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1993-10-22 第128回国会 衆議院 科学技術委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日平成五年九月十七日)(金曜日) (午前零時現在)における本委員は、次のとおり である。   委員長 臼井日出男君    理事 尾身 幸次君 理事 田中 直紀君    理事 中村喜四郎君 理事 山口 俊一君    理事 川島  實君 理事 岡田 克也君    理事 上田 晃弘君 理事 田中  甲君       越智 伊平君    近藤 元次君       佐藤 剛男君    塚原 俊平君       林  義郎君    平沼 赳夫君       今村  修君    辻  一彦君       小沢 一郎君    村井  仁君       大野由利子君    斉藤 鉄夫君       鮫島 宗明君    錦織  淳君       笹木 竜三君    高市 早苗君 ――――――――――――――――――――― 平成五年十月二十二日(金曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 臼井日出男君    理事 尾身 幸次君 理事 田中 直紀君    理事 中村喜四郎君 理事 山口 俊一君    理事 川島  實君 理事 岡田 克也君    理事 上田 晃弘君 理事 田中  甲君       越智 伊平君    佐藤 剛男君       塚原 俊平君    林  義郎君       平沼 赳夫君    宮路 和明君       森  英介君    今村  修君       辻  一彦君    上田 清司君       大野由利子君    斉藤 鉄夫君       鮫島 宗明君    田中 秀征君       笹木 竜三君    高市 早苗君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長 江田 五月君         官)  出席政府委員         科学技術政務次 乾  晴美君         官         科学技術庁長官 井田 勝久君         官房長         科学技術庁科学 島  弘志君         技術政策局長         科学技術庁科学         技術振興局長  新  欣樹君         科学技術庁研究 石井 敏弘君         開発局長         科学技術庁原子 石田 寛人君         力局長         科学技術庁原子 笹谷  勇君         力安全局長  委員外出席者         外務省総合外交         政策局軍備管  林   暘君         理・科学審議官         外務省総合外交         政策局軍備管理 中根  猛君         軍縮課長         外務省総合外交         政策局科学原子 天野 之弥君         力課長         水産庁研究部漁 吉崎  清君         場保全課長         科学技術委員会 吉村 晴光君         調査室長     ――――――――――――― 委員の異動 九月二十七日  辞任         補欠選任   村井  仁君     上田 清司君 十月七日  辞任         補欠選任   錦織  淳君     田中 秀征君 同月二十二日  辞任         補欠選任   近藤 元次君     宮路 和明君   林  義郎君     森  英介君 同日  辞任         補欠選任   宮路 和明君     近藤 元次君   森  英介君     林  義郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  原子力開発利用とその安全確保に関する件  (ロシアによる放射性廃棄物海洋投棄問題)      ――――◇―――――
  2. 臼井日出男

    臼井委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興基本施策に関する事項  原子力開発利用とその安全確保に関する事項  宇宙開発に関する事項  海洋開発に関する事項  生命科学に関する事項  新エネルギーの研究開発に関する事項 以上の各事項につきまして、本会期調査をいたしたいと存じます。  つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 臼井日出男

    臼井委員長 御異議ないものと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 臼井日出男

    臼井委員長 原子力開発利用とその安全確保に関する件、特にロシアによる放射性廃棄物海洋投棄問題について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川島實君。
  5. 川島實

    川島委員 ロシアにおける放射性廃棄物海洋投棄問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  国際環境保護団体グリーンピースによると、十七日午前八時ごろからロシア海軍放射性廃棄物海洋投棄専用船により、ウラジオストク南東約二百キロの日本海投棄が行われた、こういう連絡が来ておるわけでございます。そのとき政府は、ロンドン条約に違反するとして直ちに事実確認を求め、厳重抗議と二回目の投棄停止を求めてきたところでございました。多くの政府の、外務大臣初め科学技術庁長官等の御努力によりまして、今回ロシアの二回目の海洋投棄中止の決定を見たわけでございますが、これらの政府の機敏 なる対応について敬意を表するところでございます。  今回の外務省のこれらの経過について、まずお伺いをしておきたいと思います。
  6. 天野之弥

    天野説明員 お答えいたします。  外務省といたしましては、十六日、グリーンピース動きが報じられた直後、本件投棄の事実関係ロシア側に照会いたしました。  その後、累次抗議、照会を行ってきておりますが、十九日には斉藤外務事務次官チジョフ在京ロシア大使を招致いたしまして、次のとおり抗議申し入れを行いました。日本海における放射性廃棄物投棄に強い遺憾の念を表明し、第二回の 投棄中止するよう強く要求する、ロシア指導部我が国国民感情を踏まえた高い次元での政治的判断を要請する、投棄完全禁止実現のための措置につき建設的な協力を行うという内容でございます。  続きまして、二十日、羽田外務大臣よりコスイレフ外務大臣に対しまして、電話で以下を申し入れいたしました。細川総理も強く懸念しており、第二回目の投棄中止を強く求めている、日ロ間の作業部会早期開催を提案し、日本側としての協力可能性検討する、エリツィン大統領日本側懸念を伝達し、関係者に対し投棄中止の働きかけを行うよう要求する。  その後、二十一日日本時間零時四十分、ロシア側より、放射性廃棄物の第二回海洋投棄中止することとした旨、内報があったものでございます。
  7. 川島實

    川島委員 次に、今回の投棄ばかりでなく、過去に投棄された一九六六年から一九九一年における、捨て場十カ所を含めた総合的な対策が必要であると考えるわけでございます。  放射性廃棄物影響に関する国民の不安は非常に大きく、魚介類を好んで食べております日本国民にとって、一日も早い安全宣言が求められているところでございますが、今後の対応について、水産物等の不安に対する調査はどのように計画されているのか、この二点についてお伺いをいたします。
  8. 江田五月

    江田国務大臣 大変御心配をいただいているところでございます。ロシアによる海洋投棄というものが随分長い間、しかも相当大量にわたって続いていたということでございまして、これは、放射能対策本部というのが昭和三十二年に設けられまして、私が今担当しております科学技術庁長官がその本部長ということでございますが、そこでこの対策をとっていくということになっているわけですが、直ちにこれは調査をしなければならぬということで、今年調査をいたしました。  その結果、直ちに我が国国民の健康に影響があるものとは言えない、そこまでのことはないという調査結果が出まして、早急に中間報告もし、さらに八月でしたか、この最終調査結果というものを出しましたが、今回またこういうことが行われたということで、放射能対策本部幹事会を直ちに開きました。そして、先般調査体制をとって既に調査を始めているということでございますが、今後この調査結果を得て、専門家による評価を経て、国民の皆さんに公表を迅速に行いたい。調査をしてみなければ、これは安全であるとか危険であるとかということは言えないわけでございますので、予断を持つことなく厳密な調査を、しかも迅速にやりたいと思っておるところでございます。
  9. 川島實

    川島委員 一九八四年に固体放射性廃棄物百十八立方メートルを沖縄南東約七百キロの海域投棄したとロシア連邦大統領府の報告書に記載をされておりますけれども、当時科学技術庁は、ロシア誤記だ、こういう推察が示されておるわけでございますが、その後、この事実関係についてどのように明らかになっておるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  10. 江田五月

    江田国務大臣 これは、今年の四月二日、ロシア政府公表をいたしました白書に、投棄海域ごと固体放射性廃棄物個々投棄場所緯度経度によって示されていたわけですね。そのうち、ウラジオストク沖に位置する第十投棄海域内の個々投棄点をその緯度経度に応じて場所をプロットしてみますと、どうも一つだけ第十海域から大きく外れて沖縄に近いところに位置するものがあったわけでございまして、どうも第十投棄海域だけでなくて沖縄の方にも捨てられているのではないかという心配が起きた。  そこで、この点については、これはロシア政府に対して外交ルートを通じて事実の確認を行いました。誤記ではないかと推測をしていたわけですが、きっちり確認をしましたところ、北緯四十度二十分と記すべきところを北緯二十度二十分と誤記したものだという確認が得られまして、誤記であるということが確認されているということでございます。御心配をおかけしました。
  11. 川島實

    川島委員 次に、日本政府もかつて東京湾から千キロないし二千キロの南太平洋諸島近海に低レベル放射性廃棄物を捨てる計画をいたしまして、近隣諸国反対で断念した経過がございます。また、一九五五年から六九年まで、房総半島の沖、駿河、相模両湾に放射性廃棄物試験的海洋投棄を行った報道がなされておりますけれども、日本の過去の投棄は現在安全上問題がないのかどうか、お伺いをしておきたいと思います。
  12. 江田五月

    江田国務大臣 日本も、確かに過去に放射性廃棄物海洋投棄というのを実施をしたことがないわけではないのですが、安全上最大限の注意を払ってやっておるし、それから、今お話し海洋諸国のいろいろな反対がございましてやめたという経緯もございますが、今の昭和三十年から四十四年まで、これは主に医療用放射性同位元素、これをいろいろきっちり安全性についての処置をした上で投棄をしたものであって、全く心配はないというふうに判断をしておりますが、その辺の細かなことにつきましては、政府委員の方からさらに付随して答弁をさせます。
  13. 笹谷勇

    笹谷政府委員 大筋ただいま大臣から御説明したとおりでございますが、若干補足いたしますと、過去に実施した投棄についてはきちんとコンクリートに固形化したものでありますし、また、その投棄した放射性物質海中に溶け出しにくいコバルトがほとんどでございます。また、捨てた後も、御説明ありましたように、きちっと異常の有無を確認し、異常はないということを確認しております。  以上でございます。
  14. 江田五月

    江田国務大臣 なるべく大臣答弁でやろうと思っておりますとちょいちょい間違いをすることもあるようで、先ほど放射能対策本部の設置を三十二年と言いましたが、そうではなくて三十六年の十月でございました。大変失礼いたしました。昭和三十二年は、周辺海域環境放射能レベル調査を開始をした時点であったということでございます。
  15. 川島實

    川島委員 次に、日本近海北方海域に旧ソ連の大量の放射性廃棄物投棄されてきたのは一九五九年から一九九二年まで、この放射能の総量が約八・五京ベクレルに上ると言われ、廃棄物は、原子力施設汚染物金属コンテナに入れたり船に積載して船ごと沈めたもの、原子力潜水艦原子炉をそのまま沈めたものがあると言われております。現在、原子力船二百三十五隻、原子炉四百七基、そのうち解体の必要なものが九十三隻あると言われております。  今後の我が国ロシアとの関係においてのこれらの廃棄物処理についての対策、特に、日本近海における国民の不安や懸念が非常に大きいだけに、万全の措置が望まれておるわけでございますが、国連等関係機関を通じていろいろな対策をお願いしておきたいところでございますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  16. 江田五月

    江田国務大臣 御指摘のような心配があるわけですね。昨年まで続いていた海洋投棄について、これは液体放射性廃棄物投棄もあり、同時に固体のものもあったわけでございまして、我が国としても、大変これは関心を当然持つ。そこで、先ほども申し上げましたとおり、放射能対策本部として調査をしたものでございますが、しかし、まだ十分な調査が完全に済んでいるというわけでもなくて、これからさらにロシア側と鋭意話を詰めて、共同調査を行いたい。  何しろ、日本の方が勝手に入っていけない地域のものもあるものですから、やはりロシア外交交渉をやって調査をしなければできないという関係になりますので、先般もエリツィン大統領来日をされた折に、細川総理との会談でそうしたこともお話しをいただいたわけでございますが、事務方詰めもずっと進んでおりまして、これは、今月の二十七日、二十八日、専門家会議をモスクワで行いまして、さらに十分な調査もいたしまして、それから、来月の十日、十一日、これは第 二回目の日ロ共同作業部会を行って、対策を、共同調査をする方針のもとで実務的な詰めを行っていきたいと思っております。  しかし、日本海における投棄と別に、その他もたくさんあるのですね。北極海というのですか、カラ海、アラフラ海といったあたりでしょうか、こういうところの投棄日本海投棄の比ではない大変な投棄をしているというようなこともありまして、ロシアとノルウェーが一緒に調査をしているといったこともございまして、今後、旧ソ連、東欧、中欧諸国核廃棄物を一体どう取り扱っていくのか。これは、民生用のものもありますが、同時に軍事用のものもある。これから核兵器解体といったことにも取り組んでいかなければいけないというので、国際的な枠組み努力をしていかなければならぬ。日本も、そういう国際的枠組みの中で努力をしてまいりたいと思っております。
  17. 川島實

    川島委員 次に、今回のロシア廃棄物処理関係で、通産省方針科学技術庁方針と若干ずれている面が一点あったわけです。通産省は、ロシア核解体援助金廃液貯蔵に活用を検討する、こう言っているわけですが、科学技術庁の方では、原潜の活動の助けのおそれがあるから、この援助は慎重な構えが必要だ、こういうような形でコメントを発表しているわけですが、この辺の統一見解はどのようになりましたか、お伺いしておきたいと思います。
  18. 江田五月

    江田国務大臣 政府部内で考え方に違いがあるというわけではないと思います。これはもちろん、我が国及び国民の安全にとっても、あるいは健康にとっても、大変な影響のあることでありますから、日本として最大限努力をしなければならぬ。  先ほど、ロシア共同調査のことは申し上げましたが、もちろん我が国独自にもいろいろなことをやっているわけで、既につい先日、海上保安庁の船、明洋でしたか、これが門司から出航したというような報道、これは報道のとおりでございまして、そうしたこともやっていくわけでございますが、同時に、ロシア液体放射性廃棄物処理について、日本としてもいろいろな技術的な支援ができるのではないか。これは、既に技術的検討も始めておりますし、また、財政的なことなども含めてこれから検討していかなければならぬことだと思います。その点、科学技術庁として、別に消極的な態度は全くありません。  ありませんが、しかし、これは注意しなければいけないのは、やはり原子力潜水艦関係液体放射性廃棄物ということでございますので、廃棄をされた原子力潜水艦液体放射性廃棄物、こうなりますと、既にこれは廃棄をされた原子力潜水艦ですから、さらにそれがどんどん軍備拡大につながるというものではないと一応言えるかもしれませんが、しかし、現に動いている原子力潜水艦のものもあるわけですよね。そうすると、現に動いているものについて、こちらが技術的ないろいろな支援をしたりあるいは財政的な支援をいたしますと、その分ロシア軍事費が助かる、さらに別のところにこれを使うというような関係になると、これは困ります。世界全体の軍備の縮小という方向に向けての大きな流れと逆行することになってはいけないという、そういう心配は当然あるわけでございまして、科学技術庁の方で関係の者があるいはそういう意味のコメントをした、その点が強調されて伝わったということはあるかもしれませんが、そうした両面の考慮から調整を進めていかなきゃならぬということで、まだ政府として統一したというような見解を得る段階ではないと思っておりますが、さらに調整を進めて、間違いのない対応をしていきたいと思っているところでございます。
  19. 川島實

    川島委員 最後に、中国核実験についてお伺いをしておきたいと思います。  九月の国連総会で、羽田外務大臣中国の前副総理に対して核実験の自制を申し入れておりますし、十月五日、これらを押し切って中国核実験を行いました。世界で唯一の被爆国我が国といたしまして非常に遺憾なことだと思っておりますが、今後世界が一九九六年に向けて、全面禁止に向けて条約締結動きもあるやに聞いておるわけでございますが、今回の中国核実験について政府はどのようなお考えをお持ちなのか、お伺いをしておきたいと思います。
  20. 中根猛

    中根説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、今回の中国核実験は、国際的に全面核実験禁止に向けた非常な機運高まりがある時期に行われましたものでございます。こうした国際的機運高まりに逆行するものということで、日本政府としてもこの核実験実施につきまして極めて遺憾であると考えております。我が国は、従来より、核実験禁止問題を軍縮分野におきます最重要課題一つとして重視してきております。今回の中国核実験全面核実験禁止交渉の妨げとならないことを、強く希望しております。  我が国としましては、御指摘のとおり中国核実験準備の情報を入手すると同時に、何回かにわたりまして非常に高いレベル中国核実験をしないようにという申し入れを行いましたが、残念ながら中国実施に至ったわけでございます。実施に至った直後にも、遺憾であるということと、それから核実験を再度繰り返すことのないようにという呼びかけを中国側にしておりますし、また、改めて高いレベル申し入れも行いました。  我が国としましては、今後とも中国がこうしたことを繰り返すことのないよう強く求めていくとともに、他の核兵器国に対しても、引き続き核実験を控えるように求めていきたいと考えております。
  21. 川島實

    川島委員 ありがとうございました。時間ですので終わります。
  22. 臼井日出男

  23. 今村修

    今村委員 今回の事件は、エリツィン大統領来日をしてせっかく盛り上がった友好ムードを一遍に吹き飛ばす、こんな事件で、大変な事件であったと思います。特に、日本海で操業している漁業者を初め関係都道府県は一斉に抗議の声を上げる、こんな状況になっているわけであります。幸いにして、ロシア日本政府抗議やこうした国内の世論に押されて、二回目の海洋投棄は一時延期する、こういう状況になったわけでありますが、問題はなおかつ先送りをされている、こういう状況になっています。  そこでお伺いをしたいわけでありますが、国民がいらいらしているこんな状況の割には、政府対応がちょっと遅かったんじゃないのか。羽田外相が直接連絡をとったのが二十日、こんな状況のようであります。政府態度がちょっとあいまいだったというのは、海洋投棄に対する日本政府考え方があいまいなことがそんな結果をもたらしたのではないか、こんな気がするわけでありますが、この点についてお伺いをします。
  24. 江田五月

    江田国務大臣 対応が遅かったと言われますと甚だ申しわけないと思いますけれども、しかしこれは、事実をどういうふうに国として、政府として確認できるかというのはなかなか難しいところで、また御議論があるかと思います。もう外交ルートを通じまして、私どもこの報道を耳にした途端に確認を求めたわけで、その結果確認された事実に基づいて、放射能対策本部を迅速に機能させて、放射能による国民の健康への影響を監視する立場から、すぐに幹事会も開き、方針も決定し、調査のための船舶も出航させるという対応をとったわけでございまして、ぜひその点は御理解をいただきたいと思います。  私ども、旧ソ連ロシアによる放射性廃棄物海洋投棄に関しましては、これはもう近隣諸国に対する配慮に大変欠けるものだ、大変遺憾である、この態度は一貫をしておりまして、エリツィン大統領が来て、本当に話し合いもいい結果を生んで、さあこれから日ロ友好がスタートするというやさきの話ですから、まことに残念だったわけでございますが、政府として海洋投棄というものに対する態度にあいまいな点があるということではないと思っております。ぜひ御理解いただき たいと思います。
  25. 今村修

    今村委員 来月開かれるロンドン条約締約国会議で、日本は低レベル廃棄物を含めた海洋投棄全面禁止に賛成する、こう言われているようでありますが、事実でしょうか。仮にこれが事実とすれば、私は国際世論が厳しい状況の中で大変賛成をするものであります。  ただ同時に、この海洋投棄全面禁止に賛成するという考え方は、今青森県六ケ所につくられている再処理工場から大量に海に放出をされる、海中放流と矛盾するという考え方にはならないんでしょうか、この点についてお伺いをします。
  26. 江田五月

    江田国務大臣 来月ロンドン条約締約国会議が開かれる、これはお話のとおりでございまして、そこで一体この低レベル放射性廃棄物海洋処分についてどういう討議あるいは結論が出されるかというのは、これはまだまだこれからのことでございます。  日本として、政府として一体どう考えるのかということですが、今いろいろなことが報道されているわけですけれども、これはまだまだ考え方調整中でございまして、結論が出ているという段階ではございません。科学技術庁といたしましては、専ら科学技術的な見地のみで言うならば、しかもIAEAの基準にのっとって適正に行われる海洋処分については、これはこれまでのいろいろな検討の結果からいえば安全上問題はないという、そういう判断なのでございます。  しかし、科学技術のことだけで世の中進んでいるわけではございません。国民の安心の問題であるとか、あるいは周辺諸国懸念のことであるとか、いろいろなことがございます。国としては、低レベル放射性廃棄物海洋処分については関係国懸念を無視して行うことはない、こういう基本方針をこれまでもずっと貫いておりまして、先ほどの川島委員お話にもあったように、やらなかったわけですね。さらに、ロンドン条約締約国会議におけるモラトリアム決議というものがございまして、これについても誠意を持って遵守をしてきているところでございます。  来月の対処方針ということについては、陸上処分計画進展等我が国放射性廃棄物処分対策の現状とか、あるいは関係諸国懸念高まり等により、海洋処分実現可能性は極めて乏しくなっておる、このことを十分考慮をしていく必要があると思っておるところでございまして、詰め作業を行っている。原子力委員会でもいろいろ検討を進めておって、ひとつ世界の大勢というものを十分見きわめながら対処していきたいと思っています。
  27. 今村修

    今村委員 ロシアは今回二回目の投棄を一時延期をした、こういう内容になっているわけです。しかし同時に、貯蔵施設が満杯になれば再び海洋投棄をせざるを得ない、こうも言っているわけであります。日本政府として、この海洋投棄をさせないために今後どんな方策をとっていくのか、お伺いをしたい。  同時に、今回の海洋投棄によって、沿岸の漁民は大変な心配をしているわけであります。特に、日本海で漁業をしてる漁業者は、これでとった漁獲物が売れないと風評被害を大変心配しています。こんな状況に対して政府としてどう対応するのか、これらについてもお伺いをしておきたいと思います。
  28. 江田五月

    江田国務大臣 おっしゃるとおり、ロシアにこの液体放射性廃棄物海洋投棄というものを完全に断念をしてくれと言っても、向こうではまだちょっとなかなか施設も整わないしというようなことですので、今回は中止を強く求めて中止をしていただきましたが、完全な断念ということになるためには、日本としてもいろいろな技術的、財政的協力が必要なのだろうと思います。  技術的な協力については既にいろいろな可能性検討しておりますが、もし必要なら政府委員の方から詳しく答弁をさせますが、蒸発をさせて量を減らすとかいろいろな方法がある。あるいはロシア側にそういう施設を建設するといった問題もあるだろうと思いますが、これからの課題でございますが、この努力をしていきたい。  それから、日本海の魚の心配漁業者の皆さんの心配ということでございますが、これも予断を持って調査するのではいけませんので、予断なく十分科学的反証にたえ得る調査をしたいと思っておりまして、しかもその調査結果は早急に結論を出して皆さんにお知らせをしたいと思いますが、これまで得られている状況から常識的に判断をしますと、あくまでこれまで得られている情報が正しいものとして、過去のいろいろな事実から常識的に判断をしますと、魚が食べられなくなるとかそういうことはないのではないかなと思っておるのですが、しかしこれは予断を持ってはいけませんので、厳重な調査をするということでございます。
  29. 今村修

    今村委員 最後に一点だけお伺いをしておきたいと思います。  今回の海洋投棄ロシアの国から事前に連絡がなかった、こういうことになっているわけです。ただ、国際原子力機関では事前に連絡を受けていた。これは、IAEAから当然日本にも連絡があってしかるべき内容であったのではないか。また、ロシアはIMOには届けていなかった、こういう内容であります。これはロンドン条約に反するということになるのではないか。また同時に、さきに大統領が来て行った東京宣言、この内容にもこれは反するという内容になるのではないか、こう思うのですが、この点はどうでしょうか。
  30. 江田五月

    江田国務大臣 ロシア政府からIAEAには十月の五日付でしたか、ファクスで連絡が行っておった、通告が行っておったということなんですね。そのファクスを見ますと、IMOにもあわせファクスを送るというふうに書いてあるのですけれども、IMOには届いていたか、いなかったかということがちょっと疑問符がついておりまして、そこの確認がまだちょっととれておらないのです。IMOの方にはちゃんと届けなければならぬというのは、これは条約上の義務でございますが、その点はあるいは抜かりがあったということがあるのかもしれません。  IAEAからのこちらへの連絡については、私は、条約上とか国際的な義務としてということにはなかなかならないのですが、しかしまあ連絡ぐらいしてくれてもいいじゃないかということで、つい先日、ブリックスIAEA事務局長がお見えのときにそういう趣旨のことを申し上げて、皆さんの関心はよくわかったので今後努力をする、こういうことになっております。  IMOは連絡を受けていないということが確認をされているようでございます。
  31. 今村修

    今村委員 終わります。ありがとうございました。
  32. 臼井日出男

  33. 田中直紀

    田中(直)委員 ロシアにおける放射性廃棄物海洋投棄の問題につきまして、当面の対策につきまして科学技術庁にお伺いをいたしたいと思います。  今回の廃棄物海洋投棄につきましては、第二回目の投棄が回避されたということはひとまずほっとするところであるわけでございますけれども、国民の方々あるいは漁民の方々は、大変そういう意味では不安の日々でございます。一過性のものではなくて、これから日本海の海洋環境調査を行うということで調査船も出たわけでありますけれども、しっかりした対応をしていただくということで、科学技術庁長官江田大臣に、まず決意のほどをお伺いいたしたいと思います。
  34. 江田五月

    江田国務大臣 今回のロシア放射性廃棄物海洋投棄について、これはとにかくエリツィン大統領がお見えになっていろいろな話をし、こちらからもいろいろお願いもし、まあいい結果になってこれから日ロ友好を進めていこう、こうスタートを切った、いわば日ロ新時代といいますか、そのやさきのことであって、本当に遺憾なことだと思っております。近隣諸国に対する配慮に欠けるものだ、そういうわけで、政府としても強く中止を求めたわけですね。  漁民の皆さん、あるいは漁民のみならず国民み んな大変不安に思われたということだと思いますので、早速放射能対策本部幹事会を開きまして、調査を決定し、海上保安庁、水産庁、関係の機関によって今調査をやっているところでございますが、これは予断を持った調査であってはもちろんいけません。科学的な調査をきっちりやりたい。その上で、調査結果をなるべく早急に出して、国民の皆さんに公表をさせていただきたい。できることなら、不安が除去される、安心なんですよということになればいいのですが、これは調査をやっているところですから、今何とも断定的なことは申し上げられません。しかし、努力をしていきたいと思っております。  それから、こういうことが二度とないように、これはロシアとも鋭意交渉をしなければならぬし、また国際的な枠組みの中でも、こういう無神経な放射性廃棄物海洋投棄といったことが行われないような方向で努力をしていきたいと思っております。
  35. 田中直紀

    田中(直)委員 大臣の御努力をよろしくお願い申し上げます。  投棄をされました位置が北緯四十一度から四十六度、そしてまた東経百三十三度から百三十四度、こう聞いておるわけでございます。明洋が、海上保安庁の測量船が調査に出た、こういうことでありますし、気象庁、水産庁、多方面の皆さん方に御努力をいただいて調査を始めていただく、こういうことになっておりますが、海洋投棄の後、これはどの程度真意が伝わっているかわかりませんが、科学技術庁が、直ちに影響はない、こういうようなことを発言をし、新聞に報道されておるわけであります。海上保安庁は、周辺の海流の動きから日本近海へ流れ着くまでには一カ月かかる、その間に薄まってしまうため大きな影響がない、こういうことでありますから、直ちにというのは、その調査に時間がかかるから、結果としていってみると影響がないんではなかろうか、こういうような結果になるんだ、こういうことを正直にといいますか、実情を述べておるわけであります。  それから、放射線医学総合研究所でございますが、投棄日本海の魚に影響したとしてもふえた放射能量は検出できないほどだ、こういうような発言。これも、そういう意味では一カ月以上たてば魚に影響したかどうか、したとしてもその量ははかれない、こういうことであります。それから防災環境対策室は、過去と同じだということで、調査結果でも同じではなかろうか、こんなことを早々と言っておる、こういうことであります。  ですから、この調査が、今投棄したところから二百海里という問題があるわけでありますが、まず一つは、今長官が言っておりますように、ロシアとの共同調査において外交ルート最大限に使って、まずその投棄の地点に速やかに行って、グリーンピースが、本当かどうかその辺はわかりませんけれども、数値を出しておるようでありますけれども、その辺をしっかりと、月末に会合がある、こういうふうに聞いておりますから、まずその努力をお願いいたしたいと思いますが、御所見いかがなものでございましょう。
  36. 江田五月

    江田国務大臣 数値等の細かな点は、政府委員の方からもし必要なら補足をさせますが、ロシア側の今回の発表によれば、今回の実施された海洋投棄では約一キュリー、一・〇八キュリー、こういう数値を述べておるのですが、この液体放射性廃棄物日本海投棄をされた。一方、旧ソ連ロシアが過去に日本海において投棄したものは全部で液体放射性廃棄物一万キュリーということでございますから、そういう量的な比較が一つあると思います。  その上で、ことしの春に過去のこの一万キュリーというものの影響、これを海洋環境放射能調査をやってみたわけですが、その結果、特段の異常というものは見られなかった。それはろくな調査してないんじゃないか、これはそんなことはないんで、真剣な調査をやったわけで、現にあのチェルノブイリのときにはちゃんと影響が出たということがはっきり確認をできる、そういう調査でやったわけですから、調査の結果そのものは信頼していただきたいのですが、一万キュリーで特段の異常がなかったということ。こういうことを前提にして常識的に判断をするならば、前回の時点で我が国国民に対して影響が及んでいるものではないという判断から推論して、今回もまあ影響がないと言えるのではないかという、そういう判断を、今おっしゃられたような関係のところが述べたのであろうと思います。  しかし、ロシア側の言っていることが本当に事実であるか、事実を疑う理由も別にないのですが、しかし、事実であるかどうかと言われたら、それは事実であるかどうかわからないわけですよね。したがって、その点も外交ルートを通じてももっと確認をしなければならぬし、さらに調査もしっかりして、そういう事実が調査の結果裏づけられたというようなことになるなら、それはそれでよしということでございまして、予断を持たずに調査をしなければいけないということだと思っているわけでございます。調査の結果は早急に公表さしていただきます。  数値等について細かなこと必要であれば、よろしいですか。
  37. 田中直紀

    田中(直)委員 大臣から外交ルートでも御努力いただくという御発言がありましたので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  一カ月以上かかると、そういう意味では調査結果、これは日本海全体はわかるかもしれませんが、投棄による影響というものについては直接調査がなかなか難しい、ロシアの二百海里内に立ち入ってそれで共同作業していただく、こういう御努力をいただきたいと思いますし、グリーンピースが九十七マイクロシーベルト、これは発電所から出た放射能があるいは原子力船なのか、こういうこともあろうかと思いますが、性格、性質のものも調査をしていただいて、委員会に早急に御報告をいただきたい。特に、調査結果は一カ月以内といいますか、速やかに委員会、次の委員会にでも報告ができるような調査努力していただきたいと思います。
  38. 江田五月

    江田国務大臣 二百海里というものの性格もいろいろあるかと思いますけれども、しかし、いずれにしても、我が国が主権国家としていろいろなことがどこまでできるかというのは、これは相手の主権との関係のことがありますから、慎重な対応が必要というわけで、そこで、この投棄をした現場といいますか、投棄をした場所ですね、その海域に入っての調査ということになりますとなかなか微妙なことがあって、そこで日ロ共同調査という枠組みで今事務レベルの手続が進んでおるということなのですが、しかし、それはなかなか時間がかかるじゃないか、現に明洋は今その近くまで行っておるんで何とかしたらどうだ、グリーンピースは行っているじゃないかという、そういうお話かと思います。ここは国と民間との違いというものをひとつぜひ御理解いただきたいのですが、さはさりながら、やはりいらいらするということはあるわけですね。  そこで、早速にロシアの方に日本の独自の調査をこの投棄海域でやらしてほしいという外交ルートを通じての交渉をするように、今手続を進めているところでございますが、これができましたら、その結果はまた早急にお知らせをしたいと思います。
  39. 田中直紀

    田中(直)委員 ぜひ努力をして実現していただきたいと思います。  先般、日ロの会談で、細川首相がこの海洋投棄の問題に関連して、エリツィン大統領が、あんたの方は核じゃないけれども、やっているだろう、それも一緒に調査しよう、こう言っていた、こういう発言があったようでございます。確認をしていただいて、一緒にやろう、調査をやろう、こういうふうに提案しておるわけでありますから、すぐ言っていただければ実現をするという環境にあると判断をするわけでございますので、早急に、せっかく合同会議が開かれるわけでありますから、提案をしていただきたいと思います。  それから引き続き、ことしの五月の会議で、一 九九二年までは白書に海洋投棄の掲載があって説明を受けられたようでございます。九三年に入ってからは海洋投棄は行っていない、こういう発言をロシアの方はしておるわけでありますけれども、エリツィン大統領が言っておりますコメントは、ちょっと日本が何をやっているかということについては、産業廃棄物のことかなというようなよくわからない発言だと日本の受けとめ方を話しておるようでありますが、これは首脳会談の中身でありますから、大変重要な発言だと思うのですよ。あんたの方も核じゃないけれどもやっているだろうということは、恐らくこの発言からいうと、日本から具体的に九三年の投棄について、グリーンピースはわかったわけですが、日本政府というか関係者はこれに気づかなかった、こういうことになりますが、十月ですから、一月から十月の間に、そういう意味ではロシアの方で関係各国にも報告をしないで投棄をした、したかもしれないというような、何かちょっと、しかし日本の方もやっておるのではなかろうか、お互いに調査していろいろ接点を考えようじゃないか、こんな向きもあるわけでありますから、今の科学技術庁が調べられる最大限努力を払って、ロシアが、今回の投棄以前に九三年には本当にしなかったのか、それとも万が一あったのかという問題もあるわけであります。  その辺を調べていただきたいなということが一つと、官房長官が発言の中で、グリーンピースには感謝しています、こういうことを言っているわけですよ。グリーンピースがいなければ投棄したことがわからなかった。これは、ある面では若干皮肉の問題でしょうけれども、その辺の心配があるわけでありますし、また官房長官は、日本海近海を絶えず見張っているのは不可能だ、こういうことを言っているわけですよ。ということは、政府はそれだけチェックしていない、十月までに本当にロシアが別の投棄をしたかどうかというのは調べていないということを言っておるわけでありますから、調べていただきたいと思います。  そして、この間NHKを私もたまたま見ていましたら、投棄をしておるところを見ました。まあ無造作にといいますか、三つのボタンを押してこうやればどんどん投棄ができるんだ。これは、十カ月ぶりにこの船が出たような雰囲気ではなかった。まあこれは私の印象かもしれませんが、非常に日常的にやっておるような、日常的といいますか、非常に専門的にやっておるような雰囲気があったということで、この合同調査の中で九三年の問題についてもしっかりと聞きただす、こういう姿勢で臨んでいただきたいと思います。
  40. 江田五月

    江田国務大臣 エリツィン大統領細川総理との話のときのやりとりが今御紹介あったわけですけれども、おまえのところもやっているじゃないかと、日本のことについて言及があった。何を指しているのかというのは、あるいはエリツィン大統領がどういうことを認識をしておっしゃったのかというのは、ちょっと私はその場にいたわけでもありませんし、定かではありませんが、それまでのいろんな過程を総合して判断しますと、日本でやっていたというのは、先ほどもちょっと申し上げました昭和三十年代までやっていた試験的ということでございますが、放射性廃棄物海洋投棄、これは、医療用のラジオアイソトープなどを投棄したというものであって、しかも、それもちゃんと処理をして安全な状態にして投棄をしているもので、今回のような垂れ流しとかいうものではないんですね。ですから、これを持ち出して両方やろうと言われても、どうもちょっと違うんじゃないですかと言いたいところですが、まあそれはやりとりの中でそういうことがあったということで、最終的にはこれから実務的に進めていきましょうということになったわけですから、今からもう一度問題をほじくり返すことはないんだろうと思っております。  日本がやっていた過去のことについて、細かなことが必要であれば政府委員から答弁をさせます。  それから、グリーンピースに感謝という、これはまあ皮肉を込めてのことであって、ひとつ御理解いただきたいと思いますが、九三年に、つい先日のもの以前にあったのではないか、それをしっかりと念頭に置いていろいろこれから交渉なり調査なりをしろということ、これはわかりました。そういうことは念頭に置いて尋ねてみたいと思いますが、ただ、申し上げておきたいのは、十月十八日にロシア政府によって、今回のことにつき共同の記者会見が行われたわけです。その会見で投棄の概要についての説明がありましたが、さらに補足的に、ロシア政府の方では一九九三年には今回が初めてであるという、そういう説明が付加されております。それがうそだと疑う理由は特にありませんので、我々が今のところ知り得る限りでは、九三年に、今回の以前にはないということでございます。
  41. 田中直紀

    田中(直)委員 大臣が、ことしの投棄の問題につきまして、ソ連側に鋭意努力してただしていく、こういう御発言でございますから、その結果につきまして、委員会の方に報告を後日していただければ大変ありがたいと思っております。  それから、十一月八日にロンドン条約が開催をされます。政府見解といたしましては、今検討中である、こういうことでございますが、もう近々始まるということでございますし、前回の表決に対しては棄権をしたということでありますが、こういう国民感情あるいは国際世論を考えて、完全禁止というものを打ち出す時期ではなかろうか、こういうふうに思っております。大臣に、科学技術庁長官としての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  42. 江田五月

    江田国務大臣 先ほどの答えで一つ間違えまして、日本放射性廃棄物海洋投棄、三十年代と言いましたが、四十四年まで行われていたようでございます。一つだけ訂正をしておきます。  十一月に予定をされているロンドン条約締約国会議に対する考え方でございますが、今政府部内で、原子力委員会も含め、検討調整をしている最中でございます。  科学技術庁として、科学技術的な見地ということだけで言うならば、IAEAの基準にのっとって適正に行われる低レベル放射性廃棄物海洋処分、これは安全上特に問題はない、こういう判断でございます。  しかし、先ほどもちょっと前の委員の方からの御質問に答えましたが、世の中は科学技術だけで動いているわけじゃありません。世界全体が本当にいい秩序になっていかなければいけないわけで、そうしますと、我が国としてはこれまでも、低レベル放射性廃棄物海洋処分については関係国懸念を無視しては行わないんだ、こういう基本方針を貫いてきたわけでございますね。また、ロンドン条約締約国会議モラトリアム決議が行われましたが、これも誠意を持って遵守をしてきた、こういう基本的な国の立場というものもございます。  来月の会議におきましては、これから検討するわけですが、その際、陸地処分計画進展等我が国放射性廃棄物処分対策の現状とか、あるいは関係諸国懸念高まり、こういうことによって海洋処分実現可能性が極めて乏しくなってきておる、こういう現実を十分考慮をしていく必要がある、こう思っておりまして、これらのことを念頭に置いて、最終的な詰めを急いでいきたいと思っております。
  43. 田中直紀

    田中(直)委員 今大臣から、真剣に検討していただいておるということでございます。大変心強い話でございます。よろしく、完全禁止という方向で進まれることを希望をいたします。  そのときに、これは全般的に我が国原子力行政におきまして、全国的にもあるいは地域的にも、情報公開といいますか、地域の住民の皆さん方が不安なきようにやっていくということで、時代の要請から、一歩進んだ情報公開というものをこれからやっていかなければいけない時代だと私は認識をいたしておりますが、ロンドン条約で完全禁止をするということに一抹のといいますか、一部のといいますか、我が国原子力行政にとっ て相当苦しい状況にも立ち入るのじゃないかという心配をされる方々もいるわけです。  それは、御存じのとおり原子力発電所から、本当に低レベルの液体が流されておることは事実である。今回のロシアのように垂れ流しをしてやっておるということではなくて、我が国においてはきっちり種類別に分けて、あるいはフィルターをかけてということでありますけれども、それが今の基準でいきますと、エリツィン大統領がそれを指しているのかどうかわかりませんけれども、あんたのところでもやっているじゃないか、こういうことを諸外国から言われると、それも入ってくるということも懸念をされるわけであります。  ですから、今言う高レベル、低レベルという基準ということではなくて、本当に安全な、レベル外のものもあるのだというようなことを主張しつつ、本当に熱心にやっておるその問題についてはレベル外のもので取り扱うというようなことも考えつつ、完全禁止というものを打ち出していただきたい、こんなふうに私なりに思うわけでありますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  44. 江田五月

    江田国務大臣 これは条約の考え方でございますから、科学技術庁の所管とは違うのかもしれませんが、今議論をこれからしようという、あるいはこれまで議論になってきているのは投棄なんですね。原子力発電所のものは、これは排水なんですね。投棄というものは、これはもう海にだばだばっと捨てたり、あるいはそれを何かコンテナみたいなものに詰めてぽんと捨てるか、要するに海へどぽんと捨てることですが、原子力発電所の場合には、これは施設の中で十分に処理をして、低レベルという範疇に入るのかどうか、そのあたりの技術的な細かなことは必要なら答弁政府委員からさせますけれども、本当に完全に処理をされた廃水をパイプを使って海に排水をしているということでございまして、海域の問題もあるかもしれませんが、私どもは、このロンドン条約締約国会議で議論になる液体放射性廃棄物海洋投棄という範疇のものとは違っている、明確に違っている、こう思っておるのでございます。しかし、議論の進みぐあいによってそういうところまで懸念が及んでくるということがあると、これは困りますので、そのあたりは十分配慮をしながら議論を進めていきたいと思っております。  必要なら外務省の方から答弁いただくか、あるいはこちらから答弁をつけ加えて。よろしければ結構ですが。
  45. 田中直紀

    田中(直)委員 結構です。  ぜひ、今回のロンドン条約に対しては、我が国としては完全禁止の姿勢を示していただくことが、対ロシアの今回の海洋投棄に対しても一つの大きな立場を持つわけでありますし、説得力のある姿勢に我が国も転換をするということではなかろうかと思いますので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  そのときに、科学技術庁といたしましては、当然我が国原子力行政の問題があるわけでありますし、今大臣が言われましたように投棄と排水というものを分けて考える、これも一つの大変大きな問題であろうかと思いますし、そういう意味では、ロンドン条約に対しての姿勢と、そしてまた我が国原子力行政における矛盾がないように、しっかりとそれまで煮詰めていただいて進んでいただくことが大事ではなかろうか、こういうふうに思う一人でございますから、ぜひ大臣におかれましても、ロンドン条約に際して、しっかりした対応で臨んでいただきたいと思います。
  46. 江田五月

    江田国務大臣 締約国会議におきましては、方向性としては低レベル放射性廃棄物海洋処分の禁止に向けて努力をしていくことになるものと考えておりまして、現在最終調整を行っているところでございます。
  47. 田中直紀

    田中(直)委員 以上で終わります。
  48. 臼井日出男

    臼井委員長 森英介君。
  49. 森英介

    ○森(英)委員 自由民主党の森英介でございます。  まず冒頭、江田長官に、長官の原子力に関する考え方確認をさせていただきたいと思います。  まず、私がねてより、党派もまた考え方も違いますけれども、江田長官の人となりには陰ながら大変敬愛の念を寄せていた者の一人でございます。しかしながら、長官のかつての原子力に対する姿勢は、私も以前、原爆記念日に広島テレビで座談会が行われた際に一緒に出席させていただいた経験もございますし、それから社民連の公約なども拝見させていただいておりますけれども、言ってみれば原子力については、反対ではないけれども大変慎重なお立場であられたというふうに認識をしております。  それが、長官になられまして、先般の本会議での町村議員の質問に対する御答弁、それからせんだっての予算委員会における小澤潔委員の質問に対する御答弁など伺いますと、大変に、むしろ積極推進派に変身されたというふうに感じております。これは科学技術庁長官としてのお立場でそういう姿勢をとられておるのか、あるいは長官をお引きになって一介の議員に戻られたとき、あるいは場合によっては野党にまたなられたときにも、今と同じお考えで通されるのかどうかを確認させていただきたいと思います。
  50. 江田五月

    江田国務大臣 大変御心配をいただいて感謝を申し上げますが、確かに広島で何か討論会がございましたね。一緒に出させていただいたこともそういえば思い出したところですが、私としては、それほど別に変遷しているつもりはないのでございます。原子力というもの、これはもろ刃のやいばで、確かに我が国としては広島や長崎の体験もあるわけです。原子力というものが使い方によっては大変に人類に悲惨な状況を生み出してしまうということもあるわけですから、この点はもう注意に注意をしておかなければいかぬと思っております。  しかし、原子力というのは悪いものだという、それはそうじゃないので、私は今でもかすかにですが思い出すのですが、昭和三十年代の初めに、東海村で初めて日本において原子力平和利用ということがスタートをした。当時私、たしか小学校か中学に入ったころぐらいだったでしょうかね、東海と書いてあるので名古屋の辺かと思ったらなぜ茨城なのかななどと思ったり、ああ、原子力というものが新しい科学技術の平和利用の可能性を持ってスタートしたんだなと、当時そんな、漢字での印象じゃありません、チャイニーズレターでの印象じゃなくて、もっと素朴な印象だったと思いますが、何か明るい灯がともったような印象を持ったことを記憶をしています。原子力というものの可能性、夢と言いましたらちょっとオプティミズムに過ぎるかもしれませんが、明るい未来を持ったエネルギー源であるということ、あるいはそのほかに、エネルギーだけでなくて医療とかその他のいろいろな産業分野で利用されるものであること、これも十分承知をしているつもりでございます。  ただ、私ども野党の時代に、これは野党というものの国政上の役割、現に政府が行っていることに対し批判をし、チェックをし、間違いなきを期すという役割もあるわけですから、そういう立場に立ては、これは現に行われているもののいろいろな危険な側面、あるいは配慮の足りないと思われる面、そんなところはないかということを真剣に探し出して問題提起をしていくという、そのことに意を用いてきたということはあるいは事実であって、それが慎重派だという方に受け取られた面はあるかと思います。  おっしゃるとおり、原子力発電反対ということを私は言ったことはないつもりでございますが、批判的な態度が強く印象に残ったとすれば、あるいはそういうことはあったかと思います。しかし、今も私は慎重であるべきところはやはり慎重でなきゃならぬと思っておりまして、とにかく危ないところに目をつぶり、少々のことは無視してどんどん前へ進んでいけという、そんなつもりでいるわけでは毛頭ありませんで、この原子力発電というものが悩みも抱えておる、いろいろな危険な面もある、そのことを十分踏まえながら、そういうことに最大限注意をし、安全第一で原子力発 電というものを着実に進めていきたい。また、原子力発電以外についても、原子力の平和利用というものを着実に進めていきたい。しかし、あくまでも安全第一ですよという立場を崩したくない。これは科学技術庁長官をやめても、あるいは不幸にして野党ということにまたなったとしても、変わらないつもりでございます。
  51. 森英介

    ○森(英)委員 ちょっとしつこいようでございますけれども、私ごとで恐縮ですが、私は議員になります前に、原子力産業において原子力開発の末端でその一翼を担ってきた者でありまして、やはり反対ならずとも慎重な御意見の方々に大変悩まされたという経験がございまして、にもかかわらずそういう反対にもちろん安全第一というのは、これはエンジニアあるいはその開発に携わる者としてはもう言うまでもないことであって、それのみに目が行きますと、これはやはり開発が非常に停滞するという結果になると思います。  最近のいろいろな御答弁の中で、例えば従来の原子炉はもちろん、プルトニウムの利用あるいは核燃の再処理施設も積極的にやらなきゃいけないというふうなお話を承っておりますので、この点については、もちろん安全性を考えることはもとよりでございますけれども、くれぐれも従来の長官のお仲間の慎重な方々にもさらに一層の理解をいただくように御努力を賜りたいというふうに思います。
  52. 江田五月

    江田国務大臣 細川内閣は、これはもう繰り返し説明されているところですから簡単でいいと思いますけれども、連立の合意というものがございまして、その合意の中で、従来の国の基本重要政策はこれを継承するということでございまして、私は、これまでの国の基本重要政策の一環としてのエネルギー政策あるいは原子力政策というものは十分理解をしているつもりでございますし、その中に核燃料サイクルという考え方があること、プルトニウムの利用というものもあること、そういうものに立って再処理施設などもやってきていることも十分理解をしているつもりでございますので、これは間違いなく進めていくということでございます。それも、別に今までの私の考え方と違うという趣旨ではございません。  ただ、ひとつこれもぜひあわせ御理解をいただきたいと思うのは、反対派とか批判派とか警戒派とかと言われる皆さんが言っていること、これも大切なポイントもあるんですよということなんですね。役所というものが、見えるところと見えないところがあるわけですね。私は、科学技術庁というところは初めてですけれども、議員になる前に裁判所へいたことがありまして、裁判官という立場で見えるもの、あるいは裁判官という立場では見えないものというものが世の中にはいっぱいあるわけで、そういう人たちがいわば草の根から、あるいは市民運動の中や何かでいろいろわかったこと、危険に思うこと、こういうことをいろいろ言ってこられる。それはそれとして、やはり我々がわからないことを言っているんじゃないかという思いでそういう皆さんの声に接することも、また間違いのない正しい原子力行政を進めていく上では必要なのではないか、私はそう思っておりまして、そういう皆さんの声にも耳を傾けていきたい。  ただ、そういう皆さんが、だからやめなさい、こう言われても、いやそれは違います、やめるということではありません。しかし、我々が知らない現場のいろいろな努力、その中で持たれるいろいろな不安あるいは懸念、そういうものは聞かせていただければ、そこはこうなっていますよと説明もできるし、いや、そのことは知りませんでしたということもあるいはあるかもしれませんし、そこはひとつオープンマインドでやっていけばいいのだと私は思っております。
  53. 森英介

    ○森(英)委員 それでは、次の質問に移らせていただきます。  今回のロシア海洋投棄の問題でございますけれども、ここでいま一度、本当に政府は事前にこの計画を知らなかったかということを伺いたいと思います。
  54. 江田五月

    江田国務大臣 私の所管は科学技術庁でございますが、科学技術庁に関する限りは、これはどこをどうたたいてみても、事前に知っていたというようなことは全くみじんもございません。私が知り得る限りでは、その他の政府どこを探してみても、事前に知っていたというような兆候は全くありません。必要なら、外務省の方についてはお答えを求めていただければと思います。
  55. 林暘

    ○林説明員 今回のロシアによります海洋投棄につきまして、外務省としても事前に知っていたということはございません。かつ、事前に通告というものもございませんでした。
  56. 森英介

    ○森(英)委員 そうすると、新聞によりますと、ロシア環境天然資源省のアミルハノフ次官が、海洋投棄は二週間ほど前に国際機関すなわちIAEAと、それからロンドン条約の事務局並びに関係各国に通知済み、こういう発言をされているようでありますけれども、これは全くのうそだということになるのでしょうか。
  57. 江田五月

    江田国務大臣 そういうことが報道されておりますが、後ほどそれは、IAEAとIMOに通知をした、その他のところには通告をしていないと訂正になったというふうに理解をしております。我が国としては通告を受けておりません。  なお、IAEAには通告があった。十月の五日付でしたか、ファクスで通告があった。しかし、そのファクスにはIMOにも通告をするというふうに書いてあるけれども、IMOの方は通告を受けていないということが確認されているということでございます。
  58. 森英介

    ○森(英)委員 そうしますと、それはIAEAとIMOに確認されてわかったことで、ロシアからはその後、関係各国に通知をしなかったというその訂正はないわけですか。
  59. 林暘

    ○林説明員 今御指摘の最初の報道が流れた後、我々モスクワでロシア外務省にその点の事実関係を照会した時点で、二国間の、各国に対する通報は行わなかった、通報を行ったのはIAEA及びIMOという国際機関に対してだけだという発言を、ロシア外務省から、その後受けております。
  60. 森英介

    ○森(英)委員 わかりました。  次に、日ロ東京宣言の核関連条項で、ここであえて申し上げるまでもないと思うのですけれども、両国は、双方は、「放射性廃棄物海洋投棄が、世界的な規模において、なかんずく、周辺諸国の環境に与える影響の見地から、深刻な懸念を惹起していることを確認するとともに、」云々と、こういう条項がございますけれども、ここで言う放射性廃棄物には低レベルの液体廃棄物も含まれているのでございましょうか。
  61. 林暘

    ○林説明員 東京宣言で書かれております今御指摘の文言については、特にどの放射性廃棄物という限定はいたしておりません。一般的に放射性廃棄物ということで書かれております。
  62. 江田五月

    江田国務大臣 書きぶりはそうでございましてそのとおりなのですが、しかし、常識的に考えれば、国際的な懸念を惹起しているという言い方ですから、当然低レベルも入っているものだと思うのが普通だと思いますけれどもね。
  63. 森英介

    ○森(英)委員 ということは、今回のロシアの所業が全くこの条項の精神に反しているというふうに考えてよろしいでしょうか。
  64. 江田五月

    江田国務大臣 私としてはそう思います。
  65. 林暘

    ○林説明員 エリツィン大統領が東京に参りました際、今御指摘の東京宣言も発出されたわけでございますし、細川総理との首脳会談におきましても、細川総理からは海洋投棄の即時中止ということを求める発言もなされておったわけでございます。そういうような状況があったにもかかわらず、その数日後にこういう事態を、ロシア海洋投棄をやったということについては、我々としても極めて遺憾であるというふうに思っております。
  66. 森英介

    ○森(英)委員 そうすると、この会談後に、やはり日ロ首脳会談の成果の一つとしてこの核関連条項が挙げられて、細川首相も何がしかの前進を見たということで大変喜んでおられたやにお見受け したのですけれども、これについては全く前進がなかったということが現時点では言えますでしょうか。
  67. 江田五月

    江田国務大臣 先般の液体放射性廃棄物海洋投棄日本海に行われたということは、これはそういう共同宣言、東京宣言の精神からして極めて遺憾なことではありますが、これに対して我が国の方で抗議をし、中止を求めて、そして第二回目の投棄中止をされた。中止をされたのは、やはり一つには、エリツィン大統領が来て、東京でこういう話があって、こういう東京宣言が発せられた、そういう事実も踏まえてのことであろうと思いますね。二回目は中止するわけにいかない、一週間以内にやるだろうというようなことも言って、現にその準備も進めていたところへ中止ということになったわけですから。  したがって、私は、あの東京宣言というものは何の意味もなかったということでない、この海洋投棄ということだけに限ってみても、やはりそれなりの意味があって現在に至っている。問題は、さあこれからどうするのかということだと思います。
  68. 森英介

    ○森(英)委員 確かに、二回目の投棄中止になったというのは、これは中止にならないよりなった方がいいと思うのですけれども、一回目につきましても、これはグリーンピースがたまたまああいうふうに大々的にやったからわかったことであって、もしわからなければそのまま行われていたわけですから、やはり東京宣言が守られているとは私には思えないのですね。それは見方の違いですから……。  そこで、ちょっと時間の関係もありますので、次に珍らしていただきます。  枝村駐ロ大使からクナッゼ外務次官に行われた申し入れの中で、ロシア指導部我が国国民感情を踏まえた高い政治判断を要請、というくだりがございます。また、十九日の閣僚懇談会で、佐藤自治大臣が、エリツィン大統領が帰った直後にこういうことだと国民感情を逆なでにする、こういう発言があったというふうに伺っております。確かにそうかもしれませんけれども、事は感情で云々する問題ではなくて、国際法あるいは慣習に反する行為だからやめてもらうのであって、マスコミや国民がエモーショナルな反応をするというのはいたし方ないところかもしれませんが、政府まで情緒的に反応したり、また感情を理由に中止申し入れたりというのは、僕はこれはまことにおかしな姿勢だと思いますが、いかがでございましょう。
  69. 林暘

    ○林説明員 御指摘のように海洋投棄につきましては、ロンドン条約上、現在、低レベルのものであっても一時停止、モラトリアム決議がございます。そういう意味で、今回の投棄というのは明らかにモラトリアム決議には反しているというふうに考えております。したがって、法的にも問題であるという点は御指摘のとおりであろうと思います。  他方、放射性廃棄物海洋投棄が環境に与える影響という見地から、我が国としてこの問題に深く懸念をしておりますし、国民もまた同様に非常に深い懸念を有しているということも事実でございます。そういった観点からもロシア投棄に停止を求めたというのが枝村大使がクナーゼ外務次官に言った内容でございまして、国民感情があるからというだけで停止を求めるということではございません。
  70. 森英介

    ○森(英)委員 これ以上申し上げてもあれでしょうが、やはりこういうところに国民感情を持ち出すのは、僕は間違っていると思いますよ。  それはそれといたしまして、この時点で、これも新聞で拝見すると、政府放射性廃棄物海洋投棄全面禁止を支持する方針を固めたというふうに伺っておりますけれども、これは事実でございましょうか。
  71. 江田五月

    江田国務大臣 政府としては、まだ今関係各機関の調整をしているところであって、原子力委員会方針もありますし、そういう意見の調整をしなければいけないと思っておりますが、ただ、これまでの経緯等を踏まえますと、最終的には全面禁止という方向でいろいろな調整が進んでいく状況にあるというふうに思っております。
  72. 森英介

    ○森(英)委員 私は、先ほど江田長官から田中委員の質問に対する御答弁にもちょっとありましたけれども、やはり安全性の問題というのは確率の問題であって、白か黒かという問題じゃないと思うのですね。この投棄の問題にしても、捨てることが問題なのではなくて、捨て方が問題なのでありますから、ここのところは、少なくともほかの国のこういう行為があったからというリアクションで、それにあおられて慌てて方針を変更するというのは、僕はちょっとおかしいのではないかなと思うのですね。  したがって、もっと現実的、理性的、科学的に決めるべき事柄であって、大体、以前ロンドン条約ロシア日本だけが態度を留保したというのは、やはりこれは一つ方針であり、見識だと思うのですよ。これを、やはり先ほど申し上げたエモーショナルな反応の一環でありますけれども、こういうときに、まだ決定していないにしても、新聞や何かで報道されるような政府の姿勢が見られるというのは、僕はちょっと心配を感じます。この点について、お尋ねをいたします。
  73. 江田五月

    江田国務大臣 科学技術庁として科学技術的な見地だけから考えればということになりますと、IAEAの基準というものにのっとった液体放射性廃棄物海洋投棄というものは、安全上問題があるというものではなくて、そのオプションというものを政策的に残しておくべきだということは一つ判断ではある、それはそう思います。  しかし、世の中は科学技術だけで進んでいるわけじゃないので、海というものは、やはり海からいろいろな生物が全部出てきたわけだし、地球の生命のいわば根源みたいなもので、そこへもう要らないからといっていろいろなものを捨てるというやり方というのは余りよろしくないのじゃないかというような気持ちをみんなが持つというのは、それはそれで大切なことだと思います。また、よろしいんだということになりますと、またIAEAの基準をしっかり満たしたものでないようなものまで広がっていくような懸念もあったりしますから、今の段階全面禁止ということになるならば、それはそれで一つのまたこれも政策的な判断であって、そこのところを今詰めているというところでございます。  いかにどう安全であるかということの科学的な判断について、もし詳細が必要でしたら答弁させます。
  74. 森英介

    ○森(英)委員 私も別に海洋投棄はいいことだと言っているわけじゃなくて、長期的に国家百年の計あるいは人類百年の計を考えたときに、本当に今そういう可能性を封じてしまうことがエネルギーの安定供給の観点からリーズナブルなことなのかどうかということを考えるべきであって、ロシアの今回の挙動のリアクションとしてそれを考えることはやめていただきたいと申し上げているのであります。  次に、最後の質問になりますけれども、やはり今と同様の趣旨でありますけれども、前回ロンドン条約ロシア日本態度を留保したというのは、ある意味でパートナーだと思うんですね、私は。それはいろいろやりにくい相手だとは思いますけれども、ある意味のパートナーであって、今回の場合、私はむしろ将来を考えますと、グリーンピースの方が警戒すべき相手だと思うのであります。  これは事前にこういうことをお尋ねするということを申し上げてありませんから、政府としての御答弁というのはちょっとあれですけれども、今回は何かマスコミでも何となく正義の味方、白馬王子みたいにグリーンピースが取り扱われておりますけれども、これもえたいの知れないところもありますし、例えば、日本でこれから再処理施設をつくるあるいは陸上処分場をつくるとかそういう場合に、やはりいろいろと難しいことが生ずる一つの原因になりはしないかということを心配するわけであります。きょうのまた新聞によります と、外務省グリーンピースともちょっと連携をとり合ってというようなことをおっしゃっておりますけれども、やはりそういうことはよく見きわめていただいて、日本並びに世界のエネルギー需給バランスがどうやったら一番確実に確保できるのかということを考えて対処していただきたい、これは要望をさせていただきます。  何かお答えいただけたらいただいて、私の質問はこれで終わります。
  75. 江田五月

    江田国務大臣 御要望は承りました。  ただ、これはよく考えなきゃいけないのですが、確かに原子力開発利用を進めていくに当たって、これに批判を持ち、いろいろな活動をされる人たちの存在というのはなかなか厄介なことであったり、それから事を能率的にてきばきと進めていく上で障害になったりという、そういうような感じもあるいはあるかもしれません。しかし、物事がどんどんてきばき能率よく進んでいけば、それがいいことだというわけでもなかなかないんですよ。先ほどちょっと言いましたとおり、いろいろな批判や警戒の立場から、ここがおかしい、あそこが危ない、こういう意見を言ってくれる、そのことによって気がついたり、そのことによってより安全な行政が進んでいったりという面もあるわけですから。まあ長い人類の歴史の中で、本当にまばたきするような瞬間に一緒にこの狭い地球にいていろいろな営みをする人間同士ですから、皆それぞれいろいろな立場からの協力をし合っていきましょうという、そんな気持ちでやっていけば、私は通い合うところはあるのではないか、個人的にはそんなふうに思っているのですね。  ただ、国の主権とかあるいは国の安全とか、こういう問題はこれまたありますから、そういうところにいろいろな意図した障害を起こそうというようなことについては、これは毅然とした態度をとらなきゃならぬということはあると思います。その辺の緩急を心得てやっていくことだと思っております。
  76. 森英介

    ○森(英)委員 終わるつもりだったのですけれども、大変今のお話は共感するわけでありますので、くれぐれもよろしくお願いいたします。  なお、てきぱき進めればいいんじゃないということはまさにおっしゃるとおりで、政治改革などについても、とにかくやればいいということではなくて中身が大事なんでありますから、くれぐれも、そこら辺も閣僚の一人として御高配のほどをお願いいたします。  終わります。
  77. 臼井日出男

  78. 宮路和明

    宮路委員 私は、今回のソ連核廃棄物の海上投棄の問題に関連して若干の質疑をいたしたいと思いますが、最初に、まず事実関係からお尋ねしたいと思うのですが、今回のロシアによる海洋投棄はいつ行われ、そして日本外務省といいますか、外務省がそれを知ったのはいつ、いかなる方法でこれを承知したか、これは正確なところをまず教えていただきたい。
  79. 林暘

    ○林説明員 お答え申し上げます。  投棄の事実について公式に、正式に我々が承知いたしましたのは、十月十八日、ロシア外務省より在モスクワの日本大使館を通じて、その投棄の事実の確認をする連絡があった際でございます。投棄の内容、投棄の日時につきましては、十月十六日、日本海において九百立米の液体廃棄物投棄したということでございます。
  80. 宮路和明

    宮路委員 十八日の何時ですか。
  81. 林暘

    ○林説明員 我々が受けておりますのは、十二時であったと承知しています。
  82. 宮路和明

    宮路委員 先ほど、ロシアからIAEAには既に十月五日にファクスで通報がなされておる、そういう長官のお話もございましたですね。そのIAEAから日本へは全く連絡はなかったのでしょうか。
  83. 江田五月

    江田国務大臣 ありませんでした。
  84. 宮路和明

    宮路委員 我が国とIAEAとの関係はどういうふうになっておりますか。
  85. 林暘

    ○林説明員 我が国はIAEAの締約国でございます。
  86. 宮路和明

    宮路委員 調べたところによると、IAEAと我が国は大変密接な、締約国というそんな単純なことじゃなくて、日本は三十億円も年間IAEAに拠出をしている。世界第二位の、アメリカに次いで第二位の拠出国であって、圧倒的なウエートを持って重要なそういうポジションにあるわけですね。そのIAEAから、IAEAは事前に了知しておきながら、何ら日本に対して、こういう非常に致命的な重要性を持ったマターについての連絡もさっぱりと来ない。  外務省は、IAEAとの接触を保つためウィーンに代表部を設置しておる、そして絶えずIAEAとのコンタクトについては緊密な関係を持っておる、こういうぐあいに聞いておるのですが、その点どうですか。
  87. 林暘

    ○林説明員 御指摘のとおり、我が国はウィーンにあります国際機関に対する代表部を持っておりまして、その代表部がIAEAと日常の接触その他をしていることは事実でございます。  今の御指摘の、IAEAに通告があったのになぜ日本がその通告を受け取らなかったかということでございますが、我々事後的に、ロシア外務省が十月五日付でIAEAに事前通告を行ったという発表がございましたものですから、IAEAの方には照会をいたしました。その結果、御指摘のとおり、十月五日付で通報はIAEAに来ておりました。  IAEAがどうして日本を含む関係の国にその通報を流さなかったのかということについても、IAEAに照会をいたしました。IAEAの言いぶりは、海洋投棄関係国への通報については、ロンドン条約上、IMO、これは国際海事機関でございますけれども、国際海事機関が行うべきことになっておって、IAEAは通報の義務を負っていないということが第一でございます。第二は、そういうことがございましたので、ロシアからの通報内容についてIAEAとして技術的見地からの検証を行っていたというのが実情だそうでございまして、そういうことで我が方に対する通報がなかったということでございます。  これに対しては、我が方からIAEAに対して、そういう事情はあるにしても、これは極めて重要な情報であるということは当然わかるはずなので、こういうことが今後ないように、すなわち、こういう事前通告があった場合には早急に関係国に通報するようにということを申し入れでございます。
  88. 江田五月

    江田国務大臣 もう少しつけ加えて、私の方から。  なお、今委員指摘の財政的な関係についても、御指摘のように日本は重要な関係を持っておるということでございまして、IAEAのブリックス事務局長が先日来られましたので、もし必要ならその点つけ加えて御説明申し上げます。
  89. 宮路和明

    宮路委員 ちょっと外務省にお聞きしたいものですから。科学技術庁にはまた後ほどお聞きします、持ち時間がなくなってしまいますので。  今、そういうIAEAのまことに事務的な、機械的な回答を外務省の方からお聞きしたわけでありますけれども、まことにもってはかにされている。もう日本の社会だったら、我々の常識からいうと、そういうことは許されないことだと思うのですね。これほどこの海洋投棄の問題は、ことしの四月の白書の発表以来、国際的にも大変な問題になっている。そういう状況の中で、IAEAはとっくにわかっている、また、IAEAには日本から職員も派遣しておる。金だけじゃないですね、人も派遣してやっておる。そういうようなところから全くこういう情報が入ってこない。日本はIAEAからも、ロシアとの関係はまた後ほど申し上げたいと思うのですが、無視されている存在だ、こう言って私は過言ではないと思うのですが、どうですか。
  90. 林暘

    ○林説明員 先ほども申し上げましたとおり、IAEAというのはロンドン条約上のこういう関係での地位を与えられていない機関でございまして、IMOが関係国に対する通報を行うというこ とに条約上なっております。  それと、IAEAに対する通告の中に、先ほど江田長官からも御指摘がありましたように、IMOに対してもう通告をしているということが入っておりましたので、IAEAとしてはそれを前提に考えたのではないかというふうに我々は考えております。  そういう意味で、本件についてロシアの事前通告が日本に対してIAEAを通じて行われなかったということが、IAEAが日本を無視しているということでは必ずしもないというふうに我々は考えております。
  91. 宮路和明

    宮路委員 外務省は、いろいろと最近の外交情勢が多事多難をきわめているというようなことで、組織の改正、定員の増、いろいろやってきておりますね。局も情報局というのを新しくつくった、総合外交政策局みたいなものもつくった。いろいろと局もつくり、厳しい今日の行政改革の中で定員増は図るわ、組織は拡充するわ、いろいろやっているわけですけれども、さっぱりと、そうした対応というものは十年一日のごとくして全然進歩がない、向上がない、そういうようなのが私どもの率直な気持ちなんですね。先ほどから、グリーンピースとの比較において外務省の情報収集能力はまことにずさんそのものであるというような、そういう御指摘も各委員の先生方からあったわけでありますが、国際機関との関係においても、私は、まさに今回のこの事件によってその辺の能力が問われていると思う。  そして、先ほど何かIAEAに申し入れをしたというお話がありましたけれども、そんなことでは済まないと思うのですよ。もうちょっとからっとした対応をして、IAEAにこの問題について早急に会議を開かせるとか、そういったことはどうするのでしょうか。
  92. 林暘

    ○林説明員 先ほども申し上げましたように、ロンドン条約に基づきまして、低レベル放射性廃棄物海洋投棄する場合にはロンドン条約の事務局であるIMOに通告をすることになっておりまして、IMOが関係各国にそれの通告を流すというシステムになっております。  したがいまして、IAEAが情報を受け取りましたのは、ある意味では原子力関係をやっておる機関としてロシアがIAEAに通報したのだろうと思いますけれども、そういう関係で受けておりますので、我々としては、先ほど申し上げましたように、IAEAがそういうことであっても日本にその通告を流さなかったということについては非常に遺憾に思っておりますけれども、この件についてそういう形で、今先生御指摘のように会議を開くというようなことはいかがかというふうに我々は考えております。  他方、IMOの方についても、IMOは現在までのところロシアから通告を事前に受け取っていないということを言っておりまして、したがって、IMOはIMOの事務局長からロシア側に、なぜ通告が来ていないのかということの照会は行っているというふうに承知しております。
  93. 宮路和明

    宮路委員 どうもすっきりしたものを感じないわけでありますが、とにかくIAEAからもその程度の存在としてしか我が国が評価を受けていないといいましょうか、そういうことではないかと思うのですね。これは、先方がそうであるのは何も先方だけの責任ではないわけでありまして、こちらの方にも、外務省の姿勢にもいろいろと問題があるのではないか、こう私は思うわけであります。  それは、今度ロシアとの関係になっていくわけでありますが、先ほどもお話がありましたように、この間エリツィン大統領が訪日をされて、東京宣言も随分華々しく打ち出されたわけですね。東京宣言の中でこの問題をはっきりと、「周辺諸国の環境に与える影響の見地から、深刻な懸念を惹起していることを確認するとともにこということで、この海洋投棄が大変な問題であるということを双方が確認し合っているわけです。にもかかわらず、そしてまた、細川総理エリツィン大統領との会談の中において、この海洋投棄即時停止というか即時禁止というか、そのことも総理の方から訴えているわけですね。そうしたことにもかかわらず、もう二、三日たったらこんなことをやっておるわけであります。  ですから、全くこれは信頼関係、信義の関係というものを根底から覆すようなことですよね。そうだと思うのですよ。それに対して、ではその後、先ほど十八日の十三時に承知したというわけでありますけれども、外務省を中心とした政府対応はどうであったかというと、先ほど川島先生あるいは今村先生からも御指摘があったように、まことに手ぬるい、また遅い。  これは十九日の朝日の夕刊でありますが、十九日の朝日の夕刊を見ますと、十九日の閣議でこの問題が取り上げられて、閣僚からも不満が噴出した。そして、「「首相は国民にみえる措置をとるべきだ」と、毅然とした対応を求める意見が相次いだ。」こういうことが出ているのですね。まさにそのとおりだと思うのですね。総理がさしてエリツィンとこの話をして、そして二、三日後には総理のそうした発言を、あるいは要請を全く無視したことがなされたわけなんですから、本来ですと総理みずからが、外務大臣とかなんかではなくて、総理みずからがこの問題でエリツィンに対して抗議を申し込まなければならない、そういうものじゃないでしょうかね。  江田長官、もし、江田長官が相手の大臣とこの問題について話をしたのに、それが舌の根も乾くか乾かぬかのうちにもう全く言ったこととは逆なことをやっていた。私だったら、もう断固自分のカウンターパートにやりますよ。そういうことをしないで、何か二回目はやめてくれとか、今後日本側としての協力可能性検討する作業部会早期開催をやりましょうとか、その程度のことしか外務大臣から申し入れていないわけですね。この間話をしたそのことに対して、どうしてこういう信義違反というか信頼関係を損なうことをやるのだ、けしからぬじゃないかということが、まず総理の口からあってしかるべきだと私は思うのですよ。  その辺、どうでしょうかわ。まず江田長官、そして、後で外務省
  94. 江田五月

    江田国務大臣 閣議の席でということではなくて、閣僚懇談会でいろいろな話題にはなりましたが、これは閣僚懇談会のことですから、いろいろ御説明という種類のものではないと思っておりますが、まあいろいろな意見がございました。  確かに、きのうは約束していたのに、何だきょうはという、そういう気持ちを持ちたくなる、それはもうおっしゃるとおりのことだと思います。ただ、ロシアにおける政策決定の方法であるとか、あるいは行政各部にわたる監督がどういう体制になっているのかとか、そのあたりのことがどうも余りはっきりはしていないわけでして、エリツィンけしからぬ、こうエリツィン大統領に個人的に怒りをぶつけてみることが何かの事の解決になるものであるかどうかというところは、ひとつ冷静に考えていかなければいけないのだと思いますが、けしからぬ話であることは、これはもう、おっしゃるまでもなく私もそう思います。  そこで、とる対応でございますが、これは、いろいろ御不満もあるかと思いますけれども、科学技術庁としては、長官が本部長となっている放射能対策本部、これを最大限機敏に機能をさせたと思っておりまして、ひとつその点は御理解をいただきたい。それから、これから先の対応については、遺憾の意というものは、これは強く表明をしたところでございますが、遺憾の意の表明、怒りの表現というだけで事が前へ進むわけではないので、さらに一層、先ほどもちょっとお話ありましたが、感情、情緒だけでなくて、理性的な対応もとらなければいかぬと思っております。
  95. 林暘

    ○林説明員 ロシアによる投棄の事実が明らかになって以降、ロシア側に対してはいろいろなレベルで、極めて遺憾であるということを累次伝えてきております。  先ほど御指摘の、二十日未明の羽田大臣からコスイレフ外相に対する電話会談で第二回目の投棄 中止を強く求めたという点に関しては、その時点で第二回目の投棄が二十日にも行われるかもしれないという発言、報道が流れておりましたので、ぜひともこの二十日の第二回投棄をやめさせなければいけないということで、羽田大臣コスイレフ外務大臣をつかまえて電話をしたわけでございます。その羽田大臣コスイレフ外務大臣との電話会談が、中心が第二回目の投棄中止ということにあったということはそういう事情によるものでございます。
  96. 宮路和明

    宮路委員 何も感情の問題として相手に申し入れるということを言っているのじゃないのですよ。両トップによるそういう国際会議をやって、会談をやって、そしてああいうものも東京宣言として打ち出した後、そして、長官おっしゃったように、これから新しい日ロの時代を切り開いていこうという、そういうスタートを切ろうとした直後にこういうことをやっているわけですから、それは何も感情の問題として、しかもこれが国際法にも違反した海洋投棄であるわけですよね。全く違法な海洋投棄である。そういうことを平気でやっているわけですよ。それに対して、我が国としてまさに致命的な重要性を持つこの問題、それに対する対応としていかにも手ぬるい、甘いということを私は申し上げているのですよ。感情を守る観点からではなくて国益を守る観点から、そうした機敏な、また断固たる措置というのをとってしかるべきだ、こう思うわけであります。  外務省の姿勢が、この問題、非常に手ぬるいということを象徴するかのようなこともあるのですね。これは、十月十九日の同じ朝日の夕刊に、松永信雄政府代表が細川総理と官邸で会って、この問題で意見具申をしたというのですね。どう言ったかというと、かつて日本核廃棄物海洋投棄検討し、周辺国の反対でやめたことがある、日本もそういうことがあったのだ、だから、ロシアに対してけしからぬ、けしからぬと言うだけではいかぬのであって、海洋投棄をしないで済むように手伝うことはないかという観点から対策を考えなければならない。こういうまことに、言語道断といいましょうか、事態の認識を誤った、こういうことをやっていると思うのですが、その点どうでしょうかね、長官。
  97. 江田五月

    江田国務大臣 松永さんかどういう話をされたかというのは、私は新聞の報道しか存じていないわけでございますが、確かに松永さんおっしゃるとおり、これからどういうふうにしたらそれをやめさせることができるのかという観点からの物事の判断ということ、これは私は大切なことだと思っておりまして、松永さんの助言でしたか、そのこと自体が何かピント外れのことだというふうには思っておりません。
  98. 宮路和明

    宮路委員 ただ、先ほど来お話があったように、我が国海洋投棄のことは、これは国際条約に照らして適法なものである、ちゃんと許容された方法での投棄のことを考えて、まあ、周辺国の反対でやめた。そういう問題と、今度の全く国際法規を逸脱したその問題と、同じ次元で松永さんは押さえておるわけですね。まさにそういう認識に立ってこの問題の処理に当たろうという程度なのですよ。  それで、聞いてみたところ松永さんは、政府代表というのは何かと思ったら、対外経済担当だ、それで外務省の顧問もしておられて、外務省の大先輩らしいのですが、ここにも外務省のこの問題に対する認識の甘さ、また、その取り組みの緩さといいますか、そういうものが象徴的に私は出てきているんじゃないかと思うのですが、外務省どうでしょうか。
  99. 林暘

    ○林説明員 江田長官もお答えになりましたように、今回のロシア海洋投棄というのは、そのこと自体非常に遺憾なことでございまして、御指摘のように、ロンドン条約、その決議に違反する投棄だというふうに我々も考えております。  ただ他方、江田長官が言われましたように、今後どうするかということについては、第一義的にはロシアの自助努力によるものだというふうには思いますけれども、何か我々の方で協力する範囲があるのかどうか、協力をしたら海洋投棄をやめるということの実現が早く行われるのかどうかという観点の検討も必要だろうというふうには考えております。  なお、松永政府代表が、我々も報道で承知しているだけでございますけれども、外務省を代表してとか、外務省の意見をということで細川総理のところに行かれたのではないというふうに承知しております。
  100. 宮路和明

    宮路委員 そういったことで、この問題に対する我が国政府の取り組みが非常に手ぬるいという事例の一つとして、またもう一つ私は、先ほど放射能対策本部のことをおっしゃいました。その幹事会が、本部というものはなかなか開かれないで、実質幹事会ということで物事の処理に当たっているようですが、この辺の運営は、長官、どうなっておられますか。
  101. 江田五月

    江田国務大臣 幹事会というものは、私は本部長ということでございまして、本部長のもとに対策本部があるわけですが、実際に物事を動かしていくという観点から幹事会というものが別にあって、これが機動的にいろいろ動いておる。今回の場合でいえば十九日に幹事会が持たれて、そこで二十日海上保安庁の明洋出航、その他のものが十九日に決められた。なおその前、十八日だったかな、幹事会を持つについての事務的な打ち合わせもすぐに担当者によって持たれておって、機動的に動いていると思っております。
  102. 宮路和明

    宮路委員 この点、私もちょっと調べてみたんですが、幹事会というのは何か関係省庁の課長クラスで構成しているというのですけれども、その構成状況、それから、その会議がどういう人たちが出席して運営されているかというところを調べてみたところ、外務省はその幹事会に総合外交政策局ですか、そこの軍縮課長というのが構成員になっておるわけですね。ところが、実際軍縮課長が出ているかというとそうじゃなくて、出ているのは、もうその都度その都度入れかわり立ちかわり別なところが出ておって、軍縮課が出ているわけでもない。この問題の所管は、科学原子力課ですかがこの海洋投棄の問題は外務省では当たるということらしいんですけれども、そこは構成メンバーになってない。それで、あるときの会合には出ていることもあるけれども、絶えず出ているわけじゃなくて、ロシア課が出たり経済局の海洋課が出たり、それも担当者が出ているというようなことで、この問題に対する取り組みが本当に外務省として一生懸命やっているという、そういう印象というのは全く受けないわけですね。そして、こういう構成も科学技術庁の全く下のレベルで、適当に何かこの会議も開かれているということで、トップまで物事が上げられてきちっとした対応がされている、本当に各省庁とにかく渾身の努力を傾けてこれに取り組んでいるという様子がさっぱりうかがえない、こういう状況だと思うのですよ、間違いなく。  だから、そういう中から外務省のこの問題に対する対応も、先ほど松永さんの話も出しましたけれども、まことに認識がもう狂っている、こういうことではないかと思うんですね。この点、どうですか。
  103. 江田五月

    江田国務大臣 せっかくの御注意ですので受けとめておきたいと思うんでございますが、その前に、先ほど私十九日と言いましたが、幹事会をやったのは二十日ですので、この点訂正をさせていただきます。  幹事会の構成員については、変更の際、対策本部の幹事会にそれぞれ付議して、そこの構成員の了解で構成員の変更を行っているということでございます。確かに、今のところ本部構成員は、外務省については幹事会の構成員については軍縮課長ということなんですけれども、これは実際のところはちょっと古うございまして、空中からの放射性物質の降下、これがずっと問題だったものですから軍縮課長ということになっておるんですが、今現に今回問題になっているのは海洋投棄ですので、そこで原子力課長が出てきて実際の話をした。幹事会というものをより機動的に動かすた めには、そういうより適材の人が来ていただいて話をした方がよりいい会議ができるということで今回やったということでございまして、私がそのときに交代を本部長として知っていたというわけではありませんが、しかし、機動的に動いているということについては私は何の疑念も持っておりませんで、後からちゃんとその点は私の方に了知されることになっていると皆さん認識していたものと思っております。  つけ加えることが何かあれば、外務省の方からお答えいただきましょう。
  104. 林暘

    ○林説明員 今、江田長官の方から御答弁がございましたけれども、軍縮課長というのは核実験関係の担当をしておりますので一応幹事会のメンバーになっておりましたが、海洋投棄の問題につきましては原子力課が担当をいたしておりますし、ロンドン条約については海洋課が担当しているという関係がございまして、その都度の議題に応じて専門のところが出ているというのが現状でございます。
  105. 宮路和明

    宮路委員 もう時間が参ったわけでありますが、今そういうお話がございましたけれども、要するに、世の中が変わっているのに組織の方はさっぱり変えてない。そしてまた、今その都度その都度弾力的に対応していると言っていますけれども、出席者のメンバーの顔ぶれなんかを見てみたら、全く、おっしゃるようなそういう趣旨に合致して本当に命がけでこの問題に取り組んでいくぞというような、そういうメンバーでもない。これは率直に言ってそうだと思います。  いずれにしても、この問題、しかも相手国がロシアという大変な相手でありますから、我が国に与える影響というのは極めて致命的と言ってもいいぐらい大きな影響を与える問題でもあるわけであります。ですから、その辺を十分認識していただいて、これを貴重な体験といいますか反省材料として大いに体制の抜本的強化もやっていただきたいし、また、こうした事態を再び迎えたならば、それこそ先ほど申し上げたように、事の重要性を認識して断固たる外交措置も含めてとっていただくような、そういう姿勢でぜひ臨んでいただきたい。そうでないと国民の不信なり不安というものは解消しないし、また、我が国の国益もこれは守れない、このように思うわけでありますから、その点を強く要請をいたしまして、私の質問を終えさせていただきます。  ありがとうございました。
  106. 臼井日出男

  107. 尾身幸次

    尾身委員 最初に、今回ロシア海洋投棄をいたしました低レベル放射性廃棄物の発生源というものがどういうものであったかについてお伺いをいたします。
  108. 江田五月

    江田国務大臣 発生源は、ロシア政府からは、ロシア海洋投棄を行っている液体放射性廃棄物はすべて低レベルである、原子力潜水艦等の修理や原子炉の交換等の際に発生するもののほか、原子炉の冷却水等が主な発生源であるというふうに説明を受けております。
  109. 尾身幸次

    尾身委員 原子炉というのは原子力発電所も含むかどうか、お伺いします。つまり、原子力潜水艦のものなのか原子力発電所のものなのかということを私は聞いているわけで、原子炉関係から出てきたことは間違いないと思うのでありますけれども。
  110. 笹谷勇

    笹谷政府委員 ただいま大臣からお答えしたとおりでございますが、私が承知している限り、原子力発電所から出た廃棄物はこれに含まれないと思っております。
  111. 尾身幸次

    尾身委員 そうすると、いわゆる今の低レベル廃棄物海洋投棄されたものは、大部分が原子力潜水艦関係のものであるというふうに理解してよろしいわけですね。
  112. 江田五月

    江田国務大臣 そういうことだと思います。
  113. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、私どもも大分いろいろな意味で意見を申し上げたのでありますが、その結果として第二回の廃棄中止をされたわけであります。その中止をされたもの、つまり最初に予定されていた、第一回と第二回に分かれているわけでありますが、その中止をされていたものというのは、投棄をする予定であったものはどんなものであったか、中身についてお伺いします。
  114. 笹谷勇

    笹谷政府委員 お答えいたします。  IAEAの通知によりますと、低レベル放射性廃棄物海洋処分いたします、それを二度に分けて投棄するという内容になっております。第一回目も二回目も、ほぼ、濃度それから量的にも、それぞれ九百立方メーター、二回目が八百立方メーターということで承知しております。
  115. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、とにかく第二回の廃棄中止をされたわけでありますが、ロシア側は、聞くところによりますと、この廃棄は二回目は中止したけれども、さらにいわゆる低レベル廃棄をすべきものがどんどんたまるということを言っていると思いますし、これが事実だと思います。  その点について、ただ中止をしたらそれでいいというものではありません。それについて、一体日本政府は、今後低レベル廃棄物海洋投棄をしないようにということを言うだけで済むのかどうか。現実的な解決策としては、低レベル放射性廃棄物がたまるものはたまるわけでありますから、その点について日本政府としてどういう対応をお考えなのか、お伺いをしたいと思います。
  116. 江田五月

    江田国務大臣 最初ロシアの方は、一九九七年か九八年ごろまではこれはやらなければどうしようもないのだ、こんなことを言っていたわけですね。しかし、我が方の強い抗議及び要請を受けて、二度目の投棄中止をした。中止をしたけれども、中止でこれからずっともうこれで断念ということになるかというと、そうは言っていないわけで、今後、今のままでいけば一年半くらいは大丈夫だけれども、その後はまたやることにならざるを得ないという、そういうこともどうも言ってきているということでございまして、海洋投棄を本当に断念をさせるというためには、これは今の、中止を求めて中止ができた、さあよかったというだけでは済まないということでございます。  国際的合意あるいは我が国国民懸念、こういうものを考えたら、再びこういう海洋投棄をせざるを得ないような状況にならないように、これは第一次的にはロシアが考えることでございますが、我が国としてもそういう努力をしなければならぬ。外交的な努力もあるでしょう、技術的な支援もあるでしょう。財政ということがどうなるのか、いろいろなことをこれから考えていかなければならないわけですが、ロシア側とそういうことまで含めて交渉をしていきたいし、我が国としてどういう技術的な支援可能性があるのかは、既にもう検討を始めているということでございます。  技術的な可能性について、もし必要なら詳しく説明させます。
  117. 尾身幸次

    尾身委員 先ほど、今もおっしゃいましたが、大臣は、外交的はもちろんでありますが、技術的かつ財政的な支援をしなければならないということを、我が同僚議員の質問に対するお答えでされました。その両方について、どういう内容をお考えになっているか、御質問をさせていただきます。
  118. 江田五月

    江田国務大臣 技術的なことについては、私は技術屋じゃないので余り詳しいことはわかりません。蒸発をさせて量を減らすとか、運搬の方法とか、いろいろあるようですが、それは後から答えさせることにして、財政的なことは、しなければならぬと答えたわけではないので、そういうことも含めて検討をすることになるであろう。既に、ロシア核兵器解体に伴ういろいろな技術支援や何かについて一億ドルということもあるわけですから、そういうものとの関連でどうなるか、これはこれから詰めていく話でございます。  技術的なことについては、政府委員から答弁させます。
  119. 石田寛人

    ○石田政府委員 技術的な側面につきまして、一言お答え申し上げます。  液体放射性廃棄物の暫定的な処理でございますけれども、これにつきましては、御承知のように、放射能の部分と水を分けるということが非常 に基本的に大事なことでございます。そのためには、例えば液体の放射性廃棄物をイオン交換樹脂を通すことによりまして放射能を取り除くという方法もございます。それから、今大臣がお触れになりましたように、液体の放射性廃棄物を蒸発乾固あるいは蒸発濃縮、いわゆる煮詰めるということでございましょうか、というふうにして分けるということもございます。  ただ、今お話のありましたように、一年半という数字もあるわけでございますけれども、こういうものを比較的速やかに行う必要もあろうということもあるわけでございます。そういうタイミングをにらみながら、例えば可搬性の、すなわち持ち運びのできるようなそういう設備を持っていくことはどうだろうかということもございますし、それまで時間がもしも余りないとするならば、例えば暫定的な貯蔵施設、これまた例えば船舶によりまして一時貯蔵するということも考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、そういうことをいろいろ取りまぜまして、私ども技術的に検討をさせていただいているところでございます。
  120. 尾身幸次

    尾身委員 最初に伺いましたら、今の低レベル放射性廃棄物原子力潜水艦から出てきたものであるというお話がございました。そして、この問題を解決するためには、技術的、財政的支援検討しなければならないというお話がございました。そしてさらに、先ほどのお話の中では、原子力発電所の関係は余り含まれていないようだという話がありました。そうすると、ロシアがしている海洋投棄を現実的にやめさせるためには、ロシア原子力潜水艦の運航によって出てくるものを日本が技術的、財政的支援をしてやる、そしてそれを処理処分をする手伝いをする、こういうことになるのではないかと思うのでありますが、その点について、大臣のお考えと外務省のお考えをお伺いさせていただきます。
  121. 江田五月

    江田国務大臣 そこが非常に微妙なところだと思いますね。原子力潜水艦原子炉、そこから出てくる液体廃棄物、この処理を手伝うということによって、日本ロシアの軍事支出の一部分を技術的にあるいは財政的に協力をしていくというような形に仮になるとするならば、これはロシアに対する軍事支援というようなことにもなりかねないというようなこともありますから、そうしたことは、これは日本国民的立場あるいは国の立場としてやっていいこととは違うと思うのですね。そこで、そのあたりの協力のあり方については、積極性を持つと同時に、どういう枠組みでやるのか、これをいろいろ知恵を絞らなければいけないところだと思っております。  なお、外務省の方からも答弁お願いします。
  122. 林暘

    ○林説明員 御指摘のとおり、我が方がロシアに対して協力することが、いわゆる軍事協力ないしはロシア軍備増強につながるというようなことになってはならないということは御指摘のとおりでございまして、そういうことにならないような形での協力というものをロシア側とも協議しながら考えていきたいというふうに、我々としては思っております。
  123. 尾身幸次

    尾身委員 この問題は大変難しい問題でありまして、現実問題として低レベル放射性廃棄物海洋投棄をやめさせなければならないという要請が一方でありながら、しかし、実際に低レベル放射性廃棄物を出している主体は原子力潜水艦であるという実態があるわけでありまして、これをどう調整するかというのは非常に難しい問題であります。しかし、日本の立場、平和国家としてへ日本の立場をきちっと守りながら、この点については我々も見守ってまいりたいと思いますが、本末転倒のないように、ぜひお願いをしたいと思います。大変難しい問題でありますので、これからのいろいろな形での検討課題に、この点はゆだねたいと思っております。  そこでもう一つは、放射能対策本部で、先日、海洋投棄をしたところまで行って調査をする、そしてその安全性確認をする、そのために海上保安庁とかいろいろな機関から船舶を派遣をするということを決定したというふうに聞いているわけでありますが、どういう方式でやるか、その点について簡単に御説明を願います。
  124. 江田五月

    江田国務大臣 これは先ほど、前の委員の質問の際にちょっと御説明しましたが、二十日に放射能対策本部幹事会を開いて、本件投棄影響調査のために、海上保安庁、気象庁、水産庁による海水の採取、分析等、我が国独自の調査実施を決定をし、具体的には、海上保安庁が測量船の明洋ほか四隻、気象庁は既に出航して海洋気象観測に向かっていった清風丸に海水採取等を実施するように指示、さらに、水産庁は調査船陽光丸を十一月上、中旬に派遣をして魚やプランクトンを採取するという、そういうような方式になっているわけでございます。
  125. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、この調査船は投棄地点から二百海里離れた海域調査までをするのだ、さらに現場までは行けないのだというようなことで考えておられるようでありますが、しかし、海洋投棄をした現場から二百海里離れてそこで調査をするということではなしに、むしろ投棄の現場までも行って、その周辺も含めて、その現地も含めてくまなく調査をすることが実態把握のためには私は必要だと思うわけであります。  今までいろいろなこの種の問題が起こってきたときに、日本の船が公海の中で行けるところまでしか行ってないという実情はありますが、今、かつての日本ロシア関係と違いまして新しい関係になってきた以上、私は現場まで行って調査をすることができるはずであるというふうに考えておりますが、本部長としての長官の御意見を承りたいと思います。
  126. 江田五月

    江田国務大臣 おっしゃるとおり、これまでは投棄の現場にまではなかなか行けない、投棄海域までは行けないというので、日本海の場合ですとちょうど半分ぐらいのところに線を引いて、そこから日本側のところをたくさん地点を定めて調査をしたということだったわけですね。  投棄海域まで行って採取をしてくれば、それはそれでさらに精密な調査になるということはおっしゃるとおりでございまして、そこで、今までのところでは、これはロシア日本とが共同でやるということでなければいろいろな外交上の難しい問題が起きてきたりしますので、共同調査をしましょうということで共同調査の段取りを進めている。これが今度、十一月の十日、十一日に作業部会をやるということなのでございます。  しかし、それだけでいいのか。せっかく日ロの新しい関係ということになってきたのだから、その関係を踏まえて、日本側の独自の調査ソ連側の了解もきっちり得て投棄海域でやれるようにしてはどうかというお話もございますし、私も、そういうことができればそれはそれにこしたことはないし、こしたことがなければそれはそのために努力をすべきものだと思いまして、そういう調査をやらせろということを、今、外交ルートを通じてロシア側申し入れをしようとしているというところでございます。
  127. 尾身幸次

    尾身委員 ちょっと大臣、御答弁の中身を確認をしたいのですが、放射能対策本部としては、今のこの日ロ関係から見て、私は少なくとも調査船が日本から出ていく以上は、そして、かつ、ロシアの発表によれば投棄をした場所もわかっている以上、当然その地点まで行って調査をするように、当然今までロシア側申し入れていてもおかしくないはずだと思うのであります。  ですから、しようとしているというような御答弁でありましたが、それはどういう状況になっているのか。全然申し入れてないのか、申し入れてあるのか、放射能対策本部としてはどういうお考えなのか、その点についてもう一遍お答えをお願いします。
  128. 江田五月

    江田国務大臣 これはおっしゃるとおり、そういう申し入れをすべきだということで、申し入れを今しようとしているところなんですが、具体的にどこまで手続が今進んでいるかというのは、外務省の方から答弁をしてもらいます。
  129. 尾身幸次

    尾身委員 じゃ、外務省からその点について。
  130. 林暘

    ○林説明員 御指摘のとおり、当該投棄場所ロシアの二百海里の経済水域の中にございまして、我々としては当然にその二百海里を認めているわけではございませんけれども、そこに政府の船が入ることについては、何らロシア側との了解なしに入りますと不測の事態が起こり得るということがございますので、今回の件につきましては、本部の方からも当該水域に入りたいという御要請がありましたので、現在外交ルートを通じてロシア側にその通報を行っております。既に行いました。
  131. 尾身幸次

    尾身委員 それでは、これは実は一昨日の自民党の議論の中で、科学技術部会が開かれたときに、当該水域に行くべきではないかという議論がございまして、その中で、科学技術庁にもその要請をし、科学技術庁から外務省経由で、現地まで調査船を行かせて調査をするという方向に転換をしたというふうに私は理解をしておりますが、そういう方向に、最初は二百海里離れたところまでしか行かないという方針を決めたのを今初めて正式の席でお伺いをいたしましたが、現場まで行くように、行って調査をするようにロシア側に正式の外交ルート申し入れたというふうに、転換をして申し入れたというふうに私は理解をいたしましたが、それでよろしゅうございましょうか。
  132. 江田五月

    江田国務大臣 自民党の皆さんの御努力を大変高く評価をしたいと思います。そのとおりでございます。
  133. 林暘

    ○林説明員 科学技術庁の方から、投棄場所にも調査船を入れたいという御要請を受けまして、昨日、外交ルートを通じてロシア側に通報を行ったところでございます。
  134. 尾身幸次

    尾身委員 今のお話を聞いて、私は、それが当然最初の段階からとるべき措置だったというふうに思いますが、正式に外務省から申し入れた以上、事柄の性格から見て、少なくとも友好関係にあると言われている日本ロシア関係から見て、ロシア側がこれを断る理由はないと私は考えておりますので、しっかりとした外交ルートでの話し合いをして、ぜひこれが実現をされるように、外務省としても全力で努力をしていただくように要請をいたします。  それからもう一つ、先ほどの宮路委員の質問に対する補足質問でありますが、この海洋投棄を行う前、事前にロシアはIAEAには通告をしたけれども、IMOには通告をしなかったというふうな話がございましたが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか、もう一遍質問しておきます。
  135. 林暘

    ○林説明員 そのとおりでございます。  我々の方からⅠMOの事務局に照会いたしましたところ、ロシアから通報は来ていないということで、それを踏まえまして、十月十九日付でロンドン条約の事務局の、ナウケと発言するのだろうと思いますが、ナウケさんからロシアあてに、通報が来てないけれども通報する必要があるという書簡が発出されております。
  136. 尾身幸次

    尾身委員 これは実は、事前通報というのは大変に大事なことでありまして、そのIMOの事務局長から手紙を一本当したらそれで済むというものではございません。当事国の日本としては、しかるべきできるだけ早い機会にⅠMOの、あるいはロンドン条約のメンバーの正式の会議の席で、こういう事前通報がなかったのは極めて遺憾であるし、ロンドン条約に違反しているのだからこの点は厳に守るように、きちっとしたロンドン条約会議で、国際会議の席でそういうことの再確認をすべきだと思いますが、その点について外務省方針伺います。
  137. 林暘

    ○林説明員 ロンドン条約締約国会議が、来月、ロンドンで開催される予定になっております。その際、海洋投棄の問題についても当然大きな議題になるということが予想されておりますので、その会議の場で、本件についても議論をしたいというふうに思っております。
  138. 尾身幸次

    尾身委員 それから、先ほどからお話に出ております、これからの日本の低レベル放射性廃棄物海洋投棄の問題でありますが、今後どうするつもりかについて、簡単に大臣からもう一言お願いします。
  139. 江田五月

    江田国務大臣 簡単に申し上げますと、科学技術的見地のみからいえば、低レベル放射性廃棄物をIAEAの基準にのっとって海洋投棄をすることは、安全上は問題がないと認識をしておる。しかし、科学技術だけのことで物事を決めるわけにいかないので、ロンドン条約締約国会議全面禁止という方向が出てくれば、そのときにどういう態度をとるか。これは、全面禁止という方向性で関係各機関の調整を進めていくということでございます。
  140. 尾身幸次

    尾身委員 もう一つ質問させていただきたいのですが、今回のロシア海洋投棄は、今大臣が言われた科学技術的見地から見て、IAEAの基準での投棄は安全上問題がないというふうにおっしゃいましたが、今回のロシア投棄はIAEAの基準に合っていて安全上問題ないというふうに判断をされるのか、それに抵触しているというふうに判断をされるのか、その点はいかがでしょうか。
  141. 江田五月

    江田国務大臣 安全上どうであるかというのは、これは調査をしてみなければわからないことでありますが、IAEAの基準に合致しているということについて言えば、基準に合致していないと私どもは判断をしております。  どういう基準かという細かなところは必要なら答弁させますが、まず、非密封、密封をしていない液体放射性廃棄物でございまして、まずその点だけをとってみても、これは明らかに基準に抵触をしておると考えております。
  142. 尾身幸次

    尾身委員 それから、日本の将来の低レベル放射性廃棄物投棄問題につきまして、全面禁止全面禁止というお話大臣はされておりますが、ロンドン条約では、すべて一時停止をするという表現になっているわけであります。ですから、すべてという言葉は、私、全面禁止という、全面という単語に置きかえてもいいのではないかと思いますが、いろんな科学的知見とか何かがはっきりするまで、一時すべて停止をするということに同意をしたというのが私はロンドン条約の本旨であるというふうに理解をしておりますが、この点について外務省からちょっと、それでいいかどうか、御意見を伺います。
  143. 林暘

    ○林説明員 現在、ロンドン条約に基づきます決議で、一時自粛がなされております。この自粛決議は二度にわたってなされておりまして、八三年と八五年の二回にわたってなされております。  八五年、現在有効な決議につきましては、その前回の決議以降、科学的な部分についての調査研究の結果が出たことを踏まえて、社会的、法律的、経済的に廃棄をどうするかという調査研究が出るまで、一時全面的に自粛するということになっております。
  144. 尾身幸次

    尾身委員 そこで、大臣全面禁止と言われますが、ロンドン条約の趣旨は、いろんな科学的知見、研究等がまだ完全に進んでいない現状にかんがみ、全面的に一時中止をするということになっているわけであります。ですから、その点については、私は今のロンドン条約の趣旨については賛成であります。まだまだこれからいろんな社会的、科学的、技術的状況が変わってくると思いますし、科学技術の進歩もあると思います。  したがいまして、この問題については、さっき同僚の森委員からも質問がございましたが、永久に全面禁止をするというふうに受け取られかねないような表現を、大臣、先ほどからとっておられますが、その点については、私は、安全性の確保を最優先としながらも、原子力開発を順調に進めていくという世界人類的な要請もありますので、その辺を十分踏まえながら対応していただきたいというふうに要望いたしまして、この点についての大臣のお答えを最後にいただきまして、質問を終わらせていただきます。
  145. 江田五月

    江田国務大臣 今外務省の方からも答弁ありましたとおり、これまでのところ、ロンドン条約の締約国協議会議というんですか、ここでは二度にわたってモラトリアム決議がなされておる。それ は、すべてであるが一時であるということで、それが今現在のところですね。  それで、これからその全面禁止ということが議題になってくるであろう今度の……(尾身委員「全面とすべてと同じなんですか、違うんですか」と呼ぶ)それはそのときに、だから十一月の締約国会議でどういう議題になってくるかということはまだ決まっているわけではありませんので、何とも今この段階で言えることではないと思いますけれども、一時ということでなくて全面的ですから、これから先もずっと禁止という、全面停止ではなくて、モラトリアムではなくて、全面禁止ということが話題になってくることは考えられる。  そこで、私がさっき申し上げたのは、科学技術的にこれは安全であるというのも一つの政策判断ですが、科学技術的だけではなくて、ほかに、海というものの人類にとっての意味合いを考えて、やはりそういうところにこういうものを投棄をするということはやめようという、そういう政策判断もあるであろう。日本としては全面禁止という方向性を持って今調整中だということでございますが、おっしゃるように、技術進歩というものはこれからまだまだ進んでいくわけですから、そうすると、また事態が変わればそれは将来にわたってどういう変化があるか、これはいろいろな可能性は今後ともあると思います。
  146. 尾身幸次

    尾身委員 済みません、大臣の御答弁、ちょっと納得しかねる点がございますが、時間がございませんので、後でまた追加の質問をさせていただきます。  ありがとうございました。
  147. 臼井日出男

    臼井委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十二分開議
  148. 臼井日出男

    臼井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田清司君。
  149. 上田清司

    上田(清)委員 まず、ロシアによる放射性廃棄物海洋投棄のとりあえずの中止に対する科学技術庁外務省を初めとする関係省庁、関係者の御努力を正しく評価したいと思います。特に、羽田、コスイレフ両外務大臣の電話会談がもし大きな契機になったということであれば、念押しのために、ぜひ細川総理エリツィン大統領との電話会談あたりで、東京宣言も踏まえて、ぜひきつく、今後こういうことがないように、念押しのための電話会談を江田長官の方から催促されてはいかがかなと思いますが、いかがでしょうか。
  150. 江田五月

    江田国務大臣 これは総理のおやりになる、おやりになるといいますか、総理のことでございますから、私がどういうふうに申し上げていいのかよくわかりませんが、私の立場としてはまた私のカウンターパートはおられますので、これは原子力大臣がきょうお見えですので、ぜひ念押しだけでなくていろいろな話をやりたい、したいと思っております。
  151. 上田清司

    上田(清)委員 若干、既に通告しました質問の要旨とは違ってまいりますが、自民党の宮路議員の御指摘もありましたように、国際原子力機関から日本に通告がなかった、しかし、この国際原子力機関からIMOの方には通告があったというようなお話も承っておりますが、これはなかったのでしょうか。
  152. 江田五月

    江田国務大臣 ロシアからIAEA、国際原子力機関に対して通報があった。その通報には、IMOにも同様通報するというふうに書いてあって、IMOにも通報をされているものと思っていたのですが、どうも事実は違うようだというので確認をしてみたら、IMOの方には通報がなかった。これは外務省の方に必要ならお答えいただきたいと思いますが、条約上は、IMOには通報の義務があるがIAEAにはそういう義務はないということです。
  153. 上田清司

    上田(清)委員 IMOに国際原子力機関の方から連絡がなかったということで、結果的には日本に事前の連絡がなかったがゆえに、大変、日本政府としてあるいは日本国民として驚きの中に今回の事態を迎えたわけでございますが、これをやむを得ないというふうに考えることと、何らかの形で、今後こういうことを事前に察知しながら対応をとることが可能になるような仕組みをつくることができるかどうかということについて、長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  154. 江田五月

    江田国務大臣 IAEAからIMOへ通知がなかったというのは、恐らく、IAEAへの通知にIMOにも同じものを通知をするというふうに書いてあるから、当然行っているものと思っていたということなのであろうと、これは推測ですが。ロシアのそういう行政事務の処理の体制が一体どうなっておるのかということはつまびらかにはちょっとしないのでわかりませんけれども、まずロシアがそういうことはしっかりとひとつやっていただかなければいかぬということだと思うのですね。  これはロシアの方には、そのことはもちろん私ども政府としても強く要請をしておかなければならぬことだと思いますが、さらにIAEAについては、これは先日ブリックス事務局長が来日されました。この件とちょうどぴたりタイミングが合って来日をされたのですが、別にこの件があったからというわけではなくて、たまたま偶然時期が重なっただけなのですが、まあいい機会ですので、私の方でブリックスさんに、こういうことについては大体こんな事態になっておるから、だからあの条約上の義務とかなんとかということでなくて、日本の方は大変強い関心を持っているわけだから、IAEAがそういう件について知っていることがあれば、隔意なくいつでもどんどん連絡をしてくれるような、そんな体制をとっておいてくださいよとお願いをいたしました。  ブリックスさんの方は、わかりました、と。今後、まずIMOに通知をされ、そこから関係国に伝達をされるべきものと考えていたけれども、内容に応じて、IMOとともに関係国に伝達するように配慮していきたい、そういう答えをいただいております。  さらに進んで、条約上、その辺の情報あるいはその連絡、これをどういうふうにきっちりしたものにしていかなければいけないか、このあたりについても検討したいと思いますが、これは今後の検討課題だと思います。
  155. 上田清司

    上田(清)委員 検討課題の具体的なイメージというのはございますか。
  156. 江田五月

    江田国務大臣 外交関係のことですから、私ども科学技術庁の方からあれこれと言うのもちょっと差し出がましいかとも思いますが、もし、何か外務省の方であれば答えてください。
  157. 林暘

    ○林説明員 まさに今、江田長官からも御説明がありましたように、本来これはIMOに通知が行くべきものであって、IMOに通知が行けば関係国に流れるシステムにはなっていたわけでございます。  ロシア側の体制がどういうことであったかわかりませんけれども、非常に残念ながらⅠMOに連絡が行かなかったということでございますが、ロシア側が事前に通報するという意図はIAEAに通報が行っていたということでも明らかでございますので、ロシア側が間違いのないルートで通報をする、今後こういうことが起こることが我々としてはないようにということで言っておりますけれども、ロシア側がそのIMOというルートを通じてくれさえすれば、事前に我が方にも連絡があったというふうに考えておりますので、この海洋投棄というものが今後あってはならないということではありますが、それとともに、ロシア側もルートを間違えないようにということは申し入れたいと思っております。
  158. 上田清司

    上田(清)委員 わかりました。外務省側の立場としてはよくわかりましたが、先ほどの宮路議員の指摘の部分、代表部がいながら、あるいは国際原子力機関に人とお金を投じながら、いま一つコミュニケーションが悪いのではないかという部分 に関しては、ぜひ今後の外務省の御努力をお願いしたいなということを御要望したいと思います。  次に、関連して、今回の投棄のみならず、本年、一九九三年の四月にロシア連邦大統領府から出された報告書が出るまで、ロシアにおける放射性廃棄物海洋投棄というのが把握できなかったのかということについてお尋ねしたいと思います。
  159. 林暘

    ○林説明員 白書が発表される前、旧ソ連の時代に、ソ連海洋投棄をやっているのじゃないかというようなうわさが流れていたことは承知しておりますけれども、正確には我々承知しておりませんでした。
  160. 上田清司

    上田(清)委員 わかりました。  それで、これを江田長官に伺いたいのですが、感性、感覚で恐縮ですが、とりあえず第二回目の中止の御努力を評価すると同時に、ともすればまだまだやりそうだというのが、私個人的に感じるものですが、長官としてはいかがでございますか。
  161. 江田五月

    江田国務大臣 さあ、どんな感じか、こうなりますと難しいですが、第一回、第二回を含めてこれだけやりますということをIAEAに通知をしていて、そして第一回をやり、その後私どもの方で遺憾の意の表明、中止の要請などをいたしまして、それを受けて政策決定として中止という措置をとった。しかも、九七年、九八年ごろまでは続けざるを得ないと言っておったのを、とりあえず一年半ぐらいはやらずに善後策を考える、こういうことを言っているわけですから、私は、とりあえずはやめたけれどもまたすぐ垂れ流しを始めるのじゃないかという感覚は、別に持っておりません。  むしろロシアとしても、今般のエリツィン・細川首脳会談以来始まろうとしている新しい日ロ関係、これを大切にしていきたいという気持ちは持っておるだろうし、もしここで中止をすぐやめてまた垂れ流しをするようなことになれば、そういう新しい関係というものが根底から壊されてしまうということは当然わかっているはずですから、感覚としては、むしろそういうものはないだろう、ないという事態を踏まえて日本としてこれからどういう協力ができるか、これを真剣に考えていくことによって、とりあえず中断しておるものを、最終的にああいう海洋投棄の方法というのをやめていただくように努力をしていけばいいと思っております。
  162. 上田清司

    上田(清)委員 先ほど江田長官は、川島議員の質問に答える形の中で、ロシア海洋投棄を断念させるには、放射性廃棄物処理について技術的な支援が必要ではないのかというようなお考えを述べられましたが、確認したいと思いますが、そのとおりですか。
  163. 江田五月

    江田国務大臣 第一義的には、ロシアが自分で出している廃棄物ですから、それは自分が処理するというのは当たり前の話です。その努力ロシア側に求めたいと思います。  しかし、現実に今のロシアがどういう状態にあるかということは、これは我々もよく知っているわけでございまして、国際社会全体で、ロシアの市場経済の移行とか民主化の努力とか、こういうものを支援していこうとしているところですから、そういう努力と相まって、日本としていろいろな技術的な支援その他をやっていくことが必要だと思っております。
  164. 上田清司

    上田(清)委員 一部の新聞報道にありましたが、東京宣言を受けた形の中での今回の事件は、日本の経済的支援やあるいは技術的支援ロシアが有利に引き出すために、あるいは嫌がらせをしたのではないか、こんなお話もありますが、長官としては率直にどういうふうにお考えになられるか。
  165. 江田五月

    江田国務大臣 どういいますか、読み物としてはそういうものは大変おもしろいストーリーになるかと思いますが、私どもはそこまで深読みをせずにロシアと交渉をしていきたいと思います。
  166. 上田清司

    上田(清)委員 外務省も何かあれば。いいですか。
  167. 林暘

    ○林説明員 江田長官が今まさにお答えになったとおりでございまして、我々として、ロシア側がそういう意図のもとに今回の海洋投棄を行ったというようには考えておりません。
  168. 上田清司

    上田(清)委員 正式な肩書はわかりませんが、これは海軍の船の責任者ですか、お名前もちょっと忘れましたけれども、インタビューに答える形の中で、今回断念したけれども再度挑戦するといってはおかしいのですが、やめるつもりはないというような、これはちょっと私も正確な、テレビのインタビューを確認しておりませんけれども見たことは事実で、そのニュアンスが伝わりましたので、正確でなかったら御指摘をいただきたいのですが、もし正確であれば、ソ連外務省レベルあるいはエリツィン大統領レベルと違った海軍の部分的な責任者の部分においてそういう意図がかなりまだあるとすれば、これはやはりもう少し考えなければいけないのじゃないかなというふうに危惧をしておりますけれども、いかがでしょう。
  169. 江田五月

    江田国務大臣 それはテレビでしょうか。私はそのテレビの放映を見ておりませんが、そういうテレビの放映があったようですね。遺憾なことだと思いますけれども、どこの国でもいろいろな人がいましていろいろなことを言いますから。  ただ、私どもは政府としてこの液体放射性廃棄物海洋投棄問題に対処しており、ロシアの方も政府として公式に我が方に説明をしたり対応、協議をしようとしたりしているわけでございますから、そこが公式の責任ある窓口同士の話だというふうに理解をしていただきたいと思います。
  170. 上田清司

    上田(清)委員 わかりました。  次にお尋ねをしたいのですが、来月十一月八日に開催が予定されておりますいわゆるロンドン条約締約国会議で、現在日本は低レベル放射性物質海洋投棄について一応凍結するという形でしておりませんが、先ほども江田長官は、低レベル廃棄物についても全面禁止の方向でいくものと思われるというようなお話をされました。  これは科学技術庁としての、長官としての基本的な考え方なのかどうかということが一点と、それと外務省としては基本的なスタンスはどうなのか、この二点、ちょっとお尋ねしたいのですが。
  171. 江田五月

    江田国務大臣 これは先ほどからも議論になっているところでございますが、科学技術庁としては、専ら科学技術的な見地からいえば、IAEAの基準にのっとって適正に行われる低レベル放射性廃棄物海洋処分については安全上は特段の問題はないので、そういう低レベル放射性廃棄物海洋処分という、もちろんIAEAの基準にのっとったものですよ、これを認めるという政策オプションというのはあり得ると思っておるのですね。  しかし、諸般の事情をいろいろ考慮しますと、科学技術だけで世の中動いているわけではないので、海というものの持っているすべての生命のもとというような、そこへいろいろなものを捨てていいのかというようなこともあるでしょうし、方向性としては、低レベル放射性廃棄物海洋処分を禁止するという方向も一つの政策オプションだ。  そこで、これまでロンドン条約締約国会議においてはモラトリアム決議が二度にわたって行われていた。最初のときには日本はたしか反対をした、二度目のときは保留をした、今度ことしの十一月にどういう議論になるのか、またこれは完全に決まっているわけではないと承知をしておりますが、モラトリアムの継続というようなことになるのか、あるいはさらにもっと進んだ禁止決議になるのか、それはわかりませんが、禁止という政策オプションに賛成をするような方向性で調整が行われるというふうに今見ております。  ただ、文言の書き方なんかもいろいろあるでしょうし、そこがさっきもちょっと議論になりましたから、全面、完全、永久禁止ということになるのか、それとも、なお今後の科学技術的ないろいろな可能性の推移によっていろいろな変化があるというような含みが出てくるのか、それは今後 の課題だと思います。
  172. 林暘

    ○林説明員 お答え申し上げます。  外務省は、取りまとめをいたす立場にございます。そういう意味で、現在国内のいろいろな関係のところと意見の調整検討を行っておりますところで、そういったものも踏まえて最終的な判断を行おうとしておるところでございますので、外務省として今の時点でどうこうということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思っております。
  173. 上田清司

    上田(清)委員 外務省の立場はわかりましたが、江田長官の立場がいま一つわからなかったのです。いろいろなオプションがあるよ、文言の問題もあるという、江田長官として何らかの形で、文言はともかく全面禁止に向けて、生命体としての海を極めて大事な問題だというふうに受けとめて推進される立場で言われるのか、それとも調整側に回っておられるのか、ちょっとこの辺だけは確認をさせてもらいたいと思います。
  174. 江田五月

    江田国務大臣 きれいに整理された答えというものがまだなかなかできにくい段階にございます、率直に言いまして。政府部内でいろいろな、御承知のとおりの発言もあって、そこを調整をしなければいけない。ただ、今まで二度にわたるモラトリアム決議のときに、反対とか保留とかという態度をとっておりましたが、その点については今までの態度と変えるという方向が今模索をされていて、私もそこは変えた方がいいと思っております。
  175. 上田清司

    上田(清)委員 いま一つの部分がありますが、それはさておきまして、正しく評価させていただきたいと思います。  それで、個人的な意見でございますが、もし海洋投棄せずにこうした低レベルも含めた放射性物質廃棄物処理が技術的に可能であれば、ぜひ海洋投棄せずに済ませていただきたいと思いますが、現段階における日本処理能力や技術的な能力でそれが可能なのかどうかということについて、科技庁の立場からお伺いしたいと思います。
  176. 江田五月

    江田国務大臣 科学技術的見地からの細かなことについては後ほど政府委員から答弁をさせますが、海洋投棄でなくて陸地処分の計画は随分いろいろ進んでいるわけでございまして、我が国放射性廃棄物処理処分対策でも、十分陸地で処分できる状況にあると私は認識をしておりますが、なお細かくは政府委員から答弁させます。
  177. 石田寛人

    ○石田政府委員 補足してお答え申し上げます。  今の御質問で、我が国の平和利用の原子力活動から出てまいります低レベル放射性廃棄物の処分でございますけれども、これは今大臣から御答弁のありましたように、その中の中心的なもの、すなわち原子力発電所から出るものにつきましては、青森県六ケ所村の低レベル放射性廃棄物埋設センター、これはもう操業に入っておりますので、ここで処分をすることは可能でございます。そういう意味におきましては、全体、低レベル放射性廃棄物海洋投棄することなく処置していける、そういう道筋がついておる、つきつつある、そういう状況であるわけでございます。  なお、ロシアのいろいろな原子力潜水艦等から出ます低レベル放射性廃棄物、廃液みたいなものの処理、すなわちそれを固化する等のことでございますけれども、これも私どもがこれまで原子力の平和利用でやってまいりましたそういう技術を適用することができるといたしますと、これは当然処理可能、すなわち固化することも可能であろうかと思うわけでございます。  ただし、実際その原子力潜水艦から排出されますもの、これは、想像されておりますのは潜水艦の原子炉の一次冷却水等が中心ではないかと言われておるわけでございますけれども、この原子炉が一体どういうものであるのか、これは恐らく普通の原子力発電所あるいは「むつ」の原子炉等とそれほど違わないものであろうかとも思いますけれども、何せ私ども潜水艦用の原子炉については全く知識がないわけでございますので、一体いかなる形の燃料が、どういう被覆管がということもあろうかと思います。  ただ、そういう違いはありましても、一般的に申しましてそれを処理、固化することは、今の私どもの技術を延長して適用すればできるというふうに考えてございます。
  178. 上田清司

    上田(清)委員 ありがとうございました。時間にも限りがありますので、時間があったらまた幾つか質問をさせてもらいます。  江田長官に、基本的な原子力の平和利用についてのお考えをお聞きしたいのです。  私は、現在原子力発電等によるエネルギーのシェア、占める位置だとか、あるいは今日原子力の平和利用における平和安全管理ということ等について本当に正しく評価をするものでありますが、人類のエネルギーを利用する過去の経緯からすると、まきを利用して、石炭を利用して、石油を利用して、原子力も利用している。しかし、人類が今まで手にしたエネルギーは大体手に触れられる、近寄ることが可能な、あるいはいろいろな意味で普通の人でも管理ができる、そういうものだったのですが、どう考えても、私から見れば原子力というのは普通の人が管理できない、あるいは近寄れない、見れない、触れられない、基本的にこれは人類の歴史の中では間違っているのじゃないかというぐらいの考え方を持っております。  現在、やむを得ざる選択としてこれを使っているということであれば、あるいは新しいエネルギーを人類は開発して、原子力に頼らない新たなエネルギーの開発を早急に急ぐべきではないかと考えているのですが、こうした考え方について、江田五月長官に基本的な哲学としてお考えをお聞きしたいのです。
  179. 江田五月

    江田国務大臣 普通の人が手に触れることのできない、普通の人の普通の能力で管理することのできないものに人類が手を染めていくということは、これはちょっと行き過ぎじゃないのか、神への冒涜というような言葉も私も聞いたことがありますし、確かにそういうお考えで人間と自然というものとの共生の関係を考えていこうというのは、大変魅力のある御意見、卓見だと私も思います。  ただ、しかし、そういうことで、じゃもう原子力はやめてしまうということになると、これは現実の世の中、エネルギーがなくて近代社会を運営していくわけにいかない。そのエネルギーの中で電力というものは非常に大きな地位を占めておる。その電力の中で原子力発電というのがまたこれは重要な地位を占めているという現実ですから、我々やはりこの現実を管理し、現実を動かしていかなきゃいけないわけですし、そうすると、この現実を、これはもう人類がやるべからざることをやっていたんだというわけにもなかなかいかないことだと思うのですね。  そこで、もしこの原子力というものが人間がやっちゃいけないことだということになりますと、じゃどこまでやれるのか、じゃ人間が空を飛ぶなんということはやっていいことか悪いことかなどという、地下の深くおさまっておる石油を引っ張り出して利用することはやっていいことか悪いことかというようなことになってしまうので、なかなかそういう意味の、観念論争というとちょっと言葉は変ですけれども、それはそれで一つ、人間の生き方、人類の文化のあり方という意味で哲学的な論争をしながら、もう一方で、やはり科学技術という面からこれを適切にコントロールをしながら運営していくということも必要なわけだと思うのですね。  先々、石炭もいろいろ難問もあった、今もある。石油もいろいろ問題を持っていますね。原子力もまたいろいろと悩みも深いわけですから、そういうものを乗り越えながら、しかし、そうした悩みのないもっと安全な、もっと自然環境と調和のとれた、そういうエネルギーが開発できることを私たちは目指していかなきゃいけない。それが核融合ということになるかどうか、核融合もまた、いろいろ問題はあるかもしれませんが、今はオプションとしては一つ核融合もあるだろうし、あるいは水素というものもあるだろうし、あるいはその他のいろいろなリサイクル可能なエネル ギーというものもあるし、多様なオプションを広く開発していくべきときだと私は思っております。
  180. 上田清司

    上田(清)委員 どうもありがとうございました。時間になりましたが、連立与党の一員として、江田長官の大変健全な考え方に賛同いたします。  ありがとうございました。
  181. 臼井日出男

  182. 上田晃弘

    上田(晃)委員 公明党の上田晃弘でございます。  まず、この数日間、国民の皆様も大変心配されておりますロシア海洋投棄問題、私も大変憤りを持っている一人であるわけでございますけれども、まず初めに、今回のロシア海洋投棄、この問題に関しましての大臣の率直な感想をお聞かせいただきたい、このように思います。
  183. 江田五月

    江田国務大臣 つい先日、エリツィン大統領我が国にお見えになって、そして細川総理とも首脳会談をやり、東京宣言も出し、この放射性廃棄物というものが近隣諸国のいろいろな懸念を惹起している、これはほっとけないのだ、そういう趣旨の合意もできた。ところが、エリツィンさんがお帰りになってすぐ、この日本のすぐ近海にごみをどさっと捨てたという。これは何とまあひどいことぞという感じを持った、これは事実でございます。  国民もまた大変に不安にも思い、心配もし、政府もこれはいかぬということで直ちにいろいろな対策もとらしていただき、第一回目、第二回目と予定をされていたその第二回目が中止ということになったので、これは大変国民のためにもあるいは日ロ関係のためにもよかったと思っておるのですが、しかし、事はここでは終わらないので、さあこれからが大変。  いずれにしても、近隣諸国に対する配慮に欠けたものであることはこれは言うまでもなく、大変遺憾に思っております。
  184. 上田晃弘

    上田(晃)委員 エリツィン大統領が訪日されました折に、先ほどもございましたが、日本でもかつて海洋投棄をしていたではないか、このような旨のお話があったわけでございます。また、今回の海洋投棄問題は、ある意味では日本自身、私たち日本海洋投棄に関する考え方が同時に国民の皆様にも問われているのではないか、こんなふうにも私は思うわけでございます。  しかも、先ほどもちょっとお話がございましたが、ロンドン条約締約国会議、八三年の決議の場合は、日本はアメリカ、イギリスとともに反対、八五年の決議ではロシアともども棄権、このようなことで、これは事実でございますし、新聞にも報道されております。そうしますと、国民の皆さんの考えとして、ロシアロシアだけれども、やはり我が国日本もこんな考え方だったのかみたいな、ちょっとシンクロナイズされてとられている部分もあると思います。  そこで、もう一回改めて、この八三年決議並びに八五年決議で日本反対または棄権に回った、その理由を簡単にお聞かせいただければ、このように思う次第でございます。
  185. 林暘

    ○林説明員 お答え申し上げます。  八三年の決議の採択の際には、我が国がかつて海洋投棄を行っていた実績があることを踏まえ、かつ、条約、IAEAの基準等科学的根拠に基づく国際的な規制の枠組みの中で行われる、安全性が立証された海洋投棄まで全面的に禁止する必要はないというふうな考えで反対をいたしました。  その後、我が国は一九八五年、中曽根総理が豪州訪問をされました際、関係諸国、地域の懸念を無視して海洋処分を行う意思はないということを述べまして、海洋投棄のモラトリアムの態度を内外に明確にしたことによって、八五年決議は、かかる我が方の態度と基本的に矛盾はないと考えられました。  しかし、我が国会議でコンセンサスの必要性を強調したにもかかわらず表決が強行されたこと、会議手続の観点から遺憾と考えられたこと、また、附属書の改正が条約の規定に基づかず、社会的、経済的観点を含むすべての分野での研究の完了をモラトリアム解除の条件としている点で問題があるというふうに考えまして、これらを総合的に判断した結果、棄権をいたした次第でございます。
  186. 上田晃弘

    上田(晃)委員 なかなか難しい御答弁だったわけでございますが、もうちょっとわかりやすく、日本海洋投棄に対する考え方をやはりわかりやすく、はっきり鮮明にしていく必要があるのではないか、このように思います。  それで、海洋投棄に全面的に禁止か停止かと先ほど来お話がございましたが、今回、ロンドン条約締約国会議に臨むに当たっての態度はまだ正式に決まってない旨、先ほどお話がございましたが、大臣の御答弁では、禁止の方向で今詰めておられる、この辺の御決意はそのとおりでよろしいのでしょうか。
  187. 江田五月

    江田国務大臣 八三年、八五年のモラトリアム決議に対し反対あるいは保留という態度をとった根底には、IAEAの基準に従ってなされる低レベル廃棄物海洋投棄は、科学技術的な見地だけに立ては安全上は問題がないんだ、そういう科学技術的な認識というものがあったと思うのですね。それはそれとして、今科学技術庁がその認識が変わったということはないのです。  これはそういう認識でいるのですが、しかし科学技術だけで世の中は成り立っているんじゃないので、すべての生命の源泉である海というものが大切にされなければいかぬのだ。日本は特に海に囲まれた国ですから、そういう厳格な基準のもとに行われるものはいいとなったら、実は厳格な基準じゃないものまで、今回のケースのように行われたりしたらたまらないということがありますから、技術的可能性あるいは社会的コンセンサス、そういうものを前提にして禁止という政策選択をしよう、それは一つの政策選択になり得るし、今日本はそういう方向での政策選択に向けて調整をしているということでございまして、私もそういう努力をしてみたいと思っております。  ただ、全面、完全、永久、何があってもということになるかどうかは、それはまた、もうちょっとよく考えてみなきゃならぬことで、その辺は決議の文言の問題もあるだろうと思っております。
  188. 上田晃弘

    上田(晃)委員 これは私の、一つは要望でもあるわけでございますけれども、低レベルというものの概念ですね、この辺がやはりちょっといろいろ混乱をして国民の皆さんも理解をされている旨もあるかもしれません。また、海洋投棄という言葉の概念、これもちょっと、一部混乱もあったりするのかもしれません。  ちょっと聞き及びましたお話では、IAEAの事務局の方のお話として、今回のロシアのは海洋投棄とは言わないんだ、垂れ流しなんだというような、海洋投棄と垂れ流しは違うと、何か哲学論争みたいな話になってまいりますと、また、一部日本国内におきましても、低レベルということになりますと、やはりテレビなんかでも、今回のロシア投棄の問題と温排水の問題と同じパネルにして、多いか少ないかは別だけれども、やはり日本も出ているのですみたいな話に、もう既に報道されたりしております。  そこで、やはりこういった時代に即応して、今回ロンドン条約日本も参加されるに当たりまして、もう一回こういう言葉の定義をきちっと国民の皆さんにもわかりやすく、また、国際社会の中においてもきちっとこれを主張していっていただきたい。  と同時に、IAEAに通告をして、あとは自分の国が許可をすればいいというようなことに今なっていると思うのですが、やはりこれもこういう国際社会なわけでございますので、例えば一つ考え方として、近隣諸国がその投棄現場に立ち会うとか、このようなことも、ぜひとも我が国として主張をしていただければと思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  189. 江田五月

    江田国務大臣 おっしゃるようなことはあると思いますね。低レベルと高レベルと、これはどういう概念であるのか、はっきり概念規定をした上 で議論をしなければ混乱するということがあると思います。ほんのわずかでも、とにかく放射能がちょっとでも検知をされればそれは低レベルだということになるかというと、必ずしもそうでもない。自然の放射能というものもありますからね。しかし、いろんな原子力施設から出てくるもので放射能の検知がなされるものは、まあ低レベルということになる。さらにそれがレベルが高くなると高レベルということになるのだろうと思いますが、細かくは、あと政府委員から答弁をさせます。  それと、今回のロシアのああいう投棄は、これは投棄とは言わずに垂れ流したと言う。これは、ロンドン条約では高レベルのものはいけませんよと、低レベルのものは、これこれこれのこういう基準に従ってと。それでまあ、そういうことについてはIAEAの基準というものがあって、そこではそんな、この液体放射性廃棄物をじゃあじゃあまさに垂れ流すというような、そんなことはそもそも予定されていないというように我々は理解しておる。これはやはりちゃんと密封をしてそれなりの拡散しないようなものにして、そして深く沈めて投棄をするんだということが前提になっていろんなものができ上がっている。したがって、ああいうものが行われるとは、おやおやという、そういうような感じもどうもあるようなんですね。その辺の議論はちゃんと分けてやっていかなきゃならぬと。  それから、そういうようにきっちり管理された形で安全性に気を配ってやるものが投棄であるから、そこでその当事者、投棄をする締約国が、いろんな事業者や何かを管理をしている立場から、これならいいですよといってオーケーするという、そういう条約の立て方になっているのですが、今回のようなことをやられますと、もう近隣はたまったものじゃないので、これは、こういうときにはひとつモニターさせると、これも一つ私は言いたいという気持ちもするのですが、同時に、モニターさせろということになったら、ああいうものは、じゃ認めるのかということになる。認めるわけじゃないので、認めないものをモニターというのはどうだと、こう何か変な議論になっちゃうので、その辺はよく議論を詰め対応していきたいと思っております。  今の低レベル、高レベルについては、政府委員から答弁します。
  190. 笹谷勇

    笹谷政府委員 お答えいたします。  ロンドン条約上、この分野における権威ある国際団体の勧告を十分に考慮する、こうなっていまして、その団体がIAEAでございます。  で、IAEAが決めております。その基準でございますが、高レベルの定義は……(上田(晃)委員「済みません、高レベルと低レベルの違いというよりも」と呼ぶ)ちょっと、この規定上、高レベルの定義がしてありまして、これは再処理とかその他使用済み燃料を指しておりまして、あとは、それ以外については濃度の数字を、ここでは専門的になりますので省略させていただきますが、数字で示されております。それは具体的に低レベルとか、そういう言い方をしておりません。  したがいまして、一般的には、原子力世界で低レベルという定義は今のところございませんで、先生がおっしゃるとおり、そこが混乱すると無用の懸念を及ぼすこともございますので、我々、これからこういう分野でいろいろ説明する際は、その辺十分気をつけてまいりたいと思っております。
  191. 上田晃弘

    上田(晃)委員 ひとつよろしくお願いいたします。  次に、来月モスクワで日ロ合同作業部会が開催される予定になっておるわけでございますが、この作業部会の議題、テーマ、現在調整中かとも思いますが、その大枠の方向性なり、また、今現在で進捗状況についてお聞かせ願える部分がございましたら、お願いいたします。
  192. 林暘

    ○林説明員 御指摘のとおり、いまだ向こうと調整中でございますが、議題の一番大きなものは、先般エリツィン大統領が訪日した際、細川総理との会談でも合意されました共同調査を、細川総理は年内、遅くとも来年早々というふうに発言されたわけでございますが、その共同調査を、どういう方法でいつやるかという点についての話し合いが中心になると思います。  それとともに、今回のこういう事件が起こりましたので、この問題、特にこのたび二回目の投棄中止をされましたけれども、ロシア側状況というのは御案内のとおりでございますので、このまま放置しておいてずっと行われないという保証もないわけでございますから、その辺の問題について、どういう協力が可能か可能でないか、日本ができるかできないか、その辺の問題についても、向こう側の話も聞きつつ協議をしたいというふうには考えております。
  193. 上田晃弘

    上田(晃)委員 ぜひとも、ただ共同調査ということだけではなくて一歩踏み込んでいただいて、現在ロシアが所有しているこの放射性廃棄物の、例えば実態把握とか、また、今お話がございました処理処分、この辺の協力についても前向きに御議論をしていただければと思いますので、ひとつよろしくお願い申し上げます。  しかも、先ほどもお話ございましたが、一年半という何か時間を区切られておりますね。一年半は今のまま、次の投棄をしないで済む。まあそれが、先ほどちょっとお話があったように、読み物としておもしろい方向に行くかどうかそれは別として、この一年半と先方おっしゃっているわけでございますので、この中で日本としては、先ほどあったように技術、財政面も含めてどこまで極力御支援できるのか、鋭意詰めていただきたい、こんなふうに思っておるわけでございますが、その点もひとつ。
  194. 江田五月

    江田国務大臣 これは鋭意努力をしていきたいと思いますが、今の十一月の十日、十一日の合同作業部会に先立って、さらに今月の二十七、二十八日にモスクワでやはり専門家会合を行う。この専門家会合は、それにすぐ続いて今度ウラジオストクでしたかね、にまで来て、現地もちゃんと見るというようなことも予定されているということなので、だんだん話し合いは煮詰まってくると思います。  そういう中で、日ごろ接触していくその回数を進めていけば、そうすると、単なる調査だけでなくて、今後の投棄中止、そのためには一体どういうことが必要なのか、そのためにはどんな技術的な可能性があるのか、財政的にどんなことになるのか、これが軍事援助にならない、そういう方法はどんなことがあるのか、こういうことがだんだんと浮かび上がってくると思いますし、そういう方向に向けて努力をしていきたいと思います。
  195. 上田晃弘

    上田(晃)委員 次に、放射能対策本部の件でございますが、今回は本当に速やかに放射能対策本部幹事会を開いていただいて、直ちに船も出たと、これは本当に私も大変うれしく思っております。大変迅速な対応をしていただいた、この意気込みを高く評価させていただきたいわけでございます。  そして、この早く出たということは大変すばらしいのですが、調査の内容等も含めまして、今回の独自調査の取り組み姿勢並びに今回の調査の目玉と申しますか、セールスポイントと申しますか、そのようなことがございましたら、お願いいたしたいと思います。
  196. 江田五月

    江田国務大臣 お褒めをいただいて恐縮でございますが、さらに一層努力をしていきたいと思います。  今回は、一昨二十日、放射能対策本部幹事会を開いて、そこで決定をし、直ちにその日の夕方、船を出航させたということでございます。いろいろな、海上保安庁、気象庁、水産庁、各機関の協力を得て行っているわけですが、今回のものが、九二年まで、昨年までは固体のものもあったわけですが、今回が液体廃棄物だ、ここに一つの特色があるわけですね。投棄時期、これもはっきりしておる。投棄場所も明らかになっている。  そこで、この海流等による拡散を十分考慮した上で、海水のサンプリング時期、それからサンプ リングの場所、これが効率的に配置をされている、これが一つの特色であって、さらに調査船の数も四隻から六隻に増強する、また漁場における魚、プランクトンの調査も新規に追加をする、こういうような調査内容の充実も図っております。  海水は、表面水というのですか、表面、それから中層水、そういうところを重点的に行うということで、今回の投棄に最も適した調査の方法をとろうとしておるということでございます。
  197. 上田晃弘

    上田(晃)委員 今回独自調査で、前回は実現できなかったわけでございますが、日本の独自調査の中で、もし投棄地域の調査の実現ができればすばらしいと思うのですが、その辺の可能性につきまして……。
  198. 江田五月

    江田国務大臣 これは、二百海里についての考え方はいろいろありますが、しかし、二百海里ということも現実の世界の中にはあるわけで、その部分に日本が国家として出ていくということになりますと、これはいろいろな問題を引き起こすということもあって、慎重にならざるを得ないという部分があるのですね。  そこで、これまでの調査では、そういう問題が起きないようにという配慮をしていたわけですが、今回こういう事態でもあって、場所もはっきりしているし、その投棄現場に日本として独自の調査に赴くことができれば、これはこれにこしたことはないということでございまして、野党自民党委員田中先生一人しか今おられませんけれども、自民党の方の問題提起がございました。これは率直に言って私はありがたかったと思いますが、その自民党の問題提起を受けて、私どもロシアの方に、投棄海域日本の船が出向いて直接に調査ができるようにひとつ協力をしてくれということを申し入れたところでございます。  ロシアの方がどういう対応をするかというのは、これは私はちょっと私の立場から何ともわかりませんが、外務省として最大限努力をしてくれるものと思っております。
  199. 林暘

    ○林説明員 今回の投棄に関して、日本側調査船を投棄現場に派遣して調査をしたいという御要望がございましたので、昨日ロシア側にその旨の通報を行っております。  ただ、二百海里の経済水域というものを我々が法律上認めていないということもございますので、通報という言葉を使っておりますが、一方的に通報して入るということによって不測の事態が起こることも考えられますので、相手方の異議がないという返事は待ちたいというふうに思っております。
  200. 上田晃弘

    上田(晃)委員 時間もなくなってまいりましたが、そして、この今回の独自調査の結果でございますが、やはり国民の皆様は、速やかかつ正確な結果を心待ちにされていると思います。この点につきましては、いかがでございましょうか。
  201. 江田五月

    江田国務大臣 これは微量のものですから、ある程度時間をかけないと分析の結果が出てこないのですね。大体一カ月半か二カ月ぐらい分析にかかってしまうので、そこはひとつお許しをいただきたいと思うのですが、可能な限り迅速にこの結果を手に入れて、そして専門家による評価をして、その結論公表したい。もちろん、専門家にしかその調査の結果は見せませんよというようなことはありません。これはもう、調査の結果自体も公表するということでございますが、ただ、公表をして安心していただきたいというふうには今はちょっと、まだ調査はこれからですから、安心できるかどうかはやってみなければわからない。  ただ、安心できるかどうかはわからないと言っているのは、何もむやみに不安をかき立てるつもりではないので、常識的、合理的に判断をすれば、ロシアの側から公表されている、我々が報告を受けている事実を前提にして判断をすると、まあ魚が食べられなくなるとかいうようなおそれはなかろうとは思うのですが、しかし、予断を持った調査をしてはいけないということだと思います。
  202. 上田晃弘

    上田(晃)委員 おっしゃるとおりだと思います。早く安全宣言をしてしまえばいいという問題でもございませんし、消費者の立場、また漁業に従事されている立場の方、それぞれやはり正確かつ速やかな発表ということだと思います。  水産庁も、もうお見えいただいておれば、今回の調査に向けましての御決意なりを一言お聞かせいただければと思います。
  203. 吉崎清

    ○吉崎説明員 日本海は、我が国にとって重要な漁場であるばかりでなく、漁業関係者及び消費者の不安を払拭するために、農林水産省としましても、放射能対策本部の申し合わせに基づきまして、西海区水産研究所の調査船、陽光丸を出航させ、日本海の主要漁場において魚類等を採取し、その安全性確認することとしております。
  204. 上田晃弘

    上田(晃)委員 最後にさせていただきたいと思いますが、今回、このように一生懸命調査をしていただいているわけでございます。前回のときも、約三カ月たちまして中間報告をされ、五カ月目に最終報告を出され、以上おしまいということになっているわけでございます。これは、一般的な国民感情といたしまして大変重要な心配事項でございますので、中間報告一回、最終報告、以上おしまい、こういうスタイルではなくて、やはり長期的、継続的な調査並びにこういう公表、これを充実強化していただきたいという思いもあろうかと思います。  この点について御所見を伺って、最後の御質問にさせていただきたいと思います。
  205. 江田五月

    江田国務大臣 当面の液体放射性廃棄物投棄は一時中止されたわけで、これは本当によかったと思いますが、第一回目は投棄が行われている。それから、それだけでなくて、去年まで本当に大量にこの液体の放射性廃棄物投棄をされているし、それから、その分についてはいろいろ調査しましたが、固体廃棄物、これも投棄をされている。そこからの放射能拡散の可能性もこれはあるのですね。そのようなことを考慮すれば、これは長期的に放射能レベルを監視する必要があることは、これはもうおっしゃるとおりでございます。  そこで、平成六年度予算、概算要求取りまとめを終わっているところでございますが、日本海、オホーツク海等における放射能監視網の設置、それから従来の調査海域を広げた、日本海日本周辺海域の広域的な海洋放射能調査実施あるいは海産生物調査の充実、こういうものを図ることとして、約三億円の予算を要求しているところでございますので、ひとつ応援をお願いを申し上げます。
  206. 上田晃弘

    上田(晃)委員 ありがとうございました。
  207. 臼井日出男

    臼井委員長 田中甲君。
  208. 田中甲

    田中(甲)委員 臼井委員長より発言を許可されました。ただいまより質問させていただきますさきがけ日本新党の田中甲であります。  エリツィン大統領訪日に際して発表された東京宣言においても、ロシアが行っている放射性廃棄物海洋投棄周辺諸国に深刻な懸念を呼び起こすものである、この認識が盛り込まれたばかりであるにもかかわらず、このような事態になりました。大変に遺憾に感ずるところであります。私は、前段者の皆さん方がるる御質問なさいましたので、かなり私なりに認識ができたという、そんな気持ちでありますから、ポイントを絞ってぜひとも一点だけ御質問をしたいと思います。  と申しますのは、今回の投棄は、科学的に見れば確かに放射能レベルは低いもののようでありますが、この投棄我が国国民に大きな影響と衝撃を与えたということは、やはり重要視しなければならないと感じます。ロシアには、今後二度とこのような海洋投棄を行わないように求めるとともに、我が日本においても、国民の不安の解消のために最大限努力を払うべきである、そのように考えております。  江田大臣は、放射能の問題に関して関係省庁の取りまとめを行う放射能対策本部本部長でもあります。そこで、今回のロシアにおける放射性廃棄物海洋投棄問題をどのように踏まえ、今後どのように対応していかれるおつもりか、大臣にお伺いしたいと思います。
  209. 江田五月

    江田国務大臣 科学技術庁長官というのは、そ の職務上いろいろな職務を兼ねておりまして、原子力委員会委員長であるとか宇宙開発委員会の委員長であるとかいろいろあるんですが、そうしたものの一つ放射能対策本部本部長というものがございます。  この放射能対策本部というのは、昭和三十六年に、これは核爆発実験に伴う放射性降下物、フォールアウトという、これがだんだんふえてくる、国民が大変心配になる。とにかく死の灰ですから、これは心配になるのも当たり前。田中委員お生まれになって直後ぐらいのことなんでしょうか。私どもはちょうど大学生ぐらいのときなんですが、本当に大パニックで、そういうときにできて、放射能についての対策を行っていくんだということでいろいろなことをやってきたわけですが、放射性物質の降下ということじゃなくて、海洋の汚染といいますか海洋に対する投棄といったことが今度だんだんと問題になってきておりまして、今までは核実験あるいは旧ソ連原子炉衛星の大気圏再突入とか、チェルノブイリの灰がどうなってくるのかとか、そんなことをやっていたのですが、放射性廃棄物海洋投棄というこの新しい課題についても迅速に対応していきたい。  とにかくこの分析をしっかりして、人体に関する影響等について十分研究を強化して、そして必要な措置をとっていくために最善を尽くしていきたいと思っております。
  210. 田中甲

    田中(甲)委員 ただいま大臣より、今回の海洋投棄に関しても早急に調査実施していきたいとの答弁をいただきました。どうぞよろしくお願いをいたします。  特に我が国国民というものは、放射能や放射線に対して極めて関心が高く、ある意味では神経質になっている、そんな一面もあると思います。そのため、環境における放射能の現状について常に国民に正しい情報を提供する、極めてこれは重要なことであると思います。そのために、科学技術庁長官本部長をされているこの今お話伺いました放射能対策本部、一層重要な役割をこれから担っていかれることである、そんな認識を私もさせていただいておるところですが、この際、簡潔で結構でありますが、放射能対策本部がどのような体制で成り立っており、これからどのような役割を果たしていくか、ここで改めて若干お聞かせをいただければありがたいと思います。
  211. 江田五月

    江田国務大臣 先ほどもちょっと触れましたが、昭和三十六年十月三十一日に閣議決定がございまして、そこで設置をされました。これは当時のことを思うとなるほどなと思うのですが、内閣に臨時に設けるということでございますが、現在まで続いているわけで、私はこれはもう臨時という枠は超えておるんだろうなという感じを持ちますね。「放射能測定分析の充実、人体に対する影響に関する研究の強化、放射能対応する報道、勧告、指導その他放射能対策に係る諸問題について、関係機関相互の連絡調整を緊密に行なう。」そういう所掌事務が、この閣議決定によって定まっているわけでございます。「関係機関相互の連絡調整」ということでございますが、放射能対策本部自体がいろいろなアクションもとれると私は思っております。  科学技術庁長官たる国務大臣が主宰をする。長官に事故があれば、内閣官房副長官または科学技術庁の事務次官が代理をする。こうやって放射能対策本部員というものが決まっておりまして、副本部長が副長官、科学技術事務次官、厚生事務次官……
  212. 臼井日出男

    臼井委員長 長官、済みません。途中で申しわけがありませんが、ほかの委員会で御質問されるということなので、ひとつ簡便に。
  213. 江田五月

    江田国務大臣 わかりました。あと本部員がずらっと並んでおり、さらに幹事会というものがありまして、幹事長が原子力安全局長、さらに幹事がずらっと並んでおる。これまで、先ほど申し上げたような活動をしてきたということでございます。
  214. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。放射能対策本部の役割をどうぞ充実強化させていただき、最大限にその機能を発揮していただきたいと思います。  若干私のいただいた時間を余してしまいましたが、鮫島委員に譲りまして、私の発言を終わります。
  215. 臼井日出男

  216. 鮫島宗明

    鮫島委員 日本新党の鮫島宗明です。時間もありませんので、やや紋切り型の質問になることをお許しいただきたいと思います。  十月十七日にTNT27より日本海沖に投棄された放射性廃棄物の形状と数量及び放射線量について、科学技術庁ロシア側より入手しているデータについてお教えいただきたい。
  217. 江田五月

    江田国務大臣 これは二種類のものがある。二種類というと変ですが、ロシアから今回の放射性廃棄物海洋投棄の概要についてプレス発表が行われ、さらにそれに引き続いて説明を受けた、これが一つです。もう一つは、IAEAにロシアから通告が行っている。  二種類のものがあるわけですが、IAEAへの通告によりますと、前後二回やりますよ、その二回をトータルしますと、体積は約千七百立方メートルですよ、放射能量は二・一八キュリーですよ、核種はアルファ線を出すような核種はありません、ベータ線、ガンマ線を出すものですよ、そういうものでございまして、ロシア側からの発表によりますと、そのうちの一回目は体積が約九百立方メートル、放射能量が一・〇八キュリー、核種はストロンチウム、コバルト、セシウムを含むがアルファ核種を含まない、そういうもので、二回目についてはこれが中止をされた、こういうことでございます。
  218. 鮫島宗明

    鮫島委員 いまもう一度、放射性同位元素の種類及びその元素を含む化合物、おわかりでしたら。
  219. 江田五月

    江田国務大臣 核種を完全に特定されているわけではありませんが、アルファ・エミッティング・アーディフィシャル何とかというものはない、こう書いてあります。ストロンチウム、コバルト、セシウムを含むということで、その核種がどういう化合物の形になっているかということについては、私ども今の段階では情報を入手しておりません。
  220. 鮫島宗明

    鮫島委員 コバルトの放射性同位元素がガンマ線を出しているということでよろしいでしょうか。政府委員の方から。
  221. 笹谷勇

    笹谷政府委員 そのように理解していただいてよろしいかと思います。
  222. 鮫島宗明

    鮫島委員 ガンマ線の海水中での飛距離について、おわかりでしたら。――それは後ほど調べて教えていただければいいです。  長官は、二カ月ほど前に筑波の研究学園都市を御訪問されたと聞いております。長官の科学技術に対する大変真摯な態度、科学研究に対する深い理解が筑波の研究者の間でも大変好評を呼んでおりまして、こういう長官のもとだと日本科学技術も大いに進むのではないかという期待をされているそうですけれども、筑波にガンマフィールドというのがあるのを御存じでしょうか。筑波の少し先の茨城県の常陸大宮というところですが、農林水産省の放射線育種場。
  223. 江田五月

    江田国務大臣 科学技術は本当に素人でございまして、筑波へ行ったときも一生懸命とにかくお聞きはしたのですが、昔々高校時代に、そういえば陽子と中性子となんという話を聞いたななんというところから始まるわけですから、なかなか理解ができなくて困っております。残念ながら今のお話の施設は存じておりません。
  224. 鮫島宗明

    鮫島委員 茨城県の常陸大宮にあります農林水産省の放射線育種場というのは、半径百メートルの円形の圃場でして、真ん中にコバルト60の線源が置いてあって、そこからガンマ線が円周上に放射されるようになっている極めて特殊な、突然変異を誘発するための育種場ですけれども、そのように、ガンマ線は空気中では約二百メートル以上の飛程を持っておりまして、ガンマ線が当たることによって遺伝子の破壊を引き起こす、そしてさまざまな突然変異が出るわけですけれども、その 中で有用なものを農業上利用するということで放射線育種場というのはできていると思いますけれども、トータルの放射能量が例えば一キュリーであっても、一キュリーというのは最近の単位でいえば約四百億ベクレルぐらいだと思いますけれども、たとえ一キュリーであっても、それが例えばすべてコバルト60でガンマ線を放射する形で海中投棄されると、これは普通の同じ一キュリーの安全なものといいますか、例えば炭素14のようなものに比べて、大変海洋生物に与える影響が大きいということがありますので、どういうものが捨てられたのか、どういう化学的性状を持っていたのかということを、ある意味では投棄前に把握することが非常に重要ではないかという気がいたします。  ロシア側が今回投棄した物質について、詳しいデータを提出するように要求するのが長官の言う科学的な態度ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  225. 江田五月

    江田国務大臣 委員の深い学識の前には脱帽するほかないのでございますが、私も、おっしゃるようなことなのだろうと思います。  一般に、放射性廃棄物の正確な影響評価を行うためには、少なくとも核種、どういう核種であるのか、核種ごとの放射能量などの情報が必要であって、これは、今後、先ほど言いました専門家会合あるいは作業部会、いろいろございますので、そういうところで必要な説明を受けるなど、明確な情報入手のために努力をしていきたいと思います。
  226. 鮫島宗明

    鮫島委員 先ほどの、どの委員に対する御答弁かちょっと忘れましたけれども、きょう原子力大臣が来ておられるということですので、ぜひその大臣にも、この前投棄した成分の詳細なデータを出すように要求していただきたいというふうに思います。
  227. 江田五月

    江田国務大臣 原子力省のミハイロフ大臣が成田にお着きになりました。昼の休みの間に会おうと思ったのですが、ちょっと飛行機がおくれて間に合いませんでした。この委員会が終わればお会いできるのではないかと思っておりますが、ちょっとまだ、よく、完全にセットされておるわけではございません。お会いできれば、またそのようなことも含めいろいろ、もっとも、きょうは時間がないかと思いますが、しばらくおられますので、いろいろお話をしたいと思います。
  228. 鮫島宗明

    鮫島委員 私がこだわりますのは、多分、投棄後もう既に数日経過しておりますけれども、一週間ないし二週間たって、しかも投棄した地点よりかなり離れた場所での海水のサンプルを採取して調べても、まず九分九厘何も検出できないことが大いに予想されると思います。ましてや、ただいま投棄海域内の調査外務省からロシアの方に申し入れているということですけれども、投棄地点で調査したとしても、多分、二週間ぐらい経過した後では、恐らくサハラ砂漠にまかれたゴマ粒を探しに行くようなもので、ほとんど何もつかむことができない。多分、どんな核種を捨てたかも知ることはできないと思います。  今度のロンドン条約についての会議等々で、ロシア投棄方法については国際的批判が高まると思いますけれども、聞くところによると、かなり、その廃棄物がもう既に貯留庫にいっぱいになっているということもあって困り果てて、いつまた捨てに来るかわからないという一定の不安もあると思うのですけれども、もし次にロシアが強行投棄を企てた場合には、日本政府調査船が横づけして、できればその投棄をしている原液を、これは少しでも、一ccでも結構だと思いますけれども採取する、採取しに行くということを通告する。もし、もう一度今回のようなことをすることが事前に何らかの方法で把握できた場合は、政府としては、調査船を横づけにして投棄原液をサンプリングしたい、そういう通告をするというのはいかがでしょうか。
  229. 江田五月

    江田国務大臣 先ほどもどなたかの御質問にお答えをしたのですが、私としては、これまでの経緯からして、中止をする、一年半ほどは投棄をせずにやっていける、その間に何か考えなきゃという、こういうロシア態度でございますから、そういう態度、手のひらをひっくり返すように覆してまた強行するということを前提に、いろいろなことを考える必要はないと思っております。  ただ、おっしゃるような方法というのは一つの方法かどば思いますが、そんなことにならないように努力をしていきたいと思っております。
  230. 鮫島宗明

    鮫島委員 それは、そういうことがあるかないかというよりも、先ほどもちょっと話題に出ていた閣僚懇談会で、国民にわかりやすい毅然たる態度をとる必要があるだろうということが閣僚懇談会で話題として出たということですけれども、これはロシアもそういうことをするかしないかというよりも、ある種の、もしそういうことをする場合は調査船を横づけにするということを通告することによる抑止力、通告することによって、ロシアが幾ら困っても捨てに来ないという、一種の抑止力を働かせるという意味で通告の価値があるのではないかと思うのですけれども、外務省の御判断をお聞かせいただけますでしょうか。
  231. 林暘

    ○林説明員 外務省といたしまして、調査船が直接その投棄船に横づけして採取するその他のことがどういう科学的な意味を持つか、ないしはどういう状況にあるかを判断する知識を、申しわけございませんが私たち持っておりませんので、そういうことが有効であるという意見が政府部内であるのであれば、それをロシア側と相談するということはあり得ることだと思っております。
  232. 鮫島宗明

    鮫島委員 私は、割合さっきわかりやすく、その化学的性状を把握することがいかに大事かを説明したつもりなのですけれども、液体といっても大きく分けて二種類あって、水に溶ける液体と水に溶けない液体、あるいは比重の重い液体、軽い液体。投棄されたものが例えば油状のものだったとしますと、これは表面に果てしなく薄く延びて、それがやがては沿岸部に廃油ボールのような形で集積してくるということもあるわけですので、どういう成分のものを捨てているか、また、比重が重いものでしたら下の方にたまるでしょうし、また、同じ一キュリーといっても半減期がどうかということがありまして、例えば燐酸のP32ですと十四日程度の半減期。ところが、先ほど長官がおっしゃられた中にあったストロンチウム90あるいはセシウム137というのはそれぞれ二十八年の半減期を持っていて、同じ一キュリーといっても、すぐそれが消える放射性物質と、長く、三十年、二十八年たっても半分にしか減らない放射性物質、さまざまな種類があるわけです。  そういう意味では、何を捨てているかというのを把握するというのは科学的根拠がないと外務省の方がおっしゃるのは、私には全く理解できないのですけれども、このような説明でも、まだ外務省としては原液を採取する必要がないというふうにお考えでしょうか。
  233. 林暘

    ○林説明員 外務省として、原液を採取する必要がある、ないという判断をいたしかねますので、そういう判断をし得るところの御意見を聞きたいというふうに思っております。
  234. 鮫島宗明

    鮫島委員 そういう判断をし得るところの御意見をお聞かせいただけますでしょうか。
  235. 江田五月

    江田国務大臣 鮫島委員のおっしゃることは、私はそのとおりだと思いますが、しかし、私自身の科学技術的な知識というのは乏しいので、政府委員から答弁をさせます。
  236. 笹谷勇

    笹谷政府委員 今先生が御説明されたのはそのとおりでございまして、この捨てられるものがどういう性状のものかということは、その後の、この廃棄物をどう処理していくか、あるいは海水中でどのような挙動を示すか、そういうことを科学的、技術的に調査する上では必要なデータだと考えております。
  237. 鮫島宗明

    鮫島委員 時間がありませんので、一つだけ最後に御質問いたします。  多分、今回の事件で、国民の側から見て一番印象的だったのが、あのグリーンピースのゴムボートではないか。十五メートルの近くまで寄っていってガイガー・カウンターで測定していました けれども、その針の振れまでテレビで全国に放映されたのが大変印象的でした。グリーンピースの船があそこまで行くのに、日本の船がなぜ近づけないのだというのが、一般的に国民が感じた疑問ではないかというふうに思います。  グリーンピースからの連絡がなければ、今回の投棄について日本政府としては知ることができなかったというのは、事実として再確認してよろしいでしょうか。
  238. 江田五月

    江田国務大臣 先ほど午前中にも私ちょっとその関連で申し上げたのですが、オフィシャルとか主権とか公的とか官とか、これはなかなか、かた苦しいものでございまして、そういうかみしもをつけてできることもあるけれども、かみしもをつけているがゆえにできないということもあって、そういう役所サイドでここまでしか行けない、しかし、その先はいろいろなまだまだ情報のあるいは知識の分野がありますよ、いろいろな人たちがそういうところで活動していて、そういうものを得てくるということは、そういう役所が手の届かないところの情報というのは大変大切だと私は思っておりまして、だからこそ、いろいろな人の声も聞きたいということを申し上げていて、そのいろいろな人たちというのはグリーンピースも例外ではない。  ただ、残念ながら、今回は私どもグリーンピースから連絡を受けてはおりません。したがって、グリーンピース連絡で今回のことを知ったということではありません。
  239. 鮫島宗明

    鮫島委員 外務省にお聞きした方がいいのかもしれませんけれども、では、どうして知ることができたのでしょうか。少なくとも投棄を開始する前に、既に報道等で明らかになっていたと思いますけれども。外務省
  240. 林暘

    ○林説明員 土曜日以降の報道は承知しておりますが、我々が投棄の事実を確認いたしましたのは、ロシア外務省からの説明でございます。
  241. 鮫島宗明

    鮫島委員 投棄の事実を確認したのはロシア外務省からの説明というと、先ほどおっしゃっていた十八日、次の日でしたかね。そうすると、放射性廃棄物輸送専用船が向こうの港を出て日本海に近づいているということは、その航行中も、外務省としては全然知らなかったということでしょうか。
  242. 林暘

    ○林説明員 テレビその他の報道では承知しておりますが、公式には承知しておりません。
  243. 鮫島宗明

    鮫島委員 大変何か大きな問題が最後に残ってしまったような気がしますけれども、時間ですので、最後に一つだけ、長官に。  私も、グリーンピースのアクションがすべて正しいとは思いません。時にはかなりエキセントリックな、非科学的な態度をとることがあると思いますけれども、少なくとも今回のグリーンピースの行動は、私は、国益に沿うものではないかという気がいたします。是々非々を旨とする日本新党の党首のお気持ちも考えれば、今回のグリーンピースの行動については、ある意味では、長官から礼状を出してもいいのではないかなという気がいたしますけれども、いかがでしょうか。
  244. 江田五月

    江田国務大臣 私は社民連の党首でございますが、礼状というのがいいかどうか、この場で謹んで脱帽したいと思います。
  245. 鮫島宗明

    鮫島委員 どうもありがとうございました。  質問を終わります。
  246. 臼井日出男

  247. 笹木竜三

    笹木委員 民社党・新党クラブの笹木竜三です。  ロシア放射性廃棄物投棄の問題について、幾つか質問させていただきます。  まず最初に、この放射性廃棄物海洋投棄の結果、海洋環境に与える影響の評価について、どういうふうにお考えになっているか。報告書等は読ませていただいておりますけれども、例えば容器が腐食した場合、中期的に生物への蓄積の問題、そういったことも含めて、影響の御評価、どのようにされているか、お願いしたいと思います。
  248. 江田五月

    江田国務大臣 ロシア側の発表によると、海洋投棄で約一、一・〇八キュリーですかの液体放射性廃棄物日本海投棄された。一方、過去、旧ソ連ロシア日本海において約一万キュリー以上の液体放射性廃棄物投棄しており、これの我が国への影響というのは、液体だけではなくて固体のものも一緒にあわせ調査をいたしましたが、本年春の海洋環境放射能調査で特段の異常が見られなかった。そこで、その時点で、我が国国民に対して影響が及んでいるものではないという判断をした。  この二つのことを前提に、常識的に判断をすれば、今回は、一万キュリーに今回一キュリー程度が追加になったということであるから、その前後で海洋環境中の放射能レベルが有意な変化、意味のある変化をするとは、常識的には考えられないであろう。  しかし、これはロシアが言っていることを事実だと前提にしての話で、もっともこれがうそであるという疑う根拠も何もないのですが、事実を前提にしたって、それでそれほどおかしな話ではありませんが、事実だということを前提にしているわけですから、念には念を入れてきっちり調査をした上でなければいけないので、調査について何らかの予断や偏見があってはいけない、これは言うまでもない。  ということでございますが、今回は、もう先ほどからお話にあったまさに垂れ流しですから、容器の腐食とかそういうようなことは考える余地がないと思っております。
  249. 笹木竜三

    笹木委員 日本として、先ほどから何回かお話ありますけれども、海洋投棄について新聞等でいろいろ報道ありますけれども、今後基本的にはやらないという方向で検討されているのかどうか。
  250. 江田五月

    江田国務大臣 我が国方針としては、科学技術的見地からいえば、IAEAの基準にのっとった海洋投棄は安全上は心配ないという判断は持っておりますが、しかし、陸上での処分も随分技術的に進んでまいりましたし、関係国のいろいろな懸念もありますから、これまでも例えばロンドン条約締約国会議におけるモラトリアム決議、二度にわたるものに反対とかあるいは棄権とかしておりましたが、しかし、関係国懸念も踏まえて海洋投棄はやらないということでずっと来ておりますし、今後とも低レベル放射性廃棄物海洋投棄というものはしない方針で進んでいくことができると思っております。
  251. 笹木竜三

    笹木委員 二つ目の質問なのですけれども、今後のロシアのこういった海洋投棄について、まだ今後もやるかもしれないという不安が依然として残っているわけですけれども、そうしたことを防ぐために、例えばロシアでの処理施設あるいは備蓄施設、そういったものに対する協力援助、これを日本からロシアに対してする考えがあるかどうか、お願いします。
  252. 江田五月

    江田国務大臣 これは、基本的には自分のところで出した廃棄物はやはり自分のところで処理していただくというのがこれが基本で、ですから、第一義的にはロシアが自分の国の義務としてやっていただきたいということだと思うのですね。  ただ、ロシアというものが今どういう困難にあるかということは、これはだれも皆よく知っているわけで、ロシアの市場システムへの移行とか、あるいは民主的な、民主主義政治体制への移行とか、こういうものを極力応援をしていこう、冷戦構造崩壊後の世界の秩序をちゃんとつくっていこうというのは、これは世界共通の課題ですから、そういう立場を踏まえて、今のロシアの窮状のもとでなかなか、おまえのところが一義的には責任だよと言ってもその責任をきっちり果たすことができないとすれば、これはロシアと協議の上で日本としても最大限協力を惜しまない、こういうことだと思います。
  253. 笹木竜三

    笹木委員 来年度からですか、ロシア核兵器解体作業について、アメリカとECと日本でお金を出し合ってということで、その備蓄とかについては日本協力をするということになっている、備蓄施設等について協力をするというようなことがあったと思いますけれども、こういった費用を放射性の廃棄物の備蓄あるいは処理施設とい うことの協力に使うことは考えているのかどうか。できれば、大臣とともに外務省の方にもお答えいただきたいと思います。
  254. 江田五月

    江田国務大臣 冷戦終了後、ロシア核兵器解体あるいはミサイルの処分、こうしたことが課題になっておりまして、解体をすればいろいろな核物質が出てくるわけですね。ミサイルの場合には液体燃料が出てくるとか。それから、ロシアとか東ヨーロッパ、中部ヨーロッパの原子力発電所、これをもっと安全なものにしてもらわなきゃというそういう心配もあったりで、そうしたことについて、国際的な取り組みの中でいろいろとこれからロシア協力をしていかなきゃいけないと思っております。  我が国としても、一億ドルという資金を用意をしてそうした協力をしていきたいと思っておるのですが、これは先般のエリツィン大統領がお見えの際に、そういうことを話をして文書もつくったはずですが、ちゃんと約束をして今後進めることになっておりますが、具体的な進め方というのはこれからの課題だと思います。
  255. 林暘

    ○林説明員 旧ソ連核兵器解体廃棄支援のために一億ドルを供与するということにつきましては、本年四月にG7の外相・蔵相会議が東京でありました際に、日本の方からコミットをしたわけでございます。  これに基づきますロシアとの取り決めが、先般エリツィン大統領が訪日しました際、署名をすることができました。旧ソ連の中で核兵器を現時点で所有しております共和国は、ロシア以外にベラルーシ、カザフ、ウクライナの三共和国がございまして、これらの国々とも取り決めの交渉を今行っているところでございます。  したがいまして、これらの四共和国との間に取り決めをつくって、先ほど申し上げました一億ドルを利用して核兵器解体に伴います事柄、それからそれに関連する分野、例えば環境その他の分野について日本として協力をしていこうというふうに思っておりますが、具体的に何にどう使うかということについては、ロシアとの場合にはロシア側との協議、調整をいたさねばなりません。  早急にその会合を開くことにいたしておりますが、その場で、我々としては環境という観点からも、本件海洋投棄に関する事柄にこのお金の一部分を振り向けるということでロシア側と話し合いをしたいと思っております。
  256. 江田五月

    江田国務大臣 ちょっと言葉が足りなかった点があるかと思うのですが、原子力発電所の性能の向上は、今の一億ドルの範囲には入っていないのです。それはまた別の話ですが、そういうテーマもあるということでございます。  それから、核兵器解体自体については、これは軍事技術になるのでちょっと慎重にということですが、解体後の核物質の貯蔵とか処分とか処理とか、いろいろなことがあると思います。
  257. 笹木竜三

    笹木委員 新聞等の報道で、この費用を、今言った廃棄物処理ですとか、ロシア側が軍事技術へ転用するなど、悪用されるようなおそれもあるというような、そういった懸念があるように書かれておりました。例えば、実際に核兵器の修理などの軍事的な目的、そういう施設に悪用するのじゃないか、そういったコメントが新聞報道でもありますし、そういう不安があって、今この予算をそのことに使うことに対してちゅうちょがあるのか、その点について御確認させていただきたい。
  258. 江田五月

    江田国務大臣 その悪用というのは、どういう文脈かちょっとはっきりしないのですけれども、今回の一億ドルで液体放射性廃棄物処理技術のための施設をつくる、あるいはその他のこと、こちらの方もやれないかということが検討の対象にこれからなってくるかもしれない。  今一億ドルというものは現にあるわけですから、そのお金で何とかできる余地はないか、こういう検討をしてみなきゃという感じはあるのですが、悪用というのはそうじゃなくて、この液体放射性廃棄物処理日本の方でさあやりますよということになりますと、そのためにロシアが、自分のロシアの軍事予算が、自分の懐ぐあいが楽になってほかの方へ行って、軍備の拡大という方向へ行ってしまったらこれは困るなというので、これは軍事援助ということになったりという心配もあるものですから、そこはきっちりした枠組みをつくって、こういうプログラムでということをちゃんとやらなきゃいけません、そういう議論をしているところでございます。  それから、核兵器解体から出てくるプルトニウムをどういうふうにするかというのは、それはそのものとしてまさに重要な課題になってくると思います。
  259. 笹木竜三

    笹木委員 最後の質問で、この核の廃棄物の国際管理に対して、現状では非常にIAEAの監視機能ですとか弱いわけですけれども、これをもっと強い調査力にするとか、そういったことを検討していくお考えがあるのかどうか。あるいはもう一つ日本の場合は毎年、これは主にアジアが多いわけですけれども、ODAについては一兆円以上、トップ水準で援助をしているわけですけれども、昨年の政府方針で、今後の日本のODAは環境重視にするという発表があるわけです。  例えば、今長官のお話にもあった日本の近隣の諸国での原子力安全性について、こういった問題もあるわけですけれども、ODAの中で、環境ODAということで、こういったことに対して日本がいろいろ注文をつけていく、そういったお考えがあるのかどうか、あるいは今検討がされているのかどうか、これも、できれば長官とともに外務省の方にもお答えいただければと思います。
  260. 江田五月

    江田国務大臣 IAEAの監視機能が弱いのではないか、弱いか強いか評価はいろいろかと思いますけれども、かなりいろいろのことをやっておりますが、さらに一層IAEAの保障措置機能というものを強化をしていくという、これは日本もいろいろ協力をしていかなきゃならぬと思っております。  それから、原子力安全確保というのは、これは世界の共通の課題ですので、安全確保及び安全性向上のために原子力安全条約をつくろうじゃないか、この策定作業日本も参加をしております。細かなことは省きます。  それから、放射性廃棄物につきましては、これはIAEAで、今廃棄物管理について国際的に調和された原則と基準の作成を行うために策定作業が開始をされておる。先般のIAEA総会でも、我が国共同提案国になって、そうした方向についての条約も検討しろという決議をしたところでございます。  それから、ODAについて、これは例のODA四原則というものが出されまして、環境とかあるいは軍事の関係とか民主主義とかあるいは人権とか、いろいろなことにこれから配慮していかなきゃならぬということにはなってきているわけですけれども、ODA供与、ODAを出す関係の国の原子力開発利用というものは、これはいろいろテーマにはなっているのですが、いっぱい原子力発電があって、それが環境に悪影響を与えているからODAを出してという、そういう事態には今まだ至っていないので、具体的にそういうことがテーマになっているという事態には立ち至っておりません。
  261. 林暘

    ○林説明員 放射性廃棄物の問題について、環境対策という観点からODAを使ったらどうかという御指摘かと思いますが、もちろん、今江田長官から御説明がありましたように、ODAを我が国が供与している国々から、私、専門ではございませんけれども、放射性廃棄物の問題について我が国のODAを使用したいという要請があるかどうかつまびらかにいたしませんが、今まで私が若干経験していた範囲では、そういう要請というのは余りなかったというふうに記憶をいたしております。  ただ、理屈の問題として、環境対策として放射性廃棄物の問題があるということがあった場合に、我が国のODAを使うということが不可能であるということは必ずしもないというふうには思っております。  また、ロシアにつきましてはODAの対象国になっておりませんので、ODAを使うということは難しいというふうに考えております。
  262. 笹木竜三

    笹木委員 ありがとうございました。
  263. 臼井日出男

    臼井委員長 次回は、来る十一月二日火曜日午前十時五十分理事会、午前十一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十四分散会