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佐藤(剛)
委員 それでは、今お配りいたしますが、先ほど来、私、
熊谷大臣の力強い御答弁を聞いておりまして、その根底が、これは文芸春秋の三月号、まだ新生党はできていないころ、
内閣総理
大臣「宮澤
政治にモノ申す」という勇敢なる
政治家の
発言として私は高く評価しておりますし、この中に出ておりますいわゆる
規制緩和の問題というのは現実に今動き出しているわけでございまして、私、
考え方につきまして、敬愛いたしております
大臣の見解にまことに、この機会に改めて敬意を表するわけでございます。
きょうは、実は私、一時間続けてやりたかったのですが、三十分、三十分に切られまして、来週の火曜日に細かい
お話をします。本当は、私も
政府委員をやっておりましたから、
政府委員はお帰りになっていいのですが、合理化を今やられるようでございますので結構なんでございますが、いらっしゃいますので、流れをお聞き賜りたいと思います。
一つは、
大臣がここで御指摘されている第一の問題、ページ数でいいますと、三枚目の四百十二ページ、レスター・サロー教授、米国のマサチューセッツ工科大学の今総長になっておりますが、
大臣は
アメリカにも留学され、いろいろ広い人脈も持っておられる。そして、しかもこのサロー教授のペンを引かれたことに、私は実は非常に共感なんです。といいますのは、六年前に彼と私は
日米シンポジウムでやり合ったんでございますよ。
当時、
為替レートが、一九八七年でございましたから、百五十五円くらいでございました。郡山でやったのです。そのころは民主党の顧問だった。それで
経済学部の学部長だった。今やMITの総長になってしまった。そして、調べていきますと、オックスフォード大学で今のクリントン大統領の先輩に当たっているわけです。
アメリカという国は、外国で留学が
一緒だったというのはすごい派閥の意識を持っているわけでございまして、そういう
意味で、非常に彼の思想、彼の哲学というのがクリントン
政権に私は大きく出てくると思っているのです。
そのときに彼が一ドル百円だと言ったのですよ。一ドル百五十幾らのときです。彼の言っている百円の議論というのは、彼は「ゼロサム・ソサエティー」という本をつくってやっているわけでございまして、
世界の貿易というのは、片一方が突出して黒になれば片一方は赤になるんだ、だから
日本が黒字になっているから
アメリカが赤字なんだ、こっちを抑えろ、こういう発想でして、そんなばかな話はないだろうということで、今、プラスサム・ソサエティーということで、そういう
意味でウルグアイ・ラウンドだなんだとやっているのじゃないかという話を私はしたのですが、彼は絶対に応じなかった。
これは新聞に出ないことですが、
日本嫌いで、民主党の
経済顧問でございまして、彼の思想というのを
関係各省庁、外務省もそうですが、いろいろな論文、よく調べておいた方がいいと思います。その
意味で、この四百十二ページにありますレスター・サローが言っている、
日本が貿易システムを破壊する、そのままいくと
世界の国がリセッションにいってしまうぞ、こういう問題意識というのを私は全く懸念しているのです。
なぜ黒字になってしまうのかという議論は、今の
経済といいますのは、
経済学者で言っている人がいますが、魔の三角形、この三角形のトライアングルの一番突端というのが、昨年よりことしの方が経常利益が悪い、これはもう相当な悪さでありますが、そういう低成長、それから底辺にある片一方が財政収入不足、これは法人税だ何だが減るから、そういうふうな
状況で、頑張っているのは
消費税じゃないかなと私は思っているのですけれ
ども、これと、底辺の角にありますのが対外黒字。こういう魔の三角形で、あの小さいときに遊んだ知恵の輪をいかにとるか。とれない
縮小均衡の中に入ってきてしまったのです。そして対外黒字部門で、これは
経常黒字というのがこれだけ出され、それから
大臣、先ほど大畠
先生に対する答弁でおっしゃられましたが、これが最初の一枚目に出ていることだろうと思うのですが、
政府見通しの中において、非常に大きく変更してしまった宮澤さん。そこから
一つの
円高基調というものが出ていくという発端があったのだろう。六千億ドルと言われるような
世界のマネーがあるわけですから、黒字幅の千五百億ドルの四倍ぐらいのものが動き出せば、ちょっとした形でいきますと、ばっと上がるという
状況。それから、レスター・サロー教授のようなかなり力のある人間が言いますと、そのようになってしまう、私はそういう懸念を持っているわけです。
しかし、今回の場合は、さらに悪いことに、
日本の為替というのがかつて
アメリカに対しては高かった当時は、
アメリカのドルはヨーロッパ通貨に対しては弱かった。だから逆に言うと、
日本は
アメリカ向け輸出が減ってもヨーロッパ向け輸出が伸びた、こういう救いになっていたのですが、今日の
状況を見ていきますと、
アメリカに至っては、
アメリカは対カナダドルを見ますと、三割近く上がっているわけですよ。
アメリカドルの方が高い。それからヨーロッパの対欧通貨にしましても、大体一〇〇%くらいの水準、九〇から一〇〇くらいの水準ですから、そんなに動きがない。そこに従来と根本的に違い、黒字がたまってしまう
構造になっており、私は非常に懸念しているのです。
それで、さらに問題は、なぜ黒字になるかというと、私はISギャップの問題だと思っている。企画
庁長官おられますからお聞きしたいと思うのですが、総
貯蓄から総
投資を引いたものが対外黒字、IイコールSというのが事後的に一致するのが一番均衡の
状況なわけでありますが、そのSが大きくなってしまった。Iよりもはるかに大きくなりつつある。そうである限り、
構造的に黒字になってしまう。これがISギャップ論なんです。この問題は簡単じゃないのでして、ここら辺は
消費税問題やら今の
所得減税の問題で十分検討していただきたいと思います。私は
消費税を上げることについて反対でありますが。
貯蓄率が
日本は高いといいます。その高い
貯蓄
率は、対GNPでいいますと、大体二十数%あるわけです。その総
貯蓄率を
家計ベースで計算しますと、三つ一の要素に分かれます。
一つは、貯金がふえるというもの、そういう形の
一つの分類であります。これを金融資産
貯蓄純増率というわけでありまして、企画庁の
調査局長おられますが、その
実態を眺めてみますと、これは上がってはいるのです。
家計は、
貯蓄に回れば借金もしている。
それから、もう
一つの要素というのは、契約
貯蓄率です。
住宅ローンの借金を返すのはどこに入るかというと、契約
貯蓄率に入るわけです。つまり、借金返済によって
貯蓄率がふえてしまうわけです。
住宅ローンの返済は
国民の
所得統計の中で何を見るかというと、
貯蓄率に行ってしまう。
それから、あとその他骨とう品だ何だの、実物
投資率というものです。今の
状況というのは、土地、家屋の借金、今ほとんどの家庭、その戸数は四千二百万ぐらいありますか、その人たちが新しいものを建てた場合には、これは皆
住宅ローンを借りていますから、いわば
住宅ローンというのがその
家計の中に大きなウエートを占めている。そして、その返済をすると
貯蓄率が上がっていく。下がらない。その結果、総
貯蓄に比して
投資が少ない場合には対外黒字が増大してしまう。この三つのものをきちんと解決しないとだめです。単に輸入だけをふやそうといったって、ふやしてもなかなかこの問題は解決しない。
それで、私が今
心配している部分は
投資部分であり、Iをできるだけ多くしなきゃいかぬ。ところが、Iを大きくしなきゃいかぬのですが、今日の
日本の
経済を見ますと、過剰設備であります。
これは、統計の適正ストックと比較して、
一つの計算方法ができるのですけれ
ども、それをやりますとすごく乖離しています。いわば第一次石油ショックのときと似たようなのが過剰ストックである。いわば設備廃棄をするような時代に入ってきた。この
状況が、いわば固定費が非常にたまってしまった。固定費がたまって、
金利を払う。
金利を払うわけだから、そのためには稼動させなきゃいかぬ。赤字でも生産している、あるいは赤字でも輸出せざるを得ない。
これで、ついことしの九月ぐらいまでは大体一ドル百十四円ぐらいで為替を組んでいたわけですが、これは百四円というようなことになってくると、十円
下げるということは大変なわけだ。ですから、先ほど中小
企業の
質問がありましたけれ
ども、地方に行くと、私は福島なんですが、福島のところの電子機器のメーカーというのはたくさんあるわけです。日立もあれば、東芝だの沖電気だのあるのですが、そこの下請というところの人たちは、つい
バブルのときというのはどんどん設備を、出せば注文がありましたから、人手不足であるし何だというので、リースをして機械は備えつけた。ところが、ぽんと切られてしまった。どこで切ってしまったかというと、下請
関係というのを、今やファーイースト、極東、中国を中心とする極東に生産基地は移りつつあるわけです。そこで、下請というものの会社はあっても仕事がなくなって、中国だ何だあっちの方に、大体月五千円から、ちょっと上がっても一万円ぐらいの月給ですから、そういうところの形に今行っているのが私は現状だろうと思っておる。この
状況というものは、空襲警報なわけですよ。警戒警報じゃないわけですよ、
事態は。
ところが、そういうふうなことになる
状況というのは、
バブルのときもそうでしたが、資産インフレになるぞといったときにもう日銀が遅かった。日銀は資産インフレをはかる体温計がない、
日本には。はかるものの指数がない。
家計調査か何かのところで今出ているのは家賃。家賃当たりというのが、恐らく一〇〇〇〇の指数で八〇〇か九〇〇くらいしかないだろうと思いますけれ
ども、そのぐらいのところの
状況で見ていて、資産インフレについての
認識も遅かった。ツー
レートだった。ツー
レートのところで今度はその荒療治をやって、日銀の三重野総裁と、この
大臣の論文に出てますが、
大臣おっしゃっている宮澤、私は日銀の見通しと、またそこのところで企画庁もしっかりしていなかった。しっかりとした把握をしていなかった、
経済状態の実情を。ということですから、そして無理に
バブル退治をやったのが今日の
状況である、こういう私は
認識なんですよ。
まずそこら辺で、
大臣、それから
経済企画庁久保田
大臣、ひとつ私の
考えに対する御見解をお聞きしたい。