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1993-10-22 第128回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十月二十二日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 中井  洽君    理事 逢沢 一郎君 理事 甘利  明君    理事 尾身 幸次君 理事 額賀福志郎君    理事 大畠 章宏君 理事 古賀 正浩君    理事 河合 正智君 理事 伊藤 達也君       浦野 烋興君    小川  元君       小此木八郎君    熊代 昭彦君       佐藤 剛男君    谷川 和穗君       中川 秀直君    中島洋次郎君       丹羽 雄哉君    野田 聖子君       山岡 賢次君    遠藤  登君       緒方 克陽君    野坂 浩賢君       細谷 治通君    松本  龍君       土田 龍司君    豊田潤多郎君       西川太一郎君    山田 正彦君       赤羽 一嘉君    赤松 正雄君       佐藤 茂樹君    枝野 幸男君       武山百合子君    矢上 雅義君       山田  宏君    吉田  治君       吉井 英勝君  出席国務大臣         通商産業大臣  熊谷  弘君         国 務 大 臣         (経済企画庁長 久保田真苗君         官)  出席政府委員         公正取引委員会 植松  勲君         事務局取引部長         経済企画庁調整 小林  惇君         局長         経済企画庁国民 加藤  雅君         生活局長         経済企画庁物価 坂本 導聰君         局長         経済企画庁総合 吉川  淳君         計画局長         経済企画庁調査 土志田征一君         局長         通商産業政務次 和田 貞夫君         官         通商産業大臣官 江崎  格君         房総務審議官         通商産業大臣官         房商務流通審議 川田 洋輝君         官         通商産業省通商 坂本 吉弘君         政策局長         通商産業省貿易 中川 勝弘君         局長         通商産業省産業 内藤 正久君         政策局長          通商産業省環境 高島  章君         立地局長         通商産業省機械 渡辺  修君         情報産業局長         通商産業省生活 土居 征夫君         産業局長         工業技術院長  柏木  寛君         資源エネルギー         庁長官     堤  富男君         資源エネルギー 林  康夫君         中小企業庁長官 長田 英機君         中小企業小規  山田  豊君         模企業部長 委員外出席者         外務省欧亜局口 西田 恒夫君         シア課長         大蔵省国際金融 八木  健君         局開発政策課長         参 考 人   小島 邦夫君         (日本銀行理事)         商工委員会調査 山下 弘文君         室長     ————————————— 委員の異動 十月二十一日  辞任         補欠選任   山田 正彦君     渡部 恒三君 同日  辞任         補欠選任   渡部 恒三君     山田 正彦君 同月二十二日  辞任         補欠選任   梶山 静六君     佐藤 剛男君   沢藤礼次郎君     緒方 克陽君   枝野 幸男君     矢上 雅義君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 剛男君     梶山 静六君   緒方 克陽君     遠藤  登君   矢上 雅義君     枝野 幸男声 同日  辞任         補欠選任   遠藤  登君     沢藤礼次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 中井洽

    中井委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。甘利明君。
  3. 甘利明

    甘利委員 久しぶりに質問に立ちましたら随分景色が変わっておりまして、若干戸惑いを覚えるのでありますが、一時間質問をさせていただきます。  いわゆる五五年体制崩壊をいたしまして、自民党は三十八年ぶりに、つまり結党以来初めて野党になったわけであります。かつて何年前でしたか、サッチャー首相日本に来られましたときに、たしか後藤田議員だったと思いますが、サッチャー首相質問をしました。議会制民主主義にとって何が一番大事ですかと聞きましたら、即座にサッチャーが健全な野党の存在と答えられたそうでありまして、野党としての我が党はこの基本姿勢で、何でも反対、対案政府考えるというような姿勢は絶対にとりません。賛成するなら堂々と、反対するなら対案を持って、正論堂々の健全野党を目指してまいります。  その健全野党の第一の質問でありますけれども経企庁長官に伺いたいと思いますが、実は景気下降局面を迎えたかなというそのしょっぱな、もう三年ぐらい前でしょうか、自民党商工合同部会というのがありましたが、経済関係議員が集まっての部会の席上で、当時の経企庁調整局長でしたか、吉冨さんが景況報告をされておりました。景気は堅調に推移をしております、個人消費は底がたいし、物価は安定しているし、失業率は低い、心配はありませんというような報告がありました。  その場に出ておりました私が実は猛然とかみつきまして、それは数字の上でそういうことをおっしゃるかもしれないけれども、我々は政治家ですから選挙区をくまなく歩いています。自分の肌身に感ずる状況景況というのは相当体感温度が下 がってきているように思う。だからソフトランディングをさせていくのであればもう今からある程度対策を打っていく、つまり溶鉱炉を冷やす方式じゃないかもしれませんが、暖めながら冷やしていくことを考えないと、これは地上に激突をする、ソフトランディングどころじゃないぞという反論をいたしました。  その反論に対して、失業率は低いし、設備投資意欲はあるし、個人消費は引き続き堅調である、こういう事態の中で景気刺激策をとるようなことをすればこれはインフレを招くんだ、またそういう再反論をされました。  私は再度立ちまして、しかし、失業率数字に出てきたときには日本型経済というのはもう末期症状じゃないんですか、終身雇用完全雇用体制のもとで事実上の社内失業を抱えながら企業は頑張っていくんだから、具体的な数字に出てきたときには、もうそれはちょっと手を打っても遅いんじゃないですか、残業時間の推移を見てください、相当残業時間が減ってきている、これは黄色信号ですよ、あるいは、景気先行指標である鉱工業生産数字もいま一つ振るわない、これはもうそろそろ手を打っていかないと大変なことになりますよという論争をいたしました。  どうしても吉冨局長が引かれないものでありますから、私の捨てぜりふは、そういうことをおっしゃっていて、そのとおりならいいけれども、半年たってみて私の言うことがそのまま当たって、あのときにやっておけば、そういうことにならないといいですねということで議論を打ち切りました。半年、一年たって、不幸なことに私の言うとおりになってしまったわけであります。  私はそのときに、とにかく今手を打て、打つ手としては幾つかあるけれども、すぐできるのは公定歩合を余り小刻みに下げるな、思い切って一遍に下げろ、そして下げどまり宣言をしてくれ。つまり、当時小刻みに、小出しに下げるものでありますから、下げ数字が載ったその日に、さらに一段の下げが必要だというのがぱっと載る。そうすると、設備投資意欲がある企業家でも一番の金利の底をねらうじゃないか。まだ下がるんだからまだ手控えよう、そうすると手控えることがさらに不況を招いていきますよ、思い切って予想を超えて下げて、これでおしまい、そうすれば金利底をねらって投資意欲のある人はここで投資、それが下支えになるじゃないか。それから、国家の財政力に余力がないけれども、しかし財投はまだ余裕が随分ありました。財投というのは当初計画の五割増しまでは国会承認なしにできるから、思い切って財投をふやせ、この二つはすぐやれと言ったわけであります。結果として、結局何もできなくてああいう事態になってしまった。  その後の説明というのは、あれは循環型の不況じゃなかったから、構造不況バブル崩壊、いろいろな複合不況だから日本経験をしたことがないスタイルなんだ、だからなかなか予測もできなかったし手も打てなかったんだ、何となくそういう言いわけがまかり通ってしまったわけでありまして、まあ政治というのは歴史に学んでいかなければならない。今まで経験したことがないことをもう我々は経験しているし、今も経験している真っ最中であります。いろいろなことを学んだと思うのでありますし、経企庁としても処方せんをつくりつつあると思うのですね。  そこで、この複合不況を通じてどういうことを学んだのか。見通しが悪かったからいけないのか、打つ手が悪かったからか、あるいは単におくれたからいけないのか、あるいは全く別の処方せんなのか。この複合不況を通じて得た教訓といいましょうか、その辺のところを長官に御教授をいただきたいと思います。
  4. 久保田真苗

    久保田国務大臣 今回の不況が非常に長期化し、しかも大型であるということでございますけれども、その内容について見ますと、もちろん循環的なものもございます。そして、バブルの後遺症というものが長引いている、現在もそこから抜け切れていないということがあると思います。また、期待したところのものが、急激な円高長雨等影響を受けて非常に企業家それから家計マインドを冷やしている、そういう相乗効果が生じていることも事実だと思いますので、それが複合的なものであるということは確かにそうだと思います。ですから、これを切り抜けていくために、やはり私どもは、ここでそのバブル教訓などからしっかりと学ばなければいけないということはおっしゃるとおりでございます。  今回の景気後退経験からいたしますと、景気調整過程にあるわけでございますけれども、今後の経済政策の運営のうち非常に大事なことは、バブルの発生を未然に防止していくということがまず第一に大事だと思います。それから、バブル期の過度の投資あるいは消費、そういったものに対する反動がいろいろな部門に見られますところから、やはりバランスシートの調整実体経済に大きな影響を与えるということを学んだと思います。また、家計企業マインドの悪化というのが実体経済に実際に影響しているということも非常に痛切に感じたところだと思います。  私どもは、前政権からやってまいりました累次の経済対策というものを早く前倒しで実現していくということを懸命に就任以来内閣として頑張りまして、その点は非常に順調に、恐らく過去最高の記録をもって進んできていると思います。また、九月十六日に緊急経済対策として新内閣が打ち出したものにつきましては、ここで先行き閉塞感不透明感というものを払拭するということをねらいといたしまして、これまで手をつけてこなかった規制緩和円高差益還元というものを今回は非常に早く取り上げたと思っております。そして、これが実質的な新しい事業の創造とか、いろいろな経営や家計に与える負担を軽減するとか、そういったことに浸透してくる。また、円高差益還元につきましても、政府対応分野であるところの公益事業については非常に早く実施したと思っておりますのでございますから、これが物価企業収益に浸透していくということを大いに期待しているわけでございます。  また、先行き不透明感を払拭するために、先生よく御存じの六兆円規模の新しい対策をとりまして、そこでの目玉を、非常に国民のサイドでの需要が強く感じられます住宅あるいは生活環境の整備のための新しい社会資本充実拡大というところへ充てて、不透明感を払拭したいと考えているわけでございます。  もちろんこれは構造的なものへの第一歩でございまして、これから先これを六年度の本予算につないでいく、あるいはこれからまた政府税調、それから平岩委員会等での審議ももう活発に行われているという状態の中で、ぜひともこの先行き不透明感をぬぐい去りたいという念願を込めているところでございます。
  5. 甘利明

    甘利委員 質問個数が多いので、次に行きます。  景気対策で、政府景気対策の以前に党の景気対策を組みまして、私が商工部会責任者幾つか提案をしたものがありまして、その中の一つ住宅リフォーム減税というのを提案いたしました、ただ、これは肝心なところがなかなか現政権に踏み込んでいただいていないなと思うのは、すべてローン減税なのですね。リフォームするお金を借りる、そのローンの利子に対しての減税ということで、これでは日本経済実態構造改善になっていないのですね。つまり、SIIの協議でも指摘をされてきましたけれども日本貯蓄過多で、投資消費過少アメリカはその逆で、つまり、ためなさ過ぎで使い過ぎ。このバランシングはお互いに悪いよと指摘されている。現に、これだけ不況でありながら貯蓄総量というのはふえているわけですね。  どうやってこれを有効にうまく取り崩すことにインセンティブをつけるかというのが大事なのでありまして、住宅を建てるのに何千万もおろして建てるという人はなかなかいないと思いますが、リフォームで、例えばせがれが嫁をもらったときに、いい機会だからシステムキッチンにそっくり台所はリフォームしようとか、あるいはシステムバスでおふろをそっくり改造しようとか、それに 自分貯蓄を、貯金を取り崩してやろうということに対するインセンティブをつけるということは、まさにISバランスをうまくバランシングさせることなのですね。そういうところにまで踏み込んでいかないと、なかなか景気もあるいは経済構造の変革の糸口もつかめないというふうに思うのでありますが、その点に関してはいかがお考えになりますか。
  6. 久保田真苗

    久保田国務大臣 まさに先生のおっしゃいますとおり、日本人貯蓄を取り崩しても購入するに値するものは何かというところを十分に考えて今回はやったつもりです。  もちろん規模等におきまして小粒という御批判もあるのですけれども、しかし、住宅需要というものはこれまでの、前の対策の中で行われました住宅金融公庫の融資等につきまして非常に需要が高く、一〇〇%を優に上回る需要がございます。それは、持ち家、分譲住宅の双方に高い需要がございまして、これこそ日本人貯蓄を取り崩してもやっていくに値するものだ、そういう需要だというふうな感じを受けているわけでございます。  もちろんリフォーム減税もかなり評判がよろしくて、これが早く知れ渡って皆さんが活発に利用なさり、リフォームもかなり金目でございますから、そういった面での大変的を射た経済対策であったというふうに私は考えておるところでございます。
  7. 甘利明

    甘利委員 このところ、自民党商工部会で各業種団体からのいろいろな御要望を伺っているのですけれども、ここへ来て、それこそ各業界が全く足並みをそろえて、大型所得減税要求が出てきておりまして、そのときに必ず、減税だけくれ、あとは考えるというのは困るよという質問を私がするのですが、これは消費税率のアップも織り込んで、含めて理解をするというところが随分ふえてきております。  ただ、御案内のとおり、増減税一緒にするとブレーキとアクセルを一緒に踏むようなものですから、余りやる意味はないわけですね。長官も御案内のとおり、景気は、釈迦に説法だと思いますけれども、雪だるまを転がすみたいに、回し始めるときに一番力がかかって、回り始めちゃって自分である程度自転力がつきますと、多少石ころがあっても乗り越えていけるわけですね。だから、つまり減税で動き出させる、そして自分で回っていくある程度の力がつくと、そうすると増税というブレーキがかかってもそれを乗り越えていけるだけの体力がもう既についているということになろうと思うのです。要はタイムラグの問題ですね。巷間伺うところによると、大蔵筋からは、年度内で頭としっぽだなんという話も聞こえできますけれども、とてもその程度じゃ難しいんじゃないかな。ブレーキが強くかかっちゃって、結局減税した意味がないんじゃないだろうか。政府税調は、きのうの新聞ですか、五兆円規模減税という、まだ正式に答申されているわけじゃないと思いますが、話が聞こえできます。  一般論としてで結構なんですが、減税先行して後追い増税の場合、タイムラグというのはどのくらい置けば相殺勘定にならないで進んでいくというふうにお考えでしょうか。
  8. 小林惇

    小林政府委員 ただいまのお尋ねでございますけれども、御案内のとおり、政府税調で現在、財源の確保の問題を含め、所得消費、資産の均衡のとれた税体系の構築についての検討が行われておる最中でございまして、それを待ちたいわけでございますけれども一般論として申せば、景気刺激という観点から見れば、このタイムラグが長ければ長いほど景気刺激効果はもちろんあるわけでございます。
  9. 甘利明

    甘利委員 それはそうでしょうけれども、長ければ長いほど、まあ要するにプラ・マイ・ゼロになる分岐点というか、それをちょっと伺いたかったのですが、それはそれでもうなかなか厳密な計算というのは出ないでしょうから、結構でございます。  私はジェントルマンでありますから、レディーをいじめるというのは余り趣味じゃありませんから、もうそろそろ通産大臣の方に移ろうかと思っております。  正直申し上げて、私は、野党だからそうでしょうけれども、現政権にはほとんど期待をしておりません。半年もするとなかなか大変な事態になるのじゃないかなと人ごとながら心配をしているわけでありまして、現政権に全然期待はしておりませんけれども、今の内閣熊谷通産大臣だけは私は評価をしておりまして、大臣就任以来の御発言をずっと読んで集めておる、この間大臣に怒られましたけれども。相当斬新な思い切った発言をされているし、私自身もそうだなと思うことが随分あります。的を射ている問題がある。平岩レポートについても熊谷大臣が真っ先に発言を始められましたし、いろいろ各方面でかなり思い切った発言をされておる。相当柔軟な頭脳と軽快なフットワークということでありまして、私の考え方と相当、よくぞ言ってくれたという部分も含めて共通点があります。だから、私の考え方との相違点、そういう心配はほとんど実は熊谷大臣に関してはありません。ありませんけれども、私が心配なのは、熊谷大臣とほかの大臣考え方がこんなに離れちゃってるんじゃないかな、一体全体大丈夫かねと随分心配していることがあります。  例えば、今の不況というのは複合不況云々、それからその後立ち直ろうと思ったら冷夏、長雨円高と来るわけですね。それに対して新政権が確固たる姿勢を示せないと、人気は高いけれども信用はしてないという内閣になっちゃうわけですね。だから、危ないから自己防衛に走っちゃうから、余計また落っこってくるわけですね。  私は自民党景気対策会議の席でも、これは何しているんだ、大蔵大臣はすぐ世界を駆け回って、一ドル百五円とか百三円とか、実態からもう著しく遊離しちゃっているようなこの為替レートの是正に走り回れ。大体日本市場で介入したってたかだか一千億ドル、ニューヨークが二千、ロンドンが三千、世界に連携をとって協調介入をしてもらうような作業にすぐにでもかからないと、今の日本経済実態からもう完全に遊離しちゃってるレートですよということを自民党景気対策のときに私も提言しました。自民党景気対策案にもちゃんと書いてあります。だけれども、その担当閣僚は、大蔵大臣は全然動いてくださらない。  ようやっとG7がありました。ここでは相当強烈にやってくれるかと思ったら、後でそのG7報告を聞いたら、これ以上の急激な変動は好ましくない、つまり現状は容認をするといって帰ってきちゃっているのですね。私はG7内容報告に来られた方に猛然と抗議をしたのです。これでいいなんて認めてきちゃったらえらいことじゃないか、これはもう大蔵大臣罷免要求が出てもいいぐらいの大変な失態だぞ。恐らくG7のこの報告を聞かれた熊谷大臣も苦虫をかみつぶしておられたかと思うのであります。  大臣のお考えと相違することは、その前にもありました。日本経常黒字の削減の数値目標について外務大臣は、考えてもいい、一つ考え方だというか、設定してもいい。数字はおっしゃいませんでしたね。アメリカはGDPの二%以内と言いまして、確かに数字は言いませんでしたけれども熊谷大臣就任記者会見で、その数値目標の設置なんというのはまさに管理貿易じゃないか、一体全体アメリカ日本社会主義国にするのかと文句を言ってやる、胸のすくような発言でありまして、私もそう思ったのですから。この辺の各所で現内閣のずれが生じているわけですね。  半導体の国内シェア数値目標というので日本はいまだに苦しめられているわけですね、二〇%というもので。私も商工政策をずっとやってきましたけれども、思い起こしますとこの問題が出てきちゃったというのはたしか田村通産大臣のときです。田村通産大臣から後で私は話を伺いました。この二〇%というのがひとり歩きしているけれども、一体これはどうなっているんですかと言ったら、いや、こんな話は本当は全然出なかったのだ。アメリカ交渉で最初にテーブルに着いたときに、アメリカ自分の希望として二割ぐらいやっ てくれたらいいなということが頭の中にあった。次の会合に出たら、あったからおれは言ったはずだ、いや、そんなもの聞いてない。次の会合になったら、言ったはずだから聞いたはずだ。そうしたら、二〇%というのがひとり歩きをどんどんしていっちゃって、それにもう完全に縛られちゃってるわけですよ。今さら二〇%などという話はなかったなんかもう言えませんよ。完全に自由貿易にたががかかっちゃっているわけなんですね。アメリカというのは大事な国ですけれども一つ厄介な国でありまして、何かあると数値目標を設定して、できなきゃ報復措置だ。西部劇を地でいっちゃう国でありますから、これはよほど気をつけないといけないのであります。  大臣所信の中に、「経常黒字十分意味のある縮小」、こうかなり意味のある言葉が書いてありますが、この「十分意味のある縮小」と、羽田外務大臣のおっしゃった数値目標とのかかわりというのはどういうことなんでしょうか。
  10. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員景気状況また日米交渉にかかわる認識についてお話をされたわけでありますけれども、まことに私ども共感を覚える、もともとここ二年来、私どもは同じ党にいて大変この状況心配をし、幾多のさまざまな努力をし、なおかつ追求をしてまいりますと、構造問題というものに今度それぞれがぷつかって、結局のところ我々はこの基本的な構造に手をつけていかなければならないという思いを共有したと私は思っておるわけであります。  そこで、質問の点でございますけれども、私は、羽田外務大臣日米合意との関係で、数値目標の設定を何かするというふうに意図したものではない、私は直接羽田外務大臣発言を聞いたわけでありませんので、ただ、その後、お話をしてそういう認識を持っておられないというふうに受けとめております。  そこで、私自身の考え方はいかん、こういうことでございますけれども、もともとこれは、四月の日米首脳会談、宮澤・クリントン会談から始まりまして、この七月に同じ首脳会談、共同声明という形で行われたフレームワーク協議の中で、我が国は、経常収支黒字の縮小に向けた内需主導型の経済成長の促進、それから市場アクセスの増大をやるんだ、アメリカは、財政赤字の削減及び競争力強化というそれぞれ中期的目標を追求する、こういうことを声明したわけでございます。その共同声明の中に「ハイリージクニフィカントディグリース」という言及がございまして、私の所信表明はそれを引用したものでございますけれども、この考え方は、数値目標をつくりまして、これはコントロールできるものならばいいのですけれども、経常収支黒字などというのは相手の経済もあるわけでありますから、コントロール不可能なような数字を挙げて、そして約束したかのような誤解を受けるというようなことは、これは不可能なんだということで、もともとそのフレームワーク協議においても、マクロの数値目標を挙げないというふうにアメリカ側は理解、了解をしておるというふうに私は考えております。  ただ、いずれにしても、さらばといって日本の経常収支黒字の存在というものがこのまま継続したならば、日本にとっても世界にとってもこれは耐えがたいことでありまして、これをいかに解消していくか、是正していくか、これが今後の私どもの基本の政策の姿勢でなければならないという意味で申し上げているところでございます。  いずれにいたしましても、委員幾つかの点について御指摘をいただいたわけでありますけれども、我々がこれらの政策を実現していくためには、私は、個々の細かな政策を逐次投入方式でやっていくということにはもう限界が来ている。先ほど来の委員の全体の御発言を聞きますと、そういう御認識を持っておられる。これは、まさに我々がこの数年来、当時の自民党の中においてあらゆる場で議論をし、それが到達した共通の認識であったのではないかなというふうに思います。したがいまして、私どもは、その点においてはお互いに将来に向かっての共通の認識を共有しておるというふうに考えておるわけでありまして、どうぞ、この内閣をそう半年そこらでつぶさないように、御支援をお願い申し上げる次第であります。
  11. 甘利明

    甘利委員 お断りしますけれども、別に大臣と打ち合わせしているわけではありませんからね。  これからの二、三カ月というのは、日本の通商政策にとってはまさに大変な正念場がやってくると私は思います。簡単に挙げただけでも、十二月にはウルグアイ・ラウンドの最終局面がやってくるわけでありますね。東京サミットでは新ラウンドの年内合意というのをうたっているわけでありますから、これはどうしてもまとめなくちゃならないんですね。今大臣お話のあった日米のフレームワーク協議も、一月ですか、何か中間取りまとめがあるわけですね。  今、御存じのとおりアメリカ政府アメリカは、日本の新内閣に対する期待がもう異常に高くなっているんです。それと、今現在アメリカがらやいのやいのクレームがそう来てないというのは、アメリカ自身が自分の問題を抱えていますね。NAFTAの批准の問題とか、保険制度ですか、これがクリントンの頭を悩ましているわけですから。これらにめどがつくと、日本に対する期待感が一挙に出てくるわけです。相当なことをやってくれる内閣だ、細川さんというのはすごいな、今までと全然違うよ、期待ばかり上がっていくわけですね。期待ばかり上がっていって、いざふたをあけて、例えばウルグアイ・ラウンドの問題の最終局面とか、フレームワーク協議の中間取りまとめというか報告というか、そのときに向こうがこのぐらいは出てくるというのが出てこないと、その期待値と出た結果との落差というものは物すごく大きくなるんですね。  この点に関しては、在アメリカ日本大使館というのは今戦々恐々ですよ。こんなに期待のボルテージが上がっちゃって、相当な結果が出なかったらどうなっちゃうのだろうか。これは、例えば今までの富澤内閣だと、最初からそんなに期待はしてなかった点もあって、そこそこやればまあまあやってくれたなと。今度は期待値だけがバブルで上がっていますから、はじけたらもうえらいことになるなと非常に心配をしています。その中で通産大臣、相当御苦労されると思いますが、頑張ってやっていただかなくてはならない。  そこで、先ほどから触れています日米フレームワーク協議なんですけれども、私は最初これを聞いたとき日米のクレームワーク協議かと思っちゃいまして、どうも最近、日米間の経済問題を処理するのに二国間協議の比重が相当重くなってきていますね。アメリカというのは二国間協議でみんな決着させようとする方にかなりシフトしていますから、そういうアメリカ側のペースにちょっと日本がはまってきちゃったなというように思われるんですね。  御案内のとおり、懸案事項を解決していく場というのは、ガットのラウンドの場というのがあるわけです。それでこじれた場合にはパネル裁定、パネル協議というのがありますよね。もちろん、ガット・ウルグアイ・ラウンドがあるから二国間協議が必要ないとは私は決して思いません。思いませんけれども、二国間協議で交渉をしていくのは結構なんですけれども、そっちに随分引きずり込まれちゃっているとガットのラウンドの重みというのはうんと薄くなっていくんではないかな。ガット・パネル裁定というようなことをしっかりと、二国間協議がこじれた場合はそっちに持っていくという考え方がきちっと定着をしていかないと、いわゆるアメリカの一万主義、これに対する抑止力が確保されなくなってくる。それはまさに、すなわちガットの有名無実化というのになってしまうわけですね。日本というのは自由貿易体制の恩恵を世界最大というくらい受けているわけでありますから、ガットが無力化していくというのは最大の心配をしなきゃならないわけなんですね。だから、二国間の交渉とガットやラウンドのこの使い分けをちゃんと戦略を立ててやっていかないと、全部向こうのペースに引きずり込まれる。二国間で制裁方式でやられてしまって、片やガット あるいは新ラウンド、これがだんだん有名無実化していく、これは大変な日本の危機だと思うのですが、その辺の使い分けの戦略をしっかり立てていらっしゃるのか、伺いたい。
  12. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 通商問題についての二国間の交渉というものが問題点をはらんでいるということは私も委員と同じ考え方でございます。  また私自身も、実は先般東南アジアのいわゆるASEANの経済閣僚との定期協議のために参ったわけでありますが、すべての方々が言われるのは、この日米の間での交渉が我々の意向と反して何か事柄が決められていくんじゃないのかという疑問を持たれる。また、私のところにヨーロッパその他の閣僚が参りますと、我々を外して何かしておるのではないかというふうな疑問を持たれる。これを考えますと、日米の間だけで物事を決めているような印象を与えているのだなと私も感じました。したがいまして、おっしゃるとおり、ガットを初めとする多角的な交渉の場において事柄を決めていくというのが大事だろうというふうには思うわけであります。  ただ、日米のフレームワーク協議に関して言いますと、これは経緯的には、先ほど申し上げましたように、現実に日米の間に貿易の大変なギャップがあるということ、そして四月以来の日米の首脳会談を経て共同声明に至る問のさまざまな話し合いが前政権下においてございまして、そしてフレームワーク協議をするということが決められたのでございまして、私どもはそれを引き継ぎまして、今委員が御指摘のようなことを念頭に置きながら、よりよい交渉の終結に向けて努力をしていきたいと考えておるところでございます。
  13. 甘利明

    甘利委員 ぜひそうしていただきたいと思います。  ガットのこのラウンドも、ケネディ・ラウンド、東京ラウンド、そしてウルグアイ・ラウンドと、足らざるところを補完していくといいますか、最初は、この物の貿易に関してのいろんな懸案事項の処理、それからサービス貿易、そして知的所有権と、その相互問題にみんな対応できるようにすそ野を広げてきたわけです。しかし、前から指摘されているように、ガット自身が、事務局は置いてあるけれども、言ってみれば正式な国際機関としての形態をちゃんとは整えていないという問題が一つあります。それから、アンチダンピングの乱用問題に対しても、まあ何というか、抑止力が足らない、完全な機能発揮ができないとか、いろんな問題が指摘されているわけですね。少し前から話が出ているのですけれども、認知をされた国際機関、ちゃんと機能をすべてそろえた国際機関としての多国間の貿易機構、MTOというやつですね、これをつくった方がいいという話が出ていますね。日本はまさにこの問題は率先して話を進めるべきだと私は前から思っております。現状かどんな状態で推移して、そして大臣の御決意というか、お考えを伺いたい。
  14. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 先ほどの御質問でも申し上げたところでありますが、国際的な通商問題については、ガット・ルールに沿って多国間協議の場で適切に解決していくのが基本的な方針ということでございますが、こうした方針の一環として、現在交渉中のウルグアイ・ラウンドにおいては、現行のガットの機能を抜本的に拡大強化した多角的貿易機構、いわゆるMTOですね、マルチラテラル・トレード・オーガニゼーションを設立することとされておりまして、我が国もこれを強力に支持しているところであります。私、本日サザーランド事務局長にお目にかかる予定になっておりますが、このことを、我々も従来の方針と変わらない、MTOを支持するということをお伝えしたいと考えておるところであります。
  15. 甘利明

    甘利委員 サザーランド事務局長といいますと、日本に着いた早々、米が解決しないとウルグアイ・ラウンドはまとまらないなんと言われて、これは弱ったなと今思っているところなんですけれども、この問題については答弁はなかなか難しいと思いますので、これについて私はお聞きをいたしません。  続いて、規制緩和に関して御質問をさせていただきたいと思うのです。  今や規制緩和というのは、細川内閣言ってみればトレードマークといいますか、キャッチフレーズにさえなっているわけですね。しかし、私も今、規制緩和の各項目、いろいろなことを点検をしているのですけれども、どんな規制も、それを設置した時点では何の必要性もなくてつくった規制というのはないんですね。必要性があるからできて、それがこうやってふえていっちゃった。何らかの理由があるからつくったということが、いろいろ調べてみるとわかってくるわけですね。特にそれは、時に、むしろ国民の側から、消費者の側からの要求でできた。つまり、この件についてはこうやってお上が責任を持つべきだという、そういう要求から出てきた結果としての規制というものが物すごくたくさんあるのですね。ところが、今の政権が誕生してからの風潮というか、規制緩和の何というか意味合いは、消費者、国民が受ける意味合いですよ、それは、規制緩和というのは、プラスメリットはあるけれどもマイナス要因というのは全然ないんだと国民の側は受け取っている節が多い。また、そういうふうにマスコミも宣伝を意識的にしているような節があるわけですね。  タクシーに乗りますとタクシーの運転手さんが、いやあ、細川さんいいですね、規制緩和をどんどんやってもらいたいですね、もう大歓迎ですよ、きっといい社会ができるでしょう。そうだろうね、規制緩和をやるとタクシー料金なんというのは自由化になるから競争になって、あなたのところの会社は競争で負けて失業するかもしれないけれども、まあしょうがないね。そうすると、えっ、規制緩和というのはそんなことなんですか、そんなこと困りますよという話が出ているのですね。事業者であると同時に、それは生活者であり消費者の面も持っているわけでありますから、規制緩和という面が正確に伝わってない部分があるわけですね。規制緩和と自己責任原則。その自己責任原則という後段の方は全く理解をされていない節があるわけですね。自己責任原則というのはどう表現するのか、なかなか難しいでしょうけれども、おのずと企業消費者の側にもそれぞれの守備範囲があるんだよと、つまり自己の守備範囲の責任はちゃんと負うんですよということなんだと思いますけれども、この点が語られてないですね。置いてきぼりにされているわけであります。  そこで、細川内閣における規制緩和のメルクマールというか、何を基準に緩めるか、むしろ強化をしなくちゃならないところもあると思いますが、何を基準に強化するか。これは何が基準になるのでしょうか。
  16. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 先般、細川内閣におきまして、一つ政治改革、いま一つ景気対策、これを緊急の、最大の優先事項として決断をし、緊急対策を講じたわけでございます。このことは経済企画庁長官も御説明したとおりでありますが。その際に、中長期的な観点に立って、今回の施策はそのファーストステップ、第一歩としてやりますということで、規制緩和円高差益還元等も含めた対策が講じられたわけですが、まさにファーストステップでありまして、いわば九十四項目の規制緩和が羅列的に並べられたわけであります。  さらば、規制緩和は今後どういう方向へ向かって進むのだというのが御質問の趣旨がと思いますが、御指摘のように、この規制緩和というものを最後とことん詰めてまいりますと、どういう社会をつくるということのイメージに帰着するだろうと思うのであります。私は、結局は自律と強制という考え方が成り立つ。ところが、この自律の部分というのが、我々の社会はどちらかといいますともたれ合いの社会になっている。これは文明論をぷつつもりはありませんけれども、そういう部分で、吹っ切れない部分があるということは、それは御指摘のとおりだろうと思います。  さまざまな規制というものがそれなりの基盤の上に成り立っているわけでありまして、規制といいましても、その理由を見ますと、消費者保護であり、投資家保護であり、安全性の保護であると いった理由になっているのですが、にもかかわらず、それが結果として実は肥大化いたしまして、その自律も強制もなくなるような実態になっているという姿も現実に認められているところでありまして、このことをやはり根っこから洗い返していくということが大事だろうと思うのであります。しかし、この規制は御存じのように一万件を超えておりますし、語られざる規制まで含めれば、一片の通達まで含めれば、実に多数の規制の山だというふうに私は思うのであります。  そういうものを整理し、それに対して一定の方向をつけていく、それはどういう社会をつくるのだ、どういう経済社会をつくっていくのだというイメージの展開も含めてやろうとしているのが私は平岩研究会の意味合いだろうというふうに考えておりまして、細川内閣、さまざまな問題に今ぷつかっているわけでありますけれども、この細川内閣が今後進めていくだろう、特に経済改革の路線をしくという意味で、今の御質問に答えるような改革案が出てくるのを私は大いに期待をいたしているところであります。
  17. 甘利明

    甘利委員 今のお話は、非常にいいお話だと思いますが、まず、細川総理に最初にレクチャーをしていただくのが一番いいかなというふうに思います。  この間、大臣とテレビで対談をさせていただいたときも、私も規制緩和に非常に興味があって、特に経済にかかわる規制については、一つの仕事を進めていく上でひっかかっている問題を洗い出すといいという具体的な例をお話ししましたし、大臣も通産省に対しては、具体的なプロジェクト、進んでいる大きなプロジェクト、それについて具体的な、ひっかかっている規制を洗えという御指示をなさったそうでありまして、こういう具体的な仕事が進んでいる中での規制の洗い出しの方をやっていけば、特に経済的規制に関しては非常に現実味があるし、効果があるし、検証しやすいということだと思います。  先般、自民党景気対策を取りまとめたときに、私がこのことを党でも提言をしまして、つまり、自分の所管しているところの役所の仕事を進めていく上でどうしても邪魔になっている他省庁の規制、目の上のたんこぶ、これがあるからこの仕事が進みやしないよ、そういうのをどんどん洗い出したらいいじゃないか、それを各省庁ごとにやってみたらどうだ、商工部会であれば通産以外の規制というものを洗い出しやすいだろうし、建設部会であれば建設省以外の規制を洗い出す、お互いにそれをやったらどうだということで提言をしまして、それが党に採用されたわけでありまして、私はこれを称して相互告発方式というふうに名づけましたけれども、これは大臣、どう思われますか。
  18. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 卓抜したアイデアだと思います。  実は我々も、この緊急経済対策を検討している際に、それぞれの閣僚が他省のことに大分お互いに口出し合いをした。そのうちに役所が、江戸のかたきは長崎でというので、あちこち足を引っ張るということで、みんな痛い目に遭っているのだろうと思うのですが、しかしながら、私は一個の政治家として、私先ほどプロジェクトをやってみると言ったら、いや事務的に全部うまくいっている、こう言うのですね。ところが、そんなものを出したら、あなたひどいことになりまっせと、大阪通産局へ行くと、プロジェクトをやっている人たちに聞くと、そんなもの出してみる、後で何をされるかわからぬ、こういう議論が出てくるのだ。私は、それがまさに規制社会の負の遺産だろうというふうに思います。  それこそ改革をしていかなければならないところでありますが、当面のやり方として、私は委員の御指摘のようなやり方というのは、もう卓抜したアイデアだと思いますし、特に個々の政治家が庶民、大衆の心のひだに入って、抱えている問題をさらに集約して政策課題に仕上げていくということがこの分野ほど求められているものはないというふうに思うわけであります。
  19. 甘利明

    甘利委員 時間が大分押してきちゃったので簡単に伺いますが、これは事務当局で結構ですが、PL法、製造物責任法について今どんな進捗状況か、それだけちょっと教えてください。
  20. 川田洋輝

    ○川田政府委員 製品事故から消費者を守るということは大変重要な課題でございます。当省としては製品事故について、消費者利益を実質的に保護するためには製品事故の未然防止、それから再発防止、迅速かつ確実な被害救済から成る総合的な安全対策を講ずることが必要と考えておりまして、現在産業構造審議会で幅広くその関係の論議を行っていただいているところでございます。その一環として、製造物責任制度についても検討を行っていただいているところでございます。  この産業構造審議会では、九月末から取りまとめに向けた議論を開始していただいておりまして、私どもとしては現時点ではまだ取りまとめを行っておりませんけれども、引き続き産業構造審議会で精力的な審議を進めていただいて、その結果を踏まえて適切に対処していきたいというように思っておるところでございます。
  21. 甘利明

    甘利委員 PL法については、自民党でも委員会をつくってさんざん議論をしまして、これはよっぽど慎重に検討しないと、いろいろな副作用を持っている創業ですから、その辺は、安易に立法化をすると、後でむしろ消費者保護と言われながら消費者自身が利益を享受することができない社会をつくりかねない、こういう例はたくさんあります。  アメリカというのは、弁護士の数とかあるいは陪審員制度とか、成功報酬制みたいなひどい司法の枠組みがあって、これとPLが結びついてどうにもならない社会になっているのでしょうけれども、そういう弁護士や裁判制度の問題を外しても、PL法というのはよっぽど慎重に吟味をしてつくらないと、これは相当ひとり歩きをする法律ですから、その辺は、きょうは時間がありませんからまた別の質問者から話は出ると思いますが、慎重にやっていただきたいと思います。  時間がもうありませんが、一点だけ。エネルギー政策、これから大変になります。社会経済国民会議で私も講演をしろということでしゃべりましたけれども先行き見通しは、間違いなくエネルギーは隔迫をしてまいります。あわせて環境問題が出てきておりますから、この環境負荷の高いエネルギーというのは当然これ以上推進ができなくなってくる。そうすると、環境負荷が一番低いエネルギーということになると原子力。それから、単位当たりのパワーが大きいということになるとどうしても原子力ということになります。経企庁は、電調審の事務方を持っていらっしゃいますけれども、その責任者経企庁長官、原発の推進についてどうお考えになりますか。
  22. 久保田真苗

    久保田国務大臣 経企庁といたしまして、当然エネルギーの安定的供給それから環境への負荷、そして地域住民の意見、そうしたもろもろのものを踏まえながら日本のエネルギーの安定供給を図っていくという立場に立つことは当然でございます。恐らく、今回成立いたしました連立政権におきましても、そうしたエネルギーにつきましての合意事項というものがございまして、私もそれを誠心誠意守っていくつもりでございます。
  23. 甘利明

    甘利委員 つまり原発推進は賛成であるというふうに理解してよろしいですね。
  24. 久保田真苗

    久保田国務大臣 原発が我が国エネルギーの三割を占めている、そして今後、環境問題それから安定的供給、またエネルギーの十分な供給というものを考える中で原発の問題ももちろん含まれますし、また、新しいさまざまなエネルギーを二十一世紀に向かって研究開発していく、そのことは当然であろうと思っております。
  25. 甘利明

    甘利委員 大臣をやめられた後も同じ気持ちでいらっしゃることを期待しております。  以上です。
  26. 中井洽

    中井委員長 次に、中川秀直君。
  27. 中川秀直

    中川(秀)委員 中川秀直であります。大臣所信について、幾つかの重要な点につきお尋ねをさせていただきます。  ただいまの甘利委員の数点にわたります質問と も多少重複するところがあると思いますが、私は私なりの角度でお尋ねを申し上げますので、簡潔にお答えを賜りたいと存じます。  まず景気の見通し、これについてお尋ねをいたします。  現状についてはもうここでお話ししても始まりませんので、ともかく月例経済報告でも「回復に向けた動きに足踏みが続いており、総じて低迷」、こういうことで経企庁も出しておるわけですが、はっきり言って底ばいから底割れになるおそれが出てきたのではないか、こう思います。輸出の方も円高によりまして円の手取りが大変減少いたしているわけでありますし、設備投資個人消費も上向く気配が見られません。雇用調整やあるいは収益の悪化等が広がりまして、いわゆる消費マインド企業、経営者のマインドも一段と弱気になっておるわけでございます。はっきり言って、期待されたことし下期の景気回復はもう遠のいたんじゃないか、こう思います。このままだと来年の春に持ち越すかどうかも微妙である、こんな感じでございます。  私の郷里の話ですが、もう四十代で肩たたきなんというところも始まっております。ある新聞に載ったところですが、宴会があるから行ったら実は自分の送別会で、その場でやめてくれと言われた。まことに大変、どういう心境になるだろうと思われるようなことも現実には起きているわけでございます。  いろいろな民間経済研究機関、よく言われる例の七機関ですが、その実質成長率の予測値、この九月から十月にかけて相次ぎ下方修正されていますが、はっきり言いまして、七機関平均でこの六、七月に公表したのは平均一・九%の成長率ということでしたが、今回は〇・三%と一・六%も下がっておるわけですね。それからまた、この民間研究機関ですが、企業の、全産業の経常利益見通しも前年度比一七・二%というところから二一・九%減というところまで、約二割ぐらいの減少を予測しているところが大変多いわけでございます。  いろいろそういう状況の中で今後の見通し、明るい材料がいよいよない、感じとしては、来年も上半期もだめかなという感じが強まっておりますし、それから世界不況もまだまだ続く、そういう感じでもあります。正直、この一、二年はもう無理なんではないかという見方さえ強まってきつつあるのではないかと私は認識しておりますが、現状のことはどうでもいいです。見通しについて、一言両大臣の見解を伺います。
  28. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 それでは、経済企画庁長官に先立ちまして私の考え方を申し上げます。  委員御指摘のとおり、経済状況がまことに厳しいというのは全く私も同じ認識を持っております。さまざまないおゆる経済の項目を見ましても、いずれも厳しい状況、特に民間の経済は厳しい状況にあるものと思っておるわけであります。したがいまして、我々は、これを注視しつつ、的確な対策を講じていかなければならないと考えております。
  29. 久保田真苗

    久保田国務大臣 厳しい状況であるということは全くそのとおりだと思っております。しかし、個人消費、設備投資というものが冷え切っておるわけでございますけれども、やはりこれを放置するわけにはまいりません。既に前政権のころから経済対策というものを四次にわたってやってこられまして、私どももそれを引き継いで懸命にその早期の実現に努めて、その限りにおいては成功していると思っております。  また、新内閣で立てました緊急経済対策におきましては、特に企業家それから消費者、そういった国民の皆さんの不透明感、閉塞感をここで打ち破りたいということで、非常にめり張りをつけて、生活関連ということの公共投資あるいは住宅、そしてそれが絡めてくるもろもろの耐久消費財、こういったものを期待しておりますけれども、それにつきましては非常に強い需要がありまして、その限りにおいて私どもは政策は当たっているのではないかという感じを持っておりまして、今後もその分野で健闘を願っているところでございます。  もちろん、今後は、本予算あるいは平岩委員会、税調、こういったものの精力的な御審議と相まって、底割れなどしては大変なことでございますから、十分に注意深く日々見守り、誤りなきを期したいと思っております。
  30. 中川秀直

    中川(秀)委員 まだ対策まで聞いてないんですが、要するに見通しとして来年上半期までだめなのか、あるいはもう一、二年だめだよという見方もある、それについての大臣の見解を伺ったのですが、厳しいというだけで、その見通しについてはお答えがない、こう理解します。  今、両大臣が、特に久保田長官政府対策ということについて言われたんですが、過去数次にわたって景気対策をやってまいりました。そのたびに政府は、そのGNPに与える影響あるいはGDPに与える影響は、こうこうの数字だ、成長率引き上げ効果というのは何%ある、大体そういう発表を自民党内閣のときからしていたわけです。それを足せば相当の押し上げになっているはずなんですが、実際そうなっていない、どこ行ったんだろうかという感じさえする。  今公共事業のことを言われましたが、昨年の十兆数千億の景気対策、それからことしの四月の十三兆の景気対策、実際、公共事業等々をどの程度実施されておるかお調べになったことがあるでしょうか。  地方自治体のソフトといいましょうか、エンジニアリング、設計管理から何から全部行政がやるわけですが、本予算もあるし、この半年の間に大きい景気対策を二回やっておる。そして今度のまた新政権景気対策という中で、実際はそういうソフトの能力が追いついていなくて、またゼネコン疑惑等々もございまして、実際はほとんど、なかなか実施に移っていない、そういう部分が相当あるんじゃないか。特に、この春の分とこれからの今度の景気対策、そういう感じが非常にするのですよ。個人の意見ですが、民間のエンジニアリング、ソフトを大いに使いなさい、委託もふやしなさい、そうでなければ、期待値ばかり高くて実績値が全然上がらないから、証券市場なんか敏感なもので、こんな程度ではだめだな、こういう相場にいつもなっておるわけですよね。そういう意味で、そういうこともきちっとしなければいけない。これはお答えは要りません。  ただ、そういう中で、政治の主導というものがちゃんと景気対策でもとられたのだろうか。めり張りがあると今長官おっしゃいましたけれども、はっきり言いまして、対策は小出しにしない、こう細川総理は言われたのですが、今回の緊急対策というのは、結局、連立各会派と大蔵省を中心とする霞が関の微妙なバランスの上で極めて小さくまとめられたんじゃないかな、こんな感じが私はするのです。後ほど触れますが、規制緩和についてもいろいろやはり不満が残るわけでございます。いずれにしても、本当に悪循環に陥らないように思い切った対策を立て、そして実態面を重視してきちんとやってもらいたい、これが私の両大臣に対する注文でございます。  熊谷大臣、長くからの友人ですから、激励の意味で私はいろいろ申し上げたいと思うのですが、大臣は、大臣就任後、シーリングについても、もう本当にこんなことじゃだめだ、官業の先見性や創造力もなくしておる、こんなことではいろいろ激動の中で新政策は出せない、こういうことを言っておるわけですね。それは私は同感です。  しかし、この平成六年度の概算要求内閣になってすぐ決まったわけですから無理ないところもございますけれども、それでも、政治は生き物ですから、そういうことが決まったから、四日目で決まっちゃったからしょうがないと言わないのが新内閣のはずだったのでしょう。そのためにおやりになったのでしょう。だったら、このシーリング方式だって、あなた、もっと思い切ったことをもっと具体的に言わなきゃ。ただかっこいいことだけ言って記者会見するのが大臣ではないと思うし、もっとあなたの行動力やそういったリーダーシップに私は期待したいと思うのです。  今の緊急対策についても同じような感じでございまして、はっきり言って、このシーリングについても、全体では平均三・八%増ぐらいにとどまっておるわけですね。さして財政出動はしませんよということを宣言しているようなもので、加えて細川首相の記者会見も、四月の経済対策の効果を見守りたいとか、簡単に所得減税考える環境にないとか、そういった御発言が非常に消極的に受け取られて、むしろこういった内需の拡大策や黒字縮小策の否定と理解されて、市場関係者でも受けとめられ、また海外からも受けとめられているから、それがまた一層の円高を引き起こしているということは否めない事実だろう。断定する意味で言っているのじゃなくて、どう考えたって、私も元経済記者ですが、客観的に否めない事実です。  そこら辺で、あなたの言われているいろいろな御発言も踏まえて、なぜもっと改めるように御努力をなさらないのか。ひとつ決意を聞かせてもらいたいと思います。
  31. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 若干おっちょこちょいなところがありますから、おだてられるとすぐ妙な発言をしますので、気をつけてお答えをするわけであります。  ただ、シーリングの問題につきましては、単にタイミングの問題だけではなくて、もう委員案内のとおり、私先ほども甘利委員にお答えするとき申し上げたのですが、私自身も自民党の中にいて、これはこの自民党の中で一緒に努力した方々と同じ認識を共有していると思っておりますけれども、幾たびかシーリングの問題を含めて、財政支出の配分構造の問題については、政治家としてこれを何とかしようということで努力した経験もお互いに共有しているわけであります。  ところが、いかにこれが難しいか。その根っこをたどってまいりますと、たどり着いたのは、政治そのものの改革をやらないとだめなんだ、それほど強い、ある意味では厚い、強いというより厚い壁がある、これを乗り越えていくということがこの問題への最善のアプローチの方法だというのが私自身のたどり着いた結論でございました。  細川内閣が登場いたしまして、成立いたしまして、もう委員に申し上げるまでもありませんが、細川総理としては、まずこの政治の改革を最優先順位に掲げたわけでございます。そして、緊急の経済対策もまたあわせて掲げたわけでございまして、その中でのシーリングの問題でございましたので、私どもは、百八十度前方展開すると、これはなかなか難しいな、問題の優先順位をつけて、最重要課題をまず片づけていくということが、これだけでも委員案内のとおりの今大変な状況になっておるわけでありまして、私はそれを乗り越えれば、今の委員の御指摘にこたえる、細川内閣としての対応も道が開けてくると確信いたしております。
  32. 中川秀直

    中川(秀)委員 お気持ちはよくわかりますが、現実はなかなか待ってくれないほど事態は深刻です。私も、書生論を言うつもりはございません。  しかし、それにしても、財政当局主導ではないことをやらないと大変なことになる、この認識だけはもっと強く持っていただかないと、国民期待を裏切ることになると思いますよ。はっきり言いまして、政治改革が実現して、ということは、選挙もやって、ということになります。まだ相当時間がかかるわけですね。それを待っていたのでは、さっき冒頭に聞いた景気経済の見通しという点からいったって間に合いませんよ。その政治責任はどうおとりになるということになりますよ。ですから、もっとやはりそこは、できることはやるということ、それを持たないといけないんじゃないか、私は強くそう思います。これは、むしろ一方的なお願いでもあるわけで、よほど決意をかたく持っていただきたい、こう思っているわけです。  さっき、経済対策、緊急対策を含めた数次の景気対策について、現実、実施状況も含めて、実態に即してやらないとだめですよ、地方自治体のエンジニアリングまで考えてやらなければいけませんよということも申しましたが、それは十分念頭に置いて経企庁なんか調べるべきではないかと思いますよ、私は。そこもお願いを申し上げておきます。  それから、円高についても、細川内閣の対応にも、第三者的な傍観姿勢といいましょうか、そういうものにも大きな原因があった、こう思いますが、そこもやはり、お答えは要りません、責任を感じてやってもらいたいということを申し上げておきたいと存じます。  実は、雇用の問題でございますが、先ほどもちょっと、宴会に出たら自分の送別会だったという話をしましたが、本当に四十代の半ばで肩たたきが始まっておるのです。尋常な事態ではないのですよ。はっきり言いまして、私は、雇用対策に緊急に手を打つべきところは本当に真剣にやらなければいかぬ。もちろん、人材の流動化というものはこれからの日本経済のために必要です。だから、そういう意味では、転職時代といいましょうか、一つの会社に一生涯勤めるということが望ましいと言っているわけではございません。ございませんが、やはり失業者は出さないように、なるべく失業率下げていく、これが必要なことは言うまでもないわけであります。先ほど悪循環のお話をしましたが、雇用不安がさらに消費マインドを冷え込ませて、さらなる不況、まさに底割れ、さらなる深刻な大不況、こういうことになる可能性は、極めて現実的になってきているような感さえあるわけでございます。  労働省において、いろいろ、ことし九月に切れる雇用調整助成金の対象になる業種指定基準の緩和を延長しましたね。それからまた、来年の六月に期限が切れる支給条件の緩和も再来年の六月まで延長することを、どうやら方針を固めつつあるようですが、はっきり言いまして、これは失業がふえるから、もう失業給付が年に一兆円ぐらいに今なっておるわけですが、そっちの方に力を入れるということではなくて、失業をまず出さない、この調整給付金の方に力を入れる、そっちの方が緊急課題である。正直言って、減税よりも緊急課題だ、私はそんな感さえ持っておるのですが、どうですか。経企庁長官、御見解は。
  33. 久保田真苗

    久保田国務大臣 雇用問題は、最も大事な指標だと思っております。遅くあらわれできますけれども、雇用の安定確保、そして失業を防ぐ、このことが一番、この景気の問題を考える上でも最も重要なキーとなるポイントだと思い、労働省に加えまして、私どもも、さまざまな点から努力をしてまいる、それは必ずそうしたいと思っております。
  34. 中川秀直

    中川(秀)委員 次に移りますが、今回の不況の原因は、まさに消費不況と言われているように、消費、またそれに伴います設備投資の冷え込み、落ち込み、そういうものが大きな原因になっておるわけですが、この前の緊急対策では、その点でやはり不十分だと私は思います。そこで、やはり五兆円ぐらいの減税はすべきだ、こういう議論もよく理解をいたすわけでございます。  ただ、この税の問題について、私は、どうも政府税調にお任せという姿勢がやや強過ぎるのではないかな、こう思います。本来、政府税調というのは、いわゆる中期的な方向をまとめるための審議だったのですね、今行われているのは。それがいつの間にか、細川さんが、ともかく早急な実施を前提とした、そうした案をお願いしたい、自分の判断を示さずに、税調の審議結果を待つ、まあ政府全体がそう言い続けておるわけでありまして、しかも税調総会に慣例を破る形でお出になられました。そして、所得減税を含めて税制の抜本改革を審議してほしい、こういうごあいさつもなさったわけでございます。  しかし、いよいよ十六日に、総理訪米前に答申をなさるということですが、もう素案が出ていますね、新聞で全部。恐らくこの方向は間違いありませんね。簡単に言えば、五兆円の所得減税、そして税率等の刻みの変更、課税最低限の引き上げも多少やる、それから、時期を多少おくらせて、ここはややぽやかしておりますけれども、いわゆる消費税の税率を引き上げる、また、益税等の見直しもする、そういう方向ですね、素案は。この素案 について、新聞でお読みになっていると思いますが、両大臣の見解はどうですか。
  35. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 新聞で正直言ってちらりと拝見をいたしましたけれども、それが最終案だというふうには承知いたしておりません。     〔委員長退席、大畠委員長代理着席〕
  36. 中川秀直

    中川(秀)委員 最終案だったらどうですか。
  37. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員におしかりをいただきそうですけれども、総理が予算委員会でもお答えをしていたわけでありますが、現在政府税調で、さまざまな論点を踏まえて、さまざまな議論が進められているところでございます。それに予断を与えるような形で内閣発言をすることはいかがかなというふうに思うわけでございます。
  38. 久保田真苗

    久保田国務大臣 政府税調に早期に総理が諮問され、審議を早めているということでございまして、私もその新聞は拝見しましたけれども、何らそれが最終的なものだということになっておりませんし、最終的なものまでに曲折があることもあると思いますし、私といたしましては、経企庁の立場でございますから、今後の景気の動向とか物価とか内外価格差とか消費者の利益といったような企画庁の所掌でありますところの観点からこの税調の審議を見守っていくということでございまして、税調がバランスのとれた、そして公平な負担を原則とする、そのラインに沿って税制を考えていかれるということは当然のことだろうと思っております。
  39. 中川秀直

    中川(秀)委員 まあ野党のときのお立場と違うから、政府になると答弁はややこしいなと長官も思っていらっしゃるところもあろうと思いますが、それでは、残念ですが、それはそれ以上はお伺いしますまい。  が、しかし、私も、広島二区選出衆議院議員として、これから発言せねばならぬと思っておるのです。両大臣も、政治家ですから、やはり自分考えはこうだと、内閣の中でもこういう発言をしたいということぐらいは委員会で言っていただかなければ、これから国会の活性化というのはないのですよ。  私は、先日の政治改革特別委員会でも申しましたが、委員会の審議が終わるまでに党議決定はするな、本会議の採決をするまでに党議決定するなど。そういうことを国会が始まる前からお互いに決めているから国会審議が活性化しないのです。政府答弁だって同じであって、個人の意見が一切言えないような政府答弁ならいい、ここで審議したって意味がないですよ。そういう意味でやはり私は御発言をいただきたかった、こう思うのです。  いずれにしても、私自身の個人の意見を言わせていただきますが、私は正直言って、広島二区選出の衆議院議員として、現状、当分の間、消費税の引き上げには反対です。こんなことは、はっきり言いまして国民になかなか受け入れてもらえるほど楽な状況ではない。逆進性もかなりある。減税といいましても、かなり中所得層以上の減税になる可能性もある。高齢者はどうですか。しかも、四十代で肩たたきが始まっている。こんな状況で、仮に一年おくらすにしても九五年の春から消費税を上げますということで、それじゃ駆け込みで物を買おうか、そんな甘い状況では決してない、こう思います。  しかし、所得減税はしなければなりません。これは言い方はきついですが、やはり徹底的な行政経費の節減等々をし、そして何よりも内外価格差の解消、それによる生活水準の向上、そして物価の引き下げ、そういう状況をつくって生活水準が実質的に切り上がったときに初めてその議論を始められるのではないか、今はそのときではない、どう考えても私はそう思っているわけであります。これは実は自民党も大体そんな考え方で五兆円の所得減税は言いましたか、しかし、その財源については、消費税については積極的に同時セットでやろうなどということには反対の方向で政調会長も言っておられるわけです。野党自民党はそういう方向で今動いています。  さて、連立与党の中でも社会党、公明党等々は政策幹事会でもこの問題についてはかなり消極的な、消費税の引き上げについては反対のような御意向があるというふうに聞いておりますけれども、こういった一連の流れについて、政治家として、両大臣、いかがですか。
  40. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 本問題につきましてはさまざまな意見があるわけですが、委員の御意見が一つ考え方に沿った見識というふうには思います。  ただ、これに対しましてまた別の議論もございます。我々といたしましては、政府税調審議を見守りつつ、産業政策を所掌する官庁として重大な関心を払いながら結論を見守っておるところでございます。
  41. 久保田真苗

    久保田国務大臣 所得減税が望ましいということは恐らくだれも異議がないところだと思います。問題は、じゃ、財源をどうするかというところで御意見がいろいろと分かれるのでございまして、そのことが税調で審議されてい、また、総理もその所得減税を含めた諮問というような形をとられたのだと思います。  先生のおっしゃるように、経企庁の観点からいたしますと、確かに日本物価が割高である。内外価格差が、むらがありますけれども、著しくあるものもある。そういう状況の中で、私どもはやはり税制というものに関心を持たざるを得ないと思いますし、そのことが、何といいますか、公平な税負担との関係で整合的な政策になっていくということを願っているものでございます。     〔大畠委員長代理退席、委員長着席〕
  42. 中川秀直

    中川(秀)委員 久保田長官は平成元年六月九日の参議院で代表質問にお立ちになっておられますが、その中で、消費税について公約違反であると。私も、あの時点についてはそこの点を認めなければならぬところもあろうと存じます。  そして、第二点に、「前の売上税も今の消費税も女性抜きの内閣で決められたものでした。市民とは四けたも五けたもずれた与党男性議員の金銭感覚で決めたことですから、家計簿の痛みも女性や高齢者の怒りもわからないのが当然です。消費税が悪税であるのは、国民になじみがないからではなく、これが出産費から埋葬料まで、文字どおり揺りかごから墓場まで、毎日の水、食べ物、交通費まで、生活ののっぴきならないところ、生き死ににかかわるところに食い込んでくる冷酷な税だからです。」と、こういう御所信を政治家としておっしゃいましたね。そして、ともかくその同時期には社会党は、消費税をやめさせますという公約を参議院選挙においていたしておるわけですね。私は内閣におるときは内閣の方針に従います、あるいは基本政策は前政権の方針を踏襲します、そのお立場もわからないではないが、しかし、やはり政治家というものはみずから公約したことについては一〇〇%の努力をすべきものだと思います。  そういう観点で、この消費税のこれからの引き上げということについて、基本的な見解があろうと思うのですね。そこをお聞かせ願いたいと思います。
  43. 久保田真苗

    久保田国務大臣 私、前の平成元年の選挙の前に言ったことを思い出させていただいたのですけれども、私、確かにそのときにそういう趣旨で街頭宣伝もやったと思います。それは結局、生まれるにも死ぬにも税金がかかるという、非常におかしいというということを実感したからでございまして、私どもは街宣をしているときに、実際、お年寄りから手を合わせて拝まれたという経験もございます。私はそういう方たちのために、微力ではあるけれども頑張らなければと思ってやったことでございます。  今も私はその基本に対して、お年寄りとか、そして非常に低所得者の問題、こういうことを考えないという税制はあり得ないのだと思っておりまずし、それは当然考えられるだろうと思っております。そして、今私どもの八党が合意しました、バランスのとれた公平な税負担ということで合意をしているわけでございますし、私もその合意を承知の上で入閣したものでございますので、私はそういう意味で八党の合意というものを尊重しながら、しかし、片や経企庁の立場として、また、片やそうした国民のいろいろな所得層の問題として発 言すべき場は内閣の中でするということが私の筋であろうと思っておりますし、それは私は不十分ではあるかもしれないけれどもやってきたつもりでございます。今後もそのようにやりたいと思っております。
  44. 中川秀直

    中川(秀)委員 そうすると、内閣の中では政治家として初心を貫いてそういう御発言をなさっていくということですね。女性のお立場で家計簿の痛みというものを踏まえながら、この消費税の問題も、特に私は、前回、消費税を推進した方です。だが、先ほど基本的なスタンスを申し上げましたが、現状での引き上げというものについては大いに疑問だ、反対だ、こういう気持ちを持っておるわけですが、さっきも言いましたように、私も広島二区選出の衆議院議員として発言していこう、こう思っておるわけです。あなたもそういう気持ちで、この状況下で消費税の引き上げというものを新内閣として盛り込むということには、今の流れの中で内閣の中で御発言していく、こう理解していていいですか。
  45. 久保田真苗

    久保田国務大臣 内閣は、最終的には統一した方針を出すと思いますが、まだそれについて私どもは正確な知識を正直言いまして持っておらないところでございまして、私は、必要があればもちろん自分の職務の上からしても発言はしてまいるつもりでございます。
  46. 中川秀直

    中川(秀)委員 わかりました。  いずれにしても、事は政府税調も十一月の十六日に答申を出される、こういう方向ですし、細川総理はそれを最大限尊重すると言っておられるわけであります。わざわざ異例の政府税調総会に出てそうおっしゃっておられるわけですから、容易じゃありませんよ、これは。内閣の流れは承知していませんがなんて言っているのんきな状態ではありませんよ。そこをひとつ十分踏まえておいていただきたいと存じます。  時間が追ってきておるのですが、規制緩和について、先ほど甘利委員からもございましたが、私は本当に通産行政においてもこれは一番大きなテーマであろうと存じます。先ほど熊谷大臣がおっしゃったとおりです。実は、通産省の許認可等のあれが運輸省に次いで千九百十五件と、イメージとは違いまして二番目に多いわけですね、運輸省に次いで。先ほど総論的な規制緩和のイメージは伺ったわけですが、私は、徹底的な実施ということから考えると、これまたやはり政治主導でやるしかないのだろうと思います。はっきり言いまして、先ほどちょっと触れたのですが、この前出た規制緩和政府の六十項目というのを見ましても、各省庁の持ち寄りで幾ら項目数を積み上げてもなかなか大胆な緩和策というのは出てこないのじゃないか。継続案件の羅列も多少目につくものがございますし、いろいろ問題点もあると思うわけでございます。  最近、本屋さんへ行くと「日本の許認可制度のすべて」とか、こんな本が結構ベストセラーになっている。やはり国民は相当関心を持っているのですね。非常にわかりやすく書いたこんな本もございます。ああ、こんなものまで規制、されていたのかというようなものもたくさんあるわけですよね。確かに、先ほど審議の中でもありましたが、必要なものもあるし、そして緩和をすることによってまた新しい特例のための規制をしなければいけないなんというものも出てくる。だからふえるということも一部は私は理解をいたします。だがしかし、総じてすべてのマスコミが、小粒なリストである、経済界も国民も納得していない、特に輸入手続あるいは土地住宅の開発許可、こういった問題については非常に不十分だ、こういう論調が多いわけであります。  平岩研究会の答申も十一月の上旬に出るようですが、この取りまとめに当たっても、内政審議室でございますけれども、はっきり言って、民間委員から大変な不満が出でつくり直しを平岩会長が指示されたようですね。その中で、報道によりますと、やはり規制緩和推進の憲法となるような新法を制定する、それから、五年間で現在の規制を半減する、さらにはその推進状況を監視したり、あるいは規制緩和断行に何らかの強制力を持つ強力な実行機関、仮称公正行政委員会などと書いている新聞もございますが、そういうものを設ける。実施の規制の項目をしっかり挙げ、その実施の期限を明確にする行動計画をつくる、この四点が平岩さんの指示でもあるし、議論の中で出ておるようですが、これについて所感はどうですか。
  47. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 平岩委員会、平岩研究会の作業の状況について詳しく情報に接しているわけではありませんけれども、このごろは新聞の方が情報が早うございますから、大体そんなところで議論が進んでいるんだろうなというふうに私も思います。私自身、細かな情報に接して検討したわけではありませんから即断をしてはいけないとは思いますが、おおむねの方向、規制緩和について大胆な、今の四項目ですか、進めていくということは大変いいことだというふうに思います。  私ども通産省も、運輸省に次いでというのですが、今度の緊急経済対策規制緩和がその一環として行われますと、運輸省に抜かれましてとうとう規制の数が一番多い役所になってしまった、こういうことでございますけれども、実は規制緩和について真剣に我が省としても検討してみましたところ、あのときはたしか、まさに数週間で洗い出して決めなければならないタイミングだったわけですが、なかなか根が深くて、各省とも絡み合っている安全規制だの消費者保護だのというものと絡みが出てくる、エネルギーの基本問題にかかわってくる、あるいは助成措置を、つまり支援助成をする政策とかかわっているような、いわゆる規制緩和というよりは助成措置の一環を規制と勘定しているというようなものもあって、数合わせでいうとなかなかもうちょっと難しいな、先に検討しようということで、ちょっと項目数は少ないけれども、探掘りをしていこうということで緊急対策をまとめたということでありますが、今後、今委員の御指摘のような考え方、私どもも共感を覚えるわけでございまして、強い決意で陣頭指揮に当たって規制緩和に努めていきたいと思っております。ただ、私自身は、規制緩和、ディレギュレーションと同時に、実はディセントラリゼーションといいますか、規制そのものはあるけれども、少し地方に回すということによって相当事態を解決できるものもあるというふうに思います。  実は、ここ最近のことでありますが、私自身、火薬についての取締法というのがあるのですけれども、とにかくこれぐらいしか火薬がないのに一人の人間と膨大な土地を確保しなければならないという実態を聞かされまして、やはり何とかこれ、紙の上で火薬と書いて、それで規制書をつくっちゃうとこういうこっけいなことが起こるのかなということを感じました。  いずれにしましても、多々問題がございますので、繰り返しますけれども、陣頭指揮に当たって規制緩和の方向に向かって進みたい、こう思っております。
  48. 中川秀直

    中川(秀)委員 期待しますので、ぜひ頑張っていただきたいと存じます。  また、これは時間がないので御答弁は要らないのですが、そういう時代に対応したような役所のリストラというか、そういったものも検討すべきではないか。通産省も大きな機構改革をして二十年ぐらいたっているんじゃかいかと思いますよ。そういう意味では、それも積極的にお取り組みいただくべきではないかな、こう私は思います。それは答弁は要りません。  それから、ちょっと自動車不況のことについて若干のお尋ねを申し上げたいと存じます。  実は、これは本当に深刻な状態になってきておるわけですが、はっきり言いまして自動車、電機というのは我が国の加工貿易立国の中で主役を演じてきた産業であります。またこれにかわるリーダー役もいないわけですが、正直言いまして今後の見通しということからいいますと、何といいましても一ドル百二十円ぐらいがペイラインなんだと思うのですが、現実は一ドル百円ということで、これで大体産業界、自動車業界全体で一兆円くらい吹っ飛んでいるのじゃないか。一ドル一円円高 になると業界全体で年間五百億為替差損、こう言われておりますので、二十円の円高なら一兆円ということになるわけです。他方、国内の販売競争は非常に厳しくて、売るときには二十万円くらいの値引きを過酷に競争してやる。そういう中で一台二十万円ずつとして年間五百万台と計算すると、これが一兆円。約二兆円ぐらいのものが吹っ飛んでいるのではないか、こういう意見もあるわけでございます。  そういう中で、じゃこれからどうなるのかということなのですが、これもある一部の業界紙が書いていることですが、要するにこれから国内市場、こういうものを将来十年後を予測してみると、いろいろ理由はございますけれども、大体生産台数七百万台プラスマイナス百万台。不況局面では年産六百万台、大体九二年実績の半分になるのではないか。それから、そうなると完成車メーカー十一社体制は無傷でおれるのだろうか、こういう指摘も出ております。ルノーとボルボが来年合併をするという報道も流れていますが、ここが果たして再編あるいはそういったことになるのかならぬのか。さらにはまた輸出の方も、恐らくこのままでは現地生産の拡大、輸出の撤退ということで現在の五百万台が百万台もしくはそのちょっと上くらいまで下がってしまうのじゃないか、こういう見方もございます。そして海外生産がふえれば、当然加工組み立て、すそ野の広い協力企業、下請企業、こういうものが空洞化していって、空洞化の連鎖が日本の産業全体に大変大きな影響を与えてくるだろう。こういうことが簡単に言えば言えるわけで、もしこの空洞化がどんどん進んでまいりますと、これは通産省の試算のようなのですが、輸出が一〇%金額ベースで減ると業界全体で約四万人が余る、こういうことも言われているようです。そういう中で、自動車産業に対してどういうスタンス、対策をとるべきなのか。  私の意見を先に申しますと、何といいましてもやはり景気対策が大事ですし、それから自動車の消費税率の四・五%は三%の税率に戻すべきではないか、今こそそういうことをすべきではないかと思います。  それからまた、何と申しましても社会資本の整備、インフラの整備、交通安全の問題等々もあろうと思います。そして何よりも、先ほど冒頭に申しました、大きなそういう流れの中で生き残るためにありとあらゆる手だてを政治、行政の方も考えていかなきゃいけない、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  49. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 自動車産業の重要性、それから自動車産業の置かれた状況ということについての委員の御指摘は、私ども全く同じ認識を持っております。  そこで、今後どうするかということでございますが、やはり自動車産業に属するそれぞれの企業並びに自動車産業全体としての構造改善の努力というものが何よりも大事であろうというふうに思います。それに対しまして政府としてもあらゆる環境条件の整備を惜しまない、こういう考え方を持っておるわけであります。  それから、委員が的確に御指摘をされましたが、税制面についてもかねて懸案のことでございますので、私どもも同じ意見でございまして、このことに努力をしていきたいというふうに思っております。  また、インフラの整備もまさにそのとおりでありまして、のどまで出かかっているいろいろな思いがあるわけでありますけれども、冒頭の御質問にもお答えすることになるわけでありますが、我々としては、今後最大のタイミングをとらえながら的確なインフラ整備をしていきたいと思っておるところであります。  また、対外的にも、これから円高の問題、まあ委員御指摘のとおりで過大評価され過ぎているのではないかというふうに私も思いますけれども、現実にさまざまな諸条件が重なって現在の為替レートが決まっているということになりますと、やはり海外展開もこれは考えていかなければならない。そうすると残された下請産業はどうなるのかということにもなりますので、そうしたものもあわせ検討をしていきたいと思いますし、そういうことに備えるためにも、今般、中小企業の新分野進出を図る新しい法律を国会に提出させていただいた次第でございまして、いずれにいたしましても、特効薬はないと思います。さまざまな政策を組み合わせて、できるだけ早く委員御指摘のような方向へ向けて進めていきたいと思っておるところであります。
  50. 中川秀直

    中川(秀)委員 ぜひお願いを申し上げます。事はまさに暮らしを守るという問題にも直結している問題でございます。  ついでにちょっと伺うのですが、湾岸基金に繰り入れということで、これはちょっと質問通告してなくて申しわけないんだが、法人税率の一%かさ上げをやりましたですね。まだ続いているのですね。現在も続いておるのです。これはやはりさっきの雇用対策とも関連し、こうした産業の、リードしてきた産業ですよ、これがこういう状況であることも踏まえて、私は、平成六年度ですか、これはやめるべきだと思いますね。そうして、その分雇用対策に力を入れてもらうとか、新しいこういうリストラに力を入れてもらうとか、こういうことをすべきだと思いますが、個人的に感想どうですか。
  51. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員の御指摘は頭のど真ん中に置いて、これからの税制改正審議、それから政府としての決断ということになってまいりますが、そして今後の、これは当面は所得減税の問題に集中しておりますが、幅広く税制改正の議論が進むと思いますので、そのことを頭に置いて判断をしてまいりたいと思います。
  52. 中川秀直

    中川(秀)委員 湾岸基金のために一%かさ上げしたのですよ。それが今も続いているということを大蔵省言わないのですよ。大臣だって、ふっと今思われたでしょう。それが現実なんですよ。だから政治主導で税制も考えなきゃ。税というのは政治そのものなんです。そこをよく念頭に置いて、さっきの自動車の暫定税率の問題も含め、こういった湾岸基金なんてもう要らないじゃないですか。そんなものをそのまま続けておくというのは許されないことですよ。そういうものもひとつきちんとしてもらいたい。  通商問題、PL法等々について伺いたいことが山ほどあるのですが、まずPL法について、もう時間がないのですけれども、EC型のやわらかいものをやろうということが、元経企庁長官の高原さん、これが国民生活審議会でも主要な役割を果たしているのですね。そうですね。久保田長官のところへ行かれましたね。はっきり言って、EC型というのは開発危険の抗弁も認めていますね。問題は推定規定なんですが、そういうものもEC型のやおらかいものでやるべきではないか、こう高原さん言われたようですが、私も同感です。その点は同感。  ただ、ここで肝心なのは、内容のいかんを問わず大企業の場合は米欧にも製品を輸出しているので多少対応もしているところもあるのですね。ただ問題は、どしゃ降り不況に苦しむ中小企業にとってこれが大変だということですよ。最大の問題はそこですわ。それをどうするかということを考えなきゃいかぬということですね。この点について経企庁長官、どう思われていますか。
  53. 久保田真苗

    久保田国務大臣 私、消費者の例えば身体、生命にかかわることというような、そういうものを、被害を防止し、そして救済するというものでございますので、今の景気等中小企業への負荷がかかっているということは事実でございますけれども、だけれども、それだからといってそうした面の保護が怠られていいということにはならないのではないかと思います。  おっしゃるように、国生審で審議されております内容につきましては、まだそこの結論に至っておりませんで、おっしゃったような御意見が比較的多いのだというふうには聞いておりますけれども、またそれは各省庁がそれぞれ国生審に向けて御自分のところの案というものをこれから出しておいでになる、そういう段階でございますので、 その段階がまた一つの、国生番のさまざまに審議が深まるその時期だろうというふうに思っておりますし、私どもとしては、もう本当に当然去年からの長い御審議でございますので、今回はもう実りのある結果が得られるというふうに期待しているところなのでございます。
  54. 中川秀直

    中川(秀)委員 仮に制定する場合は、消費生活用製品安全法等関係法律との調整というか、当然そういうものも廃止せねばならぬことになってこようと思いますが、そういう点も起こり得るだろうと思いますし、それを廃止することによって新たな問題を引き起こさないようにもしなければならぬ。  それから、今中小企業のことを言いましたが、これは決して骨抜きにしようとか、そんなけちな考えで言っているわけではない。しかし、経済実態等も踏まえながらやっていかなければいかぬということですから、そういうお立場からの審議会の意見、委員の意見、これも十分受けとめて、誤りのないようにしていただきたいというお願いを申し上げておきます。  時間が参りました。時間も守らにゃいかぬので、実はおわびをしなければならないですが、原子力政策について、長官と和田政務次官にわざわざお越しいただいてお伺いしようと思った。時間がなくなりました。意地悪で質問しようとしたのじゃないんです。  ただ、今までの社会党の原子力政策に対する流れ、今回の九三年宣言ですか、この一連の議論の経過、これも全部私も調べてみました。そういう中で、今度政府のお立場に立って、我が国のエネルギー政策、環境問題、地球温暖化防止行動計画、そして少なくとも経済成長もしていかなきゃいかぬ。年率二%ぐらいの電力消費量はどうしても伸びていくわけですね。そういうものを踏まえながらやっていかなきゃいかぬ。この機会に、やはり十分現実的なそうした御検討、御判断もしていただいて、教条的な考え方でなくて、そして一層、社会党の九三年宣言も、私から見れば、失礼な言い方ですけれども、これではまだまだとても安心できないなという感じもいたしますが、ひとつそういう方向でこの機会に、両大臣というよりも両政治家に私は御検討いただきたい。しっかりとまた勉強していただきたい。そして、本当にともどもに我々責任を持って、こうしたエネルギー、環境、そして暮らし、こういうものを守っていきたい、こうお願いを申し上げて、お呼びをしながら御答弁をいただかなかったことにおわびをして、質問を終わります。ありがとうございました。
  55. 中井洽

    中井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  56. 中井洽

    中井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。逢沢一郎君。
  57. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 自由民主党の逢沢一郎でございます。  通産大臣の所信に対して、また経企庁長官の所信に対して、与えられた時間は一時間ということでございますが、質問をさせていただきたいと思います。  午前中、自由民主党の先輩、同僚の二人の議員からも景気の問題については特に指摘もあり、かつ両大臣との問のやりとりもあったわけでありますが、確かに今の景気経済状況というのは本当に厳しいな、私もそういう認識を持っているわけであります。  ちょっと私の地元の話で恐縮なんですけれども、私は岡山県であります。岡山県にはいわゆる瀬戸内の臨海工業地帯が倉敷市を中心に展開がされているわけでありますけれども、例えば川崎製鉄も本当にいっときに比べますと相当、いわゆる粗鋼生産量とでもいうのですか、製鉄所の火が消えたとまではいきませんけれども、一時、三年前、四年前、本当に景気がよかったときに比べますと大変その生産量も落ち込んでおります。  あるいは、私の住んでおります岡山市内にある最大の従業員を抱えた事業場は松下電器のビデオをつくっている工場なんですけれども、ここも本当にいっときの元気がない。とにかく人が余ってはいるのだけれどもすぐ配置転換というわけにもいかないし、そういう話をよく聞きますし、また三千人規模ぐらいのビデオの工場でありますから、その共営会社といいますか下請企業群も、大きいところになりますと従業員数が四百とか五百とかいうところが幾つもあるわけでありますけれども、今まではほとんど松下のビデオから仕事をもらっていた、ところがその量が激減するので何とかよそからも仕事をとってこなければいけない、まさにリストラをどう図ろうかといったような状況に遭遇をいたしておる、そういう状況であります。  あるいは、先ほど中川先生から自動車の問題が出ました。倉敷に三菱自動車がございますが、ここは幸い、いわゆる自動車メーカー、それぞれ厳しい、苦しい、そういう中にあっては実は比較的好調を現在まで維持をしてこられたようであります。しかし、これから先を展望するときに、さすがにこの三菱水島も、今まではまあ頑張ってきたけれども、これから先本当にどうかなといったような状況にございます。  そういう私の地元を代表するような事業場あるいは企業、そしてそれを支えてきた下請、共営企業群、本当に今厳しい状態に置かれているし、また、今は大変だけれども半年後、一年後確実によくなる、そういう展望に立てればまた打つ手もある、元気も出てくる、こういうことでありましょうけれども、なかなかそういう展望さえも開かれないというのが残念ながら今の現状ではないかなというふうに思います。  昨今の新聞を見ておりましても、例えばことしの年末のボーナスが、組合と会社の間で一応こういう取り決めをしていたのだけれども、そこまでの対応が事実上できない、下方修正だ、こういう話題も決して珍しくないようでありますし、また残業はもちろんほとんどないわけでありますから、いわゆる実質の手取りというものは大変少なくなっている。下請に出していたのをやはり内製化をしようということでありますから、下請も仕事が少なくなって大変、パートなんかはほとんど必要ない、こういう現象もあるようであります。  加えて、本当に雇用がどうなんだろうか。うちの主人、あの会社に定年退職まで勤めてくれているという人生設計を、今の日本のことでありますから大概の御家庭は持たれているわけでありますけれども、本当に定年退職までずっとあの会社に勤めることができるのだろうか、そういう不安も実は大変に広がっているように思います。新聞でざっと大どころ拾い出しただけでも、NTTが一万人でありますとか、あるいは日産が五千人、東芝が同じく五千人、先ほど触れました川鉄も三千二百人雇用調整。人減らしという言葉はちょっときつ過ぎるかもしれませんけれども、そういう対応をしなければやはり企業そのものが立ち行かない、そういう差し迫った現状にあるようであります。  午前中も話が出たわけでありますけれども日本の社会、日本経済というのは、完全雇用に一番近い、先進国の中でも働く意欲さえあれば仕事につくことができる、そういうお互いの努力の中で経済をあるいは社会をつくり上げてきたわけでありますけれども、ここに来て本当にいつまで二%台の失業率を保つことができるのだろうか。いわゆる企業内失業、そういう言葉を使うのが適当かどうかわかりませんけれども、それも企業としても限界に近い、窓際からもうほとんどベランダに追い出されて、ベランダにしがみついているのもほとんど限界に近い、そういう悲鳴のような声をよく企業の方から伺うわけであります。  そこで、当委員会としても、与野党の努力の中で、あるいは通産省、経企庁のリーダーシップによって、何としてもこの厳しい経済状況を打開をしていかなければいけない、景気をよくしていかなければならぬ、まずはそういう問題意識に立って議論を進めていきたいというふうに思うので す。  ちょっと思い起こしてみると、確かに去年からずっと厳しいわけでありますが、ことしになってから、三月、四月ぐらいから、それでもこれは何とか最悪は脱したようだな、一気にV字上がりというわけにはいかないけれどもどうやら底を打ったようだな、恐らく一年か二年たって振り返ったときに見れば、ひょっとしたら九二年の十二月あるいは九三年の一月ぐらいが景気の底ということに多分なるんだろうな、何となくお互いにそういう認識があったと思うのですね。ことしの五月、六月ぐらいには何となくそういう空気というものがあったというふうに思います。前の経企庁長官も、細かい日付は忘れましたけれども、事実上の底入れ宣言と受けとめることができる、そういう発言をなさったのもたしか五月の下旬か六月の初めではなかったかなというふうに記憶をいたしております。  そうこうしているうちに政局が急変、衆議院が解散ということになったわけでありますが、選挙が終わって七月の下旬、国会に戻ってきて気がついてみると、あれ、経企庁長官がおっしゃったこととどうも反対の方向に経済が動いているぞ、世の中が動いているぞ、そういうことに我々も改めてはたと気がついたようなことでございます。もちろん予想しなかったような冷夏、長雨、それは景気に対してもちろんプラスでなかったということは確かだろうと思うのですけれども、これだけの大きな日本経済が、もちろん冷夏、長雨もきつかったかもしれないけれども、それだけで四、五、六、上がってきたのがまたダウンしたのですよという説明だけではやはり国民も納得をしないでしょうし、ではあの責任ある経企庁長官発言は一体何だったんだということになろうかと思うのです。  経企庁長官、四、五、六、一気にではなくても少しずつよくなってきた、そして六月上旬に船田長官のああいう発言があったにもかかわらず、どうしてその後のトレンドがどうも国民や産業界の期待を裏切る方向にいってしまったのか、どのようにそこを認識、分析をなさっておられるのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  58. 久保田真苗

    久保田国務大臣 おっしゃいますように、確かに景気は依然厳しいですし、個人消費や設備投資は低迷を続けているという状況でございます。それに加えまして、やはりバブル経済の後遺症というものが長引いておりまして、そこから抜け出せない、今もまだ重いということが、企業家の気持ちには急激な円高とともにマインドに重しをかけている。あるいは消費者の方も、その当時にいろいろ買い込んだものの、その後雇用者の所得の伸び、あるいはボーナス、そういったものの伸びが薄く、加えて雇用調整というような現実も起こっているわけでございますから、そうした慎重さというものが非常に支配しているというふうに思うわけでございます。  それで、当然六月に、そうしたいわゆる底入れ宣言という言葉はどなたがつけられたのか、よく私はつまびらかにしておりませんけれども、おおむね底入れしたということは、経済はやはりその当時も総じて低迷しているものの、今後さらに悪くなるというわけではなくて、マクロ経済の基調的な方向としては回復に向けた動きが当時あらわれており、それを期待していく段階だということで、経済がそのまま、V字はおろか、ずっとこれが順調に回復していくというような表現ではなかったかと、私理解しております。  したがいまして、長引いていた景気調整がずっと続いている、それをさらに異常気象、円高というようなものが加速させた、そういうふうに思っておりまして、景気の現状としては、そこから早く抜け出すという努力を続けていきますし、特にこの不透明感といったようなものを払拭するための第一歩の一つの方向づけというものを九月に緊急経済対策として打ち出したと私は受けとめております。これを一生懸命、早期にやっていくということが私どもの役ではないかと思っております。
  59. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 そこで、九月に発表されました緊急経済対策のことについてお伺いをしたいと思うのですが、いただきました大臣所信の小冊子は二ページから三ページに当たる部分であろうかと思いますけれども、今の厳しい景気に対して即効性があるもの、緊急対策、そしてもう一つはいわゆる中長期的な課題への対応、構造的なものに対するアプローチ、その両面を書いておられるわけでありますが、あれから一カ月、発表されてから一カ月、その速効的な効果というものが一カ月という範囲を想定されておられるのかどうか、あるいは速効的といっても二カ月ないし三カ月かかるよというふうに認識しておられるのかどうか、そこをお伺いをしたいわけであります。  社会資本の整備や住宅あるいは輸入の促進、そういうことを具体的に幾つか並べておられると思うのですけれども、今回策定をされた緊急経済対策の中で、今本当に大変な状況でありますから、何か景気がよくなるきっかけをつかみたい、あるいはいい情報を、国民もあるいは産業界も経済界も、どこに立ち直りのきっかけを求めることができるのだろうか、そういう気持ちであるだけに、ここに「速効的」という言葉を使われているということは、どこに速効的な効果を求めているのか、あるいは一カ月たった段階でこういうところで速効的な効果があらわれている、あるいはまだ十分ではないけれどもあらわれる気配というものがここの部分にあるのだ、この分野なんだということを、この経済対策を策定され、発表されて一カ月たった今の時点で、国民にどのように説明をしていただけますでしょうか。
  60. 久保田真苗

    久保田国務大臣 まさに即効性と構造の改革にも資する、その両方をねらったわけでございまして、先へも延びがきくということを考えているわけでございます。  速効的という点からいいますと、円高差益還元についての手配は既に終わりました。もちろん公共料金は、十月から始まって十一月一日に電気、ガスと、後いろいろと続くわけでございます。これは、もちろん一番早い時期ではあるけれども、まだ完全にそこまで消化しておらないけれどもすぐにできるという、公共料金をまずねらいました。  それから、一般的な消費財につきましては、これは需給関係もありまして、既にかなり早く浸透してきている面があると思います。つまり、一般の円高差益還元といいますか輸入消費財の値下げというものは市場に見えるところでございまして、例えばガソリンの値段が下がっているとか、そうした可処分所得を増しあるいは企業の負担を軽くするということは既に浸透しつつあり、約一年かかって差益の七割が還元されたという過去の経験から見ますと、かなり時間のかかるものもあると思っておりますが、既に始まっていると思います。  また、規制緩和につきましては、地ビールが大変好調でございますとか、いろいろな規制の緩和がこれから下支えになっていくというふうに考えております。  また、六兆円の中の、住宅に非常に目玉を置いて、空前の七十万戸という融資を今年度は出すわけでございますけれども、これなどは応募が一〇〇%を優に上回るという状況で進んでおりまして、それに関連して耐久消費財などがからげて出てきている。耐久消費財につきましても、少し明るい兆しが見えてきていると私は聞いておるわけでございます。  ですから、政策の浸透が、前々からの累次のものも含めまして徐々に出てきており、そして緊急経済対策の中にありましたそうした公共投資などは、これから出てくるという順番であるか。したがいまして、その点に期待をし、また六年度の本予算にもつなぎたいものだと考えているところでございます。つまり、切れ目なしにやっていくということでございます。
  61. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 公共投資のことでありますが、ちょっと昨日事前に通告をしていなかったかもしれませんけれども、いわゆる公共事業を上半期七五%あるいはそれ以上発注をするということで今年度も 立ち上がったと思いますが、折からのゼネコンの不祥事、疑惑でどうもスムーズに発注ができていないのではないかといったようなことも時々耳にするわけであります。上半期といいますと、今日がもう十月二十二日ですか、あと一週間ばかりで上半期が終わるわけでありますけれども、公共事業の四分の三以上、七五%以上はきちんと発注がほぼできるという状況になっておりますでしょうか。
  62. 小林惇

    小林政府委員 お答え申し上げます。  先週の閣議の席でございましたか、大蔵大臣から御報告がございまして、上半期のうちの八月分までの数字で、国の事業につきまして六九%台の数字が御報告があったわけでございまして、九月末段階の数字は一月ほどたってから発表されると思いますけれども、七五%は間違いなく達成できる見込みでございます。
  63. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。  また、大臣所信の中に、いわゆる金利のことについてもお触れになっておるわけでありますけれども、先般公定歩合が〇・七五%引き下げられて、今一・七五という、過去の経験に照らしてみますと大変低い水準になりました。これに対して大臣は、「市中金利、貸出金利の低下も一層促進されるものと期待されます。」こういうふうにお述べになっておられるわけでありますが、町を歩いてみますと、どうも公定歩合、金利は下がったけれども、なかなか市中の金利はそうでもないな。たしか景気対策の中に、いわゆる金利の高いときに借りたお金を金利の低いものに借りかえる、そういうものも相当程度応援をしようといったようなものも入っていたというふうに記憶をいたしておりますが、例えば政府系金融機関、国民金融公庫でありますとかあるいは商工中金、公定歩合が下がったということで、実際にそれに相対応するような貸出金利の引き下げあるいはその他の貸し出し条件の緩和、要するに借りる側の立場に立った、そして今のこの景気状況を十二分にかんがみた金融の機動的な動きになっているかどうかということが大変気がかりであります。  また、私の記憶に間違いがあれば御指摘もいただきたいと思いますけれども、例えば住宅金融公庫の金利なんかは、いわゆる補正予算が通らないと金利が動かせない、たしかそういう部分も含まれていたというふうに記憶をいたしております。公定歩合は随分低くなった、しかし、実際に世の中に動いているお金の金利は案外そうでもないという部分が相当色濃く残っているという印象を持っているわけでありますが、その点、経企庁長官、いかがでしょうか。
  64. 小林惇

    小林政府委員 ただいまお尋ねの点でございますけれども政府関係中小企業金融機関の基準金利は、公定歩合に連動というよりは長期プライムレートに連動してございまして、九月二十一日の公定歩合引き下げ後に、長期プライムレートが十月一日以降四・五という水準に引き下げられましたのを受けて、そのレベルまで引き下げられておるところでございます。  それから、委員御指摘の住宅金融公庫の関係の基準金利につきましては、資金運用部の預託金利と連動しておりまして、これが一昨日、十月二十日に引き下げられまして、それまでの四・六から四二二に下がったということで、これを受けまして十月二十日分から引き下げが適用されるというふうに承知しております。
  65. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。こういう厳しい環境下だけに、ぜひ金融政策についても、どうぞひとつ経企庁長官とされまして十二分に目を光らせていただきたい、お願いを申し上げておきたいというふうに思います。  さて、細川新政権は、いわゆる政治に対するその基本姿勢、スタンスの中で、いわゆる生活者重視、生活者という言葉をよく使われるわけであります。確かに私も生活者でありますし、大臣も生活者であられるし、農業をなさっておられる方も、あるいは工場で働いておられる方も、ホワイトカラーの方も、皆さん生活者でございます。生活者というこの言葉、ちょっとこういう御質問をするのはある意味では恐縮かと思いますけれども大臣御自身は生活者とはどう定義をなさっておられますか。
  66. 久保田真苗

    久保田国務大臣 定義とおっしゃられますと私もちょっとつっかえますけれども、しかし、おっしゃるように、すべて人は生活者であるという側面があります。また同時に、生産者であるという側面もあると思います。その場合に、生活者という言葉は、人間の生活の中の、暮らしの中の、生産も生活も消費も含めた生活の中で、その人間の個人の生活という側面がこれまで充実が不十分だったのではないか。それは日本経済構造の中でやはり生産とか経済の効率とかということが優先してまいりまして、それはパイを大きくする上に非常に役に立ったのだけれども、しかし、その分個人の生活、あるいは家庭の生活、あるいは市民としての生活、そういったところへ振り向ける分が少なかったというか、それは政策の上でもそうだし私どもの意識の面でもそういう面があった。したがって、生活者重視という言葉は、ただ単にすべて人は生活者であるというそれだけの意味ではなく、生活者である側面を重視するということが今後の経済構造を変化させ、また、実際に変化していくその方向であり、そこにしか、今の成熟しつつあります日本経済の行く道はそこが一番明るい、そして必然的な道だ、そのような、つまり生活者は経済をリードするキーワードだ、私は自分でそのように理解しているところでございます。     〔委員長退席、古賀(正)委員長代理着席〕
  67. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 人の生活者としての側面を重視をする。私なりに考えてみたわけでありますけれども、重視ということは、何かに比べて、例えばBに対してAを重視する、相対的なものである、そういう認識があるわけでありますが、では、生活者重視といったときに、何よりも生活者の側面を重視をするのか。先ほどの大臣お話を伺っておりますと、生産者も生活者であるわけでありますけれども、例えば一人の人間が、昼間は生産者であり、それ以外の時間は生活者というふうに仮に区分をすると、生産者である人間のその部分よりも、生活、それ以外の時間の部分を大切にする、そういうふうにも聞こえたわけでありますが、そういう認識で間違いないのか。あるいは大臣所信の中の言葉を拾わせていただければ、大臣は、いわゆる「生産者・供給者」よりも「生活者・消費者」をより重視をする、はっきりそのように認識をさせていただいてよろしいものかどうか。もう一度お伺いいたします。     〔古賀(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 久保田真苗

    久保田国務大臣 例えばレートの問題にしましても、輸出のレートと購買力平価、国内での購買力平価というものの間に実感としての格差があるということが言われます。そうしたものは結局、私どもが、追いつけ追い越せでやってきた時代の中で、供給サイド、生産、そうした面を非常に優先してきたということの結果であると思います。  したがいまして、生活を重視するという意味は、経済企画庁の一つの柱といたしましては、豊かな居住空間、豊かな生活の時間、そして内外価格差の是正、それから生活関連の新しい社会資本の充実、その方向に今後の日本人の求める最も強い需要があり、したがって、供給もそれによってリードされていく、そういう経済構造が私どもの行く道であろう、そのような意味に解しておりまして、生活者を生産者と全く利害の対立するものというふうには見ておりませんで、ただ、今後のリーディングファクターは生活者の問題だろうというふうに私は考えておるのでございます。
  69. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 今御説明いただいた大臣のお言葉の中に、生活者を重視した社会資本というお言葉がありましたが、その文言は所信のペーパーの中にもございますが、じゃ、生活者重視の社会資本とは一体何ですか。どういうものが生活者を重視した社会資本になりますか。
  70. 久保田真苗

    久保田国務大臣 細川首相の言葉をかりますと、例えば、車いすのすれ違える街路樹のある歩道というような言葉で象徴的に説明されたのですけれども、それに加えまして、現行の経済計画の社会 資本の充実の中にも、次第に利用者の視点に立つ整備目標が出ておりまして、例えば先ほどからも申し上げております住宅、それから都市の公園とか、廃棄物処理等の処理施設でございますとか、高齢化社会に向けての福祉の施設ですとか、それから都市交通網でございますとか、今回の緊急経済対策の中に考えておりましたのは、例えば公共施設の段差あるいは駅に障害者の通行できるような施設をつくるとか、踏切を立体交差にするとか、そうした生活者の利便の向上につながる、そういうところにもろもろの仕事を生み出していく、そのようなことでございます。  また、文化の薫り高いというのも所信で申し上げたと思いますが、例えば、学校の施設を地域に開放する、そのためには施設が要る、それにはクラブハウスといったようなものを今回の一兆円の中でつくり出していく、そういうところに需要と供給があるのではないか。そういうことで、一つのこれは方向性でございますけれども、生活者重視の社会資本整備ということではそのようなことを考えているわけでございます。
  71. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 そこで、重ねてお伺いしたいわけでありますが、過去の公共事業関係費、つまり社会資本整備予算の比率をさかのぼって調べてみますと、これはお役所間のいろいろな力関係もございましょうし、もちろんそれぞれの所管において責任を持って仕事を進めていかれる、そういう背景の中で、やはりほとんどいわゆる社会資本整備の割合、比率というものは動いてない、本当に見事なものだなというふうに感じますね。  その中で、ちょっと気がつくのは、例えば一九八〇年度に、公共事業費全体に占める下水道環境衛生等の施設整備は一四・五%であったのが、今年度、九三年度は一六・八ということで、これでも二・三%プラスということで、一番動いている方ですね。それ以外は、例えば治山治水もほとんど変わりませんし、一七%台で変わらない。あるいは、農業農村整備だと一三・五%を軸にほとんど変わらないという格好で、お互いの相対的な割合というのはなかなか、現実の問題、動かしがたいという経緯の中で今日を迎えているんだなということを改めて勉強ができたわけであります。  特に、総理もそういった、生活者を重視するということをおっしゃっておられる。そして経企庁長官も生活者重視の社会資本の整備、先ほど幾つか事例を挙げて御説明をいただいたわけでありますが、こういった基本的な考え方政治をやっていく。あるいは早速、細川内閣としてはこの年末に初めての予算編成をなさるわけでありますが、どうですか、いわゆる生活者重視の、なるほど社会資本整備に力強く一歩踏み出したな、そういう予算がこの十二月にできるとすれば、今私が申し上げた住宅、下水あるいは港湾・空港、農村整備あるいは林道・工業用水、工業用水なんかは逆にちょっと減らされるのじゃないかと心配なような感じもいたしますが、道路、治山治水、これがどういうふうに動くことになるのか、あるいは、すぐにはできなくても、動かそうとする政治努力をなさるのか、重ねてお伺いいたします。
  72. 久保田真苗

    久保田国務大臣 経企庁の立場といたしますと、自分で多くの実務を持っているわけではなく、予算も少ないですし、各省庁が一つの方向に向かって、大いに予算を新しいものに編成してくださることをこいねがっているわけでございます。  新しい方向というのは、生活者重視、一口で言いますとそうなんでございますけれども、そこにはやはり内需の拡大、それから生活関連資本の整備、そして内外価格差を是正していく、あるいは輸入をふやしていく、そして黒字を縮小させていくという、日本経済全体にとっていい薬が回るような、そういう観点からの重点づけをぜひお願いしたいと思いますし、その方向に、総理のリーダーシップのもとに進むのではないかという大きな期待を持っている、私どもも、そこは本当に頑張らなければいけないところだと決心をしているところでございます。
  73. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 その生活者重視ということはもちろん大切なことでありますし、これから将来を展望するときに、確かにより追求をしていかなければいけない大きな政治目標であるということもよく理解ができるわけでありますが、いささかお話を伺っていますと、では、物づくりの方はほとんどお触れにならないし、このペーパーを拝見いたしましても、生産者という言葉はただ一カ所出てくるだけで、本当にこれで大丈夫なのかな、物をつくるということ、あるいはソフトも含めれば、富の創造というか価値の創造というか、やはりそっちの方にも元気を出さないと、所得の分配、あるいはその分配について生活者重視というところに視点を置くんだというふうに幾らおっしゃっても、分配するパイそのものをきちんと確保していく、あるいはそれを成長させていくという視点が欠落をすれば、やはりそれは相当程度片落ちではないかな、そういう印象も実は率直に言って持たさせていただいたわけであります。  しかも、これからの日本の将来を展望するときに、言うまでもないことでありますけれども、例えば高齢化ということを一つ考えてみましても、既に議論が始まっておりますが、では、年金を本当にどうやっていくのか、あるいは老人医療をどう考えていくのか、あるいはまだまだ社会資本の整備にもお金がかかる、そういう現状の中に今我々がいるわけでありますから、その分配ばかりに気をとられて、価値をつくり出していく、物をつくる、富を創造していく、そっちの方の施策についてもより一層御研究もいただきたいと思いますし、また、もちろんのこと忘れてはいないんだということを、そういう視点を大切にしていただきたいということを心からお願い申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、減税論議に移っていきたいというふうに思うわけでありますが、たまたまけさの朝日新聞の一面に大きな見出しで、総理がもうほとんど方針を決められたといったような内容の記事が出ているわけであります。来年度の当初予算で五兆円の所得減税をやる、そして、消費税の税率の引き上げは九五年の春という、これは六段抜きの大きな活字が躍っている、こういうことでございます。  そこで、両大臣にお伺いをいたしたいと思うわけでありますが、今の経済状況考えて、大幅な所得減税が是が非でも必要であるというふうにお考えでございましょうか。両大臣、お答えをいただきたいと思います。
  74. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 お答えします。  新聞記事に書かれていることがそのまま事実かどうかというのは、私ども定かにわかりませんけれども、そのような判断を総理がされる時期ではない、まだまだ議論をいろんな形で詰めていくべき時期だろうというふうに私は思います。私自身、ではどうかということでありますけれども、いささか消極的に聞こえるかもしれませんが、現在税制調査会において多方面の視点からこの問題については議論をされているところでありまして、予算委員会でも一貫して内閣総理大臣が申し上げてきたことでありますが、この審議に予断を与えるような、そういうことを内閣としては現時点では慎みたい、こういうことでございました。  政府税調でさまざまな選択肢が議論されていくだろうと思いますし、これをのまなければだめというような恐らく税調の結論ではないだろう、それを踏まえて、内閣として一つの判断を行う時期が来るだろう。ただ、御存じのとおり、税制の問題につきましては、単に一つの方面だけからの検討で済む問題ではなくて、さまざまな視点、さまざまな展開を視野に入れて議論されるべき問題でございますので、私どもとしては、政府税調の議論がいよいよ煮詰まってくるのを注意深く見守っているところでございます。
  75. 久保田真苗

    久保田国務大臣 新聞記事についての受けとめ方、私も通産大臣と同じでございます。今の時期の減税でございますけれども、私は、所得税の減税がしばらくございませんでしたし、減税が望ましいということについて異議を持つ人は少ないだろうと思います。  ただ、問題は、それの総体的な経済効果とか、そ れから財源の問題ですとか、その辺につきまして、世上も極めてまちまち、いろいろな意見がございまして、それを論議するような形で税調が仕事をしているところでございまして、私といたしましても、その行方をいましばらく、経企庁として目をつけるべきところに目をつけながら見ていきたい、こう思っておるわけでございます。
  76. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 両大臣とも非常に慎重な言い回しをなさったわけでありますけれども日本経済運営あるいは産業政策の運営の最高責任者であられる通産大臣あるいは経企庁長官が、今度の臨時国会が始まって、国民が、これからの経済政策どうなるんだろうか、あるいはこの厳しい景気に対して、通産省が、経企庁が、それぞれの大臣どういう力強いリーダーシップを発揮してくださるんだろうか、大変注目もし、期待をしているその最初の委員会に、どうも所得減税をすべきかどうか、それはまだ今税調で議論をしているし、さまざまな論議もあるということで終始をするということがあるとすれば、それは国民の皆さんからすれば大変なショックではないかなというふうに私は思います。  自民党では、今、年末もだんだん近づいてきたということで、税のことについて、あるいは来年度の予算の編成のことについていろいろな業界団体の方との懇談の機会を持っておりますけれども、まあ温度差はありますよ。温度差はありますけれども、総じてどの団体の皆さんも、この期に及べば所得減税がやはりどうしても必要なんだ、それもできるだけ早い機会に大型の、そのことは異口同音におっしゃるわけでありますし、そのことは熊谷大臣のお耳にも、もちろん長官のお耳にも入っておられるというふうに思います。さまざまな努力を重ねて、言ってみれば、最も効果のある、あるいは最も即効性のある、あるいは世の中の空気を変えていく大幅所得減税、これはやはりタイミングを逸するべきではないんではないか、そのように思うわけでありますが、通産大臣、どうなんでしょうかね、通産省を所管されておられる大臣として。
  77. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 税制改革、なかんずく所得減税の問題が将来の経済運営を考える場合に大変大事な意味を持っているということは、委員と私ども同じ考えではないかと思うわけであります。  問題は順序でございまして、税制改革の議論をやはり多方面から十分な検討をした上で、そして政府税調におきまして、その議論を集約して一つにするのか二つにするのか三つにするのか、選択肢も含めて議論が煮詰まった段階でそれを採用するかどうか、これはもう政治判断の問題になってくるわけであります。その前提をつくるのが私は政府税調の役割ではないかと思うわけでありまして、これはやはりクールなといいますか、冷静なさまざまな視野からの検討がなされるべきだ。そこへ、いわば、判断をする側がいきなり予断を要求するような、あらかじめ結論を要求するような議論をしてはいかがかな。判断をするのはいずれやらなければならない問題だ、年末までにはやらなければならない問題だという点については全く同じ認識を持っております。
  78. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 所得減税のカードが本当に唯一残された最後のカードであるかどうかは議論があるところではないかと思いますが、本音の話、ぶっちゃけたところ、もし大幅所得減税をやってもどうも見るべき効果が上がらないということがあれば、もう政府として、もちろん金利をさらに下げるとか、あるいは財投を活用するとか、幾つかそういうことはありましょうけれども国民の側から見て、もう政府は本当にカードを使い切っちゃった、我々、幾ら政治にあるいは政府に頼んでも、もう本当に打つ手なくなっちゃったということになる状況にある種の怖さというものがあるんじゃないかな、これはちょっとうがった見方かもしれませんけれども、そういう心境というのはどうでしょうね、ございますか。
  79. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 これは委員が最初から御指摘をしてきた、昨年来の、ことしずっとの経済の見通しについての御発言ございましたけれども、私は、実は今回の景気の低迷というものを景気循環論で片づけるべきではない、これはもっと長期にわたる日本構造のある意味では結果として起こったことである、むしろ日本経済社会がこの構造を変えてほしいとシグナルを送っていると理解すべきだということを、委員と同じ政党にいたときから強く主張してきたものでございます。これは、ことしになってからではなくて、もう一昨年から私はそのことを党内でのさまざまな集会におきましてお話をしてきたつもりでございます。私は、その考え方は変わっておりません。  しかし、大変難しい、厳しい、ある意味では経済危機と言えるような、このことも言えるかもしれない状況であることはそのとおりだと思うのですけれども、さらばといって、それじゃ日本がもうどうにもならないところに来ているかというと、私はそうは思ってないのでございまして、日本はいわゆる高齢者にはまだなってない。日本はまだ壮年期だ、幸い体力が残っておる。持てるリソーシーズといいますか、そういうものを的確に糾合して、的確な構造政策をとっていけば私は必ず日本経済は再生できると確信をしているわけであります。  ただ、この政策は、正直言いまして、もうこれは私がまさに委員と同じ仲問として議論をしておったときから申し上げていることでありますけれども、この構造改革政策は簡単にできることではない、まさに既得権との衝突になってくるわけであります。したがいまして、私ども政治改革を、いよいよもう最終ラウンドになってきておりますし、そういうものを乗り越え、そして不退転の決意でこの構造改革策に着手していかなければならない。  先般の九月十六日に行われた緊急経済対策の決定におきまして、私は終始、これは中長期的構造政策のファーストステップにすぎない、第一歩にしかすぎないんだということを申し上げ続けてきたわけでありますが、それはそういう意味でございまして、これは与党、野党の立場を超えて、日本がいずれだれが政権をとってもやらなければならない問題でございますので、もちろん上り口はいろいろあろうと思います。あろうと思いますが、これはだれかがやらなければならない問題であって、それに対してやはり果敢に取り組んでいかなければならない問題ではないか。恐らく委員も、上り口は若干違うかもしれませんが、目指すところは同じ方向ではないかな、私はこう思います。
  80. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 確かに大臣おっしゃいますように、日本はまだまだ潜在的なパワーを持ち得ている、そういう経済であると思うし、国民の働く意欲もそれはもちろん大変な水準にあると思います。潜在的な力はまだまだ発揮ができる。そのために構造改革をしていく、当然のことでございまして、らつ腕をお振るいをいただきたいと思いますし、我々ももちろん一緒になって勉強し、協力もしていきたいと思うのです。  ただ、非常に国民が厳しいと認識をしている今の景気を打開する一つの手段として、やはり所得税の大幅な減税というものが大変動果のあるものであるということが、それはそれとして紛れもない事実ではなかろうかなというふうに思うのです。問題は、新聞で報道されているとおりの議論にこれから進むかどうか、これはもう少し時間を置いてみなければわからないわけでありますが、五兆円以上の所得税、住民税あわせた減税をする。そしてその財源は、種々考えたけれども、どうしても消費税に求めざるを得ないという仮に議論になった場合に、所得減税、そしてそれとセットで消費税の税率を、新聞によれば七%という数字が出ておるようでありますが、それを同じ年度内でやるかあるいは二、三年ずらすか、そこは議論が分かれるわけでありますが、仮にそういう議論に、通産大臣、直面をされたときに、景気対策としての所得減税が、財源はしかし消費税に求めるという形で提示をされたときに、どうなんでしょうかね、景気対策として本当に効果が上がるという御判断になるのだろうかどうだろうか。  実は私もどうなんだろうかな。社会の皆さんも もちろん所得減税の効果というものには大変期待をするけれども、しかし消費税を仮にその財源に充てるということがあれば、せっかくの景気対策の効果がほとんど出てこないのではないかな。心理的にもいろいろな要因があります。そういう危惧の声が既に世の中にはあるということは大臣も御存じだろうと思いますが、その部分、最後にお答えいただきたいと思うのです。
  81. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 一般的に言いまして、これはあくまで一般的な話でございますけれども、税制改革、今度の所得減税を含めての話ですが、それだけで景気がたちどころに立ち直るなどということはあり得ないと私は思います。魔法のつえではない。今回の経済の情勢ということに振り返ってみればますますそういう思いを深くするわけであります。しかし、非常に有力な政策であることもこれ間違いない。これも私は委員と同じ認識を持っております。  ただ、問題は、今消費税なり財源の問題が議論されましたけれども、一般的に言えば、先ほど企画庁の事務当局がお答えをいたしましたように、その財源確保のための税制改正が先にずれればずれるほど景気効果は上がるでしょうし、また、減税の幅がふえればふえるほど景気は上がる、こういうことは言えると思います。
  82. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 ありがとうございました。この問題、非常に大きなテーマでございますし、引き続き両大臣とも議論を重ねてまいりたいというふうに思います。  さて、時間も残り少なくなりましたので、少し駆け足になるかもしれませんけれども、時間の許される範囲で幾つかの質問を続けさせていただきたいというふうに思います。  冒頭に、これから本当に雇用がもつのだろうかどうだろうか、並みいる大企業もいわゆる雇用調整に入らざるを得ない、そういう状況を迎えたということを申し上げたわけでありますが、本当にこの部分は真剣に考えていかなきゃならぬところではないかなというふうに思います。  ちょっと乱暴な話になるかもしれませんけれども、確かに日本企業社会というのは、アメリカのように余剰人員になればすぐ首を切っちゃう、レイオフをする、必要ならばまた雇う、そういう社会慣習にありませんし、また、そういう体質はどの企業も持っていない。そのことは確かにそうでありますけれども、しかし、いろいろとお話を聞いてみますと、これ以上いわゆる余剰の人員を企業に抱えて無理をすれば、母屋そのものが本当に傾いちゃうのではないか。あるいはほかにいろいろとやりたいこともある。設備投資にもお金を回したいけれども、そういう企業が本来とるべき行動が相当制約をされるというところにどうも来ているんじゃないかなという感じさえするのですね。  もちろん完全雇用の社会を目指すということは最も大切な国策の一つであるということは、私にもよく理解ができるわけであります。しかし、余り無理をして頑張り続けると、気がづいたときには本当に本体そのものがおかしくなって、なかなか回復にも手間がかかるということになったのでは、やはり本末転倒だというふうな気もいたすわけでございます。  ジャーナリズムの世界では、日本も早晩失業五%時代を迎えざるを得ない、こういう議論もあるわけでありますけれども、しかし同時に、先ほど大臣がおっしゃったように、まだまだ潜在的に日本経済というのは力を持っているし、まだ今はそんなにマーケットとしては大きくないけれども、十年、二十年の単位で見るとこの分野は相当成長が望めるな、そして雇用吸収力も相当生まれるのではないかということを予測ができる分野も恐らく一つや二つではないのでしょうね。今までのような自動車あるいは鉄鋼あるいはコンピューター、一気にそういうものを新しくつくり上げるということはなかなか難しい話であろうかと思いますが、しかし、日本のように高度な技術を持った国でないとこういう分野はなかなかすぐには手がつかない。  たくさんあろうかと思います。シルバー関係なんかもそうかもしれませんし、映像でありますとかあるいは太陽光電池でありますとか、具体的にはそういうことも指摘がされているわけでありますが、通産省とされましては、今後、将来にわたって伸びる産業分野、どういうところに目を当てておられるのか、そしてそれはまだまだマーケットは小さいけれども、どういう手だて、手法でそこを、まあやるのは実際の企業家であり、各企業でありますけれども、環境づくりその他の面でどう支援、応援をしていこうとなさっておられるのか、お教えをいただきたいと思います。
  83. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 雇用調整の問題が大変深刻であるということ、そして、委員御指摘の点については、事柄の性格上具体的な数字をなかなかとりにくいのですけれども、各種の、例えば通産省でこの八月に行われました産業動向調査などを見ますと、やはり過剰感が如実に出ておるわけでございまして、これがいかに深刻な問題であるかということは我々もよく認識をいたしております。  そこで、今委員が御指摘なされた点は、言ってみれば、これから谷底に入っていく、その中でいろいろな構造政策をとって、その先の山が見えないと勇気を持って飛べないじゃないか、こういうふうに私は今お話を聞きながら理解したわけであります。そのとおりだと思います。  では、その先の山がどういうところにあるかということでありますけれども、これはまだデッサンを描き始めたところでございまして確たるものではありませんけれども、通産省としては、産業構造審議会その他におきまして、資料として中期産業経済展望等を一応デッサンとして描き出しているわけでありますが、簡単に言えば二つあると思いますね。  一つは、技術革新の要素によって出てくる新しい産業、いま一つは、もう少し広い、システムの変更といいますか、制度的な変更を含めたシステムの変更によって生まれてくる展望のあるもの、例えばマルチメディアみたいなもの、これは一番お得意のところでありますが、これは放送法、電波法等も含めて改革が行なわれないとうまく進みませんし、それから、逆に技術開発でいいますと、これはまたさまざまな新しい産業、太陽光発電などというのもそうでしょうし、いろいろな産業が考えられるわけであります。かつてのように重厚長大型の産業をどんとか、知識集約型産業をどんというような形よりはもっと複雑多様なものになってきておりますけれども、我々としては、産業構造審議会の審議を通じまして、より具体的に経済界の方々が一つの指標としてイメージが描かれるように、その素材提供という意味で今研究をしているところでございます。
  84. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 時間が参りましたので質問を終わりたいと思いますが、またいずれ改めて機会をいただきまして一ドル百円時代の輸入促進や対日投資の問題点等につきまして議論をさせていただきた、いと思います。  両大臣のこれからのますますの御活躍を期待をさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  85. 中井洽

    中井委員長 次に、大畠章宏君。
  86. 大畠章宏

    ○大畠委員 日本社会党の大畠章宏でございます。初めて与党側の質問席から質問させていただくわけでありますが、よろしくお願いしたいと思います。  さて、きょうは熊谷通産大臣並びに久保田経済企画庁長官に、現在の高い支持率を誇る細川政権の中核としての大臣の所信表明演説を受けながら、何点か御質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に通産大臣にお伺いしたいわけですが、何といっても、今も逢沢委員の方から円高対策といいますか、現在の経済対策についての御質問もございました。私選挙区に帰りますと、まず最初に言われるのは、やはりこの経済問題と政治改革問題であります。今冒頭に細川政権の高い支持卒というものはどういうところにあるか、やはり前政権てはなし得なかった政治改革をまずやっ てほしい、国民に信頼される政治というものを取り戻してほしいというのがもちろんナンバーワンであるわけでありますけれども、そのナンバーワンの政治改革をやってほしいというその意見を超えるぐらい大きな声になってきているのがこの経済不況対策であります。  考えてみますと、これまでの政権下での、言ってみれば土地政策等の失敗等によるバブル経済崩壊による経済不況に加えて、御存じのとおり円高が重なって大変な状況に至っているわけであります。大企業は大企業で必死にいろいろな人員の対策等をやっていますが、いろいろな影響をもろにかぶっているのが特に中小企業というふうに伺っていまして、この問題、後ほどまたお伺いしたいと思いますが、まず、このような大変厳しい状況下での不況対策は特に三つある。一つ緊急経済対策、二つ目が公定歩合の引き下げ、三番目が減税だというのですね。今、上の二つはやって、三番目の減税に手をかけようとしているし、また、労働界、経済界、学者、文化人等、あるいはまた海を越えて、クリントン政権からも所得減税を行うべきだ、そういうふうな声も聞こえてきているわけですが、この対策はもちろんやらなければなりません。しかし、この内的な対策のほかに対外的な対策をするべきではないか、これも重要ではないかと私は思うのです。  そういうことから、先ほど甘利委員からも御質問がございました。本来ですと、大蔵大臣がこの不況下、日本にうろうろしているのではなくて、やはり海外に飛んで、大いに日本の現在の経済状況あるいはまた企業状況、そして日本の社会状況を訴えて、協調ある経済発展にするためにどうしてもアメリカ、ヨーロッパの協力が欲しい、そういうことを訴えるべきではないかという話がありましたけれども、私も全く同感であります。ただ、なかなか大蔵大臣、お忙しいのかもしれない。しかし、いざ困ったときには一番困ったところが動くというのが鉄則なのかな。  そういう意味では、通産大臣が、細川政権の中軸として熊谷通産大臣、大きな活躍を期待されておりますが、できれば通産大臣としてもアメリカあるいはヨーロッパ等々に飛んで、現在の日本経済状況あるいは産業状況あるいは日本の社会状況を訴えながら、あなたの国の状況もわかる、ヨーロッパの状況もわかるけれども日本経済がこれだけ冷え切ってしまったら世界に与える影響は一体どうなのだろうか、そういうことからぜひ理解をしてほしい。アメリカ経済担当高官の、もうちょっと円高でもいいではないかというような発言でもってどっと投機筋が買いに入るとか、そういう状況だけは何としても政治家が防がないと、とてもじゃないけれども経済の波を企業努力だけでカバーしようといったって、これはなかなかできないと思うのです。  したがって、今こそ政治家がその力量を発揮して、今日の国内で一生懸命円高不況を乗り越えようとしている企業を応援するためにも、為替問題に対してやはり通産大臣、あるいは大蔵大臣でしょうけれども、その一番のおひざ元である通産大臣がぜひアメリカ、ヨーロッパに飛んで、今日の日本状況を訴えるべきではないかと私は思うのですが、そこら辺、ちょっと最初に、通産大臣としてのお考えをお伺いしたいと思います。
  87. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員御指摘のとおり、今回の不況感の高まりは円高の急激な展開というものが大きな背景になっていたことは、これは事実でございます。景気状況について、各種の調査によりますと、我々が正しかったのだけれども円高と冷夏が来たから急に景気が悪くなったような弁解がましい発言をする人がいるのですけれども、では、なぜ円高が起こったのだ。  私は前から申し上げてきたのですけれども、昨年から、昨年の政府経済見通しを見た瞬間に、外から見ればこれは円高をみずから引き起こす挑戦的な言明だと私は理解したのだ、よほどばかでないと、こんな政府経済見通しを世界に発表したら、日本をおまえたち円高で攻めてこいと言わんばかりの言いぐさではないか、これは私、当時自民党にいて、みんなでがんがん机をたたいて、こんなばかなことをなぜ決めたのだと言ってやったのです。それが、そのことをきれいに忘れて、まるで円高は先様から飛んできたような、宇宙から飛んできた星のようなことを言うから、おかしい、私はこう言っているわけであります。  歴代ずっと対外的な交渉の道筋を見ていますと、経常収支黒字を下げますよ、下げますよと言いながら、実際はそれと逆になる、向こうの大統領がかわったからといって、口をぬぐって知らぬ顔をして、またもっとひどい数字を出す、こういうことの積み重ねであったのではないかと私は思います。もちろん為替レートというのは、単に政府の一部が騒いでみたところで、あるいは政治家が騒いでみたところで動くのではなくて、基本的には、日本の経常収支黒字の累積というものが、しかも長期にわたって続いているということが、私はやはり基本にあるのだろうと思うのであります。しかし、にもかかわらず、日本政府としては、委員案内のとおり、こういう金融の話を、表立ってこうやったというのをなかなか言わないものなのですけれども、私は、金融当局を含めて、大蔵大臣も含めて、最大限の努力をしたと思っております。  ただ、為替レートが、この今の円高が過大に評価されている、ファンダメンタルズから見れば過大に評価されているのは私ども共通の認識だ、委員とも共通の認識だと思うし、日本の産業界みんな同じ認識だと思うのです。しかし、問題は、やはり日本の経常収支黒字がこのまま持続するということが予想され、それに対する政策的な展開がなされない、こういうことであれば、これはなかなか現実には円高の是正はできないだろう。やはり原点に戻って、この経常収支黒字の是正をわかりやすくやっていく以外にはない、これが原点だと私は実は思うのであります。  そのために今さまざまな苦心をしているところでありまして、さきの緊急経済対策は、いわば政策の方向性を示す第一歩だったと私は理解しておりまして、委員がおっしゃられた、緊急経済対策と公定歩合とそして是正という御指摘があったのですが、私は、実はこれは問題の始まりにしかすぎなくて、しかもこの経済状況というのは、特効薬はなくて、本来であればバブルの直前に調整すべきであったのを、バブルが来たために調整を怠っていたために、余計にこれからの構造政策は少し重くなるといいますか、荷物として重くなるという感じがするわけです。  そういうことを踏まえて、私どもとしては、この七党一会派、細川内閣のもとで、面を避ける、この面を横に向けないで正面からこの構造問題にチャレンジしていくべきではないか。仮に税制改革が終わっても、それは始まりであって、予算編成以降、ディレギュレーション、ディセントラリゼーションを含めた構造政策を今後大胆にやっていかないと日本経済は立ち直らないと思いますし、そういう方向が見えてくれば、逆に為替レートはおのずから変わってくると思いますし、また日本経済に対する国民の信頼といいますか信任も回復して、景気は明るくなってくる、こうした難しい問題を避けて、微温的な逐次投入方式の政策を積み重ねていけば事柄の解決はますます遠ざかる、こういうふうに思うわけであります。
  88. 大畠章宏

    ○大畠委員 情熱あふれる答弁、よく理解いたしました。  それで、時間が非常に限られていますので、ちょっと飛ばしながらお伺いしたいと思うのですが、次に国内に目を向けて、中小企業対策、先ほども逢沢委員からもお話ありましたけれども、中小企業がどうしたらいいか今非常に困っているのですね。大手は何とか内側で必死の努力をしていますが、その下請とかあるいは中小企業関係ではとにかく仕事がなくなってしまっている。そういう状況があちこちから聞こえてきています。  そこで、私は、我が社会党の方でも今回の予算等でいろいろな検討をしておるのですが、いずれにしても、これまでも通産省としても中小企業実態あるいは問題等について調査は十分されておると思いますが、かなりこの状況にきて、その調査段階でももっと深刻になっているような感じがするのですね。いろいろな話を伺っておりますので、できれば再度、改めて、今何がしてほしいのだ。緊急経済対策、それはわかりました。しかし、それを受けながらもなおかつ苦しいという中小企業者の生の声を再度聴取して、それに特効薬はなかなかないと言うのですが、できるだけ通産省としても支援しますという、そういうことの動きをすべきじゃないかと思うのですが、そこら辺、国内対策でちょっと申しわけありませんけれども、非常に深刻な問題でありますので、通産大臣の中小企業対策に対するお考えを伺いたいと思います。
  89. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 中小企業の陥っている苦境というものは委員の御指摘のとおりだろうと思います。これは中小企業庁としてはもう最大限の努力をいたしておるところでありまして、過去三回の、今回の九月十六日を含めて、一連の景気対策を講じた中で大体四兆円に上る新たな融資措置を含めて、また、その条件についての深掘り、いろいろ条件を緩やかにすることを含めてやってまいりました。その効果は実に統計で明確に出ておりまして、日銀統計によりますと、いわゆる金融機関の新規貸し出しも政府系金融機関が中小企業向けの半分以上を占めるようになった。  しかしながら、逆に、私はこの間も日銀総裁に申し上げたのですが、なぜそれじゃ都市銀行が、民間金融機関の資金が伸び悩んでおるのだろうか。余り明確なお答えをいただけなかったのですけれども、私が余りこう言うものですから、日銀いじめをしていると盛んに言われるものですからなかなか話もしにくいのですが、ぜひ委員を中心に、なぜこんなメカニズムが出てきているのか。貸し渋りだとか、それから、あれだけ金融機関の調達金利が安くなっているのになかなか貸出金利が下がらない、これは明らかにおかしいのですよ。おかしいから、おかしいのはなぜかというのをひとつ徹底的に、与党としてひとつチームをつくっていただいてやっていただきたい。また、都市銀行、民間金融機関のこの数年間の利益、償却前利益をひとつぜひ検討していただきたい。従来の景気回復時におきましては中小企業、中堅企業が引っ張って、そこにお金が回って、それが引っ張っていくというのが、今やそこに一番金が行かないようになっておる。説明は、百の説明をします、都市銀行の窓口に聞くと。しかし、これを放置しておいたのではなかなかまずいのじゃないかな、私はこういうふうに思います。  それから、さはさりながら、他の政策も打つべきだというのは全く御指摘のとおりでありまして、今般我々が、政治改革法案の合間を縫ってといいますか、中小企業の新分野に関する法律をお願いをいたしておりますのも、やはり構造政策を打たなければどうにもならないところに中小企業がきている、切迫している。それをまた一年先、通常国会に回せば遅くなってしまうということで、皆様のお忙しい中を御無理をお願いしているところでございまして、我々としてはできるだけ早くこれを成立させていただきまして、構造政策についても的確な対策を早期に打っていきたいと考えているところでございます。
  90. 大畠章宏

    ○大畠委員 せっかくの通産省の対策も途中のパイプが詰まったのでは末端まで伝わりませんから、よくパイプ掃除をして、例えば今おっしゃったように、公定歩合を引き下げたのに末端の金利が下がらないじゃないか、あるいはまた、貸し出しの手続が煩雑でよくわからないのがあって、たくさん書類を出させられるとか、そういうところもぜひソフト面からも少し見ていただいて、こっちからの信号がすぐ末端に伝わるようにぜひ総合的な見直しもお願いしたいと思います。  もう一つ、今度は久保田経済企画庁長官にお伺いしたいのですが、今もお話がありましたが、公定歩合をせっかく引き下げたにもかかわらずなかなか末端で下がらない。物価問題もそういうところがあるのですね。円高問題もいろいろあります。 円高で非常に苦しんでいるのですが、円高メリットがなかなか末端の消費者に来ないじゃないか、そういうことから、私どもの方でもいろいろ御要望しておるのです。内外価格差の物価構造是正のための調査とか、そういうことをもっと強力にやって、円高は非常に困るのですが、現在の円高を最大限に消費者というか国民還元する、そういうところのパイプを一生懸命掃除をする、そういうためにも新たな、国民に見える、円高のメリットがぱっと消費者に返る、そういうことを経企庁としてももうちょっと手を打つべきではないかという声があるのですが、その点はいかがでしょうか。
  91. 久保田真苗

    久保田国務大臣 確かに、円高メリットが十分かつ速やかにという趣旨でやっております。今回は、早く浸透し始めているとは思います。しかし、先生おっしゃいますように、企画庁は、全国に四千人の物価モニターがあり、そうしたセンターをつないでいくためのネットワークがございまして、これを十分に使って浸透していくように、各省の情報を提供していただいてそれを浸透させていくということをやっていきたいと思いますし、現在御趣旨に沿うようないろいろな方策を検討中でございまして、早期に第一歩を踏み出したいと思っております。
  92. 大畠章宏

    ○大畠委員 与党の議員の一人として発言をするのはいいのですが、質問時間が非常に短くなってしまいまして、もっともっと両大臣の情熱あふれるいろいろな考えをお伺いしたいと思ったのですが、最後に二つほど、これは要望というようなものです。  一つは、先ほどいろいろありましたけれども、いろいろな施策を打つときに、必ず、通産行政だけからではなくて、また後ほどリストラ法等でも論議されると思いますが、雇用というものを十分考えた通産行政をやっていただきたい。そうでないと、アメリカのように生産業界がダウンして、要するに失業者がふえてしまう、そして、国内が非常に混乱するという、アメリカ経済のたどった道をひょっとしたら日本も歩もうとしているのではないか、そんなことも今言われていますので、ぜひ通産大臣あるいは経済企画庁長官にもそういう視点から御活躍をいただきたい。  もう一つは、先ほど経済対策一つとして所得減税問題がございました。その財源として消費税のアップという話が出ていますが、やはりどうも私は、過日の新聞報道なんかを見ますと、「申告漏れ一兆三千百十五億円」こういうふうな報道も出ています。七十一万二千人を対象に調査したところ、二〇%の方が申告漏れ、また、いろいろやった結果、五四%の人が三千八百二十六億円の申告漏れ、こういうこともあります。したがって、これは通産行政あるいは経済企画庁関係ではないのですが、閣僚の一人として、ぜひ総合的な税制、不公平税制の見直し、そういうことから抜本的にやって、安易に消費税の値上げとかそういうものに頼らないで、国民から見て公平な税制にする中で税収を上げていく、そういうことも大きな視点として、閣僚として行動していただきたい。そういうことを申し上げまして、質問時間が来ましたので、終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  93. 中井洽

    中井委員長 次に、西川太一郎君。
  94. 西川太一郎

    ○西川委員 私は、二十分間という限られた時間でございますので、駆け足で、通産大臣だけに限らせていただきまして、質疑をさせていただきたいと存じます。  実は大臣ももう十分御認識のとおり、長引く不況、加えて円高、こういう中で我が国経済構造的な改革をしていかなければならないという大臣の御主張、御持論には私も常々敬意を払っているところでございますし、大臣就任以前から、経済の現況、もしくは先行きに対する的確なお見通しに対してもこれまた大きく敬意を払うものでございます。  そこで、幾つかお尋ねを申し上げたいのでございますが、もう先輩の皆様から十分に御質疑がございましたので、重なる部分は割愛をさせていた だきましてお尋ねを申し上げたい。  まず第一点は、必ずしもこれだけが要因であるとは私は思わないのでございますけれども、しかし、一つの有力な要因になっておりますのは、このたびの円高につきまして、我が国の産業構造がやはり問題があるという指摘があるわけでございまして、これを転換させていく必要があるというふうに認識をいたしております。したがいまして、この問題、大臣、今後これをどういうように通産行政の中で、立法を御用意されたり、いろいろとお考えがあるのか。  それからもう一点は、大幅な黒字について、これを国際的にも削減をせよという外からの声、内からの声もかなり強いものがございます。これについての御見解を伺いたいと存ビます。
  95. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 二点御質問があったわけでありますが、この不況を含めて、黒字削減の点についても共通することでありますけれども、産業構造によっで生じだところが大きいというのは、私はもう全くそのとおりだと思います。通産省としても、そういう認識から昨年来勉強をしてまいりまして、いよいよ産業構造審議会の場でこの産業構造の問題についてオープンな議論を始めているところであります。  いずれにいたしましても、この構造転換政策は、いわゆるマクロの経済運営、そしてミクロの制度の改革を含めた政策、それに産業構造政策、この三つを一体的に運営していくということをやらなければ事柄は解決しない、こう考えているところでありまして、我々もそういう観点から今鋭意検討をしているところであります。
  96. 西川太一郎

    ○西川委員 そうなりますと、この検討過程を経て、大臣の御構想にある一つ日本の産業政策というものが端緒についたといたしますと、その出口における我が国の経済構造、産業構造というものは大変すばらしい、国際的な競争力も持ちながら、かつ国内的ないろいろな諸矛盾も解決できるというふうに私などは想像して、カ強く感じているわけでございますので、ひとつ大いに促進をお願いを申し上げたいというふうに存じます。  次にお伺いを申し上げますのは、中小企業対策についで少しく詳しく伺いたいというふうに思っております。  第一点は、御案内のとおり中小企業は、その企業数においても、またそこに職を求める方々においても、我が国の活力の源泉と呼んでも差し支えのない大きな部分を占めておることは申し上げるまでもありません。しかも、今日まで我が国の経済発展の縁の下の力持ちとしての中小企業の果たした役割というものは極めて大きなものがある。一次、二次のオイルショック、またニクソン・ショック等、我が国を襲ういろいろな外からの経済的な問題についても、中小企業はとかくショックアブソーバー的な役割を果たさせられてきたということは、これは否定できない事実だろうというふうに思うのでございます。  先般、実は私は、新生党の一回生の方々十人でトヨタ自動車に視察に伺いました。その際、幹部の社員の方々からお話を詳しく伺ったわけでございますが、対前年度の大きな利益の落ち込みの中で、バリューアナリシスという方法、VAという方法をとって、いわゆる中小企業を泣かすのではなくて、下請さんをいじめるのではなくて、一緒になってこの危機を打開していこう、それから、いわゆる産業の空洞化というようなものに促進をさせるのでは、促進の仕方もいろいろございますけれども、マイナスの意味で促進をさせるのではなくて、ひとつ頑張っていこうということでいろいろな工夫をされて、いわゆる大企業と中小企業が協調体制の中で生産性を上げていく御努力をされているのを目の当たりに見まして、大変力強く感じたわけでございます。私は、このようなことを通産省としても大いに奨励をされていく必要があるのではないか、こう思うわけでございます。  そこで、まず、極めて概括的なお尋ねで恐縮でございますが、厳しい状況に置かれている中小企業に対しまして、一般的に言って抜本的に対策を強化するべきであると思うのでございますが、ちょっと精神論的になりますけれども、まずその辺をお伺いをしたいと思います。
  97. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 西川委員の御指摘のとおり、日本経済に占める中小企業の役割というのは数字以上のものがあると私は思っております。また、その中小企業が現下の経済危機の中で最も苦しい立場に置かれているということも委員の御指摘のとおりでございまして、ある意味では、この日本経済の宝を大事に守って次の発展のチャンスにつなげていかなければならないというのが私どもの基本的な立場でございます。  中長期的な展望を踏まえながら、しかし、中小企業の置かれた状況というのはまさに緊急避難的な措置も講じていかなければならないということでございまして、緊急経済対策を先般講じた中でも、過去の、昨年、そしてことしの春と、二回にわたる経済対策で約三兆円、今回また一兆円の資金投入を決定をいたしたところでありますし、その中身も今までとはちょっと考えられないくらいな条件緩和等を講じたところでありまして、まず緊急対策を講じつつ、他方で、今置かれた状況、まさに今トヨタの事例をお話がございましたけれども、そうした動きを全般的に滑らかに行えるように、実は今般、中小企業の新分野等に進出するのを円滑化する法律、リストラ法と我々は言っておるのですけれども、これは単に新分野に出るだけではなくて、海外進出もあるでしょうし、あるいは合併政策もあるでしょうし、あるいは協同組合をつくるやり方もあるでしょうが、そういった工夫を大事に育てて、この難局を新しい発展につなげるような中小企業の努力を支えていくための条件整備として今回この法案を提出したところでございまして、その意味でぜひ委員の皆様方の御理解と御支援をお願いする次第でございます。
  98. 西川太一郎

    ○西川委員 私は、今度の総選挙で初めて当選をさせていただいたわけでございますが、その前十六年間、東京都議会議員として下町から出ており ました。いわゆる小規模企業の町から出てきた議員でございます。  先ほど大畠先輩も御質疑の中でおっしゃられておりまして、私も全く同感の気持ちで拝聴していたわけでございますが、選挙区を回りますと、西川さん、仕事がないんだよ、この言葉に私どもは本当に胸が張り裂けるような思いで、ただ自分のカのなさを申しわけなく思って帰ってくるわけでございます。お金の手当てをしてあげることももちろん大事なんでありますが、先ほど大畠先輩の御質疑にもございましたとおり、仕事をふやしていただくということが大事だなということを痛感をいたします。  それから、長年の地方議員としての体験で申し上げれば、中小企業対策というのはすぐれて金融支援対策に限定をされているわけでございますが、もうそろそろ大臣の御方針のとおり、単なる金融支援で当面を糊塗するのではなくて、いわゆるリストラといいますか、大きく構造を変える中で中小企業の位置づけをさせていただきたいな、こんなふうに思っております。  そこで、お尋ねをいたすわけでございますが、景気低迷だけではなく、顕在化しました大企業の国内生産の縮小、また部品生産の内製化というような問題、言ってみれば、何度も申し上げますが、構造的な問題がございます。そこで、中小企業対策をぜひ強化充実をしていただくに当たっては、当面の経営安定対策も、先ほど来、仕事がないということも含めて重要でございますが、何度も同じ角度からお尋ねをして恐縮でございますが、しかし、この構造的な問題にも積極的に取り組んで、中小企業に対する支援策を講ずるべきだというふうに思うわけでございます。何か重なったような質問で恐縮でございますけれども、先ほど言い足りなかったことを今ちょっと申し上げたつもりでおるのですが、重ねて御答弁をいただければありがたいと思っております。
  99. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 いわゆるリストラ的な、どちらかというと防衛陣地をしくだけではなくて、積極 的、拡大的な構造政策を講じていきたいというのが私自身の気持ちでございます。  ただ、これをやるためには、今大変傷んでいるのですけれども、金融市場をどう整備していくか。それから、どちらかというともっと傷みの激しい資本市場、こういったものについても視野に入れて改革策を講じていかなければならないと思いますし、何よりも内需を中心にマクロの環境を整えていかなければ新しいものも育ちませんので、そういうことをあわせて包括的な構造改革政策をつくり上げていくことが大事だろうと私は考えるわけでございます。
  100. 西川太一郎

    ○西川委員 次に、中小企業庁長官にお尋ねを申し上げますが、実は、私は災害対策特別委員会の理事をしておりまして、あちらこちらの災害の現場に、このたび鹿児島、北海道などへ行ってまいりました。そういうところでいろいろ見聞きをいたしますと、これは微妙な問題でありますから発言を注意して申し上げなければいけないのですが、豊葦原の瑞穂の国でございますからやむを得ないのかもしれませんが、農業に対するこういう冷害地の支援策といいますか、大変手厚いものが次から次と用意されているように思います。これは当然のことでございまして、このことにいささかも手抜きがあってはいけないし、これを軽んじると言うのではございません。  しかし、今年度の中小企業庁の予算はわずか千九百五十一億円だと承知をしております。一方、農水省が農業に対してお出しになっているお金は五兆円を越えるというふうに承知をいたしております。単にそれだけを比較して、だから中小企業の政策が力が及んでいないというふうに短絡的に申し上げるつもりはありませんが、町の中で体系的に物をお考えにならない、今の不況の中で一番苦しんでいる方々は感覚的に物をおっしゃるわけでございますが、こういう皆さんのお声を総じて集めますと、農業に比べて圧倒的な数、就業者においても圧倒的な数を誇る中小企業は、冒頭申し上げましたとおり、金融政策に少し偏重し過ぎるのじゃないか、もっと手厚い施策をしてほしいという声があるわけでございますけれども、これは長官としてはどんなふうにお考えでしょうか。  私はもっと、大臣もおいででございますからあれですが、中小企業庁の予算を少しふやして、太いに中小企業のバックアップをしているんだということを大きく宣伝をする必要がある、こう思って、応援演説的な質問で恐縮でございますけれども、御答弁を。
  101. 長田英機

    ○長田政府委員 今先生御指摘のとおり、中小企業の数は六百五十万でございまして、農業が今私の手元にある資料では三百七十四万戸あるということでございます。予算措置は、中小企業が約二千億円、農業は先生今五兆円とおっしゃられましたが、今私の手元にあるのではその半分の二・五兆円ということになっておりますが、ちょっとこれはどちらが正しいか確かめないとあれでございます。  それで、両方の政策の性格を比べてみますと、中小企業対策は、一つ経済政策の一環といたしまして、マーケットメカニズムと申しますか、そのマーケットメカニズムの中で中小企業者が自主的な努力をする、その努力を後押しする、支援するということで講ぜられておりまして、どちらかといいますとやはり金融が中心になる社会でございます。  一方、農業の方は、私自身詳しく存じているわけではございませんが、その基本法などを読んでみますと、農業をめぐる自然的制約というようなことを踏まえて、農業従事者の所得の増大を図るといった社会政策的な要素もあるのじゃないだろうか。そういたしますと、対策全体のトーンはやはり補助金というような比重になってくるのじゃないだろうかというように感ずるわけでございます。  そういう点で、例えば全体の規模で、予算措置と金融と両方足し算して申し上げるのもちょっと極端かもしれませんけれども、中小企業の場合には金融措置が二十八兆円、農業の場合には三・七兆円でございますから、中小企業は合計しますと二十八・二兆円、農業は六・二兆円というようなことになります。  ちなみに、一事業所当たり予算措置をとってみぎすと、中小企業は三万円でございますが、農業は六十七万円。ただ金融措置の方は、中小企業は四百三十万円、農業は九十九万円ということになりまして、それぞれ特色を持っているわけでございます。  しかしながら、中小企業対策の中で、やはり金融が中心でございますが、補助金も非常に多うございまして、これも重要な役割を果たしておりますので、私としましては、そういう面の対策の充実にこれからも努力をしてまいりたいと思うわけでございます。
  102. 西川太一郎

    ○西川委員 これで質問を終わりますが、最後に要望を申し上げたいと思います。  先ほど来から通産大臣には、構造変化を必要としている今日の経済を力強くリストラも含めて推し進めるという御決意を承りまして極めて頼もしく感じました。しかし、中小企業にもその波が当然及ぶわけでございまして、農業が構造的変化から社会政策的な支出の対象になる、しかし構造変化のもとにさらされる小規模企業も同じくでございます。従前のように金余りの中で投資が盛んに行われるという経済状況ではございません。今移行期でございます。このときに、ひとつ中小企業に対して大切な配慮を払っていただきたい、このことを心からお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  103. 中井洽

    中井委員長 次に、佐藤茂樹君。
  104. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 佐藤茂樹でございます。  公明党・国民会議を代表いたしまして、簡潔に質問させていただきたいと思います。  最初に、景気の動向につきまして質問をさせていただきたいと思います。  先日の帝国データバンクの調査によりますと、九三年度の上半期、四月から九月の全国の企業倒産集計で、一千万円以上の負債を抱えて倒産した企業の件数が六千九百十三件、そのうちいわゆる販売不振などを原因とする不況型倒産は四千百三十件と全体の約六割を占め、前年度に比べましても一二・ニポイントも上昇している、そういう調査が出ております。一つの側面でありますけれども、この数字一つを見ても、いかに不況が深刻化しているかをあらわしているかと思います。     〔委員長退席、河合委員長代理着席〕  そこで、時間もございませんので、経済企画庁長官に二点お伺いしたいのですが、そういうことを踏まえて、産業界には今景気の底割れ感というのが非常に強いというようにお伺いしているわけでございますけれども、先日の十月の月例経済報告によりますと、「回復に向けた動きに足踏みが続いており、総じて低迷している。」という景気判断を経済企画庁としてされました。しかしながら、前政権のときにも、一つ景気判断の誤りが後々に景気対策に的確な手を打てなかった、後手後手に回ったという、それが今日の不況を招いているという一つの論もございます。というように、今の段階においての景気判断は非常に大事だと思うわけでございますけれども、産業界に広まっている景気の底割れ感というものに対して経済企画庁長官はどのような見解をお持ちなのかということをまず一点目にお伺いしたい。  もう一つは、今後の経済の見通しなんですけれども、今の段階でも政府の挙げている三・三%というこの経済の見通しに対して、民間の方は、例えば七つの調査機関で平均〇・三%、六月から七月の見通しに比べて一・六ポイントの下方修正を行っております。ある意味で言えば、政府と民間とのこのポイントの差が三ポイントもあるという違いがあるわけですけれども、そういう民間の調査に対して政府として経済の見通しの下方修正をする用意があるのかどうか、この二点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  105. 久保田真苗

    久保田国務大臣 景気が非常に落ち込んでいるということにつきましては、私どもも、確かに消費投資、収益それから雇用と明るいものがござ いませんで、大変心配もしておりますし、低迷している中で、これからの景気については予断を許さないというふうに見ておるわけでございます。  底割れと言っていただいたのですが、底割れと言うには、やはり私どものやっている緊急経済対策等の累次のものの効果があらわれてきているということは言えると思いまして、その辺が非常に健闘しているということで、そこに私どもはこれをもっと推進していくという使命を感じているわけでございます。  また、見通しなんでございますけれども、見通しの方につきましては、確かに、よく御存じのとおり、ことしの四−六月期というものが速報によりますとGNPがマイナスになったと、まさに底に入ったということは確かだろうと思います。それは非常に厳しい結果と受けとめているのでございますけれども、五年度の成長が全体としてどうかということは、まだこの五年度について一つの期しか数字があらわれておりません。確かに当初見通しは、景気調整からインフレなき持続可能な成長経路への移行ということにおいて望ましい姿を出したと思いますけれども、これにはたくさんの数字が寄りかかっている数字でございまして、私どもとしては七−九月期のものをもう一つ見た上で考えたい、こう思っているわけです。  もちろん、その間手をこまねいて見ているというのではなくて、厳しい情勢に対してはできる限りの手はこれまでに打ってきているつもりでございます。けれども、これにQEを見た上で例年やっておりますのがこのやり方でして、翌年度の見通しを立てながらことしのもの、それは確かに達成は難しい情勢になっていると思います。このままでいきますと、二期目からは九%程度の成長を確保しないと達成できないという状況でございますから、そうした数字をよく見ていきながら時期をはかりたい、こう思っているわけでございます。
  106. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 いずれにしましても、この連立政権というのは、政治改革、生活という面ではそれ以上にこの景気対策ということが国民から大変注目されている点だと思います。私たちも両大臣としっかりと議論しながら、本当に国民の納得していただける、そういう景気に対する効果的な手を打ってまいりたい、そのように考えているわけでございます。  連立与党となりますと三人続けて、次に中小企業対策ということでお伺いしたいわけでございますが、中小企業というのは、一般的に言われるのは、最後に好況の恩恵に浴して最初に不況の犠牲になる、そのように言われているわけでございまして、御多分に漏れず私の地元大阪におきましても、今まででしたら商売人のあいさつ言葉として、もうかりまっか、最初にこういう一言目があるわけでございますけれども、今は冗談にもそういうあいさつは交わせないような状況でございます。先ほどお二人の委員からもありましたように、とにかく仕事が欲しい、また、この不況を何とかしてほしい、そういう切実な声が、十軒回れば十軒ともそういう声が寄せられているわけでございます。  そこで、通産大臣にお伺いしたいのですけれども、簡潔で結構でございますが、中小零細企業をめぐる最近の景気状況というものをどう判断しておられるのか、お伺いしたいと思います。
  107. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員がもう既に御質問の中でお答えを出しているような感じがいたしますけれども、私も実は大阪へ先般参りまして、委員の御指摘のとおり、恐らく全国で最も厳しい地域ではないかなということを実感してまいりました。それだけに、中小企業については万遺漏なきように努力をしたいと考えておるところであります。     〔河合委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、先般政府は、六兆二千億円にわたる緊急経済対策の一環として、特に大阪に多い中小下請企業に対して、通産省また公正取引委員会で親企業との取引に関する緊急調査を実施するという一つの項目がございますけれども、具体的にその緊急調査内容規模、また時期、いつからいつやるのかということ、その調査の結果、具体的にどういう対策を打つのかということをお尋ねしたいと思います。  まず、通産省の方にお願いしたいと思います。
  109. 長田英機

    ○長田政府委員 九月十六日に決定を見ました経済対策の中で、特に下請企業対策としまして特別の調査をするということを決めたわけでございますが、これは、下請代金支払遅延等防止法の違反行為があるかどうかにつきまして再度重点的に調べよう、こういうことでございます。  その内容は、下請代金支払遅延等防止法に違反していろいろな支払い遅延等の行為があるかどうかということを調べるわけでございまして、スケジュールとしましては、この十一月の初旬に調査票を発出して、その結果を取りまとめまして、下請代金支払遅延等防止法の違反事実があるかどうか、ありました場合には親企業に対する指導、そして違反容疑者に対する立入検査というようなことを実施して、下請代金支払遅延等防止法の厳正な実施を図っていきたい、こういうことでございます。
  110. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 公正取引委員会の方で特に通産省と違いがあればお願いします。
  111. 植松勲

    ○植松政府委員 公正取引委員会の部分についてお答えしたいと思います。  下請代金支払遅延等防止法の違反行為につきましては、問題の性格から、下請事業者からの申告が余り期待できないわけでございます。公正取引委員会では、そのために毎年親事業者及び下請事業者に対して定期的に書面調査を行いまして、違反行為の発見に努めてきておるところでございます。  今般の円高状況にかんがみまして、親事業者が円高影響により下請事業者に対して不当なしわ寄せ行為を行っているおそれがあるために、円高影響が大きくてまた下請取引の多い一般機械、器具製造業者などの下請事業者約一万社を対象にいたしまして、下請代金支払い遅延、減額、買いただきなどの下請法違反行為が行われていないかどうかにつきまして、定期的に毎年行っている調査とは別に、今回特別に書面調査を行うこととしておりまして、ただいま鋭意準備をしております。来週中には調査票の発送ができるのではないかと考えております。  この特別調査の結果に基づきまして、違反の疑いのある行為が発見されましたならば、下請法違反被疑事件として所要の調査を今度は親事業者に対して行った上で、違反行為が認められれば親事業者に対して是正指導をするなどの必要な措置をとることとしております。
  112. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今政府委員からお答えいただきましたように、私が個別に調べただけでも、今下請業者の中では本当に、苦しくても自分みずからそういうことが言えない、また、親企業からの単価の切り下げ、下請料金の未払い等に対応しなければいけないというような、そういう切実な悩みも出てきているわけでございますので、これから不況が続く中にあって、そういう苦しんでいる下請中小企業に不当にしわ寄せがいかないように適切な対処をお願いしたいと思います。  最後になりましたけれども、来週多分この委員会で議論が行われると思うのですが、今回のこの緊急経済対策による中小企業対策の一環として、いわゆる中小企業リストラ法が提出される予定でございますけれども、先ほど大臣の答弁の中にもございましたけれども、法案の骨子は、新分野進出また海外展開を支援し、その円滑化を図るということで、その角度で見れば非常に有意義な法案だと思うのですけれども、もう少し突っ込んでみると、新分野進出や海外展開のできる、まだまだ余裕のある企業に対しての支援という性格が強いように思えるわけでございます。  そこで、本当に今困っているのは、そこまでいかない、現実に仕事がない、あるいは資金繰りが厳しい、そういう小規模企業または零細企業というのが多いわけでございまして、それらの企業に対してさらなる金融緩和措置等の実効性のある総合的な支援が必要ではないかと思うわけでござい ますけれども、最後に大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  113. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員の御指摘の件につきましては全く我々も同じ認識をしております。去る九月十六日の緊急経済対策におきましてもこの点を最も重視したわけでございまして、一兆円を超える中小企業向けの対策を講ずることを決定したところでございます。その中身は、運転資金についての融資制度の枠でありますとか融資条件でありますとか、あるいは保証条件でありますとかいったものについて緩和をする、こういうことを講ずることになっているところであります。  先ほども委員からお話がございましたところでお答えしたことでありますが、結果としてどういうことが起こっているかと申しますと、日銀の新規貸し出しの中で、統計によりますと、全体の新規貸し出しの中で政府金融の占める割合が五割を超えたというところまで政府の措置は踏ん張っておる、それに比べて民間金融の方はいささか問題があるのではないか、これは政府・与党の若手の議員が徹底的に調査をしていただきたいと、かたがたお願いを申し上げる次第であります。
  114. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 非常に情熱ある答弁、ありがとうございました。  中小企業に対しては、今まで余り光の当たらなかった、ある意味で言えばそういうところだと思うのですけれども、新政権になりまして、各経営者とも私たち連立与党の政治家に対して非常に期待をする声が高いわけでございます。今後とも商工委員会で、何としても中小企業支援対策通産大臣とともに前向きな議論を進めることを決意いたしまして、質疑を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
  115. 中井洽

    中井委員長 次に、佐藤剛男君。
  116. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 委員長、最初に御許可願いたいのですが、質問にちょっと使わしていただきたいために、資料配付をよろしゅうございましょうか。
  117. 中井洽

    中井委員長 はい、どうぞ。
  118. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 それでは、今お配りいたしますが、先ほど来、私、熊谷大臣の力強い御答弁を聞いておりまして、その根底が、これは文芸春秋の三月号、まだ新生党はできていないころ、内閣総理大臣「宮澤政治にモノ申す」という勇敢なる政治家発言として私は高く評価しておりますし、この中に出ておりますいわゆる規制緩和の問題というのは現実に今動き出しているわけでございまして、私、考え方につきまして、敬愛いたしております大臣の見解にまことに、この機会に改めて敬意を表するわけでございます。  きょうは、実は私、一時間続けてやりたかったのですが、三十分、三十分に切られまして、来週の火曜日に細かいお話をします。本当は、私も政府委員をやっておりましたから、政府委員はお帰りになっていいのですが、合理化を今やられるようでございますので結構なんでございますが、いらっしゃいますので、流れをお聞き賜りたいと思います。  一つは、大臣がここで御指摘されている第一の問題、ページ数でいいますと、三枚目の四百十二ページ、レスター・サロー教授、米国のマサチューセッツ工科大学の今総長になっておりますが、大臣アメリカにも留学され、いろいろ広い人脈も持っておられる。そして、しかもこのサロー教授のペンを引かれたことに、私は実は非常に共感なんです。といいますのは、六年前に彼と私は日米シンポジウムでやり合ったんでございますよ。  当時、為替レートが、一九八七年でございましたから、百五十五円くらいでございました。郡山でやったのです。そのころは民主党の顧問だった。それで経済学部の学部長だった。今やMITの総長になってしまった。そして、調べていきますと、オックスフォード大学で今のクリントン大統領の先輩に当たっているわけです。アメリカという国は、外国で留学が一緒だったというのはすごい派閥の意識を持っているわけでございまして、そういう意味で、非常に彼の思想、彼の哲学というのがクリントン政権に私は大きく出てくると思っているのです。  そのときに彼が一ドル百円だと言ったのですよ。一ドル百五十幾らのときです。彼の言っている百円の議論というのは、彼は「ゼロサム・ソサエティー」という本をつくってやっているわけでございまして、世界の貿易というのは、片一方が突出して黒になれば片一方は赤になるんだ、だから日本が黒字になっているからアメリカが赤字なんだ、こっちを抑えろ、こういう発想でして、そんなばかな話はないだろうということで、今、プラスサム・ソサエティーということで、そういう意味でウルグアイ・ラウンドだなんだとやっているのじゃないかという話を私はしたのですが、彼は絶対に応じなかった。  これは新聞に出ないことですが、日本嫌いで、民主党の経済顧問でございまして、彼の思想というのを関係各省庁、外務省もそうですが、いろいろな論文、よく調べておいた方がいいと思います。その意味で、この四百十二ページにありますレスター・サローが言っている、日本が貿易システムを破壊する、そのままいくと世界の国がリセッションにいってしまうぞ、こういう問題意識というのを私は全く懸念しているのです。  なぜ黒字になってしまうのかという議論は、今の経済といいますのは、経済学者で言っている人がいますが、魔の三角形、この三角形のトライアングルの一番突端というのが、昨年よりことしの方が経常利益が悪い、これはもう相当な悪さでありますが、そういう低成長、それから底辺にある片一方が財政収入不足、これは法人税だ何だが減るから、そういうふうな状況で、頑張っているのは消費税じゃないかなと私は思っているのですけれども、これと、底辺の角にありますのが対外黒字。こういう魔の三角形で、あの小さいときに遊んだ知恵の輪をいかにとるか。とれない縮小均衡の中に入ってきてしまったのです。そして対外黒字部門で、これは経常黒字というのがこれだけ出され、それから大臣、先ほど大畠先生に対する答弁でおっしゃられましたが、これが最初の一枚目に出ていることだろうと思うのですが、政府見通しの中において、非常に大きく変更してしまった宮澤さん。そこから一つ円高基調というものが出ていくという発端があったのだろう。六千億ドルと言われるような世界のマネーがあるわけですから、黒字幅の千五百億ドルの四倍ぐらいのものが動き出せば、ちょっとした形でいきますと、ばっと上がるという状況。それから、レスター・サロー教授のようなかなり力のある人間が言いますと、そのようになってしまう、私はそういう懸念を持っているわけです。  しかし、今回の場合は、さらに悪いことに、日本の為替というのがかつてアメリカに対しては高かった当時は、アメリカのドルはヨーロッパ通貨に対しては弱かった。だから逆に言うと、日本アメリカ向け輸出が減ってもヨーロッパ向け輸出が伸びた、こういう救いになっていたのですが、今日の状況を見ていきますと、アメリカに至っては、アメリカは対カナダドルを見ますと、三割近く上がっているわけですよ。アメリカドルの方が高い。それからヨーロッパの対欧通貨にしましても、大体一〇〇%くらいの水準、九〇から一〇〇くらいの水準ですから、そんなに動きがない。そこに従来と根本的に違い、黒字がたまってしまう構造になっており、私は非常に懸念しているのです。  それで、さらに問題は、なぜ黒字になるかというと、私はISギャップの問題だと思っている。企画庁長官おられますからお聞きしたいと思うのですが、総貯蓄から総投資を引いたものが対外黒字、IイコールSというのが事後的に一致するのが一番均衡の状況なわけでありますが、そのSが大きくなってしまった。Iよりもはるかに大きくなりつつある。そうである限り、構造的に黒字になってしまう。これがISギャップ論なんです。この問題は簡単じゃないのでして、ここら辺は消費税問題やら今の所得減税の問題で十分検討していただきたいと思います。私は消費税を上げることについて反対でありますが。  貯蓄率が日本は高いといいます。その高い貯蓄 率は、対GNPでいいますと、大体二十数%あるわけです。その総貯蓄率を家計ベースで計算しますと、三つ一の要素に分かれます。  一つは、貯金がふえるというもの、そういう形の一つの分類であります。これを金融資産貯蓄純増率というわけでありまして、企画庁の調査局長おられますが、その実態を眺めてみますと、これは上がってはいるのです。家計は、貯蓄に回れば借金もしている。  それから、もう一つの要素というのは、契約貯蓄率です。住宅ローンの借金を返すのはどこに入るかというと、契約貯蓄率に入るわけです。つまり、借金返済によって貯蓄率がふえてしまうわけです。住宅ローンの返済は国民所得統計の中で何を見るかというと、貯蓄率に行ってしまう。  それから、あとその他骨とう品だ何だの、実物投資率というものです。今の状況というのは、土地、家屋の借金、今ほとんどの家庭、その戸数は四千二百万ぐらいありますか、その人たちが新しいものを建てた場合には、これは皆住宅ローンを借りていますから、いわば住宅ローンというのがその家計の中に大きなウエートを占めている。そして、その返済をすると貯蓄率が上がっていく。下がらない。その結果、総貯蓄に比して投資が少ない場合には対外黒字が増大してしまう。この三つのものをきちんと解決しないとだめです。単に輸入だけをふやそうといったって、ふやしてもなかなかこの問題は解決しない。  それで、私が今心配している部分は投資部分であり、Iをできるだけ多くしなきゃいかぬ。ところが、Iを大きくしなきゃいかぬのですが、今日の日本経済を見ますと、過剰設備であります。  これは、統計の適正ストックと比較して、一つの計算方法ができるのですけれども、それをやりますとすごく乖離しています。いわば第一次石油ショックのときと似たようなのが過剰ストックである。いわば設備廃棄をするような時代に入ってきた。この状況が、いわば固定費が非常にたまってしまった。固定費がたまって、金利を払う。金利を払うわけだから、そのためには稼動させなきゃいかぬ。赤字でも生産している、あるいは赤字でも輸出せざるを得ない。  これで、ついことしの九月ぐらいまでは大体一ドル百十四円ぐらいで為替を組んでいたわけですが、これは百四円というようなことになってくると、十円下げるということは大変なわけだ。ですから、先ほど中小企業質問がありましたけれども、地方に行くと、私は福島なんですが、福島のところの電子機器のメーカーというのはたくさんあるわけです。日立もあれば、東芝だの沖電気だのあるのですが、そこの下請というところの人たちは、ついバブルのときというのはどんどん設備を、出せば注文がありましたから、人手不足であるし何だというので、リースをして機械は備えつけた。ところが、ぽんと切られてしまった。どこで切ってしまったかというと、下請関係というのを、今やファーイースト、極東、中国を中心とする極東に生産基地は移りつつあるわけです。そこで、下請というものの会社はあっても仕事がなくなって、中国だ何だあっちの方に、大体月五千円から、ちょっと上がっても一万円ぐらいの月給ですから、そういうところの形に今行っているのが私は現状だろうと思っておる。この状況というものは、空襲警報なわけですよ。警戒警報じゃないわけですよ、事態は。  ところが、そういうふうなことになる状況というのは、バブルのときもそうでしたが、資産インフレになるぞといったときにもう日銀が遅かった。日銀は資産インフレをはかる体温計がない、日本には。はかるものの指数がない。家計調査か何かのところで今出ているのは家賃。家賃当たりというのが、恐らく一〇〇〇〇の指数で八〇〇か九〇〇くらいしかないだろうと思いますけれども、そのぐらいのところの状況で見ていて、資産インフレについての認識も遅かった。ツーレートだった。ツーレートのところで今度はその荒療治をやって、日銀の三重野総裁と、この大臣の論文に出てますが、大臣おっしゃっている宮澤、私は日銀の見通しと、またそこのところで企画庁もしっかりしていなかった。しっかりとした把握をしていなかった、経済状態の実情を。ということですから、そして無理にバブル退治をやったのが今日の状況である、こういう私は認識なんですよ。  まずそこら辺で、大臣、それから経済企画庁久保田大臣、ひとつ私の考えに対する御見解をお聞きしたい。
  119. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 かつて三十年近く前に、数多くの経済学教科書を横に置きながら、我々に説教していた委員の姿を今はうふっと思い浮かべておったわけでありますけれどもISバランスといいますか、マクロの政策がきちっとしなければ経常収支の黒字は解消しないというのは、私は委員と同じ認識だと思っております。森羅万象、理論にわたるまでの委員の博識に、今さらながら感嘆をしておるわけでありますが、それであるがゆえに私どもは、これからの政策は小手先の政策では難しいというふうに考えているところであります。  一、二所感だけ申し上げますと、一つは、ちょうどレーガン政権のときに、オーバーエスティメードした為替レートによってアメリカ経済が惨たんたる状況になった。私は、日本が適切な経済運営をしていかないと、もちろん状況は若干違うにせよ、ある意味では同じようなほぞをかむおそれもなしとしないという感じを持っておりまして、それだけにこれからの政策展開は極めて重要だというふうに思うわけであります。
  120. 久保田真苗

    久保田国務大臣 過去の景気あるいは構造的な問題につきまして、私も大変拝聴させていただいたのでございますけれども、いろいろな対策がタイムリーに行われないということは非常に戒心すべきことで、どうしてもいろいろな対策というものは、その対策の中身に応じて、多少から相当のタイムラグを伴ってくるものだと思います。経企庁の仕事としましては、やはり相当の予見性といいますか先見性を持ってそれを適切に分析し、そしてカバーしていくということが非常に重要だと思います。  おっしゃった体温計というお言葉は大変すばらしい考えで、もしここに入れて三十秒で景気が出てくるようだったらとてもいいと思います。今のところは十分計ぐらいのところかもわからないのですけれども経企庁としましても、月々可能な最新の資料を集めて非常に努力しておりまして、産業界からのヒアリングもたくさん今やっております。そんなことで、私どもは、できるだけ先見性のあるそういうものを、体温計をつくらねばならぬということを非常に強く感じております。
  121. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 金のかからないというのじゃないのですが、一つ対策としてやっていかなければならない部門というのは、Sの問題を大きくしないためには、例えば住宅ローンの中におけるいわゆる返済の部門、これを返済期間の長期化というか、そういう形で薄めていく。  それから、自己資本というのがありますが、住宅公庫も自己資金がなければ金を貸さないですから、そういう自己資金をつくるために結局貯蓄するわけです、個人はみんな。頭金をつくるために事前にためるわけです。  それから、今度は家を買ってから毎月ずつ払うのですが、今やその負担というのが、かっては大体家計の中の一割ぐらいの感じだったわけですが、これが大きなウエートで上がっている、返済が。それに教育費というのが非常にかかってきておる。  久保田大臣、「惣領十五は貧乏盛り、末子十五で蔵が建つ」といううたが昔あったのは御存じですか。戦前は子供が大体五人いた。二十歳で結婚して三年ごとに子供を産みまして、三十五歳で産み納め。ですから、一番下の子が十五になるときというのは、当時は長寿社会じゃないですから父親か母親はいなかった。大体いないのです。しかし、一番下が十五ですから、三年ごとに上にお兄さん、お姉さんがいますから、それでゆとりが出てくる。惣領十五は貧乏盛り、一番上が十五だと下に三歳ずつで四人いるわけですから大変だ。ところが、末子十五で蔵が建つということで、家計のゆとり の問題を言っていたわけです。  ところが今日どうなのかといいますと、大体二人。まあ一・五四とかいいますが、それは最近の話であって、大体二十四から五で女性は結婚するわけです。平均しますと、夫は大体二・五、六歳ぐらいの差があるのです。二十五と二十八ぐらい、それで子供が大体二・二ぐらいの差で二人産んでいたのです。二十八で産み納めになりますから、一番下の子が小学校一年に行きますと三十五。そうしますと、女性の人に、あなた働きたいですかと言いますと、手を挙げまして、三人のうち一人はパートに行きますとやる。そういうのが女性が今パートだ何だあれに出ているという状況である。しかし女性の社会進出はそれだけじゃなくて、やはり自分が働いて住宅ローンの一部を返済しよう、あるいは子供の教育費にやろう、こういうふうな形でやってきているわけです。  そして、かつて惣領土五のときには貧乏盛りだと言っていたのですが、今や一番下の子が十五のとき、末子十五のときというと、大体二人ですから、お兄さんが高校三年か大学一年か浪人しているかどっちかなんです。そうすると、そのころに一番金がかかり出してくるのです。母親が大体四十三、父親と二・五ぐらい差があると父親が四十五、六、そのときが経済的厄年といって金がかかるのです。経済的厄年はそこから始まっている。  やっと二番下の子が大学に行きました、ああ安心しましたというと、大体そのころ大学を二十二で卒業して、二十八で産んだ子ですから母親は五十、父親は大体五十三ぐらい。そうなってくるときに、今度は、ああそろそろ定年を考え始めなきゃいかぬ。そうすると、老後の不安感を持ちますから貯蓄をしてやっているわけです。今国民のライフサイクルというのは、そうやって自覚しながらそういうライフスタイルでやっている状況です。ですからちょっとした、金を借りていて貯金もしておる、こういう状況です。  今恐らくほとんど、数字はまた次の時間にでもお聞きしたいと思いますけれども、そういう住宅ローンを持っている家計状況、余り細かいことは聞きません、そして対策を次の火曜日あたりにお聞きします。住宅ローンを持っている人は消費性向が、住宅ローンを持っていない人と比べますと、私の計算では大体一割近く減っているはずです。  そういう状況の中に国民はいるわけですから、このSの部分を軽くしてやる方法をきめ細かいことで考えてやる必要がある。例えば住宅公庫の償還期間の延長、頭金の減少などを行う。増大する住宅ローン返済分、つまりSを住宅投資、つまりIに回すようにする。大体みんなほとんど持ち家を持っているのです。昭和二十二年から二十六年ぐらいに生まれたいわゆる団塊の世代、今でいいますと四十二、三、その人たちというのはもう早い機会に、三十ぐらいのときに家を持ったのです。持ち家を持ったのだけれども、その持っている人たちというのがいわば今一番苦労しながらやっているわけでございまして、そういうところを考え対策をする。所得減税はいいですよ、大いに何でもやったらいいと私は思うのですけれども所得減税というと今度は消費税率アップという発想となる。そこのところが間違っています。家計状況を分析して、IとSとのバランスを回復すべき対策をやっていただきたい。これが私の考えなんですが、それに対して久保田大臣からお話しください。
  122. 久保田真苗

    久保田国務大臣 住宅ローンの重圧、それで定年まで本当に寿命をすり減らすような思いでマイホームを何とか手に入れられる人はむしろ幸いと言われるような状況は私もよく見聞きしております。  そして私どもは、今回本当に住宅投資というところへ焦点をぴったりと当てておりまして、それに対する融資、減税金利の引き下げ、戸数もふやす、こういった一連のものが私どもの、何と言っても細川内閣住宅内閣なんだ、それでやってみようじゃないかということでやっておるところでございます。おっしゃるように、まさにライフサイクルのそのような状況の中で、私は、それができたらそれでもうぱったりだということじゃなく、十分生活時間と老後を楽しめるような施策をやってまいりまして、本当にSの部分をIの部分に転化していく、これを個人のレベルで大いにできるように頑張りたいと思っております。
  123. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 今長寿社会といいまして、子供の還暦に親も立ち会う長寿国になったのです。大体子供の還暦に、六十歳になって親はだれかいるのです。父親か母親がいるのです。こういう中において、将来に対する不安感ということで国民貯蓄をするわけであります。大学を卒業させて五十三ぐらいになってから八十まで生きるわけですから。それで、そのうち今女性のあれというのは、夫との二・六歳の差と五・四歳ぐらい長生きするので、七年間というのは未亡人の社会なんです。長寿社会というのはそういう社会です。そういう形の中での消費活動というようなものはどうなのかということを分析して対策を立てていただきたい。  先ほど通産大臣はおっしゃいましたがアメリカのミドルをレーガンは税制改革でなくしてしまったわけですね。それから、消費税の高いところのヨーロッパというのは大体みんな失業率が高いのです。そこに相関性はあるのです。そういう形というのもひとつ分析していただきたい。  それから、私が心配している一番大きな問題は、今の日本経済に流動性がないということなんです。流動性がなくなっているのは、一つは土地です。土地の問題についていえば、譲渡所得税三九%、地価税の新設により搾り取るものはみんな搾り取ってしまった。その結果、土地が動かなくなってしまった。本当ですよ。相続をして相続税がかかって、譲渡するとさらに今度はその譲渡所得税で三九%かかるのです。今やっとマンションぐらいが四、五千万のが動き出していますけれども、持ち家指向は、持ち家の意欲はあるわけですから、土地の流動性を高める対策を立てていただきたい。  それから、ここで言いっ放しにしますが、株の場合、日経平均が二万三千円から二万四千円付近になりますと百兆円ぐらいの売り物が出てくるのじゃないか私は思う。それをいかに抑えるかということでありますが、大臣、企画庁長官、今個人資産が約一千兆円ぐらいあるのですから、そのうちの金融資産六百兆円くらいの相当部分をその下支えに回すような対策考える。例えば長い期間持っていれば、相続のときに簿価換算を認めるとかの対策です。今株をもっていれば将来は必ずもうかるのです。時価でやっちゃうからばしっとなるわけですから、そういうふうな何かの方法を考えていかないと、今の日本経済というのは大空襲、そして空襲の中における爆弾は何なのかというと過剰設備、この過剰設備問題については火曜日、労働省の雇用対策、あの交付金の問題についても私いろいろ注文いたしますから、火曜日については私のところの政府委員の方は結構でございます、三十分の部分ですから。内国調査課長、それから労働省の雇用、今の調整金の交付金をやっていただいている課長、それから家計指数の関係で出ておられる方々、総務庁の統計局、そういう担当課長で私は結構でございます。  ということで私、時間が来てしまいましたもので、これで終わりますが、また火曜日にお目にかからしていただきたい。
  124. 中井洽

    中井委員長 次に、中島洋次郎君。
  125. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 自由民主党の中島でございます。ちょっと風邪を引いていまして、お聞き苦しいところは御勘弁願いたいと思います。  私、久保田大臣は学校の先輩でございますので、古くからさまざまなシンポジウムとか講演会で遠くから拝見していましたし、熊谷大臣は、私は熊谷大臣の地元で七年間ほど記者生活をやっていまして、私は政治経歴は大変浅いのでございますが、お二人のさまざまな活動については比較的古くから見聞しているつもりでございます。  このたび、新しい政権にかわりまして、連立内閣も前政権の政策を受け継ぐというふうに承って おります。私は、経済政策というのは生き物に対処するような政策でございますので、必ずしも細かい点まで継承していただく必要はないかと思いますが、基本的な線においてはやはり継続性というものが大事かと思います。そういった点におきまして、今度の所信表明演説を中心に両大臣の基本的なお考えについてお聞きしたいと思うわけでございます。  まず第一点目として、現在の景気の現状に対する御認識をお伺いしたいのですが、大変に厳しいという御認識はお持ちのようでございます。ちょっと話が前に戻りますが、ことしの六月ですか、当時の船田経済企画庁長官が、景気はおおむね底入れしたという発言をなさいました。これは当時の政府の統一見解にはなりませんでしたが、当時、船田長官がそれなりの判断をする理由はあったと私思うわけでございます。景気動向指数とか、あと通産省が調べていらっしゃる産業動向ですか、あるいは前政権が行った十三兆円の総合景気対策、こういったものが効果をあらわし始めていたということがあった。その中におきまして、当時の船田長官がそういった判断をするそれなりの根拠があったと私は思うわけでございますが、こうして今振り返りますと、全くそれ以降景気は回復する兆しを見せておりません。  どうしてそういうふうになったか。これはたくさんの理由が複雑に絡み合っていることはもちろんでございますが、失礼ながら、その中の一つに、政権がかわった、これが一つの理由にあるのではないかという声もありますし、私もそうかなという印象を持っております。やはり、政権交代によります先行き不透明感、これは消費者あるいは企業においてもそういったことがあったかと思います。購買の意欲、消費あるいは設備投資、いろんな面で先行き不透明感から様子を見る、様子見という感じが日本全体に広がったのではないかという印象を持つわけでございますが、その点につきまして、両大臣の受けとめ方、御認識。  それから、久保田大臣には経済企画庁として今後の見通しについて、今年度下期には回復に向かうということを記者会見などで経企庁の見通しとしておっしゃっているようですが、この見通しに変わりはないのか、そういった点を含めてお聞きしたいと思います。
  126. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員から御指摘をいただきまして、委員が私どもの地元におられたというのを初めて伺いました。私の方は、委員のお父上とはもう役所の時代から、実はお宅の前で暮らしていたこともございまして、大変懐かしく思っておるわけであります。  御質問の、経済の情勢、景気の情勢についての基本的な認識いかんということでございますけれども、私はいささか委員と少し意見を異にしておりまして、これはもう、私が自民党の副幹事長、政調会副会長、一貫して主張し、議論をしてきたことでありますが、今回の経済の不振というものは、景気不振などという言葉を使うようなものではない、もっと根本的な大きな経済構造的な問題を抱えている、経済危機と言うべきだということを私は自民党内にいたときから声高に申し上げ続けてきたところであります。これは党内の会合におきまして。だからこそ亀井委員会等にも私自身が働きかけてつくっていただいて、幾多の議論を重ねてきたところでございます。  したがいまして、船田長官の時代にいろいろなことがありましたけれども、私どもから見ますと、冗談ではない、この状況の中であんな判断をするなんてあり得ない、何たることぞと船田長官当人にも食ってかかったことを覚えております。私はあのときに、よくなったなどと言うのは錯覚以外の何物でもない、そんなデータを教えた方も悪いと今でも言っておるわけでありますけれども、私の気持ちはその後もずっと変わっておりません。それほど、およそまともに経済世界にいる者ならば、これはだれでもわかってきたことではないだろうか。  あの当時、大中小さまざまな企業の方々、農協の末端に至るまで話を聞いておりますと、構造的な問題の重荷といいますかを背負っていたものというのは大変重かったと私は思っております。先ほど来、各要員からの御指摘にありましたように、土地市場、金融市場、資本市場、設備投資の市場とあえて言いましょうか、そういうところにおったバブル影響というのは大変なものであります。加えて、超長期的な構造問題がございます。こういうようなものに目を覆って、幾ばくかの数字を見て、まるで世間をごまかすような、期待感を持ち上げるような話をすること自体が誤りだとその当時から私は主張してきたわけであります。  ですから、今の状況というのは、政権が移動したからとかそういうことではなくて、どの内閣、どの政権であろうとこういう状況に追い込まれただろうと私は思います。だからこそこの構造改革をきちっとやらなければならない、こう考えておるところであります。
  127. 久保田真苗

    久保田国務大臣 底入れという御発言がございましたその六月に、実は後から速報の示すところによりますと、その時点に大変マイナスの成長を記録したわけでございまして、それは、例えばGNPのその期で〇・五%マイナスというその数字は、内需の寄与度が〇・〇、そして外需の寄与度がマイナス〇・五ということでございますから、それは大幅な輸出の減という状況であったと思います。そこにはやはり二月から始まりました円高影響、これが企業家の気持ちに慎重さを与える、あるいは輸出が伸びないという状況のもとであったことでございますから、私は、あえて新内閣になってから景気の底に入ったというようなことではないと思っております。そして、ここにはバブルの後遺症というものがございまして、その後遺症が非常に長引いておりまして、それで、これが不良債権といったようなものも近未来において償還されるという性質のものでないということが、そういうものが多いということがわかってまいりまして、その上からも企業家マインドを冷やす状況になってきていると思います。そういう意味で、底入れと言われるその発言についての関係については、私もそのように認識しております。  また、今後の問題につきましては、下期の問題でございますけれども、これは私どもは予断を許さない状況だというふうには言っておりますけれども、宮澤政権の時代からとられてきました一つの公共事業、こういったものの累次の積み重ねによって公共投資及び住宅投資にはこの面で少し明るい面が出ておりまして、それが景気を下支えしているという状況もございます。今後はますますその効果が出てくるということも十分期待する理由はあるわけでございますので、これに加えましてその他の施策、すなわち来年度の予算といったようなものも編成を考えるということから、私どもはできることなら下期にこれを上向かせていくという努力をするのはもう当然のことでございまして、経企庁の立場は単なる評論家と違うものですから、ぜひともその面に向かって皆様にもお呼びかけしたいというのが本音でございます。
  128. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 ありがとうございました。  私も、この経済が引き続き低迷しておる最大の理由の一つというのは、実は、やはり今久保田大臣もお挙げになった円高というものがあるかと思います。熊谷大臣もおっしゃいました構造改善、これは大変に私も同感で、必要であると思うわけでございますが、この円高という問題が産業の構造改革に多大な障害を与えていると思うわけでございます。  輸出関連産業では、この不況円高がプラスしまして、さらにアメリカや、さらには役所から、貿易収支を改善しなくちゃいかぬ、輸出も自主規制してくれとさまざまな要請をされておる。そういった中で、企業努力としまして、コストの削減とか合理化に加えまして海外への生産のシフト、これは大規模に進んでいるという現状があるわけでございます。  一例として、これは北関東の群馬、太田市というところ、これは自動車、電器の町でございますが、そこでは最近、商工会議所が中心となって現状認識の相談をやったわけでございますが、その 中で、やはりこの円高によりまして国内の自動車生産が、最盛期の年間一千四百万台が、メーカー側が北アメリカに生産をシフトしたため九六年には約半分に落ち込む、この北関東に来る仕事も半分に落ち込む、失業者がかなり出るだろう。さらに、家電の関係もメーカーの海外進出が進んでおり、国内では何をつくればいいのか考え込んで頭を抱えているというのが関連会社の実態でございます。さらに輸出は、そういった海外からの圧力あるいは役所からの圧力で大変に減ってきている。そういう一例が、これまで八〇年代日本の産業を引っ張ってきた家電業界でございますが、カラーテレビがことしに入って輸出が二五%減って輸入が四五%ふえている。ことしに入ってからカラーテレビについては日本は輸入国になった。さらに自動車につきましても、まだ輸出の方が多いのですが、輸出が六%減って輸入が一二%、倍ふえている。これは、円高で競争力がなくなったということと、やはりみんな海外に生産をシフトしている、そういった実情があるわけでございます。私は、現在の状態を放置しますと、国内というのは失業と関連企業の倒産をふやすだけだと思うわけでございます。  先ほど来、新政権緊急経済対策の話がございましたが、これにつきまして熊谷大臣は、緊急経済対策発表の後の記者会見で、今回の緊急経済対策は「中長期的に構造改革を進めるための第一歩だ」、第一歩という言葉を使っております。その意欲はわかるのでございますが、何分これでは今後のシナリオが全く見えてこない。低迷を続ける景気というのが具体的にいつからどういった形で成長軌道に乗っていくのか、ここら辺が見えてこないということで、先行き不透明感、まだまだ大変に産業界に不安感を与えているわけでございます。  さらに、新聞紙上で、通産省が自動車業界の雇用調整に本格的に乗り出すということを言いました。その受け皿というものが正直言ってないのではないか。鉄鋼、造船、そしてその後は家電、自動車と、さまざまな業界がその時代の経済を引っ張ってきたわけでございますが、今のこの家電、自動車、これがここまで衰退したときに、構造改革といってもどういった方向でリストラを進めることができるのか、具体的な受け皿という業界があるのか。  熊谷大臣は、さきの所信表明の中で「明日の我が国経済をリードする新たな産業の発展基盤の整備に努めていく」とおっしゃっております。これはその方向でやっていただきたいわけでございますが、やはり具体的なシナリオを示してほしいというのが大変多くの声でございます。そこら辺をぜひとも熊谷大臣に基本的なお考えをお聞かせ願えればと思います。
  129. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 私は、現在の状況というものについては、もう中島委員が御指摘したとおりだと思いますし、我々もそのことを共通の認識として、いかにしてこの状況を打開していくかということに今腐心をしているところであるわけですが、この方向というのは、やはり基本は企業あるいはその企業の所属する産業の再構築といいますか、リストラと言われるものをきちっとやるということがまず第一だろうと思うのであります。  しかしそこで、今御指摘のように、ならばそこから失業者が出てくるじゃないかということに対しましては、やはりこれはまさにそれに対する受け皿を用意していかなければならない。新しい分野を開拓する、新しい産業を用意する、あるいは規制緩和その他の制度的な枠組みを変更いたしまして新しいインダストリーをつくり上げていく、新しい職業の機会をつくり上げていくということが第二であろうと思います。  しかしながら、そういったことだけではこれはなかなか難しいわけでございまして、三番目に、やはり基本的には内需拡大、内需主導型の活力ある成長路線というものを早く確保しなければならない。そのための財政金融政策の活用ということが大事だろうと思うのであります。  これらの政策を実現していくためには、物には順序というものがございまして、やはりシナリオを書くだけで終えるのではなくて、一つ一つ積み上げていく必要があるわけでございます。  我々新内閣におきまして、緊急対策を講じた後、早速平岩研究会を発足させていただいて、年末までには全体としてのシナリオをつくっていく。さらに加えて、年末までの予算編成に向けて幾多の作業を積み重ねていこう、税制改革もそうでありますし、予算編成のためのそれぞれの作業を詰める。その上で、今申し上げたことに加えて、私ども通産省から見ますと、産業構造政策の展開、こういったものを積み重ねていくことが必要だろうと考えておりまして、今、当省としても産業構造審議会等でこうした方向に向けての作業を進めているところでございます。
  130. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 一部に、受け皿づくりとして通信、電気といった分野が想定されているという報道もあるわけですが、熊谷大臣の頭の中で、具体的な受け皿として考えている分野がおありでしたら、ちょっと簡単にお聞かせ願いたいと思うのです。
  131. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 思いつきみたいなことを言ってもあれなんですけれども、例えばマルチメディアなどという分野があるというふうに聞いております。ところが、これは放送法であり、電波法といったものとひっかかってしまう。私は、結局、だから先ほども委員質問にもお答えしたときに申し上げたことでありますが、一つは、制度的な枠組みを変えていくことによって新しい職業機会、新しい産業が出てくるというものもあるでしょうし、いま一つは、やはりシーズというか、そういう段階なのかもしれませんが、非常に多くの技術革新の芽が出てきていることも事実でございまして、こうしたものも新しい産業、新しい分野を形成することになるだろうと思います。  そしてもう一つ、両方に絡むのでありますけれども、どうも日本の場合は、ベンチャービジネスといったものあるいは新しいエンタープリネアシップみたいなものを育てる仕組みが不足しているような気がしてしょうがないわけであります。例えば金融なんかについてみますと、結局、先進国で既に成功している大型なものをみんなで寄り合って金を出し合ってやるというのは得意なんですけれども、全く今まで見たことがない、そういうフロントランナーとしての事業をやるということになると、途端にだれも引き受け手がいない。どうも資本市場でこういったベンチャーの資金を調達するという仕組みはうまくできてないのではないか、こういう感じもいたします。  それぞれ問題点もあるようでありますので、そういったところを今一斉に作業として提起をいたしまして、詰めていきたいと考えているのでございます。
  132. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 ありがとうございます。ちょっと時間がないので、次の質問に移ります。  対外的な経済関係の構築につきまして、私は、多角的貿易体制の維持強化、自由貿易体制の維持強化、これに大賛成でございます。しかし、そういった中で日米包括協議、さらには、全体だけではなく各個別の分野にまで政府間協議が現在行われている。私は、政府間協議が行われること自体も決して好ましくないと思います。さらに、この個別協議、現在東京で自動車分野が行われていて、きのうで終わるかと思ったら、きょうもやっているというお話です。中間報告は来年一月になりますので、まだ途中経過だと思いますので細かい点は質問を省きますが、日米貿易不均衡の大変大きな部分をこの自動車が占めているという現状があって、アメリカからも大変ヒステリックな反応を受けている。現在、あしたから東京モーターショーが始まりまして、アメリカ・ビッグスリーの首脳も来日している。国内の需要の刺激になるということが期待されているわけでございます。  そうした中のこの日米包括協議の自動車分野の政府交渉で、きょうの新聞報道ではコーポレーションアプローチという概念が出たそうでございます。これは新聞報道でございますからわかりませんが、日米双方の努力を客観的に評価する基準 だというふうに伝えられております。今までアメリカ側が数量規制というものに大変こだわってきている。私は、この数量規制というのは管理貿易につながりますし、政府が決して約束すべきものではありませんし、ましてや政府が各業界に押しつけるべきものでもないと思うわけでございます。この数量目標というものに関する大臣の基本的な認識、お考え、そしてできれば、きょう新聞にも出ていましたコーポレーションアプローチ、これが将来的に数値目標となる懸念はないのかという点をお聞かせください。
  133. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 後で事務当局から補足説明をさせていただきますが、日米フレームワーク協議につきましては、経緯的に申しますと、ことしの四月におけるクリントン大統領・宮澤総理会談において事がスタートいたしまして、幾多の紆余曲折を経た後、同じクリントン大統領、宮澤両首脳によって共同声明が出されてこの協議がスタートすることが決められて、中身についても大枠が決まったわけでございます。細川内閣といたしましては、これらの後を受けて、そして、この交渉の当事者になっておるわけでございます。  確かに御指摘のように、一般的に言えば、通商協議というものはガット等のいわば多角的な枠組みの中で行われるのが望ましいわけでございまして、私も実は八月以降、韓国、中国、そしてASEAN諸国の経済閣僚との会談をいたしました。また、通産省にヨーロッパあるいはオーストラリア等の経済閣僚が何人も訪れてまいりました。すべてがこの日米フレームワーク協議の行く末について非常に疑念を持ち、何かうまいことをやられてしまうのではないか、俺たちを外してやるのではないかという気持ちを持っておられる。そんなことはないのです、すべて決まったことは均てんされるのですということで申し上げているわけであります。  こういうことを考えますと、やはり多角的な場でやるというのが望ましいことはそのとおりだと思うのですが、現実に、日米の間におきまして他国にはない経済不均衡が発生しているという背景の中で、経緯的には交渉が始まったものと私は考えておるところであります。始まった以上は成功させなければならない。しかしそれは、アメリカの言い分を一方的にのむ、おどしに屈してのむというようなことではなくて、私はむしろ、そういう我が国の問題を外圧利用型でやるのではなくて、自分たちの問題として、自分たちの生活をよくするために自分たちの手で改革をしていくという姿勢をとるべきではないかということを申し上げているところであります。  さて、そういう考え方で申しますと、この数値目標あるいは数量基準というようなことについては、言われるようなものについては既に七月の日米の間で決着がついていて、とてもそんなことはしないんだというふうに私ども理解をいたしておるところであります。ただ、いよいよ事務レベルで話し合いが始まりますと、具体的になりますと、何が数値目標で何が客観的基準かというのが、それぞれ思惑が違うところが出てくる。これは後ほど補足的に事務方から発言をしてもらいたいと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、私どもとしては、我が国の経済をより透明度の高い、より競争性の高い社会、そういった市場経済につくりかえていこうという方向が目標とされているわけでありまして、それと逆行するような、まさに委員御指摘のような管理貿易的な、あるいはそれをさらに引き延ばしていけば、この国の経済を社会主義にでもしなければ到底できないような、そんなことを我々が受け入れることはできない、私はそう考えているところであります。
  134. 渡辺修

    ○渡辺(修)政府委員 新聞等に報道されておりました交渉のやや細部にわたる技術的な御質問でございますので、私の方から補足的に御説明させていただきます。  先生御指摘のとおり、アメリカサイドからは、日本アメリカにおける工場、これを我々トランスプラントと呼んでおりますけれども、そこでのアメリカ製部品の購入を拡大すること、それから今度は日本サイドでアメリカからの部品及び完成車、両方の輸入を拡大すること、このいわば三つのカテゴリーが今問題になっておるわけでございまして、それぞれにつきまして、その数量がシクニフィカントに、つまり飛躍的に、相当程度増大するように各般の指導をしてほしいということで、昨日提案された具体的な中身についてはこの場では省略させていただきますけれども、それについて強い期待を込め、かつその具体的なやり方なり水準についてはこれから逐次相談していこう、こういう趣旨の話があったわけでございます。  これに対しまして我々は、今大臣からお答え申し上げましたような、将来の目標値ということは、これを考えるべきではないという強い意向を表明した上で、今御指摘のコーポレーションブランというものは、実は今の三つのカテゴリーのそれぞれ輸入をして拡大していく、あるいは購入を拡大していくためにはアメリカ側の品質の向上その他の努力が不可欠でありましょう、またあわせて、日本のユーザーの方の努力も必要でありましょう、そういった両方のそれぞれの努力というのをどういうふうにしていくかということを、ひとつ具体的なやり方というのを何かの基準をつくってそういうものをまず定めましょう、それに基づいて過去の実績というものをそれでよくフォローアップしていって、どういうふうな努力がそれぞれ行われたかというのをお互いに評価しましょう、評価した結果何らかの形でこれを改善していかなきゃいけないということがあれば、それはお互いに知恵を出し合って改善しましょう、マーケットは動いておりますからそういうものも全部兼ね合わせて評価しましょう、そういう今の三つのようなカテゴリー、つまりステップを踏んだ日米双方のお互いの努力の積み上げ、これをいわばコーポレーションアプローチというかコーポレーションプラン、そういったような言葉でやっていくのが最もオーソドックスなのではないでしょうか、こういったような我々の考え方を申し上げたというのが我々の骨格でございまして、それが一部でコーポレーションブランと報道されておるものでございます。  我々の基本的な立場というものは、今大臣から御説明申し上げたとおりの方針で対処いたしておるところでございます。
  135. 中島洋次郎

    ○中島(洋)委員 時間が来ましたのでこれで質問は終了させていただきますが、あえてそのコーポレーションアプローチ、こうした客観基準が数値目標にならないようぜひともお願いしておきたいのと、今後日本車が総量規制された場合には、海外に移転したものも含めて、大幅な規制を受けて日本の産業々のもの自体が空洞化を通り越して壊滅するという危険を指摘して、ぜひとも通産省に今後の産業のリーダー役を果たしていただくようお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。     —————————————
  136. 中井洽

    中井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、参考人として日本銀行理事小島邦夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 中井洽

    中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。     —————————————
  138. 中井洽

    中井委員長 次に、小此木八郎君。
  139. 小此木八郎

    ○小此木委員 神奈川一区から選出をされました小此木八郎でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  きょうは、こういった国会の場で初めての質問を国会議員としてさせていただいております。朝十時から拝聴、拝見をさせていただきまして、ここで質問をされる方、最初の二、三分あいさつから始めてそれから質問に移られる方、あるいは三十分の質問の中で十五分間大演説をされる方々もいらっしゃったように思います。それぞれの方がいらっしゃったわけでありますが、本当に深刻な 問題を質問されたと思っております。私は新人らしく、わからないところも本当に多うございます。両大臣におかれましては、新人にもわかりやすく、あるいは今、大変わかりにくい政治ということも言われております。国民の目線に合わせた説明のされ方でお答えをいただきたいと思っております。  先般、両大臣も所信でお述べになられましたように、我が国経済は設備投資個人消費の落ち込みが続き、企業収益や雇用情勢も大変厳しいものがございます。しかし、皆様の認識されている以上に経済の第一線に立つ方々の景気認識はより深刻なものがあろうかと存じます。特に中小企業経営者の方々やそこで働く方々、この方々の先行きの不安というものは極めて強いものがあると、私も地元等を歩きましていろいろな方々にお会いをいたしまして、感じております。それぞれの委員と同じ立場でございます。  また、先般エリツィン・ロシア大統領が来日されまして、政府は日ロ間の関係改善に大きな一歩を踏み出したと手放しで評価をされていたような気がいたしました。しかし、帰国するや否や、核廃棄物を日本海に投棄するという暴挙に出て、我が国に大きな不安を与えております。  そこで私からは、金利問題、中小企業問題、対ロシア政策についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず現在の景気について、今後どのように考えておられるか、あるいは景気の回復時期はどのくらいの時期に目標といいますか、予測をされておられるか、通産大臣経企庁長官、さらには日銀当局の方にお聞きをしたいと思います。
  140. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 中島委員に引き続いて小此木委員の御質問をいただきまして、私も何か年をとったのかな、みんなお父上の話をしなければならぬのかなと。小此木委員の父上は通産大臣経験をされました。私どもも、かつて自民党におりまして大変な御指導をいただいたわけでございまして、これから、今度は攻守所を変えてお互いに議論、切磋琢磨をさせていただきたいと思うのであります。  さて、今御質問景気の現状についての認識、今後どうなるのかということでございますけれども、企画庁長官が全体としての経済の見通しについてお答えをされるだろうと思いますが、私はこの国の経済はなかなか容易ならないところにあるというふうに考えております。しかし、さらばといって、絶望的になる必要はないわけでありまして、的確な対策が講じられれば、まだ壮年期にある日本経済は立ち直ることができるし、将来の発展は期すことができると私は思っているところであります。  問題は、いつごろかというのは、この病の深さからいたしましてすぐに来るものではないだろう、そして特効薬でたちどころに立ち直る、ユンケル黄帝液みたいなものもないだろう、私はそう思っております。しかし、若干時間もかかるけれども、我々が今方針を決めた、その方針のとおりにきっちりと対応策を講じていけば必ずこの国の経済は立ち直る、こう考えているところであります。
  141. 久保田真苗

    久保田国務大臣 私どもも、景気の現状は大変厳しくて、そして特に個人消費、それから設備投資といった非常に大きいところのものが低迷しているということを感じております。しかし、その反面、対策によって喚起されてきました公共投資、それは非常に堅調でございますし、特にその中で住宅建設、そして住宅建設がすそ野の耐久消費財などからげて出てきているという状況は見られるわけで、一〇〇%以上の公庫融資の申し込みがあるということは、私ども非常に心強い、そこに一つ投資の大きい機会があるように思うわけでございます。  したがいまして、景気の回復がいつかということは、私にもなかなか申し上げられないし、経企庁としても、マインドの冷えから今後の景気の原状回復については予断を許さないというふうに申し上げているのでございますけれども、反面、例えば今年度、平成五年の中で、今まで前倒しにやってきた前政権時代からの経済対策、そして今回新政権でいたしました緊急経済対策、それの効果が出てくるのは下半期だということを考えますと、私どもは、そこに期待すべきもの、理由があると思いますし、またそれにこたえるような経済運営をぜひやっていかなければならない、そう思っているわけでございます。
  142. 小島邦夫

    ○小島参考人 お答え申し上げます。  私どもの方の見方も大臣の見方と特に変わっているわけでございませんで、確かに現状、公共投資住宅投資が増勢を続けております一方で、民間需要のかなめをなす設備投資とか個人消費といったものが引き続き低迷をしておりますために、依然として停滞基調を脱していないということだと思います。  回復の時期というのは、確かに非常に見方が難しいところでございまして、今ここで具体的に申し上げられるわけではございませんが、こうした中で、やはり景気回復の基礎的条件ともいうべき耐久消費財とか資本設備のストック調整は進んできておりますし、今企画庁長官の触れられましたような財政面からの刺激効果につきましても、補正予算の成立が六月であったということを考えますと、むしろこれから顕現化してくるという部分も多いはずであるというようなこともございます。  それから、最近の金利水準の全般的な低下というものは景気に対して相応の支援効果を上げるということが考えられるわけでございまして、こういったことを踏まえますと、景気回復に向けての環境の整備といったものは進みつつあるということだと思います。これからこれが現実の回復にうまくつながっていくかどうか、実体経済企業マインドの動向に即して、一層念入りに点検していかなければいけないというふうに思っているところでございます。
  143. 小此木八郎

    ○小此木委員 済みません。日銀さんにもう一度、四点お尋ねをいたしたいど思いますが、九月二十一日に引き下げられた公定歩合、現在一・七五%は現段階においてどのような効果があったのか、あるいはこれからどのような効果を見せるのか、現在の御認識をお聞かせいただきたい。また、市中金利の低下に適切に反映されているのかどうか。一方、実施のタイミングが遅過ぎたのではないかとの声も多く聞いておりますが、実感はどうでありましょうか。最後に、これのもう一段の思い切った引き下げというものは考えておられるのであろうかどうか、お聞きしたいと思います。
  144. 小島邦夫

    ○小島参考人 お答えを申し上げます。  今回の公定歩合の引き下げの効果からお話ししたいと思いますが、確かに現在、景気の低迷が長期化している、ないしはリストラの進捗というものによりまして、企業の借り入れ需要が伸び悩んでいるということがございます。したがいまして、なかなか金融機関の貸し出しが目立って増加してこないというようなことから、金利下げてもそう効果がないのではないかという議論があることは承知しております。  しかし、金融緩和の効果といいますのは、金利の低下を通じまして、間接的にではありますがさまざまな方面に効果を及ぼしていくという性格のものでございまして、これまでも累次にわたります金融緩和を通じまして、市場金利でありますとか貸出金利は順調に低下をしてきております。今回の公定歩合引き下げ後も、例えば短期、長期のプライムレートといったものは既往ボトムを下回る歴史的な低水準まで速やかに低下をしてきている、これがこれから恐らく、具体的な貸し出しの金利といいますか、の方に反映してくるタイミングに来ていると思います。このような金利低下でございますが、これは当然のことながら、企業の収益を下支えするということで、先行き景気回復へ向けての基盤を整備するという上で十分な効果を発揮するはずでございます。  私どもとしましては、今回の引き下げの措置が、これまでの金融緩和の累積的な効果でありますとか政府によります経済対策の効果と相まちまし て、我が国経済をインフレなき持続的成長経路に移行させるという上で確実に貢献するものというふうに考えております。  それから、今回の金利引き下げのタイミングについてのお尋ねでございますが、先ほども申し上げましたとおり、私どもとしては、現在の景気につきまして、依然として停滞基調を脱していないというふうに申し上げたわけですが、こういった状況を踏まえまして、この夏以来、弾力的な市場調節のもとで市中金利の低下を図りながら、春先以降、急激な円高でありますとか冷夏、長雨影響といったものを含めて、経済情勢及び金融市場の動向を注意深くウォッチしてきたわけでございまして、そうした中で、経済活動に回復の兆しが見られないという状況にかんがみまして、先般、公定歩合の引き下げによって一段の金利水準の低下を促し、金融政策による実体経済面へのサポートをさらに強化するということが適当と判断した次第でございます。  私どもの政策運営に関する御批判は謙虚に耳を傾けるつもりでございますが、私どもとしましては、今回の措置は適切なタイミングで実施できたというふうに考えているわけでございます。  それから、もう一段の金融緩和があるかどうかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、現時点で金融面でなし得る最大限の措置をとったつもりでございます。もちろん今後とも、これまでの数次にわたる金融緩和の措置でありますとか経済対策の効果を含めまして、実体経済とか企業マインドの動向を注意深く見守っていくというつもりでございますが、現在、今後一段の金融緩和が必要であるというふうには考えておりません。
  145. 小此木八郎

    ○小此木委員 以上で日銀に対する質問は終わります。どうもありがとうございました。  続いて、中小企業問題に移りたいと思いますが、通産大臣にお尋ねをいたします。  国内景気の低迷に加え、円高進行によって多くの中小企業が苦境に立たされております。ここで、政府の追加の景気対策はいつやるのか、補正予算の提出時期あるいはその実施内容についてお聞かせをいただきたいと思います。
  146. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 今回の追加的景気対策については、御案内のとおり、円高差益還元あるいは規制緩和、さらに財政金融措置と一連の措置が講じられたわけでありまして、累次できるものから次々に実施されておるということでございます。ただ、補正予算につきましては、これは現在財政当局が中心になりまして政府部内で検討をしているところであります。  今回の追加的景気対策内容でございますけれども、これはもう既に所信表明その他で御説明をしたところでございまして、ここで繰り返しをする必要はないかと思いますけれども、中小企業対策につきましては特に今一番力を注いでいるところでございます。一兆円に及ぶ金融政策を中心に、政府系金融機関からの融資措置を中心に、しかも、条件等につきまして、現在の状況を勘案をいたしまして条件緩和等を図ることにいたしているところでございます。
  147. 小此木八郎

    ○小此木委員 また、こうした極めて厳しい状況にかんがみ、中小企業対策を抜本的に強化拡充すべきだと考えておりますけれども、中小企業の資金繰りについて質問したいと思います。  政府系中小企業金融機関の貸付規模の拡大、貸し付け条件の緩和、あるいは既に借り入れた部分に係る弾力化、このようなきめ細やかな金融対策を講ずるべきであると思いますが、いかがでありましょうか。また、これらの措置を一刻も早く実施すべきであると考えます。  同様に、民間金融機関が過度に慎重な融資姿勢をとっていることによって苦境に立たされている中小企業者も多いと聞いています。これに対する通産省としての考え方をお聞かせください。
  148. 長田英機

    ○長田政府委員 非常に厳しい状況に置かれています中小企業のために、金融の円滑化ということは非常に重要なことだと思っております。このため、先ほどから大臣からお答えしておりますように、今回、九月十六日の対策におきましても、総額一兆円を超える政府系中小企業金融機関の貸付規模の追加を決定したところでございまして、具体的には、運転資金の貸し付け、その貸し付け要件の緩和、貸付規模の追加、そういうようなことを行うこととしております。  さらに、今御指摘の民間金融機関の問題でございますけれども、民間金融機関の融資姿勢につきましては、従来より、金融当局におきましても、金融機関が過度に消極的な融資姿勢に陥ることなく、健全な経済活動に必要な資金を円滑に供給するよう適切な対応を求めてきたところでございますが、先般の緊急経済対策に基づきまして、さらにまた金融当局は、民間機関に対しまして、これは中小企業を含めて、今後の景気回復に向けて資金の円滑な供給が図れるよう、融資相談の充実、迅速適正な融資審査に努めるとともに、リスク管理の適正化等融資体制の強化につき営業店に至るまでその趣旨を十分徹底させるよう努めるという指導を行っておりまして、万全を期しておるところでございまして、当庁としては、その実効が上がることを大いに期待しておるところでございます。
  149. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 全般的には今中小企業庁長官が説明したとおりでありますが、委員日本銀行の方をお帰しするのがちょっと早過ぎたと私は思っております。いるときに今の話をぜひしていただきたいのでありまして。  私は、今回の不況の特徴は、金融システムに問題があるために、特に中堅中小企業を中心に、いささかこの金融のところが、民間金融が少し問題が出ているんじゃないか。これは日銀の統計自体に出ているところでございまして、それをこのままにしておいていいのか、なぜこんなことになっておるのか、この辺は、私自身が別にまだ、どうしてそうなったのかということを探り当てたわけではありませんけれども、これは一番勉強していかなければならないところではないか。これはもう与党、野党を問わず、私はもう、閣議になりますと大蔵大臣に毎日声を大きくして要求をしておるわけでありますけれども、ひとつこのメカニズムをきちっと追求していくことが大事ではないかな、これは、中小企業の声を代表する通産大臣として頭の真ん中にいつも置いていることでございます。
  150. 小此木八郎

    ○小此木委員 どうもありがとうございました。  大変に厳しい情勢であること、もう本当に私も声を大きく聞きますし、両大臣にも御指導いただいて、一緒になって考えてまいらなければならない問題であると思います。  時間がありませんので、次に対ロシア政策について質問をさせていただきます。  新聞報道されましたロシアによる放射能物質の日本海海洋投棄について、その事実関係、ロシア政府から事前連絡があったのかどうか、これをお伺いをしたいと思います。  また、こうした行為は国際条約違反ではないかと考えますが、政府の見解を伺いたいと思います。
  151. 堤富男

    ○堤政府委員 お尋ねの二点でございますが、事前情報があったかという点につきましては、ございませんでした。  それから、第二点の条約違反かどうかといいますのは、これはロンドン条約と言われております海洋投棄に関する条約がございます。ただ、この条約の中で、低レベルのものについては、実は条約上の法律的な義務という形ではございませんで、一種の紳士協定的な意味でこういうものを捨てないということを決議したことはございます。そういう意味では、正確に言いますと、その決議に反しているという意味では、国際法的な違反ということではなくて紳士協定としての決議違反ということになろうかと思っております。
  152. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 事実関係については今長官から説明したとおりでありますが、私ども日本政府としては、今回のみならず、今後も海洋投棄が行われないよう、政府としてロシア側に断固たる態度で継続的に求めていくことが必要と考えております。企画庁長官もおられますが、これは閣議に おいて一番議論の沸騰したところでございまして、そうした方針で臨んでいきたいと考えておるところでございます。
  153. 小此木八郎

    ○小此木委員 日本政府からの大変強い抗議があったということでありますけれども、今後のことなんですが、日本政府として今度の海洋投棄について監視体制というものをしくおつもりはあるのか否か、お聞かせをいただければと思っております。
  154. 堤富男

    ○堤政府委員 監視体制というよりは、基本的には外交ルートあるいは外交努力を通じまして、そういうことをやらないように繰り返し申し上げるということでございます。もちろん、今後そういうことがあった場合、連絡があることを我々は期待しておるわけでございますが、あった場合にはすぐに、追跡調査というよりは、むしろやめていただくということに力を注ぎたいと思っておるわけでございます。  それから、影響調査につきましては、我々としては随時やってまいりたいと思っております。
  155. 小此木八郎

    ○小此木委員 それでは、監視体制という具体的なものはもうとるあれはないということですね。
  156. 堤富男

    ○堤政府委員 監視体制といいますのは、どこにそれを捨てるかということがなかなかわからなくて、日本海全部ですとか、あるいはほかの海を全部見張るということはなかなか難しいと思っております。ですから、そういうことよりは、有効性という観点から、特にこれは鋭い議論をしたことはございませんけれども、むしろ繰り返しやらないようにロシア側に抗議を申し続けるということが非常に重要なことだと思っております。
  157. 小此木八郎

    ○小此木委員 次に、対ロシアの債務の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、現在、民間、公的債務を合わせて二十三億ドルに上ると聞いております。今後どうされるのか、御答弁をいただきたいと思います。  また、貿易保険の債権が焦げつくおそれがあるとも思いますが、これに対して通産省としての御見解を賜りたいと思います。
  158. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 実は、本件につきましては、さきにエリツィン大統領が訪日しました際に私がガイダル副首相と会談をいたしまして、委員まさに御指摘の点については、子細に日本の立場を御説明し、このことを、いわゆる債務焦げつき問題等についてきちっとしないと新たなことは展開できませんよということも強く申し上げました。パリ・クラブ、ロンドン・クラブ、その他もろもろの会合その他を通じて、ロシア側も誠実に対応していくという回答を得ているところであります。  今の回収の問題はそういうことでございますけれども、今後貿易保険の引き受けに当たりましては、返済を行うのに十分な外貨所得のあるロシア側輸入者を対象とし、かつ当該輸入者の外貨獲得の一部を日本から供与した輸出信用の返済に充当するということについて一定の取り決めを行い、これに加えてロシア対外貿易銀行による保証を取得することによって、返済の確実性を今までも高めてきたところでございます。  ロシアの経済を支援することは大事でございますけれども、やはり危険を回避するということも我々のまた大事な使命でございますので、両々相まってやってまいりたいと考えているところであります。
  159. 西田恒夫

    ○西田説明員 先ほどの小此木先生の監視体制のことについて、一つだけ補足をいたしたいと思います。  これは、先般の政府外務大臣からの強い抗議、要請に基づきまして中止を発表するとともに、先方は十月の二十七、二十八日にモスクワで日ロ合同での専門家会合、それからさらに十一月の十日、十一日に第二回の日ロ合同作業部会の開催を提案しております。  私たちといたしましては、それを利用しまして、今後何ができるのか、またいかなる協力ができて、現在行われているロシアによる海洋投棄を、単なる中止ではなくて、これをやめさせるという方向で何ができるのかということをこの場を使って協議を進めたいと思っております。
  160. 小此木八郎

    ○小此木委員 時間もなくなってまいりましたが、今後新たな輸銀融資や銀行債権が焦げついた場合はどうするのか、この問題、大蔵省にまたお尋ねをしたいと思います。  もう一つ、最後に、今後ロシアに対してでありますが、ロシアに対しても援助をしなければならない、しかし本当に難しい国際情勢であります。これは本当に難しい問題であると思います。いろいろな援助をすることに異論はございませんけれども、その前に、市場経済とは何か、あるいは商売とは何か、こういった基本的な日本からの教育といいますか指導といいますか、こういったことを優先すべきでもあると考えますけれども、簡略にお答えいただければと思います。よろしくお願いします。
  161. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 ロシアの経済改革の推進のためには、委員御指摘のように、市場経済を担う企業のリストラと経営者の育成を進めることが極めて重要だと考えております。  このために、本年四月の第二回東西経済・産業・貿易大臣会合での成果を踏まえまして、ロシアのモデル国営企業に関するリストラプラン策定等を進めているところでございます。また、経営者育成につきましては、ウラジオストク及びモスクワにおいて、パソコン等の機材を利用した経営管理技術や製造技術移転のための研修を行うこととしているほか、日本生産性本部等において、マネージメント、品質管理、生産性向上等の分野で研修生の受け入れ、専門家派遣を実施しているところでございます。  私も直接携わっておるわけではありませんが、今までいろいろこの問題に取り組んできた方々の話を伺いますと、ロシアの場合は、市場経済が何であるかということを学習することにおいてまだ非常な困難があるようでございます。しかしながら、我々もロシアを支援していくということについては基本的に委員と同じ意見でございまして、その方向で粘り強く御支援を申し上げていきたいと考えているところであります。
  162. 八木健

    ○八木説明員 御説明させていただきます。  輸銀の融資についてということでございますが、旧ソ連邦に対します公的債務のうち九三年までに返済期日の到来するものについては、本年四月にパリ・クラブにおいてリスケについて合意されておりまして、現在二国間交渉に向けて準備を進めているところでございます。今後早急に二国間で合意されまして、ロシアがこれを誠実に遵守していくことを期待しているところでございます。  また、新規融資につきましては、これは通常行っていることでございますが、ロシア政府の保証を徴求する、あるいは返済用の特別口座を設け返済資金をブールする等の確実な債権保全措置を講じられた場合に新規の融資を行っていくというふうに考えております。  また、民間銀行の債権につきましては、現在邦銀を含めました民間銀行価とロシア側との間で返済繰り延べ交渉が行われていると承知しております。この交渉状況を見守っているところでございます。
  163. 小此木八郎

    ○小此木委員 時間が参りましたので、一層の御努力を期待いたしまして質問を終わります。ありがとうございました。
  164. 中井洽

    中井委員長 次に、熊代昭彦君。     〔委員長退席、伊藤(達)委員長代理着席〕
  165. 熊代昭彦

    熊代委員 自由民主党の熊代昭彦でございます。  岡山一区から選出されました新人でございます。小此木議員よりは若干年を食っておりますが、世代的には両大臣とあるいは同じくらいだというふうに思います。若干冗談を言わせていただきますと、毎年一回フルマラソンも走っておりますので、体力と気分は三十代前半というチャレンジャーの気持ちで新人議員をやらせていただいております。  両大臣の所信表明演説に関しまして、多くの方が既に質問されました問題でございますが、不況問題について御質問をさせていただきたいと思います。同じ質問が続きまして、若干のニュアンスの違いでまことに恐縮でございますが、お答えい ただければ問題の全容が明らかになるかと思いますので、よろしくお願い申しあげます。  現在の不況が極めて深刻であるということにつきましては、両大臣の所信表明をお伺いしましても御認識が一致しているのではないかというふうに思います。アメリカを若干の例外といたしまして、世界経済も非常に低迷しているということでございます。それで、こういう状況で、バブルがはじけましたのですけれどもバブルとは何であるか。株の過剰投機とか土地の過剰投機ということが主たる引き金であったのだろうと思いますが、そうしますと、一九二九年のアメリカのウォール街を引き金にしました大恐慌に原因としては似ているような状況でございます。  経済界のいろいろな方の御意見を伺っておりまして、現在の日本は非常に貿易黒字をたくさん積んでいる、経常収支の黒字がたくさんある、極めて円が高くなっている、そういうことを背景にしまして、米国にかわって日本版のニューディールをやるべきときではないだろうかというような御意見がございます。先ほど来お伺いしておりまして、通産大臣の御見解もそれに近いのかなというような感じでございました。TVAにかわって、首都圏を移転していただいて、八兆円とか十兆円とか言っていますが、大きな問題につきましては、大企業対策につきましてはそれぐらいのことをしていただいてもいい状況かもしれないということでございます。  政府は、御承知のように、前政権政府を含めましてですけれども、数度の景気対策を実施してこられまして、ことしの九月には六兆二千億円、四月には前政権、我が自民党政権でございますが、十三兆二千億円、昨年の八月には十兆七千億円という、総計しますと相当巨額の景気対策を実施いたしております。それにもかかわらず不況脱出の糸口は現在のところまだ見えないんじゃないかと私個人は思っておりますが、中小企業の倒産件数も通常の年に比べて五割増し程度推移しているのではないかと理解しているところでございます。  そういう状況下で、まず最初に景気対策が効果をあらわさなかった原因といいますか、いろいろネックがあるんだと思います。事業実施のネックもございましょうし、物の考え方のネックもございましょうし、そういったものを個人的見解も含めてお伺いできればありがたいと思いますが、経企庁長官及び通産大臣にお願いいたします。     〔伊藤(達)委員長代理退席、委員長着席〕
  166. 久保田真苗

    久保田国務大臣 私、今回の不況というのは戦後二番目くらい、あるいは長期化、それから非常に大型なものであるということがまずあると思いますが、バブルが発生いたしますときに非常に大幅の為替レートの上昇がございまして、そうしたものが市場の中で不動産、土地、株、そういったものの投機につながっていったということで非常に大きくバブルが膨れ、今度はそれが破裂した、その後遺症というものは今も不良債権の焦げつきという形で長引いていまして、解消されるというふうなところにはまだとても立ち至っていない、したがって、その足取りが重い、それから、それにあわせて、また円高の急激なものが出てきたといったようなことで、企業実態あるいは輸出産業といったものの収益、そしてそれに加えて、非常に慎重になったマインドというものが支配していると思います。  したがいまして、企業収益からいきまして、雇用者の所得も伸びないし、それから個人消費も低迷しているという状況でございますから、おっしゃるように深刻であり、糸口は見えていない。しかし私は、累次、重ねてこられましたこれまでの前政権経済対策というものが全く効き目がなかったのではなくて、それは一定の下支えはしてきたであろうと考えます。また、それはことしの四月に策定されました総合経済対策につきまして効果が、実績が出始めていく、そして新政権になってからの緊急対策につきましては、まさにこれから効果が出ていく、そして、その方向も一つ消費インフラといいますか、そちらの方向に位置づけて、それで市場あるいは消費をエンカレジしていく、そういう対策をとっております。  ですから、景気対策が浮揚効果を持つところまではいっていないのだけれども、しかし下支えをして何とか持ちこたえ、今後これからの時期にその効果がより多くあらわれてくるということを期待する理由はあるように思いますし、私どもとしても、それで皆さんにお互いに元気を出そうという呼びかけを今しているところでございます。  そんな状況でございまして、今後の状況期待をしております。
  167. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 ただいま企画庁長官から御説明を申し上げたところと軌を一にしているわけでありますが、委員の御指摘の点について私ども若干コメントをさせていただきますと、今回の不況が戦後の各種の不況と違っているのは、外貨天井その他の外の要因にぶつかって不況が起こされたのではなくて、この国の経済構造の内部に起こった病、これが決定的に違うと私は思うのであります。ここを直さない限りこの危機は脱せられないと私は考えております。  また、委員が引用されましたいわゆるニューディールでございますが、ニューディールはまさにリフォームということを掲げておりまして、後にニューディーラーたちが日本の戦後システムの大変革に、暗躍したというか活躍したというか、イニシアチブをとったわけであります。あのことを見ればわかりますように、実はニューディールという試みは、単にお金を使ったということではなくて、アメリカ経済のシステムを変革していこうという思想とプログラムがあったということでございます。その意味で、今回の不況はまさにニューディールに匹敵することをやらなければならない、それはまさに仕組みの問題、制度の改革を伴った経済改革であると私は考えております。
  168. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。  基本的にニューディール、改革を伴った本当の景気対策をやらなければいけないという御見解をいただきました。基本的には、大きな枠組みの変更とともに思い切った措置というのが必要であろうと思います。  もう一つ、細かいことを申し上げれば、経済対策がなかなか効果をあらわさないのは、対策の中身が、特に公共投資の中身が従来のパターンを脱し切れないということにあるのではないかと考えております。道路とかその他の大規模な工事は、御承知のように地権者との調整とかその他の要因で実施までに相当の時間がかかり過ぎるのではないだろうかと思います。もっと素早く実施できて、しかも生活大国づくりに長く貢献できる、そういう事業がいっぱいあるのじゃないかと思います。  例えば農村集落排水事業、これは既にしかれておりますが、細かい話では合併浄化槽、都市と中都市あるいは農村の水洗化をやりまして、農村の再開発と私は言っているのですが、都市と同じような生活ができるようになる、そういう合併浄化槽とか、特別養護老人ホーム、老人保健施設、これらは各県に配分されている枠の、岡山あたりは各五カ所ぐらい、最大限五カ所なんですが、大体二十カ所ぐらいは要望が出ておりまして、これはつければ三倍程度はすぐにできるというようなものでございます。  それから病院、日本の病院は非常に悪いわけです。病気を治しに行くのですけれども、環境がよくない、病気が悪くなるような環境が多いということでございます。その病院のアメニティーを改善するために思い切った病院の増改築をやる、そういったことはすぐに実施できることだと思います。そういったものに対して思い切った資本投下をすべきではないかということでございます。  ただ、考え方のネックが一つございまして、特養老健施設、いずれも、建てた後に運営費が要るのですね。運営費が要りまして、運営費は、これは建設国債ではなくて赤字国債だ。赤字国債を出さないという原則にのっとれば、これは建てることができないということになりまして、赤字国債を出さないという考え方は、海外収支黒字下にあるいは円高下に極めて硬直化した物の考え方なのでは ないだろうかと思います。  ここで発想の転換が必要ではないかということでございまして、赤字国債のタブー視をやめまして、これは戦争があればやむなく赤字国債を出しますが、戦争が起これは多くの人たちが死に、多くの機材が壊されるわけですから、戦争があれば赤字国債を出すというのはまじめ過ぎる対応でございまして、やはり黒字の累積とそれから円の水準というのをしっかり見て、赤字国債をタブー視するという考え方を変える、あるいは建設国債を補完するものとして補完的国債というような概念を入れてくるとか、そういう思い切った発想の転換が必要ではないかというふうに思います。  これは御所管のことと違いますけれども、国務大臣としましてそれに賛成とおっしゃるわけにもまいりませんでしょうけれども考え方の発想の方向としましてどのようにお考えになるか、御見解を伺わせていただければと思います。通産大臣、お願いいたします。
  169. 熊谷弘

    熊谷国務大臣 委員の御指摘の政策の方向というものは、実は前内閣における景気対策、本年四月に発表された、当時私はまだ自民党でございましたけれども、新社会資本という考え方で結実をし、それを我々はまた引き継いでおるわけでございます。その中の具体的な項目として、委員が具体的に御指摘になった項目等も入っていることはもう御案内のとおりでございます。また、そのことを突き詰めてまいりますと、来年度以降の予算編成につきましてもまた新しい展望が開けるのではないか、大事なところに来ているなというふうに思っております。  問題は、今おっしゃられたように、まさに経常部分についてどうするのかということでございますし、また、例えば住宅金融公庫の投資をふやすといたしますと利子補給の部分はどうするのか、こういった問題が出てまいりまして、委員の御指摘のようなところに問題が帰着してくるわけであります。  いずれにいたしましても、我々はこれから先、日本経済の将来に対する信頼の回復ということを考えますと、今後の予算編成を含めた構造改革政策は、財源の問題も含めて、しかもそれは単なる絵面の話ではなく、また無責任な話でもなく、中長期的な展望に立って、これならばやっていけるというものを提出しなければ、国民に示さなければ、国民先行きに対する信頼を回復することはできない。そういう意味で、税制改正を含めて、我々はこの問題に真剣に取り組んでいきたいと考えているところでございます。
  170. 熊代昭彦

    熊代委員 財源のお話も出ましたけれども、財源ですぐ消費税ということになりますと、これはまた景気消費マインドに水を差してくるというようなこともございます。所得税を減税するということとセットで、大変に期待している人も多いようでございますけれども消費税なら使わなくていいんだ、使わなきゃいいんだということですから、所得税を減税してもらって使わないということになると、これは貯蓄がふえるばかりということもございます。バランスは確かに大切ですが、今百ビリオンを超える黒字を積んでおるわけでございますので、一昔前は、五十ビリオンの赤字があれば中程度の国は滅びる、破産だと言われていたわけですから、百ビリオンで今恐らく一つの中程度の国は破産するほどの黒字を積んでおるわけでございますので、確かにバランスはいっかとらなければいけないと思いますから、二十年とか三十年とか四十年とか、国家でございますから、もっと長いスパンで収支をとるということを考えたらいいんじゃないかと私は思っているところでございます。  時間もございますので、少し具体的な話にさせていただきまして、中小企業対策、先ほど御質問がございましたので全般にわたりませんが、中小企業対策のうちで、特に資金の借り入れというのは、中小企業の方々は大変に御苦労しておられるわけでございまして、金は借りることができる制度があるのだけれども、担保と保証人がいないということでございます。担保と保証人があれば民間の機関でも借りられる、担保と保証人がないので中小企業庁さんの個別の施策にお世話になりたいということで、ジレンマがあるということでございます。無担保・無保証でやりますと、また一方で倒産が起きた場合に再保証がどうなるのか、再保証制度がつぶれてしまう、そういうジレンマがございますけれども、そういうジレンマを何かうまく解決できるような質的な改革、そういったものを構想としてお考えあれば、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
  171. 長田英機

    ○長田政府委員 結局、資金の融資を円滑にするために保証保険制度を拡充する必要があるということだと思いますが、さきの通常国会におきまして中小企業信用保険法を改正いたしました。その結果として、今先生が無担保・無保証ということをおっしゃられましたので、無担保・無保証人の保証というものを特別小口保険、こう言っておりますけれども、四百五十万円から五百万円にするということをいたしました。これ自身数が少ないように思いますが、一般の普通保険では限度額を一億二千万円から二億円まで拡大しております。  こういう措置をやりましたほかに、本年四月の経済対策におきまして、中小企業信用保険法の特定業種という業種指定の制度がございまして、この制度を指定しますと今私が申し上げました金額がさらに倍になるのでございますけれども、こういう特定業種の指定を行いました。そしてまた、去る九月の緊急経済対策におきましてもこの特定業種の一層の弾力的な指定を行おうという決定が行われまして、その後追加的な指定を行いまして、現在は九十一業種の指定を行っております。  そのほか、信用保証協会に対して弾力的、適切な態度で臨むように従来から指導してきておりまして、こういう信用補完制度を通じまして金融が円滑にいくように私ども期待しているわけでございます。
  172. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。相当に思い切った対策をしていただいているようでございますが、さらに質的改革を強化検討いただければありがたいと思います。  次に、土地対策に絡む問題でございますけれども、最初にちょっと一般論を言わせていただきますと、土地対策バブルのときに大変厳しくなりまして、これはマスコミの批判がありまして非常に厳しくなったということでございます。市場経済論者にしてみれば、ほっておいたってどうせ頭を打つんだからというような状況でもございました。私本会議でマスコミの批判をさせていただきましたのですが、時間がございませんので一方的批判をいたしましたけれども、マスコミは、やはり事実を報道し悪を暴くという意味では自由主義社会の宝だと思うのですね。すばらしい機能になっていると思いますが、一定ののりを越えるとそれは問題を起こしてくる。それから、こちらの政治家のサイドといたしましては、やはりマスコミ、に評判が悪いからやるべきことをやらないで、昂然たるところがなくて、みずから信ずるところを言わない、あるいは実施しないということをしますとマスコミの弊害が出てくるということでございまして、それは私ども自身の責任でもあるだろう、そういうふうにマスコミに対する態度を持っているわけでございます。いずれにいたしましても、土地の規制をいろいろやりまして、例えば住宅事業用資産の買いかえ特例をなくしてしまったとか、もうこういう状況ですから、素早くそれは復活していただいた方が土地を流動化し、景気の回復のためにもあるいは土地の値段の下落のためにもいいのではないかというふうに思うわけでございます。  それは一つの前置きといたしまして、具体的な事例でひとつお願いいたしたいのでございますけれども、私の岡山一区の選挙区の津山市の近くに、岡山市と津山市を結ぶ国道五十三号線がございまして、これは幹線の一つでございますが、この津山市のすぐ近くに師団地がありまして、中小企業高度化団地として認められたのです。当時は広々とした原っぱにできたのですけれども、二十一年ちょっと前でございますが、今やすっかり交通渋 滞の原因をつくるほど周囲が立て込んできまして、団地の中身も立て込んできたということで、新しいところに移りたいということでございます。  そういうことで、新しい土地も確保しまして移るわけでございますが、これは高度化資金は当然でございますが、一度高度化団地に入ったらその高度化団地から次の高度化団地に移るときには税制上の特典を受けられない、全然高度化団地でないところから高度化団地に移るときに税制上の特典が受けられる、こういう規定になっているわけでございまして、これは一度受けたらもうだめだという趣旨では恐らくないのだと思いますが、当時はそういう先例がなかったのではないかと思います。  しかし、二十年がたちまして、また新しいところにという状況になってまいりました。租税特別措置法の第六十五条の七第一項第七号の適用でございますけれども、一定の条件下、例えば既設の団地が中小企業高度化団地として形成されまして二十年以上経過していること、それから二番目の条件といたしまして、その周辺が市街化しておりまして一括移転することが都市計画上も望ましい、そういうふうな状況になったときに、これは今後こういうふうな状況になるところがどんどん出てくると思いますが、これは土地転がしにも当たりませんし、そういうときにはぜひもう一度、一度という要件を外しまして高度化団地の税制上の特典を適用していただきたいというふうに思います。これは所管官庁としては大蔵省さんでございましょうが、要望を出されるのは通産省さんでございまして、今後そのような方向で要望を出していただくように御検討をお願いできるかどうかということを御質問申し上げたいと思います。
  173. 長田英機

    ○長田政府委員 先生今御指摘のとおり、現行の買いかえ制度というのは平成三年度の税制改革におきまして、その土地税制の全般的な見直しの中で、かなりこの買いかえ制度が限定的といいますか、制限的になったわけでございまして、今御指摘のようなケースは現在の制度では適用にならないわけでございます。  そこで、先生が御指摘になっているようなケースを対象にするのは制度の改正が必要となるわけでございまして、私どもも今その津山の団地の実態というのもよくこれから研究させていただき、またどこまでできるのかということをよく勉強させていただきたいと思います。
  174. 熊代昭彦

    熊代委員 ありがとうございました。ぜひ前向きに御検討をお願いできればと思います。  時間も参りましたようでございますので、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  175. 中井洽

    中井委員長 次回は、来る二十六日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会