれば、土地利用型農業をやる農家は非常に激減しますけれ
ども、幸いにして
沖縄には畜産あるいは
施設園芸という非常に恵まれた小面積で飛躍的に伸び得る作目がございますので、それを巧みに組み合わせれば非常にすぐれた農業地帯の可能性ができる、こういうふうに思います。農水省は、今後十年間に四十一兆円の土地改良長期
計画を持っておるわけでありますから、そんなには要りませんけれ
ども、国の
予算としてはもう十分の
予算を確保できる可能性がある、こういうふうに思います。
林業、水産に睦言及する時間がございませんけれ
ども、そういうような
沖縄の農業、そういうレベルの高い一次産業の農林水産業の研究開発が進めば、地球上の最も立ちおくれた開発途上国の大部分は熱帯及び亜熱帯でございますので、これらの国々のために研究をしあるいは教育するために留学生を入れる、そういうスケールの大きな平和と産業経済の飛躍的な前進の巨大な
基地が
沖縄に成立する可能性が十分にある、こういうふうに思います。
場合によりましては、そういう核廃絶が成功すれば、アメリカにせよあるいは中国にせよ膨大な防衛費の節約ができるわけであります。ある
意味において、戦争をなくすることは同時に貧困をなくすることに直結いたしますので、途上国の一次産業を飛躍的に伸ばすということは、戦争をなくすることと並行して貧困をなくする非常に大きな
課題がそこにあるわけでございます。
沖縄がそういう全人類的な前進の巨大な
基地になるために、アメリカ、中国で節約された巨大な国防費のごくわずかでも提供を願う。日本はもちろんでありますけれ
ども、そういう
計画を提起することによってアメリカと中国の平和的な
関係を増進する可能性も出るのではないか、こういうふうに思います。
非常に
現実の苛烈な状況から見ますと、まことに夢のような話でございまして、直ちに多くの人あるいはアメリカ、中国が賛成するというふうなことは、これは逆にまた可能性は非常に乏しいわけであります。そういう可能性を日本が打ち出すということは、戦争放棄を憲法に掲げておる現在のところは唯一の国でありますし、また核攻撃を受けた唯一の国でございますので、そういうことを人類に訴えながらすべての国の憲法に戦争放棄を明記させる。
今まで申し上げたのは私の個人的
見解でございますけれ
ども、各国の憲法に戦争放棄を明記させるということは日本新党の結党宣言の最も注目すべき一点でございますが、そういうことを心に描きながら若干の意見を申し上げたわけであります。
長官の御
見解を伺います。