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宮尾参考人 筑波大学の
宮尾でございます。
私の
お話しするテーマは、お手元のレジュメにありますように「経済非常事態下における
緊急措置に関する
提言」という、ある意味では大変ショッキングな題名をつけておりますが、何分にも食事が終わった後で消化によくないといけないというので、まず別の切り口から入りますと、私が今愛読しております本に「マーフィーの法則」というのがございまして、これはアメリカにいるときに私は愛読をしておったのですが、今
日本語訳が大変売れております。これは必読の書でございまして、私は英語で読んで、どれだけ
日本語に間違って訳されているかというのを見るために読んでおるわけですが、できれば原文をお読みいただくと、大変今の
日本の
状況、
日本経済の
状況をそのままあらわしているという気がいたします。
そこにヒントも隠れているわけですが、マーフィーの法則というものの一番の原点は、だめになる可能性のあるものは必ずだめになるという法則ですね。ですから、うまくいくのではなかろうかという楽観論を排しなさい、だめになるものは必ずだめになりますよという原則からいろいろなものが導き出されています。
例えば、悪い
状況をほっておくとますます悪くなる、こういう話とか、隠された問題点は必ず明らかになって隠し通すことはできない。その他さまざまな教訓が含まれておる本でありまして、きょうもときどきそれを引用させていただきまして、今の
日本経済の問題はどこにあるか、一体どういう
考え方、どういう態度で手を打っていかなければこの
状況が救えないかという
お話をしたいというふうに思う次第です。
それでは、本のコマーシャルを終わりまして、本題に入らせていただきます。
実はけさ、皆さんもニュースでお聞きのように、日経平均株価が一万八千円を切るという
状況が生じましたが、前場の引けにかけてどうも公的資金が入ったということで、何とか持ち直しております。
しかし、これははっきり申し上げて大変危機的な
状況が来ていることのシグナルでございまして、今
日本が実は非常事態にあるのだということの警鐘を鳴らしているわけです。特にきのう、きょう、あした、もし今週もっても来週の前半あたりが大変危機的な
状況になるということは、政治的日程、経済的な
状況をおわかりの皆さんにはもう重々御承知のことかと思います。これが実は悪循環を起こして今の危機が来ているという点だけをまずは強調しておきたいと思います。
悪循環、これは皆さんを支持されている方々の悲鳴でわかるように、失業が急増しておりまして、今百七十二万人の
完全失業者がいる。
企業内失業はそれにさらに輪をかけて二百万、三百万いるといいますので、
日本では
失業率が六、七%に既に達していると言われています。これが当然
消費を縮小させ、経済を悪化させるという悪循環に陥っていること、これは一般の方もよくわかる悪循環でございます。
それから、ここ最近の株価の下落というのが昨年の八月をほうふつさせるような
金融不安ということに結びついておりまして、銀行、生保あたりが防衛のために自分で今株を買い支えるというような
状況にまで至っております。
それから、地価が下げどまらないということが起こっておりまして、まだ大都市では年率二〇%、三〇%落ちている。落ちているだけならいいのですが、取引がない。取引がないということは、
価格がゼロだということですね。したがって、それは当然のことながら
不良債権を増大させるわけですが、
不良債権の確定のしょうがないわけです、取引がない限りは。したがって、これは大変な信用不安と信用の縮小を招くということになっています。
これはつまるところデフレですね。デフレ
不況。既に大型倒産であらわれておりますように、経済がすべて縮小に向かっている。これは実は戦後初めての経験です。一時的なドッジ・デフレ的なことはありましたが、構造的に何年もデフレ的状態が続くというのは一応戦後初めての状態で、我々の経験ではほとんど対応ができない。
確かに実質の
GNPが
マイナスに落ちたことはオイルショックの後、七四年から七五年に一年間だけ
マイナスの落ち込みがありました。そのとき地価も戦後初めて下がったわけですが、それは実はインフレだったわけです。ですから、物価は上がっていたということがある意味では救いになっていたわけです。例えば債務は、名目で一定の債務はだんだんと重みは下がっていきます。
しかし、今回は名目でも
成長率がほとんどゼロか
マイナスという戦後初めての経験です。したがって、我々は経験から物重言ってはいけない。これはマーフィーの法則ではありませんが、賢者は歴史から学び、患者は経験から学ぶといいますが、最近の患者は経験からも学んでないという人が政策当局にいるようです。少なくとも歴史から学ばないと、この苦境は脱出できないという
状況になっていることは、このデフレだということから出てまいります。
それでは、なぜこういう事態にまで立ち至ったかということは、皆さんもう御承知のとおりですが、あえて私なりの
見方をいたしますと、これまでとられてきた政策、
景気対策が今ことごとく破綻をしております。これは大げさな話ではなくて、個々の対応を見ると明らかでございます。
まず第一は、伝統的な公共投資、
財政支出に基づく公共投資の
波及効果がほとんどなかったということが既に明らかになっております。過去に合計で三十兆円ぐらい昨年の春ぐらいから打っておるわけですが、ほとんど
波及効果がない。なぜ
波及効果がないかがちっとも政策当局にはわかっていない。ここで政策当局はある
程度絞った方がよろしいわけですが、大蔵省、そういう
財政政策のかなり主要な部分を左右している政策当局にとってよく
理解ができていない。
私の見るところ、これは明らかに
企業の財務体質が弱体化しているためにいわば細胞がばらばらになっているようなもので、土木関係の
企業が多少公的な発注で潤っても、それでは人をふやしたり
設備をふやしたり、そういうほかの
企業に波及するような行動をとるかというと、そういう
企業自身が財務体質を弱体化させているわけです。持っている株が下がり、
土地が下がり、その他もろもろの経営資源、コストが上がり、弱体化をしている。それに昨今のゼネコン問題というようなことで新しい発注がなかなか見込みが立たない。そういうことになれば公共投資の
波及効果はほとんどないし、これからもないだろう。
二番目。一番バッターが公共投資だとすると二番バッターは住宅だと、大体政策当局の口癖ですが、この二番バッターは快調だと言われています。しかし
考えてみると、一番バッターも二番バッターも今回同じなんですね。住宅もほとんど公庫で支えられていますから、実は同じ公的な
財政の支出が流れているだけの話で、過去の二番バッターは、実はそれをもとに民間の住宅投資が膨らんでくるという形が本当の二番打者のヒットだったわけです。ところが、今回は二番打者は粘りに粘ってバントか何かでやっと塁にたどり着いているという片肺飛行の住宅で、これも実はもう陰りが出ていると言われています。もともと買いかえ
需要は余り盛り上がっておりませんし、一次取得者もここに来て大分選別を強めていると言われています。前倒しで買っている人もいますから、これ以上公庫にお金を流しても、どれだけ住宅の今のブームがもっかということは疑問になってきています。さらにこれから
雇用不安がふえれば一次取得者も
考える。
私の後輩が先日マンションが安くなったといって買って喜んでいたのですが、半年ぐらい前ですが、自分のボーナスや給料が下がるのでもう手放すかなんという話です。手放そうとすると半年前に買った値段も相当割り引かないと売れない、買い手もいないという
状況ですから、一次取得者も実は困っているわけです。そういう
状況に立ち至っています。
それから三番目。これがけさの株価の下落の話と関係があるわけですが、昨今の株価の下落ですね。PKO、株価維持策、これは失敗であったということが明らかになっております。これに買いに出動したところが、もう今や損をかぶってなかなか出にくくなっている。公的資金があるために取引はどうしても抑制されてきた。JR東
日本株の上場まではPKOをやって、JR東
日本株がどうやら支えてくれるだろうという当庁の思惑は全く外れて、逆に今不安定性を増している。しかし、出ざるを得ないというりがきょうの
状況であろうと思います。したがって、こういうことをやっていては指標をいじっているだけで解決しない。
そして四番目、
不良債権対策。昨年八月に
対策が打たれようとしていたわけですが、これが問題の先送りという形でしか事態の収拾が図れなかったというツケがこの期に及んでおりまして、
不良債権が増大しているだけではなくて、
不況型の
不良債権が今次々と降り積もっているということで、
金融機関は問題の
企業に対する支援を差しとめざるを得なくなってきた。これが大型倒産に結びついている。ある意味でお金を流して指標だけをよくしようという過去の三つか四つの柱がすべて最近では限界に来ているという
状況、これを察知して
日本経済が非常事態に陥っているということであろうというふうに思っております。
はっきり言って問題直視型ではないわけですね、これまでの政策当局の対応というのは。時間稼ぎをしていた。時間稼ぎをしていればやがて過去の循環的な経験則からいって
景気が立ち直るであろうと思っていたわけですが、どっこい経験則は成り立たなかった。マーフィーの法則のように、最悪の事態は必ずやってくるという形でやってきてしまったということだと思います。
それでは、少し前向きに
考えたらどうなのか。今検討されていますさまざまな改革ですね、これが
日本経済の将来の明るい
状況をもたらすのではないかということが言われております。今改革ブームといいまして、英語ではファッドとか言っていますが、そのブームが
税制改革それから構造改革、具体的には
規制緩和それから政治改革、改革の文字がつけばマスコミが飛びつくという世の中になっておりますが、この改革が果たして今の
日本の問題を救うのだろうかというふうに
考えてみますと、私は大変否定的です。
その最たるものは
税制改革です。もともと
税制改革というのは中長期の税のあり方の問題でありまして、これは経済がうまくいっていることを前提に書き上げたシナリオでございますので、経済がまずくいったときに働きようがない。うまくいきっこないわけですね。したがって、
景気対策として
所得税減税をやれという話が、いつの間にか
直間比率の
見直しとか
消費税引き上げに見合う
所得税減税とか、そういう話にすりかえられておるわけです。これは全く議論のすりかえであることは明らかであるわけですが、そこはなぜか世の中のオピニオンリーダーだとか論者だとか、いろいろな方がそこをむしろわかりにくい形で議論しているために、何となく今日までこの話が来てしまっています。
しかし、海外から見るとこの誤りは明らかで、昨今アメリカのベンツェン財務長官以下、余り学者でもない、余り経済学を知らないような人から
指摘されているぐらい、これは明らかなすりかえの問題だということは国際的にも明らかになっております。こういう改革は改革として中長期に大いにやっていただく、議論も結構です。しかし、今
日本の
景気を
考えたらどうなるか。これは当然
所得税減税というのをもっと初めにやっていなければいけなかったということです。
私は、二年ぐらい前からこれを唱えまして、昨年学者の
提言というのを、ちょうど一年前ですね、余り使いたくもなかったのですが、建設省の記者クラブで
提言をいたしまして、二、三新聞記事に載りました。それから、テレビにも一年ぐらい前に何回か、出たくもないテレビに出まして、
所得税減税六兆円戻し税でやれということを言いましたが、一年がもう空転、空費されております。これは後で申し上げますが、こういう
税制改革という形でやった場合には、むしろデフレ
効果が激しいということが明らかになっています。
それから
規制緩和、これが今の内閣あるいは細川政権の目玉だとされております。確かに
規制緩和は長期的に経済の体質を改善し、
日本では緊急に必要なものも多いわけです。しかし、
規制緩和一般というのは明らかにデフレ
効果を持つというのが経済学の常識でございます。短中期的な摩擦が起こるわけですから、
規制緩和によって競争に負ける産業、負ける
企業、負ける分野から当然のことながら
企業、労働者が排出される。それが吸収されるものが出てくるまでは必ずデフレ
効果が起こるわけです。これはアメリカが四、五年苦しんできている
状況でありますが、
日本はこれから四、五年そういうことをやる体力や意志があるのかどうかということが非常に大きな問題です。
歴史をさかのぼれば、この種の議論というのは、ちょうどことしが平成五年ですが、昭和五年の金解禁のときに行われた議論と全くうり二つです。歴史から学べば、日銀出身、大蔵大臣という組み合わせの政治的に野心がある井上準之助氏が自分のもともとの説を曲げて旧平価による金解禁とそれから大変な緊縮
財政、
日本は国際的に強い体力がなくてはいけないのだという、大和魂を鼓舞して金解禁をした結果どうなったかという教訓から学べば、
規制緩和一本やりで今回のものは乗り切れると
考えることは全くの誤りであることがわかるわけです。
三番目、政治改革。これは私は専門でもありませんし、皆様に直接関係があることであえて申し上げませんが、簡単に申し上げれば、政治改革中は経済政策は空白
期間になることは明らかでございます。したがって、例えばうがった
見方をすれば、今回の
所得税減税がなぜ十一月の十六日ぐらいまで答申が引き延ばされたかというと、それまでに政治改革が先行する、それが終わったころにそろそろ
税制の話を出すという順番が明らかに
国民には見えておりますから、それに嫌気が差してこれだけ経済
状況が悪化しているということでございます。
ですから、こういう改革の議論は結構です。大いにやっていただきたいのですが、
国民が苦しんでいるこの経済非常事態をどうやって救うかということがどこにも見えない
状況は大変憂うべきことで、それははっきり申し上げて政治家の責任であろうと私は
考えておる次第です。したがって、私としては、きょうぜひ政治家の皆様に次のことをやってほしいという
提言を申し上げたいと思います。
私の今の
状況に対する
見方は、
日本経済は病気になっているということです。この病気説をとるか、あるいは病気でなくて
日本経済はだんだん年をとってきて、体力がなくなってきて、だらしなくなっているというふうに見るかという二つの路線は、大変違った路線なんです。
世の中に、
規制緩和をし
税制改革をすれば
日本経済はよくなるというふうな議論をしている人は、
日本経済はちょっと今疲れてちょっと体力がなくなってきている、年をとってきている、だからマラソンでもして冷水摩擦でもして体力をつければよくなる、こういう
考え方なんです。しかし、では例えばがんに侵されている患者に冷水摩擦をしてマラソンをしろと言ったらどういうことになるか。それはやはり
考えていただかなければいけない。
私は病気説をとっているわけです。その病気をだれが起こしたかという責任論はこの際おくとしても、病気の患者には手当てをしなければいけない。最近テレビタレントの方でがんに侵された方の例というのは、大変人ごとではなくて、
日本経済を象徴しているわけですね。一度悪くなりかかって、医者が少し治療してくれて、治ったようなつもりでいたらどうも体の調子が悪い。この春ぐらいに行って幾ら医者に訴えても、もう大丈夫なんだ、それは手術の糸がちょっと残っているだけなんですとか言われて、待っているとどんどん悪くなる。これはおかしいというので医者をかえたら、これは大変だ、すぐ手術しろということで、応急処置をとって容体が安定してから大手術をして一命を取りとめる。これはまさに天の啓示で、病気にかかった方には申しわけないのですが、これがまさに
日本経済をそのまま反映して、暗示して、何かを我々に語りかけているというふうに思わざるを得ないわけです。
つまり、ことしの春ごみ、
日本景気が立ち直ったかのごとくあらゆる経済官庁、マスコミ、評論家たちが口をそろえて、もう
景気の底を打った、仮に回復が弱くてもこの
年度の後半からは力強く立ち直るということで、はっきり申し上げて、大蔵省、通産省がっくり上げた三・三%のことしの
成長率は達成できるというシナリオで進んでおったわけですが、見事にそれが破綻した。それがきのう発表されて、それで株価が崩れ、
雇用不安が一段と出てくるという
状況かと思うわけですが、おかしいというふうにその後訴えかけても政策当局は、それはたまたま
円高が来たから、たまたま
冷夏が来たからという口実でひとつも治療をしようとしていない。その間に
日本経済は瀕死の重症にまで陥っている。
ですから、私としてはここで医者をかえろということを申し上げたいわけです。つまり、政策のイニシアチブをとっている人たちをかえなさい。これまでの政策のイニシアチブをとってきたのはだれか、どういう
考え方でとってきたのか、それをこの際、百八十度かえていただきたい。それをかえるのが政治家の役割だろうというふうに私は
考えております。
医者をかえる場合に、どういう診断をするかということですが、まずは応急処置をしなければいけないのですね。
呼吸困難それから出血多量、貧血を起こしている病人には容体を安定させなければいけない。安定させるのは
所得税減税であろう。まずはお金を少しサラリーマンに渡して、とにかく急場は何とか乗り切って、破産せずに、自殺せずに何とか生き延びてほしいということを言うのがまずはやることだ。これは当然
赤字国債で戻し税方式。すぐにこの年末にもやるべきで、一刻を争う
状況であります。戻し税方式でやれば、これは一回限りですから後でどうにでも償還ができるわけです。これを
税制改正の問題にすりかえるので、永久に税率が変わってしまう。これに対してさらに永久的な
財源という話になるので、そう簡単には物事が進まなくなることは当然なわけです。ですから、これは戻し税で緊急にやる、
赤字国債で戻し税でやるということです。
それから、
実質金利をなるべくゼロに近づける。これは難しいですね。
日本はデフレですから、名目
金利をゼロに下げても
実質金利はプラスですから、これはゼロといっても言うはやすく行うはかたいのですが、少なくとも公定歩合はゼロにするということです。ですからあすにでも、きょうにでも三重野総裁、きょうはのんびり東京のどこかで講演しているようですが、そんな講演している間に日銀に戻って公定歩合をゼロにする、つまり特融を全面的にやることに近いことを決断しないともうだめですね。だめだという意味は後で申し上げます。
それでも、
企業としては自分のつくっている物の値段がどんどん下がるわけですから
実質金利は高いわけです。ですから一・七五まで下げたときに未曾有の低
金利だなんと言った日銀総裁の経済的なセンスはやはり疑わざるを得ないわけですが、それは後にまたもう一回申し上げます。
そういう応急手当をして、底割れてしまった
景気の底を多少かさ上げする、そして治療をしなくてはいけない。内科治療と外科手術というふうに私は書いているわけですが、内科治療というのは、
金利をゼロにしても税の
負担は時間とともにたまっていきますから、なるべく
企業や家計のリストラの支援を特に
税制面でしていくことが大切であろうと思います。
特に
企業は今余分な
設備を抱えております。これを
企業の責任に帰していてはいつまでたっても解決しません。ですから何とか
設備を廃棄する。廃棄する場合に出る損失をどうやって利益を圧迫しないように税の面でサポートするか。それから減価
償却費、大変重荷になっているわけですね。三大固定費の
金利と人件費と減価
償却費、この
一つの減価
償却費を今
考え直す時期に来ているわけで、これを少し先送りするわけです。例えば法定耐用年数を一割ふやせば、恐らく数兆円の
減税と同じ
効果を持つ。
それから、もちろん法人税の
軽減です。変な株価維持政策をとるより法人税
軽減の話を出した方がよっぽど株価は反応するわけで、本来の
企業の税引き後の収益を助けてやるような政策をとらなければ、幾らお金で株を支えても結局はだめだということは経済学の常識ですが、今どうも常識のない人が株価操作をしているような
状況がございます。
それから、今言ったような
実質金利の
軽減、そういうリストラを支援する。
事実、家計なんかはあれですよね。大蔵省が何を思ったか、相続税の滞納は免除してやるみたいなことはやっているわけですよ。ですから、非常に政策が一貫してなくて、なぜ相続税の滞納を免除してやるのにほかの人には何もしないかというのは全く
理解できないわけで、こういうところが政策当局に任せておくとだめだということです。もっと全体を見回すプログラムが必要である。そういうリストラへの支援をする。
そして、今は不動産が動いていない。株がこういう状態ですから、それに対する
規制や
税制を緩和する。昨日、監視区域を弾力的に見直すという話がありましたが、これは即時全面撤廃ということを政治家の方が大いに各
地方自治体に働きかけて全面的に緩和をする、廃止する。
それから、
税制については買いかえ特例の復活、
地価税の廃止、譲渡益課税、特に
重課については廃止するというような、
土地や証券を動かす方向に持っていく。動かすからといって必ずしも地価を上げる政策とは限らないわけで、動かしたらもっと下がるかもしれませんが、それは構わないので、動かして損切りができるようにする。リストラを支援するということです。
そして、いよいよ外科手術です。
これについては恐らく後で御質問があると思いますから簡単に申し上げますが、本格的な外科手術というのは民間レベルの
金融システムをどうやって健全な形に戻すかということ、これがデフレ
対策の一番のかなめになります。これは本格的な
不良債権対策を行う。
今
不良債権をどうやって
流動化するかということが問題になっておりますが、端的に言えばアメリカから学ぶ、この分野で先進国のアメリカから学ぶ。アメリカでの
不良債権対策の目玉は証券化ということ、それから公的な
機関が証券化しても動かないものを買い取って、それをいかに安く市場に出して証券化の基礎をつくるかという公的資金、この二つに尽きるわけです。
日本では公的資金、税金は無理にしても財投資金とか日銀の特融という手がありますので、これはやはりやるときに来ている。
それから、ウルトラCといいますか、検討に値するのが資産再評価とデノミの同時実施ということで、いろいろな問題が解決できるであろう。資産再評価だけをやるとかデノミだけをやるというと、それなりのメリット、デメリットが議論されますが、こういうものを同時にやる。
一つの大きなプログラムとして資産再評価、デノミその他、そういうリストラへの支援策は非常に大きなプログラムの中で同時に行うということで、それぞれのメリットを生かし、デメリットを最小にするようなプログラムを
考える、それが恐らく我々の役割だろう。
そして最後に、こういう事態に至らしめた政策当局の体質を改善するにはどうしたらいいか。さっき医者をすげかえると言いましたが、すげかえるといってもやはりまるっきりなくしてしまうわけにいかないので、今後ともお世話になるわけですから、もしやぶ医者だったら、それを訓練していい医者にしてやるにはどうしたらいいかということを
考えなくてはいけないわけです。
それははっきり申し上げて政策決定、特に経済政策の決定方式の
見直しです。特に経済官庁はそれぞれの
委員会とか
調査会、審議会というのを持っておりまして、そのメンバーの指定は全くその都合のいいように、自分たちの
考えた政策のお墨つきを与えるようなメンバーの構成になっている。それを記者クラブ制度によって、子飼いの、自分の手懐けた記者に記事を流しでそれを掲載させる、そういうシステムが、政策がいわば広報的な手段として世論形成、世論操作に近いものが行われる。そしてまた、官僚のOBが評論家然としてテレビや新聞などに出て、そういう政策をあたかも
国民のためというふうに吹聴する、そういう循環がこれまでの政策を誤らせてきた。それは、特にここのところの
景気対策においては如実に見てとれるわけです。そういう悪循環のどこかから断ち切らなければいけない。当面は
調査会、審議会、
委員会のあり方、これを何とか議員の皆様、政治家の皆様のリーダーシップで根底から変える、メンバーを入れかえる。これまでのメンバーは、すべて再び
委員会には出さないということですね。そういうあたりから切る。
そして、これは若干中長期的課題ですが、
金融当局の組織改革と再編。長年、
金融庁の創造、日銀をもっと独立性、独自性のあるものにして総裁以下経済のわかった人を民間から起用するという提案がなされていますが、ある意味では、これを持ち出すいい
機会ではないかということです。大体そういうことが私の治療法の
提言でございます。
そして、最後にあと一分だけいただきますが、今申し上げた中のものでも、なかなか普通の事態ではできないものが多いわけですね。それぞれ
反対意見もある。かなり極論もあるし、学者の
意見的なものも、青臭いものもあれば、なかなか実行に移せないものが多いわけです。ですから、私の
意見は、こういうものを、英語で言うとコンティンジェンシープランといいますか、危機が起こったときの緊急策と促して今のうちからまとめておく。そして、いざ事が起こったら、もうきのう、きょう起こっているかもしれません、あしたぐらいに起こるかもしれない。しかし、株が、例えば一万五千円を切り一万円ぐらいまで暴落をしたときに、すぐ経済非常事態宣言というのが出せる、そして、こういうプログラムを
政府が
考えていますというプログラムをきちんと出せるようにしておくのが政治家の役割だろうと思うわけです。
ですから、私は若干雲をつかむような
お話を今申し上げたかもしれませんが、こういうものをきちんとふだんから、ワーカブルな、つまり実行可能な形で具体的なプログラムにパッケージにしておいて、用意しておく。事が起こったときに、非常事態宣言を政治家がそろって超党派で発表し、このプログラムはこういうのがあるのだということを出す。
そして、その切り札は、私は時限立法だと思います。これは議員立法で、国会で緊急に時限立法で設立する。例えば一年なり二年なりの時限立法で、その
期間内、二年間戻し税を六兆円やります、二年間
実質金利をゼロにします、二年間減価
償却をしないでいいということにします、二年間かかって
不良債権を公的資金を入れて
償却します、二年間証券化のための枠組みをつくります。例えば、アメリカなどのように不動産投資信託のような枠組みをつくります、その二年以内に資産再評価とデノミを行います、二年以内に政策当局の決定方式を決定的に変えますという、そういう時限立法で
時代を乗り切ったらいかがか。中長期的な改革の話、
税制改革、政治改革、経済の
規制緩和を行う構造改革というのは、その二年間は緊急策が優先し、その二年後にそういう改革が再び
動き出すような
措置にするのが私は正解だろうと思う次第でございます。
以上で私の提案を含めた
意見陳述を終わらせていただきます。