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錦織委員 それでは、第三班の
調査結果の
概要を御
報告申し上げます。
本班は、去る十月六日から八日までの三日間にわたり
宮崎県及び
鹿児島県に参り、
集中豪雨等による
農林漁業被害の
実情を
調査してまいりました。
派遣委員は、私のほか、
前島秀行理事、
菊池福治郎委員、
岸本光造委員、
栗原裕康委員、
中谷元
委員、
浜田靖一
委員、
田中恒利委員、
白沢三郎委員、
倉田栄喜委員及び初
村謙一郎委員の十一名でありますが、
現地において、
宮崎県では
堀之内久男議員及び
持永和見議員、
鹿児島県では
松下忠洋委員及び
宮路和明議員が参加されました。
全国的な
異常気象が続く中で、
南九州は、六月の入梅以来、同月中旬から七月上旬、七月三十一日から八月二日、また、八月五日から六日にかけて、相次いで記録的な
集中豪雨に襲われました。さらに追い打ちをかけるように、七月二十六日から二十七日には
台風五号、八月八日から十日には
台風七号、九月二日から四日には、戦後
最大級といわれた
台風十三号が襲来し、水害に弱いシラス、ボラなどの
火山灰土壌から成る
南九州全域に極めて大きな
被害をもたらしたのであります。
百二十名にも及ぶ尊い命が奪われました。また、多数の
方々が重軽傷を負われたほか、家屋の倒壊、
流出などによって貴重な財産も失われました。
農業関係では、
水稲の冠水、倒伏などの
農作物被害、
水田の
流出、埋没などの
農地被害、さらには
ビニールハウスや畜舎の崩壊などの
農業用施設被害が多発し、
林業関係でも、
立木が強風になぎ倒され、林地が
豪雨に耐え切れず
立木もろとも崩壊するなど、近年にない
規模の
被害が広範に生じております。また
水産関係では、
漁港施設の決壊を初め、養殖などの
漁業用施設、
漁船等に
被害が生じました。
これらの一連の
災害による
農林水産関係の
被害総額は、各県の試算によりますと、
宮崎県においては七百五十二億円、
鹿児島県では、実に千百三十九億円の
多額に上るとのことであります。
次に、
調査をいたしました
被災各地の概況を順を追って御
報告申し上げます。
まず第一日目の十月六日には、
宮崎県庁において、一連の
災害による
被害状況等について総括的な
説明を受けた後、知事等からの
要望を聴取し、直ちに被災現場の
調査に出向きました。
最初に
調査いたしました国富日本庄は、
水稲地帯であります。富崎県全体の九月十五日現在の
作況指数は、
早期水稲、普通期
水稲とも「著しい不良」の八五でありますが、国富町の
早期水稲は、たび重なる
集中豪雨や
台風によって多くの
圃場で倒伏し、被災面積は
作付面積の約六割にも達しております。また、普通期
水稲につきましても、
台風十三号やその直後の異常な乾燥により、不稔、もみずれ、白穂が
発生し、
作付面積の約八割が
被害を受けるものと予想されているところであります。
続いて
調査いたしました高崎町東霧島地区では、七月三十一日から八月二日にかけての
豪雨により、国有林地の山腹が崩壊し、土石流となって、二・八ヘクタールもの
水田を埋没させ、その土砂の厚さは二メートルにも達しているとのことであります。
また、都城市横市町でも、同日、横市川が増水し、加治屋頭首工が流失いたしました。この頭首工は、百三十二ヘクタールの
水田、五百二十戸の
農家が長年にわたって受益してきたものであります。
早期復旧が望まれるところであります。
翌十月七日には、
鹿児島県に入り、まず志布志町夏井の
台風十三号による森林の風倒等の被災地に向かいました。あいにくの雨と霧のため、
被害の
実情を視察することはできなかったのではありますが、杉、ヒノキが一面になぎ倒されている写真や現場に至るまでの山林の様子等からも
被害の大きさがうかがわれたのであります。
被害木については、一部利用できるものは搬出し、また、その跡地にはケヤキ、カシ等の広葉樹を植栽する計画であるとのことであります。
次いで財部町北俣に参りました。被災現場は、両側に山林が迫る谷間でありましたが、一連の
豪雨等により山腹から流れ出した土砂は、稲もろとも
水田を跡形もなく埋め尽くしておりました。その現場を見て、
農業をもうやめたいという
農家があるとの
説明に、励ましの言葉をかけることさえためらわれたのであります。
その後、姶良町の九州自動車道桜島サービスエリアの林地崩壊の現場を視察した後、
鹿児島県庁に向かいました。
鹿児島県庁におきましては、被災の概況について
説明を聴取し、知事等からの
要望を受けました後、日も暮れつつありましたが、引き続き被災現場の
調査に向かったのであります。
参りました被災地は、吉田町西佐多浦でありますが、ここでは相次ぐ
災害によって、五人が死亡し、十四人が負傷しました。このほか、家屋、道路等の公共
施設も甚大な
被害をこうむり、
災害の爪跡はいまだ深く刻まれたままでありました。町全域に広がる林地の崩壊、農地、
農業施設の埋没、流失などの
被害も極めて大きく、
被害総額は町の年間予算の二倍を超えるとの
説明を受け、また、国及び県の強力な援助を求める切々たる訴えに、一同、特段の
救済措置が必要であることを実感してまいりました。
最終日の十月八日には、南薩地方を
調査いたしました。
まず、加世田市津貫では、
台風十三号がもたらした
集中豪雨により、樹園地及び
水田が崩壊しておりました。また、強風も加わり、町内至るところに被災の跡が残されており、次に
調査しました川辺町小野地区では、山腹崩壊に伴う土石流が住宅などを押し流し、九人が死亡、二十人が負傷し、同町の
被害額は農林
関係だけでも二十六億円を超えるとのことでありました。
最後の
調査地であります知覧町では、九月三日の十五時から十六時の一時間に百二十六・五ミリメートルもの驚異的な雨が記録され、十五時三十一分には、秒速五十四・三メートルの強風が吹き荒れました。そのような中で厚地地区内の林地が崩壊し、一人が死亡、家屋や農地が土砂の下敷きとなりました。同町でも各所に
被害が出ており、農林
関係の
被害は総額十三億円に及ぶとの
説明でありました。
以上、
調査の
概要について御
報告申し上げましたが、今回の
調査を通じ、
現地の
皆様方から数多くの
要望を承っております。以下、主要なものを
申し上げます。
まず第一に、いずれの
調査地でも強く
要望されましたことは、
激甚災害法の
適用でございます。今回のように
被害の範囲が広範かつ深刻な場合には、復旧費用の被災者負担が大幅に軽減される
激甚災害法の
適用は不可欠であります。既に五月二十七日から八月十一日までの
豪雨、
台風被害につきましては、
激甚災害法の
適用が決定されたところでありますが、その後の
災害に対しても
早期に
適用し、円滑な復旧を図る必要があると考えております。
第二に、復旧工事の
早期実施であります。
災害査定を円滑に
実施し、将来にわたって
被害を防止できる恒久的な
施設として早急に復旧を図るよう
要望がございました。
第三に、金融
措置についてであります。
天災融資法の発動、融資枠の
確保、融資条件の
緩和などとともに、
自作農維持資金など融資条件等を見直すことについて
要望がございました。
第四に、
農業共済制度につきまして、
共済金の
早期支払いと
損害評価の
特例措置を講ずること。
第五に、
水稲の
種子確保が困難となっていることから、
種子確保対策に特段の配慮を払うこと。
第六に、平成五年産米の集出荷について特段の
措置を講ずるとともに、平成六年産米に係る
水田農業活性化
対策、復田
対策の
強化を図ること。また、規格外米を他
用途利用米として取り扱うことなど、各方面からの
要望を受けてまいりました。
このほか
林業関係では、
災害関連緊急治山
事業に必要な予算を
確保し、次年度以降も同
事業を
実施すること。また、広範囲の風倒や折損
被害に対処するため、森林
災害の
早期復旧についても
要望がございました。
また、
水産関係では、養殖、係留
施設被害の
早期復旧のための予算枠の
確保、養殖共済の契約成立要件の
緩和、さらに、漁場に漂流、沈下している大量の流木、ごみ等の
早期除去などについても
要望がありました。
このほか、
食管制度の堅持、米の
国内自給方針の貫徹、農産物
輸入自由化の阻止、米の
作柄変動に対応できる在庫、備蓄政策の
確立などについても強い
要望を受けたのであります。
私ども
調査団は、今回の
調査を通じ、現在の農林漁業が老齢化、後継者不足など幾多の困難な問題を抱える中にあって、今回の一連の
災害を契機として、多くの
農家、林家が経営を放棄するのではないかとの危惧を抱いたところであります。私どもはこのような
事態を深刻に受けとめ、農林漁業の担い
生育成のための
対策を一層
強化するとともに、それぞれの
要望に対しましても、このような
事態が生ずることのないよう、国会の立場から可能な限りそのすべてが達成されるようお手伝いをさせていただく旨、
現地の皆様にお約束をしてまいりました。
当
農林水産委員会におかれましても、私どもの
調査結果を踏まえ、
政府に対して、強力な
対策を講ずるよう督励されることをお願い申し上げます。
最後に、今回の
調査に当たり御協力をいただきました
県当局を初め、
現地の
皆様方に対し心から感謝を申し上げ、第三班の
調査報告といたします。