○保利耕輔君 私は、
自由民主党・
自由国民会議を代表して、この際、先ごろ行われましたアジア・太平洋
経済協力閣僚
会議、いわゆるAPEC並びに緊迫の度を加えつつあるガット・ウルグアイ・ラウンド
交渉について、
総理及び
関係大臣に
質問をいたします。
まず、
細川総理にお伺いいたします。
先ごろ行われましたAPECの意義や目的について、先ほど御
答弁がありましたが、重ねて、国家の指導者として、
国民にわかりやすく御説明願いたいのであります。特にアジアにおいては、日本の指導的役割が求められている一方、
総理の侵略
発言はいかがかと思いますが、深い反省と謙虚な態度が求められておるのであります。この相異なる二点を踏まえて、日本の指導者たる
総理の哲学を御説明ください。
また、多様性に富むAPEC加盟各国が互いに話し合い、相互の
経済発展を期することは、意義深いと
考えます。この
会議の目的あるいは思惑にはさまざまなものがあろうかと思いますが、その一つに、アジアに対する
アメリカの関心またはプレゼンスを確かなものにするという役割があると言われております。このことは、反面、大国によるアジア支配が懸念され、さまざまな反応が示されておるところであります。このような懸念に対し、
総理はどのような御見解をお持ちですか、お示しいただきたいのであります。
次に、APECで確認された事項のうち、ガット・ウルグアイ・ラウンド
交渉については、年内に成功裏に終結させるべきであるという旨うたわれております。
総理並びに
関係大臣は、従来、
交渉を成功させなければならないと述べる一方、繰り返し、
農業交渉についてはあくまで従来方針を貫く、また、三度の
国会決議は守ると
答弁しておられます。この方針にお変わりはないかどうか、
総理大臣の明確な
答弁を求めるものであります。(
拍手)
報道によれば、サザーランド事務局長は、近く
交渉全体についての調停案を示すことになろうとされております。加盟各国が下
交渉を続け、その結果が調停案に盛り込まれるという
交渉のプロセスは常識的でありますが、
総理は、従来、そうした
交渉の事実はないと否定を重ねてこられました。それでは、下
交渉なしに調停案が示されるのでしょうか。それとも、前言を翻し、下
交渉の事実をお認めになるのでしょうか。公明党の市川書記長は、報じられるような案をもとに御所見を述べておられます。
総理の明確な御
答弁を求める次第であります。
さて、先日、来日されたサザーランド事務局長は、日本に来たら米の問題しか
質問されなかったと皮肉まじりに述べておられましたが、この
交渉では、各方面にわたり日本にも
関係の深いもろもろの問題が取り上げられています。その中の幾つかの点について
質問いたします。
まず、外務大垣にお尋ねをいたします。
交渉の期限とされる十二月十五日は
アメリカのファストトラックから来ていることは明白でありますが、
アメリカの国内事情が優先されて国際
会議のやり方が決められることに、外務大臣はどのような御所見をお持ちか、お尋ねいたします。
もし、一国だけの国内事情が勘案されるのならば、ほかの国々にも国内事情があり、公平な
措置とは言えません。国際間で既に合意をしたのだから、これに従うのは当然といたしましても、一国だけの事情が勘案されるのであれば、欧米流のやり方からいえばかなりの代償を
アメリカは支払うことになりますが、外務省はこれまで、こうした公平でない
措置に問題提起をしてこられたか否か、大臣にお答え願いたいのであります。この点は、これからの多くの外交
交渉や国際
会議での日本の姿勢にかかわるものでありますから、あえて外務大臣の御見解を求めるものであります。
次に、多角的
貿易機関、いわゆるMTOについて外務大臣に伺います。
ガットは、現在、常設の国際
機関ではなく、自由
貿易体制をより強固なものにし、
貿易紛争処理をより的確に行うため常設の国際
機関を新たに設立しようとするもので、その骨格はダンケル・ペーパーに示されております。
これに対し、
アメリカは、もしMTOが設立されれば通商法三〇一条などが発動しにくくなるとの思惑から反対していると伝えられております。申すまでもなく、同法のごとく、
貿易相手国を一方的に不公正
貿易国と認定し、制裁
措置を発動させるなどは、到底他の国が容認できるものではありません。したがって、欧州各国は、MTOを発足させ、このような一方的
措置を封じ込めようとしております。
そこで、外務省は、MTOについてこれまでどのような主張をし、期限を目前にしてその設立につきどう見通しておられるのか、大臣の御
答弁を求めます。
ここで
大蔵大臣にお尋ねいたします。
サザーランド事務局長は、ラウンド
交渉の中で最も困難な問題の一つは
金融サービスの問題であると指摘しておられます。
アメリカは本年十月、
金融問題について新たな
保護主義的提案をしたと伝えられております。すなわち、
金融について、
アメリカは相手国の
状況により差別的
措置を行うというものであり、各国は猛反発をしているとのことであります。
日本はこの問題にどう対処しようとしておられるのか、日本の主張はどのようなものであるのか、また、米欧の
交渉の現況はどうなっているのか、十二月十五日までに決着がつきそうか否か、見通しについて
大蔵大臣の御所見をお聞かせください。
そこで、
総理大臣にお伺いいたします。
今申し述べました諸点のほか、繊維、電子機器、林産物、革製品、海運、オーディオ・ビジュアル、弁護士、課税の内
国民待遇、アンチダンピング、知的所有権など、問題が多岐にわたり国際的に
交渉されております。こうした諸問題に縦割り行政的な対処をするのではなく、一元的に管理する
政府のシステムが必要であると思いますが、
総理の御見解をお示しください。
次に、
農業交渉について農林水産大臣にお伺いいたします。
ダンケル・ペーパーによれば、農産品について各国に求められているミニマムアクセスは三から五%とされております。最近の
報道によると、米について六年間の関税化猶予のため、その代償としてミニマムアクセスを四から八%に
拡大することが
交渉で検討されている由であります。もともとダンケル・ペーパーそのものが
輸入国に対し公平でなく、これをスタート台にして、修正するのなら代償を払えという
考え方は容認できません。現在そのような
交渉がなされているのは事実であるのか否か、大臣から明確にしていただきたいのであります。
今まで
政府側は、そういう事実はありませんとか、
交渉事だからいろいろあるでしょうとか、あいまいな
発言を重ねてこられました。もうわずかな期間しか残されていない現在、
交渉の実体について明らかにしていただきたいのであります。
報道は、日に日に詳しく、現実味のあるニュースを流しております。もしそうした事実はないと否定するのであれば、マスコミが虚偽の
報道をしていることになりますから、大臣は強く抗議し、取り消しを求めるべきであると思います。いずれにしても、
政府のこれまでの
答弁と
報道は余りに食い違い過ぎます。大臣の明確な御説明を求める次第であります。(
拍手)
次に、ミニマムアクセスそのものについて、大臣の御見解を伺います。
ミニマムアクセスを認めるとすれば、一定の
輸入数量を世界に向かって約束することになり、商品が国際市場でどんなに不足をしていても、また品質が合わなくても、あるいは価格に不満があっても、さらには外貨事情が悪化しても、毎年一定量を
輸入する義務を負うことになります。今回の
緊急輸入によって、食品衛生上の問題が現実のものとなってきました。この点も気がかりであります。
そもそも、自由
貿易における取引は売り手と買い手の条件が合ったときに成立するものであり、不要のものまで数値を示して買う義務を負うことには慎重であるべきと思います。この点、日米
経済協議の中で日本が数値化に応じないのは賢明であり、理解ができることであります。
そこで、農林水産大臣はミニマムアクセス拒否の姿勢をとられるのかどうか、お伺いいたします。
もし恒常的に一定量を
輸入するというミニマムアクセスを受け入れる場合、食管法の
改正と生産調整の強化が必要になると思いますが、大臣の御所見を求める次第であります。さらに、ミニマムアクセスは受け入れざるを得ないとするならば、条件の合わない場合の免責条項が必要であると思いますが、あわせて御所見を伺います。
さらに、農産品二十数品目について日本に関税化が求められておりますが、その中には、米のほか、麦類、乳製品、でん粉、雑豆、落花生、コンニャクなどがあります。これらの品目の関税化について、大臣はしばしば、これまでどおりの方針で頑張ると
答弁されていますが、今日まで具体的にどう頑張ってこられたのか、また見通しはどうか、
国民に向かって各品目ごとに御説明願いたいのであります。(
拍手)さらに、大臣が言われる従来どおりの方針とは、関税化もミニマムアクセスも拒否するというのか、それとも異なるのか、大臣のお
考えをお聞かせください。
次に、国家
貿易についてお尋ねいたします。
現在、米麦、乳製品など数品目は国家
貿易品目になっておりますが、これはガット
交渉上いかなる扱いになるのでしょうか。麦などでは、国家
貿易を維持することによって国内産品との価格
バランスがとられ、秩序が保たれております。私は、当面この
制度の維持が必要と
考えますが、
交渉の中でどのようになっているのか、農林水産大臣の明確な御説明を求めるものであります。
今、日本の畜産は、
円高などの
影響を強く受け、競争力が低下しています。そこに加え、関税の
引き下げ要求が来ておると聞いております。これに対しどう対処されるおつもりか、大臣の御
答弁を求めます。
一度関税化をすると、すぐ続けて
引き下げ要求が来ることは、牛肉の例をもってしても明白であり、米などについて、高い関税が取れるから大丈夫だなどの意見は、余りにのんき過ぎます。我が党は断じて関税化を容認するものではないことを申し上げ、一たん関税化を受け入れた後、すぐその
引き下げ要求があり得ることに対する大臣のお
考えをお聞かせください。
細川総理、
国会は過去三回にわたり食糧自給力強化の決議をしております。先般、我が党は、土井
議長に対し、四度目の
国会決議案を
提出いたしました。議院
運営委員会や連立与党の政策幹事会においては、一たん前向きの姿勢が示されながら、
実現されずにおります。私どもは、心ある与党各党の皆様の御賛同を得て、ぜひ
実現したいと
考えておるものであります。(
拍手)
連立与党の中には、今決議をすれば
政府の手足を縛ることになるとの意見もある由ですが、しからば、今までの三度の決議は
政府を拘束しないものなのでしょうか。過去の
国会決議、特に参議院
における完全自給という強い立法府の姿勢に対し、行
政府の長である
細川総理の御所見、特に完全自給についてどうお
考えになるか、御見解を求めるものであります。
私の地元、佐賀県唐津市には、日本最古の水田と言われる菜畑遺跡があり、県内には水田文化に支えられた吉野ヶ里遺跡があります。米は、歴史を通じて日本人がはぐくんできた大切な食糧であり、文化であります。ヨーロッパにおいては、ウルグアイ・ラウンド
交渉の中で映像や音響の問題を取り上げ、他国によって自国の文化が破壊されないよう、必死の
交渉が続けられております。
米などの問題は、単に
農業者の問題ではなく、いや、むしろそれ以上に
消費者の、また、現在、将来にわたる全
国民の問題であり、食糧自給力を維持することは、国家の主権にかかわる大問題であります。(
拍手)
国際協調を守りつつも、独自の文化や食糧自給力の維持のため、主権国家の長である
内閣総理大臣の力強い御決意を御披露いただくよう求め、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣細川護煕君
登壇〕