○
佐藤(剛)
委員 日本には罪刑法定主義というのがあるのです。すべて法律に基づいて罪というものはなされなきゃならぬ。それから憲法には、被告人というのは判決を受けるまでは無罪と推定される。これは
大臣御存じだと思う。そういう形であります。
それで、こういうことからいって、根拠が非常にあいまいである、内規であるとかなんとか。この際にきちんとしたようなものを
地方公共団体、市町村、そういうものについて私は、国の今
審議会のお話というのがありますが、そういう面でよく法律的に
一つの基準を、英国法においてもあるのだから、こういうことを
一つの参考にして、このゼネコン問題というのをきちんとやらぬとけじめがつかぬぞということの
一つの気持ちから、こういう問題の提起をいたしておることを御理解賜りたい。よろしくお願いします。
それで、これに関連しまして、
大臣、川島武宜先生という東大の
社会法律学者、この先生と渡邊洋三先生というのがこういう本を出しているのですよ。「土建請負契約論」、これは僕は想定問答をとりに来られた方に見せなかったのですけれ
ども、
日本評論新社というところです。
これはぜひお読みいただきたいと思うのですが、この川島先生は、
社会法学的にこの
議論をやっているのですが、国、
地方公共団体の請負契約、ゼネコンだのとの請負契約というのは非常に片務性が強い。片務性というのは偏る、片ですね。双務性じゃない。双務契約になっていない。
それで、彼はこういうこともはっきり言っているのですよ。国とか
地方公共団体がやる契約というのは、今は大分よくなりましたけれ
ども、「……スヘシ」、何々すべしという、ちょうど警察庁だあるいは税務署だが、片仮名でいいますとそういう「スベシ」になっていたのです。それで、片っ方の義務の方の、国側がやるものについては、例えば、代金の一部を支拂うことがあるかもしれない、「アルベシ」というのです。それから、損害賠償をしてやることがあるかもしれない、こういうのがずっと明治時代からの片務性の
言葉として出てきているのです。
この先生は、この本の中の二十ページにずっと指摘しているのです。例えば
地方公共団体、国がやる場合に、例えば国あるいは
地方公共団体が契約を解除したときは「相当十認ムル金額ヲ賠償スルコトアルベシ」というのです。しないかもしれないよというのです。そうなんですよ。ところが、片っ方に、請け負った方のゼネコンなり建築業者のときには、何々期間内に保証金が不足したときには「納付スベシ」、こう書いてある。それから、何か傷つけたときには一定の期間内に「原形二復スベシ」、こうなっている。「ベシ」と「アルベシ」なんですよ、違いが。片っ方は、かもしれない。
この思想が延々として流れてきまして、最近では公共工事標準契約約款といって中央建設業
審議会が、かなりよくなっているのです、両方の契約条項を見ますと。ところが、その精神が、先ほ
ども申し上げましたが、一ところでやりますと、米国の南北時代のカウボーイみたいな、カウボーイでウオンテッド、お尋ね者が来ますと、だだだあっと全部お尋ね者になっちゃうわけですよ。二割の市町村がなっちゃう。こういう現実が、私はいかにもこの
日本の法治主義国家としては解せない問題なんです。
大臣、どのような所感をお持ちになるのか。私はその本なりを
大臣に差し上げてあれしたいと思っておるのですが、こういうことを川島先生という東大の法
社会学の先生が、
日本に潜むこのゼネコンの体質、まあゼネコンというと昔は電話一本と机があって、それで人入れ稼業みたいなものであって、それでやってきて、そして集めてやったところからスタートしてくるわけです。しかし、今大体建設業をやっているのは、五十万人の人たちがそれで食っているわけです。五十万人食っていて、GNPの二割近いもの、国家
予算七十数兆でいいますと、七十一兆ぐらいでいいますと、八十兆円ぐらいのものを上げているわけです。
そういうことを考えてみると、やはりこのすそ野というのは非常に大きいのです。
景気対策のときでも重要なんです。ところが、今ゼネコン初め、スーパーゼネコン五社ありますが、その下の方の人たちというのは、いつかうちの取締役がやられるのじゃないか、何かガサが入るのじゃないか、こういうふうな心配だの何だのしていて、契約する方の、発注する方は、もし何か事があるならばそれを返上してくださいなんていう念書まで出すところがある。こういうのがここのところの数年間のこの
平成恐慌みたいな
状況の中に起きているという現実を私は直視していただきたい。
私も
政府委員をやってきた男ですから、その国を思い、何を思っているかはよくわかるわけでありますが、その点において自治省の指導力というもの、
一つの全体に対する方向づけ、こういうようなものは極めて重要なものだと私は思いますので、
佐藤自治大臣、ひとつよろしく御所見を承りたいと思います。