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1993-11-18 第128回国会 衆議院 安全保障委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年十一月十八日(木曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 近藤  豊君    理事 鈴木 宗男君 理事 中谷  元君    理事 町村 信孝君 理事 山崎  拓君    理事 大出  俊君 理事 月原 茂皓君    理事 赤松 正雄君 理事 樽床 伸二君       麻生 太郎君    瓦   力君       高村 正彦君    谷垣 禎一君       中村  力君    中山 利生君       西銘 順治君    浜田 靖一君       宮里 松正君    宮下 創平君       山下 元利君    渡瀬 憲明君       岩垂寿喜男君    金田 誠一君       左近 正男君    楢崎弥之助君       江﨑 鐵磨君    船田  元君       松田 岩夫君    上田  勇君       平田 米男君    福島  豊君       三原 朝彦君    矢上 雅義君       西村 眞悟君    米沢  隆君       東中 光雄君    玄葉光一郎君       高市 早苗君  出席国務大臣         外 務 大 臣 羽田  孜君         国 務 大 臣 中西 啓介君         (防衛庁長官)  出席政府委員         防衛庁長官官房 宝珠山 昇君         長         防衛庁防衛局長 村田 直昭君         防衛庁教育訓練 上野 治男君         局長         防衛庁人事局長 三井 康有君         防衛庁経理局長 秋山 昌廣君         防衛施設庁総務 草津 辰夫君         部長         外務大臣官房審 野上 義二君         議官         外務大臣官房領 荒  義尚君         事移住部長         外務省条約局長 丹波  實君  委員外出席者         議     員 山崎  拓君         議     員 鈴木 宗男君         議     員 高村 正彦君         議     員 宮下 創平君         安全保障委員会 下尾 晃正君         調査室長     ――――――――――――― 委員の異動 十一月十八日  辞任         補欠選任   米沢  隆君     西村 眞悟君 同日  辞任         補欠選任   西村 眞悟君     米沢  隆君     ――――――――――――― 十一月十六日  自衛隊法早期改正に関する請願(桜井新君紹  介)(第一一一二号) は本委員会付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  自衛隊法の一部を改正する法律案鈴木宗男君  外五名提出衆法第一号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)      ――――◇―――――
  2. 近藤豊

    近藤委員長 これより会議を開きます。  鈴木宗男君外五名提出自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩垂寿喜男君。
  3. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 本委員会防衛庁長官経験なさった方が五人いらして、今の防衛庁長官もおられるわけですからいろいろな質問をしたいと思いますけれども、三十分という時間でございますので、かいつまんで要点を絞って質問をさせていただきたいと思います。  最初に、これは自民党提案者お尋ねしますが、自民党の案は皆さん方にとって最善のものと今でもお考えになっていらっしゃるか、御答弁を煩わしたいと思います。
  4. 山崎拓

    山崎(拓)議員 そのとおりと考えております。
  5. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 前回自民党宮里松正氏の質問に対して、外務大臣そして防衛庁長官は、政府案自民党案の違いについて、全く同じだというふうに考えていますと答弁をされました。そのとおりに私も承るわけですが、自民党提案者のお考えはどのような認識に立っておられるか、御答弁を煩わしたいと思います。
  6. 山崎拓

    山崎(拓)議員 全く同じたとは考えておりません。第一、法文の内容自体に主な相違点が二点あると考えております。その点につきましては、御案内と存じますので答弁を省かせていただきます。
  7. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 政府案に対して同調する御意思はございますか。
  8. 山崎拓

    山崎(拓)議員 自民党案が最上のものと考えておりますので、政府案に同調する考えはございません。
  9. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これは理事会マターでありますけれども自民党として、本案の採決に当たって自民党案先議政府案がその次ということを御主張なさっていらっしゃるようですが、多くの慣例付託順序というのが筋道になっているというふうに私も短い経験で学んできましたが、その点についての認識はいかがでございましょうか。
  10. 山崎拓

    山崎(拓)議員 御質問趣旨が正確に把握できなかったのでございますが、恐らく政府案自民党案の歩み寄りの問題について御質問があったのではないかと存じますが、重ねて申し上げますけれども自民党案は、前回通常国会におきまして政府案として提出されたものでございまして、既に衆議院を可決、通過し、参議院におきまして相当程度質疑が行われて採決寸前に立ち至ったものでございまして、そういう前国会のほぼ意思が確定した状態であったことにもかんがみまして、自民党案採決をお願いし、これを成立させていただきたいと考えております。
  11. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 理事会において自民党理事さんが御主張なさっている採決順序、これはたまたま山崎さんも、山崎さんは理事ではございませんか、自民党考え方理事が御主張なさっていらっしゃると思うのですけれども、その理事さんの御発言と皆さん考え方は同じものというふうに受けとめてよろしいですか。
  12. 山崎拓

    山崎(拓)議員 これは国会運営上ルールにのっとって、我が党理事、私もその一人でございますが、主張してまいったところでございます。つまり、国会に先に提出され、上程され、付議されました我が党案でございますので、これが先議となる。これは実際上は、同時にこの委員会に上程されまして同特質疑が行われているわけでございますが、少なくとも採決順序に関しましてはルールどおりにやることを主張しているわけでございまして、極めて当然のことだと存じます。
  13. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 提出者である防衛庁長官、そして内閣の副総理であられる外務大臣、お二人とも宮里さんの質問に対して、政府案自民党案は、実は私はちゃんとメモしたんですが、全く同じだという御答弁をなさいました。ちょっとびっくりしたんです、本当のことを申し上げて。  実はこれは大変なことだなと思ったんですが、その辺は後ほど申し上げることにして、防衛庁長官付託順序でということが今自民党から主張されました。それで、選挙制度委員会採決も、いろいろないきさつを経てそうした慣例で行われました。したがって、本委員会もそのようになる可能性というのは非常に大きいというふうに思わざるを得ないわけですが、そうなった場合に、本委員会逆転委員会ですから、自民党案成立する可能性、これはあくまでも可能性ですが、というものが予測されます。これは予測でございます。そうなると、政府案は本会議に上程されないということはこれまた当然の理屈でございまして、政府として、自民党案とすり合わせるとか、あるいはそこに一致点を見出すための御努力をなさるつもりはあるのかないのか、その点をお尋ねをいたしたいと思います。
  14. 中西啓介

    中西国務大臣 先ほど岩垂先輩が、私が政府案自民党案が全く同じだという答弁をした旨の御指摘をいただいたわけでありますが、私は、趣旨において全く同様である、そのように申し上げたつもりでございます。法案中身は、明文化しているというような点では形式上はかなり違う部分があることは事実です。  今の、これからの成り行きはどうなるのかという御質問でございますが、私はやはり、趣旨において自民党案政府案も同じでございますから、生命危機に瀕した邦人をより早く、より安全に輸送するというところにあるわけでございますから、人道的見地からも、これだけ国際的にいろいろな問題が流動化している昨今、そういう事態がいつ起こらないとも限らないわけでございますから、万全を期す体制だけはやはり整えておくべきである。自民党皆さん考えも、我々政府考えも、そこにかなり重点が置かれているわけでございますから、何とか両者で話し合っていただいて、可及的速やかにこの法律成立されんことを心から切望いたしておる次第でございます。
  15. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 中西防衛庁長官が、状況に対して対応しなければいかぬと述べられました。私は違った見解を、見解というのは、別の方法ということも可能だというふうに、またそのことを追求しなければならないと思っておりますが、今私が申し上げましたように、中西防衛庁長官は議運の委員長をおやりでございますから、その辺のところはもう百も承知の上で御答弁をなさっていらっしゃるだろうと思いますが、自民党案とすり合わせることを期待するというふうに今御答弁をいただいたと承ってよろしゅうございますか。
  16. 中西啓介

    中西国務大臣 やはり事の性質上、議員提案よりも政府提案の方が望ましいと私は考えておりますし、そういう意味前回も閣法で出させていただいたわけでありますし、今回も政府案が可及的速やかに成立することが望ましい、そうしていただきたいと思っておりますが、なかなか現実はまだまだ厳しい状況にもありますので、何とか両者で話し合っていただければと、ただ、今そういう気持ちでいっぱいでございます。
  17. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 こういうことを私は余り申し上げたくないのですが、私の尊敬する大出先輩は、国会議員としてずっとこの国の防衛の問題にかかわってこられました。その観点は、日本憲法をきちんと守っていかなければいけない、その意味で、一つ一つチェックをしていくことが必要だというお立場であったと私は思います。  その意味でいえば、前の法案憲法に逸脱する懸念があるというお立場で強く反対をしてこられました。しかし、今回、衆望を得て党の副委員長という要職におつきになった。連立政権を支えていかなければいけない。その苦悩を私は目の当たりに見ました。そして、そうした面だけではなくて、いろいろな意味で恐らく国会では一番ベテランの議員でございます。その先生が、恐らく今度の政府案についても、防衛庁長官外務大臣がおっしゃったように、政府案と同じだというそしりを免れない、しかし、政権を支えなければいけないという御苦悩を持ってここまで導かれてきたと思います。  私は、実は、大出先生の御苦労というものを考えながらも、なおかつこの問題について、社会党が自衛隊海外派兵賛成をするという立場に立つとすれば、これはきちっとしなければいけないという見解を持っております。したがって、これらの問題について、自民党政府・与党、何とか調整の努力をしてほしいという長官の御意見、御意思があるならば、今国会で拙速に成立をさせるということではなくて、両案ともとりあえず取り下げて別の道を探す、そういう努力を私は期待したいというふうに思いますが、その点について、自民党の御意見長官の御意見を承りたいと思います。
  18. 山崎拓

    山崎(拓)議員 在外邦人安全確保の問題は、これは一種のナショナルセキュリティーの問題でございまして、これをなおざりにするわけにはまいらないと存じます。一日も早く法整備を行いまして、在外邦人危機にさらされましたときに、その救出体制に万全の措置をとる努力をすることは、政府におきましても、責任ではないかと存じます。国会といたしましても、これに呼応いたしまして、そういう努力をしなければならないのでございます。  そういう観点から、前国会におきましても鋭意審議が続けられまして、御案内のとおり、参議院におきまして成立寸前で、政変によりましてこれが廃案となった経緯があるわけでございます。そういうことでございますから、新政権になられましても、一刻も早くこの法案成立を期すということは、基本政策の継承を唱えておられるわけでございますから、この分野基本政策の一分野をなすものと認識いたしておりますので、本国会におきまして必ず成立することができますよう、私どもといたしましては最善を尽くしたいと存じます。  そのためには、自民党案は、さきの通常国会提出いたしました政府案と全く同趣旨のものでございまして、ここに今政府案提出者として座っておられます外務大臣防衛庁長官賛成をしておられました法案中身でございます。本国会におきまして成立を期したいと存じます。
  19. 中西啓介

    中西国務大臣 私も、先ほどから申し上げておりますように、こういう事態は起こらない方がもちろんありがたいわけでありますが、いっ何とき起こってもおかしくないぐらいの情勢下にもあるという見方も成り立つと思うのですね。ですから、備えあれば憂いなしといいますか、これはもうまさに人道的見地からいってもそのとおりでありましょうし、先進各国を見てもこういうことはもう相当以前からきちっと対応してやっているわけでございますから、私どもも、やはりいち早くそういう備えをできる状態にしていただきたいという気持ちはいささかも変わりません。  ただ、輸送安全確認を義務化する、それから使用する機種を、使用条件をきちっと定めておく、そういう意味政府案も、一部改善というか修正をされたわけでございますから、懇切丁寧にという観点から見ていただければ、そこは何とか自民党皆さんにも御理解をいただけるのではないか、そんなふうに考えております。  前段、岩垂先生海外派兵という文言をお使いになられましたけれども、もう御承知のとおり、海外派兵は、武力の目的を持って他国の領土、領海、領空等に赴いていくことを指すわけでございます。しかし、今回の場合は、そういうことはもうおよそ考えられないことでございますから、憲法に違反するとも当然我々は考えておりませんし、そこら辺はどうぞひとつ誤解のなきようにお願いを申し上げたい、そんなふうに思っております。
  20. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 憲法に違反しないというようにおっしゃいましたけれども、それは後ほど質問させていただくことにして、本法案で、災害騒乱その他の緊急事態に際して自衛隊機により邦人保護を行った場合に、保護した邦人を乗せた自衛隊機が、敵対する勢力などに撃墜をされたり、あるいは事故に遭ったりして墜落をするというようなこともあり得ると思うのですね。こういう場合は、政府保護した邦人犠牲者に対しての補償を行うのか行わないのか、その点はどのようにお考えですか、御答弁をいただきたいと思います。
  21. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的には、派遣先国、こういったところと安全等を確認しながら対応するということでありますから、私どもは、安全というものは十分に確保する中でこれが実施されるというふうに理解をいたしております。したがって、邦人輸送に使用する自衛隊機事故によりまして邦人犠牲になることは一般的には予想されないことでありますけれども、仮に何らかの事故によりまして邦人犠牲になった場合には、その具体的な態様をよくしっかりとつかんだ上で対応すべきであろうというふうに思っております。
  22. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私が伺いたいのは、この問題に対する行政責任というのは一体、依頼した外務大臣が持つのかあるいは運航する防衛庁長官が持つのかという行政上の責任のありかをまずお尋ねをした上で、それでは損害賠償についてどんな手だてを考えていらっしゃるかということをお尋ねしているわけでありまして、その点についての明確な御答弁を煩わしたいと思います。
  23. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 御質問の点でございますけれども、もちろんあってはならないことでございますが、仮に自衛隊航空機に万一事故が発生いたしまして、搭乗しております邦人の方々に被害が生じた場合、そういうケースを御質問になっておられると思いますが、そういう場合、その事故の発生につきましてこの航空機を運航しております防衛庁側民事上の責任が認められるときは、国家賠償法等規定に基づきまして、事故相当因果関係のある範囲で通常生ずべき損害につきまして適正な損害補償を行う、そういうことになります。
  24. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 憲法十七条で国家賠償責任を負うというふうに理解してよろしゅうございますね。
  25. 秋山昌廣

    秋山(昌)政府委員 国家賠償法の第一条に「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」という規定がございまして、こういった国家賠償法等規定に基づきまして、防衛庁側民事上の責任がある場合には適切な損害賠償をする、そういうことになると思います。
  26. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 日本国憲法では海外邦人保護政府行政権に含まれるという規定はございません、どこを読んでみても。外務大臣はどのような日本国憲法の上での規定に従って国の行政権の及ばない海外にいる邦人保護の責務に踏み切ったのか、その点を御答弁を煩わしたいと思います。
  27. 羽田孜

    羽田国務大臣 在外邦人保護につきましては、外務省設置法、これによりまして外務省所掌事務とされております。その設置法によりまして、海外における邦人生命、身体及び財産を保護するために外国官憲と交渉する等の権限外務省は有しておるところであります。上記の所掌事務あるいは権限規定されております邦人保護の一環としまして、従来から外務省は、緊急時における在外邦人救出のための救援機を派遣するなど、これらの邦人輸送を支援してきておるところでございます。  このように、緊急時における在外邦人輸送というのは、内閣がその有する行政権に基づき行う行政事務のうち、外務大臣が管理する事務一つとして位置づけられておるものであります。  なお、現在御審議をいただいております自衛隊法改正におきましても、このような点を踏まえまして、外務大臣から依頼があった場合に防衛庁長官航空機による在外邦人等輸送を行うことができることとしておるものであるということを申し上げたいと存じます。
  28. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 外務大臣外務省設置法を聞いているんじゃなくて、憲法上、お尋ねをすると、人道的な立場からというふうなことをおっしゃいます。実は憲法上は規定はないのです。だから、その辺を、きちんとその根源を明らかにしておかないと、ルーツから、途中のところを出発点で御答弁をされたんじゃ、私は憲法立場で聞いているものですから、大変僭越ですけれども、その点についてお答えをもう一遍いただきたいと思います。
  29. 羽田孜

    羽田国務大臣 基本的に、これはまさに、戦いをするというようなことではない、邦人救出しなければいけない、まさに人道上のもので、やはり国としてこういった邦人の安全というものを確保する、これは私は憲法にもとるものではないというふうに感じます。
  30. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私の言っているのは、外国に飛ばすわけですから、そういう点で憲法とのかかわりというのはしっかりしておかなければいけませんよということを申し上げたわけでございますから。もう時間がどんどん過ぎてしまいましたから、それはそれとしておきますけれどもね。  これは、二、三の人が本に書いていますけれども軍隊の出動によって海外邦人がかえって殺害されたという事件が多くあるということ。例えば一九二〇年の三月のシベリア出兵に関連して、日本軍邦人救出後百二十二人の犠牲者を出したニコラエフクス事件などが代表的な事件だと言われております。率直に言って、下手に軍隊が出ていけば、邦人保護保護でなくて、救援救援でなくなってしまう、これは実は戦史の教えるところであります。  憲法第十二条は、個人の尊重生命自由幸福追求の権利の尊重ということを規定しています。この法案では、邦人保護のための輸送として、災害騒乱その他の緊急事態海外自衛隊を出動させることを意図しています。国際法の上で軍隊である自衛隊騒乱の地に出動させることは、邦人中立性の放棄とみなされ、紛争当事者から海外邦人が敵性を持つ者としての扱いを受ける可能性が生まれます。このような事態に立ち入るおそれのある立法というのは、どうも憲法第十三条の規定に矛盾するのではないかというふうな疑問を私は持っています。一見すると自衛隊機による邦人輸送というのは合理的なように見えますけれども、逆効果を生むことになりかねない、これもまた歴史的な事実であります。  そこで、二点伺いますが、邦人等輸送という自衛隊法のこのたびの改正は明らかに海外騒乱自衛隊機を送るものであって、逆に邦人に危害を加えられることも予想されます。そこで、この立法憲法第十三条の規定に反していないのかどうか。そして、この憲法規定に反していないというならば、その論拠を明らかにしていただきたい。ここのところは、実は人道的にというような形だけでは済まない議論になっていると思いますが、その点御答弁をいただきたいと思います。
  31. 宝珠山昇

    宝珠山政府委員 二つの法案のいずれも、在外における邦人緊急事態にある場合、現在外務省において所掌する事務の円滑な遂行を行うために自衛隊機を使おうとするものでありますが、この場合におきまして、当該派遣国への着陸、離陸、それから経路における通航等について、すべて国際法に基づきまして許可を得た後行うものでございまして、その種の安全確認をすべて行います。このような行為によることが、憲法十三条なり、あるいはその他武力行使に当たるなどということはないものと考えるものであります。
  32. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それだけやりとりしていると時間がたってしまいますから。  国際法、これは実はジュネーブ第四条約――今三分だそうですから、国際法との関係やそれから民間航空条約との関係自衛隊法関係、もうちょっと聞きたかったのですが、時間が来てしまいましたから、もうその点ははしょりますが、別の形で質問をする機会を得たいと思います。  防衛庁長官、けさの新聞によりますと、PKO法改正を指摘されておられますが、これは次の国会あたり提案をする御準備をお進めになっていらっしゃるのかどうか。その点を、大変恐縮ですが、勉強中に済みませんけれども答弁をいただきたいと思います。
  33. 中西啓介

    中西国務大臣 いや、まだ、次の国会であるとかその次の国会であるとかそういう具体的なことは考えておりませんけれども日本国連常任理事国といいますか、いわゆる真ん真ん中に座るというようなことも十分予想されますので、そうなれば、確かに憲法の前文に掲げております「名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という部分が充足されることになろうかと思っております。  しかし、名誉ある地位を占めると同時に、それなりのまた大変な重責を担わされることも事実であります。果たしてそういうふうな心構え、腹構えが私ども国民皆さんも含めてできているかどうかということになりますと、甚だ私は、まだ過去十分議論もされた経験もありませんから、そういうようなことも踏まえて、安全保障議論を、徹底的に地に足をつけた議論をやっていくべきである。  そんな中でやはり世界に通用する法律といいますか、やる限りは後顧の憂いのない形でやるというのが理想でありますし、なかなかもう一国でいろいろな問題を処理することのできる時代ではありません。ですから、世界じゅうの、もう可能な限り多くの国々が参加した唯一の平和を追求していく機構である国連というところがやはりこれから相当焦点が当たってくるのだろうし、そこを最大限に活用して、世界じゅうが力を合わせて協力して、世界の平和、安定、秩序の維持のために活用していくべきであるというような考え方の中から、やはり私ども法律は、ややもすれば日本の常識は世界の非常識だみたいにやゆされる昨今でもございますので、そこら辺ももう一度国民の前で、国会で徹底的に議論をして結論を出していただきたい、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  34. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 賢明な中西防衛庁長官が石を投げた以上は、PKO法案の審議に当たって、日本国憲法関係武力行使の問題、集団自衛権の問題、このことから歯どめがかかっているという現実をどうかしっかり重く見ていただきたい。つまり、そのことを、あなたがおっしゃるような形で進めていくとすれば、憲法上重大な解釈改憲への道、あるいは明文の改憲をしなければならない、そういうふうにお考えの上で御発言なさっていらっしゃるのだろうと思いますが、いかがですか。
  35. 中西啓介

    中西国務大臣 もちろん憲法を度外視しては論じられる話ではありません。  ただ、憲法も、これは前政権、前政府憲法解釈、解釈上そのような解釈をしてきたわけでありますから、解釈でありますから、私はまた違った解釈も理論的にはできるのではないのかな、そんなふうに個人的には考えているものでございます。  当然憲法の問題を前提にしての話であることは、おっしゃられるとおりでございます。
  36. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 防衛庁長官が、憲法の解釈はいろいろなのができるものだなんてはっきりおっしゃった、これは大変なことですけれども、まあそれはそれとして、きょうはそれ以上言いますまい。  問題は、この法案について、自民党は譲歩しないとおっしゃっていらっしゃる、長官は何とか一致点を探し求めたいと考えていらっしゃる。これは、先ほど私が申し上げましたように、これからの国会運営、国会運営というよりも委員会運営を含めて国会運営にかかわることでございますけれども、やはりこれは時間をかけて国民のコンセンサスを得ていくということの方が免じゃないか。だからむしろ、両案を取り下げて、こんな時間的に急いでやらなければならぬというお気持ちがわからぬではないが、今国会にこだわらずに、やはり国民が納得ができる、そして十分な理解を得る、そのための御努力をいただきたいと思いまして、どうも質問することの三分の一もできなくて残念ですけれども、これで終わります。ありがとうございました。
  37. 近藤豊

    近藤委員長 東中光雄君。
  38. 東中光雄

    ○東中委員 外国における緊急事態の発生した場合に、邦人保護のために民間定期便による自発的な避難、それが利用できない場合は民間機をチャーターすることにより対処をする、それが困難な場合にいわゆる政府専用機を使う、それが都合悪い場合にその他の輸送の用に主として供するための航空機を使う、今度の閣法はそういうふうになっておるようでありますが、自民党案との違いでもあるわけですが、「その他の輸送の用に主として供するための航空機」というのは、これは自衛隊航空機ということでしょうが、どういうものがあるのか、機種と機数を明らかにされたい。
  39. 宝珠山昇

    宝珠山政府委員 今回の政府提出法案におきまして「その他の輸送の用に主として供するための航空機」と書いてございます。その中で、百条の五第二項の規定により保有する航空機といいますのは、747のいわゆる政府専用機二機が現在ございます。それからスーパーピューマがございます。それからその他の輸送機と申しますのは、固定翼と回転翼に分かれますが、C130約二十機、C1約三十機、YS11約十機がございます。回転翼につきましては、V107というのが約二十機、CH47Jというのが約四十機ございます。合計で約百十機プラス政府専用機及びスーパーピューマということになります。
  40. 東中光雄

    ○東中委員 自民党案は、ただ「航空機」になっておるのですが、航空機といえば随分たくさんありますが、どういうことですか。
  41. 鈴木宗男

    鈴木(宗)議員 我が党が言っている航空機というのは、政府専用機はもちろんでありますけれども自衛隊の保有する飛行機を使って在外邦人救出に当たるということを考えております。
  42. 東中光雄

    ○東中委員 ということは、輸送機に限らない、自衛隊の保有する航空機輸送に当たることができるものは何でもいい、法律上の構成としてはそういうことですね。
  43. 鈴木宗男

    鈴木(宗)議員 政府案では、原則としては政府専用機と書いてあるものでありますから、我々としましては、そのオプションを広げまして、例えば適宜対応できるように、政府専用機が飛べる滑走路だとか飛行場の状況であるならばそれでも結構でありましょう、同時に、滑走路が短いだとかあるいは管制塔の問題があるだとかというときはC130がいいのであればC130、さらにはヘリコプターだとかYS11だとかC1だとか、こういったものを使ってやろうではないかということであります。同時に、何でもということではありません。邦人救出でありますから、おのずから戦闘機などが行けることは想定しておりませんから、この点は御心配はいただかなくても結構でないか、こう思っております。
  44. 東中光雄

    ○東中委員 いずれも航空機を派遣するということになると、内容的にいえば自衛隊の航空部隊が出ていくということになるわけです。しかも、その航空部隊が出ていく先ほどこにも限定はされていない。問題が起こったところどこへでも出ていく、条件があればですよ、そういう意味で地球上どこでも出ていける。出ていく機種、機数についても限定的なものは何もないという、これは法律上の規定はついているわけです、そういう状態になっておる。  それから、自衛隊航空機というのは、これは自衛隊法九十五条の適用がありますから、法律上は、それを防護するための必要な措置、航行中の航空機に対する、航空機の防護のために戦闘機が出ていって防護することも、武器の使用もできるし、できるということになっておるときは必要があればやらなければいけないというふうに行政法というのは読むのが筋でありますから、そういう構造になっておるということを、私たちは、この自衛隊法改正についてはそういうふうに理解をしております。  そこで、出ていくのは内乱、内戦、クーデター、天変地変その他の災害、そういうものが起こっておって、そこで邦人生命、身体の保護が必要だ、生命、身体が危険な状態に置かれておるということが前提で、それの救出のために出ていくということだと思うのです。  外務大臣にお聞きしたいのですが、先ほど設置法の話が出ておりましたけれども海外における邦人生命立身体及び財産を保護すること、そのために必要な場合には外交保護権を行使して相手国政府と交渉すること、これは設置法に書いてあるとおりですが、治安状態が悪いとか、危険が予想されるような場合は、相手国政府邦人の安全について申し入れを行う、より具体的な措置をとるよう申し入れをする、こうした外交上の措置をとって、在外邦人生命、身体の安全、保護を相手国に要請する、相手国がそれをやる義務がある、そういうのが本来の外務省の任務であると思うのですが、どうでしょう。
  45. 荒義尚

    ○荒政府委員 私からお答え申し上げます。  まず一般論としまして、ある外国にいる自国民保護につきましては、その国の、当該国が第一義的に保護責任を負うというのが国際法上の原則でございます。しかしながら、その当該国のみの手段によっては我々の自国民保護が全うできない、つまり救出もできないというときに、今回御審議いただいている自衛隊機による救出を行うということでございます。
  46. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、今回自衛隊機の派遣を言う前提は、国際法上第一義的に義務があるのですけれども、その相手方に任せておいただけじゃ邦人生命、身体の安全が保障されないという状態にあるから、だから民間機を派遣するとかいろいろ出てくる、自衛隊機も派遣する、こういうことだとおっしゃるのですね。だからそれが、例えば、天変地変の場合は別としまして、いわゆる紛争地ですよ。内乱、内戦、それから湾岸戦争のようなああいう紛争事態が起こっておるときに、そこにいる在外邦人生命、身体の安全が脅かされる、だから派遣するんだ、こういうことになるわけです。  外務大臣、そして派遣するこの自衛隊機というのは安全が確保されなきゃいけない、こう言うのですね。安全が脅かされているから行くはずなのに、行く飛行機の安全だけはちゃんと確保されるということが確認されなければ行かないんだ、こういう法律になっているのですが、これは実際には全く妙な話ですよね。そういう点はどうなんでしょう。
  47. 羽田孜

    羽田国務大臣 これまで政府としましても、今御指摘のありましたような中で、邦人救出のために、チャーター便ですとかあるいは定期便を使用するように慫慂したりしてきたわけでありますけれども、しかし、そういったことが不可能なような状況の中、あるいはそういったものを進めるときにも、民間航空機との間に調整する時間ですとかそういった必要がありました。そういったことのために、どうしてもやはり一定の期間というものをかけざるを得ないということでございまして、緊急事態にあって機敏に対応していくということのために、私ども、この法律に基づいて、チャーターがだめな場合に専用機、専用機がだめな場合にこういった飛行機が使えるようにしたいということであります。
  48. 東中光雄

    ○東中委員 そうしますと、抽象的なことを言うと問題がはっきりしませんので、一九七五年の四月といえばサイゴン陥落、二十七日に陥落になったわけですね。あのときの日本の人見ベトナム大使は、四月三十日に最終的な撤退を新聞などで発表していた。しかし、その前の二十七日にもう陥落してしまった。それより前から退避とか避難とかいろいろ言っていた。それでフィリピンまで民間機が行ったけれども、入れなかった。今度の場合、その場合は民間機、チャーター機じゃだめなんだ、自衛隊機が行くんだというときに、安全を確保して行くわけでしょう。そうすると、あのサイゴンの陥落する直前あるいはそのころ、向こうへ行くについては、これは相手国の許可をまず得なければいかぬですな。そうでなければ、安全確保なんかとてもできない。その場合に、サイゴンの状態あるいは南ベトナムの状態というのは、いわゆる南ベトナム政府といいますか、当時はミン政権ですか、それからハノイ政権、それから米軍、こういう紛争ですよ。あるいは内戦というのですか。そのときに、日本自衛隊機が行くというのだったら、相手国のどの承認を得るのですか。その三者の承認を得なければいけないということになるのか。そこらはどうでしょうか。
  49. 羽田孜

    羽田国務大臣 一般論として申し上げるときには、紛争地域へ航空機を派遣する場合にも、当該地域の権限ある当局より着陸及び飛行経路につきましてまず許可を得ることが派遣の前提でございます。かかる場合におきましても、現地情勢及びその見通しを総合的に判断した結果、必要であれば安全確保の上で権限のある当局以外の紛争当事者からの安全の保障も取りつけるケースも、これはまさに一般論としてあり得るということであります。
  50. 東中光雄

    ○東中委員 いや、だから一般論はいいのですよ、一つの設例で私は言っているわけですから。  宮澤前総理はこのことを盛んに言いましたよ。あのときに行けなかった、私は外務大臣だった、だからそのときに行けるようにせにゃいかぬのやということを本会議場でも言いましたね。これはことしのことじゃないですか。どっちにしても、そういうことですから、ベトナムの場合、邦人救出だといった場合に、権限を有する当局といったって、どこが権限を有する当局なのかということであります。  湾岸戦争のときに、あの自衛隊機の特別政令まで変えてそれで行こうとしたけれども、ヨルダンもイラクも、イラクははっきり敵対行為だと言うし、自衛隊機は入れない、ヨルダンは中立を侵すからと言って拒否した。それで民間チャーター機で輸送しましたね。自衛隊機が行く、これは軍用機でしょう。軍用機が行くということになれば、紛争当事者で、相手の、在留邦人生命、身体が危険にさらされているというので救出に行くというのでしょう、それで内戦状態のとき、外国の、日本の軍用機が入っていくのを紛争の両当事者がそんなもの認めるわけがないじゃないですか。現に認めてないですよ。だからこれは、もしそれを安全確保のためだといって出ていくということになったら、これは紛争の中へ入っていく、まさに海外出兵になるわけですよ。そういうふうに巻き込まれることは少なくとも間違いないですね。そういうことになるので、紛争の当事者の場合にはどういうふうになるのか、どこの許可、許可を得られなかったらもう一切行かないんだといったら、湾岸戦争も行けないし、ベトナムも行けないし、そんな法律をなぜつくるのか。民間機なら行けるけれども、民間機なら安全だけれども。安全が確保されるんだったら民間機で行けるわけです。そういう点で、これはもう決定的な矛盾を持っていると思うのですが、どうでしょう、外務大臣
  51. 中西啓介

    中西国務大臣 東中先輩のおっしゃられる意味がなかなかちょっと理解できないのでございまして、要するに、安全の確認を行った上で行くわけです。ですから、今御指摘のような安全が確認されにくいケースですよね、そういうときは行けないわけでありますから、そういう場面というのは想定されないのだろう、そんなふうに考えております。  それから、さっきの、湾岸戦争のときの民間航空機の話を例に出されましたけれども、あのときは民間航空機は行けたと僕は認識しております。しかしいろいろな、保険の話がどうのこうのとか、かなり時間的に組合との折衝とかなんとかで手間取って、すぐ行っていれば十分行けたのに、だんだん状況の環境が悪化してきて、最終よその国の飛行機に乗ってお世話になって帰ってきた、こういうふうな経緯があるわけでありますから、そういう危険な状態である場合は飛ばないということに判断をいたすわけでございますから、そういう紛争に巻き込まれることはあり得ない、こういう判断でございます。
  52. 東中光雄

    ○東中委員 いや、湾岸戦争のときは違いますよ。民間のキリスト教団体とか弁護士なんかがカンパを集めて民間機をチャーターして送ったんですよ。日本は政令を変えて送ろうとするから、そんなのだめだということになったのですよ。それはもう全然事実が違いますよ、長官が今言われたことは。  それは別として、大きな矛盾は、私が言いたいのは、生命、身体の安全が脅かされている、本来は第一義的に相手国がちゃんと保護せないかぬ国際法上の義務があるのに、それが脅かされているから保護するために行くのだ、こう言っているのでしょう。その原因は、紛争も入るんだ、内戦もクーデターも入るんだと。クーデターを起こしたときに、起こされた政府の承認を得て行くのか、起こした側の承認を得て行くのか。そんなことできやせぬでしょうが。そして、そういう安全を脅かされるところに行くのだ、救出に行くのだというのは、行く方の飛行機は安全が完全に確保されているときだと。これはもうだめなんですよ。そういうことになっているということが一つです。  それからもう一つは、こうして軍用機を出すについて、自衛隊を出すについて、自衛隊法九十五条の適用は排除していませんね。あえて排除しないんです。それは、ほかの条文もそうなっておるからということを言われますけれども、この条文についていえば排除されていないのです。なぜ排除しないのかといえば、それは、自衛隊機というのは自衛隊航空機ですね。九十五条に書いてある武器、弾薬、船舶、航空機。その航空機武力、武器を使ってでも防護せないかぬのだ、脅かされるときは。そういう法の建前があるわけでしょう。その建前をこの場合にだけは排除するというようなことはできないのです。  だから、私先ほど言いましたように、輸送機が出ていく、途中で非常に危険な状態があるというときは、九十五条で、原則的には法律上は戦闘機をつけていって防護するということだって可能なのに、そういうふうなシステムになっているのです、しかし今度の場合はそういうものはやらないんだということをこの内閣議決定したんじゃないですか。戦闘機をつけていくことはしないという閣議決定をしたでしょう。この法案提出について、平成五年十一月五日閣議決定によると、はっきりそう書いていますね、我々は戦闘機をつけることはしない。そうしなければいかぬような、つけていくことができるような法体系になっている。しかも、安全を確保して行くんだといって安全を脅かされているのを救出に行くんだ、こういう矛盾が、あえて憲法九条を持っているこの日本の国で、自衛隊という、侵略があった場合にそれを自衛のために排除するための実力組織なんだ、陸海空軍その他の戦力じゃないんだといっておるその自衛隊を持っていくというのだから、これはもう絶対許されない。大きな矛盾を持った、要するに本当の救出というよりは、自衛隊海外どこへでも出ていける、これは輸送機であれそれを防護するものも含めて出ていける、そういう法律に通じていくということで、私たちは断じて許されないと思うのです。  きょうはもう時間がありませんので、もし答弁してよかったら答弁してください。
  53. 羽田孜

    羽田国務大臣 もう前提が、そういう海外派兵であるという前提であるわけでありまして、私どもは、この憲法の範囲の中において我が邦人緊急事態に陥ったときに許される中で救出しようということ、そしてその安全というものはまさに航空が安全であるという中で私どもはそれができることでありまして、そうでない場合には、残念ですけれどもそれができないという状態であろうと思っております。  いずれにしましても、私たちはこのことによって海外派兵というような形をつくり出そうなんというものでは断固ないことだけは申し上げておきたいと思います。
  54. 東中光雄

    ○東中委員 時間ですから、きょうはこれで終わります。
  55. 近藤豊

    近藤委員長 上田勇君。
  56. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党の上田勇でございます。  本日は、内閣提出自衛隊法の一部を改正する法律案につきまして若干質問させていただきたいと思います。  初めに、法案に関する質問に先立ちまして、国連の平和維持活動に対する防衛庁としての考え方について一点だけお伺いしたいというふうに思います。  先般、カンボジアのPKO活動から帰国されました自衛隊員の代表の方々から活動の概要や現地の状況などについてお話を伺う機会がございました。厳しい条件のもとで大変な御苦労をされた隊員の方々に、ここで深く敬意を表するものでございます。その際、何点か御意見を承ったわけですが、その中の一つに、国連におきますPKO実施にかかわる情報などを早期に入手して、我が国としてのPKO参加についての対応や参加のための準備、そういったものを早目に行うべきではないかという意見を承りました。  そうした中で、先日新聞記事によりますと、今回国連日本政府代表部に防衛庁から職員を派遣する方針を決定したという報道がされていましたが、その内容の真偽、また目的、想定される業務内容、派遣の予定の時期などについてお尋ねしたいと思います。
  57. 宝珠山昇

    宝珠山政府委員 防衛庁においての現在の予定ということでありますと、来年度当初から継続的に国連代表部に、文官をでありますが出向させることを調整中でございます。この考え方は、国連平和維持活動に限りませんけれども国連が国際の平和及び安全を維持する機能を従来以上に果たし始めてきているという認識のもとに、このような国連の動向に的確に対応するために行おうと考えるものであります。  文官以外の防衛駐在官といったユニホームの出身の者を代表部に派遣することにつきましては、これからの国連の方向、代表部の活動状況などを勘案しながら関係省庁と調整しようというところでございまして、この点は、現在まだ調整に至っておりません。
  58. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ただいま承りまして、こういう計画は、防衛庁としましても、今後、国連の平和活動に積極的にかかわっていこうという、そういう姿勢を物語っているものではないかと推察いたします。  つきましては、防衛庁としての今後の国連平和維持活動への参加についての基本的な考え方、また、近年ガリ事務総長等から平和執行部隊などの提案もされておりますが、それらへの参加も含めまして、国連による平和活動全般に対しまして、これからの防衛庁としての取り組みの基本的な考え方について、御所見をお伺いしたいと思います。
  59. 中西啓介

    中西国務大臣 おっしゃられるように、本当にこの国際平和維持活動というのは、日本がこれからの国際社会の中で生きていく上で、私はもう不可欠の要素である、そんな感じで受けとめております。これからまたそのPKO業務を要請される場面というのは非常にふえてくるのだろう。ところが、需要に対して供給がなかなか追っつかないみたいな現況にあることも事実がなというふうな感じで見ております。要するに、もう一国で、例えばいろいろな紛争をおさめるようなこともとてもできる時代でありませんし、可能な限り世界じゅうの多くの国々が力を合わせて、協力してそういう紛争をおさめていく、あるいは紛争が起こらないようないろいろな活動を、事前に根強く積極的にやっていくというようなことも大事だろうと思うのですね。  そんな中で、初めて、世界で唯一無二と言ってもいい平和機構であります国連というものがまさに見直されようとしている。国連の機構改組問題というのも非常に大事でありますから、やはりそんな場面にも日本が深くかかわっていくべきであるというように私は個人的に思っております。やはり、国際政治の波がもろにぶつかる常任理事国になるかならないかによって、日本の国益にも相当影響が出てくる。今、日本が非常任理事国立場を引き下がらざるを得ないわけでありますが、そうしますと、アジアで一つということになりますと、もう当分の間その非常任理事国にもなれない。例えば国連の分担金でも、英国とフランスと中国と三カ国会わせたよりも、日本が一国で出している方が多いのですね。しかし、発言権もない、情報を得る機会にも極めて恵まれなくなるというふうなことになりますと、国益もさることながら、世界に対して貢献していくという観点から考えても、これはなかなか容易ならざる事態だ。だから、やはり私は、理想はそれはもう推されてなるべきだと思いますが、やはり日本国連の中心に座って、世界平和のために他の国々と一緒になって積極的に貢献していくべきである、そういう考え方の中からこういう問題もやはりとらえていくべきだろう。  日本の場合は、憲法九条ではそれは確かに国権の発動としての武力活動、これはもう当然やってはいけないことでありますし、禁止されております。あるいは、海外において日本意思でそういう武力行動というものを行うことも、当然これは御法度、禁止されておることでありますが、私は、世界の多くの国々がともに参加する国連の組織の中で、日本も、国連の御旗のもとに、国連の指揮のもとに、それぞれの国々と同じレベルで平和維持のための活動をしていくということは憲法違反にもならない、そんなふうに考えておる一人でございますので、こういう問題も、これから皆さんとともに大いに掘り下げたところまで徹底的に議論をしていただいて、民主主義の我が国でありますから、もちろん国会の結論は尊重しなければなりませんけれども、そういう方向で御議論をいただけることを心から期待をいたしておるところでございます。
  60. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ありがとうございました。ぜひとも今後、こうした平和維持、平和活動等につきましては、当委員会においても議論をさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。  続きまして、法案の方の御質問に移らせていただきますが、今回自民党の方から提出されている法案と全く同じものが第百二十六回国会におきまして政府から提出されまして、議事録を拝見させていただきますと、これまでその国会におきまして相当な時間を費やしまして、また内容の濃い議論が行われてきたということがうかがわれます。私どもの党からも質問に立たせていただきまして、在外公館の危機管理体制の問題、また空港や飛行経路の安全性の確認やその判断の基準、閣議等での議論を含めた派遣決定までの手続、その他派遣する機種、携行する武器等などについて討議を行いまして、そうした審議の結果が、今国会において政府から提出されている法案、それから「在外邦人等輸送のための自衛隊航空機の使用について」との閣議決定において明確化されたことは、これは大いに多とするところであります。ぜひとも政府案のとおりで成立させていただくことを期待しているところでありますが、そこで、今申し上げました閣議決定につきまして、何点かお伺いさせていただきたいと思います。  まずは、この閣議決定、これは全閣僚の合意でありますので、相当な重みのあるものであるということは当然でありますが、今般の閣議決定の性格あるいはその位置づけについてどのようにとらえられているのか、お尋ねしたいと思います。
  61. 宝珠山昇

    宝珠山政府委員 今回、御指摘のございました「在外邦人等輸送のための自衛隊航空機の使用について」というのを十一月五日閣議決定いたしまして、七項目にわたっております。  それらは、これまでの国会における論議、それから今国会になりまして、与党内における論議、これらを踏まえて整理をさせていただいたものでございます。これは、本件の、この法律に基づきます輸送というものの趣旨というのが第一項でございまして、これは従来からたびたび申し上げていることでありますが、在外邦人等救出といいますか保護を任務としております外務省の任務を、従来以上により一層適時適切に行うということの一環として行うものであるということでございます。  そういう観点から七項目に絞っておりますが、これらはこの法案趣旨、運用に当たっての限度というものを整理いたすことによって理解を深めたいということでありますとともに、今後の運用に当たっての大方針になるものでありまして、まさに、法律ではございませんけれども、運用に当たってこれが基準になっていくということを申し上げられると思います。
  62. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今御答弁いただいたとおり、これは前回国会におきまして審議された内容がかなり反映されている、ほとんど反映されているという内容であると思いますので、ぜひとも、今御答弁にあったように、それを法律同等のような形で踏まえて運用をいただきたいというふうに考えているところであります。  次に、その内容についてちょっと一点だけお伺いさせていただきます。  その閣議決定の7に「同乗させることができる外国人」というのがございますが、その範囲についてお尋ねさせていただきたいと思います。もちろんこれは人道的に考えましても、こうした規定というのは当然なことであるとは思いますが、その内容について若干お尋ねいたします。  特に、紛争等の場合におきまして、紛争にかかわる国のその国籍を有する者や、またその当該国政府の顧問なり政府に関与していた者、そういった者もいることも想定されると思うのですが、ここに定められている条件に該当するのであれば、こういう今申し上げたような者でもこの「同乗させることができる外国人」の対象に含まれるというふうにお考えなんでしょうか、お尋ねいたします。
  63. 宝珠山昇

    宝珠山政府委員 外務省の方からお答えいただく方が適当かとも思いますが、協議した者として御説明させていただきます。  輸送の対象者につきましては、邦人を優先するということは基本的にございますが、政府という立場から、人道上の見地から外国人についても、座席に余裕があります場合など、この七項に書いてありますような要件を満たす場合に限り同乗させたいという考え方であります。このような場合におきまして、退避を必要とする外国人には通常派遣先国国民は含まれないことが多いと考えておりますが、外国人を同乗させるのは、閣議決定の7のとおり、当該外国人の母国の政府などから我が国政府に対して当該外国人の輸送について要請があることを原則といたしております。したがいまして、同乗させる外国人の適格性につきましては、当該外国人の母国の政府より要請の有無など諸般の事情を総合的に勘案した上で、ケース・バイ・ケースで判断することになります。  いずれにいたしましても、人道的見地から行われる本件輸送について、紛争当事国などとの間で政治問題などに発展するといった事態が生じないよう十分配慮して運用することを考えておるものであります。
  64. 上田勇

    ○上田(勇)委員 では、続きまして、先日の新聞に報道されている内容で、自衛隊と民間航空の両方のパイロットを経験された方の意見が掲載されているものがございます。多少引用させていただきますと、その中でこの方は、「私は自衛隊と民間航空のパイロットであった。熟練度において、一万時間以上の国際線飛行時間を有するパイロットが何百人もおり、世界の空を知り尽くしている民間航空会社と、自衛隊では比較にならない。緊急時には、高度の国際線の経験を必要とする。二次災害を出してからでは遅い。」それに、「将来とも、国際線の経験を積む機会の少ない自衛隊には出る幕はない。」こういうふうに断じているものであります。この方は両方の経験を有している。そういう意味で、ここに述べられていることはかなり技術的なことではありますけれども、その意見というのは傾聴に値するものではないかというふうにも思われます。  そこで、確かにここで指摘されているとおり、自衛隊のパイロットの場合、政府専用機を国際線で運航した経験ということになりますと、これはおのずと限定されているものではないかというふうにも思われます。もちろん、あくまで安全性が十分確認されているということが航空機派遣の大前提でありますが、緊急の派遣であったり、また当然不測の事態が生ずることも考えておかなくてはならないことではないかというふうにも思われます。ついては、政府専用機の運航にかかわる自衛隊のパイロットの訓練等の状況がどのようになっているのか、また十分な訓練を積んだ要員が確保されているのか、さらにここに述べられているこの方の意見に対する御所感も含めてお答え願いたいと思います。
  65. 上野治男

    ○上野(治)政府委員 お答えいたします。  今議員の御指摘がありました新聞記事でございますが、その書かれておるような内容の問題はあり得ることだと思います。決して荒唐無稽なものではなくて、傾聴に値する意見だとは思っております。しかし、私どももそういうことを念頭に置いて平素訓練をしておるわけでございます。経験が十分でないということでございますが、現在いる機長クラスですと、平均七千時間とか一万時間とかかなりの飛行経験を持っております。それから、特に問題になりますのは、今回の場合でも、決して一〇〇%安全ではない、例えば情報が不足しているとかあるいは完全な計器飛行ができないとか、いろいろな状況があるだろうと思いますが、そういうような若干の困難の中でも離着陸できる訓練というのは大事なんだと思いますので、私どもとして一番力を注いておりますのは、一番困難な離着陸を確実にできるような訓練ということが一つございます。  それから、さらに大事なのは、一人一人のパイロット、機長等についてもですが、さらにはクルー全体にとってみて、関係の客席乗務員まで含めて、全体の要員についても各種の困難を克服する訓練というのが必要だと思いますので、そういうことにより力を置いておりますので、私ども現在の訓練の状況から見まして、与えられた任務は十分達成できる力があると思っておる次第でございます。しかしさらに、このような御指摘の問題につきまして日々努力を重ねていかなければいけないと思って、今後の訓練計画も進めている次第でございます。
  66. 上田勇

    ○上田(勇)委員 最後に、今回の法案におきまして、緊急事態に際して邦人輸送のための自衛隊機の、政府専用機、自衛隊機の派遣を可能にする規定が設けられるわけでありますけれども前回国会での審議ども踏まえまして、やはりこれはあくまで非常事態に備えるということではないかというふうに思います。まずはやはりそうした必要性が生じる以前に邦人保護、避難を確実に行うことが先決ではないか、当然こういうふうに考えているわけであります。  そのためにも、各国に置かれております在外公館における情報の収集やまたその分析に努め、通信網を整備したり在留邦人との連絡体制を確保することが重要であるというふうに考えます。外務省におきましても、限られた人員での対応となり、大変なことではないかというふうに思いますが、ぜひともこの点をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。この点、今回閣議決定の中にもそうした内容が十分盛り込まれている点でございますので、ぜひともこの点をよろしくお願いしたいというふうに思います。  これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  67. 近藤豊

    近藤委員長 樽床伸二君。
  68. 樽床伸二

    樽床委員 樽床伸二であります。私は、さきがけ日本新党を代表いたしまして、質問をさせていただきます。  私も、先日来より質問されております浜田靖一議員、中村力議員、矢上雅義議員及び先ほどの上田勇議員と同じく当委員会での初めての質問でございます。関係各位の皆様方の御指導を賜りたいと思います。  さて、当委員会審議されております内閣提出及び自民党提出自衛隊法の一部を改正する法律案でありますが、先ほど来の議論でもありますように、私ども日本新党を除きましては、もはや十分議論が尽くされておる、実質的な審議は終わったものといった認識を持っております。しかしながら、衆議院選挙を挟みまして国際情勢に大きな変化があったわけではありません。ただ、最大の大きな違いといいますのは、何といいましても、我が国におきまして三十八年間続いてまいりました自民党単独政権から連立内閣政権が移ったということでございます。そのことによりまして、今回のようにほぼ同じ趣旨であります二つの法案提出をされておる、私はそのような認識を持っております。  そこで、まず私は、連立与党の一員といたしまして、ともに政権を支えていただいております社会党の努力に深く敬意を払うものであります。といいますのも、これまでの社会党の歴史の中で、条件つきであったとはいえ初めて自衛隊海外派遣を認められたというふうに認識をいたしております。その点におきまして、防衛庁の御見解をお願いいたします。
  69. 中西啓介

    中西国務大臣 ただいまの樽床さんの御意見と申しますかお考え方に、私も全く同じ気持ちでございます。  申し合わせ事項の中に、前政権の基本的な部分は当然継承していく、こういう申し合わせがなされております。それで、確かに防衛政策に関しましては、今樽床さん御指摘のとおり、社会党とは相当の隔たりがあったことは事実でございますが、今回いろいろと政府・与党の中でも相当の激しい議論も行われました。  そんな中で、さっき岩垂先輩が御指摘の中に大出先輩のお話も出たわけでありますが、本当に大変御苦労いただいて社会党の意見をまとめていただいて、何といいますか、大変な努力や工夫を重ねた結果、安全性の確認、それから使用する航空機の条件をぴしっと決めて、閣議決定をして、そして国会法案として提出をした、そういう経緯があるわけでございますが、ある意味では本当に画期的なことである、心から私も大出先輩初め社会党の皆さんに敬意を表したい、そんな気持ちでございます。
  70. 樽床伸二

    樽床委員 ありがとうございました。  次に、内閣提出案と自民党提出案の違いについて質問をさせていただきます。  両案の違いは、御存じのように二点ございます。  まず、第百条の八におきまして、内閣提出案におきましては、自民党提出案に「当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときはことの一文が追加をされております。  防衛庁長官にお伺いいたしますが、この一文を追加された御趣旨をお聞かせください。
  71. 宝珠山昇

    宝珠山政府委員 事務的にまず説明をお聞きいただきたいと思います。  在外邦人などの輸送の目的を達成するために、派遣先国の空港それから航空機の飛行経路を含めまして、派遣先国などの措置によりまして航空機の安全が確保されている必要がある、これは前国会等においてしばしば申し上げてきたことであります。このような審議状況、それからその後の政府・与党部内における意見調整におきましてもこのことが大きな議題となったところでございます。これらを踏まえまして種々検討いたしまして、この法文にございますようなところを法文上明記することが適切であるという判断に至ったものであります。  この安全確認の具体的な内容ということであります。外務大臣は、現地公館長からの報告、他国の航空機の運航状況、これらを踏まえまして、派遣先国の空港それから航空機の飛行経路の安全について判断を行い、防衛庁長官は、この輸送の運航責任を有するという立場におきまして、専門的な見地から運航の安全が確保されるか否かということを判断を行うことを予定しております。  具体的に若干申し上げますと、空港の滑走路の状況、飛行経路上、及び、同じく派遣先国航空機を含みますが、航空保安施設がどうか、十分に機能しているかどうか等々についての情報を得て、安全性の判断を行うことになるものと考えます。
  72. 樽床伸二

    樽床委員 続きまして、自民党提出者の方にお伺いいたします。  ただいま御説明いただきました御趣旨に対しまして御反論がございますでしょうか。また、反論がもしないといたしますと、この一文を追加することに対する御見解をお願い申し上げます。
  73. 山崎拓

    山崎(拓)議員 我が党案には、安全の確保について特段の規定を設けておりませんが、それは、ただいま政府側の答弁にありましたことはごく当然のことでございまして、そのことについてあえてこれを法文に盛り込む必要はないと考えているものでございます。  さらに、もう一歩進んで申し上げますと、あるいはそういう規定を置きますことが、この自衛隊法改正の目的を遂行する上におきまして、一定のたがをかけると申しますか支障をもたらす可能性もないではない、そのように考えるからでございます。  例えば、緊急援助隊派遣法というのがございますが、派遣に当たりまして完全に安全が担保されているかということになりますと、それはそのときの状況によりまして、最初、当初想定していなかった事態も発生し得ると存じます。PKOの派遣についても同様でございます。カンボジアの体験を考えましても、連立与党第一党の社会党が常に主張しておられましたことは、PKO活動に派遣する場合に、非軍事、民生、文民といった分野に限ってこれを派遣する、三条件だったと思いますが、今回の経験からいたしますと、その三条件に該当する方が、実は中田青年でございますとか高田警察官でございますとか、そういった方々が実は不幸な死に直面をされたのでございます。  そういうことは初めから実は想定になくて主張なさったと思うのでございますけれども、最大限の安全を確保するということは当然のことでございますが、このような在外邦人救出を国家といたしまして当然の責務として遂行しようというときにおきまして、安全の完璧を期しますためにそのことをなし得ないということの議論に立ち至る可能性があるのではないかと私は考えるわけでございまして、余りにも当然な規定を置く必要はない、かように考える次第でございます。
  74. 樽床伸二

    樽床委員 ありがとうございました。  次に、違いの二点目の百条の八第二項でございます。  この点につきまして、当然皆さん御存じのように、内閣提出案には入っておりますが、自民党提出案には入っておりません。この百条の八第二項に対しましての御見解防衛庁長官及び自民党提出者、両名の方に御質問させていただきます。
  75. 宝珠山昇

    宝珠山政府委員 百条の八第二項は、ただし書きとその他に分けられます。ただし書き以外の部分についての趣旨を申し上げます。  在外邦人等輸送の問題が、法改正の問題が生じましたのは、平成四年四月に、緊急時における在外邦人救出のための輸送ということを任務の一つにいたしました政府専用機が防衛庁に移管されたことを機に生じたものでございます。また、具体的に考えてみましても、この輸送というのは、航続距離、搭載能力、巡航速度、これらを踏まえますと、主として政府専用機が使用されるというふうに考えられるものであります。このような点から、第二項のただし書き以外のところに書いてございますようなことを法文上明記することが適当であると判断したものであります。  しかし、御承知のように、政府専用機で航続距離など十分なものというのは、現在二機しか保有いたしておりません。このような政府専用機のみによって適時適切に在外邦人等輸送を行うということから見ますと、政府専用機が使用中である、あるいは近く使用の予定がある、あるいは輸送に使用する空港の滑走路が短いといったようなことのために使用できない場合も考えられるわけであります。そこで、政府専用機の使用が困難である場合にも在外邦人等輸送が行えるようにということで二項のただし書きを設けたものであります。  これは、在外邦人等輸送を適時適切に行うという立法趣旨のみに照らしますと、その時点において国が保有している能力を臨機応変に活用するという観点からは必ずしも、これらを適切に行うということは政府の責務でありますが、これらのことを適切に行うということだけでいいますと、この限定というのは問題があるかと思われますけれども、先ほど申しました、政府専用機の能力、性格等からいきますと、政府専用機を第一にまず考え、それが困難な場合において、その他のいわゆる輸送機を使用するという趣旨を設けるのが適切であるということでただし書きを設けたということでございます。
  76. 山崎拓

    山崎(拓)議員 どういう機種を用いるかということは手段でございまして、目的が私は肝心であると存じます。  在外邦人救出が実は目的でございますので、その目的を達成いたしますためにいかなる自衛隊機を活用したらいいかということは、その時点ですべての条件を勘案して決定すべきであると存じます。その点につきましては、政府答弁のとおりでございまして、政府専用機を用いるケースが最もアベイラブルだと存じますけれども、しかし、その他の輸送用の自衛隊機を起用するということは、C130H等でございますが、十分起こり得ることでございますので、その点は私ども、目的に重点を置いておりまして、手段に関しましては、そこは弾力的に、もちろん法の目的あるいは憲法規定に反しない範囲においてでございますが、十分に対処し得るように配慮したところでございます。
  77. 樽床伸二

    樽床委員 ありがとうございます。ただいまの答弁を聞かさせていただきまして、特に大きな意見の違いはないというふうに私は認識をいたしました。  そういった中で、立法府におけるシビリアンコントロールを高めるという観点におきましては、私は、織り込んでも差し支えはないではないか、このように認識を再度させていただいた次第でございます。  そこで、最後になりますが、私は、大変厳しい財政状況の中で自衛隊の隊員の皆様方の士気高揚を図るためには、ぜひとも、その最高責任者が内閣総理大臣であるといった自衛隊の性格に基づきまして、議員立法よりも内閣提出による法案改正が望ましいんではないか、このような認識を持っております。そういった前提につきまして、ぜひとも自民党提案者の方からの歩み寄りを心よりお願いを申し上げる次第でございます。その点につきまして、防衛庁長官及び自民党提出者の方に御見解をお願い申し上げます。
  78. 中西啓介

    中西国務大臣 先ほども申し上げましたように、こういうことは起こらない方がもちろんありがたいわけでありますが、もういつ起こってもおかしくないような世界の情勢でもある、そういうものに備えをしておく、万全を期しておくということは、これは人道的見地からも、あるいはまた国家としての責任上からも、私は喫緊の課題である、そういう考え方から前回も閣法として国会提出をさせていただいた経緯があるわけでございます。そういう意味で、何とぞ慎重に御審議をいただいた上、可及的速やかに成立していただきたいという考え方には変わりはございません。
  79. 山崎拓

    山崎(拓)議員 今の御質問は、一日も早く成立させるべきであるという趣旨を含んでいたと存じます。そういう見地から申しますと、我が党案は、その前段にたびたびの国会質問、町村議員等の国会質問をやっておりまして、九月二十八日に提出をさせていただきました。政府の対応が余りにも鈍い、法案の意義からいたしまして一日も早い対処を望まれるのに、いつまでたっても出さないと業を煮やしまして、実は九月二十八日に提出をいたしまして、やっと委員会で我が党の提案理由の説明ができましたのは十一月二日でございます。  政府を支えているとおっしゃいましたが、連立与党側の姿勢にも疑問なしといたしません。我が党案は先に出しまして、しかも繰り返し答弁申し上げましたとおり、これを最善のものと考えておりますので、一日も早い先議採決をお願いいたしたいと存じます。
  80. 樽床伸二

    樽床委員 ありがとうございました。  時間となりましたので質問を終わらせていただきますが、最後に一言お願いを申し上げたいと思います。  いかなる経緯があったといたしましても、本来の趣旨内閣提出議員提出といった性格と自衛隊の性格とあわせ考えまして、ぜひとも自民党の方に歩み寄りを心よりお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  81. 近藤豊

  82. 西村眞悟

    西村委員 民社党の西村でございます。  自衛隊に関して全般的な御質問を四点ほどさせていただきたいと思います。  ただいま御審議されております、在外邦人救出を、緊急時における救出自衛隊が行う、これは当然のことでありまして、むしろ遅きに失したと私は思っております。先ほどからの御答弁にありましたように、数点希望を申し上げておきますと、これは緊急時のことでございまして、現時点で予測不可能な事態の中で行われるものでございますから、余り部隊を羈束せずに部隊の自律性に任せるという領域がやはり目的の遂行にとっては必要だと思っております。その場合に、例えば羽田空港でハイジャック防止装置などをつけている、設備の整った空港に行けるわけではありません。したがって、救出に向かった飛行機がハイジャックされるような事態がないように、携行する武器については万全の対策を整えていただきたいと思っております。  それからもう一つ、先ほども質問にございましたように、国内しか飛んでない人が突然スクランブル状態で現時点で予測不可能な場所に行けるわけではないのでございますから、この法案成立して国家が邦人救出するという法律ができた以上は、平素から飛行訓練を十分実施していただきたいと思います。  要望についてはいろいろございますのですが、次に進みますと、昨年から、PKO法、国際緊急援助隊派遣法が成立して、自衛隊には新たな任務が法的に付与されております。  ところで、自衛隊の本来の任務は国防というものでございまして、日露戦争当時の黒木大将が言われた言葉に、軍人というものは平素はちやほやされておるか忘れ去られておるか二つに一つであると。忘れ去られていることが本来の任務でございまして、この国際貢献という新たな任務が付与されることによって国防という本来の任務が手薄になってはいけないと私は考えております。  国防ということが国際貢献といかなる関係にあるのか。国際貢献することによって広い意味日本国の安全が保たれておる、保たれるのだと私は考えておりますが、長官のこの点に対する御認識はいかがでございましょうか。
  83. 中西啓介

    中西国務大臣 西村さんがおっしゃられましたように、自衛隊の本来任務というのは第三条に明記されております。「直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当る」こういうことでございますが、当然この本来の任務に支障があってはならない、また支障にならないように運用していくことも私どもは十分心がけてまいりたい、そんなふうに当然考えております。  また、日本の周辺あるいはまたもっと外縁が広まって世界がやはり秩序が安定してくる、平和が促進されるということは、当然日本にもはね返ってくるわけでありますから、それはもう大変結構な現象でありまして、この間の観閲式で総理の訓示の中に、やはり日本はそういう環境をつくっていく運動の先頭に立つだけの資格を有している国だ、だからそういうことも一方ではこれから積極的に国連等の場を通じてやるべきであるという趣旨のことをおっしゃられたと私は理解をいたしております。  しかし一方では、いつ何とき災難というものが起こらないとも限らない。そういう意味防衛というものが成り立っているんだろうと思いますが、確かに、日ごろの自衛隊の訓練あるいは日米安全保障条約、そういうものによってやはり抑止力となって、今日までややもすれば本来任務の部分国民から忘れられがちである。結果的にはそういうことがありがたいわけでありまして、自衛隊がそういう本来任務によって価値が見直された、ありがたがられたというようなことは国民にとってはこれは決して幸せなことではないのでありまして、その本来任務に関して自衛隊がむしろ国民から忘れ去られておるというのは大変国民にとっては幸せなことではないか。まあしかし、現実に影の功労者として抑止力として働いた結果がそんなふうな現象を生んでいるわけでございますから、それはそれなりに私はやはり大いなる存在価値、意義というものは認めていかなければならぬ、そんなふうに考えております。
  84. 西村眞悟

    西村委員 国際貢献という言葉がこのごろ流行でございます。私としては、国際貢献という言葉が日本の国防と切り離された無関係な言葉として、例えば自衛隊が国籍不明の部隊のように、国際社会の便利屋のような認識を持たれては困るというふうには考えております。  ところで、カンボジアでPKO活動を行って任務を遂行されて自衛隊が戻られましたし、今はまだモザンビークで行われております。十月二十四日付ニューヨーク・タイムズでは、その自衛隊のカンボジアでの活動に関して、ぜいたくをし過ぎであるとかいうふうなコメントの記事が載ったりしますのですけれども長官にお伺いしたいのですが、自衛隊の諸君は、この国際貢献、カンボジアでの任務の完遂によってある意味では士気が高まっておるのか、私は高まっておると思うのでございますけれども、御紹介したニューヨーク・タイムズ等の記事などでやゆされておるように、何か厭世的な気分、そのような気分に陥っておるのではないかなというふうな感じも、危惧もちょっといたします。自衛隊の諸君の任務のいわゆる使命感が高まり、士気が高まったことを希望しておりますけれども、この点は長官、いかがでございましょうか。
  85. 中西啓介

    中西国務大臣 概して申し上げれば、自衛隊の士気は極めて高まっていると私は認識をいたしております。そのことによって国民の見る自衛隊に対する見方、印象というものも大変改善されてきておりまして、過日NHKのニュースでも取り上げられたわけでございますが、もう七割以上の人が、あのカンボジアに対する評価、あるいは今後の、主として、何といいますか、平和という、平和活動というところに重点を置いたニュアンスではありますけれども、貢献をしていくべきだというふうに答えた国民皆さんが七割を超しておったというニュースを見て、防衛庁長官としても大変私はうれしく、かつ意を強くしたところでございます。  やはり国民皆さん自衛隊に対する見方を、印象を非常によくしてくださっている、非常に期待を高めてくれている、そのことによって自衛隊員の士気も上がってきているということは、私は、日本の国防を維持、また任務を遂行していく上において極めて良好な環境が整いつつあるのではないか、そのように認識をいたしております。
  86. 西村眞悟

    西村委員 私も、自分は真の国際人になるために自衛隊に入るんだというふうな若い諸君がふえていくことを望んでおる一人でございます。  次に質問を進めますけれども、読売新聞で、防衛庁が国連事務官を派遣するんだという記事が載っております。情報収集ということは非常に大切なことでございまして、安全保障理事国にもなっていない我が国においては、蚊帳の外に置かれておる、要求だけが来るという状態でございますから、これを解消するには、根本において、安全保障理事会の中に入ってその情報を得ることが必要でございますけれども、現時点においては事務官を派遣する、これは大変必要なことだと思います。  しかし私は、さらに進んで、武官というものは、本来軍事専門家として各国との社交の場、コミュニケーションの場、これは伝統的に持っております。そのような国連及び各国大使館に武官を武官として派遣して、情報収集、そしてもっと大事なことは、日本の自衛官が武官として他国の武官と交際することによって自衛隊のイメージがオープンになっていくと思うのでございます。今までややもすると何か抑制されたように内に閉じこもっておる。これは非常に危険だ。オープンにしていきたい。武官を派遣するというふうな意見に対してはどのような御見解をお持ちでしょうか。
  87. 中西啓介

    中西国務大臣 基本的には大賛成でございます。  いずれにしても、専守防衛を旨とする我が国でございますから、とりわけ情報をより早く、より正確に収集するということも極めて重大な私は要素の一つだと考えております。いろいろカンボジアに行った隊員の帰国報告を、全員から聞いたわけではありませんが、重立った連中とそういう機会を設けて話を聞いてみます中に、やはり情報収集ということに物すごく苦労した、その情報によって派遣された隊員たちの安全性というところも相当影響を受けるというような報告も聞きました。  かつてハマーショルド事務総長は、国連のPKO活動というものは軍隊が行ういわゆる本来の仕事ではないかもしれない、しかし、このPKO活動は軍隊が行うものである、軍隊しか行い得ないものであるというような趣旨のことを言われたわけでございます。  ですから、これから飛躍的にそういう平和維持活動というものがふえていく、また日本に対して相当そういう要請がなされてくる。しかも日本が、これからまだ議論を大いにしてという前提があるわけでありますが、国連の中心に座る日もそう遠くない。むしろ座るべきであるというふうに私は考えている一人でございますので、PKOというものは、あくまでも軍としての各国の部隊等が参加して、一つの現場、いわゆるPKOが行われる外国で組織も編隊されて行うわけでありますから、やはり事務官でなくて武官、いわゆる軍の情報の極めて得られやすいというか、得る能力のある人間を派遣していくということは、派遣する隊員の安全性はもとより、いろいろな意味で情報を収集して対応していけるわけでありますから、ぜひともそういう方向で具体化していくべきである、そのように私は考えておるところでございます。
  88. 西村眞悟

    西村委員 次に、自衛隊の任務が国際貢献ということにもあると、自衛隊法三条またはこれに準ずる条項に国際貢献を規定する、これは必要なことでございます。さはさりながら、今は規定されていないわけですが、いろいろ国際貢献が自衛隊の任務であるということはわかってきました。先ほど長官が言われたように、情報の収集がいかに大切か、このような状況の中で、情報の発信としても自衛隊は国際貢献すべき段階に来ておるというふうに私は思っております。  例えば、医者は病気を治すのが任務でございますから病気を研究するように、国際紛争を解決する、平和をもたらすためには紛争の情報を得なければなりません。そのために、防衛計画の大綱にある装備品を見直さねばならない段階に来ておるのではないか。世界から、日本の情報は正確である、日本の情報に従って邦人救出に各国が行っても成功するであろう、そのような信頼を得なければなりません。そのためには、高精度の警戒機、そして偵察衛星、その装備もやはり検討すべき段階に来ておると私は思っておりますが、長官の御意見、いかがでございますか。
  89. 中西啓介

    中西国務大臣 我が国の防衛計画も、昭和五十一年に策定された計画でございます。もうあと二年、三年すれば二十年経過するわけでございまして、二昔前につくられた計画である。もちろん、二昔前でも三昔前でも正しい場合もあり得るわけでございますけれども、しかし、世界秩序の基軸であった、いわゆる東西陣営のにらみ合いというものが消滅をしたことは事実であります。ソビエト連邦が瓦解をしたという物すごく大きな変化も起こったわけでありますから、そういう変化にも鮮明に対応しているのだという、もう少しわかりやすい姿を国民皆さんにもやはりお示しをすべきであろう。  そういうことで今防衛庁は、あと二年すれば中期防の期限も切れますし、あるいはまた日米間の地位協定といいますか、そういう問題も期限切れを迎える、そういう状況の中で、防衛計画の見直しというものを一遍そろそろ本格的に勉強を開始していこうということで、今勉強を開始したところでございます。  そういう状況の中で、陸海空それぞれの今のあり方が正しいのか、適切なのか、あるいはまた陸海空の三者間の統合の面で、例えばお互いの通信網、通信情報、そこら辺もいわゆるこれからの防衛にふさわしいだけの能力を持っているのかというふうなことを考えてみますと、なかなか大変お寒い状態であるというような印象の記事も、この間某新聞にも取り上げられたところでございます。  これからますます不透明といいますか不明確な時代でありまして、特に我が国周辺の軍事的な側面に関してはますます予測がつきにくい、難しい環境に今置かれてきておるわけでありますから、先ほど御指摘の情報面での強化、これは、いわゆる装備における面とそれから人的な面での情報面を強化していくというやり方があろうかと思いますが、そこら辺も総合的にこれからもう一度チェックして、後顧の憂いのない体制をしいていきたいというふうに考えておるところでございます。
  90. 西村眞悟

    西村委員 あと一点だけ、質問じゃなくて御要望を申し上げたいと思います。  長官の御意見、よくわかりました。それで、狭い意味の国防というよりも国際貢献という趣旨で、情報をもって国際貢献をするという意味で、偵察衛星とか高精度の偵察機とかというふうな装備も考える段階に来ておると思います。  それから先ほど、一点、C130が足が短いとかいろいろ、客を乗せる旅客機なら、着陸する空港の話が出ておりました。国家が法律邦人を緊急時に救済すると決めた以上、C130が足が短いのなら足の長い輸送機を装備する、空中給油機も装備する、このような発想の転換もなければならない段階に来ておると思います。  ありがとうございました。これで質問を終わります。
  91. 近藤豊

    近藤委員長 月原茂皓君。
  92. 月原茂皓

    ○月原委員 最初に防衛庁長官一つ要望しておきますが、この前、自衛隊の観閲式での総理大臣のスピーチ、それを聞き取りのをちょっと読ませてもらいましたが、非常によくできていると言われながらも、今長官もおっしゃったアジアの軍事情勢について欠落しておる。私は、ロシアの問題それから朝鮮半島の問題、中国の今後の動向、不透明さを増しておるという点について、長官の方から総理の方によく話してもらいたい。そのスピーチを通じて国民に、総理の認識というものがアジアについても非常に冷戦後安定してきておるのだな、そういう印象を与えては事実を曲げたことになってしまう。その点をお願いしたいと思います
  93. 中西啓介

    中西国務大臣 総理の認識そのものに、今月原さんが指摘されたような認識不足、欠落をしているということは恐らくないのだろうと私は思っております。ただし、あの観閲式のあいさつといいますか訓示だけを何の解説もなく放置しておくと、アジアも非常に平和ムードである、安定しているのだというような錯覚を与えるおそれはあるいはあるかもしれないという点においてはおっしゃられるとおりだと思いますので、機会を見て総理にも、その旨お話を申し伝えたいと思っております。
  94. 月原茂皓

    ○月原委員 今、各議員質疑を聞かせていただいて私が思うことは、内閣提出しておる法案は、山崎議員の説明によると当然のことを書いておる部分も非常にある、私はそのとおりだと思います。しかし、新しい政治情勢になった現在、やはり、当然のことではあるけれども国民の方々でそこに理解をしていない、そこまで理解がしにくい、そういう国民も多くおったと思うのですね。それが今度の法案によって安心するというか、よく法案趣旨理解されたという意味では、国民のもっと広い意味自衛隊機が派遣される場合の理解が深まったんじゃないかな、そういうふうに私は思うのですが、閣法における、内閣提出した法案、この前は解散によって廃案になったわけですが、その法案よりもそういう点で、今度内閣提出された法案についての意義というものについて大臣はどのように理解されておるか、御説明願いたいと思います。
  95. 中西啓介

    中西国務大臣 先ほどどなたかの御質問にもお答えしたのでございますが、確かに前回突然国会が、ハプニングが起こりまして、衆議院で成立して参議院でももう成立目前に国会解散で法案が流れてしまって、今度再びこの国会で再提出をしたものであります。  ただ、前回と全く寸分たがわぬ同じ法律がというと、御指摘のとおり、今度は防衛政策では比較的距離のあった社会党と一緒に連立与党を組んで政権をつくってやっているわけでございまして、大出先輩もきょうここにお見えでありますけれども、その社会党の取りまとめに大変御苦労いただきまして、まあ若干文言において修正されているというか、違っている部分はあります。しかしそれは、趣旨は全く同じ、変わっておりませんで、より丁寧に安全性の確認、それから使用する航空機に関する部分についてより丁寧に、より明確にしたということでは、むしろ国民皆さんにとっては結構な方向にいっているのかなという月原さんの御指摘もよく理解のできるところでございます。
  96. 月原茂皓

    ○月原委員 今大臣がおっしゃったとおりだと思います。今まで理解を示さなかった大きな層も今度の自衛隊機派遣についての理解が深まったことと、私はこのように思うわけでございます。  そこで、いろいろ議論されておるその基本にあるものとして、私は思うのですが、国会が戦前の軍隊、そういうものと非常に違う体制になっておる。シビリアンコントロールと俗に言われておるわけですが、軍政、軍令というようなものも統帥権というものもなくなってきた。そして、内閣総理大臣を頂点とし、防衛庁長官を通じてちゃんと判断できる体制、そして国会そのものの地位も非常に上がってきておる。そういうことからいって、私は、法令の一つ一つをいろいろ仮定を置いて進んでいけば際限のない議論になってくると思います。最後は、防衛庁長官を初めとして、ちゃんと巻き込まれないんだ、自衛権の拡大というようなことがないんだ、もし万一そういう危惧があった場合には毅然たる態度をとるんだ、そういうシステムを持っておるんだということと、それからそういう決意であるということが私は大切だと思っております。この委員会を通じてそういう点について大臣から考えを示していただきたい、このように思います。
  97. 中西啓介

    中西国務大臣 日本が、世界が平和になっていくためのいわゆるキャンペーンといいますか、運動といいますか、いろんな外交折衝とかもあるわけでありますが、そういう面でやはり有資格者であるから先頭に立ってやるべきだという細川総理の考え方にも、私は全く同感でございます。その資格を有しているという中に、日本は、非核三原則だとかいろいろありますけれども、やはり徹底したシビリアンコントロールを確立している国であるからだということも私は含まれているんだろうと思います。  シビリアンコントロールというのは、ユニホーム、制服に背広が優先するとかなんとかということよりも、私は、やはり政治が軍事に徹底して最優先するところにあるという認識を持っております。最優先するという意味は、軍事に対して全責任を政治が負う、もちろんまた思いやりみたいなものも当然その根底になければなりませんが、それがシビリアンコントロールなんだろうというふうに思っております。ですから、昔の大日本帝国何だかんだと言われた当時と今とでは、もうとにかく決定的に人格が違う、もう全く別の人格であるという感覚で私は今任務に当たっているつもりでございます。  確かに月原さんが言われたように、昔の軍隊というのは統帥権だとか、要するに政治よりも軍の力の方がはるかに強かったわけですから、だから軍の独走を許したりもしたわけでありますが、もう今は、全くそういうことは過去の懐かしい、また忌まわしい思い出でありますが、今はそんなことは断じてないということだけははっきりと明言申し上げられると思います。  そういうことで、具体的な事例は、国会が自衛官の定数とかあるいは組織だとか、あるいはまた法律、予算というようなものを議決する、あるいは防衛出動の際に対しても国会の承認が前提であるとか、もうまさにシビリアンコントロールが本当にこれは徹底されているという具体例でございますが、とにかくそれだけはどんなことがあっても貫き通していかなければならない重要な部分である、そんなふうに認識をいたしております。
  98. 月原茂皓

    ○月原委員 今の大臣の決意をお聞きしまして、この法案について、もうこれ以上のことは申し上げることがないと思います。そして、周辺諸国、あるいは今後自衛隊機邦人救出で出動する場合、ちゃんと相手国も日本立場日本の国がちゃんとしたコントロールができる体制にあるんだということ、また大臣の今の決意、そういうものを理解して、私は円滑にいく、このように確信するものであります。  とにかく、先ほど大臣もお話しになっておりましたが、この周辺の情勢、できるだけこの法案の速やかなる成立を私は期待して、私の質問を終わります。
  99. 近藤豊

    近藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時七分散会      ――――◇―――――