○松本(龍)
委員 松本龍であります。商工
委員会、私初めての
委員会の所属でありますけれ
ども、
委員各位が活発に御論議をされていることに、まず敬意を表したいと思っております。大臣、食後休みもなく本
委員会においでになりまして、大変御苦労さまであります。これからのまずまずの御活躍を祈念申し上げたいと思っております。
この間ずっと御意見を伺いまして、まず大臣にお伺いをしたいのですけれ
ども、共通認識として今皆さんそれぞれ
委員の中にあられるのは、この景気の低迷をどう打破していけばいいのだろうか、また
中小企業の雇用不安、さまざまな不安に対してどう対処をすればいいのだろうか、そういうことがおおむねずっと議論になってきたと思っています。ですから、
本法に入ります前に、大臣の今の
経済に対する現状の認識からお伺いをいたしたいと思っております。
私はことしの春先にタクシーに乗りまして、そのタクシーの運転手さんがこういう話をされました。バブルの時期は、いろいろ景気が絶好調というふうに言われましたけれ
ども、自分たちには忙しいばかりでほとんど恩恵がなかった。バブルのときはおつき合いができなかった。しかし、こうやって不況になってきたら、これはひとしくツケが回されてくる、つき合いをしなければならない。つまり、そのときにもうけた一部の人たちだけではなくて、ひとしくみんなが景気の低迷のあおりを受けなければならない、これは不公平だなというふうな話をされました。それどころか、まさに
中小企業とか生活弱者に対してそれが一番あおりがかかってきているというふうに思います。そういった
観点から、このバブルの弊害がいかに大きかったかということを物語る
事例を二、三大臣に申し上げたいと思います。
一つは、この前本院の佐藤剛男
委員も言われましたけれ
ども、
素材産業の問題であります。エチレン、紙・パルプあるいは粗鋼でありますけれ
ども、そういった
産業が、実は産構法による主な過剰設備処理
状況と、
経済白書六十二年版に載っておりますけれ
ども、紙パあるいはエチレン等々、これはもう
減少状況にずっとあったわけですね、それは大臣もうとっくの昔に御存じだと思いますけれ
ども。さらに、一九八七年の六月の基礎
素材産業懇談会の中間報告においては、粗鋼
生産は一九八五年度一億三百七十六万トンから九〇年度時点では八千五百万トンあるいは九百万トンの水準まで
減少するとの見通しがなされたことを受けて、各鉄鋼メーカー、そのレベルの
生産でも収益が確保できる体制を目指すこととなったというふうにありますけれ
ども、まさにこれがバブルのちょうど前
あたりの
状況だったと思います。
しかしながら、そういったバブルの
状況が目の前に現出をいたしまして、そういった
産業が、いわゆる
素材産業の設備投資がどういう
状況になってきたかといいますと、まさに二〇%、三〇%、四〇%の前年度比で設備をずっと投資をし続けてきた。このことは、やはり今非常に大きな問題を抱えているなというふうに思います。しかも、私が思いますのは、設備を
減少するときの当時の
状況は、まさに老朽化した設備とか償却がし終わろうかという設備でありましたけれ
ども、今抱えている過剰設備というのは、ここ五、六年で抱え込んだ新規の設備でありまして、まさに固定費の増大に大きく悩んでいる、そういう
状況が今あるというふうに私は認識をいたしています。佐藤
委員も、ヒアリングをされて、これからの
対応を考えられればいいというふうに言われましたけれ
ども、一点はそういう
状況を今現出をしているということであります。
もう一点は、私、建設
委員会にも所属をいたしておりまして、住宅着工戸数というのもこの間ずっと推移を見てまいりました。おおむねバブルの以前といいますか、八五、六年
あたりは、大体年オーダーで百二十万戸、年間百二十万戸くらいが住宅着工戸数でありましたけれ
ども、バブルの真っただ中は、何とそれから五十万上乗せの百七十万戸という時代があったわけです。今はもう百四十万戸くらいで推移をしているわけでありますけれ
ども。実は、
経済の指標になる住宅着工戸数ということで、私も建設
委員会の中でちょっと
指摘をしたのですけれ
ども、これは、戸数が伸びてきたから堅調になってきた、底を打ったとかという指標にするには、ちょっと今そういう時代ではないのじゃないかというふうに私自身は考えています。
といいますのは、バブルの時代の百七十万戸というオーダーは、実は賃貸とかそういった、いわゆる財テク、キャピタルゲインあるいは節税等々で市場が拡大した中身であって、いわゆるそこに住まうとか居住をするとかいう目的での市場の拡大ではなかった。といいますのは、そのときの持ち家のシェアというのは、トータルで見ますとダウンをしています。伸び率からいうと、それほど伸びておりません。そういう
意味では、いわゆる実需ではなくて仮需の状態があのときのバブルではなかったかというふうに思います。
きょうの新聞を見ましたけれ
ども、日経の朝刊ですけれ
ども、「今後半年間の持ち家の受注見通しについては、前年同期に比べて「増加する」とする割合が、「
減少する」を上回っている、「金利低下により持ち家の着工意欲が高まっているためだ。」というふうに載っていました。まさに今金利が下がった、そして土地も下落傾向にある。そういった中で、本当のこれは実需で持ち家がだんだん回復してきているな。そういう
意味では、バブルのときは絶好調で持ち家が伸びなかったけれ
ども、そういう時期になって実需が少しずつふえてきているという、この
状況を見たときに、私は、バブルの山の高さといいますか、山高ければ谷深しと言いますけれ
ども、谷の深さの
状況をどう考えるかということも非常に大事ですが、山の高さが何であったかということを認識しなければいけないというふうに思っております。
そういう
意味では、
経済を人間の体に例えると、バブルのときにだんだん太っていって大きな背広を着てしまった。大きな背広を着てしまってだんだん体がやせ細っていって、気がついたら大きな背広の間から大きなすき間風が吹いて、不景気の風が吹き始めた。そういうときに体に栄養をつけることもこれは非常に対症的には大きな療法でありましょうけれ
ども、もう一方では、大きくなってしまった背広を少しずつ仕立て直していくという方面でもやはりこれからの
産業政策として必要ではないか、
経済政策として必要ではないかというふうに私自身考えているわけです。その
あたりの大臣の御認識、そしてこの長期的な不況を、いつも使われておりますマクロ、セミマクロ、ミクロという
観点からどう克服をされればいいかということをまずお尋ねをしたいと思います。