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得本参考人 私は、労働組合の出身なものですから、労働組合の
視点と私なりの
考え方を含めて話をしたいと思います。もう既に
鈴木会長それから
稲盛さんからもお話があって、一部ダブる面がありますが、極力ポイントだけ絞らせていただきます。
まず
最初に、やはり現在の
日本の置かれている状況、
時代認識を含め、このあたりについてはほとんど共通すると思います。戦後
日本の発展を支えたいろいろな
仕組みを全面的に
見直しをしなければならない、今まさにそういう転換の時期にある、そういう認識をナショナルセンターである連合もしております。そしてその連合が、十月の七日から八日の大会では
日本の進路という提起をして、これについて各界の
方々からいろいろな御
意見をいただこう。
この中で、今後変えていかなければならない、そういう面では
政治の
システムをどういうぐあいにしていくのか。これは、今
政治改革関連法案が衆議院を通り参議院段階に送られておりますけれ
ども、しかも、この
政治の
仕組みを変えるということもこの
改革法案だけで済む問題ではありません。今後政党の
あり方やまた
国会運営の
あり方等々になっていく。それから今度は
行政の
システムをどう変えていくか、その中には当然中央
官僚の
あり方とか、またはこの
規制の緩和、
地方分権の問題とか、そういう中で
経済構造、いわゆる
産業構造自体も大きく変わっていかざるを得ない、そういう認識の仕方。
そういう中で、今までのような
産業、
企業の行動の
あり方が、いわゆるキャッチアップを前提にして追いつけ追い越せ型から、または横並びの競争から、もっと創造的な競争に変えていくということが大事である。そしてそういうためにも、もっと今度は一人一人が自立した個人、これは
先ほど自立
自助とかいろいろな御
意見がありました。まさに自立した個人をやはり労働組合の立場でもどうつくっていくか、そういう
システムが非常に大事である。
そういう中で、特に
経済の構造自体どう大きく変えていくのか。そういう
意味では、
先ほど稲盛さんが、戦後
日本の発展のいろいろな面での有効な
役割を果たしていたのが、逆に言うと今度は新しい発展の阻害になっている、そういう
規制が非常にたくさんある。そういう面で、私たち自身もこの徹底した
規制緩和、これが必要であるという認識を持っております。
ただ、そのときにどうしても組合の立場で、
規制の緩和によって、言ってみればデ
メリット、つまり
規制によって
メリットを受け取る分野もあれば、逆に緩和するとそこからいろいろな問題が起こるとかという、そういう率直に言うと綱引きの部分もあります。しかし、これはもう
意識を、つまり
産業のエゴや
企業のエゴ、または労働組合のエゴだけにとどまっていたのでは次の新しい発展や
変化に通じない、だんだんこういうコンセンサスが連合になってできつつあると私は思う。
そして、そういう中で、今
日本の大きな
経済構造や
産業構造の面で変えていかなければならないのは、要は、比較的
生産性の高い分野、国際競争にさらされている
産業分野、それから国際競争にさらされてない分野、これが併存をした形で現在あるということが非常にやはり大きな問題だと思います。もちろんこれは、
一つは例えば農業であるとか流通部門であるとか建設とか、金融関係も若干自由化だとかいろいろな動きはありますけれ
ども、まだまだ国際競争という面では十分さらされてない。
しかし今までの中では、労働力という面で見れば、こういう比較的
生産性の低い分野で結構大きな労働力を吸収する。しかしそのことが、今不況で雇用問題等々いろいろな形で深刻化しつつあるのですけれ
ども、今日までは比較的完全雇用だとか雇用の状態は
日本はいいと言われておりましたけれ
ども、今後こういう状況でそのままいいのかどうか。
逆に、何とか低い
生産性分野と併存をしながら
日本経済があったということは、代償として、いろいろな
方々が言われておりますけれ
ども、
内外価格差に代表される根元からの
物価が非常に高い、つまりお金の使いでを相対的に非常に低くする、そういうやはり弊害を与えていたと思います。
それと同時に、今、私はたまたま金融関係の出身ですけれ
ども、いわゆる行き過ぎた
円高というのが、大きな方向として
円高自体というのは決して否定するわけではありませんけれ
ども、今日のような百円または百七円、八円とか、そういうのはとてもじゃないけれ
ども、もう輸出
産業自体も国際競争の中で太刀打ちができていかない。結局、購買力平価といわゆる為替レート、余りにも大幅なギャップ、そういう弊害ももたらしてきておるんだと思う。そういうためにも、要は保護をされた、または
規制されておる
産業分野というものをどう変えていくのか、それがやはり
規制緩和の一番大きな
視点だと私は思うのです。
そのときに、認識として非常に重要なことは、要は、どうしても低い
生産性分野で国際競争にさらすということで、それからまた
生産性も上げていかなければならないとなると、今まで吸収をしていた労働力を一体どの分野で吸収していくか。
つまり、
産業間での労働力の移動ということがどうしても重要になってきます。そして、自由な労働力の移動というのを妨げておる面では
日本的な雇用
システム、これはこれで雇用をできるだけ大事にしながらという
視点というのを決して忘れてはならないと思いますけれ
ども、年功序列型の賃金の体系であるとか、そういうあたりの体系についても
改革が求められている。
ですから、一挙にはこういう
改革は進みませんから、スムーズな形で労働力の移動をどういうぐあいにやるか、そういう
視点を持っていただきたいと思うのです。そして、これはまた進めていかなければ結局
日本はじり貧になる。つまり、労働組合はどうしてもこういう雇用の問題、雇用で摩擦を起こしたくないから
改革反対だとか
規制緩和反対、もうそういうことも主張は通らない。そこをやはり私は割り切らなければならない。そういう面では
政治の場でも、労働力の流動化をどうしていくか、その受け皿みたいな形をどういうぐあいにするのかということも一面ではぜひ
考えていただきたいと思います。そういう面で、まず大きな状況の認識を統一させていかなくちゃならない。
次に、具体的な
規制緩和の問題については三点にわたってお話をしたいと思います。
第三次
行革審が指摘をしておる
内容、私は基本的に全く賛成です。よく
経済的
規制と
社会的
規制ということが言われている。そして、もうともかく今度の
規制緩和では、いわゆる
原則自由にして例外を
規制していく。どちらかというと、
経済的
規制という形が
中心になるのでしょうが、
社会的
規制の問題も根元から
見直しをしていこうという提起をしている。これは私は基本的には賛成です。
ただ、労働組合はえてして、今まで
社会的
規制ということによって安全や環境の問題等々について、こういうあたりを緩和するとおかしくなるのではないかとかという
視点がありました。もちろん、この
視点も決して忘れてはならないと思いますけれ
ども、やはり一回ゼロベースで
見直しをして、そして必要なものは当然きちんとやる。逆に言うと、安全や環境の問題等々についてはもうちょっとかえって厳しくする、そういう
視点も当然大事にもなってくると思う。
逆に、技術立国であるとか、特に環境問題が今後非常に大きな
世界的な
課題になってくるとなると、かえって
社会的
規制の安全や環境の問題というのは厳しくもしながら、そしてそれに挑んで、その開発力をつけていく。そういうことが、言ってみれば新しい需要を掘り起こしたりするとか、またもっと国際競争の面でも半歩なりリードをしながら、いい
意味で
世界に協力をするということも大事である。
しかし、やはり基本的にはゼロベースで
見直しながら、逆に
社会的
規制ということによって、言ってみればかえって過去の既得権に甘えているような側面というのも
見直しをする必要がある。特に、こういうときに
社会的
規制というのはできるだけ大事だからということによって、
官僚自体は結構頭がいいものですから、
経済的
規制を緩和しようとすると、かえって今度は
社会的
規制の観点から論理のすりかえをして、そして、あたかも
社会的
規制でこういうことが必要であるかのごとき議論が往々にして起こってくる。
例えば、いわゆるお酒の免許をもっと自由に、スーパーだとかいろいろなところでも、どこでも買えるようにしたらいいじゃないかというぐあいにここで
経済的
規制を緩和というぐあいにすると、今度は、どんなところでも酒が買えるようになると、青少年の面でいろいろな問題があるというぐあいにすりかえる。そのあたりはぜひきちんとした認識を持って見ていただきたいと私は思います。
それから
規制の緩和の二点目は、この
最終答申の十ページから十一ページにかけても書いてありますし、
先ほど鈴木会長もお話ございましたけれ
ども、
公的規制の全体像、それから影響評価の手法を確立する必要があるということで十ページの下の方に書いてある。これは私は非常に大事なことだと思うのです。
つまり、今一万九百四十二件の
規制がある。この
規制というのは、例えばいろいろな法律をベースにして、政令だとか省令だとか通達だとかいろいろな形で細かくブレークダウンする。これを全部総務庁が事務的にカウントをしたら一万九百四十二件。もとになる法律があって、そこからどういう政令や省令が出、それから例えば通達などが出る、そういう全体の幹になっている部分からの関連というのがどうも不明確である。
こんなばかなことがあるのかということなんですが、どうもこれも私は、やはり各
省庁が情報を公開するのを嫌がっておる大きなあらわれではなかろうかと思います。そういう面では、やはりもとになる法律があって、これが一体どういう関連になっているのか。言ってみれば、幹になる木があって、枝がどういうぐあいに出ておって、どこの幹の部分を押していくとどういうぐあいになっていくのか。
そういう面では、一万九百四十二件を第三次
答申では実質半減、ただ数だけ半分にしたって、かえって、例えば土光
臨調が始まってからは
規制の数はふえておるわけですね。しかも特に、例えば電気通信事業法みたいな、ああいうもとのところを、いわゆる独占であったのを言ってみれば競争場裏にさらすということによって
規制の数は、正確な数は知りませんけれ
ども、六十とか七十とかふえている。
しかし、幹になる部分を押さえていくということによって、
国民生活に及ぼす影響というのは非常に大きい。そういう面では、
公的規制の全体像を明らかにしながら影響の面まで
把握をする、これもやはり総務庁がある
程度事務局になってやらなければならないことでしょうけれ
ども、この作業というのは大いに急がせる必要がある。
特に
規制のいろんな緩和等々については、民間やいろんなところが指摘をすることについては、いろんな形で提起はされますけれ
ども、もっと本質的なところで見直す。それからまた、いろいろ今まで
行革審が指摘をしても、結果的には、一応ちょっといじって、そうしたらもうこれで
改善いたしました、
改革は終わりましたとかと、そうじゃない、本当に本質的な面で一体どうなんだ、そういう議論がまだまだ不十分だと私は思います。そういう面でも、情報自体が公開をされていないところに
一つ大きな問題があると思うのです。
それからもう一点、今度は
見直しの進め方。
これはちょっと、私は、アクションプログラムを五
年間つくり、そして
政府、細川
総理が
推進本部長になってやっていくという、これはこれで、今までいろいろと提起をされたことを具体的にこう進めていく、
実行させていくという面の有効策としてあるということは決して否定はしません。しかし、これだけで本当に進むだろうかという面では非常に危倶をしている。
そして、
先ほど稲盛さんもおっしゃいましたけれ
ども、要は
国会の、立法府の中でいろんな
規制のもとになる法律はつくられたわけですね。そして、言ってみれば、今度は民間や労働組合、いろんなところが、もう緩和しなければいかぬといろんな形で言っておる。今度は、つくった立法府のところで一体どういうぐあいにするのかといったあたりをもっと、言ってみれば抜本的に
考えてほしいと思うのです。
確かに
経済改革研究会等では
第三者機関、いわゆる三条約織というのでしょうか、三条機関とかということで、公取に似たようなそういうことをつくる必要があるとかという議論、これは
行革審の中でも議論はありました。これはこれで有効だと思うのです。
そういう
視点での検討と同時に、私はやはり立法府の中で、これは個人的な
意見になりますけれ
ども、ちょっと粗っぽいかもしれませんが、二〇〇〇年なら二〇〇〇年までにもう
規制にかかわるような法律は全部ともかく廃止をします、二〇〇〇年には。そうしたら、また必要なのはぐんぐん変えたり、同じものが出てくるかもしれませんね、そういうものはやはり立法府の中でチェックをする、そういう機関というものは、例えばこういう
委員会だとか、これが
見直しをする。
そうすると、よく
官僚の人やいろいろな人と話をすると、一番
最後のときにどっと出てくるんじゃないかと言う、もう
国会のこういう仕事をやっている人は忙しくてとても審議なんかしておる暇がないということをよく言われますが、私は、二〇〇〇年のときにはみんな廃案になるのですよというぐあいにすれば、必要なのは、優先順位等は言ってみれば今
官僚組織が一番わかっておるわけですから、もう真っ先にぼんぼん
最初から出てくる、一番
最後に残せば審議の時間がないとなる、全部廃案。
こうなったって、私は、
日本人はばかじゃない、賢明だから、
先ほどの
稲盛さんとちょっと違うかもしれませんが、ぎくしゃくはなっても結構スムーズにいくんじゃなかろうか、それぐらいちょっと荒っぽいことを立法府としても
考えられる、これが
稲盛さんもおっしゃった、法律でということだろうと思いますが、それぐらい大胆に進めていく、そしてもう一回ゼロベースで
見直しをしていく、そういう進め方が大事なのではなかろうか。一番
最後の方は、個人的な見解になりますけれ
ども、そういう荒療治をしないとだめだ。
そして、一番
最初に戻りますけれ
ども、要は、やはりどうしても
規制の緩和等では、今まで
メリットを受けた
産業または
企業等がデ
メリットになっていく、そういうことで、雇用の問題とかいろいろな形での摩擦が出てくる。この摩擦をできるだけ少なくしながら、スムーズな転換を図っていく。その面でも、スムーズな転換のあたりについても、また受け皿であるとかいろんな施策については、ぜひ補完という
視点もお願いしながら、私の話を終えさせていただきます。