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1993-10-27 第128回国会 衆議院 規制緩和に関する特別委員会 第3号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    平成五年十月二十七日(水曜日)     午前十時四分開議 出席委員   委員長 加藤 卓二君    理事 太田 誠一君 理事 狩野  勝君    理事 村岡 兼造君 理事 吉岡 賢治君    理事 村井  仁君 理事 武山百合子君       佐藤 静雄君    七条  明君       御法川英文君    村田 吉隆君       森田  一君    米田 建三君       北沢 清功君    輿石  東君       永井 哲男君    栗本慎一郎君       佐藤 守良君    高木 陽介君       野田 佳彦君    中野 寛成君       松本 善明君  委員外出席者         参  考  人         (経済団体連合         会産業問題委員         会政策部会長) 宮内 義彦君         参  考  人         (東京大学教授植草  益君         参  考  人         (評 論 家) 屋山 太郎君         参  考  人         (在宅介護研究         会代表)    大川優美子君         参  考  人         (筑波大学教授宮尾 尊弘君         参  考  人         (慶應義塾大学         教授)     中条  潮君         参  考  人         (旭リサーチセ         ンター代表取締         役社長)    鈴木 良男君         参  考  人         (法政大学教授角瀬 保雄君         特別委員会第三         調査室長    菅野 和美君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  規制緩和に関する件      ――――◇―――――
  2. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 これより会議を開きます。  規制緩和に関する件について調査を進めます。  この際、一言申し上げます。  御承知のとおり、今日、規制緩和に関する問題は、国民各界各層から強い関心が寄せられているところであり、かかる状況にありまして、規制緩和に関する問題全般につきまして、さまざまな方々から参考人として御意見を聴取し、自由濶達な論議を行うことは、極めて有意義なことと存ずる次第であります。ここに、委員各位の御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。  まず、午前中に御出席を願っております参考人は、経済団体連合会産業問題委員会政策部会長官内義彦君、東京大学教授植草益君、評論家屋山太郎君及び在宅介護研究会代表大川優美子君であります。  なお、午後は、筑波大学教授宮尾尊弘君、慶應義塾大学教授中条潮君、旭リサーチセンター代表取締役社長鈴木良男君及び法政大学教授角瀬保雄君の出席を予定しております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、規制緩和に関する問題全般につきまして、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでございますが、まず、参考人にはそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、経済団体連合会産業問題委員会政策部会長官内参考人からお願いいたします。よろしくお願いします。
  3. 宮内参考人(宮内義彦)

    宮内参考人 経団連産業問題委員会政策部会長を務めております、オリックスの社長をしております宮内でございます。本日は、政府規制あり方につきまして経団連考え方説明させていただく機会を与えていただき、まことにありがとうございます。  私からは、初めに、お手元資料として配付させていただいております、昨年七月に経団連が取りまとめました「自由・透明・公正な市場経済を目指して」と題する規制緩和提言内容を御紹介する形で、政府規制に関する私ども経団連の基本的な考え方を御説明申し上げ、次いで、実際に規制緩和を進めるに当たってどのようなアプローチが必要かという点につきまして、私自身の私見を交えながら説明をさせていただきたいと存じます。  内容説明に入ります前に、お手元提言を取りまとめるに至った経緯につきまして若干触れさせていただきたいと存じます。  御案内のとおり、一昨年の夏、証券会社によります顧客への損失補てん等の問題が発生し、社会から企業行動あり方に対し厳しい批判が浴びせられました。経団連といたしましても、この問題を内部で突っ込んで検討した結果、本来自由な競争にゆだねられるべき証券会社株式売買手数料独禁法適用除外とされ、取扱量関係なく一律に手数料が抑えられた結果、証券会社顧客に対するサービス競争損失補てんというゆがんだ形で表面化したのではないかと考えるに至ったわけでございます。  そこで、こうした不祥事を二度と起こさないためにも、また海外から、日本経済システムは閉鎖的かつ不透明である、このような批判に根拠を与えないためにも、私どもでは企業行動取引慣行見直しに取り組み、同時に企業行政との関係、すなわち許認可を媒介にした不透明な政府規制あり方についても見直しに取り組むこととした次第でございます。  経団連は、規制緩和の問題については、かねてから活動の最重要テーマ一つとして位置づけ、特に第二次臨調以降、数回にわたりまして政府規制緩和や撤廃について要望意見を具体的に取りまとめ、関係方面にその実現方をお願いしてまいりました。規制緩和を進めるには、こうした具体的な問題点個々に指摘し、その改善を求めることも非常に重要であり、また有効な方法であると思いますが、他方、そうしたアプローチだけでは限界もございます。特に、広く国民理解を得ながら国全体として規制緩和を進めていくには、明確な理念や指針に基づいて産業横断的に規制を見直す、こういうふうなアプローチも必要であるかと存じます。お手元の「自由・透明・公正な市場経済を目指して」という私ども提言は、ただいま申し上げました産業横断的に規制を見直す際の理念とか視点を整理したものでございます。  それでは、提言内容につきまして簡単に御説明申し上げます。  まず、政府規制に関する基本的な考え方でございます。  一言で申し上げますと、経済的規制は、今日では、経済活力をそぎ柔軟性を失わせるといったマイナス面の方がプラス面よりも大きくなっているということであります。この点を少し敷衍いたしますと、戦後、我が国経済生産力を量的に伸ばす段階では、産業の育成や国際競争力向上政府規制一定役割を果たしてきたことは否定できません。しかし、我が国経済国際化を遂げ、成熟化し、消費者の多様なニーズにこたえていくことが求められている今日にありましては、政府規制あり方行政役割について根本的に見直す必要があるのではないかということであります。  また、現在独禁法強化が課題となっておりますが、公正で自由な競争を促進するという独禁法趣旨にかんがみますと、規制緩和を思い切って進め、経済の全領域に独禁法が働く、このようにすることが、とりもなおさず独禁法強化につながるわけであります。さらに、政府規制緩和により市場メカニズムの徹底を図ることは、企業活動効率化活性化につながるだけではなく、商品サービス価格を引き下げ、質の向上多様化等を通じて消費者利益にもつながると考えられます。  翻って我が国経済の現状を見ますと、参入、設備、価格規制等さまざまな業法による事業規制行政指導、さらには独禁法適用除外措置によって、経済の半分近い分野が今なお政府規制のもとに置かれております。こうした状況は、今日我が国が置かれております立場を考えますと、海外諸国から見ましても理解しがたい点であります。もちろん、民間企業といたしましても、社会的存在としてみずからの襟を正し、自己責任原則を徹底するとともに、安易に行政に依存しないようみずからを厳しく規制する必要があることは当然でございます。  次に、今後経済分野における規制緩和を進めるに当たってどのような視点が必要かという点についてでありますが、資料の三ページをごらんいただきたいと思います。六点ほど御指摘申し上げたいと存じます。  第一は、消費者利益増進であります。価格料金の引き下げ、商品サービスの質の向上多様化を妨げている規制緩和し、消費者利益増進を図ることが不可欠であると存じます。例えば、スーパーなどの大型店を出店するためには、営業関係だけで十二の法律による二十六の許認可と七十五の申請書が必要とするなど多大のマンパワーと時間をかけなければならず、結果的にコストアップにつながっております。  第二は、事業環境変化への対応であります。技術革新産業の融合、国際化の進展などによって時代おくれとなった規制見直し、新しい環境に対応することが重要であると存じます。一つの例でございますが、JRでは、鉄道施設変更列車運行計画設定運賃料金の割引などの許認可申請が年間五千八百件もあり、このためにかなりの人員を割いているというような例がございます。  第三は、経営自主性確保効率性向上であります。例えば、運賃の改定は一々お役所の認可を得なければならない、そういう仕掛けになっており、一定の範囲内での変更は自由にするなど、企業経営自主性確保効率性向上を妨げないよう規制を見直す必要があろうかと存じます。  第四は、社会的規制経済的規制に変質するのを防止する、こういうことでございます。政府規制は、市場への参入、退出や価格設定に関する許認可などの経済的規制と、安全、衛生確保環境保全などを目的とする基準設定などの社会的規制に大きく分けられると思います。経団連では、規制緩和を繰り返しお願いしておりますが、国民の安全、衛生確保環境保全に必要不可欠な社会的規制までも一律に緩和することを求めているわけではなく、場合によってはこれらは強化するべきものもあろうかと存じます。もちろん、社会的規制といえども社会経済情勢変化技術進歩に伴って絶えず見直しが必要でありますが、最も大事な問題は、社会的規制の名のもとに既得権者が保護され、実質的な意味経済的規制に変質していないかどうかということであります。この意味で、規制目的内容や手段とが首尾一貫しているかどうか、絶えず見直す必要があると存じます。  第五の点は、独禁法適用除外分野見直しであります。独禁法適用除外措置に加えて、各省縦割り業法によりまして実質的に独禁法適用除外となっている分野を抜本的に見直すことが不可欠であると存じます。一つの例でございますが、内航海運業におきましては、船腹調整制度により新船の建造と古い船のスクラップとがリンクされているため、船腹の不足や船舶の近代化の停滞をもたらしております。  最後の点の第六でございますが、通商摩擦に起因する規制見直しであります。通商摩擦を避けるために二国間で輸出規制措置がとられることがありますが、資源の適正な配分を妨げていないかどうか、行政の不透明な介入につながっていないかどうか、ガットの精神にも照らしつつ見直す必要があろうかと存じます。  以上、今後の改革に当たって六つの視点を御紹介申し上げましたが、要は、個別産業等の振興といった縦割り型の産業政策時代から、国際的に整合性のとれた独禁法による規制時代へと大きな流れに沿って改革のかじをとっていく必要があると存じます。その際、やはり重要なのは、規制緩和視点として第一に申し上げました消費者利益増進ということではないかと存じます。  先ほど大型店が店舗を出す際の規制につきまして触れましたが、最近あるスーパーが試算しましたところでは、これらの許認可を受けるための費用は一年間に約一億六千万円に上るとのことでございます。結局これが商品価格に上乗せされ、消費者負担しているということになります。こうしたことはスーパー業界に限らず各業界とも多かれ少なかれ持っております。許認可等にかかわる経費はばかになりません。あと一、二の例を申し上げますと、例えば金融業界ではいわゆるMOF担大蔵省MOF担と言われる人間を情報収集のために大蔵省に張りつけていると言われております。また商社では、午前と午後の二回霞が関へ行く直行のバス便をチャーターしているというようなことも言われております。これらはすべて最終的には商品サービス価格に転嫁され、消費者負担していることになります。  規制緩和が進めば、こういった今まで消費者負担していた、いわば目に見えない税金が還元されることになり、ある意味では減税同様の効果が出ることになります。規制緩和には、先般公表されました政府規制緩和九十四項目の中で指摘された、例えば車検制度のように直接消費者負担が軽減されるものだけではなく、ただいま申し上げましたように間接的な効果もあるものもございます。景気対策の特効薬として規制緩和をとらえる向きもございますが、私は、むしろじわじわと体質を改善する漢方薬のような効果に注目すべきではないかと存じます。  それでは、規制緩和の今後の推進あり方につきまして、若干私自身意見を交えまして御説明申し上げ、御理解を得たいと存じます。  まず、これまでの行革審等答申では、経済活動については原則自由、例外規制という原則とか、十年間で経済的規制を実質半減する等の原理原則が指摘されてはおりますが、なかなか実効は上がっておりません。答申趣旨を実現するためには、やはり具体的な改革内容を盛り込んだ年次的な行動計画、いわばアクションプランと称すべきものを策定し、これを着実に実行していくことが必要ではないかと思います。また、新たな規制を導入する際には、その期間を限定するといったサンセット原則等先生方のお力で御確立いただき、ふえる一方の規制に歯どめをかけるような仕掛けも必要ではないかと存じます。  なお、現在国会で審議中の行政手続法でございますが、昨日本院を通過されたという朗報でございます。行政手続法につきましては、ぜひとも早急に参議院でも通過、成立することをお願いしたいと存じます。これは、何かにつけ不明朗だ、不透明だ、不公正だと指摘されている我が国行政手続一定の枠組みを設けるものであり、諸外国からもその動向が注目されている重要な法案だと存じます。本法案には適用除外とか努力規定が多い等の問題点も指摘されておりますが、何よりも行政手続を公正かつ透明なものとするための第一歩を目に見える形で早急に踏み出すことが重要だと考えております。  私は、現在の規制に関しまして次のような考えを持っております。御参考に申し述べさせていただきたいと思います。  まず、規制法体系でございますが、法律はまず国会で制定されたものでございます。この法律を施行するために政令、省令を行政当局がつくり、さらに各省ごとに具体的な取扱基準を定めました局長通達とか事務連絡文書があり、それが現場の窓口では、これに加えまして担当者によるいわゆる口頭指導というものがございます。  したがいまして、規制問題点は二つあろうかと存じます。  まず一点目は、法律による規制であります。すなわち、法律によりまして経済的規制の網がかけられているものが多くあります。例えば需給調整のための参入規制あるいは業法に基づく事業規制等であります。こういった法律の明文化されている規制については、独禁法運用強化に加え、法律個々に精査し、早急に必要な法改正をしていくべきと考えます。これらは立法府、ひいては先生方の重要な責務と考える次第でございます。  二点目は、不透明な行政指導等の問題でございます。すなわち、法律をもとに行われているはずの現場での指導が、幾つかの段階を経るに従いまして法律拡大解釈が起こり、当初の立法の趣旨との間にずれが出てくるということであります。加えまして書類やデータの提出を求められるケースが多々あるなど、事務手続の煩雑さが見られます。こうしたことが積み重なりまして、より強い規制社会を生んでいるわけであります。したがって、こういった法の拡大解釈、煩瑣な事務手続規制の不透明さ等を排除することが重要であります。  そこで、規制緩和実効を担保するため、その実施状況を監視することのみならず、民間意見をくみ上げることのできる強力な第三者機関が必要であろうかと存じます。第三次行革審最終答申もそのような趣旨から、総理を中心とする行革推進本部内閣に設置するとともに、オンブズマン的な機能を持つ第三者機関を設置することを提言すると伝えられております。総理私的諮問機関経団連平岩会長座長を務めております経済改革研究会フォローアップ体制としても同様の議論があるやに聞いております。  一方、行革審最終答申では、第三者機関は権威ある機関と記述しているだけで、その組織上の位置づけや権限あるいはメンバー構成事務局体制については何ら記述されていないようでありますが、ぜひ経済改革研究会ではさらに議論を煮詰めていただき、実効ある強力な機関の設置を提言することを期待している次第でございます。  具体的には、少なくとも行政問題点等につき広く意見を聴取するとともにみずから調査を行い、それに基づき法改正をも含め必要な改善策内閣総理大臣ほか関係行政機関の長に勧告する等、政府に対し責任を持ってその改善策を実施させるような、そういう権限法律上明記するとともに、それを支えるための独立した強力な事務局を持つ機関を設置すべきではないかと考えております。  また、規制緩和推進するに当たっては、その対象や内容について明確に定義する必要がございます。これは一つの例でございますが、金融関係規制緩和に関連して、例えば信用秩序維持ということが問題とされております。これによりまして改革にブレーキがかかりがちなわけでありますが、果たして信用秩序維持とは何なのかを詰めて議論いたしませんと規制緩和しないことの口実になりかねない、そういう点にぜひ御注意をいただきたいと存じます。  最後になりますが、規制緩和を進めるには、何といっても法律をつくる国会役割が決定的に重要であります。この点はぜひ先生方にお願いしたい点であります。特に、参入価格などの経済的規制を盛り込んでいる法律は戦時中あるいは終戦直後の混乱期にできたものが多いわけでありますが、これら法体系の抜本的な見直し行政府のなし得るところではなく、まさに国会のなすべき仕事であります。  日本規制社会と言われておりますが、何事につけ何かビジネスを始めようとすると初めに規制ありきということで大変な苦労が伴います。私は、こうした規制が人々の創造的な事業意欲をむしばんで、次第に日本活力のない社会に陥るのではないかと懸念しております。ぜひ規制のもたらす弊害を真剣に受けとめていただき、法改正に向けて立法府指導力を発揮されることを強くお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  4. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、東京大学教授植草参考人にお願いいたします。
  5. 植草参考人(植草益)

    植草参考人 植草でございます。  規制緩和に関する私の意見は、既に皆様方に配付されております日本経済新聞に発表いたしました論文とほぼ同じ内容ですので、御参考にしていただければ幸いです。なお、私は、日本公的規制につきまして、その意義と問題及び今後の規制緩和あり方につきまして「公的規制経済学」という本を出しておりますので、これからお話しいたします具体的な内容とかさらには専門用語等については、これもまた参考にしていただければ幸いと思います。さらに、私ども経済学者の多くは現在、規制緩和に非常な関心を寄せておりまして、私たちも何らかの貢献をしたいということで、多くの経済学者が参加いたしまして「講座・公的規制産業」全五巻、この中には電力、都市ガス電気通信、交通、金融というほぼ経済的規制分野のすべてが含まれておりますが、この本を来月から発売する予定で取り組んでおります。これらもまた参考にしていただければ幸いです。  本日は、それらの研究の中で主張されております意見も含めまして、意見陳述をさせていただきます。  このところ、規制緩和が各方面で大合唱の観を呈しておりますが、一体どのような規制緩和をしたら国民経済全体に大きな利益をもたらすような実質的な規制緩和になるかという問題については必ずしも明らかにされておりません。昨年、宮澤内閣が一万九百四十二の許認可事項の一割削減を発表し、また現細川内閣緊急経済対策の一環として九十四項目規制緩和方針を発表いたしましたが、公的規制経済的規制にしても社会的規制にいたしましても規制目的に沿って体系化されておりますので、一割削減とか九十四項目といった数値目標による規制緩和は、結局のところ部分的、断片的な規制緩和にしかならず、規制緩和成果を期律することはできないと思います。  ここで、規制緩和成果について少し御説明したいと思います。  私は第二次行革審規制緩和小委員会の副座長を務めましたが、その折に、ある消費者代表委員から、規制緩和メリットとはどのようなものでしょうかという疑問が出されました。これに答えるために第二次行革審最終報告の中に「規制緩和成果」という一章を入れていただきました。その中で、本格的な規制緩和が実施されますと、既存企業新規参入企業競争が活発化いたしまして、まず多様なサービスが提供されるようになる。次に価格の低下と弾力化が進みます。それらを通じて需要拡大いたします。需要拡大投資を活発化させます。需要拡大投資拡大経済成長に寄与いたします。さらに、規制緩和されるということは、行政費用国民負担が軽減されるというメリットもあると指摘いたしました。別な言い方をいたしますれば、規制緩和は、産業企業活性化させ、消費者消費選択幅拡大させ、それらが経済発展に寄与するということになるわけです。  もし、二十一世紀に向けて活力ある経済と質の高い生活を実現しようとするのであれば、上記のような「規制緩和成果」が明確にあらわれる本格的な規制緩和を実施しなければなりません。  どのような規制緩和を実施すべきかという問題は、現在のところ明らかにされておりませんけれども、私なりの意見を以下で述べさせていただきたいと思います。  私は、やや回り道になると思いますけれども、第二臨調から第三次行革審に至るまでの十三年間にわたって、広範な規制緩和政策を実施いたしました。その成果がどのようなものになっているのかということを、先ほどの成果基準に照らして、もう一度検討することから始めるのがまず第一ではないかと思います。そして、規制緩和成果があらわれていない場合には、どこに原因があるのかということを考えてみる必要があります。また、規制緩和がほとんど実施されなかった産業については、なぜ規制緩和が行われなかったかを再度検討する必要があると思います。この検討を経ないままに新たな規制緩和政策を考えると、結局は、官僚や企業の抵抗に対して何も説得するものを持たずに、ただ規制緩和をするという目標だけがひとり歩きするということになると思います。  以上のような検討は、当然のことながら、経済的規制社会的規制に分けてする必要があると思います。  経済的規制については、自然独占分野競争分野、やや専門的用語でありますが、私たちはそういうふうに分けております。  まず、自然独占分野、これには、電気ガス、水道、市内電話などのネットワーク産業が含まれておりますけれども、この分野については、現在でも自然独占性が存在しているか否かということをまず検討することが先決だと思います。私ども、さきに申し上げました「公的規制産業」という研究の中で、いろいろな産業について、定量分析を含めて研究してみますと、技術革新の進展や産業融合の進展、国際競争の進展等によって自然独占性が薄れている産業が多くなっております。  例えば、電力においては、発電分野について、既に大規模発電の効率性には限界に来ているということが明らかにされ、多様な分散型電源がこれに競合するような形で出てまいりまして、卸売電力市場の育成ということが何としても必要である。そのためには規制緩和をしなければならない。  また、都市ガスについても、大口需要分野についてはエネルギー間の競合が非常に厳しくなりまして、今や競争が実質的に展開されているという中で多くの規制があるということは、利用者の選択幅を制限しているということにもなるわけでございます。  また、電気通信についても、市外電話は現在のように多くの競争がある、また競争成果があらわれているということを考えますと、これまで自然独占性があるということで規制を行ってきた産業についても、規制緩和をすることができる分野が多くなっているということに注目していただきたいと存じます。  なお、もし自然独占性がなお強く存在するというような場合にはどうしたらいいか。ここでは一定程度の規制は残さざるを得ないというふうに思います。そうでないと、独占力というものが乱用される危険性を持ちます。そこでは、これまでの多くの国における実験経過を通じて、インセンティブ規制というものを導入することが非常に大事であるということがわかってまいりました。インセンティブ規制というのは多様な形態を持っておりまして、ここで長く御説明申し上げることはできないわけでありますけれども、ごく簡単に申し上げれば、規制企業間が生産性を向上して、料金を引き下げたり、サービス多様化させるように企業にインセンティブを与える制度でございまして、そういう努力をしたら、そのうちの一部は企業がとってよろしいけれども、例えば半分とか七割というのは消費者にも還元しなさいという形で、企業一定利益を認めながら企業努力をさせるということでございまして、これは意外なほどの効果があらわれております。  次に、運輸、金融、流通、建設などの企業数が多い、構造的に競争産業という産業における規制でありますが、これは、多くの場合に、利用者保護の観点から実施されております。しかし、実際には、利用者保護よりは企業の保護の方が強く、消費者の選択を阻害している場合が少なくありません。  すなわち、企業が多過ぎると、過当競争によって倒産する企業が発生して、生活必需的なサービスが十分に確保できなくなるという理由で参入規制価格規制が実施されていますが、それは、利用者保護よりは企業の保護になり、結局は、消費者が多大の規制費用負担し、高い価格サービスを買わされていることになります。競争構造の規制産業においては、大胆に参入規制価格規制緩和、撤廃することを最優先すべきだと思います。  金融業のように、利用者保護の観点から一定程度の参入規制が必要な場合、例えばどのような企業金融業を営んでもいいということになれば、これは利用者に多くの被害をもたらす可能性もありますから、そのような場合には、参入規制あり方というものを変えていく必要があると思います。私は、これを参入適格要件を設けた参入規制ということ、従来の需給調整による参入規制ではなくて、これこれの条件のある人はこの産業に入ってよろしいですという条件をつけまして、その条件にパスする人は入っていいというものであります。  こういうふうな形で参入規制を変えますと、例えばアメリカにおける交通、イギリスにおける交通業等、非常に多くの変化が起こりまして、いい方向に向かっているということでございます。最近、我が国においても、このような規制参入に関する義務許可制という専門用語で呼ぶ人もありますけれども、このような制度に変えていくということが大事だと思います。  需給調整による規制は、結局のところ、官僚による自由裁量が余りにも作用し過ぎるということでありまして、新しい規制あり方、特に参入規制あり方ということについて御検討いただきたいと思います。  さらに、価格規制につきましては、競争構造産業においては、これは本来価格競争が行われるべきものでありまして、そのような分野における価格規制は本質的に撤廃するということが必要かと思います。この参入規制価格規制緩和、撤廃ということを通じて、さらに、それに付随した多様な規制というものを体系的に緩和していかないと、それぞれの産業における規制緩和成果はあらわれてこないというふうに思います。  次に、社会的規制について見ますと、社会的規制は、国民の健康、衛生、安全の維持向上、それから自然環境の保全などを目的といたしております。私が十二年前にこの用語を提唱いたしまして、多く使っていただくようになったわけですが、この中で、私は、経済学的に言えば、公害などの外部不経済の発生を防止し、麻薬などの非価値財の供給を制限し、医療などの社会的公共サービスの提供ということを目的とする規制というふうに呼んだわけでございます。そこで、市場経済を基礎とする経済体制におきましては、社会的規制は欠くべからざるものでありまして、その規制緩和には慎重に対処する必要があると思います。  しかし、現在のように、企業の自己責任が強くなり、消費者の価値観が多様化した経済社会では、政府が余りに多くの事項にわたって社会的規制を実施することは時代にそぐわなくなっております。さらに、先ほど宮内参考人からも御意見がありまして、私も同じなのですけれども社会的規制経済的規制に転化しているものがかなり多いというふうに思います。具体例を一つだけ挙げれば、医師法とか、医療法とか、薬事法というのは、いずれも国民の健康、衛生、安全の確保目的とする法律でありまして、それぞれの法律の第一条にはそのようなことが書いてあります。  したがって、これはまさに社会的規制の範疇に入るものでありますが、それらの法律が一体となりますと、医療産業の全体に対して、経済的規制と同じようなものが全体的に行われてしまうということなんです。つまり、電力などにおける経済的規制というのは、まず参入規制する。それから、勝手にやめてはいけないということで退出を規制する、価格規制する、サービスの質を規制する、そしてその安全性を確保してもらう、同時に、投資、事業計画についても規制をする、財務、会計についても規制をするというのが経済的規制の全体系でございますが、先ほど申し上げました医師法、医療法、薬事法などという個別の社会的規制を全部使いますと、医療産業におきまして、まず病院などの開設に関する参入許可制というのが入り、薬価基準による価格規制が入り、多様なサービスの質の規制が入り、事業計画規制が入り、投資規制が入り、財務、会計規制が入るという形で経済的規制全体が行われてしまうということでございます。  日本では、医療の質の水準は世界最高というふうに評価されて、私は、これらの規制が役に立っているとは思いますけれども、例えば医療に附帯するサービスというものは、私は、先進国の中で最低ではないかというふうに思いますけれども、これは、多様ながんじがらめの経済規制によって病院というものの活力が発揮される余地がないということにあるのではないかと思うのです。私は、医療経済学を専門としておりませんけれども規制論の立場だけから見ましても、いろいろ問題があると思います。  さらに、社会的規制につきましては、実は、これまで十分な研究がございません。第二次行革審のときに、総務庁に社会的規制に関する法律を全部整備していただきたいという形で全部つくっていただきましたが、それらもどんな体系でどういうふうになっているかはまだ必ずしも明らかにされておりません。私たち経済学者も怠慢でありますけれども、この法律の数とその法の運用の実態というものについて、これから大いに研究していきたいと思っております。そのためには、各官庁も情報を十分に公開していただきたいということをお願いしたいと思います。  規制緩和は、今述べましたような法律内容とその運用についてばかりでなく、規制の仕組みについても改善する必要があると思います。行政指導とか縦割り行政とか、それから官僚の天下りとか、さらには規制を監視、是正する制度というような多様な問題を含んでおります。これらの一つ一つについてかなり詳しい意見を述べたいのでありますけれども行政指導と、それから規制を監視、是正する制度についてだけに絞って意見を述べさせていただきます。  行政指導の弊害については、現在、国際的にも指摘されているところでありまして、これに対処するために行政手続法というものをつくるというので、随分長い年月をかけて、ようやく今国会に成立の運びになりそうであります。私は、ぜひこの行政手続法というものの成立をお願いしたいと思います。  第二に、規制を監視、是正する制度でありますけれども、これには、実は多様なものがあります。一つには、国会による監視であります。二つには、総務庁による行政監察であります。三つには、行政被害者による行政訴訟であります。四つには、行政に対する苦情を処理するオンブズマン制度であります。五つには、審議会というものがあります。行政に対してこのような多様な監視、是正制度があるということは、民主国家として誇ってよいと思いますけれども、いずれも改善の余地が大きいと思います。  まず第一に、国会による監視については、私は、この委員会のような規制緩和に関する特別の委員会を常置するということがどうしても必要ではないかと思います。  行政監察につきましては、現在、総務庁が多様な産業をピックアップしながら行政監察報告を出しております。これはなかなかいい指摘があるわけでありますけれども、しかも、これが一定程度の時間を経た中で、各官庁がこの勧告を守るようにということになっておりますけれども、必ずしもこの勧告が生かされているというふうには私は思いません。やはり総務庁に相当強力な行政監察を守らせる機関をつくるということが大事ではないかと思います。  先ほども御指摘がありましたけれども、やはり規制緩和を監視する第三者機関というものをつくって、このような監察というものをより有効にするということが大事だと思います。さらに、そのような機関は、多くの提言、それから規制緩和が実際に行われているかというようなものの監視を行っていくということが大事であろうと思います。行政監察に絡めて第三者機関のことも申し上げましたけれども、従来の総務庁も随分努力してまいりましたけれども、一層拡充するということが大事だというふうに思います。  さらに、行政訴訟についても見ていきたいと思います。  行政訴訟は、私は調べてみましたら、戦後ずっと件数を全部調べてみますと、そのほとんどが教科書裁判でありまして、非常に件数が多いのであります。そして、多くの規制産業において、このような規制をされたのではかなわないという形で訴訟に持ち込むということは非常にまれのケースでありまして、具体例を挙げれば、ヤマト運輸が運輸省に対して行ったものとか、非常に件数が少ない。やはり規制される側は、規制する側を訴えるということは、デメリットも随分あるわけでございますから、なかなかやりにくいわけでありますけれども日本ではお上に盾突くというのがなかなかできないという風土にも関係しているかもしれません。  しかし、行政の乱用ということを制限するためには行政訴訟は非常に大事でありまして、行政訴訟がやりやすくなるような制度にしなければならないと思います。そのためには、私は、やはり行政手続法というものが非常に大きな役割を果たすと思っております。したがって、行政手続法は、我が国のこのような問題を考えるときに大事なものである。  と同時に、行政訴訟する側に対して規制官庁がかなりの嫌がらせをするというようなことがあると聞いておりますが、そのようなことについても国会等で監視をしていただくということも大事だと思います。  そのほかに、オンブズマン制度でありますけれども、これは今総務庁、経済企画庁、法務省等にありまして、かなり有効に機能していると私は評価しております。特に、海外企業日本参入しようとするときに、経済企画庁に対して、いろいろオンブズマン制度のもとで助言を得ているということは大変いい制度であると思います。しかし、もっと消費者が参加できる制度というものをつくるべきであるというふうに考えておりまして、消費者参加というものの新しい制度を再度検討していただきたいというふうに考えます。  審議会も、これは我が国独自の行政あり方でありますけれども、それには一定役割もありますけれども、問題も少なくないと思います。メンバーが固定され過ぎていて、新しい息吹の中での提言が行われにくいという審議会が幾つかあると思いますし、官庁の御都合主義でメンバーを頻繁に入れかえるというような審議会もありまして、我が国の審議会方式というものについても、この際、検討していただくよう提言したいと思います。  最後に、本格的な規制緩和をすれば、競争の激化を通じまして、消費者被害とか雇用調整とか企業倒産とか不公正取引というものが増大することは明らかであろうと思います。この問題に対しましては、製造物責任制度、製品の信頼保険制度、預金保険制度、雇用確保対策、独占禁止政策等をもって対処する必要があると思います。  これらは、新たな規制ではなく、企業及び消費者の自己責任を主体とした制度であります。既に日本企業はその責務を果たすだけの十分な能力を備えていると思いますし、消費者も、今後意識改革一定程度果たしつつ、これに対処するだけの能力を現在はもう持ってきているというふうに思います。その能力を発揮するための新たな制度であります。  そういう意味で、今後は、活気と自己責任に満ちた企業消費者による効率的で民主的な社会経済システムをつくりまして、それを基礎として、国際経済社会に対して貢献していくことが我々日本国民にとって重要な課題ではないかというふうに思います。  以上です。(拍手)
  6. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、評論家の屋山参考人にお願いいたします。
  7. 屋山参考人(屋山太郎)

    屋山参考人 屋山でございます。  私は、今問題になっております欧米における日本異質論というものに長い間かかわってきまして、十五年ほど前に、ジュネーブに駐在しておりまして、ガットの取材をしたことがあるのですが、その当時は異質論ということではなくて、ジャパン・プロブレム、こう言われておりました。  そのころから、どうも彼我の意見を聞いてみると、向こう側に理があるのではないか、常々そう思ってきたわけであります。ただ、日本側の代表団から、余り背中から鉄砲を撃つなよ、こう言われるので黙ってきたわけですが、どう見ても、これを沈思黙考すると、向こう側に理があるなということをずっと考えてきまして、最近はますますその感を深くしております。  欧米の市場というのは、御承知のように原則自由でありまして、その中で、寡占とか、あるいはカルテルとか、そういう弊害が出れば独禁法で対応する、こういうのが原則であります。ところが、日本では独禁法適用除外というのが四十二法律、六十八制度ということで、独禁法が穴だらけになっているという現実があります。それから、公取が産業連関表というものを使って、どのくらいの分野規制が行われているかということを調査した数字がありますが、これによると日本のGNPの四〇・八%について規制が行われているということで、これは小売商を除いておりますから、現実に規制が行われている分野は半分ぐらいになるのじゃないか。すさまじい規制社会であります。  そこで、そういう規制社会ができてきた経緯というのは、明治以来の殖産興業とか、あるいは戦時体制、あるいは戦後復興体制ということで、国家が産業に強くかかわってきた、こういう歴史があるのでありますが、今問題になっております多くの規制は大体昭和二十年代に出たものが特に問題が多い。  そこで、そういう規制国民生活に豊かに働いている、いい結果を生んでいるというならば、これも一つの行き方でありますが、経企庁が先月発表しました九二年物価調査というのによりますと、ニューヨークを一〇〇としますと東京は一三一であります。それで、その前に世界経済フォーラムというスイスに本部のある民間団体が、これは非常に権威のある民間団体でありますが、これが各国主要都市を平均した物価調査というのをやっておりますが、アメリカの主要都市平均を一〇〇としますと日本は一五九、家賃を除くということでありますから、まあ日本の主要都市の物価というのは、アメリカの主要都市に比べると六割以上高い、こういうことになります。  そこで、そういう消費者に非常に厳しい状況というのが、反面で日本の千三百億ドルに上る構造的な貿易黒字というものに結びついて、それが国際摩擦のもとになっているわけですから、やはりこういう規制を外すということは、国民生活を豊かにし、一方で貿易摩擦をなくす、それから日本の輸入規制をなくして、世界から見ても普通の国であるということにするのがこれからの政治の眼目ではないかというふうに思います。  消費者にどのくらい損だというような話は、今一般論で言いましたけれども、具体的に言いますと、例えば大店法であります。御承知のように、この制度は、大型店ができるときに、それの規模とか営業時間とか、そういうものをめぐって商店側が調整する、商調協で規制をする、制限することを認める、こういうことでありますけれども、それのおかげで日本の流通過程というのは非常に前近代的であります。  それで、スイスでは、そういう流通革命、大型店舗による流通革命というのは一九三〇年代に終わっている話でありまして、ここではドットワイラーという立志伝中の男がいるのですが、その人が、あらゆる商品にカルテルがあったところに薄利多売で乗り込んでカルテルを破壊した、それで、当時ヨーロッパ一だったスイスの物価を非常に下げた、そういう経緯がありますが、私は、この大店法というのは、日本の流通の複雑さを残し、物価を非常に高くしているのだというふうに思います。先ほど宮内さんからもお触れになりましたが、この大店法の存在を何とかしないと、庶民の消費物価というのはなかなか下がらないもとになるのじゃないか。  それから、もう一ついいますと、例えば車検制度みたいなものは、これはもう日本は世界最高の車をつくっているのに世界で最も厳しい制度でありまして、一回の車検で日本は大体六万円かかりますけれども、私がヨーロッパで生活した実感でいいますと、一回の車検に一万円もかかるなんてことはまずないのでありまして、日本人は五万円を余分に払っているのじゃないかと。年間二千万台の乗用車が車検を受けますから、五万円としますと一兆円のむだが起こっておる。  そういう複雑な車検、厳しい車検制度を簡素化しろという、行革審がそういう方向を去年の六月に打ち出したのですが、そのときにつくづく困難だなと思ったのは、こういう車検業者というのは八万軒いるわけですけれども、我々が簡素化ということをやりますと、もちろん運輸省も反対なんですが、業界団体がいわゆる族議員に働きかけて、族議員の方から車検の簡素化まかりならぬという圧力がある。そこで行革審の方は思い切った簡素化案というのが出せない。そこでもし出しますと、そんなものは構わない、政府政府だということで出しても、結局それは立法府に行って、まあ自民党が一党支配でありますから、自民党がうんと言わなきゃ通らない、こういうシステムだったせいで車検の簡素化がひとつ進まない。こういう八万軒の業者が政治家に働きかける、一方でその自動車整備の団体に運輸官僚が天下って、いわゆる小さな政官業の癒着構造というのがここにある。  それで、先ほど言いました、ちょっと申し忘れましたけれども、大店法もそうでありまして、商店街のだんな衆が非常に票も金も持っているということで、どうしても政治家の方は直接票を持っている、あるいは盆暮れに献金をくれるという人の意見を聞くというふうになるのだろうと思うのであります。  私は頭痛持ちでありまして、スイス製の頭痛薬をしょっちゅう持って歩いております。それで、これは日本では六錠千円でありますけれども、全く同じ薬がヨーロッパでは百円であります。これのもとになっているのは、再販売価格維持制度というので、化粧品と一般医薬品、五十品目について再販制度のカルテルを認めている、こういう制度であります。  先進国には、この再販制度なんてものを認めている国は、書籍について認めているというところはあっても、こういう化粧品、医薬品について認めている国はどこもないのでありまして、これも何とか外せないかということでありますが、これは、化粧品会社というのが、千三十円以下の品物についてカルテルを認められているわけでありますから、これを下げるとそれ以上の品物にも競争が入って値が下がるという構造があります。  そこで、どうしても再販を外すということには業界も反対、それから政治家も反対、それで業界団体には役人が天下る。これも政官業の癒着構造というのが、これはゼネコンなんかの規模に比べますとミニミニ政官業の癒着でありますけれども、そういうことが行われているということで、これはどうしてそういうものが外せないかということは、いろいろ考えてみると、やはり今までの政治というのはせいぜい有権者の一三%だとか一四%を握っていれば当選したということなんだろうと思うのですね。そういう中で、商店街のだんな衆とか化粧品の業界とか、あるいは車検の整備業者、そういうものに密着していた方が票は集めやすい、そういうことなんだろうと思うのですね。  私は政治改革に非常に期待をしている一人なんですが、これが仮に小選挙区になって、一つの選挙区で五一%をとらなければならないというような状況になれば政治家のマインドも変わってくるんじゃないか。商店街のおやじを押さえるよりもそこに来る千人の消費者ということを考えるようになるだろう、あるいは車検制度で整備業者にくっついているよりはそこに来る百人のユーザーという方に頭が向いていくんじゃないか。私は、制度を変えると政治家のマインドがだんだん変わってくる。  要するに今までは、どなたかがおっしゃっていましたけれども消費者というのは乾いた砂みたいなものだ、これをしゃくっても指の間から逃げていくというので、乾いた砂を相手にしないでもっと確実なもの、手ごたえのあるもの、そういうものに政治家は目を向けていた、こう思うのでありますが、これからは乾いた砂に目を向けて、そういうものの心をとらえないと、とてもじゃないですけれども小選挙区では当選できない、そういう状況になるんだろうというふうに思います。  それで、もう一つ申し上げますと、先ほどもちょっとどなたか触れられておりましたけれども、内航海運の問題なんというのもありまして、この内航海運というのは国内貨物の四五%を運ぶ業界でありますが、これの船腹調整をやっているわけですね。運輸省は、船で運ぶ方が車自体の排気量の、公害は十一分の一だ、それから一杯の船で運ぶ量もトラック六百台だということで、モーダルシフトということを一生懸命言っておりますが、モーダルシフトを言いながら船腹の量は絶対ふやさない、こういうことでありますが、こういうものを私はもうやめるべきである。そのかわりこの内航海運の業界に大変な競争が入るわけですけれども、そこで弱肉強食が起こるということは仕方のないことだ。内航海運が下がれば陸運の運賃も下がってくる、これは消費者に非常に影響してくるだろう、こういうふうに思います。  私は、最初に言いましたように、日本消費者が世界に比べて大変な高いものを使っている。私ども外国に行くと、女性からこういう規格の商品名の口紅を買ってきてくれなんて言われるので、よく頼まれることがあるのですけれども日本国民が口紅を外国で買ってきてくれというようなことを言わないような政治をやってもらいたい。これはまさに政治の貧困じゃないかというふうに思います。  そこで、原則自由という市場を目指してあらゆる身近なものをやっていく、規制緩和していくということは即物価ということにつながるわけであります。私がジュネーブにおりましたときにスイス・フランが非常に高騰しまして、そのころ円高でもあったのですが、日本は円高騒ぎで大変な騒ぎでありますが、それをスイスで取材しますと、スイス・フランが上がるともう一週間たたないうちにスーパー商品の値段が下がるということを目の当たりにして実に驚いたことがありますが、今円高差益がどこへ行ったかということでさっぱり還元されないというのも、やはりこういう流通とか規制が厳し過ぎるという社会に原因があるのじゃないかというふうに思います。  私の申し上げたいことは、一応以上であります。(拍手)
  8. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、在宅介護研究会代表大川参考人にお願いいたします。
  9. 大川参考人(大川優美子)

    ○大川参考人 お招きいただきましてどうもありがとうございます。大川でございます。  私は、きょう八人の中の一人女性でございまして、大体皆さんは、女性が来ると福祉のこと、その分野からの切り込みをされるでしょうと思われるかと思います。でも、六年とか七年ぐらい前ですか、私は福祉のことには全く関心ありませんでした。  私、きっと議員の皆さんの中にもおられるかと思いますけれども、人ごとに考えておりまして、あるとき福祉のことを一生懸命やっている女性に出会いまして、私はそのとき、何ていいことをしている、オアシスのようなことをしていらっしゃる人がいるんだなと、本当に客観的に見ておりました。その方が私に、今介護のことで悩んでいると、技術で入ろうか心で入ろうか、介護者に対してどうしたらいいのか、技術がない者はだめだよと言われるという、そういう悩みを聞きまして、私は幼稚園の教師をしておりましたことが長いものですから、心から入るのがまず先ではないかとその方に申し上げまして、本の編集をしておりましたときだったので、それでは私が少しわかりやすく本にでもしてみましょうかとお伝えしました。  その方が、実は娘さんのところに、アメリカに行くので、では一カ月後に会いましょうということになりまして、私はわかりやすく本を書いておこう、なるべく要点をとらえておいたことを彼女に提示しようと思いましたら、彼女は残念なことに、成田に戻ってきて一週間後、そのままの足で――娘さんにがんであるということ、そのお別れに行ってきたということを私は知らなかったのですね。  それで、その方が一週間後に亡くなってから電話をして、お葬式に行ったときに、私の名前を最後に小さな声で呼んでいたということを聞きまして、私は亡くなった方との約束を守らなきゃいけない。私は介護のことなんか全然知らないのです。福祉のことも全然知らないのですね。では、その人との約束を守るにはどうしたらいいか。その後私は、この在宅介護ということを調べ、介護教室というものを開いたり、それで医療はどうなっているんだろうとか、老人医療センター、そういうところで先生の教育をいただきまして、勉強させていただきました。そして本を出しまして、一年後の彼女の命日に、私はお墓まで届けに行きました。  私は、福祉の分野に入りまして、余りにも対応ののろい、そして高齢者が泣いている、福祉と随分騒がれている割には大変のろい、遅い対応をされているのではないかな。そして私が思うには、男性の議員の方が多いからかしら。もし目覚めていただけるのでしたら、早くに目覚めていただきたい。  実は、一三%の高齢化社会が来ているわけです。そして、これが大変な社会になるということは、もう皆さん存じ上げているわけで、この高齢化社会のことを、いろいろな税制の問題でも行政改革の問題にしても、この高齢化社会を根本に置いて、そして物事を決めていく、目標を持っていくという必要があるのではないかと思いまして、私は、この二枚目の方の「規制緩和をする理由 ビジョンを示す。」ビジョンを示して、そして議員の方々、それから国民がみんなで一緒になって二十一世紀に向かって勢いをつけて高齢化社会に飛び込まなかったら、とんでもない時代が来るんだ。  だから私は、今国民はどっちの方を向いているか。私は、先日の葛飾区の選挙を新聞で見ますと、投票に行った方、この中で何人かインタビューに応じている方、何も期待していません。国の方向なんかじゃなく、生活に密着した問題に取り組んでほしい、その方も、何も期待していない。期待していないということで、そっぽを向いているのです。国民は、大変今疲れているのですよ。毎日毎日テレビだとか新聞はゼネコンの話ばかりです。何ていう、こんなことをしてこられていたんでしょう。このゼネコンの話はもう参った、お手上げと、国民は本当に精神的に疲れていて声も出ないのじゃないかな、私はそう感じております。  それで、国民の皆さんに新しいビジョンを示してほしいと思うのですね。それは老後の不安をなくしてほしいという、この不安をなくしてほしいことをきょうは一番訴えたいのです。そして、老後の不安で貯蓄率が、もう何十兆円でしょう。もう皆さんカエルのおなかのようにこれでもか、これでもかという貯蓄をしておりまして、精神的には大変寂しいです。墓場までお金を持っていくわけじゃないのですけれども、いつ自分の命が終わるかわからないから心配だから、ためにため込むわけですよ。ためにため込んでも、最後は何のことはないんです、お葬式をする、使わないで置いていく。そして本当に国民は貧しい生活というか、精神的に確かに貧しい生活をしております。  購買力が下がっているというのも如実にあらわれていると思います。皆さん、もういっぱいあるからいいじゃないのです。不安であるから買わないのじゃないかなと思って、そこに私は不景気のこの状況が来ている。何年か前のあのバブルの時期に、主婦も高齢者も、あの証券会社の数字が変わる、あの数字に皆さん群がっていた。私は、池袋の駅のところでそういう状況をよく目にしておりました。あれは、何か自分の老後の不安のために少しでも多く蓄えて子供たちに迷惑をかけまい、そういう姿ではなかったか。あの豊田商事の件にしても、あれは自分がとらの子を投資したから結果があのような状況には確かになりましたけれども、そこの根底に流れているものは、不安な老後のため、これが大いにあると思うのですね。  そして、この不安の解消をしていただいて心が安心するということになれば、目くじらを立てている、日本人って冷たい顔をしているとか、そういうことをよく外国の人から言われますけれども、心の不安を取ってあげれば  私はここのところに、今ボランティア事業に大変予算をとられております。ですけれども、この日本状況の中でボランティアをしなさいと言っても無理です。ボランティアができる世の中をつくってほしい、そう私はお願いしたいのです。  そこで、この高齢化社会問題の中のことを幾つか現状を申し上げたいと思うのです。  もう皆さん、縛られているとか、そういう状況を御存じだと思うのですね。痴呆性老人の行くところはどこにあるのか。痴呆性老人の予算は、今年度入っていないと思います。痴呆性老人の方は一体どこへ行っているんでしょう。お医者さんの方は病気だから病院に、そう言っていますけれども、病院に入っても大変行動が、俳回等をしますから、どうしても縛られたりしてしまうのです。縛って治す病気というのがあるかということですね。  そして、ある、こういうデータも出ているのです。痴呆症の人を病院から出して、小さなグループホームで八人までとか、そういうところに痴呆症の人、そして薬を極力避けて生活をして、なるべく家庭にいるような環境をつくって、そうしたら大変顔の表情もよくなった、そして行動も明るくなってきた、何か違うね、そういうことができております。  痴呆症の行く道、痴呆症の人を助ける、それは間接的に家にいる人を助けることでもあります、働いている人を助けることでもありますけれども、痴呆症の人たちの介護の方法は病院の看護でなくて介護の方向に行くでしょうと、これは方向が大体決まっているのですけれども、残念ながらそちらの方向に厚生省の予算はまだとられておりません。そのあたり、もし新聞だとかテレビだとかで痴呆問題やら出てきたときには、人ごとでなくて、議員の皆さん、身近な、身内の人間であるということを考えながら対応していただければと思います。  それと、こういうことも御存じだと思います。特別養護老人ホームは、三〇%の個室、それ以上ですと助成金は出ないのです。建築の補助金が出ないのですね。六人部屋、四人部屋、八人部屋に入っているのですけれども、その人たちのスペースは、ベッドの上だけです。プラス、ベッドの下だけです。そして、そのベッドの下に段ボール二つしか持ち込んではいけないのです。国民の要望は、プライバシーを尊重してほしい、個室の部屋を与えてほしい、そういう願いを持っているのですけれども、その規制は三〇%以上は出さないのです。このごろ三〇%以上でも出す方向にはありますよというのが厚生省の方ではないかと思いますけれども、そういう規制もあります。  それから、三十床でしょうか、何十床以上じゃないとそういうホームは建ててはいけないという規制もありますので、小さい、少人数の人がいても介護ができる、そういう規制を払っていただきたい、そう思います。  これは、ほんの少しのことしか私は今例題には出していないのですけれども、それからあと一つは、保育事業、保育行政。  私が二十年前に子供を育てているときに大変な思いをした。そして、その二十年前の大変な思い、それは、保育園の預かる時間は今は延長しても六時まででしょうか。そうすると、六時に仕事が終わる人は六時に保育園が終わると迎えにも行けないのですね。子供を産まなくなったといいますけれども、そういう産めない状況をつくってきた。女性が働きやすいような環境をつくってきてくださったかと、私は、きちんともう一度今まで、委員の方々にお尋ねしたいという感じです。女性たちが悪いのじゃないのです。快楽的な方向に行きたくてやっているのじゃないのです。  住宅問題もそうですし、そういう環境で子育てをしてきて、女性は耐えることとか、そういう美的に日本の女性を思っていましたけれども、また今そういうものを今後求めていこうと思っているかもしれませんけれども、もう女性も大変疲れます。子育てをして、仕事を持って、そして介護をして、そして今度は、女性の方が長生きですから御主人まで最期を見なければいけなくなる。そういう女性の頑張りに対しての応援団、私はぜひしていただきたい。  そして、大きな規制緩和をするわけを出してほしい。規制緩和をするには、高齢化社会に対応する政策を持っていく、老後を安心させる、そういう日本をつくりますと出していただいて、大義名分と言うといい言葉じゃないかもしれませんが、各省庁の統廃合、私は必要と思います。労働省も保育制度のことをやっておりますし、厚生省の方も保育のことをやっている。結果的に、申しわけないけれども、無策なのではないかと思いますので、この各省庁の統廃合、この分野だけでもそうあるのですから、ほかからもあると思います。  それから保育事業。保育というのは福祉だと私は思うのですけれども、もう保育というのは福祉の分野には入っていないと思います。福祉というのは、これは時間がないから余り話せませんけれども、福祉は施してはない、奉仕ではない。全国民、お金があるなしでなくて、すべての国民の人のサービスとしなければいけない。そういう考えは、もう私たち高齢化社会問題をしている人たちの中には根づいてきております。  この保育事業を地方へ移譲するということを早くにしていただきたい。福祉は移譲しましたので、次は分権は、この保育事業を持っていってほしい、そう思っています。それで、今ゼネコンだとかが大騒ぎしていますけれども、私は、公共事業をこの福祉事業に持っていくということ、そうしたら国民は納得します。  三%の六兆円の消費税、今十カ年戦略、ゴールドプランに使われているお金は約五千億です。それでいて三%という、あのとき、消費税を入れるときにはたしか自民党が言っている、このゴールドプランの実行のため。でも、もうあれはうそをついたということを知っているわけですね。次に今回、前倒しで福祉をする。福祉を出せばみんながお金を出すかと思うと、もう今のこの考え方だと、私は皆さん納得しないんじゃないか。でも、精神的に疲れているからどう反対するかわかりませんけれども、まず私はこの福祉サービスを充実して、これだけ皆さんに福祉サービス充実の老後不安のない日本をつくります、だからこのぐらいはどうですか、中負担、高負担、そうしたら皆さん納得しますよ。今の十カ年戦略を前倒ししますとかじゃだめですね。今後は老後の不安、皆さん元気に働いてください、倒れたときには何とかしますよ。  例えば、今消防署だとか警察署、一一〇番、一一九番で呼べばすぐ飛んできてくれますね。だれもがあの警察に文句言う人はいないと思います。消防署に文句言う人はいないと思うんですね。ぜひ、介護が必要になった、五五〇番でもいいです、二二〇番でも結構です、統一をして、介護が必要になりました、お願いします、指導してくださいなりと言ったら、そういうのがあれば私は納得するのではないかなと思うのですね。  この介護の窓口、福祉サービスの窓口はばらばらなんです。どこへいっていいかわからないんです。消防署ならすぐに対応、即対応してくださいますし、それと、その前に火事が起きないようにとか、そういう指導もしてくれると思うんです。そして、その後の対応をしてくださる、そういうようなシステムができたらな、そう思います。  そして最後に、行政手続の簡素化のお願いです。  元気な人が座っていて、高齢者の人、困っている人、歩いていらっしゃい、手続しましょうとか、こういう行政ではなくて、みずから進んで行く行政サイドにならないといけないと思うんです。元気な人が、判こ持ってきなさい、お医者さんの診察の結果を持ってきなさい、それで対応しているのでなくて、もう各市町村の窓口なりが飛んでいってどういう状況か、その人の、各個も大事ですよ、要求する。個を大事にする、権利とかそんなことは申し上げませんけれども、一人一人、高齢者それから弱い子供、そういう子供たちの個を大事にする日本であってほしいと思います。  最後に、この規制緩和については、恐れずにぜひ切り込んでいって、日本国民のためにやっていただきたい、そう思いまして、私、ほんのささいなあれですけれども、御清聴ありがとうございました。(拍手)
  10. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  11. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  この際、委員各位に申し上げます。  質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名並びに質疑する参考人のお名前をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  それでは、質疑のある委員は挙手をお願いいたします。
  12. 太田(誠)委員(太田誠一)

    ○太田(誠)委員 きょうは、いずれも大変重要な、そして意味のある御指摘をいただいて、ありがとうございました。  質問というよりもコメントに近いのですけれども、まず宮内さんに、お聞きするわけじゃありませんけれども、鉄のトライアングルという言葉は、典型的には自民党と経団連と役所の関係だ、典型的にはそういうふうに世間からは思われていたんですが、その中で、きょうのお話は別に役所の影響はないというふうに思ったのですけれども、日ごろ我々、経団連意見を提出をしたときには、例えばその前後に大蔵省とか通産省が同じような内容意見を発表しておって、特に証券のスキャンダルのときに出された経団連の見解というのは、大蔵省が出したものとそっくりだったのですね。むしろ経団連そのものがさまざまな意見を出したり、あるいは日ごろの活動の中で経済官庁との関係が非常に深いのじゃないかということを、実は伺っておって、きょうの宮内さんのお話は非常に新鮮で、踏み込んで勇気ある御発言だった、こう思います。ぜひそのようなお気持ちで、自由な経済人らしい御活動をお願いいたしたいと思うわけです。  次に、屋山さんに、これもコメントに近いのですけれども申し上げるのですが、先ほど車検制度のことを例に引かれて、政官、そして鉄のトライアングルの話をされたのですけれども、これは業界団体とか商工会の話もそうですけれども、ではだれが業界団体でこういうことをやろう、族議員に働きかけてそういう運動をしようとしているのかというと、それはやはり各省庁なのですね。各省がいわゆる業界団体に働きかけてそういう運動をせよということを言うわけであって、その結果、族議員が出てきて邪魔をするというところでまたオルガナイザーとしてあらわれるわけでして、今屋山さんがおっしゃっておられることは、いわゆる官僚による立法府というか、国会の支配みたいなことなのですね。そこを我々はどうやって脱出するかということは、確かにそのとおりでありまして、ぜひ御理解をいただきたいと思います。  また宮内さんに戻るのですけれども第三者機関ということをしばしば言われるわけです。あるいは、これは植草さんの話にもありましたけれども、大体行政改革にしろ何にしろ、審議会という存在が非常にいかがわしいものだと思っております。審議会というのは、だれがオルガナイザーで、だれに向かって言うかというと、それは役所がオルガナイザーなのですね。役所がセットした場所で発言をするわけでありますから、まさに行革のような問題を、そこで言っていることというのは、いかにしてそれを、方向を変えるかということですね。あるいは押さえ込むかとか値切るかというふうなことを考えながら、聞いている人に向かってしゃべっていることになるわけでありますから、私は、むしろ審議会そのものがどうなのか。つまり行政が勝手に自分たちの勉強会を組織しておって、それがあたかも何か権威のあるもののように彩っておるということが本当にけしからぬことだと思っております。まあ特別委員会がこういうふうにできて、特別委員会のような場所で、こういうところでお聞きしたことをどうやって実行していくかということが本当の話だろうと思うのです。  第三者機関という言葉は非常にまやかしであって、第三者機関などというものはないわけであります。任命した人が自分に都合のいいような結論を聞きたいというために第三者機関というものをつくるわけですから、そこは余り期待をできるものではない。むしろ、先ほどのお話のように、こういう立法府の独立をした委員会でずっと継続的に取り扱うべき問題だと思いますので、ぜひ御協力を今後ともお願いいたしたいというふうに思います。
  13. 宮内参考人(宮内義彦)

    宮内参考人 御指摘いただきました点で、鉄のトライアングルの中の経団連立場ということは、そういうふうにごらんになっておられるということは、ある意味では、経団連の中でもやはりもうそういう時代は終わったという考えは非常に強くなってきているのだと思います。そういう意味で、私ども産業問題委員会というようなところで規制緩和ということを真剣に議論しております。その辺も御理解をいただきたいと思います。  それから、私が申し上げましたのは第三者機関なのですが、確かに先生おっしゃいますように、立法府がいわゆる日本のスケルトンをつくって、そのスケルトンに基づいて行政府に実行せしめるというのがあるべき姿だと思いますけれども規制の中を見ますと、法律に書いてあることを、例えば通達段階、窓口指導段階になりますと非常に大きな拡大解釈がされている。我々業界はその中にいるわけでありまして、ある拡大解釈をされた行政指導に基づいて、本当にこれは法的にどうなのかなと思いましても、立法府に訴える道は実はないわけなのです。  そういう意味で、法律の改正は確かにこのような特別委員会で真剣に御検討いただくということはぜひお願いしたいわけでありますけれども法律、政令、省令以下の実行のところまでの、何か民間から見てこれはおかしいのではないかというようなものを取り上げていただくためには、何か力のある機関が、この通達の部分はおかしいじゃないか、これは法律趣旨に照らして合わないぞ、だからこの通達のこの部分はだめだというふうなことが言えるような機関というのは別途あってもいいと思います。ですから、私はどちらかというと両建てでないといけないというふうに、きょうはちょっと舌足らずでございましたけれども、申し上げたつもりでございます。  以上でございます。
  14. 屋山参考人(屋山太郎)

    屋山参考人 私、太田先生の言っていらっしゃることでなるほどなと実は共鳴している面は、初め、私週刊誌で規制緩和の連載をやってずっと調べたのですが、そのときのアプローチといいますか、発想は、一番政治家が悪いのだろうというつもりでずっとやっていきますと、実は政治家というのは官僚のたなごころのうちで官僚にうまく使われているのじゃないか、それが実態なんだろうと思うのですね。  車検の問題なんかでも、とにかくあの車検を簡素化するというと運輸省の権限が減るわけなのですが、運輸省はめったにそういうことを言わないのですね。いきなり族議員が出てきて、国民の安全を何と考えておるかといたけだかになって怒るわけです。しかし、後でいろいろ聞いてみると、それを動かしているのは官僚だという面がしばしばありまして、そういう意味で、やはり官僚の上に立って立法府がきちっと監視するという機能が少ないのじゃないでしょうか。手先になりがちだというふうに思いました。
  15. 植草参考人(植草益)

    植草参考人 おっしゃるように、立法府がこういう規制緩和について大きな役割を果たすということは基本だというふうに私も思います。そういう意味で賛成でありますけれども臨調行革審と続いてきて、随分努力はしましたけれども規制緩和がそれほど前進しないというのは、やはり各官庁から代表が来ていまして、そこで意見を言い、そして大変活躍をされて、本格的な規制緩和をやろうとすることに大きな抵抗をする。そこで、役人代表は入れないとか、それから役所からの派遣をしないとか、随分苦心をしてここまで来たのですけれども、なかなか先に進まない。  そうなりますと、提言はできますけれども、しかもかなり大胆な提言はできますけれども実効性のあるものまで行くかどうかというのはなかなか難しいわけですね。そこで、内閣の中に審議室をつくる等々の意見が出ているようでありますけれども、本当にこういうシステムがいいということについては、まだ十分な議論をしていないのじゃないかと思うのですね。  私は、まず第一にこのような特別委員会を常置して、立法府がこの問題に対してやはり行政府に対して強力な提言をしていくということがまず基本だと思うのです。同時に、それらの改革ができたら、それを具体的に実行するような機関、それを第三者機関という表現を使ったのですけれども、私は総務庁なりどこなりにそのような新しいシステムをつくっていった方が実行はやりやすくなるだろうというふうに思うのです。  と同時に、立案もそのような、それぞれ規制権限を持っている官庁じゃないところに新しいシステムをつくって、そして行政府と立法府が一体となって規制緩和をし、日本経済のシステムを変えていくということ。と同時に、先ほど私申し上げましたけれども、もう一方はやはり行政訴訟というような形の裁判によるあしきものは是正するという制度の拡充も大事だと思います。  そういう、いわば三権分立全体の中でいかなければならないと思いますから、それぞれにちゃんとした機関をつくって本格的にやるんだということを御提示いただかないと、ただ第三者機関ということだけを出しても、実は例えば公正取引委員会憲法違反論というのは昔からありまして、これだけ大きな仕事をしてきたのに、いつも攻撃するときはそれでやられる、それと同じような轍を踏むようなことになってもいけないと思うのですね。ですから、繰り返しになりますけれども三権一体となった新しいシステムをつくっていただきたいというふうに意見を申し上げます。
  16. 森田委員(森田一)

    ○森田委員 自由民主党の森田一でございます。  屋山先生にお伺いしたいのですが、日本が大体半分の分野規制されておるという話でございました。スイスで生活された御体験があるのですが、スイスで感じとしてどのくらいな分野規制があるというふうな感じでございましょうか。
  17. 屋山参考人(屋山太郎)

    屋山参考人 それは、各国でそういう規制がどのくらいの分野であるかという比較の統計はないのですね。これも相当調べたのですけれども、調べているところがないということです。  簡単なことをいいますと、例えば私がスイスに、ジュネーブに行って、日本の免許証を持ってどうすればいいんだというので行きますと、それは本物であるという証明書を大使館に行ってもらってこいというので翻訳証明というのをつけまして行きますと、五分でくれたのですね。それで、今度はスイスの免許証で、その間に日本の免許証は当然もう失効しているわけですから、スイスの免許証を持って日本の鮫洲かなんかに行きましたら、スイスのものは切りかえられないのですね。それで、そんなのはおかしいじゃないかと大騒ぎして、結局警察の友人に頼んで、そうすると昔の免許証を探し出してそれを復活させる、そういう手続なんですね。もらったから黙っているのはあれですが、私はどうもおかしいと思うのですね。つまり、四年以上あるいは三年以上どこか外国に行けば必ず向こうの免許証になっているわけですから、これは十五年も前の話ですけれども、そういうのが依然として改まっていないのですね。  それから、物を借りたり貸したりするときの契約というのは、役所はほとんど関係ないのですね。民間の、ちゃんと書類が整っていればそれで済むことなんです。役所に行く機会というのは、出頭しろとかいう機会はほとんどないのですけれども、在日外国人に聞きますと、年じゅう役所に呼び出されているのですね。  そういうので、私はトータルで統計的にどうだと言われても、感じとして、原則自由の市場でありますから、独禁法適用除外というのはほとんどないのですね。ですから、恐らく産業連関表の問題でも日本ほどひどいところはないのじゃないか、これは感じでありますけれども
  18. 松本(善)委員(松本善明)

    ○松本(善)委員 大川参考人が言われましたような福祉の充実のために規制緩和をするというような問題点については、全く賛成なんですね。これは予算要求との関係もあると思うのです。そのほか全く不要な官僚的な規制というようなものをどんどん緩和しなければならない面もあると思うのですが、社会的規制については、植草参考人宮内参考人も触れられましたけれども、やはり規制強化しなければならない問題もあると思いますし、それから植草参考人言われましたように、本格的な規制緩和をすれば競争の激化を通じて消費者被害だとか雇用調整だとか企業倒産、公正取引もそうだし、この問題についてもよく考えないと、今規制緩和というのは大合唱になっているだけに、やはりその面についての配慮は特に必要なんじゃないだろうか。  屋山参考人が言われました、例えば大店法の問題なんかも、これは一般的な問題ですが、消費者のために規制緩和ということで言われますけれども消費者はある面でまた生産者でもあるわけですね。日本の場合は、中小企業者の九九%、それから大企業でも勤労者はやはり消費者、そういう両面があるわけです。大店法を全部野放しにした場合に、例えばかなりの中小企業の倒産が出てくるでしょう。それは社会問題になってくる。あるいは集中的な出店ラッシュというようなことになりますと、自動車公害、交通問題、あるいはごみ問題、環境問題、地元商店街がつぶれて町づくりがいかなくなるというようなこともございます。  ですから、規制緩和しさえすればいいというものでは決してない、そのときのいろいろな問題点についてやはり考えないといけない。そういう点について各参考人から、いわば規制強化とか規制緩和をするというときのいろいろな考えなければならない問題点等についてお話があれば伺いたいと思います。
  19. 屋山参考人(屋山太郎)

    屋山参考人 私も、流通革命みたいなものが起こって中間の二次、三次、四次の卸なんかはつぶれるという心配はもちろんしているのですが、ただ、この人たちを食べさせるために消費者が、しょうがない、我慢している、支えているという意味は余りないのじゃないか。  それから、肝心なことは、千三百億ドルの黒字が日本のために全然なってない。それはみんな外国で投資したり外国のものを買ったりしているわけですけれども日本で簡単に事業を起こせるとか投資環境が非常によくなればお金は返ってくると思うのです。そうすればそういうつぶれた中間業も新しい業につく、そういう意味の構造調整というのが進むと思うのであります。ですから、日本の場合は大店法を廃止する、それだけですべては片づかない。今度は、もっと規制緩和したところで業が成り立つというような、そういう環境をつくる必要があるのじゃないかというふうに思います。
  20. 宮内参考人(宮内義彦)

    宮内参考人 確かに先生おっしゃったような面はあろうかと思いますけれども、我々事業者から見ますと、先ほど申し上げましたように、独禁法強化というようなことで全産業経済活動に対して不公正な取引を少なくするとか、それから現在議論されておりますPL法なんかも一つ社会的な責任を果たす法律として規制緩和のトレードオフという形で入ってこようかと思いますし、それから失業の問題でございますけれども、これは、非常に短期的には競争激化でおかしくなるというような事業があるわけでございますけれども市場原理をより働かすことによりまして経済活性化し、新しいサービス、新しい事業というのが生まれてくる、そこに新しい雇用が創設されるというようなことで、マクロで見ますと、やはり私どもとしてはプラスの方向に行くというふうに思うわけでございます。ですから、そういうミクロ調整ということは、政策的にやはり手を打つということはいろいろな場面で考える必要があろうかという点で、先生のおっしった点につきまして、ある意味では注意しなければならないということにつきましては賛成でございます。
  21. 植草参考人(植草益)

    植草参考人 規制強化をする分野があるかという御質問に関しては、ないわけではないけれどもそう大きいものはないだろうというような非常に漠然としたお答えしかできない。むしろ大事なことは、どういう規制は残しどういう規制緩和するかという根本問題に返らなきゃいけないと思うのですね。すべて何でも規制緩和していいというわけではありませんでして、市場経済を基礎とするときには市場に任じておいたのでは経済がうまくいかない分野というのがあるわけです。それは、自然独占とか公共財とか非価値財とか、そういう公共的なサービスとか外部不経済とかというような問題でして、そういう問題については、ちょうど今のロシアとか中国を見ていくと、市場経済を導入したときに非常な混乱に陥っているというのは規制体系がないからだと思うのですね。  我が国は、そういう意味では百年を経てこの規制体系を極めてうまくつくってきて、それが日本経済の発展と安定に寄与したと私は思っているのですけれども、それらがすべて古いものになっているというのが一つと、それからメリットよりはデメリットの方が大きくなってきているということがやはり大事な認識でありまして、そうなりますと、規制強化というよりは、今は新しい社会システムをつくるという前進的な見方でいかないと何も出てこないというふうに思うのです。前進的な見方というのは、結局は規制によらずしてルールによって社会が動いていくというシステムにすることだと思うのです。  ルール社会という言葉がありますけれども、例えば独占禁止法のような形で法律があって、これを守らない人は罰される。それには官庁が介入して、許認可ではない、あくまでルールによるという社会をつくらなきゃいけないと思いますので、そういう意味では、総合的には緩和の方向はやはり今こそ打ち出すべきだというふうに思います。
  22. 中野委員(中野寛成)

    ○中野委員 先ほど宮内参考人の方から、日本規制社会だと言われる、こういうふうに言われまして、全く同感なわけなんです。やはり原則自由、例外規制という原則に戻らなければいけないと思うのでありますが、私はどっちかというと皮肉屋なものですから、最近、規制緩和が声高に叫ばれるようになった現象を皮肉なことだと思っているのです。本来、原則自由、規制がない社会、今までの既成概念でいいますと、自民党政権のときに規制緩和がもっと進んで、いわゆる社会主義政党の参加したこの連立政権のもとでは、逆にどう規制をするかというのが論じられるというのが過去の古い概念では考えられることである。それが今、いわゆる全く逆転しているわけですからおもしろい現象だ、こう思っているのですが、しかし、それだけに思い切ったことが今だからこそできるのではないかという気がいたしております。  そのときに、現在の日本規制社会というのが、言いかえれば社会主義化、悪く言えば国家主義化、もしくは封建社会的な部分がこの規制という形の中で息づいているのではないか。言うならば、規制緩和するということは、ロシアじゃないけれども日本社会の自由化、民主化を今日本規制緩和によって進めようとしているというふうに考えるべきではないか。  ですから、規制というのは頭の中では一度全部取っ払ってみて、そして規制をどういうふうにして緩和していくかということではなくて、逆に今現代社会においてどういう規制が必要なのか、それ以外はもう全部自由化する。まさに規制は例外だということをしっかりと念頭に置いて、規制が必要だというものはどういう原則が必要なのか、その規制が必要なことの原則を確立し、それ以外は全部なくすというような発想がないと、これまた先ほど植草先生がおっしゃったかと思いますけれども、何か今パーセンテージで何割規制をなくすとかというのでは本当に規制緩和とか実効の上がる措置というのは講じられないのではないか、そういうふうに思います。むしろ大胆な発想の転換が必要なんだろうという気がしているわけであります。  そういう意味先生方のお考えをお聞かせいただきたいと思いますのと、もう一つ、評論家としての屋山さんに社会現象的な面からお聞きしたいのですか、規制緩和をいたしますと、真っ先に文句を言うのは、文句というのはおかしいのですが、困るのは中小企業と労働者ということになりはしないか。規制によって保護されている分野が結構多い中小企業、そしてまた規制によって雇用が守られているという分野というのは私は大変多いと思うのです。そういう意味で、結局労働組合、中小企業団体、それこそまず真っ先に反対ののろしを上げるということが現実には考えられると思うのですが、こういうことについて、やはりみんなで発想の転換をさせていく必要があると思いますが、その方法論とか、どういう現象が想定されるかとかということについてお聞かせをいただければなと思います。  それから最後に、大川さんのおっしゃられること、まことに同感でありまして、実は私も今新しい経済理論をどうしたら確立できるかと一生懸命考えているのですが、資本主義が生まれて、それが行き詰まった一九〇〇年代初頭の世界大恐慌、それを打破するために考え出されたのがヨーロッパを中心にした社会保障制度。その社会保障制度を充実させることによって、貯蓄は要らないよ、万一のときには大丈夫だよという保障をすることによって結局消費が生まれ、そしてある意味では当時の世界恐慌というものが克服された。そして今、それから百年たって、しかし新しい弊害が生まれたということではないか。  そういう意味では、一九〇〇年代初頭の大恐慌を克服するときに考え出されたことと同じ理念をこの図式で示しておられる。しかし、これは決して古い考え方ではなくて、今の時代に合った新たな手法というものを、この一ページ目に書いておられるような意識をもとにしてつくっていかなければいけないのだろう。それが生活者重視とか消費者重視とかということになるのだろう、こう思うわけでありますが、そのときにも、やはり規制緩和によって時に弱者が受ける、これは社会的規制がきちっと確立をされておればいいと思いますけれども、弱者が受ける心配というものも一方で持たなければいけないということを総合的に考えていかなければいけないんじゃないか。  現に、私は原則自由という原点にまず立ち返らなければいけないと思いますが、そのときに、逆に言えば注意すべきことが確立されて、その注意すべきことが原則となれば、あとは全部自由というふうにできるのではないかと思うのですが、どういうふうにお考えでしょう。
  23. 屋山参考人(屋山太郎)

    屋山参考人 確かに、おっしゃられるように、例えば車検の規制緩和をやってうんと簡単にする、こう言いますと、整備業者八万軒の恐らく一、二万軒がつぶれるだろう、こういうふうに言われているわけです。しかし、そういう一方で、一、二万軒つぶれたという失業がある反面で、庶民の利益というのは非常に大きいものがありますから、これはみんながうまくいくという、もともと構造調整というのはそういう八万うまくというようなものではなくて、移動のときにはだれかが犠牲になるというものはしょうがないのじゃないか。大きな人が利益を受ければ少数の不利益というものは仕方がないということと、やはり先ほど言いましたように、そこで、それじゃその失業が永久に続くかというと必ず新しい職業というものが出てくるわけでありまして、そこにタイムラグがあるということが問題なのですが、そこは割り切って、やはり大衆の利益を追求する、それから、一方では新しい職業が起こってくるようなことをサポートする、そういうことじゃないかと思うのですね。全部うまくいくようにということであれば現状維持が一番いいわけですからね。ただ、その場合には庶民の不利益というのは隠されているということです。
  24. 宮内参考人(宮内義彦)

    宮内参考人 やはり日本国民といいますか、一人一人に自己責任原則というのが非常に欠けている、そのために行政国民を保護しなければならないというような趣旨法律ができ、規制の網がかかっている場合があるのです。  一つだけ私どもの身近な例をちょっと申しますと、随分古い話でございますけれども、昭和二十八年に保全経済会という事件がございまして、庶民から金を集めてどこかへ行ってしまったという社会を揺るがした事件がございます。それを契機にいたしまして昭和二十九年に出資法という法律ができておるわけなんです。この出資法は、みだりに不特定多数から金を預け入れて金利をつけてしてはいけませんよというような、保全経済会のようなことを再び起こさないということで法律ができて、これがきょうに至っておるのでございます。  実は、世の中随分変わってしまいまして、きょう現在、例えば私ども業界でいいますとコマーシャルペーパーという短期社債というようなものがあるのですけれども、コマーシャルペーパーの発行が貸金業者には許されないということは、出資法に違反するおそれがあるというようなことでいまだに認められていないということなんです。我々のような業界が当時の保全経済会とどんな関係があるのかなということでございますけれども、この出資法が存在するために認められない。  実際のところは、我々のような業界はそういうことをするから認められない、保全経済会のようなことが起こるということをおそれておられるのかというと全く違うわけでございまして、我々がコマーシャルペーパーを発行しますと短期資本市場から資金を調達する、そうすると今まで銀行から調達していたのが要らなくなる、そうすると銀行と証券とのバランスが崩れるというのが実はその心であると私は了解しているわけなんです。  そういうようなことで、古い古い法律国民を保護しようというようなことが現在の大きな経済活動を全く動かないようにしているというようなことでございまして、そういう意味で、一度法律ができるともうどうにもこうにもならない。しかも、その法律の第二条か何かに書かれているものに触れるおそれがあるからやっちゃいけないよという行政指導になってしまっているのですね。それに触れるのだったらいいのですけれども、おそれがあるという判定をするのも行政当局なんです。それに対して我々はアピールしようと思ったらそこへ行かないといけませんからどうにもならないということが起こっております。これは一つの例でございますけれども、そういう面で法律というのは非常に力がある。  それから、それに基づく行政指導というものも我々事業者から見ますと動きがとれないものになっているというようなことがございます。一例としまして申し上げました。
  25. 植草参考人(植草益)

    植草参考人 どういう規制を残すか、どういう原則でそれを考えるか、これは最も根本的な問題でありますから、実はこの短い時間でこの問題についてちゃんとお答えするということは不可能なんですけれども、ごく簡単に私の意見を申し上げさせていただきます。  経済的規制については、自然独占性のある産業分野というのは基本的にはインフラストラクチャーを形成している産業でありまして、電気ガス、水道、電気通信というようなもの、それから交通の一部、このようなインフラストラクチャーというのはいつの時代にも基本的にきちんと提供しなければならない産業であります。それは民間企業がやろうと国営企業がやろうと構わないのです。構わないという言い方は正しくなくて、できれば民間の方がいいのですが、そういうふうなインフラストラクチャーというのは常に新しい段階ごとに、経済の発展段階に応じて新たにつくっていかなければいけない。二十一世紀において日本のインフラストラクチャーをもう一回つくり直さなければいけないのですが、それをやっていくときに規制が必要かどうかということを考えていくことが大事でありまして、電力というものについて今のような自然独占性が存在している場合には規制がどうしても必要なんですが、それと同時にインフラストラクチャーの確保ということについて配慮する、そういう原則をまずきちんと立てる。  それから、経済的規制のうち競争産業分野は、これは小口金融とかいろいろな、一種の公共財になっているようなものがあると思うのです。そういうのはやはり残さざるを得ないと思うのです。それ以外の事業分野については抜本的な規制緩和をする。したがって、交通と金融分野というのは相当程度の緩和が必要だというふうになると思うのです。したがって、原則ではそこでは公共財、それから、ある種の銀行倒産が多発するような事態が起こってはいけませんから、外部性というものを確保するような措置というのも必要かと思うのです。それを残せばあとは抜本的な改革もできると思うのですね。  それから、社会的規制については、先ほど申し上げましたようないろいろなものがあるのですけれども、まずやはり国民の健康、衛生に関するもの、大体厚生省を中心とするものでありますが、それから安全に関するもの、労働災害とか消費者保護とか交通安全とか消防とか銃砲取り締まり、それから公害、環境保全、主に環境庁が担当しているものでありますけれども、こういうものについてはやはり残さざるを得ないだろうと思うのです。  しかし、先ほど申し上げたように、もう実質的には経済的規制に転化しているもの、またこれが基礎になっていろいろな行政指導等々が行われている。族議員の議論がいろいろありましたけれども、むしろこちらの側にくっついているのですね。それがいろいろな問題にもなっているわけであります。鉄のトライアングル論もありますけれども、僕はあの言葉は余り好きな言葉じゃなくて、実態はまさにそうですが、その本質をどこで解くかというようなことについては余り議論がないままにジャーナリズムで使われているというのはどうも好きじゃないのであります。  社会的規制については、今のような基本原側を残しつつ、それ以外の附帯的ないろいろな政省令、行政指導とか日本行政システムそれ自身にやはり手を入れていくというふうな考え方をすれば、本格的、抜本的な改革にいく時代になるだろうと思います。
  26. 栗本委員(栗本慎一郎)

    ○栗本委員 新生党・改革連合の栗本です。ます屋山参考人、それから続いて植草参考人にちょっとお伺いしたいのでございます。  例えば、屋山参考人が車検の例を取り上げられて、二百万台、五万円を見込んで一兆円である、これをこのまま削れば減税にもなりますし、もちろん規制緩和にもなるのですが、この問題を含めて、極端に言って、それをもし例えばすぐにゼロにした場合に雇用が削られることになりますね。ほかのものすべてそうでございます。あることによってプロダクティビティーを削っている部分というのは実際あるのだと私は思うわけです。ですからその場合、失礼ながら給料を差し上げて仕事を差し上げない、その間お暇ですから自己啓発をしてください、これを自己啓発減税でカバーするという格好でまず中途はいけるのじゃないかと思っているのです。  総論というよりやや各論に入るかもしれませんが、総論的各論として、屋山先生のお考えで、例えば順番、きっかけとして車検が一つの例だと思うのですけれども、例が出された途端に、それじゃどうするのだといろいろな議論がわあっと出ている段階ですからおっしゃりにくいかもしれませんけれども、ここはいいのではないかというのも、もしお考えがあればひとつお聞かせいただきたいということが一つ。  それから植草参考人に、規制緩和することによって自己責任を基礎とした新たな制度づくりが必要であるということを著書で御指摘になられているわけですが、私も全く賛成です。先ほどの松本委員からの御質問も多分その趣旨だと思うのですが、タイムラグが出た場合には、もしうまくいっても臨時にはショートタイムで失業率が上がらざるを得ない。例えば、明治以来の規制社会ですから、若干の混乱があっても少なくとも来年は吸収できるという展望等があれば別だと思うのですが、その場合、新雇用の創出計画のようなものを規制緩和と同時に立てなければいけないかと私は思っているのです。それを研究中でもございますが、ちょっとこういう方向でどうかという御指摘があれば、簡単で結構でございますが、後で教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
  27. 屋山参考人(屋山太郎)

    屋山参考人 御質問の趣旨がとれなかったのですが、車検を二百万台とおっしゃったけれども、二千万台……(栗本委員「二千万台で五万円で一兆円ということです」と呼ぶ)はい、一兆円です。  あらゆる規制にかかわる問題というのは、この車検に象徴されるように、倹約すると庶民が得するという面が非常に多いので、例えば電気ガスの差益還元というのが問題になりましたけれども、あれは円高差益の部分だけを還元していますけれども、それじゃ会社自体は効率的に運営しているのかといいますと、国鉄とかNTTを見ますと全然そうなっていないのじゃないか。国鉄なんかは四十万人が今二十万人、NTTなんかは三十万人が今度二十万人になるわけですけれども、そのくらいの人間を余分に抱えているわけですね。ですから、効率を追求するとか規制緩和をするというときに、そういう失業者といいますか、あぶれた人が出てくるというのは仕方がないことだと思うのですね。  おっしゃるように、問題はその人たちをどうやって転業させていくかというので、その間は失業手当を払って新しい職業訓練をさせるとか、よほどそっちの方に政策のウエートを置いていって、ただ、これは国でやるというより、やはりこれは地方団体の仕事なんだろうと思うのですね。スイスなんかは、完全にそういう新しい仕事のトレーニングというのは地方団体が担当しておりまして、あそこはえらい小さな国ですから日本みたいな大きい国とは比較になりませんけれども、要するに業種が変わるということは彼らは全然しんしゃくしない。例えば、私が行ったときに、繊維産業を一気に自由化して物すごい勢いの倒産が起こったわけですけれども、スイス政府がやったのは、つぶれた工場に新しい業種を興す、その新しい業種に対して助成金を出す、こういうものなので、繊維産業を支えようというためのお金は一銭も出しませんでした。時計もそうでした。ですから、そういうやり方というのは普遍的なものなのだろう。つまり、新しい業種にサポートする、そういう政策が必要なので、失業が出るから今の不合理のままでいいという理屈はやはり成り立たないのじゃないかというふうに思います。
  28. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 屋山参考人が所要のため中座するということで、御了承を皆さんにお願いしたいと思うのですが、そういうことを条件できよう参考人に来ていただきましたので、皆様にお諮りいたします。  どうも本当にありがとうございました。
  29. 植草参考人(植草益)

    植草参考人 規制緩和が実施されると相当程度雇用調整が必要になる、その対策が必要ではないかという御意見、私も賛成であります。ただ、どの程度失業等が出るかということについては予測がなかなか困難でありまして、いろいろなところから私のところにも問い合わせがあるのですけれども、非常に予測が困難であります。  むしろ、現在の雇用におけるミスマッチが非常に大きいわけでありまして、介護の問題にいたしましてもそうなのですが、看護婦さんが足りないとかいろいろなミスマッチがある。さらには、規制緩和されるとニュービジネスが非常に出てまいります。特に、例えば金融業なんかですと、現在いろいろ手数料を取られてサービスがあるものについては、日本手数料が高いし効率的でないわけですけれども、ああいうところへぱっとビジネスが入ってくるという可能性が非常にあるわけですね。アメリカなんかもそうなのです。私たちなんかも、お金を取りかえたり、それから送金したりなんかというのは非常に早くできる、そういうところへさっと企業が入ってくるわけですね。  そうすると、調整された人たちをそういうところへ雇用するという、現在のミスマッチの改善とニュービジネスによる新規吸収というものを考えると、そんなに大きな対策は要らないのかなというような気もしているのですけれども、実際には、どの程度どういう形でやるべきかどうかについては、私も今のところは確信を持っていませんので、我々の仲間の労働問題なんかも専門としている人たちと同時に十分やっていきたいというふうに思っております。
  30. 輿石委員(輿石東)

    ○輿石委員 社会党の輿石です。  植草参考人にちょっとお尋ねをいたしたいわけですが、前回、緊急経済対策の一環として九十四項目規制緩和を提示されてきたわけですけれども、ここに至る規制緩和の問題がこのように政治的な課題になってくる背景には、臨調行革審でもう十二年間に及んでこの問題をずっとやってきたわけです。それについての今までの、なぜこのような問題が依然として前へ進んでいかないのか、それをどういうふうに分析したらいいのか。  それから、本格的な規制緩和を行うためには、何をなくし、どのようにしていくかということになるわけですけれども、そういう点について今まで、規制緩和関係する法律も五百近くあるとか、項目だけでも一万を超えるというようなことが指摘をされているわけです。これからその問題についてどういう視点で、今までの規制緩和についての評価をまずしておく必要があるだろう、その評価の上にこれからの規制緩和の取り組みというものが出てくるだろうと思うわけですが、その物差しというか評価の基準というようなものをどのようにとらえて今後この問題に取り組んでいっていいのか、その辺の御示唆をいただければと思うわけですけれども
  31. 植草参考人(植草益)

    植草参考人 行革審、その前の臨調を含めまして、なぜ長いことやっているのにそう大きな前進がないのかということは、むしろ宮内さんにお聞きした方がいいのではないかと思うのですけれども、最近のところまでやっておられるので。私は二次まででしたから。  よく官僚の抵抗ということを言いますけれども、私は、その官僚の抵抗というのは、確かに規制権限を持ったら、その規制権限を離すということは官庁の存在意義というものがなくなるという形で、規制権限を離したくないというふうに、私はそれは一方であると思うのですけれども、もっと違った点があるのではないかと思うのですね。それは、規制緩和をしてルール社会になったときに本当の意味日本経済うまくいくのか、日本社会うまくいくのかということについて、官僚自身が新たなシステムへの展望を持ってないということだと思います。もし何かいろいろ事件が起こったら、結局官僚がいろいろその矢面に立たなければいけないというようなことで、新たな展望がない。規制緩和は善だということはある程度わかっても、先へ行くようなシステムをどうしたらいいかということを考えてないわけですね。  私は、むしろ官庁に対して全部、次の社会というものはどんなものかということを、それぞれの官庁の今の規制をやっている中でどういうふうにしたらいいかということをむしろ書かせた方がいいと思うのですね。私が知っている官庁ではそういう研究会は内部で結構持ってまして、二十一世紀へ向けての行政あり方は何かというようなことを研究しているのですね。そういうふうなところの意見をもっと社会的にアピールしてもらうという形にすれば、何だ、これはまさに規制緩和と一体じゃないかということで、従来の一種の抵抗だけが存在する社会とは違ってくるのじゃないかというふうに思っているのです。  もちろん、現在の行政産業界と政治との癒着というのはありまして、それが関与していて、行政だけが変わるというわけにいかないわけですけれども、そういう意味では、産業界が随分変わってこられましたし、政界もこういうふうに大改革の時期であるということで、むしろこういう場を使って官僚と大いに対話をされて新しいシステムを出してもらうということの方が先決だと思うのですね。ですから、今までのシステムのままで、行革審のような形で議論しても結局ほとんど出てこないような気がするのです。  私、今ある産業規制緩和の小委員会委員長をしているのですけれども、最初は皆総論賛成なんですね。いよいよ法案をつくろうということになったら業界内部も関連産業も皆反対なんです。物すごい反対なんですね。それはもう感情です。規制緩和は是であるということを最初言っていた人が最後は物すごい反対に回るわけですね。それは、そのときには政界にもいっているわけです。そういうふうにして見ますと、行革審のようなシステムで本格的な規制緩和ができるかどうかというのは非常に難しいものだということがわかってまいりまして、そういう意味で、新しい方式というものを考えた方がいいと先ほども申し上げましたので、ちょっと繰り返しになりますけれども。  評価基準につきましては、きょう私、実はもう報告の中で申し上げましたので、経済的規制に関しては先ほども申し上げましたように三つの基準というものを基礎に置いて、本当に成果があらわれているか否かということを見ていくということが大事だというふうに思います。もっとも、もっと具体的に分析するときにはもっと大変な点検をしなければならないのです。例えば電力ですと、発電から送電から配電までの垂直的な統合の経済性とか、それから配電のネットワークの経済性とか発電の規模の経済性とか、それらを総合的に運営していく範囲の経済性、それらが本当に効率的に行われているかどうかというようなことから根本的には問い直さなければいけないと思います。そういうのは、先ほども申し上げました新しい本の中で皆書いてございますので見ていただきたいのですけれども経済的規制分野についてはその評価基準でいいと思いますし、社会的規制分野についてはその目的をそれぞれ皆規定しているわけですから、その目的に沿って本当にそれが運用されているかどうかということをもう一度チェックするということが基本になるのではないかと思います。
  32. 武山委員(武山百合子)

    ○武山委員 日本新党の武山でございます。  私はアメリカに二十年住んでおりまして、このたび日本に帰ってきまして政治の世界で活動することになりました。アメリカ社会のことを言うのはちょっとおかしいのですけれども、先進諸国の一つですけれども、選択の自由、原則の自由というものが日本に比べますと大変多いわけなんですね。  それで、このような状態で今規制強化緩和がされるべきだということを皆さん参考人からお聞きし、また今後どうしていかなきゃいけないかということもきょうこの公聴会で私の頭の中には展望として少し出てきたのですけれども立法府としての私たちの、議員としての政治倫理、また責任というものの重さを感じている一人と同時に、新しいあしたの日本をつくるためにこの規制緩和規制強化という点で新しい展望を見出さなければいけないということを今痛感しているわけなんですけれども、その中で、ルールを確立して自己責任というものを当然国民一人一人が負わなければいけない社会に徐々になっていくだろうと思います。その自己責任の確立のためにどのようなことをしたらよろしいと思いますでしょうか、宮内さん。
  33. 宮内参考人(宮内義彦)

    宮内参考人 大変難しい、根本的な御指摘をいただきました。やはり日本人の一人一人の個の確立というようなものができていないという根本のところへ返ってしまう可能性があると思いますし、そういう意味では、例えば教育の問題にもかかわる、日本人の生き方の基本に触れる問題ではないかと思います。  しかしながら、世界の中で日本だけが特殊であるというのでなければ、これからの近代社会というのは、これからの若い人が個性を確立し自分の求めた生き方をしていく、そして自分で生活を切り開き、その責任は自分で持つというような世の中に二十一世紀は少しずつ近づいていくと思うのです。そういう中でルール社会というようなものが広がっていくはずでございますから、そういう広がるはずだという展望があれば、きょうの議論にもございましたように、規制社会というようなものの枠を少しでも外していくということが、これから日本の若い人が国際社会で通用していく社会をつくる一番の基本だと思います。私ども経済団体でもそういう点について議論する場合が時々あるのですけれども、やはり個の確立とか教育論とかいうようなところに行き着いてしまう場合が多うございます。
  34. 村田(吉)委員(村田吉隆)

    ○村田(吉)委員 今いろいろな議論を聞いておったのですが、私は御批判の対象の元国家公務員でございまして、その中で私、大蔵省の国際金融局というところにおりましたからちょっとほかの官庁とは違いまして、とにかくどんどん自由化をやっていこうということで外資法を廃止し、それから私も担当しておりましたが、外為法を原則自由の法体系に見直すというところまでやったわけなんですが、規制緩和にはいろいろ問題があります。それから勇気が要ります。  全部原則自由にした場合にどうなるかということについては、役人という立場からいうと、常に国会ということを考えますから、今までの野党の皆さん方の国会における姿勢というものは常に政府責任を追及する、事故が起こっても政府責任ではないのかとか。だから、そういう意味で役人がそういうところで大変用心深かったということもあるかと思う。外為法を自由化してからもしばらくの間は、国会でも為替管理が原則自由に変わったという認識も薄くて、いろいろなことが外為法違反ではないかという、そういう国会での議論を聞いていながら、ああ随分古いものだなというふうに思って、まだ頭が切りかわっていないなというふうに考えていたこともありました。  それからもう一つは、長い間規制をやっていますといろいろなところに結びつきができてしまいまして、例えば塩の問題。塩は専売物資であり、かつまたIQ物資でありますけれども、専売だからIQは必要ないんじゃないかということを通産省にかけ合いましたら、IQをとれと交渉しましたら、要するに苛性ソーダの製法転換、いわゆるイオン交換膜法に転換するのにこのIQを使っているんだということまで出てきたり、あるいはまた現金の、円貨の持ち出し。あれを自由化しようとするときに、これは警察庁の方から、暴力団の密輸の問題と絡んで、現金の海外への持ち出しを外為法上規制しておけば暴力団を捕まえることができるから、これは残しておいてくれとか、そういう話がいっぱい複合的に出てきまして、規制には本来の目的以外にさまざまの目的が付着していて、規制緩和を担当した人間として、物事は本当に簡単ではないということはよくわかっているつもりなんです。  せっかく政権交代いたしましたから、前回どなたかおっしゃっていましたけれども、今までのように審議会をつくってちょこちょこと規制緩和したらということをやっていたんじゃもうできないのではないか、もう原則自由にするんだという政府の決意のもとに、もうひっくり返すんだという気持ちで、先ほどおっしゃっていましたように、各省ごとに、あるいは各省入り組んでいますから、どういうものを残すべきかということを議論した方が早いんじゃないかという、そういう気持ちを持っています。  そうなると、きょうは経団連からもおいででございますけれども、みんな建前と本音が絡んでいるのです。総論賛成、各論反対、やはりこれがひどいのであります。今、政治の分野でも政治改革が言われていますけれども、これはやはり総論賛成で、建前ではいろいろ気持ちはありながら、やっているわけですね。だから、そういう意味で、せっかく新しい政権ができたんだからそこをおやりになったらいいんじゃないか。我々も、そういう意味で、日本が新しい方向に進んでいくというならば、私個人としては拍手をしたい、応援したいというふうに思っています。  ただ、先ほど議論になっておりましたけれども、要するに日本社会において個の確立というのは非常に大変な問題なんです。政治改革がなかなかできないというのもそこがまだまだ国民の個の確立ができていなくて、いろいろなしがらみなんかで投票行動に走るということがありますから、特に、都会の人たちはわからないでしょうけれども、地方選出の議員はまさにしがらみの中で選挙をやっている。だから、なかなか政治が動いていかないということがあるわけなのです。だから、この規制緩和一つそう、それから政治改革一つそうでありますが、いかに国民の個の確立、自己責任で、自分で選ぶのだ、自分のところに責任が返ってくるのだという認識を高めていくためのきっかけになればいいと思いますが、そういうふうに持っていくことが大切だと思います。  そのときに思想の転換であります。今まで日本社会は、規制もそうでありますけれども、みんなで仲よくやろうという社会から、自分一人で自由競争という社会に入っていくわけですから、それに対してのコンセンサスというものを国民に提示をしなければだめだというふうに思います。だから、後で各論反対が出てくるのは、その認識を、今までみんなで仲よくという社会から、みんなで自分で責任を担うのだよというふうに、それにこたえられるようにやるのだということをしっかりと認識してスタートしなければいけないのではないかなというふうに思います。それが第一点です。  それから第二点は、植草参考人にお伺いしたいと思いますが、いろいろな問題がありますが、規制の監視制度というものがあります。審議会の代表とかオンブズマンなとおっしゃって、私は、国のレベルでは割合そういうものが確立しているのじゃないか、整備してきたというふうに思います。今、地方分権ということで地方への権限移譲ということがよく言われますが、私は、地方はまだそういうものがいろいろな意味で確立していない。だから、そういう意味で地方分権、大川さんちょっと地方について社会福祉の関係でおっしゃっていましたが、私は大変そこは危険な面がある。  見ていまして、地方議会が地方政治あるいは地方行政に及ぼす権限というのは国政政治家よりもずっと大きいのではないかというふうに思います。国家公務員のレベルでは、大政治家が介入してきてもお断りするということは日常茶飯事あることですが、なかなか世界が小さくなりまして、地方議会の議員が、例えば、特養はおれがやっているから認めるなといったら許可がおりないということはいっぱいあるのですね。だから、よく言われるように、地方議員の副業としてやっていることの大部分が、これは失言かもしれませんが、要するに建設業と特養とそれから廃棄物処理業、こういうものをやっているという現実がもし正しいとすれば、やはり私はそういう意味で、地方行政の面でも非常に改革が必要である、規制緩和はそこまで手を及ぼさなくては完成しないのだろうというふうに思うのです。  だから、るる申しましたけれども、二点だけ私の意見を述べさせていただきます。ちょっと時間がないので、お答えは無理かもしれません。  それから、屋山さんお帰りでありますが、屋山さんが政治改革についてコメントをされました。今度小選挙区制になったら前よりいいのじゃないか。要するに、今までの圧力団体なんかよりも一般大衆の受けをとらなければいけないから、だからよくなるのじゃないかとおっしっていましたが、私は、政治改革というか選挙制度改革は必要だと思って大変賛成でございますが、その考え方は間違いたろうと思うのです。  要するに、かえってそういう団体へのアプローチというものを一生懸命政治家がやらないと五一%とれないようになるのではないか。一般大衆というのは浮動票でございますから、やはりそこはどうしても無視をする。結果的に、いろいろな団体の支持を集めることによってなかなか政治家が思うことを言えなくなる場合も往々にして出てくるのではないか。今ならば二〇%程度以下の票をいただければいいのであって、だから自由に言えるということもありますが、まあどうかなと。屋山さんお帰りでございますが、それだけ私のコメントとしてつけ加えて、私の発言を終わります。
  35. 大川参考人(大川優美子)

    ○大川参考人 地方分権の件ですけれども、国の方は、例えば島根県の状況とか東京都の状況が高齢者率が違いますから厚生省の方がお手上げしたんじゃないかな、だから地方に福祉の面は持っていったんじゃないかな。逆に地方の議員の人たちそれから地方の市町村等は育ってこなかったんじゃないかな。今そちらの方々が頑張ってやっている、いろいろなアイデアが出てくるだろうと私は思いまして、私は地方分権は大いに賛成で、けさほどの毎日新聞の方にも出ていた、多くの保健と福祉が分権された、あの秋田県のゆきぐに病院ですか……(村田(吉)委員「いや、反対しているわけじゃありません」と呼ぶ)私はぜひ賛成していてほしいものですので、それだけ。
  36. 植草参考人(植草益)

    植草参考人 おっしゃるとおりで、本当に思想転換が必要で、例えば規制緩和、うまくいって二年ぐらいでできたとしても、思想の転換は十年も二十年もかかるんじゃないかと思います。まあ早くても十年ぐらいかかるんじゃないかと思います。そのくらい難しい問題だというふうに思います。しかし、実は日本はそういう転換というのはかなり早くいく可能性のある国でありますから、そういう方向に行ければかなりうまく進むんじゃないかとも思っております。  それから、地方分権についてですけれども、地方分権、私が申し上げましたように、特に地方では規制の監視制度というのが十分備わっていない、おっしゃるとおりと思うのでありまして、実は大店法も、そんなに国の方で規制緩和するのなら地方議会にみんなやってもらいますからいいですという意見も前に私随分聞いたことがありまして、そういう新たな規制がもう実は地方でどんどんふえてしまう。それから、中央の規制が弱まりますと横出し規制というのがどんどんふえてしまうというようなことも危険性として非常にある。しかも、この監視制度というのは、民主主義を担保する制度だというふうに申し上げたのですけれども、地方にそういうものが十分ないということだと非常に大きな問題になりますので、御指摘のとおり、何とかこれにも取り組んでいただきたいというふうに思います。
  37. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 時間が来ておるようですが、お昼休み時間を少し節約して、野田委員からお話をいただきます。
  38. 野田(佳)委員(野田佳彦)

    ○野田(佳)委員 では、時間超過ですから端的に一点だけ。  宮内参考人から、規制緩和というのは、即効薬ではなくて、じわじわ効く体質改善の漢方薬、こういう話がございましたけれども経団連さんとしては、緊急経済対策、景気浮揚策としては規制緩和はそれほど重要視されていないのでしょうか。それとも、そうではなくて、何かもっとパンチのある改善項目というものを模索をされて、まあオリックスブルーウェーブが西武を抜くべく監督をかえたように、何かいい知恵がないかどうか。
  39. 宮内参考人(宮内義彦)

    宮内参考人 私、経団連を代表してお答えする立場にはございませんけれども規制緩和が現在の不況にどれだけ効くかというのは非常に難しい御質問でございまして、私は、やはり規制緩和というのは日本経済構造改革のために必要なことであって、経済対策は、もう少しそれよりも緊急に熱を下げるような、創業とは申しませんけれども、漢方薬でないものの方が経済対策として優先度が高いというふうに私は思っております。これは私見でございます。
  40. 村井委員(村井仁)

    ○村井委員 植草先生に一点だけお伺いしたいのでございますが、いわゆる中小企業の保護政策と呼ばれるものは、一面、独占禁止政策の補完的な役割を果たしている。少し補足いたしますと、要するに新規参入が非常に容易な世界を用意していくという意味経済政策的には意味があると思うのでありますが、規制緩和を行いました場合に、非常に強い企業がずっと政府を動かす、そして中小企業活動分野が減る、その結果、もちろん公正取引、独占禁止というのはきちんとやるという前提ではありますが、いわゆる中小企業政策の持っているそういう面の効果というのが減殺される可能性があるのではなかろうか、その点につきまして。
  41. 植草参考人(植草益)

    植草参考人 それは一般論で言うことはほとんど不可能なんです。というのは、アメリカの航空業における規制緩和というのは大変な大胆なものでございました。あれは、今までの非効率を何とか改善したいというような形でしたんです。そして、その後に合併が非常に進むだろう。確かに合併も進みました。しかし、企業数も大変にふえまして、今千何百社にまでなりまして、中小企業を圧迫しているかというと、むしろ中小企業の方がいいネットワークをつくっていい航空会社になっているという例も随分ありまして、そういう意味では、規制緩和が大企業による中小企業圧迫になるかというと、必ずしもそうとはいえないというのもあります。  他方、そういうふうな合併、集中が進んで、寡占化が進む産業もあるかもしれません。しかし、私たちが分析している限りでは、やはり規模の経済性が非常に強い産業で、それは自然独占性があるという形で今まで規制もしておりまして、私はそんなに進まないだろうと思うのです。  銀行業にしても、確かに大きな合併がどんどん起こっていますけれども、あれを通じて、今総合的に六千社ある企業が大企業にみんな吸収されるかといったら、そんなことではないと思うのです。確かに、一部の中小企業、特に独禁法が二十八年改正のころにいろいろ中小企業政策というのが入って、保護法も入ったわけでありますけれども、それが本当に中小企業のために役立ったかというと疑問も多いわけでして、中小企業、農民対策というのは、規制政策と同時に社会政策との関連で常に行われてきたものでありまして、そこのところのちゃんとした論理づけをしないといけないと思うのですね。残念ながら、ちょっともう時間がありませんので、これも重要な問題だというふうに思います。
  42. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 これにて午前の参考人に対する質疑は終了させていただきます。  参考人各位には、御多用中のところ、御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午後一時三十分から再開することにし、この際、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  43. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、規制緩和に関する件について調査を進めます。  ここに御出席を願っております参考人は、筑波大学教授宮尾尊弘君、慶應義塾大学教授中条潮君、旭リサーチセンター代表取締役社長鈴木良男君及び法政大学教授角瀬保雄君であります。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位には、規制緩和全般につきまして、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序についてでございますが、まず、参考人にそれぞれ二十分程度御意見をお述べいただき、次に、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、筑波大学教授宮尾参考人からお願いいたします。
  44. 宮尾参考人(宮尾尊弘)

    宮尾参考人 筑波大学の宮尾でございます。  ちなみに私の資料は「日本経済民間ビジョン」というパンフレットになっておりまして、開いていただきますと、一、二私が書いたものが挟まれております。私はきょう、時間がありませんので、三点に絞ってお話を申し上げたいと思います。  まず第一点は、規制緩和といっても、目標のない一般的な規制緩和ではなくて、戦略的な規制緩和をぜひやっていただきたい。戦略的という言葉をまず強調したいという点が第一点でございます。  第二点は、今の経済の低迷、不況から脱出するための方策として規制緩和を考えるのであれば、不況を克服するプログラムの一環として位置づけられた規制緩和というふうな考え方をやはり採用すべきである。それは第一点の戦略的という言葉をさらに説明をしているわけです。それが第二点。  第三は、やはりこれは皆様御共通の観点だと思いますが、なぜ規制が行われてそれがなかなか緩和されないのかというメカニズムまで切り込まなければ、個々規制緩和ということをうたっても根本的な解決にならない、それではどうしたらいいかということ。三点についてかいつまんでお話ししたいと思います。  まず第一点、戦略的規制緩和についてですが、これはなぜ今規制緩和なのかという質問に対して、答えは当然、今の日本経済の低迷を打破する治療法として規制緩和に注目をされているわけです。  周りを見渡しますと、実は経済が低迷しているのは日本だけではなくて、欧米諸国者経済が低迷しております。今回の世界的な低迷の非常に大きな原因の一つというのは、これは欧米諸国で既に見方が大体確立しておりまして、これはいわば資産デフレ不況、バランスシート不況と言われているものが一番中核にあるということが認識されております。これは資産価格、不動産や株の急落というものが経済主体あるいは金融機関のバランスシートを非常に崩す。負債の重みが非常に大きくなる。これによって金融機関の機能がほとんど停止をする。経済主体も負債の重みを抱えて活動が非常に滞る。こういうことが集積されますと経済がどうしても沈滞ぎみになるということで、欧米では大変高い失業率がいまだに続いております。日本も例外ではありません。  ただ、日本の場合には、最近になればなるほどその病気の症状が深刻になってまいりまして、特に、アメリカなどでは景気が回復しつつあるにもかかわらず、日本ではますます悪くなるということはなぜかということが今問われなければいけないわけですが、これは私が見るところ、このような資産デフレあるいはバランスシート不況を悪化させるような規制がそもそもかなりたくさん最近導入されたと同時に、まだそれがほとんど解除されていないというところに一つの大きな理由があるというふうに思います。したがって、景気を回復させるための規制緩和という場合、それら不況の原因に切り込むようなものを戦略的に考えて規制緩和をとっていかなければ、効果もなければ意味もないというふうに考えますので、その意味で戦略的規制緩和ということを強調したいと思います。  この戦略的規制緩和に対比されるものとして一般的規制緩和というのがありますが、これは実は実効が伴いません。確かにすべて規制緩和せよということは言われておりますが、そういうことをしても、極端に言えば地ビールの解禁ぐらいしか出てこないわけで、そのように時間と労力がむだで、非常に薄く、広くやっても効果が上がらないわけです。  それからもう一つ規制緩和一般というのはデフレ効果を持つということが言われておりまして、一般的な不況対策としてはむしろ規制緩和の一般というのはマイナスに働く面があると言われております。これは短期的にそうだということで言ってしまえばそれまでですが、事実、規制を外せば雇用の不安が起こる。その不安によって消費がまた冷え込むということも考えられなくもありません。したがって、その規制緩和一般というのは、意味がないところかマイナスになるかもしれない。  それから三番目は、九月十六日に発表された規制緩和を見ますと、実のところ非常に力の強い省庁がリーダーシップをとって、それ以外の省庁の規制緩和を迫っているようなそういう戦術的な部分というのが見えるわけで、戦術に乗っかるような方向の一般的規制緩和は余り意味がないし、むしろマイナスである。したがって、ここでは最初の目的に照らして、いかに今の資産デフレ不況あるいはバランスシート不況を悪化させたような規制を即刻廃止するという戦略をとるかということに尽きると思います。  それから、その戦略的規制緩和のお話の最後の締めくくりは、やはり政策的にどういうプログラムを持って現在の構造的、非常に長期的な不況に対応するかというプログラム、ビジョンがなければできません。これについては、私自身ごく最近「日本経済民間ビジョン」という報告書を民間研究団体とまとめまして、皆様のお手元にございますので、お時間があるときに読んでいただければと思います。これの一環として規制緩和は位置づけられております。これについては後でもう少し触れようと思いますが、そのような政策、ビジョンに照らした戦略的な規制緩和ということをまず第一点として強調しておきたいと思います。  それでは第二点。では具体的にどういう規制緩和を私が申し上げているかといいますと、資産デフレ不況、バランスシート不況ということであれば、これは日本の場合特に不動産、証券という市場の低迷というものが非常に大きな足かせになっておりますから、こういう不動産市場あるいは証券市場という資産市場を制約している規制は、戦略的にこれを緩和するなり、不必要なものは撤廃するということが即刻必要だと思います。  私は、特に土地問題、不動産問題の専門家という立場から土地市場に絞らせていただきますと、土地の取引を制約しているもの、具体的には地価監視区域というような取引について障害になるような規制というのは、やはり即刻全面廃止ということを戦略的に打ち出すことが必要かと思います。既にこれは期限である五年は優に経過している地域が多いわけですから、もともと五年の約束で入ったものは撤廃するのが筋でございます。  事実、これは先日の緊急経済対策でも弾力的運用の方策について検討するという形で盛り込まれました。しかし、現実にはそれが発表されただけで、一つもその方の動きが起こっておりません。国土庁がそういう方策を本当に検討しているのか。地方自治体、実際それをやっているところが、動いているようには見えません。事実、予算が張りつき、人が張りつき、権限を持っていますから、外すとまた責任問題が出てくるということで、大体腰を上げている自治体は一つもありません。ひとつ、これをぜひやらせるために、リーダーシップをとった国が責任を持って解除させる。そこには政治家のリーダーシップが非常に必要ですが、これは戦略の第一番目に位置づけられるものです。  ちなみに、海外からもこの制度は批判がありまして、先日OECDでも、土地の取引の規制日本の黒字を拡大することを助長しているという指摘もあるわけですから、これは戦略的に解除する。  それからもう一つは、不動産融資の規制。これは、不動産関連融資の総量規制とか日銀の窓口指導とかいう非常に不自然な規制が非常に長く続いたために、このような不況になったということがもう既に大体大きな理解として行きわたっておりますので、この融資規制を全廃する。  この融資規制はどういう形で残っているかと申し上げますと、大蔵省のトリガー方式という形で残っておりまして、これが金融機関に対する圧力になっております。このトリガー方式と大口融資規制、資本金の何%以上の融資は規制されているというこの二つ、これが今、金が回らないというのが全く逆に作用しておりまして、これは即刻廃止すべきだというふうに考えます。  事実、このトリガー方式それから大口融資規制については、八月の末に金融機関がこぞって政府あるいは大蔵省に、緩和せよという要望を出しております。これが実はマスコミにもどこにも載らないわけです。ほかの規制緩和の要望は大体新聞に載るのですが、これだけはどこにも載らない。ただ一つ、産経新聞八月三十一日の一面だけですっぱ抜いて、しかもそれはほとんどのところで無視されているという不自然な状態になっております。  この問題は後で幾つか触れますが、そのように、金融機関が外してくれといっているものをいまだに大蔵省は外していない。しかも九月十六日の規制緩和の中にも全くそれが盛り込まれていないということは理解に苦しむ限りでございます。  この問題も実は海外から批判されている問題と密接に結びついておりまして、最近、日米の金融摩擦、金融法案等で、大蔵省金融機関に対する規制一般が厳しいという問題ともちろんかかわってまいります。ですから、目玉としては、トリガー方式あるいは大口融資規制というものを外すということが二つ目のポイントかと思います。  今、土地の取引規制に関するものを撤廃する、それから融資規制に関するものを撤廃する、三番目は、土地に関する利用や望ましい供給を阻害する規制緩和する、この三点セットが必要だと思います。利用や供給を阻害している規制緩和するということがようやく今回、緊急経済対策で多少御言及がなされまして、必要であれば容積率の制限を緩和する、開発規制緩和する等、そういう方策が入りましたが、私が注目しておりますのは、今住宅が何とか経済の底を支えておりますが、これがそろそろ陰りを迎える日が近づいております。  需要は公庫などの融資で大変強いのですが、供給が大分、今後安い住宅が出るかということで不安があります。ですから、サラリーマン向きのマンションなども供給できるような、マンションを建てられるような容積率の緩和、土地利用の促進ということを進めないと、早晩住宅もデッドエンドになりましてほかにもう何もないということになりますので、特に、住宅供給を促進するような土地利用の規制緩和ということが早急に必要かと思います。  三つぐらいで、それ以上申し上げますと散漫になりますが、あえてつけ加えれば、中期的な課題としては借地借家法の全面改正ということで、これは新しいビジネスをつくるためにも、今のように部分的な改正ではなくて、既存の契約にも当てはまるような、自由な貸借関係ができるということで、新しいビジネスを起こすということが必要かと思います。そのような規制緩和というものが戦略的かつ景気対策の一環として位置づけられる最も重要な柱というふうに考えます。  ただし、あえて言いますと、規制あるいは税制の緩和というのは、病気を治すときにはあくまで内科治療なんですね。病気の周辺の血液をよくする、血のめぐりをよくする。本当は外科手術が必要なのです。今回の資産デフレ不況の病気に対する外科手術は何かということについては私のパンフレットを見ていただければよろしいのですが、金融機関が抱えております不良債権の問題というような、百兆円規模を優に超える底なし沼のような不良債権をどうやって、全体的なプログラムでこれを解決するためには明らかに外科手術ですが、外科手術と内科治療を組み合わせるという意味で、規制緩和が必要だというふうに考える次第です。  今のところ、最初の二つの柱を申し上げました。最後の柱をあと四、五分でお話しいたしますが、ここ四、五年、なぜこのような規制が、特に不況を悪化させるような規制が次々と入り、税制も市場の取引を抑制するような税制が入り、この期に及んでもそういうものが少しも緩和されない、むしろ逆に強められるということはどういうメカニズムなのかということをやはり考えていく必要があるというふうに思います。  これは一つの例を挙げますと、今監視区域がなかなか外れないのはなぜというわけですが、例えば国土庁がことし初めに地価公示あるいは九月に基準地価を発表いたします。これを新聞が報道いたしますときにどういう報道の形になるかといいますと、昨年までは、例えば一九八七年を基準にしますと、地価の伸びと所得の伸び、GNPの伸びに比べて、地価の伸びの方が高いということで、地価が落っこちてきてもまだGNPの伸びをあらわす線まで落ち切っていないという図式でもって説明していたわけですけれども、ところが、ことしになりますと、新聞報道が、公示地価の発表、地価基準の発表のときにはその図式がないわけですね。今度は別の話を出してきまして、まだ高いという話を出すわけです。これはどの新聞も横並びなのです。  その理由は、国土庁が記者クラブで記者レクをするときにどういう資料を出すかに全く依存しているわけです。去年まで国土庁はそういう図を出して説明された。それが一斉に新聞に載るわけです。ことしは実は地価が下がって、所得の伸びとちょうど見合ってしまったのです。だから、そういう図を出すと、もう地価が十分下がったから監視区域を外せという声が出てくるのは困るということで、その図を外したわけであります。あらゆる新聞には一斉にその図が出ないわけですね。省庁が自分の子飼いの記者クラブをつくって、そこで好きな印象を与えるような図式を流すのですね。それがマスコミに載る。それが世論を左右するという形で政策を正当化している。ここに非常に根本的な大きな問題があるということを私は主張したいというふうに思います。  しかも、その新聞報道に基づいて、テレビがそれを助長するような報道を行う。最近、テレビの公平性が大分問題になっておりますが、いわゆるアンカーマンというような、キャスターというものがそういう世論におもねった発言をして、それがまた世論に影響する。そして、そのテレビに出てくる評論家が、立派な評論家もいらっしゃいますし、ここにもお顔が見えますけれども、よく官僚のOBのような者が評論家然とした顔をして出てまいりまして、その官僚のOBが自分の出身の、母体の政策をあたかも正当化するような評論の発言をしても、それは適当な評論だということで、キャスターがそうだそうだということでその規制を正当化する、こういう循環がこの三、四、五年、特に土地、住宅、証券、資産市場については余りに目に余るものがあったわけです。これかいまだに続いているわけですね。  この期に及んでも、デフレにもかかわらず、またバブルをあおる気かとか、インフレを起こす気かということで、それが助長されるということを私は非常に危惧する次第です。  余り時間がありませんから最後の結論ですが、アメリカではこのようなマスコミのあり方ではなく多様な議論がありますので、政府が財政の厳しいときに、資産デフレ対策ということで税金を使っても不良債権の処理を急ぐということができますし、そのようなことで景気が立ち直るわけです。  ですから、多様な意見を持ったマスコミのあり方に直すためにも、省庁が持っている記者クラブ、それから審議会、その審議会のOBが実は評論家然としてテレビに出てくる、こういう省庁、その周辺にある審議会、委員会それから記者クラブ、マスコミのあり方、こういうものの循環が規制を助長し、それをいまだに維持している。特に、この不況をもたらした土地資産市場については、それが余りに目に余るということをぜひ主張しておきたいと思います。これに対して、やはり根本的なメスをこの委員会あるいはこれに関する委員会で取り上げていただきたいということが強い要望でございます。  以上でございます。(拍手)
  45. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、慶應義塾大学教授中条参考人にお願いいたします。
  46. 中条参考人(中条潮)

    中条参考人 中条でございます。座らせて御報告させていただきます。  私のお話ししますことはA4のレジュメという形で御提出させていただいております。最初の二ページが大体の話の概要でございますが、二十分という時間でこれを全部お話し申し上げることは不可能であると思いますので、その後に補足説明資料というのが三ページございます。  ちょうど午後の二つ目ということで皆さんそろそろ眠い時期だと思いますが、授業ですと、私は眠っている学生がいるとチョークを飛ばすのですが、残念ながらここにはチョークがございませんので、どうぞリラックスしてお話を聞いていただければと思います。  さて、まず冒頭、「規制緩和はファッションか?」ということを私は書いております。規制緩和が大変流行になっております。一つのブームになっていると言ってもいいかと思います。おかげさまで私のところにもマスコミの方が随分たくさん取材に来られます。以前は新聞の経済部の記者の方が来られるくらいだったのが、このごろは一般紙、社会部、それから週刊誌、果ては写真週刊誌まで取材に参ります。きのうはプレイボーイなども取材に参りまして、私のコメントと妙な写真とが並んで載るのはどういうものか、ちょっと照れくさいようなうれしいような気もするわけですが、それは果たして本当にいいことなのだろうか。  つまり、一種のファッションになってしまっている。ファッションということは流行であります。いずれ廃れてしまうときが来る。スカートの丈ではありませんから、規制緩和がなされたり、あるいは規制が厳しくなされたりということが、スカートの丈のように長くなったり短くなったりしては困るわけです。今せっかく追い風が吹いている時期に規制緩和あるいは撤廃をやってしまわなければいけない、ここが一番のチャンスの時期だろう、その点をぜひ念頭に置いていただきたいと思います。  今激安ショップが大変はやっております。この激安ショップの中には非合理な流通のシステム、これを回避するという形で激安をやっている者もいますけれども、中には規制を破って、認可違反で例えば安い航空運賃を提供する、あるいは厚生省の薬事法違反、法に触れるということを承知で化粧品を安く売るというようなディスカウンターもたくさんございます。そういうディスカウンターが出てきているというのは、まさにこの不況の時期に需要と供給の関係で出てきているわけです。  ディスカウンターのおじさんたちは自分の利益の追求のためにやっているわけですけれども、マーケットメカニズムという大きな力が規制を破るほどに左右している。そういう力を持ってディスカウンターがその力によって出てきている。これが、また景気が回復しますと規制が厳しくなってしまう。今のところは規制緩和についての追い風が吹いておりますから、関係所管省庁もそういった規制破りに対して余り強いことは言わない。航空運賃の認可破りに対しても、運輸省は少しじくじたる態度で臨んでいます。そういう時期に規制を撤廃してしまう、これが一番のチャンスであるということをまず申し上げたいと思います。  二番目は、これは宮尾先生がかなり大きな、高所大所の方の議論をなさいましたので、私は少し消費者の身近なところからお話を申し上げたいのですが、これまで出ております規制緩和は官主導の規制緩和であるということがよく言われております。同時に、財界や産業界からもいろいろな規制緩和について注文が出ております。ところが、一番重要な細川政権が主張している生活者重視というところにかかわる消費者の側からはほとんどまとまった意見が提出されていない。これはなぜだろうか。  一つは、消費者意識の欠如という点が挙げられます。これは後ほど申し上げますように、消費者運動の未成熟ということにつながってくるわけであります。ただ、消費者から余り意見が出てこないということは、我々の生活が余りにも多くの規制に取り囲まれている、そのために規制に麻痺しているという部分があるのではないかというふうに私は考えます。  その点をごらんいただきたいと思いまして、レジュメの一番最後に表を添付しております。「これだけある「生活まわり」の経済的規制」というタイトルであります。これは私が最初学生に説明するためにつくったのでありますけれども、この表をつくるのに一時間とかかりませんでした。つまり、幾らでも規制がどんどん頭に浮かんでくる。思いついたものをただ並べて、とりあえず表の紙面の中に入る程度でおさめてしまった。これ以外にもたくさんの規制があるわけです。  「朝起きて歯を磨く」というのがございます。歯を磨くと塩分入りの薬用の歯磨きの塩の輸入規制や専売制というものがある。ここには書いてございませんけれども、朝起きれば普通は人々は顔を洗います。そのときに石けんを使います。石けんについての規制がかかわっています。石けんの原料である油、油脂、これについての輸入の関税、この関税をなぜかけているかといいますと、農水省の説明では、これは国内の搾油業者、油を搾る業者ですが、それを保護するためであるという説明でありますが、国内の搾油業者というのは一社しかございません。一社のためにこういう規制をかけている。別に搾油業者のことを私は責めるつもりはございませんで、そういうたぐいの規制が枚挙にいとまがない。  朝御飯を食べるときには当然お米についての食管制度、パンを食べれば小麦についての輸入価格と国産価格のギャップの問題、それから牛乳についての価格維持制度、いろいろな規制が我々の周りにかかわっているわけであります。これを全部御説明するわけにはいきませんけれども、私がここで挙げております多くの規制は、競争を抑制している規制を中心に挙げております。消費生活を向上させるという点からはいろいろな規制がありますけれども競争を抑制しているような規制を取り払う、それによって競争を促進させ、価格の低下、サービス多様化というものをもたらす必要がある。  既にその点については午前中に植草先生の方からお話もあったことでありますので詳しくは申し上げませんが、競争抑制的な規制という点では、この表の中にもちらちらと見えますように、運輸関係、さらには公共料金、公益事業、電力、ガス、水道、そういった分野、さらには独禁法適用除外という形で幾つかの規制があります。独禁法適用除外という制度は現在約四十七制度ございます。その中でも特に再販制、例えばこの表の六番目の新聞、雑誌、さらには七番目の薬品についての再販制、それから本あるいはCD、レコードについての再販制、化粧品についての再販制、そういった再販売価格維持制度、これが現在独禁法では適用除外になっているわけであります。このような再販制はいろいろな理屈がつけられております。  例えば、書籍の場合には日本の文化水準を維持するためである、そのためには書籍あるいはCD、レコードは安売りがされてはいけないんだということになっております。しかし、文化水準の高いものとは一体どういうものなんでしょうか。研究価値の非常に高い書籍、しかし売れない書籍、例えば私の本のようなもの、そういうものは幾ら価格を高く維持しておいても売れないものは売れないわけです。価格を安くしなければ売れない。マーケットに対応した価格をつけなければ、文化の普及などということはできないわけです。  文化の普及ということを考えるのであるならば、なるべく安い価格で多くの人々にレコードを聞いてもらい、あるいは本を読んでいただくということの方が望ましいに決まっているわけです。申し上げたいことは、そういうもっともらしい大義名分でもって価格競争が抑えられているということが、本の場合だけではなく、多くの分野にあるということを理解していただきたいというふうに思うわけです。  レジュメの方に戻りまして、一ページ目の「規制緩和見直しの対象」というところで、今最初に申し上げましたように、量的な規制、すなわち競争を抑制しているような規制について撤廃をしなさいという話。  それから、独禁法運用強化をすべきであるという話。  それから、三番目でありますが、許認可にとらわれないで、許認可以外の分野における政府介入の撤廃、緩和、そこへの市場メカニズムの活用ということが必要である。まずは民営化という分野であります。  現在、既にJRあるいはNTTについて民営化が進んでおりますけれども、このほかにもまだ残されている分野があります。特に、社会資本の分野での民営化。民営化と競争というのは車の両輪でありまして、この両者が相携えて行われなければ効果は上がらない。空港や高速道路といった分野も十分現在では民営化で自立採算ができるような状態になっております。警察、救急の一部というふうに書きましたが、政府というのはやらなければいけないことがたくさんある、これは皆さん申し上げるまでもなく御承知のことだと思います。  なるたけ政府がやらなくてもいいものは民間に任せる、マーケットに任せる、どうしても政府がやらなければいけないことをしっかりやっていただく。そのために、例えば警察、救急の仕事の中で、救急ヘリコプターの作業であるとか、あるいはマラソンの警備であるとかそういうようなものを公的な警察がやる必要があるのか、そういう部分についてはもっと民間に任せていい部分というのは十分あるだろうというふうに考えます。  もう一つは、公共投資の配分の見直しということであります。効率のいいところに資金が向くようにしていかなければ、これからの日本経済を考えていくことはできない。特に、首都圏への社会資本の投資というものが、これまでの全国的な社会資本の整備の流れの中で非常におくれてきた。全国的な社会資本の整備も必要ですが、交通の分野ではかなりの程度まで高速交通体系が全国的には整備がされてきている。  その反面、大都市、特に首都圏の社会資本の投資が非常におくれている。このために、第二次産業について既に空洞化現象が起きているだけではなくて、第三次産業ネットワーク産業や情報産業といった分野についても、東京に投資すると非常にコストがかかってしまう、だから韓国やあるいは香港やシンガポールに移ってしまうという動きが出てきている。空港はその典型であります。  したがいまして、大都市への社会資本投資がおくれると、日本経済が陥没してしまうということになるわけなんです。しかし、そういった効率的な投資のところに資金が配分されるような形にはなっていない。効率的なところに資金が投資をされるようにするためには、マーケットメカニズムをもう少し公共投資の配分にも活用していいのではないかというのが私の考えてあります。  四番目は、経済分野以外の社会分野といった部分についての規制見直しと補助制度の見直しであります。  公立、国立学校、私学への補助金も含めてであります。それから、医療制度、さらにはさまざまな交通機関に対して、身体障害者や老齢者のためにいろいろな補助制度がございます。そういうものが私は不必要だと言っているわけではありません。補助金の額を変えないで、もっと利用者の満足を高める、そういう補助制度は考えられ得るわけです。ユーザーサイド補助という言い方をしております。  すなわち、消費者側に補助金を渡す。公立学校は公立学校に対して補助金が来ていて、我々は子弟をただでやることができるわけです。我々の家庭の方に補助金を渡す、そして、その補助金を使ってどの学校でも好きな学校を選べるようにする、あるいは交通の補助金であるならば、身障者やお年寄りの方々に交通のクーポン券のようなものを渡す、そのクーポン券を使って、お年寄りがバスなんかよりももっと使いやすいタクシーを使いたいと思えばそれに使える、そういうような選択の幅の広い補助制度にしていく。  それをすることによって、利用者も選択が広がると同時に、生産者、事業者の方もこのお年寄りや身障者という、通常はお客様として余り扱いたくないと思っているような対象を、もうかるお客として扱うことができるようになるわけです。それによって競争も発生するということになるわけです。そういう点で、補助制度の見直しということも大きな規制緩和のターゲットの中に私は入れていくべきだというふうに考えます。  五番目は、安全規制環境規制等の見直しということであります。これについては最初の三つは特に申し上げません。お読みいただければそのとおりであります。土地の規制緩和については、先ほど宮尾先生がおっしゃったとおりであります。  四番目の、競争市場に対応できるような安全担保方法の工夫ということについてだけ申し上げます。  安全の規制ということは、とりもなおさず安全を担保することであります。ただし、安全規制はもろ刃の剣であります。安全規制を厳しくすれば、例えば薬の場合に、副作用によって被害をこうむる人の被害を減少させることができます。しかし、安全規制を余り厳しくすれば、その薬が市場に出回れば助かった病人の命が助からなくなるということもあるわけです。そのバランスの問題であります。薬品の場合には気をつけて考えなければいけませんが、例えば化粧品だとかそういったものについては、既に日本の化粧品メーカーは十分技術的に安心できるだけのものを生産するような経済社会になっています。  そういう状況では、むしろ安全を担保するために安全規制に頼るというだけではなくて、自由に販売をさせて、一方で何か問題が起こったときに保険をつけるというような保険制度の担保を考える、そういう方法を実際に城南電機の社長は考えて薬事法違反を承知で始めたわけであります。それがどうなるかわかりませんけれども、私は、厚生省はむしろそれを前向きに安全を担保する一つの方法として評価してほしいというふうに考えます。  最後に、規制緩和をどう行うかということであります。  その前に、規制規制緩和かは相対的な問題であるということ、これも御理解いただきたいと思います。規制については当然いろいろな、ここに書きましたようなコストが発生するわけです。一方、規制緩和にもコストは発生するわけです。規制緩和をすればすべてバラ色の世の中になるわけではない、その両方のバランスであろう。  規制のコストとしてぜひ考えておいていただきたいのは、政治の失敗というコストであります。市場のメカニズムは完全ではありません。その失敗する部分、欠陥の部分を補うために規制があるわけです。しかし、その欠陥を補うための規制は、これは政治システム、行政システムで対応せざるを得ない。マーケットメカニズムにも欠陥はありますが、政治のシステムも完全ではないということは、皆さんもおわかりになっているとおりだと思います。であるならば、どちらの失敗の方を甘受するかということになるわけであります。私は、多くのことについては、マーケットメカニズムの失敗の方が政治の失敗よりもまだましであるというふうに考えております。  再度、規制緩和をどう行うかという点でありますけれども、幾つか私の考えを並べております。これは大体お読みいただければわかることであろうと思います。一点だけ、三番目の「自己責任向上」というところで、消費者が自己責任向上させる必要がある、これは先ほどの消費者運動の未熟さということとも関係があるわけであります。消費者運動の中で、経済的な強さ、競争に対する理解というものを、もう少し消費者運動は考えていただきたい。  安全や衛生上の点では日本消費者運動は大変向上しております。しかし、競争ということについての理解という点ではかなりおくれている。アメリカやイギリスで規制緩和が実行された一つの理由は、この消費者運動が票に結びついたからであります。そこまで消費者運動が向上することによって、規制緩和を政治の場に持ち込んできて実行するということができるのだというふうに考えます。  最後にもう一度申し上げたいのは、規制緩和の重点は、競争対応、市場競争を促進するという点に重点を置くべきである。そうでなければ、また景気が回復したりあるいは円安といった状況になったときに状況がまた変わってくる。例えば、円高の差益の還元ということを政府が命令するのは私は筋違いであると考えます。むしろ、円高になっているのであるならば、その産業について競争対応の市場構造がなされるような規制緩和を行う、競争を行わせる、そうすれば電力会社も航空会社も自動的に価格を下げます。これを無理に円高差益の還元をやらせますと、今度は円安になったときにイージーに価格を上げることになります。  以上、市場対応の競争政策に重点を置いて規制緩和をすべきであるということで、私のお話を締めくくりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  47. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、旭リサーチセンター代表取締役社長鈴木参考人にお願いいたします。
  48. 鈴木参考人(鈴木良男)

    鈴木参考人 鈴木でございます。  規制緩和について私の考えを述べよとのことですので、せっかくの機会ですから基本的な問題について、お手元にレジュメを差し上げておりますが、それに従って意見を述べさせていただきます。  その前に、私の規制緩和についてのスタンスを御理解いただくために、私の経歴を若干紹介させていただきます。  私は、昭和三十四年に製造業である旭化成に入りました。もう三十五年近くになります。このうち二十年ほどは、四つの事業分野で販売の仕事をしてきました。この中には、新規事業で規制とは全く無関係のものもありました。しかし、百年以上の歴史を持って規制でがんじがらめになっておる業界もありました。ですから、規制の持つ意味というのは実務体験で知っております。  九一年から九二年にかけましては、第三次行革審行政手続法部会と豊かなくらし部会の専門委員をしました。後で申し上げますけれども行政手続法規制緩和視点でもとらえておりました。くらし部会はもちろん規制緩和がメーンテーマでした。現在では、旭リサーチセンターというシンクタンクを預かっております。  本日は、以上の私の経験に基づきながら、主に製造業に携わっている一員としての立場から意見を述べさせていただこうと思います。  まず、本日意見を述べさせていただくのは、お手元のレジュメにあります五点であります。  第一点は、さきの緊急経済対策での、九十四項目ですか、その規制緩和策に対する評価です。第二点は、規制緩和の必要性に関する私の意見でございます。第三点は、今求められている規制緩和策は何かという点であります。第四点は、規制緩和を進める上には、どういう切り口によっていったらよいかということでございます。第五点は、規制を受ける側の姿勢の問題です。  まず第一点でございますが、緊急経済対策に対する評価。  御承知のように、この対策は、八月十九日の閣僚会議で、円高だとか冷夏という新たな要因が加わって、非常に深刻さを増しております今回の不況からの脱出の策として、円高差益還元とともに、緊急に措置を要する景気対策として取り上げられたという経緯を持っております。  規制緩和というのは、従来事あるごとにその必要性が説かれてまいりましたけれども、緊急の経済対策として取り上げられたというのは、私は初めてではないかと思います。  問題は、これが当面の景気対策になるのかという点でございますが、全くならないと言うつもりはありません。しかし、例えば手続の簡素化、迅速化というのをとってみても、規制緩和としては必ずしも本質的なものとは言えないかもしれませんけれども、今行われている金目の景気対策というものを早く実行に移すためにも、早急に実施すべきものだと考えております。  しかし、今のこの九十四項目では、極端に深刻化して、最後の一線である人員整理にまで突入しかねない日本経済の現在を救う方策とは、到底言えないと思います。この点については、政府においても既に御認識のことと思います。ですからこそ、緊急経済対策は、仕上がりの段階では、財政、税制上の措置も加わって、我が国の中長期的な課題の解決に向けての第一歩を踏み出したものとして位置づけられておるというふうに理解をしております。  私も規制緩和は、今大きく変わりつつある日本経済の構造変化を適切に促進するのに主眼があって、景気対策としての側面は、無意味とは思いませんが、主役ではないというふうに考えます。実は、このことをはっきりしておきませんと、規制緩和景気対策という役割を与えたとして、その規制緩和がそれに対して無力だということがわかったときに、今後営々として進めなくてはならない規制緩和というものに対して、国民の失望を買うということを私は恐れておるわけであります。  この規制緩和内容ですけれども、この九十四項目、従来、臨調を初めとして数次にわたる行革審などでしばしば指摘された事項が多いというのが私の第一印象です。  ただ、従来、行革審等では随分小さな規制緩和を出すのにも、各省庁にそれをのんでもらうのに随分な時間と労力をかけてきたということを考えますと、わずか一カ月で、その気になれば五十近くは新しい事項が出せるのだから、総理のリーダーシップが発揮されるとここまでも違うものか、そういう好意的な評価もあろうかと思います。五十項目というのは、私がチェックしたら大体新しいものがそれくらいということでございます。ただ、新しいものの中には意義がかなり薄いものが入っておるということもあわせて指摘させていただきます。  第二点としては、規制緩和の必要性でございます。  今、日本は、戦後の経済の変遷過程の中で、平成景気を区切りとして新しいステージに移行しつつあるというふうに思っております。それは、日本が西欧並みの成熟社会に入ったということであります。この段階に達した経済では、経済の再活性化のために規制緩和が何よりも重要になります。  現状を打破するためには、二つの点を考えなければいけないと思います。  一つは、成熟経済のもとで低成長を覚悟して、そのためのリストラを図らなければならないということです。もう一つは、資源がほとんどない日本の生きる道は、世界に先駆けて新規技術の開発を行う、そして、他の国に従来の製品市場のうち後進的な部分を譲っても、それでもなお加工貿易を続けるようにする、そのためにはどうしたらいいかといったら、先端分野の開拓をしなければならないということ。そうするためには、日本人が持っておる唯一の財産である勤勉さが何よりも求められている、そういうことだと思います。  この今申し上げた二点が今後の日本の歩むべき道についての私の結論であります。  若干詳しく述べさせていただきます。  第一の、低成長を覚悟でそのためのリストラというのは当然のことでございまして、現在産業界、特に製造業では大変な努力をいたしております。今回の不況は、私どもも幾つかの不況を過去に経験してまいりましたけれども、それよりはるかに深刻だというのが今までの不況を切り抜けてきた私どもの実感です。今までは合理化だとか効率化というので何とかしのいできました。しかし、今回はそういう前向きの手段だけではだめで、必要なら事業のある部分を切って捨てる、そういう覚悟も迫られております。  第二番目の問題は、産業構造の調整が不可避だということです。すなわち、当面及び今後にわたって必要な課題は、行き過ぎた円高の原因となった貿易収支の黒字幅を適正な水準に抑制することです。そのためには当然、手段は輸出の抑制と輸入の促進ということになります。  今、製造業は円高のために海外脱出をますます推進しようとしております。一部にはその可能性がなくて、廃業に追いやられる者も出ようかというふうに思います。こういう国内製造業の空洞化というのは、個別企業としてはやむを得ない生存のための選択ですけれども、しかし、規制や国境に守られた生産性の低い産業や非貿易財産業が、それだけが国内に残って、国際競争力を持った製造業が海外に製造拠点を移すなら、日本経済にとっては大変な問題だと思います。  理由は、言うまでもございませんが、資源が全くと言ってよいほどない日本としては、国民生活維持のためには、資源を得るために必要な外貨を獲得して、それで加工貿易をして、次の生産のための外貨を得る、それしか選択の道がないという事柄であります。この外貨獲得につきましては製造業が完全な主役であって、他のどの産業もそれを補佐する以上の役割を担うことはできません。  日本は、今までは技術開発を実は欧米に依存して、日本独特のプロセス技術でその量産化と高品質化というのを進め、それで成功をおさめてきました。しかし、今は欧米にそういう新技術のソースを期待することは難しくなりました。なぜかというと、欧米には加工貿易国日本のように、後進部分を他に譲っても、それでもなお外貨獲得力を維持するために先端分野の開拓をする、そういう事柄にシフトしていくという必要性が日本ほど切実ではないからです。  こういう状況にある日本にとっての生きる道は、創造性を養って技術開発を世界に先駆けて、今度は自分の問題だという事柄で先駆けて実行する、そのためには日本人の持つ唯一の資源である勤勉さを維持する。突き詰めて言っても二つあると思います。別な言葉で言えば、先駆性と競争原理の確保という事柄であって、またさらに言えば、自立精神と自己責任の確立だと言えます。  今後必死になってやらなければならないこういう日本産業の構造変化の妨げになるのが規制であります。先駆的な分野を開拓するのを規制が妨げるという事柄が見られます。これは認められません。後進産業の生き残りに手をかす規制も構造改革をいびつなものにします。これらの理由ゆえに、私は、徹底した規制の撤廃を行って、製造業が何とかして日本に残る基盤をつくることが必要だと主張しておるのであります。  規制緩和の必要性についてはそのほかいろいろ言われております。四つほど挙げてみます。  一つは、新事業展開への道を開く、今私が申し上げたことです。  二つ目は、競争環境の整備が結局は強い体質の産業をつくる、これも申し上げました。私は規制業界での仕事をしたこともあると最初に申し上げましたけれども、どういう感想かと問われるならば、これほどぬるま湯の中で楽な業界はないというふうにお答えを申し上げます。競争というのは、やっております当事者にとっては決して楽しいものではありません。楽しいところか苦痛です。競争というのはそういうものです。しかし、そういう競争によって絶えず変化への対応だとか自律自浄のメカニズムが働いて、産業として強いものになっていくのであります。  三つ目の、輸入促進と内外価格差の解消、これも申し上げました。  四つ目が、行政の減量は仕事、すなわち規制減らしからということを申し上げたいと思います。行政の減量というのは十二年前に臨調のときからの課題でした。現在までに何が変わったのだろうかというふうに思います。我々の製造業は、今回のような不況のときには、まず管理部門の人減らしというものからスタートします。スタッフ部門というのは成果を量的に把握することが難しいので、人があれば仕事をつくります。国家の管理部門である行政というのも、本当はこのやり方で仕事をやらないと、仕事つまり規制というものは減らぬと思います。しかし、なかなかこの理屈が通りません。ですから、この際、規制緩和を思い切ってやっていただいて、規制緩和成果だけでなくて行政の減量、そういう行政改革の最大の課題の達成も期待したいと思っております。  第三点は、今求められている規制緩和は何かという点であります。  法律国民生活に対するルールであって、そのルールは許認可という方式で実現されていく場合が多いということがあるから、よかれあしかれ、法律のあるところに規制があるのはある意味では当然です。その数は一万九百四十二件と言われておりますが、私は、数だけを問題としませんけれども、数に対して無関心または鈍感であってはいけないと思います。この前の九十四項目も、考えてみれば、一万九百四十二件の中の九十四項目で一%にも及びません。規制経済国民生活のさまざまな活動の自由を奪っているという事柄を考えますと、まずもって数の削減を行うのが第一歩だと考えます。  それから、規制は大物からまとめてという考え方の必要性を強調しておきたいと思います。小さな規制緩和の数合わせだとか大きな事項の小骨一つというのでは、規制緩和はかけ声倒れに終わってしまいます。規制緩和の本質というのは、成熟国家となった日本の再活性化にあります以上、今日本経済の中で活性化していない大きな分野とは何だということを考えて、それの徹底した構造改革が必要かと思います。  そういう活性化していない大きな分野として私に挙げさせていただくならば、農業の分野金融分野、電力のエネルギー分野等があると考えられます。これらの分野はいずれも日本経済社会の中核にありますけれども、ともに活性化がおくれております。いずれも特徴は、コスト・プラス・フィー的な方式が規制の中で守られており、そして、国家なのか民間なのかがはっきりしないという点です。また、通信や交通の分野も、日本の高度化のために一層活性化に取り組むべき分野だというふうに考えます。地ビールも結構ですけれども、取り上げるならば、こういう大きな分野に取り組んでこそ初めて国民規制緩和の本当の意味理解することになります。  第四点として、規制緩和を進める上での方法について述べます。  規制緩和は、その最大の項目としての許認可見直しが系統的に論議されて実践に移されていったのは臨調以来だと言ってよいと思います。その臨調と、それからその後の数次の行革審での許認可削減の方向を眺めてみますと、二つの方法論が浮かんでまいります。  第一は、具体的な許認可そのものの緩和、廃止などを提案してきた流れであります。これは、臨調の初仕事になりました昭和五十六年七月の緊急答申から始まっております。この答申では、緊急に処理すべき許認可削減議論されました。事務局が用意できました削減対象の候補というのは、トラホーム患者の診断届け出の廃止だとか米飯提供業者の登録等の廃止などの数項目にすぎませんでした。これは昭和五十六年のことです。こんな制度がまだ残っていると思った人は極めてまれだと思います。これでは答申にならぬとして急遽加えられたのが、車検制度と運転免許証の見直しでした。  ここで大切な事柄は、トラホームから始まって現在に至るまで、各次の答申でいろいろな事項についての規制緩和策が打ち出されましたけれども、打ち出される都度、答申内容が、少しずつですけれども、深みを増していった、こういうことであります。これは、各省庁に対して繰り返して規制見直しを求めていく過程で、従来から意味もないのに温存されていた許認可が次第に放出されて、許認可の在庫整理が進んだということを意味します。規制緩和というのは、こういう飽くことのない繰り返しによって一歩一歩前進させていくものかもしれません。ただ、この方法は各省庁の既存の権益を一枚一枚はいでいく方法ですから、抵抗も大きいし、歩みも今までは遅々としておりました。  第二番目の方法は、第三次行革審が平成三年七月に出しました、需給調整条項の十年以内の廃止という省庁横断的に規制の整理を迫るやり方であります。この方法は特定省庁ねらい撃ちという面が少ないので、個別の規制に肉薄するときよりも霞が関流には抵抗感が少ないというふうに言えるかもしれません。しかし、あくまでサブの手法だと考えるべきだと思います。今世の中では、経済的規制の全廃とか、大変元気のいい意見が多いようです。しかし、できないことを言っておっても仕方がない。ですから、まずできることをやることだと思います。  そこで、以上の二つの方法に加えて、今後のやり方として、次の二つを提案したいと思います。  一つは、ソフトな手段で規制緩和を迫るという方法だと思います。それは、行政手続法の制定によって、許認可について、審査基準の具体化とその公表、それから申請の到達主義と標準処理期間の設定、それから、許認可を拒否した場合の拒否理由の明示、行政指導の書面化、こういう一連の方法で許認可の審査というものを全く裁量の余地のないものにする。そうすることによって、官庁がそういう許認可権にこだわることの無意味さを悟らせるやり方だと思います。  次に、規制緩和の進捗を量的に把握、評価するシステムをつくる必要性を強調したいと思います。  第三次行革審は、十年間に公的規制の実質半減というものを提案して議論を呼びました。半減とは言いましたけれども、実際にこの数年間で許認可というのは数を増し続けております。この行革審の第三次答申では、十年間に半減と言ったのは実質という意味で、その心は、よりソフトな方法に許認可が移行することによって、国民負担が実質半減したと感じるようにするという意味で言ったのであって、数として半減と言ったのじゃないんだといういささか苦しい言いわけをしております。  確かに、許認可を届け出にしたことによって、規制の数は減らないが、より緩やかにしたという効果は評価すべきだという議論はあり得ましょう。それからまた、NTT、電気通信分野のように、公社形態から民営化した結果、公益事業としての規制が必要となって、規制の数がふえたということもありましょう。いずれも規制の実体は緩和だけれども、数は減らないということであります。  そこで、私が提案したいのは、実質面の緩和を評価できる、そういう計量的な指標をつくるという事柄であります。規制緩和項目の重要度に応じてウエートづけをして、それを評価して、結果を公表する、そして、確かに十年間で実質的に半減したということを検証できるようにする、そういう方法です。  我々民間会社では、こういう十年間実質半減という目標を立てたとすると、必ず実質半減の算定式をつくります。そして、そのとおりにやっているかどうかを逐年チェックする、そういうシステムをつくって数量管理をするわけです。  ところが、官庁はこの議論がなかなかわからないようであります。経済的規制社会的規制では意味が違うだとか、あるいは大蔵省と通産省の規制をどうウエートづけしたらいいかとか、そういう細かい議論を展開されて、結局はできないという結論を出そうとします。そして最後には、規制緩和には政治、なかんずく総理指導力が大事だという版で押したような答えで済ませてしまうのです。  幾ら政治が指導力を発揮しようとしても、やり方がはっきりしていなければ指導力の発揮のしょうがないと思います。今後、規制緩和案は引き続き各省庁に提出するように強く求めていかれることと思います。しかし、許認可等の在庫母数は一万件を超えるということを忘れないでいただきたいと思います。小さな項目がさらに細分化されて、いかにも協力的ですという格好で出てきたとしても、感激しないでいただきたいということであります。  最後に、規制を受ける側の姿勢について言いたします。  規制は、新たに参入しようとするものにとっては障壁だけれども規制の中に既に安住するものにとっては防壁だというふうに言われております。今回の規制緩和策をつくるに当たっても、一番反応が少なかったのは規制を最も強く受けている業界だった、そういう批判も聞きます。今後、日本の発展のリード役であり続ける産業界、とりわけ製造業界のプライドといいますか矜持にかけても、我々は規制に甘えることなく、自主自立に向けて努力すべくみずからを省みる必要がある、こう考えております。  以上で私の意見表明を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  49. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  次に、法政大学教授角瀬参考人にお願いいたします。
  50. 角瀬参考人(角瀬保雄)

    角瀬参考人 法政大学の角瀬です。  これまでの参考人の方々、それぞれの専門的な立場からかなり具体的な問題に突っ込まれて御意見を述べられたかと思います。  私の専門とするところは会計規制論、つまりディスクロージャー論であります。この分野におきましては、国際的に見ましても、例えば国際会計基準であるとかBIS規制だとかそのような形で大変規制が強まってきております。一般の経済的規制論とは全く反対の方向に進んでおります。そして、その中で我が国は、国際的に見ますと大変規制がおくれているあるいは弱いと常々指摘されているところでありますが、本日は総論ということでありますので、そうした私の専門分野には立ち入らず、規制緩和問題についての私の基本的な見解を表明させていただきたいと思います。  私は、市場経済を基調とする今日の経済体制のもとでは、企業の自立性が大前提となり、一般論としては政府規制は極力避けるべきであると考えております。行き過ぎた政府規制経済活力をそぎ、経済効率性に反するばかりでなく、資源の適正な配分、公平な分配、社会的公正などをゆがめるようになるからであります。  と同時に、今日のように生産力が巨大に発展している状況のもとでは、自由放任な自由競争のままに任せることも、独占化を初めとするさまざまな社会的弊害を引き起こすことになることは明らかであり、公正で自由な競争の実現のために必要な規制は、直接的規制、間接的規制ともに行われなければならないと考えております。自由放任的な競争論を基礎とした、経済効率性のみを一面的に強調する政府規制緩和論では、公正な取引と公正な社会の実現は不可能だろうと思います。  したがって、私は、規制強化万能論あるいは規制緩和万能論のいずれにもくみするものではありません。経済理論でも、一般論としては、規制市場による自由競争かの選択に普遍妥当性を持つ一義的な答えは存在しないとされています。したがって、現実的に考えるならば、競争規制もともに必要なのであり、どのような競争かどのような規制がという、その内容が問題にされねばならないと考えます。  歴史的に振り返ってみますと、十九世紀後半までのイギリスに典型的に見られましたように、企業活動に対する自由主義思想が支配していた時代がありましたが、二十世紀に入り、独占的な大企業、その支配が生まれてくるとともに、政府規制社会から求められるようになりました。  第二次大戦後、とりわけ八〇年代には先進国経済の低迷、財政赤字などから政府の失敗が問題とされ、アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権は経済再生の切り札として規制緩和政策を進めてきましたが、いずれも失敗し、経済の再生は絵にかいたもちに終わったことは周知のところであります。規制緩和は決して景気回復、経済活性化の切り札となるものでないことは既に証明済みであります。そればかりではなく、アメリカ、イギリスでは、その結果、貧富の差が増大し、ホームレスが社会問題となっております。また、資本主義国から機械的に規制緩和政策を導入したポーランド、ロシアなどの旧社会主義国においても同様であります。  日本においては、明治以来、政府による上からの保護育成によって経済の発展が図られ、政府規制が大きな役割を果たしてきました。しかし、今日では諸外国から日本株式会社と非難されるようになり、また国内では、ゼネコン汚職に見られますように、政官財の癒着、腐敗の構造が明らかとなっています。こうした中で、バブル崩壊後の長期経済不況の克服と対外経済摩擦の解消のため、規制緩和が万能薬のようにもてはやされているように思われます。  不況については、規制があったから不況になったのでないことは余りにも明白です。目に余る企業の投機行為や過剰な設備投資そして円高、つまり市場の失敗が主な原因となって不況が引き起こされたのであります。むしろ、適切な規制が欠けていたことが問題とされなければならないと思います。したがって、規制緩和をすれば不況克服に役立つというのは、短絡的な考え方であろうと思います。対外経済摩擦については、日米構造協議などにおけるアメリカからの要求にこたえ、日本市場への参入規制緩和することのみに目が向けられ、何ゆえに日本の貿易収支の大幅な黒字が生まれたのかという問題が見逃されております。  ところで、我が国は、諸外国に比べ政府規制が網の目のように張りめぐらされ、経済活動の障害になっていると言われております。許認可などの政府規制はいずれもその制定当時にはそれなりのしかるべき理由があって設けられたはずでありますが、長い年月の経過する間に、社会変化もあり、その必要性がなくなったにもかかわらずそのままにされ、官僚の権限、縄張り維持のためのものとなっていたり、あるいは業界の既得権益維持のためのものでしかなくなっているものも少なくないことは十分に推察できます。それらは市民生活の障害にはなっても、もはや国民利益のためにはならないものです。したがって、そうしたいたずらな官僚的規制に対しては私も反対でありまして、そうした規制は廃止した方がいいと考えております。  しかしながら、その一方、国民利益になる、そのために必要な規制はとなりますと、現状では極めて不足していると言わなくてはなりません。例えば、これまでの独占禁止法は、企業集団、企業系列及び系列取引に対して有効に規制する力を持ちませんでした。そして、独占禁止法の番人とも言える公正取引委員会活動も、最近でこそ活発になってきているように見えますが、これまでは極めて低調で、外からの圧力や問題の指摘があって初めて動くという実態にあったと言っても過言ではありません。したがって、独占禁止法の運用や公正取引委員会の監視体制をより強化することが必要となるのであります。こうした、国民生活を守る、国民のための民主的な規制は、諸外国と比べても極めて立ちおくれているように思います。その意味では、必要な企業規制を再び活性化することが必要であります。  ゼネコン汚職で問題になりました使途不明金にしましても、以前から存在していたものであり、不正の温床として厳しく規制されなければならないものでありました。また、大企業の横暴から下請中小企業を守るための下請代金検査官、この数も大変小人数であります。さらには、長時間労働や過労死が国際的に問題になっている労働条件に関しましても、労働基準監督官は極めて少ない。労働者の生命と権利を守る上からも、規制をもっと強める必要があります。  したがいまして、規制競争は、あれかこれかという問題ではなく、経済的民主主義の立場からこれをどのように民主的に再編成すべきであるか、こういう問題だろうと思います。  細川内閣緊急経済対策に盛り込まれました規制緩和九十四項目の中身については、個々には賛成できるものもないわけではありません。しかし、基本的にはその重点は、製造、通信、運輸、金融など各分野の大企業の事業活動に焦点を合わせて、そこで大企業の自由の拡大を図るという、そうした規制緩和になっているように思います。それは、国民の景気回復の要求を規制緩和にすりかえ、国民消費購買力を高めるというのではなく、逆の方向を示すものになっていると言わざるを得ません。  今、具体的な例を一つ挙げてみますと、市場アクセスの改善、手続の簡素化ということがあります。日米構造協議でアメリカ側から強く主張された、食品の輸入に関する輸出国登録工場制度の導入であります。これは、一度工場を登録すれば、その工場で製造された食品は無検査で輸入できるという制度でございます。輸入検査手続の簡素化として打ち出されております。この国際化対応ということはアメリカの製品の輸入促進のためのものとしか思えません。食料品の輸入手続の時間の短縮によって海外から農薬づけの食料品がフリーパスで入ってくるようなことにでもなりますと、国民の食生活、健康を脅かしかねない事態となりかねません。  そのほか、大店法の運用緩和、容積率の緩和等々、いずれも大企業市場支配を強め競争を激化させている、中小企業経営基盤を揺さぶることになると思われます。大企業に対する対抗力としての中小企業の存在は市場の機能を発揮させる活力になるもので、こうした点から公正な競争確保のための政策が重要と言えます。  細川首相の私的諮問機関経済改革研究会は、さらに大企業寄りの抜本的な規制緩和要求を取りまとめようとしております。新聞で伝えられています。その内容については、経済分野では原則自由、経済的規制は全廃、社会的規制は、自己責任原則を確立する中で、必要最小限のものだけにとどめる、このように言われております。それから、金融、証券、保険関係規制、また土地の開発利用、建築などの規制についても、市場原理を基本とした見直しが必要と言われております。  つまり、規制はできるだけしない方向にしようということであると思います。いわゆる自己責任原則ということにつきましては、私はそれ自体については必ずしも反対ではありません。しかしながら、だからといって政府が無責任であっていいということにはなりません。  経済的規制の二本の柱の一つ参入規制につきましては、その廃止は経済活性化するとよく言われますが、その意味するところは、過剰資本の移動のための規制解除にあると思われます。中小企業分野や地域的な小売市場圏に大企業参入し、資本力によって中小企業を駆逐するようにならないか考える必要があります。不況型倒産が激増しているもとで、規制緩和によってさらに倒産がふえるようなことになりますと、景気が回復するどころかますます悪化することになります。ここに緊急経済対策の矛盾があります。  もう一つの柱の価格規制については、その廃止により自由競争が起こり、低価格を実現することができると言われております。確かに、純粋な理論としてはそのように言えますが、それには独占規制という前提が必要です。さもない場合には、力の強いものが弱いものを倒し、その後に独占価格による支配を打ち立てることになるからであります。ヨーロッパ諸国において規制緩和が進められ、爆発的な大型小売店舗の新設が起こりました。価格競争が繰り広げられたわけでありますが、その結果は、大資本への支配集中が進み、逆に価格が硬直化したり上昇するという弊害が出ていると言われます。  金融、証券、保険についても、信用秩序維持に配慮しながら情報開示の徹底化などを求めると言われておりますが、これら公共性の高い分野については情報開示とともに直接規制も欠かすことができません。八〇年代における金融自由化の進展に伴う競争の激化は収益至上主義的経営への傾斜を強め、経営モラルの低下、金融機関社会役割からの逸脱をもたらしました。  我が国より一足先に金融自由化を展開してきたアメリカでは、金融機関経営の悪化と倒産の急増、小口利用者の締め出しといった問題が深刻化して、規制緩和に対する再検討が始まり、再規制ということが問題になっております。公正かつ健全な金融制度を確立するための規制が求められているのです。  現在、不況の中で都市銀行の中小企業への貸し渋りが問題になっておりますが、アメリカでは地域で吸収した資金の一定割合を当該地域に投資することを義務づけた地域再投資法という法律がありますが、参考とされるべきものと思われます。  次に、政府規制は一般に経済的規制社会的規制とに分けられておりますが、経済的規制のみならず社会的規制によって環境の保全、安全性の確保経済的弱者の経済的基本権の確保などを図ることが必要です。私は、バブル期に見られましたようなゴルフ場の乱開発によって国土が荒らされていくような現状を見ますと、規制が少な過ぎると思わざるを得ません。金もうけのためには環境の破壊や生活の安全も顧みないような行為に対しては厳しい規制を加えるべきであると思います。  都市郊外のショッピングセンターの乱立については、自動車公害が激しくなっております。環境破壊という社会費用の増大が問題になっております。土地一つとってみましても、日本環境の全く異なるアメリカの流通業のあり方をそのまま日本に導入するような規制緩和論には賛成できないのであります。ヨーロッパでも車公害が最大の環境問題となっており、自動車から公共交通機関にいかに移しかえていくかが課題となっております。  我が国の場合、小売業は伝統的な商店街と呼ばれる都市における商業集積が中心になっています。こうした小規模小売業の盛衰と都市の発展とは密接に結びついています。住民の日常生活と結びついた小規模小売業の駆逐は、都市部の衰退をもたらさずにはおきません。したがって、小規模小売業の近代化への行政の支援、誘導とともに、郊外型の大規模店をできるだけ抑制することが必要であると考えられます。  ことしの六月に総理府が行った世論調査の結果を見ましても、十年後の生活環境について、現在よりも「悪くなる」「どちらかというと悪くなる」という意見が四四・一%、国や自治体に対して「環境悪化を防止するための規制強化」を望む割合が四五・三%と最も高く、生活環境にかかわる分野では規制強化を望む人が多いということが明らかにされております。したがって、経済的規制緩和社会的規制が矛盾を来す場合には、社会的規制が優先されなくてはならないように思われます。  今後本格的な規制緩和が進められてきますと、競争の激化を通じて消費者の被害あるいは失業問題、企業倒産、不公正取引などが増大する可能性のあることが心配されております。これらの問題に対する十分な制度的対応策もなしに規制緩和に突っ走るということになりますと、レーガン、サッチャーの二の舞、三の舞になることは避けられないと思います。  結論といたしまして、時代おくれになった官僚的規制は廃止しなくてはなりませんが、日本の現実を見ますと、国民のために必要な規制経済的規制社会的規制とも極めて不十分で、もっと強化していかなければならないと思います。規制緩和一本やりの規制緩和論は極めて問題を含んでいると私には思われるわけであります。  以上です。(拍手)
  51. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  52. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  この際、委員各位に申し上げます。  質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言するようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名並びに質疑する参考人のお名前をあらかじめお告げいただきたいと存じます。  それでは、質疑のある委員は挙手をお願いいたします。
  53. 松本(善)委員(松本善明)

    ○松本(善)委員 宮尾参考人中条参考人にお願いしたいと思いますが、やはり規制緩和の問題というのは、流行ということを言われましたけれども、確かにそういう状況があるのではないかと思います。午前中に植草参考人が、本格的に規制緩和をやった場合は、競争の激化を通じて消費者被害、雇用調整、企業倒産、不公正取引などの増大する可能性について触れられていました。  今も角瀬参考人が言っておられましたけれども、やはり確かに官僚的な規制で不要な規制というのもあると思うのです。そういうものはやはりなくさなければなりませんし、それから福祉の充実のために、不要になっている、拘束になっている規制どもございます。そういうものをなくさなければならぬと思いますが、例えば公害でありますとか乱開発、土地投機、地価の高騰、こういうようなものだとか、独禁法緩和すればいろいろな形での不公正取引、そういうようなものも起こる。  そういう分野規制強化する、あるいは規制を残さなければならないのではないかと思いますし、この被害を受けるといいますか、規制緩和によって、勤労者だとかあるいは中小業者、特に中小業者の場合、日本は九九%以上中小業者ですけれども、無条件に競争をやっていけば独占企業、大企業が勝つことは間違いない。そういうようなことがひどくなっていく場合には社会問題にもなるわけですね。それらの点についてどう考えるか。  それから、諸外国の規制緩和をやった経験についてどうお考えか。  それから、角瀬参考人に伺いたいのは、やはり土地の規制緩和の問題は全面的にやると大変な事態になるのではないかという気もするわけです。こういうことが行われた場合にどういうことになるだろうかということについてお話しいただきたいと思います。以上です。
  54. 宮尾参考人(宮尾尊弘)

    宮尾参考人 手短にお答えさせていただきます。  私は、そういう御質問あるいは先ほどの何人かの参考人からの意見をあらかじめ勘案いたしまして、初めから私はキーワードとして戦略的規制緩和ということを強調いたしました。したがって、一般的な規制緩和を論じますと、確かにいろいろな問題が起こってくることは否定できません。それは短期的にそうであったり中長期にそうであったり、いろいろな議論があります。ですから、私はあくまでなぜ今規制緩和なのだという質問を申し上げました。  これは当面、深刻な経済情勢、経済の低迷、不況が今後ますます泥沼のように深刻化していくことに対して、有効な規制緩和を優先的に行うという姿勢がまずそういう議論の混迷を避ける一つの大きなポイントであるということで、私は戦略的ということを申し上げました。しかし、戦略は立場によっていろいろな目的、戦略がございますが、そのうちの私が考える戦略は何かということを二番目にお話しした次第です。  その点で、私は今の不況を欧米と同じように資産デフレ不況あるいはバランスシート不況というふうにとらえまして、単なる循環論あるいは非常に長期的な日本経済の構造云々という話ではなくて、やはり資産デフレ、バランスシート不況というふうにとらえまして、諸外国でやられている規制緩和あるいは資産デフレ対策というものを日本でやるべきだ、その一環として位置づけられた規制緩和を優先すべきだということで絞ってお話をいたしました。ですから、私はその点で具体的に問題点を、どういう規制緩和をすべきか、特に土地、住宅、証券、そういう資産に関する規制緩和を具体的に申し上げました。  最後に、御質問の点で、土地に関して自由化、全く規制をなくしたらまためちゃくちゃなことになるのではないかという御質問がありましたが、まさにこれこそは今回の規制緩和の非常に大きなポイントでございまして、今の取引や融資や利用を規制している根拠が、それを外したら再び八〇年代のめちゃくちゃな地価高騰とかいろいろな土地の乱開発が起こるという意識がいまだに、はっきり言ってマスコミに主要な規制を正当化する理由として流されているというところに一番大きな問題がありまして、それは全く現実を見ていない議論であります。  例えば八〇年代後半には、マネーサプライあるいは貨幣供給が十何%伸びておった時期には、当然貨幣がいろいろなところに流れ込むということがありましたが、今はもう貧血、出血で、民間の銀行からのお金の流れはマイナスになっているわけですね。何とか政府が税金を流して経済を浮上させている状態です。  それから諸外国を見ますと、銀行の不良債権がたまってそれが資金の流れを滞らせたということがわかっておりますので、諸外国は、税金を使っても、いかに不動産に対する融資を促進し、不動産を流動化させて、一般国民も困っている不動産を動かして、相続税、固定資産税、いろいろな税制をうまく動かすためにいかに政府が税金を使っても資産デフレ対策をやるかということに腐心したわけですから、日本も少なくともそのような誤った現状に対する認識を早くなくして、最低限不動産の流動性を増すくらいの規制緩和は第一歩としてやるべきだというのが私の主張でございまして、その点で、特に不動産に絞って規制緩和を戦略的に行うという議論が必要かというふうに申し上げた次第です。  ですから、私はある意味では一般的な規制緩和の功罪については触れておりません。それについてはそれなりの非常に突っ込んだ議論が必要でございまして、今は景気対策として戦略的に何が重点的かということの議論を詰める段階だと思っております。
  55. 中条参考人(中条潮)

    中条参考人 まず、独禁法運用強化という形は常識でありまして、経済的な規制緩和すれば当然独禁法強化しなければいけない。一応レジュメにも私、書いてありますけれども、これはもう常識の話だと思います。  それから、環境規制でありますけれども、私はレジュメでは「選択的適用」という言い方をしております。住宅の用途地域の緩和等はかなり慎重にやるべきであるというふうに考えております。といいますのは、そういうことによって公害に弱いような家屋ができる、あるいは公害の非常に強い地域にそういう家屋ができるということになれば、これはむしろ公害の訴訟その他、あるいは環境問題が大きくなるわけです。そういうところについては都市計画の用途地域規制をもっと徹底的にやるべきであろうというふうに考えます。  ただ、私は環境規制というのは選択的に行われるものであって、日本全国同じように、環境規制を同じ水準でやる必要は全くないと考えております。大都市の、東京のようなところできれいな海、青い空を徹底的に求めるというのは、これは無理であります。逆に、地方都市において活性化をしたいというのであるならば、ある程度地域の活力を高めていくためには経済活動が必要なわけで、そのためにはある程度汚れも必要なわけです。  そういう意味では、日本全国、広い日本の中で選択ができるわけでありますから、環境については少し我慢するけれども経済的には便利であり、かつ社会的にも便利なサービスを享受したいと思えば東京に来る、そういうところでは若干環境基準は緩めてやる。逆に、地方では、もう少し環境基準をしっかり、海が汚れないようにしっかりしてやる、そのかわり経済的な便益は少し落ちても仕方がない、そういう選択で問題を考えていくべきであろうというふうに思います。  それから、中小企業がつぶれるのではないかという問題でありますけれども、これについては、なぜ中小企業がつぶれてはいけないのか、効率的でないものがつぶれてなぜいけないのかということであります。選挙に負けた人を救ってやって、負けた人も議員にするというような方法があれば、だれも一生懸命選挙運動をしないでしょうし、政治改革をやろうとしないでしょう。  すなわち、中小企業が効率的であるならば必ず大企業に太刀打ちできるはずであります。実際に、例えば航空の分野でヴァージンアトランティックという会社がございます。この会社は世界的な航空会社のレベルから見れば、今路線を三つか四つしか持っておりません。しかし、すぐれたマーケティング、それから経営者のすぐれた資質によって大変高い信頼を、そして需要を獲得しております。  仮に寡占体制になったとしても、寡占というものは決して必ずしも悪いものではないわけです。寡占によって独占的な行動を企業がとるということが悪いのでありまして、寡占ということが、大きな企業が効率的であって安く製品をあるいは多様な製品を提供できるのであるならば、それの方が望ましいわけです。ですから、独禁法についての独占的な行動の規制さえしておけば、私はある程度寡占体制ということになることもやむを得ないだろうというふうに考えます。  最後に、諸外国の規制緩和についての実例ということで一つだけ弱者の問題に絡むことで申し上げたいと思います。  交通分野、運輸分野で、イギリスでは地域バスの規制の撤廃、経済的な規制の撤廃を行いました。これは一九八五年でありますけれども、それに先立ちまして一九八〇年にこの規制撤廃の実験を行いました。どのような人も安全上の規制さえ満たしていればバス会社をやってもよろしい、運賃は自由ですという実験であります。この結果、どういうことが起こったか。  一般的に予想されている、あるいは規制緩和反対論者が言う主張は、そういうことをやればもうかるところにどんどんバス会社が入っていって、もうからないところから撤退してしまう、過疎地域の不採算な路線がなくなってしまうという反対論であります。実験の結果はその逆でありました。過疎地域を含めた小都市で実験をやったわけでありますが、その小都市の中心部で路線がふえたということは事実であります。  しかし一方、その地域全体のネットワークは変わらなかった。むしろ全体の供給力はふえたわけです。なぜそういうことが起こったのか。それまでバス会社が地域独占で非常に保護をされていたがために、生産性がかなり落ちていたわけです。そこに新しいバス会社が、もっと効率のいいバス会社がたくさん入ってきた。そのために価格が下がり、これまで既存のバス会社がやっていたから赤字であった路線を黒字でやるようになった。一方また、既存のバス会社もそれに対抗して、競争上生産性の改善を行わなければいけなかった。その結果、バスのネットワークはほとんど変わらなかったという事実があるわけです。  さらに、それによって補助金の額も少なく済んだということがございます。補助金について入札制という形をとったわけです。これまではその地域に独占の免許を与えられていたバス会社に補助金が支払われていたわけです。それはそのバス会社の生産性のもとで赤字が発生する、その赤字額についての補助金でした。しかし、競争が導入された結果、効率的なバス会社が参入してきたこと、それによって全体のコストが下がったこと、同時に補助金について入札制を採用することによって補助金をめぐって競争が発生した、それによって全体の補助金額がその地域においては規制緩和前の半分で済むようになった、そういう事実がございます。  以上です。
  56. 角瀬参考人(角瀬保雄)

    角瀬参考人 土地の規制緩和が行われた場合どうなるかという御質問でありますが、確かに供給量は増大すると思いますけれども、その土地がだれの手に握られていくのかという点が大変重要になってくると思います。私の考えるところでは、やはり大企業の手に集中されていく、そしてこの問題はやはり住宅難にかかわるわけですから、遠いところには土地はあるわけですけれども、職場がそれに伴わないということでなかなか地方には行けないわけです。そういうことから、計画的に土地の開発なりを一層していかなければならぬ。日本の場合には、都市計画論なりそういうものが全く不在と言っていいような現状にあるのではないか、イギリスなんかと比べますと、どうしてもそのように思わざるを得ません。  また、職住接近という観点からいいますと、地方において産業を興し、環境のいいところに住むということが大変望まれるわけでありますけれども、そのためにはやはり地方での中小企業の育成、振興ということが欠かせないと思います。大企業も九州や東北地方にどんどん工場を建てたりしておりますけれども、大企業の場合には、国際的な戦略から、必要ないと思った場合にはそこをすぐ撤退する、取り払って海外に出ていく、このようなことがよくやられます。  そういうことからしましても、やはりこの土地問題あるいは住宅問題というもの、これは地方における産業の育成とそれからまた行政あり方、そういうものと離れては、ただ単に土地の規制緩和するだけではうまくいかないのではないかというふうに思わざるを得ないわけであります。
  57. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 これから発言なさる際は、所属会派名及び氏名をはっきり申し上げていただきたい。並びに、質疑する参考人のお名前をあらかじめお告げいただきたいと思います。
  58. 中野委員(中野寛成)

    ○中野委員 きょうはありがとうございます。民社党の中野でございます。  まず、角瀬先生にお尋ねしたいと思いますが、先生は現在の日本経済体制を前提に考えた上で、規制はきっと必要な部分があるのではないかと規制必要論をおっしゃられたわけでありますが、突き詰めて考えますと、先生のお考えからいいますと、むしろ日本の将来の経済というのは統制経済もしくは計画経済であるべきだというお考えを根底にお持ちなのかなという感じを受けました。ただし、日本の現在の経済体制だから規制という言葉をお使いになった。本来はもっと計画的、統制的な社会ということを念頭に置かれているのではないかというふうに思ったわけでありますが、そのことについてどうお考えかということが一つ。  それからこれはその他の三先生のどなたでもいいんですが、今日の国際情勢、世界の経済の流れ等から見ましても、また、我々の経験からいいましても、市場経済、自由主義経済というものが根底であるべきだろうというふうに私は思っております。その場合に、日本の場合は中途半端だったと思っているわけです。というのは、本当の自由でもなければ、本当の計画性もない、そういう中で、結局行き当たりばったりに、理由はそれぞれありましたが、規制をしたり、または租税特別措置法等によって税制で優遇をしたり、または補助をしたり。言うならば、伸ばそうとしている部分と、そして規制をするという部分と、それは、基本となるものが中途半端だからそうなったのではないか。  それで、むしろこれからは、自由を原則とするならば、その活性化は、まさに自助努力によってなされなければならない。そういうときには、例えば助成制度だとか租税特別措置法だとかというものは、むしろこれからなくしていく。規制もなくしていく。しかしながら、弱肉強食だとか、そういうことになってはいけませんから、そういう意味で、必要最小限度の規制を効率的に組み合わせていくということなのではないか。  ゆえに、規制強化とかということではなくて、むしろ、これからの自由競争社会、また自由経済社会市場経済原理を前提にする場合に、被害を受ける人、または弱者となる人、そういう人のために必要最小限度どういう規制が必要なのかということを前提に置いて、その原理原則を明確にし、そして、その目的に合わないものは規制緩和ではなくて、もっと基本的に言うと、規制はなくしていく、しかし、一気かせいにいかないから、規制緩和というのが現在我々が考えるべき方向なのかなというふうにも思うわけであります。  この辺の考え方について、角瀬先生とそして他の三先生にそれぞれお答えいただければありがたいと思います。
  59. 角瀬参考人(角瀬保雄)

    角瀬参考人 それではお答えいたします。  御質問は、私の考え方が、現在においては市場経済をもとに考えておる、しかし、将来的には統制経済なり計画経済が必要と考えられているのではないか、このような質問だったかと思いますが、統制経済あるいは計画経済といいますと、すぐ念頭に浮かびますのは、戦時中の日本の統制経済あるいは旧ソ連の計画経済、こういうものがすぐ浮かんでまいります。私は、そうしたものは全く念頭にないということなのであります。将来の経済システムあり方ということになりますと話が大分きょうの主題から離れていってしまいますが、私は、将来的にも、経済分野においていわゆる自由というものが基本に据えられなければならない、このように考えております。  経済活動における自由、そのためには、人々のまずもって生存権、営業権というものが保障されて初めて自由な競争が行われる、経済が発展していくということは、歴史が証明しているわけでありますが、今日の大変生産力の発達したこの現状においては、その担い手であるいわゆる大企業というもの、これをそのまま放置しておきますと、これはどういうことになるかわからない、大変な力を持っております。一国内だけでなく、国際的にも多国籍企業規制ということが大きな問題になっており、国連的な規模でどうするかということが検討されているわけです。  そうでありますから、やはり何らかの規制をこれに加える、やはり人類のためにそれを生かしていく、活用していくということが必要になっていくということであろうかと思います。そのような基調の上に私はすべての物事を考えておりますので、戦時中の統制経済とかソ連型の計画経済というのは全く念頭にないということであります。
  60. 鈴木参考人(鈴木良男)

    鈴木参考人 先ほどの御質問の、とにかく市場経済を基本にしていくというのは、これは私全くそのとおりであるというふうに思っております。ただ、しかし、じゃ今、市場経済になるというふうに言えるほど規制というのは本当に緩和されておるのかという事柄を、これをやはりもう一度考えてみていただきたいというふうに思うわけです。  ということは、この間の九十四項目を見てみましてもそうですけれども、まことに市場経済というのはそこまで縛られていなくちゃいけないのか、これで自由だとかあるいはジャングルだ、こういうふうにおっしゃられて、そのジャングルというのは一体どこにあるんだというのが私の気持ちでございます。先ほどの御紹介にありますとおり、規制をなくすると、あたかもジャングルのごとくなるというふうにおっしゃられた。  これに対して、私はちょっと申し上げたいんですけれども、しかし、まず、ジャングルになるほどの規制緩和されているんですか、今はジャングルどころか、手とり足とりでありますよ、もう少しジャングルに近いところにしてから議論しなさいよ、こういうふうなことを申し上げたいというのが第一点です。  それから、自由にしたらジャングルになるというのは、これはさっき中条先生もおっしゃられましたけれども、まことに誤解も甚だしい問題であるというふうに思います。自由といったって、野方図というものとすぐ勘違いするというのはいかがなものか。それは、自由というのは、ルールを伴ったといいますか、当然ある守るべき最低のルールを持った上での自由、それであるべきであって、そうでなければ、国家でもなければ、まるでまさにジャングル。そういうルールというもののために、例えば独禁法があり、その他の監視する機能があるわけですから、その機能ファンクションすればいいわけです。それがファンクションしておる限りにおいてすべてに自由にする、これを自由と言っておるのでありまして、自由というと、弱者を全部食いつぶす、大企業が中小企業を全部のし倒す、こういうふうな短絡的な議論というのは、私には到底賛成できないものであります。  以上であります。
  61. 中条参考人(中条潮)

    中条参考人 一点だけ、ジャングルという点について申し上げたいと思います。  私は、ジャングルが大変好きであります。つまり、規制緩和して自由化をして競争が行われればジャングルになる、ジャングルになるということは、それだけ可能性も高いということであります。チャンスも大きい、リスクも大きい、チャンスも大きいけれどもリスクも大きい、そういう社会を選ぶか、あるいは、そういう社会を選ぶ人がふえるかどうか、これは、これからの日本の進路にとって、日本活性化を続けていくという点で非常に重要な点だと思います。  以上です。
  62. 太田(誠)委員(太田誠一)

    ○太田(誠)委員 宮尾参考人のお話で重要だと思われる点は、第三点の、なぜ規制緩和が行われないかという点が極めて重要であると思います。それは、これまでさまざまな提案が行われてきたにもかかわらず、それができなかった理由は、さっき午前中私からも、審議会というものがひとつ一種ごまかしたり、方向を曲げたりする役割を果たしているということを申し上げたんですけれども、それとあわせて、官庁の記者クラブというものが各省と癒着をしておって、各省の大本営発表のようなことしかやらない、それによって紙面構成がなされているということが現にあるわけであります。  ちなみに、きょう記者席がそこにあるんですが、あそこに女性が一人おられて、参議院の規制緩和の特別委員長の林先生でありますけれども、申しわけないことに、あそこに座っておられますけれども、きょうは新聞記者はゼロだそうであります。  先ほど中条先生のところに雑誌の記者まで、プレイボーイまで来られたという話をしていましたけれども、現実に規制緩和をしようとすれば、それは法律をやめたりあるいは法律を新しくつくったりしなければいけない。立法府の仕事であるわけです、本来この規制緩和の仕事は。そして、まさに立法府特別委員会をつくって取り上げようとしたときに、なぜここに新聞記者がいないのかということを私は不思議に思うわけでありますけれども、これがまさにこの国で規制緩和やあるいは官僚支配から脱却できない最大の理由だと思うのであります。  来ないのは、これはわかりませんけれども、あるいは総務庁が総務庁の記者クラブに取材に来ないように言っているのかもしれないけれども、それは知りませんけれども、仮にそういうことがなかったとしても、そういうことがふだんから空気としてあるんですよ。僕は、それこそ大蔵委員会で大蔵委員長をやっておるときに何度もそういう経験をいたしましたけれども、財研という大蔵省の記者クラブの者が取材に来て一日じゅうそこにいるけれども一行も書かない。毎日毎日一行も書かないということをやるのですよ。つまり、紙面構成というのは、報道をしない、無視する、黙殺をするというのが最大の、一つの動きに対するチェックであって、そういうことをこの国がやってきたということを私まことに残念に思うわけであります。  先ほどの金融界の話は非常に興味のある話でありますので、ぜひまた詳しくお聞きをしたと思いますけれども宮尾先生はそういう問題意識をお持ちですから、中条先生に今の点についてはぜひコメントをいただきたいと思います。  あわせて、さっき、市場の失敗に対して政治の失敗という言葉がございましたが、ちょっとよくわからないのですか、政治の失敗というのは、市場の失敗に対する手当てを何かするというときに、政治が失敗をして、市場の失敗を補うために政治が介入して、その結果政治が失敗するから規制緩和しない方がいいというそういうふうな御議論ですか、意味は。よくわからないのですが、政治の失敗というのは、何かマーケットと同じように、こちらの方に政治、行政システムがあって、こちらが何か失敗をする、それぞれの主体が合理的に行動しているのに失敗をするということなんでしょうけれども、もう少しそこを詳しく教えていただきたいと思います。  それで、消費者運動が票に結びつかないというまさにその点もこの国の大事な点であるので、この国の国民というのは、そういうみずからの意思を一つの政治運動にするということをやらない国民だと思っております。論評はする、要求はするけれども、何らそれについて自分たちの演ずべき役割、果たすべき役割であるとか責任を分かち合うという気概がないわけなんです。そこが一番の私は問題だと思っております。立法府の者として恥ずかしいのでありますけれども、今の消費者というのは当てにならない。ここでこういうことをやっておるということは、全く投票行動に何の関係もないことをやっておる、投票に結びつかないことを我々はここでやっておるわけでありまして、ぜひひとつそういうことは御理解をいただきたいと思います。  以上です。
  63. 中条参考人(中条潮)

    中条参考人 記者クラブの件、審議会の点についてはほとんど同感でありますが、ただ一点申し上げれば、官庁詰めの記者クラブの方も私のところに取材に来られまして、私の意見も、要するに省庁批判意見も書いておられることもあるということ。  それから、審議会につきましては、私は審議会を首になった人間でありまして、規制緩和批判をしたためにある省の審議会を首になりました。  しかし、そういう立場でありながら私が若干申し上げたいのは、審議会の中にもちゃんと物を言う先生はいるということであります。ただ、その中で文句を言うという立場の人と、私のように外で文句を言うという立場の人、私は両方いてそれでいいんではないだろうかと。必ずしも審議会の中で御用学者ばかりが集まっているということではない。ただし、審議会の提案あるいはその中身が官庁の主導で行われているということは、これは確かであるというふうに思います。  それから二番目、政治システムの失敗という話でありますけれども、これは太田委員がおっしゃったことでいいわけでして、つまりマーケットメカニズムにも欠陥はありますよと、けれども、政治のシステム、行政システムにも、これは完全なものではなくて欠陥がある、いろいろな問題が起こる。そうすると、マーケットメカニズムの欠陥の部分を補うために規制をやって、そしてその規制をやるということは、政治システムを使って規制をするわけです。政治システムを使って規制をしたときに、政治家やあるいは官僚は神ではないわけですから必ず間違いを起こすことがある。これは、正しく行動しようと思って行動しても、神ではないのですから、当然情報が完全に手に入るとは限りませんから、起こすということが当然あり得まずし、同時に、失礼な話でありますけれども、正しくないことをやってしまって起こすということもあるわけです。  ですから、規制ということをやれば、当然それは政治、行政システムにゆだねるということになりますから、そこの部分の失敗の結果を招くということにもなるわけですから、むしろもう規制はやらないで、マーケットメカニズムに任せて、マーケットの失敗の方のコストを甘受した方がむしろいい場合がありますということです。  これは、もちろんすべてのものについてではございませんで、例えば典型的なケースは、外交のようなものをマーケットに任せるということはできないわけですから、そういう部分については、政治の失敗あるいは政治システムの失敗があってもこれを政治システムに任せざるを得ないということです。  最後消費者運動の点については、これは太田委員の御意見だということですが、私の感想で申し上げれば、議員の先生方消費者運動を取り込む、消費者運動を票の中に取り込んでいくという行動がそろそろ出てきてもいいんではないだろうか、消費者側に立った議員というのが出てきてもいいんではないだろうかというふうに私の方は思います。  以上です。
  64. 宮尾参考人(宮尾尊弘)

    宮尾参考人 この点について一言だけ私の経験を手短にお話ししたいと思うのですが、私は、アメリカから八年前に戻りまして、官庁の審議会、委員会のお誘いがあっても一度も入らないという主義を今日まで貫いておりまして、国会のこのような参考人だけは昔もちょくちょく来ておるのですが、官庁には一切入らないという主義を貫いております。  私は、非常に大きな分岐点が来ましたのは、ちょうど九〇年の四月に政府税調の土地問題小委員会で、石委員長がじきじき私に、ぜひ暴れ馬として入ってほしいという、もちろん暴れ馬とは言いませんが、暴れ馬として入ってほしいという要請があったのですが、私はそれをお断りしました。というのは、政府税調というのは明らかに大蔵省考え方を正当化する委員であり委員会であるということは海外にいるときからよく知っておったわけですから、私はそれを外から見守るという立場でお断りしました。  しかし、あの委員会は外から見ようがありません。中の情報が公開されていないわけです。ですから私は、それを見守るにも見守りようがないのでどうしたかというと、中の委員がとっている議事録、これを私はマーケットで入手いたしました。市場経済で大変いい情報が漏れてまいりました。議事録を三種類ぐらいにいたしまして、克明に何が起こったかということを見たのと、それから、いつも石委員長が終わった後記者レクで配付する資料というのと常に突き合わせてみたのですね。いかに記者レクのために配られている資料と中の委員が話し合っていることが違うかということが克明に私にはわかりました。  そのために、私が九〇年四月にお断りした非常に大きな理由は、既に欧米では資産デフレが始まっておりまして、アメリカでは、八九年に既にSアンドLの救済のために公的資金を使って救済しようという資産デフレが起こっておりましたから、そのときに、これから日本もほうっておいてもそういう危機が来るというのに、わざわざ土地に対して、やれ企業が悪い、だれが悪いという分配論だけで税制、規制を強めるという委員会に絶対に賛同できないという当時から私は警告を発しておったわけです。しかし、あに図らんや、非常に不幸なことに規制と税制が強まりまして、こういう事態になっております。  ですから、私が申し上げますのは、間違った規制や税制ぐらいは直して、この資産デフレを国際的なレベルに政策当局の方向転換がなされるべきだということを主張しておりますが、いまだにそのルートでやっております情報操作というのが散見されるわけです。先ほど言いました産経新聞だけが、都銀が土地融資などの規制を緩めてくれというのは産経新聞しか扱っていません。  それから、私が、今月発売された「諸君!」という雑誌に「不況対策の本命は〝言論統制〟下にあった」というタイトルを、これは編集部でつけたのですが、私が、ぜひ、こういう土地の流動化を図らなければ諸外国でなされたような資産デフレ対策に一歩も踏み出せないということをいろいろなところに送るのですが、新聞、特に新聞がこれを載せようとしないわけです。以前私のはかなり載っていたのですが、こういうことを書くと載せないのですね。  私がなぜ載せないんだということを聞きましたら、事このことに関しては自分の裁量で決められないというのが窓口の応答であります。これは上に持っていかなければいけない。上は何を言っているかというと、こういう土地の流動化とか土地に対する税制や規制緩和ということを今取り上げるなという指示が出ているということをはっきり言うのですね。ですから、これは明らかに言論統制でして、議論も許さないというほどこの問題はこじれているということですから、これはぜひ政治家の主導のもとに今のマスコミのあり方を考えていただきたい。  特に、土地、証券、資産に関しては日本が一番対策がおくれているわけです。そのために日本の不況がこれだけ深くなっているというふうに申し上げたいと思います。
  65. 村井委員(村井仁)

    ○村井委員 新生党の村井仁でございます。  まず宮尾先生に、ちょっと今のお話にも関連するわけでございますけれども、私自身宮尾先生の現在の景気につきましての御認識、基本的には賛成でございまして、全くそのとおりだと思っている一人でございます。ある意味では、あの時点で、例えば地価税の導入ですとか一連のことを話し合いましたことが、現在のオーバーキルみたいな状況につながったということは間違いないと思います。  ただ、現在の時点になってみて、そしてまたそれをもたらしたのは、今お触れがございましたけれども、どちらかというと、何といいましょうか、マスメディアでずっとある種の空気、ムードというのができ上がってしまいまして、どうしても行政もあるいは立法府も含めて、何かやらなければいけないような雰囲気ができ上がってしまったというのが一つの歴史的な事実であろうと思います。  ただ、今の時点でそれを変えようとしますと、そこで問題になりますのは、必ず出てきます、今の地価は本当に十分安くなったのかというような極めて情緒的な反応なのでありますけれども、そのあたりにいよいよこたえるとなりますと、非常に苦しい立場に立つ。  例えば、東京で我々が働いて手の届くところまで地価は十分下がっていないではないかというような議論がともすると横行するという問題。しかしながら、今の状態というのは非常に問題でありまして、例えば住宅が結構売れているといいましても、あくまでもいわゆる一次取得者だけでありまして、転々流通する、転売、住みかえというのは全然動いていない。これはもうまさに一〇%の上乗せ課税が障害になって手放しにくい環境ができているためであります。その辺ちょっときょうの規制緩和という問題、主題と離れますが、先生せっかくこういう問題に集中していただきましたので、そこを突破するには何かお知恵はないものか、それをひとつお伺いしたい。  それから、中条先生にもちょっとお尋ねしたいと思いますので、全然また角度が違うわけでございますけれども、私は中小企業という分野、これはある意味では新規参入が比較的容易なセクターを維持する、こういう意味合いで中小企業政策というものの正当化がある程度できるのではないか。社会政策的な意味合いよりは、経済政策としてはどちらかというと独占禁止政策の補完的な位置づけというような意味合いがあるのではないか。さればこそ、他の、例えば農業に対する施策などと違いまして、補助金というものは、極めて少ないというよりは、いわゆる団体に対する補助以外はない。ほとんど融資と税制だけにとどまる。  中小企業がつぶれないようにというようなことは政治スローガンとしてはよく言いますけれども、現実にはそれはもう大変新陳代謝は起こっている。その中には上へ向いていくものもあれば消えていくものもある。その新規参入を十分保障できる分野確保することによって経済社会全体の競争的な性格というものを維持するという意味合いがあるのではなかろうか。そういう意味で、中小企業政策というのはそれなりにレーゾンデートルがあるのではなかろうかという感想があるのでありますが、その点についてどんなふうにお考えか。  それからもう一点、これはもう本当に細かい点でございますが、先生非常におもしろいアイデアとしてユーザーサイド補助に変更するということで、交通クーポンですとかあるいは教育クーポンですとかという御提案をなさっていらっしゃいますが、これは端的に申しまして、現金で支給するのではいけないのでございましょうか。その方がもっと自由に処分しやすいメカニズムになるのではないかというような印象があるのであります。そのあたりにつきまして、ちょっとコメントをいただきたいなと思います。
  66. 宮尾参考人(宮尾尊弘)

    宮尾参考人 今の御質問に簡単にお答えさせていただきます。  私は、今の不況は資産デフレ不況というふうに申し上げました。その資産というのを取ってデフレ不況というふうにもう言っていいほど、あらゆる賃金も下がり、雇用も不安が起こり、失業もふえ、そのために需要が減って物価も下がるというような悪循環に陥っていると思いますが、その根本にあるのはやはり資産デフレ不況という国際的に共通のものだと思います。  これに対する方策のキーワードは流動化でございます。いかに資産価格が上がったか下がっているかではなくて、下がってもいいからそれが市場で動けばかなりの程度傷は軽くて済むわけです。日本の問題は、その市場が壊れてしまって売りようにも売れない、全く市場がない。特に土地、商業不動産については全く買い手があらわれない。やはりこの状態を早いところ脱出しないと、この重みはあらゆる企業、個人にかかわってきます。  具体的に、例えば中小企業が今困っているのは、中小企業というのはもともと資金力がありませんから土地や何かを担保にお金を借りている。その持っている土地が全く市場価値を持たなくなってきていますから、担保割れがどんどん起こっていますから、これは幾ら政府が何をやっても、新たな投資は中小企業は出てこないわけです。そうすれば大企業も動かない。非常に単純な分析ができるわけですが、それすらもわからずに、土地を流動化すれば大企業が買って云々というような誤った議論が出てくるのは全く現実を見ていないという感じです。ですから、流動化を進める、その点でも規制緩和がいかに重要かということがおわかりだと思います。  そもそも取引規制、融資規制をして取引をとめてしまったということがこの資産デフレ不況のまさに根本をさらに悪化することになったことは私には明らかでありますので、まず規制緩和して流動性を高める、規制を撤廃する。そして、税制でも流通を阻害している税制、例えば譲渡に関するもの、買いかえ特例などはもちろん全面的に復活させるという形で流動性を増す。  その結果価格が上がるか下がるか、それは市場の結果でありまして、私は何もその結果ぜひ上がるべきだというふうには言っているわけではないのです。ただ、そういう政策がとられれば、将来それを有効利用する人のところへ土地がいって有効に利用されるという期待ができれば、結果として私は今よりも土地や証券の価格は上がると見ておりますが、それは市場が決めることでございます。  ですから、いかに流動性を増すかということを私は申し上げておりまして、それでその点で、景気のことについてお触れになりましたが、今非常に深刻なのは不良債権です。百兆円に上るという不良債権自身が固定化して動かない。それの背景には、担保不動産について全く市場がない。これがこれほど滞っているのは日本だけでございまして、特にアメリカではこれがかなり動いて、今景気の底から立ち直っています。  これを動かす方法は、私は二つこのパンフレットで提案しておりますが、不良債権や土地そのものの市場がなければ、それはやはり証券化という手段、あるいはそれをプールして小口にして動かすというようないろいろなノウハウが、世界の金融証券界が発達しておりますから、それをいかに日本で応用するかという点が第一点です。これを阻んでいるのは、実は大蔵省規制でございます。  それから第二点は、そうはいってもこれほどたまってしまった不良債権は、やはり公的な介入がなければ動きません。ですから、やはりアメリカのRTCのようにSアンドLの不良債権問題を救ったような公的な機関、今金融機関がつくっております共国債権買取機構を変形してもよろしいかもしれませんが、公的な機関が買い取って、それをマーケットで動く価格で、何らかの形で動かして流動化させるという手段をとらなければ、時間とともに水面下にあるいわば悪性の腫瘍は体じゅうに移りつつあるので、これはやはり大蔵省に任せておいては打開できない。やはり抜本的なリーダーシップを政治家がとっていただいて、泥をかぶる対策を早めに打たないといけない。  これは欧米の例を見ていれば、問題を先に延ばせば延ばすほど国民負担は大きくなるということです。これについては、ウルトラCで資産再評価をしろとか、そういういろいろな意見がありますが、つまるところ、やはり大きな決断をして、早いところ不良債権対策を国民全体の問題として行う、これか外科治療です、外科手術です。その前段階としての規制緩和は内科治療として必要であるというのが私の考えてあります。
  67. 中条参考人(中条潮)

    中条参考人 まず中小企業の問題ですけれども、これは先ほどの御質問、角瀬先生の議論あるいは松本委員の御議論の中で、規制緩和競争をやったら中小企業がつぶれたら困るのではないかというコンテクストでお話を申されたので、私はつぶれてもいいというふうに言っているわけではなくて、効率的であるならば残るでしょう。かつ、今のように中小企業に対してそれほど、中団法程度で適用除外を与えている程度の話であって、それについてはそんなに私は目くじらを立てるような話ではなくて、もっとやらなければいけない規制緩和の部分というのはあるだろうというふうに考えます。  それからもう一つは、必ずしも中小企業分野参入ができない、できるという話ではなくて、産業全体について参入が容易になっていれば、これは中小企業という形でも参入できるわけですし、仮に寡占体制になっていても、いつでも参入ができるという状態になっていれば、中小企業という形であろうが大企業という形であろうがいつでも参入できるという形になっていれば、そこのマーケットの中に残っている寡占体制の企業は余り独占的な行動をとれないわけですね。独占的な行動をとって高い価格をつければ当然新規参入がすぐ入ってきますから。ですから、そういうマーケットへの参入、退出の自由というものさえちゃんと確保しておいてやれば、その部分というのはかなりの程度経済効率が達成されるのではないかというふうに私は考えます。  それから、ユーザーサイド補助の点ですが、御指摘のとおりでありまして、私は一番望ましいのは現金であろうというふうに考えます。  ただ、問題は、例えば教育なんかの場合に、親がお金をもらうことになるわけです。親が全部お酒飲んじゃって、子供の教育費の方に回さなかったらどうするかということとか、それから、交通なんかの場合の、障害者あるいは老齢者に対する場合にはノーマライゼーションという話がございまして、すなわち、高齢者や障害者が外へ出ていくということが大事なんだ。これは、もちろん現金でもらった方が老齢者や障害者は、例えば老人の場合に老人福祉という点から考えれば、隣のおばあちゃんと一緒にお茶を飲んだ方がその人にとっては確かに福祉が高いかもわからないのです。それを、何もバスに乗っけたり、タクシーに乗っけたりして外に出させる必要はないわけで、お茶代に使えるようにするためには現金の方がむしろいいのです。  ただ、もう一つ、ノーマライゼーション、すなわち、そういう身体的にあるいは精神的障害のある人たちが世の中にいるのだよ、健常者もそれをちゃんと見て、そして、そういう人たちに手をかしてやる。そういう社会というのは私は正常な社会じゃないかと思うのです。そういう点で、もし現金だけにしてしまって、みんな障害者あるいは老齢者が家に閉じこもってしまうというような形になってしまったら困るなという、若干の疑念があるということです。
  68. 高木(陽)委員(高木陽介)

    ○高木(陽)委員 公明党の高木でございます。  まず宮尾先生にお伺いしたいと思うのですけれども、戦略的規制緩和ということで、現在の資産デフレを克服するためにこういう流動化を進めるというのはすごく納得するのですけれども、もう少し中長期的展望に立った上で、その後、デフレをもし克服して、その後の規制緩和あり方というのはどういうふうに見ていったらいいのか、それをちょっとお伺いしたいと思います。  中条先生には、今の日本人の体質というか、お上にすべて決めてもらう、お上にやってもらうという発想がある。そういうふうに思うのですけれども、先生のレジュメの中の「自己責任向上」というところで、一つは生産者の自己責任向上ということでPL法なんかも、これは今も委員会の方で話が進んでいますけれども、そういうような中で、もう一つ、太田先生も言われた消費者の意識変革というか、消費者の場合だと、何か事故が起きた場合なんかすぐに、何で国がそういうのを規制していなかったのだという、責任を転嫁するみたいな形が非常にあって、そこら辺、それはもう意識を変えてもらうしかないでしょうと言われればそこまでなんですけれども、そういう方法論的に何かございましたら、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  69. 中条参考人(中条潮)

    中条参考人 日本人の体質ということなんですが、私は実は楽観的に考えています。日本人の体質という点では、今は非常にあがきの時代ではないだろうか。経済的な規制というのは、これは、産業が幼稚段階であり、成長段階であった時代にそれを保護してやる、要するに子供が大人になるための段階として必要であった。経済大国になって、大人になったのだからもう突き放しましょうという部分というのがあると思うのですね。それは経済的な部分だけではなくて、社会的な部分にもかなり出てきているのではないか。  例えばPKOをどうするかという話も、それがいいか悪いかは別としまして、それを考えようという時代に来ている。それから、日本の侵略ということを認めよう、言葉で認めようという考えも出てきている時代になっている。つまり、日本人が大人になりつつある今はあがきの時代であろうというふうに私は思っているわけです。  そういう点で、経済的な自立、自己責任という点でも、これから少しずつ変わってくるのではないか。今までは確かに一律志向という形で、むしろ規制で全部決めてもらっていた方が楽であるというふうに考えていた人が多かったわけですが、しかし、例えば、今ハワイ旅行をお正月に行けば高い価格だ、閑散期に行けば安い価格だ、そういうことを認めるような、そういうことを受け入れるぐらいのところには変わってきているわけですね。そういう点をもう少し、これはもう消費者意識の向上のキャンペーンをしていくしかないわけですけれども、そんなに無理をしなくても、私はこの意識は、楽観的かもしれませんが、変わっていくであろうというふうに思います。  以上です。
  70. 宮尾参考人(宮尾尊弘)

    宮尾参考人 まず戦略的な規制緩和について御賛同をいただいたのですが、私は具体的には土地の話に集中いたしますが、これは、証券についても規制緩和が必要なことは言うまでもないわけで、行政指導による売買抑制その他の廃止とか自社株保有の問題、先物市場に対する規制緩和、先ほどちょっと触れましたが、新しい証券化商品の自由化とか、さまざまな資産市場活性化の施策というのは土地に限らず必要なもので、優先的にやる必要があるということを改めて強調したいと思います。  それに関連しての御質問で、それはそうだとしても、中長期的にどうかという話ですが、私はこの不況は既に中長期的な問題になっているというのがまず第一の視点でございます。景気が短期で、ほかのものは中長期だという、よく政府ブリーフに出てくる、最初の一行目に書いてあるような文章は私はとっておりません。中長期的にも、このままほっておけば、十年、二十年で日本は体力が弱っていきますから、こういう規制緩和の問題自身も実は吹っ飛ぶほどこの問題は深刻でありますから、まずは区別をしていないということが第一点です。  第二点は、そうはいっても、中長期的にほかの規制緩和についてどう考えるかという点では、内容の問題とシステムの問題、二つあります。内容については、やはり諸外国で規制緩和をして、将来産業が、今勃興しつつある分野日本が一番おくれているというところを見つけることはできるわけです。  例えば、今非常に話題になっている通信、情報など、アメリカでは超マルチメディア革命というのがどんどん起こっておりますが、その点日本が最もおくれているわけです。郵政省の規制、それからもちろん、中条先生のお話の運輸の問題、それから金融の問題。こういう大蔵、郵政、運輸といったようなキーエリアというのは日本が最もおくれている分野ですから、こういうものにターゲットを当てて、これも戦略的にそこを解体していくということが必要です。  今は、むしろ強い官庁、例えば大蔵や通産がリーダーシップをとって、ほかの官庁に、おまえやれと言っているようなのが並んでいるわけですが、これは全く逆で、強い官庁の規制ほど政治家がリーダーシップをとってやらなければいけない。そういう戦略が必要だと思います。  それから、最後に、それを将来にわたってどうやって推進していくかという枠組みの問題として、それを常に押しとどめようとするこのあり方、システム、先ほど申し上げた官僚主導で、いわば半分世論操作みたいなものがシステム化している。このシステムを直さなければ、いつ何どき再び規制が強められるかわからない状態ですから、先ほど申し上げました官庁主導の委員会、審議会、記者クラブ、マスコミのあり方、そういうものについても、この循環のどこかにメスを入れて、政治家のリーダーシップで、本当の民意の反映、中立的な学者の意見というものを反映させるようなあり方をどこかで考えないと、今回のテレビの偏向問題というようなことの具体的なあれがいろいろな形であらわれてきているのが大きいのではないかというふうに考えておる次第です。
  71. 武山委員(武山百合子)

    ○武山委員 日本新党の武山でございます。  皆さんのお話を聞いておりまして、まさに規制緩和はもうしなければいけないということで私の頭の中はいっぱいなんですけれども、さてどういうふうに知恵を出し合って実行していったらいいかということを常々考えておりますが、その実行の方法なんですけれども、どうやったらいいかなという、いろいろな決断の方法ですね。外科手術、そしてそのシステムをどう砕いていくか、その辺を宮尾さんお答えいただけますでしょうか。
  72. 宮尾参考人(宮尾尊弘)

    宮尾参考人 私個人としては、ある意味では非常に抵抗運動的な形で、審議会、委員会に入らないで、なるべく私の意見を言っていただけるマスコミを探してはいろいろな意見を言い、こういう場所に出てきてそういうことを言っているわけですが、はっきり申し上げて、やはり政治家のリーダーシップというのが一番の核になると思います。  一方、官庁それからマスコミのかなりの部分というのが、一つの癒着体制ができておりまして、この上にあるのは、民意と、そのようなものを推進する政治的なメカニズムというものがもう一つの柱。つまり政治家、それからその支持団体、それから市場をよく見る中立的な学者という図式で、今のところどうしても官僚の力という方向にどちらかというと重みが偏っているわけですから、このバランスをいかに政治家のリーダーシップをもって、本当の民意が反映される、それから情報のあり方、マスコミのあり方、それから政治のメカニズムのあり方というものを確立していくか、大変抽象的な問題ですが、そのどこかにメスを入れるということがこの規制緩和を中長期的に進めていくためには決定的に重要だというふうに私は考えておるわけです。  私の立場から言えることは、やはりもう少し学者が中立的な立場で発言すると同時に、マスコミも多様なマスコミがあらわれるようなことを政治家としても考えていただきたい。アメリカでは、例えば三大ネットワークは日本のテレビのようにある程度偏向しておりますが、しかし、ほとんどの視聴者は三大ネットワークは見ていないわけですね。  ケーブルテレビでCNNという物すごく右寄りのものを見たり、それからパブリックテレビでマクニール・アンド・レアラーみたいに非常に専門家が出てきて論争するのを見たり、選択の幅が非常に広いのです。それだけでもいわゆる世論のあり方が違うわけですから、そういうものを促進するような政策を含めた戦略を、ぜひ政治的リーダーシップのもとでやっていただきたいというのが私の希望で、希望を述べる以外に方策はないわけでございます。
  73. 輿石委員(輿石東)

    ○輿石委員 社会党の輿石です。  時間も大変ありませんので一つだけ鈴木参考人にお尋ねをしたいと思います。  午前中から規制緩和のねらいとか必要性についてずっと論じられ、次の社会をどうしていくのかという視点からこの規制緩和の問題をとらえなければならないということなどを強調されてきたように思うわけですけれども、その中で、鈴木参考人は、今求められている規制緩和は何かという中に、日本経済の中で活性化してない大きな分野として、農業とか電力というような分野を、ちょっと説明の中で言われたと思います。  農業の問題は、ガット・ウルグアイ・ラウンドの政治決着も迫られるような時期も参っていますし、土地問題、宮尾参考人にもかかわるかとも思うのですが、食管法とか農地法に絡む問題で、土地や金融を動かすという点についても大変な課題になってきている、この辺をどう考えられているのか教えていただきたい、こう思います。
  74. 鈴木参考人(鈴木良男)

    鈴木参考人 農業問題に関しましては今さら私が申し上げるまでもなく、活性化問題について一番大きな課題であるというふうに思っております。  もちろんその場合に、いろいろな輸入規制それから価格規制それから価格支持、しかもその上でなおお百姓さんになる人がいない、こういういろいろな複雑な問題を抱えております。最もそういう点で何らかの手当てをしていかなければならない。それじゃどうしたらいいのか、こういう問題になるわけですけれども、これは、基本的には、私はやはり米の問題というものが本当に国内の問題だけで解決し続けられるのだろうかということが今どうしても回答を迫られていると思うのです。  これは私ども産業でもそうですけれども規制で守られてきた、それも数十年間守られてきた。これは私がさっき言いましたようにぬるま湯のようなもので、楽なものです。しかし、そのぬるま湯から引きずり出されたときが大変なことになるのですね。一気に死んでしまわなくてはならないというようなことが我々の産業の中にはいつでもあるわけです。  そういう事態になるとするならば、農業に対しては早く手を打たないといけない。一粒たりともとかいう問題が本当に通るなら結構ですけれども、結構とは申しません、それはそれですけれども、しかし、果たして世界の中でそういう事柄が一体続けられるのかという問題を考えたときには、規制から引き出された後というのは自分の体力というのは弱くなっていますよというのが私どもの常々の体験でありますので、そこのところを考えたら、今もう既にそういう点も考えながら着々とやっておられる農家もあるというふうに私聞いておりますけれども規制から覚めた後という問題は、本当に心しないといけない問題だというふうに思っております。よろしゅうございますでしょうか。
  75. 狩野委員(狩野勝)

    ○狩野委員 自民党の狩野でございます。  規制緩和は数量だけではなくて、今お話ありましたように、農業とか金融とか通信とか運輸、内容面が大変重要だということもわかったわけでございますけれども、しかし、現実に一万九百四十二件、これは余りにも数が多いし、カットしなければいかぬと思います。  実は、我々仲間で省庁を入れませんで検討していこう、一割ぐらいカットしようというので厚生省関係の部門でやったのですが、厚生省関係というのは特に環境保護とか安全性とか消費者保護というのがありますから、やってみますと、とても一割カットというのは難しいのですね。だから、これは通産、運輸とは違うわけです。  そう考える中で、鈴木先生は規制緩和の進捗を量的に把握、評価するシステムの構築をというような御見解なんですが、大変厳しい中をやるのが規制緩和検討委員会なんですが、一万全部我々も目を通せませんし、また鈴木先生も目を通せるかどうかわかりませんが、最低十年間ではどのぐらいはやるべきだということを、鈴木先生教えていただきたいと思います。
  76. 鈴木参考人(鈴木良男)

    鈴木参考人 私からまずあれさせていただくと、どこまでの根拠を持っているかという議論はあります。ありますけれども、しかし、現実に第二次行革審においての最終答申で十年という大体フレームワークをつけて半減ということは、実質半減、幸い実質がついておったからよかったような話なんですけれども、そういうことを出したことは事実。それを政府が閣議決定したことは事実ですね。そして、第三次行革審もそれを受けて実質半減と言ったことも事実です。  では、その根拠はあったのか、こういう話になるわけですね。これはなかなか難しい問題で、えい、やあ、おうと威勢よくというようなところもあったのじゃないかという気はします。私は、その間の細かい事情のことについては申し上げませんけれども、やはりその十年半減というようなものを一つ目標としてせっかく言い出したら、当初経済的規制というのは全廃だという議論さえあったわけですけれども、私は必要なものはやはりあるという事柄で考えておりますから、例えばそういう十年、これはある程度私は根拠を持って何も言っておるわけではありません。しかし、十年ぐらいなら半分ぐらいのものが、全廃に比べたらできるでしょう。そうしたら、本当にやらなくてはだめですよ。  だけれども、実質十年なんて言っておると、実質だからいいんだとか、少しやわらかくなったというので済んでしまう。だから、私は数量的な目標をきちっとつけて、そしてステップワイズにやるという事柄をやって、それを国会で、例えばこの委員会法律をおつくりになって、そして一年ごとにやっていく。この方法論を抜きにして、なくすべきだとか、どうすべきだとかという一つの理想論の夢物語みたいなことをやっておってもビジネスにはならないと私は思うのですね。そういう意味で申し上げておるので、最低限半分というのが私の考えでございます。
  77. 中条参考人(中条潮)

    中条参考人 手短に、数についてある目標設定するというのも、私は政策を推進する上でそれは重要なことだと思いますが、私は、数を減らすということはかなり簡単にできるだろう。というのは、一つ規制といいますか、一つ許認可の中に幾つもいろいろなものがぶら下がっているわけで、一つやめれば十個ぐらいすぐになくなってしまうということはあり得るわけです。しかも、一万幾らの中の大部分はあってもなくてもいいような規制がたくさんあるわけです。これで数にとらえられていると、一番大事なところは、私先ほど申し上げましたように競争を抑制しているような規制であって、そこの部分はしっかりガードをしておいて数だけ減らす。  ある省のある幹部の方は、二割減らすのは全然簡単だというようなことをおっしゃるわけです。つまり、それだけ、例えば窓ふきのゴンドラの規格を緩和するというのは、そういったぐいのものは幾らでも小出しにしていけば数でできるわけですから、直接のお答えになりませんけれども、私は数ではなくて競争対応の規制、そこの部分を緩和するというところに重点を置くべきだろうというふうに思います。
  78. 鈴木参考人(鈴木良男)

    鈴木参考人 ちょっと私、補足させていただいていいですか。  私も、数は申しておりません、さっき申し上げたように。重要度にウエートづけをしろということを言っておるわけですね。それは、やさしいかといったらなかなか難しいと思います。できないのかといったらそんなことはない。だから、今言ったように重要度にウエートづけをしてやっていく、それを研究すべきだ。そうでないと絵にかいたもちだということを言っておりますので、数じゃないということは私も同感でございます。
  79. 吉岡委員(吉岡賢治)

    ○吉岡委員 日本経済というのは混合経済だと思うのですよね。私はそう思っております。自由市場経済の上に計画性経済的な要素も含まれている。しかし、それでずっときまして、今規制緩和をし、さらに一層活性化をということの中で問題が出ているわけです。原則自由、例外規制ということが大方の意見であるというように私は先ほどから聞かしていただいているわけです。  さてそこで、混合経済がずっと続いてまいりまして、先ほどから中小企業と大企業、こういうもの、寡占あるいは独占ということも解明をしていただくこともあったわけですが、この数十年間の中で、過密過疎という問題が決定的に起こってしまった現実があるわけであります。そこにはやはりいろいろなことがあるし、例えば先ほど土地の問題で、都市部では値上がりということですけれども、私の地域、兵庫五区の山村でございますが、そこではむしろ値下がりという現状が出ております。さらには、過疎バスと言えば全域が過疎バス、こういうことになるわけであります。  また、高齢化社会というのはもう二十年先に来ていますから、独居老人やそんなのがいっぱいいる。そういう状況の中で、福祉といっても大変厳しい、そんなきれいなものじゃございませんから、そういう現状というのも一面にはあるわけでございまして、その辺の克服策をも考えながらの規制緩和であったり、あるいは方法を考えなきゃならぬというように私は思って先ほどから聞かしていただいているわけであります。  それは、皆さんから言えば立法府のあるいは執行部の、いわゆる政治の責任だ、こういうふうにおっしゃる部分もあろうかと思います。しかし、そういうところで解決の方向というようなものが皆さんの中にあるとするなら、一言ずつでも結構でございますから聞かしていただきたい、このように思います。
  80. 中条参考人(中条潮)

    中条参考人 過密過疎の点について一つだけ申し上げますが、政治の責任あるいは立法府責任だというふうにおっしゃいましたが、そういう過去の政策の影響ということは確かにあると思います。私は基本的に、過密過疎を起こしたのは消費者あるいは国民が自分で選択した結果だというふうに考えております。  私は京都から出てまいりました。京都に住んでいれば父親の家があります。そこから通えば住宅費はかかりません。しかし、東京に出てきて、私は横須賀の大変遠いところから通勤をしております。一戸建てではありません、マンションです。それでも私は東京で生活がしたいと思って出てきたわけです。そういう選択の自由が確保されている、そういう状態で過密過疎というのは、それだけで問題を完全に解決しろということは言いませんけれども、そこに人々の意思があるんだということは少し念頭に置いておく必要があるというふうに思います。  以上です。
  81. 宮尾参考人(宮尾尊弘)

    宮尾参考人 今回の不況が全国的な不況になって地方にも及んでいるということは大変深刻な事態だと思いますが、これは、例えばアメリカの例を見ますと、地域ごとにかなりのばらつきがあるというのが救いになっているところもあるわけです。例えば商業不動産の不況でも、以前不況だったテキサスとか中西部は回復をしているわけです。これがかなり資産デフレ不況の傷を和らげるのに役立っているわけです。  したがって、日本もやはり地方分権、例えば土地政策などというのは、中央でやれ監視区域だ、やれ地価税だというふうにやるのではなくて、地方に任せて、規制するところは規制するのもいいかもしれません。しかし、その結果どうなるかはその地域が責任を持つ。  自由にやらせるところは自由にやらせるということで競争していくということも、ある意味では、結果を見て、やはり規制緩和した方が中長期的に地域の活性化に役立つのではなかろうかという我々の学者の意見が証明されることになるわけですから、やはり今おっしゃった地方のあり方と中央のあり方、地方分権、その中で規制をそれぞれの住民がどう考えていくかということで競争させる、その格差があるものについては中央がブロックグラントのようにひもつきでない補助金をある程度上げながら、最低限のものは救いながら競争させていくというようなことを考えていくのも、中長期的に必要かなということをちょっと考えた次第でございます。
  82. 鈴木参考人(鈴木良男)

    鈴木参考人 過密過疎という問題は日本の中で本当は我々製造業も考えたいのですけれども、今のような状況になりますと、ちょっと日本を超えて考えないともうどうしようもならなくなっているわけですね。  ですから、最近非常にふえておりますのは、ASEAN諸国だとかあるいは中国です。極めて私どももあれしておりますけれども、それはやはり日本の今の状況というのは確かに過密過疎かもしれません。しかし、土地の地代が多少違うしということはあるかもしれませんが、ちょっとその度合いを超えておるわけですね。だから、そこら辺の問題がありますものですから、なかなか企業に対して、この国の中でということはぜひやりたい、やりたいけれどもという、そういう点も非常にあるということを御理解いただきたいと思います。
  83. 角瀬参考人(角瀬保雄)

    角瀬参考人 過密過疎問題というのは大変深刻になっていると思います。どうしてこうした現象が生まれたのかということにつきましては、中条参考人の指摘されたように、その背後には人々の意思があるんだ、それは確かにそのとおりだろうと思います。つまり、人々の意思によっておのずからこういう結果が生み出されたということからしますと、これは言うなれば市場の失敗という結果でもあるというふうに言うことができるわけです。  しかし、それだけではないと思います。やはり東京、大阪等への一極集中が進んできたということにはそれなりの政治の責任、政治がそうした方向を推進してきたという責任は免れることはできません。そういう意味では、やはり政府の失敗の結果でもある。両方の失敗が重なってこういうことになったのだろうというふうに思います。  過密過疎というものを解消していく、そのためにはやはり市場に任せるだけでなくて、政府なり自治体なりの適切な誘導というものがなければ、これはますます日本の国土はゆがんだものになっていくというふうに思わざるを得ません。これから中長期的に大変重要な課題になっていくというふうに思っております。そういうことで、やはり政府あるいは自治体の責任、これをその任にある人々は十分自覚して取り組んでいただきたい、こういうふうに思うわけであります。
  84. 加藤委員長(加藤卓二)

    加藤委員長 どうもありがとうございました。  時間になりましたので、これにて参考人に対する質疑を終了させていただきます。  参考人各位には、本当に御多用中御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  ぜひ、宮尾先生、中条先生、鈴木社長角瀬先生、今後ともこの委員会のひとつよき先生として御指導いただきたい、こう思います。本当にきょうは厚くお礼を申し上げて、終了させていただきます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時九分散会